JP2003286541A - 製造性と疲労特性に優れるバンドソー胴材用鋼および鋼板素材 - Google Patents

製造性と疲労特性に優れるバンドソー胴材用鋼および鋼板素材

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JP2003286541A
JP2003286541A JP2002092360A JP2002092360A JP2003286541A JP 2003286541 A JP2003286541 A JP 2003286541A JP 2002092360 A JP2002092360 A JP 2002092360A JP 2002092360 A JP2002092360 A JP 2002092360A JP 2003286541 A JP2003286541 A JP 2003286541A
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Masaru Fujiwara
勝 藤原
Satoshi Tagashira
聡 田頭
Terushi Hiramatsu
昭史 平松
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
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Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 製造性が良く、かつ「平面曲げ疲労特性」に
優れたメタルバンドソーの胴材用鋼を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.25〜0.45%,Si:0.0
5〜2.0%,Mn:0.10〜1.0%,P:0.020%以下,S:
0.010%以下,Cr:1.0〜2.5%,Mo:1.0〜2.5%,
V:0.05〜1.0,Ti:0.01〜0.1%,Nb:0.01〜0.1%
であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、場
合によってはさらにNi:0.1〜2.0%,B:0.0005〜0.0
1%を含有し、好ましくはO:30ppm以下であり、下記
(1)式で定義されるTi当量が0.05〜0.23であり、好まし
くは下記(2)式で定義されるA値が10〜14である、製造
性と疲労特性に優れるバンドソー胴材用鋼。 Ti当量=2×Ti+Nb ……(1) A値=8×C+4×Si+3×Mo+2×V+Cr ……(2)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、メタルバンドソー
の胴材に用いる鋼であって、優れた製造性と疲労特性を
発現するもの、およびメタルバンドソー胴材に使用する
鋼板素材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】メタルバンドソー(本明細書では単に
「バンドソー」という)は、一般に高価な「刃先材」と
低廉な「胴材」を溶接により一体化したものが使用され
ている。刃先材には高速度鋼が用いられ、1200℃前後で
の焼入れ処理と500〜600℃での焼戻し処理によってバン
ドソーに必要な強度・靱性が付与される。ただし、この
熱処理は、通常、胴材と一体化された後に行われる。つ
まり、刃先材といっしょに胴材も、上記熱処理を受ける
ことになる。
【0003】バンドソーは、エンドレスの帯に仕上げら
れ、張力が貼られた状態で被切断材に押し当てて使用さ
れる。その際、バンドソーには引張応力と曲げ・ねじり
の複合された複雑な応力が繰り返し付与される。したが
って、バンドソーの胴材は、高速度鋼に合わせた上記熱
処理を受けた後に、十分に高い強度および疲労特性を維
持しうるものでなければならない。
【0004】従来、胴材の疲労特性について主として
「板ばね特性」,「ねじり疲労特性」,あるいは「引張
疲労特性」に着目した研究が行われ、種々の胴材が開発
されている。例えば、板ばね特性を重視した胴材は特開
昭49−88713号,特開昭54−76414号に、ねじり疲労特性
を重視した胴材は特開昭58−37156号に、また引張疲労
特性を重視した胴材は特開平2−115353号,特開平8−26
0093号にそれぞれ開示されている。これらはCr,Mo,
V等の元素を添加した中炭素鋼をベースにしたものであ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】昨今、バンドソーを使
用する鋸盤には、他の工作機械と同様、小型化・高機能
化の要求がますます強くなっている。それに伴い、鋸盤
