JP2003160324A - 四フッ化珪素の製造法 - Google Patents

四フッ化珪素の製造法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エレクトロニクス分野、光学分野等で使用さ
れる高純度四フッ化珪素の製造法を提供する。 【解決手段】 珪素とフッ化水素をで反応させて四フッ
化珪素を製造する方法において、生成ガス中のSiHF
3、SiF3CH3、C26、C24、(SiF32O濃度
を低減させるために、生成ガスに未反応のフッ化水素を
0.02vol%以上存在させ、または600℃以上の
温度でNiと接触させる。さらには、フッ化水素を0.
1vol%以上添加して400℃以上の温度でNiと接
触させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エレクトロニクス
分野、光学分野等で使用される高純度四フッ化珪素の製
造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】四フ
ッ化珪素(SiF4)は、石英系ファイバーのフッ素ド
ープ剤、半導体リソグラフィー用フォトマスク材料の原
料、半導体製造用CVD原料ガスなどに利用されその使
用量は年々増加している。そのため高純度の四フッ化珪
素を効率よく製造するための技術が求められている。
【0003】四フッ化珪素を製造するには、珪フッ化
ナトリウムなどの珪フッ化物を熱分解する方法(特開昭
63−74910号公報)、二酸化珪素とフッ化水素
を濃硫酸中で反応脱水する方法(特開昭57−1741
4号公報)、珪素とフッ素を反応する方法(特開平7
−81903号公報)などが知られている。このうち珪
素を原料とする製造法は、およびの方法(は、
フッ化ナトリウムを、は、硫酸を産業廃棄物として大
量に排出する。)に較べて、ほとんど廃棄物を排出しな
いので産業廃棄物の減量が大きな課題である昨今の事情
からすれば優れた製造方法であるということができる。
しかしながら、このの製造法では、四フッ化珪素を製
造するのに先立って、まずフッ素(F2)を製造しなけ
ればならず、フッ化水素(HF)を電気分解してフッ素
を得るというコストとエネルギーを要する工程が必要で
あり不利である。
【0004】本発明者らは、珪素を一方の原料とし、フ
ッ素源としてフッ素に替えてフッ化水素による四フッ化
珪素の製造について調査したが、これまで珪素とフッ化
水素との反応を工業的な四フッ化珪素の製造法として提
案した例はなかった。
【0005】本発明の目的は、珪素とフッ化水素を出発
原料として高純度の四フッ化珪素を製造する方法を提供
することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、珪素から
四フッ化珪素を製造するときのフッ素源原料として、フ
ッ素よりも有利なフッ化水素を用いる方法について検討
した。フッ化水素とフッ素を比べると、(a)フッ化水素
はそもそも電気分解反応によってフッ素を製造するため
の原料のひとつであり当然コスト的に安価である、(b)
フッ化水素は化学ポテンシャルがフッ素よりも低く珪素
との反応においてもフッ素の場合より発生熱量が小さい
ので熱的制御が容易である、(c)フッ化水素は沸点が2
0℃であり常温で液化貯蔵でき、常温ではガスとして取
り扱われるフッ素よりも取扱いが便利である、等の点で
フッ化水素の有利性が挙げられるが、反応によっていか
なる組成の生成物が得られるかについてのデータはなか
った。そのため本発明者らは珪素とフッ化水素の反応生
成物の挙動を実験によって確認した。 Si(c) +4HF(g)→SiF4(g)+2H2(g) (1) Si(c)+3HF(g)→SiHF3(g)+H2(g) (2) Si(c)+2HF(g)→SiH22(g) (3)
【0007】珪素とフッ化水素を反応させると、熱力学
的には、式(1)、式(2)、式(3)に示す反応は、
すべてΔGが負であり、いずれの反応も起こり得ること
を示しているが、本発明者らは固体の珪素にガス状のフ
ッ化水素を反応させると実際には、式(1)の反応が優
先的に起こり効率よく四フッ化珪素(とH2の混合物
(以下H2は省略する))が生成することを見い出し
た。
【0008】四フッ化珪素を生成する式(1)の反応
は、室温付近の温度ではほとんど進行しないが、温度を
上げてゆくと250℃あたりから反応速度が急激に大き
くなり温度と共に反応速度が増す。また、珪素とフッ化
水素ガスの直接反応は300℃から1000℃を超える
広い温度範囲において、式(1)の反応が主反応として
起きていることが分かった。
【0009】珪素とフッ化水素の反応について、さらに
