JP3680727B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気を浄化する技術に関し、特に、排気中の窒素酸化物を浄化する排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車等に搭載される内燃機関、特に酸素過剰状態の混合気(所謂、リーン空燃比の混合気)を燃焼可能とするディーゼル機関やリーンバーン・ガソリン機関では、該内燃機関の排気中に含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化する技術が望まれている。
【0003】
このような要求に対し、内燃機関の排気系にリーンNOx触媒を配置する技術が提案されている。リーンNOx触媒の一つとして、流入する排気の酸素濃度が高いときは排気中の窒素酸化物(NOx)を吸収し、流入する排気の酸素濃度が低下し且つ還元剤が存在するときは吸収していた窒素酸化物(NOx)を放出しつつ窒素(N2)に還元する吸蔵還元型NOx触媒が知られている。
【0004】
吸蔵還元型NOx触媒が内燃機関の排気系に配置されると、内燃機関が希薄燃焼運転されて排気の空燃比が高くなるときは排気中の窒素酸化物(NOx)が吸蔵還元型NOx触媒に吸収され、吸蔵還元型NOx触媒に流入する排気の空燃比が低くなったときは吸蔵還元型NOx触媒に吸収されていた窒素酸化物(NOx)が放出されつつ窒素(N2)に還元される。
【0005】
ところで、吸蔵還元型NOx触媒のNOx吸収能力には限りがあるため、内燃機関が長期にわたって希薄燃焼運転されると、吸蔵還元型NOx触媒のNOx吸収能力が飽和し、排気中の窒素酸化物(NOx)が吸蔵還元型NOx触媒によって除去されることなく大気中に放出されることになる。このため、吸蔵還元型NOx触媒に吸収されている窒素酸化物(NOx)を放出及び還元させるNOx 浄化処理を施す必要がある。
【0006】
このNOx 浄化処理を希薄燃焼式内燃機関に適用する場合は、吸蔵還元型NOx触媒のNOx吸収能力が飽和する前に該吸蔵還元型NOx触媒に流入する排気の空燃比を低下させる、所謂リッチスパイク制御を実行し、吸蔵還元型NOx触媒に吸収されている窒素酸化物(NOx)を放出及び還元させる。
【0007】
リッチスパイク制御の具体的な方法としては、吸蔵還元型NOx触媒より上流を流れる排気中に還元剤たる燃料を添加する方法を例示することができる。
【0008】
一方、吸蔵還元型NOx触媒には燃料に含まれる硫黄分が燃焼して生成される硫黄酸化物(SOx)もNOxと同じメカニズムで吸収される。この吸収されたSOxは時間経過とともに安定な硫酸塩を形成するためNOxよりも放出されにくく、NOx触媒内に蓄積される。これをSOx被毒といい、SOx被毒が進行してNOx触媒内のSOx蓄積量が増大すると、NOx触媒のNOx吸収量が減少するため、NOx浄化率が低下する。このため、適宜の時期にSOx被毒から回復させる被毒解消処理を施す必要がある。この被毒解消処理は、NOx触媒を高温(例えば600ないし700℃程度)にしつつ理論空燃比あるいはリッチ空燃比の排気をNOx触媒に流して行わなくてはならない。
【0009】
しかし、SOx被毒を解消するためにNOx触媒を高温状態にすると、この高温がNOx触媒の熱劣化を誘発しNOx還元能力の低下の原因となる。
【0010】
ここで、吸蔵還元型NOx触媒の熱劣化について説明すると、NOx触媒におけるNOxの吸収は白金Pt(触媒物質)とカリウムK(NOx吸収剤)との界面において行われるが、Ptは熱によってシンタリングを起こし、成長して粒径が大きくなることが知られている。車両用内燃機関から排出される排気の浄化においては、NOx 触媒に加わる熱負荷が大きく、白金Ptのシンタリングを避けることはできない。このように白金Ptがシンタリングを起こすと、白金PtとカリウムKの接触面積が少なくなり、即ち、白金PtとカリウムKの界面が少なくなる。この結果、NOx触媒のNOx吸収能力が低下し、NOx浄化能力が低下する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記SOx被毒解消処理については、特許第2745985号の特許公報等に開示されているように、所定の解消処理を施すことによって、NOx触媒に吸収されているSOxを放出させSO2に還元することができるので、NOx触媒をSOx被毒から解消させることが可能である。
【0012】
これに対して、一度シンタリングを起こしたPtをシンタリングする前の状態に戻すことは不可能であり、したがって、NOx 触媒を熱劣化から回復することはできない。そのため、NOx触媒を管理する上で、NOx触媒の熱劣化の状態を把握することは重要である。また、NOx触媒の熱劣化の状態を把握した上で現在の熱劣化状態に応じてNOx触媒の浄化率を向上させることも重要である。
【0013】
しかしながら、現在のところ熱劣化の状態を検出する技術は確立されておらず、熱劣化の状態に応じてNOx触媒の浄化率を向上させる技術も確立されていないので、熱劣化の状態を検出する技術やNOx触媒の浄化率を向上させる技術の開発が切望されている。
【0014】
本発明はこのような従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、NOx触媒の劣化状態を把握する技術を確立し、現在のNOx触媒の劣化状態に応じてNOx触媒の浄化率を向上させる内燃機関の排気浄化装置を提供することを技術的課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した課題を解決するために以下のような手段を採用した。
すなわち、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置は、酸素過剰状態の混合気を燃焼可能とする希薄燃焼式の内燃機関と、前記内燃機関の排気通路に設けられ、排気の空燃比が高いときは排気中の窒素酸化物を吸収し、排気の空燃比が低いときは吸収していた窒素酸化物を放出しつつ還元するNOx触媒と、前記NOx触媒に吸収された窒素酸化物を放出及び還元すべくNOx浄化処理を実行するNOx浄化制御手段と、前記NOx触媒の酸化物による被毒を解消すべく被毒解消処理を実行する被毒解消制御手段と、前記被毒解消制御手段の実行により生じる前記NOx 触媒の劣化状態を判断する触媒劣化状態判断手段と、前記NOx 触媒の劣化状態に応じて前記NOx浄化処理の実行条件あるいは前記被毒解消制御手段の実行条件を変えて窒素酸化物の放出及び還元を活性化させ前記NOx浄化処理の浄化率を向上させる触媒浄化率向上手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
このように構成された内燃機関の排気浄化装置では、内燃機関が希薄燃焼運転されているときは、排気の空燃比(あるいは、酸素濃度)が高くなるため、排気中に含まれる窒素酸化物がNOx触媒に吸収される。そして、NOx触媒に吸収された窒素酸化物を放出及び還元させる必要が生じると、NOx浄化制御手段が、例えば、リッチスパイク制御等を実行し、還元剤等を用いてNOx触媒に吸収されている窒素酸化物を放出させNO2に還元させる。
【0017】
また、NOx 触媒の酸化物による被毒を解消する必要が生じると、被毒解消制御手段が、例えば、NOx触媒に流入する排気の空燃比を理論空燃比又はリッチ空燃比まで低下させ、NOx触媒の雰囲気温度を昇温させてNOx触媒に吸蔵されている酸化物を放出させる。なお、被毒解消処理の必要性は、運転状態に応じて燃料消費量や硫黄堆積量を推定し、推定した硫黄堆積量が所定堆積量(例えば、0.15g)を越えているかどうかで判断する。
【0018】
次に、触媒劣化状態判断手段では、例えば、被毒解消処理を行った実行回数から実験データに基づき触媒の劣化状態を判断する。なお、劣化状態によっては、NOx触媒のNOx吸収能力が低下し、NOx 触媒の浄化能力が低下する。そこで、触媒浄化率向上手段では、劣化状態(NOx触媒のNOx吸収能力の低下)に応じてNOx浄化制御の実行条件を変更してNOx 触媒の浄化率を向上させる。
【0019】
また、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置の前記NOx浄化制御手段は、前記NOx触媒よりも上流の排気通路に還元剤としての燃料を所定間隔で添加する燃料添加剤供給手段を有しており、前記触媒浄化率向上手段は、前記NOx 触媒の劣化状態に応じて前記燃料添加から次回の燃料添加までの燃料添加間隔を短くするように前記NOx浄化処理の実行条件を変更する構成にしてもよい。すなわち、劣化状態に応じて燃料添加間隔を短くする制御を行い、NOx触媒の劣化分を頻度で補うことでNOx吸収能力の低下を防ぎ、触媒浄化率の向上を図る。
