JP2003151754A5 - - Google Patents
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Description
【発明の名称】誘導加熱装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】断面積の異なる素線を集合したコイル導線を巻回した加熱コイルを備えた誘導加熱装置。
【請求項2】コイル導線を巻回してなる加熱コイルに高周波電流を流して被加熱体を誘導加熱するものにおいて、コイル導線を予め断面積の異なる素線もしくは断面積の異なる素線からなる集合線を撚り合わせたものをさらに複数撚り合わせるという撚り合わせを複数回行う多段階重ね撚り構造とした誘導加熱装置。
【請求項3】コイル導線を予め第1の断面積からなる素線もしくは第1の断面積からなる素線を用いた集合線の周囲に第1の断面積と異なる第2の断面積からなる素線もしくは第2の断面積からなる素線を用いた集合線を撚り合せて集合線を形成する構成とした請求項1または2に記載の誘導加熱装置。
【請求項4】加熱コイルに40〜100kHzの高周波電流を流して被加熱体を誘導加熱する構成とした請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は誘導加熱装置に関し、特に、高周波電流による損失を低減した加熱コイルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、誘導加熱装置の加熱できる金属は透磁率が高い鉄系のものだけであったが、近年、鉄以外の銅やアルミニウムといった金属の加熱も望まれている。とりわけ、加熱装置を調理器に応用した誘導加熱調理器は、近年鉄鍋以外に銅鍋やアルミニウム鍋なども使いたいという要望が高くなってきた。ところで、銅鍋やアルミニウム鍋を誘導加熱するには、透磁率が低いため鉄鍋に適した20〜30kHzよりも高い40〜100kHzの高周波電流を加熱コイルに流さなければならない。しかるに、周波数が高くなればなるほど、いわゆる表皮効果により高周波電流が導線の表面付近だけを流れるようになるため実効抵抗ははなはだしく増大する。そのため、表面積を増やし実効的に抵抗を減少する方法として、導線の径を細くし、例えば直径0.1mm以下の導線を数本ないし数十本束ねて用いる方法が行われてきた。しかし、この方法では、表皮効果による実効的な抵抗を下げることができても、導線を多数本用いているために近接作用が顕著となり必ずしも十分に抵抗を低減することができなかった。ここでいう近接作用とは、近接した導体に電流が流れるときに、磁界を介して相互に影響を与えあって、電流分布に偏りが生じる現象であり、導線表面の実効的な抵抗増大となる。近接作用は高周波電流の向きが導線間で揃っているほど、導線間の間隔が小さいほど大きくなる。
【0003】
前記課題を解決する方法としては、例えば、特公平7−118377号公報に記載されているようなものがあった。同公報では、加熱コイルのコイル導線を、素線を束ねた集合線をさらに集合させる多段階集合構造と成すとともに、すくなくとも1の段階の集合線は編み上げにより形成することにより、集合線の向きが不揃いとなるとともに、相互に密着しなくなり、これにより近接効果を抑制できて加熱コイルの高周波電流に対するコイル抵抗を減少させ得るというものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の構成では、加熱コイルの高周波電流に対するコイル抵抗を減少させることができるが、誘導加熱の効率をさらによくするためには、さらに高周波電流に対するコイル抵抗を低減する必要があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、近接作用の影響を少なくし、加熱コイルの高周波電流に対するコイル抵抗を減少させ、加熱コイルの自己発熱が小さく加熱効率の良い誘導加熱装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記従来の課題を解決するために、本発明の誘導加熱装置は断面積の異なる素線からなる集合線を用いたコイル導線を巻回した加熱コイルを用いる構成とした。この構成により、断面積の大きい素線が断面積の小さい素線の間に入ることで、断面積の小さい素線と断面積の小さい素線との間の空間を広げることができ、近接作用による高周波抵抗の増大を低減できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、断面積の異なる素線を集合したコイル導線を巻回した加熱コイルを備える構成とすることにより、断面積の大きい素線が断面積の小さい素線の間に入ることで、断面積の小さい素線と断面積の小さい素線との間の空間を広げることができ、近接作用による高周波抵抗の増大を低減でき、加熱コイルの自己発熱が小さくし、加熱効率を高めることができる。つまり、断面積の小さい素線は断面積の大きい素線に比べて、断面積当たりの高周波抵抗が小さく、断面積の小さい素線を主として高周波電流は流れることになる。一方、高周波電流の流れにくい断面積の大きい素線は、断面積の小さい素線間の空間を広げ、断面積の小さい素線どうしが近接作用によって高周波抵抗が増大することを低減できる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、コイル導線を巻回してなる加熱コイルに高周波電流を流して被加熱体を誘導加熱するものにおいて、コイル導線を予め断面積の異なる素線もしくは断面積の異なる素線からなる集合線を撚り合わせたものをさらに複数撚り合わせるという撚り合わせを複数回行う多段階重ね撚り構造とした。