詳細に検討してみると、主反応は、式(1)に示す反応
であるが、そのほかに式(2)で示す反応も起きてお
り、反応生成ガス中にSiHF3が含まれていることも
分かった。SiとHFからSiF4を生成する反応は、
SiF4の2倍のモル数のH2が副生し、強い還元雰囲気
の状態にある。発明者らは、H2雰囲気においてHFが
不足する時にSiHF3が生成するものと考え、原料で
あるHFを一部生成系に残すことによってSiHF 3
生成を抑制することを試みた。その結果、反応生成ガス
中にHFが0.02vol%以上、望ましくは0.05
vol%以上存在すればSiHF3が生じないことを確
認し、HF濃度の制御によって期待された効果が得られ
ることが分かった。HFの存在量の上限は、特に限定さ
れないが、経済的な後処理を考慮すれば1vol%以下
にするのが好ましい。
【0010】ここで、HFは反応に用いる一方の原料で
あるので、生成ガス中にHFを存在させるということ
は、HF基準でいえば反応を完結させずに未反応のもの
を少量残すということになる。生成ガス中のHF濃度を
制御するには、内部を強制撹拌することによって気相部
の組成が均一になるいわゆる完全混合型の反応器を使用
する方法が推奨される。その理由は、気相が完全混合状
態にある反応器においては固体原料であるSiの周辺
に、Siの量に対して大量のガスが存在しているので、
供給HF流量や反応温度が多少変動しても気相HF濃度
に影響を与えることが少ないためである。
【0011】次に、生成ガス中に残存するHFは、四フ
ッ化珪素にとっては不純物であるので、上記の方法によ
って生成したSiF4ガスは、後の工程でHFを除去す
る必要がある。HFを精製により除去するには、HFを
含有する気体をペレット状NaFと接触させてNaF・
HFとして固定することにより気相側から取り除くとい
う一般に知られた方法を例として挙げることができる。
精製により除去すべきHF量は、上述したように少ない
方が望ましいのは言うまでもないので、生成ガス中のH
F濃度は必要な範囲でなるべく低くすべきである。
【0012】本発明で提案するSiHF3を含有しない
四フッ化珪素の第二の製造法は、反応器出口ガス中に含
まれるSiHF3を後工程で転化除去することである。
前述のように生成ガス中のHF濃度がゼロまたはきわめ
て低い場合には、SiHF3が副生し、その濃度は生成
ガス中のHFが少ないほど高くなり、HFがゼロの場合
約1vol%に達する。かかる状況は、例えば珪素を充
填した筒状の反応器の一方の端からHFガスをいわゆる
ピストン流れで供給するといった方式の反応によって達
成される。つまり反応器に入ったHFはSiの固定層の
中を通過しながら反応し消費されてゆき、Siが十分存
在すれば出口に達するまでにHF濃度がゼロとなる。
【0013】SiHF3は、四フッ化珪素に比較して熱
的に不安定であることから反応器出口ガスを加熱してS
iHF3を選択的にSiとSiF4とに不均化することが
考えられるが、式(4)に示す反応は、単にガスを加熱
しただけでは進みにくいことが分かった。 4SiHF3 → Si+3SiF4+2H2 (4)
【0014】本発明者らは、式(4)の反応を右に進め
るための条件を種々検討した結果、SiHF3を含む反
応生成ガスを、加熱した金属Niで処理することが有効
であることを見い出した。SiHF3は、600℃以上
の温度でNiと接触することでに容易にしかも選択的に
転化されることが分かった。使用後のNiの表面には、
Ni31Si12で表わされるNi珪化物が形成されてい
た。このことからNiが存在する場合には式(4)の右
辺のSiは、Niと反応してNi31Si12を形成し系か
ら除かれるため平衡が右辺に寄り反応が進むものと考え
られる。かかるSiHF3の転化反応に使用するNi充
填材は、任意の形状のものでよいがガスとの接触面積を
広くとれるような工夫を施すことが望ましい。
【0015】この第二の方法の利点は、Ni充填物によ
る転化が終了した時点でSiF4中に不純物が実質的に
存在しないことである。すなわちSiHF3を転化した
工程の出口ガスにはHFが含まれないのでNaF等によ
る精製を必要としない。
【0016】SiHF3を含有しない四フッ化珪素の第
三の製造法は、これまでに提案した2つの方法を組み合
わせたものである。本発明者らは、Siを充填した筒状
の反応器にHFをピストン流れ方式で反応させることに
よって、HFはほとんど存在しないが、SiHF3が含
まれる四フッ化珪素ガスを得た後、当該生成ガス中にH
Fが最終的に0.1vol%以上になるようにHFを添
加してNiを充填した管の中で400℃以上に加熱する
