JP2003286557A - アルミ系めっき鋼管と自動車部品および製造方法 - Google Patents
アルミ系めっき鋼管と自動車部品および製造方法Info
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Abstract
生成を抑制し、また縮経加工時のめっき欠陥の発生、め
っきの縮経ロールへの付着、鋼管の縮径ロールへのかじ
り等を抑制し、更には得られた鋼管を自動車部品に成形
した後にも良好な表面品位を有する鋼管、その製造法及
び該鋼管を用いた自動車部品を提供する。 【解決手段】 鋼板表面に、Fe−Al系被覆層を有
し、該Fe−Al系被覆層表面側の深さ1〜3μmにお
いてAl濃度が質量%で3〜35%であり、該Fe−A
l系被覆層と地鉄との界面からFe−Al系被覆側の少
なくとも厚さ1μmの領域において、Al濃度が質量%
で0.5〜15%であるアルミめっき鋼管。また表面に
Al系被覆層を有する鋼管を所定の温度で一定時間以上
加熱し、縮経率15%以上、板厚変化率−20〜+10
%となる加工を施すアルミ系めっき鋼管の製造方法。
Description
ネル類、足廻り、メンバーなどに用いられる鋼管と自動
車部品およびその製造方法に関するものである。特に曲
げ成形やハイドロフォーム成形(特開平10−1750
27号公報参照)の用途に好適である。本発明による鋼
管は、曲げ成形の他、軸押し力の働くハイドロフォーム
成形性に極めて優れており、ハイドロフォーム成形等に
よる自動車用部品等の製造効率を向上させる事ができ
る。さらに、本発明は高強度鋼管にも適用できるため部
品の板厚を低減させることが可能となり、地球環境保全
に寄与できるものと考えられる。
強度化が望まれている。高強度化することで板厚減少に
よる軽量化や衝突時の安全性向上が可能となる。また、
最近では、複雑な形状の部位について、高強度鋼の鋼管
からハイドロフォーム法を用いて成形加工する試みが行
われている。これは、自動車の軽量化や低コスト化のニ
ーズに伴い、部品数の減少や溶接フランジ箇所の削減な
どを狙ったものである。このように、ハイドロフォーム
などの新しい成形加工方法が実際に採用されれば、コス
トの削減や設計の自由度が拡大されるなどの大きなメリ
ットが期待される。
トを充分に生かすためには、これらの新しい成形法に適
した材料が必要となる。本発明者らは特開2001−3
48643号公報および特開2001−348647号
公報に集合組織を制御した成形性に優れた鋼管について
開示している。
成形性に優れた鋼管は高温での縮経加工によって得るた
め、以下のような問題点を有する。すなわち、酸化スケ
ールを除去するために鋼管の酸洗を行う必要があるこ
と、さらにめっきを要する場合には、鋼管を酸洗したの
ち、めっきを施す必要が生ずること、である。これらの
工程は、いずれも大きなコストアップを生じることは言
うまでもない。
うな課題を克服するために高温での縮経加工に際してア
ルミめっき鋼管を使用することで酸化スケールの生成を
抑制し、また、アルミめっきの付着量、加熱条件を適正
化することで縮経加工時のめっき欠陥の発生、めっきの
縮経ロールへの付着、鋼管の縮径ロールへのかじり、さ
らには、鋼管を自動車部品に成形する際に、表面のアル
ミめっきにクラックの生成や剥離などを抑制するための
知見を得たものである。
以下の通りである。 (1)鋼管表面に、Fe−Al系被覆層を有し、該Fe
−Al系被覆層の表面側の深さ1〜3μmにおいてAl
濃度が質量%で3〜35%であり、該Fe−Al系被覆
層と地鉄との界面からFe−Al系被覆層側の少なくと
も厚さ1μmの領域において、Al濃度が質量%で0.
