JP2003201270A - 光学活性アミノアルコールおよびその中間体の製造方法 - Google Patents

光学活性アミノアルコールおよびその中間体の製造方法

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JP2003201270A JP2002316217A JP2002316217A JP2003201270A JP 2003201270 A JP2003201270 A JP 2003201270A JP 2002316217 A JP2002316217 A JP 2002316217A JP 2002316217 A JP2002316217 A JP 2002316217A JP 2003201270 A JP2003201270 A JP 2003201270A
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JP2002316217A
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Masato Watanabe
正人 渡辺
Kunihiko Murata
邦彦 村田
Takao Ikariya
隆雄 碇屋
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Kanto Chemical Co Inc
Original Assignee
Kanto Chemical Co Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高収率で高い光学純度の光学活性アミノアルコ
ール類およびその中間体を製造する。 【解決手段】光学活性含窒素化合物の不斉配位子を有す
る遷移金属化合物触媒の存在下、アジドケトン類を水素
供与性の有機または無機化合物と反応し、光学活性アジ
ドアルコール類を得る。さらにこれらの光学活性アルコ
ール類を還元して、光学活性なアミノアルコール類を効
率よく製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アジドケトン類か
ら、医薬品、農薬、不斉合成用触媒等の合成中間体とし
て有用な光学活性アミノアルコール類を高い反応収率、
且つ、高い光学純度で製造する方法、およびその製造中
間体である光学活性アジドアルコール類の製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】光学活性β-アミノアルコール類は、医
薬品や農薬、不斉合成用触媒等の合成中間体として重要
な化合物であり、例えば医薬品ではβ−アドレナリン作
動性効果遮断薬の医薬品中間体として重要である。光学
活性医薬品が高い光学純度を有することは、安全性、効
能などの観点から極めて重要であり、光学活性医薬品原
薬または中間体を製造する場合においても、高い反応収
率であることとともに、高い光学純度をも兼ね備えた製
造方法の確立が強く望まれている。
【0003】従来から知られている光学活性なβ-アミ
ノアルコール類の製造方法としては、α−アジドケト
ンをパン酵母を用いて不斉還元し、得られたβ−アジド
アルコールのアジド基を還元する方法(たとえば、非特
許文献1参照)、α−アミドケトンを金属触媒により
不斉還元してβ−アミドアルコールとした後、窒素上の
保護基を除去する方法(たとえば、非特許文献2参
照)、α−アミノケトンを金属触媒により不斉還元す
る方法(たとえば、非特許文献3参照)等が知られてい
る。
【0004】上記した方法のうち、の方法は反応基質
の種類に制約があり、しかも得られるアルコールの絶対
配置が特定のものに限られる欠点がある。の方法は、
窒素上の保護基を除去する際の収率が低く、工業的製造
法として適していない。の方法は、金属触媒の種類に
より好適な基質の種類が異なり、必ずしも一般性がある
わけではない。また、窒素上の置換基の種類に制約があ
り、一般性に欠ける。
【0005】一方、カルボニル化合物を遷移金属錯体と
塩基と光学活性含窒素化合物、並びに水素供与性化合物
の共存下に水素移動型不斉還元して光学活性モノアルコ
ール類を製造する方法が公開されている(たとえば、特
許文献1および2参照)。これらの文献には、電子吸引
基であるシアノ基やニトロ基で置換された芳香族化合
物、複素環化合物または脂肪族化合物等を置換基として
有するカルボニル化合物が基質として多数例示されてい
るが、実施例に挙げられているカルボニル化合物は、い
ずれもカルボニル基に隣接するα−炭素に電子吸引基を
有さない塩基に比較的安定なものばかりである。実施例
にはカルボニル基に隣接するα炭素に電子吸引基である
アジド基を有するアジドケトン類を基質に用いた例はな
い。また、特定の三環性アミノアルコール誘導体の製造
において、2-アジド-1-(4-ベンジルオキシ-3-メチルス
ルホニルアミノ)フェニルエタノンを水素移動型不斉還
元して(R)-2-アジド-1-(4-ベンジルオキシ-3-メチルス
ルホニルアミノ)フェニルエタノールを合成する方法な
どが公知となっておるものの(たとえば、特許文献3参
照)、アジド基を含む置換基以外のカルボニル基の置換
基、たとえば、置換基を有する芳香環などの影響によ
り、同一の反応条件(温度、溶媒、時間、S/C比等)
で反応が進まない場合がある。
【0006】
【特許文献1】特開平9−157196号公報
【特許文献2】特開平11−322649号公報
【特許文献3】国際公開第00/59885号パンフレ
ット
【非特許文献1】ジェイ.エス.ヤダフ(J.S.Yadav)
外3名, 「テトラヘドロン アシメトリ(Tetrahedron:
Asymmetry)」, 12号, 2001年, p63
【非特許文献2】エイ.カワモト(A.Kawamoto)外1
名,「 テトラヘドロン アシメトリ(Tetrahedron: Asy
mmetry)」, 11号, 2000年, p3257
【非特許文献3】「コンプリヘンシヴ アシメトリック
カタリシス(Comprehensive AsymmetricCatalysi
s)」, I巻, スプリンガー社( Springer), p.210-212
(1999))
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のごと
き状況に鑑み、触媒量の不斉源を用い、水素移動型不斉
還元により、アジドケトン類から高い反応収率および高
い光学純度で光学活性アジドアルコール類を製造し、さ
らにそれらを還元して光学活性アミノアルコール類を効
率的に製造する方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記課題を
解決するために鋭意検討する中で、アジドケトン類を光
学活性含窒素化合物、周期表第VIII属金属化合物、水素
供与体、および塩基を用いた水素移動型不斉還元によ
り、高い反応収率および高い光学純度で光学活性アジド
アルコール類に誘導化し、さらにそれら中間体の還元を
行なうことで光学活性アミノアルコール類が得られるこ
とを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成し
