JP2003215031A - 遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法 - Google Patents

遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 一塩基以上の遺伝子異常を短時間、且つ簡
単、正確に検出することができ、小型、軽量、安価、低
ランニングコストで、診断を自動化することができる遺
伝子診断装置及び遺伝子診断方法を提供することを目的
とする。 【解決手段】 本発明の遺伝子診断装置とその遺伝子診
断方法は、定電圧の印加によりDNA試料とDNAコン
ジュゲートを電気泳動させたとき、照射した光の吸光度
から流路内部を通過するDNA試料の通過量の時間変化
を検出するための検出部を備えるとともに、検出部がD
NA試料を透過する光のスペクトル波形を検出し、制御
演算部がDNA吸収波長を含む所定の波長領域における
該スペクトル波形の変極点の存在によって通過量の時間
変化のピークがDNAとノイズ成分のいずれに対応する
かを判断することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遺伝子異常の有無
を簡単、正確に検出できる遺伝子診断装置及び遺伝子診
断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】全ての疾患には、遺伝性要因と環境要因
が種々の確率で関与しているが、先天性代謝異常症・癌
・糖尿病・高血圧・アルツハイマー・自己免疫疾患・ア
トピー・肥満・アルコール依存などの疾患は、遺伝性要
因が非常に大きな割合を占めている。一方、環境要素の
寄与が大きい疾患は感染症や外傷の後遺症から誘因され
る疾患等である。
【0003】ところで、近年分子生物学の急速な進展に
よって、様々な疾患において遺伝的要素、すなわち遺伝
子の関与がかなり正確に解明されるようになり、遺伝子
をターゲットにした医療に注目が集まるようになってき
ている。現在、最も注目されているのはSNPs(スニ
ップス)と呼ばれるものである。これは、single nucle
otide polymorphismの略で「1塩基多型」と一般に訳さ
れており、個人間の遺伝子における1暗号(1塩基)の
違いの総称である。
【0004】人を含め地球上の全ての生命体遺伝子(ま
たは遺伝子の全集合体を意味するゲノム)は、共通の4
つの塩基から成り立っており、この塩基の配列によって
様々なタンパク質が作られ、各生物特有の生命活動が行
われている。全ての生物に共通する4つの塩基とは、ア
デニン(Aと表記される)、グアニン(Gと表記され
る)、チミン(Tと表記される)、シトシン(Cと表記
される)である。人の遺伝子は、約30〜32億塩基配
列で構成されているといわれているが、各個人で数百か
ら1000塩基に1ヶ所程度の割合で他の人と1つの塩基
が異なっている場所が存在する。通常、この1塩基の変
化が、あるヒト集団の全人口中1%以上の頻度で存在し
ているものを、SNPsと呼んでいる。
【0005】従って、全遺伝子(ゲノム)中には、30
0万〜1000万のSNPsが存在しているといわれ、
現在世界中でSNPsの探索が続けられている。SNP
sが注目されている理由は、SNPsの分類により、統
計的に各個人の遺伝子が関与しているといわれている多
くの疾患に対する罹患率が推測できると考えられている
からである。例えば、乳がんを例にとると、乳がんにか
かった患者群と正常な群とのSNPsの比較により、乳
がんにかかりやすい人に共通のSNPsを特定すること
ができる。そして、健康診断時に、遺伝子を調査しその
SNPsを持った人、すなわち現在は正常でも将来乳が
んにかかりやすい体質の人を見つけることが可能にな
る。
【0006】この診断によって、乳がんにかかりやすい
体質の人は、頻繁に検査をすることで万一癌に罹患して
も、超早期に治療が行え生存の可能性が向上する。それ
と同様のことが、糖尿病や高血圧などの生活習慣病につ
いても言え、世界中で多くの人が苦しんでいる病気に対
して発病の前から食事や生活指導を正確にすることが可
能になる。
【0007】また、病気の治療に用いている薬剤に関し
てもSNPsは重要な役割を期待されている。治療の際
に用いられる薬剤は全ての人に均等に効果を示すもので
はない。一般に薬剤は、ある割合の人には効果があって
も他の人には全く効果が無く、かえって副作用等で逆の
結果を招くことがあることも広く知られている。因み
に、アメリカにおける死亡原因の中で薬剤による副作用
が上位に位置しているのは周知のことである。薬剤の効
果はその人がもつ体質に深く関与しており、その体質も
SNPsの分類によって区別可能であると言われてい
る。すなわち、SNPsの解析による分類で、ある薬剤
に対してあらかじめ効果や感受性が予測でき適正な処方
をすることが可能になり、患者個々人の体質に合わせた
最適な薬剤の投与や副作用の危険性の回避が期待されて
いる。このような医療のことをテーラーメイド医療また
はオーダーメイド医療と呼び、将来の実用化が確実視さ
れている。
【0008】また癌は、正常な細胞においては重要な役
割をする遺伝子上の特定の部位に例えば紫外線や変異原
性物質の作用によって突然変異が生じることによって引
き起こされることがわかっている。ある特定の遺伝子上
の変異を読み取ることで細胞が癌化しているか否かを早
い段階から診断できるようになる。そして、犯罪捜査に
おける犯人の特定や曖昧な親子関係の確定さらには本人
であるか否かの識別にもSNPsは、威力を発揮する。
前述したように、各個人には300万〜1000万のS
NPsが存在しており、両親からそれぞれ別々のSNP
sを引き継ぐため、地球上に親子兄弟といえども全く同
じSNPsをもつ人間は絶対に存在しないと言われてい
る。これが個人の完全な特定を可能にする理由である。
【0009】このように、特定の遺伝子中の1塩基に起
きた変異を観察することで医療をはじめ様々の事柄に多
大な貢献をもたらす可能性がある。しかしながら現在、
特定の遺伝子の変異を観察する方法は以下に述べるよう
な非常に複雑な操作あるいは高価な装置を必要とし、ラ
ンニングコストも非常に嵩むため、広く利用されるまで
には至っていない状況にある。
【0010】現在最も一般的に用いられているSNPs
を調べる方法は、DNAの塩基配列を端から直接読んで
いくシーケンシング(塩基配列の決定)と呼ばれている
方法である。遺伝子は1種類のタンパク質を形成するた
めの塩基配列情報をもったDNAの単位であるから、塩
基配列を端から読んでいけばSNPsが解明することが
できる。シーケンシングを行う方法としては、いくつか
の報告があるが、最も一般的に行われているのは以下に
述べるジデオキシシーケンシング(Sanger法)である。
この方法を含めいずれの方法も、分離能の高い変性ポリ
アクリルアミドゲル電気泳動かキャピラリー電気泳動に
よって1塩基長の長さの違いを分離・識別できる技術が
基になって成り立っている。
【0011】ジデオキシシーケンシング(Sanger法)
は、酵素的シーケンシングとも呼ばれ、1本鎖鋳型DN
Aの相補的鎖を合成するためにDNAポリメラーゼを用
い、さらに人工的につくった特殊な4種類のジデオキシ
ヌクレオチドを利用するのが特徴である。シーケンシン
グ操作としては、塩基配列を行いたい1本鎖DNAの
3'末端を相補する合成塩基配列をプライマーとして用
い、そのプライマーからDNAポリメラーゼと均等に加
えられたデオキシヌクレオチドを酵素反応によって伸長
させる操作を行うが、この時同時に4つの反応容器を準
備しておき、それぞれにATGC4つの塩基の3'末端
に水酸基を持たない、従ってこれ以上DNA伸長反応を
続けることができない塩基アナログであるジデオキシヌ
クレオチドを別々に少量混入させておく。これにより、
伸長中のDNAの末端にジデオキシヌクレオチドが付加
された時点でDNA合成がストップし、それぞれの反応
容器中に様々な長さを持った、しかし端は必ず加えた塩
基アナログである2本鎖DNAが形成される。この反応
容器にS1エンドヌクレアーゼを反応させ、1本鎖DN
Aを全て消化し2本鎖DNAのみとする。こうして得ら
れた4つの反応容器のDNA鎖をゲル電気泳動またはキ
ャピラリー電気泳動し、分離されたDNAを短い方(速
く移動したもの)から順に読めば、鋳型鎖と相補的なD
NAの塩基配列がわかる。この際、泳動結果の識別は、
例えば加えるジデオキシヌクレオチドのリンまたはイオ
ウを放射性標識したり蛍光を発する化学物質を結合させ
たりして行う。放射性標識の場合はフィルムへの露光で
