JP2003268579A - アルミニウム板の洗浄液およびその洗浄方法ならびに洗浄設備 - Google Patents

アルミニウム板の洗浄液およびその洗浄方法ならびに洗浄設備

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JP2003268579A JP2002066345A JP2002066345A JP2003268579A JP 2003268579 A JP2003268579 A JP 2003268579A JP 2002066345 A JP2002066345 A JP 2002066345A JP 2002066345 A JP2002066345 A JP 2002066345A JP 2003268579 A JP2003268579 A JP 2003268579A
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Shinsuke Murao
伸介 村尾
Katsuhisa Yamamoto
勝久 山本
Masanori Ikeda
昌則 池田
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルミニウム板の不良原因となる炭酸カルシ
ウムのスケール等の発生がなく、また、洗浄設備のメン
テナンス性にも優れた、アルミニウム板の洗浄液および
その洗浄方法ならびに洗浄設備を提供する。 【解決手段】 カルシウム含有量が5ppm以下である
水に、分子量が500〜20000の分散剤を添加量1
〜100ppmで添加したアルミニウム板の洗浄液およ
びその洗浄方法ならびに洗浄設備として構成した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミニウム板を
洗浄する際に使用する洗浄液およびその洗浄方法ならび
に洗浄設備に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、アルミニウムまたはアルミニウ
ム合金からなる板(以下、アルミニウム板と称す)を洗
浄する例として、圧延によって作製されたアルミニウム
板を洗浄する例がある。従来、圧延工程中にアルミニウ
ム板の性能の向上を目的として行なわれる焼鈍工程が含
まれるような場合、焼鈍工程前に圧延されたアルミニウ
ム板を洗浄設備によって洗浄している。そして、その洗
浄設備として、所定速度で搬送されるアルミニウム板の
上下方向に配置されたノズルから洗浄水を噴射してアル
ミニウム板の表面に残存した圧延油や微細なアルミニウ
ム粉を除去し、洗浄に使用した洗浄水は洗浄設備内を循
環、かつ微細なアルミニウム粉を濾過した後、洗浄水と
して再度使用する洗浄設備が使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記のような
洗浄水を循環して用いる洗浄設備の洗浄水としては、通
常、硬水あるいは軟水が使用されている。この硬水ある
いは軟水には微量のカルシウムが含まれているため、洗
浄設備の使用時間の経過と共に、洗浄設備の循環用パイ
プ内壁やタンク内壁等に多量の炭酸カルシウムのスケー
ル(炭酸カルシウムが析出したもの)が発生する。この
ようなスケールは、時間の経過と共に、循環用パイプ内
壁やタンク内壁等から剥がれ落ち、洗浄水により運ばれ
アルミニウム板の表面に付着することになる。
【0004】そして、圧延されたアルミニウム板を洗
浄、乾燥した後に連続的に焼鈍し、再度圧延するために
アルミニウム板をコイルに巻き取るような場合、アルミ
ニウム板表面に付着した炭酸カルシウムは乾燥により硬
くなり、アルミニウム板中に押し込まれ、表面欠陥とな
る。このため、巻き取られたコイル自体が全量不良品に
なると言った問題が発生している。
【0005】この対策として、洗浄設備内の循環用パイ
プ内壁やタンク内壁等に付着した炭酸カルシウムのスケ
ールを除去するため、例えば、循環用パイプやタンク内
を定期的に酸等で洗浄する方法が考えられる。しかし、
この方法では、洗浄設備内の酸洗浄の際に、洗浄設備の
前工程に設けられた圧延設備や、後工程に設けられた焼
鈍設備等を長時間停止する必要があり、また、洗浄には
大量の酸等が使用されるため危険である等の問題点が非
常に多い。したがって、従来の洗浄設備はメンテナンス
性に劣るものであった。
【0006】本発明は、このような問題点に鑑み成され
たものであり、アルミニウム板の不良原因となる炭酸カ
