JP2003155480A - 酸化物蛍光体及びエレクトロルミネッセンス素子並びにその製造方法 - Google Patents

酸化物蛍光体及びエレクトロルミネッセンス素子並びにその製造方法

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JP2003155480A
JP2003155480A JP2002054780A JP2002054780A JP2003155480A JP 2003155480 A JP2003155480 A JP 2003155480A JP 2002054780 A JP2002054780 A JP 2002054780A JP 2002054780 A JP2002054780 A JP 2002054780A JP 2003155480 A JP2003155480 A JP 2003155480A
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俊弘 宮田
Toshiteru Ueno
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 過度の酸化を抑えた雰囲気及び硫黄を含む過
度の酸化を抑えた雰囲気中で作製した立方晶系と比較し
て単斜晶系結晶斜晶系を主とする結晶構造を有するイッ
トリウム(Y)を主成分とする酸化物を母体材料した新
しい酸化イットリウム系蛍光体およびEL素子用酸化イ
ットリウム系蛍光体並びにその製造技術の提供。 【解決手段】 酸化イットリウム(Y)に発光中
心材料としてマンガン(Mn)を単独あるいは少なくと
も1種類以上の任意の元素、例えばLi等と共添加して
なる酸化イットリウム系蛍光体薄膜を基体上、例えば比
誘電率5000程度の焼結チタン酸バリウムセラミック
スシート上に過度の酸化を抑えた雰囲気及び硫黄を含む
過度の酸化を抑えた雰囲気中でマグネトロンスパッタ法
やゾル・ゲル法等の公知方法で形成及び熱処理を施すこ
とによって母体材料の結晶構造を立方晶系と比較して単
斜晶系を主とすることにより高輝度EL発光を達成でき
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、発光形ディスプレイ及
びエレクトロルミネッセンス素子並びに薄膜蛍光体など
に用いられる酸化物蛍光体及びエレクトロルミネッセン
ス素子並びにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、イットリウムを主成分とする
立方晶系の結晶構造を持つ酸化物を母体材料に用い、発
光中心材料として希土類元素を添加した酸化イットリウ
ム系蛍光体、例えば ユーロピウム添加酸化イットリウ
ム(Y:Eu)はブラウン管(CRT)やプラズ
マディスプレイパネル(PDP)及び電界放射形ディス
プレイ(FED)用の蛍光体として使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、立方
晶系のみの結晶構造を有するMn添加酸化イットリウム
(Y:Mn)を母体材料とし、ユーロピウム(E
u)等の希土類金属を発光中心材料として添加したEu
添加Y蛍光体(Y:Eu)は、古くから電
子線励起用蛍光体として利用されている。しかしなが
ら、空気中でYを焼成することにより得られる立方晶系
のみの結晶構造を有するYに発光中心材料として
マンガン(Mn)を添加した場合は、カソードルミネッ
センス(CL)、フォトルミネッセンス(PL)、エレ
クトロルミネッセンス(EL)共得られず、立方晶系の
みの結晶構造のYを母体材料とする蛍光体におい
ては、発光中心材料としてMnは不適当であると考えら
れていた。
【0004】このように上述した立方晶系の結晶構造を
持つ酸化イットリウム蛍光体を用いるエレクトロルミネ
ッセンス素子は実現されていない。また、立方晶系の結
晶構造を持つ酸化イットリウム蛍光体を公知の薄膜堆積
技術を用いて薄膜化し、それを発光層に用いる薄膜エレ
クトロルミネッセンス素子(以下、EL素子という)か
らの発光は弱く、薄膜ELランプや薄膜ELディスプレ
イ用の発光層材料として実用に耐える輝度を実現できな
い。
【0005】本発明はこのような事情に鑑み、酸化イッ
トリウム蛍光体を用い、実用に耐える輝度を実現する酸
化物蛍光体及びエレクトロルミネッセンス素子並びにそ
の製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するため、結晶構造を立方晶系と比較して単斜晶系を
主とするイットリウム(Y)を主成分とする酸化物を母
体材料とした場合には、発光中心材料としてマンガン
(Mn)を単独もしくはそれに加えて少なくとも1種類
以上の任意の元素を共添加する新しい酸化イットリウム
系蛍光体が実現できることを知見し、本発明を完成させ
た。
【0007】かかる本発明の第1の態様は、イットリウ
ム(Y)を主成分とする酸化物を母体材料とし、発光中
心として少なくとも1種以上の遷移金属元素を含有する
酸化物蛍光体であって、前記酸化物が立方晶系と比較し
て単斜晶系結晶が主であることを特徴とする酸化物蛍光
体にある。
【0008】本発明の第2の態様は、第1の態様におい
て、前記遷移金属元素として、マンガン(Mn)を含有
することを特徴とする酸化物蛍光体にある。
【0009】本発明の第3の態様は、第1又は2の態様
において、前記発光中心としての遷移金属元素に加えて
