JP2003147069A - 芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物 - Google Patents

芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物

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JP2003147069A
JP2003147069A JP2001348660A JP2001348660A JP2003147069A JP 2003147069 A JP2003147069 A JP 2003147069A JP 2001348660 A JP2001348660 A JP 2001348660A JP 2001348660 A JP2001348660 A JP 2001348660A JP 2003147069 A JP2003147069 A JP 2003147069A
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aromatic
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Koushirou Yokota
耕史郎 横田
Hiroshi Yatani
広志 八谷
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Asahi Kasei Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 芳香族ポリカーボネートと炭素繊維からなる
組成物の耐衝撃性、高強度、高流動性及び低金型汚染性
を改善する。 【解決手段】 分子中に、特定の構造をもつエステル基
を0.015〜0.5wt%含有し、重量平均分子量が
10,000〜30,000である芳香族ポリカーボネ
ート100質量部と炭素繊維5〜200質量部とからな
る芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は芳香族ポリカーボネ
ートおよび炭素繊維とからなる芳香族ポリカーボネート
系樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、成形性と機械的
強度に優れ、金型汚染が少ない芳香族ポリカーボネート
系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】芳香族ポリカーボネートは、耐熱性や機
械的強度が優れた樹脂であることからエンジニヤリング
プラスチックとして広く使用されている。そして、その
優れた性質を利用して、種々の樹脂や充填剤とブレンド
された樹脂組成物が知られている。例えば、炭素繊維や
ガラス繊維を添加することにより、芳香族ポリカーボネ
ートの機械的強度、耐熱性、硬度、寸法安定性、耐応力
亀裂性などの向上を図る試みがなされている。なかで
も、炭素繊維は、ポリカーボネートとの複合材料として
しばしば用いられるガラス繊維に比べて一般にかなり高
価ではあるが、より高い機械的強度が得られるという特
徴があり、近年使用量が増加している。
【0003】一方、芳香族ポリカーボネートの重要な用
途の一つである事務機器、電子機器の分野では、近年小
型化が急速に進み、ハウジング、シャーシ等に高強度薄
肉成形品への応用が試みられている。しかし、それらの
薄肉成形品を加工するためには樹脂の流動性を高く維持
しなければならないところ、上記の炭素繊維を配合した
芳香族ポリカーボネート樹脂は一般に流動性が低下して
しまうという欠点や衝撃強度が極端に低下してしまうと
いう問題点があった。
【0004】この炭素繊維強化ポリカーボネート樹脂の
衝撃強度を改良するために種々の提案がなされている。
例えば、ポリエチレン(特開昭57−94040号公
報)やカルボン酸無水物グループおよび/またはカルボ
キシルグループを有するオレフィン系ワックスおよびオ
レフィン系重合体(特開平6−240149号公報)、
あるいはゴム成分(特公昭53−12946号公報)を
ブレンドする方法が知られている。しかしながら、これ
らの方法では、耐衝撃性は改良されるるものの、外観不
良が発生したり弾性率が低下するという問題点があっ
た。
【0005】また、この炭素繊維強化ポリカーボネート
樹脂の流動性を改良するために、ビニル系樹脂、エステ
ル系樹脂などの第3成分を混合して樹脂組成物の性状を
改良する方法(特許第2717339号)などが提案さ
れている。これら従来技術ではワックスの添加によって
流動性を改善したり、ウレタンの添加によって機械的強
度を高める試みがなされてきた。しかしながら、低分子
量成分の添加や熱安定性の低いウレタンの添加は、高温
での成形中に金型を汚染することから、頻繁な金型清掃
が必要となり、作業性、生産性の点から好ましくなかっ
た。また、金型を汚染する黄変物や黒変物あるいはいわ
ゆる「ヤケ」などが外観不良の原因になるなどの問題も
あった。したがって、このような状況下にあって、耐衝
撃性、機械的強度、成形性に優れ、金型汚染の少ない芳
香族ポリカーボネートと炭素繊維とからなる組成物が強
く求められていたのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、芳香族ポリ
カーボネートと炭素繊維とからなる組成物の耐衝撃性、
高強度、高流動性及び低金型汚染の全ての特性を改善し
た芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を提供すること
