JP2003184536A - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents

内燃機関の排気浄化装置

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久 大木
Kotaro Hayashi
孝太郎 林
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忍 石山
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尚史 曲田
Masaaki Kobayashi
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Takahiro Oba
孝宏 大羽
Akihiko Negami
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Abstract

(57)【要約】 【課題】内燃機関の排気浄化装置において、フィルタ再
生時の燃費の悪化を抑制する。 【解決手段】フィルタと、フィルタに捕集されたPM量
を判定する捕集量判定手段と、フィルタ昇温手段と、を
備え、捕集量判定手段により判定されたPM量が第1の
所定量以上の場合には、第1の温度まで上昇させ、この
後に、PM量が第1の所定量よりも少ない第2の所定量
以上の場合には、第1の温度よりも高い第2の温度まで
上昇させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関の排気浄
化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ディーゼルエンジンは経済性に優れてい
る反面、排気中に含まれる浮遊粒子状物質である煤に代
表されるパティキュレートマター(Particulate Matte
r:以下特に断らない限り「PM」という。)の除去が
重要な課題となっている。このため、大気中にPMが放
出されないようにディーゼルエンジンの排気系にPMの
捕集を行うパティキュレートフィルタ(以下、単に「フ
ィルタ」とする)を設ける技術が周知である。
【0003】このフィルタにより排気中のPMが一旦捕
集され大気中へ放出されることを防止することができ
る。しかし、フィルタに捕集されたPMが該フィルタに
堆積しフィルタの目詰まりを発生させることがある。こ
の目詰まりが発生すると、フィルタ上流の排気の圧力が
上昇し内燃機関の出力低下やフィルタの毀損を誘発する
虞がある。このようなときには、フィルタ上に堆積した
PMを着火燃焼せしめることにより該PMを除去するこ
とができる。このようにフィルタに堆積したPMを除去
することをフィルタの再生という。
【0004】しかし、前記フィルタに捕集されたPMを
着火燃焼させるためには、フィルタの温度を高温にする
必要があるが、ディーゼルエンジンの排気の温度は通常
この温度よりも低いためPMを燃焼除去するのは困難で
あった。
【0005】そこで、電気ヒータ、バーナ等を用いて捕
集されたPMの着火燃焼が生じる温度までフィルタを加
熱、昇温することが考えられるが、これには多大なエネ
ルギを外部から供給する必要がある。この問題に対し、
例えば特開平10−272324号公報によれば、フィ
ルタ上流に燃料添加装置及びその燃料添加装置からの燃
料を触媒の存在下で燃焼させて、フィルタに捕集された
PMを燃焼させ得る温度に排気を加熱する触媒燃焼部を
備えた加熱装置を設けている。
【0006】このように、フィルタ上流の触媒燃焼部で
燃料を燃焼させることにより、排気を均一に加熱するこ
とができ、フィルタ全体を加熱することが可能となるの
で、フィルタの再生を良好に行える。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、フィルタに
捕集されるPMには、煤(SOOT)等の不溶成分と未
燃炭化水素(HC)等の可溶な有機的留分(Soluble Or
ganic Function:以下、SOFとする)とが含まれてい
る。これらの成分は夫々燃焼するために必要となる温度
が異なる。
【0008】しかし、前記公報によれば、フィルタの温
度を600℃以上に上昇させている。この温度では、煤
及びSOFが、燃焼可能であるが、SOFは600℃以
下であっても燃焼可能である。従って、フィルタに捕集
されているPMがSOFを主成分とするものであれば、
フィルタを600℃まで加熱する必要はなく、また、フ
ィルタを加熱するための燃料も減量させることができ
る。
【0009】本発明は、上記したような問題に鑑みてな
されたものであり、内燃機関の排気浄化装置において、
フィルタ再生時の燃費の悪化を抑制する技術を提供する
ことにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するため
に本発明の内燃機関の排気浄化装置は、以下の手段を採
用した。即ち、排気中の粒子状物質を一時捕集可能なフ
ィルタと、前記フィルタに捕集された粒子状物質の量を
判定する捕集量判定手段と、前記フィルタの温度を上昇
させて該フィルタに捕集された粒子状物質を除去するフ
ィルタ昇温手段と、を備え、前記捕集量判定手段により
判定された粒子状物質の捕集量が第1の所定量以上の場
合には、前記フィルタ昇温手段は前記フィルタを第1の
温度まで上昇させ、この後に、前記捕集量判定手段によ
り判定された粒子状物質の捕集量が第1の所定量よりも
少ない第2の所定量以上の場合には、前記フィルタ昇温
手段は前記フィルタを第1の温度よりも高い第2の温度
まで上昇させることを特徴とする。
【0011】本発明の最大の特徴は、フィルタに第1の
所定量以上の粒子状物質が捕集された場合には、第1の
温度までフィルタを加熱して、第1の温度で燃焼可能な
成分を燃焼させ、それでも第2の所定量以上粒子状物質
が残留していたときに、更に第2の温度までフィルタを
加熱して、第2の温度で燃焼可能な成分を燃焼させるこ
とにある。
【0012】このように構成された内燃機関の排気浄化
装置では、排気中に含まれる粒子状物質がフィルタによ
り捕集される。捕集された粒子状物質はフィルタに堆積
し目詰まりを発生させるのでフィルタの再生処理が必要
となる。従って、粒子状物質の捕集量が第1の所定量以
上になったときに、昇温手段は第1の温度までフィルタ
を昇温させる。これにより、第1の温度で燃焼可能な成
分が燃焼する。ここで、フィルタに捕集されている主成
分が第1の温度で燃焼可能なものであれば、フィルタに
捕集された粒子状物質は燃焼しフィルタの再生が完了す
る。しかし、第1の温度では燃焼しないものが主成分で
ある場合には、更に昇温する必要がある。そこで、第1
の温度までフィルタを昇温させた後に、第1の所定量よ
