JP2004157107A - Dna判定装置のためのdna判定カートリッジ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジは、ホルダ9に1個以上の貫通細孔8が形成されるとともに該貫通細孔8にはそれぞれコンジュゲート試薬7aが充填され、該コンジュゲート試薬7aがDNAコンジュゲートとリニアポリマー溶液の乾燥または半乾燥状態の混合物で構成され、DNA試料7bがDNA判定前にコンジュゲート試薬7aの一端側に配置され、且つDNA判定のためにホルダ9を挟んでDNA試料7bをコンジュゲート試薬側7aへ電気泳動させることのできる電界が加えられたとき、DNAコンジュゲートがDNA試料7b中の相補的関係にあるDNAを捕捉することを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、DNAコンジュゲートにより僅少塩基異なる遺伝子配列や突然変異のDNAを簡便に判定することが可能なDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、分子生物学の急速な進展によって、様々な疾患において遺伝子の関与がかなり正確に理解されるようになり、遺伝子をターゲットにした医療に注目が集まるようになってきている。現在、最も注目されているのはSNPs(スニップス)と呼ばれるものである。これは、single nucleotide polymorphismの略で「1塩基多型」と一般に訳されており、遺伝子における1暗号(1塩基)の違いの総称である。地球上の全ての生命体遺伝子(または遺伝子の全集合体を意味するゲノム)は、共通の4つの塩基から成り立っており、この塩基の配列によって様々なタンパク質が作られ、各生物特有の生命活動が行われる。この4つの塩基とは、アデニン(記号はA)、グアニン(同G)、チミン(同T)、シトシン(同C)である。例えば人の遺伝子は、約30〜32億塩基配列で構成されていると言われており、各個人で数百から1000塩基に1ヶ所程度の割合で他の人と1つの塩基が異なっている場所が存在する。従って、人の全遺伝子(ゲノム)中には、300万〜1000万のSNPsが存在していると予想され、世界中でSNPsの探索が続けられている。
【0003】
ところでSNPsが注目されているのは、SNPsの分類により多くの疾患に対する罹患率が推測できると考えられているからである。例えば、乳癌を例にとると、乳癌にかかった患者群と正常な群とのSNPsの比較により、乳癌に罹りやすい人に共通のSNPsを特定することができる。これにより遺伝子を調査して、現在は正常でも将来乳癌に罹りやすい体質の人を見つけることが可能になる。同様に糖尿病や高血圧などの生活習慣病でも発病の前から食事や生活指導を正確に行うことが可能になる。また、癌は遺伝子上の特定の部位に例えば紫外線や変異原性物質の作用によって突然変異によって引き起こされるが、特定の遺伝子上の変異を読み取ることで早い段階から癌の診断が可能になるからである。
【0004】
また、薬剤に関してもSNPsは重要な役割を期待されている。治療の際に用いられる薬剤は全ての人に均等に作用しない。薬剤の効果はその人がもつ体質に深く関与しており、SNPsの解析により薬剤に対する効果や感受性が予測でき、これにより適正な処方をすることが可能になる。
【0005】
さらに、個人の識別にもSNPsは有効である。両親からそれぞれの別々のSNPsを引き継ぐため、地球上に親子兄弟といえども全く同じSNPsをもつ人間は絶対に存在しない。これにより個人の完全な特定が可能になる。
【0006】
このように、特定の遺伝子中の1塩基に起きた変異を観察することは医療をはじめ多方面で多大な貢献が予想される。しかしながら現在、特定の遺伝子の変異を観察する方法は以下に述べるような非常に複雑な操作あるいは高価な装置を必要とし、ランニングコストも非常に大きなものになっており、広く利用することを妨げている。
【0007】
そこで、現在最も一般的に用いられているSNPsを調べる方法について説明する。これはシーケンシングとよばれるもので、DNAの塩基配列を端から直接読んでいく方法である。シーケンシング(塩基配列の決定)を行なう方法としてはいくつかの報告があるが、最も一般的に行なわれているのは以下に述べるジデオキシシーケンシング(Sanger法)である。この方法を含めいずれの方法も、分離能の高い変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動か、キャピラリー電気泳動によって1塩基長の長さの違いを分離・識別する技術が基になって成り立っている。
【0008】
このジデオキシシーケンシング(Sanger法)は、酵素的シーケンシングとも呼ばれ、一本鎖鋳型DNAの相補的鎖を合成するためにDNAポリメラーゼを用い、さらに人工的につくった特殊な4種類のジデオキシヌクレオチドを利用するものである。シーケンシング操作としては、塩基配列の決定を行ないたい一本鎖DNAの3’末端と相補する合成塩基配列をプライマーとして用い、そのプライマーからDNAポリメラーゼと均等に加えられたデオキシヌクレオチドを酵素反応によって伸長させて行く操作を行なう。このとき同時に4つの反応容器を準備しておき、それぞれにATGC4つの塩基の3’末端に水酸基をもたない、従ってこれ以上DNA伸長反応を続けることができない塩基アナログであるジデオキシヌクレオチドを別々に少量混入させておく。これにより、伸長中のDNAの末端にジデオキシヌクレオチドが付加された時点でDNA合成がストップし、それぞれの反応容器中に様々な長さをもった、しかし末端は必ず塩基アナログである二本鎖DNAが形成される。
【0009】
