JP2003165495A - 小型滑走艇 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 エンジンの高出力化（高速回転化）がウォー
タージェットポンプの推進力に有効に反映されるような
小型滑走艇を提供することを目的とする。 【解決手段】 エンジンＥによって駆動されるウォータ
ージェットポンプＰで加圧・加速された水を後方の噴射
口から噴射しその反動によって推進するよう構成された
小型滑走艇において、エンジンＥのクランク軸２６と、
ウォータージェットポンプＰとの間に、減速機１を配置
した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、水流を後方に噴出
してその反動で水上を航行する小型滑走艇（ Personal
Watercraft（パーソナルウォータークラフト）; ＰＷＣ
とも呼ばれる) に関し、特に、エンジンからポンプ軸に
回転数を減速して伝達する減速機を具備した小型滑走艇
に関する。

【０００２】

【従来の技術および発明が解決しようとする課題】所謂
ジェット推進型の小型滑走艇は、レジャー用，スポーツ
用としてあるいはレスキュー用として、近年多用されて
いる。この小型滑走艇は、一般に艇の底面に設けられた
吸水口から吸い込んだ水を、ウォータージェットポンプ
で加圧・加速して後方へ噴射することによって船体を推
進させる。

【０００３】そして、このジェット推進型の小型滑走艇
の場合、前記ウォータージェットポンプの噴射口の後方
に配置したステアリングノズルを、操舵ハンドルを左右
に操作することによって左右に揺動させて、後方への水
の噴射方向を左右に変更させて、艇を右側あるいは左側
に操舵する。

【０００４】また、この小型滑走艇の場合、推進用のエ
ンジンの出力軸は、カップリング手段等を介して、ウォ
ータージェットポンプのポンプ軸と直結されていること
から、エンジンの最高回転数は、専らウォータージェッ
トポンプの性能（回転数−ポンプ吸収特性）によって制
限されている。つまり、エンジンの回転数のみ増加させ
て馬力アップを図っても、その増加させた馬力分は、ウ
ォータージェットポンプの推進力として反映されない。

【０００５】ところで、従来専ら２サイクルエンジンが
搭載されていたものに加えて、４サイクルエンジンも搭
載されようとしている。

【０００６】排気量を増加させることなく、２サイクル
エンジンと同じ高出力を得ようとすると、４サイクルエ
ンジンでは、エンジン回転数を上げることが効果的であ
る。しかし、エンジンの回転数を上げても、前述の「回
転数−ポンプ吸収特性」によって、その回転数の増加分
は、ウォータージェットポンプの推進力の増加として反
映されない。

【０００７】また、別の観点からは、小型滑走艇の用途
も多様化し、同じ船体を利用して、エンジンのみ、ファ
ミリー用のノーマル出力のエンジンかあるいはスポーツ
用の高出力のエンジンかを、選択的に搭載することが考
えられる。かかる場合、高出力のエンジンでは一般にエ
ンジンの最高回転数が高められることになることから、
前述したような技術的課題を内包することになる。

【０００８】本発明はこのような状況に鑑みておこなわ
れたもので、エンジンの高出力化（高速回転化）がウォ
ータージェットポンプの推進力に有効に反映されるよう
な小型滑走艇を提供することを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】前記課題は、以下のよう
な構成からなる小型滑走艇によって解決することができ
る。即ち、本発明にかかる小型滑走艇は、エンジンによ
って駆動されるウォータージェットポンプで加圧・加速
された水を後方の噴射口から噴射しその反動によって推
進するよう構成された小型滑走艇において、前記エンジ
ンのクランク軸と、前記ウォータージェットポンプとの
間に、減速機を配置したことを特徴とする。

