JP2003219889A - 新規mapキナーゼ活性抑制因子 - Google Patents

新規mapキナーゼ活性抑制因子

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JP2003219889A
JP2003219889A JP2002025404A JP2002025404A JP2003219889A JP 2003219889 A JP2003219889 A JP 2003219889A JP 2002025404 A JP2002025404 A JP 2002025404A JP 2002025404 A JP2002025404 A JP 2002025404A JP 2003219889 A JP2003219889 A JP 2003219889A
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spred
gene
polypeptide
amino acid
seq
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JP2002025404A
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English (en)
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Akihiko Yoshimura
昭彦 吉村
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Otsuka Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Otsuka Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 細胞外シグナルに応じた細胞の増殖と分化に
関連するMAPキナーゼを介した情報伝達系の制御に関
与するヒト遺伝子のクローニング。 【解決手段】 MAPキナーゼ活性抑制作用を有するヒ
ト遺伝子、その遺伝子発現産物、その遺伝子が挿入され
た組換え発現ベクター、その遺伝子が挿入された組換え
発現ベクターを有する宿主細胞、その遺伝子発現産物ま
たはそれらの部分断片に結合性を有する抗体等に関す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、細胞外シグナルに
応じた細胞の増殖と分化に関連するRas、Rafおよ
びMAPキナーゼを介した情報伝達系の制御に関与する
新規ヒト遺伝子及び遺伝子の利用に関する。
【0002】
【従来の技術】細胞外シグナルに応じた細胞の増殖と分
化は、Ras、RafおよびMAPキナーゼを介した情
報伝達系によって調節されている。しかし、この情報伝
達系の制御機構は十分には明らかにされていない現状に
ある。
【0003】Rasは細胞内シグナル伝達系では中心的
な役割を果たしており、RasのC末端は脂質で修飾さ
れており細胞膜に存在し、増殖因子など様々な外界の刺
激によって活性化される。MAPキナーゼ(mitogen-ac
tivated protein kinase)を中心的な構成要素とした情
報伝達系(MAPキナーゼ系 )の活性化は、細胞によっ
て増殖、分化、あるいは運動性亢進を誘導する。そして
多くの癌細胞においてはMAPキナーゼ系の恒常的機能
亢進が認められている。またRasの恒常的活性化型変
異は約30%の癌にみられ、細胞増殖と密接な関係があ
ることがわかっている。
【0004】活性化されたRasは主にRafを細胞膜
にリクルートしそこでRafはリン酸化(特に388番
目のセリン残基)され、そして活性化される。Rasは
GEF (GDP/GTP変換因子)のひとつであるSos (son
of sevenless)によって活性化(GTP型に変換する)さ
れ、逆にRasGAP (GTPアーセ゛活性化蛋白)によって不
活性化(GDP型に変換する)される。活性化されたRa
fはMEK(mitogen-activated protein kinase)を、
MEKはMAPキナーゼを活性化するカスケードを形成
する。 このようにRas/MAPキナーゼ経路の正の
シグナル経路は近年かなりの理解が進んだが負の制御メ
カニズムに関しては未だ不明な点が多い。特にMAPキ
ナーゼの下流に存在するいわゆるネガティブフィードバ
ック制御因子は、MAPキナーゼフォスファターゼであ
るMKP遺伝子群やショウジョウバエのGF受容体アン
タゴニストargos、EGF受容体の活性を抑制する
膜タンパク質kekkonlなど以外はあまり知られて
いない。
【0005】近年MAPキナーゼ系の負の制御因子とし
て新たにSproutyが発見され注目を集めている。
ショウジョウバエ(Drosophila)の気管の発生にはFGF
(繊維芽細胞成長因子:fibroblast growth factor) が
必須であり、その過程に異常をきたす遺伝子としてSp
routyは発見された。変異によって気管の分枝が多
くなり、出芽(Sprout)したような状態になることから
Sproutyと命名された。遺伝学的な解析からFG
Fシグナルにアンチゴナイズ(antigonize)する分子と考
えられたが、その後カスキ(Casci)らによりSprou
tyはショウジョウバエの眼、羽根形成においてEGF
(内皮細胞成長因子:epidermal growthfactor) レセプ
ター/Rasシグナルを抑制する細胞内分子として再発
見された。発現はMAPキナーゼの活性化と一致するこ
となどからMAPキナーゼの標的遺伝子と考えられる。
哺乳類では4種類のホモログが知られており、少なくと
もSprouty2、Sprouty4はEGF、FG
F、フォルボールエステルなどの刺激によってMAPキ
ナーゼを介して転写誘導される[Hunter, T., Cell, 8
0, 225-236(1995); Lowy, D.R. and Willumsen, B.
M., Annu. Rev. Biochem., 62, 851-891 (1993); Ferre
ll, J.E.Jr., Curr. Top. Dev. Biol., 33, 1-60 (199
6); Prehoda, K.E., et al., Cell, 97, 471-480 (199
9); Hacohen, N., et al., Cell, 92, 253-263 (1998);
Casci, T., et al., Cell, 96, 655-665(1999); de Ma
ximy, A.A.,et al., Mech. Dev., 81, 213-216(1999);
Tefft, J.D.,et al., Curr. Biol., 9, 219-222 (199
9); Minowada, G., et al., Development, 126, 4465-4
475(1999)]。
【0006】上記のように、多くの癌細胞においてはM
APキナーゼ系の恒常的機能亢進が認められていること
から、その特異的阻害は、細胞の癌化または癌細胞に対
して抑制的に作用すると考えられ、新たな癌抑制剤の開
発の可能性を導き出すことが当業界で所望されている。
【0007】本発明者は、レセプター型のチロシンキナ
ーゼであるc−fmsやc−kitの新たな基質や制御
因子を検索する目的でキナーゼドメインを標的とした酵
母ツー・ハイブリッド・スクリーニングを実施してき
た。そして破骨細胞cDNAライブラリーより新たな分
子を単離した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、チロ
シンキナーゼの新たな基質や制御因子を介した情報伝達
系の制御に関与する新規ヒト遺伝子を単離することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明によれば、
(a)配列番号:1で示されるアミノ酸配列からなる
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその
相補鎖、 (b)配列番号:1で示されるアミノ酸配列
からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに
対して少なくとも95%の相同性を持っている塩基配列
からなり、かつMAPキナーゼ活性抑制作用を有するポ
リペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその相
補鎖、 (c)配列番号:1で示されるアミノ酸配列に
おいて、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若し
くは付加されたアミノ酸配列からなり、かつMAPキナ
ーゼ活性抑制作用を有するポリペプチドをコードするポ
リヌクレオチドまたはその相補鎖、 (d)配列番号:
2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコー
ドするポリヌクレオチドまたはその相補鎖、 (e)配
列番号:2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチ
ドをコードするポリヌクレオチドに対して少なくとも9
5%の相同性を持っている塩基配列からなり、かつMA
Pキナーゼ活性抑制作用を有するポリペプチドをコード
するポリヌクレオチドまたはその相補鎖、 (f)配列
番号:2で示されるアミノ酸配列において、1若しくは
複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミ
ノ酸配列からなり、かつMAPキナーゼ活性抑制作用を
有するポリペプチド、をコードするポリヌクレオチドま
たはその相補鎖、のいずれかのポリヌクレオチドを含む
ヒト遺伝子が提供される。
【0010】また、本発明によれば、配列番号:1また
は2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコ
ードするポリヌクレオチドまたはその相補鎖からなるヒ
ト遺伝子が提供される。
【0011】更に、本発明によれば、 (a)配列番
号:3で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドま
たはその相補鎖、 (b)配列番号:3で示される塩基
配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条
件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドからなり、
かつMAPキナーゼ活性抑制作用を有するポリペプチド
をコードするポリヌクレオチドまたはその相補鎖、
(c)配列番号:4で示される塩基配列からなるポリヌ
クレオチドまたはその相補鎖、 (d)配列番号:4で
示される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリン
ジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチ
ドからなり、かつMAPキナーゼ活性抑制作用を有する
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその
相補鎖、のいずれかのポリヌクレオチドからなるヒト遺
伝子が提供される。
【0012】また、本発明によれば配列番号:3または
4で示される塩基配列である遺伝子、あるいは上記いず
れか記載の遺伝子発現産物、前記遺伝子が挿入された組
換え体発現ベクター、該組換え体発現ベクターを有する
宿主細胞が提供される。
【0013】さらに本発明によれば、前記遺伝子発現産
物またはそれらの部分断片に結合性を有する抗体または
抗体断片が提供される。
【0014】本発明によれば、 (a)配列番号:1で
示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、 (b)
配列番号:1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプ
チドに対して少なくとも95%の相同性を持っているア
ミノ酸配列からなり、かつMAPキナーゼ活性抑制作用
を有するポリペプチド、 (c)配列番号:1で示され
るアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸
が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からな
り、かつMAPキナーゼ活性抑制作用を有するポリペプ
チド、 (d)配列番号:2で示されるアミノ酸配列か
らなるポリペプチド、 (e)配列番号:2で示される
アミノ酸配列からなるポリペプチドに対して少なくとも
95%の相同性を持っているアミノ酸配列からなり、か
つMAPキナーゼ活性抑制作用を有するポリペプチド、
(f)配列番号:2で示されるアミノ酸配列におい
て、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは
付加されたアミノ酸配列からなり、かつMAPキナーゼ
活性抑制作用を有するポリペプチド、のいずれかのポリ
ペプチドが提供される。
【0015】さらに、本発明によれば、配列番号:1ま
たは2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
該ポリペプチドまたはそれらの部分断片に結合性を有す
る抗体または抗体断片が提供される。
【0016】本発明によれば、 a)生理的条件下にお
いて、MAPキナーゼ活性抑制作用を促進するために被
検物質を処理するのに十分な時間の間、適当な反応培地
/溶液中において上記遺伝子発現産物に対して被検物質
を提示させる工程、 b)被検物質の存在下の前記MA
Pキナーゼ活性抑制作用に対する比較において、前記遺
伝子発現産物の該MAPキナーゼ活性抑制作用の促進を
検出し、そしてMAPキナーゼ活性抑制作用を促進する
被検物質の存在を特定する工程を含む、前記遺伝子発現
産物のMAPキナーゼ活性抑制作用を促進する候補化合
物のスクリーニング方法が提供される。
【0017】また、本発明によれば、 a)生理的条件
下において、Raf活性の抑制を促進するために被検物
質を処理するのに十分な時間の間、適当な反応培地/溶
液中において上記遺伝子発現産物に対して被検物質を提
示させる工程、 b)被検物質の存在下の前記Raf活
性抑制に対する比較において、前記遺伝子発現産物の該
Raf活性抑制の促進を検出し、そしてRaf活性の抑
制を促進する被検物質の存在を特定する工程を含む、前
記遺伝子発現産物のRaf活性の抑制を促進する候補化
合物のスクリーニング方法、及び該スクリーニング方法
を用いて、抗腫瘍作用を有する化合物を特定する医薬の
スクリーニング方法が提供される。
【0018】さらに本発明によれば、遺伝子発現産物ま
たはポリペプドを有効成分として用いる抗腫瘍剤が提供
される。
【0019】また本発明によれば、(a)配列番号:1
で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコード
するポリヌクレオチドまたはその相補鎖、(b)配列番
号:1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを
コードするポリヌクレオチドに対して少なくとも95%
の相同性を持っている塩基配列からなり、かつ細胞の分
化を抑制する作用を有するポリペプチドをコードするポ
リヌクレオチドまたはその相補鎖、(c)配列番号:1
で示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個の
アミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列
からなり、かつ細胞の分化を抑制する作用を有するポリ
ペプチド、をコードするポリヌクレオチドまたはその相
補鎖、(d)配列番号:2で示されるアミノ酸配列から
なるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは
その相補鎖、(e)配列番号:2で示されるアミノ酸配
列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
に対して少なくとも95%の相同性を持っている塩基配
列からなり、かつ細胞の分化を抑制する作用を有するポ
リペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその相
補鎖、(f)配列番号:2で示されるアミノ酸配列にお
いて、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しく
は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ細胞の分化を
抑制する作用を有するポリペプチド、をコードするポリ
ヌクレオチドまたはその相補鎖、のいずれかのポリヌク
レオチドを含むヒト遺伝子が提供される。
【0020】更に、本発明によれば、 (a)配列番
号:3で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドま
たはその相補鎖、 (b)配列番号:3で示される塩基
配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条
件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドからなり、
かつ細胞の分化を抑制する作用を有するポリペプチドを
コードするポリヌクレオチドまたはその相補鎖、
(c)配列番号:4で示される塩基配列からなるポリヌ
クレオチドまたはその相補鎖、 (d)配列番号:4で
示される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリン
ジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチ
ドからなり、かつ細胞の分化を抑制する作用を有するポ
リペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその相
補鎖、のいずれかのポリヌクレオチドからなるヒト遺伝
子が提供される。
【0021】以下、本明細書におけるアミノ酸、ペプチ
ド、塩基配列、核酸等の略号による表示は、IUPAC
−IUBの規定〔IUPAC-IUB Communication on Biologi
calNomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (198
4)〕、「塩基配列またはアミノ酸配列を含む明細書等の
作成のためのガイドライン」(特許庁編)および当該分
野における慣用記号に従うものとする。
【0022】
【発明の実施の形態】MAPキナーゼ活性抑制因子遺伝
子の一具体例としては、後述する実施例に示される「マ
ウスSpred1」、「マウスSpred2」、「ヒト
Spred1」および「ヒトSpred2」と名付けら
れたものを挙げることができる。「マウスSpred
1」の塩基配列は1332塩基長、「ヒトSpred
1」の塩基配列は1332塩基長からなり、それぞれ配
列番号:3または配列番号:7に示されるとおりであ
る。また、「マウスSpred2」の塩基配列は123
0塩基長、「ヒトSpred2」の塩基配列は1254
塩基長からなり、それぞれ配列番号:4または配列番
号:8に示されるとおりである。
【0023】該ヒトSpred1遺伝子は、配列番号:
1に示される444アミノ酸配列の長さからなる新規な
Spred(Spred1蛋白質という)をコードする
ヒトcDNAであり、全長1332塩基長からなってい
る。
【0024】該ヒトSpred2遺伝子は、配列番号:
2に示される418アミノ酸配列の長さからなる新規な
Spred(Spred2蛋白質という)をコードする
ヒトcDNAであり、全長1254塩基長からなってい
る。
【0025】本発明の遺伝子ヒトSpred1でコード
されるヒトSpred1蛋白質及び本発明の遺伝子ヒト
Spred2でコードされるヒトSpred2蛋白質
は、tblastn法を利用したNCBIのヒトEST
およびnrデーターベースの検索の結果、マウスSpr
ed1でコードされるマウスSpred1蛋白質および
マウスSpred2でコードされるマウスSpred2
蛋白質との相同性に基づき検出された。
【0026】本発明者は、先にマウスSpred遺伝子
を取得した。該マウスSpred遺伝子は、N末端にE
VH−1 (Ena/Vasodilator-stimulated phosphoprotei
n homology-1) ドメインをC末端にSproutyと相
同性のあるSprouty(SPR)ドメインをもつ蛋白質
をコードしており、該蛋白質をSpred (Sprouty-re
lated protein with EVH-1 domain) と命名した。デー
タベース検索によりSpredと類似するSpred−
2もクローニングした。C−kitと結合するドメイン
として約50アミノ酸からなるKit−結合ドメイン
(KBD)を同定した。これはSH2やPTBといった既
知のリン酸化チロシンを認識するドメインとは全く異っ
た配列でありその結合様式の解明に興味が待たれる。一
方、EVH−1ドメインはタンパク間の結合に機能する
もので、VASP (血管拡張作用因子刺激リン酸化タン
パク質(Vasodiletor-stimulated phosphoprotein) やW
ASP (ウイスコット・アルト゛リッチ症候群蛋白質: Wiskott-Aldri
ch syndrome protein) 等のアクチン重合化に関与する
分子群にみられるドメインである。これらのEVH−1
ドメインはFPPPPというプロリンリッチな配列を認
識し、細胞骨格再構築が行われている領域にアクチンを
集蔟させるために必要と思われた。しかしSpredの
EVH−1ドメインはこれらのEVH−1ドメインから
進化上やや離れており別の機能も予想された。マウスS
predはSCFによってチロシンリン酸化をうけ、S
proutyドメインによって細胞膜に局在していた。
【0027】そして野生型のSpred1、ないしSp
red2の強制発現はNGF(nervegrowth factor)によ
るPC12細胞の分化を抑制した。この際にNGFによ
るMAPキナーゼ活性の抑制が確認された。抗体マイク
ロインジェクションとC末端のSproutyドメイン
を欠損させたドミナント・ネガティブ変異体の過剰発現
においては、逆にPC12のNGFによる分化とMAP
キナーゼの活性化が増強されて、さらにSpred2の
発現が高い筋芽細胞株C2C12は低血清培地にさらさ
れると一過性にMAPキナーゼの活性化が低下し、筋肉
様細胞への分化を示した。C2C12においては野生型
のSpredの発現はそれだけで分化を誘導し、逆にS
pred1及びSpred2のドミナント・ネガティブ
変異体の過剰発現は分化を抑制した。このとき野生型S
predではMAPキナーゼ活性の低下が、ドミナント
・ネガティブ変異体ではMAPキナーゼ活性の増強が認
められた。これらの事実から、Spredは内因性のタ
ンパクレベルでのMAPキナーゼ抑制因子であることが
示された。
【0028】本発明のヒトSpred遺伝子および該遺
伝子によってコードされるアミノ酸配列のSpred蛋
白質は、マウスSpred−1とは核酸配列で、91.