【0020】
更に、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置の前記触媒浄化率向上手段は、前記NOx 触媒の劣化状態に応じて前記燃料添加剤供給手段が行う1回の燃料添加量を増加するようにNOx浄化処理の実行条件を変更する構成にしてもよい。すなわち、劣化状態に応じて燃料添加量を増量させる制御を行い、NOx触媒の劣化分をリッチスパイクの深さで補うことでNOx吸収能力の低下を防ぎ、触媒浄化率の向上を図る。
【0021】
更にまた、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置の前記NOx浄化制御手段は、前記NOx 触媒の床温値に基づき前記燃料添加の可否を判断する可否判断手段を有し、前記触媒浄化率向上手段は前記NOx 触媒の劣化状態に応じて前記床温値の予測値を算出する触媒床温算出手段を有しており、前記触媒浄化率向上手段が前記床温値の予測値に基づき前記可否判断手段の前記床温値を変更するように構成してもよい。すなわち、可否判断手段がNOx浄化制御開始の条件とする床温値を、NOx 触媒の劣化状態に応じて適正となるように変更することで、NOx 触媒の適正な床温値でNOx 排気浄化装置処理をNOx 吸収能力の低下を防ぎ、触媒浄化率の向上を図る。
【0022】
更にまた、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置の前記触媒浄化率向上手段が、前記NOx 触媒の劣化状態に応じて前記被毒解消処理から次回の被毒解消処理までの被毒解消処理間隔を短くするように被毒解消処理の実行条件を変更する構成にしてもよい。すなわち、劣化状態(NOx触媒のNOx吸収能力の低下)に応じて被毒解消処理間隔(インターバル)を短くする制御を行い、NOx触媒の劣化分を被毒解消処理の頻度で補うことで触媒浄化率の向上を図る。
【0023】
更にまた、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置の前記触媒浄化率向上手段は前記NOx 触媒の劣化状態に応じて前記NOx 触媒へ入る排気温度を上昇させる床温制御手段を有するように構成してもよい。すなわち、NOx 触媒の劣化度合いがかなり進み、NOx 触媒の活性温度が300°Cを越えるような場合、NOx 触媒の床温を高めた上でNOx 浄化処理を行わねばならない。そこで、NOx 触媒の劣化状態(NOx触媒のNOx吸収能力の低下)に応じてポスト噴射等により排気温度を上昇させる制御を行い、NOx 触媒を劣化度合いに応じた活性温度にすることで、NOx 吸収能力の低下を防ぎ、触媒浄化率の向上を図る。
【0024】
このように熱劣化を抑制することにより、NOx触媒のNOx浄化処理能力を向上させることができる。
【0025】
なお、この触媒の劣化には熱劣化の他に、SOx被毒が完全に解消されないで蓄積されたSOx被毒劣化や、その他の被毒劣化も含まれる。
【0026】
本発明において、希薄燃焼式の内燃機関としては、筒内直接噴射方式のリーンバーンガソリンエンジンやディーゼルエンジンを例示することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置の具体的な実施態様について図面に基づいて説明する。ここでは、本発明に係る排気浄化装置を車両駆動用のディーゼル機関に適用した場合を例に挙げて説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明に係る排気浄化装置を適用する内燃機関とその吸排気系の概略構成を示す図である。なお、図1に示す内燃機関1は、4つの気筒2を有する水冷式の4ストローク・サイクル・ディーゼル機関である。
【0028】
内燃機関1は、各気筒2の燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁3を備えている。各燃料噴射弁3は、燃料を所定圧まで蓄圧する蓄圧室(コモンレール)4と接続されている。このコモンレール4には、コモンレール4内の燃料の圧力に対応した電気信号を出力するコモンレール圧センサ4aが取り付けられている。コモンレール4は、燃料供給管5を介して燃料ポンプ6と連通している。
【0029】
この燃料ポンプ6は、内燃機関1の出力軸(クランクシャフト)の回転トルクを駆動源として作動するポンプであり、該燃料ポンプ6の入力軸に取り付けられたポンププーリ6が内燃機関1の出力軸(クランクシャフト)に取り付けられたクランクプーリ1aとベルト7を介して連結されている。
【0030】
このように構成された燃料噴射系では、クランクシャフトの回転トルクが燃料ポンプ6の入力軸へ伝達されると、燃料ポンプ6は、クランクシャフトから該燃料ポンプ6の入力軸へ伝達された回転トルクに応じた圧力で燃料を吐出する。
【0031】
前記燃料ポンプ6から吐出された燃料は、燃料供給管5を介してコモンレール4へ供給され、コモンレール4にて所定圧まで蓄圧されて各気筒2の燃料噴射弁3へ分配される。そして、燃料噴射弁3に駆動電流が印加されると、燃料噴射弁3が開弁し、その結果、燃料噴射弁3から気筒2内へ燃料が噴射される。
【0032】
次に、内燃機関1には、吸気枝管8が接続されており、吸気枝管8の各枝管は、各気筒2の燃焼室と図示しない吸気ポートを介して連通している。
前記吸気枝管8は、吸気管9に接続され、この吸気管9は、エアクリーナボックス10に接続されている。前記エアクリーナボックス10より下流の吸気管9には、該吸気管9内を流れる吸気の質量に対応した電気信号を出力するエアフローメータ11と、該吸気管9内を流れる吸気の温度に対応した電気信号を出力する吸気温度センサ12とが取り付けられている。
【0033】
前記吸気管9における吸気枝管8の直上流に位置する部位には、該吸気管9内を流れる吸気の流量を調節する吸気絞り弁13が設けられている。この吸気絞り弁13には、ステッパモータ等で構成されて該吸気絞り弁13を開閉駆動する吸気絞り用アクチュエータ14が取り付けられている。
【0034】
前記エアフローメータ11と前記吸気絞り弁13との間に位置する吸気管9には、排気の熱エネルギを駆動源として作動する遠心過給機(ターボチャージャ)15のコンプレッサハウジング15aが設けられ、コンプレッサハウジング15aより下流の吸気管9には、前記コンプレッサハウジング15a内で圧縮されて高温となった吸気を冷却するためのインタークーラ16が設けられている。
【0035】
このように構成された吸気系では、エアクリーナボックス10に流入した吸気は、該エアクリーナボックス10内の図示しないエアクリーナによって吸気中の塵や埃等が除去された後、吸気管9を介してコンプレッサハウジング15aに流入する。
【0036】
コンプレッサハウジング15aに流入した吸気は、該コンプレッサハウジング15aに内装されたコンプレッサホイールの回転によって圧縮される。前記コンプレッサハウジング15a内で圧縮されて高温となった吸気は、インタークーラ16にて冷却された後、必要に応じて吸気絞り弁13によって流量を調節されて吸気枝管8に流入する。吸気枝管8に流入した吸気は、各枝管を介して各気筒2の燃焼室へ分配され、各気筒2の燃料噴射弁3から噴射された燃料を着火源として燃焼される。
【0037】
一方、内燃機関1には、排気枝管18が接続され、排気枝管18の各枝管が図示しない排気ポートを介して各気筒2の燃焼室と連通している。
前記排気枝管18は、前記遠心過給機15のタービンハウジング15bと接続されている。前記タービンハウジング15bは、排気管19と接続され、この排気管19は、下流にて図示しないマフラーに接続されている。
【0038】
前記排気管19の途中には、排気中の有害ガス成分を浄化するための排気浄化触媒20a,20bが配置されている。排気浄化触媒20aより下流の排気管19には、該排気管19内を流れる排気の空燃比に対応した電気信号を出力する空燃比センサ23と、該排気管19内を流れる排気の温度に対応した電気信号を出力する排気温度センサ24とが取り付けられている。また、空燃比センサ23及び排気温度センサ24より下流の排気管19には、排気浄化触媒20bが配置されている。
【0039】
更に、排気浄化触媒20bより下流の排気管19には、該排気管19内を流れる排気の流量を調節する排気絞り弁21が設けられている。この排気絞り弁21には、ステッパモータ等で構成されて該排気絞り弁21を開閉駆動する排気絞り用アクチュエータ22が取り付けられている。
