JP2004283141A - 遺伝子診断装置 - Google Patents

遺伝子診断装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2004283141A
JP2004283141A JP2003082419A JP2003082419A JP2004283141A JP 2004283141 A JP2004283141 A JP 2004283141A JP 2003082419 A JP2003082419 A JP 2003082419A JP 2003082419 A JP2003082419 A JP 2003082419A JP 2004283141 A JP2004283141 A JP 2004283141A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
container
dna
gene
solution
capillary tube
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003082419A
Other languages
English (en)
Inventor
Kazuyoshi Mori
一芳 森
Hideaki Hashimoto
英明 橋本
Takeshi Nishida
毅 西田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority to JP2003082419A priority Critical patent/JP2004283141A/ja
Publication of JP2004283141A publication Critical patent/JP2004283141A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)

Abstract

【課題】本発明は、一塩基以上の遺伝子変異を短時間、且つ簡単、正確に検出することができ、小型、軽量、安価に、しかも非常に少ないランニングコストで、診断を自動化することができる遺伝子診断装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、緩衝液を収容し第1の電極が浸漬された第1の容器と、緩衝液を収容し第2の電極が浸漬された第2の容器と、第1の容器から下方に延設され、第1の容器と第2の容器間を連絡する密閉流路と、密閉流路内を通過するDNAを検知する検出部と、第1の電極と第2の電極間に電圧を印加する電源部とを備え、密閉流路内は、試料DNAに水素結合可能な塩基配列を持つDNAと高分子化合物とが結合し、結合力の差から試料DNAを正常型DNAと変異型DNAに分離するDNAコンジュゲートと、リニアポリマーとDNA結合制御剤と緩衝液とを含むDNAコンジュゲート溶液で充たす構成とした。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遺伝子変異の有無を簡単、正確に検出できる遺伝子診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
全ての疾患には、遺伝性要因と環境要因が種々の確率で関与しているが、先天性代謝異常症・癌・糖尿病・高血圧・アルツハイマー・自己免疫疾患・アトピー・肥満・アルコール依存などの疾患は、遺伝性要因が非常に大きな割合を占めている。一方、環境要素の寄与が大きい疾患は感染症や外傷の後遺症から誘因される疾患等である。
【0003】
ところで、近年分子生物学の急速な進展によって、様々な疾患において遺伝的要素、すなわち遺伝子の関与がかなり正確に解明されるようになり、遺伝子をターゲットにした医療に注目が集まるようになってきている。現在、最も注目されているのはSNPs(スニップス)と呼ばれるものである。これは、single nucleotide polymorphismの略で「1塩基多型」と一般に訳されており、個人間の遺伝子における1暗号(1塩基)の違いの総称である。
【0004】
人を含め地球上の全ての生命体遺伝子(または遺伝子の全集合体を意味するゲノム)は、共通の4つの塩基から成り立っており、この塩基の配列によって様々なタンパク質が作られ、各生物特有の生命活動が行われている。全ての生物に共通する4つの塩基とは、アデニン(Aと表記される)、グアニン(Gと表記される)、チミン(Tと表記される)、シトシン(Cと表記される)である。人の遺伝子は、約30〜32億塩基配列で構成されているといわれているが、各個人で数百から1000塩基に1ヶ所程度の割合で他の人と1つの塩基が異なっている場所が存在する。通常、この1塩基の変化が、あるヒト集団の全人口中1%以上の頻度で存在しているものを、SNPsと呼んでいる。
【0005】
従って、全遺伝子(ゲノム)中には、300万〜1000万のSNPsが存在しているといわれ、現在世界中でSNPsの探索が続けられている。SNPsが注目されている理由は、SNPsの分類により、統計的に各個人の遺伝子が関与しているといわれている多くの疾患に対する罹患率が推測できると考えられているからである。例えば、乳がんを例にとると、乳がんにかかった患者群と正常な群とのSNPsの比較により、乳がんにかかりやすい人に共通のSNPsを特定することができる。そして、健康診断時に、遺伝子を調査しそのSNPsを持った人、すなわち現在は正常でも将来乳がんにかかりやすい体質の人を見つけることが可能になる。
【0006】
この診断によって、乳がんにかかりやすい体質の人は、頻繁に検査をすることで万一癌に罹患しても、超早期に治療が行え生存の可能性が向上する。それと同様のことが、糖尿病や高血圧などの生活習慣病についても言え、世界中で多くの人が苦しんでいる病気に対して発病の前から食事や生活指導を正確にすることが可能になる。
【0007】
また、病気の治療に用いている薬剤に関してもSNPsは重要な役割を期待されている。治療の際に用いられる薬剤は全ての人に均等に効果を示すものではない。一般に薬剤は、ある割合の人には効果があっても他の人には全く効果が無く、かえって副作用等で逆の結果を招くことがあることも広く知られている。因みに、アメリカにおける死亡原因の中で薬剤による副作用が上位に位置しているのは周知のことである。薬剤の効果はその人がもつ体質に深く関与しており、その体質もSNPsの分類によって区別可能であると言われている。すなわち、SNPsの解析による分類で、ある薬剤に対してあらかじめ効果や感受性が予測でき適正な処方をすることが可能になり、患者個々人の体質に合わせた最適な薬剤の投与や副作用の危険性の回避が期待されている。このような医療のことをテーラーメイド医療またはオーダーメイド医療と呼び、将来の実用化が確実視されている。
【0008】
また癌は、正常な細胞においては重要な役割をする遺伝子上の特定の部位に例えば紫外線や変異原性物質の作用によって突然変異が生じることによって引き起こされることがわかっている。ある特定の遺伝子上の変異を読み取ることで細胞が癌化しているか否かを早い段階から診断できるようになる。そして、犯罪捜査における犯人の特定や曖昧な親子関係の確定さらには本人であるか否かの識別にもSNPsは、威力を発揮する。前述したように、各個人には300万〜1000万のSNPsが存在しており、両親からそれぞれ別々のSNPsを引き継ぐため、地球上に親子兄弟といえども全く同じSNPsをもつ人間は絶対に存在しないと言われている。これが個人の完全な特定を可能にする理由である。
