JP2003213571A - 合成繊維の延伸仮撚加工方法 - Google Patents

合成繊維の延伸仮撚加工方法

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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 ヒーター温度を低下させてもヒーターガイド
上へのタール状物質の堆積・固着が少ない延伸仮撚加工
方法。 【解決手段】 加工原糸に、(A)平均分子量が100
0〜10000、プロピレンオキサイド/エチレンオキ
サイド共重合重量比が2/8〜8/2のポリオキシアル
キレングリコール共重合体(B)分子内にアルキル基
とスルホン酸基を有するスルホネート化合物の塩、高
級アルキル又はアラアルキルのポリオキシアルキレンエ
ーテル基を含有する燐酸エステル塩、二重結合を有す
るジカルボン酸又はその無水物に炭素数8〜18のオレ
フィンを付加して得られる長鎖モノオレフィン付加ジカ
ルボン酸の塩(但し及びを必須として含有)(C)
炭素数4〜20のパーフルオロアルキル基を含有するパ
ーフルオロアルキルスルホン酸又はパーフルオロアルキ
ル芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩からなる油剤を予
め付与する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、合成繊維未延伸マ
ルチフィラメント糸を延伸と同時に仮撚加工する方法に
関するものである。さらに詳しくは、本発明は合成繊維
未延伸マルチフィラメント糸を非接触ヒーター式の摩擦
仮撚加工機で加工する際、ヒーターガイドへのヒーター
タールの蓄積がなく、安定した加工性が得られる延伸仮
撚加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、延伸と同時に仮撚加工(以後DT
Y加工と称することがある)する方法としては摩擦仮撚
加工方法(以後フリクションと称することがある)が採
用されてきたが、近年その加工速度は飛躍的にスピード
アップされて800m/分以上で加工されるようになっ
てきた。
【0003】加工速度の上昇に伴って加工機のヒーター
部は、接触ヒーターから非接触高温ヒーターが主流にな
り、熱処理効率の大幅な改善によりヒーター長の短縮が
可能になってきた。また、非接触ヒーター部の温度は一
般的には450℃以上と高いため、油剤やオリゴマー等
は非接触ヒーター内のガイドに付着するものの、殆どの
有機化合物は粉末状の灰分となって飛散し、ヒーターガ
イドに堆積することは殆ど無かった。
【0004】しかし、近年、銘柄の多様化により、細繊
度糸や混繊糸の仮撚加工は、加工糸の捲縮品質を調整す
るため、非接触ヒーター温度を450℃未満にして加工
する場合が多くなってきている。このような温度条件下
では、ヒーターガイドに付着した油剤の多くは熱により
タール状物質に変化し、経時と共にヒーターガイド上に
堆積、固着し、該固着したタール状物質に走行糸が接触
することによって毛羽や断糸を誘発するという問題が発
生した。
【0005】かかるタール状物質に起因する問題を解消
する方法として、特開平7−145525号報には、ヒ
ーターガイドの曲率半径を小さくして、走行糸がヒータ
ーガイドに接触する面積を小さくする方法が提案されて
いるが、ヒータータールの付着量は少なくなるものの不
十分であった。また別の方法として、特開平8−120
539号報には、固着したタール状物質の昇華温度以
上、例えば500℃以上の温度に加熱されたヒーター
で、ヒーターガイドの付着物を清掃する方法が提案され
ているが、ヒーター清掃の度に仮撚加工を中断しなけれ
ならず、生産性の低下によるコストアップを招くため、
工業的には採用し難い。
【0006】ヒーターガイドへのタール状物質の堆積・
固着を抑制する別の方法として、加工糸用油剤自体のタ
ール化を防止する方法がある。従来、加工糸用油剤のタ
ール化防止策としては、分解揮発タイプのポリエーテル
を主成分とした油剤が一般的であり、該ポリエーテルと
しては、例えば、エチレンオキサイド又はプロピレンオ
キサイドを付加重合したものが多く提案されている(特
開昭49−31996号公報、特開昭50−15579
5号公報、特開昭50−155796号公報)。このよ
うなポリエーテルを主成分とする油剤は、エステル系油
剤に比べると油膜が強く毛羽が発生しにくいという利点
も有するが、静電気発生防止のために併用されるアニオ
ン性界面活性剤は少量でも加熱残分が多いため、ヒータ
ーガイド上にタール状固着物が形成されやすいという問
題は十分には解消されない。
