JP2003171286A - 抗ストレス剤 - Google Patents

抗ストレス剤

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JP2003171286A JP2002054831A JP2002054831A JP2003171286A JP 2003171286 A JP2003171286 A JP 2003171286A JP 2002054831 A JP2002054831 A JP 2002054831A JP 2002054831 A JP2002054831 A JP 2002054831A JP 2003171286 A JP2003171286 A JP 2003171286A
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Abstract

(57)【要約】 【課 題】 本発明は、ストレスを有効に予防・軽減
でき、さらに安全でかつ服用や摂取が容易な抗ストレス
剤、および該抗ストレス剤として有用な物質または組成
物を提供することを目的とする。 【解決手段】 酒類の香気成分の濃縮物、および酒類の
香気成分を有効成分として含むことを特徴とする抗スト
レス剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酒類の香気成分の
濃縮物、およびそれを用いた抗ストレス剤に関する。ま
た、本発明は、酒類の香気成分を含み、ストレスによっ
て生じる精神的または身体的疾患を予防または軽減する
医薬品または機能性食品に関する。
【0002】
【従来の技術】高度でしかも複雑に入り組み、24時間
休むことなく活動する現代社会では、人は様々なタイプ
の物理・化学的、心理的、社会的ストレスに曝されてい
る。特に、複雑な人間関係の中で生きている現代人にと
って、ストレスを構成するものとして心理的な要因が大
きい。心理的ストレスとそれが引き起こす様々な症状に
ついては、種々の研究が行われている。例えば、心理的
ストレスが大脳で感知されると、広範な脳部位でノルア
ドレナリンの放出が亢進し、それが引き金となって不安
や緊張といった精神症状を引き起こすと報告されている
(田中正敏:代謝、vol.26, p122-131,1989)。ストレス
が長時間持続すると、全身の諸臓器に影響を及ぼし、そ
の結果重篤な心身症、うつ病、胃潰瘍、高血圧症などを
引き起こすこともある。
【0003】現在、ストレスの軽減、またはストレスに
起因する疾患の予防もしくは治療の目的に使用されてい
る薬は、主にベンゾジアゼピン系の抗不安薬と睡眠薬で
ある。脳内GABA神経系はベンゾジアゼピン系の抗不
安薬と睡眠薬などの作用点と考えられている。GABA
神経系に存在するGABAa受容体は、Clチャンネル
を中心としてベンゾジアゼピン受容体およびバルビター
ル結合部位と複合体を形成している。ベンゾジアゼピン
受容体およびバルビタール結合部位が刺激を受けると、
GABAa受容体のGABAに対する親和性が上昇する
ことが報告されている(D.G Nicholls, Amino Acids as
Neurotransmitter, in "Proteins, Tensmitters and
Synapses." Blackwell Scientific Publication, Oxfor
d, pp. 155-185(1994))。
【0004】また、脳内GABA神経系を賦活するとス
トレス緩和作用が発現することも報告されている。ラッ
トを寒冷拘束ストレス(4℃,2時間)に暴露すると胃
潰瘍が発生する。この胃潰瘍の発生は、GABA (5,
10,20,50μg)およびGABAa受容体の作動
薬(agonist)のムシモール(Muscimol)(5,10μ
g)の脳室内投与により用量依存的に抑制されること、
GABA受容体の拮抗薬(antagonist)のビククリン
(bicuculine)(40μg)はGABAによるストレス
潰瘍の抑制を消失させることが報告されている (Br. J.
Pharmacol. 84:619-623 (1985))。また、GABAa受
容体の作動薬(agonist)のムシモール(Muscimol)や
脳内GABA濃度を上昇させるアミノオキシ酢酸(amin
ooxy-aceticacid)(GABA deaminase阻害薬)によりラッ
トにおけるストレスによる運動量の増加や胃潰瘍の発生
が抑制されることも報告されている (Psychopharmacolo
gy 89:472-476 (1986))。このように脳内GABA神経
系は、ストレスの緩和に重要な役割をはたしている。
【0005】ベンゾジアゼピン系の抗不安薬と睡眠薬は
比較的安全性の高い薬であるが、習慣性や副作用を併せ
持つことから、日常生活における一時的なストレスに対
して、頻繁に服用するのは好ましくない。また、服用後
その使用を中断するとリバウンドが起こり、かえって症
状が悪化する場合さえあり、理想的な抗ストレス剤とは
言い難い。
【0006】このように、現代社会におけるストレス負
荷の増大とストレスの与える精神衛生上のみならず、生
体に及ぼす深刻な影響を考慮すると、真に有効で安全な
抗ストレス剤の開発が望まれている。特に予防的見地か
らは、食品や嗜好品に活用できる抗ストレス剤の開発が
望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ストレスを
有効に予防または軽減でき、さらに安全でかつ服用や摂
取が容易な抗ストレス剤、および該抗ストレス剤として
有用な物質または組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、GABA受容体を活性化し、ストレス
に伴う諸症状を抑制または予防する抗ストレス剤を提供
することも目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、有効で安