この反応容器にS1エンドヌクレアーゼを反応させ、一本鎖DNAを全て消化し二本鎖DNAのみとする。こうして得られた4つの反応容器のDNA鎖をゲル電気泳動またはキャピラリー電気泳動し、分離されたDNAを短い方(速く移動したもの)から順に読めば、鋳型鎖と相補的なDNAの塩基配列がわかる。この際、泳動結果の識別は、例えば加えるジデオキシヌクレオチドのリンまたはイオウを放射性標識したり蛍光を発する化学物質を結合させたりして行なう。放射性標識の場合はフィルムへの露光での検出、蛍光化学物質の場合はレーザービームを照射し蛍光を検出する。最近では、A,T,G,Cの4種類の塩基アナログを、それぞれ4種類の蛍光波長の異なる試薬によって標識し、その4色の蛍光を同時に検出する方法も開発されている。
【0010】
被験者から分離・精製した遺伝子の正確な塩基配列をこのジデオキシシーケンシング(Sanger法)あるいはその他の塩基配列決定法により決定し、正常あるいは標準的な塩基配列と比較することによってSNPsの有無や突然変異の有無の確認、個人の識別等に利用が可能になる。
【0011】
このように、従来からの遺伝子配列決定法を利用した、遺伝子診断や遺伝子による個人の識別は、ターゲットとする遺伝子を単離したのち、増幅・精製し遺伝子の塩基配列決定法(装置)を用いて、目的遺伝子の塩基配列を読むことによって行なっていたため、実験に膨大な作業量と時間、さらには多大のランニングコストを要していた。また塩基配列決定のための自動化装置は、非常に高価で、大きなスペースを占有し、高価な試薬を大量に必要とするものであった。
【0012】
こうした問題点は、アフィニティキャピラリー電気泳動によってDNAを分離する方法では比較的小さい。これは、分子間親和力、とくに生態系における特異的親和力(酵素と基質、抗原と抗体の親和力等)を利用して分離に特異性を持たせるためである(例えば、特許文献1参照)。すなわち、キャピラリー管の中の泳動溶液に相互作用する二成分のうちの一方を添加しておき、他方の成分を電気泳動させると、試料混合物中で相互作用する分子種だけが移動速度に変化を生じるので、これに着目して分析を行うものである。
【0013】
【特許文献1】
特開平7−311198号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のアフィニティキャピラリー電気泳動では、塩基配列を特異的に認識するアフィニティリガンドとして被検体DNAの塩基配列と相補的関係の1本鎖を使うが、ポリヌクレオチドを成分とするアフィニティリガンドは負電荷を有しているため電圧を印加するとキャピラリー外に流出してしまう。これを防ぐため1本鎖をキャピラリー内に固定化する必要があった。この固定化の方法として、ビニル化DNAをポリアクリルアミドと共重合し、キャピラリー内壁に共有結合的に固定化する方法が提案された。被検体DNAは固定的オリゴヌクレオチドと強く相互作用し、キャピラリー内に吸着され、ノイズ分は吸着されずに検出されることになる。しかし、この方法はアフィニティリガンドがキャピラリー内壁にしかコーティングできないので、リガンドと試料の相互作用が壁面近傍に限られるという問題があった。測定が難しく、精度が悪くなる。
【0015】
そこで、本出願人は、相互作用が壁面近傍に限られないようにリガンドを擬似的に固定する方法を開発し、それぞれに電極を配置した第1容器と第2容器間をリニアポリマーとDNA結合制御剤を含む緩衝液を充たしてキャピラリー管で連絡し、次いで、このキャピラリー管の緩衝液の中に分離用DNAコンジュゲートを充填し、続いてDNA試料を充填し、その後、両電極間の電圧を掃引して、キャピラリー管内の試料DNAを電気泳動させ、正常DNAと異常DNAとノイズDNAを分離する遺伝子診断装置と遺伝子診断方法を提案している(特願2002−42943号)。
【0016】
これは、負に帯電した分離用DNAコンジュゲートとDNA試料を電気泳動で第2容器から第1容器側へ移動させ、移動速度差から正常DNAと異常DNAとノイズDNAを分離するものである。この遺伝子診断装置と診断方法によって、SNPsの遺伝子異常を短時間、且つ簡単、正確に判定することが可能になる。
【0017】
しかし、この遺伝子診断装置と診断方法は、リニアポリマーとDNA結合制御剤を含む緩衝液を充たしたキャピラリー管に、分離用DNAコンジュゲートとDNA試料を充填する必要があった。キャピラリー管に1本1本これらを充填するのは面倒な作業であり、キャピラリー管間で作成誤差が生じ、測定結果にも影響を及ぼす場合があった。
【0018】
そこで本発明は、判定時に煩雑な準備作業が不要で、正確且つ短時間に判別でき、小型で軽量、安価なDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジを提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明のDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジは、ホルダに1個以上の貫通細孔が形成されるとともに該貫通細孔にはそれぞれコンジュゲート試薬が充填され、該コンジュゲート試薬がDNAコンジュゲートとリニアポリマー溶液の乾燥または半乾燥状態の混合物で構成され、DNA試料がDNA判定前にコンジュゲート試薬の一端側に配置され、且つDNA判定のためにホルダを挟んでDNA試料をコンジュゲート試薬側へ電気泳動させることのできる電界が加えられたとき、DNAコンジュゲートがDNA試料中の相補的関係にあるDNAを捕捉することを特徴とする。
【0020】