の検出、蛍光化学物質の場合はレーザービームを照射し
蛍光を検出する。最近では、A,T,G,Cの4種類の
塩基アナログを、それぞれ4種類の蛍光波長の異なる試
薬により標識し、その4色の蛍光を同時に検出する方法
も開発されている。
【0012】このように、従来は被験者から分離・精製
した遺伝子の正確な塩基配列をこのジデオキシシーケン
シング(Sanger法)あるいはその他の塩基配列決定法に
より決定し、正常あるいは標準的な塩基配列と比較する
ことによってSNPsの有無や突然変異の有無の確認、
個人の識別等を行っている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】以上説明したように、
従来からの遺伝子配列決定法を利用した、遺伝子診断や
遺伝子による個人の識別は、ターゲットとする遺伝子を
単離したのち、増幅・精製し、遺伝子の塩基配列決定用
装置を用いて、目的遺伝子の塩基配列を読むことによっ
て行っていたため、実験に膨大な作業量と非常に長い時
間、さらには多大のランニングコストを要していた。ま
た塩基配列決定のための自動化した装置は、非常に高価
で、大きなスペースを占有し、しかも高価な試薬を大量
に必要とするものであった。
【0014】そこで、従来のこのような問題を解決する
ため本発明は、一塩基以上の遺伝子異常を短時間、且つ
簡単、正確に検出することができ、小型、軽量、安価
に、しかも非常に少ないランニングコストで、診断を自
動化することができる遺伝子診断装置を提供することを
目的とする。
【0015】さらに、本発明は、一塩基以上の遺伝子異
常を短時間、且つ簡単、正確に判定できる遺伝子診断方
法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明の遺伝子診断装置は、定電圧の印加によりDN
A試料とDNAコンジュゲートを電気泳動させたとき、
照射した光の吸光度から流路内部を通過するDNA試料
の通過量の時間変化を検出するための検出部を備えると
ともに、検出部がDNA試料を透過する光のスペクトル
波形を検出し、制御演算部がDNA吸収波長を含む所定
の波長領域における該スペクトル波形の変極点の存在に
よって通過量の時間変化のピークがDNAとノイズ成分
のいずれに対応するかを判断することを特徴とする。
【0017】これにより、一塩基以上の遺伝子異常を短
時間、且つ簡単、正確に検出することができ、小型、軽
量、安価に、しかも非常に少ないランニングコストで、
診断を自動化することができる。
【0018】また、本発明の遺伝子診断方法は、DNA
試料とDNAコンジュゲートを電気泳動させ、DNA試
料中のDNAとDNAコンジュゲートとの塩基配列の違
いによる結合力の差によって泳動速度に差を生じさせ、
正常DNAと異常DNAとノイズ成分に分離して吸光度
を測定し、該吸光度のフェログラムのピークから正常D
NAと異常DNAの存在比率を診断し、吸光度を測定す
るときにスペクトル波形を検出し、200nm〜260
nmの波長の範囲に変極点があった場合にDNAのピー
クと判断し、残りの場合をノイズ成分のピークと判断す
ることを特徴とする。
【0019】これにより、一塩基違いの遺伝子異常でも
短時間、且つ簡単、正確に検出することができ、安価
に、非常に少ないランニングコストで、診断を自動化す
ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】請求項1に記載された発明は、第
1電極を収容し導電性を有する媒体で満たされた第1容
器と、第2電極を収容し導電性を有する媒体が満たされ
た第2容器と、第1容器と第2容器の間を連絡するとと
もに導電性を有する媒体が満たされ、さらに該媒体中に
は、DNA試料と、該DNA試料の正常DNAと相補関
係にあるDNAを高分子化合物に結合させたDNAコン
ジュゲートが充填された流路と、第2電極に正電位を印
加するとともに第1電極に負電位を印加する電源部と、
電源部を制御して第2電極と第1電極間に所定の定電圧
を印加する制御演算部と、流路に設けられ、定電圧の印
加によりDNA試料とDNAコンジュゲートを電気泳動
させたとき、照射した光の吸光度から流路内部を通過す
るDNA試料の通過量の時間変化を検出するための検出
部を備えた遺伝子診断装置であって、検出部がDNA試
料を透過する光のスペクトル波形を検出し、制御演算部
がDNA吸収波長を含む所定の波長領域における該スペ
クトル波形の変極点の存在によって通過量の時間変化の
ピークがDNAとノイズ成分のいずれに対応するかを判
断することを特徴とする遺伝子診断装置であり、第2電
極と第1電極間に所定の定電圧を印加し、DNA試料と
DNAコンジュゲートを電気泳動させ、結合力の差を利
用して正常DNAと異常DNAの泳動速度をそれぞれ低
下させ、その作用を受けないノイズ成分はほぼそのまま
の速度で泳動させることができる。すなわち、正常DN
A及び異常DNAは移動しながらこのDNAコンジュゲ
ートの結合力の作用を受け、この作用を受けないノイズ
成分は、電圧を印加したとき一番先に泳動されて検出部
で検出される。しかし、異常DNAには、DNAコンジ
ュゲートから正常DNAより若干弱い結合力が作用し、
コンジュゲートの作用をなかなか振り切れず、ノイズ成
分に遅れて次に泳動を開始する。正常DNAには最大の
結合力が作用し、更に遅れて泳動開始され、最後に検出
部で検出される。これにより3つのDNAの検出時間に
差を生じさせることができる。ノイズ成分の中には、正
常DNAや異常DNAと同じ吸収波長をするものも存在
するが、そのようなノイズ成分は、DNAとは異なるス
ペクトル波形を有し、DNAの所定の波長領域における
スペクトル波形にみられる変極点が存在しないことか
ら、ノイズ成分とDNAを分離し、さらに正常DNAと
異常DNAとを判別することができる。電気泳動とDN
Aの水素結合を利用するから十数分という短時間のうち
にDNAを分離でき、且つ所定の定電圧を印加するだけ
から分解能の高い最適電圧にきわめて簡単に調整でき、
正確にDNAの異常の有無を検出することができ、小
型、軽量、低ランニングコストの安価な装置とすること
ができ、診断の自動化がきわめて容易である。
【0021】請求項2に記載された発明は、DNAコン
ジュゲートが、DNAの塩基配列の違いによる結合力の
差によって正常DNAと異常DNAの泳動速度に差を生
じさせ、DNA試料を正常DNAと異常DNAに分離す
ることを特徴とする請求項1記載の遺伝子診断装置であ
り、DNAコンジュゲートとの水素結合の結合力の差を
利用して正常DNAと異常DNAの泳動速度をそれぞれ
低下させ、その作用を受けないノイズ成分はほぼそのま
まの速度で泳動させることができる。DNAコンジュゲ
ートは高分子化合物と結合したものであるから、泳動速
度はDNA試料と比較すると数%にすぎず(但し、高分
子化合物の種類と長さに依存する)、相対的にみて擬似
固定状態にすることができる。コンジュゲートの固定処
理は難しく、通常流路を使い捨てにしなければならない
が、擬似固定のためその必要はなく、各種コンジュゲー
トや試料の各濃度調整および各種コンジュゲートや試料
の混合比率の調整がきわめて容易になる。
【0022】請求項3に記載された発明は、検出部に
は、発光部と、該発光部から照射され流路を透過した光
を波長ごとに分解できる分離部と、該分離部を通過した
光を検出する受光部が設けられたことを特徴とする請求
項1または2記載の遺伝子診断装置であるから、プリズ
ムや透光フィルター等の分離部によってスペクトル波形
を得ることができ、このスペクトル波形から正常DNA
と異常DNAを区別し、通過量をそれぞれ測定すること
ができる。なお、プリズムに対しては分解された光ごと
に受光可能な受光部が必要となる。
【0023】請求項4に記載された発明は、分離部が2
00nm〜260nmの波長領域で照射光を分解するこ
とを特徴とする請求項3記載の遺伝子診断装置であるか
ら、DNAのスペクトル波形には、DNA吸収波長であ
る260nmのピークと、変極点として240nm付近
の極小値が現われ、正常DNAや異常DNAと異なって
ピークや変極点をもたないノイズ成分の区別を正確に行
うことができ、測定を簡単に且つ容易に行うことができ
る。
【0024】請求項5に記載された発明は、検出部で検
出した260nmの波長の吸光度が240nmの波長の
吸光度より大きく、200nmの波長の吸光度が240
nmの吸光度より大きい場合に、ピークがDNAを示す
ピークと判断することを特徴とする請求項1〜4のいず
れかに記載の遺伝子診断装置であり、200nmの波長
の吸光度と、240nmの波長の吸光度と、260nm
の波長の吸光度を検出するだけで、簡易に変極点情報を