を課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために、ポリカーボネートの分子構造と上記
組成物の機械的物性と成形性及び金型汚染との関係につ
いて鋭意研究を重ねた結果、芳香族ポリカーボネートと
して分子中に特定のエステル構造を特定量含有する芳香
族ポリカーボネートを用いることで、従来の技術で説明
したような多種多様な添加剤や他の樹脂を用いることな
く、耐衝撃性、機械的強度、成形性に優れた芳香族ポリ
カーボネートと炭素繊維からなる樹脂組成物を得ること
ができるという驚くべき事実をまず見い出し、本発明の
端緒を得た。
【0008】従来エステル交換法では、一般に重合過程
で副反応としてコルベ−シュミット型反応が進行して、
下記式(6)の構造が生成することから、耐衝撃性が大
きく低下することが知られていた(本間精一著 ポリカ
ーボネート樹脂ハンドブック1992年 日刊工業新聞
社刊 以下 ハンドブックと略記する)のであるが、本
発明のように特定のエステル構造を特定量有するポリカ
ーボネートを用いることで、しかも、それが極めて微量
であっても、耐衝撃性をはじめとして、高強度、高流動
性の全ての特性が改善されることはまったく予想すらで
きないことであった。
【0009】
【化6】
【0010】しかもさらに驚くべきことには、この樹脂
組成物を実際にOA機器向け金型を用いて成形して評価
したところ、成形品として優れた性能が得られたのみな
らず、成形時の金型汚染が非常に少ないことを見出し
た。金型汚染が少ないという特徴は、定期的な金型清掃
が少なくて済み、作業性、生産性の点から極めて好まし
いのみならず、金型を汚染する黄変物や黒変物あるいは
いわゆる「ヤケ」などが少ないため外観不良も低減し、
美観に優れ不純物の少ない高品質な成形品を高い生産性
で製造できるという実用上極めて重要な利点を有する。
【0011】すなわち、ある特定のエステル基の構造を
特定の割合で含有する芳香族ポリカーボネートが持つ優
れた特性を利用して、特定の分子量範囲の芳香族ポリカ
ーボネートと炭素繊維の樹脂組成物において、耐衝撃
性、高強度、高流動性、低金型汚染のすべての特性に優
れた樹脂組成物を得ることに成功し、本発明を完成させ
るに至った。すなわち本発明は、 1.上記式(1)で表される繰り返し単位を持つ芳香族
ポリカーボネートの分子中に、主鎖に直接結合したエス
テル基を0.015〜0.5wt%含有し、重量平均分
子量が10,000〜30,000である芳香族ポリカ
ーボネート100質量部と、炭素繊維5〜200質量部
とからなることを特徴とする芳香族ポリカーボネート系
樹脂組成物に係る。
【0012】2.該芳香族ポリカーボネート分子中の主
鎖に直接結合したエステル基が、上記式(2)〜式
(5)の各式で表される特定の構造のエステル基から選
ばれた1種または2種以上のエステル基であることを特
徴とする上記1記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組
成物に係る。 3.該芳香族ポリカーボネートのフェノール性水酸基末
端(以下OH末端と略記する)の割合が、該芳香族ポリ
カーボネートの重量平均分子量に対して0.004〜
0.17wt%であることを特徴とする上記1記載の芳
香族ポリカーボネート系樹脂組成物に係る。 4.該芳香族ポリカーボネートが芳香族ジヒドロキシ化
合物と炭酸ジエステルからエステル交換法で製造された
ものであることを特徴とする上記2記載の芳香族ポリカ
ーボネート系樹脂組成物に係る。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、上記式(1)
で表される繰り返し単位からなる主鎖を有する。式
(1)中、Arは、二価の炭素数5〜200の芳香族基
であり、例えば、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレ
ンやピリジレンであり、それらは非置換又は置換されて
いてもよく、あるいはまた、下記式(7)で表されるも
のが挙げられる。
【0014】
【化7】
【0015】(式中、Ar1及びAr2は、それぞれアリ
ーレン基である。例えばフェニレン、ナフチン、ビフェ
ニレン、ピリジレン等の基を表し、それらは非置換又は
置換されていてもよく、Zは下記式(8)で表されるア
ルキレン基または置換アルキレン基である。)
【0016】
【化8】
【0017】(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ
独立に水素原子、C1〜C6低級アルキル基、C5〜C10
シクロアルキル基、C6〜C30アリール基、C7〜C31
ラルキル基であって、場合によりハロゲン原子、C1
10アルコキシ基で置換されていてもよく、kは3〜1
1の整数であり、R5及びR6は、各Xについて個々に選
択され、お互いに独立に水素原子、またはC1〜C6低級
アルキル基、C6〜C3 0アリール基であって、場合によ
りハロゲン原子、C1〜C10アルコキシ基で置換されて
いてもよく、Xは炭素原子を表す。) また、下記式(9)で示される二価の芳香族基を共重合
体成分として含有していても良い。
【0018】
【化9】
【0019】(式中、Ar1、Ar2は前記と同じ。Z´
は 単結合、または、−O−、−CO−、−S−、−S
2−、−CO2−、−CON(R1)−(R1は前記と同
じ)等の二価の基である。) これら二価の芳香族基の具体例として は、下記式(1
0)および式(11)で表されるもの等が挙げられる。
【0020】
【化10】
【0021】
【化11】
【0022】(式中、R7及びR8は、それぞれ独立に、
水素原子、ハロゲン原子、C1〜C1 0アルキル基、C1
10アルコキシ基、C5〜C10シクロアルキル基または