これにより、判定時に煩雑な準備作業が不要で、正確且つ短時間に判別でき、小型で軽量、安価なDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジを提供できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載された発明は、ホルダに1個以上の貫通細孔が形成されるとともに該貫通細孔にはそれぞれコンジュゲート試薬が充填され、該コンジュゲート試薬がDNAコンジュゲートとリニアポリマー溶液の乾燥または半乾燥状態の混合物で構成されたDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジであって、DNA試料がDNA判定前にコンジュゲート試薬の一端側に配置され、且つDNA判定のためにホルダを挟んでDNA試料をコンジュゲート試薬側へ電気泳動させることのできる電界が加えられたとき、DNAコンジュゲートがDNA試料中の相補的関係にあるDNAを捕捉することを特徴とするDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジであるから、DNA判定時に煩雑な準備作業が不要で、DNA判定装置は相補関係にあるDNAを正確且つ短時間に捕捉でき、操作も簡単で、従来のキャピラリー管より小型、軽量、安価になり、DNA判定装置を自動化することが可能となる。
【0022】
請求項2に記載された発明は、ホルダに1個以上の貫通細孔が形成されるとともに該貫通細孔にはそれぞれコンジュゲート試薬が充填され、且つ該貫通細孔の両端には該コンジュゲート試薬の流出を防止する封止シートが貼着され、コンジュゲート試薬がDNAコンジュゲートとリニアポリマー溶液の液状の混合物からなるDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジであって、DNA試料がDNA判定前に封止シートを剥いで露出したコンジュゲート試薬の一端側に配置され、且つDNA判定のためにホルダを挟んでDNA試料をコンジュゲート試薬側へ電気泳動させることのできる電界が加えられたとき、DNAコンジュゲートがDNA試料中の相補的関係にあるDNAを捕捉することを特徴とするDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジであるから、液状のコンジュゲート試薬であっても使用することが可能で、DNA判定装置によって相補関係にあるDNAを正確且つ短時間に捕捉でき、操作も簡単で、従来のキャピラリー管より小型、軽量、安価になる。
【0023】
請求項3に記載された発明は、コンジュゲート試薬が、緩衝液,DNA結合制御剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジであるから、電気泳動時に緩衝液,DNA結合制御剤がコンジュゲート試薬に浸透するための時間が不要で、DNA判定装置が相補関係にあるDNAをさらに短時間に捕捉できる。
【0024】
請求項4に記載された発明は、貫通細孔が直径200μm以下に形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジであるから、DNAの捕捉の精度が高くなる。
【0025】
請求項5に記載された発明は、貫通細孔が放射状に配列され、その中央には駆動用穴が設けられた請求項1〜4のいずれかに記載のDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジであるから、捕捉したDNAを判定するときDNA判定カートリッジを回転することができ、またDNA判定装置の判定部をシークさせることができ、これにより高速判定が可能となる。
【0026】
請求項6に記載された発明は、貫通細孔のそれぞれが同心円上に配置されたことを特徴とする請求項5記載のDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジであるから、捕捉したDNAを判定するとき、同心円状のデータはDNA判定装置の判定部を半径方向に移動せずに測定できるため高速判定が可能となる。
【0027】
請求項7に記載された発明は、貫通細孔の少なくとも一方の端部に貫通細孔の2倍以上の面積の拡大孔を形成したことを特徴とする請求項1〜6に記載のDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジであるから、DNAサンプルを貫通孔に容易に注入でき、更に電気泳動させるための電界を加えたときに必要となる緩衝液を貯めておくため、電極からの熱の伝達が少なくできる。
【0028】
請求項8に記載された発明は、ホルダに1個以上の貫通細孔が形成され、貫通細孔に、少なくとも、特定のDNAと相補的関係をもつDNA配列と高分子化合物とが結合したDNAコンジュゲートが保持されたことを特徴とするDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジであるから、このDNA判定カートリッジを用いることにより、DNA判定時に煩雑な準備作業が不要となり、DNA判定装置は相補関係にあるDNAを正確且つ短時間に捕捉でき、操作も簡単で、小型、軽量、安価になり、DNA判定装置を自動化することが可能となる。更に、DNA判定カートリッジ単体で保管することができ、目的別に複数種類のDNA判定カートリッジを予め準備する、或いは、貫通細孔を複数設けた場合、そこに複数種類のDNAコンジュゲートを保持しておくことで、多種のDNA判定を容易に行うことが可能となる。
【0029】
請求項9に記載された発明は、貫通細孔の両端であって、前記貫通細孔と隣り合う貫通細孔との間に溝を形成し、ホルダの辺と面する貫通細孔は、ホルダの辺との間に溝を形成することを特徴とする請求項1〜8に記載のDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジであるから、DNA判定カートリッジを緩衝液に浸漬させたとき、気泡を噛むことなく速やかに緩衝液が全ての貫通細孔に染み込むことが可能となる。
