JP2003165280A - 平版印刷版用支持体および平版印刷版原版 - Google Patents

平版印刷版用支持体および平版印刷版原版

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JP2003165280A JP2001368258A JP2001368258A JP2003165280A JP 2003165280 A JP2003165280 A JP 2003165280A JP 2001368258 A JP2001368258 A JP 2001368258A JP 2001368258 A JP2001368258 A JP 2001368258A JP 2003165280 A JP2003165280 A JP 2003165280A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】熱を効率よく画像形成に利用することができ、
感度が高く、高耐刷性を示し、非画像部の汚れが生じに
くい感熱性の平版印刷版原版およびそれに用いられる平
版印刷版用支持体の提供。 【解決手段】原子間力顕微鏡を用いて、表面の50μm
□を512×512点測定して求められる3次元データ
から得られるRa 、ΔS、a30およびa60が、それ
ぞれ下記条件(i)〜(iv)を満足するアルミニウム
表面を有し;その表面上に設けた親水性皮膜の熱伝導率
が、0.05〜0.5W/(m・K)である平版印刷版
用支持体およびそれを用いた平版印刷版原版。 (i) Ra :0.45μm以上 (ii) ΔS:30%以上 (iii)a30:55%以上 (iv) a60:10%以下

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、平版印刷版用支持
体および平版印刷版原版に関し、特に、平版印刷版とし
たときに、高耐刷性、高感度かつ印刷の際の汚れ難さ
(耐汚れ性)が良好な平版印刷版用支持体およびそれを
用いた平版印刷版原版に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、画像形成技術の発展に伴い、細く
ビームを絞ったレーザ光をその版面上に走査させ、文字
原稿、画像原稿等を直接版面上に形成させ、フィルム原
稿を用いず直接製版することが可能となりつつある。 特に赤外レーザ光照射により記録層中で光熱変換を起こ
すことによって得られる熱を利用して画像を形成するサ
ーマルタイプまたはヒートモードタイプと呼ばれる平版
印刷版が明室で利用可能な点を有して様々な形で提案さ
れている。このうち熱により記録層のアルカリ可溶化を
引き起こしポジ画像を形成する、いわゆるサーマルポジ
タイプの平版印刷原版においては、画像形成原理として
レーザ露光による記録層中のバインダーの分子間相互作
用の微妙な変化を利用しているために、露光/未露光部
分のアルカリ可溶化のオン/オフの程度の差が小さくな
っている。このため、実用に耐える明確なディスクリミ
ネーションを得る目的で、現像液に対する表面難溶化層
を記録層の最上層として設けて未露光部の現像溶解性を
抑えた記録層構造を形成する手段、感熱層表面の未露光
部に対する吸着性の低い現像抑制剤成分を現像液に添加
して未露光部の現像溶解性を抑える手段等が用いられて
いる。
【0003】しかしながら、表面難溶化層が何らかの原
因で損傷すると、本来画像部となる部分でも、現像液に
溶解しやすくなってしまう。つまり、実用上非常に傷付
きやすい印刷版になってしまっている。このため、印刷
版のハンドリング時のぶつかり、合紙での微妙な擦れ、
版面への指の接触等の些細な接触によってもキズ状の画
像抜けが発生してしまうので、刷版作業時の取り扱いが
難しいのが現状である。この傷付きやすさを改善する目
的で、記録層表面にフッ素系の界面活性剤やワックス剤
の層を設けて摩擦係数を下げることが試みられている
が、未だ十分な対策とはなっていない。
【0004】一方、ディスクリミネーションを上げるた
めに、現像性を上げることも検討されており、記録層と
支持体との間にシリケート処理による親水性層やアルカ
リ可溶性下塗り層(アルカリ可溶化層)を設けることが
試みられている。これらの方法によれば、確かに現像性
はある程度確保することができ、実用範囲の現像ラチチ
ュードは得られるものの、記録層と支持体との密着性が
低下する。その上、汚れにくさを向上させるために、残
膜の原因となる支持体表面に存在する深い凹部をなくそ
うとして支持体表面の形状を平滑化していくと、耐刷性
が大幅に低下し、実用上使えなくなってしまう。このた
め、耐刷性に優れ、しかも汚れにくいという、印刷のし
やすさの点で満足することができるレベルにある平版印
刷原版は、いまだ実現されていない。
【0005】このような、感熱層中に存在する赤外線吸
収剤がその光熱変換作用を発現し露光により発熱し、そ
の熱により感熱層に画像を形成するタイプの平版印刷原
版においては、以下のような問題もある。
【0006】即ち、このようなサーマルタイプの画像形
成においては、レーザー光照射によって感熱層中で光熱
変換物質により熱が発生してその熱が画像形成反応を引
き起こすのであるが、粗面化されたアルミニウム支持体
の熱伝導率が感熱層に比べ極めて高いため、感熱層と支
持体との界面付近で発生した熱は、画像形成に十分使用
されないうちに支持体内部に拡散してしまう。
【0007】その結果上述のサーマルポジ型感熱層の場
合、熱が支持体内部に拡散してアルカリ可溶化反応が不
十分となると、本来の非画像部分に残膜が発生してしま
い感度が低くなるという問題があり、これはポジ型感熱
層の本質的問題となっている。また、このようなサーマ
ルタイプの平版印刷原版においては、光熱変換機能を有
する赤外線吸収剤が必須であるが、これらは分子量が比
較的大きいため溶解性が低く、また、陽極酸化により生
じたミクロな開口部に吸着して除去しにくいため、アル
カリ現像液による現像工程において、残膜が発生しやす
いという問題もある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した先
行技術の欠点を克服した感熱性平版印刷版原版を提供す
ることを目的とする。即ち、熱を効率よく画像形成に利
用することができ、感度が高く、高耐刷性を示し、非画
像部の汚れが生じにくい感熱性の平版印刷版原版および
それに用いられる平版印刷版用支持体を提供することを
目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決すべく、平版印刷版用支持体の表面形状およびその
上に設けられる親水性皮膜について鋭意検討した結果、
原子間力顕微鏡を用いて求められる表面形状を表すファ
クターである表面粗さ、表面積比および急峻度、ならび
に、親水性皮膜の熱伝導率を、それぞれ特定の組み合わ
せとした場合に、感度が高く、高耐刷性を示し、非画像
部の汚れが生じにくいことを見出した。つまり、特定の
表面形状物性(Ra ,ΔS,a30,a60)を有し、
その上に特定の範囲の熱伝導率を持つ親水性皮膜を設
け、さらにその上に感熱層を設けた平版印刷版原版が、
平版印刷版原版としたときに、感度が高く、高耐刷性を
示し、非画像部の汚れが生じにくいことを見出し、本発
明を完成した。
【0010】即ち、1)本発明は、原子間力顕微鏡を用
いて、表面の50μm□を512×512点測定して求
められる3次元データから得られるRa 、ΔS、a30
およびa60が、それぞれ下記条件(i)〜(iv)を
満足するアルミニウム表面を有し;その表面上に設けた
親水性皮膜の熱伝導率が、0.05〜0.5W/(m・
K)である平版印刷版用支持体を提供する。 (i) Ra :0.45μm以上 (ii) ΔS:30%以上 (iii)a30:55%以上 (iv) a60:10%以下 ここで、Ra は、前記3次元データから波長2μm以上
の成分を除去してから得られる表面粗さを表す。ΔS
は、前記3次元データから近似三点法により求められる
実面積Sx と、幾何学的測定面積S0 とから、下記式に
より求められる。 ΔS=(Sx −S0 )/S0 ×100(%) a30およびa60は、それぞれ前記3次元データから
波長2μm以上の成分を除去してから得られる傾斜度3
0゜以上の部分および傾斜度60゜以上の部分の面積率
を表す。
【0011】2)本発明は、1)に記載の平版印刷版用
支持体に画像記録層を設けた平版印刷版原版を提供す
る。
【0012】前記平版印刷版用支持体が、アルミニウム
板を順に、機械的粗面化処理し、アルカリエッチング処
理し、酸によるデスマット処理し、硝酸を含有する電解
液で電気化学的粗面化処理し、その後、塩酸を含有する
電解液で電気化学的粗面化処理し、さらに、アルカリエ
ッチング処理し、酸によるデスマット処理して得られる
平版印刷版用支持体であるのが好ましい態様の一つであ
る。
【0013】前記親水性皮膜が、陽極酸化工程により形
成される陽極酸化皮膜であるのが好ましい態様の一つで
ある。前記親水性皮膜は、密度が1000〜3200k
g/m3 または空隙率が20〜70%であるのが好まし
い態様の一つである。前記親水性皮膜が、さらに、アル
カリ金属ケイ酸塩で処理されるのが好ましい。また、こ
のアルカリ金属ケイ酸塩処理により吸着するSi原子量
が約1.0〜15mg/m2 であるのがより好ましい。
【0014】また、前記画像記録層が、水不溶性かつア
ルカリ可溶性高分子および光熱変換物質を含み、加熱に
よりアルカリ性水溶液に対する溶解性が変化する感熱層
であるのが好ましい態様の一つである。また、前記画像
記録層が、親水性支持体上に設けられる下層とその上層
の感熱層からなり、感熱層および/または下層に、酸基
を有する高分子材料を設けるのが好ましい態様の一つで
ある。
【0015】また、本発明では、ケイ酸塩および糖類か
らなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含有す
る現像液で現像するのが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。 [平版印刷版用支持体] <表面の砂目形状>本発明の平版印刷版用支持体は、原
子間力顕微鏡を用いて、表面の50μm□を512×5
12点測定して求められる3次元データから得られるR
a 、ΔS、a30およびa60が、それぞれ下記条件
(i)〜(iv)を満足することを特徴とする。 (i) Ra :0.45μm以上 (ii) ΔS:30%以上 (iii)a30:55%以上 (iv) a60:10%以下
【0017】Ra は、後に詳述するように、前記3次元
データから波長2μm以上の成分を除去してから得られ
る表面粗さを表す。具体的には、表面粗さRa は、支持
体表面の凹凸の状態を表す。このRa が小さすぎる場合
には、表面がなだらかになり、光が正反射しやすくな
る。その結果、印刷時に平版印刷版の非画像部の表面に
湿し水が供給されると、版面が光りやすくなり、供給さ
れている湿し水の量を目視で確認してその量を調節する
ことが困難になる。本発明においては、印刷時に版面に
供給された湿し水の量を目視で容易に確認することがで
きるようにするため、即ち、平版印刷版の検版性を優れ
たものとするため、Ra を比較的大きくする。本発明に
おいては、Ra は0.45μm以上であり、好ましくは
0.50μm以上である。
【0018】ΔSは、後に詳述するように、前記3次元
データから近似三点法により求められる実面積Sx と、
幾何学的測定面積(見掛け面積)S0 とから、下記式に
より求められる。 ΔS=(Sx −S0 )/S0 ×100(%) 表面積比ΔSは、幾何学的測定面積S0 に対する粗面化
処理による実面積Sxの増加の程度を示すファクターで
ある。ΔSが大きくなると、画像記録層との接触面積が
大きくなり、結果として耐刷性を向上させることができ
る。ΔSを大きくするには、小さな凹凸を表面に多数設
けることが有効である。このように小さな凹凸を表面に
多数設ける方法としては、例えば、塩酸を主体とする電
解液を用いた電解粗面化処理、高濃度かつ高温の硝酸を
主体とする電解液を用いた電解粗面化処理が好適に挙げ
られる。機械的粗面化処理や、通常の硝酸を主体とする
電解液を用いた電解粗面化処理によってもΔSは大きく
なるが、その程度は小さい。本発明においては、ΔSは
30%以上であり、好ましくは40%以上である。
【0019】a30およびa60は、後に詳述するよう
に、それぞれ前記3次元データから波長2μm以上の成
分を除去してから得られる傾斜度30゜以上の部分およ
び傾斜度60゜以上の部分の面積率を表す。急峻度は、
支持体表面の微細な形状のとがり具合を表すファクター
である。具体的には、支持体表面の凹凸の中で、一定角
度以上の大きさの傾斜を有する面積の実面積に対する割
合を表す。本発明者は、種々検討した結果、この急峻度
が、画像記録層と支持体との密着性(耐刷性)および非
画像部のインキ付着性(耐汚れ性)と、それぞれ相関す
ることを見出した。特に、30゜および60゜という特
定の角度に基づく二つの急峻度のバランスを保つこと
で、耐刷性と耐汚れ性とを高い次元で両立させることが
できることを見出した。即ち、より滑らかな傾斜度30
゜以上の斜面の面積率(急峻度)a30については、画
像記録層と支持体との密着性を優れたものとし、耐刷性
を向上させるために、より大きくするのが好ましい。ま
た、平版印刷版の非画像部の保水力を向上させ、耐汚れ
性を向上させるためにも、より大きくするのが好まし
い。本発明においては、a30は55%以上であり、好
ましくは60%以上である。一方、より急峻な傾斜度6
0゜以上の斜面の面積率(急峻度)a60については、
非画像部におけるインキの引っ掛かりを抑制し、耐汚れ
性を向上させるために、より小さくするのが好ましい。
本発明においては、a60は10%以下であり、好まし
くは7%以下である。
【0020】本発明の平版印刷版用支持体において、R
a 、ΔS、a30およびa60を求める方法は、以下の
通りである。
【0021】(1)原子間力顕微鏡による表面形状の測
定 本発明においては、Ra 、ΔS、a30およびa60を
求めるために、原子間力顕微鏡(Atomic For
ce Microscope:AFM)により表面形状
を測定し、3次元データを求める。測定は、例えば、以
下の条件で行うことができる。即ち、平版印刷版用支持
体を1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー
上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面
にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところ
で、XY方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方
向のピエゾの変位でとらえる。ピエゾスキャナーは、X
Y方向について150μm、Z方向について10μm、
走査可能なものを使用する。カンチレバーは共振周波数
120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのも
の(SI−DF20、NANOPROBE社製)を用
い、DFMモード(Dynamic Force Mo
de)で測定する。また、求めた3次元データを最小二
乗近似することにより試料のわずかな傾きを補正し基準
面を求める。計測の際は、表面の50μm□を512×
512点測定する。XY方向の分解能は1.9μm、Z
方向の分解能は1nm、スキャン速度は60μm/se
cとする。
【0022】(2)3次元データの補正 ΔSの算出には、上記(1)で求められた3次元データ
をそのまま用いるが、Ra 、a30およびa60の算出
には、上記(1)で求められた3次元データから波長2
μm以上の成分を除去する補正をしたものを用いる。こ
の補正により、平版印刷版用支持体のような深い凹凸を
有する表面をAFMの探針で走査した場合に、探針が凸
部のエッジ部分に当たって跳ねたり、深い凹部の壁面に
探針の尖端以外の部分が接触したりして生じるノイズを
除去することができる。補正は、上記(1)で求められ
た3次元データを高速フーリエ変換をして周波数分布を
求め、ついで、波長2μm以上の成分を除去した後、フ
ーリエ逆変換をすることにより行う。
【0023】(3)各ファクターの算出 Ra 上記(2)で補正して得られた3次元データ(f(x,
y))を用い、下記式から表面粗さRa を算出する。
【0024】
【数1】
【0025】式中、Lx およびLy は、それぞれ測定領
域(長方形)のx方向およびy方向の辺の長さを表し、
本発明においてはLx =Ly =50μmである。また、
0は幾何学的測定面積であり、S0 =Lx ×Ly で求
められる。
【0026】ΔS 上記(1)で求められた3次元データ(f(x,y))
を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される
微小三角形の面積の総和を求め、実面積Sx とする。表
面積比ΔSは、得られた実面積Sx と幾何学的測定面積
0 とから、下記式により求められる。 ΔS=(Sx −S0 )/S0 ×100(%)
【0027】a30およびa60 上記(2)で補正して得られた3次元データ(f(x,
y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成
される微小三角形と基準面とのなす角を全データについ
て算出し、傾斜度分布曲線を求め、一方で該微小三角形
の面積の総和を求めて実面積とする。傾斜度分布曲線よ
り、実面積に対する傾斜度30度以上の部分の面積の割
合a30および傾斜度60度以上の部分の面積の割合a
60を算出する。
【0028】<表面処理>本発明の平版印刷版用支持体
は、後述するアルミニウム板に表面処理を施すことによ
って、上述した表面の砂目形状をアルミニウム板の表面
に形成させたものである。本発明の平版印刷版用支持体
は、アルミニウム板に粗面化処理を施して得られるが、
この支持体の製造工程は、特に限定されず、粗面化処理
以外の各種の工程を含んでいてもよい。以下に、上述し
た表面の砂目形状を形成させるための代表的方法とし
て、アルミニウム板に機械的粗面化処理、アルカリエッ
チング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用
いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、アルミニウ
ム板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸
によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気
化学的粗面化処理を複数回施す方法、アルミニウム板に
アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理およ
び電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方
法、アルミニウム板にアルカリエッチング処理、酸によ
るデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学
的粗面化処理を複数回施す方法が挙げられるが、本発明
はこれらに限定されない。これらの方法において、前記
電気化学的粗面化処理の後、更に、アルカリエッチング
処理および酸によるデスマット処理を施してもよい。
【0029】表面形状を表すファクターであるRa 、Δ
S、a30およびa60が、それぞれ特定の条件を満足
するようにするのに好適に用いられる粗面化処理として
は、他の処理(アルカリエッチング処理等)の条件にも
よるが、機械的粗面化処理、硝酸を主体とする電解液を
用いた電気化学的粗面化処理および塩酸を主体とする電
解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法が挙
げられる。特に、アルミニウム板を順に、機械的粗面化
処理し、アルカリエッチング処理し、酸によるデスマッ
ト処理し、硝酸を含有する電解液で電気化学的粗面化処
理し、その後、塩酸を含有する電解液で電気化学的粗面
化処理し、さらに、アルカリエッチング処理し、酸によ
るデスマット処理する方法が好ましい態様の一つであ
る。特に、前記好ましい表面処理によりアルミニウム板
の表面の砂目形状は、平均開口径の異なるピットが重畳
しているのが好ましい。また、塩酸を主体とする電解液
を用い、アノード反応にあずかる電気量の総和を大きく
した電気化学的粗面化処理のみを施す方法も挙げられ
る。
【0030】これらの方法により得られ、表面形状を表
す上記各ファクターがそれぞれ特定の条件を満足する本
発明の平版印刷版用支持体は、平版印刷版としたときの
耐汚れ性および耐刷性のいずれにも優れる。以下、表面
処理の各工程について、詳細に説明する。
【0031】<機械的粗面化処理>機械的粗面化処理
は、電気化学的粗面化処理と比較してより安価に、平均
波長5〜100μmの凹凸のある表面を形成することが
できるため、粗面化処理の手段として有効である。機械
的粗面化処理方法としては、例えば、アルミニウム表面
を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、
研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボー
ルグレイン法、特開平6−135175号公報および特
公昭50−40047号公報に記載されているナイロン
ブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法
を用いることができる。また、凹凸面をアルミニウム板
に圧接する転写方法を用いることもできる。即ち、特開
昭55−74898号、特開昭60−36195号、特
開昭60−203496号の各公報に記載されている方
法のほか、転写を数回行うことを特徴とする特開平6−
55871号公報、表面が弾性であることを特徴とした
特願平4−204235号明細書(特開平6−0241
68号公報)に記載されている方法も適用可能である。
【0032】また、放電加工、ショットブラスト、レー
ザ、プラズマエッチング等を用いて、微細な凹凸を食刻
した転写ロールを用いて繰り返し転写を行う方法や、微
細粒子を塗布した凹凸のある面を、アルミニウム板に接
面させ、その上より複数回繰り返し圧力を加え、アルミ
ニウム板に微細粒子の平均直径に相当する凹凸パターン
を複数回繰り返し転写させる方法を用いることもでき
る。転写ロールへ微細な凹凸を付与する方法としては、
特開平3−8635号、特開平3−66404号、特開
昭63−65017号の各公報等に記載されている公知
の方法を用いることができる。また、ロール表面にダイ
ス、バイト、レーザ等を使って2方向から微細な溝を切
り、表面に角形の凹凸をつけてもよい。このロール表面
には、公知のエッチング処理等を行って、形成させた角
形の凹凸が丸みを帯びるような処理を行ってもよい。ま
た、表面の硬度を上げるために、焼き入れ、ハードクロ
ムメッキ等を行ってもよい。そのほかにも、機械的粗面
化処理としては、特開昭61−162351号公報、特
開昭63−104889号公報等に記載されている方法
を用いることもできる。本発明においては、生産性等を
考慮して上述したそれぞれの方法を併用することもでき
る。これらの機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処
理の前に行うのが好ましい。
【0033】以下、機械的粗面化処理として好適に用い
られるブラシグレイン法について説明する。ブラシグレ
イン法は、一般に、円柱状の胴の表面に、ナイロン(商
標名)、プロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂から
なる合成樹脂毛等のブラシ毛を多数植設したローラ状ブ
ラシを用い、回転するローラ状ブラシに研磨剤を含有す
るスラリー液を噴きかけながら、上記アルミニウム板の
表面の一方または両方を擦ることにより行う。上記ロー
ラ状ブラシおよびスラリー液の代わりに、表面に研磨層
を設けたローラである研磨ローラを用いることもでき
る。ローラ状ブラシを用いる場合、曲げ弾性率が好まし
くは10,000〜40,000kg/cm2 、より好
ましくは15,000〜35,000kg/cm2であ
り、かつ、毛腰の強さが好ましくは500g以下、より
好ましくは400g以下であるブラシ毛を用いる。ブラ
シ毛の直径は、一般的には、0.2〜0.9mmであ
る。ブラシ毛の長さは、ローラ状ブラシの外径および胴
の直径に応じて適宜決定することができるが、一般的に
は、10〜100mmである。
【0034】研磨剤は公知の物を用いることができる。
例えば、パミストン、ケイ砂、水酸化アルミニウム、ア
ルミナ粉、炭化ケイ素、窒化ケイ素、火山灰、カーボラ
ンダム、金剛砂等の研磨剤;これらの混合物を用いるこ
とができる。中でも、パミストン、ケイ砂が好ましい。
特に、ケイ砂は、パミストンに比べて硬く、壊れにくい
ので粗面化効率に優れる点で好ましい。研磨剤の平均粒
径は、粗面化効率に優れ、かつ、砂目立てピッチを狭く
することができる点で、3〜50μmであるのが好まし
く、6〜45μmであるのがより好ましい。研磨剤は、
例えば、水中に懸濁させて、スラリー液として用いる。
スラリー液には、研磨剤のほかに、増粘剤、分散剤(例
えば、界面活性剤)、防腐剤等を含有させることができ
る。スラリー液の比重は0.5〜2であるのが好まし
い。
【0035】機械的粗面化処理に適した装置としては、
例えば、特公昭50−40047号公報に記載された装
置を挙げることができる。
【0036】<電気化学的粗面化処理>電気化学的粗面
化処理には、通常の交流を用いた電気化学的粗面化処理
に用いられる電解液を用いることができる。中でも、塩
酸または硝酸を主体とする電解液を用いるのが、表面形
状を表す上記各ファクターがそれぞれ特定の条件を満足
するようにするのに好適である。本発明における電解粗
面化処理としては、陰極電解処理の前後に酸性溶液中で
の交番波形電流による第1および第2の電解処理を行う
ことが好ましい。陰極電解処理により、アルミニウム板
の表面で水素ガスが発生してスマットが生成することに
より表面状態が均一化され、その後の交番波形電流によ
る電解処理の際に均一な電解粗面化が可能となる。この
電解粗面化処理は、例えば、特公昭48−28123号
公報および英国特許第896,563号明細書に記載さ
れている電気化学的グレイン法(電解グレイン法)に従
うことができる。この電解グレイン法は、正弦波形の交
流電流を用いるものであるが、特開昭52−58602
号公報に記載されているような特殊な波形を用いて行っ
てもよい。また、特開平3−79799号公報に記載さ
れている波形を用いることもできる。また、特開昭55
−158298号、特開昭56−28898号、特開昭
52−58602号、特開昭52−152302号、特
開昭54−85802号、特開昭60−190392
号、特開昭58−120531号、特開昭63−176
187号、特開平1−5889号、特開平1−2805
90号、特開平1−118489号、特開平1−148
592号、特開平1−178496号、特開平1−18
8315号、特開平1−154797号、特開平2−2
35794号、特開平3−260100号、特開平3−
253600号、特開平4−72079号、特開平4−
72098号、特開平3−267400号、特開平1−
141094の各公報に記載されている方法も適用でき
る。また、前述のほかに、電解コンデンサーの製造方法
として提案されている特殊な周波数の交番電流を用いて
電解することも可能である。例えば、米国特許第4,2
76,129号明細書および同第4,676,879号
明細書に記載されている。
【0037】電解槽および電源については、種々提案さ
れているが、米国特許第4203637号明細書、特開
昭56−123400号、特開昭57−59770号、
特開昭53−12738号、特開昭53−32821
号、特開昭53−32822号、特開昭53−3282
3号、特開昭55−122896号、特開昭55−13
2884号、特開昭62−127500号、特開平1−
52100号、特開平1−52098号、特開昭60−
67700号、特開平1−230800号、特開平3−
257199号の各公報等に記載されているものを用い
ることができる。また、特開昭52−58602号、特
開昭52−152302号、特開昭53−12738
号、特開昭53−12739号、特開昭53−3282
1号、特開昭53−32822号、特開昭53−328
33号、特開昭53−32824号、特開昭53−32
825号、特開昭54−85802号、特開昭55−1
22896号、特開昭55−132884号、特公昭4
8−28123号、特公昭51−7081号、特開昭5
2−133838号、特開昭52−133840号、特
開昭52−133844号、特開昭52−133845
号、特開昭53−149135号、特開昭54−146
234号の各公報等に記載されているもの等も用いるこ
とができる。
【0038】電解液である酸性溶液としては、硝酸、塩
酸のほかに、米国特許第4,671,859号、同第
4,661,219号、同第4,618,405号、同
第4,600,482号、同第4,566,960号、
同第4,566,958号、同第4,566,959
号、同第4,416,972号、同第4,374,71
0号、同第4,336,113号、同第4,184,9
32号の各明細書等に記載されている電解液を用いるこ
ともできる。
【0039】酸性溶液の濃度は0.5〜2.5質量%で
あるのが好ましいが、上記のスマット除去処理での使用
を考慮すると、0.7〜2.0質量%であるのが特に好
ましい。また、液温は20〜80℃であるのが好まし
く、30〜60℃であるのがより好ましい。
【0040】塩酸または硝酸を主体とする水溶液は、濃
度1〜100g/Lの塩酸または硝酸の水溶液に、硝酸
アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の
硝酸イオンを有する硝酸化合物または塩化アルミニウ
ム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオン
を有する塩酸化合物の少なくとも一つを1g/Lから飽
和するまでの範囲で添加して使用することができる。ま
た、塩酸または硝酸を主体とする水溶液には、鉄、銅、
マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等
のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していても
よい。好ましくは、塩酸または硝酸の濃度0.5〜2質
量%の水溶液にアルミニウムイオンが3〜50g/Lと
なるように、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等を
添加した液を用いることが好ましい。
【0041】更に、Cuと錯体を形成しうる化合物を添
加して使用することによりCuを多く含有するアルミニ
ウム板に対しても均一な砂目立てが可能になる。Cuと
錯体を形成しうる化合物としては、例えば、アンモニ
ア;メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジ
エチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミ
ン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミ
ン、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)等のアンモニ
アの水素原子を炭化水素基(脂肪族、芳香族等)等で置
換して得られるアミン類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウ
ム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸塩類が挙げられる。
また、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アン
モニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等の
アンモニウム塩も挙げられる。温度は10〜60℃が好
ましく、20〜50℃がより好ましい。
【0042】電気化学的粗面化処理に用いられる交流電
源波は、特に限定されず、サイン波、矩形波、台形波、
三角波等が用いられるが、矩形波または台形波が好まし
く、台形波が特に好ましい。台形波とは、図2に示した
ものをいう。この台形波において電流がゼロからピーク
に達するまでの時間(TP)は1〜3msecであるの
が好ましい。1msec未満であると、アルミニウム板
の進行方向と垂直に発生するチャタマークという処理ム
ラが発生しやすい。TPが3msecを超えると、特に
硝酸電解液を用いる場合、電解処理で自然発生的に増加
するアンモニウムイオン等に代表される電解液中の微量
成分の影響を受けやすくなり、均一な砂目立てが行われ
にくくなる。その結果、平版印刷版としたときの耐汚れ
性が低下する傾向にある。
【0043】台形波交流のduty比は1:2〜2:1
のものが使用可能であるが、特開平5−195300号
公報に記載されているように、アルミニウムにコンダク
タロールを用いない間接給電方式においてはduty比
が1:1のものが好ましい。台形波交流の周波数は0.