ルシウムのスケール等の発生がなく、また、洗浄設備の
メンテナンス性にも優れた、アルミニウム板の洗浄液お
よびその洗浄方法ならびに洗浄設備を提供することを目
的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記問題を解決するため
に、請求項1に記載の発明は、カルシウム含有量が5p
pm以下である水に、分子量が500〜20000の分
散剤を添加量1〜100ppmで添加したアルミニウム
板の洗浄液として構成したものである。
【0008】前記構成により、洗浄液中のカルシウム濃
度が低下して炭酸カルシウムのスケールの発生が抑制さ
れる。また、分散剤の分散効果によりアルミニウム粉と
水との反応が抑制、また反応物の凝集も抑制され、水酸
化アルミニウムの水和物の発生が抑制される。その結
果、洗浄設備内への炭酸カルシウムのスケールおよび水
酸化アルミニウムの水和物の付着が抑制される。
【0009】前記問題を解決するために、請求項2に記
載の発明は、前記分散剤が、ポリカルボン酸系重合体、
リグニンスルホン酸系重合体、ナフタレンスルホン酸系
重合体及びメラミンスルホン酸系重合体から選ばれた1
種又は2種以上の組み合わせから成る重合体であるアル
ミニウム板の洗浄液として構成したものである。
【0010】前記構成により、分散剤の分散効果がより
増して、アルミニウム粉と水との反応がさらに抑制、ま
た反応物の凝集もさらに抑制され、水酸化アルミニウム
の水和物の発生がさらに抑制される。その結果、洗浄設
備内への水酸化アルミニウムの水和物の付着がさらに抑
制される。また、洗浄設備内への炭酸カルシウムのスケ
ールの発生も抑制され、洗浄設備内への付着も抑制され
る。
【0011】前記問題を解決するために、請求項3に記
載の発明は、所定速度で搬送されるアルミニウム板の上
下方向から洗浄液を噴射してアルミニウム板の表面を洗
浄し、前記洗浄に使用された洗浄液を洗浄設備内で循環
し、かつ濾過して再度洗浄に利用するアルミニウム板の
洗浄方法において、前記洗浄液が、カルシウム含有量が
5ppm以下である水に、分子量が500〜20000
の分散剤を添加量1〜100ppmで添加したアルミニ
ウム板の洗浄方法として構成したものである。
【0012】前記構成において、アルミニウム板を上下
方向から洗浄し、その洗浄液を洗浄設備内で循環し、濾
過して再利用する工程を含む洗浄方法は、洗浄液中のカ
ルシウム濃度を低下させる、アルミニウム粉と水との反
応を抑制する洗浄液が使用されるので、洗浄設備内への
炭酸カルシウムのスケールおよび水酸化アルミニウムの
水和物の付着が抑制されるものとなる。
【0013】前記問題を解決するために、請求項4に記
載の発明は、所定速度で搬送されるアルミニウム板の上
下方向から洗浄液を噴射する洗浄手段と、この洗浄手段
から噴射された洗浄液を洗浄設備内で循環させる循環手
段と、この循環手段に介設され前記洗浄手段に洗浄液を
供給する流路に設けられた濾過手段を有することを特徴
とする請求項3に記載のアルミニウム板の洗浄方法に用
いられるアルミニウム板の洗浄設備。
【0014】前記構成において、洗浄設備は、アルミニ
ウム板に洗浄液を噴射し、その洗浄液を洗浄設備内で循
環し、濾過して再利用する際に、洗浄液中のカルシウム
濃度を低下させる、アルミニウム粉と水との反応を抑制
する洗浄液が使用されるので、洗浄設備内への炭酸カル
シウムのスケールおよび水酸化アルミニウムの水和物の
付着が抑制される。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。本発明のアルミニウム板の洗浄液は、水に
分散剤を添加したものであり、水としてはカルシウム含
有量が5ppm以下のものが使用される。カルシウム含
有量を5ppm以下にすることにより、従来の洗浄設備
で問題となっていた炭酸カルシウムのスケールの発生が
抑制される。
【0016】ここで、水のカルシウム含有量は、図1示
す洗浄設備を用いて、洗浄液のカルシウム含有量と炭酸
カルシウムのスケールの発生状況を調査した結果に基づ
いて設定されたものである。図1は、洗浄設備の一例を
示す模式図である。具体的には、カルシウム含有量約7
0ppm以上である硬水を洗浄水として用いた方が、カ
ルシウム含有量約70ppm未満である軟水を洗浄水と
して用いた場合に比べて、洗浄設備内への炭酸カルシウ
ムのスケールの付着が多かった。このことから、炭酸カ
ルシウムのスケールの発生原因が洗浄液に含まれるカル
シウムにあり、炭酸カルシウムのスケールの発生を防止