これにより、断面積の大きい素線が断面積の小さい素線の間に入ることで、断面積の小さい素線と断面積の小さい素線との間の空間を広げることができ、近接作用による高周波抵抗の増大を低減でき、加熱コイルの自己発熱が小さくし、加熱効率を高めることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、特に、請求項1または2に記載に構成において、コイル導線を予め第1の断面積からなる素線もしくは第1の断面積からなる素線を用いた集合線の周囲に第1の断面積と異なる第2の断面積からなる素線もしくは第2の断面積からなる素線を用いた集合線を撚り合せて集合線を形成する構成とした。これにより、断面積の大きい素線が断面積の小さい素線の間にバランスよく入ることで、断面積の小さい素線と断面積の小さい素線との間の空間を安定して広げることができ、近接作用による高周波抵抗の増大を安定して低減でき、加熱コイルの自己発熱が小さくし、加熱効率を高めることができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、特に、請求項1〜3に記載の構成において、加熱コイルに40〜100kHzの高周波電流を流して被加熱体を誘導加熱する構成としたことにより、銅鍋およびアルミニウム鍋に適したものにすることができる。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の実施例については、誘導加熱装置の例として誘導加熱調理器をあげ、図面を参照しながら説明する。
【0012】
(実施例1)
本実施例の特徴は、断面積の異なる素線を集合してコイル導線を作製し、このコイル導線を巻回して加熱コイルを設けたことを特徴としている。前述したように、銅鍋やアルミニウム鍋のように透磁率の低い加熱体を加熱するために40〜100kHzの高周波電流を加熱コイルに流すと、いわゆる表皮効果により加熱コイルの実効抵抗は増大する。そこで表皮効果の影響を低減するために断面積の小さい素線を用いるわけであるが、断面積の小さい素線を用いると巻線が密に、すなわち占有率が向上し素線間の実効的な間隔が小さくなり、近接作用による抵抗増大が顕著となる。本発明では、断面積の小さい素線を多く用いることにより表皮効果を低減するとともに、断面積の小さい素線と断面積の大きい素線とを混在させることにより、断面積の小さな素線間の間隔が実質的に大きくなり、近接作用による抵抗の増大を抑止することができ、加熱コイルの高周波抵抗を実質的に小さくし、加熱コイルの自己発熱を低減し、加熱効率を良くすることができる。以下、図面を用いて説明する。
【0013】
まず、誘導加熱調理器の概略構成について図2を用いて説明する。1は誘導加熱調理器の外郭を構成する本体、2は本体1上に設けたトッププレート、3は本発明に関わるコイル導線を用いて巻回して作製した加熱コイル、4は加熱コイル3を制御する制御部であり、5は加熱コイル3に対応してトッププレート2に設けた加熱部に載置した鍋等の加熱体である。この構成において、加熱コイル3に高周波電流を流すと磁束が発生し、この磁束の渦電流損による発熱により加熱体5が加熱される。
【0014】
以下、本実施例におけるコイル導線の構成について説明する。図1は本発明の実施例1における誘導加熱調理器に用いる加熱コイルの集合線の断面図である。図1において、集合線6は、断面積の小さい素線7、例えば直径0.05mmの素線と、断面積の大きい素線8、例えば直径0.1mmの素線とを混在させて、これを束ねまたは撚り合わせて集合したものである。図1では、表皮効果を低減するために用いた断面積の小さい素線7の近接作用を低減するために、断面積の小さい素線7と断面積の大きい素線8とを無作為に混在させた状態を示している。これにより断面積の小さい素線7間の実効的な間隔を大きくすることができる。このように、断面積の大きい素線8の間に断面積の小さい素線7を必ず介在させるようにして断面積の小さい素線7間の間隔を実効的に大きくなるようにすると近接作用を低減できる。また、断面積の小さい素線7どうしおよび断面積の大きい素線8どうしが偏らないようにするとさらに効果的である。
【0015】
このようにして得られた集合線を第1段階として数束撚り合わせて上位集合線とし、さらに必要に応じて第2段階としてこの上位集合線を数束撚り合わせ高次の集合線としていく。このように上位集合線を複数回撚り合わせる多段階重ね撚り構造としたコイル導線を巻回して加熱コイルを作製すると、40〜100kHzの高周波電流を流しても近接作用によって加熱コイルの高周波抵抗が増大することを抑制でき、加熱コイルの自己発熱を低減し、加熱効率のよい加熱コイルを得る事ができる。つまり、直径0.05mmの素線と直径0.1mmの素線とを本数調整により断面積を同じにした場合、高周波抵抗は、直径0.05mmの素線の方が小さくなる。したがって、直径0.05mmの素線と直径0.1mmの素線とが混在する場合には、直径0.05mmの素線を主に高周波電流が流れ、直径0.1mmの素線にはあまり流れなくなる。ここで、直径0.1mmの素線が直径0.05mmの素線の間に入ることで、直径0.05mmと直径0.05mmとの空間を広げ、近接作用で加熱コイルの高周波抵抗を増大することを防止することができる。
【0016】
図3は本発明の実施例1における誘導加熱調理器に用いる他の例を示す加熱コイルの集合線の断面図である。図3において、断面積の小さい素線7を断面積の大きい素線8の周囲に、例えば0.05mmの素線9本を0.1mmの素線の周囲に配し、これを集合線9として撚り合わせている。さらにこの集合線9を撚り合わせ上位集合線10を形成している。このようにすることにより、バランス良く断面積の小さい素線7間の実効的な間隔を広げることができるので、近接作用による抵抗の増大をバランス良く抑えることができる。さらに必要に応じて、上位集合線10を撚り合わせさらに上位集合線とし、さらに必要に応じてこの工程を繰り返すことにより多段階重ね撚り構造としたコイル導線を得ることができる。