た。
【0009】一般に、アジドケトン類は、分子内に強い
電子求引基を有することから、活性化されたメチレン基
を有しており、塩基性条件下では、この活性化されたメ
チレン基のカルボニル炭素への求核反応が起こりやすく
なり、化合物同士の縮合反応等の副反応が起きてしま
う。特にα−アジドケトン類では、分子内の2つの強い
電子求引基により活性化されたメチレン基の炭素上の水
素の酸性度が高く、塩基で処理すると容易にエノラート
アニオンに変換され、カルボニル炭素への求核反応が起
こりやすくなると考えられる。
【0010】従って、本発明者自身、塩基を用いる水素
移動型不斉還元反応では、特にα−アジドケトン類を用
いた場合、カルボニル化合物同士の縮合反応等の副反応
が顕著に起こることが予測され、光学活性なアジドアル
コール類を効率よく製造することができないと考えてい
た。実際に、前掲特開平9−157196号の実施例の
反応条件でα−アジドケトン類の不斉還元を行なうと、
基質同士の縮合反応等の副反応が顕著に見られ、目的物
を与えなかったり、あるいは低収率であった。このこと
からすると、上記の方法によりアミノアルコール類を製
造できたことは驚くべきことであり、このことはアミノ
アルコール類の工業的製造において極めて意義深いこと
といえる。
【0011】すなわち本発明は、一般式(A)
【化7】 (式中、Rは置換基を有していてもよい芳香族単環
(ただし、メタ位にアルキルスルホニルアミノ基を有す
るものを除く)または芳香族多環式炭化水素基、無置換
もしくは置換基を有していてもよい飽和もしくは不飽和
の脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基、あるいは
置換基を有していてもよい複素単環または複素多環式基
であり、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、
ハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基またはアルコキ
シ基、置換基を有していてもよい芳香族単環または芳香
族多環式炭化水素基、無置換もしくは置換基を有してい
てもよく、異種原子を含んでもよい飽和もしくは不飽和
の脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基、あるいは
置換基を有していてもよい複素単環または複素多環式基
であり、R〜Rのうち任意の2つが互いに結合して
環を形成してもよい)で表される化合物と、光学活性含
窒素化合物、周期表第VIII族金属化合物、水素供与体と
を、塩基の存在下または非存在下で反応させて一般式
(A)の化合物から一般式(B)
【化8】 (式中、R、RおよびRは前記と同じであり、*
は不斉炭素原子を表す)で示される化合物を得る工程、
および一般式(B)の化合物から一般式(C)
【化9】 (式中、R、RおよびRは前記と同じであり、*
は不斉炭素原子を表す)で示される化合物を得る工程を
含む、光学活性アミノアルコール類の製造方法に関す
る。
【0012】また本発明は、一般式(A)の化合物から
一般式(B)で示される化合物を得る工程において、一
般式(A)の化合物と、あらかじめ光学活性含窒素化合
物と周期表第VIII族金属化合物とから調製した錯体と、
水素供与体とを塩基存在下または非存在下で反応させて
一般式(B)で示される化合物を得ることを特徴とす
る、前記の光学活性アミノアルコール類の製造方法に関
する。さらに本発明は、光学活性含窒素化合物が、一般
式(D)
【化10】 (式中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を
有していてもよい芳香族単環または芳香族多環式炭化水
素基、無置換もしくは置換基を有していてもよく、異種
原子を含んでもよい飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水
素基または脂環式炭化水素基、あるいは置換基を有して
いてもよい複素単環または複素多環式基を示し、R
は互いに結合して環を形成してもよく、Rおよび
はそれぞれ独立して、水素原子、低級アルキル基、
アシル基、カルバモイル基、チオアシル基、チオカルバ
モイル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホ
ニル基を示し、*は不斉炭素原子を表す)で示される化
合物であることを特徴とする、前記の光学活性アミノア
ルコール類の製造方法に関する。
【0013】また本発明は、光学活性含窒素化合物が、
一般式(E)
【化11】 (式中、RおよびRは前記と同じであり、Rは、
水素原子またはアルキル基を示し、Rは、置換基を有
していてもよいアルキル基またはアリール基を示し、*
は不斉炭素原子を示す)で示される化合物であることを
特徴とする、前記の光学活性アミノアルコール類の製造
方法に関する。
【0014】さらに本発明は、光学活性含窒素化合物
が、一般式(F)
【化12】 (式中、Rは前記と同じであり、R10、R11およ
びR12は、それぞれ独立して、水素原子、低級アルキ
ル基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基を示し、l、
m、nはそれぞれ独立して1〜5の整数を示し、*は不
斉炭素原子を示す)で示される化合物であることを特徴
とする、前記の光学活性アミノアルコール類の製造方法
に関する。
【0015】また本発明は、周期表第VIII族金属化合物
が、ルテニウム化合物であることを特徴とする、前記の
光学活性アミノアルコール類の製造方法に関する。さら
に本発明は、水素供与体が、ギ酸、ギ酸塩およびアルコ
ール化合物からなる群より選択される1または2以上の
化合物であり、塩基が、有機アミン類、アルカリ金属水
酸化物およびアルカリ金属アルコキシドからなる群より
選択される1または2以上の化合物であることを特徴と
する、前記の光学活性アミノアルコール類の製造方法に
関する。また本発明は、水素供与体がギ酸であり、塩基
が第3級アミンであることを特徴とする、前記の光学活
性アミノアルコール類の製造方法に関する。
【0016】さらに本発明は、一般式(B)の化合物か
ら一般式(C)の化合物を得る工程が、不均一系金属触
媒存在下に水素を作用させることによる還元工程、ある
いは金属水素化物または水素化ホウ素化合物を作用させ
ることによる還元工程であることを特徴とする、前記の
光学活性アミノアルコール類の製造方法に関する。
【0017】また本発明は、一般式(A)の化合物から
一般式(B)の化合物を得る工程において、〔ギ酸のモ
ル数/第3級アミンのモル数〕の値が1.2以下である
ことを特徴とする、前記の光学活性アミノアルコール類
の製造方法に関する。さらに本発明は、一般式(A)の
化合物から一般式(B)の化合物を得る工程において、
反応温度が10℃〜50℃であることを特徴とする、前
記の光学活性アミノアルコール類の製造方法に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の原料として用いることが
できる化合物は、一般式(A)
