JP2003209455A - 電子部品素子 - Google Patents

電子部品素子

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JP2003209455A
JP2003209455A JP2002006621A JP2002006621A JP2003209455A JP 2003209455 A JP2003209455 A JP 2003209455A JP 2002006621 A JP2002006621 A JP 2002006621A JP 2002006621 A JP2002006621 A JP 2002006621A JP 2003209455 A JP2003209455 A JP 2003209455A
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alloy
electrode
metal
electronic component
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JP2002006621A
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Ryoichi Omote
良一 表
Kenji Sakaguchi
坂口  健二
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Murata Manufacturing Co Ltd
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Murata Manufacturing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐電力性を改善できる電子部品素子を提供す
る。 【解決手段】 圧電基板1上に、Alよりも弾性定数が
大きいTi膜6を有する、櫛型電極等の素子部2、3、
4を設ける。Ti膜6上又はTi膜6中に、Al合金膜
5を少なくとも一層形成する。Al合金膜5とTi膜6
とを備えた多層膜の比抵抗が10μΩ・cm以下であ
る。Ti膜6の少なくとも一部に酸素含有金属膜7を形
成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば自動車電
話、携帯電話等の移動体通信機器に使用される弾性表面
波フィルタ等の、電極構造の素子部を有する電子部品素
子に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、携帯電話等の通信機器は急速に小
形化が進んでおり、弾性表面波を用いたフィルタや共振
子など弾性表面波フィルタ(電子部品素子)が広く用い
られるようになってきている。さらに、従来、誘電体フ
ィルタが使用されてきたアンテナデュプレクサにおいて
も、小型化の要求が強く、サイズメリットのある弾性表
面波フィルタを用いることが望まれている。
【0003】しかしながら、圧電基板上に通常のAlに
よって櫛型電極を形成して構成される弾性表面波フィル
タには、半導体ICにおいて従来から問題とされてきた
エレクトロマイグレーションやサーマルストレスマイグ
レーションと同様のストレスマイグレーションの問題が
存在し、大電力が印加されるアンテナデュプレクサとし
て用いることは困難であった。
【0004】エレクトロマイグレーションは、電流を印
加した際に電子の移動によって配線材料であるAl原子
が移動する現象である。サーマルストレスマイグレーシ
ョンは、配線材料であるAlと保護膜の熱膨張係数の違
いによる応力でAl原子の移動が起こる現象である。
【0005】これらに対し、弾性表面波フィルタで主に
発生するストレスマイグレーションは弾性表面波の励振
によって、Al電極中の結晶粒界に繰り返し応力を受
け、応力緩和の為にAl原子の拡散が生じる現象であ
る。
【0006】発生要因が互いに異なるため厳密には相異