1〜120Hzのものを用いることが可能であるが、5
0〜70Hzが設備上好ましい。50Hzよりも低い
と、主極のカーボン電極が溶解しやすくなり、また、7
0Hzよりも高いと、電源回路上のインダクタンス成分
の影響を受けやすくなり、電源コストが高くなる。
【0044】電解槽には1個以上の交流電源を接続する
ことができる。主極に対向するアルミニウム板に加わる
交流の陽極と陰極との電流比をコントロールし、均一な
砂目立てを行うことと、主極のカーボンを溶解すること
とを目的として、図3に示したように、補助陽極を設置
し、交流電流の一部を分流させることが好ましい。図3
において、11はアルミニウム板であり、12はラジア
ルドラムローラであり、13aおよび13bは主極であ
り、14は電解処理液であり、15は電解液供給口であ
り、16はスリットであり、17は電解液通路であり、
18は補助陽極であり、19aおよび19bはサイリス
タであり、20は交流電源であり、40は主電解槽であ
り、50は補助陽極槽である。整流素子またはスイッチ
ング素子を介して電流値の一部を二つの主電極とは別の
槽に設けた補助陽極に直流電流として分流させることに
より、主極に対向するアルミニウム板上で作用するアノ
ード反応にあずかる電流値と、カソード反応にあずかる
電流値との比を制御することができる。主極に対向する
アルミニウム板上で、陽極反応と陰極反応とにあずかる
電気量の比(陰極時電気量/陽極時電気量)は、0.3
〜0.95であるのが好ましい。
【0045】電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型
等の公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能である
が、特開平5−195300号公報に記載されているよ
うなラジアル型電解槽が特に好ましい。電解槽内を通過
する電解液は、アルミニウムウェブの進行方向に対して
パラレルであってもカウンターであってもよい。
【0046】(硝酸電解)硝酸を主体とする電解液を用
いた電気化学的粗面化処理により、平均開口径0.5〜
5μmのピットを形成することができる。ただし、電気
量を比較的多くしたときは、電解反応が集中し、5μm
を超えるハニカムピットも生成する。このような砂目を
得るためには、電解反応が終了した時点でのアルミニウ
ム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜1
000C/dm2 であるのが好ましく、50〜300C
/dm2 であるのがより好ましい。この際の電流密度は
20〜100A/dm2 であるのが好ましい。また、例
えば、15〜35質量%の高濃度の硝酸電解液を用いて
30〜60℃で電解を行ったり、0.7〜2質量%の硝
酸電解液を用いて80℃以上の高温で電解を行ったりす
ることで、平均開口径0.2μm以下の小波構造を形成
させることもできる。その結果、ΔSを大きくし、か
つ、a30を維持しつつa60を小さくすることができ
る。
【0047】(塩酸電解)塩酸はそれ自身のアルミニウ
ム溶解力が強いため、わずかな電解を加えるだけで表面
に微細な凹凸を形成させることが可能である。この微細
な凹凸は、平均開口径が0.01〜0.2μmであり、
アルミニウム板の表面の全面に均一に生成する。このよ
うな砂目を得るためには電解反応が終了した時点でのア
ルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和
が、1〜100C/dm2 であるのが好ましく、20〜
70C/dm2 であるのがより好ましい。この際の電流
密度は20〜50A/dm2 であるのが好ましい。
【0048】このような塩酸を主体とする電解液での電
気化学的粗面化処理では、アノード反応にあずかる電気
量の総和を400〜2000C/dm2 と大きくするこ
とでクレーター状の大きなうねりを同時に形成すること
も可能であるが、この場合は平均開口径10〜30μm
のクレーター状のうねりに重畳して平均開口径0.01
〜0.4μmの微細な凹凸が全面に生成する。したがっ
て、この場合、平均開口径0.5〜5μmの中波構造を
重畳させられないが、本発明の各ファクターがそれぞれ
特定の条件を満足する場合はありうる。
【0049】上記の硝酸、塩酸等の電解液中で行われる
第1および第2の電解粗面化処理の間に、アルミニウム
板は陰極電解処理を行うことが好ましい。この陰極電解
処理により、アルミニウム板表面にスマットが生成する
とともに、水素ガスが発生してより均一な電解粗面化処
理が可能となる。この陰極電解処理は、酸性溶液中で陰
極電気量が好ましくは3〜80C/dm2 、より好まし
くは5〜30C/dm 2 で行われる。陰極電気量が3C
/dm2 未満であると、スマット付着量が不足する場合
があり、また、80C/dm2 を超えると、スマット付
着量が過剰となる場合があり、いずれも好ましくない。
また、電解液は上記第1および第2の電解粗面化処理で
使用する溶液と同一であっても異なっていてもよい。
【0050】<アルカリエッチング処理>アルカリエッ
チング処理は、上記アルミニウム板をアルカリ溶液に接
触させることにより、表層を溶解する処理である。
【0051】電解粗面化処理より前に行われるアルカリ
エッチング処理は、機械的粗面化処理を行っていない場
合には、前記アルミニウム板(圧延アルミ)の表面の圧
延油、汚れ、自然酸化皮膜等を除去することを目的とし
て、また、既に機械的粗面化処理を行っている場合に
は、機械的粗面化処理によって生成した凹凸のエッジ部
分を溶解させ、急峻な凹凸を滑らかなうねりを持つ表面
に変えることを目的として行われる。
【0052】アルカリエッチング処理の前に機械的粗面
化処理を行わない場合、エッチング量は、0.1〜10
g/m2 であるのが好ましく、1〜5g/m2 であるの
がより好ましい。エッチング量が0.1g/m2 未満で
あると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等が残存す
る場合があるため、後段の電解粗面化処理において均一
なピット生成ができずムラが発生してしまう場合があ
る。一方、エッチング量が1〜10g/m2 であると、
表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等の除去が十分に行
われる。上記範囲を超えるエッチング量とするのは、経
済的に不利となる。
【0053】アルカリエッチング処理の前に機械的粗面
化処理を行う場合、エッチング量は、3〜20g/m2
であるのが好ましく、5〜15g/m2 であるのがより
好ましい。エッチング量が3g/m2 未満であると、機
械的粗面化処理等によって形成された凹凸を平滑化でき
ない場合があり、後段の電解処理において均一なピット
形成ができない場合がある。また、印刷時に汚れが劣化
する場合がある。一方、エッチング量が20g/m2
超えると、凹凸構造が消滅してしまう場合がある。
【0054】電解粗面化処理の直後に行うアルカリエッ
チング処理は、酸性電解液中で生成したスマットを溶解
させることと、電解粗面化処理により形成されたピット
のエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。
電解粗面化処理で形成されるピットは電解液の種類によ
って異なるためにその最適なエッチング量も異なるが、
電解粗面化処理後に行うアルカリエッチング処理のエッ
チング量は、0.1〜5g/m2 であるのが好ましい。
硝酸電解液を用いた場合、塩酸電解液を用いた場合より
もエッチング量は多めに設定する必要がある。電解粗面
化処理が複数回行われる場合には、それぞれの処理後
に、必要に応じてアルカリエッチング処理を行うことが
できる。
【0055】アルカリ溶液に用いられるアルカリとして
は、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げら
れる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、
カセイソーダ、カセイカリが挙げられる。また、アルカ
リ金属塩としては、例えば、タケイ酸ソーダ、ケイ酸ソ
ーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケ
イ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸
塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金
属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等
のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二
リン酸カリ、第三リン酸ソーダ、第三リン酸カリ等のア
ルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチ
ング速度が速い点および安価である点から、カセイアル
カリの溶液、および、カセイアルカリとアルカリ金属ア
ルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、
カセイソーダの水溶液が好ましい。
【0056】アルカリ溶液の濃度は、エッチング量に応
じて決定することができるが、1〜50質量%であるの
が好ましく、10〜35質量%であるのがより好まし
い。アルカリ溶液中にアルミニウムイオンが溶解してい
る場合には、アルミニウムイオンの濃度は、0.01〜
10質量%であるのが好ましく、3〜8質量%であるの
がより好ましい。アルカリ溶液の温度は20〜90℃で
あるのが好ましい。処理時間は1〜120秒であるのが
好ましい。
【0057】アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させ
る方法としては、例えば、アルミニウム板をアルカリ溶
液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板を
アルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アル
カリ溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙
げられる。
【0058】<デスマット処理>電解粗面化処理または
アルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚
れ(スマット)を除去するために酸洗い(デスマット処
理)が行われる。用いられる酸としては、例えば、硝
酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ化水素酸、ホウフッ
化水素酸が挙げられる。上記デスマット処理は、例え
ば、上記アルミニウム板を塩酸、硝酸、硫酸等の濃度
0.5〜30質量%の酸性溶液(アルミニウムイオン
0.01〜5質量%を含有する。)に接触させることに
より行う。アルミニウム板を酸性溶液に接触させる方法
としては、例えば、アルミニウム板を酸性溶液を入れた
槽の中を通過させる方法、アルミニウム板を酸性溶液を
入れた槽の中に浸せきさせる方法、酸性溶液をアルミニ
ウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。デスマッ
ト処理においては、酸性溶液として、上述した電解粗面
化処理において排出される硝酸を主体とする水溶液もし
くは塩酸を主体とする水溶液の廃液、または、後述する
陽極酸化処理において排出される硫酸を主体とする水溶
液の廃液を用いることができる。デスマット処理の液温
は、25〜90℃であるのが好ましい。また、処理時間
は、1〜180秒であるのが好ましい。デスマット処理
に用いられる酸性溶液には、アルミニウムおよびアルミ
ニウム合金成分が溶け込んでいてもよい。
【0059】<親水性皮膜の形成>以上のようにして粗
面化処理および必要に応じて他の処理を施されたアルミ
ニウム板に、低熱伝導率の親水性皮膜を設ける。親水性
皮膜の膜厚方向の熱伝導率を0.05〜0.5W/(m
・K)とすることで、レーザー光の露光により発生した
熱が支持体に拡散するのを抑制できる。熱伝導率は低い
方が熱拡散の抑制効果が高くなり、0.08〜0.3W
/(m・K)がより好ましく、特に0.2W/(m・
K)以下であることが望ましい。このような低熱伝導率
の層を設けることによって熱を利用して画像形成を行う
ヒートモードタイプと呼ばれる平版印刷版原版において
は露光時の感度が高くなり、ポジタイプの場合には残膜
の発生が無くなり、ネガタイプの場合には画像形成性が
向上する。
【0060】以下、本発明で規定する親水性皮膜の膜厚
方向の熱伝導率について説明する。薄膜の熱伝導率測定
方法としては種々の方法がこれまでに報告されている。
1986年にはONOらがサーモグラフを用いて薄膜の
平面方向の熱伝導率を報告している。また、薄膜の熱物
性の測定に交流加熱方法を応用する試みも報告されてい
る。交流加熱法はその起源を1863年の報告にまでさ
かのぼることができるが、近年においては、レーザーに
よる加熱方法の開発やフーリエ変換との組み合わせによ
り様々な測定法が提案されている。レーザーオングスト
ローム法を用いた装置は実際に市販もされている。これ
らの方法はいずれも薄膜の平面方向(面内方向)の熱伝
導率を求めるものである。
【0061】しかし、薄膜の熱伝導を考える際にはむし
ろ深さ方向への熱拡散が重要な因子である。種々報告さ
れているように薄膜の熱伝導率は等方的でないといわれ
ており、特に本発明のような場合には直接、膜厚方向の
熱伝導率を計測することが極めて重要である。このよう
な観点から薄膜の膜厚方向の熱物性を測定する試みとし
てサーモコンパレータを用いた方法がLambropo
ulosらの論文(J.Appl.Phys.,66
(9)(1 November 1989))およびH
enagerらの論文(APPLIED OPTIC
S,Vol.32,No.1(1 January 1
993))で報告されている。更に、近年、ポリマー薄
膜の熱拡散率をフーリエ解析を適用した温度波熱分析に
より測定する方法が橋本らによって報告されている(N
etsu Sokutei,27(3)(200
0))。
【0062】本発明で規定する親水性皮膜の膜厚方向の
熱伝導率は、上記サーモコンパレータを用いる方法で測
定される。以下、上記方法を具体的に説明するが、上記
方法の基本的な原理については、上述したLambro
poulosらの論文およびHenagerらの論文に
詳細に記載されている。また、上記方法に用いられる装
置は、以下の装置に限定されるものではない。
【0063】図5は、本発明の平版印刷版原版の親水性
皮膜の膜厚方向の熱伝導率の測定に用いることができる
サーモコンパレータ530の概略図である。図5におい
て、530はサーモコンパレータ、531はチップ、5
32はリザーバ、533は電熱ヒーター、534は加熱
用ジャケット、535は熱電対、536はヒートシン
ク、537は皮膜、538は金属基体、539は接触式
温度計、540はチップ先端温度記録計、541はヒー
トシンク温度記録計、542はリザーバ温度記録計であ
る。サーモコンパレータを用いる方法では、薄膜との接
触面積および接触面の状態(粗さ)の影響を大きく受け
る。そのため、サーモコンパレータ530が薄膜と接触
する先端をできる限り微小なものとすることが重要であ
る。例えば、無酸素銅製の半径r1 =0. 2mmの微小
な先端を有するチップ(線材)531を用いる。このチ
ップ531をコンスタンタン製のリザーバ532の中心
に固定し、そのリザーバ532の周囲に、電熱ヒーター
533を有する無酸素銅製の加熱用ジャケット534を
固定する。この加熱用ジャケット534を電熱ヒーター
533で加熱し、リザーバ532内部に取り付けた熱電
対535の出力をフィードバックさせながらリザーバ5
32を60±1℃になるよう制御すると、チップ531
が60±1℃に加熱される。一方、半径10cm、厚み
10mmの無酸素銅製のヒートシンク536を用意し、
測定対象の皮膜537を有する金属基体538をヒート
シンク536上に設置する。ヒートシンク536の表面
の温度は接触式温度計539を用いて測定する。
【0064】このようにサーモコンパレータ530を設
定した後、皮膜537の表面に加熱したチップ531の
先端を密着するように接触させる。サーモコンパレータ
530は、例えば、ダイナミック微小硬度計の先端に圧
子の変わりに取り付けて上下に駆動させるようにし、皮
膜537の表面にチップ531が当たって0. 5mNの
負荷がかかるまで押し付けることができるようにする。
これにより測定対象である皮膜537とチップ531の
接触面積のバラツキを最低限とすることができる。加熱
したチップ531を皮膜537に接触させるとチップ5
31の先端温度は下がるが、ある一定温度で定常状態に
達する。これは電熱ヒーター533から加熱用ジャケッ
ト534およびリザーバ532を通じてチップ531に
与えられる熱量と、チップ531から金属基体538を
通じてヒートシンク536へ拡散する熱量とが平衡する
ためである。このときのチップ先端温度、ヒートシンク
温度およびリザーバ温度をそれぞれチップ先端温度記録
計540、ヒートシンク温度記録計541およびリザー
バ温度記録計542を用いて記録する。
【0065】上記各温度と皮膜の熱伝導率の関係は、下
記式[1]のようになる。
【0066】
【数2】
【0067】ただし、上記式[1]中の符号は、以下の
通りである。 Tt :チップ先端温度、Tb :ヒートシンク温度、
r :リザーバ温度、 Ktf:皮膜熱伝導率、K1 :リザーバ熱伝導率、 K2 :チップ熱伝導率(無酸素銅の場合、400W/
(m・K))、 K4 :(皮膜を設けない場合の)金属基体熱伝導率、 r1 :チップ先端曲率半径、 A2 :リザーバとチップとの接触面積、A3 :チップと
皮膜との接触面積、 t:膜厚、t2 :接触厚み(≒0)
【0068】膜厚(t)を変化させて各温度(Tt 、T
b およびTr )を測定しプロットすることにより、上記
式[1]の傾きを求め、皮膜熱伝導率(Ktf)を求める
ことができる。即ち、この傾きは上記式[1]から明ら
かなように、リザーバ熱伝導率(K1 )、チップ先端の
曲率半径(r1 )、皮膜熱伝導率(Ktf)およびチップ
と皮膜との接触面積(A3 )によって決まる値であり、
1 、r1 およびA3は、既知の値であるから、傾きか
らKtfの値を求めることができる。
【0069】本発明者らは、上記の測定方法を用いてア
ルミニウム基板状に設けた陽極酸化皮膜(Al2 3
の熱伝導率を求めた。膜厚を変えて温度を測定し、その
結果のグラフの傾きから求められたAl2 3 の熱伝導
率は、0. 69W/(m・K)であった。これは、上述
したLambropoulosらの論文の結果とよい一
致を示している。そして、この結果は、薄膜の熱物性値
がバルクの熱物性値(バルクのAl2 3 の熱伝導率
は、28W/(m・K))とは異なることも示してい
る。
【0070】本発明の平版印刷版原版の親水性皮膜の膜
厚方向の熱伝導率の測定に上記方法を用いると、チップ
先端を微小なものにし、かつ、押し付け荷重を一定に保
つことにより、平版印刷版用に粗面化された表面につい
てもバラツキのない結果を得ることができるので好まし
い。熱伝導率の値は、試料上の異なる複数の点、例え
ば、5点で測定し、その平均値として求めるのが好まし
い。
【0071】親水性皮膜の膜厚は、傷付き難さおよび耐
刷性の点で、0.1μm以上であるのが好ましく、0.
3μm以上であるのがより好ましく、0.6μm以上で
あるのが特に好ましく、また、製造コストの観点から、
厚い皮膜を設けるためには多大なエネルギーを必要とす
ることを鑑みると、5μm以下であるのが好ましく、3
μm以下であるのがより好ましく、2μm以下であるの
が特に好ましい。
【0072】親水性皮膜を設ける方法としては、特に限
定されず、陽極酸化法、蒸着法、CVD法、ゾルゲル
法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、拡散
法等を適宜用いることができる。また、親水性樹脂また
はゾルゲル液に中空粒子を混合した溶液を塗布する方法
を用いることもできる。
【0073】なかでも、アルミニウム表面を陽極酸化す
ることで親水性の高いアルミニウム酸化物の皮膜を設け
ることが好ましい。得られる皮膜は親水性であるだけで
なく高い硬度を有し、支持体表面の耐磨耗性を高めるこ
とができる。そして高速処理適性を有しており、高い生
産性を得ることができる。陽極酸化処理はこの分野で従
来行われている方法で行うことができる。具体的には、
硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、
ベンゼンスルホン酸等の単独のまたは2種以上を組み合
わせた水溶液または非水溶液の中で、アルミニウム板に
直流または交流を流すと、アルミニウム板の表面に、親
水性皮膜である陽極酸化皮膜を形成することができる。
【0074】この際、少なくともアルミニウム板、電
極、水道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に
含まれていても構わない。更には、第2、第3の成分が
添加されていても構わない。ここでいう第2、第3の成
分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、T
i、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、
Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオ
ン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イ
オン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオ
ン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げら
れ、0〜10000ppm程度の濃度で含まれていても
よい。
【0075】陽極酸化処理の条件は、使用される電解液
によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一
般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、
電流密度0.5〜60A/dm2 、電圧1〜200V、
電解時間1〜1000秒であるのが適当である。
【0076】また、特開昭54−81133号、特開昭
57−47894号、特開昭57−51289号、特開
昭57−51290号、特開昭57−54300号、特
開昭57−136596号、特開昭58−107498
号、特開昭60−200256号、特開昭62−136
596号、特開昭63−176494号、特開平4−1
76897号、特開平4−280997号、特開平6−
207299号、特開平5−24377号、特開平5−
32083号、特開平5−125597号、特開平5−
195291号の各公報等に記載されている方法を使用
することもできる。
【0077】中でも、特開昭54−12853号公報お
よび特開昭48−45303号公報に記載されているよ
うに、電解液として硫酸溶液を用いるのが好ましい。電
解液中の硫酸濃度は、10〜300g/L(1〜30質
量%)であるのが好ましく、また、アルミニウムイオン
濃度は、1〜25g/L(0.1〜2.5質量%)であ
るのが好ましく、2〜10g/L(0.2〜1質量%)
であるのがより好ましい。このような電解液は、例え
ば、硫酸濃度が50〜200g/Lである希硫酸に硫酸
アルミニウム等を添加することにより調製することがで
きる。
【0078】硫酸を含有する電解液中で陽極酸化処理を
行う場合には、アルミニウム板と対極との間に直流を印
加してもよく、交流を印加してもよい。アルミニウム板
に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜6
0A/dm2 であるのが好ましく、5〜40A/dm2
であるのがより好ましい。連続的に陽極酸化処理を行う
場合には、アルミニウム板の一部に電流が集中していわ
ゆる「焼け」が生じないように、陽極酸化処理の開始当
初は、5〜10A/m2 の低電流密度で電流を流し、陽
極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2
たはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。連
続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板
に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが
好ましい。このような条件で陽極酸化処理を行うことに
よりポア(マイクロポア)と呼ばれる孔を多数有する多
孔質皮膜が得られるが、通常、その平均ポア径は5〜5
0nm程度であり、平均ポア密度は300〜800個/
μm2 程度である。
【0079】これらの陽極酸化処理の中でも、英国特許
第1,412,768号明細書に記載されている、硫酸
電解液中で高電流密度で陽極酸化処理する方法、およ
び、米国特許第3,511,661号明細書に記載され
ている、リン酸を電解浴として陽極酸化処理する方法が
好ましい。また、硫酸中で陽極酸化処理し、更にリン酸
中で陽極酸化処理するなどの多段陽極酸化処理を施すこ
ともできる。
【0080】本発明においては、陽極酸化皮膜は、傷付
き難さおよび耐刷性の点で、0.1g/m2 以上である
のが好ましく、0.3g/m2 以上であるのがより好ま
しく、2g/m2 以上であるのが特に好ましく、また、
厚い皮膜を設けるためには多大なエネルギーを必要とす
ることを鑑みると、100g/m2 以下であるのが好ま
しく、40g/m2 以下であるのがより好ましく、20
g/m2 以下であるのが特に好ましい。通常4g/m2
程度の皮膜は約1μ程度の膜厚となる。
【0081】陽極酸化処理に用いられる電解装置として
は、特開昭48−26638号、特開昭47−1873
9号、特公昭58−24517号の各公報等に記載され
ているものを用いることができる。中でも、図4に示す
装置が好適に用いられる。図4は、アルミニウム板の表
面を陽極酸化処理する装置の一例を示す概略図である。
陽極酸化処理装置410において、アルミニウム板41
6は、図4中矢印で示すように搬送される。電解液41
8が貯溜された給電槽412にてアルミニウム板416
は給電電極420によって(+)に荷電される。そし
て、アルミニウム板416は、給電槽412においてロ
ーラ422によって上方に搬送され、ニップローラ42
4によって下方に方向変換された後、電解液426が貯
溜された電解処理槽414に向けて搬送され、ローラ4
28によって水平方向に方向転換される。ついで、アル
ミニウム板416は、電解電極430によって(−)に
荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成
され、電解処理槽414を出たアルミニウム板416は
後工程に搬送される。前記陽極酸化処理装置410にお
いて、ローラ422、ニップローラ424およびローラ
428によって方向転換手段が構成され、アルミニウム
板416は、給電槽412と電解処理槽414との槽間
部において、前記ローラ422、424および428に
より、山型および逆U字型に搬送される。給電電極42
0と電解電極430とは、直流電源434に接続されて
いる。
【0082】図4の陽極酸化処理装置410の特徴は、
給電槽412と電解処理槽414とを1枚の槽壁432
で仕切り、アルミニウム板416を槽間部において山型
および逆U字型に搬送したことにある。これによって、
槽間部におけるアルミニウム板416の長さを最短にす
ることができる。よって、陽極酸化処理装置410の全
体長を短くできるので、設備費を低減することがあでき
る。また、アルミニウム板416を山型および逆U字型
に搬送することによって、各槽412および414の槽
壁にアルミニウム板416を通過させるための開口部を
形成する必要がなくなる。よって、各槽412および4
14内の液面高さを必要レベルに維持するのに要する送
液量を抑えることができるので、稼働費を低減すること
ができる。
【0083】陽極酸化皮膜には、その表面にマイクロポ
アと呼ばれる微細な凹部が一様に分布して形成されてい
る。陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの密度は、処
理条件を適宜選択することによって調整することができ
る。マイクロポアの密度を高くすることにより、陽極酸
化皮膜の膜厚方向の熱伝導率を0.05〜0.5W/
(m・K)とすることができる。
【0084】本発明においては、熱伝導率を下げる目的
で、陽極酸化処理の後、マイクロポアのポア径を拡げる
ポアワイド処理を行うことが好ましい。このポアワイド
処理は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を
酸水溶液またはアルカリ水溶液に浸せきすることによ
り、陽極酸化皮膜を溶解し、マイクロポアのポア径を拡
大するものである。ポアワイド処理は、陽極酸化皮膜の
溶解量が、好ましくは0.01〜20g/m2 、より好
ましくは0.1〜5g/m2 、特に好ましくは0.2〜
4g/m2 となる範囲で行われる。
【0085】ポアワイド処理に酸水溶液を用いる場合
は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれら
の混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の
濃度は10〜1000g/Lであるのが好ましく、20
〜500g/Lであるのがより好ましい。酸水溶液の温
度は、10〜90℃であるのが好ましく、30〜70℃
であるのがより好ましい。酸水溶液への浸せき時間は、
1〜300秒であるのが好ましく、2〜100秒である
のがより好ましい。一方、ポアワイド処理にアルカリ水
溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なく
とも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。
アルカリ水溶液のpHは、10〜13であるのが好まし
く、11.5〜13.0であるのがより好ましい。アル
カリ水溶液の温度は、10〜90℃であるのが好まし
く、30〜50℃であるのがより好ましい。アルカリ水
溶液への浸せき時間は、1〜500秒であるのが好まし
く、2〜100秒であるのがより好ましい。
【0086】また、親水性皮膜は、上述した陽極酸化皮
膜のほかに、スパッタリング法、CVD法等により設け
られる無機皮膜であってもよい。無機皮膜を構成する化
合物としては、例えば、酸化物、チッ化物、ケイ化物、
ホウ化物、炭化物が挙げられる。また、無機皮膜は、化
合物の単体のみから構成されていてもよく、化合物の混
合物により構成されていてもよい。無機皮膜を構成する
化合物としては、具体的には、酸化アルミニウム、酸化
ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウ
ム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化
モリブデン、酸化タングステン、酸化クロム;チッ化ア
ルミニウム、チッ化ケイ素、チッ化チタン、チッ化ジル
コニウム、チッ化ハフニウム、チッ化バナジウム、チッ
化ニオブ、チッ化タンタル、チッ化モリブデン、チッ化
タングステン、チッ化クロム、チッ化ケイ素、チッ化ホ
ウ素;ケイ化チタン、ケイ化ジルコニウム、ケイ化ハフ
ニウム、ケイ化バナジウム、ケイ化ニオブ、ケイ化タン
タル、ケイ化モリブデン、ケイ化タングステン、ケイ化
クロム;ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化ハ
フニウム、ホウ化バナジウム、ホウ化ニオブ、ホウ化タ
ンタル、ホウ化モリブデン、ホウ化タングステン、ホウ
化クロム;炭化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化チタ
ン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウ
ム、炭化ニオブ、炭化タンタル、炭化モリブデン、炭化
タングステン、炭化クロムが挙げられる。
【0087】前記親水性皮膜は、密度が1000〜32
00kg/m3 あるいは空隙率が20〜70%であるの
が好ましい態様の一つである。アルミニウム板上に低密
度の断熱性に優れた皮膜を形成するためには、さらにシ
リカ、ソーダガラス、ホウ珪酸ガラス等のガラス類によ
る処理や前記した陽極酸化皮膜形成処理が好適に用いる
られる。このうち、陽極酸化処理は、陽極酸化条件の選
択により、所定の空隙となるマイクロポアを形成でき
る。陽極酸化条件やその後処理の条件によりマイクロポ
アの容積を制御することにより所望の低密度皮膜を容易
に形成しうる観点から好ましい。
【0088】具体的な皮膜密度の制御方法としては、電
流密度を低くして、長時間陽極酸化を行うことで、小さ
な空孔が多数形成され、良好な低密度皮膜が形成される
傾向にある。また、電解液の温度を高くしたり、電解液
の濃度を高くすると、陽極酸化皮膜の表面に形成される
空孔の直径が大きくなる傾向があることが知られてお
り、これと後述する封孔処理とを組み合わせて所望の密
度の皮膜を形成してもよい。また、陽極酸化処理後に酸
やアルカリ溶液でマイクロポアを溶解することにより、
一旦形成された陽極酸化皮膜を低密度化する方法を用い
ることもできる。なお、これらの制御方法については、
当業者が適宜選択することができる。
【0089】上記の条件で、低密度皮膜を形成するが、
形成された皮膜の密度は、例えば、メイソン法(クロム
酸/燐酸混合液溶解による陽極酸化皮膜重量法)による
重量測定と、断面をSEMで観察して求めた膜厚から、
以下の式によって算出することができる。 密度(kg/m3 )=(単位面積あたりの皮膜重量/膜
厚) ここで形成された皮膜の密度が1000kg/m3 未満
では皮膜強度が低くなり、画像形成性や耐刷性などに悪
影響を及ぼす可能性があり、3200kg/m 3 を超え
ると充分な断熱性が得られず、感度向上効果が低くな
る。
【0090】親水性皮膜の空隙率は、20〜70%であ
るのが好ましく、30〜60%であるのがより好まし
く、40〜50%であるのが特に好ましい。親水性皮膜
の空隙率が20%以上であると、支持体への熱拡散の抑
制が十分となり、高感度化の効果が十分に得られる。親
水性皮膜の空隙率が70%以下であると、非画像部に汚
れが発生する問題がより起こりにくくなる。ここで、親
水性皮膜の空隙率とは、皮膜中の空孔部分の体積比率を
意味し、陽極酸化皮膜の場合にはSEM観察で求められ
たポア径、深さ、ポアの数からこの比率を求めることが
できる。
【0091】1000〜3200kg/m3 の密度の皮
膜を作成後、支持体表面積を見掛けの表面積の1から3
0倍にするための後述の封孔処理がなされる。ここでい
う見掛けの表面積とは、例えば100mm×100mm
の印刷版の場合、粗面化処理および陽極酸化処理が片面
のみになされている場合には10000mm2 をさし、
両面とも処理されて両面とも印刷版として使用される場
合には20000mm 2 を指す。
【0092】<封孔処理>本発明においては、必要に応
じて陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封じる封孔
処理を行ってもよい。封孔処理は、沸騰水処理、熱水処
理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、亜硝酸塩処理、酢酸
アンモニウム処理等の公知の方法に従って行うことがで
きる。例えば、特公昭56−12518号公報、特開平
4−4194号公報、特願平4−33952号明細書
(特開平5−202496号公報)、特願平4−339
51号明細書(特開平5−179482号公報)等に記
載されている装置および方法で封孔処理を行ってもよ
い。
【0093】<親水化処理>陽極酸化処理後または封孔
処理後、親水化処理を行ってもよい。親水化処理として
は、例えば、米国特許第2,946,638号明細書に
記載されているフッ化ジルコニウム酸カリウム処理、米
国特許第3,201,247号明細書に記載されている
ホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,55
9号に記載されているアルキルチタネート処理、独国特
許第1,091,433号明細書に記載されているポリ
アクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細
書および英国特許第1,230,447号明細書に記載
されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6
409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特
許第3,307,951号明細書に記載されているフィ
チン酸処理、特開昭58−16893号公報および特開
昭58−18291号公報に記載されている親油性有機
高分子化合物と2価の金属との塩による処理、米国特許
第3,860,426号明細書に記載されているよう
に、水溶性金属塩(例えば、酢酸亜鉛)を含む親水性セ
ルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)の下
塗層を設ける処理、特開昭59−101651号公報に
記載されているスルホ基を有する水溶性重合体を下塗り
する処理が挙げられる。
【0094】また、特開昭62−019494号公報に
記載されているリン酸塩、特開昭62−033692号
公報に記載されている水溶性エポキシ化合物、特開昭6
2−097892号公報に記載されているリン酸変性デ
ンプン、特開昭63−056498号公報に記載されて
いるジアミン化合物、特開昭63−130391号公報
に記載されているアミノ酸の無機または有機酸、特開昭
63−145092号公報に記載されているカルボキシ
基またはヒドロキシ基を含む有機ホスホン酸、特開昭6
3−165183号公報に記載されているアミノ基とホ
スホン酸基を有する化合物、特開平2−316290号
公報に記載されている特定のカルボン酸誘導体、特開平
3−215095号公報に記載されているリン酸エステ
ル、特開平3−261592号公報に記載されている1
個のアミノ基とリンの酸素酸基1個を持つ化合物、特開
平3−215095号公報に記載されているリン酸エス
テル、特開平5−246171号公報に記載されている
フェニルホスホン酸等の脂肪族または芳香族ホスホン
酸、特開平1−307745号公報に記載されているチ
オサリチル酸のようなS原子を含む化合物、特開平4−
282637号公報に記載されているリンの酸素酸のグ
ループを持つ化合物等を用いた下塗りによる処理も挙げ
られる。更に、特開昭60−64352号公報に記載さ
れている酸性染料による着色を行うこともできる。
【0095】また、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアル
カリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸せきさせる方法、親水性
ビニルポリマーまたは親水性化合物を塗布して親水性の
下塗層を形成させる方法等により、親水化処理を行うの
が好ましい。
【0096】ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金
属ケイ酸塩の水溶液による親水化処理は、米国特許第
2,714,066号明細書および米国特許第3,18
1,461号明細書に記載されている方法および手順に
従って行うことができる。アルカリ金属ケイ酸塩として
は、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ
酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶
液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチ
ウム等を適当量含有してもよい。また、アルカリ金属ケ
イ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第
IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属
塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチ
ウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫
酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸
塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、
例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカ
リウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ
化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウ
ム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙
げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第
IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせ
て用いられる。
【0097】アルカリ金属ケイ酸塩処理によって吸着す
るSi量は蛍光X線分析装置により測定することがで
き、その吸着量は約1.0〜15.0mg/m2 である
のが好ましい。このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、
平版印刷版用支持体の表面のアルカリ現像液に対する耐
溶解性向上の効果が得られ、アルミニウム成分の現像液
中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像
カスの発生を低減することができる。本発明の平版印刷
版用支持体は、上述したように、ΔSが大きく、画像記
録層と支持体との接着性に優れるので、アルカリ金属ケ
イ酸塩処理を行った場合であっても、十分な耐刷性が得
られる。したがって、アルカリ金属ケイ酸塩処理を行っ
ても、耐刷性の低下のおそれなく、耐汚れ性の向上およ
び現像カス発生の低減という利点のみを享受することが
できる。
【0098】また、親水性の下塗層の形成による親水化
処理は、特開昭59−101651号公報および特開昭
60−149491号公報に記載されている条件および
手順に従って行うこともできる。この方法に用いられる
親水性ビニルポリマーとしては、例えば、ポリビニルス
ルホン酸、スルホ基を有するp−スチレンスルホン酸等
のスルホ基含有ビニル重合性化合物と(メタ)アクリル
酸アルキルエステル等の通常のビニル重合性化合物との
共重合体が挙げられる。また、この方法に用いられる親
水性化合物としては、例えば、−NH2 基、−COOH
基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも一
つを有する化合物が挙げられる。
