JP2003212548A - 鉄含有溶液の精製方法 - Google Patents
鉄含有溶液の精製方法Info
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 高性能ソフトフェライト用原料酸化鉄の製造
に適したP等の不純物含有量の低い鉄含有溶液を、含水
酸化鉄等の沈殿物の発生しない手段で実現する鉄含有溶
液の精製方法を提供する。 【解決手段】 鉄を含有する溶液のpHを−2以上、0.
5 以下に調整した後、該溶液を陰イオン吸着キレート樹
脂と接触させてリンを除去する。前記鉄含有溶液中の鉄
濃度は5〜25質量%であることが好ましい。
に適したP等の不純物含有量の低い鉄含有溶液を、含水
酸化鉄等の沈殿物の発生しない手段で実現する鉄含有溶
液の精製方法を提供する。 【解決手段】 鉄を含有する溶液のpHを−2以上、0.
5 以下に調整した後、該溶液を陰イオン吸着キレート樹
脂と接触させてリンを除去する。前記鉄含有溶液中の鉄
濃度は5〜25質量%であることが好ましい。
Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄含有溶液の精製
方法に関し、詳しくは、鋼板等の鋼材の塩酸酸洗廃液や
塩化第二鉄エッチング廃液からCu、Ni等を回収する過程
で得られる塩化第一鉄溶液から、P含有量の少ない塩化
鉄溶液を製造する鉄含有溶液の精製方法に関する。 【0002】 【従来の技術】鋼板の酸洗廃液やエッチング廃液の再生
過程で発生する塩化第一鉄溶液は、通常SiO2、アルミニ
ウム、リン、クロム等の不純物を含有しており、この廃
液を焙焼して酸化鉄を製造した場合、これらの不純物が
酸化鉄中に残存する。このような酸化鉄をフェライト原
料用として使用すると、残留不純物が磁気特性を低下さ
せる原因となる。そこで、低磁気損失、高透磁率、高飽
和磁束密度などの優れた磁気特性を要求される高性能ソ
フトフェライト材料に使用する酸化鉄は、SiO2、リンの
ように結晶粒を不均一化あるいは粗大化させるような微
量不純物を特に低減しなければならない。 【0003】SiO2やリンの含有量の低い酸化鉄を製造す
る方法として、特開平3−5324号公報では鉄、鉄化合物
を廃酸中に添加し、pH調整(pH=2〜5)を行った
後、酸素あるいは酸素含有気体を吹き込んで含水酸化鉄
沈澱を生成させ、その含水酸化鉄の吸着効果を利用して
廃酸中のSiO2、リン等の不純物を除去している。また、
特開平5−310430号公報では、酸素含有気体を吹き込む
と同時にアルカリを添加し、酸素含有気体の吹き込みに
伴うSiO2の再溶出の問題を解決することで、廃酸中のSi
O2、リン等の不純物を効率良く除去することを提案して
いる。 【0004】しかしながら、これらの従来技術では、p
H調整および酸素含有気体の吹き込みによって溶液中の
鉄分の 0.5〜15%を含水酸化鉄等の沈殿物として、不純
物と共沈・分離する必要があるため、鉄分のロスが多
く、また、分離に長時間および大規模な設備を必要とし
た。さらに、分離後の含水酸化鉄は廃棄物として処理が
必要なため、処理コスト削減および資源の有効利用の観
点から沈殿物の低減が求められていた。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】以上のように、廃酸中
の不純物除去に関して、従来技術である特開平3−5324
号公報や特開平5−310430号公報の開示技術に対して、
鉄分の有効活用と廃棄物量低減の観点から改良が求めら
れていた。そこで、本発明は、廃酸中の不純物除去技術
における上述の問題点を解決し、リン等の不純物含有量
の低い鉄含有溶液を、含水酸化鉄等の沈殿物の発生しな
い手段で実現する鉄含有溶液の精製方法を提供すること
を目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は、フェライト用
高純度酸化鉄として要求される不純物レベルであるP≦
10ppm(酸化鉄換算の含有量)を、廃棄物の少ない方法
で実現する手段を種々検討した。この結果、SiO2は通常
の鋼材の酸洗廃酸を用いれば、廃酸の加熱・濃縮を行う
だけで濾別可能な凝集体となり、大規模な沈澱・分離設
備を用いなくても 90ppm以下まで低減可能であるが、一