【0007】このアニオン活性剤に起因する問題を解消
するため、ポリエーテル系油剤にアルキレンオキサイド
変性シリコ−ンを添加した油剤が提案されている(特公
昭63−24118号公報、特開昭60−215873
号公報)。しかし、このアルキレンオキサイド変性シリ
コ−ンを添加した油剤は、ヒーター温度が250℃以下
の接触ヒ−ター加工機の場合には、ヒータープレート上
へのタール状物質の固着は抑制されるものの、非接触ヒ
−ター加工機では非接触ヒーター温度は250℃を越え
るので、アルキレンオキサイド変性シリコ−ンは分解し
易く、ヒーターガイドへのタール状物質の固着抑制効果
は不十分である。
【0008】ヒーターガイドの温度が250℃を越えて
もタール状物質の堆積が抑制できる油剤として、特開2
001−64877号公報には、フッ素系ポリマーを添
加した油剤が提案されている。確かにこの油剤によれ
ば、ヒーターガイド上にタール状物質が付着し難くなる
ものの、一旦ガイドにタール状物質が付着し始めると、
経時と共にタール状物質は堆積・固着するため、ヒータ
ーガイドの清掃を頻繁にしなければならないという問題
は未だ満足できるレベルまでには解消されていないのが
実状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術を鑑みなされたもので、その目的とするところは、合
成繊維未延伸マルチフィラメント糸を非接触ヒーター加
工機を用いて高速度で加工するに際し、ヒーター温度を
低下させてもヒーターガイド上へのタール状物質の堆積
・固着が少なく、毛羽や断糸の発生が抑制されて安定し
た加工性が得られる延伸仮撚加工方法を提供することに
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記目的を
達成するために鋭意検討した結果、加熱残渣の少ないポ
リエーテルベース油剤に特定のアニオン性化合物と特定
なフッ素系界面活性剤を併用すれば、非接触ヒーター温
度を400℃以下にしてもヒーターガイド上にタール状
物質が堆積・固着せず、毛羽や断糸の発生が極めて少な
く、安定した延伸仮撚加工が可能となることを見いだ
し、本発明に到達した。
【0011】かくして、本発明によれば、「第1ヒ−タ
ーが上段と下段からなる非接触ヒ-ター加工機を用い、
該ヒーターの上段及び/又は下段のヒーター温度を25
0〜400℃に維持して合成繊維未延伸マルチフィラメ
ント糸を延伸仮撚加工するに際し、該合成繊維未延伸マ
ルチフィラメント糸に下記(A)〜(C)成分を必須成
分として含有する油剤を予め付与せしめたものを用いる
ことを特徴とする合成繊維の延伸仮撚加工方法。 (A)プロピレンオキサイド(PO)とエチレンオキサ
イド(EO)との共重合体であって、平均分子量が10
00〜10000、PO/EO共重合重量比が20/8
0〜80/20であるポリオキシアルキレングリコール
共重合体:60〜99.5重量% (B)下記〜の合計のアニオン成分(但し及び
を必須として含有):0.5〜2.0重量% 分子内に少なくとも1ケ以上のアルキル基とスルホ
ン酸基を有するスルホネート化合物のアルカリ金属塩、
アンモニウム塩又は有機アミン塩 高級アルキル又はアラアルキルのポリオキシアルキ
レンエーテル基を含有する燐酸エステルのアルカリ金属
塩、アンモニウム塩又は有機アミン塩 二重結合を有するジカルボン酸又はその無水物に炭
素数8〜18のオレフィンを付加して得られる長鎖モノ
オレフィン付加ジカルボン酸のアルカリ金属塩、アンモ
ニウム塩又は有機アミン塩 (C)炭素数4〜20のパーフルオロアルキル基を含有
するパーフルオロアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩
又はパーフルオロアルキル芳香族スルホン酸のアルカリ
金属塩0.01〜0.1重量%」 が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。本発明が対象とする合成繊維未延伸
マルチフィラメント糸は、延伸仮撚加工できるものであ
れば任意であり、例えば、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチ
レンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテ
レフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカ
ルボキシレート等のポリエステル系合成繊維、ポリ−ε
−カプラミド、ポリヘキサメチレンアジパミド等のポリ
アミド系合成繊維、ポリメタフェニレンイソフタラミド
等のアラミド系合成繊維をあげることができ、構成ポリ
