JP2003171274A5 - - Google Patents

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JP2003171274A5
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【発明の名称】薬剤耐性菌感染症治療のための医薬組成物および消毒剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】フラボン類、イソフラボン類、フラボノール類、フラバノン類、フラバノノール類、フラバン−3−オール類、カルコン類、ベンザルクマラノン類およびアントシアニジン類から選ばれるフラボノイドを有効成分として含む、薬剤耐性菌感染症治療のための医薬組成物。
【請求項2】上記フラボン類が、6,7−ジヒドロキシフラボン、7,8−ジヒドロキシフラボン、7,4’−ジヒドロキシフラボン、3’,4’−ジヒドロキシフラボンまたはそれらの誘導体であり、上記フラボノール類が、フィセチン、ケンフェリド、モリン、ミリセチンまたはそれらの誘導体であり、上記フラバノン類が、リクイリチゲニン、ナリンゲニンまたはそれらの誘導体であり、上記フラバノノール類がジヒドロロビネチン、フスチンまたはそれらの誘導体であり、上記アントシアニジン類が、シアニジン、ペラルゴニジンまたはそれらの誘導体であり、上記カルコン類がフロレチン、ブテインまたはそれらの誘導体である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】上記薬剤耐性菌がMRSAである、請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項4】上記フラボノイドの溶解補助剤としてアミノ酸が添加されている、請求項1〜3のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項5】β−ラクタム系抗生物質の活性を増強し得る、フラボン類、イソフラボン類、フラボノール類、フラバノン類、フラバノノール類、フラバン−3−オール類、カルコン類、ベンザルクマラノン類およびアントシアニジン類から選ばれるフラボノイド、およびβ−ラクタム系抗生物質を有効成分として含む、薬剤耐性菌感染症治療のための医薬組成物。
【請求項6】上記フラボン類が、6,7−ジヒドロキシフラボン、7,8−ジヒドロキシフラボン、3’,4’−ジヒドロキシフラボンまたはそれらの誘導体であり、上記フラボノール類が、ルチンまたはそれらの誘導体であり、上記フラバン−3−オール類が、(−)−ガロカテキンまたはそれらの誘導体であり、上記カルコン類がカルコンまたはそれらの誘導体である、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】上記β−ラクタム系抗生物質が、ベンジルペニシリン、フェネチシリン、メチシリン、オキサシリン、カルベニシリン、セファピリン、セフラジン、セフロキシム、セフォキシチン、セフォタキシム、パニペネムまたはこれらの混合物から選ばれる、請求項5または6記載の医薬組成物。
【請求項8】上記β−ラクタム系抗生物質が、オキサシリンまたはセファピリンである、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】上記フラボン類が、ルチンまたはその誘導体である、請求項5〜8のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項10】上記ルチンが、水溶性ルチン、糖転移ルチンまたは包接ルチンの形態である、請求項5〜9のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項11】上記薬剤耐性菌がMRSAである、請求項5〜10のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項12】上記フラボン類が、フラボンであり、上記薬剤耐性菌がペニシリナーゼ産生黄色ブドウ球菌である、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項13】上記フラボノイドの溶解補助剤としてアミノ酸が添加されている、請求項5〜11のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項14】β−ラクタム系抗生物質を増強し得るフラボノイド、および当該抗生物質を含む薬剤耐性菌用消毒剤。