5〜15%であることを特徴とするアルミ系めっき鋼
管。 (2)Fe−Al系被覆層が質量%で0.3〜15%の
Siを含有することを特徴とする前記(1)記載のアル
ミ系めっき鋼管。 (3)めっき付着量が鋼管両面の合計で20〜200g
/m2であることを特徴とする前記(1)または(2)
記載のアルミ系めっき鋼管。
の軸方向のr値が1.2以上であることを特徴とする前
記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のアルミ系めっ
き鋼管。 (5)鋼管が、更にAlを0.001〜2.5質量%含
有することを特徴とする前記(4)記載のアルミ系めっ
き鋼管。 (6)鋼管が、更にZr、CeおよびMgの1種または
2種以上を合計で0.0001〜0.5質量%含むこと
を特徴とする前記(4)または(5)記載のアルミ系め
っき鋼管。 (7)鋼管が、更にTi、VおよびNbの1種又は2種
以上を合計で0.001〜0.5質量%以下含むことを
特徴とする前記(4)〜(6)のいずれか1項に記載の
アルミ系めっき鋼管。 (8)鋼管が、更にBを0.0001〜0.01質量%
含むことを特徴とする前記(4)〜(7)のいずれか1
項に記載のアルミ系めっき鋼管。 (9)鋼管が、更にSn、Cr、Cu、Ni、Co、W
およびMoの1種又は2種以上を合計で0.001〜
2.5質量%含むことを特徴とする前記(4)〜(8)
のいずれか1項に記載のアルミ系めっき鋼管。 (10)鋼管が、更にCaを0.0001〜0.01質
量%以下含むことを特徴とする前記(4)〜(9)のい
ずれか1項に記載のアルミ系めっき鋼管。
{110}<110>〜{332}<110>の方位群
のX線ランダム強度比の平均が3.0以上および/又は
鋼板1/2板厚における板面の{110}<110>の
X線ランダム強度比が4.0以上であることを特徴とす
る前記(1)〜(10)のいずれか1項に記載のアルミ
系めっき鋼管。 (12)鋼管1/2板厚における板面の{111}<1
10>方位のX線ランダム強度比が3.0以上であるこ
とを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれか1項に
記載のアルミ系めっき鋼管。
1項に記載の鋼管を加工して製造した自動車部品。 (14)表面に1〜200μmの塗膜を有することを特
徴とする前記(13)に記載の自動車部品。
を800℃以上1200℃以下の温度範囲に加熱する際
し、図1に示すA(800℃,16分)、B(900
℃,9分)、C(1050℃,3分)及びD(1200
℃,1分)の各点を直線で結んだ領域よりも長時間側と
なるように加熱し、縮経率15以上、板厚変化率−20
〜+10%となる加工を施すことを特徴とするアルミ系
めっき鋼管の製造方法。
明する。まず、前記(1)に係る発明では、アルミめっ
きを施した鋼管を加熱してFe−Al系被覆層とし、被
覆層最表面からの深さ1〜3μmにおけるAl量を質量
%で3〜35%とする。35%を超えるとめっき層が脆
くなり、鋼管を自動車部品とするために曲げ成形やハイ
ドロフォーム成形などを施した際に、めっきの剥離やク
ラック等の欠陥を生じやすくなる。好ましくは25%以
下とする。この理由は必ずしも明らかではないが、Al
量が35%以下となると、被覆層が主としてFeおよび
Fe3Alによって構成され、しかもFe3Alの構造が
鉄と同じ体心立方(bcc)構造であるため被覆層の変
形能が高くなるためと考えられる。下限は特に限定理由
はないが、3%未満とするのは操業上困難で、また、大
きなコストアップを伴うばかりか、鋼管の耐食性や耐熱
性も劣化するので3%が実質的な下限である。
で上述のAl量の要件を満たすことは、Fe−Al系被
覆層全厚に渡って加工性が良好であり、めっき剥離等の
トラブルを低減することができる。なぜなら、被覆層表
面近傍よりも地鉄近傍の方がFe濃度が高くAl濃度が
低くなりやすいからである。
を測定するには、EPMAやGDS等の通常の分析方法
を用いればよい。EPMAにて点分析する場合には被覆
層最表面側の厚さ1μmから3μmの範囲について10
箇所以上無作為に行い、平均値をAl量と定義する。そ
の際、電子線の入射方向は、圧延方向または幅方向とほ