方、リンはSiO2のような加熱・濃縮処理では除去するこ
とができず、他の方法を用いる必要があることが判っ
た。なお、本発明では、ppm は質量ppm を意味する。 【0007】従来技術である沈澱・濾過法の場合、溶液
のpHを2〜5に調整することで、リンは不溶性のリン
酸鉄となり沈澱・濾別できたが、このpH域では同時に
含水酸化鉄の沈殿物が大量に発生する。そこで、本発明
では、リンの除去に際して、沈殿物として分離するので
はなく、溶液に溶けた状態で分離することに着目して鋭
意検討した結果、溶液を特定のpH域に調整し、陰イオ
ン吸着キレート樹脂に接触させることで、沈殿物を生じ
ることなくリンを低減できることを見出し、本発明をな
すに至った。 【0008】すなわち、本発明は、鉄を含有する溶液の
pHを−2以上、0.5 以下に調整した後、該溶液を陰イ
オン吸着キレート樹脂と接触させてリンを除去すること
を特徴とする鉄含有溶液の精製方法である。本発明で
は、前記鉄含有溶液中の鉄濃度が5〜25質量%であるこ
とが好ましい。 【0009】 【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態につい
て説明する。まず、本発明の精製対象となる鉄を含有す
る溶液は、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄等の溶液であるが、
特にフェライト用酸化鉄の工業的規模での製造に適用す
る場合は、鋼材の冷延廃酸やエッチング廃酸の再生過程
で得られる塩化第一鉄溶液などが有利である。 【0010】本発明の精製方法では、鉄を含有する溶液
のpHを−2〜 0.5の範囲に調整する必要がある。pH
が 0.5を超えるとリンと鉄分から不溶化物(リン酸鉄)
が生成して陰イオン吸着キレート樹脂への吸着効率が低
下し、さらにpHが 1.5を超えると、含水酸化鉄の沈殿
物が生じるため、鉄のロスが多くなる。一方、pHが−
2未満では、陰イオン吸着キレート樹脂の耐久性が低下
し、樹脂中に担持する金属成分が溶離して精製溶液を汚
染するなど、好ましくない。 【0011】リン除去には、pHを調整した鉄含有溶液
と陰イオン吸着キレート樹脂を接触させる方法を用い
る。陰イオン吸着キレート樹脂は、イオン交換樹脂のイ
オン交換基の代わりに、金属イオンとキレートを作る、
イミノニ酢酸やポリアミンなどを導入した樹脂であり、
キレート形成することによって特定の金属イオンを捕捉
するものである。陰イオン吸着キレート樹脂はイオン交
換樹脂と異なり、特定の金属イオンに対する選択性が大
きいことが特徴で、陰イオン吸着キレート樹脂であれば
銘柄によらず多少のリン除去効果が得られるが、特に、
ユニチカ(株)製陰イオン吸着キレート樹脂であるユニ
セレックUR−3700Sなどが好適である。また、酸性域
での繰返し使用による耐久性の観点からは、樹脂母体と
してポリフェノール系樹脂やスチレン系樹脂を用いたも
のが好ましい。一部の陰イオン交換樹脂でもリン除去効
果は見られるが、塩化鉄溶液に用いた場合、Cl- などの
他の陰イオンが高濃度で存在するためにリン除去効率が
低下する。Cl- の影響を受けず、リンのみを選択的に除
去できる陰イオン吸着キレート樹脂が最適である。 【0012】被処理溶液と陰イオン吸着キレート樹脂を
接触させる方法としては、溶液に陰イオン吸着キレート
樹脂を添加して攪拌するバッチ法と、陰イオン吸着キレ
ート樹脂を塔に充填して溶液を通す連続法がある。後者
の方が操作性に優れ、処理液中のリン濃度を低くできる
ため、好ましい。本発明の方法で精製される鉄含有溶液
は、フェライト用高純度酸化鉄の製造に適用する場合、
周知のルスナー式噴霧焙焼設備が利用できることから、
塩化第一鉄溶液が有利である。溶液中の鉄濃度は5〜25
質量%が好ましい。鉄濃度が25質量%を超えると、塩化
鉄の結晶が発生しやすくなり、後工程でトラブルの原因
となる。5質量%未満でもリン除去効果は得られるが、
酸化鉄製造時の生産効率が低くなるため、実用的でな
い。 【0013】フェライト用高純度酸化鉄の原料として用
いるためには、P≦ 10ppmとともに、SiO2≦ 90ppmとす
る必要があるが、周知のルスナー式噴霧焙焼法で一般に
利用されている廃酸の加熱・濃縮工程を経て、珪藻土フ
ィルタなどの脱硅設備を通過するだけで、SiO2≦ 90ppm