ことにより式(5)で示す反応に従ってSiHF3を除
去することができることを見出し本発明に至った。HF
の添加量の上限は、第一の方法で示したように1vol
%以下にするのが好ましい。
【0017】SiHF3を完全に転化するには、HF濃
度を適正に保つことが必須であり、特に最小限必要な濃
度はこれを維持しなければならず、HF濃度管理は重要
である。この第三の方法が有する利点としては、SiH
3の転化剤であるHF濃度の調整が容易であることを
挙げることができる。第一の方法が未反応HFの残留に
よってHF濃度を調整するのに対して、本方法はHFを
含まないSiF4ガスに、HFを流量一定で添加するの
で主反応に影響されず容易にHF濃度を一定に保つこと
ができる。また第二の方法に比べるとNi充填材は、珪
化物となることはなく金属の状態に保たれるので充填材
を交換する必要がなく転化温度も低くてすむ点が挙げら
れる。ただし、SiHF3を完全に転化するには、当量
よりも多くのHFを添加する必要があり、過剰のHFは
後で除去する必要があることは第一の方法と同様であ
る。
【0018】さらに第三の方法の効果を詳しく検討した
ところ、SiHF3以外にも、SiF 3CH3、C26、C
24、(SiF32Oの4成分が当該方法によって除去
されることが分かった。このうちSiF3CH3、C
26、C24の含炭素3成分は原料の珪素に含まれてい
る炭素に由来している。沸点は順に−30.2℃、−8
8.63℃、−103.71℃であり沸点−95.7℃
のSiF4との蒸気圧差を利用して分離するには沸点が
高すぎる。また、ゼオライトや活性炭といった吸着剤で
ほとんど除去されない。コスト的な理由から廉価な珪素
を原料にしようとすれば含炭素不純物の発生は避けるこ
とができず、その効果的な除去方法が求められていた。
不純物はNiの存在下で(6)、(7)、(8)の各式
に従って反応し最終的にSiF4とCH4に集約されるも
のと考えられる。 SiF3CH3 + HF → SiF4 + CH4 (6) C26 + H2 → 2CH4 (7) C24 + 2H2 → 2CH4 (8)
【0019】C26、C24についてはHFは不必要で
あるが、HFが存在していてもC26、C24が水素化
されてCH4になる反応が阻害されることはない。ここ
でCH4は沸点が−191.5℃という化合物であり、
SiF4が液化あるいは固化する温度においても気相側
に分配されるのに十分な蒸気圧を有しているので減圧排
気することでH2、O2、N2などの他の低沸点成分と共
に容易にSiF4から分離される。
【0020】一方、(SiF32Oは原料や反応容器に
吸着している微量の水分あるいは酸化物が原因となって
生成し、除去することが困難な不純物成分である。これ
もやはり第三の方法において(9)式に従って転化さ
れ、発生したH2Oは濃硫酸やゼオライトなどの脱水剤
を使って除くことができる。 (SiF32O + 2HF → 2SiF4 + H2O (9)
【0021】かくして珪素とフッ化水素の反応ガス中に
含まれるSiHF3、SiF3CH3、C26、C24
(SiF32OはHFおよびH2とNiの存在下400
℃以上に加熱することでSiF4、CH4、H2Oに転化
され、次いでCH4、H2O、H2を分離することで高純
度のSiF4を得ることができる。
【0022】
【実施例】以下、本発明を実施例をもって詳細に説明す
る。
【0023】実施例1〜9、比較例1 半導体用高純度Si等の原料である純度98%のSiを
粒子径5mmから15mmの大きさに砕いたものを1k
gほど横型の反応器の棚に仕込んだ。反応器は、内径2
00mmφ、長さ500mmのNi製の水平円筒の内部
中央に反応物を載置する棚を有し、円筒の両端には蓋を
備えた構造になっている。一方の蓋にはガス供給配管と
ガス排出配管および反応器内部空間のガスを強制撹拌す
るための羽根を備えた構造となっている。撹拌羽根は蓋
のガスシール機構を介して外部のモーターに連結されて
おり回転駆動される。さらに反応器胴部の外周には電気
ヒーターを配し反応器が所定の温度に保たれる。
【0024】当該反応器にHFガスを0.18〜4Nl
/minの流量で供給し、内部ガスを撹拌羽根で均一に
混合しながら完全混合方式にて内部温度は比較例におい
ては200℃、実施例においては300℃、400℃、
500℃、600℃で連続的に反応させた。反応生成ガ
スは、内部圧力が大気圧に保たれるようにガス排出配管
から排出しガスクロマトグラフィーとFT−IRによっ
てその成分を分析した。それぞれの条件における生成ガ
スの組成及び結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】比較例2〜9 円筒縦型の反応器に、実施例1で用いたのと同じ粒状の