りも少ない第2の所定量の粒子状物質が残留している場
合には、第1の温度よりも高温な第2の温度までフィル
タを昇温し、第2の温度で燃焼可能な粒子状物質を燃焼
させてフィルタの再生を行う。
【0013】このように、フィルタに捕集された粒子状
物質の成分による段階的な昇温が可能となる。
【0014】本発明おいては、前記捕集量判定手段は、
フィルタ前後の差圧に基づいてフィルタに捕集された粒
子状物資の量を判定しても良い。
【0015】フィルタに捕集された粒子状物質の量が多
くなるとフィルタ前後の差圧が大きくなるため、フィル
タ前後の差圧に基づいて粒子状物質の捕集量を判定する
ことが可能となる。他にも、例えば、フィルタ前圧(フ
ィルタ上流の背圧)や吸入空気量の減少により粒子状物
質の捕集量を判定することが可能である。
【0016】本発明においては、前記第1の温度は、パ
ティキュレートマターのSOF分を燃焼可能な温度であ
り、一方、前記第2の温度は、パティキュレートマター
のSOOT分を燃焼可能な温度であっても良い。
【0017】このように構成された内燃機関の排気浄化
装置では、第1の温度でSOF分が燃焼され、第2の温
度でSOOTが燃焼される。従って、フィルタに捕集さ
れた粒子状物質がSOF分を主成分とするものであった
場合には、第1の温度で燃焼され、フィルタの再生を完
了させることが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る内燃機関の排
気浄化装置の具体的な実施態様について図面に基づいて
説明する。ここでは、本発明に係る内燃機関の排気浄化
装置を車両駆動用のディーゼル機関に適用した場合を例
に挙げて説明する。
【0019】図1は、本実施の形態に係る排気浄化装置
を適用するエンジン1とその吸排気系の概略構成を示す
図である。
【0020】図1に示すエンジン1は、4つの気筒2を
有する水冷式の4サイクル・ディーゼル機関である。
【0021】エンジン1は、各気筒2の燃焼室に直接燃
料を噴射する燃料噴射弁3を備えている。各燃料噴射弁
3は、燃料を所定圧まで蓄圧する蓄圧室(コモンレー
ル)4と接続されている。このコモンレール4には、該
コモンレール4内の燃料の圧力に対応した電気信号を出
力するコモンレール圧センサ4aが取り付けられてい
る。
【0022】前記コモンレール4は、燃料供給管5を介
して燃料ポンプ6と連通している。この燃料ポンプ6
は、エンジン1の出力軸(クランクシャフト)の回転ト
ルクを駆動源として作動するポンプであり、該燃料ポン
プ6の入力軸に取り付けられたポンププーリ6aがエン
ジン1の出力軸(クランクシャフト)に取り付けられた
クランクプーリ1aとベルト7を介して連結されてい
る。
【0023】このように構成された燃料噴射系では、ク
ランクシャフトの回転トルクが燃料ポンプ6の入力軸へ
伝達されると、燃料ポンプ6は、クランクシャフトから
該燃料ポンプ6の入力軸へ伝達された回転トルクに応じ
た圧力で燃料を吐出する。
【0024】前記燃料ポンプ6から吐出された燃料は、
燃料供給管5を介してコモンレール4へ供給され、コモ
ンレール4にて所定圧まで蓄圧されて各気筒2の燃料噴
射弁3へ分配される。そして、燃料噴射弁3に駆動電流
が印加されると、燃料噴射弁3が開弁し、その結果、燃
料噴射弁3から気筒2内へ燃料が噴射される。
【0025】次に、エンジン1には、吸気枝管8が接続
されており、吸気枝管8の各枝管は、各気筒2の燃焼室
と吸気ポート(図示省略)を介して連通している。
【0026】前記吸気枝管8は吸気管9に接続されてい
る。吸気管9には、該吸気管9内を流通する吸気の質量
に対応した電気信号を出力するエアフローメータ11が
取り付けられている。
【0027】前記吸気管9における吸気枝管8の直上流
に位置する部位には、該吸気管9内を流通する吸気の流
量を調節する吸気絞り弁13が設けられている。この吸
気絞り弁13には、ステップモータ等で構成されて該吸
気絞り弁13を開閉駆動する吸気絞り用アクチュエータ
14が取り付けられている。
【0028】前記エアフローメータ11と前記吸気絞り
弁13との間に位置する吸気管9には、排気のエネルギ
を駆動源として作動する遠心過給機(ターボチャージ
ャ)15のコンプレッサハウジング15aが設けられ、
コンプレッサハウジング15aより下流の吸気管9に
は、前記コンプレッサハウジング15a内で圧縮されて
高温となった吸気を冷却するためのインタークーラ16
が設けられている。
【0029】このように構成された吸気系では、吸気
は、吸気管9を介してコンプレッサハウジング15aに
流入する。
【0030】コンプレッサハウジング15aに流入した
吸気は、該コンプレッサハウジング15aに内装された
コンプレッサホイールの回転によって圧縮される。前記
コンプレッサハウジング15a内で圧縮されて高温とな
った吸気は、インタークーラ16にて冷却された後、必
要に応じて吸気絞り弁13によって流量を調節されて吸
気枝管8に流入する。吸気枝管8に流入した吸気は、各
枝管を介して各気筒2の燃焼室へ分配され、各気筒2の
燃料噴射弁3から噴射された燃料を着火源として燃焼さ
れる。
【0031】一方、エンジン1には、排気枝管18が接
続され、排気枝管18の各枝管が排気ポート(図示省
略)を介して各気筒2の燃焼室と連通している。
【0032】前記排気枝管18は、前記遠心過給機15
のタービンハウジング15bと接続されている。前記タ
ービンハウジング15bは、排気管19と接続され、こ
の排気管19は、下流にてマフラー(図示省略)に接続
されている。
【0033】前記排気管19の途中には、吸蔵還元型N
Ox触媒を担持したパティキュレートフィルタ(以下、
単にフィルタという。)20が設けられている。フィル
タ20より上流の排気管19には、該排気管19内を流
通する排気の温度に対応した電気信号を出力する排気温
度センサ24が取り付けられている。また、フィルタ2
0上流には排気を導入する上流側導入管37aの一端が
接続され、フィルタ20下流には下流側導入管37bの
一端が接続される。上流側導入管37a及び下流側導入
管37bの他端は差圧センサ37に接続されている。差
圧センサ37は、上流側導入管37a及び下流側導入管
37bから導入された排気の差圧に対応した電気信号を
出力する。
【0034】前記したフィルタ20下流の排気管19に
は、該排気管19内を流通する排気の流量を調節する排
気絞り弁21が設けられている。この排気絞り弁21に
は、ステップモータ等で構成されて該排気絞り弁21を
開閉駆動する排気絞り用アクチュエータ22が取り付け
られている。
【0035】このように構成された排気系では、エンジ
ン1の各気筒2で燃焼された混合気(既燃ガス)が排気
ポートを介して排気枝管18へ排出され、次いで排気枝