【0017】
また、図4は本発明の実施例1における誘導加熱調理器に用いる他の加熱コイルの集合線を示す断面図である。図4において、断面積の小さい素線7を撚り合わせ集合線12とし、断面積の大きい素線8を撚り合わせた集合線11の周囲に配し、これらを撚り合わせて上位集合線13としている。例えば、図において、0.1mmの断面積の大きい素線を4本より合わせ集合線とし、その周囲に0.05mmの断面積の小さい素線を7本撚り合わせた集合線を8束配して撚り合わせ上位集合線としている。このようにすることにより、バランス良く断面積の小さい素線間の実効的な間隔を広げることができるので、近接作用による高周波抵抗の増大を安定して抑えることができる。
【0018】
なお、本実施例1においては図3、図4に示すように断面積の大きい素線の周囲に断面積の小さい素線を配置したが、逆に断面積の小さい素線の周囲に断面積の大きい素線を配置しても良い、要はバランス良く断面積の小さい素線と断面積の大きい素線とを配置すれば良い。
【0019】
(参考例1)
本実施例は細い素線を撚り合わせた集合線を複数よりあわせたものをさらに複数撚り合わせる工程を必要に応じて複数回行って構成される多段階重ね撚り構造を有するコイル導線に関し、特に、コイル導線もしくは集合線の少なくとも一部に絶縁体を配し、線間の実効的な距離を大きくし近接作用による抵抗の増大を抑制したものである。以下図面により説明する。
【0020】
図5は、本発明の参考例1における誘導加熱調理器のコイル導線の断面図である。図において、細い素線、例えば直径0.05mmの素線60本を束ねた集合線14を7束撚り合わせこれを上位集合線15とし、さらにこの上位集合線15を3束撚り合わせ多段階重ね撚り構造のコイル導線16としている。このコイル導線16に熱を加え、コイル導線16自体に有している揮発成分を低減した後、コイル導線16の外周の少なくとも一部に絶縁体17を設ける構成としている。この構成のコイル導線16を巻回して加熱コイルを作製したとき、コイル導線16間の少なくとも一部には絶縁体が存在するので、コイル導線16間の間隔が大きくなり、ひいては素線間の間隔が大きくなるので近接作用による高周波抵抗の増大を抑制することができる。また、コイル導線16の全体に絶縁体を設ける構成にすると、巻回したときコイル導線16間の全体の絶縁強度が増加し信頼性を高めることができる。また、コイル導線16の巻回したターン間の電圧差は大きいため、結果として絶縁体17をターン間に設けるこの方式は絶縁の信頼性が高い。さらに、本参考例のように素線の直径が0.05mm程度になると素線自体の絶縁層を厚くすることが製造的に困難になりコスト高となる。したがって、この方式はコイル素線の直径が小さいもの(0.1mm以下のもの)を使用する場合に、特に絶縁の信頼性を確保し、低コスト化を実現するのに優れている。
【0021】
また、図6は本参考例における誘導加熱調理器の他のコイル導線を示す断面図である。図6では、上位集合線15に熱を加え、上位集合線15自体に有している揮発成分を低減した後、上位集合線15外周の少なくとも一部を絶縁体17で覆う構成としている。そして絶縁体17で覆った上位集合線17を3束撚り合わせてコイル導線18としている。この構成では上位集合線15間の少なくとも一部には絶縁体が存在するので、上位集合線15間の間隔が大きくなり、ひいては素線間の間隔が大きくなるので近接作用による抵抗の増大を抑制することができる。また、上位集合線15の全体に絶縁体を設ける構成にしてコイル導線18を作製しておくと、巻回したときコイル導線18間に絶縁体が存在するので全体の絶縁強度が増加し信頼性を高めることができる。
【0022】
コイル導線16に絶縁体を設ける方法としては、コイル導線16にテープ、または糸状体を巻回しても良いし、巻回時にフイルム状の絶縁体を挟み込むようにしても良い。また、液状物質を塗布し硬化するような方法を用いても良い。
【0023】
絶縁体としては耐熱性を有する無機系としてガラス繊維、マイカ、有機系としてフッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などからなるテープまたはフイルムなどが用いられる。これらのうちガラステープは低価格であり、作業性が良いため適している。さらにガラステープは加熱コイルを作製後、樹脂を含浸し加熱コイル装置の形状を安定化するとき、樹脂が透過するので樹脂を内部まで含浸するのに適している。
【0024】
樹脂含浸工程を省略する方法としては、図7に示す自己融着線を用いる方法が一般的に行われている。すなわち、導体19の周囲に絶縁層20を設けさらにその外側に融着層21を設けた素線を用いて加熱コイルを作製し、その後加熱することにより融着層21を溶融固化することにより、素線間を固着して加熱コイルの形状を安定に保持できるようにする方法である。
【0025】
本参考例ではコイル導線の外周もしくは上位集合線の外周に絶縁体を設けているので、この絶縁体を利用することにより素線の融着層21を用いないで加熱コイルの形状を安定に保持するようにすることができる。すなわち、絶縁体としてポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂を用い、加熱コイルを作製の途中段階において、もしくは加熱コイルを巻回後、熱可塑性樹脂を加熱して溶融させ固化させることにより、絶縁体と絶縁体あるいは絶縁体と素線とを固着させ加熱コイルの形状を安定化させることができる。また、絶縁体を融点の異なる2種類の樹脂から構成し、融点の低い樹脂を融点の高い樹脂の外側に構成することで加熱接着性を向上することができる。例えば、絶縁体にフッ素樹脂を用い、外側に融点の低いフッ素樹脂(ETFEやFEP)を用い、内側に融点の高いフッ素樹脂(PFA)を用いると安定した絶縁性と加熱接着性を向上させることができる。
