JP2003183857A5 - - Google Patents
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Description
【発明の名称】エッチング液およびそれを用いた回路基板の製法
【特許請求の範囲】
【請求項1】1価銅イオンと2価銅イオンおよび塩酸を含むエッチング液であって、1価銅イオンが全銅イオンに対しモル分率で0.1以上で、かつ、1価銅イオンの飽和濃度以下であることを特徴とするエッチング液。
【請求項2】1価銅イオンと2価銅イオンおよび塩酸を含むエッチング液であって、1価銅イオンが全銅イオンに対しモル分率で0.1〜0.6であることを特徴とするエッチング液。
【請求項3】全銅イオンが0.2〜3.0mol/Lで、かつ、塩酸が50〜400ml/Lである請求項1または2に記載のエッチング液。
【請求項4】第1の金属と第2の金属とを有する構造の回路基板の製法において、1価銅イオンと2価銅イオンおよび塩酸を含み、かつ、1価銅イオンが全銅イオンに対しモル分率で0.1以上、かつ、1価銅イオンの飽和濃度以下であるエッチング液を用いて前記第1の金属と第2の金属とを同時にエッチングすることを特徴とする回路基板の製法。
【請求項5】第1の金属と第2の金属とを有する構造の回路基板の製法において、1価銅イオンと2価銅イオンおよび塩酸を含み、かつ、1価銅イオンが全銅イオンに対しモル分率で0.1〜0.6であるエッチング液を用いて第1の金属と第2の金属とを同時にエッチングすることを特徴とする回路基板の製法。
【請求項6】前記回路基板の第1の金属と第2の金属が異種金属であり、該金属が銅,銅合金,ニッケル,ニッケル合金,鉄ニッケル合金,鉄クロム合金,鉄ニッケルクロム合金から選ばれた金属である請求項4に記載の回路基板の製法。
【請求項7】前記回路基板の第1の金属がニッケル,ニッケル合金,鉄ニッケル合金,鉄クロム合金,鉄ニッケルクロム合金のいずれかの金属、前記回路基板の第2の金属が銅または銅合金である請求項4に記載の回路基板の製法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エッチング液およびそれを用いた回路基板の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、回路基板は、紙基材フェノール樹脂やガラス基材エポキシ樹脂と銅箔を張り合わせた銅張積層板を用い、エッチングにより回路を形成していた。電子機器の多機能化,高性能化に伴い、電子機器に実装される回路基板も多様化し、その製法も種々提案されている。
【0003】
例えば、半導体素子の実装を目的に42アロイなどの低熱膨張金属を回路基板内に配置したメタルコア基板がある。これは、コアとなる金属の低熱膨張性を活かして、回路基板全体の熱膨張率を半導体素子のシリコンの熱膨張率に合わせようとするものである。
【0004】
また、磁気ディスク装置の磁気ヘッドを支持するサスペンションアッセンブリとして、サスペンションとなるステンレス基材と磁気ヘッドに信号を伝達するための回路とが、絶縁樹脂層を介して一体化された、いわゆるメタルベース基板がある。
【0005】
通常、回路基板の回路には、電気伝導性の良好な銅,銅合金,銀,金などの金属が用いられるが、コストの点から銅または銅合金が主に用いられる。
【0006】
メタルコア基板とメタルベース基板は、共に銅または銅合金以外の金属が回路と積層している構造には変わりがなく、コアまたはベースとなる金属の特性を活かした回路基板である。
【0007】
また、一般的には、コアまたはベースとなる金属は、回路と電気的に遮断されているが、回路の一部として利用される場合もある。この場合、電気伝導性や熱伝導性を向上させるために、コアまたはベースとなる金属を芯材とし、これの片面または両面に銅または銅合金をクラッド化した複合材が用いられる。
【0008】
この銅または銅合金は、めっき,スパッタリングなどにより堆積させたり、機械的にクラッド化させたりして製造する。また、銅または銅合金と芯材との密着性を確保するために、ニッケルまたはニッケル合金,パラジウム,クロムなどの密着層を介在させる場合がある。
【0009】
メタルベース基板の製法の一つに以下のような方法がある。図7は、従来技術によるメタルベース基板の製造工程を示す模式断面図で、ベースとなる金属箔21に、絶縁樹脂層22を介して銅または銅合金からなる導電層23を形成する(図7(a))。具体的には、ワニス状の絶縁樹脂層22を金属箔21に塗工した後、めっき、スパッタリングなどで導電層23を堆積させたり、予め、絶縁樹脂層22と導電層23が積層されたシートを、金属箔21にラミネートなどで接着させたりして形成する。
【0010】
めっき、スパッタリングなどで導電層23を形成する場合は、予め、絶縁樹脂層22にレーザーやプラズマなどのドライプロセス法,フォトリソグラフ法などによりビアホール24を形成した後、導電層23を形成することもできる(図7(b))。
【0011】
次に、導電層23をエッチングして回路25を形成後、金属箔21をエッチングして支持板26を形成すると、メタルベース基板27となる(図7(c))。 また、回路基板の製法では、支持体上に回路層や絶縁樹脂層を形成した転写用基板と、別に作成した両面基板または転写用基板とを接着剤,プリプレグなどを介して積層接着した後、支持体を剥離する転写法がある。この支持体としては、ステンレスや42アロイなどの合金,ニッケル,銅,銅合金などの板または箔が用いられるが、取り扱い性の点からはステンレスが好ましい。
【0012】
支持体を剥離する方法には、機械的に引き剥す方法と、エッチングにより溶解除去する方法とがある。
【0013】
機械的に引き剥す方法として、例えば、特開平11−17300号公報によれば、ステンレスの支持体上に銅めっきにより回路層を形成した2枚の転写用基板を接着剤,プリプレグなどを介して積層接着した後、支持体を剥離する。
【0014】
エッチングにより溶解除去する方法では、支持体を溶解し、かつ、回路の溶解速度が十分に遅いエッチング液を用いるか、あるいは、支持体と回路の間にエッチングバリアとなる金属を介在させ、支持体を溶解除去した後、別のエッチング液でエッチングバリアを溶解除去する。エッチングにより溶解除去する方法では、支持体の一部を選択的に剥離できるため、支持体を補強板や回路として利用できる。
【0015】
以上のように、42アロイなどの鉄ニッケル合金やステンレスなどの鉄ニッケルクロム合金,鉄クロム合金が回路基板の一部に用いたり、製造過程で使用されたりするようになった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、一般的なエッチング液として用いられる塩化銅(II)エッチング液や塩化鉄(II)エッチング液は、金属の種類によって溶解速度が異なる。即ち、メタルベース基板の製法においては、導電層をエッチングして回路を形成する工程と、金属箔をエッチングして支持体を形成する工程とを、別の工程で行う必要がある。そのために、エッチング液の液温や処理時間を変えたり、エッチング液の種類を変えたりする必要があり、工程が煩雑で、歩留りの低下を招くことになる。
【0017】
単一のエッチング液を用いて同時にエッチングする場合は、エッチング液に対する金属箔および回路の溶解速度の比率と、金属箔および回路の厚みの比率を同程度にする必要があり、ベースとなる金属箔の厚みと回路の厚みを自由に設定することが困難である。
【0018】
コアまたはベースとなる金属箔に複合材を用いる場合は、一般的なエッチング液でエッチングすると複合材の各金属の溶解速度の違いから、各金属界面付近に段差を生じる。図8は、クラッド化した金属28よりも芯材29の溶解速度が速い場合の断面形状を示す模式断面図であるが、このように、上記両者の断面形状に段差が形成される。
【0019】
また、転写法において、支持体を機械的に引き剥す方法では、支持体と回路層または絶縁樹脂層との密着力の制御が困難であり、密着力が高過ぎると回路基板の層間剥離不良や転写不良を引き起こすことになる。一方、密着力が低過ぎると製造工程中に支持体から回路層または絶縁樹脂層が剥離してしまい、不良発生の要因となる。
【0020】
