JP2003190272A - 生体親和性に優れた骨代替材料およびその製造方法 - Google Patents
生体親和性に優れた骨代替材料およびその製造方法Info
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Abstract
らなる部材に、陽極酸化法によって、生体内において長
期間使用可能で強固な生体活性層を形成し、生体親和性
に優れた骨代替材料およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 少なくとも表面がチタンまたはチタン合
金よりなる基材を洗浄し乾燥した後、該試料を陽極とし
て酸性水溶液中で陽極酸化、または陽極酸化に次いで加
熱処理を行なうことで、基材表面に生体活性を有する陽
極酸化層を形成し、生体親和性に優れた骨代替材料を製
造することができる。
Description
た骨代替材料とその製造方法に関し、より詳細には、少
なくとも表面がチタンまたはチタン合金からなる基材を
用いた骨代替材料とその製造方法に関するものである。
タン合金ということがある)は機械的特性に優れ、体液
に対する耐食性が良好で、且つ、生体に対する毒性も極
めて低いことから、骨代替材料用金属として一般的に用
いられている。ところが、チタン合金には生体親和性
(以下、生体活性ということがある)が低いという問題
点がある。即ち、骨代替材料には生体骨と直接結合する
生体活性が要求されるが、チタン合金は生体骨との親和
性が低く、生体骨との結合に長時間を要する。そこで、
チタン合金を骨代替材料として用いる場合、何らかの手
法でチタン合金に生体骨との結合能を付与する試みがな
されてきた。チタン合金が生体活性を示すための条件
は、体液中でその表面に骨の主成分であるヒドロキシア
パタイト(以下、HAPという)層が形成されることで
ある。HAPは生体活性に優れ、生体骨と直接結合する
性質を有しており、生体活性に対してHAPの果たす役
割は大きい。
Pを含む生体活性材料でチタン合金をコーティングする
ことにより、生体骨との親和性を高める技術が提案さ
れ、実用化されている。そのうち代表的な手法は、チタ
ン合金表面にプラズマ溶射等の手法で生体活性材料をコ
ートするものであるが、この方法を実施するには、比較
的高価なHAP粉末が必要となり、しかもこのHAP粉
末を基材(チタンまたはチタン合金)表面に溶射するに
は大掛かりな装置が必要となるのでコスト高となる。ま
た、溶射法により形成した生体活性層は母材との結合力
が低いという欠点を有するばかりでなく、生体活性材料
が溶射熱により変質し本来の性能を失う可能性がある。
1)および特許第3129041号(特許文献2)に
は、陽極酸化法によりチタン合金表面にHAPを形成さ
せる技術が記載されている。この方法では、Caイオン
とPイオンを含む電解溶液中でチタン合金に陽極酸化処
理を施し、表面にCaとPを含む陽極酸化層の形成が行
なわれるが、HAPの結晶化を促進するため100〜5
00℃の高温で水熱処理しなければならず、そのための
特殊な高圧装置が必要となる。しかも、この方法で形成
されたHAPは結晶性が非常に高いため生体骨に含まれ
るHAPと構造的に大きく異なっており、生体骨と結合
する能力は低いと予想される。
文献3)には、チタン合金からなる基材の表面をアルカ
リ水溶液で処理した後に、加熱処理すると、生体活性を
付与できることが記載されている。同様に、チタン合金
からなる基材の表面を塩化タンタル含有過酸化水素水で
処理した後に、加熱処理し、表面にアナターゼ型の酸化
チタン層を形成すると生体活性が付与されることも報告
されている(J.Biomed.Mater.Re
s.、52(1)、171−176.2000、非特許
文献1)。
中で陽極分極し、次いで同溶液中で陰極分極する電気化
学的処理により、純チタンに生体活性を付与できること
も実験的に確認されている(日本セラミックス協会第1
2回秋季シンポジウム講演予稿集、P42.1999、
非特許文献2)。この方法では、一連の電気化学的処理
によりチタン表面に炭酸カルシウムおよび水酸化カルシ
ウムが形成される。しかし、これらの化合物はアルカリ
性が強いため、生体に対して悪影響を及ぼす可能性が高
い。
の範囲
の範囲
の範囲
ル マテリアル リサーチ(JOURNAL OF B
IOMEDICAL MATERIALS RESEA
RCH)」、2000年、第52巻、1号、p171−
176