入手することができ、きわめて簡単にDNAとノイズ成
分とを判別することができる。
【0025】請求項6に記載された発明は、分離部が所
定の波長領域のみを透過する透過フィルターであること
を特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の遺伝子診
断装置であり、流路内から透過する光から目的とする波
長の範囲を一つの受光部で検出することができる。
【0026】請求項7に記載された発明は、透過フィル
ターが、所定の波長領域の中で複数の異なる波長を選択
して透過させることを特徴とする請求項6記載の遺伝子
診断装置であり、流路内から透過する光から目的とする
複数の波長の吸光度を1つの受光部で検出することがで
きる。
【0027】請求項8に記載された発明は、第2電極と
第1電極の間に所定の定電圧を印加してDNA試料とD
NAコンジュゲートを電気泳動させ、DNA試料中のD
NAとDNAコンジュゲートとの塩基配列の違いによる
結合力の差によって泳動速度に差を生じさせ、正常DN
Aと異常DNAとノイズ成分に分離して吸光度を測定
し、フェログラムのピークから正常DNAと異常DNA
の存在比率を診断する遺伝子診断方法であって、吸光度
を測定するときにスペクトル波形を検出し、200nm
〜260nmの波長の範囲に変極点があった場合にDN
Aのピークと判断し、残りの場合をノイズ成分のピーク
と判断することを特徴とする遺伝子診断方法であり、第
2電極と第1電極間に所定の定電圧を印加し、DNA試
料とDNAコンジュゲートを電気泳動させ、結合力の差
を利用して正常DNAと異常DNAの泳動速度をそれぞ
れ低下させ、その作用を受けないノイズ成分はほぼその
ままの速度で泳動させることができる。正常DNA及び
異常DNAは移動しながらこのDNAコンジュゲートの
結合力の作用を受け、この作用を受けないノイズ成分
は、電圧を印加したとき一番先に泳動されて検出部で検
出される。しかし、異常DNAには、DNAコンジュゲ
ートとの一塩基分弱い結合力が作用し、コンジュゲート
の作用をなかなか振り切れず、ノイズ成分に遅れて次に
泳動を開始する。正常DNAには最大の結合力が作用
し、更に遅れて泳動開始され、最後に検出部で検出され
る。これにより3つのDNAの検出時間に差を生じさせ
ることができる。ノイズ成分の中には、正常DNAや異
常DNAと同じ吸収波長をするものも存在するが、その
ようなノイズ成分は、DNAとは異なるスペクトル吸収
波形を有し、DNAのスペクトル波形にみられる変極点
が存在しないことから、ノイズ成分とDNAを分離し、
さらに正常DNAと異常DNAとを判別することができ
る。電気泳動とDNAの水素結合を利用するから十数分
という短時間のうちにDNAを分離でき、且つ所定の定
電圧を印加するだけから分解能の高い最適電圧にきわめ
て簡単に調整でき、正確にDNAの異常の有無を検出す
ることができ、小型、軽量、低ランニングコストの安価
な装置とすることができ、診断の自動化がきわめて容易
である。
【0028】請求項9に記載された発明は、260nm
の波長の吸光度が240nmの波長の吸光度より大き
く、200nmの波長の吸光度が240nmの吸光度よ
り大きい場合に、変極点が存在すると判断することを特
徴とする請求項9記載の遺伝子診断方法であり、200
nmの波長の吸光度と、240nmの波長の吸光度と、
260nmの波長の吸光度を検出するだけで、きわめて
簡単にDNAとノイズ成分とを判別することができる。
【0029】以下、本発明の実施の形態における遺伝子
診断装置と遺伝子診断方法について、図面を参照しなが
ら説明する。
【0030】(実施の形態1)図1は本発明の実施の形
態における遺伝子診断装置の外観図、図2は本発明の実
施の形態における遺伝子診断装置の上蓋開放外観図、図
3は本発明の実施の形態における遺伝子診断装置の装置
構成図、図4は本発明の実施の形態における遺伝子診断
装置の制御回路要部図、図5は本発明の実施の形態にお
ける遺伝子診断装置の流路内の分離用DNAコンジュゲ
ートとDNA試料との導入状態図、図6は本発明の実施
の形態における遺伝子診断装置の検出部構成図、図8は
経過時間と吸光度の関係図、図9は260nm吸光度ピ
ーク発生時のスペクトル波形図である。
【0031】図1において、1は遺伝子診断装置の電源
スイッチ、2は装置の種々の操作を行うための操作ボタ
ン、3は表示パネル、4は上蓋、5は装置の筐体であ
る。図2、図3、図4において、6は電気泳動を行うた
めの電気泳動部、7は電気泳動部6を支える支持台、8
は電気泳動を行うための制御や後述する吸引ポンプ2
0、検出部15の制御を行い、検出したデータを演算す
る基板からなる制御演算部である。9は電源ボックス、
9aは電源ボックス9内に設けられた電源部である。電
源部9aは、本遺伝子診断装置ではDNAの種類や濃
度、処理条件ごとに異なった最適印加電圧値が存在する
ため、後述のDNA試料23から異常DNAと正常DN
Aを分離するのに最も適した泳動が行えるように所定の
電圧を制御演算部8の制御により印加する。10はDN
Aの2重螺旋(以下、2本鎖)を引き離すための高温
部、11は高温部10と後記する分離部12の温度を独
立にするための断熱部、12は正常DNAと異常DNA
とノイズ成分とを分離するための所定温度に調整すると
ともに、この部分でDNAを3つのDNAに分離する分
離部、13は高温部10と分離部12の温度を調整する
温調器である。
【0032】この高温部10と分離部12内の構成の詳
細については後述するが、測定開始時には、図5に示す
ように分離用DNAコンジュゲート21が分離部12の
位置付近、DNA試料23が高温部10付近になるよう
に配置する。そして、このように設定された配置と電圧
制御、濃度調整、温度制御等を行うことにより、電気泳
動させながら本遺伝子診断装置はDNA試料23を正常
DNAと異常DNAとノイズ成分に十数分で分離するも
のである。
【0033】このうちDNA試料23は、本実施の形態
においては2本鎖を備えたまま高温部10に充填、配置
され、温調器13を用いて(90℃以上の所定温度で±
5℃の範囲)の温度になるように加熱、制御される。こ
の温度に加熱されることにより導入されたDNAの2本
鎖が1本鎖に自動的に分離される。続いて、分離部12
では分離用DNAコンジュゲート21が泳動作用を受け
ながら水素結合の結合力の差によってDNA試料23を
正常DNAと異常DNAとノイズ成分を分離できるよう
に、高温部11の温度より少なくとも10℃低い温度、
すなわち15℃〜80℃、望ましくは20℃〜60℃の
温度範囲の中で所定の温度に保つように制御される。正
常DNAと異常DNAとを分離するためにはDNAの分
離に適したこの所定の温度の±1℃の範囲で制御するの
がよい。さらに、断熱部11は、本来、分離部12と高
温部11の間を熱的に遮断して温度調整するために設け
られるもので、分離部12の温度を20℃〜60℃にな
るように調整される。この温度下での水素結合の結合力
差により泳動作用を受けながら正常DNAと異常DNA
をノイズ成分から分離することができる。
【0034】14は、電気泳動の方向を基準として高温
部10の前方に設けられ、分離用DNAコンジュゲート
21を図5の分離部12の位置付近に正確に配置するた
めに測定に先立って位置情報を入手するための予備検出
部、15は分離部12の後流側に設けられ、分離されて
電気泳動されるDNA試料の通過量を測定する検出部で
ある。この予備検出部14は測定開始前に使用するもの
で、キャピラリー管19を挿通させて分離用DNAコン
ジュゲート21の存在位置を検出し、この存在位置を基
準にキャピラリー管19を所定距離移動させ、分離用D
NAコンジュゲート21を分離部12の位置付近に配置
するものである。測定を行うだけなら検出部15だけで
十分であるが、測定を行う前に分離用DNAコンジュゲ
ート21を図5に示す位置に正確に配置する必要がある
ため、予備検出部14を用いるものである。このように
予備検出部14の検出した情報を基に位置決定するた
め、きわめて正確に位置制御することができる。
【0035】図4において、15aは紫外線を照射する
D2ランプ、15bは紫外線を受光するフォトダイオー
ド、15cはフォトダイオード15bが検出した微弱電
流を増幅するプリアンプ、15dはデジタル量に変換す
るA/Dコンバータである。24は透過してくる光を目
的とする波長領域のみ透過させる透過フィルター(本発
明の分離部)であり、D2ランプ15aとフォトダイオ
ード15bの間に設けられている。透過フィルター24
の詳細は後述するが、200nm,240nm,260