少なくとも1種類以上の任意の元素が共添加されている
ことを特徴とする酸化物蛍光体にある。
【0010】本発明の第4の態様は、第3の態様におい
て、前記任意の元素が少なくとも1種以上の希土類金属
元素であることを特徴とする酸化物蛍光体にある。
【0011】本発明の第5の態様は、第1〜4の何れか
の態様において、前記酸化物が、酸化イットリウム(Y
)であることを特徴とする酸化物蛍光体にある。
【0012】本発明の第6の態様は、第1〜5の何れか
の態様において、前記遷移金属元素をイットリウム
(Y)に対して0.1〜10原子%含有することを特徴
とする酸化物蛍光体にある。
【0013】本発明の第7の態様は、第1〜6の何れか
の態様に記載の酸化物蛍光体を発光層として使用するこ
とを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子にある。
【0014】本発明の第8の態様は、第7の態様におい
て、前記発光層が薄膜状であることを特徴とするエレク
トロルミネッセンス素子にある。
【0015】本発明の第9の態様は、イットリウム
(Y)を主成分とする酸化物を母体材料とし、発光中心
として少なくとも1種以上の遷移金属元素を含有する酸
化物蛍光体の製造方法であって、過度の酸化を抑えた雰
囲気中で熱処理することにより前記酸化物が立方晶系と
比較して単斜晶系結晶が主なものとすることを特徴とす
る酸化物蛍光体の製造方法にある。
【0016】本発明の第10の態様は、第9の態様にお
いて、前記熱処理を硫黄を含む過度の酸化を抑えた雰囲
気中で行うことを特徴とする酸化物蛍光体の製造方法に
ある。
【0017】かかる本発明は、母体材料としては、酸化
イットリウム(Y)などのイットリウムの酸化物
であり、立方晶系と比較して単斜晶系結晶が主であるも
のである。すなわち、本発明は、酸化イットリウム(Y
)などのイットリウムの酸化物を、過度の酸化を
抑えた雰囲気又は硫黄を含む過度の酸化を抑えた雰囲気
中で、例えば、焼成条件等の蛍光体作製条件を制御する
ことにより、結晶構造を立方晶系と比較して単斜晶系を
主とする酸化イットリウム系母体材料を作製することが
できるという新たな知見により、完成されたものであ
る。
【0018】本発明は、このような立方晶系と比較して
単斜晶系結晶が主であるイットリウムの酸化物を母体材
料とし、これに従来から公知の発光中心、例えば、従来
イットリウム酸化物と使用してもエレクトロルミネッセ
ンスとして不適当と考えられていたマンガン(Mn)を
添加すると、立方晶系の酸化物を母体材料としたときと
比較して、エレクトロルミネッセンス素子用蛍光体とし
ての十分な機能を発現するという効果を奏する。
【0019】また、本発明の酸化物蛍光体は、上記雰囲
気、すなわち過度の酸化を抑えた雰囲気又は硫黄を含む
過度の酸化を抑えた雰囲気中で熱処理することにより、
エレクトロルミネッセンス素子用発光層としての機能を
向上させることができる。
【0020】本発明の酸化物蛍光体は、薄膜エレクトロ
ルミネッセンス素子用発光層として機能する。
【0021】ここで、本発明で用いることができる発光
中心材料は、本発明者が先に出願したMn添加ケイ酸亜
鉛(ZnSiO:Mn)(特開平4−209693
号公報及び特開平5−82258号公報)、及びMn添
加亜鉛ガレート(ZnGaO:Mn)(特開平7−
35869号公報)等の酸化物蛍光体において優れた特
性を実現しているマンガン(Mn)を、好適に用いるこ
とができる。
【0022】また、発光中心であるマンガン(Mn)に
加えて少なくとも1種類以上の任意の元素、例えば、I
族元素(例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(N
a)、カリウム(K)等)、IV族元素(例えば、炭素
(C)、珪素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、錫(S
n)等)、VII族元素(例えば、フッ素(F)、塩素
(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等)、希土類金
属元素(例えば、ユーロピウム(Eu)、テルビウム
(Tb)、セリウム(Ce)、ツリウム(Tm)等)及
び遷移金属元素(例えば、クロム(Cr)、コバルト
(Co)、バナジウム(V)、銅(Cu)、チタン(T
i)等)を共添加してもよい。
【0023】また、発光中心としてマンガン(Mn)の
他に用いられる遷移金属元素としては、例えば、クロム
(Cr)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、銅
(Cu)、銀(Ag)、錫(Sn)、チタン(Ti)等
を挙げることができ、これらを1種以上用いることがで
きる。
【0024】遷移金属元素と共に希土類金属元素を共存
させてもよく、希土類金属元素としては、例えば、ユー
ロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、セリウム(C
e)、ツリウム(Tm)、ネオジウム(Nd)、エルビ
ウム(Er)、ホルミウム(Ho)、イッテルビウム
(Yb)、サマリウム(Sm)、ジスプロシウム(D
y)、プラセオジム(Pr)等を挙げることができる。
【0025】発光中心となる元素は、イットリウム
(Y)に対して0.1〜10原子%、より好適には0.