内におけるバンドソーの駆動ルートにもレイアウト上の
厳しい制約がかかり、駆動中、バンドソーは従来よりも
一層過酷な「曲げ」に曝されるようになってきた。この
ため、今後開発されるバンドソー胴材は、疲労特性の中
でも特に「曲げ疲労特性」において信頼性の高いもので
あることが望ましい。
【0006】他方、胴材の強度や疲労特性を向上させる
ために従来からCr,Mo,V等の添加が行われている。
しかし、これらの元素の添加は本質的に材料の硬度を高
め、胴材用の鋼板を製造する段階で「板割れ」等のトラ
ブルを引き起こす原因になっている。すなわち、バンド
ソーの胴材は、刃先材と接合される所定の形状を得るた
めに、熱間圧延,焼鈍,冷間圧延等の工程を経て製造さ
れる。大量生産現場では熱延後の各工程において連続ラ
インに通板する際、鋼板に曲げが加えられる箇所が数多
くある。Cr,Mo,V等を添加した鋼板は硬度が高くな
っているため、通常の鋼種と同様の条件で通板すると、
曲率の小さい曲げが加えられる箇所で板にクラックが入
ったり破断したりといったトラブルが生じやすい。この
ため、バンドソー胴材用の鋼板を製造する際は、ライン
速度を遅くしたり、クラックの起点になりうる熱延板表
面の疵を入念に除去したりする必要があり、製造性が低
下するという問題を抱えている。
【0007】このような製造性低下を回避するには、疲
労特性向上効果とのバランスをとりながらCr,Mo,V
等の添加量を抑制すればよい。特開平8−260093号には
これらの元素の添加量を比較的低減したものにおいて溶
接部や熱影響部での引張破断強度の良好な鋼材が開示さ
れている。しかしながら、バンドソー駆動中の厳しい曲
げに対する信頼性を向上させた「平面曲げ疲労特性」に
優れたものは、未だ出現していない。本発明は、かかる
現状に鑑み、バンドソー胴材の製造性を改善すると同時
に、鋸盤の小型化・高機能化に伴う昨今のニーズに対応
すべく胴材の「平面曲げ疲労特性」を顕著に向上させる
手法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】発明者らは、Cr,Mo,
V等を含有する中炭素鋼をベースに、製造性の改善と平
面曲げ疲労特性の向上を同時に実現する手法を種々検討
してきた。その結果、i) Si,Cr,Mo,Vの含有量範
囲を低めに限定して熱延鋼板を一定以下の硬度に軟質化
すると、熱延以降の下工程においてクラックや板割れの
発生が安定的に回避されること、ii) Si,Cr,Mo,
Vを低減することに起因するバンドソー熱処理後の硬度
低下や疲労特性低下は、TiとNbを複合添加することに
より解消し、しかも優れた「平面曲げ疲労特性」が得ら
れること、を見出すに至った。本発明はこれらの知見に
基づいて完成したものである。
【0009】すなわち、上記目的は、質量%で、C:0.
25〜0.45%,Si:0.05〜1.0%,Mn:0.10〜1.0%,
P:0.020%以下,S:0.010%以下,Cr:1.0〜2.0
%,Mo:1.0〜2.0%,V:0.05〜0.4%未満,Ti:0.0
1〜0.1%,Nb:0.01〜0.1%であり、残部がFeおよび
不可避的不純物からなり、場合によってはさらにNi:
0.1〜2.0%,B:0.0005〜0.01%を含有し、好ましくは
O:30ppm以下であり、下記(1)式で定義されるTi当量
が0.05〜0.23である、製造性と疲労特性に優れるバンド
ソー胴材用鋼によって達成される。 Ti当量=2×Ti+Nb ……(1)
【0010】また、上記成分組成において、下記(2)式
で定義されるA値を10〜14に制限した場合には、Si,
Cr,Mo,Vの許容上限をより高く規定することができ
る。すなわち、質量%で、C:0.25〜0.45%,Si:0.0
5〜2.0%,Mn:0.10〜1.0%,P:0.020%以下,S:
0.010%以下,Cr:1.0〜2.5%,Mo:1.0〜2.5%,
V:0.05〜1.0,Ti:0.01〜0.1%,Nb:0.01〜0.1%
であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、場
合によってはさらにNi:0.1〜2.0%,B:0.0005〜0.0
1%を含有し、好ましくはO:30ppm以下であり、下記
(1)式で定義されるTi当量が0.05〜0.23であり、かつ下
記(2)式で定義されるA値が10〜14である、製造性と疲
労特性に優れるバンドソー胴材用鋼を提供する。 Ti当量=2×Ti+Nb ……(1) A値=8×C+4×Si+3×Mo+2×V+Cr ……(2) ここで、(1)式のTi,Nb、および(2)式のC,Si,M
o,V,Crの箇所には質量%で表した各元素の含有量が