【0099】<水洗処理>上述した各処理の工程終了後
には水洗を行うのが好ましい。水洗には、純水、井水、
水道水等を用いることができる。処理液の次工程への持
ち込みを防ぐためにニップ装置を用いてもよい。
【0100】<アルミニウム板(圧延アルミ)>本発明
の平版印刷版用支持体を得るためには公知のアルミニウ
ム板を用いることができる。本発明に用いられるアルミ
ニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とす
る金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金か
らなる。純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成
分とし微量の異元素を含む合金板を用いることもでき
る。
【0101】本明細書においては、上述したアルミニウ
ムまたはアルミニウム合金からなる各種の基板をアルミ
ニウム板と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含
まれてもよい異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、
マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チ
タン等があり、合金中の異元素の含有量は10質量%以
下である。
【0102】このように本発明に用いられるアルミニウ
ム板は、その組成が特定されるものではなく、例えば、
アルミニウムハンドブック第4版(1990年、軽金属
協会発行)に記載されている従来公知の素材、例えば、
JIS A1050、JISA1100、JIS A1
070、Mnを含むJIS A3004、国際登録合金
3103A等のAl−Mn系アルミニウム板を適宜利
用することができる。また、引張強度を増す目的で、こ
れらのアルミニウム合金に0.1質量%以上のマグネシ
ウムを添加したAl−Mg系合金、Al−Mn−Mg系
合金(JISA3005)を用いることもできる。更
に、ZrやSiを含むAl−Zr系合金やAl−Si系
合金を用いることもできる。更に、Al−Mg−Si系
合金を用いることもできる。
【0103】JIS1050材に関しては、本願出願人
によって提案された技術が、特開昭59−153861
号、特開昭61−51395号、特開昭62−1466
94号、特開昭60−215725号、特開昭60−2
15726号、特開昭60−215727号、特開昭6
0−216728号、特開昭61−272367号、特
開昭58−11759号、特開昭58−42493号、
特開昭58−221254号、特開昭62−14829
5号、特開平4−254545号、特開平4−1650
41号、特公平3−68939号、特開平3−2345
94号、特公平1−47545号および特開昭62−1
40894号の各公報に記載されている。また、特公平
1−35910号公報、特公昭55−28874号公報
等に記載された技術も知られている。
【0104】JIS1070材に関しては、本願出願人
によって提案された技術が、特開平7−81264号、
特開平7−305133号、特開平8−49034号、
特開平8−73974号、特開平8−108659号お
よび特開平8−92679号の各公報に記載されてい
る。
【0105】Al−Mg系合金に関しては、本願出願人
によって提案された技術が、特公昭62−5080号、
特公昭63−60823号、特公平3−61753号、
特開昭60−203496号、特開昭60−20349
7号、特公平3−11635号、特開昭61−2749
93号、特開昭62−23794号、特開昭63−47
347号、特開昭63−47348号、特開昭63−4
7349号、特開昭64−1293号、特開昭63−1
35294号、特開昭63−87288号、特公平4−
73392号、特公平7−100844号、特開昭62
−149856号、特公平4−73394号、特開昭6
2−181191号、特公平5−76530号、特開昭
63−30294号および特公平6−37116号の各
公報に記載されている。また、特開平2−215599
号公報、特開昭61−201747号公報等にも記載さ
れている。
【0106】Al−Mn系合金に関しては、本願出願人
によって提案された技術が、特開昭60−230951
号、特開平1−306288号および特開平2−293
189号の各公報に記載されている。また、特公昭54
−42284号、特公平4−19290号、特公平4−
19291号、特公平4−19292号、特開昭61−
35995号、特開昭64−51992号、特開平4−
226394号の各公報、米国特許第5,009,72
2号明細書、同第5,028,276号明細書等にも記
載されている。
【0107】Al−Mn−Mg系合金に関しては、本願
出願人によって提案された技術が、特開昭62−861
43号公報および特開平3−222796号公報に記載
されている。また、特公昭63−60824号、特開昭
60−63346号、特開昭60−63347号、特開
平1−293350号の各公報、欧州特許第223,7
37号、米国特許第4,818,300号、英国特許第
1,222,777号の各明細書等にも記載されてい
る。
【0108】Al−Zr系合金に関しては、本願出願人
によって提案された技術が、特公昭63−15978号
公報および特開昭61−51395号公報に記載されて
いる。また、特開昭63−143234号、特開昭63
−143235号の各公報等にも記載されている。
【0109】Al−Mg−Si系合金に関しては、英国
特許第1,421,710号明細書等に記載されてい
る。
【0110】アルミニウム合金を板材とするには、例え
ば、下記の方法を採用することができる。まず、所定の
合金成分含有量に調整したアルミニウム合金溶湯に、常
法に従い、清浄化処理を行い、鋳造する。清浄化処理に
は、溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラ
ックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス
処理、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォー
ムフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、
アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィ
ルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリン
グ処理、あるいは、脱ガス処理とフィルタリング処理を
組み合わせた処理が行われる。
【0111】これらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介
在物、酸化物等の異物による欠陥や、溶湯に溶け込んだ
ガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好まし
い。溶湯のフィルタリングに関しては、特開平6−57
432号、特開平3−162530号、特開平5−14
0659号、特開平4−231425号、特開平4−2
76031号、特開平5−311261号、特開平6−
136466号の各公報等に記載されている。また、溶
湯の脱ガスに関しては、特開平5−51659号公報、
実開平5−49148号公報等に記載されている。本願
出願人も、特開平7−40017号公報において、溶湯
の脱ガスに関する技術を提案している。
【0112】ついで、上述したように清浄化処理を施さ
れた溶湯を用いて鋳造を行う。鋳造方法に関しては、D
C鋳造法に代表される固体鋳型を用いる方法と、連続鋳
造法に代表される駆動鋳型を用いる方法がある。DC鋳
造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で
凝固する。1℃未満であると粗大な金属間化合物が多数
形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚3
00〜800mmの鋳塊を製造することができる。その
鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、
表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削す
る。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行
う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しな
いように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を
行う。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の
効果が不十分となることがある。
【0113】その後、熱間圧延、冷間圧延を行ってアル
ミニウム板の圧延板とする。熱間圧延の開始温度は35
0〜500℃が適当である。熱間圧延の前もしくは後、
またはその途中において、中間焼鈍処理を行ってもよ
い。中間焼鈍処理の条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて2
80〜600℃で2〜20時間、好ましくは350〜5
00℃で2〜10時間加熱するか、連続焼鈍炉を用いて
400〜600℃で6分以下、好ましくは450〜55
0℃で2分以下加熱するかである。連続焼鈍炉を用いて
10〜200℃/秒の昇温速度で加熱して、結晶組織を
細かくすることもできる。
【0114】以上の工程によって、所定の厚さ、例え
ば、0.1〜0.5mmに仕上げられたアルミニウム板
は、更にローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置
によって平面性を改善してもよい。平面性の改善は、ア
ルミニウム板をシート状にカットした後に行ってもよい
が、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状
態で行うことが好ましい。また、所定の板幅に加工する
ため、スリッタラインを通してもよい。また、アルミニ
ウム板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、ア
ルミニウム板の表面に薄い油膜を設けてもよい。油膜に
は、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが
適宜用いられる。
【0115】一方、連続鋳造法としては、双ロール法
(ハンター法)、3C法に代表される冷却ロールを用い
る方法、双ベルト法(ハズレー法)、アルスイスキャス
ターII型に代表される冷却ベルトや冷却ブロックを用
いる方法が、工業的に行われている。連続鋳造法を用い
る場合には、冷却速度が100〜1000℃/秒の範囲
で凝固する。連続鋳造法は、一般的には、DC鋳造法に
比べて冷却速度が速いため、アルミマトリックスに対す
る合金成分固溶度を高くすることができるという特徴を
有する。連続鋳造法に関しては、本願出願人によって提
案された技術が、特開平3−79798号、特開平5−
201166号、特開平5−156414号、特開平6
−262203号、特開平6−122949号、特開平
6−210406号、特開平6−26308号の各公報
等に記載されている。
【0116】連続鋳造を行った場合において、例えば、
ハンター法等の冷却ロールを用いる方法を用いると、板
厚1〜10mmの鋳造板を直接、連続鋳造することがで
き、熱間圧延の工程を省略することができるというメリ
ットが得られる。また、ハズレー法等の冷却ベルトを用
いる方法を用いると、板厚10〜50mmの鋳造板を鋳
造することができ、一般的に、鋳造直後に熱間圧延ロー
ルを配置し連続的に圧延することで、板厚1〜10mm
の連続鋳造圧延板が得られる。
【0117】これらの連続鋳造圧延板は、DC鋳造につ
いて説明したのと同様に、冷間圧延、中間焼鈍、平面性
の改善、スリット等の工程を経て、所定の厚さ、例え
ば、0.1〜0.5mmの板厚に仕上げられる。連続鋳
造法を用いた場合の中間焼鈍条件および冷間圧延条件に
ついては、本願出願人によって提案された技術が、特開
平6−220593号、特開平6−210308号、特
開平7−54111号、特開平8−92709号の各公
報等に記載されている。
【0118】このようにして製造されるアルミニウム板
には、以下に述べる種々の特性が望まれる。アルミニウ
ム板の強度は、平版印刷版用支持体として必要な腰の強
さを得るため、0.2%耐力が140MPa以上である
のが好ましい。また、バーニング処理を行った場合にも
ある程度の腰の強さを得るためには、270℃で3〜1
0分間加熱処理した後の0.2%耐力が80MPa以上
であるのが好ましく、100MPa以上であるのがより
好ましい。特に、アルミニウム板に腰の強さを求める場
合は、MgやMnを添加したアルミニウム材料を採用す
ることができるが、腰を強くすると印刷機の版胴へのフ
ィットしやすさが劣ってくるため、用途に応じて、材質
および微量成分の添加量が適宜選択される。これらに関
して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7
−126820号公報、特開昭62−140894号公
報等に記載されている。
【0119】アルミニウム板の結晶組織は、化学的粗面
化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニ
ウム板の表面の結晶組織が面質不良の発生の原因となる
ことがあるので、表面においてあまり粗大でないことが
好ましい。アルミニウム板の表面の結晶組織は、幅が2
00μm以下であるのが好ましく、100μm以下であ
るのがより好ましく、50μm以下であるのが更に好ま
しく、また、結晶組織の長さが5000μm以下である
のが好ましく、1000μm以下であるのがより好まし
く、500μm以下であるのが更に好ましい。これらに
関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平
6−218495号、特開平7−39906号、特開平
7−124609号の各公報等に記載されている。
【0120】アルミニウム板の合金成分分布は、化学的
粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アル
ミニウム板の表面の合金成分の不均一な分布に起因して
面質不良が発生することがあるので、表面においてあま
り不均一でないことが好ましい。これらに関して、本願
出願人によって提案された技術が、特開平6−4805
8号、特開平5−301478号、特開平7−1326
89号の各公報等に記載されている。
【0121】アルミニウム板の金属間化合物は、その金
属間化合物のサイズや密度が、化学的粗面化処理や電気
化学的粗面化処理に影響を与える場合がある。これらに
関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平
7−138687号、特開平4−254545号の各公
報等に記載されている。
【0122】本発明においては、上記に示されるような
アルミニウム板をその最終圧延工程において、積層圧
延、転写等により凹凸を付けて用いることもできる。
【0123】本発明に用いられるアルミニウム板は、連
続した帯状のシート材または板材である。即ち、アルミ
ニウムウェブであってもよく、製品として出荷される平
版印刷版原版に対応する大きさ等に裁断された枚葉状シ
ートであってもよい。アルミニウム板の表面のキズは平
版印刷版用支持体に加工した場合に欠陥となる可能性が
あるため、平版印刷版用支持体とする表面処理工程の前
の段階でのキズの発生は可能な限り抑制する必要があ
る。そのためには安定した形態で運搬時に傷付きにくい
荷姿であることが好ましい。アルミニウムウェブの場
合、アルミニウムの荷姿としては、例えば、鉄製パレッ
トにハードボードとフェルトとを敷き、製品両端に段ボ
ールドーナツ板を当て、ポリチュ−ブで全体を包み、コ
イル内径部に木製ドーナツを挿入し、コイル外周部にフ
ェルトを当て、帯鉄で絞め、その外周部に表示を行う。
また、包装材としては、ポリエチレンフィルム、緩衝材
としては、ニードルフェルト、ハードボードを用いるこ
とができる。この他にもいろいろな形態があるが、安定
して、キズも付かず運送等が可能であればこの方法に限
るものではない。
【0124】本発明に用いられるアルミニウム板の厚み
は、0.1mm〜0.6mm程度であり、0.15mm
〜0.4mmであるのが好ましく、0.2mm〜0.3
mmであるのがより好ましい。この厚みは、印刷機の大
きさ、印刷版の大きさ、ユーザーの希望等により適宜変
更することができる。
【0125】[平版印刷版原版]本発明の平版印刷版用
支持体には、以下に例示する感光層、感熱層等の画像記
録層を設けて本発明の平版印刷版用原版とすることがで
きる。本発明では、画像記録層は、熱を利用して画像を
形成するタイプであれば特に限定されないが、例えば、
サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、無処理タイ
プが好適に挙げられる。以下、これらの好適な画像記録
層について、詳細に説明する。
【0126】<サーマルポジタイプ> (感熱層)サーマルポジタイプの感熱層は、水不溶性か
つアルカリ可溶性の高分子化合物(以下、「アルカリ可
溶性高分子化合物」という。)と光熱変換物質とを含有
する。ここで、アルカリ可溶性高分子化合物は、高分子
中の主鎖および/または側鎖に酸性基を含有する単独重
合体、これらの共重合体、およびこれらの混合物を包含
する。したがって、サーマルポジタイプの感熱層は、ア
ルカリ現像液に接触すると溶解する特性を有する。アル
カリ可溶性高分子化合物としては、下記(1)〜(6)
の酸性基のうち少なくとも一つを高分子の主鎖および/
または側鎖中に有するものが、アルカリ現像液に対する
溶解性の点で好ましい。
【0127】 (1)フェノール性ヒドロキシ基(−Ar−OH) (2)スルホンアミド基(−SO2 NH−R) (3)置換スルホンアミド系酸基(−SO2 NHCO
R、−SO2 NHSO2R、−CONHSO2 R)(以
下「活性イミド基」という。) (4)カルボキシ基(−CO2 H) (5)スルホ基(−SO3 H) (6)リン酸基(−OPO3 2
【0128】上記(1)〜(6)中、Arは、置換基を
有していてもよい2価のアリール連結基を表す。Rは、
置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0129】上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を
有するアルカリ可溶性高分子化合物の中でも、(1)フ
ェノール基、(2)スルホンアミド基および(3)活性
イミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物が好まし
く、特に、(1)フェノール基または(2)スルホンア
ミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物が、アルカ
リ現像液に対する溶解性、膜強度を十分に確保する点か
ら最も好ましい。
【0130】つぎに、これらのアルカリ可溶性高分子化
合物の重合成分の代表的な例について述べる。 (1)フェノール性ヒドロキシ基を有する重合性モノマ
ーとしては、フェノール性ヒドロキシ基と、重合可能な
不飽和結合とをそれぞれ一つ以上有する低分子化合物か
らなる重合性モノマーが挙げられ、例えば、フェノール
性ヒドロキシ基を有するアクリルアミド、メタクリルア
ミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルまた
はヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0131】具体的には、例えば、N−(2−ヒドロキ
シフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフ
ェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニ
ル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)
メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メ
タクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタ
クリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、
m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシ
フェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタク
リレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p
−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシ
スチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシス
チレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリ
レート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリ
レート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリ
レート、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタク
リレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタ
クリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメ
タクリレート等が挙げられる。これらフェノール性ヒド
ロキシ基を有するモノマーは、2種以上を組み合わせて
使用してもよい。
【0132】(2)スルホンアミド基を有する重合性モ
ノマーとしては、1分子中、窒素原子に少なくとも一つ
の水素原子が結合したスルホンアミド基(−NH−SO
2 −)と、重合可能な不飽和結合とをそれぞれ一つ以上
有する低分子化合物からなる重合性モノマーが挙げら
れ、例えば、アクリロイル基、アリル基またはビニロキ
シ基と、モノ置換アミノスルホニル基または置換スルホ
ニルイミノ基とを有する低分子化合物が好ましい。この
ような化合物としては、例えば、特開平8−12302
9号公報に記載されている一般式(I)〜(V)で示さ
れる化合物が挙げられる。
【0133】(2)スルホンアミド基を有する重合性モ
ノマーとして、具体的には、m−アミノスルホニルフェ
ニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェ
ニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニル
フェニル)アクリルアミド等を好適に使用することがで
きる。
【0134】(3)活性イミド基を有する重合性モノマ
ーとしては、特開平11−84657号公報に記載され
ている活性イミド基を分子内に有するものが好ましく、
1分子中に、活性イミド基と、重合可能な不飽和結合を
それぞれ一つ以上有する低分子化合物とからなる重合性
モノマーが挙げられる。 (3)活性イミド基を有する重合性モノマーとしては、
具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリ
ルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルア
ミド等を好適に使用することができる。
【0135】(4)カルボキシ基を有するアルカリ可溶
性高分子化合物としては、例えば、1分子中に、カルボ
キシ基と、重合可能な不飽和基とをそれぞれ一つ以上有
する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とす
る重合体を挙げることができる。 (5)スルホ基を有するアルカリ可溶性高分子化合物と
しては、例えば、1分子中に、スルホ基と、重合可能な
不飽和基とをそれぞれ一つ以上有する化合物に由来する
最小構成単位を主要構成単位とする重合体を挙げること
ができる。 (6)リン酸基を有するアルカリ可溶性高分子化合物と
しては、例えば、1分子中に、リン酸基と、重合可能な
不飽和基とをそれぞれ一つ以上有する化合物に由来する
最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げること
ができる。
【0136】サーマルポジタイプの感熱層に用いられる
アルカリ可溶性高分子化合物を構成する、上記(1)〜
(6)より選ばれる酸性基を有する最小構成単位は、特
に1種のみである必要はなく、同一の酸性基を有する最
小構成単位を2種以上、または異なる酸性基を有する最
小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることも
できる。共重合の方法としては、従来公知のグラフト共
重合法、ブロック共重合法、ランダム共重合法等を用い
ることができる。
【0137】前記共重合体は、共重合させる上記(1)
〜(6)より選ばれる酸性基を有する化合物が共重合体
中に10モル%以上含まれているのが好ましく、20モ
ル%以上含まれているのがより好ましい。10モル%未
満であると、現像ラチチュードを十分に向上させること
ができない傾向がある。
【0138】本発明では、化合物を共重合して共重合体
を形成する場合、その化合物として、上記(1)〜
(6)の酸性基を含まない他の化合物を用いることもで
きる。(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物の
例としては、下記(m1)〜(m12)の化合物を例示
することができるが、本発明はこれらに限定されるもの
ではない。
【0139】(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレー
ト、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族ヒ
ドロキシ基を有するアクリル酸エステル類およびメタク
リル酸エステル類、(m2)アクリル酸メチル、アクリ
ル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、
アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オ
クチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロ
エチル、グリシジルアクリレート等のアルキルアクリレ
ート、(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチ
ル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタ
クリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸
シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸
−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート等のア
ルキルメタクリレート、
【0140】(m4)アクリルアミド、メタクリルアミ
ド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリ
ルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロ
ヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリ
ルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフ
ェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアク
リルアミド等のアクリルアミドまたはメタクリルアミ
ド、(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチル
ビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プ
ロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチ
ルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニル
エーテル類、(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロ
アセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビ
ニルエステル類、
【0141】(m7)スチレン、α−メチルスチレン、
メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン
類、(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケト
ン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等の
ビニルケトン類、(m9)エチレン、プロピレン、イソ
ブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類、
【0142】(m10)N−ビニルピロリドン、アクリ
ロニトリル、メタクリロニトリル等、(m11)マレイ
ミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチル
メタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミ
ド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等
の不飽和イミド、(m12)アクリル酸、メタクリル
酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン
酸。
【0143】アルカリ可溶性高分子化合物としては、赤
外線レーザ等による露光での画像形成性に優れる点で、
フェノール性ヒドロキシ基を有することが好ましく、例
えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾー
ルホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデ
ヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド
樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−
/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹
脂等のノボラック樹脂;ピロガロールアセトン樹脂が好
ましく挙げられる。
【0144】また、フェノール性ヒドロキシ基を有する
アルカリ可溶性高分子化合物としては、更に、米国特許
第4,123,279号明細書に記載されているよう
に、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オク
チルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数
3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールと
ホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。アルカリ
可溶性高分子化合物は、その重量平均分子量が500以
上であることが好ましく、1,000〜700,000
であることがより好ましい。また、その数平均分子量が
500以上であることが好ましく、750〜650,0
00であることがより好ましい。分散度(重量平均分子
量/数平均分子量)は1.1〜10であることが好まし
い。
【0145】アルカリ可溶性高分子化合物は、それぞれ
単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、その
合計の含有量が、感熱層の全固形分に対して、1〜90
質量%であるのが好ましく、2〜70質量%であるのが
より好ましく、2〜50質量%であるのが更に好まし
い。含有量が1質量%未満であると、耐久性が悪化する
傾向にあり、また、90質量%を超えると、感度および
画像形成性が低下する傾向があるため好ましくない。
【0146】本発明に用いられる光熱変換物質は、光を
吸収して発熱する物質である。光熱変換物質は、露光エ
ネルギーを熱に変換して感熱層の露光部領域の相互作用
解除を効率よく行うことを可能とする。本発明における
光熱変換物質は、記録に用いられる光を吸収して熱に変
換する機能を有するものであれば特に限定されないが、
記録感度の観点から、波長700〜1200nmの赤外
域に光吸収域がある顔料または染料が好ましい。
【0147】前記顔料としては、市販の顔料、ならび
に、カラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料
便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新
顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)および
「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載
されている顔料を利用することができる。
【0148】前記顔料の種類としては、例えば、黒色顔
料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、
紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔
料、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶
性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレート
アゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔
料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔
料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソイ
ンドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ
顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔
料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラックを用いるこ
とができる。
【0149】これらの顔料は表面処理をせずに用いても
よく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法
には樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤
を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップ
リング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート)を顔
料表面に結合させる方法等が挙げられる。上記の表面処
理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印
刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および
「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に
記載されている。
【0150】前記顔料の粒径は、0.01〜10μmの
範囲にあるのが好ましく、0.05〜1μmの範囲にあ
るのがより好ましく、0.1〜1μmの範囲にあるのが
更に好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満であると
分散物の感熱層塗布液中での安定性の点で好ましくな
く、また、10μmを超えると感熱層の均一性の点で好
ましくない。
【0151】前記顔料を分散する方法としては、インキ
製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用
できる。分散機としては、例えば、超音波分散器、サン
ドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボ
ールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロ
イドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダ
ーが挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CM
C出版、1986年刊)に記載がある。
【0152】前記染料としては、市販の染料および文献
(例えば、「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和4
5年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具
体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンア
ゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタ
ロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染
料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、
ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケル
チオレート錯体)等の染料を用いることができる。
【0153】本発明においては、これらの顔料または染
料の中でも、赤外光または近赤外光を吸収するものが、
赤外光または近赤外光を発光するレーザの利用に適する
点で特に好ましい。
【0154】そのような赤外光または近赤外光を吸収す
る顔料としてはカーボンブラックが好適に用いられる。
また、赤外光または近赤外光を吸収する染料としては、
例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−8
4356号、特開昭59−202829号、特開昭60
−78787号の各公報等に記載されているシアニン染
料、特開昭58−173696号、特開昭58−181
690号、特開昭58−194595号の各公報等に記
載されているメチン染料、特開昭58−112793
号、特開昭58−224793号、特開昭59−481
87号、特開昭59−73996号、特開昭60−52
940号、特開昭60−63744号の各公報等に記載
されているナフトキノン染料、特開昭58−11279
2号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国
特許第434,875号明細書に記載されているシアニ
ン染料、米国特許第5,380,635号明細書に記載
されているジヒドロペリミジンスクアリリウム染料を挙
げることができる。
【0155】また、前記染料として米国特許第5,15
6,938号明細書に記載されている近赤外吸収増感剤
も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,92
4号明細書に記載されている置換されたアリールベンゾ
(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公
報(米国特許第4,327,169号明細書)に記載さ
れているトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−1
81051号、特開昭58−220143号、特開昭5
9−41363号、特開昭59−84248号、特開昭
59−84249号、特開昭59−146063号およ
び特開昭59−146061号の各公報に記載されてい
るピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公
報に記載されているシアニン色素、米国特許第4,28
3,475号明細書に記載されているペンタメチンチオ
ピリリウム塩等、特公平5−13514号公報、特公平
5−19702号公報に記載されているピリリウム化合
物;Epolight III−178、Epolig
ht III−130、Epolight III−1
25、Epolight IV−62A(いずれもエポ
リン社製)等は特に好ましく用いられる。
【0156】また、前記染料として特に好ましい別の例
として、米国特許第4,756,993号明細書中に式
(I)または(II)として記載されている近赤外吸収
染料を挙げることができる。
【0157】これらの顔料または染料の含有量は、感熱
層の全固形分に対して、好ましくは0.01〜50質量
%、より好ましくは0.01〜30質量%、更に好まし
くは0.1〜10質量%、染料の場合、特に好ましくは
0.5〜10質量%、顔料の場合、特に好ましくは1〜
10質量%である。顔料または染料の含有量が0.01
質量%未満であると感度が低くなる場合があり、また、
50質量%を超えると感熱層の均一性が失われ、感熱層
の耐久性が悪くなる場合がある。
【0158】これらの染料または顔料は他の成分と同一
の層に添加してもよいし、別の層を設け、そこへ添加し
てもよい。別の層とする場合、本発明の熱分解性であり
かつ分解しない状態ではアルカリ可溶性高分子化合物の
溶解性を実質的に低下させる物質を含む層に隣接する層
へ添加するのが好ましい。
【0159】感熱層は、更に、必要に応じて、種々の添
加剤を含有することができる。例えば、熱分解性であ
り、分解しない状態ではアルカリ可溶性高分子化合物の
溶解性を実質的に低下させる物質を併用すると、画像部
の現像液への溶解阻止性の向上を図ることができるの
で、好ましい。そのような物質としては、例えば、オニ
ウム塩、キノンジアジド類、芳香族スルホン化合物、芳
香族スルホン酸エステル化合物が挙げられる。
【0160】オニウム塩としては、例えば、ジアゾニウ
ム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム
塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩
が挙げられる。
【0161】中でも、好適なものとしては、例えば、
S.I.Schlesinger,Photogr.S
ci.Eng.,18,387(1974)、T.S.