【0009】
このように、特定の遺伝子中の1塩基に起きた変異を観察することで医療をはじめ様々の事柄に多大な貢献をもたらす可能性がある。しかしながら現在、特定の遺伝子の変異を観察する方法は以下に述べるような非常に複雑な操作あるいは高価な装置を必要とし、ランニングコストも非常に嵩むため、広く利用されるまでには至っていない状況にある。
【0010】
現在最も一般的に用いられているSNPsを調べる方法は、DNAの塩基配列を端から直接読んでいくシーケンシング(塩基配列の決定)と呼ばれている方法である。遺伝子は1種類のタンパク質を形成するための塩基配列情報をもったDNAの単位であるから、塩基配列を端から読んでいけばSNPsが解明することができる。シーケンシングを行う方法としては、いくつかの報告があるが、最も一般的に行われているのは以下に述べるジデオキシシーケンシング(Sanger法)である。この方法を含めいずれの方法も、分離能の高い変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動かキャピラリー電気泳動によって1塩基長の長さの違いを分離・識別できる技術が基になって成り立っている。
【0011】
ジデオキシシーケンシング(Sanger法)は、酵素的シーケンシングとも呼ばれ、1本鎖鋳型DNAの相補的鎖を合成するためにDNAポリメラーゼを用い、さらに人工的につくった特殊な4種類のジデオキシヌクレオチドを利用するのが特徴である。シーケンシング操作としては、塩基配列を行いたい1本鎖DNAの3’末端を相補する合成塩基配列をプライマーとして用い、そのプライマーからDNAポリメラーゼと均等に加えられたデオキシヌクレオチドを酵素反応によって伸長させる操作を行うが、この時同時に4つの反応容器を準備しておき、それぞれにATGC4つの塩基の3’末端に水酸基を持たない、従ってこれ以上DNA伸長反応を続けることができない塩基アナログであるジデオキシヌクレオチドを別々に少量混入させておく。これにより、伸長中のDNAの末端にジデオキシヌクレオチドが付加された時点でDNA合成がストップし、それぞれの反応容器中に様々な長さを持った、しかし端は必ず加えた塩基アナログである2本鎖DNAが形成される。この反応容器にS1エンドヌクレアーゼを反応させ、1本鎖DNAを全て消化し2本鎖DNAのみとする。こうして得られた4つの反応容器のDNA鎖をゲル電気泳動またはキャピラリー電気泳動し、分離されたDNAを短い方(速く移動したもの)から順に読めば、鋳型鎖と相補的なDNAの塩基配列がわかる。この際、泳動結果の識別は、例えば加えるジデオキシヌクレオチドのリンまたはイオウを放射性標識したり蛍光を発する化学物質を結合させたりして行う。放射性標識の場合はフィルムへの露光での検出、蛍光化学物質の場合はレーザービームを照射し蛍光を検出する。最近では、A,T,G,Cの4種類の塩基アナログを、それぞれ4種類の蛍光波長の異なる試薬により標識し、その4色の蛍光を同時に検出する方法も開発されている。
【0012】
このように、従来は被験者から分離・精製した遺伝子の正確な塩基配列をこのジデオキシシーケンシング(Sanger法)あるいはその他の塩基配列決定法により決定し、正常あるいは標準的な塩基配列と比較することによってSNPsの有無や突然変異の有無の確認、個人の識別等を行っている。
【0013】
以上説明したように、従来からの遺伝子配列決定法を利用した、遺伝子診断や遺伝子による個人の識別は、ターゲットとする遺伝子を単離したのち、増幅・精製し、遺伝子の塩基配列決定用装置を用いて、目的遺伝子の塩基配列を読むことによって行っていたため、実験に膨大な作業量と非常に長い時間、さらには多大のランニングコストを要していた。また塩基配列決定のための自動化した装置は、非常に高価で、大きなスペースを占有し、しかも高価な試薬を大量に必要とするものであった。
【0014】
こうした問題点は、アフィニティキャピラリー電気泳動によってDNAを分離する方法では比較的小さい。これは、分子間親和力、とくに生態系における特異的親和力(酵素と基質、抗原と抗体の親和力等)を利用して分離に特異性を持たせるためである(例えば、特許文献1参照)。すなわち、キャピラリー管の中の泳動溶液に相互作用する二成分のうちの一方を添加しておき、他方の成分を電気泳動させると、試料混合物中で相互作用する分子種だけが移動速度に変化を生じるので、これに着目して分析を行うものである。
【0015】
【特許文献1】
特開平7−311198号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のアフィニティキャピラリー電気泳動では、塩基配列を特異的に認識するアフィニティリガンドとして被検体DNAの塩基配列と相補的関係の1本鎖を使うが、ポリヌクレオチドを成分とするアフィニティリガンドは負電荷を有しているため電圧を印加するとキャピラリー外に流出してしまう。これを防ぐため1本鎖をキャピラリー内に固定化する必要があった。この固定化の方法として、ビニル化DNAをポリアクリルアミドと共重合し、キャピラリー内壁に共有結合的に固定化する方法が提案された。被検体DNAは固定的オリゴヌクレオチドと強く相互作用し、キャピラリー内に吸着され、ノイズ分は吸着されずに検出されることになる。しかし、この方法はアフィニティリガンドがキャピラリー内壁にしかコーティングできないので、リガンドと試料の相互作用が壁面近傍に限られるという問題があった。そして、測定が難しく、精度が悪くなると言う問題がある。
【0017】
そこで、従来のこのような問題を解決するため本発明は、一塩基以上の遺伝子変異を短時間、且つ簡単、正確に検出することができ、小型、軽量、安価に、しかも非常に少ないランニングコストで、診断を自動化することができる遺伝子診断装置を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の遺伝子診断装置は、緩衝液を収容し第1の電極が浸漬された第1の容器と、緩衝液を収容し第2の電極が浸漬された第2の容器と、第1の容器から下方に延設され、第1の容器と第2の容器間を連絡する密閉流路と、密閉流路内を通過するDNAを検知する検出部と、第1の電極と第2の電極間に電圧を印加する電源部とを備え、密閉流路内は、試料DNAに水素結合可能な塩基配列を持つDNAと高分子化合物とが結合し、結合力の差から試料DNAを正常型DNAと変異型DNAに分離するDNAコンジュゲートと、リニアポリマーとDNA結合制御剤と緩衝液とを含むDNAコンジュゲート溶液で充たされ、電圧を印加することにより、密閉流路内に導入された試料DNAが電気泳動され、検出部で正常型DNA及び/または変異型DNAの通過を検知する構成としたものである。
【0019】