管18から遠心過給機15のタービンハウジング15b
へ流入する。タービンハウジング15bに流入した排気
は、該排気が持つエネルギを利用してタービンハウジン
グ15b内に回転自在に支持されたタービンホイールを
回転させる。その際、タービンホイールの回転トルク
は、前述したコンプレッサハウジング15aのコンプレ
ッサホイールへ伝達される。
【0036】前記タービンハウジング15bから排出さ
れた排気は、排気管19を介してフィルタ20へ流入
し、排気中のパティキュレートマター(以下、単にPM
という。)が捕集され且つ有害ガス成分が除去又は浄化
される。フィルタ20にてPMを捕集され且つ有害ガス
成分を除去又は浄化された排気は、必要に応じて排気絞
り弁21によって流量を調節された後にマフラーを介し
て大気中に放出される。
【0037】また、排気枝管18と吸気枝管8とは、排
気枝管18内を流通する排気の一部を吸気枝管8へ再循
環させる排気再循環通路(以下、EGR通路とする。)
25を介して連通されている。このEGR通路25の途
中には、電磁弁などで構成され、印加電力の大きさに応
じて前記EGR通路25内を流通する排気(以下、EG
Rガスとする。)の流量を変更する流量調整弁(以下、
EGR弁とする。)26が設けられている。
【0038】前記EGR通路25の途中でEGR弁26
より上流には、該EGR通路25内を流通するEGRガ
スを冷却するEGRクーラ27が設けられている。前記
EGRクーラ27には、冷却水通路(図示省略)が設け
られエンジン1を冷却するための冷却水の一部が循環す
る。
【0039】このように構成された排気再循環機構で
は、EGR弁26が開弁されると、EGR通路25が導
通状態となり、排気枝管18内を流通する排気の一部が
前記EGR通路25へ流入し、EGRクーラ27を経て
吸気枝管8へ導かれる。
【0040】その際、EGRクーラ27では、EGR通
路25内を流通するEGRガスとエンジン1の冷却水と
の間で熱交換が行われ、EGRガスが冷却される。
【0041】EGR通路25を介して排気枝管18から
吸気枝管8へ還流されたEGRガスは、吸気枝管8の上
流から流れてきた新気と混ざり合いつつ各気筒2の燃焼
室へ導かれる。
【0042】ここで、EGRガスには、水(H2O)や
二酸化炭素(CO2)などのように、自らが燃焼するこ
とがなく、且つ、熱容量が高い不活性ガス成分が含まれ
ているため、EGRガスが混合気中に含有されると、混
合気の燃焼温度が低められ、以て窒素酸化物(NOx)
の発生量が抑制される。
【0043】更に、EGRクーラ27においてEGRガ
スが冷却されると、EGRガス自体の温度が低下すると
ともにEGRガスの体積が縮小されるため、EGRガス
が燃焼室内に供給されたときに該燃焼室内の雰囲気温度
が不要に上昇することがなくなるとともに、燃焼室内に
供給される新気の量(新気の体積)が不要に減少するこ
ともない。
【0044】次に、本実施の形態に係るフィルタ20に
ついて説明する。
【0045】図2は、フィルタ20の断面図である。図
2(A)は、フィルタ20の横方向断面を示す図であ
る。図2(B)は、フィルタ20の縦方向断面を示す図
である。
【0046】図2(A)及び(B)に示されるようにフ
ィルタ20は、互いに平行をなして延びる複数個の排気
流通路50、51を具備するいわゆるウォールフロー型
である。これら排気流通路は下流端が栓52により閉塞
された排気流入通路50と、上流端が栓53により閉塞
された排気流出通路51とにより構成される。なお、図
2(A)においてハッチングを付した部分は栓53を示
している。従って、排気流入通路50および排気流出通
路51は薄肉の隔壁54を介して交互に配置される。換
言すると排気流入通路50および排気流出通路51は各
排気流入通路50が4つの排気流出通路51によって包
囲され、各排気流出通路51が4つの排気流入通路50
によって包囲されるように配置される。
【0047】フィルタ20は例えばコージェライトのよ
うな多孔質材料から形成されており、従って排気流入通
路50内に流入した排気は図2(B)において矢印で示
されるように周囲の隔壁54内を通って隣接する排気流
出通路51内に流出する。
【0048】本発明による実施例では各排気流入通路5
0および各排気流出通路51の周壁面、即ち各隔壁54
の両側表面上および隔壁54内の細孔内壁面上には例え
ばアルミナからなる担体の層が形成されており、この担
体上に吸蔵還元型NOx触媒が坦持されている。
【0049】次に、本実施の形態に係るフィルタ20に
担持された吸蔵還元型NOx触媒の働きについて説明す
る。
【0050】フィルタ20は、例えば、アルミナを担体
とし、その担体上に、カリウム(K)、ナトリウム(N
a)、リチウム(Li)、もしくはセシウム(Cs)等
のアルカリ金属と、バリウム(Ba)もしくはカルシウ
ム(Ca)等のアルカリ土類と、ランタン(La)もし
くはイットリウム(Y)等の希土類とから選択された少
なくとも1つと、白金(Pt)等の貴金属とを担持して
構成されている。尚、本実施の形態では、アルミナから
なる担体上にバリウム(Ba)と白金(Pt)とを担持
し、更にO2ストレージ能力のあるセリア(Ce23
を添加して構成される吸蔵還元型NOx触媒を採用し
た。
【0051】このように構成されたNOx触媒は、該N
Ox触媒に流入する排気の酸素濃度が高いときは排気中
の窒素酸化物(NOx)を吸蔵(吸収、吸着)する。
【0052】一方、NOx触媒は、該NOx触媒に流入す
る排気の酸素濃度が低下したときは吸蔵していた窒素酸
化物(NOx)を放出する。その際、排気中に炭化水素
(HC)や一酸化炭素(CO)等の還元成分が存在して
いれば、NOx触媒は、該NOx触媒から放出された窒素
酸化物(NOx)を窒素(N2)に還元せしめることがで
きる。
【0053】ところで、エンジン1が希薄燃焼運転され
ている場合は、エンジン1から排出される排気の空燃比
がリーン雰囲気となり排気の酸素濃度が高くなるため、
排気中に含まれる窒素酸化物(NOx)がNOx触媒に吸
蔵されることになるが、エンジン1の希薄燃焼運転が長
期間継続されると、NOx触媒のNOx吸蔵能力が飽和
し、排気中の窒素酸化物(NOx)がNOx触媒にて除去
されずに大気中へ放出されてしまう。
【0054】特に、エンジン1のようなディーゼル機関
では、大部分の運転領域においてリーン空燃比の混合気
が燃焼され、それに応じて大部分の運転領域において排
気の空燃比がリーン空燃比となるため、NOx触媒のN
Ox吸蔵能力が飽和し易い。尚、ここでリーン空燃比と
は、ディーゼル機関にあっては例えば20乃至50で、
三元触媒ではNOxを浄化できない領域を意味する。
【0055】従って、エンジン1が希薄燃焼運転されて
いる場合は、NOx触媒のNOx吸蔵能力が飽和する前に