【0030】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるDNA判定カートリッジを用いて判定を行うDNA判定装置の構成概念図、図2(a)は本発明の実施の形態1におけるDNA判定カートリッジの正面図、図2(b)は(a)のDNA判定カートリッジのA−A断面図、図2(c)は(b)のDNA判定カートリッジのA−A断面のコンジュゲート試薬充填前の断面図、図2(d)は(b)のDNA判定カートリッジにおいて液体状コンジュゲート試薬を充填する前の断面図、図3は本発明の実施の形態1におけるDNA判定カートリッジの貫通細孔両端に電圧を印加するための電気泳動ボックス構成図である。
【0031】
まず、本実施の形態1のDNA判定カートリッジの前提となるDNA判定装置の全体構成について説明する。図1において、1はDNA判定カートリッジ、2は電気泳動ボックス、3は電気泳動後の状態を判定する判定器、4は表示部、5は電源部、6は電気泳動ボックス2内の電極への電圧印加と判定器3や表示部4を制御する制御部である。本実施の形態1のDNA判定装置においては、DNA判定カートリッジ1を電気泳動ボックス2内へ挿入して電気泳動させるための電界を加え、DNA判定カートリッジ1の表面に配置したDNA試料のDNAを内部へ電気泳動し、DNAコンジュゲートが相補的関係にあるDNAを捕捉し、判定器3で捕捉したDNAを検出するものである。
【0032】
次に図2(a)(b)(c)(d)に基づいて、DNA判定装置で判定を行うDNA判定カートリッジ1の具体的構造について説明する。図2(a)(b)(c)(d)において、7aはDNA試料を捕捉するために必要なコンジュゲート試薬、7bはDNA判定のためにコンジュゲート試薬7aの一方側に配置されるDNA試料、8はコンジュゲート試薬7aを充填するための貫通細孔、8a,8bはコンジュゲート試薬7aが液状の場合に流出防止のため貫通細孔8の表面に貼られる封止シート、9は貫通細孔8を設けたホルダである。DNA試料は紫外線の吸光度もしくは蛍光で測定するのがよいが、蛍光で測定する場合には、DNA試料7bは蛍光色素等で標識する必要がある。
【0033】
なお、DNA判定カートリッジ1は、ホルダ9の貫通細孔8にDNAコンジュゲートとアクリルアミドと緩衝液からなるコンジュゲート試薬7aを充填して乾燥または半乾燥状態(例えば、ゲル状態)とし、あるいは液状のまま封止シート8a,8bで封じて、これを保管しておくものであり、DNA判定を行うときDNA試料7bを注いで使用するものである。液状の場合は封止シート8a,8bを剥がして露出したコンジュゲート試薬7a上にDNA試料7bを注いで使用する。このDNA判定カートリッジ1の作成方法と、判定時に行う処理の詳細については後述する。図2(c)に示すようにDNA判定カートリッジ1は、コンジュゲート試薬7aを充填する前には貫通細孔8がホルダ9に形成されているだけである。
【0034】
このDNA判定カートリッジ1を使ってDNAを電気泳動する電気泳動ボックス2の構成について補足する。図3において、10は電気泳動ボックス2の中に設けられ、挿入されたDNA判定カートリッジ1のDNA試料7b側に配設された電極で負電位に印加される陰極、11は陰極10と反対側に配設された電極で正電位に印加される陽極、12はDNA結合制御剤を含有した緩衝液である。
【0035】
この電気泳動ボックス2でDNA判定カートリッジ1を使ってDNAを判定するときには、多数の貫通細孔8にDNA試料7bを注入したDNA判定カートリッジ1を挿入するため、電気泳動ボックス2にはDNA判定カートリッジ1が十分に浸るように、コンジュゲート試薬7aの緩衝液と同じDNA結合制御剤を含有した緩衝液12を十分満たしておく必要がある。DNA試料7bを付着した側を陰極5とし、反対側を陽極6となるようにDNA判定カートリッジ1をセットし、電極間に所定の電圧を印加してDNA試料7bを電気泳動する。このときDNAはマイナスに帯電しているため、陽極6側に泳動される。この電気泳動によって、DNA試料7bのうち相補的配列をもつDNAは、DNAコンジュゲートに捕捉され、その他のDNAは、DNAコンジュゲートに捕捉されず、そのままコンジュゲート試薬7aが充填されている貫通細孔8を通過し、電気泳動ボックス2に貯められた緩衝液12中に流れ込む。
【0036】
ここで、実施の形態1のDNAコンジュゲートの作用について説明する。DNAは二重鎖を形成するものと一重鎖を形成するものと存在するが、DNAのもつA,T,C,G4つの塩基は互いにAとT、GとCが結合し易くなっており、DNAの二重鎖においてもAT,GCで対をなしている。従って、一方のDNAがATCGCGT(配列番号1に記載)と配列されている場合、他方のDNAはTAGCGCA(配列番号2に記載)という塩基配列をもっている。本発明のDNAコンジュゲートにおいてはこの相補的関係を利用するために、DNA部分に対してDNA試料7bの異常DNAと相補的関係をもつDNA配列を与えている。例えば、DNA試料7bの異常DNAのDNA配列がATCGCGT(配列番号1に記載)を含み、正常DNAがATCACGT(配列番号3に記載)を含む場合、下線で示した部分で異常DNAと正常DNAの塩基が異なっている。このときDNAコンジュゲートのDNA部分の配列をTAGCGCA(配列番号2に記載)とすると、正常DNAは下線部においてDNAコンジュゲートと相補的ではなくなる。従って、全体の結合力は異常DNAの方が正常DNAより1塩基分大きくなり、DNAコンジュゲートは異常DNAを捕捉可能になる。