全な抗ストレス剤を開発すべく、種々の化合物について
試行錯誤の検討を行っていたところ、酒類、好ましくは
果実酒、日本酒、焼酎またはウィスキー類の香気成分の
濃縮に成功し、さらに、得られた酒類の香気成分は、抗
ストレス作用を示すという思いがけない知見を得た。
【0009】より詳しくは、本発明者らは、GABA受
容体を発現させたアフリカツメガエルの卵母細胞のGA
BA応答に対する増強作用を指標に、抗ストレス作用を
有する物質のスクリーニングを行った。その結果、本発
明者らは、酒類の香気成分がGABA受容体のGABA
応答を増強する作用があることを見出した。特に、果実
酒、日本酒、焼酎またはウィスキー類の香気成分が強力
な上記作用を有することを見出した。さらに、本発明者
らは、マウスにGABA受容体拮抗薬であるペンチレン
テトラゾールを投与した時の痙攣に対する抑制効果を指
標に、in vivoでの薬理学的評価を行い、ウィスキーの
香気成分であるフェニルプロパン酸エチルエステル(Et
hyl phenylpropanoate)が、ペンチレンテトラゾールに
よって誘起される痙攣を著しく抑制することを見出し
た。上述したように、脳内GABA神経系はストレスの
緩和に重要な役割をはたしていることから、酒類の香気
成分、好ましくは果実酒、日本酒、焼酎またはウィスキ
ー類の香気成分、とくにフェニルプロパン酸エチルエス
テルは、脳内GABA神経系の活性化を通じてストレス
を緩和する作用を有する。
【0010】そのうえ、酒類の香気成分を含む抗ストレ
ス剤は、酒が長年の間、人々に愛飲されていることか
ら、安全性上の問題はない。また、酒類の香気成分の濃
縮物を医薬品または機能性食品とした場合は、服用また
は摂取が容易であり、また、酒が飲めない人も服用また
は摂取できるという利点もある。
【0011】すなわち、本発明は、(1) 酒類の香気
成分を有効成分として含むことを特徴とする抗ストレス
剤、(2) 酒類が、果実酒、日本酒、焼酎またはウィ
スキー類であることを特徴とする前記(1)に記載の抗
ストレス剤、(3) 酒類が、ウィスキーであることを
特徴とする前記(1)に記載の抗ストレス剤、(4)
香気成分が、ダマセノン、1,1−ジエトキシプロパ
ン、1,1−ジエトキシ−2−メチルプロパン、1,1
−ジエトキシ−3−メチルブタン、1,1−ジエトキシ
ヘプタン、ケルカスラクトンbおよびフェニルプロパン
酸エチルエステルからなる群から選択される1種以上の
成分であることを特徴とする前記(1)〜(3)に記載
の抗ストレス剤、(5) 香気成分が、フェニルプロパ
ン酸エチルエステルであることを特徴とする前記(1)
〜(3)に記載の抗ストレス剤、(6) 香気成分が、
製剤中に1重量%以上含まれていることを特徴とする前
記(1)〜(5)に記載の抗ストレス剤、に関する。
【0012】また、本発明は、(7) 医薬品であるこ
とを特徴とする前記(1)〜(6)に記載の抗ストレス
剤、(8) 機能性食品であることを特徴とする前記
(1)〜(6)に記載の抗ストレス剤、(9) GAB
A受容体活性剤であることを特徴とする前記(1)〜
(8)に記載の抗ストレス剤、(10) 酒類の香気成
分含有濃縮物、(11) 酒類の香気成分を1重量%以
上含有することを特徴とする前記(10)に記載の濃縮
物、(12) 酒類が、果実酒、日本酒、焼酎またはウ
ィスキー類であることを特徴とする前記(10)または
(11)に記載の濃縮物、に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明に係る酒類の香気成分の濃
縮物は、以下のようにして得ることができる。酒類の香
気成分は、酒類の揮発性成分の中性部・中高沸点部に含
まれている。そこで、本発明において酒類の香気成分の
濃縮には、酒類の揮発性成分の中性部・中高沸点部を抽
出できる方法ならどの方法でも用いることができる。具
体的には、以下のような方法で酒類の香気成分を濃縮す
ることができる。原料となる酒類を水で希釈する。この
とき、約1.1〜5倍程度、より好ましくは約2倍程度
に希釈するのが好ましい。ついで、希釈された溶液に対
し有機溶媒を用いた抽出を行う。溶媒抽出の際に用いる
有機溶媒は、当業者が公知溶媒の中から適宜選択するこ
とができる。なかでも、前記有機溶媒としては、炭素数
1〜8の低級炭化水素、好ましくは炭素数1〜8の低級
アルカン、より好ましくはペンタンを用いることが好適
である。また、前記有機溶媒としては、エーテルまたは
エーテルと炭素数1〜8の低級炭化水素の混合溶媒を用
いることも好適である。より好ましくは、エーテルとペ
ンタンの混合溶液、さらに好ましくは前記成分の混合比
(容量比)が2:1の混合溶液を用いることが好適であ
る。ついで、有機溶媒を飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄
する。そのとき、中性部は有機溶媒層に分画される。有
機溶媒層のみを取り出し、脱水剤、好ましくは無水硫酸
ナトリウムで脱水する。その後、溶媒を除去する。溶媒
の除去は、当業者が公知方法の中から適宜選択すること
ができる。具体的には、減圧下で留去する方法、シュナ
イダーカラムを用いたKD濃縮器で常圧濃縮し、さらに
減圧下で除去する方法を用いることが好ましい。つい
で、さらに残渣を減圧下、好ましくは約100mmHg
程度の圧力下で蒸留し、イソアミルアルコール等のフー
ゼルアルコールを除去する。かかる一連の処理により、
酒類の香気画分を得ることができる。このようにして得
られる濃縮物には、酒類の香気成分が約1重量%以上含
有されていることが好ましい。
【0014】本発明において用いる酒類としては、香気
成分を含むアルコール飲料であれば特に限定されない。
具体的に、酒類としては、醸造酒、蒸留酒または混成酒
などが挙げられる。醸造酒は、通常、糖質を酵母の働き
によりアルコール発酵させて製造される酒類をいう。醸