なる現象と考えるべきだが、どのマイグレーションでも
電極表面及び側面にAl原子の拡散に起因するヒロック
(凸部)やボイド(凹部)が発生し、配線抵抗の増大、
更には断線又はショートにいたる現象であるという点で
よく似ており、上記現象の抑制対策については、半導体
製造で検討されてきた方法が参考になる。
【0007】上記現象に関しては、従来から微細電極パ
ターンを用いる半導体製造等の分野で盛んに研究されて
きたが、近年は弾性表面波フィルタの分野でも耐電力性
の向上を目的として上記マイグレーションを抑制する様
々な方法が考案されてきている。
【0008】例えば、最も一般的な方法として、特公昭
61−47010号公報に記載されているように、電極
材料としてCuを添加したAl合金膜を用いることが行
われ、Al単独膜に比べて大きな電力印加に耐えるもの
が作製されている。
【0009】上記方法は、半導体ICにおけるエレクト
ロマイグレーション対策として用いられてきた方法であ
り、Alの結晶粒界にCuAl2 が析出することにより
Al原子の移動を妨げる効果を有している。また、Cu
以外にも、Ti、Ni、Pd等を添加して電極膜の強化
を図ることも行われている。
【0010】しかしながら、アンテナデュプレクサとし
て使用する場合、およそ1.5Wもの大電力に耐えねば
ならず、上記方法だけでは不十分であった。そのため、
新たな耐電力性向上の方法が考案され、単独又は上記方
法との組み合わせの形で用いられてきた。
【0011】特開平3−14305号公報ではAl膜の
下地としてTi又はCrからなる薄膜を設けて、成膜速
度を制御することによりAl膜を結晶方位的に一定方向
に配向させたエピタキシャル膜にすることによって、耐
電力性を向上している。
【0012】また、第27回EMシンポジウム予稿集
P.135〜P.140には64°Y−XLiNbO3
基板にTi下地膜を敷くことにより、Alがエピタキシ
ャル成長し、耐電力性がAl合金合金膜の約700倍に
向上したと記載されている。
【0013】特開平9−69748号公報に記載されて
いるように、Al膜とTi、CuのようなAl膜より大
きな弾性定数を有する薄い導電体材料を、交互に各々2
層以上積層して、Al電極にかかる応力を軽減すること
により、耐電力性を向上させるという方法が開示されて
いる。3層構造ではAl合金一層の10倍程度の寿命で
あるが、7層〜11層でAl合金一層の105 倍の寿命
となっており、積層数が多いほど耐電力性が向上すると
上記公報において報告されている。
【0014】特開平9−98043号公報には、比抵抗
が小さく耐マイグレーション性に優れるCu又はCu合
金を電極材料とすることにより、耐電力性が向上し、電
極膜の比抵抗が低減できるため弾性表面波フィルタの内
部損失を低減できたと報告されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の技術で、T
i下地膜によるエピタキシャルAlは通常のAlに比べ
て耐電力性は向上しているものの、完全なエピタキシャ
ルAlの作製は困難であり、量産性が厳しい上、LiT
aO3 基板上ではAlのエピタキシャル成長がまだ確認
されていないように、用いる基板が限定される欠点もあ
る。
【0016】前記の7層〜10層の多層構造は各層の膜
厚管理が困難であり、全体の膜厚が一定であっても、各
層の膜厚ばらつきにより周波数ばらつきが生じ、歩留ま
りの悪化を招くと共に耐電力性のばらつきも大きくなる
という問題があり、量産には不向きである。
【0017】また、耐マイグレーション性に優れ比抵抗
が小さいCuを電極材料として使用することについて
は、Cuは非常に酸化しやすく扱いにくいため量産が困
難であり、更にCuは密度がAlの3倍以上もあるため
膜厚を薄くせねばならず、結果的に膜抵抗が大きくなり
挿大損失が増大するという問題があった。挿入損失の増
大は電力投入時の発熱を大きくし、結果的に耐電力性の
悪化にもつながる。