【００１０】しかして、上述のように構成された小型滑
走艇によれば、エンジン自体の回転数がウォータージェ
ットポンプの性能（回転数−ポンプ吸収特性）を越える
ものであっても、前記減速機により、ウォータージェッ
トポンプに入力される回転数をウォータージェットポン
プの性能に合致した回転数にすることができる。従っ
て、４サイクルエンジン化されてエンジンの最高回転数
が増加しても、その増加分をウォータージェットポンプ
に有効に反映させることができ、エンジンの４サイクル
エンジン化を促進することができる。また、同じ船体に
異なる馬力のエンジンを搭載する場合にも、この減速機
の減速比を適宜選択することによって、ウォータージェ
ットポンプにマッチングさせることが可能となり、馬力
の異なるエンジンを容易に選択できることになる。

【００１１】また、前記小型滑走艇において、前記減速
機の底部にオイル溜を形成すると、減速機内のギア列お
よび軸受支持部分への潤滑が可能となる。

【００１２】また、前記小型滑走艇において、前記減速
機のオイル溜を、エンジンの潤滑をおこなうドライサン
プ装置のオイルタンクと兼用した構成とすると、小型滑
走艇の狭いエンジンルームを有効に利用することがで
き、また、部品点数を低減することができる。

【００１３】また、前記小型滑走艇において、前記減速
機のオイル溜の少なくとも底部を水によって冷却するよ
う構成すると、外気と遮断されたエンジンルーム内にお
いても減速機のオイル溜内のオイルを有効に冷却するこ
とができ、冷却性能に優れたエンジンおよび減速機を実
現することができる。

【００１４】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態にかかる
小型滑走艇について、図面を参照しながら、具体的に説
明する。

【００１５】図１は本発明の１の実施形態にかかる小型
滑走艇のエンジンとウォータージェットポンプの間に減
速機を配置した状態を概念的に示す概略構成図、図６は
本発明の実施形態にかかる小型滑走艇の一部断面した全
体側面図、図７は図６の平面図である。

【００１６】図６，図７において、Ａは船体で、この船
体Ａは、ハルＨとその上方を覆うデッキＤから構成さ
れ、これらハルＨとデッキＤを全周で接続する接続ライ
ンはガンネルラインＧと呼ばれ、この実施例では、この
ガンネルラインＧは、この小型滑走艇の喫水線Ｌより上
方に位置している。

【００１７】そして、前記デッキＤの中央よりやや後部
には、図７に図示するように、船体Ａの上面に長手方向
に延びる平面視において略長方形の開口部１６が形成さ
れ、図６，図７に図示するように、この開口部１６上方
に騎乗用のシートＳが配置されている。

【００１８】また、エンジンＥは、前記シートＳ下方の
ハルＨとデッキＤに囲まれた横断面形状が「凸」状の空
間２０内に配置される。この実施形態では、エンジンＥ
は、多気筒（この実施例では４気筒）の４サイクル式の
エンジンＥが使用されている。図６に図示するように、
このエンジンＥのクランク軸２６はカップリング３を介
して減速機（減速機）１の入力軸１Ａ側に連結され、且
つ該減速機１の出力軸１Ｂ側はカップリング４とプロペ
ラ軸２７を介して、インペラ２１が取着されているウォ
ータージェットポンプＰのポンプ軸２１Ｓ側に、一体的
に回転可能に連結されている。そして、このインペラ２
１は、その外周方が、ポンプケーシング２１Ｃで覆わ
れ、小型滑走艇の底面に設けられた吸水口１７から取り
入れた水を吸水通路を介して取り込んで、ウォータージ
ェットポンプＰで加圧・加速して、通水断面積が後方に
ゆくに従って小さくなったポンプノズル（噴出部）２１
Ｒを通って、後端の噴射口２１Ｋから吐出して、推進力
を得るよう構成されている。

【００１９】また、図６において、２１Ｖはウォーター
ジェットポンプＰ内を通過する水を整流するための静翼
である。また、図６，図７おいて、２４はバー型の操舵
ハンドルで、このハンドル２４を左右に操作することに
よって、図７に一点鎖線で示すケーブル２５を介して、
前記ポンプノズル２１Ｒ後方のステアリングノズル１８
を左右に揺動させて、ウォータージェットポンプＰの稼
働時に、艇を所望の方向に操舵できるよう構成されてい
る。また、図７に図示するように、操舵ハンドル２４の
一方の端部にはスロットルレバーＬｔが付設され、この
スロットルレバーＬｔを操作することによってエンジン
Ｅの回転数を調整することができるよう構成されてい
る。