【0026】
さらに、絶縁体として未硬化もしくは半硬化のゴムまたは熱硬化性の樹脂を用い、加熱コイルを作製の途中段階において、もしくは加熱コイルを巻回後、加熱固化させることにより、絶縁体と絶縁体あるいは絶縁体と素線とを固着させ加熱コイルの形状を安定化させることができる。なお、ゴムとしてはシリコン系、フッ素系などのものが、また、熱効果樹脂としてはエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などが用いられる。
【0027】
また、絶縁体として未硬化もしくは半硬化のゴムまたは樹脂、特に半硬化のゴムまたは樹脂を織布もしくは不織布に塗布もしくは含浸し、前述のように加熱硬化させることにより加熱コイルの形状を安定化させることができる。特にテープ状の織布もしくは不織布を用いた場合、集合線もしくはコイル導線の外周の一部または全体を容易に巻回できるので取り扱いが容易であり、かつ安定した絶縁層を設けることができる。なお、ゴムまたは樹脂は上述のものと同種のものが一般に用いられる。
【0028】
また、図8に示すように予め熱を加えコイル導線16自体に有している揮発成分を低減した後、コイル導線16の外周に絶縁体17を設け、さらにその外側に接着層22を設けるようにしてもよい。ここでいう接着層は融着層を含む。この構成のコイル導線16を巻回後、加熱することによりコイル導線とコイル導線とが固着し形状の安定した加熱コイルを得ることができる。
【0029】
この他、熱収縮テープを用いてもよい。すなわち、上位集合線もしくは/およびコイル導線に熱収縮テープを巻回後、加熱することによりテープが収縮し上位集合線もしくは/およびコイル導線を締め付け、加熱コイルを安定にした形状にすることができる。
【0030】
以上述べた構成により、素線の融着層を用いないでも加熱コイルの形状を安定化することができる。ただし、融着層を用いないと素線間の間隔が小さくなり近接作用により抵抗増大が問題になることがある。このときは融着層に相当する分の絶縁厚みを増加すればよい。これにより素線の製造工程が簡略化され価格を低減することができる。
【0031】
なお、絶縁材料の耐熱性は設計により必要とする耐熱区分の中から選択すればよい。
【0032】
以上述べたように、本参考例によれば、近接作用による高周波抵抗の増大を抑制することができるとともに、絶縁性能が向上し信頼性を高めることができる。さらに接着性を有する絶縁構成にすることにより、コイル形状の安定性を図ることができる。また、コイル導線や上位集合線の揮発成分を熱で低減した後、コイル導線や上位集合線の外周に絶縁体を設けているので、使用時に加熱コイルに熱が加わった場合や絶縁体間の接着に際して加熱コイルに熱を加えた時、加熱コイル内部から発生する揮発成分が上位集合線と絶縁体との間やコイル導線と絶縁体との間に溜ることがなくなり、揮発成分が加熱コイルを変形させることを防止できる。
【0033】
なお、実施例1および参考例1で述べたように、近接作用による高周波抵抗の増大を抑制するために、素線の断面積を大きくしたり、上位集合線またはコイル導線に絶縁体を設けたりすると効果的である。そこで、素線の断面積を変えたり、絶縁体の厚みおよび量を変えたりするなどの実験により加熱コイル全体での近接作用の影響を調べた。その結果、加熱コイルの外周に絶縁体を巻回したとき、外周の絶縁体を含まない絶縁体内の断面積、すなわち、加熱コイルとして占有する全空間断面積に対して素線の絶縁層部分を除く導体部体積が50%を超えないような構成にすると近接作用による高周波抵抗の増大を抑えることができ、この比率が50%を超えると近接作用による高周波抵抗が著しく増大してくるという結果が得られた。これにより、近接作用を考慮した設計がしやすくなるという効果が得られる。
【0034】
また、実施例1および参考例1の効果は、銅鍋やアルミニウム鍋のような40〜100kHzの高周波電流で被加熱体を誘導加熱する場合に特に有効である。
【0035】
なお、実施例1および参考例1は誘導加熱装置の例として誘導加熱調理器にて説明したが、その他各種誘導加熱装置においても同様の効果が得られる。
【0036】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、表皮効果および近接作用の影響を少なくし、高周波電流に対するコイル抵抗を減少させた加熱コイルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1における誘導加熱調理器に用いる加熱コイルの集合線の断面図
【図2】同誘導加熱調理器の構成断面図
【図3】同誘導加熱調理器に用いる加熱コイルの他の例における集合線の断面図
【図4】同誘導加熱調理器に用いる加熱コイルの他の例における集合線の断面図
【図5】本発明の参考例1における誘導加熱調理器に用いる加熱コイルの集合線の断面図
【図6】同誘導加熱調理器に用いる加熱コイルの他の例における集合線の断面図
【図7】素線の構成断面図
【図8】本発明の参考例1における誘導加熱調理器に用いる加熱コイルの他の例の集合線の断面図
【符号の説明】
3 加熱コイル
6、9、11、12、14 集合線
7 断面積の小さい素線
8 断面積の大きい素線
10、13、15 上位集合線