エッチングにより溶解除去する方法では、支持体を溶解し、かつ、回路の溶解が十分に遅い実用的なエッチング液が必要となるが、回路が銅または銅合金の場合、支持体として利用できる金属には、ニッケルまたはニッケル合金しかない。即ち、42アロイやステンレスを溶解し、かつ、銅または銅合金の溶解速度が十分に遅いエッチングは、いまだ実用化されていないのが現状である。
【0021】
本発明の目的は、上記に鑑み、2種の異なる金属の溶解速度を任意に設定できるエッチング液を提供することにある。
【0022】
また、本発明の他の目的は、上記エッチング液を用いた低コストで製造できる回路基板の製法を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明の要旨は次のとおりである。1価銅イオンと2価銅イオンおよび塩酸を含むエッチング液であって、1価銅イオンが全銅イオンに対するモル分率(以下、Cu+/Cuと称する)で0.1以上であり、1価銅イオンが飽和濃度以下とすることを特徴とする。
【0024】
本発明のエッチング液は、Cu+/Cuが増加すると、銅,銅合金,ニッケル,ニッケル合金,鉄ニッケル合金,鉄クロム合金,鉄ニッケルクロム合金などの金属の溶解速度が減少する。
【0025】
この時、全銅イオン濃度および塩酸濃度にもよるが、各金属で溶解速度の減少率が異なる。即ち、上記の合金から選ばれた2種の金属の溶解速度比、即ち、第1の金属の溶解速度を第2の金属の溶解速度で除算した比率(以下、V1/V2と云う)は、上記エッチング液のCu+/Cuに応じて、変化させることができる。
【0026】
また、Cu+/Cuが概ね0.1〜0.6の範囲では、V1/V2は約0.5〜2程度に変化させることができる。即ち、第1の金属の厚みは、第2の金属の厚みの約0.5〜2倍程度に設定することができるのである。
【0027】
また、V1/V2がほぼ1となるエッチング液を用いて複合材をエッチングすると、断面形状が図8に示すような段差が形成されず、第1の金属と第2の金属の界面近傍を、ほぼ平滑に仕上げることができる。なお、第1の金属と第2の金属との間に密着層が介在する場合は、該密着層の厚さは、できるだけ薄いことが望ましい。
【0028】
Cu+/Cuが0.6を超えると、V1/V2はさらに増加し、2倍を超える。特に、第2の金属が銅または銅合金の場合、本発明のエッチング液の1価銅イオンが飽和濃度までCu+/Cuが増加すると、第2の金属は殆ど溶解しなくなる。即ち、本発明のエッチング液は、第1の金属を溶解し、かつ、第2の金属の溶解速度が十分に遅いエッチング液であり、第2の金属上の第1の金属の剥離液としても利用することが可能である。
【0029】
転写法による回路基板の製法においては、バリアとなる金属が介在しなくても、回路となる銅または銅合金の過剰な侵食が無く、支持体となる第1の金属をエッチング除去することが可能である。従って、支持体には、ニッケルまたはニッケル合金の他に、42アロイ,パーマロイなどの鉄ニッケル合金、SUS430などの鉄クロム合金、SUS304,SUS316などの鉄ニッケルクロム合金を選定することが可能になる。
【0030】
本発明のエッチング液の全銅イオンおよび塩酸濃度については、第1の金属と第2の金属の種類によって設定すればよい。しかし、実用的な溶解速度を得るためには、全銅イオンが0.2〜3.0mol/L、塩酸が50〜400ml/Lの範囲が好ましい。
【0031】
1価銅イオンの飽和濃度は、全銅イオンや塩酸濃度および液温によって変化するため、一概に飽和濃度を示すことはできない。また、本発明のエッチング液の調製方法は、塩化銅(II)またはその水和物、塩化銅(I)および塩酸を水で溶解希釈する方法が望ましい。
【0032】
また、塩化銅(II)、または、その水和物と塩酸を水で溶解希釈後に、銅,鉄,ニッケルなどの金属、または、42アロイ,ステンレスなどの合金を溶解させて1価銅イオンを生成させてもよい。また、塩化銅の代わりに酸化銅または水酸化銅を用いることもできる。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明のエッチング液に対する金属の溶解速度は、次のような方法で求めた。エッチング液を1Lビーカーに採り、ウォータバスで50℃に加温し、約50mm×50mmに裁断した厚さ25〜50μmの金属箔を一定時間エッチング液に浸漬する。浸漬前後の金属箔の重量変化率をW、金属箔の厚みをtμmとして、下式〔1〕によりエッチング量Tμmを求めた。
〔数1〕
T=W×t÷2 …〔1〕
浸漬時間1、2、3分に対して、各エッチング量を求め、横軸を浸漬時間、縦軸をエッチング量として作図し、一次近似線の傾きを溶解速度とした。エッチング後のスマットが付着する場合は、液温40℃のスマット除去液(50ml/L−塩酸)に2分間処理して除去した後、重量変化率を求めた。
【0034】
以下、実施例および比較例に用いたエッチング液は、塩化銅(II)・二水和物(ワコー純薬工業社製:特級試薬)、塩化銅(I)(ワコー純薬工業社製:特級試薬)、塩酸(ワコー純薬工業社製:特級試薬、35〜37%)を用いて調製した。1価銅イオンの濃度は、0.02mol/L−過マンガン酸カリウム溶液(ワコー純薬工業社製:容量分析用)による酸化還元滴定法で定量した。
【0035】
〔実施例 1〕
本実施例は、全銅イオン濃度および塩酸濃度を一定にして、Cu+/Cuを変化させたときの第1の金属および第2の金属の溶解速度を求めた。
【0036】
第1の金属としてSUS304箔(東洋精箔社製:SUS304BA)、第2の金属として電解銅箔(日本電解社製:GP−35)を選定し、全銅イオンが1.2mol/L、塩酸が250ml/Lのエッチング液について、Cu+/Cuが約0.1〜約0.5の範囲で、各金属の溶解速度を求めた。その結果を図1に示す。
【0037】
図1は、SUS304箔および電解銅箔のCu+/Cuと溶解速度の関係を示すグラフである。Cu+/Cuが約0.1〜約0.3の範囲では、第2の金属の溶解速度は第1の金属の溶解速度より早く、Cu+/Cuが約0.3でほぼ同じになった。そして、Cu+/Cuが更に増加すると、両者の溶解速度は逆転して、第2の金属より第1の金属の溶解速度が速くなった。
【0038】
〔実施例 2〕
本実施例は、実際にベースとなる第1の金属と、回路となる第2の金属とが絶縁樹脂を介して積層したものを、実施例1のエッチング液を用いて第1の金属および第2の金属を同時にエッチングして、メタルベース基板を作製した。
【0039】
本実施例では、第1の金属および第2の金属の厚みは、同じ(約25μm)である。以下、図2の回路基板の製造工程の模式断面図を用いて説明する。
【0040】
まず、厚さ25μmのSUS304箔(東洋精箔社製:SUS304BA)を所望の大きさに裁断し、60℃の脱脂剤(第一工業製薬社製:50ml/L−メタクリヤCL−5513)で2分間処理し、水洗後、60℃の粗面化液(250ml/L−塩酸、50ml/L−硝酸)で3分間処理して粗面化し、水洗,乾燥してベース1を用意した(図2(a))。
【0041】
次に、ベース1(SUS304)の片面に、下記組成のポリアミック酸樹脂溶液をスピンコータで塗工し、100℃の乾燥炉で15分間乾燥後、400℃の窒素ガス雰囲気の乾燥炉で1時間硬化して、厚さ約30μmのポリイミドからなる絶縁樹脂層2を形成した(図2(b))。
【0042】
ポリアミック酸樹脂組成
酸無水物:3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸 5重量部 ジアミン:p−フェニレンジアミン 5重量部
溶媒 :N−メチル−2−ピロリドン 28重量部
次に、絶縁樹脂層2の表面を70℃のデスミア剤(メルテックス社製:MLB−497)で5分間処理して粗面化し、水洗後60℃の中和剤(メルテックス社製:MLB−790)で5分間処理し、水洗した。更に、25℃のめっき触媒(日立化成工業社製:HS−202B)で5分間処理し、水洗後、25℃の活性化液(日立化成工業社製:ADP−601)で5分間処理した後、水洗,乾燥してめっき触媒を付着させた。
【0043】
次いで、25℃の活性化液(100ml/L−硫酸)で30秒間処理し、水洗後、40℃の無電解銅めっき(日立化成工業社製:CUST−2000)に10分間浸漬し、水洗後、乾燥して約0.2μmの無電解銅めっき層を絶縁樹脂層2の表面に形成した。