Balet al,Polymer,21,423(1
980)および特開平5−158230号公報に記載さ
れているジアゾニウム塩、米国特許第4,069,05
5号明細書、同4,069,056号明細書および特開
平3−140140号公報に記載されているアンモニウ
ム塩、D.C.Necker et al,Macro
molecules,17,2468(1984)、
C.S.Wenet al,Teh,Proc.Con
f.Rad.Curing ASIA,p.478,T
okyo,Oct(1988)、米国特許第4,06
9,055号明細書および同4,069,056号明細
書に記載されているホスホニウム塩、J.V.Criv
ello et al,Macromorecule
s,10(6),1307(1977)、Chem.&
amp、Eng.News,Nov.28,p31
(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許
第339,049号、同第410,201号の各明細
書、特開平2−150848号公報および特開平2−2
96514号公報に記載されているヨードニウム塩、
J.V.Crivello et al,Polyme
r J.17,73(1985)、J.V.Crive
llo et al.J.Org.Chem.,43,
3055(1978)、W.R.Watt et a
l,J.Polymer Sci.,Polymer
Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.
V.Crivello et al,Polymer
Bull.,14,279(1985)、J.V.Cr
ivello et al,Macromorecul
es,14(5),1141(1981)、J.V.C
rivello et al,J.Polymer S
ci.,Polymer Chem.Ed.,17,2
877(1979)、欧州特許第370,693号、同
第233,567号、同第297,443号、同第29
7,442号、米国特許第4,933,377号、同第
3,902,114号、同第410,201号、同第3
39,049号、同第4,760,013号、同第4,
734,444号、同第2,833,827号、独国特
許第2,904,626号、同第3,604,580号
および同第3,604,581号の各明細書に記載され
ているスルホニウム塩、J.V.Crivello e
t al,Macromorecules,10
(6),1307(1977)およびJ.V.Criv
elloet al,J.Polymer Sci.,
Polymer Chem.Ed.,17,1047
(1979)に記載されているセレノニウム塩、C.
S.Wen et al,Teh,Proc.Con
f.Rad.Curing ASIA,p478,To
kyo,Oct(1988)に記載されているアルソニ
ウム塩が挙げられる。
【0162】オニウム塩の対イオンとしては、例えば、
四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナ
フタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホ
ン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼ
ンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホ
ン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベン
ゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−
フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベン
ゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2
−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼ
ンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸が挙げられる。
中でも、六フッ化リン酸;トリイソプロピルナフタレン
スルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸等の
アルキル芳香族スルホン酸が好ましい。
【0163】好適なキノンジアジド類としてはo−キノ
ンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用い
られるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個の
o−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解により
アルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物
を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは
熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キ
ノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化するこ
との両方の効果により感材系の溶解性を助ける。
【0164】本発明に用いられるo−キノンジアジド化
合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−セン
シティブ・システムズ」(John Wiley &
Sons.Inc.)p.339−352に記載されて
いる化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒド
ロキシ化合物または芳香族アミノ化合物と反応させたo
−キノンジアジドのスルホン酸エステルまたはスルホン
酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403
号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)
−ジアジドスルホン酸クロライドまたはナフトキノン−
(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピ
ロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第
3,046,120号明細書および同第3,188,2
10号明細書に記載されているベンゾキノン−(1,
2)−ジアジドスルホン酸クロライドまたはナフトキノ
ン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライド
とフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好
適に使用される。
【0165】更に、ナフトキノン−(1,2)−ジアジ
ド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアル
デヒド樹脂またはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂と
のエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4
−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂
とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用
なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許文
献に報告され知られている。例えば、特開昭47−53
03号、特開昭48−63802号、特開昭48−63
803号、特開昭48−96575号、特開昭49−3
8701号、特開昭48−13354号、特公昭41−
11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−
17481号等の各公報、米国特許第2,797,21
3号、同第3,454,400号、同第3,544,3
23号、同第3,573,917号、同第3,674,
495号、同第3,785,825号、英国特許第1,
227,602号、同第1,251,345号、同第
1,267,005号、同第1,329,888号、同
第1,330,932号、独国特許第854,890号
等の各明細書に記載されているものを挙げることができ
る。
【0166】オニウム塩やo−キノンジアジド化合物の
添加量は、感熱層の全固形分に対して、好ましくは1〜
50質量%、より好ましくは5〜30質量%、更に好ま
しくは10〜30質量%の範囲である。これらの化合物
は単一で使用できるが、2種以上の混合物として使用し
てもよい。
【0167】また、画像のディスクリミネーション(疎
水性/親水性の識別性)の強化や表面のキズに対する抵
抗力を強化する目的で、特開2000−187318号
公報に記載されているような、分子中に炭素数3〜20
のパーフルオロアルキル基を2個または3個有する(メ
タ)アクリレート単量体を重合成分とする重合体を併用
することができる。このような化合物の含有量は、感熱
層の全固形分に対して、0.1〜10質量%であるのが
好ましく、0.5〜5質量%であるのがより好ましい。
【0168】感熱層には、キズに対する抵抗性を付与す
る目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を含有
させることもできる。具体的には、米国特許第6,11
7,913号明細書に記載されているような、長鎖アル
キルカルボン酸のエステル等を挙げることができる。こ
のような化合物の含有量は、感熱層の全固形分に対し
て、0.1〜10質量%であるのが好ましく、0.5〜
5質量%であるのがより好ましい。
【0169】また、感熱層には、必要に応じて、低分子
量の酸性基を有する化合物を含有させてもよい。酸性基
としては、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基を挙げる
ことができる。中でもスルホ基を有する化合物が好まし
い。具体的には、p−トルエンスルホン酸、ナフタレン
スルホン酸等の芳香族スルホン酸類;脂肪族スルホン酸
類を挙げることができる。
【0170】また、感熱層は、更に感度を向上させる目
的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を含有
することもできる。環状酸無水物類としては、例えば、
米国特許第4,115,128号明細書に記載されてい
る無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒ
ドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テト
ラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無
水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無
水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸が挙
げられる。
【0171】フェノール類としては、例えば、ビスフェ
ノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノ
ール、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、
2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒド
ロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキ
シトリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラ
ヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフ
ェニルメタンが挙げられる。
【0172】有機酸類としては、例えば、特開昭60−
88942号公報、特開平2−96755号公報等に記
載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキ
ル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類、カルボン
酸類が挙げられる。具体的には、例えば、p−トルエン
スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエ
ンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フ
ェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニ
ル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイ
ル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフ
タル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、
エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビ
ン酸が挙げられる。
【0173】上記の環状酸無水物類、フェノール類およ
び有機酸類の含有量は、添加される層の全固形分に対し
て、0.05〜20質量%であるのが好ましく、0.1
〜15質量%であるのがより好ましく、0.1〜10質
量%であるのが特に好ましい。
【0174】また、感熱層は、現像条件の変化に対する
処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740
号公報および特開平3−208514号公報に記載され
ているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121
044号公報および特開平4−13149号公報に記載
されているような両性界面活性剤、欧州特許出願公開第
950,517号明細書に記載されているようなシロキ
サン系化合物、特開平11−288093号公報に記載
されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を含有
することができる。
【0175】非イオン界面活性剤の具体例としては、ソ
ルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテー
ト、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセ
リド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが挙
げられる。両性界面活性剤の具体例としては、アルキル
ジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチ
ルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチ
ル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、
N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品
名「アモーゲンK」、第一工業社製)が挙げられる。上
記非イオン界面活性剤および両性界面活性剤の添加量
は、それぞれ、添加される層の全固形分に対して、0.
05〜15質量%であるのが好ましく、0.1〜5質量
%であるのがより好ましい。
【0176】また、感熱層は、露光による加熱後直ちに
可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての
染料や顔料を含有することができる。焼き出し剤として
は、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸
放出剤)と塩を形成しうる有機染料との組み合わせが例
示される。具体的には、特開昭50−36209号公報
および特開昭53−8128号公報に記載されているo
−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと
塩形成性有機染料の組み合わせ、特開昭53−3622
3号、特開昭54−74728号、特開昭60−362
6号、特開昭61−143748号、特開昭61−15
1644号および特開昭63−58440号の各公報に
記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染
料との組み合わせが挙げられる。かかるトリハロメチル
化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系
化合物とがあり、いずれも経時安定性に優れ、明瞭な焼
き出し画像を与える。
【0177】画像着色剤としては、前述の塩形成性有機
染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有
機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性
染料が挙げられる。具体的には、例えば、オイルイエロ
ー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#
312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オ
イルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラ
ックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント
化学工業社製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタル
バイオレット(C.I.42555)、メチルバイオレ
ット(C.I.42535)、エチルバイオレット、ロ
ーダミンB(C.I.145170B)、マラカイトグ
リーン(C.I.42000)、メチレンブルー(C.
I.52015)が挙げられる。また、特開昭62−2
93247号公報および特開平5−313359号公報
に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料の
添加量は、添加される層の全固形分に対して、0.01
〜10質量%であるのが好ましく、0.1〜3質量%で
あるのがより好ましい。
【0178】また、感熱層は、塗膜の柔軟性等を付与す
るために、必要に応じ、可塑剤を含有することができ
る。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコー
ル、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸
ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、
リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオ
クチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル
酸またはメタクリル酸のオリゴマーおよびポリマーが用
いられる。本発明の感熱層は1層でもよいし、特開平1
1−218914号公報に記載されているような2層構
造として設けてもよい。
【0179】感熱層は、通常、上記各成分を溶媒に溶か
して得られる感熱層塗布液を、平版印刷版用支持体上に
塗布することにより製造することができる。ここで使用
する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキ
サノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノー
ル、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエー
テル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシ
エチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテ
ート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、
N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホル
ムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリド
ン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラ
クトン、トルエン等を挙げることができるが、これに限
定されるものではない。これらの溶媒は単独でまたは混
合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全
固形分)の濃度は、1〜50質量%であるのが好まし
い。
【0180】塗布する方法としては、種々の方法を用い
ることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗
布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エア
ーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げるこ
とができる。
【0181】また、感熱層の塗布量(固形分)は、用途
によって異なるが、一般的に0.5〜5.0g/m2
あるのが好ましい。上記範囲より塗布量が少なくなる
と、見かけの感度は大になるが、画像記録の機能を果た
す感熱層の皮膜特性が低下する。
【0182】本発明における感熱層には、塗布性を改善
するための界面活性剤、例えば、特開昭62−1709
50号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤
を添加することができる。界面活性剤の添加量は、感熱
層の全固形分に対して、0.01〜1質量%であるのが
好ましく、0.05〜0.5質量%であるのがより好ま
しい。
【0183】(下塗層)サーマルポジタイプの感熱層と
支持体との間には、必要に応じて、下塗層を設けること
ができる。下塗層に含有される成分としては種々の有機
化合物が挙げられる。例えば、カルボキシメチルセルロ
ース;デキストリン;アラビアガム;2−アミノエチル
ホスホン酸等のアミノ基を有するホスホン酸類、置換基
を有していてもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホス
ホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メ
チレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸等の有機ホ
スホン酸;置換基を有していてもよいフェニルリン酸、
ナフチルリン酸、アルキルリン酸、グリセロリン酸等の
有機リン酸;置換基を有していてもよいフェニルホスフ
ィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン
酸、グリセロホスフィン酸等の有機ホスフィン酸;グリ
シン、β−アラニン等のアミノ酸類;トリエタノールア
ミンの塩酸塩等のヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩
等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以
上混合して用いてもよい。
【0184】下塗層は次のような方法で設けることがで
きる。即ち、水もしくはメタノール、エタノール、メチ
ルエチルケトン等の有機溶剤またはそれらの混合溶剤に
上記の有機化合物を溶解させた溶液を平版印刷版用支持
体上に塗布し乾燥させて設ける方法と、水もしくはメタ
ノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤
またはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させ
た溶液に、アルミニウム板を浸せきさせて上記化合物を
吸着させ、その後水等によって洗浄し乾燥させて設ける
方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の好ま
しくは0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方
法で塗布することができる。また、後者の方法では、溶
液の濃度は好ましくは0.01〜20質量%、より好ま
しくは0.05〜5質量%であり、浸せき温度は好まし
くは20〜90℃、より好ましくは25〜50℃であ
り、浸せき時間は好ましくは0.1秒〜20分、より好
ましくは2秒〜1分である。上記方法に用いる溶液は、
アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウム等の塩
基性物質や、塩酸、リン酸等の酸性物質により、pH1
〜12の範囲に調整することもできる。また、画像記録
材料の調子再現性改良のために黄色染料を含有すること
もできる。下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2
あるのが適当であり、5〜100mg/m2 であるのが
好ましい。被覆量が2mg/m2 未満であると、十分な
耐刷性が得られない場合がある。また、200mg/m
2 を超えても同様である。
【0185】上記のようにして作成されたサーマルポジ
タイプの感熱層を有する平版印刷版用原版は、通常、像
露光および現像処理が施される。像露光に用いられる活
性光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長
を持つ光源が好ましく、中でも、固体レーザ、半導体レ
ーザが好ましい。発光波長としては、760〜850n
mが好ましい。
【0186】<サーマルネガタイプ> (感熱層)サーマルネガタイプの感熱層は、赤外線レー
ザ照射部が硬化して画像部を形成するネガ型の感熱層で
あれば、いずれのものも適用することができる。このよ
うなサーマルネガタイプの感熱層の一つとして、光重合
層が好適に挙げられる。光重合層は、(A)赤外線吸収
剤と、(B)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)
と、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化す
る(C)ラジカル重合性化合物とを含有し、好ましくは
更に(D)バインダーポリマーを含有する。光重合層に
おいては、赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換
し、この際発生した熱により、オニウム塩等のラジカル
重合開始剤が分解し、ラジカルが発生する。ラジカル重
合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重
結合を有し、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1
個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれ、発生
したラジカルにより連鎖的に重合反応が生起し、硬化す
る。
【0187】また、光重合層のほかに、サーマルネガタ
イプの感熱層の一つとして、酸架橋層が好適に挙げられ
る。酸架橋層は、(E)光または熱により酸を発生する
化合物(以下「酸発生剤」という。)と、(F)発生し
た酸により架橋する化合物(以下「架橋剤」という。)
とを含有し、更に、これらを含有する層を形成するため
の、酸の存在下で架橋剤と反応しうる(G)アルカリ可
溶性高分子化合物を含有する。酸架橋層においては、光
照射または加熱により、酸発生剤が分解して発生した酸
が、架橋剤の働きを促進し、架橋剤同士の間または架橋
剤とバインダーポリマーとの間で強固な架橋構造が形成
され、これにより、アルカリ可溶性が低下して、現像剤
に不溶となる。このとき、赤外線レーザのエネルギーを
効率よく使用するため、酸架橋層には(A)赤外線吸収
剤が配合される。
【0188】また、このほかにも、サーマルネガタイプ
の感熱層の一つとして、(H)疎水性熱溶融性樹脂微粒
子が(J)親水性高分子マトリックス中に分散され、露
光部の熱により疎水性のポリマーが溶融し、互いに融着
してポリマーによる疎水性(親インク性)領域、即ち、
画像部を形成する感熱層も好適に挙げられる。
【0189】光重合層に用いられる各化合物について以
下に述べる。(A)赤外線吸収剤赤外線吸収剤は、吸収
した赤外線を熱に変換する機能を有する。赤外線吸収剤
が発生させた熱により、ラジカル発生剤や酸発生剤が分
解し、ラジカルや酸を発生させる。本発明において使用
される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸
収極大を有する染料または顔料である。
【0190】前記染料としては、市販の染料および文献
(例えば、「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和4
5年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具
体的には、例えば、サーマルポジタイプの感熱層に含有
される光熱変換物質として、上記に例示した染料が挙げ
られる。これらの染料のうち特に好ましいものとして、
シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニ
ッケルチオレート錯体が挙げられる。中でも、シアニン
色素が好ましく、特に、下記一般式(I)で示されるシ
アニン色素が最も好ましい。
【0191】
【化1】
【0192】一般式(I)中、X1 は、ハロゲン原子ま
たは−X2 −L1 を表す。ここで、X2 は酸素原子また
は硫黄原子を表し、L1 は炭素原子数1〜12の炭化水
素基を表す。R1 およびR2 は、それぞれ独立に、炭素
原子数1〜12の炭化水素基を示す。感熱層塗布液の保
存安定性から、R1 およびR2 は、それぞれ炭素原子数
2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R
1 とR2 とは互いに結合し、5員環または6員環を形成
していることが特に好ましい。Ar1 およびAr2 は、
それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化
水素基を表す。Y1 およびY2 は、それぞれ独立に、硫
黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレ
ン基を表す。R3 およびR4 は、それぞれ独立に、置換
基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素
基を表す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個
以下のアルコキシ基、カルボキシ基およびスルホ基が挙
げられる。R5 、R6 、R7 およびR8 は、それぞれ独
立に、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素
基を表し、原料の入手性から、水素原子であるのが好ま
しい。Z1-は、対アニオンを示す。ただし、R1 〜R8
のいずれかにスルホ基が置換されている場合は、Z1-
必要ない。Z1-は、感熱層塗布液の保存安定性から、ハ
ロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレー
トイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオンまたはス
ルホン酸イオンであるのが好ましく、過塩素酸イオン、
ヘキサフルオロフォスフェートイオンまたはアリールス
ルホン酸イオンであるのがより好ましい。
【0193】本発明において、好適に用いることのでき
る一般式(I)で示されるシアニン色素の具体例として
は、特願平11−310623号明細書(特開2001
−133969号公報)の段落番号[0017]〜[0
019]に記載されたものを挙げることができる。
【0194】前記顔料としては、市販の顔料、ならび
に、カラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料
便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新
顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)および
「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載
されている顔料を利用することができる。具体的には、
例えば、サーマルポジタイプの感熱層に含有される光熱
変換物質として、上記に例示した顔料が挙げられる。こ
れらの顔料の詳細は、サーマルポジタイプの感熱層に用
いられる顔料と同様である。
【0195】染料または顔料の含有量は、感熱層の全固
形分に対して、0.01〜50質量%であるのが好まし
く、0.1〜10質量%であるのがより好ましく、更
に、染料の場合には、0.5〜10質量%であるのが更
に好ましく、また、顔料の場合には、1.0〜10質量
%であるのが更に好ましい。含有量が0.01質量%未
満であると、感度が低くなることがあり、50質量%を
超えると、平版印刷版とした場合に、非画像部に汚れが
発生することがある。
【0196】(B)ラジカル発生剤 ラジカル発生剤としては、例えば、オニウム塩が挙げら
れる。具体的には、例えば、ヨードニウム塩、ジアゾニ
ウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。これらのオニウ
ム塩は酸発生剤としての機能も有するが、後述するラジ
カル重合性化合物と併用すると、ラジカル重合開始剤と
して機能する。本発明において好適に用いられるオニウ
ム塩は、下記一般式(III)〜(V)で表されるオニ
ウム塩である。
【0197】
【化2】
【0198】上記一般式(III)中、Ar11およびA
12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭
素原子数20個以下のアリール基を表す。このアリール
基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハ
ロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキ
ル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基および炭素
原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z
11- はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオ
ロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン
およびスルホン酸イオンからなる群から選択される対イ
オンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフル
オロフォスフェートイオン、アリールスルホン酸イオン
である。
【0199】上記一般式(IV)中、Ar21は、置換基
を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基
を表す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニト
ロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数
12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のア
リールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミ
ノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭
素原子数12個以下のアリールアミノ基および炭素原子
数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。Z
21- はZ11- と同義の対イオンを表す。
【0200】上記一般式(V)中、R31、R32およびR
33は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素
原子数20個以下の炭化水素基を表す。好ましい置換基
としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個
以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ
基および炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙
げられる。Z31- はZ11- と同義の対イオンを表す。
【0201】本発明において、好適に用いることのでき
るオニウム塩の具体例としては、特願平11−3106
23号明細書(特開2001−133969号公報)の
段落番号[0030]〜[0033]に記載されたもの
を挙げることができる。
【0202】本発明において用いられるオニウム塩は、
極大吸収波長が400nm以下であるのが好ましく、3
60nm以下であるのがより好ましい。このように吸収
波長を紫外線領域にすることにより、本発明の平版印刷
版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
【0203】これらのオニウム塩の含有量は、感熱層の
全固形分に対して、0.1〜50質量%であるのが好ま
しく、0.5〜30質量%であるのがより好ましく、1
〜20質量%であるのが更に好ましい。含有量が0.1
質量%未満であると感度が低くなり、また、50質量%
を超えると印刷時非画像部に汚れが発生する場合があ
る。これらのオニウム塩は、1種のみを用いてもよい
し、2種以上を併用してもよい。また、これらのオニウ
ム塩は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層
を設けそこへ添加してもよい。
【0204】(C)ラジカル重合性化合物 ラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性
不飽和二重結合を有するラジカル重合性化合物であり、
末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましく
は2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合
物群は当該産業分野において広く知られるものであり、
本発明においてはこれらを特に限定なく用いることがで
きる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー(即
ち、2量体、3量体およびオリゴマー)、これらの混合
物、これらの共重合体等の化学的形態を有する。
【0205】モノマーおよびその共重合体の例として
は、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリ
ル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレ
イン酸)や、そのエステル類、アミド類が挙げられる。
好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール
化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と脂肪族多価
アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロ
キシ基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有
する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と、単官能ま
たは多官能のイソシアネート類またはエポキシ類との付
加反応物、単官能または多官能のカルボン酸との脱水縮
合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート
基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カル
ボン酸エステルまたはアミド類と、単官能または多官能
のアルコール類、アミン類またはチオール類との付加反
応物、更に、ハロゲン基、トシルオキシ基等の脱離性置
換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類
と、単官能または多官能のアルコール類、アミン類また
はチオール類との置換反応物も好適である。また、別の
例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和
ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用す
ることも可能である。
【0206】脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カル
ボン酸とのエステルであるラジカル重合性化合物である
アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、イタコン
酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エス
テル、マレイン酸エステルの具体例は、フォトポリマー
タイプの感光層に含有されるエチレン性不飽和結合含有
化合物として、上記に例示したものが挙げられる。
【0207】その他のエステルの例として、例えば、特
公昭46−27926号、特公昭51−47334号お
よび特開昭57−196231号の各公報に記載されて
いる脂肪族アルコール系エステル類、特開昭59−52
40号、特開昭59−5241号および特開平2−22
6149号の各公報に記載されている芳香族系骨格を有
するもの、特開平1−165613号公報に記載されて
いるアミノ基を含有するもの等も好適に挙げられる。
【0208】また、イソシアネート基とヒドロキシ基と
の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化
合物も好適であり、その具体例としては、例えば、特公
昭48−41708号公報に記載されている1分子に2
個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート
化合物に、下記式(VI)で表されるヒドロキシ基を含
有するビニルモノマーを付加させた、1分子中に2個以
上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等
が挙げられる。
【0209】 CH2 =C(R41)COOCH2 CH(R42)OH (VI) (上記式(VI)中、R41およびR42は、それぞれHま
たはCH3 を表す。)
【0210】これらのラジカル重合性化合物について、
どのような構造を用いるか、単独で使用するか2種以上
を併用するか、添加量はどうかといった、使用方法の詳
細は、最終的な記録材料の性能設計にあわせて、任意に
設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が
好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、
画像部、即ち、硬化膜の強度を高くするためには、3官
能以上のものがよく、更に、異なる官能数や異なる重合
性基を有する化合物(例えば、アクリル酸エステル系化
合物、メタクリル酸エステル系化合物、スチレン系化合
物等)を組み合わせて用いることで、感光性と強度の両
方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物
や、疎水性の高い化合物は感度や膜強度に優れる反面、
現像スピードや現像液中での析出という点で好ましくな
い場合がある。また、感熱層中の他の成分(例えば、バ
インダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分
散性に対しても、ラジカル重合化合物の選択および使用
法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用
や、2種以上化合物の併用によって、相溶性を向上させ
うることがある。また、支持体、オーバーコート層等の
密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択すること
もありうる。画像記録層中のラジカル重合性化合物の配
合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多す
ぎる場合には、好ましくない相分離が生じたり、画像記
録層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、記録層
成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液から
の析出が生じるなどの問題を生じうる。
【0211】これらの観点から、ラジカル重合性化合物
の配合比は、多くの場合、感熱層の全固形分に対して、
5〜80質量%であるのが好ましく、20〜75質量%
であるのがより好ましい。また、これらは単独で用いて
もよく、2種以上を併用してもよい。そのほか、ラジカ
ル重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大
小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観
点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更
に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成および
塗布方法も実施しうる。
【0212】(D)バインダーポリマー 本発明においては、更にバインダーポリマーを使用する
のが好ましい。バインダーポリマーとしては線状有機ポ
リマーを用いることが好ましい。線状有機ポリマーとし
ては、どれを使用しても構わない。好ましくは水現像ま
たは弱アルカリ水現像を可能とするために、水または弱
アルカリ水に可溶性または膨潤性である線状有機ポリマ
ーが選択される。線状有機ポリマーは、感熱層を形成す
るための皮膜形成剤としてだけでなく、水または弱アル
カリ水の種類や、有機溶剤現像剤としての用途に応じて