これによって、密閉流路の長さも自由に変更することが可能であり、一塩基以上の遺伝子変異を短時間、且つ簡単、正確に検出することができ、小型、軽量、安価に、しかも非常に少ないランニングコストで、診断を自動化することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、緩衝液を収容し第1の電極が浸漬された第1の容器と、緩衝液を収容し第2の電極が浸漬された第2の容器と、第1の容器から下方に延設され、第1の容器と第2の容器間を連絡する密閉流路と、密閉流路内を通過するDNAを検知する検出部と、第1の電極と第2の電極間に電圧を印加する電源部とを備え、密閉流路内は、試料DNAに水素結合可能な塩基配列を持つDNAと高分子化合物とが結合し、結合力の差から試料DNAを正常型DNAと変異型DNAに分離するDNAコンジュゲートと、リニアポリマーとDNA結合制御剤と緩衝液とを含むDNAコンジュゲート溶液で充たされ、電圧を印加することにより、密閉流路内に導入された試料DNAが電気泳動され、検出部で正常型DNA及び/または変異型DNAの通過を検知することを特徴とする遺伝子診断装置であって、DNAコンジュゲートは、試料DNAに水素結合可能な塩基配列を持つDNAと高分子化合物とが結合したものであり、このDNAは、正常型DNAと変異型DNAとのいずれか一方と相補結合可能であり、他方とは1塩基分結合力が弱い。そして、正常型DNAと変異型DNAは、それぞれDNAコンジュゲートとの結合力の差が生じ、これは電気泳動の泳動速度の差として現れる。よって、試料DNAを正常型DNAと変異型DNAに分離することができる。更に、第1の容器から密閉流路が下方に延設されている、即ち、直線であるので、密閉流路が曲線を描く場合に比べて短くすることができ、泳動時間を短縮できる。また、密閉流路の長さも自由に変更することが可能である。よって、一塩基以上の遺伝子変異を短時間、且つ簡単、正確に検出することができ、小型、軽量、安価に、しかも非常に少ないランニングコストで、診断を自動化することができる。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、密閉流路の温度を制御する温度制御部を備えたことを特徴とする遺伝子診断装置であって、正常型DNAと変異型DNAと、DNAコンジュゲートとの結合力をコントロールすることができる。
【0022】
請求項3に記載の発明は、請求項1,2において、DNAコンジュゲート溶液を収容する第3の容器を設け、密閉流路先端が、第2の容器に収容された緩衝液、または、第3の容器に収容されたDNAコンジュゲート溶液に任意に浸されるように、第2の容器と前記第3の容器を移動させる移動手段を備えたことを特徴とする遺伝子診断装置であって、密閉流路内へ目的の物質を注入することが可能である。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3において、試料DNAを収容する第4の容器を設け、密閉流路先端が、第2の容器に収容された緩衝液、または、第4の容器に収容された試料DNAに任意に浸されるように、第2の容器と第4の容器を移動させる移動手段を備えたことを特徴とする遺伝子診断装置であって、密閉流路内へ目的の物質を注入することが可能である。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4において、密閉流路を洗浄する蒸留水等の洗浄液を収容する第5の容器を設け、密閉流路先端が、第2の容器に収容された緩衝液、または、第5の容器に収容された洗浄液に任意に浸されるように、第2の容器と第5の容器を移動させる移動手段を備えたことを特徴とする遺伝子診断装置であって、密閉流路内へ目的の物質を注入することが可能であり、密閉流路を洗浄できる。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5において、密閉流路内のDNAコンジュゲート溶液等が排出される第6の容器を設け、密閉流路先端が、第2の容器に収容された緩衝液、または、第6の容器に任意に浸されるように、第2の容器と前記第6の容器を移動させる移動手段を備えたことを特徴とする遺伝子診断装置であって、不要な溶液等を排出することができ、連続して複数の測定を行うことができる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項3〜6において、第2の容器と、第3の容器、或いは、第4の容器、或いは、第5の容器、或いは、第6の容器とは、共に同一トレー上に配置されたことを特徴とする遺伝子診断装置であって、目的別の容器を複数配置でき、簡単な構成で精度の良い測定ができる。
【0027】
請求項8に記載の発明は、請求項3〜6において、第1の容器及び第1の容器から下方に延設された密閉流路を移動させる移動手段を備えたことを特徴とする遺伝子診断装置であって、密閉流路内へ目的の物質を注入することが可能である。
【0028】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8において、第1容器内を負圧にして密閉流路内に試料を注入する吸引手段を備えたことを特徴とする遺伝子診断装置であって、密閉流路内へ目的の物質を所定量注入することが可能である。
【0029】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9において、検出部が、少なくとも波長254nmの光を発する発光部と、波長254nmを含む感度域を持つ受光部で構成されたことを特徴とする遺伝子診断装置であって、DNAの吸光領域である254nmの吸光度を測定することにより、DNAの存在を確認することができる。
【0030】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10において、検出部が、密閉流路内の高分子化合物の吸光領域を含まない波長光を発する発光部を備えたことを特徴とする遺伝子診断装置であって、波長200nm近辺に吸光特性を持つ高分子化合物による影響を受けることもなく、分光器を設けることなく、DNAの波長254nmの吸光度を安価に単純な構成で検出することができる。
【0031】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11において、DNAコンジュゲート溶液が、密閉流路内を下方にある第2容器側へ移動することのない程度の高粘度であることを特徴とする遺伝子診断装置であって、測定中に泳動方向とは逆に重力により泳動場が移動することがなく、また電気浸透流も防げ、精度良い測定が可能となる。
【0032】
請求項13に記載の発明は、請求項1〜12において、第1容器に緩衝液および蒸留水等の注入口ならびに排液口を設け、更に第1容器内に水位検出部を設けたことを特徴とする遺伝子診断装置であって、容器内の緩衝液等を交換する場合に、装置から容器を取り出すことなく中の液を交換できるので、簡便な測定が可能となり、連続的かつ多量の測定に大変有利である。
【0033】
請求項14に記載の発明は、請求項1〜13において、密閉流路をキャピラリー管としたことを特徴とする遺伝子診断装置であって、効率の良い電気泳動が可能となる。
【0034】
請求項15に記載の発明は、請求項14において、キャピラリー管の内壁をアクリルアミドでコーティングしたことを特徴とする遺伝子診断装置であって、電気浸透流を防止できる。
【0035】
請求項16に記載の発明は、請求項14,15において、キャピラリー管の外壁はポリイミド等のコーティングがなされていないことを特徴とする遺伝子診断装置であって、安価である。
【0036】
以下、本発明の実施の形態における遺伝子診断装置について、図面を参照しながら説明する。
【0037】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の外観斜視図である。
【0038】
図1において、1は遺伝子診断装置本体、2は結果および各種情報を表示する表示部、3は測定開始等を行なう操作部である。
【0039】
図2は本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の内部斜視図である。
【0040】