【0044】
次に、25℃の活性化液(100ml/L−硫酸)に20秒間浸漬し、水洗後、無電解銅めっき層上に25℃の硫酸銅めっき液(日鉱メタルプレーティング社製:添加剤0.2ml/L−CC−1220)を用い、2.5A/dm2の電流密度で50分間銅めっきを行い、水洗後、100℃の乾燥炉で30分間乾燥して、厚さ約25μmの銅めっき層3を形成した(図2(c))。
【0045】
次いで、両面にドライフィルムレジスト(旭化成工業社製:SPG−152)を110℃でラミネートし、フィルムマスクを密着させ、超高圧水銀灯を用いて紫外線を120mJ/cm2照射し、30℃の現像液(10g/L−炭酸ナトリウム)を0.1MPaの圧力で20秒間スプレー処理した後、水洗,乾燥して、エッチングレジスト層4を形成した(図2(d))。
【0046】
次に、50℃の全銅イオンが1.2mol/L,塩酸が250ml/L,Cu+/Cuが0.31のエッチング液を、0.15MPaの圧力で45秒間スプレー処理した後、水洗し、40℃のレジスト剥離液(30g/L−水酸化ナトリウム)を0.1MPaの圧力で30秒間スプレー処理してドライフィルムレジストを剥離後、水洗,乾燥して厚さ約25μmの回路を有するメタルベース基板5を作製した(図2(e))。
【0047】
上記のメタルベース基板5を両面から観察したところ、回路およびベース共に過剰な細りやエッチング残り等の不良はなく、良好であった。
【0048】
〔実施例 3〕
本実施例は、第2の金属の厚みを硫酸銅めっき時間を30分に短縮して約15μmに変更し、かつ、エッチング液のCu+/Cuを0.43に変更した以外は、実施例2と同様の方法でメタルベース基板を作製した。従って、本実施例のメタルベース基板の金属の厚みは、第1の金属が約25μm、第2の金属が約15μmである。
【0049】
上記のメタルベース基板を両面から観察したところ、回路およびベース共に過剰な細りやエッチング残り等の不良はなく、良好であった。
【0050】
〔実施例 4〕
本実施例は、全銅イオンが1.5mol/L,塩酸が200ml/L,Cu+/Cuが0.34のエッチング液について、第1の金属として42アロイ箔(住友特殊金属社製:D−1)、第2の金属として電解銅箔(日本電解社製:GP−35)を選定し、各金属の溶解速度を求めた。その結果、42アロイ箔の溶解速度が0.37μm/分、銅合金箔の溶解速度が0.38μm/分で、両者はほぼ同等であった。
【0051】
〔実施例 5〕
本実施例は、実施例4で用いたエッチング液を用いて、コアに複合材を有するメタルコア基板を作製した。図3は本実施例の回路基板の作製工程を示す模式断面図である。
【0052】
まず、厚さ50μmの42アロイ箔(住友特殊金属社製:D−1)を所望の大きさに裁断して42アロイ材からなるメタルベース基板5を用意した(図3(a))。
【0053】
次に、60℃の脱脂剤(第一工業製薬社製:50ml/L−メタクリヤCL−5513)で2分間処理して水洗後、40℃の活性化液(330ml/L−塩酸)で1分間処理した。これを水洗後25℃の硫酸銅めっき液(日鉱メタルプレーティング社製:添加剤0.2ml/L−CC−1220)を用い、2.5A/dm2の電流密度で10分間銅めっきを行い、水洗後、100℃の乾燥炉で30分間乾燥して、厚さ約5μmの銅めっき層6を形成し、メタルベース基板1となる42アロイ材の片面に銅をクラッド化した複合材7を作製した(図3(b))。
【0054】
次いで、42アロイ材側の面に実施例2と同じ組成のポリアミック酸樹脂溶液をスピンコートし、乾燥炉で100℃,15分間乾燥後、400℃の窒素ガス雰囲気の乾燥炉中で1時間硬化し、厚さ約20μmのポリイミドの絶縁樹脂層8を形成した(図3(c))。
【0055】
次に、銅めっき層6側にドライフィルムレジスト(旭化成工業社製:SPG−152)を110℃でラミネートしてフィルムマスクを密着させ、超高圧水銀灯の紫外線を120mJ/cm2照射し、30℃の現像液(10g/L−炭酸ナトリウム)を0.1MPaの圧力で20秒間スプレー処理後、水洗,乾燥してエッチングレジスト層9を形成した(図3(d))。
【0056】
次に、50℃の全銅イオンが1.5mol/L,塩酸が200ml/L,Cu+/Cuが0.34のエッチング液を、0.15MPaの圧力で90秒間スプレー処理した。これを水洗し、40℃のレジスト剥離液(30g/L−水酸化ナトリウム)を0.1MPaの圧力で30秒間スプレー処理してドライフィルムレジストを剥離し、水洗後,乾燥した(図3(e))。
【0057】
次いで、上記の複合材側の面に実施例2と同じポリアミック酸樹脂溶液をスピンコートし、乾燥炉中で100℃,15分間乾燥後、400℃の窒素ガス雰囲気の乾燥炉で1時間硬化して、厚さ約20μmのポリイミドからなる絶縁樹脂層10を形成した(図3(f))。
【0058】
更に、絶縁樹脂層10側の面に、レーザー孔穿け装置(ESI社製:MODEL5200)を用いて、周波数4kHz,出力700mW,50ショット/孔の条件で、直径約50μmのビアホール11および直径約90μmのスルーホール12を形成した(図3(g))。
【0059】
次に、70℃のデスミア剤(メルテックス社製:MLB−497)で5分間処理して粗面化し、水洗後60℃の中和剤(メルテックス社製:MLB−790)で5分間処理し、水洗した。更に、25℃のめっき触媒(日立化成工業社製:HS−202B)で5分間処理し、水洗後、25℃の活性化液(日立化成工業社製:ADP−601)で5分間処理した後、水洗,乾燥してめっき触媒を付着させた。
【0060】
次いで、25℃の活性化液(100ml/L−硫酸)で30秒間処理し、水洗後、40℃の無電解銅めっき(日立化成工業社製:CUST−2000)に10分間浸漬し、水洗,乾燥して厚さ約0.2μmの無電解銅めっきを両面に形成した。
【0061】
次に、25℃の25℃の活性化液(100ml/L−硫酸)に20秒間浸漬し、水洗後、25℃の硫酸銅めっき液(日鉱メタルプレーティング社製:添加剤0.2ml/L−CC−1220)を用い、2.5A/dm2の電流密度で50分間銅めっきを行った。これを水洗後、100℃の乾燥炉で30分間乾燥して、厚さ約25μmの銅めっき層13を形成した(図3(h))。
【0062】
次いで、両面にドライフィルムレジスト(旭化成工業社製:SPG−152)を110℃でラミネートしてフィルムマスクを密着させ、超高圧水銀灯の紫外線を120mJ/cm2照射し、30℃の現像液(10g/L−炭酸ナトリウム)を0.1MPaの圧力で20秒間スプレー処理した後、水洗した。
【0063】
更に50℃の塩化銅(II)エッチング液(2mol/L−塩化銅(II)・二水和物、100ml/L−塩酸)を0.15MPaの圧力で30秒間スプレー処理後、水洗し、40℃のレジスト剥離液(30g/L−水酸化ナトリウム)を0.1MPaの圧力で30秒間スプレー処理してドライフィルムレジストを剥離し、水洗,乾燥して回路を形成し、銅と42アロイからなる複合材をコアとするメタルコア基板14を作製した(図3(i))。
【0064】
作製したメタルコア基板14の断面を観察したところ、コアの銅と42アロイの界面近傍はほぼ平滑であり、良好な形状であった。
【0065】
〔実施例 6〕
本実施例は、実施例1と同様に、全銅イオン濃度および塩酸濃度を一定にし、Cu+/Cuを変化させた場合の第1の金属および第2の金属の溶解速度を求めた。
【0066】
全銅イオン濃度が2.36mol/L,塩酸が100ml/Lのエッチング液について、Cu+/Cuが約0.3〜約0.75の範囲であり、第1の金属としてSUS304箔(東洋精箔社製;SUS304BA)の溶解速度(V1)、および、第2の金属として電解銅箔(日本電解社製:GP−35)の溶解速度(V2)を求めた。図4はCu+/Cuと溶解速度比V1/V2の関係を示すグラフである。
【0067】
Cu+/Cuが0.6を超えるとV1/V2が3以上になり、さらにCu+/Cuが0.7を超えるとV1/V2が7以上になった。即ち、本発明のエッチング液は、第1の金属を溶解し、かつ、第2の金属の溶解速度が十分に遅いエッチング液として利用できることが分かった。
【0068】
〔実施例 7〕