するためにはカルシウム含有量をできるだけ少ない量に
設定する必要があることが明らかとなった。そして、カ
ルシウム含有量について鋭意検討の結果、カルシウム含
有量5ppmが炭酸カルシウムのスケールの発生の境界
濃度であることが明らかとなった。
【0017】また、本発明において分散剤の添加は、カ
ルシウム含有量の低下に伴って、硬水あるいは軟水を洗
浄水として使用した場合には見られなかった水酸化アル
ミニウムの水和物(水酸化アルミニウムが凝集したも
の)の発生を抑制するためのものである。
【0018】この水酸化アルミニウムの水和物は、炭酸
カルシウムの場合と同様に、乾燥により硬くなる。した
がって、アルミニウム板を洗浄、乾燥、焼鈍し、再度、
圧延するためにコイルに巻き取る際、アルミニウム板の
中へ水酸化アルミニウムの水和物が押し込まれ、コイル
の不良を引き起こすと言った問題を誘発する。また、水
酸化アルミニウムの水和物は、洗浄水中に浮遊する圧延
油と反応しゲル状となり、洗浄設備内に設けられた後記
する濾過手段を詰らせたり、後記する循環手段の内壁や
洗浄液タンクの内壁に多量に付着し、これらの清掃回数
の増加等メンテナンス性の低下をも引き起こす。したが
って、前記の炭酸カルシウムのスケールと同様に、その
発生を抑制する必要がある。
【0019】また、この水酸化アルミニウムの水和物
は、洗浄設備内に設けられた後記する濾過手段では取り
切れない洗浄水中に浮遊する微細なアルミニウム粉が水
と反応して生成したものである。そして、硬水や軟水で
水酸化アルミニウムが発生しない理由としては、硬水や
軟水では、これに含まれるカルシウム成分等がアルミニ
ウム粉表面に薄い皮膜を形成し、水との反応を抑制して
いるためと考えられる。
【0020】しかしながら、本発明においてカルシウム
成分を増加することは、前記の炭酸カルシウムのスケー
ルの発生を促進するので好ましくない。したがって、本
発明では、カルシウム含有量5ppm以下の水に分散剤
を添加することにより、微細なアルミニウム粉と水との
間の界面張力を減少させ、アルミニウム粉を水中に良く
分散させてアルミニウム粉と水との反応を抑制したもの
である。また、その反応物である水酸化アルミニウムが
発生しても、その凝集を抑制し水和物となることを抑制
したものである。
【0021】また、ここで使用される分散剤としては、
分散効果のあるものであれば問題なく使用できる。炭酸
カルシウムのスケールまたは水酸化アルミニウムの水和
物の発生を抑制する上で、ポリカルボン酸系、リグニン
スルホン酸系、ナフタレンスルホン酸系、メラミンスル
ホン酸系から選ばれた1種又は2種以上から成る重合体
を組み合わせて用いることが好ましい。なお、ポリカル
ボン酸系重合体が、前記した他の重合体に比べて分散効
果が高く、必要最低濃度が低いので、コスト面でより好
ましい。
【0022】前記分散剤は、その分子量が500〜20
000、添加量が1〜100ppmの重合体を用いる。
その分子量が500より小さい重合体では、分散効果が
乏しく、多量の水酸化アルミニウムの水和物の発生を抑
制することができない。また、分子量が20000を超
えると、水への溶解性が低下し、分散剤としての用を成
さなくなる。そして、その分散剤の添加量が1ppmよ
り少ない場合には分散剤としての用を成さず、100p
pmを超えて添加しても、水酸化アルミニウムの水和物
の発生を抑制する効果が飽和して向上することがないの
で、コスト面においても好ましくない。さらには、10
0ppmを超えて添加すると、洗浄液の透過度が低下し
排水処理に問題が生じる。
【0023】上記洗浄液の作製方法としては、例えば、
後記する洗浄液タンク内にカルシウム含有量が5ppm
以下となる水を適量溜め、これに分散剤を適量添加、攪
拌すれば良い。また、洗浄後の乾燥も加味して使用する
場合には、これを、60〜80℃程度に加熱して使用す
るのが適当である。なお、カルシウム含有量5ppm以
下の水を作製する方法としては、軟水化技術として従来
から知られている方法により作製される。例えば、キレ
ート剤等を使用する化学薬品法、イオン交換樹脂を使用
するイオン交換法、繊維あるいは膜による逆浸透を利用
する逆浸透膜法、水の電気分解を利用する方法等が挙げ
られる。
【0024】前記のような洗浄液を用いることにより、
炭酸カルシウムのスケール、水酸化アルミニウムの水和
物の発生がなく、アルミニウム板の製品歩留りが向上す
る。また、洗浄設備のメンテナンス時に、スケールおよ
び水和物の除去のために酸等の危険な薬品を使用する必