nmの波長の光のスペクトル波形からノイズ成分を除去
してDNAを検出することが可能になる。なお、予備検
出部14は検出部15と同一の内部構成を備えており、
D2ランプ(図示しない)とフォトダイオード(図示し
ない)と透過フィルター(図示しない)を備え、検出部
15と共用するA/Dコンバータ15dを経由して制御
演算部8に信号を送る。これにより、予備検出部14で
分離用DNAコンジュゲート21の位置を検出すること
ができる。ところで、本実施の形態においては本発明の
分離部は透過フィルター24で構成したが、プリズム等
で構成する場合は、分解した光をそれぞれ検出できるよ
うにフォトダイオード15bの数を増してフォトダイオ
ードアレーにするのがよい。16は電気泳動のときに正
電位を印加する電極(本発明の第2電極)、17は電気
泳動のときに負電位を印加する電極(本発明の第1電
極)であり、制御演算部7が電源部9aを制御し、電極
16と電極17との間に所定の定電圧を印加し、最も有
効な電気泳動を生じさせる。
【0036】次に、図3、図4、図5において、18は
電気泳動時の電荷の運搬とDNA試料のpHを安定させ
るための緩衝液(本発明の導電性を有する媒体)、18
aは緩衝液18を収容する陽極側の容器(本発明の第1
容器)、18bは緩衝液18を収容する陰極側の容器
(本発明の第2容器)、18cはDNA結合制御剤と下
記のリニアポリマー18dを緩衝液18に添加した添加
緩衝液、18dは電気泳動を可能にし、正常DNAと異
常DNAとノイズ成分を分離する媒体であるポリアクリ
ルアミドのようなリニアポリマーである。19は電気泳
動のときにDNA試料23を泳動するためのキャピラリ
ー管(本発明の流路)、20はキャピラリー管19の中
にDNA試料23やリニアポリマー18dとDNA結合
制御剤などの試薬を注入するための吸引ポンプである。
容器18aの緩衝液18の中には電極16が浸漬され、
容器18bの緩衝液18の中に電極17が浸漬される。
容器18aと容器18b内の緩衝液18は、キャピラリ
ー管19内の添加緩衝液18cによって連通される。電
極16と電極17間に電圧を印加すると、キャピラリー
管19内に電気泳動が誘発され、分離用DNAコンジュ
ゲート21、DNA試料23は負に帯電しているため、
容器18aから容器18b側へ分離用DNAコンジュゲ
ート21、DNA試料23が移動する。
【0037】図6において、透過フィルター24はD2
ランプ15aから照射されコンジュゲート管19を透過
してくる光の中で目的とする波長領域のみを透過させる
ものであり、24aは透過フィルター24を構成する2
00nmの波長透過フィルター、24bは240nmの
波長透過フィルター、24cは260nmの波長透過フ
ィルターである。透過フィルター24は電気泳動時に回
転させられ、200nm,240nm,260nmにお
ける吸光度が測定される。なお、透過フィルター24を
3点以上の波長透過フィルターで構成すればさらに詳細
なスペクトル波形を得ることができる。
【0038】ところで、図9は図8に示す吸光度の各ピ
ークにおけるスペクトル波形を示したものである。図9
の“a”は代表的なDNAのスペクトル波形で、“b”
はDNA以外の不純物におけるスペクトル波形の例であ
る。通常、図8に示す吸光度の各ピークの位置付近のス
ペクトル波形を調べると、図9のようにスペクトル波形
が“a”か“b”かの、すなわち変極点があるか無いか
の特徴が現われる。すなわち、260nmがDNA吸収
波長であるから、スペクトル波形においてこの近辺の領
域、すなわち200nm〜260nmの領域に極小値が
あれば260nmにピークがあり、そのピークはDNA
の存在を示している。このように、透過フィルター24
によって吸収波長を選択し、スペクトル波形の違いをみ
ることで、吸光度ピーク成分がDNAであるかどうかの
判断が可能になるものである。
【0039】続いて、以下本発明の遺伝子診断装置で測
定を行う測定原理と留意すべき事項について説明する。
本遺伝子診断装置で測定するDNA試料23は、人の細
胞や血液等から入手したDNAである。約30億塩基対
あるといわれるヒト・ゲノムDNAからPCR(ポリメ
ラーゼ連鎖反応)などの方法を利用して目的の部分を目
的の長さに切り出して測定用に数を増加させる作業が必
要である。ただ、このPCRに関しては本遺伝子診断装
置の説明に必要がないため具体的な説明を省略する。
【0040】PCRなどで取り出した目的のDNAは塩
基数でいうと6個程度〜1000個程度であるが、約3
0億塩基対あるといわれるヒト・ゲノムDNAの中に、
同じDNA配列が存在しないと確率的に考えられる個数
としては、50個程度であればよい。しかし、これは総
数が50個程度あればよいということであるから、数回
に分けてDNAを切り取る場合は6個〜12個ずつに分
けるのでもよい。そして、本発明者らの実験によると、
本遺伝子診断装置で正常DNAと1塩基違いの異常DN
Aを分離する場合、塩基の個数は6個〜12個が最も効
率よく分離できるという結果を得ている。ただ、この異
常DNAの分離はDNA試料の濃度(μM)、分離用D
NAコンジュゲート濃度(モル%)、測定温度、その他
と密接な関係があるため、適正な条件にしないと分離が
起こらないから、このような条件を設定することができ
るか否かに留意する必要がある。例えば、分離用DNA
コンジュゲート21濃度は0.004〜0.008(モ
ル%)程度が適当であるが、DNA試料23の濃度は1
〜10(μM)が適当で、500〜600倍の濃度とす
るのが望ましい。このようにPCRなどにより前処理に
よって得られる6個程度〜1000個程度の塩基配列を
持つDNA試料が本遺伝子診断装置の診断には必要であ
り、条件設定を行うことが望まれる。
【0041】次に、キャピラリー管19について説明す
る。キャピラリー管19にゲルを入れて電気泳動を行う
と、電気浸透流と呼ばれる液の流れが発生してしまうた
め、本遺伝子診断装置ではこの現象が起きないようにす
る必要がある。このためキャピラリー管19の内壁をア
クリルアミドなどでコーティングするのがよい。電気浸
透流の発生が阻止できるならコーティング方法は他の方
法でもよい。例えば、一般に販売されているコーティン
グキャピラリー管を使用するのでもよい。なお、キャピ
ラリー管19としては内径50〜100μmのフューズ
ドシリカ製キャピラリー管が、紫外線を90%以上透過
でき、且つ後述するように紫外線を利用してDNAを検
出するとき、紫外線の通過量を容易に検出できるから最
も適当である。そして、溝のある板と、紫外線が90%
以上透過する板との組み合わせでキャピラリー管19を
構成するのでも、紫外線を90%以上透過でき、紫外線
の通過量を検出することで異常DNAの検出を容易に行
うことができる。なお、溝のある板を紫外線が透過可能
な板にした場合は透過光を検出し、溝のある板を紫外線
が不透過の板にした場合は、異常DNAを反射光で検出
する。反射光を検出する場合には溝形状を均一な反射面
とするため矩形断面にする必要がある。
【0042】容器18a,18bの中やキャピラリー管
19に収容する緩衝液18,18cは、Tris-Borate
(pH7.2〜pH8程度)緩衝液等を利用するのが適
当である。このうちキャピラリー管19に収容する添加
緩衝液18cに混入するDNA結合制御剤には、分離用
DNAコンジュゲートに対するDNAの結合を促進する
塩化マグネシウム等の結合促進剤と、離脱を促す尿素等
の離脱剤の2種類が存在する。この2種類のDNA結合
制御剤は、2種類の混合割合や、物質(例えば、結合促
進剤として他の電解質)を選ぶことで、DNAに対する
多様な泳動速度の制御が可能になるものである。分離用
DNAコンジュゲート21やDNA試料23等を電気泳
動するためのリニアポリマー18dは、ポリアクリルア
ミドがコンジュゲート作成にも利用されるため、相性が
よく適当である。
【0043】次に、キャピラリー管19への充填順序で
あるが、図5に示すように先ずキャピラリー管19内に
リニアポリマー18dとDNA結合制御剤を含んだ添加
緩衝液18cを導入し、続いて以下詳述する分離用DN
Aコンジュゲート21を加える。このときリニアポリマ
ー18dと混合して導入してもよいし、分離用DNAコ
ンジュゲート21導入後にリニアポリマー18dを導入
してもよい。その後、添加緩衝液18cで希釈したDN
A試料23を導入して電気泳動する。
【0044】本実施の形態では、分離用DNAコンジュ
ゲート21を作成するのにアクリルアミドとDNAを重
合させているため、DNAとの重量差、構造差は大き
く、分離用DNAコンジュゲート21の泳動速度(0.
