JP2003196825A - 磁気テープおよび磁気テープカートリッジ - Google Patents

磁気テープおよび磁気テープカートリッジ

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JP2003196825A
JP2003196825A JP2002358374A JP2002358374A JP2003196825A JP 2003196825 A JP2003196825 A JP 2003196825A JP 2002358374 A JP2002358374 A JP 2002358374A JP 2002358374 A JP2002358374 A JP 2002358374A JP 2003196825 A JP2003196825 A JP 2003196825A
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tape
magnetic tape
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Masaru Yoshimura
賢 吉村
Tsuguhiro Doi
嗣裕 土井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 [(記録トラック幅)−(再生トラック
幅)]が16μm以下(特に10μm以下)と狭い場合
であっても、オフトラックによる再生出力の低下が生じ
にくいサーボ特性に優れた磁気テープおよび磁気テープ
カートリッジを提供する。 【解決手段】 磁性層またはバックコート層にトラッキ
ング制御用のサーボ信号が記録され、[(記録トラック
幅)−(再生トラック幅)]が16μm以下である磁気
テープにおいて、テープ走行時に走行基準側となる一方
のテープエッジまたはその反対側となるテープエッジに
存在するエッジウィーブ量α[μm]が1.5μm以下で
あり、テープ幅方向の湿度膨張係数が(0〜14)×1
-6/%RHである構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として、記録容
量、アクセス速度、転送速度が高い磁気テープおよびこ
れを備えた磁気テープカートリッジに関し、特にトラッ
クサーボ用の磁気信号または光学信号が記録され、磁気
抵抗効果素子を利用した再生ヘッド(以下、MRヘッ
ド)によって磁気記録信号が再生される磁気テープと、
これを備えたデータバックアップ用として好適な1リー
ル型の磁気テープカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】磁気テープは、オーディオテープ、ビデ
オテープ、コンピユーターテープなど種々の用途がある
が、特にデータバックアップ用の磁気テープ(バックア
ップテープ)の分野ではバックアップ対象となるハード
ディスクの大容量化に伴い、1巻当たり100GB以上
の記憶容量のものも商品化されており、今後ハードディ
スクのさらなる大容量化に対応するためこの種のバック
アップテープの高容量化は不可欠となっている。また、
アクセス速度、転送速度を大きくするため、テープの送
り速度、テープとヘッド間の相対速度を高めることも必
要不可欠となっている。
【0003】バックアップテープ1巻当たりの高容量化
のためには、テープ全厚を薄くして1巻あたりのテープ
長さを長くすること、磁性層厚さを0.3μm以下と極め
て薄くすることで厚さ減磁を小さくして記録波長を短く
すること、記録トラック幅を狭くしてテープ幅方向の記
録密度を高くすることが必要である。
【0004】磁性層厚さを0.3μm以下と極めて薄くす
ると、耐久性が劣化するなどの問題が生じるので、これ
を防止するために非磁性支持体と磁性層との間に少なく
とも一層の下塗層を設ける必要がある。また、記録波長
を短くすると、磁性層と磁気ヘッドとのスペーシングの
影響が大きくなるので、磁性層の大きな突起やへこみが
あると、スペーシングロスによる出力の低下により、エ
ラーレートが高くなる。
【0005】記録トラック幅を狭くしてテープ幅方向の
記録密度を高くすると、磁気テープからの漏れ磁束が小
さくなるため、再生ヘッドに微小磁束でも高い出力が得
られる磁気抵抗効果型素子を使用したMRヘッドを使用
する必要がある。
【0006】MRヘッド対応の磁気記録媒体には、例え
ば特許文献1〜3等に記載されたものがある。これらの
公報に記載された磁気記録媒体では、その磁束(残留磁
束密度と厚さの積)を特定の値以下にしてMRヘッドの
出力の歪を防止したり、磁性層表面のへこみを特定の値
以下にしてMRヘッドのサーマル・アスペリティを低減
させたりしている。
【0007】また、記録トラック幅を狭くすると、オフ
トラックによる再生出力の低下が問題になるので、これ
を避けるためにトラックサーボが必要になる。トラック
サーボ方式には、光学トラックサーボ方式(特許文献4
〜6)や磁気サーボ方式があるが、いずれの方式を採用
するにしても、箱状のケース本体の内部に磁気テープを
収めた磁気テープカートリッジ(カセットテープともい
う)においては、磁気テープ巻装用のリールを一つしか
持たない1リール型(単リール型)にして、その上でカ
ートリッジから引き出した磁気テープにトラックサーボ
を行う必要がある。これは、テープ走行速度を高める
(例えば2.5m/s以上にする)と、テープ繰り出し用
とテープ巻き取り用の2つのリールを持った2リール型
では安定走行できないためである。また、2リール型で
はカートリッジサイズが大きくなり、体積当たりの記憶
容量が小さくなる。
【0008】先に述べたようにトラックサーボ方式には
磁気サーボ方式と光学サーボ方式があるが、前者は、後
述する図10に示すようなサーボトラックバンドを磁気
記録により磁性層に形成し、これを磁気的に読み取って
サーボトラッキングを行うものであり、後者は、凹部ア
レイからなるサーボトラックバンドをレーザー照射等で
バックコート層に形成し、これを光学的に読み取ってサ
ーボトラッキングを行うものである。なお、磁気サーボ
方式にはバックコート層にも磁性を持たせ、このバック
コート層に磁気サーボ信号を記録する方式(例えば特許
文献7)があり、また光学サーボ方式にはバックコート
層に光を吸収する材料等で光学サーボ信号を記録する方
式(例えば特許文献8)もある。
【0009】ここで、前者の磁気サーボ方式を例にとっ
てトラックサーボの原理を簡単に説明する。図10に示
すように、磁気サーボ方式を採用する磁気テープ3で
は、磁性層にそれぞれテープ長手方向に沿って延びる、
例えば約2.8mm間隔のトラックサーボ用のサーボバンド
200とデータ記録用のデータトラック300とが設け
られる。このうちサーボバンド200は、各々サーボト
ラック番号を磁気的に記録した複数のサーボ信号記録部
201からなる。磁気テープに対してデータの記録・再
生を行う磁気ヘッドアレイ(図7参照)は、両端に一対
(順走行用と逆走行用)のサーボトラック用MRヘッド
と、両端のサーボトラック用MRヘッドに挟まれた例え
ば8×1対の記録・再生用ヘッド(記録ヘッドは磁気誘
導型ヘッドで構成され、再生ヘッドはMRヘッドで構成
される)とを有しており、サーボ信号を読み取ったサー
ボトラック用MRヘッドからの信号に基づいて磁気ヘッ
ドアレイ全体が連動して動くことで、記録・再生用ヘッ
ドがテープ幅方向に移動してデータトラック(例えば、
8×1対の記録・再生ヘッドが搭載された磁気ヘッドア
レイでは、サーボトラック一対に対応して8本のデータ
トラックが存在する)に到達する。
【0010】このとき、磁気テープは、その長手方向に
沿った両端部(テープエッジ)のうちの一方のテープエ
ッジが、例えば、磁気記録再生装置(テープ駆動装置)
に備えられたガイドローラのフランジ内面によってテー
プ幅方向位置を規制された状態で走行するが(図8参
照)、図4に一部拡大して模式的に示したように、磁気
テープ3のテープエッジ3aには、通常、エッジウィー
ブまたはエッジウェーブと呼ばれる波打ち状の凹凸(テ
ープ幅方向の端面がテープ長手方向に沿って波打つこと
によってできた凹凸)が存在する。そのため、磁気テー
プ3は上記の走行基準となるフランジ内面に沿って走行
していてもその幅方向の位置が微妙に変動する。しか
し、先に述べたようなサーボ方式を採用することで、磁
気テープの位置がその幅方向に微妙に変動してもこれに
伴って磁気ヘッドアレイ全体がテープ幅方向に移動し
て、記録・再生用ヘッドは絶えず正しいデータトラック
に到達する。
【0011】このような場合において、テープ走行速度
をV、エッジウィーブの周期をfとした時の周波数
[(V/f):s-1=Hz]が80Hz以上(特に20
0Hz以上)と高いエッジウィーブαがあると、磁気ヘ
ッドアレイが追随できず、トラックずれという問題が発
生する。ただ、このようなトラックずれが生じたとして
も、記録トラック幅が30μm以上と広く、[(記録ト
ラック幅)−(再生トラック幅)]が16μmを超える
場合(例えば記録トラック幅が約80μmで再生トラッ
ク幅が約50μmであるような場合)は、さほど問題視
する必要はない。なぜなら、記録トラック幅が30μm
以上と広く、[(記録トラック幅)−(再生トラック
幅)]が16μmを超える場合は、数μm程度のトラッ
クずれがあっても記録トラック幅が再生トラック幅に比
べて充分広く、再生トラックは記録トラック上を走行す
るので、出力低下にはつながらないからである。
【0012】また、温度環境や湿度環境の変化がある
と、これに伴う磁気テープの幅方向の伸縮によりトラッ
クずれを生じることがある。磁気テープの温度・湿度膨
張係数を小さくしてこのような問題を解決しようとする
方法には、特許文献9〜13等に記載されたものがあ
る。しかし、このような温度・湿度環境の変化に伴うト
ラックずれが生じたとしても、記録トラック幅が30μ
m以上と広く、[(記録トラック幅)−(再生トラック