【００２０】また、図６に図示するように、前記ステア
リングノズル１８の上後方には、水平に配置された揺動
軸１９ａを中心に下方に揺動可能に、ボウル形状のリバ
ース用のデフレクター１９が配置され、このデフレクタ
ー１９をステアリングノズル１８後方の下方位置へ揺動
動作させることによって、ステアリングノズル１８から
後方に吐出される水を前方に転向させて、後進できるよ
う構成されている。

【００２１】また、図６，図７において、２２は後部デ
ッキで、この後部デッキ２２には、開閉式のハッチカバ
ー２９が設けられ、ハッチカバー２９の下方に小容量の
収納ボックスが形成されている。また、図６あるいは図
７において、２３は前部ハッチカバーで、このハッチカ
バー２３の下方には備品等を収納するボックス（図示せ
ず）が設けられている。

【００２２】ところで、本発明の実施形態にかかる小型
滑走艇では、図１に図示するように、エンジンＥとウォ
ータージェットポンプＰとの間に、減速機１が配置さ
れ、エンジンＥの回転数を減速させてウォータージェッ
トポンプＰに伝達するよう構成されている。なお、図１
において、３，４はカップリングである。

【００２３】前記減速機１は、図２に拡大して図示する
ように、該減速機１のケーシング１Ｃ内に位置する入力
軸１Ａの基端には、歯車１ａが該入力軸１Ａと一体に回
転するよう配設されるとともに、前記歯車１ａには歯車
１ｂが噛合し、この歯車１ｂは前記入力軸１Ａと平行軸
となる中間軸２Ｅ上に該中間軸２Ｅと一体に回転するよ
う取着されている。また、前記中間軸２Ｅ上には、前記
歯車１ｂに隣接して歯車１ｃが該中間軸２Ｅと一体に回
転するよう配設されている。そして、前記歯車１ｃに
は、歯車１ｄが噛合しており、この歯車１ｄは出力軸１
Ｂと一体に回転するよう配設されている。そして、前記
出力軸１Ｂは、同芯上に配置された前記入力軸１Ａと軸
受け１Ｆを介して、相互に回転自在に連結されている。
また、この減速機１の下部にはオイル溜１Ｄが形成さ
れ、このオイル溜１Ｄには、オイルＯｉが前記歯車１
ｂ，１ｃの下端部を浸す程度に充填されている。

【００２４】そして、前記オイル溜１Ｄは、この実施形
態では、エンジンＥのドライサンプ用のタンクとして使
用されている。つまり、この減速機１のオイル溜１Ｄ
は、図１に図示する、オイルパイプ５Ａ，５Ｂでエンジ
ンＥと連結されており、該オイル溜１Ｄからのオイルに
よって、エンジンＥ内の要潤滑部分の潤滑をおこなうよ
う構成されている。かかる場合、減速機１内のオイル溜
１Ｄが高温になるため、図２に図示するように、該減速
機１のケーシング１Ｃの一部にウォータージャケット１
Ｊを設けて、水冷式にするのが望ましい構成となる。ま
た、かかるウォータージャケット１Ｊには、前記ウォー
タージェットポンプＰからの加圧された水を冷却パイプ
６Ａを介して供給し、冷却に使用された後の水はパイプ
６Ｂを介してウォータージェットポンプＰ側へ排水する
よう構成する。

【００２５】ところで、図２に図示する前記実施形態で
は、減速機１のケーシング１Ｃの一部（この実施形態で
はオイル溜１Ｄの外周部）にウォータージャケット１Ｊ
を設けているが、これに代えて、図４に図示するように
該減速機１のケーシング１Ｃ全体にウォータージャケッ
ト１Ｊを設けてもよい。なお、図４において、図２と同
じ構成又は対応する構成には同じ参照番号を付してい
る。