6cm/分〜0.7cm/分)は、DNAの最適泳動速
度(13cm/分〜20cm/分)の1/20〜1/3
0程度であって、非常に動きが鈍く相対的に擬似的に固
定されているといってもよいような状態が実現される。
従って、測定を開始するに先立って、電気泳動部6の入
り口に設けられた予備検出部14で分離用DNAコンジ
ュゲート21の検出を行い、この位置情報を基に、充填
物を収容したキャピラリー管19を高温部10、断熱部
11、分離部12の間で移動させ、分離用DNAコンジ
ュゲート21を分離部12内に置き、DNA試料23は
高温部10に配置する。予備検出部14で位置情報を得
ての配置であるため所定の位置に正確に配置することが
できる。この状態から電気泳動にすることにより、高温
部10でDNA試料23の2本鎖を1本鎖に分離し、高
温部10から断熱部11、分離部12を経て正常DNA
と異常DNAを分離し、さらにノイズ成分も明確に分離
することができる。
【0045】なお、遺伝子診断装置のキャピラリー管1
9にDNA試料や分離用DNAコンジュゲート、リニア
ポリマーの各溶液を交換的に導入する機構としては、例
えば図3に示した吸引ポンプ20を装備するほかにも、
各DNA試料や分離用DNAコンジュゲート、リニアポ
リマーの各溶液をそれぞれ保管するカラムと、そのカラ
ムを自動的に交換し、それをキャピラリー管19に接続
する機構を装備するのが望ましい。
【0046】さらに、キャピラリー管19を1本または
複数本単位でユニット化し、これを交換用の分離用流路
カートリッジとして、分離部12と高温部10、断熱部
11に装着可能にし、温調器13で高温部10及び分離
部12内を温度制御するようにするのが好ましい。この
場合、キャピラリー管19内に、予めリニアポリマー1
8dとDNA結合制御剤を含む添加緩衝液18cを充填
し、分離用DNAコンジュゲート21とDNA試料23
を分離状態で充填して分離用流路カートリッジとして用
意しておき、測定を行うたびに分離用流路カートリッジ
ごと交換する。分離用流路カートリッジごとに分離用D
NAコンジュゲート21、DNA試料23の配置を予め
正確に設定できるから、測定が簡単に行え、しかも正確
な測定が行える。なお、この分離用流路カートリッジで
は、分離用DNAコンジュゲート21とDNA試料23
を分離状態にするため、その間にリニアポリマー18d
を挟んで充填している。それぞれの中にリニアポリマー
18dを混合させて充填するのでもよい。
【0047】続いて、分離用DNAコンジュゲートにつ
いて説明する。図7は本発明の実施の形態における遺伝
子診断装置の流路内の分離用DNAコンジュゲートとD
NA試料との関係概念図である。図7において、21は
分離用DNAコンジュゲートである。DNAは二本鎖を
形成するものと一本鎖のものと存在するが、DNAのも
つA,T,C,G4つの塩基は互いにAとT、GとCが
それぞれ水素結合し易い性質をもち、DNAの二本鎖に
おいてもAT,GCで対をなしている。従って、一方の
鎖のDNAがATCGCGTCTAGC(配列番号1に
記載)と配列されている場合、もう一方の鎖のDNA
は、TAGCGCAGATCG(配列番号2に記載)と
いう塩基配列をもっている。この関係は相補的関係と呼
ばれるもので、この相補関係を充たす限り、AとT、G
とCがそれぞれ水素結合により結合し、二本鎖を形成す
る。本発明ではこの関係を利用するために、図7に示す
ように分離用DNAコンジュゲート21のDNA部分に
はDNA試料の正常DNAに相補的な塩基配列を持たせ
ている。従って、DNA試料の正常DNAの塩基配列が
ATCGCGTCTAGC(配列番号1に記載)を含
み、異常DNAがATCA*CGTCTAGC(配列番
号3に記載)で、*で示した部分で正常DNAと異常D
NAの塩基が異なっている場合、分離用DNAコンジュ
ゲート21のDNA部分の配列(本発明の第1の塩基配
列)をTAGCGCAGATCG(配列番号2に記載)
とすると、異常DNAはA*において分離用DNAコン
ジュゲート21と相補的ではなくなるため水素結合せ
ず、水素結合全体の結合力はDNA試料の正常DNAの
方が異常DNAより1塩基分の結合力分だけ大きくな
る。その結果、後で説明する電気泳動時に正常DNAの
方が異常DNAより強い結合力で長い時間分離用DNA
コンジュゲート21と結合するため、正常DNAは異常
DNAより相対的に遅延するようになる。というのは、
電気泳動時結合力だけでなく電気泳動による引離力も作
用するから、多数のDNAが断続的に結合と離脱を繰り
返すような結合状態となるからである。そして、この泳
動速度を平均的にみると、長い時間結合する正常DNA
の方が異常DNAより泳動速度が低下することになる。
DNA試料の中には、2本鎖のDNAのうち測定対象で
はない分離した残りの1本鎖DNAのように正常DNA
と異常DNA以外の不純物等も含まれており、これら不
純物が後で説明する電気泳動時にノイズとして作用する
が、このノイズ成分は分離用DNAコンジュゲート21
のDNAとはほとんど無反応で結合しないから、最も速
い泳動速度をもち分離されることになる。
【0048】次に、このような分離用DNAコンジュゲ
ート21の作成・合成方法について説明する。ビニル化
DNAを合成するために、PCRによって、分離用DN
Aコンジュゲート21用のDNAを切り出す。上述の例
では、TAGCGCAGATCGが分離用DNAコンジ
ュゲートのDNAとなる。
【0049】次に、目的の塩基配列を有するDNAの
5’末端をアミノ化(通常は、ヘキシル基を介してアミ
ノ化)する。このようにして得られたアミノ化DNAを
2.6mMになるように滅菌した超純水を加えて希釈す
る。次いで、MOSU(メタクリロイドオキシスクシン
イミド)を71.388mMになるようにDMSO(デ
ィメチルスルオキシド)で希釈する。そして、このよう
にして得たアミノ化DNAとMOSUを1:50の比率
になるように加えて調整する。さらに、この調整溶液に
対して、pH調整用としてpH9になるように炭酸水素
ナトリウムと水酸化ナトリウムで調整した溶液を、アミ
ノ化DNAの量と等量加える。
【0050】そして、得られた溶液を一晩振とうする。
その後、HPLC(High Performance Liquid Chromato
graphy:高速液体クロマトグラフィー)を使用して、振
とうした溶液中のビニル化DNAを、アミノ化DNA,
MOSU,その他と分離する。ビニル化DNAは溶離液
(TEAA;トリエチルアミンー酢酸とアセトニトリル
の混合溶液)を含んでいるため、さらに真空乾燥機能を
持った遠心エバポレーターで減圧濃縮する。
【0051】次いで、重合溶液である10%のAAM
(アクリルアミド)を53μmol窒素置換する。さら
に、重合開始剤である1.34%のTEMD(N,N,
N’N’−テトラメチルエチレンジアミン)を超音波で
脱気した滅菌超純水で希釈する。これを重合開始剤であ
る1.34%のAPS(過硫酸アンモニウム)を同じく
超音波で脱気した滅菌超純水で希釈する。さらに濃縮し
たビニル化DNAを滅菌した超純水で希釈する。そし
て、100μlのDNAコンジュゲートを合成するため
に、上記のAAMを34μl,上記のTEMDとAPS
を各々5μl、ビニル化DNAがAAMに対して0.0
1%モル〜0.05%モルになるように加え、100μ
lになるように滅菌超純水を追加して、60分程度放置
しておくとアクリルアミド化されたDNAコンジュゲー
トが得られる。
【0052】なお、未反応のビニル化DNAを除去する
ために、セロファンなどの透析膜の内部に、得られたD
NAコンジュゲートを入れて密封し大量の超純水の中で
透析膜を回転させて、内部の未反応DNAを除去する。
これにより、純度の高いDNAコンジュゲートが得られ
る。
【0053】続いて、本実施の形態における遺伝子診断
装置の動作について説明する。先ず遺伝子診断装置内
に、DNA試料や各溶液を導入したキャピラリー管19
をセットし、図3、図4に示すように両端に容器18
a,18b内の緩衝液18を浸す。この電極16と電極
17間に電源部9aによって後述する所定電圧を印加す