【0018】本発明は大電力印加に耐え、かつ挿入損失
の増加も防止できる櫛型電極等の電極からなる素子部を
有する弾性表面波フィルタといった電子部品素子を提供
することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明の電子部品素子
は、上記目的を達成するために、素子基板と、素子基板
上に設けた、Alよりも弾性定数が大きい金属又は合金
からなる金属薄膜を有する素子部と、金属薄膜上又は金
属薄膜中に少なくとも一層形成された、Al膜又はAl
合金膜とを有し、金属薄膜と、Al膜又はAl合金膜と
を備えた多層膜の比抵抗が10μΩ・cm以下であり、
金属薄膜の少なくとも一部は酸素含有金属膜となってい
ることを特徴としている。
【0020】上記電子部品素子では、酸素含有金属膜
は、素子基板に当接していることが好ましい。
【0021】上記電子部品素子においては、Alよりも
弾性定数が大きい金属はTiであり、Al膜又はAl合
金膜の比率を膜厚比で全体の40%以上としたことが望
ましい。
【0022】上記電子部品素子では、Al膜又はAl合
金膜の膜厚を膜厚比で全体の50%〜90%としたこと
が好ましい。
【0023】上記電子部品素子においては、素子基板
が、酸化物基板であることが望ましい。上記電子部品素
子では、酸素含有金属膜は、加熱により金属薄膜から形
成されていることが好ましい。
【0024】上記電子部品素子においては、素子部は、
金属薄膜を備えた櫛型電極により構成される弾性表面波
フィルタであってもよい。
【0025】本発明では、素子部の電極材料としてAl
よりも弾性定数が大きく耐マイグレーション性に優れる
金属を用いる構成とした。従来、弾性表面波フィルタ等
の電子部品素子における素子部の電極材料としては主に
Al又はAl合金が用いられてきた。それは、Al又は
Al合金は比抵抗が小さい上、密度が小さいため電極材
量として非常に適しているためである。
【0026】しかしながら、前述のようにAl又はAl
合金は大電流印加によるエレクトロマイグレーションや
弾性表面波の励振によるストレスマイグレーションが生
じ易いという欠点がある。Alよりも弾性定数が大きい
金属、例えばTiで電極を構成することにより耐電力性
は大幅に向上できる。
【0027】また、TiのようにAlよりも弾性定数が
大きい金属の比抵抗が、Alに比べて非常に大きい場合
に電極抵抗の増加によって弾性表面波フィルタの挿入損
失が増大することが考えられるが、前記Alよりも弾性
定数が大きい金属の金属薄膜の上面又は金属薄膜中に比
抵抗の小さいAl膜又はAl合金膜を設けた構成とする
ことにより前記問題を解決できる。
【0028】本発明では、Alより弾性定数が大きく耐
マイグレーション性に優れる金属を電極材料として使用
しているため、多結晶であっても高い耐電力性が得られ
る。したがって、Alを基板上にてエピタキシャル成長
させる場合のように、下地となる基板が限定されること
も回避される。
【0029】本発明ではAlより弾性定数が大きい金属
より比抵抗が小さい金属は、膜全体の比抵抗を下げる為
に少なくとも1層設けられていればよいため、構造が単
純であり比較的、管理も簡単である。
【0030】また、従来例にあるCuもAlより弾性定
数が大きい金属として耐電力性が向上できる上に比抵抗
が小さいという利点があるが、Cuは非常に酸化しやす
く酸化することにより電極抵抗は急速に増加するため、
製造時の扱いが非常に困難である。
【0031】また、密度がAlに比べて3倍以上も大き
いため、電極膜厚を薄くせねばならず、膜厚が薄くなり
過ぎることによる抵抗増加の問題がある。このようなC
u電極を用いる際の問題も上面に、例えば比抵抗も小さ
くCuよりも密度が小さいAl膜又はAl合金膜を設け
ることにより、全体の比抵抗を小さく抑えると共に全体
としての電極膜厚を厚くし製造を容易にする、すなわち
歩留まりを向上することが可能となる。
【0032】さらに、上記構成では、金属薄膜の少なく