16、18 コイル導線
17 絶縁体
22 接着層(接着部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】断面積の異なる素線を集合したコイル導線を巻回した加熱コイルを備えた誘導加熱装置。
【請求項2】コイル導線を巻回してなる加熱コイルに高周波電流を流して被加熱体を誘導加熱するものにおいて、コイル導線を予め断面積の異なる素線もしくは断面積の異なる素線からなる集合線を撚り合わせたものをさらに複数撚り合わせるという撚り合わせを複数回行う多段階重ね撚り構造とした誘導加熱装置。
【請求項3】コイル導線を予め第1の断面積からなる素線もしくは第1の断面積からなる素線を用いた集合線の周囲に第1の断面積と異なる第2の断面積からなる素線もしくは第2の断面積からなる素線を用いた集合線を撚り合せて集合線を形成する構成とした請求項1または2に記載の誘導加熱装置。
【請求項4】加熱コイルに40〜100kHzの高周波電流を流して被加熱体を誘導加熱する構成とした請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は誘導加熱装置に関し、特に、高周波電流による損失を低減した加熱コイルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、誘導加熱装置の加熱できる金属は透磁率が高い鉄系のものだけであったが、近年、鉄以外の銅やアルミニウムといった金属の加熱も望まれている。とりわけ、加熱装置を調理器に応用した誘導加熱調理器は、近年鉄鍋以外に銅鍋やアルミニウム鍋なども使いたいという要望が高くなってきた。ところで、銅鍋やアルミニウム鍋を誘導加熱するには、透磁率が低いため鉄鍋に適した20〜30kHzよりも高い40〜100kHzの高周波電流を加熱コイルに流さなければならない。しかるに、周波数が高くなればなるほど、いわゆる表皮効果により高周波電流が導線の表面付近だけを流れるようになるため実効抵抗ははなはだしく増大する。そのため、表面積を増やし実効的に抵抗を減少する方法として、導線の径を細くし、例えば直径0.1mm以下の導線を数本ないし数十本束ねて用いる方法が行われてきた。しかし、この方法では、表皮効果による実効的な抵抗を下げることができても、導線を多数本用いているために近接作用が顕著となり必ずしも十分に抵抗を低減することができなかった。ここでいう近接作用とは、近接した導体に電流が流れるときに、磁界を介して相互に影響を与えあって、電流分布に偏りが生じる現象であり、導線表面の実効的な抵抗増大となる。近接作用は高周波電流の向きが導線間で揃っているほど、導線間の間隔が小さいほど大きくなる。
【0003】
前記課題を解決する方法としては、例えば、特公平7−118377号公報に記載されているようなものがあった。同公報では、加熱コイルのコイル導線を、素線を束ねた集合線をさらに集合させる多段階集合構造と成すとともに、すくなくとも1の段階の集合線は編み上げにより形成することにより、集合線の向きが不揃いとなるとともに、相互に密着しなくなり、これにより近接効果を抑制できて加熱コイルの高周波電流に対するコイル抵抗を減少させ得るというものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の構成では、加熱コイルの高周波電流に対するコイル抵抗を減少させることができるが、誘導加熱の効率をさらによくするためには、さらに高周波電流に対するコイル抵抗を低減する必要があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、近接作用の影響を少なくし、加熱コイルの高周波電流に対するコイル抵抗を減少させ、加熱コイルの自己発熱が小さく加熱効率の良い誘導加熱装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記従来の課題を解決するために、本発明の誘導加熱装置は断面積の異なる素線からなる集合線を用いたコイル導線を巻回した加熱コイルを用いる構成とした。この構成により、断面積の大きい素線が断面積の小さい素線の間に入ることで、断面積の小さい素線と断面積の小さい素線との間の空間を広げることができ、近接作用による高周波抵抗の増大を低減できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、断面積の異なる素線を集合したコイル導線を巻回した加熱コイルを備える構成とすることにより、断面積の大きい素線が断面積の小さい素線の間に入ることで、断面積の小さい素線と断面積の小さい素線との間の空間を広げることができ、近接作用による高周波抵抗の増大を低減でき、加熱コイルの自己発熱が小さくし、加熱効率を高めることができる。つまり、断面積の小さい素線は断面積の大きい素線に比べて、断面積当たりの高周波抵抗が小さく、断面積の小さい素線を主として高周波電流は流れることになる。一方、高周波電流の流れにくい断面積の大きい素線は、断面積の小さい素線間の空間を広げ、断面積の小さい素線どうしが近接作用によって高周波抵抗が増大することを低減できる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、コイル導線を巻回してなる加熱コイルに高周波電流を流して被加熱体を誘導加熱するものにおいて、コイル導線を予め断面積の異なる素線もしくは断面積の異なる素線からなる集合線を撚り合わせたものをさらに複数撚り合わせるという撚り合わせを複数回行う多段階重ね撚り構造とした。