NOx触媒に流入する排気中の酸素濃度を低下させると
ともに還元剤の濃度を高め、NOx触媒に吸蔵された窒
素酸化物(NOx)を還元させる必要がある。
【0056】このように酸素濃度を低下させる方法とし
ては、排気中の燃料添加や、再循環するEGRガス量を
増大させて煤の発生量が増加して最大となった後に、更
にEGRガス量を増大させる低温燃焼(特許第3116
876号)、機関出力のための燃料を噴射させる主噴射
の後の機関出力とはならない膨張行程中に再度燃料を噴
射させる副噴射等の方法が考えられる。本実施の形態で
は、フィルタ20より上流の排気管19を流通する排気
中に還元剤たる燃料(軽油)を添加する還元剤供給機構
を備え、この還元剤供給機構から排気中へ燃料を添加す
ることにより、フィルタ20に流入する排気の酸素濃度
を低下させるとともに還元剤の濃度を高めるようにし
た。
【0057】還元剤供給機構は、図1に示されるよう
に、その噴孔が排気枝管18内に臨むように取り付けら
れ、ECU35からの信号により開弁して燃料を噴射す
る還元剤噴射弁28と、前述した燃料ポンプ6から吐出
された燃料を前記還元剤噴射弁28へ導く還元剤供給路
29と、還元剤供給路29に設けられて該還元剤供給路
29内の燃料の流通を遮断する遮断弁31と、を備えて
いる。
【0058】このような還元剤供給機構では、燃料ポン
プ6から吐出された高圧の燃料が還元剤供給路29を介
して還元剤噴射弁28へ印加される。そして、ECU3
5からの信号により該還元剤噴射弁28が開弁して排気
枝管18内へ還元剤としての燃料が噴射される。
【0059】還元剤噴射弁28から排気枝管18内へ噴
射された還元剤は、排気枝管18の上流から流れてきた
排気の酸素濃度を低下させる。
【0060】このようにして形成された酸素濃度の低い
排気はフィルタ20に流入し、フィルタ20に吸蔵され
ていた窒素酸化物(NOx)を窒素(N2)に還元するこ
とになる。
【0061】その後、ECU35からの信号により還元
剤噴射弁28が閉弁し、排気枝管18内への還元剤の添
加が停止されることになる。
【0062】以上述べたように構成されたエンジン1に
は、該エンジン1を制御するための電子制御ユニット
(ECU:Electronic Control Unit)35が併設され
ている。このECU35は、エンジン1の運転条件や運
転者の要求に応じてエンジン1の運転状態を制御するユ
ニットである。
【0063】ECU35には、コモンレール圧センサ4
a、エアフローメータ11、排気温度センサ24、クラ
ンクポジションセンサ33、アクセル開度センサ36、
差圧センサ37等の各種センサが電気配線を介して接続
され、上記した各種センサの出力信号がECU35に入
力されるようになっている。
【0064】一方、ECU35には、燃料噴射弁3、吸
気絞り用アクチュエータ14、排気絞り用アクチュエー
タ22、EGR弁26、還元剤噴射弁28、遮断弁31
等が電気配線を介して接続され、上記した各部をECU
35が制御することが可能になっている。
【0065】ここで、ECU35は、図3に示すよう
に、双方向性バス350によって相互に接続された、C
PU351と、ROM352と、RAM353と、バッ
クアップRAM354と、入力ポート356と、出力ポ
ート357とを備えるとともに、前記入力ポート356
に接続されたA/Dコンバータ(A/D)355を備え
ている。
【0066】前記入力ポート356は、クランクポジシ
ョンセンサ33のようにデジタル信号形式の信号を出力
するセンサの出力信号を入力し、それらの出力信号をC
PU351やRAM353へ送信する。
【0067】前記入力ポート356は、コモンレール圧
センサ4a、エアフローメータ11、排気温度センサ2
4、アクセル開度センサ36、差圧センサ37等のよう
に、アナログ信号形式の信号を出力するセンサのA/D
355を介して入力し、それらの出力信号をCPU35
1やRAM353へ送信する。
【0068】前記出力ポート357は、燃料噴射弁3、
吸気絞り用アクチュエータ14、排気絞り用アクチュエ
ータ22、EGR弁26、還元剤噴射弁28、遮断弁3
1等と電気配線を介して接続され、CPU351から出
力される制御信号を、前記した燃料噴射弁3、吸気絞り
用アクチュエータ14、排気絞り用アクチュエータ2
2、EGR弁26、還元剤噴射弁28、あるいは遮断弁
31へ送信する。
【0069】前記ROM352は燃料噴射弁3を制御す
るための燃料噴射制御ルーチン、吸気絞り弁13を制御
するための吸気絞り制御ルーチン、排気絞り弁21を制
御するための排気絞り制御ルーチン、EGR弁26を制
御するためのEGR制御ルーチン、フィルタ20に還元
剤を添加して吸蔵されたNOxを還元させるNOx浄化制
御ルーチン等のアプリケーションプログラムを記憶して
いる。
【0070】前記ROM352は、上記したアプリケー
ションプログラムに加え、各種の制御マップを記憶して
いる。前記制御マップは、例えば、エンジン1の運転状
態と基本燃料噴射量(基本燃料噴射時間)との関係を示
す燃料噴射量制御マップ、エンジン1の運転状態と基本
燃料噴射時期との関係を示す燃料噴射時期制御マップ、
エンジン1の運転状態と吸気絞り弁13の目標開度との
関係を示す吸気絞り弁開度制御マップ、エンジン1の運
転状態と排気絞り弁21の目標開度との関係を示す排気
絞り弁開度制御マップ、エンジン1の運転状態とEGR
弁26の目標開度との関係を示すEGR弁開度制御マッ
プ、エンジン1の運転状態と還元剤の目標添加量(若し
くは排気の目標空燃比)との関係を示す還元剤添加量制
御マップ、還元剤の目標添加量と還元剤噴射弁28の開
弁時間との関係を示す還元剤噴射弁制御マップ等であ
る。
【0071】前記RAM353は、各センサからの出力
信号やCPU351の演算結果等を格納する。前記演算
結果は、例えば、クランクポジションセンサ33がパル
ス信号を出力する時間的な間隔に基づいて算出される機
関回転数である。これらのデータは、クランクポジショ
ンセンサ33がパルス信号を出力する都度、最新のデー
タに書き換えられる。
【0072】前記バックアップRAM354は、エンジ
ン1の運転停止後もデータを記憶可能な不揮発性のメモ
リである。
【0073】前記CPU351は、前記ROM352に
記憶されたアプリケーションプログラムに従って動作し
て、燃料噴射弁制御、吸気絞り制御、排気絞り制御、E
GR制御、NOx浄化制御等を実行する。
【0074】例えば、NOx浄化制御では、CPU35
1は、フィルタ20に流入する排気中の酸素濃度を比較
的に短い周期でスパイク的(短時間)に低くする、所謂
リッチスパイク制御を実行する。
【0075】リッチスパイク制御では、CPU351
は、所定の周期毎にリッチスパイク制御実行条件が成立