代入される。
【0011】さらに本発明では、バンドソー胴材に使用
する鋼板素材として、上記いずれかの成分組成を有する
鋼からなり、熱延ままの状態で硬さが500HV以下であ
る、製造性と疲労特性に優れる鋼板素材を提供する。こ
こで、「熱延ままの状態」とは、熱延後に熱処理を施し
ていない熱延鋼板の状態をいう。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明で提供する鋼は、一般的な
製鋼設備を用いて製造可能な中炭素鋼であり、従来のバ
ンドソー胴材と同様にCr,Mo,Vを含有するものを対
象とする。すなわち、高速度鋼より低廉な鋼でありなが
ら、高速度鋼に対応した1200℃での焼入れと500〜600℃
での焼戻しに供せられたときに、胴材として基本的に必
要な硬度や疲労特性を呈するものである。ただし、製造
性を改善するためにCr,Mo,V等の強化元素の含有量
を必要最小限に制限し、かつ、平面曲げ疲労特性を向上
させるためにTiとNbを複合添加した点に特徴を有す
る。また、本発明で提供する鋼板素材は、そのような鋼
を一般的な熱間圧延設備(多段式連続熱延ラインや巻取
装置を備えたリバース式熱延機),連続酸洗設備,冷間
圧延設備の他、機械構造用炭素鋼の鋼帯を製造する設備
を用いて製造できる。以下、本発明を特定するための事
項について説明する。
【0013】Cは、バンドソー胴材としての基本的な強
度と靱性を確保するために必要な元素である。Mo,V
等と結合して炭化物を形成し、これが焼戻し処理時に微
細に析出することで焼戻し軟化抵抗を高める。胴材にお
いては500〜600℃での焼戻し後に48HRC以上の硬度が要
求される。このためにCは0.25質量%以上確保する必要
がある。ただし、0.45質量%を超えると破壊の起点とな
るFe3Cが増加し、靱性と疲労特性が低下する。
【0014】Siは、溶鋼の脱酸剤として有効であり、
また、焼戻し軟化抵抗を高める。Siが0.05質量%未満
ではこのような効果は十分に発揮されない。しかし、2.
0質量%を超えると熱延板および冷延板が著しく硬質と
なり、製造性が劣化する。
【0015】Mnは、0.10質量%以上の含有で鋼の焼入
れ性向上に有効に作用する。ただし、1.0質量%を超え
ると靱性が劣化する。
【0016】Pは、焼入れ時に高温でオーステナイト粒
界に偏析して靱性を低下させる。P含有量はできるだけ
低減することが望ましい。実質的に悪影響を及ぼさない
P含有量の上限は約0.02質量%である。
【0017】Sは、鋼中でMnSを形成し亀裂の起点と
なりやすく、疲労特性の低下を招く。S含有量はできる
だけ低減することが望ましい。実質的に悪影響を及ぼさ
ないS含有量の上限は約0.01質量%である。
【0018】Crは、Mnと同様に鋼の焼入れ性向上に有
効であり、また焼戻し軟化抵抗を高める。このため、胴
材用鋼においては従来から重要視されている元素であ
る。これらの作用を十分に発揮させるために、本発明で
は少なくとも1.0質量%以上のCr含有を必要とする。し
かし、Crを過剰に添加すると熱延板が著しく硬化する
とともに、冷延後の焼鈍時に軟質化が阻害され、製造性
が劣化するので、Cr含有量は2.0質量%以下に制限する
ことが望ましい。ただし、後述するように、(2)式のA
値が10〜14の範囲に収まるようにC,Si,Mo,V,C
rの含有量をコントロールする場合は、Cr含有量は最大
2.5質量%まで許容される。
【0019】Moは、鋼の焼入れ性を向上させる。ま
た、焼戻し段階で微細なMo2Cを析出するので、二次硬
化により焼戻し後の硬さを増大させる作用がある。さら
に、このMo2C析出物の炭素源は主としてθ炭化物であ
るため、焼戻し時に旧オーステナイト粒界等に存在する
粗大なθ炭化物が減少してマトリックスが強化され、疲
労特性が向上する。このため、胴材用鋼においては従来
からMo添加が行われている。これらの効果を十分に得
るために本発明では1.0質量%以上のMo含有を必要とす
る。しかし、Crと同様、Moを過剰に添加すると熱延板
が著しく硬化するとともに、冷延後の焼鈍時に軟質化が
阻害され、製造性が劣化するので、Mo含有量は2.0質量
%以下に制限することが望ましい。ただし、後述するよ
うに、(2)式のA値が10〜14の範囲に収まるようにC,
Si,Mo,V,Crの含有量をコントロールする場合
は、Mo含有量は最大2.5質量%まで許容される。
【0020】Vは、Moと同様に、二次硬化により焼戻
し後の硬さを高めるので、Moを補完する意味で従来か
ら胴材用鋼に添加されている。また、Vは焼入れ時の結
晶粒微細化にも有効である。これらの効果は0.05質量%
未満では十分に得られない。しかし、多量のV添加は経