1%とアミノ酸配列93.3%、またマウスSpred
−2とは、86.5%と91.9%とそれぞれ高い相同
性を有していた。
【0029】このことから、マウスSpredと高い配
列相同性を有するヒトSpredは、上記のマウスSp
redが有するそれら特性を有するヒト相応物であると
考えられる。
【0030】尚、本発明において遺伝子は、2本鎖DN
Aのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセ
ンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨であり、
またその長さに何ら制限されるものではない。従って、
本発明の遺伝子(DNA)には、特に言及しない限り、ヒ
トゲノムDNAを含む2本鎖DNA、およびcDNAを
含む1本鎖DNA(センス鎖)、並びに該センス鎖と相
補的な配列を有する1本鎖DNA、およびそれらの断片
のいずれもが含まれる。
【0031】本発明において遺伝子(DNA)とは、リー
ダ配列、コード領域、エキソン、イントロンを含む。ポ
リヌクレオチドは、RNA、DNAを例示できる。DN
A分子は、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAを含
み、特定アミノ酸配列を有するポリペプチドは、蛋白
質、ペプチドを含み、その断片、同族体、誘導体、変異
体を含む。
【0032】変異体は、天然に存在するアレル変異体、
天然に存在しない変異体、欠失、置換、付加、および挿
入された変異体等コードされるポリペプチドの機能を実
質的に変更しないポリヌクレオチド配列を意味する。
【0033】尚、これらアミノ酸配列の改変(変異等)
は、天然において、例えば突然変異や翻訳後の修飾等に
より生じることもあるが、天然由来の遺伝子(例えば本
発明の具体例遺伝子)を利用して人為的にこれを行なう
こともできる。
【0034】上記ポリペプチドは、アレル体、ホモロ
グ、天然の変異体で少なくとも90%、好ましくは、9
5%、より好ましくは98%、さらにより好ましくは9
9%相同なものを含む。
【0035】また、上記ポリペプチドは、共通に保存す
る構造的な特徴があり、本発明遺伝子のセンス鎖DNA
分子発現産物の生物活性は、例えばMAPキナーゼの活
性化の抑制、あるいはRafの活性化阻害作用、あるい
は神経や筋肉細胞への分化を抑制する活性など、これら
生物活性を有している。なおポリペプチドの相同性は配
列分析ソフトウェア、例えばFASTAプログラムを使
用した測定(Clustal,V., Methods Mol.Biol., 25, 307
-318 (1994))において、BLASTプログラムを使用
した測定において、或いはSWISSPLOTSで解析
することが出来る。
【0036】変異体DNAは、アミノ酸置換についてサ
イレントまたは保存変異体を意味し、塩基配列によって
コードされるアミノ酸残基が変らない塩基配列の変異の
ことを表わす。
【0037】保存的なアミノ酸置換の数は以下に示され
ているとおりである: 元のアミノ酸残基 保存的な置換アミノ酸残基 Ala Ser Arg Lys Asn Gln, His Asp Glu Cys Ser Gln Asn Glu Asp Gly Pro His Asn またはGln Ile Leu またはVal Leu Ile またはVal Lys Arg, または Glu Met Leu またはIle Phe Met, Leu またはTyr Ser Thr Thr Ser Trp Tyr Tyr Trp またはPhe Val Ile またはLeu 加えて、一般にシスティン残基をコードする1またはそ
れ以上のコドンは、特定のポリペプチドのジスフィド結
合に影響を与えるのでシステイン残基の欠失の結果、置
換することが可能である。
【0038】置換基を選択することによって作られる機
能における実質的な変化は、上記アミノ酸のリストに記
載されたものより少し保存性が劣っている:例えば、 a) 置換基の領域におけるポリペプチドの構造背景、 b) 標的部位のポリペプチドの電荷または疎水性、 c) アミノ酸側鎖の大きさ(容積)。
【0039】蛋白の特性に最も大きな変化を生み出すと
一般的に期待される置換は、以下のものである: a) 親水性残基、例えばセリンまたはスレオニンが疎水
性残基例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラ
ニン、ヴァリン、またはアラニンに対して置換される、 b) システィンまたはプロリンは、いかなる他の残基に
対して置換される、 c) 電気的陽性側鎖を有している残基、例えば、リジ
ン、アルギニン、ヒスチジンは電気的陰性残基、例え
ば、バルタアミルまたはアスパラギン酸によって置換さ
れるが、 d) 非常に大きな側鎖を有している残基、例えば、フェ
ニルアラニンはグリシンのような側鎖を有しないものと
置換できる。
【0040】以上のとおり、本発明ヒトSpred遺伝
子およびその遺伝子産物の提供は、MAPキナーゼ活性
抑制因子、あるいはRaf活性阻害因子としての新規遺
伝子の解明、把握、診断、予防および治療等に極めて有
用な情報乃至手段を与える。また、本発明遺伝子は、上
記Spred遺伝子のポリヌクレオチドおよびその遺伝
子産物と相互作用し、前記生物活性を促進する作用、本
発明遺伝子の遺伝子発現の誘導を促進する新規薬剤の開
発の上でも好適に利用できる。更に、個体或は組織にお
ける本発明遺伝子の発現またはその産物の発現の検出
や、該遺伝子の変異(欠失や点変異)乃至発現異常の検
出は、上記Spred1またはSpred2と相互作用
の解明おいて好適に利用できる。
【0041】本発明のヒトSpred遺伝子は、具体的
には配列番号:1または2で示されるアミノ酸配列をコ
ードする配列番号:3または4の塩基配列を含む遺伝
子、または該配列番号:3または4で示される塩基配列
の全部またはその相補鎖を含むポリヌクレオチドからな
る遺伝子として示されるが、特にこれらに限定されるこ
となく、例えば、上記特定のアミノ酸配列において一定
の改変を有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオ
チドや、上記特定のアミノ酸配列や塩基配列と一定の相
同性を有するポリヌクレオチドであることができる。前
記特定のアミノ酸配列や塩基配列と一定の相同性は、例
えば少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、よ
り好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上の
相同性を有するものであり、これら相同物を含む。
【0042】本発明ヒトSpred遺伝子改変体につい
ては、配列番号:1または2に示されるアミノ酸配列に
おいて、少なくとも1以上の、あるいは1または複数個
のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列
(改変されたアミノ酸配列)をコードする塩基配列を含
むポリヌクレオチドもまた包含される。
【0043】ここで、「アミノ酸の欠失、置換または付
加」の程度およびそれらの位置などは、改変された蛋白
質が、配列番号:1または2で示されるアミノ酸配列か
らなる蛋白質(ヒトSpred蛋白)と同様の機能を有
する同効物であれば特に制限されないが、少なくとも1
個以上の、好ましくは1から十数個、更に好ましくは1
から数個程度が、ヒトSpred蛋白と同様の機能を有
するうえで好ましく例示される。
【0044】ここで「同様の機能」とは、Spred活
性因子としてのMAPキナーゼの活性の抑制作用、ある
いはRafの活性抑制作用、あるいは癌細胞、神経細胞
や筋肉細胞の分化を抑制する作用を例示できる。
【0045】かくしてSpredはMAPキナーゼ抑制
因子ファミリーのひとつである。これらの特性を以後
「Spred活性」または「Spredポリペプチド活
性」または「Spredの生物学的活性」ということも
できる。これらの活性の中には、前記Spredポリペ
プチドの抗原性および免疫原性活性、特に配列番号1ま
たは2のポリペプチドの抗原性および免疫原性活性も含
まれる。本発明のポリペプチドはSpredの少なくと
も1つの生物学的活性を示すことが好ましい。
【0046】上記Spred活性において、該Spre
d生物活性として選択されるMAPキナーゼの活性の抑
制作用、あるいはRafの活性抑制作用、あるいは神経
や筋肉細胞の分化を抑制する作用の活性測定方法は後記
参考例に示されるように、例えばPC12細胞またはC
2C12細胞に本発明ヒトSpredをトランスフェク
トし、該細胞の分化の程度を免疫蛍光顕微鏡で検出し、
コントロール、或はNGFなどの成長因子を添加したと
きとの比較において、本発明のヒトSpredの分化の
抑制の程度を検出することにより、その有意な分化の抑
制によって、Spred活性を測定することができる。
また、MAPキナーゼの活性の抑制作用は、例えばPC
12細胞にSpredとヘマグルチニン・タグのついた
Erk2でコードされた発現ベクターでトランスフェク
トし、NGFで刺激した後、ヘマグルチニン・タグのつ
いたErk2を免疫沈降させ、基質としてミエリン塩基
蛋白および放射性標識されたATPを用いるイン・ビト
ロ・キナーゼアッセイによって、その放射線活性の程度
の減少度をMAPキナーゼの活性の抑制の程度として測
定することが例示できる。また、Rafの活性抑制作用
は、例えばEGF誘導されたRasまたはRafの活性
に対する自己リン酸化およびイン・ビトロ・キナーゼア
ッセイによって、その放射線活性の程度の減少度をRa
fの活性を抑制として測定することがすることができ
る。そしてこのRafの活性抑制作用によって、前記同
様MAPキナーゼの活性の抑制の程度として同様に測定
することができる。
【0047】また、上記改変されたアミノ酸配列をコー
ドする遺伝子は、その利用によって改変前のアミノ酸配
列をコードする本発明Spred遺伝子が検出できるも
のであってもよい。
【0048】さらに本発明のDNA分子としては、例え
ば配列番号:1または2に示されるアミノ酸配列からな
る蛋白質をコードする塩基配列を有するSpred遺伝
子を挙げることができるが、特にこれに限定されること
なく、当該Spred遺伝子の相同物も包含される。
【0049】ここで「Spred遺伝子の相同物」と
は、本発明Spred 遺伝子(またはそのDNA分子
産物)と配列相同性を有し、上記構造的特徴並びに遺伝
子発現パターンにおける共通性、および上記したような
その生物学的機能の類似性によりひとつの遺伝子ファミ
リーと認識される一連の関連遺伝子を意味し、Spre
d遺伝子のアレル体(対立遺伝子)も当然含まれる。
【0050】上記アミノ酸配列の改変(変異)などは、
天然において、例えば突然変異や翻訳後の修飾などによ
り生じることもあるが、天然由来の遺伝子(例えば本発
明のヒトSpredまたはヒトSpred遺伝子)に基
づいて人為的に改変することもできる。本発明は、この
ような改変・変異の原因および手段などを問わず、上記
特性を有する全ての改変遺伝子のDNA分子を包含す
る。本発明のDNA分子(ヒトSpred遺伝子)に
は、配列番号:1または2で示されるアミノ酸配列を有
する蛋白質をコードするポリヌクレオチドのDNA分子
の対立遺伝子(アレル体)もまた包含される。
【0051】上記の人為的手段としては、例えばサイト
スペシフィック・ミュータゲネシス〔Methods in Enzym
ology, 154, 350, 367-382 (1987);同 100, 468 (198
3);Nucleic Acids Res., 12, 9441 (1984);続生化学
実験講座1「遺伝子研究法II」、日本生化学会編, p105
(1986)〕などの遺伝子工学的手法、リン酸トリエステ
ル法やリン酸アミダイト法などの化学合成手段〔J. Am.
Chem. Soc., 89, 4801(1967);同 91, 3350 (1969);S
cience, 150, 178 (1968);Tetrahedron Lett.,22, 185
9 (1981);同 24, 245 (1983)〕およびそれらの組合せ
方法などが例示できる。より具体的には、DNAの合成
は、ホスホルアミダイト法またはトリエステル法による
化学合成によることもでき、市販されている自動オリゴ
ヌクレオチド合成装置上で行うこともできる。二本鎖断
片は、相補鎖を合成し、適当な条件下で該鎖を共にアニ
ーリングさせるか、または適当なプライマー配列と共に
DNAポリメラーゼを用い相補鎖を付加するかによっ
て、化学合成した一本鎖生成物から得ることもできる。
【0052】本発明DNA分子の具体的態様としては、
配列番号:3または4に示される塩基配列を有するDN
A分子を例示できる。この塩基配列中のコーディング領
域は、配列番号:1または2に示されるアミノ酸配列の
各アミノ酸残基を示すコドンの一つの組合せ例を示して
いる。本発明の遺伝子は、かかる特定の塩基配列を有す
るDNA分子に限らず、各アミノ酸残基に対して任意の
コドンを組合せ、選択した塩基配列を有することも可能
である。コドンの選択は、常法に従うことができ、例え
ば利用する宿主のコドン使用頻度などを考慮することが
できる〔NcleicAcids Res., 9, 43 (1981)〕。
【0053】また、本発明DNA分子は、前記のとお
り、配列番号:3または4に示される塩基配列と一定の
相同性を有する塩基配列からなるものも包含する。
【0054】上記相同性は、配列番号:3または4に示
される塩基配列と少なくとも70%の同一性、好ましく
は少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくと
も95%の同一性、最も好ましくは、98%の同一性を
有するポリヌクレオチドおよびその相補鎖ポリヌクレオ
チドを言う。
【0055】かかる遺伝子としては、例えば、0.1%
SDSを含む0.2×SSC中50℃または0.1%S
DSを含む1×SSC中、60℃のストリンジェントな
条件下で配列番号:3または4に示される塩基配列から
なるDNAとハイブリダイズする塩基配列を有するDN
A分子を例示することもできる。
【0056】本発明遺伝子は、マウスSpred遺伝子
の具体的な配列情報に基づいて、一般的遺伝子工学的手
法により容易に製造・取得することができる。
【0057】具体的には、マウスSpred蛋白質をコ
ードするマウスSpred遺伝子の適当な配列をプライ
マー又はプローブとして用い、本発明のヒトDNA分子
が発現される適当な起源より常法に従って調製されるc
DNAライブラリーから、ヒトSpred遺伝子を取得
することができる。
【0058】本発明遺伝子は、本発明により開示された
本発明遺伝子の具体例についての配列情報に基づいて、
一般的遺伝子工学的手法により容易に製造・取得するこ
とができる〔Molecular Cloning 2d Ed, Cold Spring H
arbor Lab. Press (1989);続生化学実験講座「遺伝子
研究法I、II、III」、日本生化学会編(1986)など参
照〕。
【0059】具体的には、本発明DNA分子が発現され
る適当な起源より、常法に従ってcDNAライブラリー
を調製し、該ライブラリーから、本発明遺伝子に特有の
適当なプローブや抗体を用いて所望クローンを選択する
ことにより実施できる〔Proc. Natl. Acad. Sci., US
A., 78, 6613 (1981);Science, 222, 778 (1983)な
ど〕。
【0060】上記において、cDNAの起源としては、
本発明の遺伝子を発現する各種の細胞、組織やこれらに
由来する培養細胞などが例示される。また、これらから
の全RNAの分離、mRNAの分離や精製、cDNAの
取得とそのクローニングなどはいずれも常法に従って実
施することができる。また、cDNAライブラリーは市
販されてもおり、本発明においてはそれらcDNAライ
ブラリー、例えばクローンテック社(Clontech Lab.In
c.)などより市販されている各種cDNAライブラリー
などを用いることもできる。
【0061】本発明の遺伝子のDNA分子をcDNAラ
イブラリーからスクリーニングする方法も、特に制限さ
れず、通常の方法に従うことができる。
【0062】具体的には、例えばcDNAによって産生
される蛋白質に対して、該蛋白質の特異抗体を使用した
免疫的スクリーニングにより対応するcDNAクローン
を選択する方法、目的のDNA配列に選択的に結合する
プローブを用いたプラークハイブリダイゼーション、コ
ロニーハイブリダイゼーションなどやこれらの組合せな
どを例示できる。
【0063】ここで用いられるプローブとしては、本発
明の遺伝子の塩基配列に関する情報をもとにして化学合
成されたDNAなどが一般的に使用できるが、既に取得
された本発明DNA分子やその断片も良好に利用でき
る。また、本発明のDNA分子の塩基配列情報に基づき
設定したセンス・プライマー、アンチセンス・プライマ
ーをスクリーニング用プローブとして用いることもでき
る。
【0064】前記プローブとして用いられるヌクレオチ
ド配列は、配列番号3または4に対応する部分ヌクレオ
チド配列であって、少なくとも15個の連続した塩基、
好ましくは20個の連続した塩基、より好ましくは30
個の連続した塩基、最も好ましくは50個の連続した塩
基を有するものも含まれる、或いは前記配列を有する陽
性クローンそれ自体をプローブとして用いることも出来
る。ここで本発明において選択されるプローブとして用
いられるヌクレオチド配列は、配列番号3または4に対
応する部分ヌクレオチド配列であって、かつ他のSpr
outyファミリー遺伝子やマウスSpredのDNA
配列とは異なるオリゴヌクレオチド配列のプライマー配
列であることを必須の要件とすることはいうまでもな
い。
【0065】本発明の遺伝子の取得に際しては、PCR
法〔Science, 230, 1350 (1985)〕によるDNA/RN
A増幅法が好適に利用できる。殊に、ライブラリーから
全長のcDNAが得られ難いような場合には、RACE
法〔Rapid amplification ofcDNA ends;実験医学、12
(6), 35 (1994)〕、特に5'-RACE法〔M.A. Frohma
n, etal., Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 8, 8998 (1
988)〕などの採用が好適である。
【0066】かかるPCR法の採用に際して使用される
プライマーは、本発明によって明らかにされた本発明の
遺伝子の配列情報に基づいて適宜設定でき、これは常法
に従って合成できる。尚、増幅させたDNA/RNA断
片の単離精製は、前記の通り常法に従うことができ、例
えばゲル電気泳動法などによればよい。
【0067】また、上記で得られる本発明遺伝子或いは
各種DNA断片は、常法、例えばジデオキシ法〔Proc.
Natl. Acad. Sci., USA., 74, 5463 (1977)〕やマキサ
ム−ギルバート法〔Methods in Enzymology, 65, 499
(1980)〕などに従って、また簡便には市販のシークエン
スキットなどを用いて、その塩基配列を決定することが
できる。
【0068】このようにして得られる本発明のDNA分
子によれば、例えば該DNA分子の一部または全部の塩
基配列を利用することにより、個体もしくは各種組織に
おける本発明のSpred遺伝子のDNA分子発現の有
無を特異的に検出することができる。
【0069】かかる検出は常法に従って行うことがで
き、例えばRT−PCR〔Reverse transcribed-Polyme
rase chain reaction; E.S. Kawasaki, et al., Amplif
ication of RNA. In PCR Protocol, A Guide to method
s and applications, AcademicPress,Inc.,SanDiego, 2
1-27 (1991)〕によるRNA増幅やノーザンブロッティ
ング解析〔Molecular Cloning, Cold Spring Harbor La
b. (1989)〕、in situRT−PCR〔Nucl. Acids Re
s., 21, 3159-3166 (1993)〕や in situ ハイブリダイ
ゼーションなどを利用した細胞レベルでの測定、NAS
BA法〔Nucleicacid sequence-based amplification,
Nature, 350, 91-92 (1991)〕およびその他の各種方法
を挙げることができる。好適には、RT−PCRによる
検出法を挙げることができる。
【0070】尚、ここでPCR法を採用する場合に用い
られるプライマーとしては、本発明のDNA分子のみを
特異的に増幅できる該遺伝子特有のものである限り、特
に制限はなく、本発明DNA分子の配列情報に基いて適
宜設定することができる。通常プライマーとして10〜
35程度のヌクレオチド、好ましくは15〜30ヌクレ
オチド程度の長さを有する本発明遺伝子の部分配列を有
するものを挙げることができる。
【0071】このように、本発明の遺伝子には、本発明
にかかるSpred遺伝子を検出するための特異プライ
マーおよび/または特異プローブとして使用されるDN
A断片もまた包含されるが、上記プライマーの要件と同
様に他のSproutyファミリー遺伝子やマウスSp
redのDNA配列とは異なるオリゴヌクレオチド・プ
ライマーであることを必須の要件とする。
【0072】当該DNA断片は、配列番号:3または4
に示される塩基配列からなるDNAとストリンジェント
な条件下でハイブリダイズすることを特徴とするDNA
として規定することできる。ここで、ストリンジェント
な条件としては、プライマーまたはプローブとして用い
られる通常の条件を挙げることができ、特に制限はされ
ないが、例えば、前述するような0.1%SDSを含む
0.2×SSC中50℃の条件または0.1%SDSを
含む1×SSC中60℃の条件を例示することができ
る。
【0073】本発明のSpred遺伝子のDNA分子の
提供によれば、通常の遺伝子工学的手法を用いることに
より、該DNA分子産物(Spred蛋白)またはこれ
を含む蛋白質を容易に大量に、安定して製造することが
できる。
【0074】従って本発明は、本発明のSpred遺伝
子によってコードされるSpred蛋白質などの蛋白質
を始め、該蛋白質の製造のための、例えば本発明遺伝子
を含有するベクター、該ベクターによって形質転換され
た宿主細胞、該宿主細胞を培養して上記本発明蛋白質を
製造する方法などをも提供するものである。
【0075】本発明蛋白質の具体的態様としては、配列
番号:1または2に示すアミノ酸配列を有するSpre
dポリペプチドを挙げることができるが、本発明蛋白質
には、該Spredポリペプチドのみならず、その相同
物も包含される。該相同物としては、上記配列番号:1
または2に示されるアミノ酸配列において、少なくとも
1以上、好ましくは1もしくは数個乃至複数個のアミノ
酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を有し、
且つ前記MAPキナーゼ活性を抑制する作用、Raf活
性を抑制する作用、あるいは癌細胞、神経細胞などの分
化を抑制する作用を有する蛋白質を挙げることができ
る。
【0076】具体的には、前記Spred遺伝子の相同
物(アレル体を含むSpred同等遺伝子)の遺伝子産
物を挙げることができる。
【0077】本発明の蛋白質は、本発明により提供され
るSpred遺伝子の配列情報に基づいて、常法の遺伝
子組換え技術〔例えば、Science, 224, 1431 (1984) ;
Biochem. Biophys. Res. Comm., 130, 692 (1985);Pro
c. Natl. Acad. Sci., USA.,80, 5990 (1983)など参
照〕に従って調製することができる。
【0078】該蛋白質の製造は、より詳細には、該所望
の蛋白をコードする遺伝子が宿主細胞中で発現できる組
換えDNA(発現ベクター)を作成し、これを宿主細胞
に導入して形質転換し、該形質転換体を培養し、次いで
得られる培養物から回収することにより行なわれる。
【0079】上記宿主細胞としては、原核生物および真
核生物のいずれも用いることができ、例えば原核生物の
宿主としては、大腸菌や枯草菌といった一般的に用いら
れるものが広く挙げられ、好適には大腸菌、とりわけエ
シェリヒア・コリ(Escherichia coli)株に含まれるも
のを例示できる。また、真核生物の宿主細胞には、脊椎
動物、酵母等の細胞が含まれ、前者としては、例えばサ
ルの細胞であるCOS細胞〔Cell, 23: 175 (1981)〕や
チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞およびそのジヒドロ
葉酸レダクターゼ欠損株〔Proc. Natl. Acad. Sci., US
A., 77: 4216 (1980)〕などが、後者としては、サッカ
ロミセス属酵母細胞などが好適に用いられる。勿論、こ
れらに限定される訳ではない。
【0080】原核生物細胞を宿主とする場合は、該宿主
細胞中で複製可能なベクターを用いて、このベクター中
に本発明遺伝子が発現できるように該遺伝子の上流にプ
ロモーターおよびSD(シャイン・アンド・ダルガー
ノ)塩基配列、更に蛋白合成開始に必要な開始コドン
(例えばATG)を付与した発現プラスミドを好適に利
用できる。上記ベクターとしては、一般に大腸菌由来の
プラスミド、例えばpBR322、pBR325、pU
C12、pUC13などがよく用いられるが、これらに
限定されず既知の各種のベクターを利用することができ
る。大腸菌を利用した発現系に利用される上記ベクター
の市販品としては、例えばpGEX−4T(Amersham P
harmacia Biotech社)、pMAL−C2,pMAl−P
2(New England Biolabs社)、pET21,pET2
1/lacq(Invitrogen社)、pBAD/His(In
vitrogen社)等を例示できる。
【0081】脊椎動物細胞を宿主とする場合の発現ベク
ターとしては、通常、発現しようとする本発明遺伝子の
上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部
位、ポリアデニル化部位および転写終了配列を保有する
ものが挙げられ、これは更に必要により複製起点を有し
ていてもよい。該発現ベクターの例としては、具体的に
は、例えばSV40の初期プロモーターを保有するpS
V2dhfr〔Mol. Cell. Biol., 1: 854 (1981)〕等が例
示できる。上記以外にも既知の各種の市販ベクターを用
いることができる。動物細胞を利用した発現系に利用さ
れるかかるベクターの市販品としては、例えばpEGF
P−N,pEGFP−C(Clontrech社)、pIND(I
nvitrogen社)、pcDNA3.1/His(Invitroge
n社)などの動物細胞用ベクターや、pFastBac
HT(GibciBRL社)、pAcGHLT(PharMi
ngen社)、pAc5/V5−His,pMT/V5−H
is,pMT/Bip/V5−his(以上Invitrogen
社)などの昆虫細胞用ベクターなどが挙げられる。
【0082】また、酵母細胞を宿主とする場合の発現ベ
クターの具体例としては、例えば酸性ホスフアターゼ遺
伝子に対するプロモーターを有するpAM82〔Proc.