要がなくなるので、メンテナンスが容易で、その頻度
も、これまでの短期から長期へ変更することが可能とな
るので、洗浄設備のメンテナンス性が優れたものとな
る。
【0025】つぎに、本発明のアルミニウム板の洗浄設
備および洗浄方法について図面を用いて詳細に説明す
る。図1は洗浄設備の構成を示す模式図である。図1に
示すように、洗浄設備1は、所定速度で洗浄槽9内に搬
送されるアルミニウム板3の上下方向から洗浄液2を噴
射する洗浄手段としての複数の噴射ノズル4と、これら
噴射ノズル4から噴射された洗浄液2を、洗浄設備1内
で循環させる循環手段としての循環用パイプ8およびポ
ンプ10と、その循環用パイプ8に介設され前記噴射ノ
ズル4の前に設けられた濾過手段としてのカートリッジ
フィルタ(以下、フイルタと称す)6を有する。
【0026】また、洗浄槽9へのアルミニウム板3の搬
送には、洗浄設備1の前後に連続して設けられている圧
延設備12、焼鈍設備14および圧延設備15の搬送手
段(図示せず)を用いる。また、洗浄設備1に搬送手段
(図示せず)を設けても良い。
【0027】そして、濾過手段6の前には洗浄液を貯留
するための洗浄液タンク7が介設され、前記したように
洗浄液2の作製およびアルミニウム板3の乾燥のための
洗浄液の加温を行う。なお、アルミニウム板3の乾燥の
ために、例えば、ドライヤ乾燥等の乾燥装置13を洗浄
槽9のアルミニウム板3の搬送出口側に設けても良い。
【0028】噴射ノズル4は、アルミニウム板3の長手
方向(進行方向)およびアルミニウム板3の幅方向に沿
って、上下に複数(例えば6×2ノズル)配置される。
そして、複数の噴射ノズル4の間には、洗浄効果をより
高めるためにブラシ5が配置されている。さらに、噴射
ノズル4の前には洗浄液噴射量制御装置11が介設さ
れ、アルミニウム板3の洗浄が十分に行われるように洗
浄液2の噴射量を制御している。
【0029】つぎに、本発明の洗浄方法は、所定速度で
長手方向に搬送されるアルミニウム板3の上下方向から
洗浄液2を噴射して、アルミニウム板3の表面に残存し
た圧延油や微細なアルミニウム粉を除去してアルミニウ
ム板3の表面を洗浄し、更に、洗浄に使用された洗浄液
2を洗浄設備1内で循環して、微細なアルミニウム粉を
濾過して再度洗浄に利用するものである。
【0030】ここで、アルミニウム板の搬送速度は、例
えば、10〜150mpm(meter per mi
nute)である。また、洗浄液2の噴射ノズル4から
の噴射量は洗浄液噴射量制御装置11によって、例え
ば、洗浄液噴射量100L/分に制御される。そして、
噴射ノズル4のアルミニウム板3に対する角度は特に限
定されず、洗浄が十分に行われるように角度0〜180
度の範囲内で適宜選択される(アルミニウム板3の水平
方向から洗浄液2を噴射する状態を角度0度とし、上下
方向からの噴射を90度とする)。さらに、洗浄に使用
された洗浄液2は、循環用パイプ8を通ってポンプ10
により洗浄設備1内を循環し、孔径100μm程度のフ
ィルタ6により濾過されて再度洗浄に利用される。
【0031】前記の洗浄設備1および洗浄方法では、カ
ルシウム含有量が5ppm以下である水に、分子量が5
00〜20000の分散剤を添加量1〜100ppmで
添加した洗浄液2が使用される。その結果、洗浄設備1
内での炭酸カルシウムのスケール、水酸化アルミニウム
の水和物の発生がなく、アルミニウム板の製品歩留りが
向上する洗浄設備または洗浄方法を提供することが可能
となる。また、洗浄設備のメンテナンス時に、スケール
および水和物の除去のために酸等の危険な薬品を使用す
る必要がなくなるので、メンテナンスが容易で、その頻
度も、これまでの短期から長期へ変更できるメンテナン
ス性が優れた洗浄設備または洗浄方法を提供することが
可能となる。
【0032】以下に、本発明について実施例を用いてさ
らに説明する。しかしながら、本発明は実施例に限定さ
れるものではない。
【実施例】図1に示すように、アルミニウム合金(JI
SH4000 1050合金)を圧延設備12で板厚
1.0mm、板巾1200mmのアルミニウム板3に圧
延し、このアルミニウム板3を洗浄設備1の洗浄槽9内
に搬送し、表1に示す洗浄液2を使用して洗浄を行なっ
た。表1において、実施例1〜15が本発明の洗浄液、
比較例1〜9が洗浄液のカルシウム含量、分散剤の分子
量及び添加量が本発明の範囲外の洗浄液である。
【0033】ついで、乾燥装置13にてアルミニウム板
3を乾燥し、焼鈍設備14にて連続焼鈍してコイルに巻