これにより、断面積の大きい素線が断面積の小さい素線の間に入ることで、断面積の小さい素線と断面積の小さい素線との間の空間を広げることができ、近接作用による高周波抵抗の増大を低減でき、加熱コイルの自己発熱が小さくし、加熱効率を高めることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、特に、請求項1または2に記載に構成において、コイル導線を予め第1の断面積からなる素線もしくは第1の断面積からなる素線を用いた集合線の周囲に第1の断面積と異なる第2の断面積からなる素線もしくは第2の断面積からなる素線を用いた集合線を撚り合せて集合線を形成する構成とした。これにより、断面積の大きい素線が断面積の小さい素線の間にバランスよく入ることで、断面積の小さい素線と断面積の小さい素線との間の空間を安定して広げることができ、近接作用による高周波抵抗の増大を安定して低減でき、加熱コイルの自己発熱が小さくし、加熱効率を高めることができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、特に、請求項1〜3に記載の構成において、加熱コイルに40〜100kHzの高周波電流を流して被加熱体を誘導加熱する構成としたことにより、銅鍋およびアルミニウム鍋に適したものにすることができる。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の実施例については、誘導加熱装置の例として誘導加熱調理器をあげ、図面を参照しながら説明する。
【0012】
(実施例1)
本実施例の特徴は、断面積の異なる素線を集合してコイル導線を作製し、このコイル導線を巻回して加熱コイルを設けたことを特徴としている。前述したように、銅鍋やアルミニウム鍋のように透磁率の低い加熱体を加熱するために40〜100kHzの高周波電流を加熱コイルに流すと、いわゆる表皮効果により加熱コイルの実効抵抗は増大する。そこで表皮効果の影響を低減するために断面積の小さい素線を用いるわけであるが、断面積の小さい素線を用いると巻線が密に、すなわち占有率が向上し素線間の実効的な間隔が小さくなり、近接作用による抵抗増大が顕著となる。本発明では、断面積の小さい素線を多く用いることにより表皮効果を低減するとともに、断面積の小さい素線と断面積の大きい素線とを混在させることにより、断面積の小さな素線間の間隔が実質的に大きくなり、近接作用による抵抗の増大を抑止することができ、加熱コイルの高周波抵抗を実質的に小さくし、加熱コイルの自己発熱を低減し、加熱効率を良くすることができる。以下、図面を用いて説明する。
【0013】
まず、誘導加熱調理器の概略構成について図2を用いて説明する。1は誘導加熱調理器の外郭を構成する本体、2は本体1上に設けたトッププレート、3は本発明に関わるコイル導線を用いて巻回して作製した加熱コイル、4は加熱コイル3を制御する制御部であり、5は加熱コイル3に対応してトッププレート2に設けた加熱部に載置した鍋等の加熱体である。この構成において、加熱コイル3に高周波電流を流すと磁束が発生し、この磁束の渦電流損による発熱により加熱体5が加熱される。
【0014】
以下、本実施例におけるコイル導線の構成について説明する。図1は本発明の実施例1における誘導加熱調理器に用いる加熱コイルの集合線の断面図である。図1において、集合線6は、断面積の小さい素線7、例えば直径0.05mmの素線と、断面積の大きい素線8、例えば直径0.1mmの素線とを混在させて、これを束ねまたは撚り合わせて集合したものである。図1では、表皮効果を低減するために用いた断面積の小さい素線7の近接作用を低減するために、断面積の小さい素線7と断面積の大きい素線8とを無作為に混在させた状態を示している。これにより断面積の小さい素線7間の実効的な間隔を大きくすることができる。このように、断面積の大きい素線8の間に断面積の小さい素線7を必ず介在させるようにして断面積の小さい素線7間の間隔を実効的に大きくなるようにすると近接作用を低減できる。また、断面積の小さい素線7どうしおよび断面積の大きい素線8どうしが偏らないようにするとさらに効果的である。
【0015】
このようにして得られた集合線を第1段階として数束撚り合わせて上位集合線とし、さらに必要に応じて第2段階としてこの上位集合線を数束撚り合わせ高次の集合線としていく。このように上位集合線を複数回撚り合わせる多段階重ね撚り構造としたコイル導線を巻回して加熱コイルを作製すると、40〜100kHzの高周波電流を流しても近接作用によって加熱コイルの高周波抵抗が増大することを抑制でき、加熱コイルの自己発熱を低減し、加熱効率のよい加熱コイルを得る事ができる。つまり、直径0.05mmの素線と直径0.1mmの素線とを本数調整により断面積を同じにした場合、高周波抵抗は、直径0.05mmの素線の方が小さくなる。したがって、直径0.05mmの素線と直径0.1mmの素線とが混在する場合には、直径0.05mmの素線を主に高周波電流が流れ、直径0.1mmの素線にはあまり流れなくなる。ここで、直径0.1mmの素線が直径0.05mmの素線の間に入ることで、直径0.05mmと直径0.05mmとの空間を広げ、近接作用で加熱コイルの高周波抵抗を増大することを防止することができる。
【0016】
図3は本発明の実施例1における誘導加熱調理器に用いる他の例を示す加熱コイルの集合線の断面図である。図3において、断面積の小さい素線7を断面積の大きい素線8の周囲に、例えば0.05mmの素線9本を0.1mmの素線の周囲に配し、これを集合線9として撚り合わせている。さらにこの集合線9を撚り合わせ上位集合線10を形成している。このようにすることにより、バランス良く断面積の小さい素線7間の実効的な間隔を広げることができるので、近接作用による抵抗の増大をバランス良く抑えることができる。さらに必要に応じて、上位集合線10を撚り合わせさらに上位集合線とし、さらに必要に応じてこの工程を繰り返すことにより多段階重ね撚り構造としたコイル導線を得ることができる。