Natl. Acad. Sci., USA., 80: 1 (1983)〕などが例示で
きる。市販の酵母細胞用発現ベクターには、例えばpP
ICZ(Invitrogen社)、pPICZα(Invitrogen
社)なとが包含される。
【0083】プロモーターとしても特に限定なく、エッ
シェリヒア属菌を宿主とする場合は、例えばトリプトフ
ァン(trp)プロモーター、lppプロモーター、lacプロモ
ーター、recAプロモーター、PL/PRプロモーターなどを
好ましく利用できる。宿主がバチルス属菌である場合
は、SP01プロモーター、SP02プロモーター、penPプロモ
ーターなどが好ましい。酵母を宿主とする場合のプロモ
ーターとしては、例えばpH05プロモーター、PGKプロモ
ーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどを好適
に利用できる。また、動物細胞を宿主とする場合の好ま
しいプロモーターとしては、SV40由来のプロモータ
ー、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネイン
プロモーター、ヒートショックプロモーター、サイトメ
ガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどを
例示できる。
【0084】尚、本発明遺伝子の発現ベクターとして
は、通常の融合蛋白発現ベクターも好ましく利用でき
る。該ベクターの具体例としては、グルタチオン−S−
トランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白として発現
させるためのpGEX(Promega社)などを例示でき
る。
【0085】また、成熟ポリペプチドのコード配列が宿
主細胞からのポリペプチドの発現、分泌を助けるポリヌ
クレオチド配列としては、分泌配列、リーダ配列が例示
でき、細菌宿主に対して融合成熟ポリペプチドの精製に
使用されるマーカー配列(ヘキサヒスチジン・タグ、ヒス
チジン・タグ)、哺乳動物細胞の場合はヘマグルチニン(H
A)・タグを例示できる。
【0086】所望の組換えDNA(発現ベクター)の宿
主細胞への導入法およびこれによる形質転換法として
は、特に限定されず、一般的な各種方法を採用すること
ができる。
【0087】また得られる形質転換体は、常法に従い培
養でき、該培養により所望のように設計した遺伝子によ
りコードされる本発明の目的蛋白質が、形質転換体の細
胞内、細胞外または細胞膜上に発現、生産(蓄積、分
泌)される。
【0088】該培養に用いられる培地としては、採用し
た宿主細胞に応じて慣用される各種のものを適宜選択利
用でき、培養も宿主細胞の生育に適した条件下で実施で
きる。
【0089】かくして得られる本発明の組換え蛋白質
は、所望により、その物理的性質、化学的性質などを利
用した各種の分離操作〔「生化学データーブックII」、
1175-1259 頁、第1版第1刷、1980年 6月23日株式会社
東京化学同人発行;Biochemistry, 25(25), 8274 (198
6); Eur. J. Biochem., 163, 313 (1987)など参照〕に
より分離、精製できる。
【0090】該方法としては、具体的には、通常の再構
成処理、蛋白沈澱剤による処理(塩析法)、遠心分離、
浸透圧ショック法、超音波破砕、限外濾過、分子篩クロ
マトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィ
ー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロ
マトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPL
C)などの各種液体クロマトグラフィー、透析法、これ
らの組合せが例示でき、特に好ましい方法としては、本
発明蛋白質に対する特異的な抗体を結合させたカラムを
利用したアフィニティクロマトグラフィーなどを例示す
ることができる。
【0091】尚、本発明蛋白質をコードする所望の遺伝
子の設計に際しては、配列番号:3または4に示される
Spred遺伝子の塩基配列を良好に利用することがで
きる。該遺伝子は、所望により、各アミノ酸残基を示す
コドンを適宜選択変更して利用することも可能である。
【0092】また、Spred遺伝子でコードされるア
ミノ酸配列において、その一部のアミノ酸残基ないしは
アミノ酸配列を置換、欠失、付加などにより改変する場
合には、例えばサイトスペシフィック・ミュータゲネシ
スなどの前記した各種方法により行うことができる。
【0093】本発明蛋白質は、また、配列番号:1また
は2に示すアミノ酸配列に従って、一般的な化学合成法
により製造することができる。該方法には、通常の液相
法および固相法によるペプチド合成法が包含される。
【0094】かかるペプチド合成法は、より詳しくは、
アミノ酸配列情報に基づいて、各アミノ酸を1個ずつ逐
次結合させて鎖を延長させていく所謂ステップワイズエ
ロンゲーション法と、アミノ酸数個からなるフラグメン
トを予め合成し、次いで各フラグメントをカップリング
反応させるフラグメント・コンデンセーション法とを包
含し、本発明蛋白質の合成は、そのいずれによってもよ
い。
【0095】上記ペプチド合成に採用される縮合法も、
常法に従うことができ、例えば、アジド法、混合酸無水
物法、DCC法、活性エステル法、酸化還元法、DPP
A(ジフェニルホスホリルアジド)法、DCC+添加物
(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシ
サクシンアミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−
2,3−ジカルボキシイミドなど)法、ウッドワード法
などを例示できる。
【0096】これら各方法に利用できる溶媒も、この種
ペプチド縮合反応に使用されることのよく知られている
一般的なものから適宜選択することができる。その例と
しては、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、ジメ
チルスルホキシド(DMSO)、ヘキサホスホロアミ
ド、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸
エチルなどおよびこれらの混合溶媒などを挙げることが
できる。
【0097】尚、上記ペプチド合成反応に際して、反応
に関与しないアミノ酸乃至ペプチドにおけるカルボキシ
ル基は、一般にはエステル化により、例えばメチルエス
テル、エチルエステル、第3級ブチルエステルなどの低
級アルキルエステル、例えばベンジルエステル、p−メ
トキシベンジルエステル、p−ニトロベンジルエステル
などのアラルキルエステルなどとして保護することがで
きる。
【0098】また、側鎖に官能基を有するアミノ酸、例
えばチロシン残基の水酸基は、アセチル基、ベンジル
基、ベンジルオキシカルボニル基、第3級ブチル基など
で保護されてもよいが、必ずしもかかる保護を行う必要
はない。更に、例えばアルギニン残基のグアニジノ基
は、ニトロ基、トシル基、p−メトキシベンゼンスルホ
ニル基、メチレン−2−スルホニル基、ベンジルオキシ
カルボニル基、イソボルニルオキシカルボニル基、アダ
マンチルオキシカルボニル基などの適当な保護基により
保護することができる。
【0099】上記保護基を有するアミノ酸、ペプチドお
よび最終的に得られる本発明蛋白質におけるこれら保護
基の脱保護反応もまた、慣用される方法、例えば接触還
元法や、液体アンモニア/ナトリウム、フッ化水素、臭
化水素、塩化水素、トリフルオロ酢酸、酢酸、蟻酸、メ
タンスルホン酸などを用いる方法などに従って実施する
ことができる。
【0100】かくして得られる本発明蛋白質は、前記し
た各種の方法、例えばイオン交換樹脂、分配クロマトグ
ラフィー、ゲルクロマトグラフィー、向流分配法などの
ペプチド化学の分野で汎用される方法に従って、適宜精
製を行うことができる。
【0101】本発明Spred蛋白質は、その特異抗体
を作成するための免疫抗原としても好適に利用でき、こ
の抗原を利用することにより、所望の抗血清(ポリクロ
ーナル抗体)およびモノクローナル抗体を取得すること
ができる。
【0102】該抗体の製造法自体は、当業者によく理解
されているところであり、本発明においてもこれら常法
に従うことができる〔例えば、続生化学実験講座「免疫
生化学研究法」、日本生化学会編(1986)など参照〕。
【0103】かくして得られる抗体は、例えばSpre
d蛋白の精製およびその免疫学的手法による測定ないし
は識別などに有利に利用することができる。
【0104】また、本発明のSpred遺伝子発現産
物、またはSpredポリペプチドおよびそれらの部分
は、MAPキナーゼ活性を抑制する作用或いはRaf活
性を抑制する作用、あるいは細胞の分化を抑制する作用
を有することから、例えば抗腫瘍剤として臨床応用でき
ると考えられる。また前記Spred遺伝子のDNA分
子発現産物の発現を増強するか、あるいはSpredポ
リペプチドの生物活性を増強する化合物(アクチベータ
ー)は、強い抗癌作用を有すると考えられ、これらも抗
腫瘍剤として臨床応用できると考えられる。また上記作
用を有する化合物は該化合物を有効成分とする抗腫瘍剤
はとして、前記Spred遺伝子発現産物、またはSp
redポリペプチドを有効成分として使用する抗腫瘍剤
と併用することにより、医薬組成物としても有用であ
る。
【0105】前記MAPキナーゼ活性を抑制するか、R
af活性を抑制するか、あるいは細胞の分化を抑制する
作用を有する化合物には、低分子化合物、高分子化合
物、Spredポリペプチドの変異体(Spredのア
ミノ酸配列の一部のアミノ酸が、付加、欠失、挿入また
は置換された修飾されたポリペプチド)、センス鎖DN
A分子、等が包含される。
【0106】上記において、Spredポリペプチドを
有効成分として使用する抗腫瘍剤としての抗癌効果また
は抗腫瘍効果は、例えはイン・ビトロ試験において、M
KN45細胞、CaR−3細胞、HBC−4細胞、U−
266細胞などのヒト癌細胞株にトランスフェクトさ
せ、癌細胞の分化度の抑制または癌細胞組織の減弱ある
いは癌細胞数の減少効果の有意性により、また、または
イン・ビボ試験においては、例えば動物モデルに癌細胞
を移植後、本発明のSpred遺伝子を癌細胞にトラン
スフェクトさせるか、Spredポリペプチドを癌組織
または血管内に投与することによって、癌組織の増大の
程度や減少の程度をコントロールと比較して抗癌効果ま
たは抗腫瘍効果として判定することができる。
【0107】医薬組成物において有効成分とする本発明
のSpred遺伝子発現産物、またはSpredポリペ
プチドには、その医薬的に許容される塩もまた包含され
る。かかる塩には、当業界で周知の方法により調製され
る、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウ
ム、マグネシウム、バリウム、アンモニウムなどの無毒
性アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム
塩などが包含される。更に上記塩には、本発明蛋白質と
適当な有機酸ないし無機酸との反応による無毒性酸付加
塩も包含される。代表的無毒性酸付加塩としては、例え
ば塩酸塩、塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、重硫
酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、ラウ
リン酸塩、硼酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、p
−トルエンスルホン酸塩(トシレート)、クエン酸塩、
マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ス
ルホン酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、アスコル
ビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩およびナプシレートな
どが例示される。
【0108】上記医薬組成物は、前記本発明の化合物を
活性成分として、その薬学的有効量を、適当な無毒性医
薬担体ないし希釈剤と共に含有するものが含まれる。
【0109】上記医薬組成物(医薬製剤)に利用できる
医薬担体としては、製剤の使用形態に応じて通常使用さ
れる、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面
活性剤、滑沢剤などの希釈剤或は賦形剤などを例示で
き、これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜
選択使用される。
【0110】特に好ましい本発明医薬製剤は、通常の蛋
白製剤などに使用され得る各種の成分、例えば安定化
剤、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整
剤、界面活性剤などを適宜使用して調製される。
【0111】上記安定化剤としては、例えばヒト血清ア
ルブミンや通常のL−アミノ酸、糖類、セルロース誘導
体などを例示でき、これらは単独でまたは界面活性剤な
どと組合せて使用できる。特にこの組合せによれば、有
効成分の安定性をより向上させ得る場合がある。
【0112】上記L−アミノ酸としては、特に限定はな
く例えばグリシン、システィン、グルタミン酸などのい
ずれでもよい。
【0113】上記糖としても特に限定はなく、例えばグ
ルコース、マンノース、ガラクトース、果糖などの単糖
類、マンニトール、イノシトール、キシリトールなどの
糖アルコール、ショ糖、マルトース、乳糖などの二糖
類、デキストラン、ヒドロキシプロピルスターチ、コン
ドロイチン硫酸、ヒアルロン酸などの多糖類などおよび
それらの誘導体などを使用できる。
【0114】界面活性剤としても特に限定はなく、イオ
ン性および非イオン性界面活性剤のいずれも使用でき、
例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキ
ルエステル系、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル
系、ソルビタンモノアシルエステル系、脂肪酸グリセリ
ド系などを使用できる。
【0115】セルロース誘導体としても特に限定はな
く、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシ
エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒ
ドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチル
セルロースナトリウムなどを使用できる。
【0116】上記糖類の添加量は、有効成分1μg当り
約0.0001mg程度以上、好ましくは約0.01〜
10mg程度の範囲とするのが適当である。界面活性剤
の添加量は、有効成分1μg当り約0.00001mg
程度以上、好ましくは約0.0001〜0.01mg程
度の範囲とするのが適当である。ヒト血清アルブミンの
添加量は、有効成分1μg当り約0.0001mg程度
以上、好ましくは約0.001〜0.1mg程度の範囲
とするのが適当である。アミノ酸は、有効成分1μg当
り約0.001〜10mg程度とするのが適当である。
また、セルロース誘導体の添加量は、有効成分1μg当
り約0.00001mg程度以上、好ましくは約0.0
01〜0.1mg程度の範囲とするのが適当である。
【0117】本発明医薬製剤中に含まれる有効成分の量
は、広範囲から適宜選択されるが、通常約0.0000
1〜70重量%、好ましくは0.0001〜5重量%程
度の範囲とするのが適当である。
【0118】また本発明医薬製剤中には、各種添加剤、
例えば緩衝剤、等張化剤、キレート剤などをも添加する
ことができる。ここで緩衝剤としては、ホウ酸、リン
酸、酢酸、クエン酸、ε−アミノカプロン酸、グルタミ
ン酸および/またはそれらに対応する塩(例えばそれら
のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシ
ウム塩などのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩)な
どを例示できる。等張化剤としては、例えば塩化ナトリ
ウム、塩化カリウム、糖類、グリセリンなどを例示でき
る。またキレート剤としては、例えばエデト酸ナトリウ
ム、クエン酸などを例示できる。
【0119】本発明医薬製剤は、溶液製剤として使用で
きる他に、これを凍結乾燥化し保存し得る状態にした
後、用時水、生埋的食塩水などを含む緩衝液などで溶解
して適当な濃度に調製した後に使用することも可能であ
る。
【0120】本発明の医薬製剤の投与単位形態として
は、各種の形態が治療目的に応じて選択でき、その代表
的なものとしては、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒
剤、カプセル剤などの固体投与形態や、溶液、懸濁剤、
乳剤、シロップ、エリキシルなどの液剤投与形態が含ま
れ、これらは更に投与経路に応じて経口剤、非経口剤、
経鼻剤、経膣剤、坐剤、舌下剤、軟膏剤などに分類さ
れ、それぞれ通常の方法に従い、調合、成形乃至調製す
ることができる。
【0121】例えば、錠剤の形態に成形するに際して
は、上記製剤担体として例えば乳糖、白糖、塩化ナトリ
ウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カ
オリン、結晶セルロース、ケイ酸、リン酸カリウムなど
の賦形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロッ
プ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキ
シメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、
メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合
剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキ
シメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプ
ロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウ
ム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、
炭酸カルシウムなどの崩壊剤、ポリオキシエチレンソル
ビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ス
テアリン酸モノグリセリドなどの界面活性剤、白糖、ス
テアリン、カカオバター、水素添加油などの崩壊抑制
剤、第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム
などの吸収促進剤、グリセリン、デンプンなどの保湿
剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイ
ド状ケイ酸などの吸着剤、精製タルク、ステアリン酸
塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコールなどの滑沢剤な
どを使用できる。
【0122】更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した
錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィ
ルムコーティング錠とすることができ、また二重錠ない
しは多層錠とすることもできる。
【0123】丸剤の形態に成形するに際しては、製剤担
体として例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、
硬化植物油、カオリン、タルクなどの賦形剤、アラビア
ゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノールなどの結
合剤、ラミナラン、カンテンなどの崩壊剤などを使用で
きる。
【0124】カプセル剤は、常法に従い通常本発明の有
効成分を上記で例示した各種の製剤担体と混合して硬質
ゼラチンカプセル、軟質カプセルなどに充填して調整さ
れる。
【0125】経口投与用液体投与形態は、慣用される不
活性希釈剤、例えば水、を含む医薬的に許容される溶
液、エマルジョン、懸濁液、シロップ、エリキシルなど
を包含し、更に湿潤剤、乳剤、懸濁剤などの助剤を含ま
せることができ、これらは常法に従い調製される。
【0126】非経口投与用の液体投与形態、例えば滅菌
水性乃至非水性溶液、エマルジョン、懸濁液などへの調
製に際しては、希釈剤として例えば水、エチルアルコー
ル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、
エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イ
ソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタ
ン脂肪酸エステルおよびオリーブ油などの植物油などを
使用でき、また注入可能な有機エステル類、例えばオレ
イン酸エチルなどを配合できる。これらには更に通常の
溶解補助剤、緩衝剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、保存
剤、分散剤などを添加することもできる。滅菌は、例え
ばバクテリア保留フィルターを通過させる濾過操作、殺
菌剤の配合、照射処理および加熱処理などにより実施で
きる。また、これらは使用直前に滅菌水や適当な滅菌可
能媒体に溶解することのできる滅菌固体組成物形態に調
製することもできる。
【0127】坐剤や膣投与用製剤の形態に成形するに際
しては、製剤担体として、例えばポリエチレングリコー
ル、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエス
テル類、ゼラチンおよび半合成グリセライドなどを使用
できる。
【0128】ペースト、クリーム、ゲルなどの軟膏剤の
形態に成形するに際しては、希釈剤として、例えば白色
ワセリン、パラフィン、グリセリン、セルロース誘導
体、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、
シリコン、ベントナイトおよびオリーブ油などの植物油
などを使用できる。
【0129】経鼻または舌下投与用組成物は、周知の標
準賦形剤を用いて、常法に従い調製することができる。
【0130】尚、本発明薬剤中には、必要に応じて着色
剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などや他の医薬品な
どを含有させることもできる。
【0131】上記医薬製剤の投与方法は、特に制限がな
く、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾
患の程度などに応じて決定される。例えば錠剤、丸剤、
液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤およびカプセル剤は経口投
与され、注射剤は単独でまたはブドウ糖やアミノ酸など
の通常の補液と混合して静脈内投与され、更に必要に応
じ単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与され、
坐剤は直腸内投与され、経膣剤は膣内投与され、経鼻剤
は鼻腔内投与され、舌下剤は口腔内投与され、軟膏剤は
経皮的に局所投与される。
【0132】上記医薬製剤中に含有されるべき有効成分
の量およびその投与量は、特に限定されず、所望の治療
効果、投与法、治療期間、患者の年齢、性別その他の条
件などに応じて広範囲より適宜選択される。一般的に
は、該投与量は、通常、1日当り体重1kg当り、約
0.01μg〜10mg程度、好ましくは約0.1μg
〜1mg程度とするのがよく、該製剤は1日に1〜数回
に分けて投与することができる。
【0133】本発明者らは、後記実施例に示されるよう
に、本発明のヒトSpred1またはヒトSpred2
は、マウスSpred1またはマウスSpred2と高
いアミノ酸配列の相同性を有することを見い出した。
【0134】本発明ヒトSpred遺伝子の全部または