【0040】
このように構成された排気系では、内燃機関1の各気筒2で燃焼された混合気(既燃ガス)が排気ポートを介して排気枝管18へ排出され、次いで排気枝管18から遠心過給機15のタービンハウジング15bへ流入する。タービンハウジング15bに流入した排気は、該排気が持つ熱エネルギを利用してタービンハウジング15b内に回転自在に支持されたタービンホイールを回転させる。その際、タービンホイールの回転トルクは、前述したコンプレッサハウジング15aのコンプレッサホイールへ伝達される。
【0041】
前記タービンハウジング15bから排出された排気は、排気管19を介して排気浄化触媒20a,20bへ流入し、排気中の有害ガス成分が除去又は浄化される。排気浄化触媒20a,20bにて有害ガス成分を除去又は浄化された排気は、必要に応じて排気絞り弁21によって流量を調節された後にマフラーを介して大気中に放出される。
【0042】
また、排気枝管18と吸気枝管8とは、排気枝管18内を流れる排気の一部を吸気枝管8へ再循環させる排気再循環通路(EGR通路)25を介して連通されている。このEGR通路25の途中には、電磁弁などで構成され、印加電力の大きさに応じて前記EGR通路25内を流れる排気(以下、EGRガスと称する)の流量を変更する流量調整弁(EGR弁)26が設けられている。
【0043】
前記EGR通路25においてEGR弁26より上流の部位には、該EGR通路25内を流れるEGRガスを冷却するEGRクーラ27が設けられている。
【0044】
このように構成された排気再循環機構では、EGR弁26が開弁されると、EGR通路25が導通状態となり、排気枝管18内を流れる排気の一部が前記EGR通路25へ流入し、EGRクーラ27を経て吸気枝管8へ導かれる。その際、EGRクーラ27では、EGR通路25内を流れるEGRガスと所定の冷媒との間で熱交換が行われ、EGRガスが冷却されることになる。
【0045】
EGR通路25を介して排気枝管18から吸気枝管8へ還流されたEGRガスは、吸気枝管8の上流から流れてきた新気と混ざり合いつつ各気筒2の燃焼室へ導かれ、燃料噴射弁3から噴射される燃料を着火源として燃焼される。
【0046】
ここで、EGRガスには、水(H2O)や二酸化炭素(CO2)などのように、自らが燃焼することがなく、且つ、吸熱性を有する不活性ガス成分が含まれているため、EGRガスが混合気中に含有されると、混合気の燃焼温度が低められ、以て窒素酸化物(NOx)の発生量が抑制される。
【0047】
更に、EGRクーラ27においてEGRガスが冷却されると、EGRガス自体の温度が低下するとともにEGRガスの体積が縮小されるため、EGRガスが燃焼室内に供給されたときに該燃焼室内の雰囲気温度が不要に上昇することがなくなるとともに、燃焼室内に供給される新気の量(新気の体積)が不要に減少することもない。
【0048】
次に、本実施の形態に係る排気浄化触媒20a,20bについて具体的に説明する。
排気浄化触媒20aは、還元剤の存在下で排気中の窒素酸化物(NOx)を浄化するNOx触媒である。このようなNOx触媒としては、選択還元型NOx触媒や吸蔵還元型NOx触媒等を例示することができるが、ここでは吸蔵還元型NOx触媒を例に挙げて説明する(以下、排気浄化触媒20aを吸蔵還元型NOx触媒20aと称する)。また、排気浄化触媒20bは、吸蔵還元型NOx 触媒20aで浄化することができなかった炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を下流で酸化し浄化する酸化触媒であり、三元触媒を例示することができる(以下、排気浄化触媒20bを酸化触媒20bと称する)。
【0049】
吸蔵還元型NOx触媒20aを更に詳しく説明すると、吸蔵還元型NOx触媒20aは、例えば、アルミナを担体とし、その担体上に、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、もしくはセシウム(Cs)等のアルカリ金属と、バリウム(Ba)もしくはカルシウム(Ca)等のアルカリ土類と、ランタン(La)もしくはイットリウム(Y)等の希土類とから選択された少なくとも1つと、白金(Pt)等の貴金属とを担持して構成されている。尚、この実施の形態では、アルミナからなる担体上にバリウム(Ba)と白金(Pt)とを担持して構成される吸蔵還元型NOx触媒を例に挙げて説明する。
【0050】
このように構成された吸蔵還元型NOx触媒20aは、該吸蔵還元型NOx触媒20aに流入する排気の酸素濃度が高いときは排気中の窒素酸化物(NOx)を吸収する。一方、吸蔵還元型NOx触媒20aは、該吸蔵還元型NOx触媒20aに流入する排気の酸素濃度が低下したときは吸収していた窒素酸化物(NOx)を放出する。その際、排気中に炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)等の還元成分が存在していれば、吸蔵還元型NOx触媒20aは、該吸蔵還元型NOx触媒20aから放出された窒素酸化物(NOx)を窒素(N2)に還元せしめることができる。
【0051】
尚、吸蔵還元型NOx触媒20aのNOx吸放出作用については明らかにされていない部分もあるが、おおよそ以下のようなメカニズムによって行われていると考えられる。
先ず、吸蔵還元型NOx触媒20aでは、該吸蔵還元型NOx触媒20aに流入する排気の空燃比がリーン空燃比となって排気中の酸素濃度が高まると、図2(A)に示されるように、排気中の酸素(O2)がO2 -またはO2-の形で白金(Pt)の表面上に付着する。排気中の一酸化窒素(NO)は、白金(Pt)の表面上でO2 -またはO2-と反応して二酸化窒素(NO2)を形成する(2NO+O2→2NO2)。二酸化窒素(NO2)は、白金(Pt)の表面上で更に酸化され、硝酸イオン(NO3-)の形で吸蔵還元型NOx触媒20aに吸収される。尚、吸蔵還元型NOx触媒20aに吸収された硝酸イオン(NO3-)は、酸化バリウム(BaO)と結合して硝酸バリウム(Ba(NO3)2)を形成する。
【0052】
このように吸蔵還元型NOx触媒20aに流入する排気の空燃比がリーン空燃比であるときは、排気中の窒素酸化物(NOx)が硝酸イオン(NO3-)として吸蔵還元型NOx触媒20aに吸収される。
【0053】
上記したようなNOx吸収作用は、流入排気の空燃比がリーン空燃比であり、且つ吸蔵還元型NOx触媒20aのNOx吸収能力が飽和しない限り継続される。従って、吸蔵還元型NOx触媒20aに流入する排気の空燃比がリーン空燃比であるときは、吸蔵還元型NOx触媒20aのNOx吸収能力が飽和しない限り、排気中の窒素酸化物(NOx)が吸蔵還元型NOx触媒20aに吸収され、排気中から窒素酸化物(NOx)が除去されることになる。
【0054】
これに対して、吸蔵還元型NOx触媒20aでは、該吸蔵還元型NOx触媒20aに流入する排気の酸素濃度が低下すると、白金(Pt)の表面上において二酸化窒素(NO2)の生成量が減少するため、酸化バリウム(BaO)と結合していた硝酸イオン(NO3-)が逆に二酸化窒素(NO2)や一酸化窒素(NO)となって吸蔵還元型NOx触媒20aから離脱する。
【0055】
その際、排気中に炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)等の還元成分が存在していれば、それらの還元成分が白金(Pt)上の酸素(O2-またはO2-)と部分的に反応して活性種を形成する。この活性種は、吸蔵還元型NOx触媒20aから放出された二酸化窒素(NO2)や一酸化窒素(NO)を窒素(N2)に還元せしめることになる。
【0056】
従って、吸蔵還元型NOx触媒20aに流入する排気の空燃比が理論空燃比又はリッチ空燃比となって排気中の酸素濃度が低下するとともに燃料の濃度が高まると、吸蔵還元型NOx触媒20aに吸収されていた窒素酸化物(NOx)が放出及び還元され、以て吸蔵還元型NOx触媒20aのNOx吸収能力が再生されることになる。
【0057】
ところで、内燃機関1が希薄燃焼運転されている場合は、内燃機関1から排出される排気の空燃比がリーン雰囲気となり排気の酸素濃度が高くなるため、排気中に含まれる窒素酸化物(NOx)が吸蔵還元型NOx触媒20aに吸収されることになるが、内燃機関1の希薄燃焼運転が長期間継続されると、吸蔵還元型NOx触媒20aのNOx吸収能力が飽和し、排気中の窒素酸化物(NOx)が吸蔵還元型NOx触媒20aにて除去されずに大気中へ放出されてしまう。
【0058】