図2において、4はDNAサンプル等を収容した容器をセットするためのトレー、5は吸引ポンプ、6は加圧ポンプであり、7はキャピラリーカセット、8はキャピラリー管である。キャピラリーカセット7は、キャピラリー管8や、検出部(20)等を内部に備えている。更に、9aは発光部であり、発光部9aと受光部(9b)とで検出部(20)を構成する。
【0041】
図3は本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の装置構成図であり、図2に示すキャピラリーカセット7の内部構成及びその周辺構成を示したものである。
【0042】
図3において、10と11は電極である。本実施の形態1においては、電極10は正電極(陽極)であり、電極11は負電極(陰極)となる。更に、12はファン、13はヒータ、14は緩衝液等の注入口、15は緩衝液トラップ用容器、16は水位センサ、17は容器、18a,18bは緩衝液である。なお、電極10は本発明の第1の電極、電極11は本発明の第2の電極となる。更に、容器17は本発明の第1の容器である。
【0043】
電極10、水位センサ16はともに容器17内の所定の位置に設置されており、更に緩衝液18aは測定時には所定の水位まで満たされている。なお、電極10,11や水位センサ16等は、通信や電源供給が行われる接続コードを介して制御装置等に接続されている。この接続コードは、図3において点線で示している。
【0044】
また、19はシール材であり、キャピラリー管8は容器17内へシール材19を介し数cm突出した状態になっている。ここで、キャピラリー管8が従来のような曲線を描いた形状ではなく垂直方向(容器17(第1の容器)から下方)に延設することで、キャピラリー管8の長さを自在に調節することが容易となり、泳動時間を最小限にすることができる。また、キャピラリー管8を湾曲させることがないので、折れ防止のポリイミドコーティング等を行うことがなく安価である。
【0045】
そして、20はキャピラリー管8内のDNAの通過を検出する検出部であり、詳細は後述するが、検出部20は発光部9aと受光部(9b)とで構成される。
【0046】
21a、21b、21c、21dは電磁弁、22は測定後の廃液を収めるための廃液タンクである。電磁弁21aは加圧ポンプ6と容器17間、電磁弁21bは吸引ポンプ5と容器17間、電磁弁21cは注入口14と容器17間、電磁弁21dは容器17と廃液タンク22間の流路にそれぞれ設けられている。
【0047】
更に、23は温度センサであり、ヒータ13を介してファン12から送風される加温された空気の温度を検出している。
【0048】
次に、トレー4について説明する。30は緩衝液18bを収めた容器、31は蒸留水31aを収めた容器、32は廃液用容器、33はDNAコンジュゲート溶液33aを収めた容器、34は試料DNA34aを収めた容器である。そして、容器30には電極11が配置される。なお、容器30は本発明の第2の容器、容器33は本発明の第3の容器、容器34は本発明の第4の容器にそれぞれ相当し、容器31が本発明の第5の容器、廃液用容器32が本発明の第6の容器である。
【0049】
また、これらの種々の試料や溶液を収容した容器は、図3においては、1つずつ設けた例で示しているが、それぞれ複数設けてもよいのは言うまでもなく、ここで例示していない試料や溶液、例えば、試薬などを収容する他の容器を設けてもよいのは言うまでもない。特に、試料DNA34aを収めた容器34を複数設けることで、同種サンプルの複数回の測定や多種サンプルの測定を行うことが可能となり利便性が向上する。
【0050】
また、図示はしていないが、トレー4はアクチュエータ等により、図中矢印で示す上下左右の動作が可能となっている。
【0051】
更に、実施の形態1における遺伝子診断装置の検出部20について説明する。図4は本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の検出部の装置構成図である。図4において、9bは受光部を示し、24はUVランプ等の紫外線照射器、25はフォトダイオード等の光センサ、26,27はスリットであり、28は集光レンズである。
【0052】
図4に示すように、発光部9aは紫外線照射器24を、受光部9bは光センサ25をそれぞれ備えており、発光部9aと受光部9bとで検出部20が構成されている。そして、発光部9aと受光部9bとの間に、それぞれスリット26,27を介して、キャピラリー管8が配置される。発光部9aの紫外線照射器24から発せられた紫外光は集光レンズ28で集光され、更に、スリット26を通過して、キャピラリー管8に照射される。この照射光はキャピラリー管8及びスリット27を通過し、受光部9bの光センサ25に到達する。なお、照射光の光路は、図4において点線で示している。
【0053】
このように構成された検出部20のDNAの検出原理は、DNAのUV吸光特性を利用したものであり、波長254nmの吸光度の変化によりDNAの通過を検出することができる。即ち、紫外光が照射される所定位置のキャピラリー管8内におけるDNAの有無が、紫外線照射器24から照射され、該キャピラリー管8を通過し、光センサ25で受光される紫外光の強度変化として検出される。
【0054】
図5は本実施の形態1における遺伝子診断装置の制御ブロック図である。図5において、40は制御部、41は駆動部である。制御部40は操作部3から入力された信号を駆動部41に出力し、駆動部41は制御部40からの指令によりアクチュエータ42等の各種機器を動作させる。例えば、操作部3の測定開始ボタンを押すことにより、各種機器が動作する等である。
【0055】
また、43はD/Aコンバータ、44はD/Aコンバータ43からの信号に比例した電圧を発生させ各電極10,11に印加する電源部であり、制御部40によって制御される。
【0056】
更に、45はA/Dコンバータであり温度センサ20、光センサ25等の信号を増幅部46により増幅した値を入力しデジタル変換して制御部40へ出力する。制御部40はこれらの信号から駆動部41に制御信号を出力する。例えば、温度センサ20から出力された信号に基づき、ファン12やヒータ13に制御信号を送り、温度調整を行う等の制御が行われる。更に、表示部2の表示制御を行い種々の情報が表示部2で表示される。
【0057】
ここで、電気泳動の基本原理を簡単に説明すると、DNAは負に帯電しており周囲に電界を発生させると陽極側へ移動しようとする。この時ポリアクリルアミドやアガロース等のゲル中にDNAが存在した場合、ゲルとDNAの抵抗関係により塩基長の短い(分子量の小さい)ものから移動をはじめる。同じ塩基長であれば同じ速度で移動し、異なる長さであれば移動速度が異なるため徐々に分離していく。最終的に各塩基長毎にバンドを形成するものである。
【0058】
次に、DNAの結合について説明すると、DNAはA,T,G,C4種の塩基配列からなり、通常二本鎖を形成する。またAとT、GとCがそれぞれ水素結合し易い性質があるため二本鎖においてはA−T,G−Cで対をなしている。従って、一方の鎖が5’−ATCGCGTCTAGC−3’(配列番号1に記載)という配列の場合、もう一方の鎖は、3’−TAGCGCAGATCG−5’(配列番号2に記載)という塩基配列になる。この関係は相補的関係と呼ばれるもので、この相補関係が1塩基でも崩れた場合、極端に結合力が低下し、二本鎖が形成しづらくなる。またDNAの結合力は温度にも依存する。DNAは高温(摂氏94度)にすると二本の鎖がほどけて一本ずつばらばらになり、徐々に温度を下げると元通りの二本鎖に復元する性質がある。つまり、温度を制御することにより結合力を調整することができる。なお、本実施の形態1における遺伝子診断装置では、ヒータ13、温度センサ20等で温度制御が行われる。