マーの化学構造は特に限定されない。
【0013】本発明で用いられる合成繊維未延伸マルチ
フィラメント糸には、予め(A)〜(C)を必須成分と
して含有する油剤を付与していることが大切である。こ
こで(A)成分であるポリオキシアルキレングリコール
共重合体は、高温時の平滑性をより向上させ、毛羽や断
糸の発生防止のために使用するもので、エチレンオキサ
イド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)の共重合
体であって、平均分子量が1000〜10000、好ま
しくは2000〜6000の範囲で、プロピレンオキサ
イド(PO)とエチレンオキサイド(EO)の共重合重
量比(PO/EO)が20/80〜80/20、好まし
くは30/70〜70/30である、ランダムあるいは
ブロック型の共重合体である。勿論、このポリオキシア
ルキレングリコール共重合体の片末端あるいは両末端
は、アルキル基などでエーテル、エステル、チオエーテ
ル、アミノエーテル(−NR−)などの結合を介して封
鎖されていてもよい。
【0014】かかるポリオキシアルキレングリコール共
重合体は、従来公知の方法でエチレンオキサイド及びプ
ロピレンオキサイドを共重合することにより得られる
が、通常はアルキレンオキサイドと反応できるような活
性水素を少なくとも1ケ以上有する化合物を用い、これ
にエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを共重
合することにより製造される。ここで活性水素を有する
化合物としては、活性水素を有する基が水酸基ならば1
価以上のアルコール類、カルボキシル基ならば1価以上
の塩基酸類、そしてアミノ基であれば1価以上のアミノ
化合物などを挙げることができる。なかでもアルコール
類を用いたものはヒータータールの発生が少なくなるの
で好ましい。
【0015】かかる(A)成分の平均分子量が1000
未満では熱安定性に乏しく、分解揮散して平滑性が不十
分となるだけでなく、摩擦仮撚具に使用されるウレタン
ゴムの膨潤性も悪化するので使用することは難しい。一
方、平均分子量が10000を越える場合には、粘性ア
ップにより平滑性が低下するため不適当である。またエ
チレンオキサイドの共重合比が80重量%を越えても、
摩擦仮撚具に使用されるウレタンゴムの膨潤性が悪化し
易いので使用することは難しく、逆にエチレンオキサイ
ドの共重合比が20重量%未満の場合では、自己乳化性
が低下するため、油剤を乳化するために必要な乳化剤が
多くなり、仮撚加工性が低下するので好ましくない。
【0016】さらに油剤中における(A)成分の含有量
は、60〜99.5重量%、好ましくは80〜99重量
%である必要があり、この範囲未満の場合には高温時の
平滑性が低下し、逆にこの範囲を越える場合には、後述
するアニオン成分の含有量が不十分となって本発明の目
的が達成できなくなる。
【0017】次に本発明で用いられる油剤の(B)成分
は、最少量でも制電性を維持して延伸仮撚加工安定性を
向上させるために使用するアニオン成分であり、下記
及びを必須として含有し、〜の合計の含有量は
0.5〜2.0重量%、好ましくは0.8〜1.5重量
%とする必要がある。該アニオン成分の含有量が0.5
重量%未満の場合には制電性が不十分となり、一方、
2.0重量%を越える場合にはヒーターガイド上へのタ
ール状物質の堆積・固着が多くなり、毛羽や断糸の発生
が増加するので好ましくない。
【0018】ここで、のアニオン成分は、分子内に少
なくとも1ケ以上のアルキル基とスルホン酸基を有する
スルホネート化合物のアルカリ金属塩、アンモニウム塩
又は有機アミン塩であり、例えば炭素数が8〜18のア
ルキル基を含有するアルキルスルホン酸、アルキルベン
ゼンスルホン酸、アルキルフェノールスルホン酸、モノ
又はジアルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェ
ニルエーテルスルホン酸、アルキルヒドロキシフェニル
エーテルスルホン酸などのアルカリ金属塩、アミン塩、
有機アミン塩を例示することができる。また炭素数が6
〜14のアルキルフェノキシポリオキシアルキレンのプ
ロピルスルホネート塩、2−ヒドロキシオプロピルスル
ホネート塩、スルホ酢酸エステルのスルホネート塩、さ
らには炭素数が8〜18のアルキル又はアルケニルポリ
オキシアルキレンアルキルエーテルのスルホネート塩や
スルホ酢酸エステル、炭素数が8〜18のアルコキシ又
はアルケノキシスルホアルキルエーテル、アルコキシ又
はアルケノキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネー
ト、アルキル又はアルケニルカルボキシ−2−ヒドロキ
シプロピルスルホネート、スルホアルキルエステル、ス
ルホアセテートなどのアンモニウム塩、有機アミン塩、
アルカリ金属塩を挙げることができる。しかし何等これ
らに限定するものではなく、分子内に少なくとも1ケ以
上のアルキル基とスルホン酸基を有するスルホネート化
合物のアミン塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩であれ
ばよいが、塩の種類としては通常アルカリ金属塩が最も
好ましく、ついで有機アミン塩、アンモニウム塩の順で
ある。
【0019】次にのアニオン成分は、高級アルキル又
はアラアルキルのポリオキシアルキレンエーテル基を含
有する燐酸エステルのアルカリ金属塩、アンモニウム塩
又は有機アミン塩であり、例えば下記式(化1)で表さ
れるものを例示することができる。
【0020】
【化1】
【0021】式中、Rは炭素数8〜18の飽和若しくは
不飽和の脂肪族基又は炭素数が1〜9のアルキル置換芳
香族基を示し、R’は水素原子又はメチル基を示すが、
水素原子とメチル基が混在するすなわちプロピレンオキ
シド単位とエチレンオキシド単位の共重合体になってい
てもよい。nは0〜15の正の整数、mは1又は2、X
はアンモニウム塩、有機アミン塩、Na、K、Liなど
のアルカリ金属塩を示す。但し、n=0の場合にはRは
炭素数が1〜9のアルキル置換芳香基ではない。
【0022】具体的にはn=0の場合には、公知の高級
アルキル基を含むアルキル燐酸部分エステルの塩を示
し、オクチル、ラウリル、オレイル燐酸部分エステルの
アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、ナトリウム
塩、カリウム塩、リチウム塩などが例示される。また、
高級アルコールやアルキルフェノールにエチレンオキサ
イドあるいはプロピレンオキサイド、さらにはエチレン
オキサイドとプロピレンオキサイドとを付加したポリオ
キシアルキレンエーテルの燐酸部分エステルの塩類も例
示される。これらのなかでも有効な化合物としては、高
級アルコール又はアルキル基の置換された芳香族フェノ
ール化合物にエチレンオキサイドやプロピレンオキサイ
ドが付加されたポリオキシアルキレンエーテルから得ら
れる燐酸部分エステルのナトリウム又はカリウムなどの
アルカリ金属塩が好ましく、ついでこれらの有機アミン
塩、アンモニウム塩の順である。
【0023】本発明においては、アニオン成分としては
上記及びを必須とするが、さらに併用してもよい
のアニオン成分は、二重結合を有するジカルボン酸又は
その無水物に炭素数8〜18のオレフィンを付加して得
られる長鎖モノオレフィン付加ジカルボン酸のアルカリ
金属塩、有機アミン塩又はアンモニウム塩であり、これ
らのジカルボン酸の片方は、分子内に1ケ以上の水酸基
を有する化合物とエステルを形成していても構わない。
【0024】ここで二重結合を有するジカルボン酸又は
その無水物としては、例えばマレイン酸、イタコン酸、
シトラコン酸、グルタコン酸又はこれらの酸無水物が例
示されるが、なかでも無水マレイン酸が好ましい。そし
てこれらのジカルボン酸又は酸無水物に付加反応させる
炭素数8〜18のオレフィンとしては、例えばオクテ
ン、イソオクテン、ノネン、ドデセン、ペンタデセン、
オクタデセンなどが例示されるが、この両者を不活性ガ
ス中で付加反応させることにより長鎖モノオレフィン付
加ジカルボン酸を得ることができる。さらに該付加生成
物を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金
属水酸化物で中和するか、アンモニア又はトリエタノー
ルアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミ
ン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ラウリルア
ミン等のアルキルアミンなどを用いて中和させることに
よりのアニオン成分を製造することができる。
【0025】さらに上記モノオレフィン付加ジカルボン
酸又はその酸無水物にヒドロキシル基を有する化合物を
反応させる際には、炭素数4〜18の飽和若しくは不飽
和のアルコール例えばブタノール、オクタノール、ラウ
リルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアル
コールなどを用いることができ、その他ヤシ油、牛脂を
原料ソースとする天然アルコール、チーグラ法、オキソ
法などによる合成アルコールなども使用できる。またヒ