特に、内燃機関1のようなディーゼル機関では、大部分の運転領域においてリーン空燃比の混合気が燃焼され、それに応じて大部分の運転領域において排気の空燃比がリーン空燃比となるため、吸蔵還元型NOx触媒20aのNOx吸収能力が飽和し易い。
【0059】
従って、内燃機関1が希薄燃焼運転されている場合は、吸蔵還元型NOx触媒20aのNOx吸収能力が飽和する前に吸蔵還元型NOx触媒20aに流入する排気中の酸素濃度を低下させるとともに燃料の濃度を高め、吸蔵還元型NOx触媒20aに吸収された窒素酸化物(NOx)を放出及び還元(いわゆる「NOx 浄化処理」)させる必要がある。
【0060】
[燃料添加剤供給手段]
そこで、本実施の形態に係る内燃機関の排気浄化装置は、吸蔵還元型NOx触媒20aより上流の排気通路を流れる排気中に還元剤たる燃料(軽油)を添加する燃料添加剤供給手段を備え、この燃料添加剤供給手段から排気中へ燃料を添加することにより、吸蔵還元型NOx触媒20aに流入する排気の酸素濃度を低下させるとともに燃料の濃度を高めるようにした。
【0061】
燃料添加剤供給手段は、図1に示されるように、その噴孔が排気枝管18内に臨むよう内燃機関1のシリンダヘッドに取り付けられ、所定の開弁圧以上の燃料が印加されたときに開弁して燃料を噴射する燃料噴射弁28と、前述した燃料ポンプ6から吐出された燃料を前記燃料噴射弁28へ導く燃料供給路29と、この燃料供給路29の途中に設けられ該燃料供給通路29内を流れる燃料の流量を調整する流量調整弁30と、この流量調整弁30より上流の燃料供給路29に設けられて該燃料供給路29内の燃料の流れを遮断する遮断弁31と、前記流量調整弁30より上流の燃料供給路29に取り付けられ該燃料供給路29内の圧力に対応した電気信号を出力する燃料圧力センサ32と、を備えている。
【0062】
尚、燃料噴射弁28は、該燃料噴射弁28の噴孔が排気枝管18におけるEGR通路25との接続部位より下流であって、排気枝管18における4つの枝管の集合部に最も近い気筒2の排気ポートに突出するとともに、排気枝管18の集合部へ向くようシリンダヘッドに取り付けられることが好ましい。
【0063】
これは、燃料噴射弁28から噴射された燃料(未燃の燃料成分)がEGR通路25へ流入するのを防止するとともに、燃料が排気枝管18内に滞ることなく遠心過給機のタービンハウジング15bへ到達するようにするためである。
【0064】
尚、図1に示す例では、内燃機関1の4つの気筒2のうち1番(#1)気筒2が排気枝管18の集合部と最も近い位置にあるため、1番(#1)気筒2の排気ポートに燃料噴射弁28が取り付けられているが、1番(#1)気筒2以外の気筒2が排気枝管18の集合部と最も近い位置にあるときは、その気筒2の排気ポートに燃料噴射弁28が取り付けられるようにする。
【0065】
また、前記燃料噴射弁28は、シリンダヘッドに形成された図示しないウォータージャケットを貫通、あるいはウォータージャケットに近接して取り付けられるようにし、前記ウォータージャケットを流れる冷却水を利用して燃料噴射弁28を冷却するようにしてもよい。
【0066】
このような燃料添加剤供給手段では、流量調整弁30が開弁されると、燃料ポンプ6から吐出された高圧の燃料が燃料供給路29を介して燃料噴射弁28へ印加される。そして、燃料噴射弁28に印加される燃料の圧力が開弁圧以上に達すると、該燃料噴射弁28が開弁して排気枝管18内へ還元剤としての燃料が噴射される。
【0067】
燃料噴射弁28から排気枝管18内へ噴射された燃料は、排気枝管18の上流から流れてきた排気ととともにタービンハウジング15bへ流入する。タービンハウジング15b内に流入した排気と燃料とは、タービンホイールの回転によって撹拌されて均質に混合され、リッチ空燃比の排気を形成する。
【0068】
このようにして形成されたリッチ空燃比の排気は、タービンハウジング15bから排気管19を介して吸蔵還元型NOx触媒20に流入し、吸蔵還元型NOx触媒20に吸収されていた窒素酸化物(NOx)を放出させつつ窒素(N2)に還元することになる。
【0069】
その後、流量調整弁30が閉弁されて燃料ポンプ6から燃料噴射弁28への燃料の供給が遮断されると、燃料噴射弁28に印加される燃料の圧力が前記開弁圧未満となり、その結果、燃料噴射弁28が閉弁し、排気枝管18内への燃料の添加が停止されることになる。
【0070】
以上述べたように構成された内燃機関1には、該内燃機関1を制御するための電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)35が併設されている。このECU35は、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて内燃機関1の運転状態を制御するユニットである。
【0071】
ECU35には、コモンレール圧センサ4a、エアフローメータ11、吸気温度センサ12、吸気管圧力センサ17、空燃比センサ23、排気温度センサ24、燃料圧力センサ32、クランクポジションセンサ33、水温センサ34、アクセル開度センサ36等の各種センサが電気配線を介して接続され、上記した各種センサの出力信号がECU35に入力されるようになっている。
【0072】
一方、ECU35には、燃料噴射弁3、吸気絞り用アクチュエータ14、排気絞り用アクチュエータ22、EGR弁26、流量調整弁30、遮断弁31等が電気配線を介して接続され、上記した各部をECU35が制御することが可能になっている。
【0073】
ここで、ECU35は、図3に示すように、双方向性バス350によって相互に接続された、CPU351と、ROM352と、RAM353と、バックアップRAM354と、入力ポート356と、出力ポート357とを備えるとともに、前記入力ポート356に接続されたA/Dコンバータ(A/D)355を備えている。
【0074】
前記入力ポート356は、クランクポジションセンサ33のようにデジタル信号形式の信号を出力するセンサの出力信号を入力し、それらの出力信号をCPU351やRAM353へ送信する。
【0075】
前記入力ポート356は、コモンレール圧センサ4a、エアフローメータ11、吸気温度センサ12、吸気管圧力センサ17、空燃比センサ23、排気温度センサ24、燃料圧力センサ32、水温センサ34、アクセル開度センサ36、等のように、アナログ信号形式の信号を出力するセンサのA/D355を介して入力し、それらの出力信号をCPU351やRAM353へ送信する。
【0076】
前記出力ポート357は、燃料噴射弁3、吸気絞り用アクチュエータ14、排気絞り用アクチュエータ22、EGR弁26、流量調整弁30、遮断弁31等と電気配線を介して接続され、CPU351から出力される制御信号を、前記した燃料噴射弁3、吸気絞り用アクチュエータ14、排気絞り用アクチュエータ22、EGR弁26、流量調整弁30、あるいは遮断弁31へ送信する。
【0077】
前記ROM352は、燃料噴射弁3を制御するための燃料噴射制御ルーチン、吸気絞り弁13を制御するための吸気絞り制御ルーチン、排気絞り弁21を制御するための排気絞り制御ルーチン、EGR弁26を制御するためのEGR制御ルーチン、吸蔵還元型NOx触媒20aに吸収された窒素酸化物(NOx)を浄化するためのNOx浄化制御ルーチン、吸蔵還元型NOx触媒20aの酸化物による被毒を解消するための被毒解消制御ルーチン、NOx 触媒の劣化状態を判断するための触媒劣化状態判断制御ルーチン、NOx 触媒の浄化率を向上させる触媒浄化率向上制御ルーチン等のアプリケーションプログラムを記憶している。
【0078】
前記ROM352は、上記したアプリケーションプログラムに加え、各種の制御マップを記憶している。前記制御マップは、例えば、内燃機関1の運転状態と基本燃料噴射量(基本燃料噴射時間)との関係を示す燃料噴射量制御マップ、内燃機関1の運転状態と基本燃料噴射時期との関係を示す燃料噴射時期制御マップ、内燃機関1の運転状態と吸気絞り弁13の目標開度との関係を示す吸気絞り弁開度制御マップ、内燃機関1の運転状態と排気絞り弁21の目標開度との関係を示す排気絞り弁開度制御マップ、内燃機関1の運転状態とEGR弁26の目標開度との関係を示すEGR弁開度制御マップ、内燃機関1の運転状態と燃料(還元剤)の目標添加量(もしくは、排気の目標リッチ空燃比)との関係を示す燃料添加量制御マップ、内燃機関1の運転状態と燃料(還元剤)添加間隔との関係を示す燃料添加間隔制御マップ、内燃機関1の運転状態と硫黄堆積量との関係を示す硫黄堆積量制御マップ、内燃機関1の運転状態と被毒解消処理間隔との関係を示す被毒解消処理間隔制御マップ、被毒解消回数と燃料目標添加量の補正(増量)係数との関係を示す添加量補正制御マップ、被毒解消回数と燃料添加間隔の補正(短縮)係数との関係を示す添加間隔補正制御マップ、等である。
【0079】
前記RAM353は、各センサからの出力信号やCPU351の演算結果等を格納する。前記演算結果は、例えば、クランクポジションセンサ33がパルス信号を出力する時間的な間隔に基づいて算出される機関回転数である。これらのデータは、クランクポジションセンサ33がパルス信号を出力する都度、最新のデータに書き換えられる。
【0080】
前記バックアップRAM354は、内燃機関1の運転停止後もデータを記憶可能な不揮発性のメモリである。
【0081】
前記CPU351は、前記ROM352に記憶されたアプリケーションプログラムに従って動作して、燃料噴射制御、吸気絞り制御、排気絞り制御、EGR制御を実行し、燃料(還元剤)添加制御により結果としてNOx 浄化制御、被毒解消制御、触媒劣化状態判断制御、触媒浄化率向上制御を実行する。
【0082】
[燃料噴射制御]
例えば、燃料噴射制御では、CPU351は、先ず、燃料噴射弁3から噴射される燃料量を決定し、次いで燃料噴射弁3から燃料を噴射する時期を決定する。
燃料噴射量を決定する場合は、CPU351は、RAM353に記憶されている機関回転数とアクセル開度センサ36の出力信号(アクセル開度)とを読み出す。CPU351は、燃料噴射量制御マップへアクセスし、前記機関回転数及び前記アクセル開度に対応した基本燃料噴射量(基本燃料噴射時間)を算出する。CPU351は、エアフローメータ11、吸気温度センサ12、水温センサ34等の出力信号値等に基づいて前記基本燃料噴射時間を補正し、最終的な燃料噴射時間を決定する。
【0083】
燃料噴射時期を決定する場合は、CPU351は、燃料噴射時期制御マップへアクセスし、前記機関回転数及び前記アクセル開度に対応した基本燃料噴射時期を算出する。CPU351は、エアフローメータ11、吸気温度センサ12、水温センサ34等の出力信号値をパラメータとして前記基本燃料噴射時期を補正し、最終的な燃料噴射時期を決定する。
【0084】
燃料噴射時間と燃料噴射時期とが決定されると、CPU351は、前記燃料噴射時期とクランクポジションセンサ33の出力信号とを比較し、前記クランクポジションセンサ33の出力信号が前記燃料噴射開始時期と一致した時点で燃料噴射弁3に対する駆動電力の印加を開始する。CPU351は、燃料噴射弁3に対する駆動電力の印加を開始した時点からの経過時間が前記燃料噴射時間に達した時点で燃料噴射弁3に対する駆動電力の印加を停止する。
【0085】
尚、燃料噴射制御において内燃機関1の運転状態がアイドル運転状態にある場合は、CPU351は、水温センサ34の出力信号値や、車室内用空調装置のコンプレッサのようにクランクシャフトの回転力を利用して作動する補機類の作動状態等をパラメータとして内燃機関1の目標アイドル回転数を算出する。そして、CPU351は、実際のアイドル回転数が目標アイドル回転数と一致するよう燃料噴射量をフィードバック制御する。
【0086】
[吸気絞り制御]
また、吸気絞り制御では、CPU351は、例えば、RAM353に記憶されている機関回転数とアクセル開度とを読み出す。CPU351は、吸気絞り弁開度制御マップへアクセスし、機関回転数及びアクセル開度に対応した目標吸気絞り弁開度を算出する。CPU351は、前記目標吸気絞り弁開度に対応した駆動電力を吸気絞り用アクチュエータ14に印加する。その際、CPU351は、吸気絞り弁13の実際の開度を検出して、実際の吸気絞り弁13の開度と目標吸気絞り弁開度との差分に基づいて前記吸気絞り用アクチュエータ14をフィードバック制御するようにしてもよい。
【0087】
[排気絞り制御]
また、排気絞り制御では、CPU351は、例えば、内燃機関1が冷間始動後の暖機運転状態にある場合や、車室内用ヒータが作動状態にある場合などに排気絞り弁21を閉弁方向へ駆動すべく排気絞り用アクチュエータ22を制御する。
この場合、内燃機関1の負荷が増大し、それに対応して燃料噴射量が増量されることなる。その結果、内燃機関1の発熱量が増加し、内燃機関1の暖機が促進されるとともに、車室内用ヒータの熱源が確保される。
【0088】
[EGR制御]
また、EGR制御では、CPU351は、RAM353に記憶されている機関回転数、水温センサ34の出力信号(冷却水温度)、アクセル開度センサ36の出力信号(アクセル開度)等を読み出し、EGR制御の実行条件が成立しているか否かを判別する。
【0089】
上記したEGR制御実行条件としては、冷却水温度が所定温度以上にある、内燃機関1が始動時から所定時間以上連続して運転されている、アクセル開度の変化量が正値である等の条件を例示することができる。
【0090】
上記したようなEGR制御実行条件が成立していると判定した場合は、CPU351は、機関回転数とアクセル開度とをパラメータとしてEGR弁開度制御マップへアクセスし、前記機関回転数及び前記アクセル開度に対応した目標EGR弁開度を算出する。CPU351は、前記目標EGR弁開度に対応した駆動電力をEGR弁26に印加する。一方、上記したようなEGR制御実行条件が成立していないと判定した場合は、CPU351は、EGR弁26を全閉状態に保持すべく制御する。
【0091】
更に、EGR制御では、CPU351は、内燃機関1の吸入空気量をパラメータとしてEGR弁26の開度をフィードバック制御する、いわゆるEGR弁フィードバック制御を行うようにしてもよい。
EGR弁フィードバック制御では、例えば、CPU351は、アクセル開度や機関回転数等をパラメータとして内燃機関1の目標吸入空気量を決定する。その際、アクセル開度と機関回転数と目標吸入空気量との関係を予めマップ化しておき、そのマップとアクセル開度と機関回転数とから目標吸入空気量が算出されるようにしてもよい。
【0092】
上記した手順により目標吸入空気量が決定されると、CPU351は、RAM353に記憶されたエアフローメータ11の出力信号値(実際の吸入空気量)を読み出し、実際の吸入空気量と目標吸入空気量とを比較する。
【0093】
前記した実際の吸入空気量が前記目標吸入空気量より少ない場合には、CPU351は、EGR弁26を所定量閉弁させる。この場合、EGR通路25から吸気枝管8へ流入するEGRガス量が減少し、それに応じて内燃機関1の気筒2内に吸入されるEGRガス量が減少することになる。その結果、内燃機関1の気筒2内に吸入される新気の量は、EGRガスが減少した分だけ増加する。
【0094】
一方、実際の吸入空気量が目標吸入空気量より多い場合には、CPU351は、EGR弁26を所定量開弁させる。この場合、EGR通路25から吸気枝管8へ流入するEGRガス量が増加し、それに応じて内燃機関1の気筒2内に吸入されるEGRガス量が増加する。この結果、内燃機関1の気筒2内に吸入される新気の量は、EGRガスが増加した分だけ減少することになる。
【0095】
[NOx浄化制御]
次に、NOx浄化制御では、CPU351は、吸蔵還元型NOx触媒20aに流入する排気の空燃比を所定間隔でスパイク的(短時間)にリッチ空燃比とする、所謂リッチスパイク制御を実行する。
【0096】
リッチスパイク制御では、CPU351は、ROM352の燃料添加間隔制御マップへアクセスし、燃料添加間隔制御マップに記憶された燃料添加間隔毎にリッチスパイク制御を実施するか否かを判別する。このリッチスパイク制御を実施する際の可否判別条件としては、例えば、吸蔵還元型NOx触媒20aが活性状態にある、排気温度センサ24の出力信号値(排気温度)が所定の上限値以下である、被毒解消制御が実行されていない、等の条件を例示することができる。
【0097】
上記したリッチスパイク制御実行条件が成立していると判定された場合は、CPU351は、燃料噴射弁28からスパイク的に還元剤たる燃料を噴射させるべく流量調整弁30を制御(燃料添加制御)することにより、吸蔵還元型NOx触媒20aに流入する排気の空燃比を一時的に所定の目標リッチ空燃比とする。
【0098】
具体的には、CPU351は、RAM353に記憶されている機関回転数、アクセル開度センサ36の出力信号(アクセル開度)、エアフローメータ11の出力信号値(吸入空気量)、空燃比センサ23の出力信号、燃料噴射量等を読み出す。
【0099】
CPU351は、前記した機関回転数とアクセル開度と吸入空気量と燃料噴射量とをパラメータとしてROM352の燃料添加量制御マップへアクセスし、排気の空燃比を予め設定された目標リッチ空燃比とする上で必要となる燃料の目標添加量(目標添加時間)を算出する。
【0100】