る。適当な電圧幅としては、望ましくは10〜20キロ
ボルトが好ましいが、電解質や電極の状態により100
ボルト〜30キロボルトでもよい。例えば、低電解質濃
度の場合や、電極面積が大きな場合は電圧を低電圧にす
る。そして、最初から所定電圧を印加するのでなく、定
電圧の印加の前に準備用の30キロボルト以上の高電圧
を印加し、ノイズ成分をいち早く分離すれば、測定を迅
速に行うことができる。
【0054】ここで、所定の電圧を印加しなければなら
ない理由を説明すると、分離用DNAコンジュゲート2
1に対するDNA試料の結合力と、電気泳動力による引
離力との差が、DNAの泳動速度や移動差に大きな影響
を与えるため、正常DNAと異常DNAとノイズ成分の
分離が最も効果的に行われる所定の定電圧を印加して電
気泳動する必要があるからである。この電圧は、(1)
最も泳動しにくい正常DNAを電気泳動することができ
るという条件と、(2)高電圧にすると正常DNAと異
常DNAの分解能が低下するので、分解能を上げるため
できるだけ低電圧で電気泳動しなければならないという
条件、の(1)(2)の条件を充たす電圧である。従っ
て、予め印加する電圧として最適な電圧をDNAごと、
条件ごとに調べておき、当初30キロボルト程度以上の
準備電圧を短時間印加した後、この電圧を印加するよう
にする。なお、キャピラリー管19内のDNAは負に帯
電しており陽極側に進むため、可変電源9aは電極16
を正電位、電極17を負電位になるように印加する必要
がある。また、電気泳動に当たっては、泳動時間を長く
しすぎると、キャピラリー管19内で添加緩衝液18c
が乾燥するので、必要以上に長い時間泳動を行うのは避
けなければならない。
【0055】電圧が印加されるとDNA試料は泳動され
ていくが、分離用コンジュゲート21は試料DNAの正
常DNAと異常DNAとの結合力に一塩基分の差があ
り、泳動されていくとき両者間に移動速度差が生じると
ともに、ノイズ成分との間で大きな移動差を生じる。同
様に、この正常DNAと異常DNAの群は遅延用コンジ
ュゲートとの結合力が同等であり、まったく同様に泳動
していくため、ノイズ成分と、正常DNAと異常DNA
の群との間に移動差が生じることになる。
【0056】次に、分離が行われる高温部10と分離部
12、断熱部11の説明を行う。上述したように、高温
部10でDNAの2本鎖を離すために90℃以上の(所
定温度±5℃)になるように温調器13を用いて制御す
る。また、分離部12では、DNA試料の状態によって
も異なるが、分離用DNAコンジュゲートとDNA試料
の結合力の差に基づいて、正常DNAや異常DNA、あ
るいはノイズ成分を分離できるように、高温部11の温
度より10℃程度低温、すなわち15℃〜80℃、望ま
しくは20℃〜60℃の温度範囲の所定温度に保たなけ
ればならない。実施の形態の遺伝子診断装置では、キャ
ピラリー管19を覆っている分離部10の下部に、シリ
コンラバーヒーターやニクロム線等と熱電対やサーマル
等の温度センサーを配置し、温調器13で所定の温度±
1℃以下になるように管理する。ただ、環境温度によっ
ては室温が目的の所定温度を超える場合もあり、シリコ
ンラバーヒーターやニクロム線等に代えて、ペルチェ等
の暖・冷可能な部品を使うのがよい。また、断熱部11
はガラスウールや発砲剤、雲母、多孔質セラミックス等
の断熱材もしくは、中身を真空にしたものを使用するの
でもよい。
【0057】続いて、移動差が生じた正常DNAと異常
DNA、ノイズ成分を、検出部でどのようにして検出す
るか説明する。検出は、図8に示すように紫外線の照射
が正常DNAと異常DNA、ノイズ成分によって遮光さ
れたときの吸光度を測定することで行う。実施の形態に
おいては、図6に示すようにキャピラリー管19の一部
でスリット板のスリットでガラス部を露出させ、D2ラ
ンプ15aから紫外線を照射し、このとき得られる紫外
線照射光の透過フィルター24を透過した光だけをフォ
トダイオード15bで検出し、吸光度を測定している。
なお、分離部としてプリズム等を使った場合は複数のフ
ォトダイオード15bによって検出するのがよい。制御
演算部8によって電源部9aを制御してD2ランプ15
aを発光させ、フォトダイオード15bで検出した電流
はプリアンプ15cで増幅し、A/Dコンバータ15d
でデジタル量として吸光度に制御演算部8で換算され、
表示パネル3上にフェログラムとして表示される。制御
演算部8はタイマ(図示しない)を内蔵し、泳動開始時
間からの経過時間を測定することができる。図8におい
て、経過時間が大きい(時間的に早い)方(I)が、D
NAコンジュゲートと結合しないノイズ成分、経過時間
が中位の(II)が異常DNA、経過時間が小さい(I
II)が正常DNAである。
【0058】このフェログラムよりピークの高さと時間
とピークの山の数を読み取れば、DNA試料に異常DN
Aが含まれていることが分かる。すなわち、ピークの数
が3個以上あれば異常DNAが存在する。そして、印加
する電圧やDNA濃度、DNAの長さ(塩基の個数)に
よってはピークの数を異常DNAとノイズ成分だけにす
ることができるから、このときは例外的に2個のピーク
しかなく、この一方が異常DNAとなる。そして、正常
DNAと異常DNAの各通過量を求めるに当ってフェロ
グラム上で両者を示すピークの高さを比較するが、これ
は、比較対象の2つのピークが同じ条件下で電気泳動さ
れたDNA中の泳動速度差のある2つの集合の吸光度差
を示しているからであり、言い換えるならこの比が異常
DNAと正常DNAの存在比率に相当するからである。
異常DNAの存在量の判定は、標準DNA試料の検出ピ
ーク波形から得られた標準データを制御演算基部8に予
め入力しておき、そのデータと測定したデータを比較し
て換算すればよい。
【0059】ところで上述したようにDNA試料中に異
常DNAが含まれている場合はピークが3つ以上現わ
れ、泳動速度差を考慮すれば正常DNAと異常DNAと
ノイズ成分の区別が判断できるが、ピークが2つの場合
やピークが重なる例外的な場合には、正常DNAだけの
場合と区別できない。そこで、本発明の遺伝子診断方法
では、それぞれのピークでのスペクトル波形を測定する
ことにより、ピークを示す主成分がDNAかそれ以外の
不純物からなるノイズ成分なのかの区別を正確に判断し
ている。図6に示すように、本発明の実施の形態におけ
る遺伝子診断装置は、透過フィルター24は透過してく
る光を目的とする波長領域のみ透過させ、D2ランプ1
5aとフォトダイオード15bの間に設けられている。
波長透過フィルター24aは200nm、24bは24
0nmの波長透過フィルター、24cは260nmの波
長透過フィルターであり、透過フィルター24は120
°ごとに配置された波長透過フィルター24a,24
b,24cから構成されている。透過フィルター24は
電気泳動時に回転することで、波長透過フィルター24
a,24b,24cにより200nm,240nm,2
60nmの吸光度を測定することを可能になる。
【0060】この波長透過フィルター24aとして20
0nm、波長透過フィルター24bとして240nm、
波長透過フィルター24cとして260nmの吸光度を
測定するフィルターを採用した理由は、図9のスペクト
ル波形の特徴に基づいている。すなわち、260nmが
DNA吸収波長であり、200nm〜260nmの波長
領域においては図9に示すように、DNAの吸収スペク
トル波形“a”は200nm付近においては減少傾向を
示し、240nm付近で極小値を示して反転し、260
nm付近でピークを形成している。これに対し、DNA
以外の不純物の吸収スペクトル波形“b”は、200n
m付近、240nm付近、260nm付近と進むにつれ
単純に減少する傾向を有している。吸光度の絶対値につ
いては200nm、240nm、260nmでそれぞれ
変動もあるが、240nm付近、260nm付近に変極
点が存在するという特徴はほぼ不変であり、200nm
の吸光度の方が240nmの吸光度より大きく、260
nmの吸光度の方が240nmの吸光度より大きいとい
った傾向を有している。多くは200nmより260n