シンポジウム講演予稿集」、日本セラミックス協会、1
999年、P42
事情に着目してなされたものであって、その目的は、少
なくとも基材表面がチタンまたはチタン合金からなる部
材に、前記生体活性付与法より簡便な方法で生体内にお
いて長期間使用可能で強固な生体活性層を形成し、生体
親和性に優れた骨代替材料とその製法を提供することに
ある。
少なくとも基材表面がチタンまたはチタン合金からな
り、その表面にCaとPの両方を同時に含むことがない
生体活性の陽極酸化層を有する骨代替材料において、前
記陽極酸化層の少なくとも一部がアナターゼ型の酸化チ
タンからなるところに要旨を有しており、前記陽極酸化
層中には、アナターゼ型酸化チタンと結晶面(101)
に配向しているルチル型酸化チタンが共存していること
が好ましい。
酸化チタンと(101)面に配向したルチル型酸化チタ
ンが共存していると、前記陽極酸化層中にCaやPを含
まなくても、優れた生体親和性を発現することができ
る。
主成分とする被膜を形成しておけば、生体内での速やか
な骨結合を増進することができるので好ましい。
料を製造する方法として位置付けられるもので、その構
成は、少なくとも基材表面がチタンまたはチタン合金で
ある部材を、CaイオンとPイオンの両方を同時に含む
ことがない電解溶液中で陽極酸化するところに要旨を有
している。
極酸化の後に、加熱処理を行なえば、陽極酸化層中にア
ナターゼ型酸化チタンの形成をより促進できるので好ま
しい。また、生体内でより速やかな骨結合を進めるた
め、前記陽極酸化または加熱処理に次いでカルシウムと
リンをアパタイトの溶解度以上含む溶液に浸漬すること
も推奨される。
を含む電解溶液中で行なうのが最も効率的である。
理法として一般的に用いられている陽極酸化法に着目
し、チタン合金に生体活性を付与する技術について鋭意
検討を進めた。その結果、上記方法で表面にアナターゼ
型酸化チタン層または(101)面に配向したルチル型
酸化チタン層を形成させたチタン合金部材は、ヒトの体
液に近いイオン濃度を有する擬似体液に浸漬すると数日
の間に表面にアパタイトが形成され、良好な生体活性を
有することを見出した。
極酸化すると、基材表面に酸化チタンからなる陽極酸化
層が形成される。そして、後述する本発明の条件で形成
した陽極酸化層を薄膜X線回折により分析したところ、
陽極酸化層中の酸化チタンは、アナターゼ型およびルチ
ル型の結晶構造を呈していることが分かった。また、陽
極酸化時の電圧が火花放電を生じる電圧より低い場合、
表面に形成される陽極酸化層には、アナターゼ型酸化チ
タンが僅かに検出されるにすぎなかったが、火花放電を
生じる電圧以上の電圧で陽極酸化して得たルチル型酸化
チタンには、結晶面(101)に相当するピークが強く
検出され、ルチル型酸化チタン層の表面は、結晶面(1
01)に配向していることが確認された。
(101)面に配向したルチル型酸化チタン層を有する
上記基材を、ヒトの体液に近いイオン濃度を有する擬似
体液に浸漬すると、数日の間に基材表面にアパタイトが
形成された。このことから、アナターゼ型および(10
1)面に配向したルチル型の結晶構造を有する基材は生
体活性を有することが分かる。実験的に評価する場合、
生体活性を有するとは、擬似体液中でアパタイトを形成
し得る能力を有することであり、このようなアパタイト
形成能を有する材料は生体内において生体骨と結合する
能力を有すると考えられる。
を呈することが知られている。特に、擬似体液中で形成
させたアパタイトは、薄膜X線回折のc面((004)
面)に相当するピークが強く検出されることから、主に
c軸に配向していると考えられる。つまり、基材表面と
アパタイトのc面が接している可能性が高いのである。
酸化チタンおよび(101)面に配向したルチル型酸化
チタンの結晶構造について検討してみたところ、図1に
示すように、アナターゼ型酸化チタン(110)面とル
チル型酸化チタン(101)面の結晶構造には、酸素原
子配列が原子間距離の点でアパタイトのc面とほぼ一致
する部分があり、これら三者の酸素原子配列には高い類
似性が存在することが分かった。
せると、両者の間で原子配列が異なるため、境界部に界
面が存在し、境界部分には界面エネルギーが存在する。
ところが、本発明に係る骨代替材料の如く、基材上にお
ける陽極酸化層中のルチル型酸化チタン層(101)面
やアナターゼ型酸化チタン(110)面とアパタイトの
c面のようにお互いの原子配列が類似していると、基材