幅)]が16μmを越える場合は、上記と同様の理由に
より、さほど問題視する必要はない。なお、磁気テープ
長手方向の湿度膨張や温度膨張は、記録波長等の変化の
原因とはなるが、これについては回路補正が可能であ
る。
【0013】さらに、本発明者らが調べたところ、記録
トラック幅が30μm以下と狭く、[(記録トラック
幅)−(再生トラック幅)]が16μm以下と狭い場合
であっても、特定の条件の下では、それほど問題とはな
らないことも確認された。すなわち、(a)エッジウィ
ーブに伴うトラックずれが大きくても、温度・湿度変化
に伴うトラックずれが小さいときや、(b)温度・湿度
変化に伴うトラックずれが大きくても、エッジウィーブ
に伴うトラックずれが小さいときは、オフトラックに伴
う再生出力低下は殆ど問題にはならなかった。
【0014】
【特許文献1】特開平11−238225号公報
【特許文献2】特開2000−40217号公報
【特許文献3】特開2000−40218号公報
【特許文献4】特開平11−213384号公報
【特許文献5】特開平11−339254号公報
【特許文献6】特開2000−293836号公報
【特許文献7】特開平11−126327号公報
【特許文献8】特開平11−126328号公報
【特許文献9】特開平4−106723号公報
【特許文献10】特開平9−219016号公報
【特許文献11】特開平4−106723号公報
【特許文献12】特開平11−96545公報
【特許文献13】特開平11−250449号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、より詳
細に検討した結果、記録トラック幅が28μm以下とさ
らに狭く、[(記録トラック幅)−(再生トラック
幅)]が16μm以下と狭い場合には、エッジウィーブ
量および温度・湿度膨張係数(熱・湿度膨張係数)がそ
れぞれ単独では問題にならない程度に小さくても、オフ
トラックによる再生出力低下につながる場合があること
が判明した。すなわち、装置間で記録ヘッドと再生ヘッ
ドの位置に数μmのばらつきがあるが、最悪の組み合わ
せではこのばらつき量が倍化されるので、エッジウィー
ブに伴うトラックずれと、温度・湿度環境変化に伴うト
ラックずれとが加算されて、再生出力の低下が起こる。
この現象は、[(記録トラック幅)−(再生トラック
幅)]が10μm以下の場合に顕著である。
【0016】また、記録トラック幅を21μm以下とさ
らに狭くしたときには、従来問題にならなかった約2μ
m程度のエッジウィーブでもオフトラックによる再生出
力の低下が見られた。これは、再生出力を確保するため
に、再生トラック幅を従来と同じにする必要があり、そ
の結果としてオフトラックマージンが小さくなったこと
による。さらに、このように記録トラック幅が21μm
以下と狭い場合には、エッジウィーブの絶対値だけでは
なく、エッジウィーブの周期やテープの走行速度もオフ
トラックに複雑な関係を持つことがわかった。
【0017】そこで、記録トラック幅が21μm以下と
狭い磁気テープにサーボ方式を適用するに当たって、そ
のエッジウィーブの周期および量、記録トラック幅、再
生トラック幅ならびにテープ走行速度とヘッド追随性と
の関係等について詳しく調べた。その結果、図4に示し
たようにテープエッジに存在する周期がfのエッジウィ
ーブ量〔当該テープエッジのテープ幅方向(図4のY−
Y’方向)の変位量〕をα、テープ走行速度をV[mm/
s]、記録トラック幅をTw[μm]、再生トラック幅
Tr[μm]とした時に、〔α/(Tw−Tr)〕、
〔α/(Tw−Tr)〕×(V/f)がそれぞれ特定値
を越えると、PES(positioning errorsignal、位置
ずれ量のばらつきを表す数値、標準偏差1の値)が大き
くなり、トラッキングエラーを引き起こすことが明らか
になった。このような問題は、磁気ヘッドアレイ全体が
大きい質量を有しているので、〔α/(Tw−T
r)〕、〔α/(Tw−Tr)〕×(V/f)がそれぞ
れ特定値を超えると、これに伴って生じる磁気テープの
幅方向の動きに磁気ヘッドアレイの動きが追随できなく
なる結果、PESが大きくなり、オフトラックマージン
の小さい場合はオフトラックが大きくなったために生じ
たものと推定される。
【0018】本発明は、上述したような問題に対処する
もので、記録トラック幅が28μm以下(特に21μm
以下)と狭く、[(記録トラック幅)−(再生トラック
幅)]が16μm以下(特に10μm以下)と狭い場合
であっても、オフトラックによる再生出力の低下が生じ
にくい磁気テープおよび磁気テープカートリッジを提供
することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成するため、鋭意検討した結果、記録トラック幅
および再生トラック幅との関係さらにはテープ走行速度
との関係においてエッジウィーブの量を特定のものと
し、そのうえで磁気テープの幅方向の湿度膨張係数を特
定値以下にすると、記録トラック幅が28μm以下(特
に21μm以下)と狭く、[(記録トラック幅)−(再
生トラック幅)]が16μm以下(特に10μm以下)
と狭い場合において湿度変化があったときでも、磁気テ
ープのオフトラックが生じにくくなることを見いだし
た。
【0020】このような知見に基づき、本発明は、非磁
性支持体と、この非磁性支持体の一面に設けられた磁性
層と、非磁性支持体の反対面に設けられたバックコート
層とを有し、かつ磁性層またはバックコート層にはトラ
ッキング制御用のサーボ信号が記録され、[(記録トラ
ック幅)−(再生トラック幅)]が16μm以下である
磁気テープにおいて、テープ走行時に走行基準側となる
一方のテープエッジまたはその反対側となるテープエッ
ジに存在するエッジウィーブ量α[μm]が1.5μm以
下であり、テープ幅方向の湿度膨張係数が(0〜14)
×10-6/%RHである構成としたものである。
【0021】また、非磁性支持体と、この非磁性支持体
の一面に設けられた磁性層と、非磁性支持体の反対面に
設けられたバックコート層とを有し、かつ磁性層または
バックコート層にはトラッキング制御用のサーボ信号が
記録され、[(記録トラック幅)−(再生トラック
幅)]が16μm以下(特に10μm以下)で、400
0mm/s以上のテープ走行速度で使用される磁気テープ
において、テープ走行速度をV[mm/s]、テープ走行
時に走行基準側となる一方のテープエッジまたはその反
対側となるテープエッジに存在する周期がf[mm]のエ
ッジウィーブ量をα[μm]、記録トラック幅をTw
[μm]、再生トラック幅をTr[μm]とした時に、
それぞれ下記の条件を満たす構成とするのが望ましい。
【0022】まず、第1の望ましい構成は、[α/(T
w−Tr)]が0.2以下、すなわち[α/(Tw−T
r)]≦0.2となるように設定し、かつテープ幅方向の
湿度膨張係数を(0〜14)×10-6/%RH、テープ
幅方向の熱膨張係数を(0〜10)×10-6/℃とした
ものである。ここで、[α/(Tw−Tr)]は、0.1
4以下が好ましく、0.10以下がさらに好ましく、0が
最も好ましい。このような範囲にすることにより、[
(記録トラック幅)−(再生トラック幅) ] が16μ
m以下と狭い場合で、かつ、記録再生時の温度変化や湿
度変化があった時でも、オフトラックが生じにくくなる
からである。
【0023】湿度膨張係数を(0〜14)×10-6/%
RHとしたのは、この範囲を超えると、テープ膨張・収
縮により再生信号を読み取れなくなり、オフトラックが
生じてしまうためである。このようなオフトラックの発
生を更に確実に防止するには、テープ幅方向の湿度膨張
係数は(0〜7)×10-6/%RHが好ましく、(0〜
5)×10-6/%RHがより好ましく、0が最も好まし
い。なお、本発明者らの実験では湿度膨張係数が負にな
ることはなかったが、湿度膨張係数が負の場合もオフト
ラックの原因になることは言うまでもない。
【0024】テープ幅方向の熱膨張係数を(0〜10)
×10-6/℃としたのは、この範囲を超えると、テープ
が熱による膨張、収縮により、記録信号を読み取る再生
信号が読み取れなくなり、オフトラックが生じてしまう
ためである。このようなオフトラックの発生を更に確実
に防止するには、テープ幅方向の熱膨張係数は(0〜
7)×10-6/℃が好ましく、(0〜5)×10-6/℃
がさらに好ましく、0が最も好ましい。なお、本発明者
らの実験では熱膨張係数(温度膨張係数)が負になるこ
とはなかったが、熱膨張係数が負の場合もオフトラック
の原因になることは言うまでもない。
【0025】次に、第2の望ましい構成は、第1の望ま
しい構成で採用した[α/(Tw−Tr)]に周波数
(V/f)の要素を加味したもので、[α/(Tw−T
r)]×(V/f)が14[s-1]以下、すなわち[α
/(Tw−Tr)]×(V/f)≦14[s-1]となる
ように設定したものであり、それ以外の構成は第1の望
ましい構成と同様である。この第2の望ましい構成にお
いて、[α/(Tw−Tr)]×(V/f)は、8[s
-1]以下が好ましく、さらに好ましくは6[s-1]以
下、最も好ましくは0である。テープの走行速度が速く
なってもPESが小さくなってテープの記録再生出力の
オフトラックによる低下が少なくなるためである。な
お、湿度膨張係数および熱膨張係数の好ましい範囲につ
いては、本発明ないし第1の望ましい構成の場合と同様
である。
【0026】第3の望ましい構成は、上記の第1の望ま
しい構成で採用した条件と第2の望ましい構成で採用し
た条件のいずれをも満たすようにしたものであり、[α
/(Tw−Tr)]が0.2以下、[α/(Tw−T
r)]×(V/f)が14[s-1]以下、テープ幅方向
の湿度膨張係数が(0〜14)×10-6/%RH、熱膨
張係数が(0〜10)×10-6/℃である構成としたも
のである。
【0027】第4の望ましい構成は、上記の第1〜3の
望ましい構成において、[(記録トラック幅)−(再生