ドロキシル基を2ケ以上有する化合物としてはエチレン
グリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチル
グリコール、プロパンジオール、トリメチロールプロパ
ン、ペンタエリスリトールなどがある。また1分子内に
ヒドロキシル基とカルボキシル基を有する化合物、すな
わちオキシカルボン酸としてはグリコール酸、乳酸、2
−オキシヘキサン酸、オキシブテン酸、リシノレイン酸
など、その他リンゴ酸、クエン酸、グリセリン酸、酒石
酸などが挙げられる。さらにオキシ酸のアルコールとの
エステル例えばリシノレイン酸メチルなども用いること
ができる。このようにして得られた該エステル誘導体は
分子内に少なくとも1ケ以上のカルボキシル基を有し、
該カルボキシル基はアルカリ金属塩、アンモニウム塩、
有機アミン塩などに中和される。これらの中ではK塩、
Na塩が好ましい。
【0026】本発明においては、上記(B)のアニオン
成分として、とを必須として含有させることによ
り、0.5〜2.0重量%といった少量のアニオン成分
でも十分高速延伸仮撚加工ができるための制電性を発揮
し、ヒータータールも低減できる。なお、上記との
併用効果を十分発現させるためには、夫々の成分を少な
くとも0.2重量%、好ましくは0.3重量%含有させ
ることが好ましい。
【0027】次に本発明で用いられる油剤の(C)成分
は、分子内に炭素数が4〜20のパーフルオロアルキル
基を含有するパーフルオロアルキルスルホン酸又はパー
フルオロアルキル芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩で
ある。好ましく用いられる化合物としては、パーフルオ
ロオクチルスルホン酸、パーフルオロノニルスルホン
酸、パーフルオロオクチルベンゼンスルホン酸、パーフ
ルオロノニルベンゼンスルホン酸、ビスパーフルオロブ
チルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸のアルカリ
金属塩特にナトリウム塩を例示することができる。
【0028】油剤中における(C)成分の含有量は、
0.01〜0.10重量%、好ましくは0.03〜0.
1重量%の範囲である必要があり、この範囲未満の場合
にはヒーター上のタール堆積抑制効果が不十分となり、
一方、0.10重量%を越える場合には油剤のコストが
増大するので好ましくない。
【0029】なお、本発明で用いられる上記油剤には、
上記成分の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で、従
来から使用されているエステルやエーテルエステル等の
平滑剤、ノニオン性界面活性剤、酸化防止剤など任意の
成分を配合してもよい。
【0030】上記油剤を未延伸マルチフィラメントに付
与する方法は特に限定されないが、通常該油剤を濃度5
〜20重量%の水性エマルジョンとして付与するのが適
当である。この際、付与する方法としては、オイリング
ローラー方式、ノズルを用いる方式等、従来採用されて
いるいずれの方式であってもよい。
【0031】上記油剤の未延伸マルチフィラメントへの
付与量(油剤有効成分として)は、フィラメント重量を
基準として0.2〜0.5重量%、好ましくは0.3〜
0.4重量%の範囲にする必要がある。付与量が0.5
重量%を越える場合には、未延伸マルチフィラメントの
巻取り性には特に問題を生じないが、得られたフィラメ
ントを摩擦仮撚加工する際にヒーターガイドにヒーター
タールが付着して安定に摩擦仮撚加工できなくなる恐れ
がある。一方、付与量が0.2重量%未満の場合には、
フィラメントの集束性及び潤滑性が低下して製糸時にお
ける未延伸マルチフィラメントの巻取り性が低下するだ
けでなく、摩擦仮撚加工時の加工性も低下しやすくな
る。
【0032】本発明においては、上述の油剤が付与され
た未延伸マルチフィラメント糸を、第1ヒ−ターが上段
と下段からなる非接触ヒーターである仮撚加工機を用
い、該ヒーターの上段及び/又は下段のヒーター温度を
250〜400℃に維持して延伸仮撚加工する。ここ
で、上段及び下段のヒーターがいずれも250℃未満の
場合には十分な捲縮を付与することができなくなるので
好ましくなく、一方、いずれも400℃を越える場合に
は本発明の油剤を用いなくともヒータータールの蓄積は
少なくなる。なお、本発明では、仮撚加工方式は摩擦仮
撚加工を対象としているが、その方式はディスク、ベル
トのいずれによるフリクション方式であってもよい。加
工速度は800m/分以上、好ましくは1000m/分
以上が適当である。
【0033】
【実施例】以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的