済的に不利であり、また熱延板を硬質化するので、Vは
0.4質量%未満の範囲で添加することが望ましい。後述
するように、(2)式のA値が10〜14の範囲に収まるよう
にC,Si,Mo,V,Crの含有量をコントロールする
場合は、V含有量は最大1.0質量%まで許容されるが、
この場合であっても0.4質量%未満とすることがより好
ましい。
【0021】TiとNbは、本発明において重要な添加元
素である。発明者らは、Cr,Mo,V等の元素を制限す
ることによって生じる焼戻し後の機械的特性低下(デメ
リット)を解消する手段として、製造性を劣化させない
ような元素の添加を種々試みてきた。その結果、Ti
とNbはともにC,Nと結合して炭窒化物を形成し、高
温加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制すること、
特にTiは、Nbと比べて高温でも溶体化しにくいた
め、加熱温度が高い場合には特に有効であること、こ
れらの元素の添加によって旧オーステナイト粒を微細化
すると、疲労寿命と靱性が向上し、前記デメリットは解
消されること、Ti,Nbの適量添加は製造性を阻害し
ないこと、などが確認された。ところが、発明者らはさ
らに詳細に検討を進めたところ、TiとNbを複合で
添加したときには、それらを単独で添加した場合に比
べ、「平面曲げ疲労特性」の顕著な改善効果が得られる
こと、を見出すに至った。この点は後述図1のデータで
実証されるとおりである。
【0022】そのような効果を発揮させるには、Ti,
Nbともにそれぞれ0.01質量%以上の含有が必要であ
る。また、Ti,Nbともに0.1質量%を超えて含有させ
ると粗大な介在物が生成し易くなる。したがって、T
i,Nbの含有量はそれぞれ0.01〜0.1質量%の範囲に規
制する必要がある。
【0023】また、TiとNbを複合添加する際、下記
(1)式で定義されるTi当量が0.05〜0.23の間になるよう
にそれぞれの含有量をコントロールしなければならな
い。 Ti当量=2×Ti+Nb ……(1) Ti,Nbのいずれもが少なくとも0.01質量%以上含まれ
るように、これらの元素を複合添加する場合において、
Ti当量値「0.05」を境に平面曲げ疲労特性は急激に変
化する(後述図1)。したがって、本発明ではTi当量
の下限を0.05に限定した。一方、Ti当量が大きくなる
と原料コストが高くなり、また介在物が生成しやすくな
るので、その上限は0.23とした。ただ、Ti当量が0.17
程度で平面曲げ疲労特性の向上効果は飽和するので、T
i当量は0.17以下の範囲でコントロールすることが一層
好ましい。なお、TiまたはNbを単独で添加したもので
は、Ti当量値「0.05」前後での劇的な特性変化は見ら
れない(後述図1)。
【0024】Niは、焼入れ性の向上および靱性の向上
に有効であるため、必要に応じて添加することができ
る。ただし、0.10質量%未満ではその効果はほとんど生
じないので、Niを添加する場合は0.10質量%以上とす
ることが望ましい。一方、多量に添加すると焼入れ・焼
戻し後の硬さが低下することがあるので、Ni含有量の
上限は2.0質量%とすることが望ましい。
【0025】Bは、焼入れ性を高めるとともに、粒界破
壊を抑制するうえで有効であるので、必要に応じて添加
することができる。ただし、その効果を十分に得るには
0.0005質量%以上の添加が望ましい。一方、B含有量が
0.01質量%を超えると却って靱性の低下をきたす。
【0026】Oは、鋼中で非金属介在物を形成し、鋼の
疲労特性を劣化させる。種々検討の結果、O量が30ppm
以下に低減されていれば疲労特性に悪影響を及ぼさない
ことがわかった。したがって、製鋼での負荷が許される
場合、Oは30ppm以下にコントロールすることが望まし
い。
【0027】発明者らの研究によれば、C,Si,Cr,
Mo,Vの含有量はバンドソー胴材に用いる鋼板の製造
性に大きく影響し、その寄与度は元素によって異なるこ
とが明らかになった。その寄与度を表したものが下記
(2)式で定義されるA値である。 A値=8×C+4×Si+3×Mo+2×V+Cr ……(2) 本発明においては、基本的にCr,Mo,Vの上限を厳し
く管理することにより、良好な製造性を確保することが
可能である(前述)。しかし、これらの元素の含有量範
囲を拡げ、かつ良好な製造性と機械的特性をより安定的
に両立させるためには、A値が10〜14の範囲になるよう
成分組成をコントロールすることが望ましいのである。
【0028】A値が10以上のとき、焼入れ・焼戻し後に
48HRC以上の硬さが安定して得られる。また、A値が14
以下のとき、Cr,MoおよびVの許容上限をそれぞれ2.