5〜4.0原子%の範囲で添加すればよい。
【0026】なお、このような発光中心となる元素は、
これらの元素を含む化合物、例えば、塩化ユーロピウム
(EuCl)、塩化クロム(CrCl)などの塩化
物、酸化クロム(CrO)、酸化コバルト(CoO)
などの酸化物を原料として母材に添加することができ
る。
【0027】本発明の酸化物蛍光体は、基体上、例えば
比誘電率5000程度の焼結チタン酸バリウムセラミッ
クスシート上に、以下に述べるような公知の方法を用い
て形成すればよい。
【0028】このように形成した蛍光体は、EL素子用
発光層としての機能を付与した後、その上に透明電極を
他面には対向電極を付けることにより、エレクトロルミ
ネッセンス素子を構成することができる。
【0029】本発明では、不活性ガス、真空、非酸化性
ガス、あるいは一部酸化性ガス、または一部還元性ガス
を含む雰囲気等の、「過度の酸化を抑えたガス雰囲気」
並びに「このような雰囲気に硫黄を含ませた硫黄を含む
過度の酸化を抑えた雰囲気」中で該酸化イットリウム系
蛍光体薄膜を作製することによって、その結晶構造を立
方晶系と比較して単斜晶系を主とさせることにより蛍光
体としての十分な機能を付与する。
【0030】また、該酸化イットリウム系蛍光体薄膜を
上記の雰囲気中でスパッタリング法、化学気相結晶成長
(CVD)法、電子ビーム蒸着法、活性化反応性蒸着
(ARE)法、クラスタイオンビーム(ICB)法、イ
オンビームスパッタ(IBS)法、原子層エピタキシャ
ル(ALE)成長法、分子線エピタキシャル成長(MB
E)法、ガスソースMBE(またはCBE)法、エレク
トロンサイクロトロン共鳴(ECR)、パルスレーザ蒸
着(PLD)法、プラズマを利用する結晶成長法等公知
の薄膜堆積技術を用いて薄膜の結晶構造を立方晶系と比
較して単斜晶系を主とさせることにより、EL素子用発
光層としての十分な機能を付与することもできる。ま
た、該酸化イットリウム系蛍光体薄膜の化学的な安定性
を生かして、水溶液を用いる通常の成膜方法、例えば溶
液塗布法あるいはゾル・ゲル法を用いる成膜法も有効で
ある。
【0031】本発明では、上述した薄膜堆積技術又はゾ
ル・ゲル法を用いて薄膜を形成する場合、全工程を上記
雰囲気内、すなわち「過度の酸化を抑えたガス雰囲気」
又は「このような雰囲気に硫黄を含ませた硫黄を含む過
度の酸化を抑えた雰囲気」内で行ってもよいが、少なく
とも500℃以上、好ましくは400℃以上に加熱され
る工程は上記雰囲気下で行うのが好ましい。逆に、上記
雰囲気下で処理できない工程は、500℃より低い温
度、好ましくは400℃以下の加熱状態で行うのが好ま
しい。従って、PLD法により堆積する場合には基板温
度を500℃より低く、好ましくは400℃以下とする
必要がある。また、ゾル・ゲル法により大気中で焼成す
る場合には、焼成温度を500℃より低く、好ましくは
400℃以下とし、1000℃程度の熱処理時に上記雰
囲気とすればよい。
【0032】なお、上記薄膜堆積法により焼成後、上記
の雰囲気中で熱処理を施すと、EL素子用発光層として
の機能を向上させることに対して有効である。
【0033】本発明による「過度の酸化を抑えた雰囲気
又は硫黄を含む酸化を抑えた雰囲気」中での蛍光体薄膜
製造方法を駆使することにより作製した、立方晶系と比
較して単斜晶系を主とする結晶構造を有するエレクトロ
ルミネッセンス素子用蛍光体を用いる薄膜EL素子にお
いて高輝度黄色発光が実現できる。
【0034】このように高輝度黄色が実現できると、フ
ィルタを用いることにより、同材料で緑にも赤にも使え
るという利点がある。すなわち、同材料で緑および赤が
実現できると、パターニングが容易であるという効果を
奏する。
【0035】
【作用】Mn添加酸化イットリウム(Y:Mn)
蛍光体の製造方法ならびに作製条件等について様々な検
討を重ねた結果、過度の酸化を抑えた雰囲気中又は硫黄
を含む過度の酸化を抑えた雰囲気中で母体材料であるY
を作製し、Y の結晶構造を立方晶系と比較
して単斜晶系を主とすることにより、高輝度黄色発光を
実現できる作用効果を持つ新しいMn添加酸化イットリ
ウム(Y:Mn)蛍光体となることを知見し、本
発明を完成させた。
【0036】また、本発明の蛍光体はきわめて高い結晶
性を実現できることから、該蛍光体を発光層に用いたE
L素子では高電界印加時におけるホットエレクトロンの
生成効率が高まり、そのため発光中心であるMnの励起
効率も大幅に向上し高輝度及び高発光効率が得られると
いう作用効果も知見した。
【0037】さらに、熱処理時においては、特に硫黄を
含む雰囲気中で熱処理を行うことにより、蛍光体表面を
わずかに硫化することによる硫酸化層を形成し、蛍光体
表面が電荷供給層として機能するという効果も期待でき
る。また、発光中心材料であるMnが母体結晶であるY
中にYと置換すると3価で入ることが必要である
から、電荷補償効果の期待できる任意の元素を少なくと
も一種類以上共添加することにより、さらに輝度及び発
光効率共に向上させる作用効果が期待できる。また、共
添加した元素と発光中心であるMnとの相互作用によ
り、発光スペクトルを変化させる作用効果も期待でき
る。
【0038】このように本発明の酸化物蛍光体は、従来