【化13】 で表されるアジドケトン類である。
【0019】一般式(A)において、Rは置換基を有
していてもよい芳香族単環(ただし、メタ位にアルキル
スルホニルアミノ基を有するものを除く)または芳香族
多環式炭化水素基、無置換もしくは置換基を有していて
もよい飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基または脂
環式炭化水素基、あるいは置換基を有していてもよい複
素単環または複素多環式基であり、RおよびRはそ
れぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル
基、水酸基またはアルコキシ基、置換基を有していても
よい芳香族単環または芳香族多環式炭化水素基、無置換
もしくは置換基を有していてもよく、異種原子を含んで
もよい飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基または脂
環式炭化水素基、あるいは置換基を有していてもよい複
素単環または複素多環式基であり、R〜Rのうち任
意の2つが互いに結合して環を形成してもよい。なお、
異種原子とは、有機化合物内における窒素原子、酸素原
子、硫黄原子などをいう。
【0020】芳香族単環式炭化水素基として具体的に
は、フェニル、2-メチルフェニル、2-エチルフェニ
ル、2-イソプロピルフェニル、2-tert-ブチルフェニ
ル、2-メトキシフェニル、2-クロロフェニル、2-ビ
ニルフェニル、3-メチルフェニル、3-エチルフェニ
ル、3-イソプロピルフェニル、3-メトキシフェニル、
3-クロロフェニル、3-ビニルフェニル、4-メチルフ
ェニル、4-エチルフェニル、4-イソプロピルフェニ
ル、4-tert-ブチルフェニル、4-ビニルフェニル、メ
シチル、キシリル基などが挙げられる。また芳香族多環
式炭化水素基として具体的には、1-ナフチル、2-ナフ
チル、アントリル、フェナントリル、インデニル基など
が挙げられる。
【0021】複素単環式基として具体的には、チエニ
ル、フリル、ピラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラ
ゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリ
ル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピラダジ
ル、ピラジニル基などが挙げられる。または複素多環式
基として具体的には、ベンゾイミダゾリル、ベンゾピラ
ゾリル、ベンゾチアゾリル、キノリル、アントラニル、
インドリル、フェナントロニリル基などが挙げられる。
【0022】脂肪族炭化水素基は、芳香族炭化水素基ま
たは芳香族複素環基で置換されていてもよい直鎖もしく
は分岐のアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基
である。アルキル基としてはメチル、エチル、n−プロ
ピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブ
チル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−
ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デ
シル、ドデシル基等の炭素数1〜20のアルキル基が例
示される。
【0023】アルケニル基としてはビニル、1−プロペ
ニル、2−プロペニル、1−ブテニル、イソプロペニ
ル、2−ブテニル、3−ブテニル、1,3−ブタジニエ
ル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル
基等の炭素数2〜20のアルケニル基が例示される。ア
ルキニル基としてはアセチレニル、メチルアセチレニ
ル、フェニルアセチレニル基等の炭素数2〜20のアル
キニル基が例示される。
【0024】脂環式炭化水素基は、芳香族炭化水素基ま
たは芳香族複素環基で置換されていてもよいシクロアル
キル基を表し、具体的にはシクロプロピル、シクロブチ
ル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等の炭素数3〜
8のシクロアルキル基が例示される。これらの芳香族炭
化水素基、芳香族複素環基、脂肪族炭化水素基または脂
環式炭化水素基に結合する置換基としては、具体的には
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、トリフ
ルオロメチル基等のハロゲン原子含有炭化水素基、ヒド
ロキシル、アルコキシ、アシル、アルコキシカルボニ
ル、カルボキシル基等の酸素原子含有置換基、アミノ、
アルキルアミノ、ニトロ、シアノ、アジド基等の窒素原
子含有置換基、トリメチルシリル、ヒドロシリル基等の
ケイ素含有置換基、メルカプト、アルキルチオ基等の硫
黄原子含有置換基、ホスホリル、トリフェニルホスフィ
ニル基等のリン原子含有置換基等が例示される。遷移金
属元素を含有する置換基としては、具体的にはフェロセ
ニル基等の鉄含有置換基が例示される。
【0025】また、R〜Rのうち任意の2つが互い
に結合し、例えばトリメチレン、テトラメチレン、ペン
タメチレン、メチレンジオキシ基等となり縮合して環を
形成してもよい。
【0026】一般式(A)で表される化合物のうち、ア
ジドケトン類の具体例としては化合物群−1に示した化
合物が例示され、特に化合物群−1の1〜12および2
3〜29で例示される、芳香族炭化水素基(ただし、メ
タ位にアルキルスルホニルアミノ基を有するのもを除
く)または複素環炭化水素基を有するアジドケトン類な
どが適用性が高いなどの理由から好ましい。なお、一般
式(A)のアジドケトン類は化合物群−1の化合物に限
定されるものではない。
【0027】
【化14】
【0028】
【化15】
【0029】なお、化合物群−1において、式中、Rは
水素原子、メチル基、テトラヒドロピラニル基、アリル
基、イソプロピル基、tert-ブチル基、ベンジル基、ア
セチル基、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチル
シリル基等を示す。
【0030】本発明に使用される触媒を構成する光学活
性含窒素化合物は、一般式(D)
【化16】 で表されるジアミン誘導体である。
【0031】一般式(D)において、RおよびR
それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族単
環(ただし、メタ位にアルキルスルホニルアミノ基を有
するものを除く)または芳香族多環式炭化水素基、無置
換もしくは置換基を有していてもよく、異種原子を含ん
でもよい飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基または
脂環式炭化水素基、あるいは置換基を有していてもよい
複素単環または複素多環式基を示し、RとRは互い
に結合して環を形成してもよく、RおよびRはそれ
ぞれ独立して、水素原子、低級アルキル基、アシル基、
カルバモイル基、チオアシル基、チオカルバモイル基、
アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基を示
し、*は不斉炭素原子を表す。
【0032】RおよびRは、具体的には、メチル、
エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−
ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオ
ペンチル、tert−ペンチルおよびヘキシル基などの炭素
数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、フェニル、
ナフチル、4−メチルフェニル、3,5−ジメチルフェ
ニルおよび4−メトキシフェニル基などのアリール基、
フリルおよびピリジル基などの芳香族複素環基が挙げら
れる。
【0033】また、RとRが一緒になってテトラエ
チレン基(シクロヘキサン環をなす)などとなってもよ
い。これらの基は更に置換されていてもよく、置換基と
してはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル基
等の低級アルキル基、メトキシ、エトキシ基等の低級ア
ルコキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等のハロ
ゲン原子から選ばれる1個もしくは2個以上の基であ
る。R、Rとしては、フェニル基、置換基を有する
フェニル基等が好ましい。
【0034】RおよびRはそれぞれ独立して、水素
原子、メチル、エチル、n−プロピルおよびイソプロピ
ル基などの炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖である低
級アルキル基、アセチル、プロピオニルおよびベンゾイ
ル基などのアシル基、N−メチルカルバモイルおよびN
−フェニルカルバモイル基などのカルバモイル基、チオ
アセチル、チオプロピオニルおよびチオベンゾイル基な
どのチオアシル基、N−メチルチオカルバモイルおよび
N−フェニルチオカルバモイル基などのチオカルバモイ
ル基、メタンスルホニル、エタンスルホニル、ベンゼン
スルホニル、2,4,6−メシチルスルホニル、2,
4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニル、4−メ
トキシベンゼンスルホニル、4−クロロベンゼンスルホ
ニルおよびp-トルエンスルホニル基などの置換されてい
てもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基または
アリールスルホニル基である。R、Rとしては、少
なくとも一方が水素原子であることが好ましい。更に好
ましくは、R、Rとして一方がアリールスルホニル
基であることがが好ましく、特にp−トルエンスルホニ
ル基であることが好ましい。
【0035】本発明に使用される触媒を構成する光学活
性含窒素化合物は、好ましくは一般式(E)
【化17】 (式中、RおよびRは前記と同じであり、Rは、
水素原子またはアルキル基を示し、Rは、置換基を有
していてもよいアルキル基またはアリール基を示し、*
は不斉炭素原子を示す)で表されるジアミン誘導体であ
る。
【0036】さらに好ましい光学活性含窒素化合物は、
一般式(F)
【化18】 (式中、Rは前記と同じであり、R10、R11およ
びR12は、それぞれ独立して、水素原子、低級アルキ
ル基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基を示し、l、
m、nはそれぞれ独立して1〜5の整数を示し、*は不
斉炭素原子を示す)で示されるジアミン誘導体である。
【0037】一般式(E)および(F)のR、R
〜R12が、それぞれアルキル基、アリール基、ハ
ロゲン原子、アルコキシ基を示す場合の具体例は、前記
と同様のものが挙げられる。
【0038】一般式(D)、(E)、(F)で示される
具体的な光学活性含窒素化合物としては、例えば、1,
2−ジフェニルエチレンジアミン、N−メチル−1,2
−ジフェニルエチレンジアミン、N−(p−トルエンス
ルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N
−メタンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジア
ミン、N−メチル−N′−(p−トルエンスルホニル)
−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−p−メト
キシフェニルスルホニル−1,2−ジフェニルエチレン
ジアミン、N−p−クロロフェニルスルホニル−1,2
−ジフェニルエチレンジアミン、N−p−メシチルスル
ホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−
(2,4,6−トリイソプロピル)フェニルスルホニル
−1,2−ジフェニルエチレンジアミン等が挙げられ
る。
【0039】これら光学活性含窒素化合物と組み合わせ
て用いられる周期表第VIII属金属化合物の金属種として
は、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、コバルト、
鉄、ニッケル、パラジウム、白金、オスミウムが例示さ
れ、中でもルテニウムが好ましい。具体的な化合物とし
ては、RuCl3-3H2O、[RuCl2(p-cymene)]2、[RuCl2(benze
ne)]2、[RuCl2(mesitylene)]2、[RuCl2(hexamethylbenz
ene)]2、RuCl2(PPh3)3、[RuCl2(cod)]n、[RuCl2(C
O)3]2、[Rh(cod)Cl]2、[RhCl2(pentamethylcyclopentad
ienyl)]2、[Ir(cod)Cl]2、CoCl2、NiCl2、NiBr2、NiCl2
(PPh3)2、NiBr2(PPh3)2、PdCl2、Pd(PPh3)4、PdCl2(CH3
CN)2、PdCl2(PhCN)2、PtCl2(cod)、Pt(PPh3)4、などが
例示され、好ましくは[RuCl2(p-cymene)]2、[RuCl2(ben
zene)]2、[RuCl2(mesitylene)]2、および[RuCl2(hexame
thylbenzene)]2である。なお、上記化合物のPhはフェニ
ル基を表し、codはシクロオクタジエンを表す。
【0040】本発明は、(1)アジドケトン類の不斉還
元反応工程、(2)光学活性なアジドアルコール類の還
元工程、の2つ工程を含む。
【0041】(1)アジドケトン類の不斉還元反応工程 本発明の不斉還元工程は、周期表第VIII属金属化合物、
光学活性含窒素化合物、および塩基の存在下または非存
在下で、原料を水素供与体と接触させて行なわれる。周
期表第VIII族金属化合物と光学活性含窒素化合物を反応
容器に別々に加えてもよく、または、不斉還元反応の実
施前に両者を反応させて周期表第VIII族金属原子に光学
活性含窒素化合物が配位した錯体を別個に調製し、これ
を用いてもよい。具体的な触媒合成法としてJ.Am.Chem.