と化合物の境界部に明確な界面が見られなくなり、基材
と化合物があたかも連続した様な組織形態となり、界面
エネルギーが小さくなって化合物の形成が起こり易くな
ると考えられる。このように、基材表面にアパタイトc
面の酸素原子配列と類似した結晶構造を有する酸化チタ
ン層を形成させれば、基材表面にCaとPを含まなくて
も生体活性を有する陽極酸化層を確保できるのである。
料は、次のような形態で実施される。
のチタン合金よりなる基材を洗浄し乾燥した後、該試料
を陽極として電解溶液中において硫酸等の酸性水溶液中
で陽極酸化することにより、基材表面に酸化チタンから
なる陽極酸化層を形成して成るものである。この時に用
いる基材としては、少なくとも表面がチタンまたはチタ
ン合金により構成されておればよい。
陽極酸化層中の酸化チタンは、その原子配列が、アパタ
イトの結晶構造と非常に高い類似性を有するため、陽極
酸化層中にCaとPを含有させておく必要がない。よっ
て、従来のように陽極酸化時の電解溶液に、CaとPを
両方含有させる必要がなく、リン酸、酢酸、硫酸、硫酸
塩溶液、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の単一の
溶液、またはこれらの混合溶液を用いても良い。これら
の中でも、特に、硫酸および硫酸塩を含む水溶液を用い
ると、アナターゼ型酸化チタンの形成に有利であるため
好ましい。
化チタン層のアナターゼ型酸化チタンおよびルチル型酸
化チタンの存在比や、ルチル型酸化チタンの結晶面の配
向に影響を与えるため、陽極酸化に用いる電解溶液種に
応じて設定すればよい。電圧の範囲は特に限定されない
が、火花放電を生じる電圧以下で陽極酸化を行なうと、
表面に形成される陽極酸化層中のアナターゼ型酸化チタ
ンがわずかに検出される程度にすぎなくなるので、いず
れの電解溶液を用いる場合も火花放電が起こる程度の電
圧に設定するのが好ましい。
の条件によって、生体活性を発現させるのに十分なアナ
ターゼ型酸化チタン層を形成できない場合は、陽極酸化
後に、アナターゼ型酸化チタンの析出が進行するのに好
ましい温度で加熱処理行なうことで、生体活性を発現す
るのに十分な量のアナターゼ型酸化チタンを形成させる
ことができる。
理すると、その表面に酸化チタン層が形成される。例え
ば、約700℃を超える温度で純チタンを加熱処理する
と、表面には、ほぼ単層のルチル型酸化チタン層が形成
されるが、このような手法で形成されたルチル型酸化チ
タンは、(101)面に配向していないため、酸素の原
子配列の点においてアパタイトの結晶構造との類似性が
低く、アパタイト形成能を示さない。よって加熱処理
は、500℃以上、700℃以下の温度で行なうのが好
ましい。加熱処理の温度が500℃よりも低い場合、ア
ナターゼ型酸化チタンの形成が進行せず、基材に生体活
性層を付与することができない。また、加熱処理の温度
が700℃を超えるとアナターゼ型酸化チタンよりも、
(101)面に配向していないルチル型酸化チタンの形
成が中心となるため好ましくない。より好ましい加熱処
理温度は550℃以上、650℃以下である。この様に
簡便な手法で(101)面に強く配向したルチル型酸化
チタンを形成する手法は他に例が無く、この点からも非
常に特徴的な手法である。
ナターゼ型酸化チタン等の薄層を形成させる他の方法と
して、ゾルゲル法が挙げられる。この方法では、目的と
する薄層を基材表面に均一に形成させることは可能であ
るが、形成された層と基材との結合力は非常に弱い。よ
って、骨代替材料への生体活性層の形成法としてゾルゲ
ル法を適用した場合、骨との強固な結合は期待できな
い。
酸化チタン層は、基材と強固に結合することを確認して
いる。
化チタン層を形成させた後、アパタイトの溶解度以上の
カルシウムやリンを含む水溶液中、望ましくは擬似体液
中に浸漬し、基材表面に予め、アパタイトを形成させて
おくことは、好ましい実施態様として推奨される。特
に、体液に近いイオン濃度を有する擬似体液中で形成さ
れたアパタイトは、その組成および構造が骨のアパタイ
トの組成および構造に近似しているため、予めアパタイ
トを形成させておくことで、生体内で速やかな骨結合が
期待できるからである。
り、本発明の方法によればチタンまたはチタン合金に非
常に簡便に生体活性を付与するすることができる。ま
た、陽極酸化により表面に形成される酸化チタン層は、
基材との結合力が強く摩擦や剥離等のストレスに対する
抵抗性が高い。よって、本発明の骨代替材料は生体内に
