JP2003279272A - 溶銑の攪拌式成分調整装置 - Google Patents

溶銑の攪拌式成分調整装置

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Takemasa Royama
武正 魯山
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(57)【要約】 【課題】 従来技術よりも低速の回転数において、鍋全
体に乱流を作り出し、効率よく成分調整が行えるように
した溶銑の攪拌式成分調整装置を提供すること。 【解決手段】 溶銑1に浸漬した攪拌部材2によって、
溶銑1を攪拌して成分調整処理を行うものにおいて、前
記攪拌部材2は、上下に配置された上部インペラ4と下
部インペラ5とを有し、前記上下部インペラ4,5は、
相対回動自在に設けられている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶銑の攪拌式成分
調整装置に関する。尚、本発明で言うところの「溶銑」
には、「溶鋼」も含むものとする。
【0002】
【従来の技術】この種の成分調整装置として、例えば、
特公昭42−12343号公報に記載のものがある。こ
の従来技術は、溶銑鍋内の溶銑に脱硫剤を添加し、前記
溶銑鍋内径の1/10〜1/3の代表径を有するインペ
ラーを用いて溶銑浴面中央部を150〜300r.p.
mの高速度で回転攪拌し、前記溶銑浴面中央部に生じた
渦流陥没部に前記脱硫剤を巻き込ませて前記溶銑を脱硫
するものであった。
【0003】この従来のものは、インペラを高速回転さ
せるため、鍋の周囲部の溶銑浴表面が盛り上がり、溶銑
が漏れ出る危険があったので、鍋を大型化する必要があ
った。そこで、特開昭61−223115号公報に記載
の如く、溶銑中に成分調整剤を添加するに際し、溶銑を
機械的に攪拌し、溶銑の流れを形成すると共に、この流
れ中に障害物を設け、該障害物の後方に惹起される乱流
中へ成分調整剤を添加する方法が提案されている。
【0004】しかし、この方法においても、攪拌のため
のインペラーの回転数は、120r.p.mと、かなり
高速であった。また、特開平4−99212号公報に
は、溶銑を収容する容器中に出入り自在に設置した回転
軸と、該回転軸下方に上下2段にして設けた前記溶銑を
攪拌するインペラー翼とを備えたことを特徴とする溶銑
の脱硫装置が開示されている。この従来技術でも、イン
ペラーの回転数は、130〜150r.p.mと高速で
あった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、前
記従来技術よりも低速の回転数において、鍋全体に乱流
を作り出し、効率よく成分調整が行えるようにした溶銑
の攪拌式成分調整装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明は、次の手段を講じた。即ち、本発明の特徴
とするところは、溶銑に浸漬した攪拌部材によって、溶
銑を攪拌して成分調整処理を行うものにおいて、前記攪
拌部材は、上下に配置された上部インペラと下部インペ
ラとを有し、前記上下部インペラは、相対回動自在に設
けられている点にある。前記上下部インペラは同一軸心
上に配置され、前記下部インペラは溶銑中に配置され、
前記上部インペラは溶銑表面を介して上下に配置され、
下部インペラは上部インペラよりも高速回転可能に設け
られているのが好ましい。
【0007】前記上部インペラは、回転しないものとさ
れているのが好ましい。前記上下部インペラは、互いに
反対方向に回動自在に設けられることができる。前記攪
拌部材は、溶銑を収容する溶銑鍋に対して、相対的に昇
降自在設けられているのが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図
面に基づき説明する。図1,2において、溶銑の攪拌式
成分調整装置は、溶銑1に成分調整材を添加し、溶銑1
に浸漬した攪拌部材2によって溶銑1を攪拌し、前記成
分調整剤を溶銑内に巻き込み、溶銑1の成分を調整する
ものである。成分調整の一例として、脱硫処理が挙げら
れる。前記溶銑1は、溶銑鍋3に収容されている。溶銑
鍋3の内面は耐火物により覆われている。
【0009】前記攪拌部材2は、上下に配置された上部
インペラ4と下部インペラ5とを有する。前記下部イン