造酒としては、ビール、エール、日本酒(清酒とも言
う)、老酒、 シードルもしくはワインなどの果実酒、ミ
ードなどが挙げられる。また、蒸留酒としては、通常、
上記醸造酒を蒸留させた酒類をいう。蒸留酒としては、
穀類を原材料とする蒸留酒と、糖類を原材料とする蒸留
酒とに大別される。穀類を原材料とする蒸留酒として
は、例えば、ウィスキー、ジン、ウォッカまたは焼酎な
どが挙げられる。糖類を原材料とする蒸留酒としては、
例えばブランデー、コニャック、アルマニャック、カル
ヴァドス、ボワール、カスマール、キルッシュワッサ
ー、ミラベル、フランボワーズまたはラムなどが挙げら
れる。また、混成酒は、上記蒸留酒に香料、草根、糖質
などを加えたものをいう。混成酒としては、例えばカン
パリ、コアントロ、グランマニエ、カシス、フランボア
ーズ、アイリッシュ・クリームなどが挙げられる。
【0015】本発明に係る香気成分の濃縮物の原料とし
ては、上記酒類のうち、果実酒、日本酒、焼酎、ウィス
キー類を用いるのがより好ましい。前記果実酒として
は、ワインが好ましい。前記ワインは、赤ワインであっ
ても、白ワインであってもよい。また、前記焼酎として
は、酒税法第2条に言う甲種焼酎であってもよいし、乙
種焼酎であってもよい。なかでも、前記原料としてはウ
ィスキー類がより好ましい。ウィスキー類としては、ウ
ィスキーとブランデーが含まれる。より具体的には、ウ
ィスキーとしては、発芽させた穀類・水を原料として糖
化させて発酵させたアルコール含有物を蒸留し、熟成さ
せたものが挙げられる。ブランデーとしては、果実・水
を原料として発酵させたアルコール含有物を蒸留し、熟
成させたものが挙げられる。
【0016】本発明に係る香気成分の濃縮物の原料とし
ては、製造後、例えば樽などの中で熟成または保存され
た酒類、特に蒸留酒を用いるのも好ましい。前記酒類、
特に蒸留酒を熟成または保存させる容器の材質は、木材
であることが好ましい。また、熟成または保存の期間は
特に限定されないが、約1週間〜30年程度であること
が好適である。
【0017】本発明において、前記原料としてはウィス
キーを用いるのがさらに好ましい。ウィスキーには、ウ
ィスキー原酒または熟成ウィスキー原酒も含まれる。ま
た、ウィスキーを熟成させるための樽の材質は、特に限
定されないが、オーク材を用いるのが好ましい。より具
体的には、前記樽は、(a)アメリカンオークで作られ
た樽でバーボンウィスキーの熟成に使われた古樽である
バーボン樽や、(b)スパニッシュホワイトオークで作
られた樽でシェリー酒を熟成させた古樽であるシェリー
樽や、(c)前記バーボン樽やシェリー樽を一度スコッ
チ・ウィスキーの熟成に使った古樽、いわば再々使用し
た樽であるプレーンオーク(リフィルカスク)など、い
かなる樽であってよい。また、熟成期間も特に限定され
ないが、約1年〜30年程度であることが好ましい。
【0018】本発明は、酒類の香気成分を含む抗ストレ
ス剤を提供する。前記酒類としては、果実酒、日本酒、
焼酎、ウィスキー類を用いるのが好ましい。また、前記
酒類としては、貯蔵された酒類、特に蒸留酒を用いるの
もまた好ましい。さらに、前記酒類としては、ウィスキ
ー類を用いるのがより好ましく、ウィスキーを用いるの
が特に好ましい。本発明に係る抗ストレス剤には、酒類
に含まれる複数の香気成分が混合している状態で含まれ
ていてよい。例えば、上述のようにして得られる酒類の
香気成分の濃縮物を、そのまま本発明に係る抗ストレス
剤に含有させてもよい。また、上述のようにして得られ
る酒類の香気成分の濃縮物を精製して、その精製物を本
発明に係る抗ストレス剤に含有させてもよい。前記濃縮
物の精製には、例えばカラムクロマトグラフィーによる
精製などの公知の方法を用いてよい。また、本発明にお
いては、酒類の香気成分として、既に精製されている市
販品を用いてよい。さらに、当該香気成分中の化合物を
化学合成して用いてもよい。
【0019】上記酒類の香気成分としては、特に限定さ
れず、公知の成分であってよい。具体的に、前記香気成
分としては、ダマセノン、1,1−ジエトキシプロパ
ン、1,1−ジエトキシ−2−メチルプロパン、1,1
−ジエトキシ−3−メチルブタン、1,1−ジエトキシ
ヘプタン、ケルカスラクトンbまたはフェニルプロパン
酸エチルエステルなどが好適な例として挙げられる。
【0020】本発明に係る抗ストレス剤に含まれる酒類
の香気成分が遊離の酸または塩基である場合、該香気成
分は薬学的に許容されうる塩の形で含有されていてもよ
い。前記薬学的に許容されうる塩としては、薬学的に許
容される酸(例えば、無機酸または有機酸)や塩基(例
えば、無機塩基または有機塩基)などとの塩が挙げられ
る。より具体的には、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭
化水素酸等の無機酸;シュウ酸、マレイン酸、フマル
酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸等の有機
酸;ナトリウムもしくはカリウム等のアルカリ金属、マ
グネシウムもしくはカルシウム等のアルカリ土類金属な
どの無機塩基;例えば、トリエチルアミン等の有機アミ
ン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸類などの有機塩基
との塩を挙げることができる。例えば、本発明の抗スト
レス剤の有効成分がフェニルプロパン酸エチルエステル
の場合は、例えば塩酸塩の形で、本発明に係る製剤中に
含有されていてもよい。本発明に係る抗ストレス剤に
は、上述の酒類の香気成分を、製剤中に約1重量%以上
含んでいることが好ましい。
【0021】本発明に係る抗ストレス剤とは、ストレス
を緩和または鎮静し、生体の恒常性を維持させる抗スト
レス作用を有する物質、または該物質を含む組成物をい
う。言い換えれば、本発明における抗ストレス剤とは、