選択使用される。例えば、水可溶性有機ポリマーを用い
ると水現像が可能になる。このような線状有機ポリマー
としては、側鎖にカルボキシ基を有するラジカル重合
体、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−
34327号、特公昭58−12577号、特公昭54
−25957号、特開昭54−92723号、特開昭5
9−53836号、特開昭59−71048号の各公報
に記載されているもの、即ち、メタクリル酸共重合体、
アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸
共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイ
ン酸共重合体等が挙げられる。また、同様に、側鎖にカ
ルボキシ基を有する酸性セルロース誘導体が挙げられ
る。このほかに、ヒドロキシ基を有する重合体に環状酸
無水物を付加させたもの等が有用である。
【0213】特にこれらの中で、ベンジル基またはアリ
ル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリ
ル樹脂が、膜強度、感度および現像性のバランスに優れ
ており、好適である。
【0214】また、特公平7−12004号、特公平7
−120041号、特公平7−120042号、特公平
8−12424号、特開昭63−287944号、特開
昭63−287947号、特開平1−271741号、
特開平11−352691号の各公報等に記載されてい
る酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーは、非
常に、強度に優れるので、耐刷性および低露光適性の点
で有利である。
【0215】更に、このほかに、水溶性線状有機ポリマ
ーとして、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサ
イド等が有用である。また、硬化皮膜の強度を上げるた
めに、アルコール可溶性ナイロン、2,2−ビス−(4
−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリ
ンのポリエーテル等も有用である。
【0216】本発明で使用される線状有機ポリマーの重
量平均分子量は、好ましくは5000以上であり、より
好ましくは1万〜30万であり、また、数平均分子量
は、好ましくは1000以上であり、より好ましくは2
000〜25万である。多分散度(重量平均分子量/数
平均分子量)は1以上であり、好ましくは1.1〜10
である。
【0217】これらの線状有機ポリマーは、ランダムポ
リマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいず
れであってもよいが、ランダムポリマーであるのが好ま
しい。
【0218】バインダーポリマーは単独で用いてもよ
く、混合して用いてもよい。バインダーポリマーの含有
量は、感熱層の全固形分に対して、20〜95質量%で
あるのが好ましく、30〜90質量%であるのがより好
ましい。含有量が20質量%未満であると、画像形成し
た際、画像部の強度が不足する場合がある。また、含有
量が95質量%を超えると、画像形成されない場合があ
る。また、ラジカル重合性化合物と線状有機ポリマーと
の質量比は、1/9〜7/3であるのが好ましい。
【0219】つぎに、酸架橋層に用いられる各化合物に
ついて以下に述べる。 (A)赤外線吸収剤 酸架橋層に必要に応じて用いられる赤外線吸収剤は、前
記光重合層において説明した(A)赤外線吸収剤と同様
のものを用いることができる。赤外線吸収剤の含有量
は、感熱層の全固形分に対して、0.01〜50質量%
であるのが好ましく、0.1〜10質量%であるのがよ
り好ましく、更に、染料の場合には、0.5〜10質量
%であるのが更に好ましく、また、顔料の場合には、
1.0〜10質量%であるのが更に好ましい。含有量
が、0.01質量%未満であると、感度が低くなること
があり、50質量%を超えると、平版印刷版としたとき
に、非画像部に汚れが発生することがある。
【0220】(E)酸発生剤 酸発生剤とは、200〜500nmの波長領域の光を照
射し、または100℃以上に加熱することにより、酸を
発生する化合物をいう。酸発生剤としては、光カチオン
重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の
光消色剤、光変色剤、マイクロレジスト等に使用されて
いる公知の酸発生剤等の、熱分解して酸を発生しうる公
知の化合物およびそれらの混合物;酸を発生する基また
は化合物をポリマーの主鎖または側鎖に導入した化合物
等が挙げられる。酸発生剤としては、下記式(I)〜
(V)で表される化合物が好ましい。
【0221】
【化3】
【0222】上記式(I)〜(V)中、R1 、R2 、R
4 およびR5 は、それぞれ独立に、置換基を有していて
もよい炭素数20以下の炭化水素基を表す。R3 は、ハ
ロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数10以下
の炭化水素基または炭素数10以下のアルコキシ基を表
す。Ar1 およびAr2 は、それぞれ独立に、置換基を
有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表す。
6 は、置換基を有していてもよい炭素数20以下の2
価の炭化水素基を表す。nは、0〜4の整数を表す。R
1 、R2 、R4 およびR5 は、それぞれ炭素数1〜14
の炭化水素基であるのが好ましい。
【0223】上記式(I)〜(V)で表される酸発生剤
の好ましい態様は、本願出願人によって提案された特願
平11−320997号明細書(特開2001−142
230号公報)の段落番号[0197]〜[0222]
に詳細に記載されている。これらの化合物は、例えば、
特開平2−100054号公報および特開平2−100
055号公報に記載されている方法により合成すること
ができる。
【0224】また、酸発生剤として、ハロゲン化物、ス
ルホン酸等を対イオンとするオニウム塩を用いることも
できる。中でも、下記一般式(VI)〜(VIII)で
表されるヨードニウム塩、スルホニウム塩およびジアゾ
ニウム塩のいずれかの構造式を有するものを好適に挙げ
ることができる。
【0225】
【化4】
【0226】上記一般式(VI)〜(VIII)中、X
- は、ハロゲン化物イオン、ClO 4 - 、PF6 - 、S
bF6 - 、BF4 - またはR7 SO3 - を表す。ここ
で、R 7 は、置換基を有していてもよい炭素数20以下
の炭化水素基を表す。Ar3 およびAr4 は、それぞれ
独立に、置換基を有していてもよい炭素数20以下のア
リール基を表す。R8 、R9 およびR10は、それぞれ独
立に、置換基を有していてもよい炭素数18以下の炭化
水素基を表す。このようなオニウム塩は、特開平10−
39509号公報の段落番号[0010]〜[003
5]に一般式(I)〜(III)の化合物として記載さ
れている。
【0227】酸発生剤の含有量は、感熱層の全固形分に
対して、0.01〜50質量%であるのが好ましく、
0.1〜25質量%であるのがより好ましく、0.5〜
20質量%であるのが更に好ましい。酸発生剤の含有量
が0.01質量%未満であると、画像が得られないこと
があり、また、50質量%を超えると、平版印刷版とし
たときに、印刷時において非画像部に汚れが発生するこ
とがある。の酸発生剤は単独で使用してもよいし、2種
以上を組み合わせて使用してもよい。
【0228】(F)架橋剤 架橋剤としては、以下のものが挙げられる。 (i)ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で
置換された芳香族化合物、(ii)N−ヒドロキシメチ
ル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシ
メチル基を有する化合物、(iii)エポキシ化合物。
【0229】以下、上記(i)〜(iii)の化合物に
ついて詳述する。 (i)ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で
置換された芳香族化合物としては、例えば、ヒドロキシ
メチル基、アセトキシメチル基またはアルコキシメチル
基でポリ置換されている芳香族化合物または複素環化合
物が挙げられる。ただし、レゾール樹脂として知られる
フェノール類とアルデヒド類とを塩基性条件下で縮重合
させた樹脂状の化合物も含まれる。ヒドロキシメチル基
またはアルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合
物または複素環化合物の中でも、ヒドロキシ基に隣接す
る位置にヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基
を有する化合物が好ましい。また、アルコキシメチル基
でポリ置換された芳香族化合物または複素環化合物の中
でも、アルコキシメチル基が炭素数18以下の化合物が
好ましく、下記一般式(1)〜(4)で表される化合物
がより好ましい。
【0230】
【化5】
【0231】
【化6】
【0232】上記一般式(1)〜(4)中、L1 〜L8
は、それぞれ独立に、メトキシメチル、エトキシメチル
等の、炭素数18以下のアルコキシ基で置換されたヒド
ロキシメチル基またはアルコキシメチル基を表す。これ
らの架橋剤は、架橋効率が高く、耐刷性を向上させるこ
とができる点で好ましい。
【0233】(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−ア
ルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有
する化合物としては、欧州特許出願公開第0,133,
216号、西独特許第3,634,671号および同第
3,711,264号の各明細書に記載されている、単
量体およびオリゴマー−メラミン−ホルムアルデヒド縮
合物ならびに尿素−ホルムアルデヒド縮合物、欧州特許
出願公開第0,212,482号明細書に記載されてい
るアルコキシ置換化合物等が挙げられる。中でも、例え
ば、少なくとも2個の遊離N−ヒドロキシメチル基、N
−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基
を有するメラミン−ホルムアルデヒド誘導体が好まし
く、N−アルコキシメチル誘導体がより好ましい。
【0234】(iii)エポキシ化合物としては、一つ
以上のエポキシ基を有する、モノマー、ダイマー、オリ
ゴマー、ポリマー等のエポキシ化合物が挙げられ、例え
ば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応生
成物、低分子量フェノール−ホルムアルデヒド樹脂とエ
ピクロルヒドリンとの反応生成物が挙げられる。そのほ
かに、米国特許第4,026,705号明細書および英
国特許第1,539,192号明細書に記載されている
エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0235】架橋剤として、前記(i)〜(iii)の
化合物を用いる場合の含有量は、感熱層の全固形分に対
して、5〜80質量%であるのが好ましく、10〜75
質量%であるのがより好ましく、20〜70質量%であ
るのが更に好ましい。架橋剤の添加量が、5質量%未満
であると、得られる画像記録材料の感熱層の耐久性が低
下することがあり、また、80質量%を超えると、保存
時の安定性が低下することがある。
【0236】本発明においては、架橋剤として、(i
v)下記一般式(5)で表されるフェノール誘導体も好
適に使用することができる。
【0237】
【化7】
【0238】上記一般式(5)中、Ar1 は、置換基を
有していてもよい芳香族炭化水素環を表す。前記芳香族
炭化水素環としては、原料の入手性の点で、ベンゼン
環、ナフタレン環またはアントラセン環が好ましい。ま
た、前記置換基としては、ハロゲン原子、炭素数12以
下の炭化水素基、炭素数12以下のアルコキシ基、炭素
数12以下のアルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、ト
リフルオロメチル基等が好ましい。上記のうち、Ar1
としては、高感度化が可能である点で、置換基を有して
いないベンゼン環またはナフタレン環;ハロゲン原子、
炭素数6以下の炭化水素基、炭素数6以下のアルコキシ
基、炭素数6以下のアルキルチオ基、ニトロ基等を置換
基として有するベンゼン環またはナフタレン環がより好
ましい。
【0239】R1 、R2 およびR3 は、それぞれ独立
に、水素または炭素数12以下の炭化水素基を表す。R
1 、R2 およびR3 としては、それぞれ水素原子、メチ
ル基が好ましい。mおよびnは、それぞれ独立に、1〜
8の整数を表す。
【0240】(G)アルカリ可溶性高分子化合物 アルカリ可溶性高分子化合物としては、ノボラック樹
脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマー等が
挙げられる。ノボラック樹脂としては、フェノール類と
アルデヒド類とを酸性条件下で縮合させた樹脂が挙げら
れる。
【0241】中でも、フェノールとホルムアルデヒドと
から得られるノボラック樹脂、m−クレゾールとホルム
アルデヒドとから得られるノボラック樹脂、p−クレゾ
ールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹
脂、o−クレゾールとホルムアルデヒドとから得られる
ノボラック樹脂、オクチルフェノールとホルムアルデヒ
ドとから得られるノボラック樹脂、m−/p−混合クレ
ゾールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹
脂、フェノール/クレゾール(m−、p−、o−、m−
/p−混合、m−/o−混合およびo−/p−混合のい
ずれでもよい)の混合物とホルムアルデヒドとから得ら
れるノボラック樹脂や、フェノールとパラホルムアルデ
ヒドとを原料とし、触媒を使用せず密閉状態で高圧下で
反応させて得られるオルソ結合率の高い高分子量ノボラ
ック樹脂等が好ましい。ノボラック樹脂は、重量平均分
子量が800〜300,000で、数平均分子量が40
0〜60,000であるものの中から、目的に応じて好
適なものを選択して用いるのが好ましい。
【0242】また、側鎖にヒドロキシアリール基を有す
るポリマーも、ノボラック樹脂と同様に好適に用いられ
る。前記ヒドロキシアリール基としては、ヒドロキシ基
が一つ以上結合したアリール基が挙げられる。前記アリ
ール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ア
ントラセニル基、フェナントレニル基等が挙げられる。
中でも、入手の容易性および物性の観点から、フェニル
基およびナフチル基が好ましい。側鎖にヒドロキシアリ
ール基を有するポリマーの具体例としては、下記式(I
X)〜(XII)で表される構成単位のうちのいずれか
1種を含むポリマーを挙げることができる。ただし、本
発明はこれらに限定されるものではない。
【0243】
【化8】
【0244】上記式(IX)〜(XII)中、R11は、
水素原子またはメチル基を表す。R 12およびR13は、そ
れぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数10以
下の炭化水素基、炭素数10以下のアルコキシ基または
炭素数10以下のアリールオキシ基を表す。ここで、R
12とR13とが結合して縮環し、ベンゼン環、シクロヘキ
サン環等を形成していてもよい。R14は、単結合または
炭素数20以下の2価の炭化水素基を表す。R15は、単
結合または炭素数20以下の2価の炭化水素基を表す。
16は、単結合または炭素数10以下の2価の炭化水素
基を表す。X1は、単結合、エーテル結合、チオエーテ
ル結合、エステル結合またはアミド結合を表す。pは、
1〜4の整数を表す。qおよびrは、それぞれ独立に、
0〜3の整数を表す。
【0245】アルカリ可溶性高分子化合物としては、本
願出願人によって提案された特願平11−320997
号明細書(特開2001−142230号公報)の段落
番号[0130]〜[0163]に詳細に記載されてい
る。アルカリ可溶性高分子化合物は、単独で用いてもよ
く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0246】アルカリ可溶性高分子化合物の含有量は、
感熱層の全固形分に対して、5〜95質量%であるのが
好ましく、10〜95質量%であるのがより好ましく、
20〜90質量%であるのが更に好ましい。アルカリ水
可溶性樹脂の含有量が、5質量%未満であると、感熱層
の耐久性が劣化することがあり、また、95質量%を超
えると、画像形成されないことがある。
【0247】また、酸架橋層としては、上述した以外に
も、特開平8−276558号公報に記載されているフ
ェノール誘導体を含有するネガ型画像記録材料、特開平
7−306528号公報に記載されているジアゾニウム
化合物を含有するネガ型記録材料、特開平10−203
037号公報に記載されている環内に不飽和結合を有す
る複素環基を有するポリマーを用いた、酸触媒による架
橋反応を利用したネガ型画像形成材料等を用いることも
できる。
【0248】つぎに、(H)疎水性熱溶融性樹脂微粒子
と(J)親水性高分子マトリックスとを用いる感熱層に
用いられる各化合物について以下に述べる。 (H)疎水性熱溶融性樹脂微粒子 疎水性熱溶融性樹脂微粒子(以下「微粒子ポリマー」と
いう。)は、微粒子ポリマー同士が熱により溶融合体す
るものが好ましく、表面が親水性で、湿し水等の親水性
成分に分散するものがより好ましい。微粒子を形成する
樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、
ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)ア
クリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ
(メタ)アクリル酸ブチル、ポリアクリロニトリル、ポ
リ酢酸ビニル;それらの共重合体のラテックス等が好ま
しいものとして挙げられる。親水性表面を有する微粒子
ポリマーは、微粒子を構成するポリマー自体が親水性で
あるもの、ポリマーの主鎖または側鎖に親水性基を導入
して親水性を付与したもの等のポリマー自体が親水性で
あるもの;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコ
ール等の親水性ポリマー、親水性オリゴマーまたは親水
性低分子化合物を、微粒子ポリマー表面に吸着させて表
面を親水性化したものを包含するが、これらに限定され
るものではない。
【0249】微粒子ポリマーの他の好ましい特性とし
て、画像部の膜強度を向上させるという観点から、微粒
子ポリマーが熱反応性官能基を有するポリマーにより構
成されることが挙げられる。前記熱反応性官能基として
は、重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アク
リロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基
等);付加反応を行うイソシアネート基またはそのブロ
ック体、その反応相手である活性水素原子を有する官能
基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基
等);付加反応を行うエポキシ基、その反応相手である
アミノ基、カルボキシ基またはヒドロキシ基;縮合反応
を行うカルボキシ基とヒドロキシ基またはアミノ基;開
環付加反応を行う酸無水物とアミノ基またはヒドロキシ
基等を挙げることができる。しかし、加熱により化学結
合が形成される機能を有するものであれば、どのような
反応を行う官能基でもよい。これらの熱反応性官能基の
微粒子ポリマーへの導入は、重合時に行ってもよいし、
重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。
【0250】微粒子ポリマーの含有量は、感熱層の全固
形分に対して、50質量%以上であるのが好ましく、6
0〜95質量%であるのがより好ましい。
【0251】感熱層に、上記のような熱反応性官能基を
有する微粒子ポリマーを用いる場合は、必要に応じて、
これらの反応を開始しまたは促進する化合物を添加して
もよい。反応を開始しまたは促進する化合物としては、
熱によりラジカルまたはカチオンを発生するような化合
物を挙げることができる。具体的には、ロフィンダイマ
ー、トリハロメチル化合物、過酸化物、アゾ化合物、ジ
アゾニウム塩またはジフェニルヨードニウム塩等を含ん
だオニウム塩、アシルホスフィン、イミドスルホナート
等が挙げられる。これらの化合物の含有量は、感熱層の
全固形分に対して、1〜20質量%であるのが好まし
く、3〜10質量%であるのがより好ましい。上記範囲
内であると、機上現像する場合にも機上現像性を損なわ
ず、良好な反応開始効果または反応促進効果が得られ
る。
【0252】(J)親水性高分子マトリックス 上記微粒子ポリマーは、親水性樹脂からなるマトリック
ス中に分散させることで、機上現像する場合には機上現
像性が良好となり、更に感熱層自体の皮膜強度も向上す
る。親水性樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基、カル
ボキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル
基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、カ
ルボキシメチル等の親水基を有するものが好ましい。
【0253】親水性樹脂の具体例としては、アラビアゴ
ム、カゼイン、ゼラチン、デンプン誘導体、カルボキシ
メチルセルロースおよびそのナトリウム塩、セルロース
アセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレ
イン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー
類、ポリアクリル酸類およびそれらの塩、ポリメタクリ
ル酸類およびそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレ
ートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシエチ
ルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒド
ロキシプロピルメタクリレートのホモポリマーおよびコ
ポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリ
マーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレー
トのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチル
アクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ポリエ
チレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー
類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が少なくとも
60質量%、好ましくは少なくとも80質量%である加
水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、
ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリ
ルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリル
アミドのホモポリマーおよびポリマー、N−メチロール
アクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー等を挙
げることができる。
【0254】親水性樹脂の含有量は、感熱層の全固形分
に対して、5〜40質量%であるのが好ましく、10〜
30質量%であるのがより好ましい。上記範囲内である
と、機上現像する場合にも良好な機上現像性が得られ、
また、良好な皮膜強度が得られる。
【0255】このような(H)疎水性熱溶融性樹脂微粒
子と(J)親水性高分子マトリックスとを用いる感熱層
に、上述した(A)赤外線吸収剤を含有させることによ
り、赤外線レーザ照射等による画像記録が可能となる。
用いられる赤外線吸収剤は先に例示したものと同様であ
り、赤外線吸収剤の含有量は、感熱層の全固形分に対し
て、30質量%以下であるのが好ましく、5〜25質量
%であるのがより好ましく、7〜20質量%であるのが
更に好ましい。上記範囲内であると、良好な感度が得ら
れる。
【0256】(K)その他の成分 サーマルネガタイプの感熱層は、上記各成分のほかに、
必要に応じて、更に、種々の化合物を添加してもよい。
例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色
剤として使用することができる。また、フタロシアニン
系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等
の顔料も着色剤として好適に用いることができる。これ
らの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別が
つきやすいので、添加する方が好ましい。着色剤の含有
量は、感熱層の全固形分に対して、0.01〜10質量
%であるのが好ましい。
【0257】また、感熱層が光重合層である場合、塗布
液の調製中または保存中において、ラジカル重合性化合
物の不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合防止
剤を添加することが好ましい。好適な熱重合防止剤とし
てはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t
−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチル
カテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−
メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチ
レンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、
N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミ
ニウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の含有量は、感
熱層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であ
るのが好ましい。
【0258】また、必要に応じて、酸素による重合阻害
を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高
級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感
熱層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の含
有量は、感熱層の全固形分に対して、約0.1〜約10
質量%であるのが好ましい。
【0259】更に、感熱層は、必要に応じて、塗膜の柔
軟性等を付与するために可塑剤を含有することができ
る。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブ
チル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸
ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジ
ル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン
酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
【0260】上記感熱層を設けて本発明の平版印刷版原
版を得るには、上記各成分を溶媒に溶かして、平版印刷
版用支持体上に塗布すればよい。ここで使用する溶媒と
しては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メ
チルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノ
ール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メ
トキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテ
ート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメト
キシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチ
ルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テト
ラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスル
ホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエ
ン、水等を挙げることができるが、本発明はこれらに限
定されるものではない。溶媒は、単独でまたは混合して
使用される。溶媒中の濃度は、好ましくは1〜50質量
%である。
【0261】感熱層塗布液中には、現像条件に対する処
理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号
公報および特開平3−208514号公報に記載されて
いるような非イオン界面活性剤、特開昭59−1210
44号公報および特開平4−13149号公報に記載さ
れているような両性界面活性剤を添加することができ
る。
【0262】非イオン界面活性剤の具体例としては、ソ
ルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテー
ト、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセ
リド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が
挙げられる。
【0263】両性界面活性剤の具体例としては、アルキ
ルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエ
チルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエ
チル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイ
ン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、
商品名アモーゲンK、第一工業社製)等が挙げられる。
【0264】上記非イオン界面活性剤および両性界面活
性剤の感熱層塗布液中に占める割合は、それぞれ感熱層
の全固形分に対して、0.05〜15質量%であるのが
好ましく、0.1〜5質量%であるのがより好ましい。
【0265】また、塗布し乾燥させて得られる感熱層の
塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、通常、
0.5〜5.0g/m2 であるのが好ましい。塗布する
方法としては、種々の方法を用いることができるが、例
えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カ
ーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレー
ド塗布、ロール塗布等を挙げることができる。塗布量が
少なくなるにつれて、見かけの感度は大きくなるが、画
像記録の機能を果たす感熱層の皮膜特性は低下する。
【0266】<無処理タイプ>無処理タイプの感熱層
は、熱可塑性微粒子ポリマー、熱反応性官能基を有する
微粒子ポリマー、熱反応性官能基を有する化合物を内包
するマイクロカプセル、および、スルホン酸発生ポリマ
ーからなる群から選ばれる少なくとも一つの成分を含有
する。
【0267】熱可塑性微粒子ポリマーとしては、Res
each DisclosureNo.33303(1
992年1月)、特開平9−123387号、同9−1
31850号、同9−171249号、同9−1712
50号の各公報、欧州特許出願公開第931,647号
明細書等に記載されている熱可塑性微粒子ポリマーを好
適なものとして挙げることができる。具体例としては、
エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、
アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸
エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカ
ルバゾール等のモノマーのホモポリマーもしくはコポリ
マーまたはそれらの混合物を挙げることができる。中で
も、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルを用いるの
が好ましい。
【0268】スルホン酸発生ポリマーとしては、例え
ば、特開平10−282672号公報に記載されている
スルホン酸エステル基、ジスルホン基またはsec−も
しくはtert−スルホンアミド基を側鎖に有するポリ
マー等を挙げることができる。
【0269】しかし、特に好ましいのは、熱反応性官能
基を有する微粒子ポリマーおよび熱反応性官能基を有す
る化合物を内包するマイクロカプセルである。これらに
共通に用いられる熱反応性官能基としては、重合反応を
行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メ
タクリロイル基、ビニル基、アリル基等);付加反応を
行うイソシアネート基またはそのブロック体、その反応
相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミ
ノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等);付加反応を行
うエポキシ基、その反応相手であるアミノ基、カルボキ
シ基またはヒドロキシ基;縮合反応を行うカルボキシ基
とヒドロキシ基またはアミノ基;開環付加反応を行う酸
無水物とアミノ基またはヒドロキシ基等を挙げることが
できる。しかし、加熱により化学結合が形成される機能
を有するものであれば、どのような反応を行う官能基で
もよい。
【0270】このような熱反応性官能基を有する微粒子
ポリマーとしては、アクリロイル基、メタクリルロイル
基、ビニル基、アリル基、エポキシ基、アミノ基、ヒド
ロキシ基、カルボキシ基、イソシアネート基、酸無水
物;それらを保護した基を有するものを挙げることがで
きる。これらの基のポリマー粒子への導入は、重合時に
行ってもよいし、重合後に高分子反応を利用して行って
もよい。
【0271】重合時に導入する場合は、これらの基を有
するモノマーを乳化重合し、または懸濁重合するのが好
ましい。そのような基を有するモノマーの具体例とし
て、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニ
ルメタクリレート、ビニルアクリレート、グリシジルメ
タクリレート、グリシジルアクリレート、2−イソシア
ネートエチルメタクリレートまたはそのアルコール等に
よるブロックイソシアネート、2−イソシアネートエチ
ルアクリレートまたはそのアルコール等によるブロック
イソシアネート、2−アミノエチルメタクリレート、2
−アミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメ
タクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ア
クリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2官能アク
リレート、2官能メタクリレート等を挙げることができ
るが、本発明はこれらに限定されない。これらのモノマ
ーと共重合可能な、熱反応性官能基を有しないモノマー
としては、例えば、スチレン、アルキルアクリレート、
アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニ
ル等を挙げることができるが、熱反応性官能基を有しな
いモノマーであれば、これらに限定されない。熱反応性
官能基の導入を重合後に行う場合に用いる高分子反応と
しては、例えば、国際公開第96/34316号パンフ
レットに記載されている高分子反応を挙げることができ
る。
【0272】上記熱反応性官能基を有する微粒子ポリマ
ーの中でも、微粒子ポリマー同士が熱により合体するも
のが好ましく、その表面は親水性で、水に分散するもの
が、特に好ましい。微粒子ポリマーのみを塗布し、凝固
温度よりも低い温度で乾燥して作製した時の皮膜の接触
角(空中水滴)が、凝固温度よりも高い温度で乾燥して
作製した時の皮膜の接触角(空中水滴)よりも低くなる
ことが好ましい。このように微粒子ポリマー表面を親水
性にするには、ポリビニルアルコール、ポリエチレング
リコール等の親水性ポリマーもしくはオリゴマー、また
は親水性低分子化合物を微粒子ポリマー表面に吸着させ
てやればよいが、その方法はこれらに限定されるもので
はない。
【0273】熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーの
凝固温度は、70℃以上であるのが好ましいが、経時安
定性を考えると100℃以上であるのがより好ましい。
熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーの平均粒径は、
0.01〜20μmであるのが好ましく、0.05〜
2.0μmであるのがより好ましく、0.1〜1.0μ
mであるのが更に好ましい。平均粒径が大きすぎると解
像度が悪くなり、また、小さすぎると経時安定性が悪く
なってしまう。
【0274】熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーの
含有量は、感熱層の全固形分に対して、50質量%以上
であるのが好ましく、60質量%以上であるのがより好
ましい。
【0275】本発明に用いられるマイクロカプセルは、
上記熱反応性官能基を有する化合物を内包している。こ
の熱反応性官能基を有する化合物としては、重合性不飽
和基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボキシラート
基、酸無水物、アミノ基、エポキシ基およびイソシアネ
ート基ならびにそのブロック体から選ばれた少なくとも
一個の官能基を有する化合物を挙げることができる。
【0276】重合性不飽和基を有する化合物としては、
エチレン性不飽和結合、例えば、アクリロイル基、メタ
クリロイル基、ビニル基、アリル基等を少なくとも1
個、好ましくは2個以上有する化合物が好ましく、この
ような化合物群は当該産業分野において広く知られるも
のであり、本発明においては、これらを特に限定なく用
いることができる。これらの化学的形態としては、モノ
マー、プレポリマー、即ち、2量体、3量体およびオリ
ゴマーもしくはそれらの混合物またはそれらの共重合体
が挙げられる。
【0277】重合性不飽和基を有する化合物の具体例と
しては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタ
クリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、
マレイン酸等)、そのエステルおよびアミドが挙げら
れ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコ
ールとのエステルおよび不飽和カルボン酸と脂肪族多価
アミンとのアミドが挙げられる。また、ヒドロキシ基、
アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽
和カルボン酸エステルまたは不飽和カルボン酸アミド
と、単官能もしくは多官能イソシアネートまたはエポキ
シドとの付加反応物、および、単官能または多官能のカ
ルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に挙げられる。ま
た、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基
を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミドと、単
官能または多官能のアルコール、アミンおよびチオール
との付加反応物、更に、ハロゲン基、トシルオキシ基等
の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまた
はアミドと、単官能または多官能アルコール、アミンお
よびチオールとの置換反応物も好適に挙げられる。ま
た、別の好適な例として、上記の不飽和カルボン酸を、
不飽和ホスホン酸またはクロロメチルスチレンに置き換
えた化合物が挙げられる。
【0278】不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール
とのエステルである、重合性不飽和基を有する化合物の
モノマーの具体例としては、フォトポリマータイプの感
光層に用いられるエチレン性不飽和結合含有化合物とし
て上記に例示した、各アクリル酸エステル、各メタクリ
ル酸エステル、各イタコン酸エステル、各クロトン酸エ
ステル、各イソクロトン酸エステルおよび各マレイン酸
エステルが挙げられる。
【0279】その他のエステルの例として、例えば、特
公昭46−27926号、特公昭51−47334号お
よび特開昭57−196231号の各公報に記載されて
いる脂肪族アルコール系エステル類、特開昭59−52
40号、特開昭59−5241号および特開平2−22
6149号の各公報に記載されている芳香族系骨格を有
するもの、特開平1−165613号公報に記載されて
いるアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
【0280】また、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミ
ンとのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビ
ス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミ
ド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、
1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエ
チレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビ
スアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等
を挙げることができる。その他の好ましいアミド系モノ
マーの例としては、特公昭54−21726号公報に記
載されているシクロへキシレン構造を有するものを挙げ
ることができる。
【0281】また、重合性不飽和基を有する化合物とし
て、イソシアネート基とヒドロキシ基との付加反応を用
いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適に用
いられ、その具体例としては、例えば、特公昭48−4
1708号公報中に記載されている1分子に2個以上の
イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物
に、下記式(I)で示されるヒドロキシ基を有する不飽
和モノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性不
飽和基を含有するウレタン化合物等が挙げられる。
【0282】 CH2 =C(R1 )COOCH2 CH(R2 )OH (I) (上記式(I)中、R1 およびR2 は、それぞれHまた
はCH3 を示す。)
【0283】また、特開昭51−37193号、特公平
2−32293号および特公平2−16765号の各公
報に記載されているようなウレタンアクリレートや、特
公昭58−49860号、特公昭56−17654号、
特公昭62−39417号および特公昭62−3941
8号の各公報に記載されているエチレンオキサイド系骨
格を有するウレタン化合物も好適なものとして挙げるこ
とができる。
【0284】更に、特開昭63−277653号、特開
昭63−260909号および特開平1−105238
号の各公報に記載されている、分子内にアミノ構造やス
ルフィド構造を有するラジカル重合性化合物を好適なも
のとして挙げることができる。
【0285】その他の好適なものの例としては、特開昭
48−64183号、特公昭49−43191号および
同52−30490号の各公報に記載されているような
ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)
アクリル酸とを反応させたエポキシアクリレート類等の
多官能の(メタ)アクリレートを挙げることができる。
また、特公昭46−43946号、特公平1−4033
7号および同1−40336号の各公報に記載されてい
る特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報
に記載されているビニルホスホン酸系化合物等も好適な
ものとして挙げることができる。また、ある場合には、
特開昭61−22048号公報に記載されているペルフ
ルオロアルキル基を含有する化合物も好適に使用され
る。更に、日本接着協会誌、20巻7号、p.300−
308(1984年)に、光硬化性モノマーおよびオリ
ゴマーとして紹介されているものも好適に使用すること
ができる。
【0286】エポキシ基を有する化合物としては、グリ
セリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコー
ルジグリシジルエーテル、ポリプロピレンジグリシジル
エーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエー
テル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェ
ノール類もしくはポリフェノール類またはそれらの水素
添加物のポリグリシジルエーテル等が好適に挙げられ
る。
【0287】イソシアネート基を有する化合物として
は、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイ
ソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシア
ネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイ
ソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネ
ート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジ
イソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート;そ
れらをアルコールまたはアミンでブロックした化合物が
好適に挙げられる。
【0288】アミノ基を有する化合物としては、エチレ
ンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテト
ラミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミ
ン、ポリエチレンイミン等が好適に挙げられる。
【0289】ヒドロキシ基を有する化合物としては、末
端メチロール基を有する化合物、ペンタエリスリトール
等の多価アルコール、ビスフェノール・ポリフェノール
類等が好適に挙げられる。カルボキシ基を有する化合物
としては、ピロメリット酸、トリメリット酸、フタル酸
等の芳香族多価カルボン酸、アジピン酸等の脂肪族多価
カルボン酸等が好適に挙げられる。酸無水物を有する化
合物としては、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノン
テトラカルボン酸無水物等が好適に挙げられる。
【0290】エチレン性不飽和結合を有する化合物の共
重合体としては、アリルメタクリレートの共重合体が好
適に挙げられる。具体的には、アリルメタクリレート/
メタクリル酸共重合体、アリルメタクリレート/エチル
メタクリレート共重合体、アリルメタクリレート/ブチ
ルメタクリレート共重合体等を挙げることができる。
【0291】熱反応性官能基を有する化合物を内包する
マイクロカプセルの製造方法としては、公知の方法が適
用できる。例えば、マイクロカプセルの製造方法とし
て、米国特許第2,800,457号明細書および同第
2,800,458号明細書に記載されているコアセル
ベーションを利用した方法、英国特許990,443号
明細書、米国特許第3,287,154号明細書、特公
昭38−19574号、同42−446号および同42
−711号の各公報に記載されている界面重合法による
方法、米国特許第3,418,250号明細書および同
第3,660,304号明細書に記載されているポリマ
ーの析出による方法、米国特許第3,796,669号
明細書に記載されているイソシアネートポリオール壁材
料を用いる方法、米国特許第3,914,511号に記
載されているイソシアネート壁材料を用いる方法、米国
特許第4,001,140号、同第4,087,376
号および同第4,089,802号の各明細書に記載さ
れている尿素−ホルムアルデヒド系または尿素ホルムア
ルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、
米国特許第4,025,445号明細書に記載されてい
るメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロ
ース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号公
報および同51−9079号公報に記載されているモノ
マー重合によるin situ法、英国特許第930,
422号明細書および米国特許第3,111,407号
明細書に記載されているスプレードライング法、英国特
許第952,807号明細書および同第967,074
号明細書に記載されている電解分散冷却法等を用いるこ
とができる。
【0292】熱反応性官能基を有する化合物を内包する
マイクロカプセルに用いられるマイクロカプセル壁は、
3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有する
ものであるのが好ましい。この観点から、マイクロカプ
セルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステ
ル、ポリカーボネート、ポリアミド、またはこれらの混
合物が好ましく、中でも、ポリウレアおよび/またはポ
リウレタンがより好ましい。上記マイクロカプセル壁に
は、上記熱反応性官能基を有する化合物を導入してもよ
い。
【0293】熱反応性官能基を有する化合物を内包する
マイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜20μmで
あるのが好ましく、0.05〜2.0μmであるのがよ
り好ましく、0.10〜1.0μmであるのが更に好ま
しい。平均粒径が大きすぎると解像度が悪くなり、ま
た、小さすぎると経時安定性が悪くなってしまう。
【0294】このような熱反応性官能基を有する化合物
を内包するマイクロカプセルは、マイクロカプセル同士
が熱により合体するものであってもよいし、合体しない
ものであってもよい。要は、マイクロカプセル内包物の
うち、塗布時にカプセル表面またはマイクロカプセル外
に滲み出したもの、または、マイクロカプセル壁に浸入
したものが、熱により化学反応を起こせばよい。また、
添加された親水性樹脂、または、添加された低分子化合
物と反応してもよい。また、2種以上のマイクロカプセ
ルに、それぞれ異なる官能基で互いに熱反応するような
官能基をもたせることによって、マイクロカプセル同士
を反応させてもよい。したがって、熱によってマイクロ
カプセル同士が、熱で溶融合体することは画像形成上好
ましいことであるが、必須ではない。
【0295】感熱層における熱反応性官能基を有する化
合物を内包するマイクロカプセルの含有量は、感熱層の
全固形分に対して、10〜60質量%であるのが好まし
く、15〜40質量%であるのがより好ましい。上記範
囲内であると、良好な機上現像性と同時に、良好な感度
および耐刷性が得られる。
【0296】熱反応性官能基を有する化合物を内包する
マイクロカプセルを感熱層に含有させる場合、内包物を
溶解させることができ、かつ、壁材を膨潤させることが
できる溶剤をマイクロカプセル分散媒中に添加すること
ができる。このような溶剤によって、内包された熱反応
性官能基を有する化合物のマイクロカプセル外への拡散
が促進される。このような溶剤の選択は、マイクロカプ
セル分散媒、マイクロカプセル壁の材質、壁厚および内
包物に依存するが、多くの市販されている溶剤から容易
に選択することができる。例えば、架橋ポリウレアやポ
リウレタン壁からなる水分散性マイクロカプセルの場
合、アルコール類、エーテル類、アセタール類、エステ
ル類、ケトン類、多価アルコール類、アミド類、アミン
類、脂肪酸類等が好ましい。
【0297】具体的には、メタノール、エタノール、第
三ブタノール、n−プロパノール、テトラヒドロフラ
ン、乳酸メチル、乳酸エチル、メチルエチルケトン、プ
ロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリ
コールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチ
ルエーテル、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメチルホ
ルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げら
れるが、本発明はこれらに限られない。また、これらの
溶剤を2種以上用いてもよい。
【0298】また、マイクロカプセル分散液には溶解し
ないが、前記溶剤を混合すれば溶解する溶剤も用いるこ
とができる。その添加量は、素材の組み合わせにより決
まるものであるが、適性値より少ない場合は、画像形成
が不十分となり、多い場合は分散液の安定性が劣化す
る。通常、塗布液の5〜95質量%であるのが有効であ
り、10〜90質量%であるのが好ましく、15〜85
質量%であるのがより好ましい。
【0299】無処理タイプの感熱層が、熱反応性官能基
を有する微粒子ポリマーおよび/または熱反応性官能基
を有する化合物を内包するマイクロカプセルを含有する
場合には、必要に応じて、これらの反応を開始させまた
は促進させる化合物を添加してもよい。反応を開始させ
または促進させる化合物としては、熱によりラジカルま
たはカチオンを発生するような化合物を挙げることがで
きる。例えば、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合
物、過酸化物、アゾ化合物、オニウム塩(ジアゾニウム
塩、ジフェニルヨードニウム塩等)、アシルホスフィ
ン、イミドスルホナート等が挙げられる。これらの化合
物の含有量は、感熱層の全固形分に対して、1〜20質
量%であるのが好ましく、3〜10質量%であるのがよ
り好ましい。上記範囲内であると、機上現像性を損なわ
ず、良好な反応開始効果または反応促進効果が得られ
る。
【0300】無処理タイプの感熱層には親水性樹脂を含
有させてもよい。親水性樹脂を含有させることにより、
機上現像性が良好となるばかりか、感熱層自体の皮膜強
度も向上する。また、親水性樹脂を架橋硬化させて、現
像処理不要の平版印刷版原版を得るることができる。親
水性樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ
基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミ
ノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、カルボキシ
メチル基等の親水基を有するものや、親水性のゾルゲル
変換系結着樹脂が好ましい。
【0301】親水性樹脂の具体的としては、フォトポリ
マータイプの感光層に用いられる(J)親水性高分子マ
トリックスとして用いられる親水性樹脂として列挙した
ものが挙げられる。
【0302】また、上記親水性樹脂は、架橋硬化させて
用いてもよい。親水性樹脂を架橋硬化させる耐水化剤と
しては、グリオキザール、メラミンホルムアルデヒド樹
脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等のアルデヒド類;N−
メチロール尿素、N−メチロールメラミン、メチロール
化ポリアミド樹脂等のメチロール化合物;ジビニルスル
ホン、ビス(β−ヒドロキシエチルスルホン酸)等の活
性ビニル化合物;エピクロルヒドリン、ポリエチレング
リコールジグリシジルエーテル、ポリアミド・ポリアミ
ン・エピクロロヒドリン付加物、ポリアミドエピクロロ
ヒドリン樹脂等のエポキシ化合物;モノクロル酢酸エス
テル、チオグリコール酸エステル等のエステル化合物;
ポリアクリル酸、メチルビニルエーテル/マレイン酸共
重合物等のポリカルボン酸類;ホウ酸、チタニルスルフ
ェート、Cu、Al、Sn、V、Cr塩等の無機系架橋
剤;変成ポリアミドポリイミド樹脂等が挙げられる。そ
のほかに、塩化アンモニウム、シランカップリング剤、
チタネートカップリング剤等の架橋触媒を併用すること
ができる。
【0303】無処理タイプの感熱層においては、親水性
樹脂の中でも、ゾルゲル変換系結着樹脂を用いるのが好
ましい。以下、詳細に説明する。無処理タイプの感熱層
に好適に用いられるゾルゲル変換系結着樹脂としては、
多価元素から出ている結合基が酸素原子を介して網目状
構造を形成し、かつ、多価元素が未結合のヒドロキシ
基、アルコキシ基等も有していて、これらが混在した樹
脂状構造となっている高分子体であって、ヒドロキシ
基、アルコキシ基等が多い段階ではゾル状態であり、エ
ーテル結合化が進行するのに伴って網目状の樹脂構造が
強固となるような高分子体が挙げられる。
【0304】ゾルゲル変換系結着樹脂は、樹脂組織の親
水性度が変化する性質に加えて、ヒドロキシ基等の一部
が固体微粒子に結合することによって固体微粒子の表面
を修飾し、親水性度を変化させる働きをも併せ持ってい
る。ゾルゲル変換を行うヒドロキシ基、アルコキシ基等
を有する多価元素は、アルミニウム、ケイ素、チタン、
ジルコニウム等が挙げられる。中でも、ケイ素を用いる
シロキサン結合によるゾルゲル変換系が好ましい。以
下、シロキサン結合によるゾルゲル変換系について説明
するが、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等を用い
るゾルゲル変換系は、下記の説明のケイ素をそれぞれの
元素に置き換えて実施することができる。
【0305】シロキサン結合によるゾルゲル変換系は、
ゾルゲル変換が可能な、少なくとも1個のシラノール基
を有するシラン化合物を含む系である。
【0306】ゾルゲル変換によって形成される無機親水
性結着樹脂は、好ましくはシロキサン結合およびシラノ
ール基を有する樹脂である。無処理タイプの感熱層は、
少なくとも1個のシラノール基を有するシラン化合物を
含むゾルの系である塗布液を平版印刷版用支持体に塗布
し、塗布後、シラノール基の加水分解縮合が進んでシロ
キサン骨格の構造が形成され、ゲル化が進行することに
よって形成される。また、このゾルゲル変換系によって
形成される感熱層は、膜強度、柔軟性等の物理的性能の
向上や、塗布性の改良等を目的として、後述する有機親
水性ポリマー、架橋剤等を含有することもできる。
【0307】ゲル構造を形成するシロキサン樹脂は、下
記一般式(I)で表され、また、少なくとも1個のシラ
ノール基を有するシラン化合物は、下記一般式(II)
で表される。また、感熱層に含まれる物質系は、必ずし
も一般式(II)で表されるシラン化合物単独である必
要はなく、一般に、シラン化合物が部分加水分解により
重合したオリゴマーからなっていてもよく、シラン化合
物とそのオリゴマーの混合組成からなっていてもよい。
【0308】
【化9】
【0309】上記一般式(I)のシロキサン系樹脂は、
下記一般式(II)で示されるシラン化合物の少なくと
も1種を含有する分散液からゾル−ゲル変換によって形
成され、一般式(I)中のR01〜R03の少なくとも一つ
はヒドロキシ基を表し、他は下記一般式(II)中の記
号のR0 およびYから選ばれる有機残基を表す。i、j
およびkは、それぞれ独立に、0以上の整数を表すが、
これらの合計が0となることはない。
【0310】(R0 n Si(Y)4-n (II)
【0311】上記一般式(II)中、R0 はヒドロキシ
基、炭化水素基またはヘテロ環基を表す。Yは水素原
子、ハロゲン原子、−OR1 、−OCOR2 または−N
(R3)(R4 )を表す。R1 およびR2 は、それぞれ
炭化水素基を表す。R3 およびR4 は、それぞれ独立
に、水素原子または炭化水素基を表す。nは、0〜3の
整数を表す。
【0312】上記一般式(II)中のR0 の炭化水素と
しては、例えば、炭素数1〜12の置換されていてもよ
い直鎖状または分岐状のアルキル基(例えば、メチル
基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘ
キシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル
基、ドデシル基等)、炭素数2〜12の置換されていて
もよい直鎖状または分岐状のアルケニル基(例えば、ビ
ニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘ
キセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基
等)、炭素数7〜14の置換されていてもよいアラルキ
ル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニ
ルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル
基等)、炭素数5〜10の置換されていてもよい脂環式
基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2
−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル
基、ノルボニル基、アダマンチル基等)、炭素数6〜1
2の置換されてもよいアリール基(例えば、フェニル
基、ナフチル基等)が挙げられる。
【0313】これらに用いられる置換基としては、ハロ
ゲン原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子)、ヒドロ
キシ基、チオール基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ
基、エポキシ基、−OR′基(R′は、メチル基、エチ
ル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル
基、オクチル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル
基、ヘキセニル基、オクテニル基、2−ヒドロキシエチ
ル基、3−クロロプロピル基、2−シアノエチル基、
N,N−ジメチルアミノエチル基、2−ブロモエチル
基、2−(2−メトキシエチル)オキシエチル基、2−
メトキシカルボニルエチル基、3−カルボキシプロピル
基、ベンジル基等を表す。以下同じ。)、−OCOR′
基、−COOR′基、−COR′基、−N(R″)
(R″′)基(R″およびR″′は、それぞれ独立に、
水素原子またはR′を表す。以下同じ。)、−NHCO
NHR′基、−NHCOOR′基、−Si(R′)3
(ただし、三つのR′は、同一であっても、異なってい
てもよい。)、−CONHR″基、−NHCOR′基等
が挙げられる。上記アルキル基等は、複数の上記置換基
により置換されてもよい。その場合、複数の置換基は同
一であってもよく、異なっていてもよい。
【0314】上記一般式(II)中のR0 のヘテロ環基
としては、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子
から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する縮環して
いてもよいヘテロ環基が挙げられる。ヘテロ環として
は、例えば、ピラン環、フラン環、チオフェン環、モル
ホリン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール
環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリドン環、ベンゾ
チアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、テ
トラヒドロフラン環等が挙げられ、これらは置換基を有
していてもよい。置換基としては、上記アルキル基等に
用いられる置換基と同様のものを用いることができる。
また、上記ヘテロ環基は、複数の上記置換基により置換
されてもよい。その場合、複数の置換基は同一であって
もよく、異なっていてもよい。
【0315】上記一般式(II)中のYの−OR1 基の
1 としては、例えば、炭素数1〜10の置換されても
よい脂肪族基を表す。このような脂肪族基としては、例
えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘ
プチル基、ヘキシル基、ペンチル基、オクチル基、ノニ
ル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニ
ル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、2−
ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−
メトキシエチル基、2−(メトキシエチルオキソ)エチ
ル基、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル基、2−
メトキシプロピル基、2−シアノエチル基、3−メチル
オキサプロピル基、2−クロロエチル基、シクロヘキシ
ル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、クロロシ
クロヘキシル基、メトキシシクロヘキシル基、ベンジル
基、フェネチル基、ジメトキシベンジル基、メチルベン
ジル基、ブロモベンジル基等が挙げられる。
【0316】上記一般式(II)中のYの−OCOR2
基のR2 としては、例えば、R1 と同一の内容の脂肪族
基、炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基が挙げ
られる。このような芳香族基としては、例えば、フェニ
ル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0317】上記一般式(II)中のYの−N(R3
(R4 )基のR3 およびR4 の炭化水素基としては、例
えば、炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基が挙
げられる。このような脂肪族基としては、上記R1 と同
様の内容のものが挙げられる。R3 およびR4 の炭素数
の総和が16以内であるのが好ましい。上記一般式(I
I)で示されるシラン化合物の具体例としては、以下の
ものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるもの
ではない。
【0318】即ち、例えば、テトラクロルシラン、テト
ラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソ
プロポキシシラン、テトラ−n−プロピルシラン、メチ
ルトリクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチ
ルトリエトキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチ
ルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n
−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリメトキ
シシラン、n−へキシルトリメトキシシラン、n−デシ
ルトリメトキシシラン、フェニルトリクロルシラン、フ
ェニルトリメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラ
ン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジメトキシシラ
ン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメ
トキシシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリメトキ
シヒドロシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリ
メトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシ
ラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラ
ン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラ
ン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ
−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−
アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプ
ロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエ
トキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキ
シシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラ
ン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、β−
(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキ
シシラン等が挙げられる。
【0319】無機親水性結着樹脂の形成には、上記一般
式(II)で示されるシラン化合物とともに、Ti、Z
n、Sn、Zr、Al等のゾル−ゲル変換の際に樹脂に
結合して成膜可能な金属化合物を併用することができ
る。このような金属化合物としては、例えば、Ti(O
R′)4 、TiCl4 、Zn(OR′)2 、Zn(CH
3 COCHCOCH3 2 、Sn(OR′)4 、Sn
(CH3 COCHCOCH3 4 、Sn(OCOR′)
4 、SnCl4、Zr(OR′)4 、Zr(CH3 CO
CHCOCH3 4 、Al(OR′)3 、Al(CH3
COCHCOCH3 3 等が挙げられる。
【0320】更に、一般式(II)で示されるシラン化
合物、および、それと併用することができる上記金属化
合物の加水分解反応および重縮合反応を促進するため
に、酸性触媒または塩基性触媒を併用することが好まし
い。触媒は、酸もしくは塩基性化合物をそのままで、ま
たは、水、アルコール等の溶媒に溶解させた状態として
用いることができる(以下、酸を用いるものを「酸性触
媒」、塩基性化合物を用いるものを「塩基性触媒」とい
う。)。溶媒に溶解させる場合の濃度は、特に限定され
ないが、濃度が濃い方が加水分解反応および重縮合反応
の速度が速くなる傾向がある。ただし、濃度の濃い塩基
性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成すること
があるため、塩基性触媒の濃度(水溶液での濃度換算)
は1N以下であるのが好ましい。
【0321】酸性触媒および塩基性触媒の種類は特に限
定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合
には、焼結後に触媒結晶粒中にほとんど残留しないよう
な元素から構成される触媒が好ましい。具体的には、酸
性触媒としては、ハロゲン化水素(例えば、塩酸)、硝
酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、
炭酸、カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸)、構造式RC
OOHで表されるカルボン酸のRに置換基を有する置換
カルボン酸、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン
酸)等が挙げられる。また、塩基性触媒としては、アン
モニア性塩基(例えば、アンモニア水)、アミン類(例
えば、エチルアミン、アニリン)等が挙げられる。
【0322】上述したように、無処理タイプの感熱層と
しては、ゾル−ゲル法によって作成される感熱層(親水
性樹脂としてゾルゲル変換系結着樹脂を含有させた感熱
層)が好ましい。上記ゾル−ゲル法の詳細は、作花済夫
「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1
988年)、平島碩「最新ゾル−ゲル法による機能性薄
膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等
の成書等に詳細に記載されている。
【0323】親水性樹脂の含有量は、感熱層の全固形分
に対して、5〜70質量%であるのが好ましく、10〜
50質量%であるのがより好ましい。上記範囲内である
と、良好な機上現像性および皮膜強度が得られる。
【0324】無処理タイプの感熱層には、光熱変換物質
を添加することが必要である。光熱変換物質は、波長7
00nm以上の光を吸収する物質であればよく、種々の
顔料、染料および金属微粒子を用いることができる。
【0325】前記顔料としては、市販の顔料、ならび
に、カラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料
便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新
顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)および
「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載
されている顔料を利用することができる。具体的には、
例えば、サーマルポジタイプの感熱層に含有される光熱
変換物質として、上記に例示した顔料が挙げられる。
【0326】これらの顔料は、サーマルポジタイプの感
熱層に含有される顔料と同様に、表面処理をせずに用い
てもよく、表面処理を施して用いてもよい。
【0327】中でも、赤外線を吸収する顔料が、赤外線
を発光するレーザの利用に適する点で好ましい。このよ
うな赤外線を吸収する顔料としては、カーボンブラック
が好ましく、中でも、水溶性または親水性の樹脂と分散
しやすく、かつ、親水性を損わないように、親水性樹脂
やシリカゾルで表面がコートされたカーボンブラックが
特に好ましい。顔料の粒径は、0.01μm〜1μmの
範囲にあることが好ましく、0.01μm〜0.5μm
の範囲にあることがより好ましい。
【0328】前記染料としては、市販の染料および文献
(例えば、「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和4
5年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具
体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンア
ゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カ
ルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シア
ニン染料等の染料が挙げられる。中でも、赤外線を吸収
する染料が、赤外線を発光するレーザでの利用に適する
点で特に好ましい。
【0329】赤外線を吸収する染料としては、例えば、
特開昭58−125246号、特開昭59−84356
号、特開昭60−78787号の各公報等に記載されて
いるシアニン染料、特開昭58−173696号、特開
昭58−181690号、特開昭58−194595号
の各公報等に記載されているメチン染料、特開昭58−
112793号、特開昭58−224793号、特開昭
59−48187号、特開昭59−73996号、特開
昭60−52940号、特開昭60−63744号の各
公報等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58
−112792号公報等に記載されているスクワリリウ
ム染料、英国特許434,875号明細書に記載されて
いるシアニン染料や米国特許第4,756,993号明
細書に記載されている染料、米国特許第4,973,5
72号明細書に記載されているシアニン染料、特開平1
0−268512号公報に記載されている染料を挙げる
ことができる。
【0330】また、染料として、米国特許第5,15
6,938号明細書に記載されている近赤外吸収増感剤
も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,92
4号明細書に記載されている置換されたアリールベンゾ
(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公
報(米国特許第4,327,169号明細書)に記載さ
れているトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−1
81051号、同58−220143号、同59−41
363号、同59−84248号、同59−84249
号、同59−146063号、同59−146061号
の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭
59−216146号公報に記載されているシアニン染
料、米国特許第4,283,475号明細書に記載され
ているペンタメチンチオピリリウム塩等、特公平5−1
3514号公報および同5−19702号公報に記載さ
れているピリリウム化合物;Epolight III
−178、Epolight III−130、Epo
light III−125(いずれもエポリン社製)
等も好適に用いられる。中でも、特に好ましい染料は水
溶性染料であり、以下に具体例を構造式で列挙する。
【0331】
【化10】
【0332】
【化11】
【0333】
【化12】
【0334】
【化13】
【0335】
【化14】
【0336】
【化15】
【0337】
【化16】
【0338】
【化17】
【0339】前記金属微粒子としては、光熱変換性で光
照射によって熱融着する金属微粒子であれば特に限定さ
れないが、8〜11族(第VIII族および第IB族)
に属する金属の単体または合金の微粒子であるのが好ま
しく、Ag、Au、Cu、PtおよびPdから選ばれる
金属の単体または合金の微粒子であるのがより好まし
い。金属微粒子は、分散安定剤を含む水溶液に上記金属
の塩または錯塩の水溶液を添加し、更に還元剤を添加し
て金属コロイドとした後、不要な塩類を除去して用いら
れる。
【0340】分散安定剤としては、例えば、クエン酸、
シュウ酸等のカルボン酸およびその塩;PVP、PV
A、ゼラチン、アクリル樹脂等のポリマーが挙げられ
る。還元剤としては、例えば、卑金属塩(例えば、Fe
SO4 、SnSO4 )、水素化ホウ素化合物、ホルマリ
ン、デキストリン、ブドウ糖、ロッセル塩、酒石酸、チ
オ硫酸ナトリウム、次亜リン酸塩が挙げられる。金属コ
ロイドの平均粒子径は、1〜500nmであるのが好ま
しく、1〜100nmであるのがより好ましく、1〜5
0nmであるのが更に好ましい。その分散度は多分散で
もよいが、変動係数が30%以下の単分散の方が好まし
い。不要な塩類を除去する方法としては、例えば、限外
ろ過法;コロイド分散系にメタノールと水との混合溶液
またはエタノールと水との混合溶液を添加して、自然沈
降させ、または遠心沈降させて、その上澄み液を除去す
る方法が挙げられる。
【0341】光熱変換物質の含有量は、顔料または染料
の場合、感熱層の全固形分に対して、30質量%以下で
あるのが好ましく、5〜25質量%であるのがより好ま
しく、7〜20質量%であるのが更に好ましい。また、
金属微粒子の場合、感熱層の全固形分の5質量%以上で
あるのが好ましく、10質量%以上であるのがより好ま
しく、20質量%以上であるのが更に好ましい。金属微
粒子の含有量が5質量%未満であると、感度が低くなっ
てしまう場合がある。
【0342】無処理タイプの感熱層には、必要に応じ
て、上述した成分以外に、種々の化合物を含有すること
ができる。例えば、耐刷性を一層向上させるために多官
能モノマーを感熱層のマトリックス中に含有させること
ができる。このような多官能モノマーとしては、マイク
ロカプセル中に内包されるモノマーとして例示したもの
を用いることができる。特に好ましいモノマーとして
は、トリメチロールプロパントリアクリレートを挙げる
ことができる。
【0343】また、無処理タイプの感熱層には、画像形
成後、画像部と非画像部との区別をつけやすくするた
め、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤と
して使用することができる。具体的には、オイルイエロ
ー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#
312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オ
イルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラ
ックBS、オイルブラックT−505(以上、オリエン
ト化学工業社製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタ
ルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレッ
ト(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミ
ンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(C
I42000)、メチレンブルー(CI52015)、
特開昭62−293247号公報に記載されている染料
を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、
アゾ系顔料、酸化チタン等の顔料も、同様に好適に用い
ることができる。これらの含有量は、感熱層の全固形分
に対して、0.01〜10質量%であるのが好ましい。
【0344】また、無処理タイプの感熱層がエチレン性
不飽和結合を有する化合物を含有する場合、その不要な
熱重合を阻止するために、少量の熱重合防止剤を添加す
ることが好ましい。好適な熱重合防止剤としてはハイド
ロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−
p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコー
ル、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−
6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス
(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニト
ロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩
等が挙げられる。熱重合防止剤の含有量は、感熱層の全
固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好
ましい。
【0345】また、無処理タイプの感熱層には、必要に
応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸
やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加し
て、塗布後の乾燥の過程で感熱層の表面に偏在させても
よい。高級脂肪酸誘導体の含有量は、感熱層の全固形分
に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好まし
い。
【0346】更に、無処理タイプの感熱層は、必要に応
じて、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を含有す
ることができる。可塑剤としては、例えば、ポリエチレ
ングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチ
ル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸
ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、
リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリ
ル等が用いられる。
【0347】また、無処理タイプの感熱層は、無機微粒
子を含有することができる。無機微粒子としては、例え
ば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、炭酸マグネ
シウム、アルギン酸カルシウム等が挙げられる。これら
は光熱変換性ではなくても、皮膜の強化、感熱層の表面
粗面化による界面接着性の強化等の効果を奏する。無機
微粒子の含有量は、感熱層の全固形分に対して、1.0
〜70質量%であるのが好ましく、5.0〜50質量%
であるのがより好ましい。1%以下であると期待される
効果が小さく、また、70質量%以上であると本来必要
な光熱変換物質の含有量が制約される場合がある。
【0348】また、無処理タイプの感熱層は、親水性ゾ
ル状粒子を含有することができる。親水性ゾル状粒子と
しては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル、酸化マグ
ネシウムゾル、炭酸マグネシウムゾル、アルギン酸カル
シウムゾルが好適に挙げられる。中でも、シリカゾル、
アルミナゾル、アルギン酸カルシウムゾルまたはこれら
の混合物が好ましい。これらは光熱変換性ではなくて
も、親水性の向上、ゾルゲル膜の強化等の効果を奏す
る。
【0349】シリカゾルは、表面に多くのヒドロキシ基
を有し、内部はシロキサン結合(−Si−O−Si)で
構成されている。シリカゾルは、粒子径1〜100nm
のシリカ超微粒子が、水または極性溶媒の中に分散した
ものであり、コロイダルシリカとも称されている。シリ
カゾルの詳細は、加賀美敏郎、林瑛監修「高純度シリカ
の応用技術」第3巻、(株)シーエムシー(1991
年)に記載されている。アルミナゾルは、5〜200n
mのコロイドの大きさを有するアルミナ水和物(ベーマ
イト系)であり、水中の陰イオン(例えば、フッ化物イ
オン、塩化物イオン等のハロゲンイオン、酢酸イオン
(acetate)等のカルボン酸アニオン(carb
oxylato)等)を安定剤としてアルミナが分散さ
れたものである。これらの親水性ゾル状粒子は、いずれ
も、市販品として容易に入手することができる。
【0350】上記親水性ゾル状粒子の平均粒径は、10
〜50nmであるのが好ましく、10〜40nmである
のがより好ましい。親水性ゾル状粒子の粒径が上記範囲
内であると、親水性樹脂内において、光熱変換物質とし
て含有される金属微粒子等や、上述した疎水性熱溶融性
樹脂微粒子等の疎水性化前駆体(露光しない状態では疎
水性であり、露光により疎水性となる成分)とともに安
定に分散して、感熱層の膜強度を十分に保持することが
でき、また、レーザ光等により露光して製版し、平版印
刷版として印刷したときに、非画像部へのインキの付着
汚れを生じない、極めて親水性に優れたものになるとい
う効果が得られる。
【0351】上記光熱変換物質(好ましくはカーボンブ
ラック、金属微粒子)と上記親水性ゾル状粒子の存在割
合は、質量比で、100/0〜30/70であるのが好
ましく、100/0〜40/60であるのがより好まし
い。また、光熱変換物質、疎水性化前駆体および親水性
ゾル状粒子の合計の含有量は、感熱層の全固形分に対し
て、2〜95質量%であるのが好ましく、5〜85質量
%であるのがより好ましい。
【0352】感熱層は、通常、上記各成分を溶媒に溶か
して得られる感熱層塗布液を、親水層(陽極酸化皮膜層
または親水化処理後の陽極酸化皮膜層)上に塗布するこ
とにより製造することができる。ここで使用する溶媒と
しては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メ
チルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノ
ール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メ
トキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテ
ート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメト
キシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチ
ルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テト
ラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスル
ホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエ
ン、水等を挙げることができるが、本発明はこれらに限
定されるものではない。これらの溶剤は単独でまたは混
合して使用される。溶媒中の上記成分(全固形分)の濃
度は、1〜50質量%であるのが好ましい。
【0353】塗布する方法としては、種々の方法を用い
ることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗
布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エア
ーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げるこ
とができる。
【0354】また、感熱層の塗布量(固形分)は、用途
によって異なるが、一般的に0.5〜5.0g/m2
あるのが好ましい。上記範囲より塗布量が少なくなる
と、見かけの感度は大になるが、画像記録の機能を果た
す感熱層の皮膜特性が低下する。
【0355】本発明における感熱層には、塗布性を改善
するための界面活性剤、例えば、特開昭62−1709
50号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤
を添加することができる。界面活性剤の添加量は、感熱
層の全固形分に対して、0.01〜1質量%であるのが
好ましく、0.05〜0.5質量%であるのがより好ま
しい。
【0356】<バックコート層>このようにして、本発
明の平版印刷版用支持体上に、各種の画像記録層を設け
て得られた本発明の平版印刷版原版の裏面には、必要に
応じて、重ねた場合における画像記録層の傷付きを防止
するために、有機高分子化合物からなる被覆層(以下
「バックコート層」という。)を設けることができる。
バックコート層の主成分としては、ガラス転移点20℃
以上の、飽和共重合ポリエステル樹脂、フェノキシ樹
脂、ポリビニルアセタール樹脂および塩化ビニリデン共
重合樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂
が好適に用いられる。飽和共重合ポリエステル樹脂は、
ジカルボン酸ユニットとジオールユニットとからなる。
ジカルボン酸ユニットとしては、フタル酸、テレフタル
酸、イソフタル酸、テトラブロムフタル酸、テトラクロ
ルフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、アゼ
ライン酸、コハク酸、シュウ酸、スベリン酸、セバチン
酸、マロン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等
の飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0357】バックコート層は、更に、着色のための染
料、顔料等;平版印刷版用支持体との密着性を向上させ
るためのシランカップリング剤、ジアゾニウム塩からな
るジアゾ樹脂、有機ホスホン酸、有機リン酸、カチオン
性ポリマー等;滑り剤として通常用いられる、ワック
ス、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、ジメチルシロキサ
ンよりなるシリコーン化合物、変性ジメチルシロキサ
ン、ポリエチレン粉末等を適宜含有することができる。
【0358】バックコート層の厚さは、基本的には合紙
がなくとも画像記録層を傷付けにくい程度であればよ
く、0.01〜8μmであるのが好ましい。厚さが0.