おいて骨と強く結合し、長期間に渡って安定して使用可
能である。
が、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発
明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することはすべて
本発明の技術範囲に包含される。
液中で、それぞれ90V、105V、155V、180
Vの電圧をかけて純チタン板(10×10×1mm3)
を陽極酸化し、試料1〜4を作製した。
0.5mol/l、1.5mol/l、3.0mol/
lであるそれぞれの硫酸水溶液中で、155Vの電圧を
かけて純チタン板を陽極酸化し、試料5、6、7、8を
作製した。
モニウム水溶液中で、90Vの電圧をかけて純チタン板
を陽極酸化して試料9を、110Vの電圧で試料10を
作製した。
モニウム水溶液中で、90Vの電圧をかけて純チタン板
を陽極酸化して試料11を、110Vの電圧で試料12
を作製した。
リウム水溶液中で、155Vの電圧をかけて純チタン板
を陽極酸化して試料13を、180Vの電圧で試料14
を作製した。
リウム水溶液中で、155Vの電圧をかけて純チタン板
を陽極酸化して試料15を、185Vの電圧で試料16
を作製した。
溶液中で、70Vの電圧をかけて純チタン板を陽極酸化
して試料17を、同様に陽極酸化を行なった後600℃
で加熱処理を行なって試料18を作製した。
溶液中で、70Vの電圧をかけて純チタン板を陽極酸化
して試料19を、同様に陽極酸化した後600℃で加熱
処理を行なって試料20を作製した。
溶液中で、155vの電圧をかけて純チタン板を陽極酸
化して試料21を、同様に陽極酸化した後600℃で加
熱処理を行なって試料22を作製した。
ナトリウム水溶液中で、30Vの電圧をかけて純チタン
板を陽極酸化して試料23を、同様の陽極酸化に次いで
600℃で加熱処理を行なって試料24を作製した。
ナトリウム水溶液中で、70Vの電圧をかけて純チタン
板を陽極酸化して試料25を、同様に陽極酸化した後6
00℃で加熱処理を行なって試料26を作製した。
X線回折により分析し、アナターゼ型酸化チタンおよび
ルチル型酸化チタンの析出状態を調べた。ルチル型酸化
チタンの(101)面配向の有無については、薄膜X線
回折測定により得られたピーク強度の比較によって評価
した。アナターゼ型酸化チタン由来のピークは、2θが
25°付近に見られる。ルチル型酸化チタンの(11
0)面由来のピークは2θが27°付近に見られ、(1
01)面由来のピークは36°付近に見られる。ルチル
型酸化チタンの標準試料で同様の分析を行なうと、(1
10)面由来のピーク強度と(101)面由来のピーク
強度の比はおよそ2:1となる。この(101)面由来
のピーク強度が(110)面由来のピーク強度の1/2
を明らかに超えた場合に(101)面配向「有り」と評
価することとした。それぞれのピーク強度を判断し、ア
ナターゼ型酸化チタンおよびルチル型酸化チタンが析出
しなかったものを「−」、少量析出したものを「+」、
中量析出したものを「++」、多量析出したものを「+
++」と評価した。
るため、37℃の擬似体液中(イオン濃度Na+:14
2.0mM、K+:5.0mM、Mg2+:1.5mM、
Ca2+:2.5mM、Cl-:148.8mM、HPO4
2-:1.0mM、SO4 2-:0.5mM)に3日間、ま
たは7日間浸漬した際の試料表面におけるアパタイト形
成状況を走査型電子顕微鏡(SEM)にて確認した。ア
パタイトを形成しなかったものを×、アパタイトを形成
したものを○、アパタイトを著しく形成したものを◎と
評価した。
料(試料1〜16)の処理条件および分析結果を表1
に、陽極酸化に次いで加熱処理を行なって作製した試料
(試料17〜26)の処理条件および分析結果を表2に
まとめた。
ターゼ型酸化チタン単相、またはアナターゼ型酸化チタ
ンとルチル型酸化チタンの混合相の陽極酸化層を形成
し、擬似体液中でアパタイト形成能を有することを確認
した。特に、試料2、3、6、7、10、12ではアナ
ターゼ型酸化チタンの析出量が多く、旦つ、ルチル型酸
化チタンが(101)面に配向しているため良好なアパ
タイト形成能を示すことが確認された。
析結果を示した。試料2ではアナターゼ型酸化チタンの
ピークが顕著に認められ、ルチル型酸化チタンのピーク
は僅かであった。この結果と試料2、3および4が良好
なアパタイト形成能を有することから、ほぼアナターゼ