Soc. 1995, 117, p7562に開示されている公知の方法が
適用できる。例えば2−プロパノールなどの溶媒中、ト
リエチルアミンなどの塩基存在下、光学活性含窒素化合
物と周期表第VIII属金属化合物を加熱することにより金
属原子に光学活性含窒素化合物が配位したジアミン錯体
が得られる。これをそのまま用いてもよく、ここからAn
gew.Chem.Int.Ed.Engl. 1997, 36, p285に開示されてい
る公知の方法でジアミン錯体を結晶として単離してもよ
い。
【0042】また周期表第VIII族金属原子に光学活性含
窒素化合物が配位した錯体としては、塩化物錯体、アミ
ド錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。塩化物錯体の
具体的な例としては、クロロ[(S,S)−N―(p−
トルエンスルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジ
アミン]ベンゼンルテニウム、クロロ[(R,R)−N―
(p−トルエンスルホニル)−1,2−ジフェニルエチ
レンジアミン]ベンゼンルテニウム、クロロ[(S,S)
−N―(p−トルエンスルホニル)−1,2−ジフェニ
ルエチレンジアミン](p−シメン)ルテニウム、クロ
ロ[(R,R)−N―(p−トルエンスルホニル)−
1,2−ジフェニルエチレンジアミン] (p−シメン)
ルテニウム、クロロ[(S,S)−N―(p−トルエン
スルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン]
(メシチレン)ルテニウム、クロロ[(R,R)−N―
(p−トルエンスルホニル)−1,2−ジフェニルエチ
レンジアミン] (メシチレン)ルテニウム、クロロ
[(S,S)−N―(p−トルエンスルホニル)−1,
2−ジフェニルエチレンジアミン](ヘキサメチルベン
ゼン)ルテニウム、クロロ[(R,R)−N―(p−ト
ルエンスルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジア
ミン] (ヘキサメチルベンゼン)ルテニウム、クロロ
[(S,S)−N―メタンスルホニル−1,2−ジフェ
ニルエチレンジアミン]ベンゼンルテニウム、クロロ
[(R,R)−N―メタンスルホニル−1,2−ジフェ
ニルエチレンジアミン]ベンゼンルテニウム、クロロ
[(S,S)−N―メタンスルホニル−1,2−ジフェ
ニルエチレンジアミン](p−シメン)ルテニウム、ク
ロロ[(R,R)−N―メタンスルホニル−1,2−ジ
フェニルエチレンジアミン] (p−シメン)ルテニウ
ム、クロロ[(S,S)−N―メタンスルホニル−1,
2−ジフェニルエチレンジアミン](メシチレン)ルテ
ニウム、クロロ[(R,R)−N―メタンスルホニル−
1,2−ジフェニルエチレンジアミン] (メシチレン)
ルテニウム、クロロ[(S,S)−N―メタンスルホニ
ル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン](ヘキサメ
チルベンゼン)ルテニウム、クロロ[(R,R)−N―
メタンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミ
ン] (ヘキサメチルベンゼン)ルテニウムなどが挙げら
れる。
【0043】アミド錯体の具体的な例としては、
[(S,S)−N―(p−トルエンスルホニル)−1,
2−ジフェニルエチレンジアミン]ベンゼンルテニウ
ム、 [(R,R)−N―(p−トルエンスルホニル)−
1,2−ジフェニルエチレンジアミン]ベンゼンルテニ
ウム、 [(S,S)−N―(p−トルエンスルホニル)
−1,2−ジフェニルエチレンジアミン](p−シメ
ン)ルテニウム、 [(R,R)−N―(p−トルエンス
ルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン]
(p−シメン)ルテニウム、 [(S,S)−N―(p−
トルエンスルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジ
アミン](メシチレン)ルテニウム、 [(R,R)−N
―(p−トルエンスルホニル)−1,2−ジフェニルエ
チレンジアミン] (メシチレン)ルテニウム、 [(S,
S)−N―(p−トルエンスルホニル)−1,2−ジフ
ェニルエチレンジアミン](ヘキサメチルベンゼン)ル
テニウム、 [(R,R)−N―(p−トルエンスルホニ
ル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン] (ヘキサ
メチルベンゼン)ルテニウム、 [(S,S)−N―メタ
ンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン]
ベンゼンルテニウム、 [(R,R)−N―メタンスルホ
ニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン]ベンゼン
ルテニウム、 [(S,S)−N―メタンスルホニル−
1,2−ジフェニルエチレンジアミン](p−シメン)
ルテニウム、 [(R,R)−N―メタンスルホニル−
1,2−ジフェニルエチレンジアミン] (p−シメン)
ルテニウム、 [(S,S)−N―メタンスルホニル−
1,2−ジフェニルエチレンジアミン](メシチレン)
ルテニウム、 [(R,R)−N―メタンスルホニル−
1,2−ジフェニルエチレンジアミン] (メシチレン)
ルテニウム、 [(S,S)−N―メタンスルホニル−
1,2−ジフェニルエチレンジアミン](ヘキサメチル
ベンゼン)ルテニウム、 [(R,R)−N―メタンスル
ホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン] (ヘキ
サメチルベンゼン)ルテニウムなどが挙げられる。
【0044】ヒドリド錯体の具体的な例としては、ヒド
リド[(S,S)−N―(p−トルエンスルホニル)−
1,2−ジフェニルエチレンジアミン]ベンゼンルテニ
ウム、ヒドリド[(R,R)−N―(p−トルエンスル
ホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン]ベン
ゼンルテニウム、ヒドリド[(S,S)−N―(p−ト
ルエンスルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジア
ミン](p−シメン)ルテニウム、ヒドリド[(R,R)
−N―(p−トルエンスルホニル)−1,2−ジフェニ
ルエチレンジアミン] (p−シメン)ルテニウム、ヒド
リド[(S,S)−N―(p−トルエンスルホニル)−
1,2−ジフェニルエチレンジアミン](メシチレン)
ルテニウム、ヒドリド[(R,R)−N―(p−トルエ
ンスルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミ
ン] (メシチレン)ルテニウム、ヒドリド[(S,S)
−N―(p−トルエンスルホニル)−1,2−ジフェニ
ルエチレンジアミン](ヘキサメチルベンゼン)ルテニ
ウム、ヒドリド[(R,R)−N―(p−トルエンスル
ホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン] (ヘ
キサメチルベンゼン)ルテニウム、ヒドリド[(S,
S)−N―メタンスルホニル−1,2−ジフェニルエチ
レンジアミン]ベンゼンルテニウム、ヒドリド[(R,
R)−N―メタンスルホニル−1,2−ジフェニルエチ
レンジアミン]ベンゼンルテニウム、ヒドリド[(S,
S)−N―メタンスルホニル−1,2−ジフェニルエチ
レンジアミン](p−シメン)ルテニウム、ヒドリド
[(R,R)−N―メタンスルホニル−1,2−ジフェ
ニルエチレンジアミン] (p−シメン)ルテニウム、ヒ
ドリド[(S,S)−N―メタンスルホニル−1,2−
ジフェニルエチレンジアミン](メシチレン)ルテニウ
ム、ヒドリド[(R,R)−N―メタンスルホニル−
1,2−ジフェニルエチレンジアミン] (メシチレン)
ルテニウム、ヒドリド[(S,S)−N―メタンスルホ
ニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン](ヘキサ
メチルベンゼン)ルテニウム、ヒドリド[(R,R)−
N―メタンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジ
アミン] (ヘキサメチルベンゼン)ルテニウムなどが挙
げられる。
【0045】水素供与体として好適なものは、メタノー
ル、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノー
ル、1−ブタノール、sec−ブチルアルコール、ベン
ジルアルコール等の水素原子をα位に有するアルコール
化合物、ギ酸およびその塩等があり、好ましくは2−プ
ロパノールとギ酸が例示される。水素供与体は、単独で
用いても、複数併用してもよい。
【0046】不斉還元反応は塩基存在下または非存在下
で実施される。塩基としては水酸化リチウム、水酸化ナ
トリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化
物、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナト
リウムエトキシド、カリウムイソプロポキシドなどのア
ルカリ金属アルコキシド、トリメチルアミン、トリエチ
ルアミン、トリイソプロピルアミンなどの有機アミン類
が例示される。塩基を使用する場合は、触媒に対して過
剰量、例えばモル比で1〜10,000モル倍を用いる
のが好ましい。また塩基は、単独で用いてもよく複数併
用してもよい。一般にアルコールを水素供与体に用いる
場合は水酸化カリウムを1〜10モル倍、ギ酸を水素供
与体に用いる場合はトリエチルアミンを触媒に対して大
過剰、例えば1〜10,000モル倍用いて行なわれ
る。また、不斉還元反応は、水素供与体として2−プロ
パノールなどのアルコール化合物を使用した場合には、
塩基の非存在下で実施される場合がある。
【0047】好適な水素供与体と塩基との組み合わせと
しては2−プロパノール/水酸化カリウムおよびギ酸/
トリエチルアミンが挙げられ、最も好適なものはギ酸/
トリエチルアミンである。ギ酸とアミンを組み合わせて
用いる場合には、あらかじめギ酸とアミンの混合物を調
製して用いてもよく、また反応容器内で調製して用いて
もよい。ギ酸とトリエチルアミンのモル比(〔ギ酸のモ
ル数/第3級アミンのモル数〕の値)は、カルボニル化
合物の酸や塩基に対する安定性を考慮し、ギ酸とトリエ
チルアミン添加量を変えて最適なギ酸/トリエチルアミ
ンのモル比にすることが必要である。
【0048】特開平9-157196号の実施例の反応条件であ
るギ酸/トリエチルアミンのモル比2.5でα−アジドケ
トンを還元すると基質同士の縮合反応等が起きて、目的
物が得られなかったり、低収率であったり、反応が進行
しないなどの不都合が生じたことから、基質ごとにギ酸
/トリエチルアミンのモル比を設定することが必要とな
る。このようなギ酸/トリエチルアミンのモル比は、
0.1〜5.0であり、好ましくは0.2〜3.0であ
る。さらに好ましいのは、ギ酸/トリエチルアミンのモ
ル比を1.2以下である。
【0049】通常は水素供与体自体を反応溶媒として利
用するが、原料を溶解させるために、トルエン、キシレ
ン等の芳香族化合物、ジクロロメタン等のハロゲン化合
物、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムア
ミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニト
リル等の有機化合物を単独で、あるいは併用して用いる
ことができる。
【0050】周期表第VIII属金属化合物に対する原料の
量は、通常、周期表第VIII属金属化合物に対する原料の
モル比(S/C)で10〜100,000を用い、好まし
くは100〜2,000である。原料に対する水素供与
体量は、通常1モル倍から大過剰(通常1000モル
倍)の範囲までで、一般にアルコールを水素供与体に用
いる場合は、溶媒を兼ねて大過剰に用い、ギ酸を水素供
与体に用いる場合は1モル倍から20モル倍の範囲で使
用される。反応温度は、−20℃〜100℃程度であれ
ば特に限定されないが、工業的に製造するためには、1
0℃〜50℃が好ましい。特に好ましい温度範囲は20
℃〜40℃の室温付近であり、この温度範囲であれば特
別な設備等を必要としないで反応を実施することもでき
る。反応圧力は特に限定されず、通常0.5気圧〜2気
圧、好ましくは1気圧のもとで行われる。反応時間は反
応基質濃度、温度、圧力等の反応条件によって異なる
が、数分から100時間で反応は完結する。生成物の精
製は、カラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等の公
知の方法により行うことができる。
【0051】(2)光学活性なアジドアルコール類の還
元工程 前記一般式(B)で表される光学活性なアジドアルコー
ル類を還元することにより、一般式(C)で表される光
学活性アミノアルコール類を得る反応においては、不均
一系金属触媒、金属水素化物または水素化ホウ素化合物
を用いることができる。
【0052】不均一系金属触媒としては、例えば炭素担
持のパラジウム、水酸化パラジウム、ニッケル、白金等
を用いることができる。これらの不均一系金属触媒を、
一般式(B)で表されるアジドアルコールに対して0.