しているか否かを判別する。このリッチスパイク制御実
行条件としては、例えば、フィルタ20が活性状態にあ
る、排気温度センサ24の出力信号値(排気温度)が所
定の上限値以下である、被毒回復制御が実行されていな
い、等の条件を例示することができる。
【0076】上記したようなリッチスパイク制御実行条
件が成立していると判定された場合は、CPU351
は、還元剤噴射弁28からスパイク的に還元剤たる燃料
を噴射させるべく当該還元剤噴射弁28を制御すること
により、フィルタ20に流入する排気の空燃比を一時的
に所定の目標リッチ空燃比とする。
【0077】具体的には、CPU351は、RAM35
3に記憶されている機関回転数、アクセル開度センサ3
6の出力信号(アクセル開度)、エアフローメータ11
の出力信号値(吸入空気量)、空燃比センサ(図示省
略)の出力信号、燃料噴射量等を読み出す。
【0078】CPU351は、前記した機関回転数とア
クセル開度と吸入空気量と燃料噴射量とをパラメータと
してROM352の還元剤添加量制御マップへアクセス
し、排気の空燃比を予め設定された目標空燃比とする上
で必要となる還元剤の添加量(目標添加量)を算出す
る。
【0079】続いて、CPU351は、前記目標添加量
をパラメータとしてROM352の還元剤噴射弁制御マ
ップへアクセスし、還元剤噴射弁28から目標添加量の
還元剤を噴射させる上で必要となる還元剤噴射弁28の
開弁時間(目標開弁時間)を算出する。
【0080】還元剤噴射弁28の目標開弁時間が算出さ
れると、CPU351は、還元剤噴射弁28を開弁させ
る。
【0081】CPU351は、還元剤噴射弁28を開弁
させた時点から前記目標開弁時間が経過すると、還元剤
噴射弁28を閉弁させる。
【0082】このように還元剤噴射弁28が目標開弁時
間だけ開弁されると、目標添加量の燃料が還元剤噴射弁
28から排気枝管18内へ噴射されることになる。そし
て、還元剤噴射弁28から噴射された還元剤は、排気枝
管18の上流から流れてきた排気と混ざり合って目標空
燃比の混合気を形成してフィルタ20に流入する。
【0083】この結果、フィルタ20に流入する排気の
空燃比は、比較的に短い周期で酸素濃度が変化すること
になり、以て、フィルタ20が窒素酸化物(NOx)の
吸蔵と還元とを交互に短周期的に繰り返すことになる。
【0084】このように、フィルタ20に流入する排気
の空燃比をスパイク的に目標リッチ空燃比とし、吸蔵還
元型NOx触媒に吸収された窒素酸化物(NOx)を還元
することが可能となる。
【0085】本実施の形態においては、フィルタ20へ
還元剤を供給する場合に還元剤噴射弁28から排気中へ
の燃料添加に代わり、前記エンジン1の気筒2内へ機関
出力のための燃料が主噴射された後の機関出力とはなら
ない時期に再度燃料を噴射させる副噴射を行ってもよ
い。
【0086】このようにエンジン1の気筒2内へ機関出
力のための燃料が主噴射された後の機関出力とはならな
い時期に再度燃料を噴射させるのは、主噴射のみにより
空燃比をリッチ空燃比側へずらそうとするとスモーク等
の問題が発生する虞があるからである。また、主噴射を
増量すると燃料の燃焼が機関出力になるのでトルクの変
動が発生し運転状態が悪化する。そこで、主噴射の後の
機関出力に影響しにくい膨張行程等で副噴射を行う。
【0087】副噴射により噴射された燃料は気筒2内で
燃焼し気筒2内のガス温度を上昇させると共に気筒2内
の酸素濃度を低下させる。気筒2内で燃焼し温度が上昇
したガスは排気となって排気管19を通り吸蔵還元型N
Ox触媒に到達し、吸蔵還元型NOx触媒の温度を上昇さ
せると共に吸蔵還元型NOx触媒に還元剤たる炭化水素
(HC)を供給する。
【0088】このように副噴射を用いるとNOx触媒の
温度を早期に上昇させることができ、また、吸蔵還元型
NOx触媒に還元剤を供給することができる。
【0089】副噴射の量及び噴射時期は、アクセル開度
と機関回転数と副噴射量又は副噴射時期との関係を予め
マップ化しておきROM352に記憶させておけば、そ
のマップとアクセル開度と機関回転数とから算出するこ
とができる。更に、パラメータとしてエンジン1の冷却
水温度を加えてもよい。
【0090】次に、被毒解消制御では、CPU351
は、フィルタ20の酸化物による被毒を解消すべく被毒
解消処理を行うことになる。
【0091】ここで、エンジン1の燃料には硫黄(S)
が含まれている場合があり、そのような燃料がエンジン
1で燃焼されると、二酸化硫黄(SO2)や三酸化硫黄
(SO3)などの硫黄酸化物(SOx)が生成される。
【0092】硫黄酸化物(SOx)は、排気とともにフ
ィルタ20に流入し、窒素酸化物(NOx)と同様のメ
カニズムによってフィルタ20に吸収される。
【0093】具体的には、フィルタ20に流入する排気
の酸素濃度が高いときには、流入排気ガス中の二酸化硫
黄(SO2)や三酸化硫黄(SO3)等の硫黄酸化物(S
Ox)が白金(Pt)の表面上で酸化され、硫酸イオン
(SO4 2-)の形でフィルタ20に吸収される。更に、
フィルタ20に吸収された硫酸イオン(SO4 2-)は、
酸化バリウム(BaO)と結合して硫酸塩(BaS
4)を形成する。
【0094】ところで、硫酸塩(BaSO4)は、硝酸
バリウム(Ba(NO32)に比して安定していて分解
し難く、フィルタ20に流入する排気の酸素濃度が低く
なっても分解されずにフィルタ20内に残留してしま
う。
【0095】フィルタ20における硫酸塩(BaS
4)の量が増加すると、それに応じて窒素酸化物(N
Ox)の吸収に関与することができる酸化バリウム(B
aO)の量が減少するため、フィルタ20のNOx吸収
能力が低下する、いわゆるSOx被毒が発生する。
【0096】フィルタ20のSOx被毒を解消する方法
としては、フィルタ20の雰囲気温度をおよそ600乃
至650℃の高温域まで昇温させるとともに、フィルタ
20に流入する排気の酸素濃度を低くすることにより、
フィルタ20に吸収されている硫酸バリウム(BaSO
4)をSO3 -やSO4 -に熱分解し、次いでSO3 -やSO4
-を排気中の炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)と
反応させて気体状のSO2 -に還元する方法を例示するこ
とができる。
【0097】そこで、本実施の形態に係る被毒解消処理
では、CPU351は、先ずフィルタ20の床温を高め
る触媒昇温制御を実行した上で、フィルタ20に流入す
る排気の酸素濃度を低くするようにした。
【0098】触媒昇温制御では、CPU351は、各気
筒2の膨張行程時に燃料噴射弁3から副次的に燃料を噴
射させるとともに還元剤噴射弁28から排気中へ燃料を
添加させることにより、それらの未燃燃料成分をフィル