目標添加量(目標添加時間)が算出されると、CPU351は、燃料添加間隔と一致した時点で流量調整弁30を開弁させる。この場合、燃料ポンプ6から吐出された高圧の燃料が燃料供給路29を介して燃料噴射弁28へ供給されるため、燃料噴射弁28に印加される燃料の圧力が開弁圧以上に達し、燃料噴射弁28が開弁する。
【0101】
CPU351は、流量調整弁30を開弁させた時点から前記目標添加時間が経過すると、流量調整弁30を閉弁させる。この場合、燃料ポンプ6から燃料噴射弁28への燃料の供給が遮断されるため、燃料噴射弁28に印加される燃料の圧力が開弁圧未満となり、燃料噴射弁28が閉弁する。
【0102】
このように流量調整弁30が目標添加時間だけ開弁されると、目標添加量の燃料が燃料噴射弁28から排気枝管18内へ噴射されることになる。そして、燃料噴射弁28から噴射された燃料は、排気枝管18の上流から流れてきた排気と混ざり合って目標リッチ空燃比の混合気を形成して吸蔵還元型NOx触媒20aに流入する。
【0103】
この結果、吸蔵還元型NOx触媒20aに流入する排気の空燃比は、燃料添加間隔毎に「リーン」と「スパイク的な目標リッチ空燃比」とを交互に繰り返すことになり、以て、吸蔵還元型NOx触媒20が窒素酸化物(NOx)の吸収と放出・還元とを交互に周期的に繰り返えされNOx 浄化制御が実行されることになる。
【0104】
[SOx浄化制御]
ここで、内燃機関1の燃料には硫黄(S)が含まれている場合があり、そのような燃料が内燃機関1で燃焼されると、二酸化硫黄(SO2)や三酸化硫黄(SO3)などの硫黄酸化物(SOx)が生成される。SOx浄化制御では、硫黄酸化物(SOx)が、排気とともに吸蔵還元型NOx触媒20aに流入し、窒素酸化物(NOx)と同様のメカニズムによって吸蔵還元型NOx触媒20aに吸収される。
【0105】
具体的には、吸蔵還元型NOx触媒20aに流入する排気の空燃比がリーン空燃比であるときには、前述したNOx吸収メカニズムの説明で述べたように、酸素(O2)がO2 -又はO2-の形で白金(Pt)の表面に付着しているため、流入排気ガス中の二酸化硫黄(SO2)や三酸化硫黄(SO3)等の硫黄酸化物(SOx)が白金(Pt)の表面上でO2 -又はO2-と反応してSO3-やSO4-となる。
【0106】
SO3-やSO4-は、白金(Pt)の表面上で更に酸化され、硫酸イオン(SO4 2-)の形で吸蔵還元型NOx触媒20に吸収される。尚、吸蔵還元型NOx触媒20aに吸収された硫酸イオン(SO4 2-)は、酸化バリウム(BaO)と結合して硫酸塩(BaSO4)を形成する。
【0107】
このように吸蔵還元型NOx触媒20aに流入する排気の空燃比がリーン空燃比であるときは、排気中の硫黄酸化物(SOx)が硫酸イオン(SO4 2-)として吸蔵還元型NOx触媒20aに吸収される。
【0108】
ところで、硫酸塩(BaSO4)は、硝酸バリウム(Ba(NO3)2)に比して安定していて分解し難く、吸蔵還元型NOx触媒20に流入する排気の空燃比が理論空燃比又はリッチ空燃比となっても分解されずに吸蔵還元型NOx触媒20a内に残留してしまう。すなわち、吸蔵還元型NOx触媒20aにおける硫酸塩(BaSO4)の量が増加すると、それに応じて窒素酸化物(NOx)の吸収に関与することができる酸化バリウム(BaO)の量が減少するため、吸蔵還元型NOx触媒20aのNOx吸収能力が低下する、いわゆるSOx被毒が発生する。
【0109】
[被毒解消制御]
そこで、CPU351は、ROM352の被毒解消処理間隔制御マップへアクセスし、被毒解消処理間隔制御マップに記憶された被毒解消処理間隔毎に被毒解消制御を実施するか否かを判別する。この被毒解消制御を実施する際の可否判別条件としては、例えば、内燃機関1の運転状態から決まる燃料消費量により吸蔵還元型NOx触媒20aの酸化物(SOx被毒)量を硫黄堆積量制御マップに基づき推定し、この推定SOx被毒量が所定値を越えた場合、等の条件を例示できる。
【0110】
被毒解消制御では、SOx被毒を解消(SOx被毒量=0)すべく被毒解消処理を実施する。例えば、吸蔵還元型NOx触媒20aのSOx被毒を解消する方法としては、吸蔵還元型NOx触媒20aの雰囲気温度をおよそ500°C〜700°Cの高温域まで昇温させるとともに、吸蔵還元型NOx触媒20aに流入する排気の空燃比をリッチ空燃比とすることにより、吸蔵還元型NOx触媒20aに吸収されている硫酸バリウム(BaSO4)をSO3-やSO4-に熱分解し、次いでSO3-やSO4-を排気中の炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)と反応させて気体状のSO2-に還元する方法を例示することができる。
【0111】
そこで、本実施の形態に係る被毒解消制御では、CPU351は、先ず吸蔵還元型NOx 触媒20aの床温を高める触媒昇温制御を実行した上で、吸蔵還元型NOx 触媒20aに流入する排気の空燃比をリッチ空燃比とするようにした。
【0112】
また、触媒昇温制御では、CPU351は、例えば、各気筒2の膨張行程時に燃料噴射弁3から副次的に燃料をポスト噴射させるとともに燃料噴射弁28から排気中へ燃料を添加させることにより、それらの未燃燃料成分を吸蔵還元型NOx 触媒20aにおいて酸化させ、酸化の際に発生する熱によって吸蔵還元型NOx 触媒20aの床温を高めるようにしてもよい。
【0113】
但し、吸蔵還元型NOx 触媒20aが過剰に昇温すると、吸蔵還元型NOx 触媒20aの熱劣化が誘発される可能性があるため、排気温度センサ24の出力信号値に基づいてポスト噴射燃料量及び添加燃料量がフィードバック制御されるようにすることが好ましい。
【0114】
[触媒劣化(熱劣化)状態判断手段]
次に、この実施の形態における排気浄化装置のNOx 触媒20aの触媒劣化(熱劣化)状態判断手段について説明する。
まず、触媒劣化(吸蔵材硫黄被毒劣化や熱劣化等)の状態を、図4に示す、SOx被毒解消の実施回数(再生回数)Nsと触媒劣化の度合いを求めた一実験結果をグラフに基づき説明する。
【0115】
実験は、図4に示すように、硫黄が50ppm含まれる燃料を使用し、約200km走行毎にSOx被毒解消処理を行いつつ約8万km走行した。走行後のNOx触媒のNOx吸蔵能力を実験により求め、新品のNOx触媒のNOx吸蔵能力と比較し、触媒劣化の度合い(%)を求めた。なお、トータル劣化(吸蔵材硫黄被毒劣化や熱劣化を含む)の度合いの傾きは、再生回数が1000回を越えても継続すると考えられる。また、SOx被毒の再生回数NsはバックアップRAM354の所定領域へ記憶され、SOx被毒解消が実施される毎に記憶された回数に「1」が加算される。
【0116】
また、かかるトータル劣化度合い(%)は、NOx吸蔵能力低下の度合いとほぼ同じであると考えられる。そこで、第1の実施の形態では、添加量補正制御マップは、トータル劣化度合い(割合)と補正(増量)係数を対応して記憶したマップであり、この補正係数はトータル劣化度合い(割合)に応じて実験的に求めた添加量の増量分を示すものである。また、添加間隔補正制御マップも、トータル劣化度合い(割合)と補正(短縮)係数を対応して記憶したマップであり、この補正係数はトータル劣化度合い(割合)に応じて実験的に求めた添加間隔の短縮分を示すものである。
【0117】
したがって、SOx被毒の再生回数Nsが分かれば、ROM352に記憶されている添加量補正制御マップあるいは添加間隔補正制御マップのいずれかによりNOx 触媒20aの劣化の度合いに応じた補正係数を読み出し、NOx 浄化制御の実行条件(燃料添加量あるいは燃料添加間隔)を変えることでNOx 吸収能力の低下防ぎ、触媒浄化率の向上が可能となる。また、このようにして求められた触媒劣化度合に基づいて、NOx 触媒20aの交換時期を警告装置(図示省略)に表示させNOx 触媒20aの交換を使用者に促すことができる。
【0118】
次に、第1の実施の形態の排気浄化装置における被毒解消処理及び劣化度合いに応じた触媒浄化率向上処理を、図5の処理の流れ図に基づき説明する。
処理をスタートさせると、CPU351は、硫黄被毒再生回数Nsを「0」とする(Ns=0;ステップ101)。
【0119】
次に、CPU351は、運転状態に応じて被毒解消処理間隔制御マップが示す目標被毒解消処理間隔を求めると共に、エンジン回転数、負荷等内燃機関1の運転状態から燃料消費量や硫黄堆積量を推定する(ステップ102)。
【0120】