からの酸化イットリウム系蛍光体に匹敵する極めて優れ
た特性を具備する。特にEL素子用蛍光体としては、従
来からEL素子発光層用蛍光体として最も優れた特性を
有することが知られているMn添加硫化亜鉛(ZnS:
Mn)に匹敵する優れた特性を実現できる。
【0039】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例および比較
例により説明する。
【0040】(実施例1)酸化イットリウム系蛍光体母
体材料としてのY粉末に発光中心材料として二酸
化マンガン(MnO)粉末をYに対してMnを2.0
原子%添加した混合粉末を、アルゴン(Ar)ガス雰囲
気中にて900℃で1時間焼成した。該焼成粉末を用い
てスパッタリングターゲットを作製し、焼結チタン酸バ
リウム(BaTiO)セラミック基体兼絶縁層上に、
Arガス中、ガス圧力6Pa、スパッタ投入電力140
W、基板温度350℃、基板−ターゲット間距離25m
mの条件下でY:Mn蛍光体薄膜をマグネトロン
スパッタリング法により形成した。
【0041】その後、硫黄を含むAr雰囲気中におい
て、1020℃で1時間の熱処理を行った。熱処理後の
該発光層薄膜の結晶構造をX線回析法により評価した結
果、図1に示すように立方晶系と比較して単斜晶系結晶
を主とした結晶構造を有するY :Mn蛍光体薄膜
が実現できた。
【0042】そして該発光層薄膜上にアルミニウム添加
酸化亜鉛(ZnO:Al)透明電極を、他面には金属A
l電極を形成し薄膜EL素子を作製した。該EL素子に
1kHz正弦波交流電圧を印加したところ、図2に示す
ように、印加電圧600Vにおいて7500cd/m
の高輝度黄色発光を実現できた。また、最高発光効率
1.1lm/Wを実現できた。さらに該EL素子に商用
電源である60Hz正弦波交流電圧を印加したところ、
図3に示すように、印加電圧600Vにおいて550c
d/mの黄色発光を実現できた。また、最高発光効率
が10lm/Wを実現できた。また、該EL素子からの
発光スペクトルは、波長580nmを中心とした比較的
ブロードな単一ピークからなり、添加したMn2+イオ
ンからの発光が得られた。
【0043】(実施例2)ゾル・ゲル法を用いてMn添
加酸化イットリウム(Y:Mn)蛍光体薄膜発光
層を作製した。母体材料としてのY原料はアセチルアセ
トネート系原料であるイットリウムアセチルアセトネー
ト(Y(C)、発光中心材料としてのM
n原料としては塩化マンガン(MnCl)を用いた。
Mnの添加量をYに対して2原子%として、それらの混
合粉末をメチルアルコール(CHOH)に溶解させて
ゾル溶液を作製した。次に、作製したゾル溶液に水と塩
酸を加えてゲル化し、乾燥窒素雰囲気中で十分に撹拌す
る。その後ゲルをディップコートもしくはスピンコート
法を用いて大気中、室温でBaTiOセラミックシー
ト上に塗布した後、大気中400℃で10分間焼成して
:Mn蛍光体薄膜発光層を形成した。
【0044】その後硫黄を含むAr雰囲気中において1
020℃で1時間の熱処理を行った。発光層の膜厚は上
記のゲルの塗布と焼成との繰り返す回数を変化させるこ
とによって調整した。熱処理後の該蛍光体薄膜発光層の
結晶構造をX線回析法により評価した結果、図4に示す
ように立方晶系と比較して単斜晶系結晶を主とした結晶
構造を有するY:Mn蛍光体薄膜が実現できた。
【0045】そして該蛍光体薄膜発光層上にアルミニウ
ム添加酸化亜鉛(ZnO:Al)透明電極を、他面には
金属Al電極を形成し薄膜EL素子を作製した。該EL
素子に1kHz正弦波交流電圧を印加したところ、図5
に示すように印加電圧600Vにおいて1600cd/
の高輝度黄色発光を実現できた。また、最高発光効
率0.5lm/Wを実現できた。
【0046】(比較例1)ゾル・ゲル法を用いてMn添
加酸化イットリウム(Y:Mn)蛍光体薄膜発光
層を作製した。母体材料としてのY原料はアセチルアセ
トネート系原料であるイットリウムアセチルアセトネー
ト(Y(C)、発光中心材料としてのM
n原料としては塩化マンガン(MnCl)を用いた。
Mnの添加量をYに対して2原子%として、それらの混
合粉末をメチルアルコール(CHOH)に溶解させて
ゾル溶液を作製した。次に、作製したゾル溶液に水と塩
酸を加えてゲル化し、乾燥窒素雰囲気中で十分に撹拌す
る。その後ゲルをディップコートもしくはスピンコート
法を用いて大気中、室温でBaTiOセラミックシー
ト上に塗布した後、大気中400℃で10分間焼成して
:Mn蛍光体薄膜発光層を形成した。
【0047】その後、大気中1020℃で1時間焼成を
行った後、さらにAr雰囲気中において1020℃で1
時間の熱処理を行った。発光層の膜厚は上記のゲルの塗
布と焼成との繰り返す回数を変化させることによって調
整した。熱処理後の該蛍光体薄膜発光層の結晶構造をX
線回析法により評価した結果、図6に示すように立方晶
系が主である結晶構造を有していた。
【0048】そして該蛍光体薄膜発光層上にアルミニウ
ム添加酸化亜鉛(ZnO:Al)透明電極を、他面には
金属Al電極を形成し薄膜EL素子を作製した。該EL
素子に1kHz正弦波交流電圧を印加したところ、EL
発光は得られなかった。