【請求項15】上記フラボノイドの溶解補助剤としてアミノ酸が添加されている、請求項14記載の消毒剤。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はフラボノイドおよびこれらから誘導して得られた化合物を有効成分として含有する薬剤耐性菌感染症治療のための医薬組成物、およびフラボノイドがβ−ラクタム系抗生物質の活性を増強させる特徴を利用した薬剤耐性菌感染症治療のための医薬組成物、さらにフラボノイドを有効成分とする薬剤耐性菌に対する抗菌作用を有する消毒剤に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
最初の抗生物質であるペニシリンはβ−ラクタム環を有し、ブドウ球菌に対して優れた効力を発揮した。しかし、ペニシリンを分解する酵素ペニシリナーゼ(β−ラクタマーゼ)を産生するペニシリン耐性菌が出現した。このペニシリン耐性菌については、例えば、メチシリンなどのペニシリナーゼ抵抗性ペニシリンおよびセフェム系抗生物質の研究開発により臨床的にはほとんど解決されたかに見えたが、すべてのβ−ラクタム剤が無効のMRSAが出現した。すなわち、MRSAは、ペニシリン系だけでなく、セフェム系抗生物質、アミノ配糖体抗生物質にも広く耐性をもった多剤耐性の黄色ブドウ球菌である。近年、ブドウ球菌に対して抗菌力の弱い第3世代セフェム系抗生物質が乱用された結果、この耐性菌が選択的に増殖し、病院内で伝播するようになり、主要な院内感染菌として重大な社会問題になってきている。現在用いられているMRSA感染症に対する抗生物質としてバンコマイシン(VCM)等があるが、VCMの短時間殺菌作用は決して強力ではなく聴毒性や腎毒性等の重篤な副作用の問題がある。また、MRSAに対して、抗菌力を増強することを目的として、複数の抗生物質を組み合わせることが従来から検討されている。例えばアミノグリコシド剤とβ−ラクタム剤あるいはホスホマイシンとβ−ラクタム剤等の併用が試みられているが、その併用効果は満足できるものとは言えない。このような耐性菌に対し有効な新規抗菌薬の開発が急務となっている。
【0003】
本発明者らは副作用がないかあっても弱い漢方生薬から抗MRSA活性を有する化合物を検索するうちに、各種フラボノイドがβ−ラクタム剤耐性を抑制し、感受性を誘導するという興味ある事実を発見した。本発明はこのような知見に基づいて完成されたものである。フラボノイドが耐性菌に対して抗菌活性を有するとの報告はかつてなく、また、フラボノイドによるある種のβ−ラクタム系抗生物質との組み合わせによる耐性菌に対する増強活性も知られていない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の態様は、フラボノイドを有効成分として含む薬剤耐性菌感染症治療のための医薬組成物である。
【0005】
本発明の第二の態様は、フラボノイドが抗生物質の薬剤耐性菌に対する活性を増強させるという特徴を利用したフラボノイドおよびβ−ラクタム系抗生物質を有効成分として含む、薬剤耐性菌感染症の治療のための医薬組成物である。
【0006】
本発明の第三の態様は、フラボノイドおよびβ−ラクタム剤を有効成分として含む消毒剤である。
【0007】
フラボノイドは水に不溶性のものが多く、例えばフラボンは常温で水に不溶である。アミノ酸を添加することによってフラボノイドの溶解が促進されるとの知見を得、フラボノイドの溶解補助剤としてアミノ酸が添加された医薬組成物を提供する。
【0008】
本発明のフラボノイドと抗生物質または抗菌薬を併用することにより、耐性菌に対する抗生物質または抗菌薬の活性を増強する効果があると共に、使用する抗生物質または抗菌薬の量を減らすことができ、未然に抗生物質に対する耐性獲得の機会を減少させることが可能である。
【0009】
【発明の実施の態様】
フラボノイドは、ベンゼン環とピラン環からなる縮合環を母核とするケトンに、フェニル側環をもつフラボンを母体化合物とし、種々の置換基をもち、また分子内のピロン環が水素化または開環した類縁構造をもつ化合物であり、植物色素として知られているものが多い。本発明のフラボノイドは、フラボノイドおよびそれらの誘導体またはこれら2種以上の混合物であってもよい。