CPU351は、推定した硫黄堆積量が所定の判断基準堆積量(例えば、0.15g)を越えているかどうか判断し(ステップ103)、 硫黄堆積量が被毒解消処理の可否判別条件の堆積量である0.15gを越えていれば(硫黄堆積量≧0.15g:ステップ103;YES)、ステップ104に進み、一方、硫黄堆積量が0.15gを越えていなければ(硫黄堆積量<0.15g:ステップ103;No)、ステップ104をパスしにステップ105に進む。
【0121】
ステップ104において、CPU351は前記目標被毒解消処理間隔で硫黄被毒再生処理(被毒解消処理)を行う。すなわち、CPU351は、触媒昇温制御を行い、吸蔵還元型NOx 触媒20aの床温を500°C〜700°C程度の高温域まで上昇させ、吸蔵還元型NOx 触媒20aに流入する排気の空燃比をリッチ空燃比とすべく燃料噴射弁28から燃料を噴射させる。
【0122】
尚、燃料噴射弁28から過剰な燃料が噴射されると、それらの燃料が吸蔵還元型NOx 触媒20aで急激に燃焼して吸蔵還元型NOx 触媒20aが過熱し、或いは燃料噴射弁28から噴射された過剰な燃料によって吸蔵還元型NOx 触媒20aが不要に冷却される虞があるため、CPU351は、空燃比センサ23の出力信号に基づいて燃料噴射弁28からの燃料噴射量をフィードバック制御するようにすることが好ましい。
【0123】
このように被毒解消制御が実行されると、吸蔵還元型NOx 触媒20aの床温が高い状況下で、吸蔵還元型NOx 触媒20aに流入する排気の空燃比がリッチ空燃比となるため、吸蔵還元型NOx 触媒20aに吸収されている硫酸バリウム(BaSO4)がSO3-やSO4-に熱分解され、それらSO3-やSO4-が排気中の炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)と反応して気体状のSO2-に還元されになり、以て吸蔵還元型NOx 触媒20aのSOx被毒が解消(硫黄堆積量=0)されることになる。
【0124】
硫黄被毒再生処理を行うと、CPU351は硫黄被毒再生回数Nsをインクリメントする(Ns=Ns+1)。
【0125】
次に、CPU351は、運転状態に応じて燃料添加間隔制御マップが示す目標添加間隔を求めると共に、添加間隔補正制御マップより再生回数Nsに応じた補正係数を求め、補正係数に基づき前記目標添加間隔を補正し添加間隔を算出する(ステップ105)。なお、算出された添加間隔は、前記目標添加間隔より短いものとなる。
【0126】
そして、CPU351は、算出された添加間隔に基づいて燃料添加によるNOx 浄化処理(NOx 還元)を行う(ステップ106)。すなわち、CPU351が算出した短めの添加間隔でリッチスパイク制御を実行することにより、吸蔵還元型NOx 触媒20aに流入する排気の空燃比をスパイク的に目標リッチ空燃比とする頻度を多くすることでNOx 触媒の劣化分を補い、吸蔵還元型NOx 触媒20aに吸収された窒素酸化物(NOx)を放出及び還元するNOx 浄化率を向上させる。
【0127】
ステップ106の処理が終了すると、CPU351は、ステップ102へ飛び、ステップ102以降の処理を繰り返す。
【0128】
なお、上記NOx 浄化処理のステップ105およびステップ106において、燃料添加量は変えずに硫黄被毒再生回数Nsに応じて燃料添加間隔(インターバル)を短くすることで触媒浄化率を向上させたが、燃料添加量を多くしてリッチスパイクを深くすることも考えられる。
【0129】
すなわち、CPU351は、ステップ105で、運転状態に応じて燃料添加量制御マップが示す目標添加量を求めると共に、添加量補正制御マップより再生回数Nsに応じた補正係数を求め、補正係数に基づき前記目標添加量に補正して添加量を算出する。なお、算出された添加量は、前記目標添加量より多いものとなる。
【0130】
そして、CPU351は、ステップ106において、算出された添加量に基づいて燃料添加によるNOx 浄化処理(NOx 還元)を行う。すなわち、CPU351が算出した多めの添加量でリッチスパイク制御を実行することにより、吸蔵還元型NOx 触媒20aに流入する排気の空燃比を目標リッチ空燃比よりリッチ状態とすることでNOx 触媒の劣化分を補い、吸蔵還元型NOx 触媒20aに吸収された窒素酸化物(NOx)を放出及び還元するNOx 浄化率を向上させる。
【0131】
また、上記NOx 浄化処理のステップ105およびステップ106において、硫黄被毒再生回数Nsに応じて燃料添加量の増量と燃料添加間隔(インターバル)の短縮を併合することでNOx 触媒20aの劣化分を補い、NOx 浄化率を向上させる構成を例示することができる。
【0132】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態における内燃機関の排気浄化装置を説明する。なお、第1の実施形態と第2の実施の形態との違いは、リッチスパイク制御を実施する際の可否判別条件のみである。
【0133】
すなわち、第1の実施の形態で述べたようにリッチスパイク制御の可否判別条件としては、例えば、吸蔵還元型NOx触媒20aが活性状態にある、排気温度センサ24の出力信号値(排気温度)が所定の上限値以下である、被毒解消制御が実行されていない、等である。そして、NOx触媒20aを高温条件下でリッチスパイク制御を行うと酸化により更に高熱が発生し被毒解消処理が実行されてしまい、熱劣化が生じてしまう。そこで、新品のNOx触媒20aの場合、最適な活性温度の上限値を250°C程度に予め設定してリッチスパイク制御を実施する際の可否判別条件にしている。
【0134】
ところで、NOx 触媒20aが劣化すると、NOx 触媒20aの劣化分を補うためにNOx触媒20aの活性温度を暫時上昇させる必要が生じる。そこで、第2の実施の形態は、NOx 触媒20aの劣化状態の判断に応じて活性温度の上限値を暫時上昇させる制御手段を設けて、第1の実施の形態を更に発展させたものである。
【0135】
第2の実施の形態では、ROM352内に被毒解消回数と活性温度の上限値の予測値との関係を示す予測上限値制御マップを記憶している。この予測上限値制御マップは、被毒解消回数Nsが0〜500回の間は回数に応じて活性温度の上限値を250°C〜270°Cへと暫時上昇させる値が記憶され、被毒解消回数Nsが500〜1000回の間は270°C〜300°Cへと暫時上昇させる値が記憶されている。
【0136】
そして、第2の実施の形態では、図5に示すステップ106の処理において、CPU351が、予測上限値制御マップから被毒解消回数Nsに応じた活性温度の予測上限値を読み出す。そして、この活性温度の予測上限値をリッチスパイク制御を実施する際の可否判別条件とする。
【0137】
従って、CPU351は、リッチスパイク制御の可否判断をする際に、読み出した活性温度の予測上限値と排気温度センサ24の出力信号値(排気温度)とを比較する。そして、リッチスパイク制御を実施する際の可否判別条件が満たされている場合、CPU351は、燃料噴射弁28からスパイク的に還元剤たる燃料を噴射させるべく流量調整弁30を制御(燃料添加制御)する。このように、第2の実施の形態によれば、触媒浄化率向上手段がNOx 触媒20aの劣化状態の判断に応じて活性温度の上限値を暫時上昇させる制御手段を有することで、NOx 吸収能力の低下を防ぎ、触媒浄化率の向上を図ることができる。
【0138】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態における内燃機関の排気浄化装置を説明する。なお、第1の実施形態及び第2の実施の形態と、第3の実施の形態との違いは、NOx 触媒20aの劣化状態に応じ床温値を暫時上昇させる触媒昇温制御手段を設けたことのみである。
【0139】
すなわち、第1の実施の形態及び第2の実施の形態で述べたように吸蔵還元型NOx触媒20aが活性状態であることがリッチスパイク制御の可否判別条件の1つとなっている。しかし、NOx 触媒20aが劣化すると、NOx 触媒20aの劣化分を補うためにNOx触媒20aの活性温度を暫時上昇させる必要が生じる。そこで、第3の実施の形態は、NOx 触媒20aの劣化状態に応じて床温値を暫時上昇させる触媒昇温制御手段を設けて、第1の実施の形態を更に発展させたものである。
【0140】
第3の実施の形態の触媒昇温制御手段では、ROM352内に被毒解消回数とNOx 触媒20aの活性温度との関係を示す活性温度制御マップと、内燃機関1の運転状態と床温値との関係を示す床温値制御マップと、を記憶している。そして、CPU351は、NOx 触媒20aの活性温度を活性温度制御マップにより例えば、300°Cと読み取った場合、床温値制御マップに基づき床温値が300°Cとなるようにポスト噴射等の触媒昇温制御を実行する。例えば、各気筒2の膨張行程時に燃料噴射弁3から副次的に燃料をポスト噴射させるとともに燃料噴射弁28から排気中へ燃料を添加させ目標空燃比を下げることにより、それらの未燃燃料成分を吸蔵還元型NOx 触媒20aにおいて酸化させ、酸化の際に発生する熱によって吸蔵還元型NOx 触媒20aの床温を300°Cまで高める。