本実施例は、全銅イオン濃度が1.5mol/L,塩酸が300ml/L,Cu+/Cuが1.06のエッチング液を用いて、36アロイ箔(住友特殊金属社製:I)および銅合金箔(ヤマハオーリンメタル社製:OLIN7025)の溶解速度を求めた。
【0069】
その結果、36アロイ箔の溶解速度が0.35μm/分、銅合金箔の溶解速度が0.06μm/分であり、36アロイ箔より銅合金箔の溶解速度が十分に遅いことが分かった。
【0070】
〔実施例 8〕
本実施例は、全銅イオン濃度が1.5mol/L,塩酸が300ml/L,Cu+/Cuが1.05のエッチング液を用いて、ニッケル箔(東洋精箔社製:Ni−H)および電解銅箔(日本電解社製:GP−35)の溶解速度を求めた。
【0071】
その結果、ニッケル箔の溶解速度が0.41μm/分、電解銅箔の溶解速度が0.05μm/分であり、ニッケル箔より電解銅箔の溶解速度が十分に遅いことが分かった。
【0072】
〔実施例 9〕
本実施例は、実施例6のエッチング液を用いて、転写法により回路基板を作製したもので、図5は、回路基板の製造工程を示す模式断面図である。
【0073】
まず、厚さ50μmのSUS304箔(新日本製鐵社製:SUS304BA)を所望な大きさに裁断し、60℃の脱脂剤(第一工業製薬社製:50ml/L−メタクリヤCL−5513)で2分間処理して水洗後、60℃の粗面化液(250ml/L−塩酸、50ml/L−硝酸)で3分間処理して粗面化し、水洗,乾燥して支持体15を用意した(図5(a))。
【0074】
次に、支持体15の片面にドライフィルムレジスト(旭化成工業社製:SPG−152)を110℃でラミネートし、フィルムマスクを密着させ、超高圧水銀灯の紫外線を120mJ/cm2照射し、30℃の現像液(10g/L−炭酸ナトリウム)を0.1MPaの圧力で20秒間スプレー処理後、水洗した。
【0075】
更に、40℃の活性化液(330ml/L−塩酸)に1分間処理し、水洗後、25℃の硫酸銅めっき液(日鉱メタルプレーティング社製:添加剤0.2ml/L−CC−1220)を用い、2.5A/dm2の電流密度で20分間銅めっきを行った。
【0076】
次いで、水洗後、40℃のレジスト剥離液(30g/L−水酸化ナトリウム)を0.1MPaの圧力で30秒間スプレー処理してドライフィルムレジストを剥離後、水洗,乾燥して約10μm厚の第1の回路16を形成した(図5(b))。
【0077】
次いで、第1の回路16側の面に実施例2と同じ組成のポリアミック酸樹脂の溶液をスピンコートし、乾燥炉中で100℃,15分間乾燥後、400℃の窒素ガス雰囲気の乾燥炉中で1時間硬化して、厚さ約30μmのポリイミドからなる絶縁樹脂層17を形成した(図5(c))。
【0078】
次に、レーザー孔穿け装置(ESI社製:MODEL5200)を用いて、周波数4kHz,出力700mW,50ショット/孔の条件で直径約50μmのビアホール18を形成した(図5(d))。
【0079】
次に、70℃のデスミア剤(メルテックス社製:MLB−497)で5分間処理して粗面化し、水洗後60℃の中和剤(メルテックス社製:MLB−790)で5分間処理し、水洗した。更に、25℃のめっき触媒(日立化成工業社製:HS−202B)で5分間処理し、水洗後、25℃の活性化液(日立化成工業社製:ADP−601)で5分間処理した後、水洗,乾燥してめっき触媒を付着させた。
【0080】
次いで、25℃の活性化液(100ml/L−硫酸)で30秒間処理し、水洗後、40℃の無電解銅めっき(日立化成工業社製:CUST−2000)に10分間浸漬し、水洗,乾燥して厚さ約0.2μmの無電解銅めっき層を絶縁樹脂層の表面に形成した。
【0081】
次に、無電解銅めっき層上に、25℃の活性化液(100ml/L−硫酸)に20秒間浸漬し、水洗後、25℃の硫酸銅めっき液(日鉱メタルプレーティング社製:添加剤0.2ml/L−CC−1120)を用い、2A/dm2の電流密度で30分間銅めっきを行い、水洗後、乾燥炉中で100℃,30分間乾燥した。
【0082】
次に、銅めっき面にドライフィルムレジスト(旭化成工業社製:SPG−152)を110℃でラミネートして、フィルムマスクを密着させ、超高圧水銀灯で紫外線を120mJ/cm2照射し、30℃の現像液(10g/L−炭酸ナトリウム)を0.1MPaの圧力で20秒間スプレー処理後、水洗し50℃の塩化鉄(II)エッチング液(42ボーメ)を、0.1MPaの圧力で60秒間スプレー処理後、水洗した。
【0083】
更に、40℃のレジスト剥離液(30g/L−水酸化ナトリウム)を0.1MPaの圧力で30秒間スプレー処理してドライフィルムレジストを剥離して、水洗後、乾燥し厚さ約15μmの第2の回路19を形成した(図5(e))。
【0084】
次に、支持体面に50℃の全銅イオンが2.36mol/L,塩酸が100ml/L,Cu+/Cuが0.68のエッチング液を、0.1MPaの圧力で2分間処理して支持体15を剥離し、水洗,乾燥して転写法による回路基板20を作製した(図5(f))。
【0085】
上記の回路基板20の断面観察を行ったところ、第1の回路16が異常無く形成していることを確認した。
【0086】
〔比較例 1〕
本比較例は、全銅イオン濃度が1.5mol/L,塩酸濃度が300ml/Lであり、1価銅イオンを殆ど含まないエッチング液を用い、同様に溶解速度を求めた。
【0087】
全銅イオン濃度が1.5mol/L,塩酸が300ml/L,Cu+/Cuが0のエッチング液を用いて、42アロイ箔(住友特殊金属社製:D−1)および電解銅箔(日本電解社製:GP−35)の溶解速度を求めた。その結果、42アロイ箔の溶解速度が2.1μm/分、電解銅箔の溶解速度が1.45μm/分であった。従って、転写法において、バリア層なしに42アロイをエッチング除去することは困難である。
【0088】
〔比較例 2〕
本比較例は、実施例9における支持体15の剥離工程に、1価銅イオンを殆ど含まないエッチング液を用いた以外は、同様の方法で回路基板を作製した。
【0089】
まず、実施例9の支持体を用意する工程(図5(a))から第2の回路を形成する工程まで(図5(e))を同様に行った。
【0090】
次に、支持体面に50℃の全銅イオンが2.36mol/L,塩酸が100ml/L,Cu+/Cuが0のエッチング液を用いて、0.1MPaの圧力で45秒間処理して支持体を剥離し水洗,乾燥する転写法により回路基板を作製した。
【0091】
上記の回路基板の断面を観察したところ、第1の回路はエッチング液より侵食され、一部、回路が欠落していた。従って、転写法において、バリア層なしにSUS304をエッチング除去することは困難であることが分かる。
【0092】
【発明の効果】
本発明のエッチング液を用いれば、2種の金属の溶解速度を任意に設定できる。また、本発明のエッチング液を用いて回路基板を作製すれば、2種の金属を同時にエッチングすることが可能である。
【0093】
また、転写法においては、バリア層なしに支持体をエッチング剥離することが可能で、回路基板を低コストで提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のSUS304箔および電解銅箔のCu+/Cuと溶解速度の関係を示すグラフである。
【図2】実施例2の回路基板の作製工程を示す模式断面図である。
【図3】実施例5の回路基板の作製工程を示す模式断面図である。
【図4】実施例6のSUS304箔および電解銅箔のCu+/Cuと溶解速度比(V1/V2)の関係を示すグラフである。
【図5】実施例10の回路基板の製造工程を示す模式断面図である。
【図6】従来技術によるメタルベース基板の製造工程を示す模式断面図である。
【図7】従来の技術によるクラッド化した金属より芯材の溶解速度が速い場合の断面形状を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1…ベース、2,10,22…絶縁樹脂層、3,6,13…銅めっき層、4,9…エッチングレジスト層、5,27…メタルベース基板、7…複合材、11,18,24…ビアホール、12…スルーホール、8,10,17,30…絶縁樹脂層、14…メタルコア基板、15…支持体、16…第1の回路、19…第2の回路、20…回路基板、21…金属箔、23…導電層、25…回路、26…支持板、28…クラッド化した金属、29…芯材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】1価銅イオンと2価銅イオンおよび塩酸を含むエッチング液であって、1価銅イオンが全銅イオンに対しモル分率で0.1以上で、かつ、1価銅イオンの飽和濃度以下であることを特徴とするエッチング液。
