JP2003164968A - 溶接方法 - Google Patents

溶接方法

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JP2003164968A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶融金属の垂れ流れによる溶接割れの発生を
防止することができる溶接方法を提供する。 【解決手段】 母材10上の継手部位19外のS点13
からアークの放出を開始し、継手部位19の始点である
P点14にアークを放出する位置まで溶接トーチ30を
移動し、当該位置で溶接トーチ30の移動を一時停止
し、その後、継手部位19に沿ってアークを放出するよ
うに溶接トーチ30を移動する溶接方法であって、溶接
の際に母材10、20が溶融してできた溶融金属が重力
に従って垂れ流れることを防止するために、予め、溶融
金属が生じるP点14の下部にダムビード18を形成し
ておく溶接方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶接トーチによる
溶接方法に関し、特にアルミニウムの溶接に適した溶接
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミニウムまたはアルミニウム合金
(以下、共に、アルミニウムという)を溶接する際に
は、これらの比熱および溶融潜熱が大きく、また、熱伝
導率が大きい性質から、多量の熱を急速に与える必要が
ある。このように溶接されてできたアルミニウムの溶接
構造物は、その材料の物性上、熱影響による膨張・収縮
が鉄と比較して約2倍もある。したがって、溶接後、冷
却速度の違いにより接合する母材間に温度差が生じるこ
とで、溶融金属が凝固する際の収縮量に差が発生し、溶
融部分および母材に割れが発生しやすい。
【0003】この割れは、溶接構造物の強度を著しく低
下させるので、溶接欠陥の中でも、非常に重大であり、
割れが発生しないような十分な配慮が必要である。
【0004】また、アルミニウムをミグ溶接するときの
特徴として、アルミニウムの熱伝導がよく、特に、アー
ク溶接の開始点において、アークが安定せず溶け込みが
得られがたいことがある。この溶け込みが得られないこ
とも、割れが発生する原因となる。
【0005】そこで、以上のような割れの発生による構
造物の強度低下を避けるために、実際に母材同士を接合
する継手部位(溶接部位)から10〜20mm外れた位
置(たとえば、図4に示すS点)よりアークの放出を開
始し、継手部位の始点(たとえば、図4に示すP点)ま
で溶接トーチを移動させることによって、アークが安定
して溶け込みが得られる状態になってから、継手部位の
溶接に移るといった方法が採用されている。
【0006】さらに、継手部位の始点において一定時間
溶接トーチを停止させ、継手部位外からすでにアークの
放出により入熱されている母材と、継手部位で始めてア
ークの放出により入熱される母材との間の温度差を均一
化して、割れの発生を防止している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記のような方法で、
たとえば、図4に示すように、母材80の垂直な壁部8
1に母材90を取り付けてT字継手を形成するために母
材80と母材90を隅肉溶接する場合、S点82からア
ークの放出を開始し、P点83まで移動した後、P点8
3で一定時間停止してP点83に連続的にアークを放出
し、さらに、E点84まで移動して溶接を行うことにな
る。
【0008】ここで、母材80および90間の温度の均
一化のためにP点83においてアークを連続的に放出す
るが、この結果、他の部位に比べ多くの溶融金属が発生
し、また、これらは垂直な壁部81に発生するため、点
線85に示すように重力に従って垂れ流れてしまう。
【0009】これでは、溶融金属の垂れ流れにより、結
局母材80および90間の温度が十分に均一化されず、
結果として溶接割れが生じてしまう。
【0010】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもの
であり、溶融金属の垂れ流れによる溶接割れの発生を防
止することができる溶接方法の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、下
記の手段によって達成される。
【0012】(1)本発明の溶接方法は、被溶接材上の
溶接部位外からアークの放出を開始し、当該溶接部位の
始点にアークを放出する位置まで溶接トーチを移動し、
当該位置で前記溶接トーチの移動を一時停止し、その