ぼ平行(10゜以内のずれは許容)とする。GDSで測
定する際には板厚方向に分析し、上記の範囲における平
均値をAl量と定義する。
−Al系被覆層と地鉄との界面からFe−Al系被覆層
側の少なくとも厚さ1μmの領域に於いて、質量%で
0.5〜15%のAlが存在する。Alはbccフェラ
イト鉄相中に固溶していることが好ましい。すなわち、
Alの濃化したbccフェライト鉄が界面近傍に存在す
ることで、鋼管の縮経加工中や製品を自動車用部品に成
形する際のめっきの剥離やクラック等の欠陥の発生を抑
制することができる、との新知見を得た。
間化合物を形成する可能性があり、地鉄との密着性が低
下し、縮径加工時や自動車部品に成形する際にめっきが
剥離する等の問題が生ずる恐れがあるのでこれを上限と
する。一方、Al濃度が0.5%未満では上記のような
効能を得ることは困難であるので0.5%を下限とす
る。該Al濃度の下限は、地鉄部分の板厚中心における
Al量よりも0.5%以上高いことが望ましい。すなわ
ち、地鉄の板厚中心部におけるAl量が1.0%であれ
ば、上記の領域では1.5%以上のAlが存在すること
が望まれる。
以内での任意の10点以上について行い、平均値をAl
量と定義する。測定手段は上記した被覆層表面近傍のA
l量の測定と同様である。該Fe−Al系被覆層と鋼管
地鉄との界面は光学顕微鏡観察によってすることで明確
に特定することが可能である。すなわち、2%程度のナ
イタールエッチングを施し光学顕微鏡にて観察した際
に、自由表面側の暗い領域がFe−Al系被覆層であ
り、さらに板厚中心側の明るい領域を地鉄と定義する。
また、地鉄側には上記エッチングによって結晶粒界が明
瞭に観察されるので、結晶粒界が認められる領域を地鉄
と判断しても良い。
被覆層中のSi量は、0.3〜15%とする。SiはA
lの融点を下げるためアルミめっき鋼管を溶融めっきで
製造する際にめっき浴の温度を下げることができる。ま
た、めっき層の耐熱性を高めるのにも有効である。0.
3%未満ではこのような効果を得ることが困難であるの
でこれを下限とし、一方、15%超としてもこれらの効
果は飽和するので15%を上限とする。1〜5%がより
好ましい範囲である。
界面からFe−Al系被覆層側の少なくとも厚さ1μm
の領域、すなわちAlの濃化したbccフェライト鉄部
に於いて、Siが地鉄部分の板厚中心付近における量よ
りも0.3%以上高い濃度で存在することはめっき剥離
等の欠陥の生成を抑制するために望ましい。界面近傍に
濃化したSiはAlと同様に鋼管の縮経加工中や製品を
自動車用部品に成形する際のめっきの剥離やクラック等
の欠陥の発生を抑制する効果がある。
の付着量は鋼管両面の合計で20〜200g/m2とす
る。20g/m2未満では鋼管表面に酸化スケールが生
じたり、鋼管の耐熱性や耐食性も劣化する。200g/
m2超ではめっき層中の化学組成が不均一となり易く、
縮経加工中にめっきの欠陥や縮経ロールへのかじりが発
生する場合がある。好ましくは40〜120g/m2以
下とする。
め耐食性や耐熱性にも優れていることは言うまでもな
い。さらに本発明のFe−Al系合金皮膜はFe濃度が
高いため融点が高く、スポット溶接などによっても被覆
層が実用上問題ない程度に保持される。
いて述べる。 C:高強度化に有効で、質量%で(以下同じ)0.00
05%以上の添加とするが、集合組織を制御する上では
過度の添加は好ましいものではない。また溶接性も劣化
するので上限を0.70%とする。0.001〜0.3
%が好ましく、0.002〜0.2%がさらに好ましい
範囲である。
能であり、要求される強度レベルに応じて添加すれば良
いが、過剰の添加はめっきのぬれ性や加工性の劣化を招
くばかりか良好な集合組織形成を阻害するので上限を
2.5%とした。下限を0.001%としたのは、これ
未満とするのが製鋼技術上困難なためである。
限を0.01%とした。また、過剰添加は延性の低下を
招くため上限を3.0%とした。
001%以上添加する。0.2%超を添加すると熱間圧
延や縮径加工時に欠陥が発生したり、成形性が劣化した
りするのでこれを上限とする。
く、熱間割れを防止するために0.05%以下とする。
好ましくは0.015%以下である。
く、加工性を劣化させるため上限を0.01%以下とす