Siを1.5kg仕込んだ。反応器は内径80mmφ、
高さ500mmのNi製で天板にHFを供給するノズル
を、底板に反応ガスを排出するノズルを備えている。反
応器外周には、電気ヒーターを配し反応器が所定の温度
に保たれる。反応器にHFガスを0.2〜4Nl/mi
nの流量で供給し、HFは、Siの固定床部をピストン
フロー方式で上から下方に通過しながら温度200℃〜
700℃で反応させた。反応ガスは、内部圧力が大気圧
に保たれるように下部のガス排出ノズルから反応器外に
抜き出しガスクロマトグラフィーとFT−IRによって
その成分を分析した。それぞれの条件における生成ガス
の組成及び結果を表2に示す。比較例3〜比較例9で
は、不純物SiHF3を含むSiF4が得られた。またS
iF3CH3、C26、C24、(SiF32Oの各不純
物についても分析しその結果を表3に示した。
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】実施例10〜15、比較例10〜15 比較例2〜9で用いた反応器のガス排出ラインに、円筒
横型の転化器を追加連結した。転化器は、内径80mm
φ、長さ800mmのNi製の水平の円筒で外周には電
気ヒーターを配し転化器は所定の温度に保たれる。転化
器入口には反応器の生成ガスを受け入れるラインとHF
ガスを供給するラインが配管してある。転化器の内部
は、比較例10〜12においては空であり、比較例13
〜15および実施例10〜15においては、Ni金属製
の充填材が充填してある。SiとHFとの反応は、HF
=1.6Nl/min、500℃という条件で行い、反
応器で生成したSiHF3=9700ppmを含むSi
4ガスを転化器に導き転化器を出たガスをガスクロマ
トグラフィーとFT−IRによって分析した。それぞれ
の条件における生成ガスの組成及び結果を表4、表5に
示す。Ni充填物のない比較例11,12において、S
iHF3が低減しているのは転化器壁のNiが高温状態
でSiHF4の転化に寄与したものと考えられる。
【0030】
【表4】
【0031】
【表5】
【0032】実施例16 実施例15の方法で生成したSiF4=33vol%、
HF=1000volppm(H2 balance)
の組成の反応ガスを、ペレット状NaFを充填した室温
のカラムに導き滞在時間=120sで処理し、さらに加
圧下ドライアイス−エタノール冷媒で液化捕集した。該
捕集液の気相部をパージすることでHF、SiHF3
SiF3CH3、C26、C24、(SiF32O、H2
どを含まないSiF4を得た。
【0033】
【発明の効果】本発明により、低純度SiとHFとの反
応で、エレクトロニクス分野用途グレードの高純度Si
4を安価に製造することが可能となった。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成14年9月2日(2002.9.2)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正内容】
【0031】
【表5】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 両川 敦 山口県宇部市大字沖宇部5253番地 セント ラル硝子株式会社化学研究所内 (72)発明者 伊東 久和 山口県宇部市大字沖宇部5253番地 セント ラル硝子株式会社宇部工場内 Fターム(参考) 4G072 AA09 GG01 GG03 HH01 JJ18 KK11 MM01 RR07 UU30

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 珪素とフッ化水素を250℃以上の温度
    で反応させて四フッ化珪素を製造する方法において、生
    成ガスに未反応のフッ化水素を0.02vol%以上存
    在させることを特徴とする四フッ化珪素の製造法。
  2. 【請求項2】 珪素とフッ化水素を250℃以上の温度
    で反応させて四フッ化珪素を製造する方法において、生
    成したガスを600℃以上の温度でNiと接触させるこ
    とを特徴とする四フッ化珪素の製造法。
  3. 【請求項3】 珪素とフッ化水素を250℃以上の温度
    で反応させて四フッ化珪素を製造する方法において、生
    成したガスにフッ化水素を0.1vol%以上添加して
    400℃以上の温度でNiと接触させることを特徴とす
    る四フッ化珪素の製造法。
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