【0017】
また、図4は本発明の実施例1における誘導加熱調理器に用いる他の加熱コイルの集合線を示す断面図である。図4において、断面積の小さい素線7を撚り合わせ集合線12とし、断面積の大きい素線8を撚り合わせた集合線11の周囲に配し、これらを撚り合わせて上位集合線13としている。例えば、図において、0.1mmの断面積の大きい素線を4本より合わせ集合線とし、その周囲に0.05mmの断面積の小さい素線を7本撚り合わせた集合線を8束配して撚り合わせ上位集合線としている。このようにすることにより、バランス良く断面積の小さい素線間の実効的な間隔を広げることができるので、近接作用による高周波抵抗の増大を安定して抑えることができる。
【0018】
なお、本実施例1においては図3、図4に示すように断面積の大きい素線の周囲に断面積の小さい素線を配置したが、逆に断面積の小さい素線の周囲に断面積の大きい素線を配置しても良い、要はバランス良く断面積の小さい素線と断面積の大きい素線とを配置すれば良い。
【0019】
(参考例1)
本実施例は細い素線を撚り合わせた集合線を複数よりあわせたものをさらに複数撚り合わせる工程を必要に応じて複数回行って構成される多段階重ね撚り構造を有するコイル導線に関し、特に、コイル導線もしくは集合線の少なくとも一部に絶縁体を配し、線間の実効的な距離を大きくし近接作用による抵抗の増大を抑制したものである。以下図面により説明する。
【0020】
図5は、本発明の参考例1における誘導加熱調理器のコイル導線の断面図である。図において、細い素線、例えば直径0.05mmの素線60本を束ねた集合線14を7束撚り合わせこれを上位集合線15とし、さらにこの上位集合線15を3束撚り合わせ多段階重ね撚り構造のコイル導線16としている。このコイル導線16に熱を加え、コイル導線16自体に有している揮発成分を低減した後、コイル導線16の外周の少なくとも一部に絶縁体17を設ける構成としている。この構成のコイル導線16を巻回して加熱コイルを作製したとき、コイル導線16間の少なくとも一部には絶縁体が存在するので、コイル導線16間の間隔が大きくなり、ひいては素線間の間隔が大きくなるので近接作用による高周波抵抗の増大を抑制することができる。また、コイル導線16の全体に絶縁体を設ける構成にすると、巻回したときコイル導線16間の全体の絶縁強度が増加し信頼性を高めることができる。また、コイル導線16の巻回したターン間の電圧差は大きいため、結果として絶縁体17をターン間に設けるこの方式は絶縁の信頼性が高い。さらに、本参考例のように素線の直径が0.05mm程度になると素線自体の絶縁層を厚くすることが製造的に困難になりコスト高となる。したがって、この方式はコイル素線の直径が小さいもの(0.1mm以下のもの)を使用する場合に、特に絶縁の信頼性を確保し、低コスト化を実現するのに優れている。
【0021】
また、図6は本参考例における誘導加熱調理器の他のコイル導線を示す断面図である。図6では、上位集合線15に熱を加え、上位集合線15自体に有している揮発成分を低減した後、上位集合線15外周の少なくとも一部を絶縁体17で覆う構成としている。そして絶縁体17で覆った上位集合線17を3束撚り合わせてコイル導線18としている。この構成では上位集合線15間の少なくとも一部には絶縁体が存在するので、上位集合線15間の間隔が大きくなり、ひいては素線間の間隔が大きくなるので近接作用による抵抗の増大を抑制することができる。また、上位集合線15の全体に絶縁体を設ける構成にしてコイル導線18を作製しておくと、巻回したときコイル導線18間に絶縁体が存在するので全体の絶縁強度が増加し信頼性を高めることができる。
【0022】
コイル導線16に絶縁体を設ける方法としては、コイル導線16にテープ、または糸状体を巻回しても良いし、巻回時にフイルム状の絶縁体を挟み込むようにしても良い。また、液状物質を塗布し硬化するような方法を用いても良い。
【0023】
絶縁体としては耐熱性を有する無機系としてガラス繊維、マイカ、有機系としてフッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などからなるテープまたはフイルムなどが用いられる。これらのうちガラステープは低価格であり、作業性が良いため適している。さらにガラステープは加熱コイルを作製後、樹脂を含浸し加熱コイル装置の形状を安定化するとき、樹脂が透過するので樹脂を内部まで含浸するのに適している。
【0024】
樹脂含浸工程を省略する方法としては、図7に示す自己融着線を用いる方法が一般的に行われている。すなわち、導体19の周囲に絶縁層20を設けさらにその外側に融着層21を設けた素線を用いて加熱コイルを作製し、その後加熱することにより融着層21を溶融固化することにより、素線間を固着して加熱コイルの形状を安定に保持できるようにする方法である。
【0025】
本参考例ではコイル導線の外周もしくは上位集合線の外周に絶縁体を設けているので、この絶縁体を利用することにより素線の融着層21を用いないで加熱コイルの形状を安定に保持するようにすることができる。すなわち、絶縁体としてポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂を用い、加熱コイルを作製の途中段階において、もしくは加熱コイルを巻回後、熱可塑性樹脂を加熱して溶融させ固化させることにより、絶縁体と絶縁体あるいは絶縁体と素線とを固着させ加熱コイルの形状を安定化させることができる。また、絶縁体を融点の異なる2種類の樹脂から構成し、融点の低い樹脂を融点の高い樹脂の外側に構成することで加熱接着性を向上することができる。例えば、絶縁体にフッ素樹脂を用い、外側に融点の低いフッ素樹脂(ETFEやFEP)を用い、内側に融点の高いフッ素樹脂(PFA)を用いると安定した絶縁性と加熱接着性を向上させることができる。