ストレスに対し生体が防御または適応しようとする反応
を引き起こす物質、または該物質を含む組成物をいう。
ここで、ストレスとは、通常ストレスの原因となる刺激
(ストレッサー)が生体に加わった際に、精神や身体に
生ずるひずみをいう。ストレッサーとしては、寒冷、気
象変化、放射線、騒音などの物理的刺激;薬物、ビタミ
ン不足、酸素欠乏などの化学的刺激;細菌感染など生物
的刺激;痛みとか発熱などの疾病、障害からくる身体的
な刺激;社会や家庭における人間関係から生ずる緊張、
不安、恐怖などの精神的刺激などが挙げられる。従っ
て、本発明に係る抗ストレス剤は、ストレスを予防し、
またはストレスからの回復を促進させること等に有用で
あり、ストレスに起因する医学的症状を予防または改善
もしくは治癒することができる。
【0022】上記ストレスに起因する医学的症状として
は、(a)動脈硬化症、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗
塞)、本態性高血圧、心臓神経症、不整脈などの循環器
系疾患や、(b)気管支喘息、過呼吸症候群、神経性咳
嗽などの呼吸器系疾患や、(c)消化性潰瘍、潰瘍性大
腸炎、過敏性腸症候群、神経性食欲不振症、神経性嘔吐
症、腹部膨満症、空気嚥下などの消化器系疾患や、
(d)肥満症、糖尿病、心因性多飲症、バセドウ病など
の内分泌代謝系疾患や、(e)偏頭痛、筋緊張性頭痛、
自律神経失調症などの神経系疾患や、(f)夜尿症、イ
ンポテンツ、過敏性膀胱などの泌尿器系疾患や、(g)
慢性関節リウマチ、全身性筋痛症、脊椎過敏症などの骨
筋肉系疾患などが挙げられる。
【0023】また、さらに前記ストレスに起因する医学
的症状としては、(h)神経性皮膚炎、円形脱毛症、多
汗症、湿疹などの皮膚系疾患や、(i)メニエール症候
群、咽喉頭部異物感症、難聴、耳鳴り、乗物酔い、失声
吃音などの耳鼻咽喉科領域の疾患や、(j)原発性緑内
症、眼精疲労、眼瞼けいれん、眼ヒステリーなどの眼科
領域の疾患や、(k)月経困難症、無月経、月経異常、
機能性子宮出血、更年期障害、不感症、不妊症などの産
婦人科領域の疾患や、(l)起立性調節障害、再発性臍
疝痛、心因性の発熱、夜驚症などの小児科領域の疾患
や、(m)腸管癒着症、ダンピング症候群、頻回手術症
(ポリサージャリー)、形成手術後神経症などの手術前
後の状態や、(n)特発生舌痛症、ある種の口内炎、口
臭症、唾液分泌異常、咬筋チェック、義歯神経症などの
口腔領域の疾患や、(o)神経症、(p)うつ病なども
挙げることができる。
【0024】本発明に係るストレス剤は、医薬品または
機能性食品として用いることができる。本発明の抗スト
レス剤を医薬品として用いる場合、かかる医薬品は経口
投与または非経口投与が都合よく行われるものであれば
どのような剤形のものであってもよい。本発明に係る医
薬品の剤形としては、例えば注射液、輸液、散剤、顆粒
剤、錠剤、カプセル剤、腸溶剤、トローチ、内用液剤、
懸濁剤、乳剤、シロップ剤、外用液剤、湿布剤、点鼻
剤、点耳剤、点眼剤、吸入剤、軟膏剤、ローション剤、
坐剤等が挙げられる。また、本発明においては、症状に
応じて、上記剤形の本発明に係る医薬品をそれぞれ単独
で、または組合わせて使用することができる。
【0025】本発明に係る医薬品においては、目的に応
じて主薬に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、
安定化剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用し
うる既知の添加剤を添加することができる。より具体的
には、本発明に係る医薬品がカプセル剤、錠剤、散剤ま
たは顆粒剤などの固形製剤の場合には、例えば、乳糖、
ブドウ糖、ショ糖、マンニットなどの賦形剤;澱粉、ア
ルギン酸ソーダなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウ
ム、タルクなどの滑沢剤;ポリビニールアルコール、ヒ
ドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤;
脂肪酸エステルなどの界面活性剤;グリセリンなどの可
塑剤などの添加剤を製剤中に含有させることができる。
また、本発明にかかる医薬品が液体製剤の場合には、例
えば、水、ショ糖、ソルビット、果糖などの糖類;ポリ
エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリ
コール類;ごま油、オリーブ油、大豆油などの油類;p
−ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤などの添
加剤を製剤中に含有させることができる。また、液体製
剤の場合、本発明に係る医薬品は有効成分である香気成
分を用時溶解させる形態の製剤であってもよい。上述し
たような本発明に係る医薬品は、それ自体製剤学の分野
で周知または慣用の方法に従って容易に製造することが
できる。
【0026】本発明に係る医薬品の投与経路は、特に限
定されず、経口投与または非経口投与のいずれでもよ
い。中でも、本発明に係る医薬品は経口投与が可能であ
ることが、服用の容易性の観点から好ましい。また、本
発明に係る医薬品の投与量は、投与経路、剤形、患者の
症状の重篤度、年齢もしくは体重などによって異なるの
で、一概には言えない。具体的には、成人に対する1回
の投与量が、本発明の上記香気成分の総量として約5〜
500mg程度、好ましくは約5〜50mg程度であ
る。
【0027】本発明の抗ストレス剤を機能性食品として
用いる場合には、形態としては前述の医薬製剤の形態と
同様でよい。また、前記食品は、自然流動食、半消化態
栄養食もしくは成分栄養食、またはドリンク剤等の加工
形態とすることもできる。さらに、本発明に係る機能性
食品は、アルコール飲料やミネラルウォーターに用時添
加する易溶性製剤としてもよい。より具体的には、本発