01〜10(w/w)%、好ましくは0.05〜5(w/
w)%用い、水素を常圧〜100気圧、好ましくは常圧
〜50気圧かけて還元反応を行うことができる。
【0053】金属水素化物としては、例えば、LiAl
やDIBAL(ジイソブチルアルミニウムハイドラ
イド)等のアルミニウム水素化物、LiBHやNaB
等のアルカリ金属ホウ素水素化合物、水素化カルシ
ウム、ニッケル水素化物などの金属水素化物などを用い
ることができる。また、ホウ素化合物としては、例え
ば、9−BBN(9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナ
ン)やボラン(BHまたはBH・(CHS錯
体等)等のホウ素水素化物を用いることができる。
【0054】生成した光学活性アミノアルコール類の精
製は、カラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等の公
知の方法により行うことができる。本発明により製造さ
れるアミノアルコール類のうち、光学活性β−アミノア
ルコール類は、例えばβ−アドレナリン作動性効果遮断
薬の医薬品中間体として有用である。
【0055】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、以下の実施例に限定されるものではない。な
お、実施例中の%eeはエナンチオマー過剰率を示し、S/
Cは触媒に対する基質のモル比(ルテニウムに対する基
質のモル比)を示す。またTsdpenは、N-(p-トルエンス
ルホニル)-1,2-ジフェニル-1,2-エタンジアミンを示
す。
【0056】(実施例1) (R)−2−アジド−1−
フェニルエタノールの製造 2−アジド−1−フェニルエタノン161mg(1.0mmol)、ト
リエチルアミン 0.72ml(5.2mmol)、ギ酸 0.12ml(3.1mmo
l)、RuCl[(S,S)-Tsdpen](p-cymene) 6.4mg(0.01mmol、S
/C=100)を、アルゴン雰囲気下に20mlシュレンクに入
れ、30℃にて24時間攪拌した。反応溶液をH−NMR
で定量したところ、(R)−2−アジド−1−フェニル
エタノールを収率65%で得た。これをCHIRALC
EL OJカラム(溶離液;n-ヘキサン:2−プロパノ
ール=120:5)で分析したところ、光学純度は92%eeで
あった。
【0057】(実施例2)ギ酸とトリエチルアミンを表
−1に示す比で添加した他は、実施例1と同様の条件で
反応を行った。表−1に実施例1および2の結果を示
す。
【0058】
【表1】
【0059】(実施例3) (R)−2−アジド−1−(4
−クロロフェニル)エタノールの製造 2−アジド−1−(クロロフェニル)−1−エタノン58
7mg(3.0mmol)、トリエチルアミン 2.17ml(15.6mmol)、
ギ酸 0.35ml(9.3mmol)、RuCl[(S,S)-Tsdpen](p-cymene)
19.1mg(0.03mmol、S/C=100)を、アルゴン雰囲気下に2
0mlシュレンクに入れ、30℃にて24時間攪拌した。反応
溶液をH−NMRで定量したところ、(R)−2−ア
ジド−1−(クロロフェニル)エタノールを収率71%
で得た。これをCHIRALCEL OJカラム(溶離
液;n-ヘキサン:2−プロパノール=98:2)で分析した
ところ、光学純度は93%eeであった。
【0060】(実施例4) (R)−2−アミノ−1−フ
ェニルエタノールの製造 光学純度92%eeの(R)−2−アジド−1−フェニル
エタノール400mg(2.45mmol)、10% Pd/C 40mg、メタノー
ル 2.5mlをナスフラスコに入れ、常圧の水素雰囲気下、
30℃にて22時間攪拌した。反応終了後、触媒を濾別し、
減圧下で溶媒を留去したところ、(R)−2−アミノ−
1−フェニルエタノール326mg(収率 97%、H-NMR)
を得た。(R)−2−アミノ−1−フェニルエタノール
のアミノ基を塩化ベンゾイルとの反応によりモノベンゾ
イル化し、CHIRALCELODカラム(ダイセル社
製、溶離液;n−ヘキサン:2−プロパノール=12
0:5)で分析したところ、光学純度92%eeであっ
た。
【0061】(比較例1) (R)−2−アジド−1−
フェニルエタノールの製造 2−アジド−1−フェニルエタノン161mg(1.0mmol)、ト
リエチルアミン 0.36ml(2.6mmol)、ギ酸 0.19ml(5.0mmo
l)、RuCl[(S,S)-Tsdpen](p-cymene) 3.2mg(0.005mmol、
S/C=200)および溶媒としてジクロロメタン1.0mlを加
え、アルゴン雰囲気下に20mlシュレンクに入れ、30℃に
て48時間攪拌した。反応溶液をH−NMRで定量した
ところ、(R)−2−アジド−1−フェニルエタノール
の収率は2%であった。
【0062】(比較例2) (R)−2−アジド−1−
フェニルエタノールの製造 2−アジド−1−フェニルエタノン161g(1.0mmol)、ト
リエチルアミン0.33ml(2.4mmol)、ギ酸 0.23ml(6.0mmo
l)、RuCl[(S,S)-Tsdpen](p-cymene)6.4mg(0.01mmol、S/
C=100)および溶媒としてDMF1.0mlを、アルゴン雰囲
気下に20mlシュレンクに入れ、30℃にて24時間攪拌し
た。反応溶液をH−NMRで定量したところ、(R)
−2−アジド−1−フェニルエタノールの収率は0%で
あった。
【0063】
【発明の効果】本発明によれば、アジドケトン類からカ
ルボニル化合物同士の縮合反応等の副反応を抑制して、
高い反応収率、かつ高い光学純度で光学活性なアジドア
ルコール類を製造し、さらにそれら中間体を還元するこ
とで、医薬品中間体として重要な光学活性アミノアルコ
ール類を効率よく製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 碇屋 隆雄 東京都北区田端4−5−5−602 Fターム(参考) 4H006 AA02 AC41 AC52 AC81 BA23 BA29 BA45 BA51 BC10 BE20 BE23 4H039 CA60 CA71 CB20 CB30

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(A) 【化1】 (式中、Rは置換基を有していてもよい芳香族単環
    (ただし、メタ位にアルキルスルホニルアミノ基を有す
    るものを除く)または芳香族多環式炭化水素基、無置換
    もしくは置換基を有していてもよい飽和もしくは不飽和
    の脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基、あるいは