【請求項2】1価銅イオンと2価銅イオンおよび塩酸を含むエッチング液であって、1価銅イオンが全銅イオンに対しモル分率で0.1〜0.6であることを特徴とするエッチング液。
【請求項3】全銅イオンが0.2〜3.0mol/Lで、かつ、塩酸が50〜400ml/Lである請求項1または2に記載のエッチング液。
【請求項4】第1の金属と第2の金属とを有する構造の回路基板の製法において、1価銅イオンと2価銅イオンおよび塩酸を含み、かつ、1価銅イオンが全銅イオンに対しモル分率で0.1以上、かつ、1価銅イオンの飽和濃度以下であるエッチング液を用いて前記第1の金属と第2の金属とを同時にエッチングすることを特徴とする回路基板の製法。
【請求項5】第1の金属と第2の金属とを有する構造の回路基板の製法において、1価銅イオンと2価銅イオンおよび塩酸を含み、かつ、1価銅イオンが全銅イオンに対しモル分率で0.1〜0.6であるエッチング液を用いて第1の金属と第2の金属とを同時にエッチングすることを特徴とする回路基板の製法。
【請求項6】前記回路基板の第1の金属と第2の金属が異種金属であり、該金属が銅,銅合金,ニッケル,ニッケル合金,鉄ニッケル合金,鉄クロム合金,鉄ニッケルクロム合金から選ばれた金属である請求項4に記載の回路基板の製法。
【請求項7】前記回路基板の第1の金属がニッケル,ニッケル合金,鉄ニッケル合金,鉄クロム合金,鉄ニッケルクロム合金のいずれかの金属、前記回路基板の第2の金属が銅または銅合金である請求項4に記載の回路基板の製法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エッチング液およびそれを用いた回路基板の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、回路基板は、紙基材フェノール樹脂やガラス基材エポキシ樹脂と銅箔を張り合わせた銅張積層板を用い、エッチングにより回路を形成していた。電子機器の多機能化,高性能化に伴い、電子機器に実装される回路基板も多様化し、その製法も種々提案されている。
【0003】
例えば、半導体素子の実装を目的に42アロイなどの低熱膨張金属を回路基板内に配置したメタルコア基板がある。これは、コアとなる金属の低熱膨張性を活かして、回路基板全体の熱膨張率を半導体素子のシリコンの熱膨張率に合わせようとするものである。
【0004】
また、磁気ディスク装置の磁気ヘッドを支持するサスペンションアッセンブリとして、サスペンションとなるステンレス基材と磁気ヘッドに信号を伝達するための回路とが、絶縁樹脂層を介して一体化された、いわゆるメタルベース基板がある。
【0005】
通常、回路基板の回路には、電気伝導性の良好な銅,銅合金,銀,金などの金属が用いられるが、コストの点から銅または銅合金が主に用いられる。
【0006】
メタルコア基板とメタルベース基板は、共に銅または銅合金以外の金属が回路と積層している構造には変わりがなく、コアまたはベースとなる金属の特性を活かした回路基板である。
【0007】
また、一般的には、コアまたはベースとなる金属は、回路と電気的に遮断されているが、回路の一部として利用される場合もある。この場合、電気伝導性や熱伝導性を向上させるために、コアまたはベースとなる金属を芯材とし、これの片面または両面に銅または銅合金をクラッド化した複合材が用いられる。
【0008】
この銅または銅合金は、めっき,スパッタリングなどにより堆積させたり、機械的にクラッド化させたりして製造する。また、銅または銅合金と芯材との密着性を確保するために、ニッケルまたはニッケル合金,パラジウム,クロムなどの密着層を介在させる場合がある。
【0009】
メタルベース基板の製法の一つに以下のような方法がある。図7は、従来技術によるメタルベース基板の製造工程を示す模式断面図で、ベースとなる金属箔21に、絶縁樹脂層22を介して銅または銅合金からなる導電層23を形成する(図7(a))。具体的には、ワニス状の絶縁樹脂層22を金属箔21に塗工した後、めっき、スパッタリングなどで導電層23を堆積させたり、予め、絶縁樹脂層22と導電層23が積層されたシートを、金属箔21にラミネートなどで接着させたりして形成する。
【0010】
めっき、スパッタリングなどで導電層23を形成する場合は、予め、絶縁樹脂層22にレーザーやプラズマなどのドライプロセス法,フォトリソグラフ法などによりビアホール24を形成した後、導電層23を形成することもできる(図7(b))。
【0011】
次に、導電層23をエッチングして回路25を形成後、金属箔21をエッチングして支持板26を形成すると、メタルベース基板27となる(図7(c))。 また、回路基板の製法では、支持体上に回路層や絶縁樹脂層を形成した転写用基板と、別に作成した両面基板または転写用基板とを接着剤,プリプレグなどを介して積層接着した後、支持体を剥離する転写法がある。この支持体としては、ステンレスや42アロイなどの合金,ニッケル,銅,銅合金などの板または箔が用いられるが、取り扱い性の点からはステンレスが好ましい。
【0012】
支持体を剥離する方法には、機械的に引き剥す方法と、エッチングにより溶解除去する方法とがある。
【0013】
機械的に引き剥す方法として、例えば、特開平11−17300号公報によれば、ステンレスの支持体上に銅めっきにより回路層を形成した2枚の転写用基板を接着剤,プリプレグなどを介して積層接着した後、支持体を剥離する。
【0014】
エッチングにより溶解除去する方法では、支持体を溶解し、かつ、回路の溶解速度が十分に遅いエッチング液を用いるか、あるいは、支持体と回路の間にエッチングバリアとなる金属を介在させ、支持体を溶解除去した後、別のエッチング液でエッチングバリアを溶解除去する。エッチングにより溶解除去する方法では、支持体の一部を選択的に剥離できるため、支持体を補強板や回路として利用できる。
【0015】
以上のように、42アロイなどの鉄ニッケル合金やステンレスなどの鉄ニッケルクロム合金,鉄クロム合金が回路基板の一部に用いたり、製造過程で使用されたりするようになった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、一般的なエッチング液として用いられる塩化銅(II)エッチング液や塩化鉄(II)エッチング液は、金属の種類によって溶解速度が異なる。即ち、メタルベース基板の製法においては、導電層をエッチングして回路を形成する工程と、金属箔をエッチングして支持体を形成する工程とを、別の工程で行う必要がある。そのために、エッチング液の液温や処理時間を変えたり、エッチング液の種類を変えたりする必要があり、工程が煩雑で、歩留りの低下を招くことになる。
【0017】
単一のエッチング液を用いて同時にエッチングする場合は、エッチング液に対する金属箔および回路の溶解速度の比率と、金属箔および回路の厚みの比率を同程度にする必要があり、ベースとなる金属箔の厚みと回路の厚みを自由に設定することが困難である。
【0018】
コアまたはベースとなる金属箔に複合材を用いる場合は、一般的なエッチング液でエッチングすると複合材の各金属の溶解速度の違いから、各金属界面付近に段差を生じる。図8は、クラッド化した金属28よりも芯材29の溶解速度が速い場合の断面形状を示す模式断面図であるが、このように、上記両者の断面形状に段差が形成される。
【0019】
また、転写法において、支持体を機械的に引き剥す方法では、支持体と回路層または絶縁樹脂層との密着力の制御が困難であり、密着力が高過ぎると回路基板の層間剥離不良や転写不良を引き起こすことになる。一方、密着力が低過ぎると製造工程中に支持体から回路層または絶縁樹脂層が剥離してしまい、不良発生の要因となる。
【0020】