トラック幅)]を10μm以下としたものである。
【0028】また、本発明に係る磁気テープカートリッ
ジは、先に述べた本発明に係る磁気テープを巻装した1
個のリールを箱状のケース本体の内部に配置し、当該磁
気テープに記録したサーボ信号によってトラッキング制
御するようにしたものである。この場合のサーボ信号
は、磁気テープの磁性層またはバックコート層に磁気信
号として記録したものであってもよいし、磁気テープの
バックコート層に光学信号として記録したものであって
もよい。さらに、磁気テープにおける磁気記録信号は、
磁気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッドによって再生
されるものであることが好ましい。
【0029】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態につい
て説明する。〈磁気テープの積層構造と構成材料の湿度
膨張係数および熱膨張係数〉図1の(a)〜(c)は、
本発明に係る磁気テープの積層構成例を示したものであ
る。図中の符号3は磁気テープ、符号31は非磁性支持
体、符号32は下塗層、符号33は磁性層、符号34は
バックコート層、符号35は中間層をそれぞれ示す。
【0030】図1の(a)は中間層を設けない場合、す
なわち非磁性支持体31の一方の面に下塗層32と磁性
層33をこの順に積層形成し、反対側の面にバックコー
ト層34を形成した場合を示す。この場合、テープ幅方
向の湿度膨張係数がなるべく小さく且つ熱膨張係数が負
でその絶対値の値が大きい非磁性支持体[例えば、(0
〜5)×10-6/%RH、(−10〜0)×10-6
℃]31を使用して、通常の下塗層32、磁性層33、
バックコート層34を形成してもよいが、非磁性支持体
31と下塗層32との湿度膨張係数および熱膨張係数
(以下、この両係数を合わせて温湿度膨張係数または温
度・湿度膨張係数ともいう)の差が大きいので、界面の
接着強度が弱くなったり、磁気テープ3が反る等の弊害
が起こる恐れがある。これを避けるには、上記の非磁性
支持体31上に形成する下塗層32の結合剤の一部(2
0〜50重量%)を、湿度膨張係数が(10〜140)
×10 -6/%RH、熱膨張係数が(10〜70)×10
-6/℃、ガラス転移点が200〜350℃のポリアミド
イミド樹脂で置換してやればよい。ポリアミドイミド樹
脂は、通常下塗層に使用される塩化ビニル系樹脂やポリ
ウレタン系樹脂に比べて湿度膨張係数や熱膨張係数が小
さく、したがって前記のような置換を行うことによって
非磁性支持体31と下塗層32との温湿度膨張係数の差
が小さくなるからである。
【0031】図1の(b)は非磁性支持体31と下塗層
32との間に中間層35を設けた設けた場合、図1の
(c)は非磁性支持体31と下塗層32との間および非
磁性支持体31とバックコート層34との間に中間層3
5をそれぞれ設けた場合を示す。中間層35は、例え
ば、非磁性支持体31と隣接する層(下塗層32または
/およびバックコート層34)との温度・湿度膨張係数
の差が大きい場合に、両者の接着性を向上させる目的で
設けることができる。その場合の中間層35の構成材料
としては、温度・湿度膨張係数の値が非磁性支持体と通
常の結合剤樹脂の中間にある等の理由で、例えばポリア
ミドイミド樹脂を用いるのが好ましい。
【0032】また、下塗層やバックコート層に、平均粒
子径(板面方向の各粒子の最大径)が10〜200nm
(より好ましくは10〜100nm)の非磁性板状粒子
(例えば、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化アル
ミニウム、酸化珪素、酸化鉄)を添加してもよい。下塗
層やバックコート層にこのような非磁性板状粒子を添加
すると、塗布するときに機械的配向により板面が基材
(非磁性支持体)面に平行になるように並びやすく、ま
た、板状粒子の板面方向の相互作用が強いため、磁気テ
ープの膜面方向の温度膨張係数や湿度膨張係数が小さく
なるためである。
【0033】〈磁気テープカートリッジの構造〉図2は
本発明が適用される磁気テープカートリッジの一般的な
構造を示し、図3はその内部構造を示す。図2におい
て、磁気テープカートリッジは、上下ケース1a・1b
を蓋合わせ状に接合してなる角箱状のケース本体1を有
し、ケース本体1の内部に配置した1個のリール2に磁
気テープ3を巻装している。ケース本体1の前壁6の一
側端には、テープ引出口4が開口してある。テープ引出
口4は、スライド開閉可能なドア5で開閉できるように
なっている。リール2に巻装した磁気テープ3をケース
外へ引き出し操作するために、磁気テープ3の繰り出し
端にテープ引出具7が連結されている。符号20は、ド
ア5を閉じ勝手に移動付勢するためのドアばねを示す。
【0034】図3において、リール2は、上鍔部21と
下鍔部22、および下鍔部22と一体に成形されて上向
きに開口する有底筒状の巻芯部23とからなる。巻芯部
23の底壁23cは、ケース底壁の駆動軸挿入口1c上
に位置している。巻芯部23の底壁23cの外周には、
テープ駆動装置(磁気記録再生装置)側の部材に係合す
るギヤ歯が形成されており、底壁23cの中心には、テ
ープ駆動装置側のロック解除ピン(図示せず)の挿入を
許す底孔23dが設けられている。ケース本体1内に
は、不使用時にリール2の不用意な回転を阻止するリー
ルロック機構が備えられている。符号12は、このリー
ルロック機構を構成するブレーキボタンを示し、符号1
7は、同じくブレーキボタン12を図中の下方に付勢す
るスプリングを示している。
【0035】上記の磁気テープカートリッジに備えられ
た磁気テープ3は、図8に示すように、テープ走行時に
走行基準側となる一方のテープエッジ3aのテープ幅方
向外方への位置が規制された状態で、当該磁気テープ3
に記録されたサーボ信号によってトラッキング制御され
る。
【0036】リール2においては、図9に一部拡大して
示すように、テープ走行時に走行基準側となる一方のテ
ープエッジ3a側(図4および図8参照)に位置する巻
芯部23の一端側23aがその他端側23bよりも大径
となるように、巻芯部23の外周面が0.1〜1度のテー
パ角βを有するテーパ状に形成されている。加えて、巻
芯部23の直ぐ外側に位置するリール内周部内側におい
て対向する鍔部内面間の間隔S1が、「テープ幅の上限
値」+「0.204〜0.224mm」の範囲に設定されてい
るとともに、リール外周部内側において対向する鍔部内
面側の間隔S2(図3参照)が、「テープ幅の上限値」
+「0.484〜0.504mm」の範囲に設定されている。
これらの構成は、例えば図7に示すような磁気記録再生
装置(テープ駆動装置)において、磁気テープ3を走行
させたときに、図8に示すように先の一方のテープエッ
ジ3a側がガイドローラ70のフランジ内面(走行基準
となる面)に確実に沿うようにすることにより、磁気テ
ープ3の幅方向の微振動をできるだけ抑制ないし防止
し、これによってトラックサーボが良好に行われるよう
にするためのものである。同様の目的で、磁気テープ3
のカーバチャーについてはテープ長さ1m当り2mm以下
とし、磁気テープ3の走行時に走行基準側になる一方の
テープエッジ3a側に凹とするのが望ましい。
【0037】なお、図7に示した磁気記録再生装置にお
いては、磁気テープカートリッジのケース本体1から引
き出した磁気テープ3を所定の経路に沿って走行させる
ためにガイドローラ70が備えられている。この図で
は、一対のガイドローラ70・70間にヘッド部80が
配置されている。また、図8中の符号71・72はガイ
ドローラ70の両端に設けられているフランジ、符号7
3は両フランジ71・72間の溝、符号Hはその溝幅、
符号Lは磁気テープ3の幅をそれぞれ示しており、L<
Hである。また、1/2インチ幅の磁気テープ3を備え
た磁気テープカートリッジでは、リール内周部内側にお
いて対向する鍔部内面間の間隔S1は12.860mm〜1
2.880mm、リール外周部内側において対向する鍔部内
面間S2は、13.140mm〜13.160mmである。リー
ル内周部内側において対向する鍔部内面からリール外周
部内側において対向する鍔部内面に至る部分は、リール
2を径方向に切断した断面形状において略直線である。
【0038】以上の場合において、サーボ信号は磁気テ
ープの磁気記録面またはバックコート層に磁気信号とし
て記録したものであってもよいし、磁気テープのバック
コート層に凹部や光を吸収する材料で光学信号を形成し
たものであってもよい。つまり、本発明の磁気テープカ
ートリッジは、磁気サーボ方式および光学サーボ方式の
いずれにも適用できるものである。
【0039】また、高記録密度化のためには、本発明の
磁気テープカートリッジは磁気テープにおける磁気記録
信号が、磁気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッド(M
Rヘッド)によって再生されるものであることが好まし
い。さらに、磁気サーボ方式では、サーボ信号もMRヘ
ッドによって再生されるものであることが好ましい。
【0040】〈磁気テープのエッジ構造〉本発明は、記
録容量、アクセス速度、転送速度が高い磁気テープ、具
体的には〔(記録トラック幅)−(再生トラック幅)〕
つまりオフトラックマージンが16μm以下と小さく、
4000mm/s以上の速度で走行駆動される磁気テープ
を対象としている。このような磁気テープでは、オフト
ラックマージンが従来のものよりも小さく、しかもテー
プ走行速度が速いので、従来においてはトラックずれが
生じなかったようなテープ幅方向の変動であってもトラ
ックずれが生じる可能性がある。このため、オフトラッ
クを防止する観点からはエッジウィーブ量をできるだけ
小さくするのが好ましいが、そのための技術的な困難
性、言い換えれば実現性を考慮すると、オフトラックマ
ージンや、さらにはテープ走行速度および当該エッジウ