を得ることができる。従って、本発明の方法を既存のル
スナー式設備と組み合わせることで、SiO2≦ 90ppm、P
≦ 10ppmのフェライト原料用高純度酸化鉄を製造するこ
とができる。また、本発明の方法は、pH調整・凝集沈
降法、結晶化精製法、溶媒抽出法などの周知の酸溶液精
製法と組み合わせることで、超高純度酸化鉄の製造に利
用することもできる。また、酸化鉄の製造方法として
も、上記のルスナー式噴霧焙焼法に限定されるものでは
なく、流動床焙焼法、湿式合成法、水熱合成法など周知
の酸化鉄製造方法を用いることができる。 【0014】本発明によるリン低減機構については現在
詳しく調査中であるが、強酸性溶液中でリンが陰イオン
PO4 3- の形態で存在するため、陰イオン吸着キレート樹
脂に選択的に吸着し、分離されるものと考えられる。た
だし、鉄濃度の高い酸溶液中では、pH> 0.5でリンと
鉄から不溶化物(リン酸鉄)が生成して陰イオン吸着キ
レート樹脂によるリン吸着効果が低下し、酸化鉄を製造
した時のP≦ 10ppmが得られなくなるため、溶液のpH
を 0.5以下に調整することがきわめて重要である。 【0015】以上の方法を用いれば、酸化鉄換算でP≦
10ppmの高純度酸化鉄の製造に使用可能な高純度鉄含有
溶液を、沈澱物を生じることなく、製造することができ
る。 【0016】 【実施例】製鉄所の鋼材酸洗工場より得られる通常の鋼
材の酸洗廃酸を用いて精製処理を実施した。酸洗廃酸の
鉄および不純物濃度は、表1の被処理液に示すように、
溶液分析値でtotal Fe=16質量%、SiO2=102ppm、P=
27ppm、pH=−0.9 であった。これを、ルスナー式噴
霧焙焼設備の加熱・濃縮設備でtotal Fe=24質量%まで
濃縮し、珪藻土フィルタを通じてSiO2を除去した。脱硅
後の濃縮廃酸の溶液分析値は、表1の比較例1に示すよ
うに、total Fe=24質量%、P= 39ppm、pH=−1で
あり、酸化鉄換算でSiO2≦ 90ppmを満足するものであっ
た。なお、溶液の分析方法は、total Feは滴定法、P、
SiO2はICP(誘導結合プラズマ分光分析法)を用い
た。 【0017】脱硅後の濃縮廃酸を用いて、アンモニア水
または塩酸と純水を用いてpHおよび鉄濃度を調整した
塩化鉄溶液を作製し、溶液 100mlに対して陰イオン吸着
キレート樹脂を3g 添加して、常温で24時間振とうし
た。振とう後の溶液を樹脂と分離し、溶液の鉄濃度およ
び不純物濃度を分析した。表1の実施例1〜4に示すよ
うに、本発明のpH範囲の溶液を用いた場合、キレート
樹脂との接触により酸化鉄換算でP≦ 10ppmまで低減で
きることが確認された。また、加熱・濃縮・脱硅処理を
施す前の廃酸を用いて同様の方法で溶液を精製した結
果、実施例5に示すように、処理後の液と同様にP除去
効果が得られた。 【0018】本発明を外れる比較例として、キレート樹
脂と接触しない場合(比較例1)、キレート樹脂の代わ
りに陰イオン交換樹脂(住友化学社製A113 )を用いた
場合(比較例2)、溶液のpHが 0.5より高い場合(比
較例3)について、その他の条件は実施例と同様にして
溶液を処理し、成分分析した。比較例1〜3に示すよう
に、いずれの方法でもP≦ 10ppmを得ることはできなか
った。 【0019】 【表1】【0020】 【発明の効果】本発明によれば、鉄含有溶液中のリン除
去を行う際に、含水酸化鉄のような沈殿物を生成するこ
となく、リンを除去することができる。この方法を鋼材
の酸洗廃酸等の塩化第一鉄溶液に適用することで、フェ
ライト用高純度酸化鉄の製造過程で、鉄分の有効利用と
廃棄物の減量、設備の小型化を図ることができる。
方法に関し、詳しくは、鋼板等の鋼材の塩酸酸洗廃液や
塩化第二鉄エッチング廃液からCu、Ni等を回収する過程
で得られる塩化第一鉄溶液から、P含有量の少ない塩化
鉄溶液を製造する鉄含有溶液の精製方法に関する。 【0002】 【従来の技術】鋼板の酸洗廃液やエッチング廃液の再生
過程で発生する塩化第一鉄溶液は、通常SiO2、アルミニ
ウム、リン、クロム等の不純物を含有しており、この廃
液を焙焼して酸化鉄を製造した場合、これらの不純物が
酸化鉄中に残存する。このような酸化鉄をフェライト原
料用として使用すると、残留不純物が磁気特性を低下さ