一部のセンス鎖を包含する任意の遺伝子発現ベクターを
作成し、該発現ベクターをこれら組織において強制的に
ヒトSpred遺伝子の発現を起こさせることにより、
MAPキナーゼ活性抑制因子としてのヒトSpred遺
伝子の発現増強に基づくMAPキナーゼ活性の抑制作
用、またはRaf活性の抑制作用等の細胞外シグナルに
応じた細胞の増殖と分化に関連するMAPキナーゼ、R
as、及びRafを介した情報伝達系の制御作用を有す
る遺伝子治療用組成物として、或いは遺伝子治療剤とし
て利用できると考えられる。
【0135】従って、本発明は、Spred遺伝子の全
部または一部のセンス鎖を含有する遺伝子治療用ベクタ
ーおよび該ベクターによりSpred遺伝子のセンス鎖
を導入した細胞を有効成分とする医薬を提供しようとす
るものである。
【0136】即ち、本発明によれば、配列番号:3また
は4で示される塩基配列の全部または一部を含むSpr
ed遺伝子のセンス鎖を含有する遺伝子治療用導入用ベ
クターおよび該ベクターによりSpred遺伝子センス
鎖を導入した細胞、並びに該遺伝子治療用導入用ベクタ
ーおよび該ベクターによりSpred遺伝子センス鎖を
導入した細胞を有効成分とする遺伝子治療剤が提供され
る。
【0137】また、本発明によれば、配列番号:3また
は4で示される塩基配列の全部または一部のセンス鎖を
含むSpred遺伝子センス鎖を含有する遺伝子治療用
導入用ベクターおよび該ベクターによりSpred遺伝
子センス鎖を導入した細胞を、例えば癌患者の癌細胞と
相互作用させるため、癌患者の癌組織内または患者の血
管内に投与することによってこれら癌組織におけるMA
Pキナーゼ活性の抑制作用、またはRaf活性の抑制作
用に基づく抗腫瘍作用、あるいはこれら細胞におけるS
pred遺伝子の発現量を増加させることを特徴とする
癌患者の腫瘍の進展抑制剤およびMAPキナーゼ活性抑
制剤、またはRaf活性抑制剤、或いは癌細胞の分化を
抑制する抗腫瘍剤を提供することができる。同様に本発
明のSpred遺伝子センス鎖を導入した細胞を有効成
分とする遺伝子治療剤の提供により、MAPキナーゼ活
性抑制剤、またはRaf活性抑制剤、或いは癌細胞の分
化を抑制する抗腫瘍剤に係る薬剤の提供が可能である。
【0138】更にまた、本発明によれば、上記ヒトSp
red遺伝子センス鎖を含有する遺伝子治療用導入用の
ウイルスベクターを有効成分として含有する医薬、特
に、MAPキナーゼ活性抑制作用、またはRaf活性抑
制作用に基づく遺伝子の転写を促進するための処置等に
使用される当該医薬が提供される。
【0139】以下、かかる遺伝子治療につき詳述する。
尚、以下の遺伝子治療の実施においては、特記しないか
ぎり、化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA、遺
伝学、および免疫学の慣用的な方法を用いることができ
る。これらは、例えばマニアティス(Maniatis,T., et a
l., Molecular cloning: A laboratory manual (ColdSp
ring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New Yo
rk (1982))、サムブルック(Sambrook,J., et al.,Molec
ular cloning: A laboratory manual, 2nd Ed. (Cold S
pring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New Y
ork (1981))、アウスベル(Ausbel,F.M., et al., Curre
nt Protocols in Molecular Biology,John Wiley and S
ons, New York, New York,(1992))、グローバー(Glove
r,D.,DNA Cloning,I and II(Oxford Press)(1985))、ア
ナンド(Anand,Techniques forthe Analysis of Complex
Genomes,(Academic Press(1992))、グスリー(Guthrie,
G., et al., Guide to Yeast Genetics and Molecular
Biology, (Academic Press)(1991))およびフィンク(Fin
k,et al., Hum. Gene Ther., 3, 11-19(1992)に記載さ
れている。
【0140】本発明の遺伝子治療によれば、本発明ヒト
Spred遺伝子の発現する細胞において、細胞内のm
RNAに対して相補的配列を作り出し、翻訳を促し、S
pred遺伝子の発現を増強するためのセンス医薬の提
供によるMAPキナーゼ活性抑制作用、またはRaf活
性抑制作用に基づく遺伝子の転写の促進の処置等に使用
される当該医薬が提供される。
【0141】上記センス・オリゴヌクレオチドを用いた
癌患者に対する遺伝子治療によれば、レトロウイルス、
アデノウイルス、AAV由来のベクターに該センス・オ
リゴヌクレオチドを組み込み、これを癌細胞に感染させ
てセンス・オリゴヌクレオチドを過剰発現させることに
より、所望の抗腫瘍効果を得ることが出来る。
【0142】このように癌細胞にセンス・オリゴヌクレ
オチドを導入してSpred蛋白の発現を促進させる場
合、当該センス・オリゴヌクレオチドはSpred遺伝
子の全長に対応するものである必要はなく、例えば該S
pred遺伝子の発現機能を促進する機能と実質的に同
質な機能を保持する限りにおいて、前記した改変体であ
っても、また特定の機能を保持した一部配列からなる遺
伝子を使用することもできる。
【0143】かかる組換えおよび染色体外維持の双方の
ための所望遺伝子の導入のためのベクターは、当該分野
において既に知られており、本発明ではかかる既知のベ
クターのいずれもが使用できる。例えば、発現制御エレ
メントに連結したSpredのセンス・オリゴヌクレオ
チドのコピーを含み、かつ目的の細胞内で当該センス・
オリゴヌクレオチド産物を発現できるウイルスベクター
またはプラスミドベクターを挙げることができる。かか
るベクターとして、通常前述する発現用ベクターを利用
することもできるが、好適には、例えば起源ベクターと
して、米国特許第5252479号明細書およびPCT
国際公開WO93/07282号明細書に開示されたベ
クター(pWP−7A、pwP−19、pWU−1、p
WP−8A、pWP−21および/またはpRSVLな
ど)またはpRC/CMV(Invitrogen社製)などを用
いて、調製されたベクターを挙げることができる。より
好ましくは、後述する各種ウイルス・ベクターである。
【0144】なお、遺伝子導入治療において用いられる
ベクターに使用されるプロモーターとしては、各種疾患
の治療対象となる患部組織に固有のものを好適に利用す
ることができる。
【0145】その具体例としては、例えば、肝臓に対し
ては、アルブミン、α−フェトプロティン、α1−アン
チトリプシン、トランスフェリン、トランススチレンな
どを例示できる。結腸に対しては、カルボン酸アンヒド
ラーゼI、カルシノエンブロゲンの抗原などを例示でき
る。子宮および胎盤に対しては、エストロゲン、アロマ
ターゼサイトクロームP450、コレステロール側鎖切
断P450、17アルファーヒドロキシラーゼP450
などを例示できる。
【0146】前立腺に対しては、前立腺抗原、gp91
−フォックス遺伝子、前立腺特異的カリクレインなどを
例示できる。乳房に対しては、erb−B2、erb−
B3、β−カゼイン、β−ラクトグロビン、乳漿蛋白質
などを例示できる。肺に対しては、活性剤蛋白質Cウロ
グロブリンなどを例示できる。皮膚に対しては、K−1
4−ケラチン、ヒトケラチン1または6、ロイクリンな
どを例示できる。
【0147】脳に対しては、神経膠繊維質酸性蛋白質、
成熟アストロサイト特異蛋白質、ミエリン塩基性蛋白
質、チロシンヒドロキシラーゼなどを例示できる。膵臓
においては、ヴィリン、グルカゴン、ランゲルハンス島
アミロイドポリペプチドなどを例示できる。甲状腺に対
しては、チログロブリン、カルシトニンなどを例示でき
る。骨に対しては、α1コラーゲン、オステオカルシ
ン、骨シアログリコプロティンなどを例示できる。腎臓
に対してはレニン、肝臓/骨/腎臓アルカリ性ホスフォ
ターゼ、エリスロポエチンなどを、膵臓に対しては、ア
ミラーゼ、PAP1などを例示できる。
【0148】なおセンス・オリゴヌクレオチド導入用ベ
クターの製造において、導入されるセンス・オリゴヌク
レオチド(Spred遺伝子配列に対応する逆相補配列
全部または一部)は、本発明のSpred遺伝子の塩基
配列情報に基づいて、前記の如く、一般的遺伝子工学的
手法により容易に製造・取得することができる。
【0149】かかるセンス・オリゴヌクレオチド導入用
ベクターの細胞への導入は、例えばエレクトロポレーシ
ョン、リン酸カルシウム共沈法、ウイルス形質導入、遺
伝子銃などを始めとする、細胞にDNAを導入する当該
分野において既に知られている各種の方法に従って行う
ことができる。なお、Spred のセンス・オリゴヌ
クレオチドで形質転換された細胞は、それ自体単離状態
でMAPキナーゼ活性やRaf活性、あるいは細胞の分
化を抑制するための医薬や、治療研究のためのモデル系
として利用することも可能である。
【0150】遺伝子治療においては、上記のセンス・オ
リゴヌクレオチド導入用ベクターは、患者の対象とする
組織部位に局所的にまたは全身的に注射投与することに
より患者の標的細胞内に導入することができる。この際
全身的投与によれば、他の部位にSpredmRNAが
発現し得るいずれの細胞にも到達させることができる。
形質導入された遺伝子が各標的細胞の染色体内に恒久的
に取り込まれない場合には、該投与を定期的に繰り返す
ことによって達成できる。
【0151】本発明の遺伝子治療方法は、前述するセン
ス・オリゴヌクレオチド導入用の材料(センス・オリゴ
ヌクレオチド導入用ベクター)を直接体内に投与するイ
ンビボ(in vivo)法と、患者の体内より一旦標的とす
る細胞を取り出して体外で遺伝子を導入して、その後、
該細胞を体内に戻すエクスビボ(ex vivo)法の両方の
方法を包含する。
【0152】またSpredのセンス・オリゴヌクレオ
チドを直接細胞内に導入し、RNA鎖を切断する活性分
子であるリボザイムによる遺伝子治療も可能である。
【0153】センス・オリゴヌクレオチドを導入する標
的細胞は、遺伝子治療(処置)の対象により適宜選択す
ることができる。例えば、標的細胞として、特に脳・神
経組織、脳細胞、脳神経細胞の他、Spred発現が認
められる組織の細胞、心臓、胎盤、肺、肝臓、膵臓、脾
臓、小腸、末梢血組織以外に、神経細胞、リンパ球、線
維芽細胞、肝細胞、造血幹細胞、如き細胞などを挙げる
ことができる。
【0154】上記遺伝子治療におけるセンス・オリゴヌ
クレオチド導入方法には、ウイルス的導入方法および非
ウイルス的導入方法が含まれる。
【0155】ウイルス的導入方法としては、例えば、S
pred のセンス・オリゴヌクレオチドが正常細胞に
発現する外来の物質であることに鑑みて、ベクターとし
てレトロウイルスベクターを用いる方法を挙げることが
できる。その他のウイルスベクターとしては、アデノウ
イルスベクター、HIV(human immunodeficiency vir
us)ベクター、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV,
adeno-associated virus)、ヘルペスウイルスベクタ
ー、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターおよびエ
プスタイン−バーウイルス(EBV,Epstein-Barr vir
us)ベクターなどがあげられる。
【0156】非ウイルス的な遺伝子導入方法としては、
リン酸カルシウム共沈法;DNAを封入したリポソーム
と予め紫外線で遺伝子を破壊した不活性化センダイウイ
ルスを融合させて膜融合リポソームを作成し、細胞膜と
直接融合させてDNAを細胞内に導入する膜融合リポソ
ーム法〔Kato,K.,et al., J. Biol .Chem., 266, 22071
-22074 (1991)〕;プラスミドDNAを金でコートして
高圧放電によって物理的に細胞内にDNAを導入する方
法〔Yang,N.S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 87,9
568-9572 (1990)〕;プラスミドDNAを直接インビボ
で臓器や腫瘍に注入するネイキッド(naked)DNA法
〔Wolff,J.A.,et al. Science, 247,1465-1467 (199
0)〕;多重膜正電荷リポソームに包埋した遺伝子を細胞
に導入するカチオニック・リポソーム法〔八木国夫, 医
学のあゆみ, Vol.175,No.9,635-637 (1995)〕;特定細
胞のみに遺伝子を導入し、他の細胞に入らないようにす
るために、目的とする細胞に発現するレセプターに結合
するリガンドをDNAと結合させてそれを投与するリガ
ンド−DNA複合体法〔Frindeis,et al.,Trends Biote
chnol.,11,202 (1993); Miller,et al.,FASEB J.,9,190
(1995)〕などを使用することができる。
【0157】上記リガンド−DNA複合体法には、例え
ば肝細胞が発現するアシアロ糖蛋白レセプターをターゲ
ットとしてアシアロ糖蛋白をリガンドとして用いる方法
〔Wu, et al.,J.Biol. Chem., 266,14338 (1991); Ferk
ol,et al.,FASEB J.,7,1081-1091 (1993)〕などが含ま
れる。
【0158】本発明の遺伝子治療において、所望遺伝子
の標的細胞または標的組織への導入方法には、代表的に
は2種類の方法が含まれる。
【0159】その第1法は、治療対象とする患者から標
的細胞を採取した後、該細胞を体外で例えばインターロ
イキン−2(IL−2)などの添加の下で培養し、レトロ
ウイルスベクターに含まれる目的とするSpred を
センス・オリゴヌクレオチド導入した後、得られる細胞
を再移植する手法(ex vivo法)である。該方法はADA
欠損症を始め、欠陥遺伝子によって発生する遺伝子病や
癌、動脈硬化症、AIDSなどの治療に好適であると報
告されている。
【0160】第2法は、目的センス・オリゴヌクレオチ
ド(Spred センス・オリゴヌクレオチド)を直接
患者の肝臓内や門脈内、血管組織などの標的部位に注入
する遺伝子直接導入法(直接法)である。
【0161】上記遺伝子治療の第1法は、より詳しく
は、例えば次のようにして実施される。即ち、患者から
採取した単核細胞を血液分離装置を用いて単球から分取
し、分取細胞をIL−2の存在下にAIM−V培地など
の適当な培地で72時間程度培養し、導入すべきセンス
・オリゴヌクレオチド(Spred センス・オリゴヌ
クレオチド)を含有するベクターを加える。 センス・
オリゴヌクレオチドの導入効率をあげるために、プロタ
ミン存在下に32℃で1時間、2500回転にて遠心分
離した後、37℃で10%炭酸ガス条件下で24時間培
養してもよい。この操作を数回繰り返した後、更にIL
−2存在下にAIM−V培地などで48時間培養し、細
胞を生理食塩水で洗浄し、生細胞数を算定し、センス・
オリゴヌクレオチド導入効率を前記in situ PCRや、
例えば所望の対象が-本発明のようにSpred活性(転
写活性)であればその活性の程度を測定することによ
り、目的センス・オリゴヌクレオチド導入効果を確認す
る。
【0162】また、培養細胞中の細菌・真菌培養、マイ
コプラズマの感染の有無、エンドトキシンの検索などの
安全度のチェックを行い、安全性を確認した後、予測さ
れる効果用量のセンス・オリゴヌクレオチド(Spre
d センス・オリゴヌクレオチド)が導入された培養細
胞を患者に点滴静注により戻す。かかる方法を例えば数
週間から数カ月間隔で繰り返することにより遺伝子治療
が施される。
【0163】ここでウイルスベクターの投与量は、導入
する標的細胞により適宜選択される。通常、ウイルス価
として、例えば標的細胞 1×108細胞に対して1×1
3cfuから1×108cfuの範囲となる投与量を採
用することが好ましい。
【0164】上記第1法の別法として、目的センス・オ
リゴヌクレオチド(Spred センス・オリゴヌクレ
オチド)を含有するレトロウイルスベクターを含有する
ウイルス産生細胞と例えば患者の細胞とを共培養して、
目的とする細胞へセンス・オリゴヌクレオチド(Spr
ed センス・オリゴヌクレオチド)を導入する方法を
採用することもできる。
【0165】遺伝子治療の第2法(直接法)の実施に当
たっては、特に体外における予備実験によって、遺伝子
導入法によって、実際に目的センス・オリゴヌクレオチ
ド(Spred センス・オリゴヌクレオチド)が導入
されるか否かを、予めベクター遺伝子cDNAのPCR
法による検索やin situPCR法によって確認するか、
あるいは目的センス・オリゴヌクレオチド(Spred
センス・オリゴヌクレオチド)の導入に基づく所望の
治療効果である特異的活性の上昇や標的細胞の増殖増加
や増殖抑制などを確認することが望ましい。また、ウイ
ルスベクターを用いる場合は、増殖性レトロウイルスな
どの検索をPCR法で行うか、逆転写酵素活性を測定す
るか、あるいは膜蛋白(env)遺伝子をPCR法でモニタ
ーするなどにより、遺伝子治療に際してセンス・オリゴ
ヌクレオチド導入による安全性を確認することが重要で
あることはいうまでもない。
【0166】本発明はまた、本発明のセンス・オリゴヌ
クレオチド導入用ベクターまたは目的センス・オリゴヌ
クレオチド(Spredセンス・オリゴヌクレオチド
ど)が導入された細胞を活性成分とし、それを薬学的有
効量、適当な無毒性医薬担体ないしは希釈剤と共に含有
する医薬組成物または医薬製剤(遺伝子治療剤)を提供
する。
【0167】本発明の医薬組成物(医薬製剤)に利用で
きる医薬担体としては、製剤の使用形態に応じて通常使
用される、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、
表面活性剤、滑沢剤などの希釈剤ないし賦形剤などを例
示でき、これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて
適宜選択使用できる。
【0168】例えば、本発明のセンス・オリゴヌクレオ
チド導入用ベクターを含む医薬製剤は、該ベクターをリ
ポソームに包埋された形態あるいは所望のセンス・オリ
ゴヌクレオチドが包含されるレトロウイルスベクターを
含むウイルスによって感染された培養細胞の形態に調製
される。
【0169】これらは、リン酸緩衝生理食塩液(pH
7.4)、リンゲル液、細胞内組成液用注射剤中に配合
した形態などに調製することもでき、またプロタミンな
どの遺伝子導入効率を高める物質と共に投与されるよう
な形態に調製することもできる。
【0170】上記医薬製剤の投与方法は、特に制限がな
く、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾
患の程度などに応じて決定される。
【0171】上記医薬製剤中に含有されるべき有効成分
の量およびその投与量は、特に限定されず、所望の治療
効果、投与法、治療期間、患者の年齢、性別その他の条
件などに応じて広範囲より適宜選択される。
【0172】一般には、医薬製剤としての所望センス・
オリゴヌクレオチド含有レトロウイルスベクターの投与
量は、1日当り体重1kg当り、例えばレトロウイルス
の力価として約1×103pfuから1×1015pfu
程度とするのがよい。
【0173】また所望の導入用センス・オリゴヌクレオ
チドが導入された細胞の場合は、1×104細胞/body
から1×1015細胞/body程度の範囲から選ばれるのが
適当である。
【0174】該製剤は1日に1回または数回に分けて投
与することもでき、1から数週間間隔で間欠的に投与す
ることもできる。尚、好ましくは、プロタミンなど遺伝
子導入効率を高める物質またはこれを含む製剤と併用投
与することができる。
【0175】また本発明によれば、ヒトSpred遺伝
子の存在を検出するために、血液または血清のごとき生
物学的試料を調製し、所望により核酸を抽出し、ヒトS
pred遺伝子が存在するか否かについて分析すること
が可能である。 該検出方法は、例えば、ヒトSpre
dのDNA断片を作成し、ヒトSpred遺伝子のスク
リーニングおよび/またはその増幅に用いられるように
設計される。より具体的には、例えばプラークハイブリ
ダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション、サ
ザンブロット法、ノーザンブロット法などにおけるプロ
ーブとしての性質を有するもの、核酸配列をポリメラー
ゼで増幅するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、
増幅したSpredの全部または一部のDNA断片を得
ることができるためのプローブとしての性質を有するも
のを作成できる。そのためにはまずヒトSpredと同
じ配列を持つプライマーを作成し、スクリーニング用プ
ローブとして用い、生物学的試料(核酸試料)と反応さ
せることにより、当該ヒトSpred配列を有する遺伝
子の存在を確認することができる。該核酸試料は、標的
配列の検出を容易にする種々の方法、例えば変性、制限
消化、電気泳動またはドットブロッティングで調製して
もよい。
【0176】前記スクリーニング方法としては、特にP
CR法を用いるのが感度の点から好ましく、該方法は、
Spred断片をプライマーとして用いる方法であれば
とくに制限されず、従来公知の方法(Science, 230, 135
0-1354(1985))や新たに開発された、或いは将来使用さ
れるPCR変法(榊 佳之、ほか編、羊土社、実験医学、
増刊, 8(9)(1990); 蛋白質・核酸・酵素、臨時増刊、共
立出版(株), 35(17)(1990))のいずれも利用することが
可能である。
【0177】プライマーとして使用されるDNA断片
は、化学合成したオリゴDNAであり、これらオリゴD
NAの合成は自動DNA合成装置など、例えばDNA合
成装置(PharmaciaLKB Gene Assembler Plus: ファルマ
シア社製)を使用して合成することができる。合成され
るプライマー(5'−プライマーまたは3'−プライマー)
の長さは約10〜30ヌクレオチド程度が好ましく例示
できる。上記スクリーニングに用いられるプローブは、
通常は標識したプローブを用いるが、非標識であっても
よく、直接的または間接的に標識したリガンドとの特異
的結合によって検出してもよい。適当な標識、並びにプ
ローブおよびリガンドを標識する方法は、本発明の技術
分野で知られており、ニック・トランスレーション、ラ
ンダム・プライミングムまたはキナーゼ処理のような、
既知の方法によって取り込ませることができる放射性標
識、ビオチン、蛍光性基、化学発光基、酵素、抗体など
がこれらの技術に包含される。
【0178】検出のために用いるPCR法としては、例
えばRT−PCR法が例示されるが、当該分野で用いら
れる種々の変法を適応することができる。
【0179】さらに本発明のヒトSpred遺伝子の利
用において、ヒトSpred遺伝子の発現レベルやヒト
Spred遺伝子のポリモルフィズム(多型:個人差)
を調べることにより(ヒトSpredの遺伝子診断)、
薬剤の選択を始めとする治療法の選択のための診断・分
析(より副作用の少ない治療法の選択を促す)に有用で
ある。
【0180】一般に、ヒトの薬物代謝には、大きな個人
差があることが知られているが、この個人差を判定する
ことは、ヒトに投与される薬物による副作用の軽減や、
負っている疾患の治療法の選択のために有用である。
【0181】また、本発明の測定方法は、試料中のSp
red遺伝子の検出のための試薬キットを利用すること
によって、簡便に実施することができる。
【0182】故に本発明は上記ヒトSpredの DN
A断片を含有することを特徴とするヒトSpredの検
出用試薬キットが提供される。
【0183】該試薬キットは、少なくとも配列番号:3
または4に示される塩基配列もしくはその相補的塩基配
列の一部または全てにハイブリダイズするDNA断片を
必須構成成分として含んでいれば、他の成分として、標
識剤、PCR法に必須な試薬(例えば、TaqDNAポ
リメラーゼ、デオキシヌクレオチド三リン酸、プライマ
ーなど)が含まれていてもよい。
【0184】標識剤としては、放射性同位元素または蛍