後、前記溶接部位に沿ってアークを放出するように溶接
トーチを移動する溶接方法であって、前記溶接の際に被
溶接材が溶融してできた溶融金属が重力に従って垂れ流
れることを防止するために、予め、溶融金属が生じる部
位の下部に隆起部を形成しておく。
【0013】(2)前記隆起部を、前記被溶接材へのア
ークの放出により形成しておく。
【0014】(3)前記隆起部を、前記溶接トーチの移
動を一時停止する位置の下部に形成しておく。
【0015】
【発明の効果】請求項1に記載の発明は、予め、溶融金
属が生じる部位の下部に隆起部を形成しておくので、溶
融金属が重力に従って垂れ流れることを防止し、溶融金
属の垂れ流れによる被溶接材間の温度の不均一から生じ
る溶接割れを防止することができる。
【0016】請求項2に記載の発明は、隆起部をアーク
の放出により形成し、続いて、同様にアークの放出によ
り被溶接材同士を溶接するので、隆起部の形成と被溶接
材同士の溶接とを同一の設備により一連の流れとするこ
とができ、隆起部の形成に別個の設備や装置が必要な
く、設備コストを削減でき、さらに、作業の迅速化を図
ることができる。
【0017】請求項3に記載の発明は、溶接トーチの移
動を一時停止する位置の下部に前記隆起部を形成してお
くので、該一時停止中の同一部位へのアークの連続放出
により特に溶融金属の垂れ流れが起こりやすい位置につ
いて、その垂れ流れを防止することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の
実施の形態を説明する。
【0019】図1は本発明の溶接方法におけるアークの
放出経路を示す概略図、図2は本発明の溶接の様子を示
す概略図である。
【0020】本実施の形態では、アルミニウムの母材
(被溶接材)10および母材(被溶接材)20につい
て、ミグ溶接により母材10の垂直な側壁に母材20を
隅肉溶接し、いわゆるT継手を形成する場合について説
明する。
【0021】なお、ミグ溶接は、母材10、20を溶融
するためにアークを放出しながら移動する溶接トーチ3
0によって実行される。この溶接トーチ30は、図示し
ない溶接装置によって保持されており、該溶接装置によ
る制御に基づいて自由に移動およびアークの放出を行う
ことができる。また、母材10および20は、図示しな
い保持具により、所望のT継手を形成するように突き合
せて、固定されている。
【0022】溶接トーチ30は、図1に示す矢印に従っ
て移動し、母材10、20にアークを放出する。まず、
溶接トーチ30は、母材10の側壁上において、ダムビ
ード形成開始点11(以下の本文中および図面中におい
てA点11という)上から、ダムビード形成終了点12
(以下の本文中および図面中においてB点12という)
上までアークを放出しながら移動する。そして、一度、
アークの放出を止め、後の工程で母材10および20を
T継手に接合する際に該母材10、20が溶融してでき
る溶融金属の垂れ流れを止めるためのダムビード18
(隆起部)が図2に示すように形成される。
【0023】次に、溶接トーチ30は、母材10上のア
ーク放出開始点13(以下の本文中および図面中におい
てS点13という)上でアーク放出開始点13に向かっ
てアークの放出を開始し、母材10および母材20が溶
接される継手部位(溶接部位)19の始点となる溶接始
点14(以下の本文中および図面中においてP点14と
いう)上に移動し、さらに、母材10および母材20の
境界線に沿って継手部位19の終点となる溶接終点15
(以下の本文中および図面中においてE点15という)
上まで移動して、連続溶接を行う。
【0024】なお、上記説明で、溶接トーチ30が、ダ
ムビード形成開始点11上、ダムビード形成終了点12
上、アーク放出開始点13上、溶接始点14上、および
溶接終点15上に移動するとは、それぞれダムビード形
成開始点11、ダムビード形成終了点12、アーク放出
開始点13、溶接始点14、および溶接終点15にアー
クを放出できる位置に溶接トーチ30が移動することを
意味する。
【0025】次に、溶接トーチ30の移動を図3に示す
フローチャートを参照して具体的に図3は本発明の溶接
方法の手順を示すフローチャートである。
【0026】まず、溶接トーチ30は、母材10上のA
点11に対してアークの放出を開始し(ステップS
1)、B点12上まで母材10を溶融しながら進み、溶
融してできた隆起部をダムビートとする(ステップS
2)。
【0027】そして、一度、アークの放出を止め、溶接
トーチ30は、母材10上のS点13上まで移動し、ア
ークの放出を再開する(ステップS3)。溶接トーチ3
0は、S点13からP点14まで母材10を溶融しなが
ら移動する(ステップS4)。
【0028】P点14上に到達すると、溶接トーチ30
は、たとえば、0.4秒〜0.6秒間P点上に一定時間
停止し、その間アークの放出を続ける(ステップS
5)。その後、P点14からE点15まで移動して、継
手部位19を溶接していき(ステップS6)、溶接の最
後にできるクレータを平坦にするクレータ処理を実行し
て(ステップS7)、溶接を終了する。
【0029】なお、母材10上のA点11からB点12
までのダムビード18部分は溶融金属の垂れ流れ防止の
ために設けられ、S点13からP点14までの部分は安
定した溶け込みを得るために設けられたものであるの
で、母材10および母材20の溶接の強度には関係せ
ず、後の工程において、除去等の適切な処置が施され
る。
【0030】なお、上記の実施の形態では、母材10の
垂直な側面に母材20を溶接してT継手を形成する場合
について説明したが、これに限られない。溶融金属が垂
れ流れる虞のある母材の面に他の母材を溶接する場合に
は、その母材の面がいかなる角度で水平面に対し傾いて
いたとしても本発明を適用することができる。
【0031】以上のように、本発明の溶接方法では、予
めS1、S2の工程を実施してダムビード18を形成し
ておくので、該ダムビード18の隆起により後の工程S
3〜S7において溶接中に重力に従って垂れ流れる溶融
金属をせき止め、結果として、溶融溶融金属の垂れ流れ
による母材10および20間の温度の不均一を防止し、
溶接割れの発生を防止することができる。
【0032】また、S1、S2の工程で、ダムビード1
8を溶接トーチ30からのアークの放出により形成し、
続いて、S3〜S7の工程で同様の溶接トーチ30を用
いて母材10および20の溶接を溶接するので、ダムビ
ード18の形成と母材10および20の溶接とを同一の
設備により一連の流れとすることができ、ダムビード1
8の形成に別個の設備や装置が必要なく、設備コストを
削減でき、さらに、作業の迅速化を図ることができる。
【0033】さらに、P点14の下部に沿って、すなわ
ち、母材10および母材20の溶接の際に継手部位とそ
の外の部位との温度を均一にするために溶接トーチ30
の移動が一時停止する位置の下部に沿って、ダムビード
18を形成しておくので、同一部位への数秒間のアーク
の連続放出により特に溶融金属の垂れ流れが起こりやす
い位置について、その垂れ流れを防止することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の溶接方法におけるアークの放出経路
を示す概略図である。
【図2】 本発明の溶接の様子を示す概略図である。
【図3】 本発明の溶接方法の手順を示すフローチャー
トである。
【図4】 従来の溶接方法を示す図である。
【符号の説明】
10…母材、 11…ダムビード形成開始点、A点、 12…ダムビード形成終了点、B点、 13…アーク放出開始点、S点、 14…溶接始点、P点、 15…溶接終点、E点、 18…該ダムビード、 19…継手部位、 20…母材、 30…溶接トーチ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 青木 孝 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産 自動車株式会社内 (72)発明者 高野 久義 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産 自動車株式会社内 Fターム(参考) 4E001 AA03 CB01

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被溶接材上の溶接部位外からアークの放
    出を開始し、当該溶接部位の始点にアークを放出する位
    置まで溶接トーチを移動し、当該位置で前記溶接トーチ
    の移動を一時停止し、その後、前記溶接部位に沿ってア
    ークを放出するように溶接トーチを移動する溶接方法で
    あって、 前記溶接の際に被溶接材が溶融してできた溶融金属が重
    力に従って垂れ流れることを防止するために、予め、溶
    融金属が生じる部位の下部に隆起部を形成しておく溶接
    方法。
  2. 【請求項2】 前記隆起部を、前記被溶接材へのアーク
    の放出により形成しておく請求項1に記載の溶接方法。
  3. 【請求項3】 前記隆起部を、前記溶接トーチの移動を
    一時停止する位置の下部に形成しておく請求項1または
    請求項2に記載の溶接方法。
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