タ20において酸化させ、酸化の際に発生する熱によっ
てフィルタ20の床温を高めるようにしてもよい。
【0099】上記したような触媒昇温処理によりフィル
タ20の床温が600℃乃至650℃程度の高温域まで
上昇すると、CPU351は、フィルタ20に流入する
排気の酸素濃度を低下させるべく還元剤噴射弁28から
燃料を噴射させる。
【0100】このように被毒解消処理が実行されると、
フィルタ20の床温が高い状況下で、フィルタ20に流
入する排気の酸素濃度が低くなるため、フィルタ20に
吸収されている硫酸バリウム(BaSO4)がSO3 -
SO4 -に熱分解され、それらSO3 -やSO4 -が排気中の
炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)と反応して還元
され、以てフィルタ20のSOx被毒が解消されること
になる。
【0101】一方、エンジンの運転状態によってはフィ
ルタ20に捕獲されたPMが燃え残って堆積し該フィル
タ20の目詰まりを誘発させる要因となる。このように
燃え残ったPMを効果的に除去する方法の一つとしても
前記燃料添加による昇温制御は有効である。
【0102】次に、排気中への燃料添加によるフィルタ
20の昇温制御について説明する。
【0103】燃料添加による昇温制御では、CPU35
1は、フィルタ20に流入する排気中に燃料を添加する
燃料添加制御を実行する。
【0104】CPU351は、還元剤噴射弁28から還
元剤たる燃料を噴射させるべく該還元剤噴射弁28を制
御することにより、フィルタ20に流入する排気の空燃
比を一時的に所定の目標空燃比とする。
【0105】具体的には、CPU351は、RAM35
3に記憶されている機関回転数、アクセル開度センサ3
6の出力信号(アクセル開度)、エアフローメータ11
の出力信号値(吸入空気量)、燃料噴射量等を読み出
す。更に、CPU351は、前記した機関回転数とアク
セル開度と吸入空気量と燃料噴射量とをパラメータとし
てROM352の還元剤添加量制御マップへアクセス
し、排気の空燃比を予め設定された目標空燃比とする上
で必要となる還元剤の添加量(目標添加量)を算出す
る。
【0106】続いて、CPU351は、前記目標添加量
をパラメータとしてROM352の流量調整弁制御マッ
プへアクセスし、還元剤噴射弁28から目標添加量の還
元剤を噴射させる上で必要となる還元剤噴射弁28の開
弁時間(目標開弁時間)を算出する。
【0107】還元剤噴射弁28の目標開弁時間が算出さ
れると、CPU351は、還元剤噴射弁28を開弁させ
る。
【0108】CPU351は、還元剤噴射弁28を開弁
させた時点から前記目標開弁時間が経過すると、還元剤
噴射弁28を閉弁させる。
【0109】このように還元剤噴射弁28が通常目標開
弁時間だけ開弁されると、通常目標添加量の燃料が還元
剤噴射弁28から排気枝管18内へ噴射されることにな
る。そして、還元剤噴射弁28から噴射された還元剤
は、排気枝管18の上流から流れてきた排気と混ざり合
って目標空燃比の混合気を形成してフィルタ20に流入
する。
【0110】この結果、フィルタ20に流入する排気
は、比較的に短い周期で酸素濃度が変化することにな
る。そして、フィルタ20に流入した燃料により活性酸
素が放出されることによって、PMが酸化されやすいも
のに変質し単位時間あたりの酸化除去可能量が向上す
る。また、燃料添加により、触媒の酸素被毒が除去さ
れ、触媒の活性が上がるため活性酸素を放出し易くな
る。更に、燃料の酸化反応によりフィルタ20の温度が
上昇する。そして、活性酸素によりPMは酸化燃焼され
除去される。
【0111】尚、フィルタ20に還元剤を供給する他の
方法として、低温燃焼を用いることが可能である。
【0112】ここで、低温燃焼について説明する。
【0113】前記したように従来、NOxの発生を抑制
するためにEGRが用いられてきた。EGRガスは、比
較的比熱比が高く、温度を上げるのに必要な熱量が多い
ので、吸気中におけるEGRガス割合が高くなるほど気
筒2内における燃焼温度が低下する。燃焼温度が低下す
るとNOxの発生量も低下するので、EGRガス割合が
高くなればなるほどNOxの排出量を低下させることが
できる。
【0114】しかし、EGRガス割合を高くしていくと
ある割合以上で急激に煤の発生量が増大し始める。通常
のEGR制御は煤が急激に増大し始めるよりも低いEG
Rガス割合のところで行われている。
【0115】ところが、更にEGRガス割合を高くして
いくと、上述したように煤が急激に増大するが、この煤
の発生量にはピークが存在し、このピークを越えて更に
EGRガス割合を高くすると、今度は煤が急激に減少し
始め、ついにはほとんど発生しなくなる。
【0116】これは、燃焼室内における燃焼時の燃料及
びその周囲のガス温度がある温度以下のときには炭化水
素(HC)の成長が煤に至る前の途中の段階で停止し、
燃料及びその周囲のガス温度がある温度以上になると炭
化水素(HC)は一気に煤まで成長してしまうためであ
る。
【0117】従って、燃焼室内における燃焼時の燃焼及
びその周囲のガス温度を炭化水素(HC)の成長が途中
で停止する温度以下に抑制すれば煤は発生しなくなる。
この場合、燃料及びその周囲のガス温度は、燃料が燃焼
した際の燃料周りのガスの吸熱作用が大きく影響してお
り、燃料燃焼時の発熱量に応じて燃料周りのガスの吸熱
量即ちEGRガス割合を調整することによって煤の発生
を抑制することが可能となる。
【0118】低温燃焼を行うときのEGRガス割合は、
予め実験等により求めておきマップ化したものをECU
35内のROM352に記憶させておく。このマップに
基づいてEGRガス量のフィードバック制御を行う。
【0119】一方、煤に至る前に成長が途中で停止した
炭化水素(HC)は、フィルタ20に担持された吸蔵還
元型NOx触媒により酸化させることができる。従っ
て、低温燃焼で発生した炭化水素(HC)は、還元剤と
して働く。
【0120】このように、低温燃焼では、煤に至る前に
成長が途中で停止した炭化水素(HC)を吸蔵還元型N
Ox触媒等により浄化することを基本としている。従っ
て吸蔵還元型NOx触媒等が活性化していないときに
は、炭化水素(HC)は浄化されずに大気中へ放出しさ
れてしまうために低温燃焼を用いることは困難である。
【0121】また、気筒2内における燃焼時の燃料及び
その周囲のガス温度を炭化水素(HC)の成長が途中で
停止する温度以下に制御しうるのは燃焼による発熱量が
少ない比較的機関負荷が低いときである。
【0122】従って、本実施の形態においては、エンジ
ン1が低回転低負荷で運転されているときで且つフィル
タ20に担持された吸蔵還元型NOx触媒が活性領域に
達したときに低温燃焼制御が行われる。
【0123】活性領域内であるか否かは排気温度センサ