明に係る機能性食品としては、例えばビスケット、クッ
キー、ケーキ、キャンデー、チョコレート、チューイン
ガム、和菓子などの菓子類;パン、麺類、ごはん、豆腐
もしくはその加工品、;清酒、薬用酒などの発酵食品;
みりん、食酢、醤油、味噌、ドレッシングなどの調味
料;ヨーグルト、ハム、ベーコン、ソーセージ、マヨネ
ーズなどの畜農食品;かまぼこ、揚げ天、はんぺんなど
の水産食品;果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、アル
コール飲料、茶などの飲料等の形態が挙げられる。
【0028】また、本発明に係る機能性食品は、例え
ば、医師の食事箋に基づく栄養士の管理の下に、病院給
食の調理の際に任意の食品に本発明の香気成分を加え、
その場で調製した機能性食品の形態で患者に与えること
もできる。本発明の香気成分は、液状であっても、粉末
や顆粒などの固形状であってもよい。
【0029】本発明に係る機能性食品は、食品分野で慣
用の補助成分を含んでいてもよい。前記補助成分として
は、たとえば乳糖、ショ糖、液糖、蜂蜜、ステアリン酸
マグネシウム、オキシプロピルセルロース、各種ビタミ
ン類、微量元素、クエン酸、リンゴ酸、香料、無機塩な
どが挙げられる。
【0030】本発明に係る機能性食品は、ストレス負荷
が予想される時、または例えば肉体労働時、精神作業時
もしくはスポーツをしている時などストレス負荷時に摂
取してもよい。また、ストレスの予防または軽減を計る
ため常用してもよい。本発明に係る機能性食品の摂取量
は、摂取する人のストレスの状態、年齢、性別などによ
って異なるので、一概には言えない。具体的には、成人
に対する1回の摂取量が、本発明の香気成分の総量とし
て約5〜500mg程度、好ましい約5〜50mg程度
であることが好適である。
【0031】本発明に係る医薬品または機能性食品は、
他の抗ストレス剤、ビタミン剤もしくはホルモン剤その
他の栄養剤、または微量元素もしくは鉄化合物と併用す
ることができる。例えば、本発明に係る機能性食品がド
リンク剤の場合、所望により、他の生理活性成分、ミネ
ラル、ホルモン、栄養成分、香味剤等を混合することに
より、嗜好飲料的性格を持たせることができ、好適であ
る。
【0032】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的
に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0033】[実施例1] ウィスキー香気成分の抽出 市販のウィスキー(サントリー株式会社製 商品名
「響」)750mlを水で2倍希釈し、同量のペンタンで3
回抽出した。ペンタンを硫酸ナトリウムで脱水した後、
50℃で蒸留し、溶媒を留去し、88mgの香気画分を得
た。
【0034】[実施例2] ウィスキー香気成分のin vit
roでのGABA受容体活性化作用 実験材料には、アフリカツメガエルの卵母細胞を用い
た。卵母細胞の核にラット由来のGABA受容体mRNAを注入
して、卵表面にGABA受容体を発現させた。卵母細胞は、
通常のカエルのリンゲル液(115mM NaCl, 1 mM KCl, 1.8
mM CaCl2, 5 mM Tris, pH 7.2)中で保持した。GABA(10
μM)による抑制性電位の発生は、voltageclamping amp
lifier(CEZ-1100;日本光電工業製)を用いたvoltage cla
mp法で測定した。
【0035】サンプルには、上述のようにして得られた
ウィスキー香気成分と、以下の7種類のウィスキー香気
成分を用い、添加濃度は2μl/mlとした。使用したサン
プルは、以下の通りである。ダマセノン(damascenon
e)(図1中、Dascで示す。)、1,1−ジエトキ
シプロパン(1,1-diethoxypropane)(図1中、1,1
−DTPで示す。)、1,1−ジエトキシ−2−メチル
プロパン(1,1-diethoxy-2-methylpropane)(図1中、
1,1−DMPで示す。)、1,1−ジエトキシ−3−
メチルブタン(1,1-diethoxy-3-methyl butane)(図1
中、1,1−DMBで示す。)、 1,1−ジエトキシ
ヘプタン(1,1-diethoxyheptane)(図1中、1,1−
DEHで示す。)、 ケルカスラクトンb(Quelcuslact
one b)(図1中、Lactone bで示す。)、 フェニルプ
ロパン酸エチルエステル(Ethyl phenylpropanoate)
(図1中、EPPで示す。)。上記サンプルとしては、
市販品を用いた。すなわち、Quelcuslactone bは長谷川
香料株式会社製のものを、他の化合物は高砂香料株式会
社製のものを用いた。
【0036】結果を図1に示す。指標には、サンプルの
GABAによる抑制性電位に対する増強作用を用いた。ま
た、図1に示した結果は、GABA(10μM)単独添加の場合
に発生する抑制性電位に対して、GABAとサンプルを併用
した時の抑制性電位が何%であるかで表わした。図1か
ら明らかなように、評価したサンプル全てがGABA受容体
のGABA応答を増強し、特にフェニルプロパン酸エチルエ
ステルと1,1−ジエトキシヘプタンに前記応答を強く
増強する作用があることがわかった。
【0037】実施例2において、ポジティブコントロー
ルとして、ヘキサノールを用いた。ヘキサノールはフィ
トンチッドの成分としてGABA受容体活性化作用があり
(Biosci. Biotechnol.Biochem., 63, 743-748, 199
9)、ストレス緩和作用がある(平成10年度〜平成11年度
科学研究補助金 基盤研究(C) (2)研究成果報告書
研究課題番号 10670070)ことも知られている。
【0038】[実施例3] 用量依存性の検討 実施例2で強い活性が認められたフェニルプロパン酸エ
チルエステルと1,1−ジエトキシヘプタンの用量依存
