JP2003227596A - 金属二重殻低温タンク - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 内槽から低温液化ガスが漏洩しても脆性破壊
の問題が起こらない金属二重殻低温タンクを安価に製作
する。 【解決手段】 底板２ａと側板２ｂを低温材製として屋
根２ｃを常温材製とした外槽２の底板２ａの上に、底板
３ａと側板３ｂと屋根３ｃをすべて低温材製とした内槽
３を設置する。外槽２の屋根２ｃの外周辺部に、円筒状
にカーテンの如く形成したシール材８の上端部を取り付
け、シール部材８の下端部側内面を内槽３の肩部３ｄに
接触させるようにする。内槽３と外槽２の間を、シール
材８により、側板側空間９と屋根側空間１０とに仕切
る。側板側空間９に位置する外槽屋根２ｃの外周部内面
に保冷材１１を取り付ける。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は低温液化ガスを貯蔵
する地上式の金属二重殻低温タンクに関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】ＬＮＧ等の低温液化ガスを貯蔵する地上
式の金属二重殻低温タンクは、図３に一例を示す如く、
底版１上に、底板２ａと側板２ｂと屋根２ｃとからなる
外槽２を設置し、且つ該外槽２内の底板２ａ上に、底板
３ａと側板３ｂと屋根３ｃとからなる内槽３を、底部保
冷材４を介して設置し、更に、上記底部保冷材４の周辺
部上面には、内槽側板３ｂの膨張、収縮を吸収させるた
めのグラスウールブランケット５が外周を覆うように設
置してあり、側壁部では、該グラスウールブランケット
５と外槽側板２ｂとの間、屋根部では外槽屋根２ｃと内
槽屋根３ｃとの間に、保冷材としての粒状パーライト６
をそれぞれ充填して、内槽３内に貯蔵した低温液化ガス
７を保冷させるようにしてある。

【０００３】上記型式の金属二重殻低温タンクでは、内
槽３を９％Ｎｉ鋼の如き低温材製として、外槽２をＳＳ
材の如き常温材で製作した場合、外槽２の外方に、防液
堤を構築する必要がある。そのため、外槽側板２ｂをＰ
Ｃとし、外槽屋根２ｃをコスト的に常温材としたＰＣタ
ンクとすることにより、防液堤を不要とすることが考え
られている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところが、外槽側板２
ｂをＰＣとした場合、外槽側板２ｂの構築と外槽屋根２
ｃとの取り合いが土木工事と機械工事を必要としてコス
トが高くなると共に、工期が長くかかるという問題があ
り、更に、万一、内槽３から外槽２内に低温液化ガス７
が漏洩するような事態が発生すると、漏洩した低温液化
ガス７と接することとなる外槽側板２ｂはＰＣ製である
から、直接脆性破壊を起すことはないが、漏洩した低温
液化ガス７の蒸発ガスが外槽屋根２ｃに触れることによ
り、外槽屋根２ｃが冷却されると、脆性破壊を起すに至
るおそれがある。

【０００５】そこで、本発明は、防液堤を排除し且つコ
スト的にも有利で、外槽側板と外槽屋根の取り合いを改
善し工期短縮も図れ、しかも外槽屋根の脆性破壊の問題
をもなくすようにしようとするものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するために、底板と側板と屋根とからなる外槽内の上
記底板上に、底板と側板と屋根とからなる内槽が設置し
てある金属二重殻低温タンクにおいて、上記内槽全体を
低温材製とし、上記外槽底板と外槽側板を低温材製とし
て外槽屋根を常温材製とし、且つ上記外槽屋根の外周辺
部に上端を取り付けた筒状のシール材の下端部を内槽側
板に接するように配して、内槽と外槽との間を屋根側空
間と側板側空間とに仕切るようにし、更に、該側板側空
間に位置する外槽屋根の内面に保冷材を取り付けた構成
とする。

【０００７】低温液化ガスが内槽から漏洩すると、内槽
側板と外槽側板の間の側板側空間に溜まり、ここに溜っ
た低温液化ガスの蒸発ガスはシール材に遮られて屋根側
空間への侵入が防止される。そのため、屋根側空間に位
置する外槽屋根は蒸発ガスによって冷却されることはな
く、又、側板側空間に位置する外槽屋根は保冷材の存在
により蒸発ガスによって冷却されることはない。したが
って、常温材で製作した外槽屋根は脆性破壊を起すこと
がない。

【０００８】又、シール材をアルミ又はガラスクロス製
とすることにより、内、外槽が熱膨張や熱収縮しても追
従することができて、シール性を維持することができ
る。

【０００９】更に、側板側空間に位置する外槽屋根の所
要個所に、ガス抜き用の安全弁を設けた構成とすること
により、側板側空間に蒸発ガスが充満して内部圧力が上
昇すると、安全弁によりガスが逃がされるため、内部圧
力が設定値以下に安定して保持される。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して説明する。