き取った。その後、このコイルに巻き取られたアルミニ
ウム板3を、圧延機15で板厚0.24mmに再度圧延
し、コイル(5トン/コイル)に巻き取った。この圧延
設備15で巻き取られたコイルの重量が1500トンに
なるまで前記の作業(圧延→洗浄・乾燥→焼鈍→圧延)
を繰返し行った(300コイル作製した)。その際、洗
浄液2は洗浄設備1内を循環させ、フィルタ6で濾過し
て洗浄液2として再利用した。
【0034】なお、洗浄液2を変更する以外は、全て同
一の設備および条件で前記の作業を行った。また、洗浄
設備1の条件は以下の通りとした。 ・アルミニウム板の搬送速度:10〜150mpm ・洗浄液の噴射量:100L/分×12噴射ノズル ・洗浄液の温度:60〜80℃ ・乾燥条件:80〜100℃ ・フィルタの孔径:100μm 各種先浄液2の洗浄効果を確認するために、以下の評価
を行ない、表1に評価結果を併記した。
【0035】<コイル不良率>圧延設備15において、
コイル巻取機(図示せず)の前工程として設置されたテ
ンションレベラ(図示せず)に取り付けられた疵検査機
(図示せず)にてアルミニウム板3の表面を検査し、欠
陥(巾0.15mm×長さ0.3mm以上の疵を欠陥と
する)の数をカウントした。そして、コイル長さ700
0mm当りの欠陥数が100個を超える場合に、検査対
象のコイルは不良であるとし、各洗浄液2毎での不良コ
イルの割合を求めた。
【0036】<フィルタ寿命>各洗浄液2による洗浄を
開始する際に、フィルタ6を洗浄し、その後、フィルタ
6の目詰まり(フィルタの入出側での圧力差が、約4k
g/cm2)が生じるまでの期間をフィルタ寿命とし
た。
【0037】<洗浄液の排水処理性>洗浄液2は、蒸発
する分及び洗浄液タンク7からのオーバーフローする分
は常時自動的に新しい洗浄液2が補給されるが、大部分
の洗浄液2は洗浄設備1内を循環、濾過して再利用され
る。したがって、洗浄作業終了時には洗浄液2も汚れた
ものとなるので、洗浄液2を排水(廃棄)する際の排水
処理性も考慮する必要がある。そのため、排出された洗
浄液2を処理する際の目安として、洗浄作業終了後の各
洗浄液2の透過度及び透視度を評価した。透過度は、
(株)島津製作所製の紫外可視分光光度計Uvmini
−1240を用いて測定し、また、透視度は、JIS
K0102(工場排水試験方法)により評価した。な
お、透過度が50%以上、透視度が30cm以上であれ
ば、排出(廃棄)する際に問題なく排水処理することが
できる。
【0038】
【表1】
【0039】表1の結果より、実施例1〜15の洗浄液
を使用してアルミニウム板3を洗浄した時の方が比較例
1〜9の洗浄液を使用した時に比べて、コイル不良率が
非常に低く、フィルタ寿命も長くなり、排水処理性も非
常に優れたものとなった。
【0040】したがって、実施例1〜15の洗浄液にお
いては、炭酸カルシウムのスケール、水酸化アルミニウ
ムの水和物の発生が抑制され、その結果、実施例1〜1
5の洗浄液を使用した洗浄設備または洗浄方法において
は、洗浄設備内への炭酸カルシウムのスケール、水酸化
アルミニウムの水和物の付着がなく、洗浄設備のメンテ
ナンス性が格段に向上した。
【0041】
【発明の効果】以上の通り、本発明の洗浄液として、カ
ルシウム含有量が5ppm以下の水に、分子量500〜
20000の分散剤を1〜100ppm添加することに
より、アルミニウム板の不良原因の一つである炭酸カル
シウムのスケールの発生がなく、また、炭酸カルシウム
のスケールと同様にアルミニウム板の不良原因となる水
酸化アルミニウムの水和物の発生がない、さらには洗浄
設備のメンテナンス性を向上させる洗浄液を得ることで
きる。
【0042】また、前記の分散剤として、ポリカルボン
酸系重合体、リグニンスルホン酸系重合体、ナフタレン
スルホン酸系重合体及びメラミンスルホン酸系重合体か
ら選ばれた1種又は2種以上の組み合わせから成る重合
体を使用することにより、炭酸カルシウムのスケールま
たは水酸化アルミニウムの水和物の発生がさらになく、
洗浄設備のメンテナンス性をさらに向上させる洗浄液を
得ることができる。
【0043】また、本発明の洗浄方法として、前記の洗
浄液を使用することにより、アルミニウム板の不良原因
の一つである炭酸カルシウムのスケールおよび水酸化ア
ルミニウムの水和物の発生がない、また洗浄設備のメン
テナンス性も向上させる洗浄方法を得ることができる。
【0044】また、本発明の洗浄設備として、前記の洗
浄液を使用することにより、アルミニウム板の不良原因