性について検討した。試験方法は、実施例2と全く同様
である。GABA濃度は0.25μM、サンプル濃度は0.05〜0.2
μl/mlとした。その結果を図2に示す。図2から明らか
なように、フェニルプロパン酸エチルエステルは最大5
60%、1,1−ジエトキシヘプタンは最大250%、
GABA受容体のGABA応答を増強した。なお、図2に示した
結果は、GABA(10μM)単独添加の場合した場合に発生す
る抑制性電位に対して、GABAとサンプルを併用した時の
抑制性電位が何%であるかで表わした。
【0039】[実施例4] ペンチレンテトラゾールに
よる痙攣に対する抑制作用 実施例3においてGABA受容体活性化作用の強かったフェ
ニルプロパン酸エチルエステルについて、in vivoの評
価を行った。試験動物として ddy系雄性マウス(8週齢)
を清水実験材料株式会社より購入し、1週間の予備飼育
の後、実験に用いた。飼育条件が、室温23±2℃、湿度5
5±5%、換気回数12〜15回/時間(オールフレッシュ方
式)、照明時間(12時間/日、午前7時点灯、午後7時
消灯)に設定された飼育室でポリイソペンテンケージ
(日本クレア株式会社製)に飼育した。飼料は固形飼料
CE-2(日本クレア株式会社製)を用い、飲料水は自由に
摂取させた。
【0040】5匹のマウスを、フェニルプロパン酸エチ
ルエステル1mlを染み込ませたおがくずを敷いたプラス
ティックケージに入れ、15分間サンプルを吸入させた。
次に、生理食塩水に溶解したペンチレンテトラゾールを
その投与量が80mg/kgとなるように腹腔内投与し、痙攣
発現時間を測定した。実験結果を図3に示す。図3に示
した実験結果は平均値±標準誤差で表示されており、有
意差検定にはStudentのt-検定を用いた。図3から明ら
かなように、フェニルプロパン酸エチルエステルは痙攣
発現時間を有意に延長させた。
【0041】[実施例5] 有効量の検討 試験動物としては ddy系雄性マウス(8週齢)を清水実験
材料株式会社より購入し、1週間の予備飼育の後、実験
に用いた。飼育条件が、室温23±2℃、湿度55±5 %、
換気回数12〜15回/時間(オールフレッシュ方式)照明
時間(12時間/日、午前7時点灯、午後7時消灯)に設
定された飼育室でポリイソペンテンケージ(日本クレア
株式会社製)に5匹ずつ飼育した。飼料は固形飼料CE-2
(日本クレア株式会社製)を用い、飲料水は自由に摂取
させた。マウスに対し、Tween80に懸濁したフェニルプ
ロパン酸エチルエステルを、投与量が2.5または5mg/kg
となるように経口投与した。なお、それぞれの群には5
匹ずつのマウスを用いた。30分後に生理食塩水に溶解し
たGABA拮抗薬であるペンテトラゾール(Pentetrazole)
をその投与量が80mg/kgとなるように腹腔内投与し、痙
攣発現時間を測定した。その結果を図4に示す。図4に
示した実験結果は平均値±標準誤差で表示されており、
有意差検定にはStudentのt-検定を用いた。図4から明
らかなように、フェニルプロパン酸エチルエステルは、
その投与量が5mg/kgのときにペンチレンテトラゾールに
よる痙攣の発現時間を有意に延長させた。
【0042】[実施例6] 醸造酒の香気成分のin vitro
でのGABA受容体活性化作用 市販の赤ワイン(シャトーグランジュ 1996)、白
ワイン(ファンケルベルグ<マドンナ>アイスヴァイン
1997)、日本酒(菊正宗 菊正宗酒造株式会社
製)、甲類焼酎(いいちこ 三和酒類株式会社製)、乙
種焼酎(霧島 霧島酒造株式会社製)のそれぞれ500
mLを水で2倍希釈し、同量のペンタンで3回抽出し
た。ペンタンを硫酸ナトリウムで脱水した後、50℃で
蒸留し、溶媒を留去し、香気画分を得た。上記のように
して得られた香気成分のin vitroでのGABA受容体活
性化作用を、実施例2と全く同様にして測定した。測定
に用いた香気成分は、最終濃度がもとの酒類の5分の1
量になるように添加した。その結果を、図5に示す。図
5から明らかなように、赤ワイン、白ワイン、日本酒お
よび焼酎の香気成分は、いずれもGABA受容体のGA
BA応答を増強した。
【0043】[実施例7] ウィスキー香気成分のスト
レス緩和作用 実施例1で抽出したウィスキー香気成分について、スト
レス緩和作用の評価を行った。試験動物としてLong-Eva
ns系雄性ラットを株式会社星野試験動物飼育所から購入
し、1週間の予備飼育の後、実験に用いた。飼育条件
が、室温23±2℃、湿度55±5%、換気回数12〜15回/時
間(オールフレッシュ方式)、照明時間(12時間/日)
に設定された飼育室でポリペンテンケージ(日本クレア
株式会社製)に飼育した。飼料は固形飼料CE-2(日本ク
レア株式会社)を用い、飲料水は自由に摂取させた。Lo
ng-Evans系雄性ラット(300-500g)8匹に対して、外頚動
脈にあらかじめシリコンチューブのカニューレを埋め込
み、4〜6日後より実験に供した。ストレスとしては四肢
を緊縛する方法を用いた。ウィスキー香気成分の提示に
は、香気成分を無臭のTriethyl Citrateに溶解したもの
をガス洗浄ビンを通してカニューレでケージに導いた。
ウィスキー香気成分の濃度は、元のウィスキー濃度(10
ppm)になるように調整した。ポジティブコントロール
としてみどりの香り(n-hexanol,n-hexanalの等量混合
物:0.3重量%)を使用した。実験はすべて午後1時30分
より行い、一度に4匹のラットを用いた。ストレスの
み、ウィスキー香気成分+ストレス、みどりの香り+ス
トレスを1週間間隔でこの順で同一ラットについて行
い、次に異なる4匹のラットについて、ウィスキー香気
成分+ストレス、みどりの香り+ストレス、ストレスの
みの順で1週間隔で行った。
【0044】香気成分の提示はストレス負荷30分前より
30分間行った。午後2時より20分間緊縛ストレスを負荷