エッチングにより溶解除去する方法では、支持体を溶解し、かつ、回路の溶解が十分に遅い実用的なエッチング液が必要となるが、回路が銅または銅合金の場合、支持体として利用できる金属には、ニッケルまたはニッケル合金しかない。即ち、42アロイやステンレスを溶解し、かつ、銅または銅合金の溶解速度が十分に遅いエッチングは、いまだ実用化されていないのが現状である。
【0021】
本発明の目的は、上記に鑑み、2種の異なる金属の溶解速度を任意に設定できるエッチング液を提供することにある。
【0022】
また、本発明の他の目的は、上記エッチング液を用いた低コストで製造できる回路基板の製法を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明の要旨は次のとおりである。1価銅イオンと2価銅イオンおよび塩酸を含むエッチング液であって、1価銅イオンが全銅イオンに対するモル分率(以下、Cu+/Cuと称する)で0.1以上であり、1価銅イオンが飽和濃度以下とすることを特徴とする。
【0024】
本発明のエッチング液は、Cu+/Cuが増加すると、銅,銅合金,ニッケル,ニッケル合金,鉄ニッケル合金,鉄クロム合金,鉄ニッケルクロム合金などの金属の溶解速度が減少する。
【0025】
この時、全銅イオン濃度および塩酸濃度にもよるが、各金属で溶解速度の減少率が異なる。即ち、上記の合金から選ばれた2種の金属の溶解速度比、即ち、第1の金属の溶解速度を第2の金属の溶解速度で除算した比率(以下、V1/V2と云う)は、上記エッチング液のCu+/Cuに応じて、変化させることができる。
【0026】
また、Cu+/Cuが概ね0.1〜0.6の範囲では、V1/V2は約0.5〜2程度に変化させることができる。即ち、第1の金属の厚みは、第2の金属の厚みの約0.5〜2倍程度に設定することができるのである。
【0027】
また、V1/V2がほぼ1となるエッチング液を用いて複合材をエッチングすると、断面形状が図8に示すような段差が形成されず、第1の金属と第2の金属の界面近傍を、ほぼ平滑に仕上げることができる。なお、第1の金属と第2の金属との間に密着層が介在する場合は、該密着層の厚さは、できるだけ薄いことが望ましい。
【0028】
Cu+/Cuが0.6を超えると、V1/V2はさらに増加し、2倍を超える。特に、第2の金属が銅または銅合金の場合、本発明のエッチング液の1価銅イオンが飽和濃度までCu+/Cuが増加すると、第2の金属は殆ど溶解しなくなる。即ち、本発明のエッチング液は、第1の金属を溶解し、かつ、第2の金属の溶解速度が十分に遅いエッチング液であり、第2の金属上の第1の金属の剥離液としても利用することが可能である。
【0029】
転写法による回路基板の製法においては、バリアとなる金属が介在しなくても、回路となる銅または銅合金の過剰な侵食が無く、支持体となる第1の金属をエッチング除去することが可能である。従って、支持体には、ニッケルまたはニッケル合金の他に、42アロイ,パーマロイなどの鉄ニッケル合金、SUS430などの鉄クロム合金、SUS304,SUS316などの鉄ニッケルクロム合金を選定することが可能になる。
【0030】
本発明のエッチング液の全銅イオンおよび塩酸濃度については、第1の金属と第2の金属の種類によって設定すればよい。しかし、実用的な溶解速度を得るためには、全銅イオンが0.2〜3.0mol/L、塩酸が50〜400ml/Lの範囲が好ましい。
【0031】
1価銅イオンの飽和濃度は、全銅イオンや塩酸濃度および液温によって変化するため、一概に飽和濃度を示すことはできない。また、本発明のエッチング液の調製方法は、塩化銅(II)またはその水和物、塩化銅(I)および塩酸を水で溶解希釈する方法が望ましい。
【0032】
また、塩化銅(II)、または、その水和物と塩酸を水で溶解希釈後に、銅,鉄,ニッケルなどの金属、または、42アロイ,ステンレスなどの合金を溶解させて1価銅イオンを生成させてもよい。また、塩化銅の代わりに酸化銅または水酸化銅を用いることもできる。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明のエッチング液に対する金属の溶解速度は、次のような方法で求めた。エッチング液を1Lビーカーに採り、ウォータバスで50℃に加温し、約50mm×50mmに裁断した厚さ25〜50μmの金属箔を一定時間エッチング液に浸漬する。浸漬前後の金属箔の重量変化率をW、金属箔の厚みをtμmとして、下式〔1〕によりエッチング量Tμmを求めた。
〔数1〕
T=W×t÷2 …〔1〕
浸漬時間1、2、3分に対して、各エッチング量を求め、横軸を浸漬時間、縦軸をエッチング量として作図し、一次近似線の傾きを溶解速度とした。エッチング後のスマットが付着する場合は、液温40℃のスマット除去液(50ml/L−塩酸)に2分間処理して除去した後、重量変化率を求めた。
【0034】
以下、実施例および比較例に用いたエッチング液は、塩化銅(II)・二水和物(ワコー純薬工業社製:特級試薬)、塩化銅(I)(ワコー純薬工業社製:特級試薬)、塩酸(ワコー純薬工業社製:特級試薬、35〜37%)を用いて調製した。1価銅イオンの濃度は、0.02mol/L−過マンガン酸カリウム溶液(ワコー純薬工業社製:容量分析用)による酸化還元滴定法で定量した。
【0035】
〔実施例 1〕
本実施例は、全銅イオン濃度および塩酸濃度を一定にして、Cu+/Cuを変化させたときの第1の金属および第2の金属の溶解速度を求めた。
【0036】
第1の金属としてSUS304箔(東洋精箔社製:SUS304BA)、第2の金属として電解銅箔(日本電解社製:GP−35)を選定し、全銅イオンが1.2mol/L、塩酸が250ml/Lのエッチング液について、Cu+/Cuが約0.1〜約0.5の範囲で、各金属の溶解速度を求めた。その結果を図1に示す。
【0037】
図1は、SUS304箔および電解銅箔のCu+/Cuと溶解速度の関係を示すグラフである。Cu+/Cuが約0.1〜約0.3の範囲では、第2の金属の溶解速度は第1の金属の溶解速度より早く、Cu+/Cuが約0.3でほぼ同じになった。そして、Cu+/Cuが更に増加すると、両者の溶解速度は逆転して、第2の金属より第1の金属の溶解速度が速くなった。
【0038】
〔実施例 2〕
本実施例は、実際にベースとなる第1の金属と、回路となる第2の金属とが絶縁樹脂を介して積層したものを、実施例1のエッチング液を用いて第1の金属および第2の金属を同時にエッチングして、メタルベース基板を作製した。
【0039】
本実施例では、第1の金属および第2の金属の厚みは、同じ(約25μm)である。以下、図2の回路基板の製造工程の模式断面図を用いて説明する。
【0040】
まず、厚さ25μmのSUS304箔(東洋精箔社製:SUS304BA)を所望の大きさに裁断し、60℃の脱脂剤(第一工業製薬社製:50ml/L−メタクリヤCL−5513)で2分間処理し、水洗後、60℃の粗面化液(250ml/L−塩酸、50ml/L−硝酸)で3分間処理して粗面化し、水洗,乾燥してベース1を用意した(図2(a))。
【0041】
次に、ベース1(SUS304)の片面に、下記組成のポリアミック酸樹脂溶液をスピンコータで塗工し、100℃の乾燥炉で15分間乾燥後、400℃の窒素ガス雰囲気の乾燥炉で1時間硬化して、厚さ約30μmのポリイミドからなる絶縁樹脂層2を形成した(図2(b))。
【0042】
ポリアミック酸樹脂組成
酸無水物:3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸 5重量部 ジアミン:p−フェニレンジアミン 5重量部
溶媒 :N−メチル−2−ピロリドン 28重量部
次に、絶縁樹脂層2の表面を70℃のデスミア剤(メルテックス社製:MLB−497)で5分間処理して粗面化し、水洗後60℃の中和剤(メルテックス社製:MLB−790)で5分間処理し、水洗した。更に、25℃のめっき触媒(日立化成工業社製:HS−202B)で5分間処理し、水洗後、25℃の活性化液(日立化成工業社製:ADP−601)で5分間処理した後、水洗,乾燥してめっき触媒を付着させた。
【0043】
次いで、25℃の活性化液(100ml/L−硫酸)で30秒間処理し、水洗後、40℃の無電解銅めっき(日立化成工業社製:CUST−2000)に10分間浸漬し、水洗後、乾燥して約0.2μmの無電解銅めっき層を絶縁樹脂層2の表面に形成した。
【0044】