の一つである炭酸カルシウムのスケールおよび水酸化ア
ルミニウムの水和物の発生がない、またメンテナンス性
にも優れた洗浄設備を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の洗浄設備の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1:洗浄設備 2:洗浄液 3:アルミニウム板 4:噴射ノズル 5:ブラシ 6:カートリッジフィルタ 7:洗浄液タンク 8:循環用パイプ 9:洗浄槽 10:ポンプ 11:洗浄液噴射量制御装置 12、15:圧延設備 13:乾燥装置 14:焼鈍設備
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 池田 昌則 栃木県真岡市鬼怒ヶ丘15番地 株式会社神 戸製鋼所真岡製造所内 Fターム(参考) 4H003 AB18 AB23 AB25 DA09 EB28 FA15 FA21 4K053 PA10 PA12 QA07 RA07 RA31 RA44 RA54 SA04 SA17 TA03 TA18 TA19 XA24 YA03 YA07

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カルシウム含有量が5ppm以下である
    水に、分子量が500〜20000の分散剤を添加量1
    〜100ppmで添加したことを特徴とするアルミニウ
    ム板の洗浄液。
  2. 【請求項2】 前記分散剤が、ポリカルボン酸系重合
    体、リグニンスルホン酸系重合体、ナフタレンスルホン
    酸系重合体及びメラミンスルホン酸系重合体から選ばれ
    た1種又は2種以上の組み合わせから成る重合体である
    ことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム板の洗
    浄液。
  3. 【請求項3】 所定速度で搬送されるアルミニウム板の
    上下方向から洗浄液を噴射してアルミニウム板の表面を
    洗浄し、前記洗浄に使用された洗浄液を洗浄設備内で循
    環し、かつ濾過して再度洗浄に利用するアルミニウム板
    の洗浄方法において、 前記洗浄液が、カルシウム含有量が5ppm以下である
    水に、分子量が500〜20000の分散剤を添加量1
    〜100ppmで添加したことを特徴とするアルミニウ
    ム板の洗浄方法。
  4. 【請求項4】 所定速度で搬送されるアルミニウム板の
    上下方向から洗浄液を噴射する洗浄手段と、この洗浄手
    段から噴射された洗浄液を洗浄設備内で循環させる循環
    手段と、この循環手段に介設され前記洗浄手段に洗浄液
    を供給する流路に設けられた濾過手段を有することを特
    徴とする請求項3に記載のアルミニウム板の洗浄方法に
    用いられるアルミニウム板の洗浄設備。
JP2002066345A 2002-03-12 2002-03-12 アルミニウム板の洗浄液およびその洗浄方法ならびに洗浄設備 Pending JP2003268579A (ja)

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JP2018503732A (ja) * 2015-02-02 2018-02-08 ザ プロクター アンド ギャンブルカンパニー スルホン化ポリマーの新たな使用法
JP2021505773A (ja) * 2017-12-12 2021-02-18 ハイドロ アルミニウム ロールド プロダクツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングHydro Aluminium Rolled Products GmbH アルミニウム合金からなる形材、圧延されたストリップおよび薄板のためのピックリング方法

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JP7216097B2 (ja) 2017-12-12 2023-01-31 スペイラ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング アルミニウム合金からなる形材、圧延されたストリップおよび薄板のためのピックリング方法

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