ィーブの周期との関連においてエッジウィーブ量を特定
範囲のものとするのが効果的である。
【0041】このような観点から、本発明では、図2お
よび図3に例示したような磁気テープカートリッジに使
用する磁気テープ3において、図4に示すように、テー
プエッジ部3aまたは3a’に存在する周期fのエッジ
ウィーブによるテープ幅方向(図4のY−Y’方向)の
変位量、つまりエッジウィーブ量を、次式(1)または
(2)を満たすように設定するのが望ましい。 [ α/(Tw−Tr) ]≦0.2 ・・・(1) [ α/(Tw−Tr) ]×(V/f)≦14[ s -1 ] ・・・(2) ただし、 α:テープ走行時に走行基準側となる一方のテープエッ
ジまたはその反対側となるテープ エッジに存在するエッジウィーブの量(エッジウィーブ
量)[単位:μm]、Tw:記録トラック幅[単位:μ
m]、 Tr:再生トラック幅[単位:μm]、 V:磁気テープのテープ走行速度[単位:mm/s]、 f:当該エッジウィーブの周期[単位:mm] である。なお、図4では磁気テープ3の走行方向をX−
X’で示してある。
【0042】〔(記録トラック幅)−(再生トラック
幅)〕が16μm以下(特に10μm以下)と小さく、
しかもテープ走行速度が4000mm/s以上と速い場合
において、上記の[ α/(Tw−Tr) ]が0.09を超
えると、湿度変化や温度変化に伴うテープ幅方向の寸法
変化によるトラックずれがあったときに、エッジウィー
ブによるトラックずれが相乗的に作用して、オフトラッ
クが生じやすくなる。この点は、後述する実施例および
比較例の結果によって確認することができる。
【0043】また、オフトラックの生じやすさは、テー
プ走行速度Vとエッジウィーブの周期fとの比(V/
f)、つまりテープの走行時に周期fのエッジウィーブ
によって生じるテープ幅方向の振れの周波数とも関係
し、この(V/f)と上記の[ α/(Tw−Tr) ]と
の積が5[ s -1=Hz ]を超えた場合もオフトラックが
生じやすくなる。なお、磁気テープ3のオフトラックに
影響を及ぼすエッジウィーブの周期f[ mm ]は、通常、
f/V≦0.0125[単位:s(秒)]、つまり80≦
V/f[ s-1=Hz ]である。特に、200≦V/f
[s-1]を満たす周期fのエッジウィーブがあるとオフ
トラック量が大きくなる。これは、例えば図7に示した
ようなテープドライブに備えられた磁気ヘッドアレイ8
0は全体として大きい質量を有しているので、テープ走
行速度Vが大きくなるほど、長い周期のエッジウィーブ
でも磁気ヘッドアレイ80の動きが追随できなくなるた
めである。
【0044】さらに、上記の(Tw−Tr)≦16[ μ
m ]、特に(Tw−Tr)≦10[μm ]で且つ400
0≦V[mm/s]の範囲においては、記録トラック幅T
wと再生トラック幅Trとの差(Tw−Tr)が小さく
なればなるほど、またエッジウィーブ量αが大きくなれ
ばなるほど、オフトラックが生じやすくなる。(Tw−
Tr)が小さければオフトラックマージンが少なくなる
ためであり、エッジウィーブ量が大きければそれだけテ
ープ走行時に磁気テープが幅方向に大きく変動しやすく
なるためである。磁気テープの走行速度Vが4000mm
/sの時、オフトラックに影響するエッジウィーブの周
期fは50mm以下(特に20mm以下)である。この周期
のエッジウィーブ量αを2μm以下(好ましくは1μm
以下)に設定すると、オフトラック量が小さく、良好な
サーボトラック特性が得られる。特に、テープエッジに
存在する周期fが20mm以下のエッジウィーブによるテ
ープ幅方向の変動量を1μm以下に設定すると、さらに
良好なサーボトラック特性が得られる。
【0045】〈動摩擦係数〉テープ走行異常もオフトラ
ックの原因になる。テープ走行異常の原因には、(1)
磁気テープの磁性層とスライダ(材料:ALTIC;ア
ルミナ/チタニア/カーバイド)との動摩擦係数と、磁
気テープの磁性層とガイドローラ(材質:アルミニウ
ム)との動摩擦係数(磁気テープの磁性層とアルミニウ
ムとの動摩擦係数は、磁気テープの磁性層とSUSとの
動摩擦係数と等しいので、通常測定法が確立された後者
で代用する)のアンバランス、(2)サーボ信号書き込
みヘッドの形状不適切、等がある。特に、磁気テープと
スライダ(ALTIC)との動摩擦係数が高いと、磁気
ヘッドアレイが磁気テープの幅方向に移動する際に、磁
気テープも幅方向に動くためにオフトラック量が大きく
なる。したがって、磁気テープ磁性層とスライダ(材
料:ALTIC)の動摩擦係数は、0.35以下にする必
要がある。より好ましくは0.1〜0.3、さらに好ましく
は0.1〜0.25である。通常、磁気テープ磁性層とSU
Sとの動摩擦係数は0.1〜0.3、磁気テープバックコー
ト層とSUSとの動摩擦係数は0.1〜0.3である。な
お、これらの動摩擦係数を0.10未満にすることは難し
い。
【0046】また、磁性層とスライダ材料との動摩擦係
数をμmsl 、磁性層とSUSとの動摩擦係数をμmsus
した時の[(μmsl )/(μmsus)]を0.7〜1.3とす
れば磁気テープの走行異常によるPES上昇が小さくな
る。さらに、バックコート層とSUSとの動摩擦係数を
μbsusとした時の[(μmsl )/(μbsus)]を0.8〜
1.5とすれば磁気テープの走行異常によるオフトラック
が小さくなる。
【0047】以下に、各構成要素毎の好ましい形態をさ
らに詳しく述べる。 〈非磁性支持体〉非磁性支持体の幅方向の湿度膨張係数
は、(0〜10)×10-6/%RHの範囲が好ましく、
(0〜6)×10-6/%RHがより好ましく、(0〜
5)×10 -6/%RHが一層好ましい。この範囲が好ま
しいのは、この範囲を外れた場合(特に湿度膨張係数が
負のとき)に、非磁性支持体と中間層との界面や非磁性
支持体と下塗層との界面あるいは非磁性支持体とバック
コート層との界面において接着不良が生じたり、界面が
剥離する可能性があるためである。
【0048】非磁性支持体の幅方向の熱膨張係数は、
〔(−10)〜8〕×10-6/℃が好ましく、〔(−1
0)〜5〕×10-6/℃がより好ましく、〔(−10)
〜0〕×10-6/℃が一層好ましい。この範囲が好まし
いのは、この範囲を外れた場合に、上記の場合と同じく
非磁性支持体と中間層との界面や非磁性支持体と下塗層
との界面あるいは非磁性支持体とバックコート層との界
面において接着不良が生じたり、界面が剥離するおそれ
があるためである。また、熱膨張係数がこの範囲にある
と、熱サイクルでテープを走行させたとき、オフトラッ
ク量が低減し、サーボ特性のエラーの低減が図れる。
【0049】非磁性支持体の厚さは、7.0μm以下が好
ましく、2.0〜7.0μmがより好ましい。この範囲の厚
さの非磁性支持体がより好ましいのは、2μm未満では
製膜が難しく、またテープ強度が小さくなり、7.0μm
を越えるとテープ全厚が厚くなり、テープ1巻当りの記
憶容量が小さくなるためである。
【0050】非磁性支持体の長手方向のヤング率Eは、
非磁性支持体の厚さによって異なるが、通常4.9GPa
(500kg/mm2 )以上のものが使用される。5.88G
Pa(600kg/mm2 )以上が好ましく、6.86GPa
(700kg/mm2 )以上がさらに好ましい。この範囲の
ヤング率の非磁性支持体が好ましいのは、5.88GPa
(600kg/mm2 )未満では、磁気テープの強度が弱く
なったり、磁気テープの走行が不安定になるためであ
る。また、非磁性支持体の厚さTが、5.0μmと薄くな
ると剛性(E・T3 )が小さくなりテープ強度が弱くな
るので、6.86GPa(700kg/mm2 )以上のヤング
率のものが好ましく使用される。
【0051】長手方向のヤング率をMD、幅方向のヤン
グ率をTDとした時の比(MD/TD)は、0.1〜1.8
が好ましく、0.3〜1.7がより好ましく、0.5〜1.6が
さらに好ましい。この範囲が好ましいのは、ヘッドタッ
チが良くなるためである。このような非磁性支持体に
は、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレ
ンナフタレートフィルム、芳香族ポリアミドフィルム、
芳香族ポリイミドフィルム等があるが、ポリエチレンテ
レフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィ
ルムが安価なのでより好まれる。
【0052】非磁性支持体には、通常、磁性層形成面、
バックコート層形成面共に、中心線平均表面粗さRaが
5.0〜10nmのものが使用されるが、磁性層の表面粗
さRaを小さくしてスペーシングロスを小さくする目的
で、磁性層形成面のRaを1.0〜5.0nmとした非磁性
支持体(バックコート層形成面のRaは5.0〜10n
m)が使用される場合がある。このような非磁性支持体
はデュアルタイプと呼ばれ、2種の非磁性支持体を貼り
合わせて作製される。
【0053】〈下塗層〉下塗層の厚さは、0.3〜3.0μ
mが好ましく、0.5〜2.5μmがより好ましい。この範
囲が好ましいのは、0.3μm未満では磁気記録媒体の耐
久性が悪くなる場合があり、3.0μmを越えると磁気記
録媒体の耐久性向上効果が飽和するばかりでなく、磁気
テープの場合は全厚が厚くなって、1巻当りのテープ長
さが短くなり、記憶容量が小さくなるためである。
【0054】下塗層には、導電性改良の目的でカーボン
ブラック(CB)、塗料粘度やテープ剛性の制御を目的
に非磁性粒子を添加する。下塗層に使用する非磁性粒子
としては、酸化チタン、酸化鉄、アルミナ(酸化アルミ
ニウム)、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化珪素
等があるが、好ましくは酸化鉄単独または酸化鉄とアル
ミナの混合系が使用される。下塗層に、下塗層中の全無
機粉体の重量を基準にして、粒径10〜100nmのカ
ーボンブラックを15〜35重量%、長軸長0.05〜0.
