JP2003276078A - ポリ乳酸系生分解性樹脂シートの熱成形方法 - Google Patents

ポリ乳酸系生分解性樹脂シートの熱成形方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ポリ乳酸系生分解性樹脂シートの熱成形方法
を改良して、容器形状の開口縁の部分や、湾曲した部分
などに成形不良が起こらない熱成形方法とし、シート面
に沿って二軸方向に分子配向したポリ乳酸系生分解性樹
脂シートを使用する場合や、さらに紙などと樹脂シート
をラミネートした場合にも絞り加工によって容器の縁も
精密に成形される熱成形法にすることである。 【解決手段】 シート面に沿って二軸方向に分子配向し
たポリ乳酸系生分解性樹脂シートまたはこれを層構成素
材とする積層シートを、ヒータで加熱し、次いで加熱し
た金型に圧接させ、次いで冷却して成形する熱成形方法
において、前記金型温度を100〜140℃とし、前記
ヒータの温度を120〜160℃にして圧空成形するこ
とを特徴とするポリ乳酸系生分解性樹脂シートの熱成形
方法とする。また、前記金型温度を100〜160℃と
して真空成形し、そのまま5秒以上ヒートセットするポ
リ乳酸系生分解性樹脂シートの熱成形方法とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、シート状に成形
されたポリ乳酸系生分解性樹脂を容器などに2次加工す
るポリ乳酸系生分解性樹脂シートの熱成形方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】シート状(フィルム状の薄いシートも含
む。)熱可塑性樹脂を二次成形する場合の代表的な成形
方法として、シートを予熱して軟化させ、次いでこれを
型に当てて型とシートの間を真空にして型とシートを密
着させ、この状態で冷却して固化する真空成形法があ
り、また圧縮空気をシートの外から吹き付けてシートを
型面に密着させ、そのまま冷却して固化する圧空成形法
などが知られている。
【0003】一方、熱可塑性樹脂の種類として、土中や
水中で微生物によって生分解可能なポリ乳酸系生分解性
樹脂が知られており、このものは廃棄された際の自然界
への悪影響が少ないので環境保全に資するものである。
【0004】ポリ乳酸系の樹脂は、ポリ乳酸、乳酸とそ
の他のヒドロキシカルボン酸との共重合体があり、ポリ
乳酸はラクタイドと呼ばれる乳酸の環状2量体から合成
され、前記共重合体は、乳酸の環状2量体であるラクタ
イドとヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体から
合成される。
【0005】特開平6−298236号公報には、ポリ
乳酸、または乳酸とその他のヒドロキシカルボン酸との
共重合体からなるポリ乳酸系樹脂製の食品容器の製造方
法として、圧空成形または真空成形を採用するとき、ヒ
ータによって55〜90℃に加熱し、金型温度を50〜
70℃に設定することが記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記した従来
のポリ乳酸系生分解性樹脂シートの熱成形方法は、容器
の縁の部分や、湾曲させる特定の部分に成形不良が起こ
りやすく、特に紙などと樹脂シートをラミネートした場
合には、ポリ乳酸系生分解性樹脂シートの延びや接着性
が低下するので、容器の縁になるべき部分に皺が形成さ
れたり、細部に成形不良箇所が生じる場合があった。
【0007】このような二次成形が困難になる主な原因
は、容器の開口縁の部分や曲面に局部的に分子配向が周
囲より高められて、内部応力が溜まり、成形し難い部分
が部分的に形成されることであるとも考えられる。
【0008】特に、シート面に沿って二軸方向に分子配
向したポリ乳酸系生分解性樹脂シートは、無配向のもの
に比べて耐熱性が改善されているので、通常よりも熱成
形加工が困難である。ポリ乳酸系生分解性樹脂シートを
紙等の塑性材からなるシートとラミネートして積層体を
形成すると、塑性シートが成形時の延びを妨げるので絞
り加工はより困難になる。
【0009】そこで、この発明の課題は、上記した問題
点を解決して、ポリ乳酸系生分解性樹脂シートの熱成形
方法を改良して、容器の開口縁の部分、その他の湾曲し
た部分などに成形不良が起こり難い熱成形方法とし、特
に紙等と樹脂シートをラミネートして絞り加工を行なっ
ても縁や湾曲部分に成形不良がなく、容器全体を精密に
成形できる熱成形法とすることである。
【0010】また、この発明の課題は、特にシート面に
沿って二軸方向に分子配向したポリ乳酸系生分解性樹脂
シートに対する熱成形方法においても、上記した同じ課
題を解決することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、この発明のポリ乳酸系生分解性樹脂シートの熱成
形方法においては、シート面に沿って二軸方向に分子配