る。0.005%以下がより好ましい範囲である。
々変化するが、少なくとも管軸方向のr値は成形性を確
保するため1.2以上とする。製造条件によっては軸方
向のr値が3.0を越える場合もある。r値の異方性に
ついては特に限定するものではない。r値の評価は、J
IS11号管状試験片またはJIS12号弧状試験片に
よって行う。そのときの歪量は伸び率15%で評価する
が、均一伸びが15%未満のときには、均一伸びの範囲
内の歪量で評価する。なお、弧状試験片はシーム部以外
から試料を採取することが望ましい。
分の限定理由について説明する。 Al:脱酸元素として有効であるほか、r値やn値等の
加工性を改善する効果も有するので必要に応じて0.0
01%以上添加する。一方、過剰添加は介在物の増加を
招き、めっき性や溶接性を損なうので2.5%を上限と
する。
あり鋼管の加工性を向上せしめる効果を有する。一方、
過剰添加は酸化物、硫化物や窒化物の多量晶出・析出を
招き清浄度が劣化して、延性を低下させてしまう上、メ
ッキ性を損なう。したがって、必要に応じてこれらの1
種または2種以上を合計で0.0001〜0.50%と
する。
Nb、Ti、Vは、これらの1種又は2種以上の合計で
0.001%以上の添加で炭化物、窒化物もしくは炭窒
化物を形成することによって鋼材を高強度化したり加工
性を向上することが出来るが、その合計が0.5%を越
えた場合には母相であるフェライト粒内もしくは粒界に
多量の炭化物、窒化物もしくは炭窒化物として析出し
て、延性を低下させることから、添加範囲を0.001
〜0.5%とする。Tiは、鋼管表面のAlめっき中の
Fe濃度を高めるのに効果的な元素であるので、Fe濃
度を高めたい場合には0.05%以上添加することが好
ましい。
強化や鋼材の高強度化に有効ではあるが、その添加量が
0.01%を越えるとその効果が飽和するばかりでな
く、必要以上に鋼板強度を上昇させ、加工性も低下させ
ることから、0.0001〜0.01重量%とした。
n:強化元素であり必要に応じてこれらの1種又は2種
以上の合計で,0.001%以上の添加とした。また、
過剰の添加は、コストアップや延性の低下を招くことか
ら、2.5%以下とした。
で、適量の添加は熱間加工性を向上させるが、過剰の添
加は逆に熱間脆化を助長させるため、必要に応じて0.
0001〜0.01%の範囲とした。
Pb、Sbなどをそれぞれ0.02%以下の範囲で含ん
でも、本発明の効果を失うものではない。
の限定理由について説明する。鋼管1/2板厚での板面
の{110}<110>〜{332}<110>の方位
群および{110}<110>のX線ランダム強度比:
ハイドロフォーム成形等を行う上で重要な特性値であ
る。板厚中心位置での板面のX線回折を行い、ランダム
試料に対する各方位の強度比(極密度)を求めたとき
の、{110}<110>〜{332}<110>の方
位群での平均が3.0以上とした。この方位群に含まれ
る主な方位は{110}<110>、{661}<11
0>、{441}<110>、{331}<110>、
{221}<110>、{332}<110>である。
これらの各方位のX線ランダム強度比(極密度)は{1
10],{100},{211},{310}極点図のう
ち3つ以上の極点図を基に級数展開法で計算した3次元
集合組織から求めればよい。
には、3次元集合組織のφ2=45°断面における(1
10)[1−10]、(661)[1−10]、(44
1)[1−10]、(331)[1−10]、(22
1)[1−10]、(332)[1−10]の強度で代
表させる。なお、本発明の集合組織は通常の場合、φ2
=45°断面において上記の方位群の範囲内に最高強度
を有し、この方位群から離れるにしたがって徐々に強度
レベルが低下するが、X線の測定精度の問題や鋼管製造
時の軸周りのねじれやX線試料作製の精度の問題などを
考慮すると、最高強度を示す方位がこれらの方位群から
±5°ないし10°程度ずれる場合も有りうる。{11
0}<110>〜{332}<110>方位群の平均X
線ランダム強度比とは、上記の各方位のX線ランダム強
度比の相加平均である。上記方位のすべての強度が得ら
れない場合には{110}<110>、{441}<1
10>、{221}<110>の方位の相加平均で代替