【００１１】図１及び図２は本発明の実施の一形態を示
すもので、図３に示したと同様に、底板２ａと側板２ｂ
と屋根２ｃとからなる外槽２を底版１に設置し、該外槽
２内の上記底板２ａ上に、底板３ａと側板３ｂと屋根３
ｃとからなる内槽３を、底部保冷材４を介して設置し
て、内槽側板３ｂの外周をグラスウールブランケット５
で覆うようにし、且つ上記内槽３と外槽２の間の空間に
粒状パーライト６を充填するようにしてある金属二重殻
低温タンクにおいて、上記内槽３の底板３ａと側板３ｂ
と屋根３ｃを、すべて９％Ｎｉ鋼の如き低温材製とし
て、該低温材製の内槽３内に低温液化ガス７を貯蔵する
ようにする。上記内槽３からの低温液化ガス７の漏液時
に漏液した低温液化ガス７を溜める部分となる外槽２の
底板２ａと側板２ｂを９％Ｎｉ鋼の如き低温材製とし
て、低温液化ガス７と直接接しない外槽２の屋根２ｃを
ＳＳ材の如き常温材製とする。

【００１２】上記外槽屋根２ｃの外周辺部の内側に、円
筒状のカーテンの如く形成したシール材８の上端部をス
タットボルト等により取り付けて、該シール材８の下端
部を、内槽側板３ｂの外周を覆っているグラスウールブ
ランケット５の上端側内部に埋め込んで固定することに
より、該シール材８の下端部側内面が内槽側板３ｂと内
槽屋根３ｃとの境界部となる肩部３ｄに全周にわたり接
するようにし、該シール材８で、内槽側板３ｂと外槽側
板２ｂとの間に形成される側板側空間９と、内槽屋根３
ｃと外槽屋根２ｃとの間に形成される屋根側空間１０と
に仕切るようにして、低温液化ガス７の漏液時に、側板
側空間９内に溜められた低温液化ガス７の蒸発ガスの屋
根側空間１０への侵入をシール材８で阻止させるように
する。又、上記側板側空間９に位置する外槽屋根２ｃの
外周部の内面に、所要の厚みとしたウレタン製の保冷材
１１をアンカーピン等で取り付けて、該外槽屋根２ｃの
外周部内面に低温液化ガス７の蒸発ガスが直接触れない
ようにする。

【００１３】更に、上記側板側空間９に位置する外槽屋
根２ｃの外周部所要個所に、図２に拡大して示す如く内
管１２ａと外管１２ｂとを同心状に配置して両者の間に
保冷材１４を充填した二重管構造のノズル１２を設け
て、該ノズル１２にガス抜き用の安全弁１３を設置し、
蒸発ガスによる側板側空間９の内部圧力が設定値よりも
高くなったときに、該安全弁１３により蒸発ガスを外部
へ逃がして内部圧力を設定値よりも低く保持できるよう
にする。

【００１４】上記シール材８としては、たとえば、複数
枚のアルミ箔を重ね合わせたもの、あるいは、アルミ箔
をシート材に張り合わせたもの、又は、ガラスクロスを
シート状にしたもの等、変形性と気密性、耐低温性を有
するものを使用する。

【００１５】上記構成としてある金属二重殻低温タンク
において、内槽３内の低温液化ガス７が漏洩するような
事態が万一発生したとすると、漏洩した低温液化ガス７
は内槽３と外槽２との間の側板側空間９内に溜められる
ことになる。この際、低温液化ガス７が直接接すること
により低温となる外槽２の底板２ａ及び側板２ｂは低温
材製としてあるため、脆性破壊を起すおそれはなく、し
たがって、防液堤は不要となる。側板側空間９内に溜め
られた低温液化ガス７が蒸発すると、蒸発ガスは上昇し
て屋根側空間１０の方向へ向かうことになるが、内槽側
板３ｂと外槽屋根２ｃとの間にはシール材８がカーテン
状に設けてあって、このシール材８によって屋根側空間
１０と側板側空間９とが仕切られているので、上記の蒸
発ガスが屋根側空間１０に侵入することはなく、屋根側
空間１０に位置する外槽屋根２ｃが蒸発ガスによって低
温に冷却されることはない。一方、側板側空間９に位置
する外槽屋根２ｃの内面にも蒸発ガスが接触するが、こ
の部分の内面には保冷材１１が取り付けてあるため、こ
の位置の外槽屋根２ｃも蒸発ガスによって低温に冷却さ
れることはない。したがって、外槽屋根２ｃはコスト的
に常温材製としてあっても、脆性破壊を起す心配はな
い。