向したポリ乳酸系生分解性樹脂シートまたはこれを層構
成素材とする積層シートを、ヒータで加熱し、次いで加
熱した金型に圧接して成形する熱成形方法において、前
記金型温度を100〜140℃とし、前記ヒータの温度
を120〜160℃にして圧空成形することを特徴とす
るポリ乳酸系生分解性樹脂シートの熱成形方法としたの
である。
【0012】上記した方法によれば、二軸方向に分子配
向したポリ乳酸系生分解性樹脂シートまたはこれを層構
成素材とする積層シートにおける皺などが形成されるよ
うな成形不良部分に対して、金型温度を100〜140
℃とし、前記ヒータの温度を120〜160℃にして圧
空成形することにより、局部的に分子配向が高い部分に
ついても成形を確実に行なうことができ、しかもそれ以
外の部分の成形性や成形効率を阻害しない熱成形方法と
なる。
【0013】また、前記の課題を解決するために、ポリ
乳酸系生分解性樹脂シートまたはこれを層構成素材とす
る積層シートを、ヒータで加熱し、次いで加熱した金型
に圧接して成形する熱成形方法において、前記金型温度
を100〜160℃にして真空成形し、そのまま5秒以
上ヒートセットすることを特徴とするポリ乳酸系生分解
性樹脂シートの熱成形方法とすることもできる。
【0014】上記したような熱成形方法では、金型温度
を100〜160℃として真空成形することにより、ほ
ぼ確実に局部的な分子配向の高い部分についても成形を
確実に行なうことができるようになり、しかもヒートセ
ットにより成形品の形態が安定するので、成形性や成形
効率に優れる。
【0015】
【発明の実施の形態】この発明に用いる分子配向したポ
リ乳酸系生分解性樹脂シートは、ポリ乳酸系生分解性樹
脂シートを二軸延伸などの周知の方法で分子配向させた
ものであり、公知のフィルム延伸法や、これに加えて電
場や磁場を利用した分子配向法を採用することもでき
る。
【0016】未延伸シートを延伸する場合の倍率は、縦
方向および横方向ににそれぞれ1.5〜5倍程度の範囲
であり、50〜90℃程度で延伸すると薄肉でも強度の
高いシートを製造することができる。このような延伸に
より、得られたシートは、厚みが均一になり、分子配向
して結晶化しているので、経時によって球晶が生じず不
透明化や脆化が起こらない。
【0017】ポリ乳酸系生分解性樹脂は、ポリ乳酸もし
くは乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、ま
たはこれらを主成分とする混合物からなる樹脂であり、
予め樹脂製品に設定されている使用期間を経た後に、土
中または水中において微生物などにより自然に加水分解
が進行し、原形が残らない程度まで分解されるような生
分解性樹脂である。
【0018】前記の乳酸としては、L型、D型の何れで
もよい。ヒドロキシカルボン酸の例としては、グリコー
ル酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−
ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロ
キシカプロン酸などが代表例である。これらは縮合重合
法や開環重合法などを採用して重量平均分子量6万〜7
0万程度に重合させることが、均一な膜厚で効率よくシ
ートを製造するために好ましい。
【0019】また、このようなポリ乳酸系生分解性樹脂
シートを層構成素材とする積層シートは、紙などの生分
解性の層構成素材に対して周知のラミネート法により接
着一体化することができる。ラミネート法としては、ド
ライラミネート、ウェットラミネート、ホットメルトラ
ミネートなどを採用することもできる。接着剤を使用す
る場合には、生分解性を阻害しないように、デンプンな
どの炭水化物や膠、ゼラチン、カゼインなどの蛋白質類
や未加硫天然ゴムなどの天然材料を採用することが好ま
しい。
【0020】このようにして得られた配向したポリ乳酸
系生分解性樹脂シートまたはこれを層構成素材とする積
層シートは、ヒータで120〜160℃に加熱し、次い
で100〜140℃に加熱した金型に圧接させ、次いで
冷却して熱成形する。
【0021】上記の温度範囲で加熱する理由は、これら
の温度範囲未満では、局部的に分子配向が高い部分につ
いて成形を確実に行なうことができないからであり、こ
れらの温度範囲を超える高温で熱成形すると、所定部分
以外の部分の成形性や成形効率を阻害するからである。
【0022】
【実施例】〔実施例1〕融点175℃、重量平均分子量
18万のポリ乳酸を30mmφの単軸エクストルーダー
にて200℃でTダイから押出し、膜厚150μmの未
延伸シートを作成した。
【0023】このシートを長手方向に2倍にロール延伸
し、次いで幅方向にテンターで3倍に延伸すると共にテ
ンター内で100℃で30秒熱処理して二軸方向に分子
配向したポリ乳酸系生分解性樹脂シートを作成した。