20μm、短軸長5〜200nmの非磁性の酸化鉄また
は板面方向の粒径(平均粒子径)が10〜200nm
(より好ましくは10〜100nm)の酸化鉄を35〜
83重量%、必要に応じて粒径10〜100nmのアル
ミナまたは板面方向の粒径(平均粒子径)が10〜10
0nmのアルミナを0〜20重量%含有させると、ウエ
ット・オン・ウエットで、その上に形成した磁性層の表
面粗さが小さくなるので好ましい。なお、粒状または無
定形の非磁性酸化鉄を使用する場合には粒径5〜200
nmの酸化鉄が好ましい。さらに、表面の平滑性を損な
わない範囲で100nm以上の大粒径カーボンブラック
を添加することを排除するものではない。その場合のカ
ーボンブラック量は、小粒径カーボンブラックと大粒径
カーボンブラックの和を上記範囲内にすることが好まし
い。
【0055】下塗層に添加するカーボンブラックとして
は、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマ
ルブラック等を使用できる。通常、粒径が5〜200n
mのものが使用されるが、粒径10〜100nmのもの
が好ましい。この範囲が好ましいのは、カーボンブラッ
クがストラクチャーを持っているため、粒径が10nm
以下になるとカーボンブラックの分散が難しく、100
nm以上では平滑性が悪くなるためである。カーボンブ
ラック添加量は、カーボンブラックの粒子径によって異
なるが、15〜35重量%が好ましい。この範囲が好ま
しいのは、15重量%未満では導電性向上効果が乏し
く、35重量%を越えると効果が飽和するためである。
粒径15〜80nmのカーボンブラックを15〜35重
量%使用するのがより好ましく、粒径20〜50nmの
カーボンブラックを20〜30重量%用いるのがさらに
好ましい。このような粒径・量のカーボンブラックを添
加することにより電気抵抗が低減され、かつ走行むらが
小さくなる。
【0056】下塗層に添加する非磁性の酸化鉄として
は、針状の場合、長軸長0.05〜0.20μm、短軸長
(粒径)5〜200nmのものが好ましく、板状の場
合、板面方向の粒径(平均粒子径)が10〜200nm
(より好ましくは10〜100nm)の酸化鉄、粒状ま
たは無定形のものでは、粒径5〜200nmが好まし
い。粒径5〜150nmがより好ましく、粒径5〜10
0nmがさらに好ましい。なお、針状のものが磁性層の
配向がよくなるのでより好ましい。また、板状の場合、
磁気テープの温度・湿度膨張係数が小さくなるので好ま
しい。添加量は、35〜83重量%が好ましく、40〜
80重量%がより好ましく、50〜75重量%がさらに
好ましい。この範囲の粒径(針状の場合は短軸長)が好
ましいのは、粒径5nm未満では均一分散が難しく、2
00nmを越えると下塗層と磁性層の界面の凹凸が増加
するためである。同様の理由で板状の場合、板面方向の
粒径(平均粒子径)が10〜200nmが好ましく、1
0〜100nmがより好ましい。この範囲の添加量が好
ましいのは、35重量%未満では塗膜強度向上効果が小
さく、83重量%を越えると反って塗膜強度が低下する
ためである。
【0057】下塗層には酸化鉄に加えてアルミナを添加
してもよい。アルミナの粒径は、10〜100nmが好
ましく、20〜100nmがより好ましく、30〜10
0nmがさらに好ましい。この範囲の粒径が好ましいの
は、粒径10nm未満では均一分散が難しく、100n
mを越えると下塗層と磁性層の界面の凹凸が増加するた
めである。同様の理由で板状の場合、板面方向の粒径
(平均粒子径)が10〜100nmが好ましい。アルミ
ナの添加量は、通常0〜20重量%であるが、2〜10
重量%がより好ましく、4〜8重量%がさらに好まし
い。
【0058】下塗層に添加する樹脂には、ポリアミド樹
脂やポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが考え
られるが、上記中間層で述べた理由からポリアミドイミ
ド樹脂が好ましい。同様の理由でポリアミドイミド樹脂
の湿度膨張係数は(10〜140)×10-6/%RHが
好ましく、(20〜70)×10-6/%RHがより好ま
しい。同様に熱膨張係数は(10〜70)×10-6/℃
が好ましく、(20〜60)×10-6/℃がより好まし
い。また、ポリアミドイミド樹脂には、非磁性粉末等の
分散性向上のため、後記するように−SO3 M等の官能
基を含有させることが好ましい。
【0059】同様に上記の理由によりポリアミドイミド
樹脂のガラス転移点は200〜350℃が好ましく、2
50〜320℃がより好ましい。また、上記と同様の理
由からポリアミドイミド樹脂の分子量は、1万〜10万
が好ましい。
【0060】〈潤滑剤〉下塗層と磁性層からなる塗布層
に、役割の異なる潤滑剤を使用することができる。下塗
層には全粉体に対して0.5〜4.0重量%の高級脂肪酸を
含有させ、0.2〜3.0重量%の高級脂肪酸のエステルを
含有させると、磁気テープと走行系のガイドやMRヘッ
ドのスライダ等との動摩擦係数が小さくなるので好まし
い。この範囲の高級脂肪酸添加が好ましいのは、0.5重
量%未満では、動摩擦係数低減効果が小さく、4.0重量
%を越えると下塗層が可塑化してしまい強靭性が失われ
るからである。また、この範囲の高級脂肪酸のエステル
添加が好ましいのは、0.2重量%未満では、動摩擦係数
低減効果が小さく、3.0重量%を越えると磁性層への移
入量が多すぎるため、磁気テープと走行系のガイド等が
貼り付く等の副作用があるためである。脂肪酸として
は、炭素数10以上の脂肪酸を用いるのが好ましい。炭
素数10以上の脂肪酸としては、直鎖、分岐、シス・ト
ランスなどの異性体のいずれでもよいが、潤滑性能にす
ぐれる直鎖型が好ましい。このような脂肪酸としては、
たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、
パルミチン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸など
が挙げられる。これらの中でも、ミリスチン酸、ステア
リン酸、パルミチン酸などが好ましい。
【0061】磁性層には強磁性粉末に対して0.2〜3.0
重量%の脂肪酸アミドを含有させ、0.2〜3.0重量%の
高級脂肪酸のエステルを含有させると、磁気テープと走
行系のガイドローラやMRヘッドのスライダ等との動摩
擦係数が小さくなるので好ましい。この範囲の脂肪酸ア
ミドが好ましいのは、0.2重量%未満ではヘッドスライ
ダ/磁性層の動摩擦係数が大きくなりやすく、3.0重量
%を越えるとブリードアウトしてしまいドロップアウト
などの欠陥が発生するからである。脂肪酸アミドとして
はパルミチン酸、ステアリン酸等の炭素数が10以上の
脂肪酸アミドが使用可能である。また、上記範囲の高級
脂肪酸のエステル添加が好ましいのは、0.2重量%未満
では動摩擦係数低減効果が小さく、3.0重量%を越える
と磁気テープと走行系のガイド等が貼り付く等の副作用
があるためである。なお、磁性層の潤滑剤と下塗層の潤
滑剤の相互移動を排除するものではない。
【0062】磁気テープの磁性層とMRヘッドのスライ
ダとの動摩擦係数はPESを小さくするため0.35以下
にする必要がある。より好ましくは0.1〜0.3、さらに
好ましくは0.1〜0.25である。この範囲がより好まし
いのは、0.30を越えると、スライダ汚れによるスペー
シングロスが起こりやすいためである。また、磁気ヘッ
ドアレイが磁気テープ幅方向に移動する際に、磁気テー
プも幅方向に動くために、オフトラック量が大きくな
る。なお、0.10未満は実現が困難である。通常、磁気
テープ磁性層とSUSとの動摩擦係数は0.1〜0.3で、
0.10〜0.25が好ましく、0.12〜0.20がより好ま
しい。この範囲が好ましいのは、0.25を越えるとガイ
ドローラが汚れやすくなるためである。なお、この動摩
擦係数を0.10未満にすることは難しい。また、磁性層
とスライダ材料との動摩擦係数をμ msl 、磁性層とSU
Sとの動摩擦係数をμmsusとした時の[(μmsl )/
(μms us)]を0.7〜1.3が好ましく、0.8〜1.2がよ
り好ましい。この範囲が好ましいのは、磁気テープの走
行異常によるトラッキングずれ(オフトラック)が小さ
くなるためである。
【0063】〈磁性層〉磁性層の厚さは、通常0.3μm
以下で、0.01〜0.3μmが好ましく、0.01〜0.20
μmがより好ましく、0.01〜0.15μmがさらに好ま
しく、0.01〜0.10μmがいっそう好ましい。この範
囲がより好ましいのは、0.01μm未満では均一な磁性
層が得にくく、0.3μmを越えると厚さ損失により、再
生出力が小さくなったり、当該磁性層における残留磁束
密度(Br)と厚さ(δ)との積(Brδ)が大きくな
り過ぎて、MRヘッドの飽和による再生出力の歪が起こ
りやすくなるためである。
【0064】長手方向の残留磁束密度と厚さの積は0.0
018〜0.06μTmが好ましく、0.0036〜0.05
0μTmがより好ましい。この範囲が好ましいのは、0.
0018μTm未満では、MRヘッドによる再生出力が
小さく、0.06μTmを越えるとMRヘッドによる再生
出力が歪みやすいからである。このような磁性層からな
る磁気記録媒体は、記録波長を短くでき、しかも、MR
ヘッドで再生した時の再生出力を大きくでき、しかも再
生出力の歪が小さく出力対ノイズ比を大きくできるので
好ましい。
【0065】磁性層の保磁力は、120〜320kA/
m(1508〜4021Oe)が好ましく、140〜3
20kA/m(1759〜4021Oe)がより好まし
く、160〜320kA/m(2011〜4021O
e)がさらに好ましい。この範囲が好ましいのは、12
0kA/m未満(1508Oe)では記録波長を短くす
ると反磁界減磁で出力低下が起こり、320kA/m
(4021Oe)を超えると磁気ヘッドによる記録が困
難になるためである。
【0066】磁性層の中心線平均表面粗さRaは通常5
nm以下であり、3.2nm以下が好ましく、0.5〜3.2
nmがより好ましく、0.7〜3.2nmがさらに好まし
く、0.7〜2.9nmがいっそう好ましい。この範囲がよ
り好ましいのは、0.5nm未満では磁気テープの走行が
不安定になり、Raが3.2nmを超えると、スペーシン
グロスにより、PW50(再生出力の半値幅)が広くな
ったり出力が低下したりして、エラーレートが高くなる
ためである。
【0067】磁性層に添加する磁性粉には、Fe粉末、
Fe−Co粉末やFe−Nd−B粉末等のような強磁性
鉄系金属粉末、六方晶バリウムフェライト粉末が使用さ
れる。強磁性鉄系金属粉末、六方晶バリウムフェライト
粉末の保磁力は、120〜320kA/m(1508〜
4021Oe)が好ましく、飽和磁化量は、強磁性鉄系
金属粉末では、120〜200A・m2 /kg(120〜
200emu/g)が好ましく、130〜180A・m
2 /kg(130〜180emu/g)がより好ましい。
六方晶バリウムフェライト粉末では、50〜70A・m
2 /kg(50〜70emu/g)が好ましい。なお、こ
の磁性層の磁気特性と、強磁性粉末の磁気特性は、いず
れも試料振動形磁束計で外部磁場1.28MA/m(16
kOe)での測定値をいうものである。