次に、25℃の活性化液(100ml/L−硫酸)に20秒間浸漬し、水洗後、無電解銅めっき層上に25℃の硫酸銅めっき液(日鉱メタルプレーティング社製:添加剤0.2ml/L−CC−1220)を用い、2.5A/dm2の電流密度で50分間銅めっきを行い、水洗後、100℃の乾燥炉で30分間乾燥して、厚さ約25μmの銅めっき層3を形成した(図2(c))。
【0045】
次いで、両面にドライフィルムレジスト(旭化成工業社製:SPG−152)を110℃でラミネートし、フィルムマスクを密着させ、超高圧水銀灯を用いて紫外線を120mJ/cm2照射し、30℃の現像液(10g/L−炭酸ナトリウム)を0.1MPaの圧力で20秒間スプレー処理した後、水洗,乾燥して、エッチングレジスト層4を形成した(図2(d))。
【0046】
次に、50℃の全銅イオンが1.2mol/L,塩酸が250ml/L,Cu+/Cuが0.31のエッチング液を、0.15MPaの圧力で45秒間スプレー処理した後、水洗し、40℃のレジスト剥離液(30g/L−水酸化ナトリウム)を0.1MPaの圧力で30秒間スプレー処理してドライフィルムレジストを剥離後、水洗,乾燥して厚さ約25μmの回路を有するメタルベース基板5を作製した(図2(e))。
【0047】
上記のメタルベース基板5を両面から観察したところ、回路およびベース共に過剰な細りやエッチング残り等の不良はなく、良好であった。
【0048】
〔実施例 3〕
本実施例は、第2の金属の厚みを硫酸銅めっき時間を30分に短縮して約15μmに変更し、かつ、エッチング液のCu+/Cuを0.43に変更した以外は、実施例2と同様の方法でメタルベース基板を作製した。従って、本実施例のメタルベース基板の金属の厚みは、第1の金属が約25μm、第2の金属が約15μmである。
【0049】
上記のメタルベース基板を両面から観察したところ、回路およびベース共に過剰な細りやエッチング残り等の不良はなく、良好であった。
【0050】
〔実施例 4〕
本実施例は、全銅イオンが1.5mol/L,塩酸が200ml/L,Cu+/Cuが0.34のエッチング液について、第1の金属として42アロイ箔(住友特殊金属社製:D−1)、第2の金属として電解銅箔(日本電解社製:GP−35)を選定し、各金属の溶解速度を求めた。その結果、42アロイ箔の溶解速度が0.37μm/分、銅合金箔の溶解速度が0.38μm/分で、両者はほぼ同等であった。
【0051】
〔実施例 5〕
本実施例は、実施例4で用いたエッチング液を用いて、コアに複合材を有するメタルコア基板を作製した。図3は本実施例の回路基板の作製工程を示す模式断面図である。
【0052】
まず、厚さ50μmの42アロイ箔(住友特殊金属社製:D−1)を所望の大きさに裁断して42アロイ材からなるメタルベース基板5を用意した(図3(a))。
【0053】
次に、60℃の脱脂剤(第一工業製薬社製:50ml/L−メタクリヤCL−5513)で2分間処理して水洗後、40℃の活性化液(330ml/L−塩酸)で1分間処理した。これを水洗後25℃の硫酸銅めっき液(日鉱メタルプレーティング社製:添加剤0.2ml/L−CC−1220)を用い、2.5A/dm2の電流密度で10分間銅めっきを行い、水洗後、100℃の乾燥炉で30分間乾燥して、厚さ約5μmの銅めっき層6を形成し、メタルベース基板1となる42アロイ材の片面に銅をクラッド化した複合材7を作製した(図3(b))。
【0054】
次いで、42アロイ材側の面に実施例2と同じ組成のポリアミック酸樹脂溶液をスピンコートし、乾燥炉で100℃,15分間乾燥後、400℃の窒素ガス雰囲気の乾燥炉中で1時間硬化し、厚さ約20μmのポリイミドの絶縁樹脂層8を形成した(図3(c))。
【0055】
次に、銅めっき層6側にドライフィルムレジスト(旭化成工業社製:SPG−152)を110℃でラミネートしてフィルムマスクを密着させ、超高圧水銀灯の紫外線を120mJ/cm2照射し、30℃の現像液(10g/L−炭酸ナトリウム)を0.1MPaの圧力で20秒間スプレー処理後、水洗,乾燥してエッチングレジスト層9を形成した(図3(d))。
【0056】
次に、50℃の全銅イオンが1.5mol/L,塩酸が200ml/L,Cu+/Cuが0.34のエッチング液を、0.15MPaの圧力で90秒間スプレー処理した。これを水洗し、40℃のレジスト剥離液(30g/L−水酸化ナトリウム)を0.1MPaの圧力で30秒間スプレー処理してドライフィルムレジストを剥離し、水洗後,乾燥した(図3(e))。
【0057】
次いで、上記の複合材側の面に実施例2と同じポリアミック酸樹脂溶液をスピンコートし、乾燥炉中で100℃,15分間乾燥後、400℃の窒素ガス雰囲気の乾燥炉で1時間硬化して、厚さ約20μmのポリイミドからなる絶縁樹脂層10を形成した(図3(f))。
【0058】
更に、絶縁樹脂層10側の面に、レーザー孔穿け装置(ESI社製:MODEL5200)を用いて、周波数4kHz,出力700mW,50ショット/孔の条件で、直径約50μmのビアホール11および直径約90μmのスルーホール12を形成した(図3(g))。
【0059】
次に、70℃のデスミア剤(メルテックス社製:MLB−497)で5分間処理して粗面化し、水洗後60℃の中和剤(メルテックス社製:MLB−790)で5分間処理し、水洗した。更に、25℃のめっき触媒(日立化成工業社製:HS−202B)で5分間処理し、水洗後、25℃の活性化液(日立化成工業社製:ADP−601)で5分間処理した後、水洗,乾燥してめっき触媒を付着させた。
【0060】
次いで、25℃の活性化液(100ml/L−硫酸)で30秒間処理し、水洗後、40℃の無電解銅めっき(日立化成工業社製:CUST−2000)に10分間浸漬し、水洗,乾燥して厚さ約0.2μmの無電解銅めっきを両面に形成した。
【0061】
次に、25℃の25℃の活性化液(100ml/L−硫酸)に20秒間浸漬し、水洗後、25℃の硫酸銅めっき液(日鉱メタルプレーティング社製:添加剤0.2ml/L−CC−1220)を用い、2.5A/dm2の電流密度で50分間銅めっきを行った。これを水洗後、100℃の乾燥炉で30分間乾燥して、厚さ約25μmの銅めっき層13を形成した(図3(h))。
【0062】
次いで、両面にドライフィルムレジスト(旭化成工業社製:SPG−152)を110℃でラミネートしてフィルムマスクを密着させ、超高圧水銀灯の紫外線を120mJ/cm2照射し、30℃の現像液(10g/L−炭酸ナトリウム)を0.1MPaの圧力で20秒間スプレー処理した後、水洗した。
【0063】
更に50℃の塩化銅(II)エッチング液(2mol/L−塩化銅(II)・二水和物、100ml/L−塩酸)を0.15MPaの圧力で30秒間スプレー処理後、水洗し、40℃のレジスト剥離液(30g/L−水酸化ナトリウム)を0.1MPaの圧力で30秒間スプレー処理してドライフィルムレジストを剥離し、水洗,乾燥して回路を形成し、銅と42アロイからなる複合材をコアとするメタルコア基板14を作製した(図3(i))。
【0064】
作製したメタルコア基板14の断面を観察したところ、コアの銅と42アロイの界面近傍はほぼ平滑であり、良好な形状であった。
【0065】
〔実施例 6〕
本実施例は、実施例1と同様に、全銅イオン濃度および塩酸濃度を一定にし、Cu+/Cuを変化させた場合の第1の金属および第2の金属の溶解速度を求めた。
【0066】
全銅イオン濃度が2.36mol/L,塩酸が100ml/Lのエッチング液について、Cu+/Cuが約0.3〜約0.75の範囲であり、第1の金属としてSUS304箔(東洋精箔社製;SUS304BA)の溶解速度(V1)、および、第2の金属として電解銅箔(日本電解社製:GP−35)の溶解速度(V2)を求めた。図4はCu+/Cuと溶解速度比V1/V2の関係を示すグラフである。
【0067】
Cu+/Cuが0.6を超えるとV1/V2が3以上になり、さらにCu+/Cuが0.7を超えるとV1/V2が7以上になった。即ち、本発明のエッチング液は、第1の金属を溶解し、かつ、第2の金属の溶解速度が十分に遅いエッチング液として利用できることが分かった。
【0068】
〔実施例 7〕
本実施例は、全銅イオン濃度が1.5mol/L,塩酸が300ml/L,Cu+/Cuが1.06のエッチング液を用いて、36アロイ箔(住友特殊金属社製:I)および銅合金箔(ヤマハオーリンメタル社製:OLIN7025)の溶解速度を求めた。