24の出力信号等に基づいて判定することができる。
【0124】このようにして、低温燃焼では、煤に代表
されるPMの排出を抑制しつつ吸蔵還元型NOx触媒へ
還元剤たる炭化水素(HC)を供給でき、NOxを還元
浄化することができる。また、このときに熱が発生する
ため、昇温されたフィルタ20の温度を維持することが
可能となる。
【0125】このような低温燃焼により還元剤の供給を
行う場合には、CPU351は、まず目標空燃比を求め
る。目標空燃比は、エンジン1の運転状態に基づいたマ
ップを予め定めておくことにより求めることができる。
次いで、CPU351は目標空燃比に応じた吸気絞り弁
13の目標開度を算出し、該吸気絞り弁13を目標開度
となるように制御する。次いで、CPU351は目標空
燃比に応じたEGR弁26の目標開度を算出し、該EG
R弁26を目標開度となるように制御する。また、CP
U351は、燃料噴射量及び燃料噴射開始時期を算出す
る。吸気絞り弁13及びEGR弁26の目標開度、燃料
噴射量、燃料噴射開始時期は予め求められたマップに基
づいて算出される。
【0126】このように低温燃焼を行うことによって
も、フィルタ20に流入する排気中の酸素濃度を低下さ
せるとともに還元剤の濃度を高め、フィルタ20に吸収
された窒素酸化物(NOx)を放出させ、また、フィル
タ20の温度を上昇させることが可能である。
【0127】ここで、従来のフィルタを備えた内燃機関
の排気浄化装置では、例えば600℃以上にフィルタを
昇温させてPMを燃焼除去していた。しかし、PMには
例えば600℃以上に加熱しなくとも燃焼するものがあ
り、このような成分が主に堆積している場合には、例え
ば600℃まで加熱することなくフィルタの再生が可能
である。従って、堆積しているPMの主成分が600℃
以下で燃焼するものであるのに、例えば600℃まで昇
温させると燃料の消費量が多くなり燃費の悪化を誘発す
る。
【0128】そこで、本実施の形態では、先ず、例えば
450℃にフィルタ20を昇温し、PMが除去されたと
確認されたならば、その時点でPM再生制御を終了し、
一方、PMの除去が確認されなければ、例えば600℃
にフィルタ20を昇温する。
【0129】図4は、本実施の形態によるPM再生制御
を行ったときの車両走行距離とフィルタ前後の差圧との
関係の一例を示した図である。
【0130】では、差圧センサ37で検出されるフィ
ルタ20の前後差圧が第1の所定値以上となった場合で
あって、フィルタ20を450℃まで昇温している。こ
こで、第1の所定値とは、例えば、フィルタ20に堆積
しているPMが全て燃焼した場合に、フィルタ20を過
熱させない量のPMが堆積しているとしたときのフィル
タ20の前後差圧である。このように第1の所定値を設
定することにより、フィルタ20の熱劣化を抑制しつつ
フィルタ20の再生を行うことができる。
【0131】では、フィルタ20の前後差圧が第2の
所定値以下となって、PM再生制御が終了している。こ
こで、第2の所定値とは、フィルタ20に堆積していた
PMの主成分がSOFであった場合には、フィルタ20
前後差圧がこの値以下に低下すると予測される値であ
る。では、煤は燃焼しないでフィルタ20に堆積して
いるが、少量であるためPM再生制御を終了させてい
る。
【0132】では、フィルタ20に再度PMが堆積し
て差圧センサ37で検出されるフィルタ20の前後差圧
が再度第1の所定値以上となったため、該フィルタ20
を450℃まで昇温している。
【0133】では、450℃までの昇温では第2の所
定値以下にフィルタ20前後差圧が低下しない場合であ
る。このような場合には、フィルタ20に堆積したPM
の主成分は、煤であると推定される。
【0134】では、600℃までフィルタ20を昇温
させる。これにより煤が燃焼して、フィルタ20前後の
差圧が小さくなる。
【0135】では、フィルタ20に堆積していたSO
F及び煤が燃焼し、フィルタ20の初期の圧力損失値の
近傍の第3の所定値にまでフィルタ20前後差圧が小さ
くなっている。
【0136】このようにして、本実施の形態によれば、
フィルタ20を段階的に昇温することが可能となる。
【0137】次に、本実施の形態によるPM再生制御の
フローについて説明する。
【0138】図5は、本実施の形態によるPM再生制御
のフローを示したフローチャート図である。本フロー
は、車両が一定の距離を走行する度に実行される。
【0139】ステップS101では、差圧センサ37の
出力信号より求まるフィルタ20前後の差圧Pbを読み
込む。
【0140】ステップS102では、ステップS101
で読み込んだフィルタ20前後の差圧Pbが第1の所定
値よりも大きいか否か判定する。ここで、第1の所定値
は、フィルタ20に堆積しているPMが全て燃焼した場
合であっても、フィルタ20を過熱させない量のPMが
堆積しているときのフィルタ20の前後差圧である。
【0141】ステップS102で肯定判定がなされた場
合にはステップS103で進み、一方、否定判定がなさ
れた場合にはフィルタ20再生の必要がないため本ルー
チンを終了させる。
【0142】ステップS103では、フィルタ20を第
1の温度である450℃に昇温している期間をカウント
するカウンタiがリセットされる。
【0143】ステップS104では、カウンタをカウン
トアップする。CPU351は、カウンタiにi+1を
代入する。
【0144】ステップS105では、フィルタ20に還
元剤たる燃料を添加して該フィルタ20を450℃に昇
温させる。この温度では、SOFが燃焼可能である。フ
ィルタ20を昇温させる方法としては、前記した低温燃
焼、副噴射、還元剤噴射弁28による排気中への燃料添
加等を行う。
【0145】ステップS106では、フィルタ20の前
後差圧Paを読み込む。
【0146】ステップS107では、ステップS106
で読み込んだフィルタ20の前後差圧Paが第2の所定
値よりも大きいか否か判定する。フィルタ20に捕集さ
れたPMにSOFが多く含まれていた場合には、ステッ
プS105において行われたフィルタ20の昇温によ
り、該フィルタ20の前後差圧は小さくなる。ここで、
第2の所定値よりもフィルタ20の前後差圧が小さくな
った場合には、フィルタ20の再生が終了したとしてP
M再生制御を終了させる。一方、第2の所定値よりも小
さくならない場合には、引き続き450℃にて再生処理
が行われる。
【0147】ステップS107で肯定判定がなされた場
合にはステップS108へ進み、一方、否定判定がなさ
れた場合には本ルーチンを終了させる。
【0148】ステップS108では、カウンタiの値が
所定値よりも大きいか否か判定される。所定期間フィル
タ20を450℃に昇温させても該フィルタ20前後の
差圧が第2の所定値よりも小さくならない場合には、フ