【0068】本発明の磁気記録媒体において使用するF
e粉末、Fe−Co粉末等の針状の強磁性鉄系金属粉末
の平均長軸長としては、0.03〜0.2μmが好ましく、
0.03〜0.18μmがより好ましく、0.04〜0.15μ
mがさらに好ましく、0.04〜0.10μmがいっそう好
ましい。この範囲が好ましいのは、平均長軸長が0.03
μm未満となると、磁性粉の凝集力が増大するため塗料
中への分散が困難になり、0.2μmより大きいと、保磁
力が低下し、また粒子の大きさに基づく粒子ノイズが大
きくなる。また、Fe−Nd−B粉末のような粒状の強
磁性鉄系金属粉末では、同様の理由により、粒径10〜
100nmが好ましい。さらに、六方晶バリウムフェラ
イト粉末では、同様の理由により、板径5〜200nm
が好ましい。なお、上記の平均長軸長、粒径は、走査型
電子顕微鏡(SEM)にて撮影した写真の粒子サイズを
実測し、100個の平均値により求めたものである。ま
た、この強磁性鉄系金属粉末のBET比表面積は、35
2 /g以上が好ましく、40m2 /g以上がより好ま
しく、50m2 /g以上が最も好ましい。六方晶バリウ
ムフェライト粉末のBET比表面積は、1〜100m2
/gが好ましい。
【0069】下塗層、磁性層に含有させる結合剤として
は、ポリアミドイミド樹脂のほか、塩化ビニル樹脂、塩
化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−ビニルア
ルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルア
ルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレ
イン酸共重合体、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアク
リレート共重合体、ニトロセルロース(セルロース系樹
脂)などの中から選ばれる少なくとも1種とポリウレタ
ン樹脂との組み合わせを用いることができる。中でも、
塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体
とポリウレタン樹脂を併用するのが好ましい。ポリウレ
タン樹脂には、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテ
ルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタ
ン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリ
カーボネートポリウレタンなどがある。
【0070】官能基として−COOH、−SO3 M、−
OSO3 M、−P=O(OM)3 、−O−P=O(O
M)2 [Mは水素原子、アルカリ金属塩基又はアミン塩
を示す]、−OH、−NR’R''、−N+ R''' R''''
R''''' [R' 、R''、R'''、R''''、R''''' は水
素または炭化水素基を示す]、エポキシ基を有する高分
子からなるウレタン樹脂等の結合剤が使用される。この
ような結合剤を使用するのは、上述のように磁性粉等の
分散性が向上するためである。2種以上の樹脂を併用す
る場合には、官能基の極性を一致させるのが好ましく、
中でも−SO3 M基どうしの組み合わせが好ましい。
【0071】これらの結合剤は、磁性層では強磁性粉末
100重量部に対して、また下塗層ではカーボンブラッ
クと非磁性粉末との合計量100重量部に対して、7〜
50重量部、好ましくは10〜35重量部の範囲で用い
られる。特に、結合剤として、塩化ビニル系樹脂5〜3
0重量部とポリウレタン樹脂2〜20重量部とを複合し
て用いるのが最も好ましい。
【0072】これらの結合剤とともに、結合剤中に含ま
れる官能基などと結合させて架橋する熱硬化性の架橋剤
を併用するのが望ましい。この架橋剤としては、トリレ
ンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネー
ト、イソホロンジイソシアネートなどや、これらのイソ
シアネート類とトリメチロールプロパンなどの水酸基を
複数個有するものとの反応生成物、上記イソシアネート
類の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが好ま
しい。これらの架橋剤は、結合剤100重量部に対し
て、通常5〜50重量部の割合で用いられる。より好ま
しくは7〜35重量部である。なお、磁性層に使用する
架橋剤の量を、下塗層に使用する量の1/2程度(30
%〜60%)にすれば、MRヘッドのスライダに対する
動摩擦係数が小さくなるので好ましい。この範囲が好ま
しいのは、30%未満では、磁性層の塗膜強度が弱くな
りやすく、60%を越えるとスライダに対する動摩擦係
数を小さくするために、後述するLRT処理条件を強く
する必要があり、コストアップにつながるからである。
【0073】磁性層には、導電性向上と表面潤滑性向上
を目的に従来公知のカーボンブラック(CB)を添加す
ることができる。これらのカーボンブラックとしては、
アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブ
ラック等を使用できる。粒子径が5〜100nmのもの
が使用されるが、粒径10〜100nmのものが好まし
い。この範囲が好ましいのは、粒径が5nm未満になる
とカーボンブラックの分散が難しく、100nmを超え
ると多量のカーボンブラックを添加することが必要にな
り、何れの場合も表面が粗くなり、出力低下の原因にな
るためである。カーボンブラックの添加量は強磁性粉末
に対して0.2〜5重量%が好ましく、0.5〜4重量%が
より好ましく、0.5〜3.5重量%がさらに好ましく、0.
5〜3重量%がいっそう好ましい。この範囲が好ましい
のは、0.2重量%未満では効果が小さく、5重量%を超
えると、磁性層表面が粗くなりやすいからである。
【0074】〈バックコート層〉走行性向上を目的に、
厚さ0.2〜0.8μmの従来公知のバックコート層を使用
できる。この範囲が良いのは、0.2μm未満では走行性
向上効果が不充分となり、0.8μmを超えるとテープ全
厚が厚くなって1巻当たりの記憶容量が小さくなるため
である。バックコート層とSUSとの動摩擦係数は0.1
0〜0.30が好ましく、0.10〜0.25がより好まし
い。この範囲が好ましいのは、0.10未満になるとガイ
ド部分で滑りやすく走行が不安定になり、0.30を越え
るとガイドローラが汚れやすくなるためである。また、
[(μmsl )/(μbsus)]は0.8〜1.5が好ましく、
0.9〜1.4がより好ましい。この範囲が好ましいのは、
磁気テープの蛇行によるトラッキングずれ(オフトラッ
ク)が小さくなるためである。
【0075】バックコート層のカーボンブラックとして
は、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマ
ルブラック等を使用できる。通常、小粒径カーボンブラ
ックと大粒径カーボンブラックを使用する。小粒径カー
ボンブラックには、粒子径が5〜100nmのものが使
用されるが、粒径10〜100nmのものがより好まし
い。この範囲がより好ましいのは、粒径が10nm未満
になるとカーボンブラックの分散が難しく、粒径が10
0nmを超えると多量のカーボンブラックを添加するこ
とが必要になり、何れの場合も表面が粗くなり、磁性層
への裏移り(エンボス)原因になるためである。大粒径
カーボンブラックとして、小粒径カーボンブラックの5
〜15重量%、粒径250〜400nmの大粒径カーボ
ンブラックを使用すると、表面も粗くならず、走行性向
上効果も大きくなる。小粒径カーボンブラックと大粒径
カーボンブラック合計の添加量は無機粉体重量を基準に
して60〜98重量%が好ましく、70〜95重量%が
より好ましい。バックコート層の中心線平均表面粗さR
aは3〜15nmが好ましく、4〜10nmがより好ま
しい。
【0076】また、バックコート層には、強度向上を目
的に、粒子径が0.1〜0.6μmの酸化鉄、アルミナを添
加するのが好ましい。これの粒子径は0.2〜0.5μmが
より好ましい。酸化鉄、アルミナを合わせた添加量は無
機粉体重量を基準にして2〜40重量%が好ましく、5
〜30重量%がより好ましい。また、10〜200nm
(より好ましくは10〜100nm)の非磁性板状酸化
物(酸化セリウム、アルミナ、酸化鉄、酸化珪素、酸化
ジルコニウム)を添加すると、磁気テープの温度・湿度
膨張係数が小さくなるので、より好ましい。
【0077】バックコート層には結合剤として、ポリア
ミドポリイミド樹脂の他、前述した磁性層や下塗層に用
いるのと同じ樹脂を用いることができるが、これらの中
でも摩擦係数を低減し走行性を向上するため、セルロー
ス系樹脂とポリウレタン樹脂を複合して併用することが
好ましい。結合剤の含有量は通常、カーボンブラックと
前記無機非磁性粉末との合計量100重量部に対して4
0〜150重量部で、50〜120重量部が好ましく、
60〜110重量部がより好ましく、70〜110重量
部がさらに好ましい。この範囲が好ましいのは、50重
量部未満では、バックコート層の強度が不十分で、12
0重量部を越えると摩擦係数が高くなりやすいためであ
る。セルロース系樹脂を30〜70重量部、ポリウレタ
ン系樹脂を20〜50重量部使用することが好ましい。
また、さらに結合剤を硬化するために、ポリイソシアネ
ート化合物などの架橋剤を用いることが好ましい。
【0078】バックコート層には架橋剤として、前述し
た磁性層や下塗層に用いる架橋剤を使用する。架橋剤の
量は、結合剤100重量部に対して、通常10〜50重
量部の割合で用いられる。好ましくは10〜35重量
部、より好ましくは10〜30重量部である。この範囲
が好ましいのは、10重量部未満では、バックコート層
の塗膜強度が弱くなりやすく、35重量部を越えるとS
USに対する動摩擦係数が大きくなるためである。
【0079】バックコート層に磁気サーボ信号を記録す
る特殊用途のバックコート層には、通常、磁性層に使用
する上述の強磁性粉末を30〜60重量部、バックコー
ト層に使用する上述のカーボンブラックを40〜70重
量部、必要に応じて、バックコート層に使用する上述の
酸化鉄、アルミナを2〜15重量部添加する。また、結
合剤には、強磁性粉末、カーボンブラック、無機非磁性
粉末との合計量100重量部に対して、上記バックコー
ト層に用いる樹脂を通常、40〜150重量部、好まし
くは50〜120重量部使用する。また、架橋剤には、
上述の架橋剤を結合剤100重量部に対して通常10〜
50重量部の割合で用いることができる。上述の磁性層
で述べたと同じ理由で、保磁力は120〜320kA/
m、残留磁束密度と膜厚の積は、0.018〜0.06μT
mが好ましい。
【0080】〈LRT処理(ラッピング/ロータリー/
ティッシュ処理)〉磁気テープを製造するに当たって
は、磁性層に対し、次に述べるラッピング、ロータリー
およびティッシュの各処理からなるLRT処理を施す。
これにより、表面の平滑性、MRヘッドのスライダ材料
やシリンダ材料との動摩擦係数や表面粗さ、表面形状が