せる原因となる。そこで、低磁気損失、高透磁率、高飽
和磁束密度などの優れた磁気特性を要求される高性能ソ
フトフェライト材料に使用する酸化鉄は、SiO2、リンの
ように結晶粒を不均一化あるいは粗大化させるような微
量不純物を特に低減しなければならない。 【0003】SiO2やリンの含有量の低い酸化鉄を製造す
る方法として、特開平3−5324号公報では鉄、鉄化合物
を廃酸中に添加し、pH調整(pH=2〜5)を行った
後、酸素あるいは酸素含有気体を吹き込んで含水酸化鉄
沈澱を生成させ、その含水酸化鉄の吸着効果を利用して
廃酸中のSiO2、リン等の不純物を除去している。また、
特開平5−310430号公報では、酸素含有気体を吹き込む
と同時にアルカリを添加し、酸素含有気体の吹き込みに
伴うSiO2の再溶出の問題を解決することで、廃酸中のSi
O2、リン等の不純物を効率良く除去することを提案して
いる。 【0004】しかしながら、これらの従来技術では、p
H調整および酸素含有気体の吹き込みによって溶液中の
鉄分の 0.5〜15%を含水酸化鉄等の沈殿物として、不純
物と共沈・分離する必要があるため、鉄分のロスが多
く、また、分離に長時間および大規模な設備を必要とし
た。さらに、分離後の含水酸化鉄は廃棄物として処理が
必要なため、処理コスト削減および資源の有効利用の観
点から沈殿物の低減が求められていた。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】以上のように、廃酸中
の不純物除去に関して、従来技術である特開平3−5324
号公報や特開平5−310430号公報の開示技術に対して、
鉄分の有効活用と廃棄物量低減の観点から改良が求めら
れていた。そこで、本発明は、廃酸中の不純物除去技術
における上述の問題点を解決し、リン等の不純物含有量
の低い鉄含有溶液を、含水酸化鉄等の沈殿物の発生しな
い手段で実現する鉄含有溶液の精製方法を提供すること
を目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は、フェライト用
高純度酸化鉄として要求される不純物レベルであるP≦
10ppm(酸化鉄換算の含有量)を、廃棄物の少ない方法
で実現する手段を種々検討した。この結果、SiO2は通常
の鋼材の酸洗廃酸を用いれば、廃酸の加熱・濃縮を行う
だけで濾別可能な凝集体となり、大規模な沈澱・分離設
備を用いなくても 90ppm以下まで低減可能であるが、一
方、リンはSiO2のような加熱・濃縮処理では除去するこ
とができず、他の方法を用いる必要があることが判っ
た。なお、本発明では、ppm は質量ppm を意味する。 【0007】従来技術である沈澱・濾過法の場合、溶液
のpHを2〜5に調整することで、リンは不溶性のリン
酸鉄となり沈澱・濾別できたが、このpH域では同時に
含水酸化鉄の沈殿物が大量に発生する。そこで、本発明
では、リンの除去に際して、沈殿物として分離するので
はなく、溶液に溶けた状態で分離することに着目して鋭
意検討した結果、溶液を特定のpH域に調整し、陰イオ
ン吸着キレート樹脂に接触させることで、沈殿物を生じ
ることなくリンを低減できることを見出し、本発明をな
すに至った。 【0008】すなわち、本発明は、鉄を含有する溶液の
pHを−2以上、0.5 以下に調整した後、該溶液を陰イ
オン吸着キレート樹脂と接触させてリンを除去すること
を特徴とする鉄含有溶液の精製方法である。本発明で
は、前記鉄含有溶液中の鉄濃度が5〜25質量%であるこ
とが好ましい。 【0009】 【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態につい
て説明する。まず、本発明の精製対象となる鉄を含有す
る溶液は、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄等の溶液であるが、
特にフェライト用酸化鉄の工業的規模での製造に適用す
る場合は、鋼材の冷延廃酸やエッチング廃酸の再生過程
で得られる塩化第一鉄溶液などが有利である。 【0010】本発明の精製方法では、鉄を含有する溶液
のpHを−2〜 0.5の範囲に調整する必要がある。pH
が 0.5を超えるとリンと鉄分から不溶化物(リン酸鉄)
が生成して陰イオン吸着キレート樹脂への吸着効率が低