【0049】(実施例3)酸化イットリウム系蛍光体母
体材料としてのY粉末に発光中心材料として二酸
化マンガン(MnO)および二酸化クロム(Cr
)粉末をYに対してそれぞれ1.0原子%添加した
混合粉末を、アルゴン(Ar)ガス雰囲気中にて900
℃で1時間焼成した。該焼成粉末を用いてスパッタリン
グターゲットを作製し、焼結チタン酸バリウム(BaT
iO)セラミック基体兼絶縁層上に、Arガス中、ガ
ス圧力6Pa、スパッタ投入電力140W、基板温度3
50℃、基板−ターゲット間距離25mmの条件下でY
:Mn,Cr蛍光体薄膜をスパッタリング法によ
り形成した。
【0050】その後、硫黄を含むAr雰囲気中におい
て、1020℃で1時間の熱処理を行った。その結果、
立方晶系と比較して単斜晶系結晶を主とした結晶構造を
有するY:Mn,Cr蛍光体薄膜が実現できた。
【0051】そして該発光層薄膜上にアルミニウム添加
酸化亜鉛(ZnO:Al)透明電極を、他面には金属A
l電極を形成し薄膜EL素子を作製した。該EL素子に
1kHz正弦波交流電圧を印加したところ、印加電圧6
00Vにおいて5500cd/mの高輝度橙色発光を
実現できた。また、最高発光効率1.0lm/Wを実現
できた。
【0052】(実施例4)酸化イットリウム系蛍光体母
体材料としてのY粉末に発光中心材料として二酸
化マンガン(MnO)および二酸化リチウム(LiO
)粉末をYに対してそれぞれ1.0原子%添加した混
合粉末を、アルゴン(Ar)ガス雰囲気中にて900℃
で1時間焼成した。該焼成粉末を用いてスパッタリング
ターゲットを作製し、焼結チタン酸バリウム(BaTi
)セラミック基体兼絶縁層上に、Arガス中、ガス
圧力6Pa、スパッタ投入電力140W、基板温度35
0℃、基板−ターゲット間距離25mmの条件下でY
:Mn,Li蛍光体薄膜をスパッタリング法により
形成した。
【0053】その後、硫黄を含むAr雰囲気中におい
て、1020℃で1時間の熱処理を行った。その結果、
立方晶系と比較して単斜晶系結晶を主とした結晶構造を
有するY:Mn,Li蛍光体薄膜が実現できた。
【0054】そして該発光層薄膜上にアルミニウム添加
酸化亜鉛(ZnO:Al)透明電極を、他面には金属A
l電極を形成し薄膜EL素子を作製した。該EL素子に
1kHz正弦波交流電圧を印加したところ、共添加した
Liからの電荷補償効果により、輝度及び発光効率が向
上し、印加電圧600Vにおいて8500cd/m
高輝度橙色発光を実現できた。また、最高発光効率2l
m/Wを実現できた。
【0055】(実施例5)ゾル・ゲル法を用いてMn,
Cr共添加酸化イットリウム(Y:Mn,Cr)
蛍光体薄膜発光層を作製した。母体材料としてのY原料
はアセチルアセトネート系原料であるイットリウムアセ
チルアセトネート(Y(C)、発光中心
材料としてはMn原料として塩化マンガン(MnC
)およびCr原料として塩化クロム(CrCl
を用いた。MnおよびCrの添加量をYに対して1原子
%として、それらの混合粉末をメチルアルコール(CH
OH)に溶解させてゾル溶液を作製した。次に、作製
したゾル溶液に水と塩酸を加えてゲル化し、乾燥窒素雰
囲気中で十分に撹拌する。その後ゲルをディップコート
もしくはスピンコート法を用いて大気中、室温でBaT
iOセラミックシート上に塗布した後、大気中400
℃で10分間焼成してY:Mn,Cr蛍光体薄膜
発光層を形成した。
【0056】その後硫黄を含むAr雰囲気中において9
50℃で1時間の熱処理を行った。発光層の膜厚は上記
のゲルの塗布と焼成との繰り返す回数を変化させること
によって調整した。その結果、立方晶系と比較して単斜
晶系結晶を主とした結晶構造を有するY:Mn,
Cr蛍光体薄膜が実現できた。
【0057】そして該蛍光体発光層薄膜上にアルミニウ
ム添加酸化亜鉛(ZnO:Al)透明電極を、他面には
金属Al電極を形成し薄膜EL素子を作製した。該EL
素子に1kHz正弦波交流電圧を印加したところ、印加
電圧600Vにおいて7500cd/mの高輝度橙色
発光を実現できた。また、最高発光効率1lm/Wを実
現できた。
【0058】(実施例6)ゾル・ゲル法を用いてMn,
Na共添加酸化イットリウム(Y:Mn,Na)
蛍光体薄膜発光層を作製した。母体材料としてのY原料
はアセチルアセトネート系原料であるイットリウムアセ
チルアセトネート(Y(C)、発光中心
材料としてはMn原料として塩化マンガン(MnC
)およびNa原料として塩化ナトリウム(NaC
l)を用いた。MnおよびNaの添加量をYに対して1
原子%として、それらの混合粉末をメチルアルコール
(CHOH)に溶解させてゾル溶液を作製した。次
に、作製したゾル溶液に水と塩酸を加えてゲル化し、乾
燥窒素雰囲気中で十分に撹拌する。その後ゲルをディッ
プコートもしくはスピンコート法を用いて大気中、室温
でBaTiOセラミックシート上に塗布した後、大気
中400℃で10分間焼成してY:Mn,Na蛍
光体薄膜発光層を形成した。
【0059】その後硫黄を含むAr雰囲気中において9
50℃で1時間の熱処理を行った。発光層の膜厚は上記
のゲルの塗布と焼成との繰り返す回数を変化させること
によって調整した。その結果、立方晶系と比較して単斜