【0024】このシートの上面と下面をヒーターで13
0〜140℃で加熱し、軟化したシートに対して120
〜130℃に加熱した方形状トレイ型の雌型を当てて圧
空成形し、シートのガラス転移点(58℃)以下の40
℃程度に冷却し脱型した。
【0025】得られた容器は、透明性があると共にトレ
ーの縁などの局部的に分子配向が高い部分についても成
形を確実に行なうことができた。
【0026】〔実施例2〕実施例1で作製したポリ乳酸
系生分解性樹脂シートを上質紙にラミネートした。ラミ
ネートは、予め、ポリ乳酸系生分解性樹脂シートの片面
にポリウレタン系溶剤型接着剤を1μm厚にスプレー塗
布し、60℃のオーブン中で3分間乾燥し、これを上質
紙とローラーで圧着しながらはり合わせ、40℃で24
時間エージングすることにより行なった。
【0027】このようにして得られた積層シートの上面
と下面をヒーターで140〜150℃で加熱し、軟化し
たシートに対して125〜135℃に加熱した方形状ト
レイ型の雌型を当てて圧空成形し、シートのガラス転移
点(58℃)以下の40℃程度に冷却してから脱型し
た。
【0028】得られた容器は、透明性があると共にトレ
ーの縁などの局部的に分子配向が高い部分についても成
形を確実に行なうことができた。
【0029】〔実施例3〕実施例1と全く同様にして二
軸方向に分子配向したポリ乳酸系生分解性樹脂シートを
作成した。
【0030】このシートの上面と下面をヒーターで13
0〜140℃で加熱し、軟化したシートに対して120
〜130℃に加熱した方形状トレイ型の雌型を当てて真
空成形し、そのまま7秒間ヒートセットし、次いでシー
トのガラス転移点(58℃)以下の40℃程度に冷却し
てから脱型した。
【0031】得られた容器は、透明性があると共にトレ
ーの縁などの局部的に分子配向が高い部分についても皺
がまとまって容器本体と一体化しており、容器の成形を
確実に行なうことができた。
【0032】〔実施例4〕実施例2で作製した積層シー
トの上面と下面をヒーターで140〜150℃で加熱
し、軟化したシートに対して145〜155℃に加熱し
た方形状トレイ型の雌型を当てて真空成形し、そのまま
10秒間ヒートセットし、次いでシートのガラス転移点
(58℃)以下の40℃程度に冷却してから脱型した。
【0033】得られた容器は、透明性があると共にトレ
ーの縁などの局部的に分子配向が高い部分についても皺
がまとまって容器本体と一体化しており、成形を確実に
行なうことができた。
【0034】
【発明の効果】この発明は、以上説明したように、分子
配向したポリ乳酸系生分解性樹脂シート、またはこれを
層構成素材とする積層シートを、所定温度に加熱し、次
いで所定温度に加熱した金型で圧空成形するので、局部
的に分子配向が高い部分についても成形を確実に行なう
ことができ、しかもそれ以外の部分の成形性や成形効率
を阻害しないようになり、特に紙などと樹脂シートをラ
ミネートしたシートを用いても容器の縁も精密に成形さ
れる熱成形法になるという利点がある。
【0035】また、金型温度を所定範囲として真空成形
し、そのまま所定時間ヒートセットするポリ乳酸系生分
解性樹脂シートの熱成形方法では、ほぼ確実に局部的な
分子配向の高い部分についても成形を確実に行なうこと
ができるようになり、しかもヒートセットにより成形品
の形態が安定するので、成形性や成形効率に優れた熱成
形方法になるという利点がある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F202 AA24 AC03 AG03 AK09 AR06 AR11 CA17 CB01 CB22 CN01 CN18 4F208 AA24 AC03 AG03 AR06 AR11 MA01 MA02 MB01 MB22 MG01 MG04 MG12 MK08 MK13 MK15

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シート面に沿って二軸方向に分子配向し
    たポリ乳酸系生分解性樹脂シートまたはこれを層構成素
    材とする積層シートを、ヒータで加熱し、次いで加熱し
    た金型に圧接して成形する熱成形方法において、 前記金型温度を100〜140℃とし、前記ヒータの温
    度を120〜160℃にして圧空成形することを特徴と
    するポリ乳酸系生分解性樹脂シートの熱成形方法。
  2. 【請求項2】 ポリ乳酸系生分解性樹脂シートまたはこ
    れを層構成素材とする積層シートを、ヒータで加熱し、
    次いで加熱した金型に圧接して成形する熱成形方法にお
    いて、 前記金型温度を100〜160℃にして真空成形し、そ
    のまま5秒以上ヒートセットすることを特徴とするポリ
    乳酸系生分解性樹脂シートの熱成形方法。
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