【0069】
その結果、36アロイ箔の溶解速度が0.35μm/分、銅合金箔の溶解速度が0.06μm/分であり、36アロイ箔より銅合金箔の溶解速度が十分に遅いことが分かった。
【0070】
〔実施例 8〕
本実施例は、全銅イオン濃度が1.5mol/L,塩酸が300ml/L,Cu+/Cuが1.05のエッチング液を用いて、ニッケル箔(東洋精箔社製:Ni−H)および電解銅箔(日本電解社製:GP−35)の溶解速度を求めた。
【0071】
その結果、ニッケル箔の溶解速度が0.41μm/分、電解銅箔の溶解速度が0.05μm/分であり、ニッケル箔より電解銅箔の溶解速度が十分に遅いことが分かった。
【0072】
〔実施例 9〕
本実施例は、実施例6のエッチング液を用いて、転写法により回路基板を作製したもので、図5は、回路基板の製造工程を示す模式断面図である。
【0073】
まず、厚さ50μmのSUS304箔(新日本製鐵社製:SUS304BA)を所望な大きさに裁断し、60℃の脱脂剤(第一工業製薬社製:50ml/L−メタクリヤCL−5513)で2分間処理して水洗後、60℃の粗面化液(250ml/L−塩酸、50ml/L−硝酸)で3分間処理して粗面化し、水洗,乾燥して支持体15を用意した(図5(a))。
【0074】
次に、支持体15の片面にドライフィルムレジスト(旭化成工業社製:SPG−152)を110℃でラミネートし、フィルムマスクを密着させ、超高圧水銀灯の紫外線を120mJ/cm2照射し、30℃の現像液(10g/L−炭酸ナトリウム)を0.1MPaの圧力で20秒間スプレー処理後、水洗した。
【0075】
更に、40℃の活性化液(330ml/L−塩酸)に1分間処理し、水洗後、25℃の硫酸銅めっき液(日鉱メタルプレーティング社製:添加剤0.2ml/L−CC−1220)を用い、2.5A/dm2の電流密度で20分間銅めっきを行った。
【0076】
次いで、水洗後、40℃のレジスト剥離液(30g/L−水酸化ナトリウム)を0.1MPaの圧力で30秒間スプレー処理してドライフィルムレジストを剥離後、水洗,乾燥して約10μm厚の第1の回路16を形成した(図5(b))。
【0077】
次いで、第1の回路16側の面に実施例2と同じ組成のポリアミック酸樹脂の溶液をスピンコートし、乾燥炉中で100℃,15分間乾燥後、400℃の窒素ガス雰囲気の乾燥炉中で1時間硬化して、厚さ約30μmのポリイミドからなる絶縁樹脂層17を形成した(図5(c))。
【0078】
次に、レーザー孔穿け装置(ESI社製:MODEL5200)を用いて、周波数4kHz,出力700mW,50ショット/孔の条件で直径約50μmのビアホール18を形成した(図5(d))。
【0079】
次に、70℃のデスミア剤(メルテックス社製:MLB−497)で5分間処理して粗面化し、水洗後60℃の中和剤(メルテックス社製:MLB−790)で5分間処理し、水洗した。更に、25℃のめっき触媒(日立化成工業社製:HS−202B)で5分間処理し、水洗後、25℃の活性化液(日立化成工業社製:ADP−601)で5分間処理した後、水洗,乾燥してめっき触媒を付着させた。
【0080】
次いで、25℃の活性化液(100ml/L−硫酸)で30秒間処理し、水洗後、40℃の無電解銅めっき(日立化成工業社製:CUST−2000)に10分間浸漬し、水洗,乾燥して厚さ約0.2μmの無電解銅めっき層を絶縁樹脂層の表面に形成した。
【0081】
次に、無電解銅めっき層上に、25℃の活性化液(100ml/L−硫酸)に20秒間浸漬し、水洗後、25℃の硫酸銅めっき液(日鉱メタルプレーティング社製:添加剤0.2ml/L−CC−1120)を用い、2A/dm2の電流密度で30分間銅めっきを行い、水洗後、乾燥炉中で100℃,30分間乾燥した。
【0082】
次に、銅めっき面にドライフィルムレジスト(旭化成工業社製:SPG−152)を110℃でラミネートして、フィルムマスクを密着させ、超高圧水銀灯で紫外線を120mJ/cm2照射し、30℃の現像液(10g/L−炭酸ナトリウム)を0.1MPaの圧力で20秒間スプレー処理後、水洗し50℃の塩化鉄(II)エッチング液(42ボーメ)を、0.1MPaの圧力で60秒間スプレー処理後、水洗した。
【0083】
更に、40℃のレジスト剥離液(30g/L−水酸化ナトリウム)を0.1MPaの圧力で30秒間スプレー処理してドライフィルムレジストを剥離して、水洗後、乾燥し厚さ約15μmの第2の回路19を形成した(図5(e))。
【0084】
次に、支持体面に50℃の全銅イオンが2.36mol/L,塩酸が100ml/L,Cu+/Cuが0.68のエッチング液を、0.1MPaの圧力で2分間処理して支持体15を剥離し、水洗,乾燥して転写法による回路基板20を作製した(図5(f))。
【0085】
上記の回路基板20の断面観察を行ったところ、第1の回路16が異常無く形成していることを確認した。
【0086】
〔比較例 1〕
本比較例は、全銅イオン濃度が1.5mol/L,塩酸濃度が300ml/Lであり、1価銅イオンを殆ど含まないエッチング液を用い、同様に溶解速度を求めた。
【0087】
全銅イオン濃度が1.5mol/L,塩酸が300ml/L,Cu+/Cuが0のエッチング液を用いて、42アロイ箔(住友特殊金属社製:D−1)および電解銅箔(日本電解社製:GP−35)の溶解速度を求めた。その結果、42アロイ箔の溶解速度が2.1μm/分、電解銅箔の溶解速度が1.45μm/分であった。従って、転写法において、バリア層なしに42アロイをエッチング除去することは困難である。
【0088】
〔比較例 2〕
本比較例は、実施例9における支持体15の剥離工程に、1価銅イオンを殆ど含まないエッチング液を用いた以外は、同様の方法で回路基板を作製した。
【0089】
まず、実施例9の支持体を用意する工程(図5(a))から第2の回路を形成する工程まで(図5(e))を同様に行った。
【0090】
次に、支持体面に50℃の全銅イオンが2.36mol/L,塩酸が100ml/L,Cu+/Cuが0のエッチング液を用いて、0.1MPaの圧力で45秒間処理して支持体を剥離し水洗,乾燥する転写法により回路基板を作製した。
【0091】
上記の回路基板の断面を観察したところ、第1の回路はエッチング液より侵食され、一部、回路が欠落していた。従って、転写法において、バリア層なしにSUS304をエッチング除去することは困難であることが分かる。
【0092】
【発明の効果】
本発明のエッチング液を用いれば、2種の金属の溶解速度を任意に設定できる。また、本発明のエッチング液を用いて回路基板を作製すれば、2種の金属を同時にエッチングすることが可能である。
【0093】
また、転写法においては、バリア層なしに支持体をエッチング剥離することが可能で、回路基板を低コストで提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のSUS304箔および電解銅箔のCu+/Cuと溶解速度の関係を示すグラフである。
【図2】実施例2の回路基板の作製工程を示す模式断面図である。
【図3】実施例5の回路基板の作製工程を示す模式断面図である。
【図4】実施例6のSUS304箔および電解銅箔のCu+/Cuと溶解速度比(V1/V2)の関係を示すグラフである。
【図5】実施例10の回路基板の製造工程を示す模式断面図である。
【図6】従来技術によるメタルベース基板の製造工程を示す模式断面図である。
【図7】従来の技術によるクラッド化した金属より芯材の溶解速度が速い場合の断面形状を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1…ベース、2,10,22…絶縁樹脂層、3,6,13…銅めっき層、4,9…エッチングレジスト層、5,27…メタルベース基板、7…複合材、11,18,24…ビアホール、12…スルーホール、8,10,17,30…絶縁樹脂層、14…メタルコア基板、15…支持体、16…第1の回路、19…第2の回路、20…回路基板、21…金属箔、23…導電層、25…回路、26…支持板、28…クラッド化した金属、29…芯材。
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