ペラ5は、垂直方向に配置された回転軸6の下端に固定
され、該回転軸6の周方向90度位置に配置された四枚
羽根により構成されている。この下部インペラ5の表面
は耐火物で覆われている。前記上部インペラ4は、前記
回転軸6に同軸心で相対回転自在に外嵌された筒軸7の
外周面に固定され、該筒軸の周方向90度位置に配置さ
れた四枚羽根により構成されている。
【0010】前記上部インペラ4の羽根下端と、下部イ
ンペラ5の羽根上端との間には、所定の間隔が形成され
ている。この間隔には適正値があり、図例では200m
mとされている。前記回転軸6は、図示省略の駆動装置
により回転駆動されるよう構成されている。この回転軸
6の回転数は可変とされ、また、正逆回転可能とされて
いる。前記筒軸7は、回転しないように固定されてい
る。前記上下部インペラ4,5を有する攪拌部材2と溶
銑鍋3とは、相対的に昇降自在とされている。この実施
の形態では、図示省略の昇降装置により、攪拌部材2が
溶銑鍋3に対して昇降自在に構成されている。
【0011】そして、前記攪拌部材2の下降位置におい
て、回転軸6は溶銑鍋3の中心に位置し、前記下部イン
ペラ5は溶銑中に配置され、前記上部インペラ4は溶銑
表面を介して上下に配置される。上部インペラ4の羽根
の上端は、溶銑鍋3の上端よりも上方に位置している。
従って、図3に示すように、上部インペラ4の羽根の上
下方向の長さは、下部インペラ5の羽根の同長さよりも
長くされている。上部インペラ4の羽根の厚みは、下部
インペラ5の羽根の厚みよりも薄い。上部インペラ4の
羽根の外径と下部インペラ5の羽根の外径は略同じとす
るのが好ましい。
【0012】図4,5に示すように、前記構成の溶銑の
攪拌式成分調整装置によれば、上部インペラ4は静止
し、下部インペラ5が所定の回転数で回転する。下部イ
ンペラ5によって、溶銑鍋3の溶銑1に回転運動が付与
される。しかし上部インペラは、静止しているので、図
4に示すように、上部インペラ4の4枚の静翼で仕切ら
れた領域では、渦が生じる。渦は、流れを下方に巻き込
む。従って、溶銑浴表面に添加された脱硫剤などの成分
調整剤は、図5に示すように、前記渦に巻き込まれて下
降し、下降してきた脱硫剤は、ここで回転する下部イン
ペラ5に吸い込まれて、放射状に鍋周囲へと広がり、溶
銑内に均一に分布することになる。
【0013】図6に示すものは、下部インペラ5の回転
数に対する溶銑鍋中の溶銑浴表面の盛り上がり高さを調
べたものである。溶銑浴表面に於いては、上部インペラ
4の静翼が、溶銑1の回転流れを邪魔する抵抗体として
作用しているので、溶銑浴表面における旋回流れは、上
部インペラ4がない場合と比較すると弱くなっている。
従って、図に示すように、溶銑鍋周囲での溶銑1の盛り
上がり高さは、上部インペラ4が設置されている方が低
くなっている。図7に示すものは、前記装置と同じ構成
において、溶銑鍋を透明体で形成して、溶銑として水を
用いた水モデル実験により、模擬脱硫剤の巻き込み数を
調べた結果をグラフにしたものである。この実験では、
上部インペラを設けない場合と、設けた場合とを、下部
インペラの各種の回転数において比較した。
【0014】図7より、上部インペラを設けることによ
り、下部インペラの回転数を、従来のものより略半減さ
せることが出来ることが判った。さらに、図8に示すよ
うに、下部インペラ5を回転させるのに必要なトルク
は、同一インペラ回転数では、抵抗となる上部インペラ
4がある場合の方が大きくなるが、インペラ回転数が半
分ですむことを考えると、上部インペラ4を設置した方
が少ないトルクですむことが分かる。尚、図6〜8にお
ける「浸漬深さ」とは、インペラの静止状態での液面か
ら下部インペラ5の上端までの距離を意味する。
【0015】本発明の実施の形態によれば、下部インペ
ラ5の回転数は、60r.p.mで十分実用化できるも
のである。また、従来技術よりもインペラ5を回転させ
るトルクが小さくて済み、回転に要する動力を削減でき
る。さらに、従来技術よりも、溶銑1の盛り上がり高さ
を低く抑えることが出来、溶銑鍋3を小型化軽量化でき
る。本発明は、前記実施の形態に示したものに限定され
るものではない。例えば、成分調整は、脱硫処理に限ら
ず、脱Mn、脱Si処理などに適用可能である。
【0016】また、上部インペラ4は、静止したものに
限らず、回転するものであっても良い。その場合は、上