晶系結晶を主とした結晶構造を有するY:Mn,
Na蛍光体薄膜が実現できた。
【0060】そして該蛍光体発光層薄膜上にアルミニウ
ム添加酸化亜鉛(ZnO:Al)透明電極を、他面には
金属Al電極を形成し薄膜EL素子を作製した。該EL
素子に1kHz正弦波交流電圧を印加したところ、共添
加したNaからの電荷補償効果により、輝度及び発光効
率が向上し、印加電圧600Vにおいて9000cd/
の高輝度橙色発光を実現できた。また、最高発光効
率2.5lm/Wを実現できた。
【0061】(実施例7)Mn添加酸化イットリウム
(Y:Mn)薄膜発光層形成方法として、有機溶
剤に溶解させた溶液を用いる湿式成膜法を採用し、溶液
の塗布はディップコートもしくはスピンコート法により
行った。薄膜発光層形成に用いた溶液は母体材料である
Yの原料としてトリメトキシイットリウム(Y(OCH
)を用い、Mnの原料として塩化マンガン(Mn
Cl)を用いた。Mnの添加量をYに対して2原子%
として、それらの混合粉末をメチルアルコール(CH
OH)に溶解させた溶液を作製した。続いて、その溶液
をディップコートもしくはスピンコート法を用いて大気
中、室温でBaTiOセラミックシート上に塗布した
後、ソース材料の熱分解および溶媒の除去を目的に大気
中800℃で30秒間焼成処理を施した。
【0062】その後、硫黄を含むAr雰囲気中において
950℃で1時間の熱処理を行った。発光層の膜厚は上
記の溶液の塗布と焼成との繰り返す回数を変化させるこ
とによって調整した。その結果、立方晶系と比較して単
斜晶系結晶が主である結晶構造を有するY:Mn
蛍光体薄膜が実現できた。
【0063】そして該蛍光体薄膜発光層上にアルミニウ
ム添加酸化亜鉛(ZnO:Al)透明電極を、他面には
金属Al電極を形成し薄膜EL素子を作製した。該EL
素子に1kHz正弦波交流電圧を印加したところ、印加
電圧600Vにおいて7000cd/mの高輝度黄色
発光を実現できた。また、最高発光効率1lm/Wを実
現できた。
【0064】(実施例8)Mn,Cr共添加酸化イット
リウム(Y:Mn,Cr)薄膜発光層形成方法と
して、有機溶剤に溶解させた溶液を用いる湿式成膜法を
採用し、溶液の塗布はディップコートもしくはスピンコ
ート法により行った。薄膜発光層形成に用いた溶液は母
体材料であるYの原料としてトリメトキシイットリウム
(Y(OCH)を用い、発光中心材料としてはM
nの原料として塩化マンガン(MnCl)およびCr
の原料として塩化クロム(CrCl)を用いた。Mn
およびCrの添加量をYに対して1原子%として、それ
らの混合粉末をメチルアルコール(CHOH)に溶解
させた溶液を作製した。続いて、その溶液をディップコ
ートもしくはスピンコート法を用いて大気中、室温でB
aTiOセラミックシート上に塗布した後、ソース材
料の熱分解および溶媒の除去を目的に大気中800℃で
30秒間焼成処理を施した。
【0065】その後、硫黄を含むAr雰囲気中において
950℃で1時間の熱処理を行った。発光層の膜厚は上
記の溶液の塗布と焼成との繰り返す回数を変化させるこ
とによって調整した。その結果、立方晶系と比較して単
斜晶系結晶が主である結晶構造を有するY:M
n,Cr蛍光体薄膜が実現できた。そして該発光層薄膜
上にアルミニウム添加酸化亜鉛(ZnO:Al)透明電
極を、他面には金属Al電極を形成し薄膜EL素子を作
製した。該EL素子に1kHz正弦波交流電圧を印加し
たところ、印加電圧600Vにおいて7000cd/m
の高輝度橙色発光を実現できた。また、最高発光効率
1lm/Wを実現できた。
【0066】(実施例9)Mn,珪素(Si)共添加酸
化イットリウム(Y:Mn,Si)薄膜発光層形
成方法として、有機溶剤に溶解させた溶液を用いる湿式
成膜法を採用し、溶液の塗布はディップコートもしくは
スピンコート法により行った。薄膜発光層形成に用いた
溶液は母体材料であるYの原料としてトリメトキシイッ
トリウム(Y(OCH)を用い、発光中心材料と
してはMnの原料として塩化マンガン(MnCl)お
よびSiの原料としてテトラエトキシシラン((C
O)Si)を用いた。MnおよびSiの添加量をY
に対して1原子%として、それらの混合粉末をメチルア
ルコール(CHOH)に溶解させた溶液を作製した。
続いて、その溶液をディップコートもしくはスピンコー
ト法を用いて大気中、室温でBaTiOセラミックシ
ート上に塗布した後、ソース材料の熱分解および溶媒の
除去を目的に大気中800℃で30秒間焼成処理を施し
た。
【0067】その後、硫黄を含むAr雰囲気中において
950℃で1時間の熱処理を行った。発光層の膜厚は上
記の溶液の塗布と焼成との繰り返す回数を変化させるこ
とによって調整した。その結果、立方晶系と比較して単
斜晶系結晶が主である結晶構造を有するY:M
n,Si蛍光体薄膜が実現できた。
【0068】そして該発光層薄膜上にアルミニウム添加
酸化亜鉛(ZnO:Al)透明電極を、他面には金属A
l電極を形成し薄膜EL素子を作製した。該EL素子に
1kHz正弦波交流電圧を印加したところ、共添加した
Siからの電荷補償効果により、輝度及び発光効率が向
上し、印加電圧600Vにおいて9000cd/m
高輝度橙色発光を実現できた。また、最高発光効率2.