下し、さらにpHが 1.5を超えると、含水酸化鉄の沈殿
物が生じるため、鉄のロスが多くなる。一方、pHが−
2未満では、陰イオン吸着キレート樹脂の耐久性が低下
し、樹脂中に担持する金属成分が溶離して精製溶液を汚
染するなど、好ましくない。 【0011】リン除去には、pHを調整した鉄含有溶液
と陰イオン吸着キレート樹脂を接触させる方法を用い
る。陰イオン吸着キレート樹脂は、イオン交換樹脂のイ
オン交換基の代わりに、金属イオンとキレートを作る、
イミノニ酢酸やポリアミンなどを導入した樹脂であり、
キレート形成することによって特定の金属イオンを捕捉
するものである。陰イオン吸着キレート樹脂はイオン交
換樹脂と異なり、特定の金属イオンに対する選択性が大
きいことが特徴で、陰イオン吸着キレート樹脂であれば
銘柄によらず多少のリン除去効果が得られるが、特に、
ユニチカ(株)製陰イオン吸着キレート樹脂であるユニ
セレックUR−3700Sなどが好適である。また、酸性域
での繰返し使用による耐久性の観点からは、樹脂母体と
してポリフェノール系樹脂やスチレン系樹脂を用いたも
のが好ましい。一部の陰イオン交換樹脂でもリン除去効
果は見られるが、塩化鉄溶液に用いた場合、Cl- などの
他の陰イオンが高濃度で存在するためにリン除去効率が
低下する。Cl- の影響を受けず、リンのみを選択的に除
去できる陰イオン吸着キレート樹脂が最適である。 【0012】被処理溶液と陰イオン吸着キレート樹脂を
接触させる方法としては、溶液に陰イオン吸着キレート
樹脂を添加して攪拌するバッチ法と、陰イオン吸着キレ
ート樹脂を塔に充填して溶液を通す連続法がある。後者
の方が操作性に優れ、処理液中のリン濃度を低くできる
ため、好ましい。本発明の方法で精製される鉄含有溶液
は、フェライト用高純度酸化鉄の製造に適用する場合、
周知のルスナー式噴霧焙焼設備が利用できることから、
塩化第一鉄溶液が有利である。溶液中の鉄濃度は5〜25
質量%が好ましい。鉄濃度が25質量%を超えると、塩化
鉄の結晶が発生しやすくなり、後工程でトラブルの原因
となる。5質量%未満でもリン除去効果は得られるが、
酸化鉄製造時の生産効率が低くなるため、実用的でな
い。 【0013】フェライト用高純度酸化鉄の原料として用
いるためには、P≦ 10ppmとともに、SiO2≦ 90ppmとす
る必要があるが、周知のルスナー式噴霧焙焼法で一般に
利用されている廃酸の加熱・濃縮工程を経て、珪藻土フ
ィルタなどの脱硅設備を通過するだけで、SiO2≦ 90ppm
を得ることができる。従って、本発明の方法を既存のル
スナー式設備と組み合わせることで、SiO2≦ 90ppm、P
≦ 10ppmのフェライト原料用高純度酸化鉄を製造するこ
とができる。また、本発明の方法は、pH調整・凝集沈
降法、結晶化精製法、溶媒抽出法などの周知の酸溶液精
製法と組み合わせることで、超高純度酸化鉄の製造に利
用することもできる。また、酸化鉄の製造方法として
も、上記のルスナー式噴霧焙焼法に限定されるものでは
なく、流動床焙焼法、湿式合成法、水熱合成法など周知
の酸化鉄製造方法を用いることができる。 【0014】本発明によるリン低減機構については現在
詳しく調査中であるが、強酸性溶液中でリンが陰イオン
PO4 3- の形態で存在するため、陰イオン吸着キレート樹
脂に選択的に吸着し、分離されるものと考えられる。た
だし、鉄濃度の高い酸溶液中では、pH> 0.5でリンと
鉄から不溶化物(リン酸鉄)が生成して陰イオン吸着キ
レート樹脂によるリン吸着効果が低下し、酸化鉄を製造
した時のP≦ 10ppmが得られなくなるため、溶液のpH
を 0.5以下に調整することがきわめて重要である。 【0015】以上の方法を用いれば、酸化鉄換算でP≦
10ppmの高純度酸化鉄の製造に使用可能な高純度鉄含有
溶液を、沈澱物を生じることなく、製造することができ
る。 【0016】 【実施例】製鉄所の鋼材酸洗工場より得られる通常の鋼
材の酸洗廃酸を用いて精製処理を実施した。酸洗廃酸の
鉄および不純物濃度は、表1の被処理液に示すように、
溶液分析値でtotal Fe=16質量%、SiO2=102ppm、P=
27ppm、pH=−0.9 であった。これを、ルスナー式噴
霧焙焼設備の加熱・濃縮設備でtotal Fe=24質量%まで
濃縮し、珪藻土フィルタを通じてSiO2を除去した。脱硅