5質量%,2.5質量%および1.0質量%に拡張した場合で
あっても、熱延ままの鋼板の硬度を500HV以下に抑える
ことができ、良好な製造性が確保される。なお、Cr,
MoおよびVの許容上限がそれぞれ2.0質量%,2.0質量
%および0.4質量%未満に厳しく制限される場合におい
ても、A値が10〜14となる組成にコントロールすること
がより信頼性を高めるうえで有効である。
【0029】
【実施例】表1に供試鋼の元素分析値を示す。各鋼のス
ラブを熱間圧延して板厚3mmの熱延板を得た。熱延仕上
温度は約850℃、巻取温度は約580℃とした。熱延ままの
熱延板(熱延鋼板素材)について、硬さおよび衝撃値を
測定した。硬さは、ビッカース硬度計を用いて、荷重20
kgにて行った。衝撃値は、シャルピー衝撃試験機を用い
て、2mmVノッチ衝撃試験片(板厚3.0mm,ノッチ先端半
径0.25mm)について室温で行った。試験片の長手方向が
圧延方向に平行な方向となるようにした。
【0030】その後、各熱延鋼板素材を以下の工程に供
した。 熱延鋼板素材→焼鈍(730℃×20時間) →冷間圧延(3.0/2.2mm) →焼鈍(730℃×20時間) →冷間圧延(2.2/1.2mm) →焼入れ(1200℃×2分→60℃油冷) →焼戻し(550℃×60分→空冷→550℃×60分→空冷) ここで、熱延鋼板素材の硬さが500HVを超えたものは、
冷間圧延で割れが生じる危険性があることを別途実験に
より確認しているため、通常よりライン速度を落として
製造した。なお、上記焼入れおよび焼戻しの条件は、実
際のバンドソー製造工程で行われるのと同様とした。
【0031】焼入れ・焼戻し後の鋼板について、硬さ,
衝撃値および疲労寿命を測定した。硬さは、ロックウェ
ル硬度計(Cスケール)を用いて測定した。衝撃値はシ
ャルピー衝撃試験機を用いて、2mmVノッチ衝撃試験片
(板厚1.2mm,ノッチ先端半径0.25mm)について室温で
行った。疲労寿命は、JIS Z 2275に準拠した「平面曲げ
疲れ試験方法」により測定した。JIS 1号試験片を用
い、最大曲げ応力400N/mm2(両振り)の条件で繰り返し
応力を付与し、破断までの繰り返し数(Nf)により疲労
寿命を評価した。なお、衝撃試験片および疲労試験片
は、いずれも試験片の長手方向が圧延方向に平行な方向
となるようにした。これらの結果を表2に示す。
【0032】各元素の含有量が請求項1の規定範囲にあ
り、かつ前記(1)式で定義されるTi当量が0.05〜0.23の
範囲になるようにTiとNbを複合添加した発明例K5,
K6,K8,R〜Vの熱延焼鈍板は、硬さが500HVを下回
って軟質であり、室温での衝撃値も30J/cm2以上を維持
していたことから、連続ラインを用いた大量生産現場に
おいて板割れやクラックを生じることなく一般的な鋼種
と同様の高い生産性をもって製造可能である。また、こ
れらの鋼の焼入れ・焼戻し後の鋼板は、48HRC以上の硬
さを呈し軟化抵抗は十分に高く、室温での衝撃値も30J/
cm2以上であるから取り扱い性に問題はなく、平面曲げ
疲労特性も疲労寿命Nfが35×104回を超えていることか
らバンドソー胴材として優れた耐久性を有していると言
える。
【0033】また、Cr,Mo,あるいはVの含有量が高
いが、前記(2)式で定義されるA値が10〜14の範囲にコ
ントロールされた発明例H〜Jも、他の発明例と同様に
胴材としての優れた特性を有していた。
【0034】これに対し、比較例AはTi当量が低いた
め疲労特性が不十分であり、C,Cr,Moが少ないため
焼入れ・焼戻し後の硬さが不足した。比較例BはTi当
量が低いため疲労特性が劣り、C量が多いため熱延鋼板
素材および焼入れ・焼戻し後の鋼板の衝撃値が低かっ
た。比較例C〜EはCr,Mo,あるいはVが過多である
ため疲労特性は高いものの、熱延鋼板素材の硬さが高く
衝撃値が低いため製造性に劣った。比較例FはSiが高
く、かつA値が14を超えるので製造性に劣った。比較例
GはNiが過多であるため焼入れ・焼戻し後の硬さが低
く、疲労特性も低下した。比較例K1〜K3はTi当量が
低すぎるため疲労特性が悪かった。比較例K4,K9はT
i,Nbいずれかの単独添加であるため疲労特性が不十分
であった。比較例K7,K10はTi当量が0.23を超えて高