【0037】
図4は電気泳動時のDNAコンジュゲートと試料DNAの関係説明図である。電気泳動時にDNAコンジュゲートに一旦結合した試料DNA7bは電気的な引力の作用で解離するが、このとき結合部分以外で起こる3次元的な運動、即ち、ばたつきの違いによって、正常DNAと異常DNAとではDNAコンジュゲートからの解離時間が異なる。その結果、結合力が相対的により強い異常DNAの方が正常DNAより長くDNAコンジュゲートと結合している状態が出現する。この状態で電気泳動条件を制御することにより異常DNAのみをDNAコンジュゲートに捕捉することが可能になる。これがDNAコンジュゲートによる1塩基異なるDNAを分離できる理由である。
【0038】
その後判定を行うため、DNAを捕捉したDNA判定カートリッジ1を取り出して、DNA判定装置の判定器3に挿入する。判定器3ではDNA判定カートリッジ1の貫通細孔8毎にDNA試料7bが捕捉されているかどうかの判定をする。判定方法としては、D2ランプより取り出した波長260nmの紫外線を照射したときに得られる紫外線照射光の吸光度をフォトダイオードなどで検出して、吸光度がコンジュゲート試薬7aのみで検出したときより大きい場合には、DNA試料7b中に異常DNAが含まれており、吸光度がコンジュゲート試薬7aのみで検出した場合と同じ場合、DNA試料7b中に異常DNAが無いと判定する。この判定結果を制御部6で演算して結果を表示部4に表示する。蛍光で検出する場合は、DNA試料7bを蛍光色素で標識する必要がある。
【0039】
続いて、本発明のDNA判定カートリッジ1がどのようにして作成されるのか、まず組成面からその方法と装置について説明する。DNA試料7bは、人の細胞や血液等から入手した試料DNAである。ヒトゲノムDNAからよく知られたPCR等の方法を利用して目的の部分を目的の長さに切り出して増加させる必要がある。上述のDNA判定装置を使って正常DNAと僅少塩基、通常1塩基違いの異常DNAを分離する場合、その塩基の個数としては6個〜60個が効果的に分離できる。従って、前処理で少なくとも6個程度〜1000個程度の塩基配列をもつDNA試料7bを作成する必要がある。
【0040】
DNA判定カートリッジ1を作成するには、図2(a)(b)(c)に示す貫通細孔8を複数開口したホルダ9を用意し、各貫通細孔8に、Tris−Borate(pH7.2〜pH8程度)緩衝液にDNA結合制御剤として塩化マグネシウムを添加した溶液と、リニアポリマーであるポリアクリルアミドゲルを含んだ溶液とDNAを捕捉するためのDNAコンジュゲート(以下、詳述する)とを混合して、充填する。貫通細孔8に充填したコンジュゲート試薬7aが貫通細孔8からこぼれ落ちないように、ポリアクリルアミドゲルの重合度を調整して適正な粘度にする。ポリアクリルアミドの重量%としては15%〜30%がよい。なお、DNA結合制御剤はDNAを安定させるものであるが、条件によってはDNA脱離剤として作用する尿素等でもよい。すなわち、DNAの結合を制御する物質であれば他の物質でもよい。
【0041】
ところで、本発明のDNAコンジュゲートは、1本鎖DNAの5’末端にビニル基を導入したビニル化DNAを合成し、これとリニアポリマー溶液とのラジカル共重合によって作成したものである。従って、DNAコンジュゲートとリニアポリマー溶液の混合した溶液がDNA結合制御剤を添加した緩衝液に混合されることになる。一例を挙げてDNAコンジュゲートの作成方法を具体的に説明すると、実施の形態1の場合、DNAコンジュゲートの濃度を一定にするため、合成されたアミノ化DNAの吸光度を測定し、2.6mMになるように希釈する。次にこの濃度でアミノ化DNAの量を例えば400nモル(2.6mMの溶液で153.8μL)と決定し、まずメタクリロイルオキシスクシンイミド(MOSU)0.0153gをジメチルスルホキシド(DMSO)溶液1170μLに溶解し、71.388mMの溶液として、この内20μモルに相当する280μLを、アミノ化DNA153.8μLとアミノ化DNAと同量の炭酸水素ナトリウムと水酸化ナトリウムからなるpH調整液(pH9)153.8μLとに混合する。
【0042】
その後一晩振とうし、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)で未反応のDNAを分離し、減圧遠心分離器でHPLCの溶離液を減圧乾燥し、濃度が0.5mMになるように純水で希釈して溶液とする。生成されたビニル化DNA溶液25.8μL(アクリルアミドとのモル比0.025モル%)を超純水30.2μLで希釈して(ポリ)アクリルアミド10%溶液34μLを加え、重合開始剤1.34%N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMD)5μLと1.34%アンモニウムパーサルファイト(APS)5μLを添加して目的のDNAコンジュゲートとポリアクリルアミドの混合溶液が得られる。これをTris−Borate緩衝液にDNA結合制御剤を添加した溶液に混合してコンジュゲート試薬7aとする。
【0043】
ここで説明したコンジュゲート試薬7aは、DNAコンジュゲートが全体的に均一に分散、電気的に固定された状態となり、従来のアフィニティキャピラリー電気泳動のようなDNAコンジュゲートを貫通細孔8の内壁近傍にしか固定できないといった問題を解決できる。これにより、DNAコンジュゲートとDNAの相互作用は貫通細孔8の断面全体で起こり、被検体DNAだけを捕捉し、他のDNAは貫通細孔8内から外部に泳動される。
【0044】