光物質などの化学修飾物質などが挙げられるが、DNA
断片自身が予め該標識剤でコンジュゲートされていても
よい。更に当該試薬キットには、測定の実施の便益のた
めに適当な反応希釈液、標準抗体、緩衝液、洗浄剤、反
応停止液などが含まれていてもよい。
【0185】更に本発明は、前記測定方法を用いるヒト
Spred遺伝子の多型検出方法および該方法に用いる
診断剤並びに診断用キットをも提供するものである。
【0186】また、前記方法を用いることにより、被検
試料中から得られたヒトSpred配列を直接的若しく
は間接的に配列決定することにより、野生型Spred
と相同性の高い相同物である新たなヒトSpred遺伝
子に関連する関連遺伝子を見出すことができる。
【0187】従って、本発明はかかる測定と被検試料中
のヒトSpredの DNAの配列決定により、被検試
料中のヒトSpred遺伝子に関連する関連遺伝子のス
クリーニング方法をも提供するものである。
【0188】また、本発明の配列番号:1または2で示
されるヒトSpred遺伝子でコードされる蛋白質、ま
たは該配列番号:1または2において、少なくとも1以
上の、或いは1もしくは数個乃至複数個のアミノ酸が欠
失、置換または付加されたアミノ酸配列、またはこれら
の断片から蛋白質を合成し、もしくは該蛋白質に対する
抗体を合成することによって、野生型Spredおよび
/または変異Spredの測定が可能となる。
【0189】従って、本発明は、ヒト野生型Spred
および/またはヒト変異Spredの抗体測定法、抗原
測定法を提供するものである。かかる変化は、この分野
における前記慣用技術によるヒトSpred配列分析に
よっても決定できるが、更に好ましくは、抗体(ポリク
ローナルまたはモノクローナル抗体)を用いて、ヒトS
pred蛋白質中の相違、またはヒトSpred蛋白質
の有無を検出することができる。本発明の測定法の具体
的な例示としては、ヒトSpred抗体は、血液・血清
などのヒトより採取した生体材料試料含有溶液からSp
red蛋白質を免疫沈降し、かつポリアクリルアミドゲ
ルのウェスタン・ブロットまたはイムノブロット上でヒ
トSpred蛋白質と反応することができる。また、ヒ
トSpred抗体は免疫組織化学的技術を用いてパラフ
ィンまたは凍結組織切片中のヒトSpred蛋白質を検
出することができる。
【0190】抗体産生技術および精製する技術は当該分
野においてよく知られているので、これらの技術を適宜
選択することができる。
【0191】ヒト野生型Spredまたはその突然変異
体を検出する方法に関連するより好ましい具体例には、
モノクローナル抗体および/または、ポリクローナル抗
体を用いるサンドイッチ法を含む、酵素結合イムノソル
ベントアッセイ(ELISA)、放射線免疫検定法(RI
A)、免疫放射線検定法(IRMA)、および免疫酵素法
(IEMA)が含まれる。
【0192】また、本発明は、ヒトSpred蛋白に対
するヒトSpred結合活性を有する細胞膜画分または
細胞表面上に存在するヒトSpredレセプターをも提
供することが可能である。該ヒトSpredレセプター
の取得は、細胞膜画分を含む生体材料試料中において標
識したヒトSpred蛋白をコンジュゲートさせ、ヒト
Spred結合反応物を抽出・単離、精製し、単離物の
アミノ酸配列を特定することによって達成され、該ヒト
Spredレセプター蛋白の取得並びに配列決定は、こ
の分野の当業者には容易に達成できる。
【0193】また本発明は、ヒトSpredレセプター
蛋白質またはその結合断片を種々の薬剤のいずれかをス
クリーニングする技術に用いることによって、化合物
(ヒトSpredレセプター反応物:化合物は低分子化
合物、高分子化合物、蛋白質、蛋白質部分断片、抗原、
または抗体など言う)をスクリーニングすることに利用
可能である。好ましくは、ヒトSpredレセプターを
利用する。かかるスクリーニング試験に用いるヒトSp
redレセプターポリペプチドまたはその断片は、固体
支持体に付着するか、または細胞表面に運ばれている溶
液中の遊離物であってもよい。
【0194】薬剤スクリーニングの一例としては、例え
ば、ヒトSpred蛋白質またはその断片を発現する組
換え蛋白質で安定して形質転換した原核生物または真核
生物の宿主細胞を、好ましくは競合的結合アッセイにお
いて利用することができる。また遊離のまたは固定した
形態のかかる細胞を標準結合アッセイに用いることもで
きる。より具体的には、ヒトSpredレセプター蛋白
質またはその断片と、試験する物質との間の複合体の形
成を測定し、ヒトSpredレセプター蛋白質またはそ
の断片とヒトSpred蛋白質またはその断片との間の
複合体の形成が、試験する物質によって阻害される程度
を検出することによって化合物をスクリーニングするこ
とが可能である。
【0195】かくして、本発明は、当該分野で既知の方
法によって、かかる物質とヒトSpredレセプター蛋
白質またはその断片とを接触させ、次いで、該物質とヒ
トSpredレセプター蛋白質またはその断片との間の
複合体の存在、またはヒトSpredレセプター蛋白質
またはその断片とリガンドとの間の複合体の存在につい
て測定することを特徴とする薬剤のスクリーニング方法
を提供することができる。さらに、MAPキナーゼある
いはRaf活性を測定して、かかる物質がヒトSpre
dレセプターを阻害でき、かくして上記定義されたMA
PキナーゼあるいはRaf活性などの作用を調節できる
かどうか、或いは蛋白−蛋白相互結合の調節または複合
体形成能の調節ができるかどうか判断する。かかる競合
結合アッセイにおいて、より具体的には、ヒトSpre
dレセプター蛋白質またはその断片を標識する。遊離の
ヒトSpredレセプター蛋白質またはその断片を、蛋
白質:蛋白質複合体で存在するものから分離し、遊離
(複合体未形成)標識の量は、各々、試験される因子の
ヒトSpredレセプターに対する結合またはヒトSp
redレセプター:Spred蛋白質結合の阻害の尺度
となる。ヒトSpred蛋白質の小さなペプチド(ペプ
チド疑似体)をこのように分析し、ヒトSpredレセ
プター阻害活性を有するものを測定できる。
【0196】本発明において、薬剤スクリーニングのた
めの他の方法は、ヒトSpredレセプター蛋白質に対
して適当な結合親和性を有する化合物についてのスクリ
ーニング法であって、該略すると、多数の異なるペプチ
ド試験化合物をプラスチックのピンまたは他の物質の表
面のごとき固体支持体上で合成し、次いでペプチド試験
化合物をヒトSpredレセプター蛋白質と反応させ、
洗浄する。次いで既知の方法を用いて反応結合Spre
dヒトレセプター蛋白質を検出する方法も例示できる
(PCT国際公開番号:WO84−03564号)。精
製されたヒトSpredレセプターは、直接、前記の薬
剤スクリーニング技術で使用するプレート上に被覆する
ことができる。しかしながら、ポリペプチドに対する非
−中和抗体を用いて抗体を補足し、ヒトSpredレセ
プター蛋白質を固相上に固定することができる。さらに
本発明は、競合薬剤スクリーニングアッセイの使用をも
目的とし、ヒトSpredレセプター蛋白質またはその
断片に対する結合性につき、ヒトSpredレセプター
蛋白質に特異的に結合できる中和抗体と試験化合物とを
競合させる。抗体による該競合によって、ヒトSpre
dレセプター蛋白質の1またはそれ以上の抗原決定部位
を有するいずれのペプチドの存在をも検出することが可
能である。
【0197】また、本発明のSpred活性を増加また
は促進する薬剤の候補化合物をスクリーニングする方法
において、例えば、ヒトSpred遺伝子発現産物また
はヒトSpred蛋白質(以下、Spred蛋白質と併
せて称する)、またはそれらの断片に対する抗体と、被
検液および標識化されたSpred蛋白質、Spred
蛋白質の部分ペプチドまたはそれらの塩とを競合的に反
応させ、該抗体に結合した標識化されたSpred蛋白
質、Spred蛋白質の部分ペプチドまたはそれらの塩
の割合を測定することを特徴とする被検液中のSpre
d蛋白質、Spred蛋白質の部分ペプチドまたはそれ
らの塩を定量するスクリーニング方法も可能である。
【0198】また被検液と担体上に不溶化した前記抗体
および標識化された別の異なるSpred蛋白質に対す
る抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶
化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする、
被検液中のSpred蛋白質、Spred蛋白質の部分
ペプチドまたはそれらの塩の定量法も可能である。
【0199】さらに、Spred蛋白質、Spred蛋
白質の部分ペプチドまたはそれらの塩に基質を接触させ
た場合とSpred蛋白質、Spred蛋白質の部分ペ
プチドまたはそれらの塩に基質および試験化合物を接触
させた場合における、Spred蛋白質、Spred蛋
白質の部分ペプチドまたはそれらの塩の活性を測定し
て、比較することによってSpred蛋白質またはその
塩の活性(例、MAPキナーゼ活性の抑制)を増加また
は促進する化合物またはその塩をスクリーニングするこ
とも可能である。
【0200】本発明によれば、ヒトSpredポリペプ
チドまたはヒトSpred遺伝子発現産物の機能を活性
化または抑制する化合物を同定するためのスクリーニン
グ法であって、(a) 候補化合物と、該ポリペプチドまた
は遺伝子発現産物(または該ポリペプチドまたは遺伝子
発現産物を担持している細胞もしくはその膜)またはそ
の融合タンパク質との結合を、該候補化合物に直接また
は間接的に結合させた標識により測定する方法、(b) 候
補化合物と、該ポリペプチドまたは遺伝子発現産物(ま
たは該ポリペプチドまたは遺伝子発現産物を担持してい
る細胞もしくはその膜)またはその融合タンパク質との
結合を、標識競合物質(Spred抗体またはSpre
dレセプター)の存在下で測定する方法、(c) 候補化合
物が該ポリペプチドまたは遺伝子発現産物の活性化また
は抑制により生ずるシグナルをもたらすか否かを、該ポ
リペプチドまたは遺伝子発現産物を担持している細胞ま
たは細胞膜に適した検出系を用いて調べる方法、(d) 候
補化合物と、該ポリペプチドまたは遺伝子発現産物を含
有する溶液とを同時に混合して混合物を調製し、該混合
物中の該ポリペプチドまたは遺伝子発現産物の活性を測
定し、該混合物の活性をスタンダードと比較する方法、
および(e) 候補化合物が細胞における該ポリペプチドを
コードするmRNAおよび該ポリペプチドの産生に及ぼ
す効果を検出する方法よりなる群から選択される方法を
含んでなるスクリーニング法が提供される。
【0201】また、薬剤スクリーニングに関し、さらな
る方法としては、非機能性Spred遺伝子を含有する
宿主真核細胞系または細胞の使用が挙げられる。宿主細
胞系または細胞を薬剤化合物の存在下において一定期間
増殖させた後、該宿主細胞の増殖速度を測定して、該化
合物が例えば、細胞の分化を調節できるかどうか、或い
は蛋白−蛋白相互結合の調節又は複合体形成能の調節が
できるかどうかを確認する。増殖速度を測定する1手段
として、ヒトSpredレセプターの生物活性を測定す
ることも可能である。
【0202】また本発明によれば、より活性または安定
した形態のSpred蛋白質誘導体または例えば、イン
・ビボ(in vivo)でSpred蛋白質の機能を高めるか
もしくは妨害する薬剤を開発するために、それらが相互
作用する目的の生物学的に活性な蛋白質または構造アナ
ログ、例えばヒトSpredアゴニスト、ヒトSpre
dアンタゴニスト、ヒトSpredインヒビターなどを
作製することが可能である。前記構造アナログは例えば
ヒトSpredと他の蛋白質の複合体の三次元構造をX
線結晶学、コンピューター・モデリングまたは、これら
の組み合わせた方法によって決定することができる。ま
た、構造アナログの構造に関する情報は、相同性蛋白質
の構造に基づく蛋白質のモデリングによって得ることも
可能である。
【0203】また上記より活性または安定した形態のヒ
トSpred蛋白質誘導体を得る方法としては、例えば
アラニン・スキャンによって分析することが可能であ
る。該方法はアミノ酸残基をAlaで置換し、ペプチドの
活性に対するその影響を測定する方法でペプチドの各ア
ミノ酸残基をこのように分析し、当該ペプチドの活性や
安定性に重要な領域を決定する方法である。該方法によ
って、より活性な、または安定なヒトSpred誘導体
を設計することができる。
【0204】また機能性アッセイによって選択した標的
−特異的抗体を単離し、次いでその結晶構造を解析する
ことも可能である。原則として、このアプローチによ
り、続く薬剤の設計の基本となるファーマコア(pharmac
ore)を得る。機能性の薬理学的に活性な抗体に対する抗
−イディオタイプ抗体を生成させることによって、化学
的または生物学的に生成したペプチドのバンクよりペプ
チドを同定したり単離したりすることが可能である。故
に選択されたペプチドもファーマコアとして作用すると
予測される。
【0205】このようにして、例えば改善されたMAP
キナーゼ活性もしくは安定性またはMAPキナーゼ活性
のアゴニスト、アクチベーターなどとしての作用を有す
る薬剤を設計・開発することができる。
【0206】また本発明によれば、Spred遺伝子含
有ノックアウト・マウス(変異マウス)を作成することに
よってSpred遺伝子配列のどの部位が生体内で上記
したような多様なSpred活性に影響を与えるかどう
か、即ちSpred遺伝子産物、並びに改変Spred
遺伝子産物が生体内でどのような機能を有するかを確認
することができる。
【0207】該方法は、遺伝子の相同組換えを利用し
て、生物の遺伝情報を意図的に修飾する技術であり、マ
ウスの胚性幹細胞(ES細胞)を用いた方法を例示できる
(Capeccchi, M. R., Science, 244, 1288-1292 (198
9))。
【0208】尚、上記変異マウスの作製方法はこの分野
の当業者にとって既に通常の技術であり、この改変技術
(野田哲生編、実験医学,増刊, 14 (20) (1996)、羊土
社)に、野性型Spred遺伝子および変異Spred
遺伝子を適応して容易に変異マウスを作製し得る。従っ
て前記技術の適応により、改善されたSpred活性も
しくは安定性またはSpred活性のインヒビター、ア
ゴニスト、アンタゴニストなどとしての作用を有する薬
剤を設計・開発することができる。
【0209】
【発明の効果】本発明によれば、細胞外シグナルに応じ
た細胞の増殖と分化に関連するMAPキナーゼを介した
情報伝達系の制御に関与するMAPキナーゼ活性抑制作
用を有するヒト遺伝子Spredが提供される。
【0210】本発明遺伝子の利用によれば、ヒトSpr
ed遺伝子発現産物またはヒトSpredポリペプチド
を製造でき、これを抗原とする抗体をも製造することが
出来る。本発明によれば、該ヒトSpred遺伝子発現
産物の発現を増強するか、またはヒトSpredポリペ
プチドの生物活性を増強する候補化合物のスクリーニン
グ方法及び該スクリーニング方法によって得られた化合
物が提供される。
【0211】本発明によればヒトSpred遺伝子発現
産物またはヒトSpredポリペプチドを有効成分とす
る抗腫瘍剤に対する医薬組成物並びに医薬が提供され
る。
【0212】また、ヒトSpred遺伝子の提供によれ
ば、該遺伝子がコードするヒトSpred蛋白質を遺伝
子工学的に大量に製造することができ、該蛋白質の提供
によれば、MAPキナーゼ抑制作用やSpred蛋白質
の結合活性などの機能を調べることもできる。
【0213】また本発明遺伝子の利用によれば、ヒトS
pred変異体ポリペプチドを製造でき、該変異体を有
効成分とするMAPキナーゼ抑制作用、Raf抑制作
用、あるいは細胞の分化を抑制する作用を有する医薬が
提供される。
【0214】本発明によれば、さらにヒトSpredセ
ンス・オリゴヌクレオチドを含有する遺伝子治療に有用
な遺伝子導入用ベクター、該ヒトSpredセンスセン
ス・オリゴヌクレオチド導入された細胞および該ベクタ
ーまたは細胞を有効成分とする遺伝子治療剤、並びにそ
の利用による遺伝子治療法などが提供される。
【0215】本発明によれば、ヒトSpredタンパク
またはヒトSpred遺伝子発現産物との相互作用物の
スクリーニング方法が提供される。
【0216】
【実施例】以下、本発明を更に詳しく説明するため、参
考例および実施例を挙げる。
【0217】
【参考例】A.マウスSpred1およびSpred2
のスクリーニングおよびクローニング マウス破骨細胞mRNAから合成されたランダムに調整
されたcDNAをλファージpASV3Aベクターにク
ローニングし、パッケージした。プラスミドは大腸菌
E.Coli BNN−132(Elledg, S.J., et al.,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88,1731-1735(1991))の
中に該ファージを感染させることによって回収した。ベ
イトとしてc−kitおよびc−fmsを用いる酵母ツ
ー・ハイブリッド・スクリーニングは、ヨコウチら(Yok
ouchi, M., et al., Oncogene, 15,7-15(1997))に記載
された方法に順じて実施した。
【0218】マウスSpred1の全長cDNAは、前
記ヨコウチらの方法に順じて(Yokouchi, M., et al., O
ncogene, 15, 7-15(1997))、ESTの配列に基づいたP
CR及び続いて実施されたRACE−PCRによって得
られた。
【0219】マウスSpred1の全長cDNAの取得
のため、最初のPCRに用いた具体的配列は、最初のA
TGからストップコドンを含む領域を増幅した。
【0220】また、RACE−PCRによってmRNA
の5'端の開始コドンより上流24ベースを得た。
【0221】上記で得られたクローンの一つは、N末端
にEVH−1 (Ena/Vasodilator-stimulated phosphopr
otein homology-1) ドメインを、C末端にSprout
yと相同性のあるSprouty(SPR)ドメインをも
っており、Spred (Sprouty-related protein with
EVH-1 domain) と命名した。
【0222】データベース検索[GenBank/EM
BLデータベース ]によりSpredと類似するSp
red−2もクローニングした。
【0223】C−kitと結合するドメインとして約5
0アミノ酸からなるkit結合ドメイン(kit-binding d
omain : KBD) を同定した。これはSH2やPTB
といった既知のリン酸化チロシンを認識するドメインと
は全く異った配列でありその結合様式の解明が待たれ
る。一方、EVH−1ドメインはタンパク間の結合に機
能するもので、VASP (Vasodilator-stimulated pho
sphoprotein) やWASP (Wiskott-Aldrich syndrome
protein) 等のアクチン重合化に関与する分子群にみら
れるドメインである(Digicaylioglu, M., et al., Pro
c. Natl. Acad. Sci. USA, 92, 3717-3720(1995))。こ
れらのEVH−1ドメインはFPPPPというプロリン
リッチな配列を認識し、細胞骨格再構築が行われている
領域にアクチンを集蔟させるために必要である(Reich,
A., et al., Development, 126, 4139-4147 (1999))。
しかしSpredのEVH−1ドメインはこれらのEV
H−1ドメインから進化上やや離れており別の機能も予
想される。
【0224】かくして得られた2つのマウスSpred
−1およびマウスSpred−2のORF領域の核酸配
列は、配列番号7および配列番号8に示されるようにそ
れぞれ1332塩基および1230塩基で、これら核酸
配列よってコードされたアミノ酸配列はそれぞれ配列番
号5および配列番号6に示されるようにそれぞれ444
アミノ酸残基および410アミノ酸残基であり、前者を
マウスSpred−1、後者をマウスSpred−2と
それぞれ命名した。マウスSpred−1のアミノ酸配
列において、N末端のEVH−1ドメインは、配列番号
1の1番目から133番目であり、KBDは、234番
目から286番目で示され、C末端SPRドメインは、
334番目から444番目にあることが判明した。ま
た、マウスSpred−1とマウスSpred−2のE
VH−1ドメイン、KBD、およびC末端SPRドメイ
ンの相同性は、それぞれ62%、45%、および76%
であった。
【0225】マウスSprouty−4およびマウスV
ASPとのマウスSpred−1およびマウスSpre
d−2のドメイン構造の比較図を図1に示す。 B.マウスSpred−1およびマウスSpred−2
の機能解析 a.細胞の培養:Rat褐色細胞腫から誘導されたPC
12細胞は、10%FBSおよび5%ウマ血清(HS)を
添加したDMEM培地中で培養された。また、ヒト胎児
腎臓293細胞は、10%仔ウシ血清(CS)を添加した
DMEM培地中で培養された。マウス筋原細胞C2C1
2細胞は、20%FBSを添加したDMEM培地中で培
養された。
【0226】尚、本明細書中のBa/F3は、マウス・
プレB細胞株、NIH3T3は、マウス線維芽細胞株、
M1は、マウス白血病細胞株(ATCC寄託番号:TI
B−192)、PC12は、ラット褐色細胞腫細胞株(A
TCC寄託番号:CRL−1721)、およびC2C1
2は、マウス筋原細胞細胞株(ATCC寄託番号:CR
L−1772)を表わす。
【0227】b.各種プラスミドの構築:ヒトRas、
Raf、MEKおよびマウスSprouty−4のcD
NAと同様に、マウスSpred−1およびマウスSp
red−2を6回反復配列が付加されMycタグの付い
たpcDNA3あるいはN末端にFlagタグが付加さ
れたpCMV2の中にクローンした。
【0228】マウスSpred−1およびマウスSpr
ed−2は、さらにN末端でEGFPタグを誘導するた
めに、pEGFP(クローンテック社製)の中にクローン
した。
【0229】HAタグあるいはFlagタグが付加され
たErk2MAPキナーゼは東京大学、ゴトー先生およ
びWASPcDNAは、東京大学、ミキ先生及びタケナ
ワ先生より贈与された。
【0230】Spredの欠失、置換、およびキメラ変
異体の作成は、ヤスカワら(Yasukawa, H., et al., EMB
O J., 18, 1309-1320(1999))あるいはササキら(Sasaki,
A.,et al., Genes to Cells, 339-351(1999) )の標準
的なPCR方法によって創り出した。野生型Spred
および変異体の幾つかは、pMX−IRES−EGFP
ベクター(Nosaka,T., et al., EMBO J., 18,4754-4765
(1999))の中にサブクローンした。
【0231】Spred−1(コドン1−127番目)のEV
H−1ドメインは、接合物でBamH Iサイトを導入
することによってWASP(コドン1−130番目)のそれで
置換させた。ヒトRasGAPおよびマウスPKIPc
DNAは、胎盤からのPCRか、またはBa/F3cD
NAライブラリーによって得られ、pcDNA3中にク
ローンした。
【0232】c.PC12およびC2C12細胞の分化
試験:ポリL−リジンでコートされた35mmプレート
において成長させたPC12は、TransFast
(プロメガ社製)を使用するEGFPタグが付加されたS
pred−1、EGF(epidermal growth factor)レセ
プター、およびHAタグが付加されたErk2でトラン
スフェクトされた。選択的にMycタグが付加されたS
pred−1は、Spred−1cDNAおよびIRE
S−EGFP(Nosaka,T., et al., EMBO J., 18, 4754-
4765 (1999))を用いるレトロウイルスベクターを用いて
PC12細胞の中に導入した。
【0233】トランスフェクションまたは感染の48時
間後に、PC12細胞は、NGFまたはEGFの添加、
あるいは無添加において、さらに72時間培養した、そ
して蛍光顕微鏡によって試験した。
【0234】細胞体の直径が1.5倍以上の突起を有す
る細胞は、神経突起陽性であると考慮された。
【0235】アフィニティ精製されたSpred抗体あ
るいはSpred抗体+抗原ペプチドのマイクロインジ
ェクションは、ローズらやラビンスキーらの記載の方法
(Rose, D.W., et al., J.Cell Biol., 119, 1405-1411
(1992): Lavinsky, R.M., etal., Proc. Natl. Acad.