いものであり、各特性は良好であるが、疲労特性は飽和
してTi当量を高めたコスト上昇分が無駄になった。比
較例L,MはMoまたはVが少なすぎるので焼入れ・焼
戻し後の硬さが低く、また疲労特性に劣った。
【0035】図1は、表1のK1〜K10について、前記
(1)式で定義されるTi当量と平面曲げ疲労寿命の関係を
プロットしたものである。この図から以下のことがわか
る。 Ti当量が0.05を境に平面曲げ疲労特性は急激に変化
し、Ti当量0.05以上の領域において高い平面曲げ疲労
特性が安定して得られる。 Ti当量が0.05以上であってもTiまたはNb単独添加
では平面曲げ疲労特性の顕著な向上は達成できないこ
と。換言すれば、TiとNbを所定量(いずれも少なくと
も0.01質量%以上)複合添加した場合においてのみ、T
i当量0.05以上の領域で平面曲げ疲労特性の顕著な向上
効果が現れること。
【0036】図2は、表1の鋼について、前記(2)式で
定義されるA値と熱延鋼板素材(熱延まま)の硬さの関
係をプロットしたものである。A値が14以下の領域で安
定して500HV以下の熱延鋼板素材が得られることがわか
る。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、バンドソー駆動中の厳
しい曲げに対する信頼性を向上させた「平面曲げ疲労特
性」に優れた胴材であって、製造性の良好なものを安定
的に提供することが可能になった。したがって本発明
は、鋸盤の小型化・高機能化に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】Cr,Mo,Vを含有した中炭素鋼板におけるT
i当量と平面曲げ疲労寿命の関係を示すグラフである。
【図2】Cr,Mo,Vを含有した中炭素鋼板におけるA
値と熱延鋼板素材(熱延まま)の硬さの関係を示すグラ
フである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平松 昭史 広島県呉市昭和町11番1号 日新製鋼株式 会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、C:0.25〜0.45%,Si:0.0
    5〜1.0%,Mn:0.10〜1.0%,P:0.020%以下,S:
    0.010%以下,Cr:1.0〜2.0%,Mo:1.0〜2.0%,
    V:0.05〜0.4%未満,Ti:0.01〜0.1%,Nb:0.01〜
    0.1%であり、残部がFeおよび不可避的不純物からな
    り、下記(1)式で定義されるTi当量が0.05〜0.23であ
    る、製造性と疲労特性に優れるバンドソー胴材用鋼。 Ti当量=2×Ti+Nb ……(1)
  2. 【請求項2】 質量%で、C:0.25〜0.45%,Si:0.0
    5〜2.0%,Mn:0.10〜1.0%,P:0.020%以下,S:
    0.010%以下,Cr:1.0〜2.5%,Mo:1.0〜2.5%,
    V:0.05〜1.0,Ti:0.01〜0.1%,Nb:0.01〜0.1%
    であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下
    記(1)式で定義されるTi当量が0.05〜0.23であり、かつ
    下記(2)式で定義されるA値が10〜14である、製造性と
    疲労特性に優れるバンドソー胴材用鋼。 Ti当量=2×Ti+Nb ……(1) A値=8×C+4×Si+3×Mo+2×V+Cr ……(2)
  3. 【請求項3】 V含有量が0.05〜0.4%未満である請求
    項2に記載の鋼。
  4. 【請求項4】 さらにNi:0.1〜2.0%,B:0.0005〜
    0.01%を含有する請求項1〜3に記載の鋼。
  5. 【請求項5】 O含有量が30ppm以下である請求項1〜
    4に記載の鋼。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5に記載の鋼からなり、熱延
    ままの状態で硬さが500HV以下である製造性と疲労特性
    に優れるバンドソー胴材用鋼板素材。
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