01μm以下であると、平版印刷版原版を重ねて取り扱
った場合の画像記録層の擦れ傷を防ぐことが困難とな
る。厚さが8μmを超えると、印刷中、平版印刷版の周
辺で用いられる薬品によってバックコート層が膨潤して
厚みが変動し、印圧が変化して印刷特性を劣化させるこ
とがある。
【0359】バックコート層を平版印刷版原版の裏面に
被覆するには種々の方法を適用することができる。例え
ば、上記各成分を適当な溶媒の溶液にして、または乳化
分散液にして、塗布し乾燥させる方法、あらかじめフィ
ルム状に成形したものを接着剤や熱で貼り合わせる方
法、溶融押し出し機で溶融皮膜を形成し、貼り合わせる
方法等が挙げられる。中でも、上述した塗布量を確保す
るうえで好ましいのは、溶液にして塗布し乾燥させる方
法である。溶媒としては、特開昭62−251739号
公報に記載されているような有機溶剤が単独でまたは混
合して用いられる。塗布の方式および条件としては、画
像記録層を塗布する方式および条件の多くを利用するこ
とができる。即ち、例えば、コーティングロッドを用い
る方法、エクストルージョン型コーターを用いる方法、
スライドビードコーターを用いる方法が利用できる。バ
ックコート層は、画像記録層を設ける前に設けてもよ
く、設けた後に設けてもよく、画像記録層と同時に設け
てもよい。
【0360】[露光および現像処理]本発明の平版印刷
版原版は、画像記録層の種類に応じて、従来公知の露光
および現像処理を行って平版印刷版とすることができ
る。中でも、画像記録層が少なくとも、赤外域に光吸収
域がある光熱変換物質(赤外線吸収剤)を含有する場合
は、デジタルデータに基づき赤外線レーザーを照射して
所望の画像様に露光し、後述するようにアルカリ現像液
を用いる方法で現像処理を行うのが好ましい。特に、ケ
イ酸塩および糖類からなる群より選ばれる少なくとも一
種の化合物を含有する現像液で現像するのが好ましい。
このような方法で、露光および現像処理を行うと、ポジ
型の平版印刷版原版(サーマルポジタイプ)の場合は、
露光部の画像記録層に含有される赤外線吸収剤によりレ
ーザー光が効率よく吸収され、露光による吸収エネルギ
ーの蓄積により露光部の画像記録層のみが発熱してアル
カリ可溶性となり、アルカリ現像液を用いた現像処理に
より、露光部の画像記録層のみが除去されて所望の画像
が形成される。また、ネガ型の平版印刷版原版(サーマ
ルネガタイプ)の場合は、露光部の画像記録層に含有さ
れる赤外線吸収剤によりレーザー光が効率よく吸収さ
れ、露光による吸収エネルギーの蓄積により露光部の画
像記録層のみが発熱して酸を発生し、この酸により共存
する架橋剤が架橋反応を起こし、露光部の画像記録層の
みがアルカリ不溶性となる一方、未露光部の画像記録層
がアルカリ現像液を用いた現像処理により除去されて、
所望の画像が形成される。
【0361】以下、上記方法の現像処理に用いられるア
ルカリ現像液(以下、単に「現像液」ともいう。)につ
いて説明する。現像処理に用いられるアルカリ現像液は
アルカリ性水溶液であり、従来公知のアルカリ水溶液の
中から適宜選択して用いることができるが、ケイ酸アル
カリまたは非還元糖と、塩基とを含有するアルカリ水溶
液が好適に挙げられ、特にpH12.5〜14.0のも
のがより好適に挙げられる。
【0362】ケイ酸アルカリは、水に溶解したときにア
ルカリ性を示すものであり、例えば、ケイ酸ナトリウ
ム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム等のアルカリ金属
ケイ酸塩;ケイ酸アンモニウム等が挙げられる。これら
は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いて
もよい。
【0363】ケイ酸アルカリを用いるアルカリ水溶液に
おいては、ケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2
アルカリ酸化物M2 O(Mはアルカリ金属またはアンモ
ニウム基を表す。)との混合比率および濃度の調整によ
り、現像性を容易に調節することができる。中でも、酸
化ケイ素SiO2 とアルカリ酸化物M2 Oとの混合比率
(SiO2/M2 O:モル比)が0.5〜3.0のもの
が好ましく、1.0〜2.0のものがより好ましい。S
iO2 /M2 Oが0.5未満であると、アルカリ強度が
強くなっていくため、平版印刷版原版に用いられるアル
ミニウム板をエッチングしてしまうという弊害が生じる
ことがあり、また、3.0を超えると、現像性が低下す
ることがある。
【0364】また、上記アルカリ水溶液におけるケイ酸
アルカリの濃度は、1〜10質量%であるのが好まし
く、3〜8質量%であるのがより好ましく、4〜7質量
%であるのが更に好ましい。濃度が1質量%未満である
と、現像性および処理能力が低下することがあり、ま
た、10質量%を超えると、沈殿や結晶を生成しやすく
なり、更に廃液時の中和の際にゲル化しやすくなり、廃
液処理に支障をきたすことがある。
【0365】非還元糖と塩基とを含有するアルカリ水溶
液において、「非還元糖」とは、遊離性のアルデヒド基
やケトン基を持たないために還元性を有しない糖類を意
味する。非還元糖は、還元基同士の結合したトレハロー
ス型少糖類と、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体
と、糖類に水素添加して還元した糖アルコールとに分類
され、これらのいずれも好適に用いることができる。
【0366】上記トレハロース型少糖類としては、例え
ば、サッカロース、トレハロースが挙げられる。上記配
糖体としては、例えば、アルキル配糖体、フェノール配
糖体、カラシ油配糖体等が挙げられる。上記糖アルコー
ルとしては、例えば、D,L−アラビット、リビット、
キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニッ
ト、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシッ
ト、アロズルシット等;二糖類の水素添加で得られるマ
ルチトール、オリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還
元水あめ)等が挙げられる。上述した非還元糖の中で
も、糖アルコール、サッカロースが好ましく、D−ソル
ビット、サッカロース、還元水あめが適度なpH領域に
緩衝作用がある点でより好ましい。これらの非還元糖
は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用い
てもよい。アルカリ水溶液における非還元糖の含有量
は、0.1〜30質量%であるのが好ましく、1〜20
質量%であるのがより好ましい。
【0367】上記ケイ酸アルカリまたは上記非還元糖と
組み合わせて用いられる塩基としては、従来公知のアル
カリ剤を適宜選択することができる。アルカリ剤として
は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸
化リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、
リン酸三アンモニウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二
カリウム、リン酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭
酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、
炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナト
リウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム等の無機
アルカリ剤、クエン酸カリウム、クエン酸三カリウム、
クエン酸ナトリウム等が挙げられる。アルカリ剤として
は、更に、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメ
チルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリ
エチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピ
ルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミ
ン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリ
エタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイ
ソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジア
ミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も好適に挙げられ
る。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わ
せて用いてもよい。
【0368】中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ムが好ましい。これらを用いると、非還元糖に対する添
加量を調整することにより、広いpH領域においてpH
調整が可能となるためである。また、リン酸三ナトリウ
ム、リン酸三カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム
等もそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。
【0369】アルカリ現像液は、上述したアルカリ水溶
液に、界面活性剤を含有させて得られる。界面活性剤と
しては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カ
チオン界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合
わせて用いてもよい。
【0370】初めに、ノニオン界面活性剤について詳細
に説明する。ノニオン界面活性剤としては、例えば、下
記一般式(I)で表される非イオン性化合物が好適に挙
げられる。 A−W (I) 上記一般式(I)中、Aは、A−HのlogPが1.5
以上である疎水性有機基を表す。Wは、W−Hのlog
Pが1.0未満である非イオン性の親水性有機基を表
す。ここで、logPとは、C.Hansch,A.L
eo,“Substituent Constants
for Correlation Analysis
in Chemistry and Biolog
y”,J.Wile & Sons(1979)に記載
されているように、疎水性パラメータとして一般的に使
用されるものであり、目的とする分子(A−HおよびW
−H)のオクタノール/水の2層系に対して、各層に分
配される割合から算出した平衡濃度比Pの対数として定
義される。ここでは、上記一般式(I)中のAおよびW
の各基を特定する指標として使用しており、AおよびW
の各有機基に便宜的に水素原子結合させた、A−H構造
およびW−H構造に対して、A.K.Ghoseet.
al,J.Comput.Chem.9,80(198
8)に記載されている方法に基づき、既知データより計
算し、求めたものである。
【0371】具体的な構造としては、有機基AおよびW
は、互いに異なり、それぞれ上述のlogPを満足する
1価の有機残基を表す。このような有機残基は、互いに
同じであってもよく異なっていてもよい置換基(例え
ば、ハロゲン原子)を有していてもよく、かつ、不飽和
結合を含んでいてもよい炭化水素基、ヘテロ環基、ヒド
ロキシ基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、
アミノ基、置換アミノ基、置換カルボニル基、カルボキ
シラート基、スルホ基、スルホナト基、置換スルフィニ
ル基、置換スルホニル基、ホスホノ基、置換ホスホノ
基、ホスホナト基、置換ホスホナト基、シアノ基または
ニトロ基を表す。
【0372】置換基を有していてもよく、かつ、不飽和
結合を含んでいてもよい炭化水素基としては、例えば、
アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリー
ル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル
基、置換アルキニル基が挙げられる。
【0373】アルキル基は、炭素原子数が1から20ま
での直鎖状、分岐状または環状のアルキル基が好適に挙
げられる。その具体例としては、メチル基、エチル基、
プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプ
チル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル
基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オク
タデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチ
ル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、
ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル
基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シ
クロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル
基が挙げられる。これらの中では、炭素原子数1から1
2までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、
または、炭素原子数5から10までの環状のアルキル基
が好ましい。
【0374】置換アルキル基は、置換基とアルキレン基
との結合により構成される。置換アルキル基に用いられ
る置換基としては、水素以外の1価の非金属原子団が用
いられる。置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子
(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシ基、アル
コキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチ
オ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジ
チオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジ
アルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジ
アリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ
基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アル
キルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイル
オキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、
N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキ
ル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスル
ホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、
【0375】アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミ
ノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N′
−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアルキルウレイ
ド基、N′−アリールウレイド基、N′,N′−ジアリ
ールウレイド基、N′−アルキル−N′−アリールウレ
イド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイ
ド基、N′−アルキル−N−アルキルウレイド基、N′
−アルキル−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジ
アルキル−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジア
ルキル−N−アリールウレイド基、N′−アリール−N
−アルキルウレイド基、N′−アリール−N−アリール
ウレイド基、N′,N′−ジアリール−N−アルキルウ
レイド基、N′,N′−ジアリール−N−アリールウレ
イド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−アルキ
ルウレイド基、N′−アルキル−N′−アリール−N−
アリールウレイド基、
【0376】アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロ
キシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキ
シカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキ
シカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシ
カルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシ
カルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキ
シ基およびその共役塩基基(以下「カルボキシラート
基」という。)、アルコキシカルボニル基、アリーロキ
シカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバ
モイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−ア
リールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイ
ル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、ア
ルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アル
キルスルホニル基、
【0377】アリールスルホニル基、スルホ基(−SO
3 H)およびその共役塩基基(以下「スルホナト基」と
いう。)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスル
ホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィ
ナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、
N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリール
スルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスル
フィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスル
ファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、
N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールス
ルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファ
モイル基、
【0378】N−アシルスルファモイル基およびその共
役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基
(−SO2 NHSO2 −(alkyl))およびその共
役塩基基、N−アリールスルホニルスルファモイル基
(−SO2 NHSO2 −(aryl))およびその共役
塩基基、N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−C
ONHSO2 −(alkyl))およびその共役塩基
基、N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CON
HSO2 −(aryl))およびその共役塩基基、アル
コキシシリル基(−Si(O−(alkyl))3 )、
アリーロキシシリル基(−Si(O−(ary
l))3 )、ヒドロキシシリル基(−Si(OH)3
およびその共役塩基基、
【0379】ホスホノ基(−PO 32 )およびその共
役塩基基(以下「ホスホナト基」という。)、ジアルキ
ルホスホノ基(−PO3 −(alkyl)2 )、ジアリ
ールホスホノ基(−PO3 −(aryl)2 )、アルキ
ルアリールホスホノ基(−PO 3 (−(alkyl))
−(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3
H−(alkyl))およびその共役塩基基(以下「ア
ルキルホスホナト基」という。)、モノアリールホスホ
ノ基(−PO3 H−(aryl))およびその共役塩基
基(以下「アリールホスホナト基」という。)、ホスホ
ノオキシ基(−OPO 32 )およびその共役塩基基
(以下「ホスホナトオキシ基」という。)、ジアルキル
ホスホノオキシ基(−OPO3 −(alkyl)2 )、
ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3 −(ary
l)2 )、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OP
3 (−(alkyl))−(aryl))、モノアル
キルホスホノオキシ基(−OPO3 H−(alky
l))およびその共役塩基基(以下「アルキルホスホナ
トオキシ基」という。)、モノアリールホスホノオキシ
基(−OPO3 H−(aryl))およびその共役塩基
基(以下「アリールホスホナトオキシ基」という。)、
シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アル
キニル基が挙げられる。
【0380】上記アリール基の具体例としては、フェニ
ル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル
基、メシチル基、クメニル基、フルオロフェニル基、ク
ロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェ
ニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、
エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキ
シフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオ
フェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフ
ェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノ
フェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニ
ルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、フェノ
キシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイル
フェニル基、フェニル基、ニトロフェニル基、シアノフ
ェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、
ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基が挙げられ
る。
【0381】上記アルケニル基の具体例としては、ビニ
ル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル
基、2−クロロ−1−エテニル基が挙げられる。上記ア
ルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピ
ニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル
基、フェニルエチニル基が挙げられる。上記アシル基
(R4 CO−)の具体例としては、R4 が水素原子また
は上記のアルキル基、アリール基、アルケニル基もしく
はアルキニル基である基が挙げられる。
【0382】置換アルキル基に用いられるアルキレン基
としては、上述した炭素数1から20までのアルキル基
の水素原子のいずれか一つを除し、2価の有機残基とし
たものが挙げられ、炭素原子数1から12までの直鎖
状、炭素原子数3から12までの分岐状または炭素原子
数5から10までの環状のアルキレン基が好適に挙げら
れる。好ましい置換アルキル基の具体例としては、クロ
ロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、ト
リフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエト
キシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチ
ル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチ
ルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホ
リノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイル
オキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキ
シエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル
基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルア
ミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロ
ピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエ
チル基、メトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボ
ニルブチル基、エトキシカルボニルメチル基、ブトキシ
カルボニルメチル基、アリルオキシカルボニルメチル
基、ベンジルオキシカルボニルメチル基、メトキシカル
ボニルフェニルメチル基、トリクロロメチルカルボニル
メチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフ
ェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、
N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピル
カルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カル
バモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニ
ル)カルバモイルメチル基、スルホプロピル基、スルホ
ブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル
基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプ
ロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファ
モイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニ
ル)スルファモイルオクチル基、
【0383】
【化18】
【0384】ホスホノブチル基、ホスホナトヘキシル
基、ジエチルホスホノブチル基、ジフェニルホスホノプ
ロピル基、メチルホスホノブチル基、メチルホスホナト
ブチル基、トリルホスホノヘキシル基、トリルホスホナ
トヘキシル基、ホスホノオキシプロピル基、ホスホナト
オキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチ
ルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p
−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プ
ロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル
基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル
基、2−ブチニル基、3−ブチニル基が挙げられる。
【0385】アリール基としては、例えば、1〜3個の
ベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員
不飽和環が縮合環を形成したものが挙げられる。その具
体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル
基、フェナントリル基、インデニル基、アセナブテニル
基、フルオレニル基が挙げられる。これらの中では、フ
ェニル基、ナフチル基が好ましい。
【0386】置換アリール基は、置換基がアリール基に
結合したものであり、上記アリール基の環形成炭素原子
上に、置換基として水素以外の1価の非金属原子団を有
するものが用いられる。好ましい置換基の例としては、
上述したアルキル基、置換アルキル基、置換アルキル基
における置換基が挙げられる。置換アリール基の好まし
い具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル
基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロ
モフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェ
ニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフ
ェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェ
ニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル
基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、フ
ェニルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエ
チルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチ
ルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N
−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−
フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミ
ノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル
基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニ
ル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェ
ノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル
基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプ
ロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニ
ル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スル
ホフェニル)カルバモイルフェニル基、
【0387】スルホフェニル基、スルホナトフェニル
基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモ
イルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフ
ェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−
メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルフェ
ニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基、
ジエチルホスホノフェニル基、ジフェニルホスホノフェ
ニル基、メチルホスホノフェニル基、メチルホスホナト
フェニル基、トリルホスホノフェニル基、トリルホスホ
ナトフェニル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、
2−ブテニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メ
チルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル
基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基
が挙げられる。
【0388】アルケニル基としては、例えば、置換アル
キル基の置換基として上述したものが挙げられる。置換
アルケニル基は、置換基が上記アルケニル基に結合した
ものである。好ましい置換基の例としては、上述した置
換アルキル基における置換基が挙げられる。置換アルケ
ニル基の好ましい具体例としては、
【0389】
【化19】
【0390】が挙げられる。
【0391】アルキニル基としては、例えば、置換アル
キル基の置換基として上述したものが挙げられる。置換
アルキニル基は、置換基が上記アルキニル基に結合した
ものである。好ましい置換基の例としては、上述した置
換アルキル基における置換基が挙げられる。
【0392】ヘテロ環基は、ヘテロ環上の水素を一つ除
した1価の基、および、この1価の基から更に水素を一
つ除し、上述の置換アルキル基における置換基が結合し
てできた1価の基である。好ましいヘテロ環の例として
は、
【0393】
【化20】
【0394】
【化21】
【0395】が挙げられる。
【0396】置換オキシ基(R5 O−)としては、R5
が水素以外の1価の非金属原子団であるものを用いるこ
とができる。好ましい置換オキシ基の例としては、アル
コキシ基、アリーロキシ基、アシルオキシ基、カルバモ
イルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N
−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキル
カルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイ
ルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル
オキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ
基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシ基が挙げられ
る。
【0397】これらの置換オキシ基に置換基として用い
られるアルキル基およびアリール基としては、上述した
アルキル基、置換アルキル基、アリール基および置換ア
リール基が挙げられる。また、これらの置換オキシ基に
置換基として用いられるアシル基(R6 CO−)として
は、R6 が上述したアルキル基、置換アルキル基、アリ
ール基または置換アリール基であるのものが挙げられ
る。上記置換オキシ基の中では、アルコキシ基、アリー
ロキシ基、アシルオキシ基、アリールスルホキシ基が好
ましい。
【0398】好ましい置換オキシ基の具体例としては、
メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロ
ピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘ
キシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ベンジルオキシ
基、アリルオキシ基、フェネチルオキシ基、カルボキシ
エチルオキシ基、メトキシカルボニルエチルオキシ基、
エトキシカルボニルエチルオキシ基、メトキシエトキシ
基、フェノキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ
基、エトキシエトキシエトキシ基、モルホリノエトキシ
基、モルホリノプロピルオキシ基、アリロキシエトキシ
エトキシ基、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリル
オキシ基、メシチルオキシ基、クメニルオキシ基、メト
キシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、ク
ロロフェニルオキシ基、ブロモフェニルオキシ基、アセ
チルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフチルオキシ
基、フェニルスルホニルオキシ基、ホスホノオキシ基、
ホスホナトオキシが挙げられる。
【0399】置換チオ基(R7 S−)としては、R7
水素以外の1価の非金属原子団であるものを用いること
ができる。好ましい置換チオ基の例としては、アルキル
チオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリール
ジチオ基、アシルチオ基が挙げられる。
【0400】これらの置換チオ基に置換基として用いら
れるアルキル基およびアリール基としては、上述したア
ルキル基、置換アルキル基、アリール基および置換アリ
ール基が挙げられる。また、これらの置換チオ基に置換
基として用いられるアシル基(R6 CO−)としては、
6 が上述したアルキル基、置換アルキル基、アリール
基または置換アリール基であるのものが挙げられる。上
記置換チオ基の中では、アルキルチオ基、アリールチオ
基が好ましい。
【0401】好ましい置換チオ基の具体例としては、メ
チルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、エトキシ
エチルチオ基、カルボキシエチルチオ基、メトキシカル
ボニルチオ基が挙げられる。
【0402】置換アミノ基(R8 NH−,(R9 )(R
10)N−)としては、R8 、R9 およびR10が、それぞ
れ水素以外の1価の非金属原子団のものを用いることが
できる。置換アミノ基の好ましい例としては、N−アル
キルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリ
ールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アル
キル−N−アリールアミノ基、アシルアミノ基、N−ア
ルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、
ウレイド基、N′−アルキルウレイド基、N′,N′−
ジアルキルウレイド基、N′−アリールウレイド基、
N′,N′−ジアリールウレイド基、N′−アルキル−
N′−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、
N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N−アルキ
ルウレイド基、N′−アルキル−N−アリールウレイド
基、N′,N′−ジアルキル−N−アルキルウレイド
基、N′,N′−ジアルキル−N−アリールウレイド
基、N′−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−
アリール−N−アリールウレイド基、N′,N′−ジア
リール−N−アルキルウレイド基、N′,N′−ジアリ
ール−N−アリールウレイド基、N′−アルキル−N′
−アリール−N−アルキルウレイド基、N′−アルキル
−N′−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキ
シカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ
基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ
基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ
基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ
基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ
基が挙げられる。
【0403】これらの置換アミノ基に置換基として用い
られるアルキル基およびアリール基としては、上述した
アルキル基、置換アルキル基、アリール基および置換ア
リール基が挙げられる。また、これらの置換アミノ基に
置換基として用いられるアシル基(R6 CO−)として
は、R6 が上述したアルキル基、置換アルキル基、アリ
ール基または置換アリール基であるのものが挙げられ
る。上記置換アミノ基の中では、N−アルキルアミノ
基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ
基、アシルアミノ基が好ましい。
【0404】好ましい置換アミノ基の具体例としては、
メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、
モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジノ基、フェニル
アミノ基、ベンゾイルアミノ基、アセチルアミノ基が挙
げられる。
【0405】置換カルボニル基(R11−CO−)として
は、R11が水素以外の1価の非金属原子団であるものを
用いることができる。置換カルボニル基の好ましい例と
しては、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコ
キシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバ
モイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジア
ルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、
N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N