Sci. USA, 95, 2920-2925(1998))と同様にエッペンド
ルフ・トランスジェクター5246および5171と倒
立顕微鏡(Carl Zeiss社製;AS-2)を用いて行なった。
【0236】マイクロインジェクションの後、PC12
細胞は、NGFの添加、無添加の後、48時間培養され
た。そして、それから抗ウサギFITCで染色した。C
2C12細胞の分化とSpred−1のトランスフェク
ションは、ロンメルら(Rommel, C., et al., Science,
286, 1738-1741 (1999)に記載の方法と同様に実施し
た。24ウェルプレート上において成長した細胞は、L
ipofectAMINE(ギブコBRL社製)を用い
て、pEGFP空ベクター、Flagタグが付加された
Spred−1またはSpred−2、それらの欠失し
た変異体、Mycタグが付加されたN17Rasまたは
Mycタグが付加されたDN−Rafでそれぞれ同時ト
ランスフェクションされた。
【0237】トランスフェクションの後、細胞は20%
FBSまたは2%HSにおいて5日間培養し、そして蛍
光顕微鏡を使用して試験した。
【0238】伸長したか、あるいは多核した筋管様細胞
は、分化されていると考慮された。
【0239】d.免疫化学分析:免疫沈降およびイムノ
ブロッティングは、ヤスカワら(Yasukawa, A., et al.,
EMBO J., 18, 1309-1320 (1999))に記載されたと同様に
抗Myc抗体(9E10)、 抗Flag抗体(M2)、抗
Ras抗体(Calbiochem社製)、抗Erk2抗体(サンタクルス゛
・ハ゛イオテクノロシ゛ー社製)、抗HA抗体(12CA5)、および
抗リン酸化Erk2抗体(プロメガ社製)を用いて実施し
た。
【0240】RafのN末端のRas結合ドメイン(R
BD)で免疫したRas−GTPフォームは、ウォルネ
(Warne)に記載されたと同様(Warne, P.H., et al., Nat
ure, 364, 352-355(1993) )にGST (GST−RBD)
に融合した。
【0241】抗Spred−1抗体または抗Spred
−2抗体は、KLH接合したペプチド(それぞれFKS
KRRKEDGERSRC、またはIKTQPPRAK
SRRRKENGEC)でウサギを免疫することによっ
て調整された。 免疫蛍光顕微鏡分析は、ミツイら(Mits
ui, K., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun.,26
4, 457-464(1999))と同様に実施した。
【0242】e.キナーゼ・アッセイ:293細胞株(A
TCC寄託番号:CRL−1573)における一時的なトラ
ンスフェクションとルシフェラーゼアッセイ法は、ヤス
カワら(Yasukawa, H. et al.,EMBO J., 18,1309-1320
(1999))に記載の方法に準じて行なった。Elk−1ル
シフェラーゼアッセイは、製品使用説明書に従い、El
k−1のためのトランス・リポーティング・システム構
築物(ストラタジーン社製)を用いて実施した。HA−E
rk2は、抗HAモノクローナル抗体で沈降させた。抗
リン酸化Erk2特異的抗体は、プロメガ&セル・シグ
ナリング社(Promega and Cell SignalingCo.)より購入
した。
【0243】免疫沈降物は、10mCi γ32P−AT
Pの存在下で10分間、ミエリン塩基蛋白質(MBP)と
共にインキュベートした。イン・ビトロRafキナーゼ
活性のために、Flag−Rafは、抗Flag抗体で
免疫沈降させた。
【0244】免疫沈降物は、20mM ATPを含むR
afキナーゼ緩衝液中において、40ngの精製された
MEK−1および250ngのGST−Erk2で30
℃で20分間インキュベートされた。
【0245】Rafの自己リン酸化を測定するために、
下流成分は、省略された。
【0246】活性化反応物は、50mlのRafキナー
ゼ緩衝液中に希釈され、それから10mCi γ32P−
ATPおよびMBPで5分間インキュベートされた。
【0247】それからSDS−PAGEで分離後、MB
Pのリン酸化は、BAS−2000イメージ・システム
(フジ社製)を使用して定量した。
【0248】f.時間推移蛍光顕微鏡:EGFPはpE
GFP−C1ベクター(クローンテック社製)においてR
afのN末端領域に対して融合させた。次いで293細
胞は、EGFP−Rafでトランスフェクトされ、そし
てRascDNAは、25℃でEGFで刺激された。蛍
光イメージは、AQACOSMOSソフトウエア(浜松
ホトニクス社製)によって作動されるディジタルCCD
カメラ(C4742)を備えるオリンパスIX70倒立蛍光
顕微鏡を用いて各30秒毎に取得した。
【0249】g.c−kit結合ドメイン(KBD)の
特定:293細胞は、Flagタグが付加されたSpr
ed−1の開示された欠失変異体および点変異体(R247
A; このArg残基がSpred間でコンバートされた)お
よび構成的に活性化されたc−kit(D814V)を
トランスフェクトすることで検定された。
【0250】抗Flag抗体と免疫沈降反応後、c−k
itおよびSpred−1は、抗リン酸チロシン抗体
(anti−PY)または抗Flag抗体でそれぞれブロ
ットされた。
【0251】1)幹細胞因子(SCF)に対する応答にお
けるSpred−1のチロシンリン酸化 図2にSCFに対する応答における293細胞において
発現したMycタグ付けされたSpred−1(Myc
−Spred−1)のチロシンリン酸化(PY)を示す。
( 図中、IPは免疫沈降(Immunoprecipitate)を、I
Bはイムノブロット(Immunoblot)を示す。以下同
じ。) 293細胞は、c−kitおよびMyc−Spred−
1でトランスフェクトされ、そして100ng/mlの
SCFで10分間刺激した。
【0252】全細胞溶菌液(TCL)および抗Myc抗体
での免疫沈降は、抗リン酸チロシン抗体(anti−P
Y)または抗Myc抗体(anti−Myc)でブロット
した。
【0253】図3にSpredの細胞膜の局在を示す。
PC12細胞内因性のSpred−2蛋白が、免疫蛍光
顕微鏡を用いて検出された。中間パネルは、コントロー
ル抗原ペプチド(+peptide)を有する染色を示してい
る。右の2つの明瞭なパネルは、PC12細胞における
野性型(GFP−WT)およびC末端が欠失した(GFP
−ΔC)EGFP−Spred−1の蛍光顕微鏡像を示
す。
【0254】Spred−1は幹細胞因子(SCF)、P
DGFおよびEGF(図には示されていない)に応答し
て燐酸化されるチロシンを有していた。そして、Spr
ed−1の効率的なリン酸エステル化はKBDドメイン
に依存した。
【0255】免疫蛍光顕微鏡検査を使用して、本発明者
は内因性Spred−2の原形質膜局在を検出した。
【0256】Spredの膜局在は、蛍光性蛋白系(E
GFP)との融合蛋白質として発現されたSpred−
1およSpred−2によって確認された。SPRドメ
インの欠失している欠失変異体(GFP−ΔC)は細胞質
に局在したのでSPRドメインは原形質膜局在に対して
本質的に重要であることが分かった。
【0257】2)種々の組織と細胞株におけるSpre
d−1およびSpred−2の発現 多能性組織ブロット(クローンテック社製)と細胞株から
の全RNA(5mg/レーン)を実施する膜は、マウスSpr
ed−1またはSpred−2プローブ、或いはコント
ロールのβ−アクチン・プローブでハイブリダイズさせ
た。
【0258】その結果、Spred−1は脳において大
部分が発現された。その一方で、Spred−2は脳だ
けでなく心臓、肝臓および腎臓にもおいて認められた。
【0259】293細胞株を除いて最も多くの検察した
細胞系において、Spred−1およびSpred−2
は発現していた。
【0260】3)PC12細胞の分化に関するSpre
dの影響 (a) 野生型(WT)、そして、N末端の(ΔN)または
C末端の(ΔC)が切断されたSpred−1構築物
を、EGFPと共にPC12細胞の中にレトロウイルス
的に導入した。そして100ng/mlのNGFで3日
間インキュベートした。これらの細胞は、固定化された
後、EGFP陽性細胞を蛍光顕微鏡を用いて検出した。
【0261】神経突起成長の数量化は、マーシャルの方
法(Marshall, C.J., Cell,80,179-185(1995) (n=100)
に準じて実施した。
【0262】その結果を、図4に示す。尚、図の値の位
置は3回の実験結果の平均と平均誤差を意味する。
【0263】上記のようにSproutyとの類似性か
らRasシグナルへの影響を調べた結果、末梢神経系の
細胞株PC12細胞はNGFなどによってRas/MA
Pキナーゼが活性化されることにより神経突起を伸ば
し、分化が促進されることが判明した。
【0264】PC12細胞はSpred−1および−2
を発現しておりNGF処理によって発現が2−3倍に増
強された。まず野生型のSpred−1、ないしSpr
ed−2の強制発現はNGF(nerve growth factor)に
よるPC12細胞の分化を抑制した。
【0265】(b)Erk2活性化に関するSpred
−1の効果。
【0266】野生型Spred−1とHAタグが付加さ
れたErk2をコードする発現ベクターでトランスフェ
クトされたPC12細胞は、100ng/mlのNGF
で30分間刺激した。HA−Erk2は細胞の抽出液か
ら免疫沈降されて、そしてイン・ビトロ・キナーゼ活性
のためにアッセイに用いた。その結果を図5に示す。図
5中には、リン酸化された基質(MBP)の位置が示され
ている。
【0267】ウエスタンブロッティングは、各々のトラ
ンスフェクションにおけるHA−Erk2発現の同等の
レベルを示している。
【0268】上記の結果から、Spred−1はNGF
によって誘導されたErk2 MAPキナーゼ活性の抑
制することが認められた。
【0269】(c) Spred蛋白に対する抗体のマイク
ロインジェクションによる内因性のSpredの阻害 PC12細胞は、抗原ペプチド(+ペプチド)の有無と
アフィニティ精製された抗Spred−1抗体および抗
Spred−2抗体の混合液でマイクロインジェクショ
ンされ、そして25ng/mlのNGFで2日間処理さ
れた。分化した細胞数は、コントロールに対する%変化
で記載された(n=50)(図6)。
【0270】(d)Erk2活性化に関するSpred抗
体の影響 PC12細胞は、Spred抗体またはSpred抗体
+ペプチドでマイクロインジェクションされ、そして
25ng/mlのNGFで5分間刺激された。
【0271】活性化されたErkは、モノクローナル抗
リン酸化Erk抗体で(Cell Signaling 社製USA)可視
化され、そして定量化された。
【0272】マイクロインジェクションされた細胞を有
する面積はランダムに写真を撮られた、そして、個々の
核の染色強度はNIHイメージ(n=20)を用いて測定さ
れた。
【0273】その結果が図7に示され、該図中各図下段
の矢印はインジェクションされた細胞を示し、そして上
段の矢印は、インジェクションされなかった細胞を示し
ている(図7)。
【0274】その結果、 抗体マイクロインジェクショ
ンとC末端のSproutyドメインを欠損させたドミ
ナント・ネガティブ変異体の過剰発現においては、逆に
PC12のNGFによる分化とMAPキナーゼの活性化
が増強されていたことが判明した。
【0275】(e,f) C末端欠失したSpred−1変異
体、ドミナント・ネガティブの影響 細胞は、C末端欠失したSpred−1変異体およびE
GFレセプターで同時トランスフェクトされ、そして1
0ng/mlまたは50ng/mlのEGFで3日間処
理した。
【0276】その結果は、図8に示され、図中の数値は
3つの実験(n=100)の平均+SEを意味している。
【0277】C末端欠失した(ΔC)Spred−1、E
GFレセプター、およびHAタグを付したErk2をコ
ードしている発現ベクターでトランスフェクトされた細
胞は、10ng/mlのEGFで30分間刺激された。
HA−Erk2は、細胞抽出液から免疫沈降させて、イ
ンビトロ・キナーゼ活性をアッセイした。その結果が同
様に図9に示される。
【0278】上記より、C末端欠失したSpred−1
変異体の過剰発現は、EGFの低濃度(10ng/ ml)で処理
したPC12細胞の分化を増強し、そしてErk2のE
GF誘導活性化を高めた。
【0279】4)C2C12細胞に関する野生型および
C末端欠失したSpred−1変異体の影響 さらにSpred−2の発現が高い筋芽細胞株C2C1
2細胞での分化を調べた。
【0280】(a)C2C12細胞に筋肉様細胞分化の間
のSpred−1の発現タイムコース C2C12細胞は、5日間の間、分化用培地(DM(2%
のHS)で培養され、そしてSpred−1のレベル
は、ノーザンブロット分析によって測定された。
【0281】C2C12細胞はにおけるSpred−1
のレベルは、2日間の培養で上昇し、3日目に鋭く低下
し、MAPキナーゼ活性のレベルに逆相関した(図1
0)。
【0282】(b)野生型Spred−1、野生型Spr
ed−2、またはドミナント・ネガディブRas(N1
7−Ras)構築物は、EGFPベクターで同時トラン
スフェクトされた。細胞は、トランスフェクション後、
5日間成長培地(20%FBS)中において培養された。さ
らに細胞は蛍光顕微鏡を用いて撮影された。分化の定量
化は、上記3)の方法と同様に(n=100)行なった。
【0283】図11のパネルに結果が示される、数値%
は、独立した3回の実験結果の平均+SEで示される。
【0284】(c) 図12に示されるように野生型(WT)
Spred−1およびSpred−2は、Erk2活性
化を抑制した。尚、細胞は、Flag−Erk2と共に
野生型Spred−1、Spred−2、またはN17
−Rasをコードしている発現ベクターでトランスフェ
クトし、48時間成長培地(20%FBS)で培養した。F
lag−Erk2は、細胞抽出液から免疫沈降させて、
抗リン酸化Erk2抗体にてイムノブロットした。
【0285】(N17−Ras)の強制発現は、通常の成
長条件においてさえ(20%FBS)、C2C12細胞にお
ける形態学的な変化を誘導し、MAPキナーゼ活性を抑
制した。また、野性型Spred−1およびSpred
−2の強制発現は類似の効果を示した。
【0286】(d)C末端欠失したSpred−1または
Spred−2構築物、あるいは構築中に活性化された
Raf(ΔN−Raf)をEGFPベクターで同時にト
ランスフェクトした。
【0287】細胞は、トランスフェクション後、5日間
分化培地(2%HS)中において培養された。分化した細
胞の%で示され、それぞれ比較された(n=100)(図1
3)。
【0288】(e)C末端欠失したSpred−1変異
体、またはSpred−2、またはFlag−Erk2
のついたΔN−Rafをコードしている発現ベクターで
トランスフェクトされたC2C12細胞は、48時間分
化培地(2%HS)で培養した。
【0289】免疫沈降およびイムノブロットは、上記と
同様に実施した。
【0290】対照的に、C末端欠失したSpred−1
またはSpred−2構築物、あるいは構築中に活性化
されたRaf(ΔN−Raf)でトランスフェクトされ
たC2C12細胞は、分化培地中においてさえ、筋肉様
細胞に分化せず、そして高いレベルのMAPキナーゼ活
性は維持された(図14)。
【0291】このように、種々の組織におけるMAPキ
ナーゼ経路の抑制因子として内因性のSpred蛋白質
が機能するという仮説を支持するC末端変異体は、おそ
らくMAPキナーゼを増強することによってC2C12
細胞分化を抑制する。
【0292】上記結果から、C2C12細胞は低血清培
地にさらされると一過性にMAPキナーゼの活性化が低
下し、筋肉様細胞へと分化する。 C2C12細胞にお
いては野生型のSpredの発現はそれだけで分化を誘
導し、逆にSpred−1またはSpred−2のドミ
ナント・ネガティブ変異体の過剰発現は分化を抑制し
た。このとき野生型SpredではMAPキナーゼ活性
の低下が、ドミナント・ネガティブ変異体ではMAPキ
ナーゼ活性の増強が認められた。以上のことからSpr
edは内因性のタンパクレベルでのMAPキナーゼ抑制
因子であることが示された。
【0293】5)Elk−1リポーターに関するSpr
ed−1および種々の蛋白質の影響 次にSpredのRas/MAPキナーゼ経路に対する
抑制メカニズムを調べた。
【0294】(a)EGF誘導されたElk−1またはS
TAT3活性化は、HA−Erk2、野生型Flag−
Ras、およびSpred−1と共にFlag−Ra
f、あるいはSpred−1なしのFlag−Rafで
トランスフェクトされた293細胞において測定した。
STAT3活性は、APREリポーター遺伝子を用いて
アッセイを行なった。
【0295】(b)Elk−1リポーター活性は、活性化
MEK、N末端欠失活性化Raf(ΔN−Raf)およ
びSpred−1の示された量を有する活性化Ras
(V12−Ras)でトランスフェクトされた293細
胞において測定した。
【0296】(c)Erk−2、Ras、およびRaf活
性化の時間経過 293細胞は、HA−Erk2、野生型Flag−Ra
s、およびSpred−1と共にFlag−Raf、あ
るいはSpred−1なしのFlag−Rafでトラン
スフェクトされた。0、5、15、30分間の間、50
ng/mlのEGFで刺激した後、活性化したFlag
−Rasは、ドメイン(RBD)ビーズが結合しているG
ST−Rasで沈降され、そして抗Flag抗体でブロ
ットした。免疫沈降したFlag−Rafは、インビト
ロ自動リン酸化アッセイに付した(Auto-Phospho.社
製)。HA−Erk2は、免疫沈降させて、抗リン酸E
rk2抗体でイムノブロットした。
【0297】(d)293細胞Flag−RafおよびM
ycタグが付加された野生型、またはN末端欠失(ΔN)
Spred−1でトランスフェクトされ、そしてEGF
で10分間刺激した。抗Flag免疫沈降は、MAPキ
ナーゼ・カスケード・コンポーネントを用いて、インビ
トロ・キナーゼ・アッセイ(I.V.K.)に付した。全細胞溶菌
物(TCL)は、抗Myc抗体でブロットした。
【0298】293細胞は、Elk−1リポーター・プ
ラスミドおよび32P−MBP、Flag−Ras、My
c−タグが付されたSpred−1、N末端欠失したM
ycのcDNAsでトランスフェクトされ、EGF(5
0ng/ml)で6時間刺激した。Elk−1リポータ
ー活性を測定した(図18)。
【0299】293細胞はほとんど内因性Spreds
を発現していない。N末端変異体は、Elk−1活性の
基礎レベルと刺激されたレベルの両者を増大させるが、
Erk2キナーゼ活性のレベルには、影響を与えなかっ
た。
【0300】(e)293細胞は、Flag−Rafおよ
びMyc−タグが付されたSpred−1またはRas
GAPでトランスフェクトされて、それからEGFで1
0分間刺激した。抗Flag免疫沈降は、抗リン酸Se
338抗体(anti−pS338、Upstate Biotechnol
ogy社)、またはSer259Raf抗体(anti−pS
259、New England BioLabs社)でブロットされた(図
17)。
【0301】(a,b)EGFまたは活性化V12−Ras
誘導されたAkt活性に関するSpred−1の影響 293細胞はHA−Aktおよび(a)V12−Rasな
しのSpred−1または(b)V12−RasのあるS
pred−1でトランスフェクトされた。抗HA免疫沈
降は、抗リン酸セリン473Akt(Biosource, Co.