【0059】
本発明における遺伝子診断装置は、上述した原理を応用したものである。
【0060】
次に、本遺伝子診断装置で測定する試料DNAについて説明する。本実施の形態1においては人の細胞や血液等から抽出し、目的の部位を増幅させ一本鎖にしたDNAを試料とし、12〜100塩基長を想定している。
【0061】
試料DNAの塩基数は、その他の範囲でも温度や各種試料濃度などの変更により分離解析は可能であるが、それら各種条件を最適化する作業が必要となる。また約30億塩基対あるといわれるヒトのDNAから目的の部位を取り出すには、特定部位のみを増幅させるPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法や特定配列を持つ部位を切断する制限酵素法、アガロースゲル電気泳動などを利用して行なう。ただ、このPCR法、制限酵素法に関しては本遺伝子診断装置の説明に必要がないため具体的な説明は省略する。
【0062】
本発明者らの実験によると、本遺伝子診断装置で正常型DNAと1塩基違いの変異型DNAを分離する場合、塩基の数は12塩基程度が最も効率よく分離できるという結果を得ている。ただ、約30億塩基から特定の12塩基部を取り出す場合、上述した抽出増幅等の前処理工程において工数が増えるので60塩基程度が最も適当であろう。
【0063】
また、キャピラリー管8について更に詳しく説明すると、通常のキャピラリー管にポリアクリルアミド等を入れて両端に電圧を印加すると、電気浸透流と呼ばれる液の流れが発生してしまう。本遺伝子診断装置ではこの現象が起きないように、キャピラリー管8の内壁をアクリルアミドなどでコーティングしたものを使用する。コーティング剤は、電気浸透流の発生が阻止でき、試料DNAに影響を及ぼさないものであるなら他でもよい。なお、キャピラリー管8としては内径50〜100μmのフューズドシリカ製キャピラリー管が、紫外線を90%以上透過でき、且つ紫外線を利用してDNAを検出するとき、紫外線の通過量を容易に検出できるから最も適当である。
【0064】
次に、容器17,30中に収容される緩衝液18a,18bについて説明する。通常はTris−Borate(pH7.2〜pH8程度)等を利用するのが適当である。Trisを滅菌水で薄め、ホウ酸を徐々に加えながら目的のpH値にしたものである。緩衝液18aと18bに混入させる電解質としては、塩化マグネシウム等がある。また塩化マグネシウムはDNAの2本鎖を強く結合させる効果をもっており、濃度により試料DNAの結合力制御を可能とするものである。また塩化マグネシウムとは逆に尿素など結合力を弱める物質等も知られており、それらDNA結合制御材の種類や混合比を選択することで試料DNAの多様な結合力制御が可能となる。本実施の形態1における緩衝液はTris:5mM、MgCl:0.25mM、pH:7.4に調製されている。
【0065】
次に、容器33内に収容されているDNAコンジュゲート溶液33aについて説明する。
【0066】
DNAコンジュゲート溶液33aは、後述する電気泳動中に正常型DNAと変異型DNAを分離しながら泳動させるための溶液であり、ゲル状態である。
【0067】
ところで、本発明のDNAコンジュゲートは、1本鎖DNAの5’末端にビニル基を導入したビニル化DNAを合成し、これとリニアポリマー溶液とのラジカル共重合によって作製したものである。従って、DNAコンジュゲート溶液33aは、DNAコンジュゲートとリニアポリマー溶液の混合した溶液がDNA結合制御剤を添加した緩衝液に混合されたものである。
【0068】
一例を挙げてDNAコンジュゲートの作成方法を具体的に説明すると、DNAコンジュゲートの濃度を一定にするため、合成されたアミノ化DNAの吸光度を測定し、2.6mMになるように希釈する。次にこの濃度でアミノ化DNAの量を例えば400nモル(2.6mMの溶液で153.8μL)と決定し、まずメタクリロイルオキシスクシンイミド(MOSU)0.0153gをジメチルスルホキシド(DMSO)溶液1170μLに溶解し、71.388mMの溶液として、この内20μモルに相当する280μLを、アミノ化DNA153.8μLとアミノ化DNAと同量の炭酸水素ナトリウムと水酸化ナトリウムからなるpH調整液(pH9)153.8μLとに混合する。
【0069】
その後、一晩振とうし、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)で未反応のDNAを分離し、減圧遠心分離器でHPLCの溶離液を減圧乾燥し、濃度が0.5mMになるように純水で希釈して溶液とする。生成されたビニル化DNA溶液25.8μL(アクリルアミドとのモル比0.025モル%)を超純水30.2μLで希釈して(ポリ)アクリルアミド10%溶液34μLを加え、重合開始剤1.34%N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMD)5μLと1.34%アンモニウムパーサルファイト(APS)5μLを添加して目的のDNAコンジュゲートとポリアクリルアミドの混合溶液が得られる。これをTris−Borate緩衝液とDNA結合制御剤とを添加した溶液に混合してDNAコンジュゲート溶液33aとする。なお、粘度に関しては、キャピラリー管8内に充填した時、自重により容易に落下しない程度にTEMDとAPSの量や重合時の温度を変化させることでポリアクリルアミドの重合度を調整する。
【0070】
次に、本実施の形態1における遺伝子診断装置の動作について図3等を用い説明する。
【0071】
図3に示すように、緩衝液18bを収容した容器30、蒸留水31aを収容した容器31、廃液用容器32、DNAコンジュゲート溶液33aを収容した容器33、試料DNA34aを収容した容器34をそれぞれ予めサンプルトレー4上にセットしておく。
【0072】
そして、はじめに行なう容器17内へ緩衝液18aを注入する方法を説明すると、先ず、電磁弁21cと21dを開き容器17内に残る廃液を一旦廃液タンク22へ注ぐ。必要に応じて、注入口14より蒸留水等を注入し容器17内を洗浄する。
【0073】
洗浄が終わり容器17内の液が廃液タンク22へ全て排出されると、電磁弁21dを閉じ、緩衝液を注入口14より容器17内へ注ぐ。ここで、水位センサ16により容器17内の緩衝液18aの量を検知し、所定の液面まで達すると電磁弁21cを閉じ容器17内への緩衝液の流入を停止する。これで容器17内へ緩衝液18aが所定量満たされた状態となる。
【0074】
次に、測定中におけるキャピラリー管8の温度制御について説明する。
【0075】
ファン12の排気側にヒータ13が設けられているため、キャピラリー管8には加温された空気が送られる。更に、排気側には温度センサ20が設置されておりその温度を測定しながらヒータ13の電源を制御する。このようにキャピラリー管8の周囲の雰囲気温度を制御することでキャピラリー管8内を所定の温度に制御することが可能となる。
【0076】
次に、キャピラリー管8内へDNAコンジュゲート溶液33aを注入するが、その詳細について説明する。図6は本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の動作説明図である。
【0077】
まず、トレー4をアクチュエータにより移動させ、図6(a)に示すようにキャピラリー管8先端が容器33のDNAコンジュゲート溶液33aに浸された状態にする。
【0078】