また、DNAコンジュゲートは、被検体DNAと相補的関係をもつDNA配列と、高分子化合物とが結合したものであるから、その泳動速度はDNA試料と比較すると数%にすぎない(但し、高分子化合物の種類と長さに依存する)。よって、DNAコンジュゲートはDNA試料に対して相対的に擬似固定状態であり、本発明のDNA判定の電気泳動においては実質的に固定状態として取り扱うことができる。
【0045】
ところでDNA判定を行うときには、上述したように電気泳動ボックス2の緩衝液12中にDNA判定カートリッジ1を浸漬するため、貫通細孔8中に緩衝液12が浸透する。そこで、DNA判定カートリッジ1の貫通細孔8に充填したコンジュゲート試薬7aを予め乾燥または半乾燥させた状態にしておけば、使用時には緩衝液12が浸透して電気泳動が可能になる。そして乾燥したコンジュゲート試薬7aであれば長期の保管が可能になる。密封して保管すればさらに長期保存ができる。しかし、電気泳動を行うときに緩衝液12が十分に貫通細孔8の中に浸透するための時間と、浸透し易い温度等の条件を調整する必要がある。そしてさらにこの特徴を徹底させ、コンジュゲート試薬7aとして、乾燥または半乾燥した状態のポリアクリルアミドゲルとDNAコンジュゲートだけをDNA判定カートリッジ1の貫通細孔8に充填しておき、判定を行うときに試料DNAを緩衝液で所定の濃度に希釈して貫通細孔8に浸透させることができる。この場合、DNA判定カートリッジ1の作成が容易で保存に適すが、浸透させるための時間と温度等の条件の調整がさらに必要となる。
【0046】
これに対し、液状のコンジュゲート試薬7aは保管の点で扱い辛いが、封止シート8a,8bでホルダ9の両側面を封じることで長期保管が可能となる。そして液状のコンジュゲート試薬7aの場合、電気泳動を行うときに緩衝液12が十分に貫通細孔8の中に浸透するための時間等が不要であり、乾燥した場合より判定を迅速に行えるし、浸透し易い温度等の条件を調整する必要もない。
【0047】
このようにDNA試料7bと緩衝液が浸透した状態のDNA判定カートリッジ1が準備できたら、緩衝液が浸透した状態のDNA判定カートリッジ1に判定を行うDNA試料7bの注入(配置)を行う。このDNA試料7bの注入は、DNA判定カートリッジ1の貫通細孔8の上に試料DNAを滴下し、図5(a)のように真空ポンプで滴下した貫通細孔1の反対側から吸引するか、図5(b)のように滴下した貫通細孔1側から窒素などの還元ガスで圧力をかけることにより、コンジュゲート試薬7aの一端側にDNA試料7bが付着したものとなり、図1(b)に示す状態の判定に使用するDNA判定カートリッジ1となる。図5(a)は真空ポンプで吸引してDNA判定カートリッジを作成する概念図、図5(b)はポンプで圧力を加えてDNA判定カートリッジを作成する概念図である。
【0048】
続いて、工業的に多数のDNA判定カートリッジを作成する製造方法について説明する。図6(a)は本実施の形態1におけるDNA判定カートリッジにコンジュゲート試薬を充填する工程説明図、図6(b)は本実施の形態1におけるDNA判定カートリッジを分割する工程説明図である。図6(a)(b)において、13は複数のDNA判定カートリッジ1を同時に作って分割するカートリッジブロック、14はカートリッジブロック13から突出細管部である。DNA判定カートリッジ1の貫通細孔8はカートリッジブロック13に貫通孔を開けて形成したものでもよいし、細管をこの貫通孔に挿通させて形成するのでもよい。ただ、突出細管部14を設ける必要があり、細管を挿通させる方がこれらを一度に形成できるため、本実施の形態1においては細管を挿通させている。なお、カートリッジブロック13に貫通孔を開けただけの貫通細孔8の場合には、DNA判定カートリッジ1を作成するために、突出細管部14をアダプターとしてカートリッジブロック13の貫通孔に装着する必要がある。また、貫通細孔8の少なくとも一方の端部に、貫通細孔の断面積の2倍以上の面積の拡大孔の部分を設けるのもよい。DNAサンプルを貫通細孔の端部に注入する際に、この拡大孔があれば容易にDNAサンプルを貯めておくことができるので、後工程の吸引や圧入によるDNAサンプルの注入が容易に行えるようになる。また、この拡大孔の部分に緩衝液を貯めることができるため、電極からの熱の伝達を少なくすることができる。
【0049】
図9(a)は貫通細孔間に溝または貫通細孔とホルダの辺との間に溝を設けたDNA判定カートリッジの正面図である。図9(b)は(a)のDNA判定カートリッジの断面図である。
図9(a)〜(b)に示した構造により、DNA判定カートリッジを緩衝液に浸漬した際に、毛細管現象により緩衝液が速やかに浸透していくので、気泡などを挟むことなく、DNA判定カートリッジを緩衝液に浸すことができるので、貫通孔の両端に均一に電圧を印加することができる。
【0050】
15は突出細管部14を通して貫通細孔8に注入するコンジュゲート試薬7aを収容する容器、16aは真空ポンプ、16b窒素ボンベ等のガス圧力源、17aはカートリッジブロック13の各貫通細孔8の中を真空ポンプ16aで負圧にするための吸引用アダプター、17bはガス圧力源16の圧力を容器15に加えるためのアダプターである。
【0051】
コンジュゲート試薬7aを複数の容器15に収容し、各突出細管部14のそれぞれに各容器15をそれぞれセットする。カートリッジブロック13に吸引用アダプター17aを装着して真空ポンプ16aで吸引すると、各貫通細孔8に容器15に収容したコンジュゲート試薬7aが注入される。このほか、各容器15にアダプター17bを装着してガス圧力源16bから還元ガスで圧力を加えるのでもよい。図5(a)に示すように吸引と加圧を同時に行うのもよい。
【0052】
コンジュゲート試薬7aが吸引や加圧によって注入されると、図5(b)に示すようにカートリッジブロック13は所定厚さでスライスされて分割される。このスライスされた各板が実施の形態1のDNA判定カートリッジ1となる。従って、スライスされた各板の厚さが電気泳動でDNA試料7bが泳動可能な距離になる。