社)または抗HA抗体でブロットした。
【0302】(c)PLCγ−1のチロシンリン酸化に関
する影響 293細胞は、Spred−1および/またはEGFレ
セプターでトランスフェクトされた。
【0303】抗PLCγ−1抗体(Sanra Cruz Biotechn
ology 社)での免疫沈降は、抗PY−20抗体(Transduc
tion Laboratories社)および抗PLCγ−1抗体でイム
ノブロットした。
【0304】(d)EGF依存性膜ラフリング 野生型RasおよびSpred−1と共に、またはSp
red−1のないEGFP−Rafでトランスフェクト
された293細胞は、一定期間の間EGF(100ng
/ml)で処理された。
【0305】類似の膜ラフリングおよび微小突起形成
は、Spred−1の存在に関係なく観察された。 Ra
sは直接Spred−1は、Raf活性を抑制すること
によってElk−1およびMAPキナーゼの活性を抑制
した。
【0306】上記試験の結果、Rasは直接的にRaf
と相互作用し、Rafを活性化した。RafはMAPキ
ナーゼをリン酸化し、かつ活性化した。Spred活性
化Ras(V12−Ras)によって誘導されたELk
−1の活性化を抑制したが、活性化MEKまたは活性化
Raf(ΔN−Raf)によって誘導されたELk−1の
活性化を抑制しなかった。
【0307】それ故に、Spredの標的は、おそらく
RasとRafの間に局在している。この仮説を試験す
るために、EGF誘導されたRasおよびRaf活性化
に関するSpred−1の影響を試験した(図15)。興
味あることにSpredは、Ras活性化を維持した
が、一方ではインビトロ自動リン酸化(AutoP)によ
る測定(図15)およびイン・ビトロキナーゼ・アッセイ
(図16)によって測定されたのと同様にRaf活性化を
抑制した。さらにrasGAPのように、Spred
は、Raf活性化に必須とされるSer338におい
て、Rafのリン酸化を抑制したが、Raf活性化に必
須とされないSer259においては抑制しなかった
(図17)。このようにSpredは、Rafの活性化を
抑制することによってMAPキナーゼ活性を抑制する。
対照的に、Spredは、EGF−またはV12−Ra
s−依存性Akt活性化あるいはリン酸リパ−ゼ−Cγ
のEGF依存性チロシン・リン酸化に影響を与えなかっ
た、そしてGTP−結合蛋白Racによって誘導される
EGF依存性膜ラフリングもSpredによって抑制さ
れなかった。
【0308】上記の結果は、SpredがRas−Ra
fシグナル経路を特異的に抑制することが提言された。
【0309】6)RasおよびRafとのSpredの
相互作用 (a) 内因性のSpred−2およびRasの相互作用 内因性のSpred−2はC2C12細胞抽出物から前
免疫血清(Pre-immune)または抗Spred−2抗体(a
nti−Spred−2)で免疫沈降され、そして示さ
れた抗体でイムノブロットされた。結果は、図18に示
される。図中、全細胞溶菌液(TCL)のブロットもま
た、左側に見られる。
【0310】(b)Ras、RafおよびSpred−1
の免疫局在 C2C12細胞は、EFGレセプター、Myc−Spr
ed−1、およびFlag−Ras(図19中の上の2
つのパネル)またはMyc−Spred−1、Flag
−Rafおよび野性型(WT)Ras(図19中の下の2
つのパネル)によってトランスフェクションした。
【0311】5分間100ng/mlのEGFで刺激し
た後、細胞は固定され、Mycタグを付けられた蛋白、
Flagタグを付けられた蛋白は、図19中の左のパネ
ル、FITC(緑)および中央のパネル、Cy3(赤)で、
右のパネルは、合体(Merge)された染色像をそれ
ぞれ接合された第二抗体で染色され、そしてレーザー共
焦顕微鏡検査を用いて視覚化した。 尚、図19中の右
のパネルに示される矢印は、同時局在を示す。
【0312】(c)活性化Ras、RafおよびSpre
d−1の複合形成 C2C12細胞は、Flagタグを付けられた野性型
(WT)Rasまたは構成的に活性化された(V12)R
as、Mycタグを付けられたSpred−1、Myc
タグを付けられたRafでトランスフェクトされた。分
解産物は、抗Flag抗体とともに免疫沈降に付し、そ
して9E10(抗Myc)および抗Flag抗体でイム
ノブロットされた。
【0313】(d)EGFに対する応答におけるEGFP
−Rafの転座の時間経過 野生型RasおよびSpred−1(-)またはSpre
d−2のないEGFP−Rafでトランスフェクトされ
た293細胞は、EGF(100ng/ml)で処理さ
れた。
【0314】さらにC2C12細胞におけるRasおよ
びRafとのSpredの相互作用について試験した結
果、免疫沈降の後、内因性のRasとは同時沈降した
が、Rafとはしなかった内因性のSpred−2が4
0,000(Mr40K)の推定分子量を持つ蛋白として特定
された(図18)。
【0315】更に、RasおよびSpredはプラズマ
膜に同時に局在し、EGF刺激には非依存的であった。
RafはSpred−1の存在においてさえプラズマ膜
の中に輸送され、そしてSpred−1と同時局在した
(図19)、このように、SpredによるRaf活性化
の抑制は、Rasのエフェクタードメインの単純なマス
キングに負うものではないことが指摘される。さらにR
afと活性化したRas(V12−Ras)の間の相互作
用に関してSpredの効果を検討すると、Spred
によるRafおよびRasの間の相互作用の増加は、プ
ラズマ膜に対するRafのEGF誘導された輸送の時間
経過をモニタリングすることによって確認された(図2
0)。
【0316】Rafは、Spred−1またはSpre
d−2の過剰発現によってプラズマ膜においてより長く
存在していた。
【0317】このようにSpred蛋白質は、Ras−
Raf相互作用を強めることが判明した。
【0318】
【実施例】ヒトSpred−1およびSpred−2の
取得 本発明のヒトSpred−1およびヒトSpred−2
は、上記で得られたマウスSpred−1およびマウス
Spred−2のアミノ酸配列からESTデータベース
に対してtBlastnサーチを行い取得した。
【0319】tBlastnサーチは、アミノ酸配列か
ら核酸配列(DNA配列)を検索する方法であり、直接
核酸(EST)配列を引き出し、それをつないで最後に
アミノ酸配列にするものである。
【0320】まずインターネット上のBlast−ホー
ムページにアクセスした後、protein-nucleotide BL
ASTにアクセスし、tblastn法によってヒトESTお
よび nrデータベースを検索した。参考例で得られた配
列番号5のマウスSpred−1の アミノ酸配列を用
いて、tblastnサーチを行ない、登録されている相同性
の高いEST配列を10個得た。相同性の基準は、スコ
ア(score)が200以上のもの、あるいはE−Val
ueがe−50以下のものを選択した。得られたDNA
配列を、オーバーラップを考慮して目視によりつなぎ合
わせた。かくして得られた444アミノ酸配列からなる
アミノ酸配列をコードするヒト遺伝子のDNA配列を、
ヒトSpred−1と命名した。
【0321】同様に配列番号6のマウスSpred−2
のアミノ酸配列を用いて、418アミノ酸配列からなる
アミノ酸配列をコードするヒト遺伝子のDNA配列を、
ヒトSpred−2と命名した。
【0322】その結果、 本発明のヒトSpred遺伝
子および該遺伝子によってコードされるアミノ酸配列の
Spred蛋白質は、マウスSpred−1とは核酸配
列で、91.1%とアミノ酸配列93.3%、またマウ
スSpred−2とは、86.5%と91.9%とそれ
ぞれ高い相同性を有していた。
【0323】このことから、本発明のヒトSpred遺
伝子によってコードされる蛋白は、マウスSpredと
同様なMAPキナーゼの活性を抑制する機能を有するこ
とが分かる。
【0324】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Otsuka Pharmaceutical Co., Ltd. <120> New MAP kinase activity repressor <130> 302JP <160> 10 <170> PatentIn Ver. 2.1 <210> 1 <211> 444 <212> PRT <213> human <400> 1 Met Ser Glu Glu Thr Ala Thr Ser Asp Asn Asp Asn Ser Tyr Ala Arg 1 5 10 15 Val Arg Ala Val Val Met Thr Arg Asp Asp Ser Ser Gly Gly Trp Leu 20 25 30 Pro Leu Gly Gly Ser Gly Leu Ser Ser Val Thr Val Phe Lys Val Pro 35 40 45 His Gln Glu Glu Asn Gly Cys Ala Asp Phe Phe Ile Arg Gly Glu Arg 50 55 60 Leu Arg Asp Lys Met Val Val Leu Glu Cys Met Leu Lys Lys Asp Leu 65 70 75 80 Ile Tyr Asn Lys Val Thr Pro Thr Phe His His Trp Lys Ile Asp Asp 85 90 95 Lys Lys Phe Gly Leu Thr Phe Gln Ser Pro Ala Asp Ala Arg Ala Phe 100 105 110 Asp Arg Gly Ile Arg Arg Ala Ile Glu Asp Ile Ser Gln Gly Cys Pro 115 120 125 Glu Ser Lys Asn Glu Ala Glu Gly Ala Asp Asp Leu Gln Ala Asn Glu 130 135 140 Glu Asp Ser Ser Ser Ser Leu Val Lys Asp His Leu Phe Gln Gln Glu 145 150 155 160 Thr Val Val Thr Ser Glu Pro Tyr Arg Ser Ser Asn Ile Arg Pro Ser 165 170 175 Pro Phe Glu Asp Leu Asn Ala Arg Arg Val Tyr Met Gln Ser Gln Ala 180 185 190 Asn Gln Ile Thr Phe Gly Gln Pro Gly Leu Asp Ile Gln Ser Arg Ser 195 200 205 Met Glu Tyr Val Gln Arg Gln Ile Ser Lys Glu Cys Gly Ser Leu Lys 210 215 220 Ser Gln Asn Arg Val Pro Leu Lys Ser Ile Arg His Val Ser Phe Gln 225 230 235 240 Asp Glu Asp Glu Ile Val Arg Ile Asn Pro Arg Asp Ile Leu Ile Arg 245 250 255 Arg Tyr Ala Asp Tyr Arg His Pro Asp Met Trp Lys Asn Asp Leu Glu 260 265 270 Arg Asp Asp Ala Asp Ser Ser Ile Gln Phe Ser Lys Pro Asp Ser Lys 275 280 285 Lys Ser Asp Tyr Leu Tyr Ser Cys Gly Asp Glu Thr Lys Leu Ser Ser 290 295 300 Pro Lys Asp Ser Val Val Phe Lys Thr Gln Pro Ser Ser Leu Lys Ile 305 310 315 320 Lys Lys Ser Lys Arg Arg Lys Glu Asp Gly Glu Arg Ser Arg Cys Val 325 330 335 Tyr Cys Gln Glu Arg Phe Asn His Glu Glu Asn Ala Arg Gly Lys Cys 340 345 350 Gln Asp Ala Pro Asp Pro Ile Lys Arg Cys Ile Tyr Gln Val Ser Cys 355 360 365 Met Leu Cys Ala Glu Ser Met Leu Tyr His Cys Met Ser Asp Ser Glu 370 375 380 Gly Asp Phe Ser Asp Pro Cys Ser Cys Asp Thr Ser Asp Asp Lys Phe 385 390 395 400 Cys Leu Arg Trp Leu Ala Leu Val Ala Leu Ser Phe Ile Val Pro Cys 405 410 415 Met Cys Cys Tyr Val Pro Leu Arg Met Cys His Arg Cys Gly Glu Ala 420 425 430 Cys Gly Cys Cys Gly Gly Lys His Lys Ala Ala Gly 435 440 <210> 2 <211> 418 <212> PRT <213> human <400> 2 Met Thr Glu Glu Thr His Pro Asp Asp Asp Ser Tyr Ile Val Arg Val 1 5 10 15 Lys Ala Val Val Met Thr Arg Asp Asp Ser Ser Gly Gly Trp Phe Pro 20 25 30 Gln Glu Gly Gly Gly Ile Ser Arg Val Gly Val Cys Lys Val Met His 35 40 45 Pro Glu Gly Asn Gly Arg Ser Gly Phe Leu Ile His Gly Glu Arg Gln 50 55 60 Lys Asp Lys Leu Val Val Leu Glu Cys Tyr Val Arg Lys Asp Leu Val 65 70 75 80 Tyr Thr Lys Ala Asn Pro Thr Phe His His Trp Lys Val Asp Asn Arg 85 90 95 Lys Phe Gly Leu Thr Phe Gln Ser Pro Ala Asp Ala Arg Ala Phe Asp 100 105 110 Arg Gly Val Arg Lys Ala Ile Glu Asp Leu Ile Glu Gly Ser Thr Thr 115 120 125 Ser Ser Ser Thr Ile His Asn Glu Ala Glu Leu Gly Asp Asp Asp Val 130 135 140 Phe Thr Thr Ala Thr Asp Ser Ser Ser Asn Ser Ser Gln Lys Arg Glu 145 150 155 160 Gln Pro Thr Arg Thr Ile Ser Ser Pro Thr Ser Cys Glu His Arg Arg 165 170 175 Ile Tyr Thr Leu Gly His Leu His Asp Ser Tyr Pro Thr Asp His Tyr 180 185 190 His Leu Asp Gln Pro Met Pro Arg Pro Tyr Arg Gln Val Ser Phe Pro 195 200 205 Asp Asp Asp Glu Glu Ile Val Arg Ile Asn Pro Arg Glu Lys Ile Trp 210 215 220 Met Thr Gly Tyr Glu Asp Tyr Arg His Ala Pro Val Arg Gly Lys Tyr 225 230 235 240 Pro Asp Pro Ser Glu Asp Ala Asp Ser Ser Tyr Val Arg Phe Ala Lys 245 250 255 Gly Glu Val Pro Lys His Asp Tyr Asn Tyr Pro Tyr Val Asp Ser Ser 260 265 270 Asp Phe Gly Leu Gly Glu Asp Pro Lys Gly Arg Gly Gly Ser Val Ile 275 280 285 Lys Thr Gln Pro Ser Arg Gly Lys Ser Arg Arg Arg Lys Glu Asp Gly 290 295 300 Glu Arg Ser Arg Cys Val Tyr Cys Arg Asp Met Phe Asn His Glu Glu 305 310 315 320 Asn Arg Arg Gly His Cys Gln Asp Ala Pro Asp Ser Val Arg Thr Cys 325 330 335 Ile Arg Arg Val Ser Cys Met Trp Cys Ala Asp Ser Met Leu Tyr His 340 345 350 Cys Met Ser Asp Pro Glu Gly Asp Tyr Thr Asp Pro Cys Ser Cys Asp 355 360 365 Thr Ser Asp Glu Lys Phe Cys Leu Arg Trp Met Ala Leu Ile Ala Leu 370 375 380 Ser Phe Leu Ala Pro Cys Met Cys Cys Tyr Leu Pro Leu Arg Ala Cys 385 390 395 400 Tyr His Cys Gly Val Met Cys Arg Cys Cys Gly Gly Lys His Lys Ala 405 410 415 Ala Ala <210> 3 <211> 1620 <212> DNA <213> human <222> (1)...(1332) <400> 3 atgagcgagg agacggcgac ttctgacaac gataatagtt atgcacgagt gcgagctgtg 60 gtgatgaccc gagatgactc aagtggtgga tggttaccac ttggagggag tggactaagc 120 agcgtcactg tcttcaaagt ccctcatcag gaagagaatg gctgtgctga cttttttatc 180 cgtggagagc gactcaggga caaaatggtg gttttggaat gtatgcttaa aaaagacctc 240 atttataata aggtcactcc aacatttcac cactggaaga ttgatgacaa aaagtttggt 300 cttacgtttc aaagtcctgc tgatgctagg gcttttgata gaggtatccg aagagctata 360 gaggatattt ctcaaggatg ccccgaatca aaaaatgaag ctgaaggggc agatgactta 420 caagcaaatg aagaggattc ttccagttct ctagtgaagg atcacctttt tcagcaagag 480 acagttgtta ccagtgagcc ttatagaagc tcaaatataa gaccttctcc ctttgaagat 540 ctgaatgcca gaagagtcta catgcaaagc caagccaatc agataacatt tggtcagcca 600 ggcttggaca ttcagagcag aagtatggaa tacgtacagc ggcaaatatc caaggaatgt 660 ggaagcctaa agtcccaaaa tagggtccct ttgaaatcaa tcagacatgt cagctttcaa 720 gatgaggatg agattgtcag aataaaccct cgagatatct taatacgtcg ctatgcagac 780 tacagacatc ctgacatgtg gaaaaatgac ttggaaagag atgatgctga ttccagtatt 840 cagttttcta aaccagacag taaaaaatca gactatctgt actcttgtgg ggatgagact 900 aagttaagtt cacccaaaga ctctgtggta tttaagacgc agccttcctc attaaaaatt 960 aagaagtcaa aacgaagaaa agaggatggt gaacgttctc gctgcgtata ctgccaggaa 1020 aggtttaatc atgaagaaaa tgccagggga aaatgtcagg atgctccaga ccctattaaa 1080 agatgcatat atcaagttag ttgcatgctc tgtgcagaga gcatgttgta tcattgtatg 1140 tcagactcag agggagattt ttctgatccc tgttcgtgtg acactagcga cgacaagttc 1200 tgcttgcgat ggttagccct tgtagctttg tctttcattg taccatgtat gtgctgctac 1260 gtccctttga gaatgtgcca tcgctgtggt gaggcatgtg gttgctgtgg tgggaaacat 1320 aaagctgctg gatgaaatgg tccagtgcca aaatgagctt 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ttataccctg 540 ggccacctcc acgactcata ccccacagac cactatcacc tcgatcagcc gatgccaagg 600 ccctaccgcc aggtgagctt cccggacgac gacgaggaga tcgtgcgcat caacccccgg 660 gagaagatct ggatgacggg gtacgaggat taccggcacg cacccgtcag gggcaagtac 720 ccggacccct cggaggacgc ggactcctcc tacgtgcgct tcgccaaggg cgaggtcccc 780 aagcatgact acaactaccc ctacgtggac tcctcagact ttggcctagg cgaggacccc 840 aaaggccgcg ggggcagcgt gatcaagacg cagccctccc ggggcaagtc gcggcggcgg 900 aaggaggacg gagagcgctc gcggtgcgtg tactgcaggg acatgttcaa ccacgaggag 960 aaccgccggg gccactgcca ggacgcgccc gactccgtga gaacttgcat ccgccgggtg 1020 agctgcatgt ggtgcgcgga cagcatgctc tatcactgta tgtcggaccc cgagggagac 1080 tatacagacc cttgctcgtg cgatactagc gacgagaagt tttgcctccg gtggatggct 1140 cttattgcct tgtctttcct ggccccctgt atgtgctgtt acctgcccct tcgggcctgc 1200 taccactgcg gagtgatgtg caggtgctgt ggcgggaagc acaaagcggc cgcgtgactc 1260 agtttccctc ccttctccct ccatccgcag ccacagggga actcgtctct tacatactct 1320 catcttctcc cccgatacag cgaccaggta tgaacaacag tgca 1364 <210> 5 <211> 444 <212> PRT <213> mouse <400> 5 Met Ser Glu Glu Thr Ala Thr Ser Asp Asn Asp Asn Ser Tyr Ala Arg 1 5 10 15 Val Arg Ala Val Val Met Thr Arg Asp Asp Ser Ser Gly Gly Trp Leu 20 25 30 Pro Leu Gly Gly Ser Gly Leu Ser Ser Val Thr Val Phe Arg Val Pro 35 40 45 His Gln Glu Glu Asn Gly Cys Ala Asp Phe Phe Ile Arg Gly Glu Arg 50 55 60 Leu Arg Asp Lys Met Val Val Leu Glu Cys Met Leu Lys Lys Asp Leu 65 70 75 80 Ile Tyr Asn Lys Val Thr Pro Thr Phe His His Trp Lys Ile Asp Asp 85 90 95 Lys Lys Phe Gly Leu Thr Phe Gln Ser Pro Ala Asp Ala Arg Ala Phe 100 105 110 Asp Arg Gly Ile Arg Arg Ala Ile Glu Asp Ile Ser Leu Gly Cys Pro 115 120 125 Ala Ser Lys Thr Glu Ala Glu Gly Gly Asp Asp Asp Leu Gln Thr Thr 130 135 140 Glu Glu Asp Thr Ser Arg Ser Leu Val Lys Asp His Phe Phe Gln Gln 145 150 155 160 Glu Thr Val Val Thr Ser Glu Pro Tyr Arg Ser Ser Asp Ile Arg Pro 165 170 175 Leu Pro Phe Glu Asp Leu Asn Ala Arg Arg Val Tyr Leu Gln Ser Gln 180 185 190 Val Ser Gln Ile Pro Phe Ser Gln Gln Gly Leu Asp Ile Gln Ser Arg 195 200 205 Ser Met Glu Tyr Val Gln Arg Gln Ile Ser Lys Glu Cys Gly Ser Leu 210 215 220 Lys Ser Gln Thr Arg Val Pro Leu Lys Ser Ile Arg His Val Ser Phe 225 230 235 240 Gln Asp Glu Asp Glu Ile Val Arg Ile Asn Pro Arg Asp Ile Leu Ile 245 250 255 Arg Arg Tyr Ala Asp Tyr Arg His Pro Asp Met Trp Lys Asn Asp Leu 260 265 270 Glu Arg Asp Asp Thr Asp Ser Ser Val Pro Phe Ser Lys Gln Asp Ser 275 280 285 Lys Lys Ser Asp Tyr Leu Tyr His Cys Gly Asp