−アリールカルバモイル基が挙げられる。
【0406】これらの置換カルボニル基に置換基として
用いられるアルキル基およびアリール基としては、上述
したアルキル基、置換アルキル基、アリール基および置
換アリール基が挙げられる。また、アシル基(R6 CO
−)としては、R6 が上述したアルキル基、置換アルキ
ル基、アリール基または置換アリール基であるのものが
挙げられる。上記置換カルボニル基の中では、ホルミル
基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル
基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−
アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモ
イル基、N−アリールカルバモイル基が好ましく、ホル
ミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロ
キシカルボニル基がより好ましい。
【0407】好ましい置換カルボニル基の具体例として
は、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、カルボキ
シ基、メトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル
基、N−メチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモ
イル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、モルホリノ
カルボニル基が挙げられる。
【0408】置換スルフィニル基(R12−SO−)とし
ては、R12が水素以外の1価の非金属原子団であるもの
を用いることができる。置換スルフィニル基の好ましい
例としては、アルキルスルフィニル基、アリールスルフ
ィニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィ
ナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、
N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリール
スルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスル
フィナモイル基が挙げられる。これらの置換スルフィニ
ル基に置換基として用いられるアルキル基およびアリー
ル基としては、上述したアルキル基、置換アルキル基、
アリール基および置換アリール基が挙げられる。上記置
換スルフィニル基の中では、アルキルスルフィニル基、
アリールスルフィニル基が好ましい。好ましい置換スル
フィニル基の具体例としては、へキシルスルフィニル
基、ベンジルスルフィニル基、トリルスルフィニル基が
挙げられる。
【0409】置換スルホニル基(R13−SO2 −)とし
ては、R13が水素原子以外の1価の非金属原子団である
ものを用いることができる。置換スルホニル基の好まし
い例としては、アルキルスルホニル基、アリールスルホ
ニル基が挙げられる。これらの置換スルホニル基に置換
基として用いられるアルキル基およびアリール基として
は、上述したアルキル基、置換アルキル基、アリール基
および置換アリール基が挙げられる。好ましい置換スル
ホニル基の具体例としては、ブチルスルホニル基、クロ
ロフェニルスルホニル基が挙げられる。
【0410】スルホナト基(−SO3 −)は、上述した
ように、スルホ基(−SO3 H)の共役塩基陰イオン基
を意味する。スルホナト基は、通常、対陽イオンと共に
使用されるのが好ましい。このような対陽イオンとして
は、従来公知のものを用いることができる。例えば、種
々のオニウム類(アンモニウム類、スルホニウム類、ホ
スホニウム類、ヨードニウム類、アジニウム類等)、金
属イオン類(Na+ 、K+ 、Ca2+、Zn2+等)が挙げ
られる。
【0411】カルボキシラート基(−CO2 −)は、上
述したように、カルボキシ基(−CO2 H)の共役塩基
陰イオン基を意味する。カルボキシラート基は、通常、
対陽イオンと共に使用されるのが好ましい。対陽イオン
は、スルホナト基の場合と同様である。
【0412】置換ホスホノ基は、ホスホノ基の有するヒ
ドロキシ基の一つまたは二つが他の有機オキソ基によっ
て置換されたものを意味する。好ましい置換ホスホノ基
の例としては、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホス
ホノ基、アルキルアリールホスホノ基、モノアルキルホ
スホノ基、モノアリールホスホノ基が挙げられる。置換
ホスホノ基の中では、ジアルキルホスホノ基、ならびに
ジアリールホスホノ基が好ましい。好ましい置換ホスホ
ノ基の具体例としては、ジエチルホスホノ基、ジブチル
ホスホノ基、ジフェニルホスホノ基が挙げられる。
【0413】ホスホナト基(−PO3 2- 、−PO
3 - )は、ホスホノ基(−PO3 2 )の酸第一解離
または酸第二解離に由来する共役塩基陰イオン基を意味
する。ホスホナト基は、通常、対陽イオンと共に使用さ
れるのが好ましい。対陽イオンは、スルホナト基の場合
と同様である。
【0414】置換ホスホナト基とは、上述した置換ホス
ホノ基の有するヒドロキシ基を一つ有機オキソ基に置換
したものの共役塩基陰イオン基を意味する。好ましい置
換ホスホナト基としては、モノアルキルホスホノ基(−
PO3 H−(alkyl))、モノアリールホスホノ基
(−PO3 H−(aryl))の共役塩基が挙げられ
る。置換ホスホナト基は、通常、対陽イオンと共に使用
されるのが好ましい。対陽イオンは、スルホナト基の場
合と同様である。
【0415】上記一般式(I)中、Aが芳香族を含有す
る有機基であり、Wがポリオキシアルキレン基を含有す
る非イオン性の有機基であるのが好ましい。
【0416】A−HおよびW−Hの具体例を以下に示
す。
【0417】
【化22】
【0418】
【化23】
【0419】また、上記一般式(I)で表されれる非イ
オン性化合物の具体例を以下に示す。
【0420】
【化24】
【0421】
【化25】
【0422】
【化26】
【0423】上記一般式(I)で表される非イオン性化
合物の中でも、下記式(I−A)または(I−B)で示
される化合物が好ましい。
【0424】
【化27】
【0425】(上記式(I−A)および(I−B)中、
1 およびR2 は、それぞれHまたは炭素数1〜100
のアルキル基を表す。nおよびmは、それぞれ独立に、
0〜100の整数を表す。)
【0426】上記一般式(I−A)で表される化合物と
しては、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオ
キシエチレンメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチ
レンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノ
ニルフェニルエーテル等が挙げられる。上記一般式(I
−B)で表される化合物としては、ポリオキシエチレン
ナフチルエーテル、ポリオキシエチレンメチルナフチル
エーテル、ポリオキシエチレンオクチルナフチルエーテ
ル、ポリオキシエチレンノニルナフチルエーテル等が挙
げられる。
【0427】上記一般式(I−A)または(I−B)で
表される化合物のそれぞれにおいて、ポリオキシエチレ
ン鎖の繰り返し単位数(n)は、3〜50であるのが好
ましく、5〜30であるのがより好ましく、また、ポリ
オキシプロピレン鎖の繰り返し単位数(m)は、0〜1
0であるのが好ましく、0〜5であるのがより好まし
い。上記一般式(I−A)または(I−B)で表される
化合物は、ポリオキシエチレン部とポリオキシプロピレ
ン部とがランダムの共重合体であってもよく、ブロック
の共重合体であってもよい。上記一般式(I−A)また
は(I−B)で表されるノニオン芳香族エーテル系活性
剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用され
る。
【0428】つぎに、ノニオン界面活性剤以外の界面活
性剤について説明する。アニオン界面活性剤としては、
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(Y−23)等
のアルキルベンゼンスルホン酸塩類;ブチルナフタレン
スルホン酸ナトリウム(Y−24)、ペンチルナフタレ
ンスルホン酸ナトリウム(Y−25)、ヘキシルナフタ
レンスルホン酸ナトリウム(Y−26)、オクチルナフ
タレンスルホン酸ナトリウム(Y−27)等のアルキル
ナフタレンスルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウム
(Y−28)等のアルキル硫酸塩類;ドデシルスルホン
酸ナトリウム(Y−29)等のアルキルスルホン酸塩
類;ジラウリルスルホコハク酸ナトリウム(Y−30)
等のスルホコハク酸エステル塩類等が挙げられる。
【0429】カチオン界面活性剤としては、アルキルア
ミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド(Y−3
1)等の第四級アンモニウム塩類;ポリオキシエチレン
アルキルアミン塩類;ポリオキシエチレンポリアミン誘
導体等が挙げられる。第四級アンモニウム塩類の具体例
としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【0430】
【化28】
【0431】(上記式中、R4 〜R7 は、それぞれ独立
に、炭素原子数1〜30のアルキル基またはアルケニル
基を表す。X- は、酸基イオン、酸エステルイオン(例
えば、R−O−SO3 - )、ハロゲンイオン、水酸化物
イオン等の陰イオンを表す。)
【0432】両性界面活性剤としては、カルボキシベタ
イン類、アルキルアミノカルボン酸類、スルホベタイン
類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類等が挙げら
れる。アミノカルボン酸型両性界面活性剤の具体例とし
ては、下記式で表される化合物およびその塩類が挙げら
れる。
【0433】
【化29】
【0434】(上記式中、R8 およびR9 は、それぞれ
炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。d、eおよび
fは、それぞれ独立に、1〜10の整数を表す。) R8 およびR9 は、それぞれ脂肪族炭化水素基であるの
が好ましく、直鎖であっても分岐していてもよく、ま
た、飽和であっても不飽和であってもよい。具体的に
は、アルキル基、アルケニル基等が挙げられる。上記式
の化合物の塩類としては、アルカリ金属塩(例えば、ナ
トリウム塩、カリウム塩、リチウム塩)、アンモニウム
塩、アミン塩等が挙げられる。
【0435】ベタイン型両性界面活性剤の具体例として
は、下記式で表されるものが挙げられる。
【0436】
【化30】
【0437】(上記式中、R10〜R12は、それぞれ独立
に、炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。gは1〜
10の整数を表す。) R10〜R12は、それぞれ脂肪族炭化水素基であるのが好
ましく、直鎖であっても分岐していてもよく、また、飽
和であっても不飽和であってもよい。具体的には、アル
キル基、アルケニル基等が挙げられる。
【0438】界面活性剤の含有量は、現像液中、0.1
〜15質量%であるのが好ましく、0.5〜8.0質量
%であるのがより好ましく、1.0〜5.0質量%であ
るのが更に好ましい。含有量が少なすぎると、現像性低
下および感光層成分の溶解性低下を招き、逆に多すぎる
と、平版印刷版の耐刷性を低下させる。
【0439】アルカリ現像液は、キレート剤を含有する
ことができる。キレート剤としては、例えば、Na2
2 7 、Na5 3 3 、Na3 3 9 、Na2 4
P(NaO3 P)PO3 Na2 、カルゴン(ポリメタリ
ン酸ナトリウム)等のポリリン酸塩;エチレンジアミン
テトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ジエ
チレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリ
ウム塩、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリ
ウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレン
ジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム
塩、ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウ
ム塩、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そ
のカリウム塩、そのナトリウム塩、1,3−ジアミノ−
2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナ
トリウム塩等のアミノポリカルボン酸類;2−ホスホノ
ブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、
そのナトリウム塩、2−ホスホノブタノントリカルボン
酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、
1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2,2、その
カリウム塩、そのナトリウム塩、1−ヒドロキシエタン
−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリ
ウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリ
ウム塩、そのナトリウム塩等の有機ホスホン酸類が挙げ
られる。
【0440】キレート剤の含有量は、使用される硬水の
硬度およびその使用量に応じて決定されるが、使用時の
現像液中、0.001〜5質量%であるのが好ましく、
0.01〜1.0質量%であるのがより好ましく、0.
05〜0.5質量%であるのが更に好ましい。
【0441】
【実施例】以下に実施例を示して本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらに限られるものではない。 1.平版印刷版用支持体の作成 (実施例1) <アルミニウム板>Si:0.06質量%、Fe:0.
30質量%、Cu:0.005質量%、Mn:0.00
1質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001
質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと
不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製
し、溶湯処理およびろ過を行った上で、厚さ500m
m、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作成した。表
面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、
550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下が
ったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧
延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500
℃で行った後、冷間圧延で、厚さ0.24mmに仕上
げ、JIS 1050材のアルミニウム板を得た。この
アルミニウム板を幅1030mmにした後、以下に示す
表面処理に供した。
【0442】<表面処理>表面処理は、以下の(a)〜
(j)の各種処理を連続的に行うことにより行った。な
お、各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを
行った。
【0443】(a)機械的粗面化処理 図1に示したような装置を使って、比重1.12の研磨
剤(パミス)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてア
ルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状
ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。図1
において、1はアルミニウム板、2および4はローラ状
ブラシ、3は研磨スラリー液、5、6、7および8は支
持ローラである。研磨剤の平均粒径は40μm、最大粒
径は100μmであった。ナイロンブラシの材質は6・
10ナイロン、毛長は50mm、毛の直径は0.3mm
であった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス
製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラ
シは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ
200mm)の距離は300mmであった。ブラシロー
ラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシロ
ーラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して
7kWプラスになるまで押さえつけた(第1表のおいて
「押し圧」という。)。ブラシの回転方向はアルミニウ
ム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は20
0rpmであった。
【0444】(b)アルカリエッチング処理 上記で得られたアルミニウム板をカセイソーダ濃度2.
6質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度
70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理
を行い、アルミニウム板を6g/m2 溶解した。その
後、スプレーによる水洗を行った。
【0445】(c)デスマット処理 温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイ
オンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマ
ット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマ
ット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を
用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用い
た。
【0446】(d)電気化学的粗面化処理 60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面
化処理を行った。このときの電解液は、硝酸(第1表の
おいて「液種」という。)10.5g/L水溶液(アル
ミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.
007質量%含む。)、液温50℃であった。交流電源
波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピー
クに達するまでの時間TPが0.8msec、duty
比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を
対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノ
ードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に
示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30
A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量
の総和で220C/dm2 であった(第1表のおいて
「電気量」という。)。補助陽極には電源から流れる電
流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗を
行った。
【0447】(e)アルカリエッチング処理 アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミ
ニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレ
ーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム
板を3.5g/m2 溶解し(第1表のおいて「溶解量」
という。)、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理
を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とす
るスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッ
ジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、
スプレーによる水洗を行った。
【0448】(f)デスマット処理 温度30℃の硫酸濃度15質量%水溶液(アルミニウム
イオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデス
マット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デス
マット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流
を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用い
た。
【0449】(g)電気化学的粗面化処理 60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面
化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/
L(第1表のおいて「液濃度」という。)水溶液(アル
ミニウムイオンを5g/L含む。)、温度35℃であっ
た。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値が
ゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8mse
c、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カ
ーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行っ
た。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電
解槽は図3に示すものを使用した。電流密度は電流のピ
ーク値で25A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽
極時の電気量の総和で50C/dm2 であった。その
後、スプレーによる水洗を行った。
【0450】(h)アルカリエッチング処理 アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミ
ニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレ
ーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム
板を0.1g/m2 溶解し(第1表のおいて「溶解量」
という。)、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理
を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とす
るスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッ
ジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、
スプレーによる水洗を行った。
【0451】(i)デスマット処理 温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウム
イオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデス
マット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行っ
た。
【0452】引き続き(j)親水性皮膜の形成(陽極酸
化処理等)を行い画像記録層を設けて本発明の平版印刷
版原版とするが、その前にアルミニウム板の表面物性を
特定する以下のファクターを測定した。なお、実施例1
で製造した(親水性皮膜の形成前の)支持体を、「支持
体A」とする。
【0453】(実施例2〜4および比較例1〜5)各処
理の条件を第1表に示すように変更した以外は、実施例
1と同様の方法により、実施例2〜4および比較例1〜
5の親水性皮膜の形成前の支持体を得、順に「支持体
B」〜「支持体I」とする。なお、第1表中、「−」は
処理を行わなかったことを示す。
【0454】2.平版印刷版用支持体の表面形状のファ
クターの算出 上記で得られた平版印刷版用支持体の表面について、以
下のようにしてRa 、ΔS、a30およびa60を求め
た。結果を第1表に示す。
【0455】(1)原子間力顕微鏡による表面形状の測
定 原子間力顕微鏡(SP13700、セイコー電子工業社
製)により表面形状を測定し、3次元データを求めた。
以下、具体的な手順を説明する。平版印刷版用支持体を
1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の
水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にア
プローチし、原子間力が働く領域に達したところで、X
Y方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方向のピ
エゾの変位でとらえた。ピエゾスキャナーは、XY方向
について150μm、Z方向について10μm、走査可
能なものを使用した。カンチレバーは共振周波数120
〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのもの(S
I−DF20、NANOPROBE社製)を用い、DF
Mモード(Dynamic Force Mode)で
測定した。また、求めた3次元データを最小二乗近似す
ることにより試料のわずかな傾きを補正し基準面を求め
た。計測の際は、表面の50μm□を512×512点
測定した。XY方向の分解能は1.9μm、Z方向の分
解能は1nm、スキャン速度は60μm/secとし
た。
【0456】(2)3次元データの補正 ΔSの算出には、上記(1)で求められた3次元データ
をそのまま用いたが、Ra 、a30およびa60の算出
には、上記(1)で求められた3次元データから波長2
μm以上の成分を除去する補正をしたものを用いた。補
正は、上記(1)で求められた3次元データを高速フー
リエ変換をして周波数分布を求め、ついで、波長2μm
以上の成分を除去した後、フーリエ逆変換をすることに
より行った。
【0457】(3)各ファクターの算出 Ra 上記(2)で補正して得られた3次元データ(f(x,
y))を用い、下記式から表面粗さRa を算出した。
【0458】
【数3】
【0459】式中、Lx およびLy は、それぞれ測定領
域(長方形)のx方向およびy方向の辺の長さを表し、
本発明においてはLx =Ly =50μmである。また、
0は幾何学的測定面積であり、S0 =Lx ×Ly で求
められる。
【0460】ΔS 上記(1)で求められた3次元データ(f(x,y))
を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される
微小三角形の面積の総和を求め、実面積Sx とした。表
面積比ΔSは、得られた実面積Sx と幾何学的測定面積
0 とから、下記式により求めた。 ΔS=(Sx −S0 )/S0 ×100(%)
【0461】a30およびa60 上記(2)で補正して得られた3次元データ(f(x,
y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成
される微小三角形と基準面とのなす角を全データについ
て算出し、傾斜度分布曲線を求め、一方で該微小三角形
の面積の総和を求めて実面積とした。傾斜度分布曲線よ
り、実面積に対する傾斜度30度以上の部分の面積の割
合a30および傾斜度60度以上の部分の面積の割合a
60を算出した。
【0462】
【表1】
【0463】
【表2】
【0464】3.平版印刷版原版の作成 (実施例5〜20および比較例6〜43)実施例1〜4
および比較例1〜5で製造した(陽極酸化処理前の)支
持体A〜Iを、以下の方法で第2表に示した組合わせで
親水性皮膜を形成した。 <親水性皮膜形成法I>図4に示す構造の陽極酸化装置
を用いて陽極酸化処理を行い、平版印刷版用支持体を得
た。第一および第二電解部に供給した電解液としては、
硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度170g
/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温
度38℃であった。その後、スプレーによる水洗を行っ
た。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2 であった。陽
極酸化皮膜の熱伝導率は、前記記載の装置を用いて測定
し、5点平均値を求めた。測定の際には毎回、金属アル
ミニウム及び酸化アルミ(アルミナ)の測定を行い、そ
れぞれの文献値を比較して補正を行った。下記式[1]
により求めたところ、0.4(W/m・K)であった。
【0465】
【数4】
【0466】<親水性皮膜形成法II>図4に示す構造
の陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行い、平版印刷
版用支持体を得た。第一および第二電解部に供給した電
解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫
酸濃度170g/L(アルミニウムイオンを0.5質量
%含む。)、温度38℃であった。その後、スプレーに
よる水洗を行った。酸化皮膜量は2.7g/m2 であっ
た。その後、陽極酸化皮膜の熱伝導率を低くするため、
ポアワイド処理(PW処理)は、pH13に調整した3
0℃の水酸化ナトリウム溶液に70秒浸漬した。最終的
な酸化皮膜量は1.6g/m2 であった。同様にして陽
極酸化皮膜の熱伝導率を求めたところ、0.05(W/
m・K)であった。
【0467】<親水性皮膜形成法III>電解液に、シ
ュウ酸を用いた以外は陽極酸化処理法Iと同様の条件で
行った。陽極酸化皮膜の熱伝導率を求めたところ、0.
2(W/m・K)であった。 <親水性皮膜形成法IV>一般的に用いられている反応
性スパッタリング法によりSiO2 皮膜をアルミニウム
板上に蒸着した。ターゲットにSiO2 を使ったスパッ
タリング法にてSiO2 皮膜をアルミニウム基板上に成
膜した。500Wの高周波電源を用いて6.7×10-1
(Pa)の圧力下で20分30秒処理を行って0.2μ
mのSiO 2 皮膜が得られた。陽極酸化皮膜の熱伝導率
を求めたところ、0.2(W/m・K)であった。
【0468】<親水性皮膜形成法V>一般的に用いられ
ているマグネトロンスパッタリング法によりアルミニウ
ム皮膜をアルミニウム板上に蒸着した。通常の蒸着法に
て0.2μmのアルミニウム皮膜をアルミニウム基板上
に成膜した。陽極酸化皮膜の熱伝導率を求めたところ、
237(W/m・K)であった。 <親水性皮膜形成法VI>一般的に用いられている反応
性スパッタリング法によりAl2 3 皮膜をアルミニウ
ム板上に蒸着した。ターゲットにAl2 3 を使ったス
パッタリング法にてAl2 3 皮膜をアルミニウム基板
上に成膜した。500Wの高周波電源を用いて6.7×
10-1(Pa)の圧力下で44分45秒処理を行って
0.2μmのAl2 3 皮膜が得られた。陽極酸化皮膜
の熱伝導率を求めたところ、36(W/m・K)であっ
た。
【0469】上記で得られた各平版印刷版用支持体に、
サーマルポジタイプの画像記録層を設けて平版印刷版原
版を得た。各画像記録層を設ける前には、後述するよう
にアルカリ金属ケイ酸塩処理による親水化処理、下塗処
理等の界面処理を行った。
【0470】上記で得られた平版印刷版用支持体を、温
度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理槽
の中に10秒間浸せきさせることで、アルカリ金属ケイ
酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を
用いたスプレーによる水洗を行った。上記のようにして
得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後の平版印刷版用支
持体上に、下記組成の下塗液を塗布し、80℃で15秒
間乾燥し、塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は
10mg/m2 であった。
【0471】<下塗液組成> ・下記高分子化合物 0.2g ・メタノール 100g ・水 1g
【0472】
【化31】
【0473】更に、下記組成の感熱層塗布液を調製し、
下塗りした平版印刷版用支持体に、この感熱層塗布液を
乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)が1.7g/m2 にな
るよう塗布し、乾燥させて感熱層(サーマルポジタイプ
の画像記録層)を形成させ、平版印刷版原版を得た。
【0474】<感熱層塗布液組成> ・ノボラック樹脂(m−クレゾール/p−クレゾール=
60/40、重量平均分子量7,000、未反応クレゾ
ール0.5質量%含有) 1.0g ・下記構造式で表されるシアニン染料A 0.1g ・テトラヒドロ無水フタル酸 0.05g ・p−トルエンスルホン酸 0.002g ・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシ−β
−ナフタレンスルホン酸にしたもの 0.02g ・フッ素系界面活性剤(メガファックF−177、大日
本インキ化学工業社製) 0.05g ・メチルエチルケトン 12g
【0475】
【化32】
【0476】4.露光および現像処理 上記で得られた各平版印刷版原版には、下記の方法で画
像露光および現像処理を行い、平版印刷版を得た。
【0477】波長830nm、ビーム径8μm(1/e
2 )の半導体レーザを装備したCREO社製Trenn
dSetter3244を用いて主走査速度1m/秒に
固定して、版面エネルギー量が10、20、30、4
0、50、60、70、80、90、100、120、
150、170、200、400、800mJ/cm2
となるように変化させて露光した。その後、非還元糖と
塩基とを組み合わせたD−ソルビット/酸化カリウムK
2Oよりなるカリウム塩5.0質量%およびオルフィン
AK−02(日信化学社製)0.015質量%を含有す
る水溶液1Lに下記化合物aを添加したアルカリ現像液
を用いて現像処理を行った。現像処理は、上記アルカリ
現像液を満たした自動現像機PS900NP(富士写真
フイルム(株)製)を用いて、現像温度25℃、12秒
の条件で行った。現像処理が終了した後、水洗工程を経
て、ガム(GU−7(1:1))等で処理して、製版が
完了した平版印刷版を得た。なお、化合物aの代わり
に、下記化合物bまたはcを同じ添加量で添加したアル
カリ現像液を用いた場合であっても、同様に現像処理を
行うことができた。 <化合物a〜c> 化合物a:C1225N(CH2 CH2 COONa)2 化合物b:C1225O(CH2 CH2 O)7 H 化合物c:(C6 13)2 CHO(CH2 CH2 O)20
【0478】5.平版印刷版の評価 上記で得られた平版印刷版の耐汚れ性、耐刷性および小
点の付きを下記の方法で評価した。 (1)耐汚れ性 SiO2 皮膜を設けた支持体A〜Iについて、三菱ダイ
ヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEO
S(s)紅のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後
におけるブランケットの汚れを目視で評価した。結果を
第1表に示す。耐汚れ性をブランケットの汚れの程度に
より10段階評価した。数字が大きいほど耐汚れ性に優
れることを示す。
【0479】(2)耐刷性 SiO2 皮膜を設けた支持体A〜Iについて、小森コー
ポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化
学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用い
て印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認
められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。結
果を第1表に示す。なお、耐刷性は、実施例4の平版印
刷版用支持体に画像記録層を設けた平版印刷版の印刷枚
数を100とした相対値で表した。
【0480】(3)感度 上記方法で、露光、現像処理して得られた画像を観察
し、現像された非画像部における白色度が基板の色と同
じになった露光量を感度とみなした。結果を第2表に示
す。なお、露光量(版面エネルギー)の値が小さいほど
低露光量で現像でき感度が高く、露光量の値が大きいほ
ど高露光量でなければ現像できなく感度が低いことを表
す。
【0481】
【表3】
【0482】
【表4】
【0483】第1表および第2表から明らかなように、
原子間力顕微鏡を用いて、表面の50μm□を512×
512点測定して求められる3次元データから得られる
a、ΔS、a30およびa60がそれぞれ特定の条件
を満たし(実施例1〜4)、かつ、その表面に熱伝導率
が特定の条件を満たす親水性皮膜を形成した本発明の平
版印刷版用支持体を用いた本発明の平版印刷版原版は、
平版印刷版としたときの耐汚れ性および耐刷性のいずれ
にも優れ、また、露光感度が低くても充分な性能を有す
る。
【0484】
【発明の効果】以上に説明したように、表面形状に特徴
を有し、かつ、特定の伝導率を持つ親水性皮膜を有する
本発明の平版印刷版用支持体を用いれば、熱を効率よく
画像形成に利用することができ、感度が高く、高耐刷性
を示し、非画像部の汚れが生じにくい感熱性の平版印刷
版原版を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における
機械粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程
の概念を示す側面図である。
【図2】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における
電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図
の一例を示すグラフである。
【図3】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における
交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型
セルの一例を示す側面図である。
【図4】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における
陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図で
ある。
【図5】 本発明の平版印刷版原版の親水性皮膜の膜厚
方向の熱伝導率の測定に用いることができるサーモコン
パレータの概略図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム板 2、4 ローラ状ブラシ 3 研磨スラリー液 5、6、7、8 支持ローラ 11 アルミニウム板 12 ラジアルドラムローラ 13a、13b 主極 14 電解処理液 15 電解液供給口 16 スリット 17 電解液通路 18 補助陽極 19a、19b サイリスタ 20 交流電源 40 主電解槽 50 補助陽極槽 410 陽極酸化処理装置 412 給電槽 414 電解処理槽 416 アルミニウム板 418、426 電解液 420 給電電極 422、428 ローラ 424 ニップローラ 430 電解電極 432 槽壁 434 直流電源 530 サーモコンパレータ 531 チップ 532 リザーバ 533 電熱ヒーター 534 加熱用ジャケット 535 熱電対 536 ヒートシンク 537 皮膜 538 金属基体 539 接触式温度計 540 チップ先端温度記録計 541 ヒートシンク温度記録計 542 リザーバ温度記録計
フロントページの続き Fターム(参考) 2H025 AA01 AA12 AB03 AC08 AD01 AD03 DA18 DA20 DA36 2H096 AA06 CA03 2H114 AA04 AA10 AA11 AA14 AA22 AA23 BA02 BA10 DA04 EA01 EA03 EA05 EA08 FA01 FA07 GA02

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】原子間力顕微鏡を用いて、表面の50μm
    □を512×512点測定して求められる3次元データ
    から得られるRa 、ΔS、a30およびa60が、それ
    ぞれ下記条件(i)〜(iv)を満足するアルミニウム
    表面を有し;その表面上に設けた親水性皮膜の熱伝導率
    が、0.05〜0.5W/(m・K)である平版印刷版
    用支持体。 (i) Ra :0.45μm以上 (ii) ΔS:30%以上 (iii)a30:55%以上 (iv) a60:10%以下 ここで、Ra は、前記3次元データから波長2μm以上
    の成分を除去してから得られる表面粗さを表す。ΔS
    は、前記3次元データから近似三点法により求められる
    実面積Sx と、幾何学的測定面積S0 とから、下記式に
    より求められる。 ΔS=(Sx −S0 )/S0 ×100(%) a30およびa60は、それぞれ前記3次元データから
    波長2μm以上の成分を除去してから得られる傾斜度3
    0゜以上の部分および傾斜度60゜以上の部分の面積率
    を表す。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の平版印刷版用支持体に画
    像記録層を設けた平版印刷版原版。
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