【0053】
なお、コンジュゲート試薬7aを貫通細孔8に注入する別の注入方法として、インクジェットのヘッドの精密な噴射技術を利用して、図1(c)に示すホルダ9の貫通細孔8に直接コンジュゲート試薬7aを注入するのでもよい。
【0054】
ところで本実施の形態1に示したDNA判定カートリッジ1の使用方法であるが、貫通細孔8が複数形成されているため、貫通細孔8に充填するDNAコンジュゲートの塩基配列を各貫通細孔8毎に変えることが可能であり、1人の人間のDNAをそれぞれ対応させて貫通細孔8に注入すれば、一度に同時に複数の遺伝子診断が可能になる。例えばアトピーが分かる数種類のSNPs、癌の部位ごとのSNPs、アルツハイマーが分かるSNPs等の別々のDNAコンジュゲートをそれぞれ貫通細孔8に充填し、一人の人間のDNAを取り出してDNA試料として注入すれば、1人の多くのSNPs情報を一度に入手することが可能になる。
【0055】
また、以上説明したように同一の人間のSNPsでなく、多数の人間のSNPsに対して複数の貫通細孔8を利用することができる。例えば、すべての貫通細孔8に同一のDNAコンジュゲートを充填しておいて、この数の人間の試料DNAを取り出して各貫通細孔8に注入すれば、同一のSNPsの判定が多人数に対して可能となり、SNPs毎の分布状況に関する情報を一度に入手できる。
【0056】
以上説明したように実施の形態1のDNA判定カートリッジは、扱いづらいキャピラリー管を使うことなく、細胞や血液等のDNA試料から特定のDNAを取り出したDNA試料7b中に含まれる異常DNAの存在を判定できるため、種々の病気の判定やDNA異常の研究が正確且つ迅速に行える。
【0057】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2のDNA判定カートリッジについて説明する。実施の形態2のDNA判定カートリッジは形状が円形である。図7(a)は本発明の実施の形態2におけるDNA判定カートリッジの正面図、図7(b)は(a)のDNA判定カートリッジのB−B断面のコンジュゲート試薬充填前の断面図、図8は本発明の実施の形態2におけるDNA判定カートリッジのデータをDNA判定装置で読み取る説明図である。DNA判定カートリッジの形状が円形で、貫通細孔8が放射方向に配列され、各貫通細孔8が同心円上に置かれている点、図10(a)のDNA判定カートリッジに示したような貫通細孔間に溝または貫通細孔とホルダの外周との間に溝を設けた点、図10(b)に(a)のDNA判定カートリッジのB−B断面図で示している点を除き、基本的に実施の形態1と同一である。従って詳細な説明は省略する。
【0058】
図7(a)(b)において、18はDNA判定カートリッジ1の中心に形成された駆動穴である。図8において、19は駆動穴18に挿入して円形のDNA判定カートリッジ1を回転させるシャフト、20は実施の形態2のDNA判定カートリッジ1に形成された放射状の貫通細孔8に沿って直線的にシークできる判定部である。判定部20の先端には捕捉したDNAの吸光度を見るために、DNA判定カートリッジ1を挟んで読み取りヘッドが設けられており、DNA判定カートリッジ1の中心に向ってスライド自在になっている。
【0059】
図8に示すとおり、目標DNAを貫通細孔8の中に捕捉したDNA判定カートリッジ1に対して、その駆動穴18にシャフト19を挿入し、図示しないモータで回転させる。これとともに判定部20を中心に向かって直線的にシークし、貫通細孔1のDNA捕捉状態を高速で判定することができるものである。
【0060】
このように実施の形態2のDNA判定カートリッジ1は、形状を円形として貫通細孔8を放射方向に配置することができ、DNA判定装置で自動読み取りが容易にできる。
【0061】
【発明の効果】
以上のように、本発明のDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジによれば、DNA判定時に煩雑な準備作業が不要で、DNA判定装置は相補関係にあるDNAを正確且つ短時間に捕捉でき、操作も簡単で、従来のキャピラリー管より小型、軽量、安価になり、DNA判定装置を自動化することが可能となる。液状のコンジュゲート試薬であっても使用することが可能になる。
【0062】
電気泳動時に緩衝液,DNA結合制御剤がコンジュゲート試薬に浸透するための時間が不要で、DNA判定装置が相補関係にあるDNAをさらに短時間に捕捉できる。貫通細孔が直径200μm以下に形成されたから、DNAの捕捉の精度が高くなる。
【0063】
貫通細孔が放射状に配列されたから、捕捉したDNAを判定するときDNA判定カートリッジを回転することができ、またDNA判定装置の判定部をシークさせることができ、これにより高速判定が可能となる。捕捉したDNAを判定するとき、同心円状のデータはDNA判定装置の判定部を半径方向に移動せずに測定できるため高速判定が可能となる。貫通細孔の少なくとも一方の端部が貫通細孔の面積の2倍以上あるから、DNAサンプルを貫通孔に容易に注入でき、更に電気泳動させるための電界を加えたときに必要となる緩衝液を貯めておくため、電極からの熱の伝達が少なくできる。貫通細孔の両端であって、前記貫通細孔と隣り合う貫通細孔との間に溝を形成し、ホルダの辺と面する貫通細孔は、ホルダの辺との間に溝を形成してあるから、DNA判定カートリッジを緩衝液に浸漬させたとき、気泡を噛むことなく速やかに緩衝液が全ての貫通細孔に染み込むことが可能となる。
【0064】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1におけるDNA判定カートリッジを用いて判定を行うDNA判定装置の構成概念図