最適化され、磁気テープの走行性の向上、スペーシング
ロスの低減、MR再生出力の向上を図ることができる。
【0081】(1)ラッピング処理: 研磨テープ(ラ
ッピングテープ)を、回転ロールによってテープ送り
(標準:400m/分)と反対方向に一定の速さ(標
準:14.4cm/分)で移動させ、上部からガイドブロッ
クによって押さえることによってテープ磁性層表面と接
触させる。この時の磁気テープ巻き出しテンションおよ
びラッピングテープのテンションを一定(標準:各10
0g、250g)として磁気テープに対する研磨処理を
行う。この工程で使用する研磨テープ(ラッピングテー
プ)は、例えば、M20000番、WA10000番あ
るいはK10000番のような研磨砥粒の細かい研磨テ
ープ(ラッピングテープ)である。なお、研磨ホイール
(ラッピングホイール)を研磨テープ(ラッピングテー
プ)の代りにまたは併用して使用することを排除するも
のではないが、頻繁に交換を要する場合は、研磨テープ
(ラッピングテープ)のみを使用する。
【0082】(2)ロータリー処理: 空気抜き用溝付
ホイール[標準:幅1インチ(25.4mm)、直径60m
m、空気抜き用溝2mm幅、溝の角度45度、協和精工株
式会社製]と磁性層とを、一定の接触角度(標準:90
度)でテープと反対方向に一定の回転速度(通常:20
0〜3000rpm、標準:1100rpm)で接触さ
せて処理を行う。
【0083】(3)ティッシュ処理: ティッシュ[例
えば東レ株式会社製の織布トレシー]を回転棒で各々バ
ックコート層および磁気層面をテープ送りと反対方向に
一定の速度(標準:14.0mm/分)で送り、磁気テープ
に対するクリーニング処理を行う。
【0084】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明するが、
本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下
の実施例および比較例の部は重量部を示す。
【0085】 実施例1: 《下塗層用塗料成分》 (1) ・酸化鉄粉末(平均粒径:0.11×0.02μm) 68部 ・α−アルミナ(平均粒径:0.07μm) 8部 ・カーボンブラック(平均粒径:25nm、吸油量:55g/cc) 24部 ・ステアリン酸(潤滑剤) 2.0部 ・塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 (含有−SO3 Na基:0.7×10-4当量/g) 8.8部 ・ポリアミドイミド樹脂のエタノール/トルエン(1/1)25%溶液 17.6部 [ポリアミドイミド樹脂のみの重量: 4.4部] (Tg:260℃、 湿度膨張係数=120×10-6/%RH、 熱膨張係数=(57×10-6/℃) ・シクロヘキサノン 25部 ・メチルエチルケトン 40部 ・トルエン 10部 (2) ・ステアリン酸ブチル(潤滑剤) 1部 ・シクロヘキサノン 70部 ・メチルエチルケトン 50部 ・トルエン 20部 (3) ・ポリイソシアネート 2.0部 (架橋剤、日本ポリウレタン社製コロネートL) ・シクロヘキサノン 10部 ・メチルエチルケトン 15部 ・トルエン 10部
【0086】 《磁性層用塗料成分》 (1) ・強磁性鉄系金属粉 100部 〔Co/Fe:25wt%、 Y/Fe :9.3wt%、 Al/Fe:3.5wt%、 Ca/Fe:0wt%、 σs :155A・m2 /kg、 Hc:188.2kA/m、 pH:9.4、 平均長軸長:0.10μm〕 ・塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 12.3部 (含有−SO3 Na基:0.7×10-4当量/g) ・ポリエステルポリウレタン樹脂 5.5部 (含有−SO3 Na基:1.0×10-4当量/g) ・α−アルミナ(平均粒径:0.12m) 8部 ・α−アルミナ(平均粒径:0.07m) 2部 ・カーボンブラック 1.0部 (平均粒径:75nm、DBP吸油量:72cc/100g) ・メタルアシッドホスフェート 2部 ・パルミチン酸アミド 1.5部 ・ステアリン酸n−ブチル 1.0部 ・テトラヒドロフラン 65部 ・メチルエチルケトン 245部 ・トルエン 85部 (2) ・ポリイソシアネート 2.0部 (架橋剤、日本ポリウレタン社製コロネートL) ・シクロヘキサノン 167部
【0087】上記下塗層用塗料成分において(1)をニ
ーダで混練したのち、(2)を加えて攪拌の後サンドミ
ルで滞留時間を60分として分散処理を行い、これに
(3)を加え攪拌・濾過した後、下塗層用塗料とした。
これとは別に、上記の磁性層用塗料成分(1)をニーダ
で混練したのち、サンドミルで滞留時間を45分として
分散し、これに磁性層用塗料成分(2)を加え攪拌・濾
過後、磁性塗料とした。そして、ポリエチレンナフタレ
ートフイルム(PEN、厚さ6.2μm、湿度膨張係数=
5.6×10-6/%RH、熱膨張係数=(−7.4)×10
-6/℃、MD=6.50GPa、MD/TD=0.54、帝
人社製)からなる非磁性支持体上に上記の下塗層用塗料
を、乾燥・カレンダ後の厚さが1.8μmとなるように塗
布し、この下塗層上に、さらに上記の磁性塗料を磁場配
向処理、乾燥、カレンダー処理後の磁性層の厚さが0.1
5μmとなるようにウエット・オン・ウエット方式で塗
布し、磁場配向処理後、ドライヤを用いて乾燥し、磁気
シートを得た。なお、磁場配向処理は、ドライヤ前にN
−N対抗磁石(5kG)を設置し、ドライヤ内で塗膜の
指蝕乾燥位置の手前側75cmからN−N対抗磁石(5k
G)を2基50cm間隔で設置して行った。塗布速度は1
00m/分とした。
【0088】 《バックコート層用塗料成分》 ・カーボンブラック(平均粒径:25nm) 80部 ・カーボンブラック(平均粒径:370nm) 10部 ・酸化鉄(平均長軸長:0.4μm、 10部 平均軸比(長手方向の長さ/幅方向の長さ):約10) ・ニトロセルロース 44部 ・ポリウレタン樹脂(−SO3 Na基含有) 30部 ・シクロヘキサノン 260部 ・トルエン 260部 ・メチルエチルケトン 525部
【0089】上記バックコート層用塗料成分をサンドミ
ルで滞留時間45分として分散した後、架橋剤であるポ
リイソシアネート(日本ポリウレタン社製コロネート
L)13部を加えてバックコート層用塗料を調整し濾過
した後、上記で作製した磁気シートの磁性層の反対面
に、乾燥・カレンダ後の厚みが0.5μmとなるように塗
布し、乾燥した。このようにして得られた磁気シートを
金属ロールからなる7段カレンダで、温度100℃、線
圧150×9.8N/cm(150kg/cm)の条件で鏡面化
処理し、磁気シート(磁気テープ原反)をコアに巻いた
状態で70℃で72時間エージングした。
【0090】〈スリッティング処理〉つぎに、図5に示
したスリッティングシステム100を用いて磁気シート
原反Gを裁断して1/2インチ幅の磁気テープ3とし
た。図5中の符号60は刃物駆動部、符号61・62は
互いに反対方向に回転駆動される上下の刃物群、符号9
0・91は磁気テープ原反Gの走行経路に沿って配置し
たガイドをそれぞれ示す。ここで、図5中に記載されて
いるテンションカットローラ50のサクション吸引部の
拡大断面図を図6に示す。このサクション吸引部は、図
示しない吸引源に連通されて磁気テープ原反を吸引する
吸引部51と、外周面に磁気テープ原反が接触するテー
プ接触部52とからなり、これらを、テンションカット
ローラ50の外周面に沿って一定間隔をあけて交互に配
置した構成である。図示例では、テンションカットロー
ラ50の外周面において、一つの吸引部51の終端から
直ぐ隣の吸引部51の終端までの周方向距離、つまり吸
引部51の周期T1は13.5mmである。吸引部51に
は、多孔金属を埋め込みメッシュサクションとした。こ
のようなテンションカットローラ50を備えたスリッテ
ィングシステム100を使用し、そのサクションの吸引
圧を1.33×104 Pa(100mmHg)、テンション
カットローラ50に対する磁気テープ原反Gの巻付角を
188度に設定して、磁気テープ原反Gに対するスリッ
ティングを行った。なお、図示はしないが、図5中の刃
物駆動部60に駆動モータからの動力を伝える動力伝達
装置において、その構成要素である駆動ベルトには平ベ
ルト、カップリングにはゴムカップリングを使用して、
駆動モータからの振動をカットした。ついで、下記の条
件でLRT処理を行った。
【0091】〈LRT(ラッピング/ロータリー/ティ
ッシュ)処理〉 (1)ラッピング処理: 研磨テープ(ラッピングテー
プ)を、回転ロールによってテープ送り(400m/
分)と反対方向に14.4cm/分の速さで移動させ、上部
からガイドブロックによって押さえることによってテー
プ磁性層表面と接触させる。この時の磁気テープ巻き出
しテンションを100g及びラッピングテープのテンシ
ョンを250gとして磁気テープに対する研磨処理を行
った。
【0092】(2)ロータリーアルミホイール処理:
幅1インチ(25.4mm)、直径60mmで2mm幅の空気抜
き用溝付きのホイール(溝の角度45度、協和精工株式
会社製)と磁性層とを接触角度90度でテープと反対方
向に回転速度1100rpmで接触させて磁気テープに
対する処理を行った。
【0093】(3)ティッシュ処理: 東レ株式会社製
の織布トレシーを回転棒で各々バックコート層及び磁気
層面をテープ送りと反対方向に14.0mm/分の速度で送
り、磁気テープに対するクリーニング処理を行った。
【0094】サーボライター(日立マクセル社製)を用
いて、磁気テープの磁性層に4m/秒(4000mm/
秒)の速度で磁気サーボ信号を書き込み、この磁気テー
プをリールに巻装してケース本体内に組み込むことによ
り、図2および図3に示したコンピュータ用の磁気テー
プカートリッジを作製した。
【0095】この場合に使用したリール2は、これの巻
芯部23の外周を、走行基準側になる図中の上側のテー
プエッジ側で大径となるように、0.5度のテーパ角度
(β)を有するテーパ状に形成したものである。また、
リール内周部内側の鍔部内面間の間隔S1は、磁気テー
プ幅Lの上限値である12.656mmに対して+0.214
mmであり、リール外周部内側の鍔部内面間の間隔S2
は、磁気テープ幅の上限値に対して+0.494mmであ
る。
【0096】実施例2:実施例1において20μmとし
た記録トラック幅(Tw)を27.5μmとしたこと以外
は、実施例1と同様にして磁気テープおよび磁気テープ
カートリッジを作製した。
【0097】実施例3〜9および比較例1〜5:一部条
件を表1〜表11に示したように変更した点を除き、実
施例1と同様にして実施例3〜9および比較例1〜5の
各磁気テープおよびコンピュータ用の磁気テープカート
リッジをそれぞれ作製した。なお、表1〜表3におい
て、下塗層、磁性層、バックコート層およびスリッタ条
件の各欄に記載した「U−1」〜「U−4」、「M」、
「B−1」〜「B−3」、「S−1」〜「S−3」の内
容は、表6〜表11に記載したとおりである。ここで、
表11中の「13.5mmピッチ」は、サクション吸引部
が、テンションカットローラ50の外周面に沿って13.