とも一部に酸素含有金属膜を形成したので、Al膜又は
Al合金膜を形成するときや、パッケージの封止時とい
った高温処理時においても、素子基板から酸素が金属薄
膜やAl膜又はAl合金膜に移行することが上記酸素含
有金属膜により抑制される。よって、上記高温時おいて
も素子基板の結晶形におけるみだれの発生を軽減でき
て、耐電力性の劣化を回避でき、耐電力性を向上でき
る。
【0033】
【発明の実施の形態】本発明の実施の各形態に係る電子
部品素子としての弾性表面波フィルタについて、図1な
いし図15に基づいて説明すると以下の通りである。
【0034】(実施の第一形態)上記実施の第一形態に
係る弾性表面波フィルタとしては、例えば図2及び図3
に示すように、中心周波数836.5MHzのラダー型
の弾性表面波フィルタが挙げられる。上記弾性表面波フ
ィルタは、例えば36°Y−XLiTaO3 や42°Y
−XLiTaO3 からなる圧電基板(素子基板)1を有
している。
【0035】上記圧電基板1上には、弾性表面波を発生
し、伝搬してきた弾性表面波を検出するための櫛型電極
2と、伝搬してきた弾性表面波を伝搬して来た方向に反
射する反射器電極3とワイヤボンディングによりパッケ
ージの電極端子と電気的に接続するためのワイヤボンデ
ィングパッド4とを形成した金属電極膜(素子部)が設
けられている。
【0036】本発明は電極材料に耐マイグレーション性
に優れた金属を使用し、上記金属の酸素含有金属膜を圧
電基板1に当接して形成することにより耐電力性を向上
するものであり、基板は酸化物基板であればよく、特に
圧電基板に限定されない。従って、圧電基板1はLiT
aO3 に限定されるものではなく、LiNbO3 、水晶
でもよく、また、積層インダクタのように必要に応じて
チタン酸バリウム系基板のように誘電体基板であっても
よい。
【0037】次に、本実施の第一形態における弾性表面
波フィルタを、その製造方法に基づいて説明する。ま
ず、圧電基板1上に、図5に示すように、Alよりも弾
性定数(116×109 N/m)の大きい金属、例えば
TiからなるTi膜6を真空蒸着法により例えば膜厚1
25nmにて蒸着する。
【0038】続いて、上記Ti膜6上に、金属電極膜全
体の比抵抗を下げるためTi膜6の比抵抗(75μΩ・
cm)よりも比抵抗(4μΩ・cm)の小さい金属、例
えばAlにCuを1wt%含有したAl合金からなるA
l合金膜5を例えば膜厚255nmにて蒸着する。な
お、上記Al合金膜5に代えて、AlのみからなるAl
膜としてもよい。
【0039】このときAl合金膜5が全体に占める割合
は膜厚比で67%である(以下、単に%と記した場合は
膜厚比を示す)。Ti膜6及びAl合金膜5の膜厚は密
度計算により決定される。一方、比較例として、図4に
示すように、Al合金の単層膜の電極構造を有する弾性
表面波フィルタを作製した。本実施の第一形態における
全体の膜厚をAl合金が単層の場合の膜厚に換算すると
およそ420nmに相当する。
【0040】続いて、前記圧電基板1上に蒸着されたT
i膜6及びAl合金膜5を、リフトオフ法による電極パ
ターンによりパターニングし、図2に示すように、前記
櫛型電極2と前記反射器電極3と前記ワイヤボンディン
グパッド4とを形成した。また、比較例の電極構造のも
のも同様にパターニングした。電極パターンは、リフト
オフ法に代えてドライエッチング法、ウェットエッチン
グ法により形成されてもよい。
【0041】このようにTi膜6及びAl合金膜5によ
る二層構造の電極パターンを形成したとき、図1及び図
5に示すように、Ti膜6の少なくとも一部には、酸素
含有金属膜7が、圧電基板1に当接して形成されてい
る。上記酸素含有金属膜7は、Ti膜6及びAl合金膜
5の形成時や、リフトオフ時の熱が印加される際に、加
熱されることによりTi膜6が圧電基板1の酸素を奪っ
て形成される。このとき、酸素含有金属膜7は、Ti中
に酸素を取り込んだ状態であってもよいし、また、Ti
酸化物の形態となっていてもよい。