後の濃縮廃酸の溶液分析値は、表1の比較例1に示すよ
うに、total Fe=24質量%、P= 39ppm、pH=−1で
あり、酸化鉄換算でSiO2≦ 90ppmを満足するものであっ
た。なお、溶液の分析方法は、total Feは滴定法、P、
SiO2はICP(誘導結合プラズマ分光分析法)を用い
た。 【0017】脱硅後の濃縮廃酸を用いて、アンモニア水
または塩酸と純水を用いてpHおよび鉄濃度を調整した
塩化鉄溶液を作製し、溶液 100mlに対して陰イオン吸着
キレート樹脂を3g 添加して、常温で24時間振とうし
た。振とう後の溶液を樹脂と分離し、溶液の鉄濃度およ
び不純物濃度を分析した。表1の実施例1〜4に示すよ
うに、本発明のpH範囲の溶液を用いた場合、キレート
樹脂との接触により酸化鉄換算でP≦ 10ppmまで低減で
きることが確認された。また、加熱・濃縮・脱硅処理を
施す前の廃酸を用いて同様の方法で溶液を精製した結
果、実施例5に示すように、処理後の液と同様にP除去
効果が得られた。 【0018】本発明を外れる比較例として、キレート樹
脂と接触しない場合(比較例1)、キレート樹脂の代わ
りに陰イオン交換樹脂(住友化学社製A113 )を用いた
場合(比較例2)、溶液のpHが 0.5より高い場合(比
較例3)について、その他の条件は実施例と同様にして
溶液を処理し、成分分析した。比較例1〜3に示すよう
に、いずれの方法でもP≦ 10ppmを得ることはできなか
った。 【0019】 【表1】【0020】 【発明の効果】本発明によれば、鉄含有溶液中のリン除
去を行う際に、含水酸化鉄のような沈殿物を生成するこ
となく、リンを除去することができる。この方法を鋼材
の酸洗廃酸等の塩化第一鉄溶液に適用することで、フェ
ライト用高純度酸化鉄の製造過程で、鉄分の有効利用と
廃棄物の減量、設備の小型化を図ることができる。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 鉄を含有する溶液のpHを−2以上、0.
5 以下に調整した後、該溶液を陰イオン吸着キレート樹
脂と接触させてリンを除去することを特徴とする鉄含有
溶液の精製方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002010187A JP2003212548A (ja) | 2002-01-18 | 2002-01-18 | 鉄含有溶液の精製方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002010187A JP2003212548A (ja) | 2002-01-18 | 2002-01-18 | 鉄含有溶液の精製方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003212548A true JP2003212548A (ja) | 2003-07-30 |
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ID=27647993
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JP2002010187A Pending JP2003212548A (ja) | 2002-01-18 | 2002-01-18 | 鉄含有溶液の精製方法 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2003212548A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008031018A (ja) * | 2006-07-31 | 2008-02-14 | Jfe Chemical Corp | フェライト用酸化鉄の製造方法 |
JP2008100126A (ja) * | 2006-10-17 | 2008-05-01 | Tsurumi Soda Co Ltd | 塩化第一鉄液の製造方法 |
-
2002
- 2002-01-18 JP JP2002010187A patent/JP2003212548A/ja active Pending
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