更に、図3で示す、電磁弁21a〜21d全てを閉じ、吸引ポンプ5を動作させる。これにより密閉された容器17内およびキャピラリー管8内が負圧となるためDNAコンジュゲート溶液33aがキャピラリー管8内へ吸引される。一定時間経過後、電磁弁21bを開き、吸引ポンプ5を停止することでキャピラリー管8内にDNAコンジュゲート溶液33aが保持されることになる。この時、DNAコンジュゲート溶液33aは、ある程度の粘度があるため、キャピラリー管8内を降下し外部へ出ることはなく保持される。
【0079】
次に、キャピラリー管8内に保持されたDNAコンジュゲート溶液33aの精製を行なう。DNAコンジュゲート溶液33a中にはアクリルアミドと結合していないDNA等の不純物が存在する場合があり、測定精度に影響を与えることも考えられるので取り除くのが望ましい。本実施の形態1における精製方法は、電気泳動により取り除く方法であり、その詳細を説明する。
【0080】
まずキャピラリー管8内にDNAコンジュゲート溶液33aが保持された状態で、図6(b)で示すようにキャピラリー管8の先端が容器30中の緩衝液18bに浸された状態にする。
【0081】
次に、図3で示す、電極11に対して電極10に正電圧を印加する。DNAは負に帯電しているため正極側の電極10へ移動する。よってキャピラリー管8内に存在するポリアクリルアミドと未結合のDNAはすべて容器17内の緩衝液18aへ溶出することになる。また、キャピラリー管8で精製が完了したDNAコンジュゲート溶液33aにおいて、ポリアクリルアミドと結合しているDNA(DNAコンジュゲート)は、ポリアクリルアミドポリマーが碇の役目をして極端に泳動速度が遅いのでキャピラリー管8で擬似的に固定された状態となる。以上がDNAコンジュゲート溶液33aの精製である。なお、緩衝液18aへ溶出した未結合のDNAは、緩衝液の量に対して非常に微量であるため、緩衝液18aのphを変化させることもなく、仮に逆流が生じた場合等にも、測定へ影響を及ぼすことはない。
【0082】
次に、図6(c)に示すように、試料DNA34aをキャピラリー管8内へ定量注入する。注入方法の基本方式は、上述したDNAコンジュゲート溶液33aを注入する方法と同様であり、吸引ポンプ5によりキャピラリー管8内へ試料DNA34aを注入する。そして、吸引ポンプ5の動作時間により注入量が制御される。即ち、DNAコンジュゲート溶液33aが保持されたキャピラリー管8の下方末端、所定の電気泳動開始位置に試料DNA34aを配置する必要がある。本実施の形態1では、例えば、吸引ポンプ5の動作時間を2秒とする。動作時間と量に関しては、DNAコンジュゲート溶液33aの粘度やキャピラリー管8の長さ、内径などにより変化するものであり、これらの条件を変更した場合は、吸引ポンプ5の動作時間を変更する。
【0083】
次に、試料DNA34aを電気泳動分離し、検出判別する。キャピラリー管8末端に試料DNA34aが注入された状態で、図6(b)に示すように緩衝液18bにキャピラリー管8末端が浸された状態にする。
【0084】
そして、精製時と同様に電極10,11間に電圧を印加し、検出部20側へ試料DNA34aを泳動させる。
【0085】
本実施の形態1における検出部20は、上述のように、DNAのUV吸光特性を利用したもので、発光部9aと受光部9bで構成されており、波長254nmの吸光度の変化によりDNAの通過を検出することができる。発光部9aに用いる紫外線照射器24は殺菌灯などの波長254nmを中心に照射するものや、幅広い波長範囲を照射するDランプ等にフィルターを設けたものでもよい。このように発光部9aで波長を制限することで、受光部9b側に分光装置を用いることなくDNAの吸収波長である254nm近辺の吸光度を他の泳動液の吸光特性に影響されることなく測定することができる。
【0086】
泳動したDNAは、検出部20で通過を検出され、図7のような波形を得ることができる。なお、図7は本発明の実施の形態1における経過時間と吸光度の関係を示すグラフである。図7の波形は、正常型DNAと変異型DNAが混合したサンプルであり、縦軸が吸光度(abs(254nm))、横軸が時間(分)である。これは、DNAコンジュゲートには、正常型DNAと相補的関係にあるDNAが結合しており、このDNAコンジュゲートのDNAに対し、変異型DNAは正常型DNAに比べて1塩基分結合力が弱い。正常型DNAは、擬似的に固定されているDNAコンジュゲートとの結合力が強いため通常の泳動速度に対して減速する。以上の理由からサンプル中に両型のDNAが存在する場合、図7のように2山の波形が得られる。時間的に最初の山が変異型DNAであり、遅れて出現した山が正常型DNAである。また、正常型のDNAのみ存在する場合、もしくは、変異型のDNAのみ存在する場合は1山の波形となる。このようにして試料DNA34aの判別を行なうことが可能となる。なお、場合によっては、DNAコンジュゲートに、変異型DNAと相補的関係にあるDNAを結合させてもよく、この場合は、上述した説明は正常型DNAと変異型DNAとで逆になる。
【0087】
次に、測定後の洗浄動作について説明する。連続して測定を行なう場合、キャピラリー管8内に保持されているDNAコンジュゲート溶液33aを入れ換える必要がある。同種のDNAサンプルを測定する場合でも、新たに入れ換えることで精度よく測定することができる。そこで、まずキャピラリー管8内のDNAコンジュゲート溶液33aを外部へ吐き出す。
【0088】
図6(d)に示すようにキャピラリー管8の先端が廃液用容器32で覆われた状態にする。そして、図3で示す、電磁弁21a〜21dすべてを閉じ加圧ポンプ6を動作させる。すると容器17内が加圧され緩衝液18aがキャピラリー管8を通り外部へ噴出しようとするので、キャピラリー管8内のDNAコンジュゲート溶液33aを緩衝液18aが押し出し廃液用容器32へ噴出する。キャピラリー管8内にDNAコンジュゲート溶液33aが無くなると加圧ポンプ6を停止し、電磁弁21aを開く。
【0089】
容器17内が大気圧に戻ったところで電磁弁21aを再度閉じ、図6(e)に示すようにキャピラリー管8の先端が容器31内の蒸留水31aに浸るように配置する。そこで、吸引ポンプ5を動作させると蒸留水31aはキャピラリー管8内を通り容器17内へと移動する。これが蒸留水洗浄である。ちなみに本実施の形態1では、蒸留水洗浄を5分間行なう。同様に、緩衝液18bを用いて洗浄を5分間行なうことでキャピラリー管8の洗浄動作終了となる。なお、本実施の形態1では、蒸留水31aを用いたが洗浄が可能であれば、測定に影響を与えない範囲で他の液体を用いることもできる。
【0090】
以上、実施の形態1における遺伝子診断装置について説明したが、その趣旨を逸脱しない範囲で種々な変更が可能である。
【0091】
本実施の形態1において、DNAコンジュゲート溶液33aや試料DNA34a等をキャピラリー管8に導入する際にトレー4を移動させたが、トレー4を固定して、キャピラリー管8を備えるキャピラリーカセット7やその周辺機器を移動させてもよい。
【0092】
更に、試料DNA34aをキャピラリー管8に導入する際に、吸引ポンプ5によって試料DNA34aを吸い上げたが、DNAは負に帯電しているので、電源10,11に電圧を印加して泳動させてキャピラリー管8に導入してもよい。
【0093】
【発明の効果】
本発明によれば、小型、軽量、安価に、しかも非常に少ないランニングコストで、診断を自動化することができる遺伝子診断装置を提供することができる。
【0094】
【配列表】
Figure 2004283141
Figure 2004283141