【００１６】上記において、側板側空間９内の蒸発ガス
の充満度が増して、内部圧力が安全弁１３による設定圧
力よりも高くなると、安全弁１３が開いて蒸発ガスを外
部へ逃がすので、側板側空間９の内部圧力を設定値以下
に安定して保持することができる。この際、安全弁１３
が設置してあるノズル１２は、内管１２ａと外管１２ｂ
の間に保冷材１４が充填されているので、ノズル１２が
冷却されて脆性破壊を起すことはない。又、上記側板側
空間９と屋根側空間１０とを区画する仕切りとなるシー
ル材８は、変形可能な材料によって作られているため、
内槽３や外槽２が熱膨張や熱収縮を起しても、それに追
従して変形することができるので、側板側空間９と屋根
側空間１０との間のシール性を維持することができる。

【００１７】なお、本発明は上記実施の形態にのみ限定
されるものではなく、外槽屋根２ｃの外周部の内面に取
り付ける保冷材１１としてはウレタン以外のものであっ
てもよいこと、安全弁１３は複数個所に設置してもよい
こと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において
種々変更を加え得ることは勿論である。

【００１８】

【発明の効果】以上述べた如く、本発明の金属二重殻低
温タンクによれば、底板と側板と屋根とからなる外槽内
の上記底板上に、底板と側板と屋根とからなる内槽が設
置してある金属二重殻低温タンクにおいて、上記内槽全
体を低温材製とし、上記外槽底板と外槽側板を低温材製
として外槽屋根を常温材製とし、且つ上記外槽屋根の外
周辺部に上端を取り付けた筒状のシール材の下端部を内
槽側板に接するように配して、内槽と外槽との間を屋根
側空間と側板側空間とに仕切るようにし、更に、該側板
側空間に位置する外槽屋根の内面に保冷材を取り付けた
構成としてあるので、次の如き優れた効果を発揮する。 (1)内槽から低温液化ガスが漏洩するような事態が発生
して、側板側空間内に溜められた低温液化ガスが蒸発し
ても、側板側空間と屋根側空間とを仕切るシール用カー
テンにより、蒸発ガスが屋根側空間へ侵入することを防
止することができて、屋根側空間に位置する外槽屋根が
蒸発ガスによって冷却されてしまうことを防止でき、
又、側板側空間に位置する外槽屋根も内面の保冷材によ
り蒸発ガスによって冷却されてしまうことを防止でき、
したがって、常温材製とした外槽屋根の脆性破壊を起す
心配がなく、内、外槽のすべてを低温材製とする場合に
比してコスト的に有利となる。 (2)外槽側板は低温材製で、内槽から低温液化ガスが漏
洩して冷却されても脆性破壊のおそれはないので、防液
堤は不要にでき、又、外槽屋根との取り合いも機械工事
のみで良好にできると共に、工期短縮が図れる。 (3)シール材をアルミ又はガラスクロス製とすることに
より、内、外槽が熱膨張や熱収縮を起してもそれに追従
できるので、シール性を確実に維持できる。 (4)側板側空間に位置する外槽屋根の所要個所に、ガス
抜き用の安全弁を設けた構成とすることにより、側板側
空間の内部圧力が蒸発ガスの充満により上昇しても、安
全弁によってガス圧を逃がすことができるので、内部圧
力を設定値以下に安定して保持することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の金属二重殻低温タンクの実施の一形態
を示す概略図である。

【図２】安全弁を設置するノズル部の拡大断面図であ
る。

【図３】金属二重殻低温タンクの一例を示す概略図であ
る。

【符号の説明】

２ 外槽 ２ａ 底板 ２ｂ 側板 ２ｃ 屋根 ３ 内槽 ３ａ 底板 ３ｂ 側板 ３ｃ 屋根 ８ シール材 ９ 側板側空間 １０ 屋根側空間 １１ 保冷材 １３ 安全弁

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石田 和雄 東京都江東区豊洲三丁目２番16号 石川島 播磨重工業株式会社東京エンジニアリング センター内 (72)発明者 烏野 信美 東京都江東区豊洲三丁目２番16号 石川島 播磨重工業株式会社東京エンジニアリング センター内 Ｆターム(参考） 3E073 AB02 BA02 CA01

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 底板と側板と屋根とからなる外槽内の上
   記底板上に、底板と側板と屋根とからなる内槽が設置し
   てある金属二重殻低温タンクにおいて、上記内槽全体を
   低温材製とし、上記外槽底板と外槽側板を低温材製とし
   て外槽屋根を常温材製とし、且つ上記外槽屋根の外周辺
   部に上端を取り付けた筒状のシール材の下端部を内槽側
   板に接するように配して、内槽と外槽との間を屋根側空
   間と側板側空間とに仕切るようにし、更に、該側板側空
   間に位置する外槽屋根の内面に保冷材を取り付けた構成
   を有することを特徴とする金属二重殻低温タンク。
2. 【請求項２】 シール材を、アルミ又はガラスクロス製
   とした請求項１記載の金属二重殻低温タンク。
3. 【請求項３】 側板側空間に位置する外槽屋根の所要個
   所に、ガス抜き用の安全弁を設けた請求項１又は２記載
   の金属二重殻低温タンク。