3lm/Wを実現できた。
【0069】(実施例10)ゾル・ゲル法を用いてMn
添加酸化イットリウム(Y:Mn)蛍光体粉末を
作製した。母体材料としてのY原料はアセチルアセトネ
ート系原料であるイットリウムアセチルアセトネート
(Y(C)、発光中心材料としてのMn
原料としては塩化マンガン(MnCl)を用いた。M
nの添加量をYに対して2原子%として、それらの混合
粉末をメチルアルコール(CHOH)に溶解させてゾ
ル溶液を作製した。次に、作製したゾル溶液に水と塩酸
を加えてゲル化し、乾燥窒素雰囲気中で十分に撹拌す
る。その後ゲルを乾燥窒素雰囲気中で乾燥させ、その後
大気中400℃で10分間焼成してY:Mn蛍光
体粉末を形成した。
【0070】その後、硫黄を含むAr雰囲気中において
1020℃で1時間の熱処理を行った。熱処理後の該蛍
光体粉末の結晶構造をX線回析法により評価した結果、
立方晶系と比較して単斜晶系結晶を主とした結晶構造を
有するY:Mn蛍光体粉末が実現できた。
【0071】該蛍光体粉末をフォトルミネッセンス(P
L)法並びにカソードルミネッセンス(CL)法で評価
した結果、両者共に強い黄色発光が得られ、PLおよび
CL用Y:Mn蛍光体粉末が実現できた。
【0072】(実施例11)ゾル・ゲル法を用いてM
n、Na共添加酸化イットリウム(Y:Mn,N
a)蛍光体粉末を作製した。母体材料としてのY原料は
アセチルアセトネート系原料であるイットリウムアセチ
ルアセトネート(Y(C)、発光中心材
料としてのMn原料としては塩化マンガン(MnC
)を用いた。電荷補償剤材料としては塩化ナトリウ
ム(NaCl)を用いた。Mn及びNaの添加量をYに
対してそれぞれ1原子%として、それらの混合粉末をメ
チルアルコール(CHOH)に溶解させてゾル溶液を
作製した。次に、作製したゾル溶液に水と塩酸を加えて
ゲル化し、乾燥窒素雰囲気中で十分に撹拌する。その後
ゲルを乾燥窒素雰囲気中で乾燥させ、その後大気中40
0℃で10分間焼成してY :Mn,Na蛍光体粉
末を形成した。
【0073】その後硫黄を含むAr雰囲気中において1
020℃で1時間の熱処理を行った。熱処理後の該蛍光
体粉末の結晶構造をX線回析法により評価した結果、立
方晶系と比較して単斜晶系結晶を主とした結晶構造を有
するY:Mn,Na蛍光体粉末が実現できた。
【0074】該蛍光体粉末をフォトルミネッセンス(P
L)法並びにカソードルミネッセンス(CL)法で評価
した結果、両者共に強い黄色発光が得られ、PLおよび
CL用Y:Mn,Na蛍光体粉末が実現できた。
【0075】(実施例12)基体としてサファイア単結
晶を使用し、その上にフッ素(F)添加酸化錫(SnO
)透明電極、酸化アルミニウム(Al)薄膜絶
縁層をスパッタ法等の公知の薄膜作製法で形成する。次
に酸化物蛍光体であるY:Mn薄膜をYソースと
して塩化イットリウム(YCl)、酸素ソースとして
酸素(O)およびMnソースとして塩化マンガン(M
nCl)をそれぞれ採用する分子線エピタキシー法に
より、Al薄膜絶縁層上にYに対してMnが2.
0原子%含まれるように分子線比を制御して、基体温度
400℃でY:Mn蛍光体薄膜をエピタキシャル
成長させた。
【0076】その後、硫黄を含むAr雰囲気中におい
て、1020℃で1時間の熱処理を行った。熱処理後の
該発光層薄膜の結晶構造をX線回析法により評価した結
果、立方晶系と比較して単斜晶系結晶が主とした結晶構
造を有するY:Mn蛍光体薄膜が実現できた。
【0077】その後、蛍光体層上に背面電極としてAl
膜を真空蒸着法で形成し、サファイア単結晶基体形片絶
縁構造薄膜EL素子を作製した。該EL素子に1kHz
正弦波交流電圧を印加したところ、印加電圧600Vに
おいて6000cd/mの高輝度黄色発光を実現でき
た。また、最高発光効率2.5lm/Wを実現できた。
【0078】(実施例13)酸化イットリウム系蛍光体
母体材料としてのY粉末に発光中心材料として二
酸化マンガン(MnO)粉末をYに対してMnが1.
0原子%添加した混合粉末を、大気圧中で1200℃で
1時間焼成した。該Y:Mn焼結体をターゲット
として用い、焼結チタン酸バリウム(BaTiO)セ
ラミック基体兼絶縁層上に、ArFエキシマレーザーを
用い、基板温度350℃で厚さ1μmのY:Mn
蛍光体薄膜を形成した。
【0079】その後、硫黄を含むAr雰囲気中におい
て、1020℃で1時間の熱処理を行った。熱処理後の
該発光層薄膜の結晶構造をX線回析法により評価した結
果、図7に示すように立方晶系と比較して単斜晶系結晶
を主とした結晶構造を有するY :Mn蛍光体薄膜
が実現できた。
【0080】そして該発光層薄膜上にアルミニウム添加
酸化亜鉛(ZnO:Al)透明電極を、他面には金属A
l電極を形成し薄膜EL素子を作製した。該EL素子に
1kHz正弦波交流電圧を印加したところ、図8に示す
ように、印加電圧600Vにおいて1700cd/m
高輝度黄色発光を実現できた。また、最高発光効率0.