【図2】(a)本発明の実施の形態1におけるDNA判定カートリッジの正面図
(b)(a)のDNA判定カートリッジのA−A断面図
(c)(b)のDNA判定カートリッジのA−A断面のコンジュゲート試薬充填前の断面図
(d)(b)のDNA判定カートリッジにおいて液体状コンジュゲート試薬を充填する前の断面図
【図3】本発明の実施の形態1におけるDNA判定カートリッジの貫通細孔両端に電圧を印加するための電気泳動ボックス構成図
【図4】電気泳動時のDNAコンジュゲートと試料DNAの関係説明図
【図5】(a)真空ポンプで吸引してDNA判定カートリッジを作成する概念図
(b)ポンプで圧力を加えてDNA判定カートリッジを作成する概念図
【図6】(a)本実施の形態1におけるDNA判定カートリッジにコンジュゲート試薬を充填する工程説明図
(b)本実施の形態1におけるDNA判定カートリッジを分割する工程説明図
【図7】(a)本発明の実施の形態2におけるDNA判定カートリッジの正面図
(b)(a)のDNA判定カートリッジのB−B断面のコンジュゲート試薬充填前の断面図
【図8】本発明の実施の形態2におけるDNA判定カートリッジのデータをDNA判定装置で読み取る説明図
【図9】(a)本発明の実施の形態1におけるDNA判定カートリッジの正面図
(b)(a)のDNA判定カートリッジのA−A断面図
【図10】(a)本発明の実施の形態2におけるDNA判定カートリッジの正面図
(b)(a)のDNA判定カートリッジのA−A断面図
【符号の説明】
1 DNA判定カートリッジ
2 電気泳動ボックス
3 判定器
4 表示部
5 電源部
6 制御部
7a コンジュゲート試薬
7b DNA試料
8 貫通細孔
9 ホルダ
10 陰極
11 陽極
12 緩衝液
13 カートリッジブロック
14 突出細管部
15 容器
16a 真空ポンプ
16b ガス圧力源
17a 吸引用アダプター
17b アダプター
18 駆動穴
19 シャフト
20 判定部
21 溝
Claims (9)
- ホルダに1個以上の貫通細孔が形成されるとともに該貫通細孔にはそれぞれコンジュゲート試薬が充填され、該コンジュゲート試薬がDNAコンジュゲートとリニアポリマー溶液の乾燥または半乾燥状態の混合物で構成されたDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジであって、
DNA試料がDNA判定前に前記コンジュゲート試薬の一端側に配置され、且つDNA判定のために前記ホルダを挟んで前記DNA試料を前記コンジュゲート試薬側へ電気泳動させることのできる電界が加えられたとき、前記DNAコンジュゲートが前記DNA試料中の相補的関係にあるDNAを捕捉することを特徴とするDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジ。 - ホルダに1個以上の貫通細孔が形成されるとともに該貫通細孔にはそれぞれコンジュゲート試薬が充填され、且つ該貫通細孔の両端には該コンジュゲート試薬の流出を防止する封止シートが貼着され、前記コンジュゲート試薬がDNAコンジュゲートとリニアポリマー溶液の液状の混合物からなるDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジであって、
DNA試料がDNA判定前に前記封止シートを剥いで露出したコンジュゲート試薬の一端側に配置され、且つDNA判定のために前記ホルダを挟んで前記DNA試料を前記コンジュゲート試薬側へ電気泳動させることのできる電界が加えられたとき、前記DNAコンジュゲートが前記DNA試料中の相補的関係にあるDNAを捕捉することを特徴とするDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジ。 - 前記コンジュゲート試薬が、緩衝液,DNA結合制御剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジ。
- 前記貫通細孔が直径200μm以下に形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジ。
- 前記貫通細孔が放射状に配列され、その中央には駆動用穴が設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジ。
- 前記貫通細孔のそれぞれが同心円上に配置されたことを特徴とする請求項5記載のDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジ。
- 前記貫通細孔の少なくとも一方の端部に前記貫通細孔の2倍以上の面積の拡大孔を形成したことを特徴とする請求項1〜6に記載のDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジ。
- ホルダに1個以上の貫通細孔が形成され、前記貫通細孔に、少なくとも、特定のDNAと相補的関係をもつDNA配列と高分子化合物とが結合したDNAコンジュゲートが保持されたことを特徴とするDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジ。
- 前記貫通細孔の両端であって、前記貫通細孔と隣り合う貫通細孔との間に溝を形成し、ホルダの辺と面する貫通細孔は、ホルダの辺との間に溝を形成することを特徴とする請求項1〜8に記載のDNA判定装置のためのDNA判定カートリッジ。
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-
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