しても良い。中でも、{110}<110>は重要であ
り、この方位のX線ランダム強度比が4.0以上である
ことが特に望ましい。
0>方位群の平均強度比が3.0以上でかつ{110}
<110>の強度比が4.0以上であれば特にハイドロ
フォーム用鋼管としては更に好適であることは言うまで
もない。また、成形困難な場合には上記方位群の平均強
度比が4.0以上であること、{110}<110>の
強度比が5.5以上であることのうち少なくとも1つを
満たす事が望ましい。その他の方位、たとえば{00
1}<110>、{116}<110>、{114}<
110>、{113}<110>、{112}<110
>、{223}<110>などの強度は製造条件によっ
て種々変化するので特に限定しないがこれらの平均強度
が3.0以下であることが好ましい。
弧状試験片を切り出し、これをプレスして平板としX線
回折を行う。また、弧状試験片から平板とするときは、
試験片加工による結晶回転の影響を避けるため極力低歪
みで行うものとし、加工により導入される歪み量の上限
を10%以下で行うこととした。このようにして得られ
た板状の試料について機械研磨や化学研磨などによって
板厚中心付近まで研磨し、バフ研磨によって鏡面に仕上
げた後、電解研磨や化学研磨によって歪みを除去すると
同時に板厚中心層が測定面となるように調整する。な
お、鋼板の板厚中心層に偏析帯が認められる場合には、
板厚の3/8〜5/8の範囲で偏析帯のない場所につい
て測定すればよい。これは上述の成分分析の際も同様で
ある。
P法やECP法により測定しても差し支えない。ただし
その際には、最低でも500個以上の結晶粒の方位を測
定する必要がある。
たは板厚中心近傍の面におけるX線測定結果により規定
されるが、中心付近以外の板厚においても同様の集合組
織を有することが好ましい。しかしながら鋼管の外側表
面〜板厚1/4程度までは後述する縮径加工によるせん
断変形に起因して集合組織が変化し、上記の集合組織の
要件を満たさない場合もあり得る。なお、{hkl}<
uvw>とは上述の方法でX線用試料を採取したとき、
板面の法線方向の結晶方位が<hkl>で鋼管の長手方
向が<uvw>であることを意味する。
逆極点図や正極点図だけでは表すことができないが、た
とえば鋼管の半径方向の方位を表す逆極点図を板厚の中
心付近に関して測定した場合、各方位のX線ランダム強
度比は以下のようになることが好ましい。<100>:
2以下、<411>:2以下、<211>:4以下、<
111>:15以下、<332>:15以下、<221
>:20.0以下、<110>:30.0以下。また、
軸方向を表す逆極点図においては、<110>:3以
上、上記の<110>以外の全ての方位:3以下。
の限定理由について説明する。鋼管1/2板厚での板面
の{111}<110>のX線ランダム強度比:これも
鋼管の成形性にとって重要な特性値である。これが発達
している場合には、管軸方向のr値のみならず、その他
の方向のr値も良好となるため3.0以上であることが
望ましい。より好ましくは5.0以上である。
(12)に記載のいずれかの鋼管をハイドロフォーム成
形や曲げ成形によってフレーム、メンバー、補強部材な
どの自動車部品とするものである。
面に、電着塗装等の塗膜を1〜200μm有することと
する。塗膜厚みが1μmより薄いと耐食性などが劣化
し、200μmを超えるとコストアップとなるので、前
記の範囲とする。
製造にあたっては、高炉、電炉等による溶製に続き各種
の2次製錬を行いインゴット鋳造や連続鋳造を行い、連
続鋳造の場合には室温付近まで冷却することなく熱間圧
延するCC−DRなどの製造方法を組み合わせて製造し
てもかまわない。
熱間圧延を行っても良いのは言うまでもない。熱間圧延
の加熱温度は特に限定するものではなく、目的とする仕
上げ温度を具現化するのに適切な温度であれば良い。熱
延の仕上げ温度は通常のγ単相域のほかα+γ2相域や
α単相域、α+パーライト、α+セメンタイトのいずれ
の温度域で行っても良い。熱間圧延の1パス以上につい
て潤滑を施しても良い。また、粗圧延バーを互いに接合
し、連続的に仕上げ熱延を行っても良い。粗圧延バーは
一度巻き取っても再度巻き戻してから仕上げ熱延に供し