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の外観斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の内部斜視図
【図3】本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の装置構成図
【図4】本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の検出部の装置構成図
【図5】本実施の形態1における遺伝子診断装置の制御ブロック図
【図6】本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の動作説明図
【図7】本発明の実施の形態1における経過時間と吸光度の関係を示すグラフ
【符号の説明】
1 遺伝子診断装置本体
2 表示部
3 操作部
4 トレー
5 吸引ポンプ
6 加圧ポンプ
7 キャピラリーカセット
8 キャピラリー管
9a 発光部
9b 受光部
10,11 電極
12 ファン
13 ヒータ
14 注入口
15 緩衝液トラップ用容器
16 水位センサ
17 容器
18a,18b 緩衝液
19 シール材
20 検出部
21a、21b、21c、21d 電磁弁
22 廃液タンク
23 温度センサ
24 紫外線照射器
25 光センサ
26,27 スリット
28 集光レンズ
30,31,33,34 容器
31a 蒸留水
32 廃液用容器
33a DNAコンジュゲート溶液
34a 試料DNA
40 制御部
41 駆動部
42 アクチュエータ42
43 D/Aコンバータ
44 電源部
45 A/Dコンバータ
46 増幅部

Claims (16)

  1. 緩衝液を収容し第1の電極が浸漬された第1の容器と、
    緩衝液を収容し第2の電極が浸漬された第2の容器と、
    前記第1の容器から下方に延設され、前記第1の容器と前記第2の容器間を連絡する密閉流路と、
    前記密閉流路内を通過するDNAを検知する検出部と、
    前記第1の電極と第2の電極間に電圧を印加する電源部とを備え、
    前記密閉流路内は、試料DNAに水素結合可能な塩基配列を持つDNAと高分子化合物とが結合し、結合力の差から試料DNAを正常型DNAと変異型DNAに分離するDNAコンジュゲートと、リニアポリマーとDNA結合制御剤と緩衝液とを含むDNAコンジュゲート溶液で充たされ、
    電圧を印加することにより、前記密閉流路内に導入された試料DNAが電気泳動され、前記検出部で正常型DNA及び/または変異型DNAの通過を検知することを特徴とする遺伝子診断装置。
  2. 前記密閉流路の温度を制御する温度制御部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の遺伝子診断装置。
  3. 前記DNAコンジュゲート溶液を収容する第3の容器を設け、前記密閉流路先端が、前記第2の容器に収容された緩衝液、または、前記第3の容器に収容されたDNAコンジュゲート溶液に任意に浸されるように、前記第2の容器と前記第3の容器を移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項1,2いずれか1項に記載の遺伝子診断装置。
  4. 前記試料DNAを収容する第4の容器を設け、前記密閉流路先端が、前記第2の容器に収容された緩衝液、または、前記第4の容器に収容された試料DNAに任意に浸されるように、前記第2の容器と前記第4の容器を移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の遺伝子診断装置。
  5. 前記密閉流路を洗浄する蒸留水等の洗浄液を収容する第5の容器を設け、前記密閉流路先端が、前記第2の容器に収容された緩衝液、または、前記第5の容器に収容された洗浄液に任意に浸されるように、前記第2の容器と前記第5の容器を移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の遺伝子診断装置。
  6. 前記密閉流路内のDNAコンジュゲート溶液等が排出される第6の容器を設け、前記密閉流路先端が、前記第2の容器に収容された緩衝液、または、前記第6の容器に任意に浸されるように、前記第2の容器と前記第6の容器を移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の遺伝子診断装置。
  7. 前記第2の容器と、前記第3の容器、或いは、前記第4の容器、或いは、前記第5の容器、或いは、前記第6の容器とは、共に同一トレー上に配置されたことを特徴とする請求項3〜6いずれか1項に記載の遺伝子診断装置。
  8. 前記第1の容器及び前記第1の容器から下方に延設された密閉流路を移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項3〜6いずれか1項に記載の遺伝子診断装置。
  9. 前記第1容器内を負圧にして前記密閉流路内に試料を注入する吸引手段を備えたことを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載の遺伝子診断装置。
  10. 前記検出部が、少なくとも波長254nmの光を発する発光部と、波長254nmを含む感度域を持つ受光部で構成されたことを特徴とする請求項1〜9いずれか1項に記載の遺伝子診断装置。
  11. 前記検出部が、前記密閉流路内の高分子化合物の吸光領域を含まない波長光を発する発光部を備えたことを特徴とする請求項1〜10いずれか1項に記載の遺伝子診断装置。
  12. 前記DNAコンジュゲート溶液が、前記密閉流路内を下方にある前記第2容器側へ移動することのない程度の高粘度であることを特徴とする請求項1〜11いずれか1項に記載の遺伝子診断装置。
  13. 前記第1容器に緩衝液および蒸留水等の注入口ならびに排液口を設け、更に前記第1容器内に水位検出部を設けたことを特徴とする請求項1〜12いずれか1項に記載の遺伝子診断装置。
  14. 前記密閉流路をキャピラリー管としたことを特徴とする請求項1〜13いずれか1項に記載の遺伝子診断装置。
  15. 前記キャピラリー管の内壁をアクリルアミドでコーティングしたことを特徴とする請求項14記載の遺伝子診断装置。
  16. 前記キャピラリー管の外壁はポリイミド等のコーティングがなされていないことを特徴とする請求項14,15いずれか1項に記載の遺伝子診断装置。
JP2003082419A 2003-03-25 2003-03-25 遺伝子診断装置 Pending JP2004283141A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003082419A JP2004283141A (ja) 2003-03-25 2003-03-25 遺伝子診断装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003082419A JP2004283141A (ja) 2003-03-25 2003-03-25 遺伝子診断装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004283141A true JP2004283141A (ja) 2004-10-14