【0042】このような酸素含有金属膜7の形成によっ
て、Al合金膜5を形成するときや、後述するパッケー
ジの封止時といった高温処理時においても、圧電基板1
から酸素がTi膜6やAl合金膜5に移行することが上
記酸素含有金属膜7により抑制される。よって、上記高
温時おいても圧電基板1の結晶形におけるみだれの発生
を軽減できて、耐電力性の劣化を回避でき、耐電力性を
向上できる。
【0043】次に、膜全体中のAl合金膜5と、酸素含
有金属膜7を少なくとも一部に有するTi膜6との割合
の変化による膜全体の比抵抗の変化を調べた。その結果
を図7のグラフに示した。Al合金膜5を厚くしていく
と膜全体の比抵抗はAl合金膜5の膜厚が膜全体の20
%程度までは急激に減少していき、それ以降は緩やかに
減少した。
【0044】図2で示した中心周波数836.5MHz
のラダー型とした弾性表面波フィルタの構成を、図8に
示すように表すこともできる。上記弾性表面波フィルタ
では、直列共振子を入力側から順にS1、S2、S3、
S4、S5で表し、並列共振子をP1、P2で表してい
る。耐電力性を高めるため、直列共振子の段数を大きく
し電力を分散するように設計している。本実施の形態で
用いた設計のパラメータを下記の表1に記す。
【0045】
【表1】
【0046】上記設計の弾性表面波フィルタにおいて膜
全体中のAl合金膜5の割合を変化させていった場合の
通過帯域(824MHz〜849MHz)における挿入
損失の最小値(以下、最小挿入損失)の変化を調べた。
それら結果を図9のグラフに示した。
【0047】上記結果では、例えばAl合金膜5が無
い、すなわちTi膜6が単層の電極の場合では、その比
抵抗はAl合金膜5が100%の場合の4μΩ・cmに
比べて約19倍の75μΩ・cmであり、かつ最小挿入
損失は約1.5dB程度も増加する。それに対し、Al
合金膜5を20%とした場合では、比抵抗はAl合金膜
5が100%の場合と比べて約4倍の17μΩ・cm、
最小挿入損失の増加は約0.5dBであり、40%とし
た場合では比抵抗はAl合金膜5が100%の場合と比
べて約2.5倍の10μΩ・cmとなり、最小挿入損失
の増加は約0.3dB程度と非常に小さくなる。
【0048】Ti膜6の上にわずかでもAl合金膜5を
設けることにより、弾性表面波フィルタとしての挿入損
失の増加はTi膜単独の場合に比べて非常に小さく抑え
られることが分かる。
【0049】一方、Al合金膜5の割合が大きくなると
膜全体の比抵抗は小さくなるが、Ti膜6が薄くなりA
l合金膜5が厚くなるため、Al合金膜5にマイグレー
ションが生じやすくなり、耐電力性は悪化する。
【0050】逆にAl合金膜5が無い場合、すなわちT
i膜6が単層の電極の場合では、電極膜にマイグレーシ
ョンによるヒロック、ボイドの発生は防止されるが、配
線抵抗の増大によってジュール熱による断線に至るた
め、結果的に耐電力性が悪化する。
【0051】また、圧電基板1をLiTaO3 に限定す
るとAl合金膜5とTi膜6との比率によって、通過帯
域の高域側に存在するスプリアスの相対的な周波数が、
図10に示すように変化した。電極膜中のAl合金膜5
の割合とスプリアスの相対的周波数の関係を調べた。そ
の結果を、上記関係をプロットした図11のグラフに示
した。図11に記載したfsはスプリアスの周波数を示
し、fcは中心周波数を示す。
【0052】上記結果から、Al合金膜5の割合が小さ
く、すなわちTi膜6の割合が大きくなるほどスプリア
スの相対的周波数は低くなり、通過帯域内に移動してく
るため、帯域内特性は変化する。
【0053】続いて、挿入損失が2.5dBとなる帯域
幅のAl合金膜5の膜厚に対する依存性を調べた。その
結果を図12に示した。また、比較の為に、最小挿入損
失も同時に図12にプロットした。
【0054】上記結果によれば、Al合金膜5の膜厚の
割合が小さくなるにつれ、配線抵抗の増大により挿入損
失は大きくなっていくが、膜全体におけるAl合金膜5
の膜厚が70%付近までは2.5dBの帯域幅は大きく