てもかまわない。熱延後の冷却速度や巻き取り温度は特
に限定するものではない。
圧延や50%以下の圧下率の冷間圧延を施した後、下記
のアルミめっきを施しても良い。また、熱間圧延鋼板に
圧下率90%以下の冷間圧延を行ったのち焼鈍およびア
ルミめっきを行っても良い。経済的には、焼鈍とアルミ
めっきをインラインで行う、たとえば連続溶融アルミめ
っきラインを用いるのが効率的である。
るものでなく、溶融めっき法をはじめとして電気めっき
法、真空蒸着法、クラッド法等が可能である。現在工業
的に最も普及しているのは溶融めっき法であり、通常め
っき浴としてAl−10%Siを使用することが多く、
これに不可避的不純物のFeが混入している。このとき
加熱後の合金層にSiが入る。これ以外の添加元素とし
て、Mn、Cr、Mg、Ti、Zn、Sb、Sn、C
u、Ni、Co、In、Bi、ミッシュメタル等があり
うるが、めっき層がAlを主体とする限り、適用可能で
ある。Zn、Mgの添加は赤錆を発生し難くするという
意味で有効であるが、蒸気圧の高いこれら元素の過剰な
添加はZn、Mgのヒューム発生、表面へのZn、Mg
起因の粉体状物質の生成等があり、Zn:60%以上、
Mg:10%以上の添加は望ましくない。
処理、後処理等については特に限定するものではない。
めっき前処理としてNi、Cu、Cr、Feプレめっき
等もありうるが、これも適用可能である。まためっき後
処理としては一次防錆、潤滑性を目的としてクロメート
処理、樹脂被覆処理等ありうるが、有機樹脂は加熱する
と消失してしまうため好ましくない。クロメート処理も
近年の6価クロム規制を考慮すると、電解クロメート等
の3価の処理皮膜が好ましい。その他、無機系のクロメ
ート以外の後処理も適用可能である。潤滑性を狙ってア
ルミナ、シリカ、MoS2等を予め処理することも可能
である。
を用いるが、TIG、MIG、レーザー溶接、UOや鍛
接等の溶接・造管手法等を用いることも出来る。たとえ
ば電縫溶接や溶接後のビード研削によって鋼管のシーム
部近傍のアルミめっきが欠落し地鉄が表面に出た場合に
は、溶射などの方法によって再度アルミめっきすること
が望ましい。これらの溶接鋼管製造に於いて溶接熱影響
部は必要とする特性に応じて局部的な均質熱処理を単独
あるいは複合して、場合によっては複数回重ねて行って
も良く、本発明の効果をさらに高める。この熱処理は溶
接部と溶接熱影響部のみに付加することが目的であっ
て、製造時にオンラインであるいはオフラインで施行で
きる。
ある。すなわちこれを800℃以上1200℃以下とす
る。この範囲外では上記集合組織を得ることは極めて困
難である。また、加熱温度が800℃未満では鋼管表面
のアルミめっき中のAl濃度が35%超となったり、地
鉄界面近傍のAl濃度が0.5%未満となったりする。
縮経加工中や鋼管を自動車用部品等に成形する際に上述
した種々の問題を誘発する。一方、加熱温度が1200
℃以上ではアルミめっきが蒸発し、表面性状が劣化する
のでこれを上限とする。より好ましくは、900℃以上
1050℃以下である。
00℃,16分)、B(900℃,9分)、C(105
0℃,3分)、D(1200℃,1分)の各点を直線で
結んだ領域よりも長時間の加熱を行う(図1参照)。こ
の領域よりも短時間側で加熱すると、被覆層がFeAl
3,Fe2Al5,Fe3Al,Fe2Al8Si等の複数の
金属間化合物によって構成される(4層または5層の場
合が多い)ため、縮径加工中や自動車部品に成形する際
にクラックを生じたり、剥離したりする。
ンダクションヒーターや電気炉等の炉加熱などで加熱す
ればよい。なお、鋼管を一旦500〜750℃で保持し
たのち、上記の温度、時間で加熱して縮経加工を行うこ
とは、良好な表面品位を得るのに好ましい。
率を15%以上、板厚変化率を−20%〜+10%とな
るように縮径する。縮径率が15%未満では良好な集合
組織が十分に発達しない。好ましくは25%以上、より
好ましくは45%以上縮径する。縮径率の上限は特に定
めることなく本発明の効果を得ることができるが、生産
性の観点から、90%以下とすることが好ましい。ま
た、縮径率を15%以上とするだけでは不十分で、板厚
変化を−20%〜+10%とすることが必須である。好