5mm間隔ごとに配置されてはいるが、実施例1等で採用
したような多孔金属を埋め込んでなるメッシュサクショ
ンではなく、通常の孔状構造のものであることを示す。
【0098】表7および表10に使用した板状酸化鉄、
板状アルミナは次のようにして作製した。
【0099】〈板状酸化鉄粒子の合成〉375モルの水
酸化ナトリウムと50リットルの2−アミノエタノール
を400リットルの水に溶解し、アルカリ水溶液を作製
した。このアルカリ水溶液とは別に、37モルの塩化第
二鉄(III)七水和物を200リットルの水に溶解して塩
化第二鉄水溶液を作製した。この塩化第二鉄水溶液とア
ルカリ水溶液を12℃に保持した状態で、このアルカリ
水溶液に、塩化第二鉄水溶液を滴下して、水酸化鉄を含
む沈殿物を作製した。このときのpHは、11.3であっ
た。次に室温で約20時間放置した後、1000倍の水
で洗浄した後、上澄液を除去し、水酸化ナトリウム水溶
液を加えてpHを11.3に調整し、オートクレーブに仕
込んで、150℃で2時間の水熱処理を施した。
【0100】この処理により、板状のゲーサイト(α−
FeOOH)を得た。さらに、このゲーサイトに対して
SiO2 換算で、1wt%になるようにケイ酸ナトウム
溶液を攪拌しなが添加し、塩酸によりpHを7.3に調整
して、SiO2 による被覆処理を行った。ろ過・乾燥
後、空気中、600℃で1時間加熱処理を行って、α−
酸化鉄粒子とした。加熱処理後、未反応物や残存物を除
去するために、さらに超音波分散機を使って水洗し、ろ
過乾燥した。
【0101】得られたα−酸化鉄粒子について、X線回
折スペクトルを測定したところ、アルファへマタイトに
対応するスペクトルが観測された。さらに、透過電子顕
微鏡さらに、透過電子顕微鏡で形状観察を行い、100
個の粒子の粒子径(各粒子の最大径)を測定したとこ
ろ、平均粒子径が50nmの六角板状の粒子であること
がわかった。
【0102】〈板状アルミナ粒子の合成〉375モルの
水酸化ナトリウムと50リットルの2−アミノエタノー
ルを400リットルの水に溶解し、アルカリ水溶液を作
製した。このアルカリ水溶液とは別に、37モルの塩化
アルミニウム(III)七水和物を200リットルの水に溶
解して、塩化アルミニウム水溶液を作製した。前記アル
カリ水溶液に前記塩化アルミニウム水溶液を滴下して、
水酸化アルミニウムを含む沈殿物を作製し、その後塩酸
を滴下することにより、pHを10.2にした。この沈殿
物を懸濁液の状態で20時間熟成させたのち、約100
0倍の水で水洗した。次に、上澄み液を除去した後、こ
の沈殿物の懸濁液を、水酸化ナトリウム水溶液を用いて
pH10.0に再調整し、オートクレーブに仕込み、20
0℃で2時間、水熱処理を施した。
【0103】得られた水熱処理生成物を、ろ過し、90
℃で空気中乾燥した後、乳鉢で軽く解砕し、空気中60
0℃で1時間の加熱処理を行って酸化アルミニウム粒子
とした。加熱処理後、未反応物や残存物を除去するため
に、さらに超音波分散機を使って水洗し、ろ過乾燥し
た。
【0104】得られた酸化アルミニウム粒子について、
X線回折スペクトルを測定したところ、γ−アルミナに
対応するスペクトルが観測された。さらに、透過電子顕
微鏡で形状観察を行ったところ、粒子径分布が30〜5
0nmの四角板状の粒子であることがわかった。得られ
た酸化アルミニウム粒子を、さらに空気中1250℃で
1時間、加熱処理した。得られた酸化アルミニウム粒子
を、X線回折スペクトルを測定したところ、α−アルミ
ナに対応するスペクトルが観測された。さらに、透過電
子顕微鏡で形状観察を行い、100個の粒子の粒子径
(各粒子の最大径)を測定したところ、平均粒子径が5
0nmの四角板状の粒子であった。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
【0111】
【表7】
【0112】
【表8】
【0113】
【表9】
【0114】
【表10】
【0115】
【表11】
【0116】各実施例および比較例で得られた磁気テー
プおよび磁気テープカートリッジについて、以下に示す
ような特性の評価を行った。
【0117】〈エッジウィーブのテープ幅方向変動量お
よびテープ長手方向周期の測定〉走行基準側となるテー
プエッジにおけるエッジウィーブのテープ幅方向変動量
(エッジウィーブ量)αは、サーボライター(日立マク
セル社製)にテープ幅方向変動量測定装置(日立マクセ
ル社製)を取り付け、テープ長さ50mにわたって行っ
た。ついで、得られたテープ幅方向変動量のフーリエ解
析を行い、テープ幅方向変動量つまりエッジウィーブ量
αおよびテープ長手方向周期fの測定を行った。
【0118】〈オフトラック量(温・湿度膨張)の測
定〉温度10℃、湿度10%RHから温度29℃、湿度
80%RHに環境が変化したときのトラック位置の最大
ズレ量(サーボトラックから1400μm離れた位置の
トラックずれ)をテープの熱膨張係数、湿度膨張係数か
ら求めた。
【0119】〈オフトラック膨張〉サーボをヘッドが追
随する際にテープの膨張・収縮によってサーボ信号にト
ラッキング不良が生じる。表1〜表5中に記載した「オ
フトラック膨張」は、このテープの膨張・収縮によるオ
フトラックを意味する。オフトラック量は、市販のヒュ
ーレットパッカード(HP)社製ドライブ(モデル:U
ltrium 230i)により測定した。
【0120】〈同一装置出力低下〉改造したLTOドラ
イブを用いて温度10℃、湿度10%RHで記録(記録
波長0.55μm)を行い、温度10℃、湿度10%RH
で再生したときの出力を基準にして、温度29℃、湿度
80%RHで再生したときの出力を測定し、出力の低下
(%)を求めた。記録ヘッドおよび再生ヘッド(MRヘ
ッド)については、表1〜表5に記載したトラック幅の
ものを使用した。
【0121】〈3μmトラックずれの装置で再生〉表1
〜表5中に記載した「3μmトラックずれの装置で再
生」は、再生トラック幅が3μmずれた装置で測定した
ときの再生出力の低下率を意味する。
【0122】表1〜表5中の「特性」欄に、以上の測定
結果を示す。これを見ると分かるように、3μmトラッ
クずれの装置で再生した場合において、比較例1〜5に
係る磁気テープおよび磁気テープカートリッジでは同一
装置での出力低下はなかったが、オフトラックによる出
力の低下が5%以上であったのに対し、本発明実施例に
係る磁気テープおよび磁気テープカートリッジでは、オ
フトラックによる出力の低下が3.5%以下であった。中
でも実施例1・2・5・6・8の場合は、出力の低下が
2%以下であり、特にオフトラック特性に優れた磁気テ
ープおよび磁気テープカートリッジが得られることが分
かる。
【0123】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、記録ト
ラック幅が28μm以下(特に21μm以下)と狭く、
[(記録トラック幅)−(再生トラック幅)]が16μ
m以下と狭い場合においてオフトラックが生じにくくな
るので、エラーレートの低いサーボ特性に優れた磁気テ
ープおよび磁気テープカートリッジが得られる。こうし
て、例えばコンピュータ用のバックアップテープとして
好適な信頼性の高い磁気テープおよび磁気テープカート
リッジが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る磁気テープの積層構造例を示すも
ので、(a)は中間層を設けない場合、(b)は非磁性
支持体の片面に中間層を設けた場合、(c)は非磁性支
持体の両面に中間層を設けた場合をそれぞれ示す断面図
である。
【図2】本発明が適用される磁気テープカートリッジの
一般的な構造を示す斜視図である。
【図3】本発明が適用される磁気テープカートリッジの
内部構造を一部簡略化して示す断面図である。
【図4】磁気テープに存在するエッジウィーブを説明す
るために使用したもので、磁気テープをその一部拡大図
ととともに示す平面図である。
【図5】本発明の実施例において、磁気テープ原反をス
リッティングする際に使用したスリッティングシステム
の一部簡略化した構成図である。
【図6】スリッティングシステムに備えられるテンショ
ンカットローラのサクション吸引部を一部簡略化して示
す部分断面図である。
【図7】磁気テープカートリッジ用の磁気記録再生装置
(テープ駆動装置)の一例を示す平面図である。
【図8】磁気記録再生装置に備えられたガイドローラに
沿って磁気テープが走行する状態を説明するために使用
したもので、図7の矢印A方向から見た拡大側面図であ
る。
【図9】図2に示した磁気テープカートリッジの巻芯部
周辺を一部省略して示す拡大図である。
【図10】磁気テープに用いられるトラックサーボ方式
の一例(磁気サーボ方式)を説明するために使用したも
ので、磁気テープの磁気記録面(磁性層)にデータトラ
ックとサーボバンドとを交互に設けた状態を示す模式図
である。
【符号の説明】
1 磁気テープカートリッジのケース本体 2 リール 3 磁気テープ 31 非磁性支持体 32 下塗層 33 磁性層 34 バックコート層 35 中間層 α エッジウィーブ量 f エッジウィーブの周期

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体と、この非磁性支持体の一
    面に設けられた磁性層と、非磁性支持体の反対面に設け
    られたバックコート層とを有し、かつ磁性層またはバッ
    クコート層にはトラッキング制御用のサーボ信号が記録
    され、[(記録トラック幅)−(再生トラック幅)]が
    16μm以下である磁気テープであって、 テープ走行時に走行基準側となる一方のテープエッジま
    たはその反対側となるテープエッジに存在するエッジウ
    ィーブ量α[μm]が1.5μm以下であり、 テープ幅方向の湿度膨張係数が(0〜14)×10-6
    %RHであることを特徴とする磁気テープ。
  2. 【請求項2】 テープ幅方向の湿度膨張係数が(0〜1
    2)×10-6/%RHである請求項1記載の磁気テー
    プ。
  3. 【請求項3】 箱状のケース本体の内部に、請求項1ま
    たは2記載の磁気テープを巻装した1個のリールが配置
    されており、当該磁気テープに記録されたサーボ信号に
    よってトラッキング制御されることを特徴とする磁気テ
    ープカートリッジ。
  4. 【請求項4】 サーボ信号は磁気テープの磁性層または
    バックコート層に磁気信号として記録されている請求項
    3記載の磁気テープカートリッジ。
  5. 【請求項5】 サーボ信号は磁気テープのバックコート
    層に光学信号として記録されている請求項3記載の磁気
    テープカートリッジ。
  6. 【請求項6】 磁気テープにおける磁気記録信号は、磁
    気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッドによって再生さ
    れる請求項3ないし5のいずれかに記載の磁気テープカ
    ートリッジ。
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