【００２６】ところで、図２に図示する前記実施形態で
は、減速比を大きくとるよう、２対の歯車列からなる歯
車ユニットを使用したが、減速比がさほど大きくないと
きには、図３に図示するように、１対の歯車列からなる
歯車ユニットを使用した減速機１にしてもよい。また、
図５に示すように、出力軸１Ｂと入力軸１Ａの軸芯のオ
フセット量（オフセット寸法）を小さくするときには、
一方の歯車１ｂに内歯車を用いた減速機１にしてもよ
い。なお、図３、図５において、図２と同じ構成又は対
応する構成には同じ参照番号を付している。なお、図
２、図３、図４において、４Ａはカップリング４（図
１、図６参照）の一方の部材を示す。また、図５ではカ
ップリングの図示を省略している。

【００２７】しかして、このように構成された小型滑走
艇によれば、エンジンＥからの回転数は、減速機１内で
所望の回転数に減速されてウォータージェットポンプＰ
側に伝達される。従って、４サイクルエンジンを採用す
ることによって、所望の馬力を得るために、エンジンＥ
自体の最高回転数がウォータージェットポンプＰの性能
（回転数−ポンプ吸収特性）を越えるものであっても、
前記減速機１により、ウォータージェットポンプＰに入
力される回転数をウォータージェットポンプの性能に合
致させ、エンジンの出力を無駄なく推進力に利用するこ
とができることになる。

【００２８】

【発明の効果】本発明によれば、エンジンの回転数がウ
ォータージェットポンプのポンプ特性に合致しない場合
にも、エンジンの回転数を減速してウォータージェット
ポンプに伝達するため、エンジンの出力が無駄になるこ
と無くウォータージェットポンプの推進力に寄与するこ
とになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の１の実施形態にかかる小型滑走艇の
エンジンとウォータージェットポンプの間に減速機を配
置した状態を概念的に示す概略構成図である。

【図２】 図１に図示する減速機の具体的な構成を示
す、減速機のケーシングを一部切り欠いて内部構造を示
す図である。

【図３】 図２と別の実施形態にかかる減速機の構成を
示す、減速機のケーシングを一部切り欠いて内部構造を
示す図である。

【図４】 図２，図３と別の実施形態にかかる減速機の
構成を示す、減速機のケーシングを一部切り欠いて内部
構造を示す図である。

【図５】 図２〜図４と別の実施形態にかかる減速機の
構成を示す、減速機のケーシングを一部切り欠いて内部
構造を示す図である。

【図６】 本発明の実施形態にかかるジェット推進型の
小型滑走艇の全体側面図である。

【図７】 図６に示す小型滑走艇の全体平面図である。

【符号の説明】

Ｅ……エンジン Ｐ……ウォータージェットポンプ １……減速機 ２６……クランク軸

フロントページの続き Ｆターム(参考） 3J063 AA23 AB02 AC01 BA11 BA15 BB46 XD03 XD15 XD33 XD63 XD72 XD73 XH02 XH12 XH23 XH26 XH43

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 エンジンによって駆動されるウォーター
   ジェットポンプで加圧・加速された水を後方の噴射口か
   ら噴射しその反動によって推進するよう構成された小型
   滑走艇において、 前記エンジンのクランク軸と、前記ウォータージェット
   ポンプとの間に、減速機を配置したことを特徴とする小
   型滑走艇。
2. 【請求項２】 前記減速機の底部にオイル溜を形成した
   ことを特徴とする請求項１記載の小型滑走艇。
3. 【請求項３】 前記減速機のオイル溜を、エンジンの潤
   滑をおこなうドライサンプ装置のオイルタンクと兼用し
   たことを特徴とする請求項１記載の小型滑走艇。
4. 【請求項４】 前記減速機のオイル溜の少なくとも底部
   を水によって冷却するよう構成したことを特徴とする請
   求項２又は３記載の小型滑走艇。