ましくは−20%〜0%とする。なお縮径率は、{(縮
径加工前の母管の直径−縮径完了後の鋼管の直径)/縮
径加工前の母管の直径}}×100(%)で、板厚変化
率は{(縮径完了後の鋼管の板厚−縮径加工前の母管の
板厚)/縮径加工前の母管の板厚}}×100(%)定
義される。
ために、700〜1100℃とすることが望ましい。縮
径完了温度は特に限定しないが、上記(11)記載の集
合組織を高めたい場合には、α+γ域、α単相域、α+
セメンタイト域、α+パーライト域のいずれかであるこ
とが望ましい。これは上記の縮径加工がα相に一定量以
上加わることが良好な集合組織を得るために必要だから
である。また、良好な延性を確保するためには縮経完了
温度を550℃以上とすることが好ましい。さらに上記
(12)に記載の集合組織を発達させる場合には、(A
r3−100)℃以上とすることが望ましい。また、縮
径時に潤滑を施すことは成形性向上の点で望ましい。
多段パスのラインを通板することによって行っても良い
し、ダイスを用いて引き抜いて行っても良い。縮経後に
径や形状を整えたり、機械的強度を調整するためにサイ
ザーを通しても良い。
フェライトを面積率で50%以上含有することが好まし
いが、フェライト以外の金属組織として、パーライト、
ベイナイト、マルテンサイト、オーステナイトおよび炭
窒化物等の組織を含んでも良い。
る。通常の熱延工程を経た、表1に示すような鋼成分の
酸洗済みの熱延鋼板(板厚2.0mm)を材料として、溶
融アルミめっきを行った。溶融アルミめっきは無酸化炉
−還元炉タイプのラインを使用し、最高到達温度を80
0℃とした。めっき後ガスワイピング法でめっき付着量
を両面で80g/m2に調節し、その後冷却し、ゼロス
パングル処理を施した。この際のめっき浴組成としては
Al−10%Si−2%Feであった。浴中のFeは浴
中のめっき機器やストリッフ゜から供給される不可避の
ものである。めっき外観は不めっき等なく良好であっ
た。
鋼板を電縫溶接にて造管した。このアルミめっき電縫鋼
管を種々の温度に加熱し、種々の時間保持した後、縮経
加工を行った。さらに縮経加工後の鋼管を用いてハイド
ロフォーム成形を行い、ハイドロフォーム成形性とハイ
ドロフォーム成形後の表面外観について評価した。
にして行った。前もって鋼管に10mmφのスクライブド
サークルを転写し、内圧と軸押し量を制御して、円周方
向への張り出し成形を行った。バースト直前での最大拡
管率を示す部位(拡管率=成形後の最大周長/母管の周
長)の軸方向の歪εΦと円周方向の歪εθを測定した。
この2つの歪の比ρ=εΦ/εθと最大拡管率をプロッ
トし、ρ=−0.5となる拡管率Reをもってハイドロ
フォームの成形性指標とした。
鋼管から弧状試験片を切り出し、プレスして平板として
行った。同平板の板厚7/16厚について(110)、
(200)、(211)、(310)極点図を測定し、
これらを用いて級数展開法により3次元集合組織を計算
し、φ2=45°断面における各結晶方位のX線ランダ
ム強度比を求めた。
から深さ2μmにおけるAlおよびSi濃度、Fe−A
l系被覆層と地鉄との界面からFe−Al系被覆層側の
1μm位置でのAl濃度およびSi濃度、機械的特性な
らびにハイドロフォーム成形性とハイドフォーム後の表
面外観を表2に示す。なお、表中のrLとは管軸方向の
r値を現している。これから明らかなとおり、適正な条
件で縮経加工した鋼管は表面性状が良好で加工性にも優
れ、かつハイドフォーム成形後にも良好な表面性状を有
することが分かる。
用して、Al−10%Si−2%Feをベースとしてめ
っきを行い、付着量を両面で10〜240g/m2まで
変化させた。ついでこれらを電縫溶接し、ビード切削部
には溶射によって上記組成を有するアルミめっきを補っ
た。これらの鋼管を大気雰囲気中で950℃にて15分
間加熱し、縮径開始温度850℃、完了温度730℃、
縮経率50%、板厚変化率−10%とする縮経加工を行
った。さらに実施例1と同様にしてハイドロフォーム成
形性を評価した。得られた鋼管のFe−Al被覆層の表
面側の2μm位置におけるAlおよびSi濃度、Fe−
Al系被覆と地鉄との界面からFe−Al系被覆層側の
1μm位置でのAl濃度、外観および機械的特性ならび