型酸化チタンのみで良好なアパタイト形成能を発現する
ことが分かる。一方、試料3および4において、ルチル
型酸化チタンの(110)面と(101)面に由来する
ピークが顕著に見られた。これらのピーク強度を比較す
ると、(101)面のピーク強度が(110)面のピー
ク強度の1/2を明らかに超えており、これらの試料に
析出したルチル型酸化チタンには(101)面への配向
性があると判断できる。特に、試料4ではアナターゼ型
酸化チタンの析出が僅かであるにも関わらず、良好なア
パタイト形成能を発現していることから、(101)面
に配向したルチル型酸化チタンがアパタイト形成能の発
現に寄与していることが分かる。
化チタンやルチル型酸化チタンを明確に析出できず、ア
パタイト形成能を示さない場合でも、陽極酸化に次いで
600℃で加熱処理することによりアパタイト形成能を
示すようになることを確認した。この結果は、加熱処理
によりアナターゼ型酸化チタンやルチル型酸化チタンの
析出が進行することで、アパタイト形成能が発現したと
考えられる。しかし、これらの試料に析出したルチル型
酸化チタンに(101)面の配向が見られないため、主
にアナターゼ型酸化チタンがアパタイト形成能の発現に
寄与しているものと考えられる。
lの電解溶液中で155Vの電圧をかけて純チタン板
(10×10×1mm3)を陽極酸化し、さらに600
℃で加熱処理した試料を37℃の擬似体液(実施例1〜
11と同様)に7日間浸漬し、その表面に厚さ約10μ
mのアパタイト層を形成させた。次にチタン基板上のア
パタイト層の表面に基板面と同じ面積(10×10m
m)のステンレス鋼ジグを付着させた。ジグの付着には
エポキシ系のアラルダイト接着剤を用い、接着剤部分の
厚さは約0.2mmとした。基板に対して垂直に引張り
荷重を加えたところ、約20MPaの強度で破壊した。
破壊後の基板表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観
察し、エネルギー分散型X線分光分析(EDX)により
元素分布を調べた結果を図3に示す。
イト層の表面を、Tiが分布している部分は陽極酸化処
理表面を示している。図3の結果より、破壊は、ほぼア
パタイトと接着剤の界面で生じたと判断され、純チタン
基板と陽極酸化処理層が強固に結合していると結論付け
られる。
はチタン合金を電解溶液中で陽極酸化することで、陽極
酸化層にCaとPを同時に含ませなくてもチタンまたは
チタン合金に良好な生体活性を付与することができ、基
材と強固に結合した生体活性を有する陽極酸化層を得る
ことができる。即ち、本発明によれば簡便な手法で生体
内で長期間使用可能な、生体活性に優れた骨代替材料を
提供できる。
0)面、ルチル(101)面の酸素の原子配列を示す模
式図である。
果を示すスペクトルである。
評価後の剥離界面の走査型電子顕微鏡(SEM)による
観察結果およびエネルギー分散型X線分光分析(ED
X)による元素分布を示す像である。
Claims (7)
- 【請求項1】 少なくとも基材表面がチタンまたはチタ
ン合金からなり、その表面にCaとPの両方を同時に含
むことがない生体親和性の陽極酸化層を有する骨代替材
料において、前記陽極酸化層の少なくとも一部がアナタ
ーゼ型の酸化チタンからなることを特徴とする骨代替材
料。 - 【請求項2】 前記陽極酸化層中に、アナターゼ型酸化
チタンと(101)面に配向したルチル型酸化チタンが
共存している請求項1に記載の骨代替材料。 - 【請求項3】 前記陽極酸化層上に、アパタイトを主成
分とする被膜が形成されている請求項1または2に記載
の骨代替材料。 - 【請求項4】 請求項1または2に記載の骨代替材料を
製造する方法であって、少なくとも表面がチタンまたは
チタン合金からなる基材を、CaイオンとPイオンの両
方を同時に含むことがない電解溶液中で陽極酸化するこ
とを特徴とする骨代替材料の製造方法。 - 【請求項5】 前記陽極酸化の後に、加熱処理を行なう
請求項4に記載の骨代替材料の製造方法。 - 【請求項6】 前記陽極酸化に次いで、または加熱処理
に次いで、カルシウムとリンをアパタイトの溶解度以上
含む溶液に浸漬する請求項4または5に記載の骨代替材
料の製造方法。 - 【請求項7】 前記陽極酸化を、硫酸もしくは硫酸塩を
含む電解溶液中で行なう請求項4〜6のいずれかに記載
の骨代替材料の製造方法。
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