部インペラ4よりも下部インペラ5が高速回転するもの
とする。上部インペラ4は、下部インペラ5に対して逆
回転するものであっても良い。逆回転する方が強い渦を
形成することが出来る。また、攪拌部材2の回転方向
は、間欠的に正逆を繰り返すものであっても良い。攪拌
部材2の上下方向位置は固定で、溶銑鍋3が昇降自在と
されたものであっても良い。上下部インペラ4,5の羽
根の数は、4枚に限定されるものではなく、それ以下、
またはそれ以上の枚数であっても良い。又、下部インペ
ラを上下複数段に分割することができる。そして、それ
ぞれの回転数や回転方向を可変とすることができる。
【0017】
【発明の効果】本発明によれば、従来よりも低速回転で
溶銑を攪拌しても、成分調整剤を溶銑中に均一に分散さ
せることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施の形態を示す溶銑の攪拌
式成分調整装置の断面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線矢視図である。
【図3】図3は、攪拌部材の斜視図である。
【図4】図4は、上部インペラによる渦形成を説明する
説明図である。
【図5】図5は、成分調整剤が下降して溶銑中に分散す
る説明図である。
【図6】図6は、上部インペラがある場合とない場合に
おいて、溶銑表面の盛り上がり高さを下部インペラの回
転数により比較したグラフである。
【図7】図7は、上部インペラがある場合とない場合に
おいて、模擬粒子の水中への巻き込み数を下部インペラ
の回転数により比較したグラフである。
【図8】図8は、上部インペラがある場合とない場合に
おいて、下部インペラの回転トルクを下部インペラの回
転数により比較したグラフである。
【符号の説明】
1 溶銑(溶鋼を含む) 2 攪拌部材 4 上部インペラ 5 下部インペラ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 井上 健 兵庫県加古川市金沢町1番地 株式会社神 戸製鋼所加古川製鉄所内 Fターム(参考) 4K014 AA01 AA02 AC08 AD23 4K056 AA06 CA02 EA12

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶銑に浸漬した攪拌部材によって、溶銑
    を攪拌して成分調整処理を行うものにおいて、 前記攪拌部材は、上下に配置された上部インペラと下部
    インペラとを有し、前記上下部インペラは、相対回動自
    在に設けられていることを特徴とする溶銑の攪拌式成分
    調整装置。
  2. 【請求項2】 前記上下部インペラは同一軸心上に配置
    され、前記下部インペラは溶銑中に配置され、前記上部
    インペラは溶銑表面を介して上下に配置され、下部イン
    ペラは上部インペラよりも高速回転可能に設けられてい
    ることを特徴とする請求項1記載の溶銑の攪拌式成分調
    整装置。
  3. 【請求項3】 前記上部インペラは、回転しないものと
    されていることを特徴とする請求項1又は2記載の溶銑
    の攪拌式成分調整装置。
  4. 【請求項4】 前記上下部インペラは、互いに反対方向
    に回動自在に設けられている請求項1又は2記載の溶銑
    の攪拌式成分調整装置。
  5. 【請求項5】 前記攪拌部材は、溶銑を収容する溶銑鍋
    に対して、相対的に昇降自在設けられていることを特徴
    とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の溶銑の攪拌
    式成分調整装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006265625A (ja) * 2005-03-24 2006-10-05 Jfe Steel Kk 溶融金属の精錬方法
CN113481344A (zh) * 2021-07-09 2021-10-08 攀钢集团西昌钢钒有限公司 一种脱硫搅拌头
CN114058765A (zh) * 2021-11-18 2022-02-18 马鞍山钢铁股份有限公司 一种用于转炉炼钢前铁水kr机械搅拌脱硫的搅拌器

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