【0010】
また、本発明のフラボノイドおよび抗生物質または抗菌薬には製薬上許容され得る塩の全てが含まれる。製薬上許容され得る塩とは、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム等の塩、およびプロカイン、ジベンジルアミン等のアミン塩類や塩酸塩等の酸付加塩など、通常用いられる医薬的に許容可能な塩を意味する。
【0011】
薬剤耐性菌としては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、ペニシリナーゼ産生黄色ブドウ球菌、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)、基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ(ESBLSs)などを挙げることができ、好ましくはMRSAであり、ペニシリナーゼ産生黄色ブドウ球菌であってもよい。
【0012】
本発明の薬剤耐性菌に対して抗菌活性を有するフラボノイドの例としては、フラボン類である、6,7−ジヒドロキシフラボン、7,8−ジヒドロキシフラボン、7,4’−ジヒドロキシフラボンおよび3’,4’−ジヒドロキシフラボンなどであり、フラボノール類である、フィセチン、ケンフェリド、モリンおよびミリセチンなどであり、フラバノン類である、リクイリチゲニンおよびナリンゲニンなどであり、フラバノノール類である、ジヒドロロビネチンおよびフスチンなどであり、アントシアニジン類である、シアニジンおよびペラルゴニジンなどであり、カルコン類である、フロレチンおよびブテインなどであり、それらの誘導体またはこれらの混合物などを挙げることができる。
【0013】
好ましくは、6,7−ジヒドロキシフラボン、7,8−ジヒドロキシフラボン、3’,4’−ジヒドロキシフラボン、フィセチンおよびケンフェリドである。
【0014】
抗生物質または抗菌薬の活性を増強させるために用いられるフラボノイドとしては、フラボン類である、フラボン、アピゲニン、ルテオリン、6,7−ジヒドロキシフラボン、7,8−ジヒドロキシフラボンおよび3’,4’−ジヒドロキシフラボンなどであり、フラボノール類である、ルチンおよびケンフェロールなどであり、フラバノノール類である、(+)−タキシホリンなどであり、フラバン−3−オール類である、(−)−ガロカテキン、カルコン類などである、カルコンおよびそれらの誘導体またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0015】
なお、ルチンはインビトロの抗菌活性試験では有効性を確認できなかったが(データは示さず)、インビボにおいてルチンと抗生物質の併用により優れた効果が確認できた(実験例5参照)。ルチンは、水溶性ルチン、糖転移ルチン、包接ルチンなどの形態でも用いることができる。
【0016】
本発明に用いられるβ−ラクタム系抗生物質の例としては、ベンジルペニシリン、フェノキシメチルペニシリン、フェネチシリン、プロピシリン、アンピシリン、メチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、フルクロキサシリン、ジクロキサシリン、ヘタシリン、タランピシン、バカンピシリン、レナンピシリン、アモキシシリン、シクラシリン、カルベニシリン、スルベニシリン、チカルシリン、カリンダシリン、カルフェシリン、ピペラシリン、メズロシリン、アスポキシシリン、セファロリジン、セファゾリン、セファピリン、セファセトリル、セフテゾール、セファログリシン、セファレキシン、セファレキシン、セファトリジン、セファクロル、セフロキサジン、セファドロキシル、セファマンドール、セフォチアム、セファロチン、セフラジン、セフロキシム、セフォキシチン、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフメノキシム、セフォジジム、セフトリアキソン、セフゾナム、セフタジジム、セフェピム、セフピロム、セフォゾプラン、セフォセリス、セフルプレナム、セフォペラゾン、セフピミゾール、セフピラミド、セフィキシム、セフテラムピボキシル、セフポドキシムプロキセチル、セフチブテン、セフェタメトピボキシル、セフジニル、セフジトレンピボキシル、セフカペンピボキシル、セフスロジン、セフォキシチン、セフメタゾール、ラタモキセフ、セフォテタン、セフブペラゾン、セフミノクス、フロモキセフ、アズトレオナム、カルモナム、イミペネム、パニペネム、メロペネム、ビアペネム、ファロペネム、リチペネムアコキシルまたはこれらの混合物を挙げることができ、好ましくは、ベンジルペニシリン、フェネチシリン、メチシリン、オキサシリン、カルベニシリン、セファピリン、セフラジン、セフロキシム、セフォキシチン、セフォタキシム、パニペネムまたはこれらの混合物である。
【0021】
抗生物質は製薬上許容され得る塩の形態であってもよく、製薬上許容され得る塩とは、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム等の塩、およびプロカイン、ジベンジルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、メチルグルカミン、タウリン等のアミン塩類や塩酸塩等の酸付加塩および塩基性アミノ酸など、通常抗生物質の塩として用いられる医薬的に許容可能な塩を意味する。
【0022】
本発明のフラボノイドおよびそれらの誘導体の投与形態としては、通常の抗生物質と同様に非経口投与、経口投与または局所投与があげられる。一般的には、注射剤による投与が好適である。この場合注射剤は常法により調製され、注射剤形態として、適当なビヒクル、例えば滅菌した蒸留水、生理食塩水等で溶解される場合も含まれる。
【0023】
またフラボノイドまたはフラボノイド誘導体は様々な投薬型でβ−ラクタム系抗生物質と組み合わせることによって経口投与することができる。例えば、錠剤、カプセル、糖などで被覆した錠剤、液状溶液または懸濁液の形態である。
【0024】
予防・治療で用いるフラボノイドまたはフラボノイド誘導体とβ−ラクタム系抗生物質との両剤の合計投与量は、組み合わせる薬剤の種類や、その併用比、または年令、体重、患者の症状および投与経路によって変えることができ、例えば、成人(体重約50kg)に対して投与する場合は、1回投与当たり、組み合わせた両薬剤の和で10mg〜2gを1日に1回から3回経口投与する。これらの投与量および投与経路を変化させることによって最良の治療効果をあげるようにする。
【0025】
本発明において、両薬剤を併用あるいは混合する際の重量比についても幅広い範囲で適用することが可能である。また、感染症の種類および重篤度、併用されるβ−ラクタム系抗生物質の種類によって併用比は変わるので、併用比を特に限定するわけではないが、常用量の範囲内で組み合わせれば併用効果を期待できる濃度の組み合わせが実現できる。
【0026】
本発明の医薬組成物は、通常、常法に従って調製され、医薬的に適切な形態で投与される。例えば、固体経口形態は、活性化合物と共に、ラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、トウモロコシ澱粉およびジャガイモ澱粉などの希釈剤、シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウムおよび/またはポリエチレングリコールなどの滑沢剤、デンプン、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジンなどの結合剤、デンプン、アルギン酸、アルギン酸塩、グリコール酸デンプンナトリウムなどの崩壊剤、発泡剤、色素、甘味料、例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩などの湿潤剤、および一般に非毒性および医薬的処方に用いられる薬学的に非活性な物質を含んでいても良い。
【0027】
上記医薬調製物は、既知の方法、例えば混合、粒状化、錠剤化、糖衣、または被覆方法などにより製造される。
【0028】
非経口投与の場合、直腸への適用を意図した坐剤でも可能であるが汎用剤形は注射剤である。注射剤では液体製剤、用時溶解型製剤、懸濁製剤などの外観を異にする剤形があるが、基本的には活性成分を適当な方法により無菌化したのち、直接容器に入れ、密封する点で同一と考えられる。
【0029】