した。ストレス負荷直前、ストレス負荷直後、ストレス
負荷40、70、100、160分後の7回において0.6〜0.8mlづ
つの採血を行い、ヘパリン加血液として血漿を遠心分離
して、-20℃で保存した。ストレスホルモンのACTHは、
三菱化学のACTH測定RIAキットで測定した。統計処理
は、Studentのt-testによって行った。図6および図7
に示すように緊縛ストレスによりストレスホルモンのAC
THは対照時の5倍程度増大するが、ウィスキー香気成分
やみどりの香りの提示によりその増加は顕著に抑制され
た。
【0045】[実施例8] ウィスキー香気成分のストレ
ス鎮静作用 実施例1で抽出したウィスキー香気成分について、スト
レス鎮静作用の評価を行った。20代の男性14名にあらか
じめ実験内容を説明したうえ協力を要請した。ストレス
鎮静作用の指標として、脳波の随伴性陰性変動(CNV)
を用いた。このCNVは脳が興奮した状態で大きくなり、
逆に脳が鎮静した状態では小さくなる。被験者に脳波測
定のため脳波電極(FPZ,FZ,CZ,PZおよび両耳)、ヘッド
ホーン(音刺激)、光刺激用ゴーグルを装着してもら
い、右手にはボタンスィッチ、左手には香気成分提示の
ためのガラスロートを持たせ、胸の上で鼻腔より20〜30
cmの位置に楽な姿勢になるようにして固定させ、脳波記
録用椅子に座らせた。脳波は日本光電製Neupack4mini(M
EB5304)で測定した。香気成分の提示には香気成分を無
臭のTriethyl Citrateにウィスキー香気成分を10ppmの
濃度で溶解したものを、ガス洗浄ビンを通してカニュー
レにてロートに導いた。また、ポジティブコントロール
としてみどりの香り(n-hexanol,n-hexanalの等量混合
物)およびα-ピネンを使用し、それぞれの香気成分を
無臭のTriethyl Citrateに0.3重量%の濃度で溶解した
ものを、前記と全く同様にして被験者に提示した。
【0046】統計処理には、Repeated One Way ANOVAと
Neuman-Keuls Multiple Comparisontestを用いた。実験
は各香気成分の提示の前に5〜10分間の対照の記録を行
い、続いて香りを提示しながら約10分間記録を行った。
被験者には、光が見えたらできるだけ早く手元のスイッ
チでその光を消すように指示した。光がつく2秒前に、
予告のブザーを鳴らした。この一連の操作の間の脳波の
変化を測定しCNVを求めた。図8に示すように、ウィス
キーの香気成分、みどりの香りおよびα-ピネンは、FZ
の初期CNVの面積を低下させた。
【0047】[実施例9] カプセル剤の製造 下記処方に従ってフェニルプロパン酸エチルエステルと
乳糖を混合し、打錠後粉砕したものに下記処方量のステ
アリン酸マグネシウムを混合した。得られた混合物を50
0mgづつ2号カプセルに充填して、1カプセル中に5mgの
フェニルプロパン酸エチルエステルを含有するカプセル
剤を製造した。 処方(1カプセルあたり) フェニルプロパン酸エチルエステル 5mg 乳糖 493mg ステアリン酸マグネシウム 2mg
【0048】[実施例10] ドリンク剤の製造 下記処方の成分を蒸留水8 Lに溶解し、さらに蒸留水を
加えて全量10 Lとした。ついで、0.22μmの除菌フィル
ターを通過させ、100 mlづつ褐色びんに無菌充填して、
1剤あたり5mgのフェニルプロパン酸エチルエステルを
含有するドリンク剤を製造した。 処方 フェニルプロパン酸エチルエステル 0.5g DL−酒石酸ナトリウム 0.1g コハク酸 9mg 液糖 800g クエン酸 12g ビタミンC 10g 香料 12ml 塩化カリウム 1g 硫酸マグネシウム 0.5g
【0049】
【発明の効果】本発明に係る抗ストレス剤は、GABA
受容体の活性化、特に脳内GABA神経系の活性化を介
して、ストレスを有効に予防・軽減することができる。
その結果、本発明の抗ストレス剤は、ストレスに伴う諸
症状を抑制または予防することができる。また、本発明
に係る抗ストレス剤は、酒類の香気成分を有効成分とし
て含有しているので、安全性に優れ、使用に際して特別
な制限がないという利点を有する。
【0050】さらに、本発明に係る抗ストレス剤は、酒
類の香気成分が濃縮されて含まれているので、服用また
は摂取しやすい。特に、本発明に係る抗ストレス剤をド
リンク剤などの機能性食品の形態にした場合は、ストレ
スを予防および/または軽減するために、日常的に用い
ることが可能である。より具体的には、例えばウィスキ
ーの香気成分の一つであるフェニルプロパン酸エチルエ
ステルは、ウィスキー中に約0.09ppm含まれてい
るが、抗ストレス作用の効果を十分に得るために有効な
量(約5mg程度)を摂取しようとすると、ウィスキー
を56Lも摂取する必要があり、非現実的である。さら
に、酒が飲めない人は、上記酒類の香気成分を摂取する
ことは困難である。しかし、酒類の香気成分の濃縮物を
医薬品または機能性食品の形態とした場合は、前記香気
成分の服用または摂取が容易であり、また、酒が飲めな
い人も前記香気成分を服用または摂取できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ウィスキーに含まれる各種の香気成分のin v
itroでのGABA受容体活性化作用を示すグラフであ
る。
【図2】 1,1−ジエトキシヘプタンとフェニルプロ
パン酸エチルエステルのGABA受容体活性化作用の用
量依存性を示すグラフである。なお、四角は、フェニル
プロパン酸エチルエステルの用量依存曲線を示し、ひし
形は1,1−ジエトキシヘプタンの用量依存曲線を示
す。
【図3】 フェニルプロパン酸エチルエステルをマウス
に吸入させた場合のペンチレンテトラゾールによる痙攣
発現時間に及ぼす影響を示すグラフである。なお、*は
コントロールに対してp<0.05で、有意差があるこ
とを示す。また、EPPはフェニルプロパン酸エチルエ