なる傾向にある。しかし、それ以下になると挿入損失の
増加に伴い、帯域幅も小さくなる。
【0055】また、スプリアスの移動は電気的特性のみ
ならず、耐電力性にも影響を及ぼす。図13に電力印加
時の破壊領域を示した。Al合金膜5が単層の電極やA
l合金膜5の割合が大きい電極の場合は、図13(a)
に示すように、(A)の領域で櫛型電極2の全体にマイ
グレーションによるヒロック、ボイドが生じ、破壊に至
る。
【0056】しかし、Al合金膜5の割合が小さくなる
と、電力を投入する帯域内に存在するスプリアスが破壊
の原因となり、図13(b)に示すように、(B)の領
域、つまり櫛型電極2の電極指と配線電極(バスバー
部)のギャップ部(境界部分)で破壊されるようにな
る。投入電力を一定時間毎に大きくする試験において電
極が破壊に至る電力を調査した結果を図14に示した。
【0057】上記結果から、膜全体の膜厚に占めるAl
合金膜5の割合が90%を超える範囲では、(A)の領
域で破壊し、上記範囲ではAl合金膜5の割合が小さく
なるほど破壊電力(耐電力性)は大きくなる。一方、A
l合金膜5が50%未満の領域では(B)の領域での破
壊が支配的となり、Al合金膜5の割合が小さくなるほ
ど破壊電力(耐電力性)は小さくなる。最も破壊電力が
大きくなるのは破壊領域が変わる50%〜90%(50
%以上、90%以下)の範囲であり両方の領域での破壊
が同時に発生している。
【0058】次に、本実施の第一形態に関する弾性表面
波フィルタの寿命を加速試験にて測定した結果を図15
に示した。試験は25℃の環境下で、電力を通過域(中
心周波数:836.5MHz)の最弱点(高域側2.5
dB点)に投入して行ない、挿入損失0・3dB劣化を
寿命とした。各測定点における寿命はチップ温度を測定
し、1.5W投入時の温度を基準として温度加速分を補
正した値である。1.5Wにおける推定寿命を比較した
場合、Al合金膜が単層の電極と比べると、Al合金膜
5の割合が90%の場合で約200倍、Al合金膜5の
割合が70%で約2000倍、Al合金膜5の割合が6
3%の場合で約1000倍の寿命であった。
【0059】本実施の第一形態では設計面でも高耐電力
化を図っているが、実用には少なくとも通常のAl合金
膜5が単層の電極を有する弾性表面波フィルタに対し、
2桁程度の耐電力性向上が必要である。従って、本実施
の第一形態のようにLiTaO3 基板を用いた場合、図
13、図14の結果から電極中のAl合金膜5の割合が
全体の50%〜90%、より好ましくは70%〜80%
の場合が特に適していることが分かる。
【0060】このように本実施の第一形態では、従来A
l又はAl合金を使用していた電極材料にAlよりも弾
性定数が大きく耐マイグレーション性に極めて優れる金
属であるTiを使用することによりマイグレーションの
発生が大幅に抑制される。また、Tiは比抵抗が大きく
バルクの値でAlの15.6倍、薄膜の比抵抗としては
約19倍となるが、Tiより比抵抗の小さい金属である
Al膜又はAl合金膜5をTi膜6上に形成することに
より、膜全体としての比抵抗がTi単独の場合に比べ小
さく抑えられ、特性劣化を抑えることが可能である。
【0061】このように実施の第一形態では、弾性定数
が大きいTiを電極主材料とすることによりマイグレー
ションを抑制し、Ti膜6上にTiに比べて比抵抗の小
さいAl合金膜5を設け、Ti膜6の少なくとも一部に
酸素含有金属膜7を形成することにより、膜全体(多層
膜)としての比抵抗を小さく、すなわち10μΩ・cm
以下と小さく、抑えることができ、比抵抗の大きなTi
膜6を用いることによる挿入損失の増大を抑制すること
ができる。
【0062】また、Ti膜6とAl合金膜5の膜厚を最
適化することにより通過帯域の高域側に存在するスプリ
アスを制御し、耐電力性を向上すると共に電気的特性を
改善することができる。
【0063】その上、上記構成では、酸素含有金属膜7
を形成したことにより、高温処理によっても特性劣化を