最も簡単な製剤化法としては、活性成分を適当な方法により無菌化したのち、これを別々に、または物理的に混合した後、その一定量を分割製剤化する方法がある。また、剤液形態を選ぶ場合には活性成分を適当な媒体に溶解し、これを滅菌濾過したのち適当なアンプルまたはバイアルに充填、密封する方法をとることができる。この場合汎用される媒体は注射用蒸留水であるが、本発明においては、これに拘束されるものではない。また必要ならば、塩酸プロカイン、塩酸キシロカイン、ベンジルアルコールおよびフェノールなどの局所麻酔作用を有する無痛化剤、ベンジルアルコール、フェノール、メチル、またはプロピルバクベン、およびクロロブタノールなどの防腐剤、クエン酸、酢酸、リン酸のナトリウム塩などの緩衝剤、エタノール、プロピレングリコール、塩酸アルギニンなどの溶解補助剤、L−システイン、L−メチオニン、L−ヒスチジンなどの安定化剤、さらには等張化剤などの添加剤を添加することも可能である。
【0030】
本発明のフラボノイドは薬剤耐性菌に対する抗菌作用を有する外用剤として調製することができる。本発明のフラボノイドはβ−ラクタム剤と混合して抗菌剤または殺菌剤として調製する。これらの抗菌剤または殺菌剤は0.1〜10(重量または用量)%程度の濃度で、ハサミ、メス、カテーテルなどの器具、患者の排出物の消毒、皮膚、粘膜、創傷の洗浄に用いる。
【0031】
実験例1
MRSAに対する各種フラボノイドの抗菌活性
供試菌としてMRSAを用いた。抗菌活性は日本化学療法学会の定める寒天平板希釈法(Chemotherapy 29(1)、76−79(1981))に従って行った。感受性測定用平板培地はミューラー・ヒントン培地(Mueller−Hinton Agar)を基礎とした半合成培地を用い、接種用菌液はミューラー・ヒントンブロス(Mueller−Hinton Broth)に被験菌を37℃にて20時間培養後、0.85%生理食塩水で10CFU/mLになるよう希釈して調整した。被験試料は2倍段階希釈系列で作成した。この感受性平板測定用培地に接種用菌液をミクロプランター(佐久間製作所)により接種し、37℃にて20時間培養後、最小発育阻止濃度(MIC: minimum inhibition concentration)を判定した。なお、完全に発育が阻止された最小濃度をもってMIC値とした。また、MIC50とはMRSA全株数に対して50%の株数のMRSA株について増殖阻止効果が得られた時の濃度を、MIC90とはMRSA全株数に対して90%の株数のMRSA株について増殖阻止効果が得られた時の濃度を示している。
【0032】
フラボノイドのMRSA20株に対する抗菌活性を表1に示した。
【表1】
MRSAに対するフラボノイドの抗菌活性
Figure 2003171274
【0033】
結果
以上のようにフラボノイド単独でもMRSAに対して抗菌活性を示し、特に6,7−ジヒドロキシフラボン、7,8−ジヒドロキシフラボン、3’,4’−ジヒドロキシフラボン、フィセチン、ケンフェリドが強い抗菌活性を示した。
【0034】
実験例2
MRSAに対する各種フラボノイドによるメチシリンの抗菌増強活性
フラボノイド50μg/mL添加時におけるMRSAに対するメチシリンの抗菌活性を表2に示した。
【0035】
【表2】
各種フラボノイド50μg/mL添加時におけるMRSAに対するメチシリンの抗菌活性
Figure 2003171274
【0036】
結果
以上のようにメチシリン単独でのMICが1024μg/mLであったのに対し、各種フラボノイド50μg/mLを添加することによって、2μg/mL以下まで感受性を高めることがわかった。
【0037】
実験例3
MRSAに対するフラボンによる各種抗生物質の抗菌増強活性
フラボン50μg/mL添加時におけるMRSAに対する各種抗生物質の抗菌活性を表3に示した。
【0038】
【表3】
フラボン50μg/mL添加時におけるMRSAに対する各種抗生物質の抗菌活性
Figure 2003171274
−フラボン:抗生物質単独
+フラボン:50μg/mLフラボン添加
【0039】
結果
以上のようにフラボン50μg/mLを添加することによって、βラクタム系抗生物質の抗菌活性を増強することがわかった。
【0040】
実験例4
ペニシリナーゼ産生黄色ブドウ球菌に対するフラボンによるベンジルペニシリンの抗菌増強活性