にハイドロフォーム成形性とハイドフォーム後の表面外
観を表3に示す。
正化することによって縮経加工後のみならずハイドフォ
ーム成形後にも良好な表面品位を保つことができる。
き鋼管および自動車部品を提供する。本発明は、今後の
自動車軽量化に大きく寄与するものと思われ、産業上の
寄与は大きい。
ある。
Claims (15)
- 【請求項1】 鋼管表面に、Fe−Al系被覆層を有
し、該Fe−Al系被覆層の表面側の深さ1〜3μmに
おいてAl濃度が質量%で3〜35%であり、該Fe−
Al系被覆層と地鉄との界面からFe−Al系被覆層側
の少なくとも厚さ1μmの領域において、Al濃度が質
量%で0.5〜15%であることを特徴とするアルミ系
めっき鋼管。 - 【請求項2】 Fe−Al系被覆層が質量%で0.3〜
15%のSiを含有することを特徴とする請求項1に記
載のアルミ系めっき鋼管。 - 【請求項3】 めっき付着量が鋼管両面の合計で20〜
200g/m2であることを特徴とする請求項1または
2記載のアルミ系めっき鋼管。 - 【請求項4】 鋼管が質量%で、 C :0.0005〜0.70%、 Si:0.001〜2.5%、 Mn:0.01〜3.0%、 P :0.001〜0.2%、 S :0.05%以下、 N :0.01%以下 を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、鋼管
の軸方向のr値が1.2以上であることを特徴とする請
求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミ系めっき鋼
管。 - 【請求項5】 鋼管が、更にAlを0.001〜2.5
質量%含有することを特徴とする請求項4に記載のアル
ミ系めっき鋼管。 - 【請求項6】 鋼管が、更にZr、CeおよびMgの1
種または2種以上を合計で0.0001〜0.5質量%
含むことを特徴とする請求項4または5に記載のアルミ
系めっき鋼管。 - 【請求項7】 鋼管が、更にTi、VおよびNbの1種
又は2種以上を合計で0.001〜0.5質量%以下含
むことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載
のアルミ系めっき鋼管。 - 【請求項8】 鋼管が、更にBを0.0001〜0.0
1質量%含むことを特徴とする請求項4〜7のいずれか
1項に記載のアルミ系めっき鋼管。 - 【請求項9】 鋼管が、更にSn、Cr、Cu、Ni、
Co、WおよびMoの1種又は2種以上を合計で0.0
01〜2.5質量%含むことを特徴とする請求項4〜8
のいずれか1項に記載のアルミ系めっき鋼管。 - 【請求項10】 鋼管が、更にCaを0.0001〜
0.01質量%以下含むことを特徴とする請求項4〜9
のいずれか1項に記載のアルミ系めっき鋼管。 - 【請求項11】 鋼管1/2板厚における板面の{11
0}<110>〜{332}<110>の方位群のX線
ランダム強度比の平均が3.0以上および/又は鋼板1
/2板厚における板面の{110}<110>のX線ラ
ンダム強度比が4.0以上であることを特徴とする請求
項1〜10のいずれか1項に記載のアルミ系めっき鋼
管。 - 【請求項12】 鋼管1/2板厚における板面の{11
1}<110>方位のX線ランダム強度比が3.0以上
であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項
に記載のアルミ系めっき鋼管。 - 【請求項13】 請求項1〜12のいずれか1項に記載
の鋼管を加工して製造した自動車部品。 - 【請求項14】 表面に1〜200μmの塗膜を有する
ことを特徴とする請求項13に記載の自動車部品。 - 【請求項15】 表面にAl系被覆層を有する鋼管を8
00℃以上1200℃以下の温度範囲に加熱する際し、
図1に示すA(800℃,16分)、B(900℃,9
分)、C(1050℃,3分)及びD(1200℃,1
分)の各点を直線で結んだ領域よりも長時間側となるよ
うに加熱し、縮経率15%以上、板厚変化率−20〜+
10%となる加工を施すことを特徴とするアルミ系めっ
き鋼管の製造方法。
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