に説明する。なお、実施例における各評価項目は下記の
方法で測定した。 <ヒーターガイド上のタールの発生状況>3週間加工後
のヒーター上に発生したタール量の大小を肉眼判定し、
1〜5級の判定を行った。1級(不可)〜5級(良) <加工安定性>加工中における毛羽の発生の大小ならび
に断糸率、捲縮性などから、○良好、△やや劣る、×劣
るの3段階で示した。
【0034】[実施例1]固有粘度が0.64のポリエチ
レンテレフタレートを紡糸速度3100m/分で溶融紡
糸し、その際、走行糸条に表1記載の組成の油剤(各成
分は重量部で表示)を濃度10重量%の水系エマルジョ
ンとして純分付着量が0.35重量%になるように付着
させた。得られた伸度150%、丸断面の144デシテ
ックス/36フィラメントの未延伸マルチフィラメント
糸を、延伸同時仮撚装置(糸条入側の非接触式第1ヒー
タの上段ヒータHAの長さを0.3m、設定温度を55
0℃、熱処理時間を0.018秒とし、糸条出側の非接
触式第1ヒータの下段ヒータHBの長さを0.7m、設
定温度を350℃、熱処理時間を0.042秒)によ
り、延伸倍率1.78、加工速度1000m/分で延伸
仮撚加工を施し、83デシテックス/36フィラメント
の延伸仮撚加工糸を得た。
【0035】その評価結果を表1に示す。なお、表中C
成分の略称CAはパーフルオロアルキル(平均炭素数
9)ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、CBはパーフル
オロアルキル(平均炭素数8)スルホン酸カリウム塩を
表す。
【0036】
【表1】
【0037】
【発明の効果】以上に詳述した本発明の加工方法によれ
ば、非接触式で、上段及び下段からなる第1ヒーターの
いずれかのヒーター温度を400℃以下にしても、ヒー
ターガイドへのヒータータールの蓄積がなく安定した延
伸仮撚加工性が得られる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1ヒ−ターが上段と下段からなる非接
    触ヒ-ター加工機を用い、該ヒーターの上段及び/又は
    下段のヒーター温度を250〜400℃に維持して合成
    繊維未延伸マルチフィラメント糸を延伸仮撚加工するに
    際し、該合成繊維未延伸マルチフィラメント糸に下記
    (A)〜(C)成分を必須成分として含有する油剤を予
    め付与せしめたものを用いることを特徴とする合成繊維
    の延伸仮撚加工方法。 (A)プロピレンオキサイド(PO)とエチレンオキサ
    イド(EO)との共重合体であって、平均分子量が10
    00〜10000、PO/EO共重合重量比が20/8
    0〜80/20であるポリオキシアルキレングリコール
    共重合体:60〜99.5重量% (B)下記〜の合計のアニオン成分(但し及び
    を必須として含有):0.5〜2.0重量% 分子内に少なくとも1ケ以上のアルキル基とスルホ
    ン酸基を有するスルホネート化合物のアルカリ金属塩、
    アンモニウム塩又は有機アミン塩 高級アルキル又はアラアルキルのポリオキシアルキ
    レンエーテル基を含有する燐酸エステルのアルカリ金属
    塩、アンモニウム塩又は有機アミン塩 二重結合を有するジカルボン酸又はその無水物に炭
    素数8〜18のオレフィンを付加して得られる長鎖モノ
    オレフィン付加ジカルボン酸のアルカリ金属塩、アンモ
    ニウム塩又は有機アミン塩 (C)炭素数4〜20のパーフルオロアルキル基を含有
    するパーフルオロアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩
    又はパーフルオロアルキル芳香族スルホン酸のアルカリ
    金属塩0.01〜0.1重量%
  2. 【請求項2】 該油剤の、分子内に少なくとも1ケ以上
    のアルキル基とスルホン酸基を有するスルホネート化合
    物のアルカリ金属塩、アンモニウム塩又は有機アミン塩
    の含有量が0.2重量%以上で、高級アルキル又はアラ
    アルキルのポリオキシアルキレンエーテル基を含有する
    燐酸エステルのアルカリ金属塩、アンモニウム塩又は有
    機アミン塩の含有量が0.2重量%以上である請求項1
    記載の合成繊維の延伸仮撚加工方法。
  3. 【請求項3】 合成繊維未延伸マルチフィラメント糸へ
    の油剤の付着量が0.2〜0.5重量%である合成繊維
    の延伸仮撚加工方法。
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