mの吸光度の方が大きく、通常260nmの吸光度がこ
の領域で最も大きい値を示す。これに対して、不純物の
吸収スペクトル波形“b”は、波長が小さいほど吸光度
が大きくなる傾向をもっているだけであり、この特徴か
ら透過フィルター24による200nm付近、240n
m付近、260nm付近の選択的な吸収波長を検出する
ことで、吸光度ピーク成分がDNAであるかどうかが判
断可能になる。
【0061】従って、本実施の形態においては吸収波長
をフォトダイオード15bで検出し、制御演算部8で換
算された各波長における吸光度の関係が200nm>2
40nm、240nm<260nmとなっていれば、D
NAと判断し、この関係が成立しない場合はDNA以外
のノイズ成分と判断するものである。この判断をピーク
の数、ピークの比に加えることにより、いかなる不純物
がDNA試料中に混入していたとしても、確実にDNA
との区別が可能になる。
【0062】以上説明したように、本実施の形態の遺伝
子診断装置と遺伝子診断方法によれば、細胞や血液等か
ら取り出したDNAの中で、特定のDNAを制限酵素な
どで取り出したDNA試料中に含まれる正常DNAと異
常DNAの存在比率等がノイズ成分の影響を受けること
なく正確に分かることにより、遺伝子診断、判定ができ
る。
【0063】
【発明の効果】以上のように、本発明の遺伝子診断装置
によれば、DNA試料を透過する光のスペクトル波形を
検出し、DNA吸収波長を含む所定の波長領域における
スペクトル波形の変極点の存在によって通過量の時間変
化のピークがDNAとノイズ成分のいずれを示すかを判
断することができ、第2電極と第1電極間に所定の定電
圧を印加し、DNA試料とDNAコンジュゲートを電気
泳動させ、結合力の差を利用して正常DNAと異常DN
Aの泳動速度をそれぞれ低下させ、その作用を受けない
ノイズ成分はほぼそのままの速度で泳動させることがで
きる。すなわち、正常DNA及び異常DNAは移動しな
がらこのDNAコンジュゲートの結合力の作用を受け、
この作用を受けないノイズ成分は、電圧を印加したとき
一番先に泳動されて検出部で検出される。しかし、異常
DNAには、DNAコンジュゲートから正常DNAより
若干弱い結合力が作用し、コンジュゲートの作用をなか
なか振り切れず、ノイズ成分に遅れて次に泳動を開始す
る。正常DNAには最大の結合力が作用し、更に遅れて
泳動開始され、最後に検出部で検出される。これにより
3つのDNAの検出時間に差を生じさせることができ
る。ノイズ成分の中には、正常DNAや異常DNAと同
じ吸収波長をするものも存在するが、そのようなノイズ
成分は、DNAとは異なるスペクトル吸収波形を有し、
DNAの所定の波長領域におけるスペクトル波形にみら
れる変極点が存在しないことから、ノイズ成分とDNA
を分離し、さらに正常DNAと異常DNAとを判別する
ことができる。電気泳動とDNAの水素結合を利用する
から十数分という短時間のうちにDNAを分離でき、且
つ所定の定電圧を印加するだけから分解能の高い最適電
圧にきわめて簡単に調整でき、正確にDNAの異常の有
無を検出することができ、小型、軽量、低ランニングコ
ストの安価な装置とすることができ、診断の自動化がき
わめて容易である。
【0064】また、DNAコンジュゲートが、DNAの
塩基配列の違いによる結合力の差によって正常DNAと
異常DNAの泳動速度に差を生じさせ、DNA試料を正
常DNAと異常DNAに分離するから、DNAコンジュ
ゲートとの水素結合の結合力の差を利用して正常DNA
と異常DNAの泳動速度をそれぞれ低下させ、その作用
を受けないノイズ成分はほぼそのままの速度で泳動させ
ることができる。DNAコンジュゲートは高分子化合物
と結合したものであるから、泳動速度はDNA試料と比
較すると数%にすぎず(但し、高分子化合物の種類と長
さに依存する)、相対的にみて擬似固定状態にすること
ができる。コンジュゲートの固定処理は難しく、通常流
路を使い捨てにしなければならないが、擬似固定のため
その必要はなく、各種コンジュゲートや試料の各濃度調
整および各種コンジュゲートや試料の混合比率の調整が
きわめて容易になる。
【0065】分離部によってスペクトル波形を得ること
ができ、このスペクトル波形から正常DNAと異常DN
Aを区別し、通過量をそれぞれ測定することができる。
【0066】分離部が200nm〜260nmの波長領
域で照射光を分解するから、DNAのスペクトル波形に
は、DNA吸収波長である260nmのピークと、変極
点として240nm付近の極小値が現われ、正常DNA
や異常DNAと異なってピークや変極点をもたないノイ
ズ成分の区別を正確に行うことができ、測定を簡単に且
つ容易に行うことができる。
【0067】そして、検出部で検出した260nmの波
長の吸光度が240nmの波長の吸光度より大きく、2
00nmの波長の吸光度が240nmの吸光度より大き
い場合に、ピークがDNAを示すピークと判断するか
ら、200nmの波長の吸光度と、240nmの波長の
吸光度と、260nmの波長の吸光度を検出するだけ
で、簡易に変極点情報を入手することができ、きわめて
簡単にDNAとノイズ成分とを判別することができる。
【0068】分離部が所定の波長領域のみを透過する透
過フィルターであるため、流路内から透過する光から目
的とする波長の範囲を1つの受光部で検出することがで
きる。さらに、流路内から透過する光から目的とする複
数の波長の吸光度を1つの受光部で検出することができ
る。
【0069】本発明の遺伝子診断方法によれば、DNA
試料とDNAコンジュゲートを電気泳動させ、DNA試
料中のDNAとDNAコンジュゲートとの塩基配列の違
いによる結合力の差によって泳動速度に差を生じさせ、
吸光度のフェログラムのピークから正常DNAと異常D
NAの存在比率を診断し、吸光度を測定するときにスペ
クトル波形を検出し、200nm〜260nmの波長の
範囲に変極点があった場合にDNAのピークと判断し、
残りの場合をノイズ成分のピークと判断するから、DN
A試料とDNAコンジュゲートを電気泳動させ、結合力
の差を利用して正常DNAと異常DNAの泳動速度をそ
れぞれ低下させ、その作用を受けないノイズ成分はほぼ
そのままの速度で泳動させることができる。正常DNA
及び異常DNAは移動しながらこのDNAコンジュゲー
トの結合力の作用を受け、この作用を受けないノイズ成
分は、電圧を印加したとき一番先に泳動されて検出部で
検出される。しかし、異常DNAには、DNAコンジュ
ゲートとの一塩基分弱い結合力が作用し、コンジュゲー
トの作用をなかなか振り切れず、ノイズ成分に遅れて次
に泳動を開始する。正常DNAには最大の結合力が作用
し、更に遅れて泳動開始され、最後に検出部で検出され
る。これにより3つのDNAの検出時間に差を生じさせ
ることができる。ノイズ成分の中には、正常DNAや異
常DNAと同じ吸収波長をするものも存在するが、その
ようなノイズ成分は、DNAとは異なるスペクトル吸収
波形を有し、DNAのスペクトル波形にみられる変極点
が存在しないことから、ノイズ成分とDNAを分離し、
さらに正常DNAと異常DNAとを判別することができ
る。
【0070】このように電気泳動とDNAの水素結合を
利用するから十数分という短時間のうちにDNAを分離
でき、且つ所定の定電圧を印加するだけから分解能の高
い最適電圧にきわめて簡単に調整でき、正確にDNAの
異常の有無を検出することができ、小型、軽量、低ラン
ニングコストの安価な装置とすることができ、診断の自
動化がきわめて容易である。
【0071】260nmの波長の吸光度が240nmの
波長の吸光度より大きく、200nmの波長の吸光度が
240nmの吸光度より大きい場合に、変極点が存在す
ると判断するから、200nmの波長の吸光度と、24
0nmの波長の吸光度と、260nmの波長の吸光度を
検出するだけで、簡易に変極点情報を入手することがで
き、きわめて簡単にDNAとノイズ成分とを判別するこ
とができる。