3lm/Wを実現できた。さらに該EL素子に商用電源
である60Hz正弦波交流電圧を印加したところ、同様
に図8に示すように、印加電圧600Vにおいて33c
d/m黄色発光を実現できた。また、最高発光効率が
1lm/Wを実現できた。また、該EL素子からの発光
スペクトルは、波長580nmを中心とした比較的ブロ
ードな単一ピークからなり、添加したMn2+イオンか
らの発光が得られた。
【0081】(比較例2)PLD法による成膜の際の基
板温度を800℃とした以外は、実施例13と同様にし
てY:Mn蛍光体薄膜を形成した。
【0082】このY:Mn蛍光体薄膜の結晶構造
をX線回析法により評価した結果、図7に示すように立
方晶系を主とした結晶構造を有することがわかった。
【0083】そして該蛍光体薄膜発光層上にアルミニウ
ム添加酸化亜鉛(ZnO:Al)透明電極を、他面には
金属Al電極を形成し薄膜EL素子を作製した。該EL
素子に1kHz正弦波交流電圧を印加したところ、EL
発光は得られなかった。
【0084】(その他)本発明は、上記実施例に限られ
るものではなく、上記実施例で示したZnO:Al透明
電極層以外に酸化錫(SnO)系やインジウム・錫酸
化物(ITO)系等の透明導電膜を使用することは一向
に差し支えない。絶縁層はその比誘電率が100以上あ
ればよく、900℃程度の熱処理に耐えられれば、必ず
しもBaTiOである必要はない。またEL素子構造
も基体材料として900℃以上の耐熱性を有する石英、
アルミナ等の各種セラミックおよびサファイア等の各種
単結晶を用い、従来からの二重絶縁構造を採用すること
は一向に差し支えない。
【0085】
【発明の効果】本発明によれば、過度の酸化を抑えた雰
囲気もしくは硫黄を含む過度の酸化を抑えた雰囲気中で
立方晶系と比較して単斜晶系を主とする結晶構造を有す
るY母体材料を作製し、発光中心材料としてMn
を単独もしくは1種類以上の任意の元素を共添加するこ
とにより、高輝度黄色発光を実現できる新しいMn添加
酸化イットリウム(Y:Mn)系蛍光体薄膜を実
現できた。該Y:Mn蛍光体薄膜は、フォトルミ
ネッセンス(PL)、カソードルミネッセンス(CL)
及びエレクトロルミネッセンス(EL)のいずれにおい
ても高輝度黄色発光を実現できた。特にEL素子用発光
層材料としては、これまでのEL素子開発の歴史の中で
最も優れたEL特性を実現しているMn添加硫化亜鉛
(ZnS:Mn)に匹敵する高輝度、高発光効率を実現
できた。加えて、該Y:Mn蛍光体は酸化物特有
の極めて高い化学的安定性を有する。
【0086】以上のことから、該Y:Mn蛍光体
は薄膜EL素子を始めとして、蛍光ランプ、プラズマデ
ィスプレイ、ブラウン管等の蛍光体として広範な応用が
可能でありその効果は絶大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1におけるY:Mn蛍光体薄膜の
X線回析プロファイルを示す図である。
【図2】実施例1における駆動周波数1kHz正弦波時
の輝度−印加電圧、発光効率−印加電圧特性を示す図で
ある。
【図3】実施例1における駆動周波数60Hz正弦波時
の輝度−印加電圧、発光効率−印加電圧特性を示す図で
ある。
【図4】実施例2におけるY:Mn蛍光体薄膜の
X線回析プロファイルを示す図である。
【図5】実施例2における駆動周波数1kHz正弦波時
の輝度−印加電圧、発光効率−印加電圧特性を示す図で
ある。
【図6】比較例1におけるY:Mn蛍光体薄膜の
X線回析プロファイルを示す図である。
【図7】実施例13および比較例2におけるY
Mn蛍光体薄膜のX線回析プロファイルを示す図であ
る。
【図8】実施例13における駆動周波数1kHzおよび
60Hz正弦波時の輝度−印加電圧、発光効率−印加電
圧特性を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浦野 祐司 神奈川県横浜市鶴見区尻手2丁目3番6号 北辰工業株式会社内 Fターム(参考) 3K007 AB02 DB00 DC02 DC04 4H001 CA02 CA04 CF02 XA08 XA39 YA03 YA11 YA14 YA24 YA25

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イットリウム(Y)を主成分とする酸化
    物を母体材料とし、発光中心として少なくとも1種以上
    の遷移金属元素を含有する酸化物蛍光体であって、前記
    酸化物が立方晶系と比較して単斜晶系結晶が主であるこ
    とを特徴とする酸化物蛍光体。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記遷移金属元素と
    して、マンガン(Mn)を含有することを特徴とする酸
    化物蛍光体。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において、前記発光中心
    としての遷移金属元素に加えて少なくとも1種類以上の
    任意の元素が共添加されていることを特徴とする酸化物
    蛍光体。
  4. 【請求項4】 請求項3において、前記任意の元素が少
    なくとも1種以上の希土類金属元素であることを特徴と
    する酸化物蛍光体。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4の何れかにおいて、前記酸
    化物が、酸化イットリウム(Y)であることを特
    徴とする酸化物蛍光体。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5の何れかにおいて、前記遷
    移金属元素をイットリウム(Y)に対して0.1〜10
    原子%含有することを特徴とする酸化物蛍光体。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6の何れかに記載の酸化物蛍
    光体を発光層として使用することを特徴とするエレクト
    ロルミネッセンス素子。
  8. 【請求項8】 請求項7において、前記発光層が薄膜状
    であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素
    子。
  9. 【請求項9】 イットリウム(Y)を主成分とする酸化
    物を母体材料とし、発光中心として少なくとも1種以上
    の遷移金属元素を含有する酸化物蛍光体の製造方法であ
    って、過度の酸化を抑えた雰囲気中で熱処理することに
    より前記酸化物が立方晶系と比較して単斜晶系結晶が主
    なものとすることを特徴とする酸化物蛍光体の製造方
    法。
  10. 【請求項10】 請求項9において、前記熱処理を硫黄
    を含む過度の酸化を抑えた雰囲気中で行うことを特徴と
    する酸化物蛍光体の製造方法。
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