ィルタ20に堆積しているPMは煤を主成分とするもの
であると考えられるため、煤を燃焼可能な温度まで該フ
ィルタ20を昇温させる必要がある。
【0149】ステップS108で肯定判定がなされた場
合にはステップS104へ戻り、一方、否定判定がなさ
れた場合にはステップS109へ進む。
【0150】ステップS109では、フィルタ20が6
00℃まで昇温される。この温度では煤が燃焼可能であ
る。
【0151】ステップS110では、フィルタ20の前
後差圧Peを読み込む。
【0152】ステップS111では、ステップS110
で読み込んだフィルタ20の前後差圧Peが第3の所定
の圧力よりも大きいか否か判定する。ステップS109
で行われる600℃までの昇温により、フィルタ20に
堆積したPMはほとんど燃焼する。これにより、フィル
タ20の前後差圧は、フィルタ20の新品状態の前後差
圧である初期圧損値近傍まで小さくなる。従って、フィ
ルタ20の前後差圧が第3の所定値よりも大きい場合は
まだフィルタ20の再生が完了していないとして引き続
き600℃にてフィルタ20の再生処理が行われる。一
方、第3の所定値よりも小さくなった場合にはフィルタ
20の再生が完了したとしてPM再生制御を終了させ
る。ここで、第3の所定値とは、フィルタ20の初期圧
損値に経時劣化等を考慮した値である。
【0153】ステップS111で肯定判定がなされた場
合にはステップS109へ戻り、一方、否定判定がなさ
れた場合には本ルーチンを終了させる。
【0154】このようにして、本実施の形態によれば、
フィルタ20を段階的に昇温させてPM再生を図ること
が可能となる。
【0155】ここで、従来の内燃機関の排気浄化装置で
は、フィルタの再生処理が必要となった場合に、該フィ
ルタを一律に例えば600℃まで昇温していた。しか
し、フィルタに捕集されたPMの主成分がSOFである
場合には、例えば450℃に昇温すれば足りるため、燃
料を過剰に消費し燃費を悪化さていた。
【0156】その点、本実施の形態によれば、フィルタ
の段階的な昇温を行うため、例えば450℃への昇温に
よりフィルタの再生が完了すればそこで昇温を終了する
ことができる。
【0157】以上述べたように、本実施の形態によれ
ば、フィルタを段階的に昇温させ、燃料の消費量を低減
することが可能となる。
【0158】
【発明の効果】本発明に係る内燃機関の排気浄化装置で
は、フィルタを段階的に昇温させ、還元剤の消費量を低
減することができる。
【0159】従って、還元剤に燃料を用いている場合に
は、燃費の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る内燃機関の排気浄
化装置を適用するエンジンとその吸排気系とを併せ示す
概略構成図である。
【図2】 (A)は、パティキュレートフィルタの横方
向断面を示す図である。(B)は、パティキュレートフ
ィルタの縦方向断面を示す図である。
【図3】 ECUの内部構成を示すブロック図である。
【図4】 車両走行距離とフィルタ前後の差圧との関係
の一例を示した図である。
【図5】 本発明の実施の形態によるPM再生制御のフ
ローを示すフローチャート図である。
【符号の説明】
1・・・・エンジン 1a・・・クランクプーリ 2・・・・気筒 3・・・・燃料噴射弁 4・・・・コモンレール 4a・・・コモンレール圧センサ 5・・・・燃料供給管 6・・・・燃料ポンプ 6a・・・ポンププーリ 8・・・・吸気枝管 9・・・・吸気管 18・・・排気枝管 19・・・排気管 20・・・パティキュレートフィルタ 21・・・排気絞り弁 24・・・排気温度センサ 25・・・EGR通路 26・・・EGR弁 27・・・EGRクーラ 28・・・還元剤噴射弁 29・・・還元剤供給路 31・・・遮断弁 33・・・クランクポジションセンサ 34・・・水温センサ 35・・・ECU 36・・・アクセル開度センサ 37・・・差圧センサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B01D 46/42 B01D 46/42 B (72)発明者 林 孝太郎 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 石山 忍 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 曲田 尚史 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 小林 正明 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 大羽 孝宏 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 根上 秋彦 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 Fターム(参考) 3G090 AA02 BA01 CA02 CB04 DA04 DA12 DA18 DA20 4D058 JA32 MA41 MA52 PA04 SA08

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】排気中の粒子状物質を一時捕集可能なフィ
    ルタと、 前記フィルタに捕集された粒子状物質の量を判定する捕
    集量判定手段と、 前記フィルタの温度を上昇させて該フィルタに捕集され
    た粒子状物質を除去するフィルタ昇温手段と、 を備え、 前記捕集量判定手段により判定された粒子状物質の捕集
    量が第1の所定量以上の場合には、前記フィルタ昇温手
    段は前記フィルタを第1の温度まで上昇させ、この後
    に、前記捕集量判定手段により判定された粒子状物質の
    捕集量が第1の所定量よりも少ない第2の所定量以上の
    場合には、前記フィルタ昇温手段は前記フィルタを第1
    の温度よりも高い第2の温度まで上昇させることを特徴
    とする内燃機関の排気浄化装置。
  2. 【請求項2】前記捕集量判定手段は、フィルタ前後の差
    圧に基づいてフィルタに捕集された粒子状物資の量を判
    定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排
    気浄化装置。
  3. 【請求項3】前記第1の温度は、パティキュレートマタ
    ーのSOF分を燃焼可能な温度であり、一方、前記第2
    の温度は、パティキュレートマターのSOOT分を燃焼
    可能な温度であることを特徴とする請求項1又は2に記
    載の内燃機関の排気浄化装置。
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