抑制できると共に、耐電力性も向上できる (実施の第二形態)次に、本発明の実施の第二形態につ
いて説明する。実施の第二形態の電極構造である。本実
施の第二形態では、図6に示すように、実施の第一形態
と同様に電極主材料としてTiからなるTi膜6を用
い、比抵抗を下げる為の金属としてAl合金膜5が上記
Ti膜6中に一層形成されている。
【0064】作製手順は圧電基板1上に真空蒸着により
Ti膜6を例えば膜厚125nmにて蒸着した後、上記
Ti膜6上にAl合金膜5を225nm蒸着し、続い
て、上記Al合金膜5上に更にTi膜6を10nm蒸着
して金属電極膜を形成した。得られた金属電極膜は実施
の第一形態の場合と同様、リフトオフ法によりパターニ
ングした。実施の第一形態の場合と同様、金属電極膜の
膜厚は特性と耐電力性から最適値を選べばよい。
【0065】このとき、実施の第二形態においても、実
施の第一形態と同様に、Ti膜6の少なくとも一部に酸
素含有金属膜7が、圧電基板1に当接して形成されてい
る。
【0066】このような本実施の第二形態の電極構造で
は、実施の第二形態においてTi膜6の上に設けていた
Al合金膜5をTi膜6内部に挟んで設ける事により、
実施の第一形態の場合と同様に膜全体としての比抵抗が
小さく抑えられると共に、ヒロックが生じ易いAl合金
膜5の表面がTi膜6によって補強されるため、Al合
金膜5からのマイグレーションの発生が抑制される。
【0067】このように実施の第二形態においては、弾
性定数が大きく耐マイグレーション性に優れたTiを電
極主材料とすることにより、大幅に耐電力性を向上で
き、Tiに比べて比抵抗の小さいAl合金膜5をTi膜
6中に設けることにより、膜全体としての比抵抗を小さ
く抑え、比抵抗の大きなTi膜6を用いることによる挿
入損失の増大を抑制することができる。
【0068】また、マイグレーションが生じ易いAl合
金膜5をTi膜6の中に設けることにより、Al合金膜
5の表面からのヒロックを抑制する効果があり、Ti膜
6上面にAl合金膜5を設けた場合より更に耐電力性が
向上する。
【0069】本発明では圧電基板としてLiTaO3
用いたが、他の基板であっても同様の効果を期待でき
る。又、本発明は、ラダー型の構造に限定される作用で
はなく二重モード型等の構造であっても、また、積層イ
ンダクタや積層コンダクタにも適用可能である。
【0070】また、本発明の弾性表面波フィルタをパッ
ケージに収納し、ワイヤボンディングした後、はんだ等
により封止して弾性表面波装置(電子制御装置)とする
ことができる。
【0071】
【発明の効果】本発明の電子部品素子は、以上のよう
に、素子基板上に設けた、Alよりも弾性定数が大きい
金属又は合金からなる金属薄膜を有する素子部と、金属
薄膜上又は金属薄膜中に少なくとも一層形成された、A
l膜又はAl合金膜とを有し、金属薄膜と、Al膜又は
Al合金膜とを備えた多層膜の比抵抗が10μΩ・cm
以下であり、金属薄膜の少なくとも一部は酸素含有金属
膜となっている構成である。
【0072】それゆえ、上記構成は、素子部をAlより
も弾性定数が大きい金属又は合金からなる金属薄膜とA
l膜又はAl合金膜とを有する多層とし、金属薄膜と、
Al膜又はAl合金膜とを備えた多層膜の比抵抗が10
μΩ・cm以下であり、金属薄膜の少なくとも一部を酸
素含有金属膜とすることで、高温処理によっても特性劣
化を抑制できると共に、耐電力性も向上できるという効
果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の各形態に係る電子部品素子とし
てのラダー型とした弾性表面波フィルタの櫛型電極の断
面図である。
【図2】上記弾性表面波フィルタの電極パターンを示す
概略斜視図である。
【図3】上記櫛型電極の拡大平面図である。
【図4】従来の電極構造の断面図である。
【図5】本発明の実施の第一形態における電極構造の断
面図である。
【図6】本発明の実施の第二形態における電極構造の断
面図である。