ステルを示し、CONTはコントロールを示す。
【図4】 フェニルプロパン酸エチルエステルをマウス
に経口投与した場合のペンチレンテトラゾールによる痙
攣発現時間に及ぼす影響を示すグラフである。なお、*
はコントロールに対してp<0.05で、有意差がある
ことを示す。また、EPP(2.5)はフェニルプロパ
ン酸エチルエステルを2.5mg/kg投与した場合を
示し、EPP(5)はフェニルプロパン酸エチルエステ
ルを5mg/kg投与した場合を示し、CONTはコン
トロールを示す。
【図5】 各種醸造酒の香気成分のin vitroでのGAB
A受容体活性化作用を示すグラフである。
【図6】 ストレスによる血中ACTH濃度の増加に対して
ウィスキー香気成分が及ぼす影響を示すグラフである。
すなわち、図中の塗りつぶしのひし形は、ウィスキー香
気成分をラットに提示した場合の血中ACTH濃度の変化を
示し、図中の塗りつぶしの四角は、ウィスキー香気成分
をラットに提示しなかった場合の血中ACTH濃度の変化を
示す。なお、図中の**は、ストレスのみの場合(ウィス
キー香気成分をラットに提示しなかった場合)に対する
ウィスキー香気成分を提示した場合の差が、p<0.01で有
意であることを示す。
【図7】 ストレスによる血中ACTH濃度の増加に対して
みどりの香りが及ぼす影響を示すグラフである。すなわ
ち、図中の塗りつぶしのひし形は、みどりの香りをラッ
トに提示した場合の血中ACTH濃度の変化を示し、図中の
塗りつぶしの四角は、みどりの香りをラットに提示しな
かった場合の血中ACTH濃度の変化を示す。なお、図中の
**は、ストレスのみの場合(みどりの香りをラットに提
示しなかった場合)に対するみどりの香りを提示した場
合の差が、p<0.01で有意であることを示す。
【図8】 ウィスキー、みどりの香りおよびα-ピネン
をヒトに提示した場合のCNVにおよぼす影響を示すグラ
フである。なお、図中の *、**は、Neuman-Keuls Multi
ple Comparison testにおいて、それぞれp<0.05、p<0.0
1で対照群に対して有意差のあったことを示す。なお、R
epeated One Way ANOVAでは、すべての値がp<0.0001で
対照群に対して有意であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木曽 良信 大阪府三島郡島本町若山台1−1−1 サ ントリー株式会社基礎研究所内 Fターム(参考) 4B018 MD07 MD93 ME14 MF01 4C087 AA01 AA02 AA05 BA10 CA37 MA02 NA05 NA14 ZA05 4C206 AA01 AA02 CA23 DB20 DB43 MA01 MA04 NA05 ZA05

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酒類の香気成分を有効成分として含むこ
    とを特徴とする抗ストレス剤。
  2. 【請求項2】 酒類が、果実酒、日本酒、焼酎またはウ
    ィスキー類であることを特徴とする請求項1に記載の抗
    ストレス剤。
  3. 【請求項3】 酒類が、ウィスキーであることを特徴と
    する請求項1に記載の抗ストレス剤。
  4. 【請求項4】 香気成分が、ダマセノン、1,1−ジエ
    トキシプロパン、1,1−ジエトキシ−2−メチルプロ
    パン、1,1−ジエトキシ−3−メチルブタン、1,1
    −ジエトキシヘプタン、ケルカスラクトンbおよびフェ
    ニルプロパン酸エチルエステルからなる群から選択され
    る1種以上の成分であることを特徴とする請求項1〜3
    に記載の抗ストレス剤。
  5. 【請求項5】 香気成分が、フェニルプロパン酸エチル
    エステルであることを特徴とする請求項1〜3に記載の
    抗ストレス剤。
  6. 【請求項6】 香気成分が、製剤中に1重量%以上含ま
    れていることを特徴とする請求項1〜5に記載の抗スト
    レス剤。
  7. 【請求項7】 医薬品であることを特徴とする請求項1
    〜6に記載の抗ストレス剤。
  8. 【請求項8】 機能性食品であることを特徴とする請求
    項1〜6に記載の抗ストレス剤。
  9. 【請求項9】 GABA受容体活性剤であることを特徴
    とする請求項1〜8に記載の抗ストレス剤。
  10. 【請求項10】 酒類の香気成分含有濃縮物。
  11. 【請求項11】 酒類の香気成分を1重量%以上含有す
    ることを特徴とする請求項10に記載の濃縮物。
  12. 【請求項12】 酒類が、果実酒、日本酒、焼酎または
    ウィスキー類であることを特徴とする請求項10または
    11に記載の濃縮物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009173585A (ja) * 2008-01-25 2009-08-06 Ogawa & Co Ltd 鎮静効果付与剤、鎮静香料組成物、鎮静効果を有する香粧品及び飲食品
JP2009235015A (ja) * 2008-03-28 2009-10-15 Shiseido Co Ltd 自律神経調整剤
JP2011116666A (ja) * 2009-11-30 2011-06-16 Api Co Ltd 乳酸菌発酵ローヤルゼリーを含有する抗ストレス剤及びその製造方法
JP2011184457A (ja) * 2011-06-06 2011-09-22 Suntory Holdings Ltd 抗老化剤

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JP6009050B1 (ja) 飲酒による悪酔いまたは二日酔いの軽減または予防剤

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