【0141】
但し、吸蔵還元型NOx 触媒20aが過剰に昇温すると、吸蔵還元型NOx 触媒20aの熱劣化が誘発される可能性があるため、排気温度センサ24の出力信号値に基づいてポスト噴射燃料量及び添加燃料量がフィードバック制御されるようにすることが好ましい。
【0142】
第3の実施の形態によれば、NOx 触媒20aの劣化状態に応じて床温値を暫時上昇させる触媒昇温制御手段を設けることで、NOx 触媒20aの劣化分を補うためにNOx触媒20aの活性温度を上昇させる制御を行い、NOx 吸収能力の低下を防ぎ、触媒浄化率の向上を図ることができる。
【0143】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態における内燃機関の排気浄化装置を説明する。なお、第1の実施形態と第4の実施の形態との違いは、NOx 触媒20aの劣化状態に応じて被毒解消間隔を短くしたことのみである。
【0144】
すなわち、第1の実施の形態で述べたように被毒解消制御は、運転状態が同じであれば、被毒解消処理間隔制御マップに記憶された被毒解消処理間隔毎に行われる。しかし、図6に示すように、被毒解消処理を1回実施した場合を考えると、硫黄堆積量が完全に「硫黄堆積量=0」となる訳ではなく、極僅かであるが硫黄が残留し、再生回数を重ねる毎に残留分、NOx 触媒20aの劣化度合いが上昇する。図6では、1回目の劣化度合いm1<2回目の劣化度合いm2<3回目の劣化度合いm3<・・というように劣化度合いが上昇する。そして、NOx 触媒20aが劣化すると、NOx 触媒20aの劣化分を補うために被毒解消処理間隔を短くする必要が生じる。そこで、第4の実施の形態は、NOx 触媒20aの劣化状態に応じて被毒解消処理間隔を短くする制御手段を設けて、第1の実施の形態を更に発展させたものである。
【0145】
第4の実施の形態の触媒浄化向上手段では、ROM352が被毒回数と被毒解消処理間隔の補正(短縮)係数との関係を示す処理間隔補正制御マップを記憶している。そして、CPU351は、図5のステップ102において、運転状態に応じて被毒解消処理間隔制御マップが示す目標被毒解消処理間隔を求めると共に、処理間隔補正制御マップより再生回数Nsに応じた補正係数を求め、補正係数に基づき前記目標被毒解消処理間隔を補正し処理間隔を算出する。なお、算出された処理間隔は、前記目標被毒解消処理間隔より短いものとなる。
【0146】
そして、CPU351は、図5のステップ104において、算出された処理間隔に基づいて硫黄被毒再生処理(被毒解消処理)を行う。すなわち、CPU351が算出した短めの処理間隔で被毒解消制御を実施することにより、頻度でNOx 触媒に残留した硫黄分を解消し、結果として吸蔵還元型NOx 触媒20aに吸収された窒素酸化物(NOx)を放出及び還元するNOx 浄化率を向上させる。
【0147】
【発明の効果】
本発明に係る内燃機関の排気浄化装置は、NOx触媒の劣化の度合いを判断し、劣化状態に応じてNOx 浄化処理の実行条件あるいは被毒解消処理の実行条件を変えるように構成したので、NOx 触媒の劣化分を補うことでNOx 吸収能力の低下を防ぎ、触媒浄化率の向上を図ることができる。
【0148】
この結果、NOx触媒劣化によるNOx浄化率の低下に起因した排気エミッションの悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る内燃機関の排気浄化装置を適用する内燃機関とその吸排気系の概略構成を示す図である。
【図2】図2(A)は吸蔵還元型NOx触媒のNOx吸収メカニズムを説明する図であり、図2(B)は吸蔵還元型NOx触媒のNOx放出メカニズムを説明する図である。
【図3】ECUの内部構成を示すブロック図である。
【図4】実験により求めた被毒解消処理回数と触媒劣化の関係を示す図である。
【図5】被毒解消処理及び劣化度合いに応じた触媒浄化率向上処理の流れ図である。
【図6】被毒解消処理回数と共に触媒劣化が進行する状態を示す図である。
【符号の説明】
1・・・・内燃機関
2・・・・気筒
3・・・・燃料噴射弁
4・・・・コモンレール
5・・・・燃料供給管
6・・・・燃料ポンプ
18・・・排気枝管
19・・・排気管
20a・・・吸蔵還元型NOx触媒
20b・・・酸化触媒
21・・・排気絞り弁
23・・・空燃比センサ
25・・・EGR通路
26・・・EGR弁
27・・・EGRクーラ
28・・・燃料噴射弁
29・・・燃料供給路
30・・・流量調整弁
31・・・遮断弁
32・・・燃料圧力センサ
33・・・クランクポジションセンサ
34・・・水温センサ
35・・・ECU
351・・CPU
352・・ROM
353・・RAM
354・・バックアップRAM
Claims (4)
- 酸素過剰状態の混合気を燃焼可能とする希薄燃焼式の内燃機関と、
前記内燃機関の排気通路に設けられ、排気の空燃比が高いときは排気中の窒素酸化物を吸収し、排気の空燃比が低いときは吸収していた窒素酸化物を放出しつつ還元するNOx触媒と、
前記NOx触媒に吸収された窒素酸化物を放出及び還元すべくNOx浄化処理を実行するNOx浄化制御手段と、
前記NOx触媒の酸化物による被毒を解消すべく被毒解消処理を実行する被毒解消制御手段と、
前記被毒解消制御手段の実行により生じる前記NOx 触媒の劣化状態を判断する触媒劣化状態判断手段と、
前記NOx 触媒の劣化状態に応じて前記NOx浄化処理の実行条件あるいは前記被毒解消処理の実行条件を変えて窒素酸化物の放出及び還元を活性化させ前記NOx浄化処理の浄化率を向上させる触媒浄化率向上手段と、を備え、
前記NO x 浄化制御手段は、前記NO x 触媒よりも上流の排気通路に還元剤としての燃料を所定間隔で添加する燃料添加剤供給手段を有しており、前記触媒浄化率向上手段は、前記NO x 触媒の劣化状態に応じて前記燃料添加から次回に燃料添加するまでの燃料添加間隔を短くするように前記NO x 浄化処理の実行条件を変更する内燃機関の排気浄化装置において、
前記NO x 浄化制御手段は、前記NO x 触媒の床温値に基づき前記燃料添加の可否を判断する可否判断手段を有し、前記触媒浄化率向上手段は前記NO x 触媒の劣化状態に応じて前記床温値の予測値を算出する触媒床温算出手段を有しており、前記触媒浄化率向上手段が前記床温値の予測値に基づき前記可否判断手段の前記床温値を変更することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。 - 前記触媒浄化率向上手段は、前記NO x 触媒の劣化状態に応じて前記燃料添加剤供給手段が行う1回の燃料添加量を増量するように前記NO x 浄化処理の実行条件を変更する請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記触媒浄化率向上手段は、前記NO x 触媒の劣化状態に応じて前記NO x 触媒へ入る排気温度を上昇させる床温制御手段を有する請求項1または請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 酸素過剰状態の混合気を燃焼可能とする希薄燃焼式の内燃機関と、
前記内燃機関の排気通路に設けられ、排気の空燃比が高いときは排気中の窒素酸化物を吸収し、排気の空燃比が低いときは吸収していた窒素酸化物を放出しつつ還元するNO x 触媒と、
前記NO x 触媒に吸収された窒素酸化物を放出及び還元すべくNO x 浄化処理を実行するNO x 浄化制御手段と、
前記NO x 触媒の酸化物による被毒を解消すべく被毒解消処理を実行する被毒解消制御手段と、
前記被毒解消制御手段の実行により生じる前記NO x 触媒の劣化状態を判断する触媒劣化状態判断手段と、
前記NO x 触媒の劣化状態に応じて前記NO x 浄化処理の実行条件あるいは前記被毒解消処理の実行条件を変えて窒素酸化物の放出及び還元を活性化させ前記NO x 浄化処理の浄化率を向上させる触媒浄化率向上手段と、を備え、
前記触媒浄化率向上手段は、前記NO x 触媒の劣化状態に応じて前記NO x 触媒へ入る排気温度を上昇させる床温制御手段を有することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
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