【図7】上記実施の第一形態における、Al合金膜厚と
比抵抗との関係を示すグラフである。
【図8】本実施の各形態に係るラダー型の弾性表面波フ
ィルタの構造を表す概略構成図であり、(a)は、回路
ブロック図であり、(b)は、弾性表面波フィルタに対
応する一回路ブロックを示し、(c)は上記一回路ブロ
ックに対応した櫛型電極の概略平面図である。
【図9】上記実施の第一形態における、Al合金膜厚と
最小挿入損失との関係を示すグラフである。
【図10】上記実施の第一形態における、通過帯域内の
スプリアス特性を示すグラフである。
【図11】上記実施の第一形態における、Al合金膜厚
とスプリアス周波数との関係を示すグラフである。
【図12】上記実施の第一形態における、Al合金膜厚
と2.5dBBWとの関係を示すグラフである。
【図13】上記櫛型電極中の破壊領域を示す概略構成図
であり、(a)は、Al合金膜が単層の電極やAl合金
膜の割合が大きい電極の場合の破壊領域を示し、(b)
は、Al合金膜の割合が小さい電極の場合の破壊領域を
示す。
【図14】上記実施の第一形態における、Al合金膜厚
と破壊電力との関係を示すグラフである。
【図15】上記実施の第一形態における、Al合金膜/
Ti膜を有する弾性表面波フィルタの寿命測定結果を示
すグラフである。
【符号の説明】
1 圧電基板 2 櫛型電極 3 反射器 4 ワイヤボンデイングパツド 5 Al合金膜 6 Ti膜(金属薄膜) 7 酸素含有金属膜

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】素子基板と、 素子基板上に設けた、Alよりも弾性定数が大きい金属
    又は合金からなる金属薄膜を有する素子部と、 金属薄膜上又は金属薄膜中に少なくとも一層形成され
    た、Al膜又はAl合金膜とを有し、 金属薄膜と、Al膜又はAl合金膜とを備えた多層膜の
    比抵抗が10μΩ・cm以下であり、 金属薄膜の少なくとも一部は酸素含有金属膜となってい
    ることを特徴とする電子部品素子。
  2. 【請求項2】酸素含有金属膜は、素子基板に当接してい
    ることを特徴とする請求項1記載の電子部品素子。
  3. 【請求項3】Alよりも弾性定数が大きい金属はTiで
    あり、Al膜又はAl合金膜の比率を膜厚比で全体の4
    0%以上としたことを特徴とする請求項1又は2記載の
    電子部品素子。
  4. 【請求項4】Al膜又はAl合金膜の膜厚を膜厚比で全
    体の50%〜90%としたことを特徴とする請求項1乃
    至3の何れか1項に記載の電子部品素子。
  5. 【請求項5】素子基板が、酸化物基板であることを特徴
    とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電子部品素
    子。
  6. 【請求項6】酸素含有金属膜は、加熱により金属薄膜か
    ら形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何
    れか1項に記載の電子部品素子。
  7. 【請求項7】素子部は、金属薄膜を備えた櫛型電極によ
    り構成される弾性表面波フィルタであることを特徴とす
    る請求項1乃至6の何れか1項に記載の電子部品素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008172668A (ja) * 2007-01-15 2008-07-24 Alps Electric Co Ltd 表面弾性波デバイス

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JP2008172668A (ja) * 2007-01-15 2008-07-24 Alps Electric Co Ltd 表面弾性波デバイス

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