    置換基を有していてもよい複素単環または複素多環式基
    であり、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、
    ハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基またはアルコキ
    シ基、置換基を有していてもよい芳香族単環または芳香
    族多環式炭化水素基、無置換もしくは置換基を有してい
    てもよく、異種原子を含んでもよい飽和もしくは不飽和
    の脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基、あるいは
    置換基を有していてもよい複素単環または複素多環式基
    であり、R〜Rのうち任意の2つが互いに結合して
    環を形成してもよい)で表される化合物と、光学活性含
    窒素化合物、周期表第VIII族金属化合物、水素供与体と
    を、塩基の存在下または非存在下で反応させて一般式
    (A)の化合物から一般式(B) 【化2】 (式中、R、R、RおよびXは前記と同じであ
    り、*は不斉炭素原子を表す)で示される化合物を得る
    工程、および一般式(B)の化合物から一般式(C) 【化3】 (式中、R、RおよびRは前記と同じであり、*
    は不斉炭素原子を表す)で示される化合物を得る工程を
    含む、光学活性アミノアルコール類の製造方法。
  2. 【請求項2】 一般式(A)の化合物から一般式(B)
    で示される化合物を得る工程において、一般式(A)の
    化合物と、あらかじめ光学活性含窒素化合物と周期表第
    VIII族金属化合物とから調製した錯体と、水素供与体と
    を塩基存在下または非存在下で反応させて一般式(B)
    で示される化合物を得ることを特徴とする、請求項1に
    記載の光学活性アミノアルコール類の製造方法。
  3. 【請求項3】 光学活性含窒素化合物が、一般式(D) 【化4】 (式中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を
    有していてもよい芳香族単環または芳香族多環式炭化水
    素基、無置換もしくは置換基を有していてもよく、異種
    原子を含んでもよい飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水
    素基または脂環式炭化水素基、あるいは置換基を有して
    いてもよい複素単環または複素多環式基を示し、R
    は互いに結合して環を形成してもよく、Rおよび
    はそれぞれ独立して、水素原子、低級アルキル基、
    アシル基、カルバモイル基、チオアシル基、チオカルバ
    モイル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホ
    ニル基を示し、*は不斉炭素原子を表す)で示される化
    合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載
    の光学活性アミノアルコール類の製造方法。
  4. 【請求項4】 光学活性含窒素化合物が、一般式(E) 【化5】 (式中、RおよびRは前記と同じであり、Rは、
    水素原子またはアルキル基を示し、Rは、置換基を有
    していてもよいアルキル基またはアリール基を示し、*
    は不斉炭素原子を示す)で示される化合物であることを
    特徴とする、請求項3に記載の光学活性アミノアルコー
    ル類の製造方法。
  5. 【請求項5】 光学活性含窒素化合物が、一般式(F) 【化6】 (式中、Rは前記と同じであり、R10、R11およ
    びR12は、それぞれ独立して、水素原子、低級アルキ
    ル基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基を示し、l、
    m、nはそれぞれ独立して1〜5の整数を示し、*は不
    斉炭素原子を示す)で示される化合物であることを特徴
    とする、請求項4に記載の光学活性アミノアルコール類
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 周期表第VIII族金属化合物が、ルテニウ
    ム化合物であることを特徴とする、請求項1〜5のいず
    れかに記載の光学活性アミノアルコール類の製造方法。
  7. 【請求項7】 水素供与体が、ギ酸、ギ酸塩およびアル
    コール化合物からなる群より選択される1または2以上
    の化合物であり、塩基が、有機アミン類、アルカリ金属
    水酸化物およびアルカリ金属アルコキシドからなる群よ
    り選択される1または2以上の化合物であることを特徴
    とする、請求項1〜6のいずれかに記載の光学活性アミ
    ノアルコール類の製造方法。
  8. 【請求項8】 水素供与体がギ酸であり、塩基が第3級
    アミンであることを特徴とする、請求項7に記載の光学
    活性アミノアルコール類の製造方法。
  9. 【請求項9】 一般式(B)の化合物から一般式(C)
    の化合物を得る工程が、不均一系金属触媒存在下に水素
    を作用させることによる還元工程、あるいは金属水素化
    物または水素化ホウ素化合物を作用させることによる還
    元工程であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれ
    かに記載の光学活性アミノアルコール類の製造方法。
  10. 【請求項10】 一般式(A)の化合物から一般式
    (B)の化合物を得る工程において、〔ギ酸のモル数/
    第3級アミンのモル数〕の値が1.2以下であることを
    特徴とする、請求項8または9に記載の光学活性アミノ
    アルコール類の製造方法。
  11. 【請求項11】 一般式(A)の化合物から一般式
    (B)の化合物を得る工程において、反応温度が10℃
    〜50℃であることを特徴とする、請求項1〜10のい
    ずれかに記載の光学活性アミノアルコール類の製造方
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2005263662A (ja) * 2004-03-17 2005-09-29 Kanto Chem Co Inc 含窒素ヘテロ環をもつ光学活性アルコールの製造方法
JP4718786B2 (ja) * 2004-03-17 2011-07-06 関東化学株式会社 含窒素ヘテロ環をもつ光学活性アルコールの製造方法

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