Glu Thr Lys Leu Ser 290 295 300 Ser Leu Lys Asp Ser Val Val Phe Lys Thr Gln Pro Pro Ser Leu Lys 305 310 315 320 Phe Lys Ser Lys Arg Arg Lys Glu Asp Gly Glu Arg Ser Arg Cys Val 325 330 335 Tyr Cys Gln Glu Arg Phe Asn His Glu Glu Asn Ala Arg Gly Lys Cys 340 345 350 Gln Asp Ala Pro Asp Pro Val Lys Arg Cys Ile Tyr Gln Val Ser Cys 355 360 365 Met Leu Cys Ala Glu Ser Met Leu Tyr His Cys Met Ser Asp Ser Glu 370 375 380 Gly Asp Phe Ser Asp Pro Cys Ser Cys Asp Thr Ser Asp Asp Lys Phe 385 390 395 400 Cys Leu Arg Trp Leu Ala Leu Val Ala Leu Ser Phe Ile Val Pro Cys 405 410 415 Met Cys Cys Tyr Val Pro Leu Arg Met Cys His Arg Cys Gly Glu Ala 420 425 430 Cys Gly Cys Cys Gly Gly Lys His Lys Ala Ala Gly 435 440 <210> 6 <211> 410 <212> PRT <213> mouse <400> 6 Met Thr Glu Glu Thr His Pro Asp Asp Asp Ser Tyr Ile Val Arg Val 1 5 10 15 Lys Ala Val Val Met Thr Arg Asp Asp Ser Ser Gly Gly Trp Phe Pro 20 25 30 Gln Glu Gly Gly Gly Ile Ser Arg Val Gly Val Cys Lys Val Met His 35 40 45 Pro Glu Gly Asn Gly Arg Ser Gly Phe Leu Ile His Gly Glu Arg Gln 50 55 60 Lys Asp Lys Leu Val Val Leu Glu Cys Tyr Val Arg Lys Asp Leu Val 65 70 75 80 Tyr Thr Lys Ala Asn Pro Thr Phe His His Trp Lys Val Asp Asn Arg 85 90 95 Lys Phe Gly Leu Thr Phe Gln Ser Pro Ala Asp Ala Arg Ala Phe Asp 100 105 110 Arg Gly Val Arg Lys Ala Ile Glu Asp Leu Ile Glu Gly Ser Thr Thr 115 120 125 Ser Ser Ser Thr Leu His Asn Glu Ala Glu Leu Gly Asp Asp Asp Val 130 135 140 Phe Thr Thr Ala Thr Asp Ser Ser Ser Asn Ser Ser Gln Lys Arg Glu 145 150 155 160 Pro Thr Thr Arg Thr Ile Ser Ser Pro Thr Ser Cys Glu His Arg Lys 165 170 175 Ile Tyr Thr Leu Asp Pro Tyr Pro Met Asp His Tyr His Pro Asp Gln 180 185 190 Arg Leu Pro Arg Ser Tyr Pro Gln Val Thr Phe Pro Glu Asp Asp Glu 195 200 205 Glu Ile Val Arg Ile Asn Pro Arg Glu Lys Ile Trp Met Thr Gly Tyr 210 215 220 Glu Asp Tyr Arg His Ala Pro Val Arg Gly Lys Tyr Leu Asp Thr Thr 225 230 235 240 Glu Asp Ala Asp Ser Tyr Val Arg Phe Ala Lys Gly Glu Val Pro Lys 245 250 255 His Glu Tyr Thr Tyr Pro Tyr Val Asp Ser Ser Asp Phe Gly Phe Gly 260 265 270 Glu Asp Pro Lys Gly Ser Val Ile Lys Thr Gln Pro Pro Arg Ala Lys 275 280 285 Ser Arg Arg Arg Lys Glu Asn Gly Glu Arg Ser Arg Cys Val Tyr Cys 290 295 300 Arg Asp Met Phe Asn His Glu Glu Asn Arg Arg Gly His Cys Gln Asp 305 310 315 320 Ala Pro Asp Ala Val Arg Thr Cys Ile Arg Arg Val Ser Cys Met Trp 325 330 335 Cys Ala Asp Ser Met Leu Tyr His Cys Met Ser Asp Pro Glu Gly Asp 340 345 350 Tyr Thr Asp Pro Cys Ser Cys Asp Thr Ser Asp Glu Lys Phe Cys Leu 355 360 365 Arg Trp Met Ala Leu Ile Ala Leu Ser Phe Leu Ala Pro Cys Met Cys 370 375 380 Cys Tyr Leu Pro Leu Arg Ala Cys His Arg Cys Gly Val Met Cys Arg 385 390 395 400 Cys Cys Gly Gly Lys His Lys Ala Ala Ala 405 410 <210> 7 <211> 1335 <212> DNA <213> mouse <222> (1)...(1332) <400> 7 atgagcgagg agacggcgac ttctgacaac gataatagtt atgcacgagt gcgagctgtg 60 gtgatgacca gagatgactc aagtggtgga tggctaccac tcggagggag cggactgagc 120 agcgtcactg tcttcagagt ccctcatcag gaagagaatg gctgtgcgga cttttttatc 180 cgtggagaga gactcagaga caaaatggtg gttttggaat gtatgcttaa gaaagacctc 240 atctataata aggtcactcc cacatttcac cactggaaga tcgatgacaa gaagtttggc 300 cttacctttc agagtcctgc tgatgccagg gcttttgatc gaggcattcg aagagctata 360 gaggatatat ctctagggtg cccagcgtca aaaactgagg ctgaaggagg agatgatgat 420 ttacaaacga ctgaagaaga cacttcccgt tccctagtga aagatcactt tttccagcaa 480 gagacagttg ttaccagtga accttacaga agctcagaca taagaccgtt accctttgaa 540 gatctgaatg ccagaagagt ctacttgcaa agccaagtca gccagatacc attcagtcag 600 caaggcctag acattcagag ccgaagtatg gaatatgtac agcggcaaat atctaaggaa 660 tgtgggagcc taaagtccca aactagggtc cctttgaagt caatcagaca tgtcagcttt 720 caagatgagg atgagattgt tagaataaat cctcgagata tcttaatacg tcgatatgca 780 gactacagac atccggacat gtggaaaaat gacttggaga gagatgatac tgactccagt 840 gttccatttt ctaaacaaga cagtaaaaag tcagactatc tctaccactg tggggatgag 900 actaagttaa gttctctgaa agactctgtg gtatttaaga cacagcctcc ctcgttaaaa 960 tttaagtcaa aacgaagaaa agaggatggg gaacgttctc gctgcgtata ctgccaggaa 1020 aggtttaatc atgaagaaaa cgccaggggg aaatgccagg acgctccaga tcctgttaaa 1080 agatgcatat atcaagttag ctgcatgctc tgtgctgaga gcatgctata tcattgtatg 1140 tcagactcag agggagactt ttctgatcct tgttcgtgtg acactagcga tgacaagttc 1200 tgcctaaggt ggttagccct ggtagctctg tctttcattg taccatgtat gtgctgctac 1260 gtccctttga gaatgtgcca tcgctgtggt gaggcatgcg ggtgctgtgg tgggaaacat 1320 aaggctgctg ggtga 1335 <210> 8 <211> 1233 <212> DNA <213> mouse <222> (1)...(1230) <400> 8 atgaccgaag aaacacaccc ggacgatgac agctatattg tgcgtgtcaa ggctgtggtt 60 atgaccagag atgactccag cgggggatgg ttcccacagg aaggaggcgg gatcagtcgc 120 gtcggcgtgt gtaaggtcat gcaccctgaa ggcaacggac gaagcggctt tctcatccat 180 ggcgagcgac agaaagacaa actggtggta ttggaatgct atgtcagaaa ggacttggtc 240 tacaccaaag ccaatccgac gtttcatcat tggaaggttg ataacaggaa gtttggactt 300 actttccaaa gtcctgcaga tgcacgagcc tttgacaggg gcgtgagaaa agccattgaa 360 gaccttatag aaggttcaac gacctcctct tccactctcc ataacgaagc tgagctcgga 420 gacgatgacg ttttcacgac agctacggac agttcttcta attcctcgca gaagagggag 480 ccgactacga ggacaatctc ctcccccacg tcctgtgagc accggaagat ttataccctt 540 gacccatacc ccatggacca ttaccaccct gaccagcggt tgccgcggtc ctacccccag 600 gtcaccttcc cagaagatga tgaagaaatt gtacgcatca acccccgaga gaagatctgg 660 atgaccggtt atgaagacta ccggcacgcg ccggttcgcg gcaaatactt agacaccaca 720 gaagacgcgg actcctacgt gcgcttcgcc aagggcgaag tccccaaaca cgaatatacc 780 tatccctatg ttgattcttc ggacttcggc ttcggggagg atcccaaagg tagtgtgatc 840 aagacacagc cgcccagggc caagtcccgt cggcggaagg agaacggcga acggtcgcgg 900 tgtgtgtact gcagggatat gtttaatcac gaagagaacc gaaggggcca ctgccaagac 960 gcgcccgacg ccgtgagaac ttgcattcgc cgggtgagct gtatgtggtg cgcggacagc 1020 atgctgtacc actgtatgtc cgaccccgag ggagactaca ctgacccttg ttcgtgtgac 1080 acaagcgatg agaagttttg cctccggtgg atggctctaa ttgccttgtc tttcctggcc 1140 ccttgtatgt gctgttacct gcccctccgg gcctgccacc gctgtggagt gatgtgcagg 1200 tgctgtggtg ggaagcacaa agccgccgcg tga 1233 <210> 9 <211> 15 <212> PRT <213> mouse <400> 9 Phe Lys Ser Lys Arg Arg Lys Glu Asp Gly Glu Arg Ser Arg Cys 1 5 10 15 <210> 10 <211> 19 <212> PRT <213> mouse <400> 10 Ile Lys Thr Gln Pro Pro Arg Ala Lys Ser Arg Arg Arg Lys Glu Asn 1 5 10 15 Gly Glu Cys
【図面の簡単な説明】
【図1】マウスSprouty−4およびマウスVAS
PとのマウスSpred−1およびマウスSpred−
2のドメイン構造の比較図を示す図である。
【図2】幹細胞因子(SCF)に対する応答における2
93細胞において発現したMycタグ付けされたSpr
ed−1(Myc−Spred−1)のチロシンリン酸
化(PY)を示す図である。
【図3】Spredの細胞膜の局在を示す図である。
【図4】PC12細胞の分化に関するSpredの影響
を示す図である。
【図5】Erk2活性化に関するSpred−1の効果
を示す図である。
【図6】Spred蛋白に対する抗体のマイクロインジ
ェクションによる内因性のSpred阻害を示す図であ
る。
【図7】Erk2活性化に関するSpred抗体の影響
を示す図である。
【図8】C末端欠失したSpred−1変異体、ドミナ
ント・ネガティブの影響を示す図である。
【図9】C末端欠失したSpred−1変異体、ドミナ
ント・ネガティブの影響を示す図である。
【図10】C2C12細胞に筋肉様細胞分化の間のSp
red−1の発現のタイムコースを示す図である。
【図11】野生型Spred−1(Spred−1 W
T)、野生型Spred−2(Spred−1 W
T)、またはドミナントネガティブRas(N17−R
as)の、C2C12細胞分化への影響を示す図であ
る。
【図12】野生型Spred−1(Spred−1 W
T)または野生型Spred−2(Spred−1 W
T)が、Erk2活性化を抑制することを示す図であ
る。
【図13】C末端欠失したSpred−1(Spred
−1ΔC)またはSpred−2(Spred−2Δ
C)のC2C12細胞分化への影響を示す図である。
【図14】C末端欠失したSpred−1またはSpr
ed−2構築物(Spred−1ΔCまたはSpred
−2ΔC)、あるいは構築物中に活性化されたRaf
(ΔN−Raf)でトランスフェクトされたC2C12
細胞が、高いMAPキナーゼ活性を維持することを示す
図である。
【図15】EGF誘導されたRasおよびRaf活性化
に関するSpred−1の影響を示した図である。
【図16】MAPキナーゼカスケード構成物とミエリン
塩基蛋白質(MBP)を用いるイン・ビトロ キナーゼ
・アッセイにより、Rafキナーゼ活性を抑制すること
を示した図である。
【図17】Rafリン酸化におけるSpred−1の影
響を示した図である。
【図18】C2C12細胞におけるRasおよびRaf
とのSpredの相互作用について試験した結果を示す
図である。
【図19】Ras、RafおよびSpred−1の免疫
局在を示す図である。
【図20】Rafと活性化したRaf(V12−Ra
s)の間の相互作用に関してSpredの効果を示した
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07K 16/18 C12N 1/19 4H045 C12N 1/15 1/21 1/19 C12Q 1/48 Z 1/21 G01N 33/15 Z 5/10 33/50 Z C12Q 1/48 C12N 15/00 ZNAA G01N 33/15 5/00 A 33/50 A61K 37/64 Fターム(参考) 2G045 AA34 AA35 BB24 CB01 DA13 DA36 FA16 FB01 FB02 FB03 FB12 GC15 4B024 AA01 AA11 BA80 CA01 GA11 HA11 HA20 4B063 QA18 QQ53 QQ95 QR07 QR08 QR42 QR48 QR55 QR62 QS26 QS33 QS34 QX01 4B065 AA93Y AB01 AC14 BA02 CA24 CA44 CA46 4C084 AA01 AA02 AA07 AA13 BA01 BA02 BA08 BA22 CA18 DC50 NA14 NA20 ZB261 ZC192 ZC412 4H045 AA10 AA11 BA10 CA40 DA55 EA28 EA51 FA74

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】以下の(a)から(f)のいずれかのポリ
    ヌクレオチドを含むヒト遺伝子: (a)配列番号:1で示されるアミノ酸配列からなるポ
    リペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその相
    補鎖、(b)配列番号:1で示されるアミノ酸配列から
    なるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対し
    て少なくとも95%の相同性を持っている塩基配列から
    なり、かつMAPキナーゼ活性抑制作用を有するポリペ
    プチドをコードするポリヌクレオチドまたはその相補
    鎖、(c)配列番号:1で示されるアミノ酸配列におい
    て、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは
    付加されたアミノ酸配列からなり、かつMAPキナーゼ
    活性抑制作用を有するポリペプチドをコードするポリヌ
    クレオチドまたはその相補鎖、(d)配列番号:2で示
    されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする
    ポリヌクレオチドまたはその相補鎖、(e)配列番号:
    2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコー
    ドするポリヌクレオチドに対して少なくとも95%の相
    同性を持っている塩基配列からなり、かつMAPキナー
    ゼ活性抑制作用を有するポリペプチドをコードするポリ
    ヌクレオチドまたはその相補鎖、(f)配列番号:2で
    示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のア
    ミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列か
    らなり、かつMAPキナーゼ活性抑制作用を有するポリ
    ペプチド、をコードするポリヌクレオチドまたはその相
    補鎖。
  2. 【請求項2】配列番号:1で示されるアミノ酸配列から
    なるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは
    その相補鎖からなる請求項1に記載の遺伝子。
  3. 【請求項3】配列番号:2で示されるアミノ酸配列から
    なるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは
    その相補鎖からなる請求項1に記載の遺伝子。
  4. 【請求項4】以下の(a)から(d)のいずれかのポリ
    ヌクレオチドからなるヒト遺伝子: (a)配列番号:3で示される塩基配列からなるポリヌ
    クレオチドまたはその相補鎖、(b)配列番号:3で示
    される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジ
    ェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド
    からなり、かつMAPキナーゼ活性抑制作用を有するポ
    リペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその相
    補鎖、(c)配列番号:4で示される塩基配列からなる
    ポリヌクレオチドまたはその相補鎖、(d)配列番号:
    4で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドとスト
    リンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレ
    オチドからなり、かつMAPキナーゼ活性抑制作用を有
    するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは
    その相補鎖。
  5. 【請求項5】配列番号:3で示される塩基配列である請
    求項4に記載の遺伝子。
  6. 【請求項6】配列番号:4で示される塩基配列である請
    求項4に記載の遺伝子。
  7. 【請求項7】請求項1から6のいずれか1項に記載の遺
    伝子発現産物。
  8. 【請求項8】請求項1から6のいずれか1項に記載の遺
    伝子が挿入された組換え体発現ベクター。
  9. 【請求項9】請求項8に記載の組換え体発現ベクターを
    有する宿主細胞。
  10. 【請求項10】請求項7に記載の遺伝子発現産物または
    それらの部分断片に結合性を有する抗体または抗体断
    片。
  11. 【請求項11】以下の(a)から(f)のいずれかのポ
    リペプチド: (a)配列番号:1で示されるアミノ酸配列からなるポ
    リペプチド、(b)配列番号:1で示されるアミノ酸配
    列からなるポリペプチドに対して少なくとも95%の相
    同性を持っているアミノ酸配列からなり、かつMAPキ
    ナーゼ活性抑制作用を有するポリペプチド、(c)配列
    番号:1で示されるアミノ酸配列において、1若しくは
    複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミ
    ノ酸配列からなり、かつMAPキナーゼ活性抑制作用を
    有するポリペプチド、(d)配列番号:2で示されるア
    ミノ酸配列からなるポリペプチド、(e)配列番号:2
    で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドに対して
    少なくとも95%の相同性を持っているアミノ酸配列か
    らなり、かつMAPキナーゼ活性抑制作用を有するポリ
    ペプチド、(f)配列番号:2で示されるアミノ酸配列
    において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若
    しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつMAPキ
    ナーゼ活性抑制作用を有するポリペプチド。
  12. 【請求項12】配列番号:1で示されるアミノ酸配列か
    らなる請求項11に記載のポリペプチド。
  13. 【請求項13】配列番号:2で示されるアミノ酸配列か
    らなる請求項11に記載のポリペプチド。
  14. 【請求項14】請求項11に記載のポリペプチドまたは
    それらの部分断片に結合性を有する抗体または抗体断
    片。
  15. 【請求項15】a)生理的条件下において、MAPキナ
    ーゼ活性抑制作用を促進するために被検物質を処理する
    のに十分な時間の間、適当な反応培地/溶液中において
    請求項1から6のいずれか1項に記載の遺伝子発現産物
    に対して被検物質を提示させる工程、 b)被検物質の存在下の前記MAPキナーゼ活性抑制作
    用に対する比較において、請求項1から6のいずれか1
    項に記載の遺伝子発現産物の該MAPキナーゼ活性抑制
    作用の促進を検出し、そしてMAPキナーゼ活性抑制作
    用を促進する被検物質の存在を特定する工程を含む、請
    求項1から6のいずれか1項に記載の遺伝子発現産物の
    MAPキナーゼ活性抑制作用を促進する候補化合物のス
    クリーニング方法。
  16. 【請求項16】a)生理的条件下において、Raf活性
    の抑制を促進するために被検物質を処理するのに十分な
    時間の間、適当な反応培地/溶液中において請求項1か
    ら6のいずれか1項に記載の遺伝子発現産物に対して被
    検物質を提示させる工程、 b)被検物質の存在下の前記Raf活性抑制に対する比
    較において、請求項1から6のいずれか1項に記載の遺
    伝子発現産物の該Raf活性抑制の促進を検出し、そし
    てRaf活性の抑制を促進する被検物質の存在を特定す
    る工程を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の
    遺伝子発現産物のRaf活性の抑制を促進する候補化合
    物のスクリーニング方法。
  17. 【請求項17】請求項15または16に記載のスクリー
    ニング方法を用いて、抗腫瘍作用を有する化合物を特定
    する医薬のスクリーニング方法。
  18. 【請求項18】請求項1から6のいずれか1項に記載の
    遺伝子発現産物または請求項11から13に記載のいず
    れか1項に記載のポリペプドを有効成分として用いる抗
    腫瘍剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004072110A1 (en) * 2003-02-17 2004-08-26 Ludwig Institute For Cancer Research Methods for inhibiting signal transduction

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