【0026】
さらに、絶縁体として未硬化もしくは半硬化のゴムまたは熱硬化性の樹脂を用い、加熱コイルを作製の途中段階において、もしくは加熱コイルを巻回後、加熱固化させることにより、絶縁体と絶縁体あるいは絶縁体と素線とを固着させ加熱コイルの形状を安定化させることができる。なお、ゴムとしてはシリコン系、フッ素系などのものが、また、熱効果樹脂としてはエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などが用いられる。
【0027】
また、絶縁体として未硬化もしくは半硬化のゴムまたは樹脂、特に半硬化のゴムまたは樹脂を織布もしくは不織布に塗布もしくは含浸し、前述のように加熱硬化させることにより加熱コイルの形状を安定化させることができる。特にテープ状の織布もしくは不織布を用いた場合、集合線もしくはコイル導線の外周の一部または全体を容易に巻回できるので取り扱いが容易であり、かつ安定した絶縁層を設けることができる。なお、ゴムまたは樹脂は上述のものと同種のものが一般に用いられる。
【0028】
また、図8に示すように予め熱を加えコイル導線16自体に有している揮発成分を低減した後、コイル導線16の外周に絶縁体17を設け、さらにその外側に接着層22を設けるようにしてもよい。ここでいう接着層は融着層を含む。この構成のコイル導線16を巻回後、加熱することによりコイル導線とコイル導線とが固着し形状の安定した加熱コイルを得ることができる。
【0029】
この他、熱収縮テープを用いてもよい。すなわち、上位集合線もしくは/およびコイル導線に熱収縮テープを巻回後、加熱することによりテープが収縮し上位集合線もしくは/およびコイル導線を締め付け、加熱コイルを安定にした形状にすることができる。
【0030】
以上述べた構成により、素線の融着層を用いないでも加熱コイルの形状を安定化することができる。ただし、融着層を用いないと素線間の間隔が小さくなり近接作用により抵抗増大が問題になることがある。このときは融着層に相当する分の絶縁厚みを増加すればよい。これにより素線の製造工程が簡略化され価格を低減することができる。
【0031】
なお、絶縁材料の耐熱性は設計により必要とする耐熱区分の中から選択すればよい。
【0032】
以上述べたように、本参考例によれば、近接作用による高周波抵抗の増大を抑制することができるとともに、絶縁性能が向上し信頼性を高めることができる。さらに接着性を有する絶縁構成にすることにより、コイル形状の安定性を図ることができる。また、コイル導線や上位集合線の揮発成分を熱で低減した後、コイル導線や上位集合線の外周に絶縁体を設けているので、使用時に加熱コイルに熱が加わった場合や絶縁体間の接着に際して加熱コイルに熱を加えた時、加熱コイル内部から発生する揮発成分が上位集合線と絶縁体との間やコイル導線と絶縁体との間に溜ることがなくなり、揮発成分が加熱コイルを変形させることを防止できる。
【0033】
なお、実施例1および参考例1で述べたように、近接作用による高周波抵抗の増大を抑制するために、素線の断面積を大きくしたり、上位集合線またはコイル導線に絶縁体を設けたりすると効果的である。そこで、素線の断面積を変えたり、絶縁体の厚みおよび量を変えたりするなどの実験により加熱コイル全体での近接作用の影響を調べた。その結果、加熱コイルの外周に絶縁体を巻回したとき、外周の絶縁体を含まない絶縁体内の断面積、すなわち、加熱コイルとして占有する全空間断面積に対して素線の絶縁層部分を除く導体部体積が50%を超えないような構成にすると近接作用による高周波抵抗の増大を抑えることができ、この比率が50%を超えると近接作用による高周波抵抗が著しく増大してくるという結果が得られた。これにより、近接作用を考慮した設計がしやすくなるという効果が得られる。
【0034】
また、実施例1および参考例1の効果は、銅鍋やアルミニウム鍋のような40〜100kHzの高周波電流で被加熱体を誘導加熱する場合に特に有効である。
【0035】
なお、実施例1および参考例1は誘導加熱装置の例として誘導加熱調理器にて説明したが、その他各種誘導加熱装置においても同様の効果が得られる。
【0036】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、表皮効果および近接作用の影響を少なくし、高周波電流に対するコイル抵抗を減少させた加熱コイルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1における誘導加熱調理器に用いる加熱コイルの集合線の断面図
【図2】同誘導加熱調理器の構成断面図
【図3】同誘導加熱調理器に用いる加熱コイルの他の例における集合線の断面図
【図4】同誘導加熱調理器に用いる加熱コイルの他の例における集合線の断面図
【図5】本発明の参考例1における誘導加熱調理器に用いる加熱コイルの集合線の断面図
【図6】同誘導加熱調理器に用いる加熱コイルの他の例における集合線の断面図
【図7】素線の構成断面図
【図8】本発明の参考例1における誘導加熱調理器に用いる加熱コイルの他の例の集合線の断面図
【符号の説明】
3 加熱コイル
6、9、11、12、14 集合線
7 断面積の小さい素線
8 断面積の大きい素線
10、13、15 上位集合線
16、18 コイル導線
17 絶縁体
22 接着層(接着部)
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