Family

ID=33295717

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003082419A Pending JP2004283141A (ja) 2003-03-25 2003-03-25 遺伝子診断装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004283141A (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001124736A (ja) * 1999-10-29 2001-05-11 Hitachi Ltd キャピラリー電気泳動装置
JP2002333444A (ja) * 2001-02-23 2002-11-22 Matsushita Electric Ind Co Ltd 遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法
JP2002340858A (ja) * 2001-02-23 2002-11-27 Matsushita Electric Ind Co Ltd 遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法
JP2002340859A (ja) * 2001-02-27 2002-11-27 Matsushita Electric Ind Co Ltd 遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法
JP2002340857A (ja) * 2001-02-23 2002-11-27 Matsushita Electric Ind Co Ltd 遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001124736A (ja) * 1999-10-29 2001-05-11 Hitachi Ltd キャピラリー電気泳動装置
JP2002333444A (ja) * 2001-02-23 2002-11-22 Matsushita Electric Ind Co Ltd 遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法
JP2002340858A (ja) * 2001-02-23 2002-11-27 Matsushita Electric Ind Co Ltd 遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法
JP2002340857A (ja) * 2001-02-23 2002-11-27 Matsushita Electric Ind Co Ltd 遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法
JP2002340859A (ja) * 2001-02-27 2002-11-27 Matsushita Electric Ind Co Ltd 遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法

Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
ANAL. SCI., (1999), 15, [4], P.389-392, JPN6008062942, ISSN: 0001201191 *
CHEM. LETT., (2000), 29, [2], P.106-107, JPN6008062940, ISSN: 0001201190 *

Similar Documents

Publication Publication Date Title
AU2017237187B2 (en) Disposable fluidic cartridge and components
JP5258835B2 (ja) ポリヌクレオチドの検出及び定量装置
US20050009174A1 (en) Detection of nucleic acid hybridization by fluorescence polarization
JP6998658B2 (ja) アミノ酸代謝異常の検出のためのデバイス、及びデバイスを使用する方法
CN1417574A (zh) 芯片上的微电子检测器
MXPA04006861A (es) Deteccion de polimorfismos de nucleotidos individuales utilizando guias de onda planas.
US20110259744A1 (en) Sensors for biomolecular detection and cell classification
JP4230430B2 (ja) 被検体評価装置および被検体評価方法
JP3642574B2 (ja) 遺伝子検出用具、検出方法及び検出用キット
WO2005064339A1 (ja) 生体サンプル判別装置、生体サンプル判別方法、及び生体サンプル判別用プレート
US20230111586A1 (en) Consumable for analyte detection
WO2006062149A1 (ja) 生体サンプル分析用プレート
WO2004108968A1 (en) Clinical array assays that include a sample quality evaluation step and compositions for use in practicing the same
JP3781687B2 (ja) 遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法
JP3781689B2 (ja) 遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法
JP2004283141A (ja) 遺伝子診断装置
JP3781688B2 (ja) 遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法
JP3783617B2 (ja) 遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法
JP3201867B2 (ja) 核酸分析方法
JP4090821B2 (ja) 遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法
JP3804538B2 (ja) 遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法
JP3783616B2 (ja) 遺伝子診断装置
JP3781686B2 (ja) 遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法
JP4265256B2 (ja) 変異遺伝子分離用電気泳動装置
JP2004157107A (ja) Dna判定装置のためのdna判定カートリッジ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060227

RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7421

Effective date: 20060314

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20081209

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090120

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090303

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20090630