【0072】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. et al. <120> The apparatus and method for genetic testing <130> 2913040005 <140> <141> <160> 3 <170> PatentIn Ver. 2.1 <210> 1 <211> 12 <212> DNA <213> Homo sapiens <400> 1 atcgcgtcta gc 12 <210> 2 <211> 12 <212> DNA <213> Homo sapiens <400> 2 tagcgcagat cg 12 <210> 3 <211> 12 <212> DNA <213> Homo sapiens <400> 3 atcacgtcta gc 12
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における遺伝子診断装置の
外観図
【図2】本発明の実施の形態における遺伝子診断装置の
上蓋開放外観図
【図3】本発明の実施の形態における遺伝子診断装置の
装置構成図
【図4】本発明の実施の形態における遺伝子診断装置の
制御回路要部図
【図5】本発明の実施の形態における遺伝子診断装置の
流路内の分離用DNAコンジュゲートとDNA試料との
導入状態図
【図6】本発明の実施の形態における遺伝子診断装置の
検出部構成図
【図7】本発明の実施の形態における遺伝子診断装置の
流路内の分離用DNAコンジュゲートとDNA試料との
関係概念図
【図8】経過時間と吸光度の関係図
【図9】260nm吸光度ピーク発生時のスペクトル波
形図
【符号の説明】
1 電源スイッチ 2 表示部 3 表示パネル 4 上蓋 5 筐体 6 電気泳動部 7 支持台 8 制御演算部 9 電源ボックス 9a 電源部 10 分離部 13 温調器 14 予備検出部 15 検出部 15a D2ランプ 15b フォトダイオード 15c プリアンプ 15d A/Dコンバータ 16,17 電極 18 緩衝液 18c 添加緩衝液 18a,18b 容器 18d リニアポリマー 19 キャピラリー管 20 吸引ポンプ 21 分離用DNAコンジュゲート 23 DNA試料 24,24a,24b,24c 透過フィルター
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/53 G01N 37/00 103 33/566 C12N 15/00 ZNAA 37/00 103 G01N 27/26 315K 315F 325E 325A 331E (72)発明者 西田 毅 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 森 一芳 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 2G059 AA06 BB04 BB12 CC16 DD01 DD12 DD16 EE01 EE12 FF04 HH03 HH06 JJ02 JJ06 KK04 MM01 MM04 MM09 4B024 AA11 AA19 CA01 CA09 CA11 HA14 4B029 AA21 AA23 BB20 CC01 FA12 FA15 4B063 QA13 QA17 QA19 QQ42 QQ52 QR32 QR35 QR38 QR55 QS16 QS34 QS36 QS39 QX01

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】第1電極を収容し導電性を有する媒体で満
    たされた第1容器と、 第2電極を収容し導電性を有する媒体が満たされた第2
    容器と、 前記第1容器と前記第2容器の間を連絡するとともに導
    電性を有する媒体が満たされ、さらに該媒体中には、D
    NA試料と、該DNA試料の正常DNAと相補関係にあ
    るDNAを高分子化合物に結合させたDNAコンジュゲ
    ートが充填された流路と、 前記第2電極に正電位を印加するとともに前記第1電極
    に負電位を印加する電源部と、 前記電源部を制御して前記第2電極と前記第1電極間に
    所定の定電圧を印加する制御演算部と、 前記流路に設けられ、前記定電圧の印加により前記DN
    A試料と前記DNAコンジュゲートを電気泳動させたと
    き、照射した光の吸光度から前記流路内部を通過するD
    NA試料の通過量の時間変化を検出するための検出部を
    備えた遺伝子診断装置であって、 前記検出部がDNA試料を透過する光のスペクトル波形
    を検出し、前記制御演算部がDNA吸収波長を含む所定
    の波長領域における該スペクトル波形の変極点の存在に
    よって前記通過量の時間変化のピークがDNAとノイズ
    成分のいずれに対応するかを判断することを特徴とする
    遺伝子診断装置。
  2. 【請求項2】前記DNAコンジュゲートが、DNAの塩
    基配列の違いによる結合力の差によって正常DNAと異
    常DNAの泳動速度に差を生じさせ、前記DNA試料を
    正常DNAと異常DNAに分離することを特徴とする請
    求項1記載の遺伝子診断装置。
  3. 【請求項3】前記検出部には、発光部と、該発光部から
    照射され前記流路を透過した光を波長ごとに分解できる
    分離部と、該分離部を通過した光を検出する受光部が設
    けられたことを特徴とする請求項1または2記載の遺伝
    子診断装置。
  4. 【請求項4】前記分離部が200nm〜260nmの波
    長領域で照射光を分解することを特徴とする請求項3記
    載の遺伝子診断装置。
  5. 【請求項5】前記検出部で検出した260nmの波長の
    吸光度が240nmの波長の吸光度より大きく、200
    nmの波長の吸光度が240nmの吸光度より大きい場
    合に、前記ピークがDNAを示すピークと判断すること
    を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の遺伝子診
    断装置。
  6. 【請求項6】前記分離部が所定の波長領域のみを透過す
    る透過フィルターであることを特徴とする請求項3〜5
    のいずれかに記載の遺伝子診断装置。
  7. 【請求項7】前記透過フィルターが、所定の波長領域の
    中で複数の異なる波長を選択して透過させることを特徴
    とする請求項6記載の遺伝子診断装置。
  8. 【請求項8】第2電極と第1電極の間に所定の定電圧を
    印加してDNA試料とDNAコンジュゲートを電気泳動
    させ、前記DNA試料中のDNAと前記DNAコンジュ
    ゲートとの塩基配列の違いによる結合力の差によって泳
    動速度に差を生じさせ、正常DNAと異常DNAとノイ
    ズ成分に分離して吸光度を測定し、フェログラムのピー
    クから正常DNAと異常DNAの存在比率を診断する遺
    伝子診断方法であって、 前記吸光度を測定するときにスペクトル波形を検出し、
    200nm〜260nmの波長の範囲に変極点があった
    場合にDNAのピークと判断し、残りの場合をノイズ成
    分のピークと判断することを特徴とする遺伝子診断方
    法。
  9. 【請求項9】260nmの波長の吸光度が240nmの
    波長の吸光度より大きく、200nmの波長の吸光度が
    240nmの吸光度より大きい場合に、変極点が存在す
    ると判断することを特徴とする請求項8記載の遺伝子診
    断方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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JP2009517641A (ja) * 2005-11-29 2009-04-30 ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ 溶液中の物質の濃度の測定方法及び装置

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