ペニシリナーゼ産生黄色ブドウ球菌に対するフラボンとベンジルペニシリン、メチシリンの併用効果を表4に示した。
【0041】
【表4】
ペニシリナーゼ産生黄色ブドウ球菌に対するフラボンとベンジルペニシリン、メチシリンの併用効果
Figure 2003171274
【0042】
結果
以上のようにペニシリナーゼによって分解されるベンジルペニシリンは単独でのMICが1.56μg/mLであったのに対し、フラボン50μg/mLを添加することにより、0.39μg/mLまで抗菌活性を増強させた。また、もともとペニシリナーゼには分解されないメチシリンに関してはフラボンの有無により抗菌活性に変化はみられなかった。
【0043】
実験例5
MRSA感染マウスに対する抗菌活性
MRSAをブレイン−ハートインヒュージョン(Brain−Heart Infusion)培地を用いて37℃、で18時間培養後、集菌洗浄し生理食塩液に再懸濁した。これを5%ガストリックムチン(gastric mucin)水溶液に混合、所定の濃度に調整したのち、その0.2mLをICR系SPFマウスに腹腔内投与した。感染1時間後に各濃度のβ―ラクタム剤、ルチンを皮下投与(0.2mL)し、5日後の生存率を調べ、有効性を評価した。また、経口投与(0.2mL)による評価も行った。経口投与の場合は感染1時間前あるいは5時間前に胃ゾンデ針を用いて投与した。
【0044】
MRSA感染マウスに対するルチンとβ−ラクタム剤の併用効果について表5〜11に示した。
【0045】
オキサシリンのMRSA感染マウスに対する単独投与効果
【表5】
Figure 2003171274
【0046】
セファピリンのMRSA感染マウスに対する単独投与効果
【表6】
Figure 2003171274
【0047】
オキサシリン、セファピリンのルチン(皮下投与)との併用投与によるMRSA感染マウスに対する効果
【表7】
a)ルチン単独
Figure 2003171274
【0048】
【表8】
b)ルチン(5mg/マウス)との併用投与
Figure 2003171274
【0049】
【表9】
c)ルチン(10mg/マウス)との併用投与
Figure 2003171274
【0050】
オキサシリン、セファピリンのルチン(経口投与)との併用投与によるMRSA感染マウスに対する効果
【表10】
a)ルチン単独
Figure 2003171274
【0051】
【表11】
b)ルチン(5mg/マウス)との併用投与
Figure 2003171274
【0052】
【表12】
c)ルチン(10mg/マウス)との併用投与
Figure 2003171274
【0053】
結果
表5〜12からわかるように、オキサシリン、セファピリンのMRSA感染マウスに対する単独投与では生存率20%以下であったのに対し、ルチン(5,10mg/マウス)皮下投与では生存率に著しい改善がみられ、特にルチン(10mg/マウス)とセファピリン(15mg/マウス)との併用では生存率100%であった。ルチンの経口投与の場合も同様に、併用投与すると生存率に著しい改善がみられた。
【0054】
試験例1 L−アルギニン−塩酸塩、L−システインのルチン溶解補助効果
常温にてルチンを水に溶解した場合、水に不溶(0mg/mL)であったが、L−アルギニン−塩酸塩4mmol、L−システイン1mmol、1N NaOH 8mmolで調製した溶液にルチンを溶解後、1N HClでpHを8.5に調製し、沈殿物を除去した液はルチン49.8mg/mLの溶解度を示した(実施例3参照)。
【0055】
【実施例】
実施例1(錠剤)
常法により、ルチン50mg、乳糖1g、デンプン300mg、メチルセルロース50mg、タルク30mgを10錠の錠剤に調整して白糖で糖衣する。
【0056】
実施例2(注射剤)
ルチン500mgからなる無菌混合物を滅菌バイアルに入れ密封する。使用時に、この混合物を生理食塩水に溶解し、注射剤とする。
【0057】
Figure 2003171274
B液にA液3.5mLを添加し、HClでpHを8.5に調整後、濾過し注射剤とする。
【0058】
実施例4(消毒剤)
フラボン5g、セファピリン5gを常水1000mLに溶解して消毒液として用いる。
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