6〜C30アリール基である。m及びnは1〜4の整数
で、mが2〜4の場合には各R7はそれぞれ同一でも異
なるものであってもよいし、nが2〜4の場合は各R 8
はそれぞれ同一でも異なるものであっても良い。) なかでも下記式(12)で表される構造を持つ樹脂が好
ましい一例である。
【0023】
【化12】
【0024】ポリマー末端の分子構造は、フェノール性
水酸基(OH末端)、アリールカーボネート基、アルキ
ルカーボネート基から選ばれた1種以上の末端基を結合
することができる。アリールカーボネート末端基は下記
式(13)で表され、例えば、式(14)で表されるも
のが例示できる。
【0025】
【化13】
【0026】(式中、Ar9は一価の炭素数6〜30の
芳香族基であり、芳香環は置換されていても良い。)
【0027】
【化14】
【0028】アルキルカーボネート末端基は下記式(1
5)で表され、例えば、式(16)で表されるものが例
示される。
【0029】
【化15】
【0030】(式中、R9 は炭素数1〜20の直鎖もし
くは分岐アルキル基を表す。)
【0031】
【化16】
【0032】本発明の組成物における芳香族ポリカーボ
ネートは、公知の方法で製造したものが使用できる。具
体的には、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボ
ネート前駆体(例えばホスゲン)を水酸化ナトリウム水
溶液及び塩化メチレン溶媒の存在下に反応させる界面重
合法(例えばホスゲン法あるいは溶液法 ハンドブッ
ク)、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル(例
えばジフェニルカーボネート)等を反応させるエステル
交換法(溶融法あるいはメルト法 米国特許55960
67号公報、米国特許5589664号公報、ハンドブ
ック)、ホスゲン法又はエステル交換法で得られた結晶
化カーボネートプレポリマーを固相重合する方法(特開
平1−158033号公報、特開平1−271426号
公報、特開平3−68627号公報、米国特許4948
871号公報、米国 特許5204377号公報)等の
方法により製造されたものが用いられる。
【0033】ここで使用される芳香族ヒドロキシ化合物
の代表例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、
4,4'-ビフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)
メタン、1,1- ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタ
ン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン
(以下ビスフェノール−Aという)、2,2-ビス(3-
メチル-4-ヒド ロキシフェニル)プロパン、2,2-ビ
ス(3,5-ジメ チル-4-ヒドロキシフェニル)プロパ
ン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,
1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタ
ン、 1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキ
サン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5
-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキ
シフェニル)ペンタン、4,4'-(m-フェニレンジイソ
プロピリデン)ジフェノール、4,4'-(p-フェニレン
ジイソプロピリデン)ジフェノール、9,9-ビス(4-
ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒ
ドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4'-ジヒ
ドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)
サルファイドおよびビス (4-ヒドロキシフェニル)ス
ルホンなどが挙げられる。特に好ましいのは2,2−ビ
ス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノー
ル−A)を主成分とするポリカーボネートである。フェ
ニル基がハロゲンで置換された、例えば、臭素化ビスフ
ェノール−A、ビスフェノール−Aのプロパン部分がほ
かの脂肪族アルカン、脂環式アルカンになっている芳香
族ヒドロキシ化合物等も好適に用いられる。
【0034】カーボネート前駆体としては、カルボニル
ハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート
などが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカー
ボネート、二価フェノールのジハロホルメートなどが挙
げられる。カーボネート前駆体としては、溶液法ではホ
スゲンが、エステル交換法ではジフェニルカーボネート
が好ましく用いられる。また、芳香族ヒドロキシ化合物
の一部を、本発明の効果が損なわれない範囲において、
フェノール性水酸基を3つ以上持つ多官能芳香族ヒドロ
キシ化合物で置き換えて製造した一般に分岐ポリカーボ
ネートと呼ばれる芳香族ポリカーボネート樹脂を用いる
こともできる。
【0035】さらに、後述するように、ビスフェノール
−Aの一部を、カルボキシル基が芳香族基に結合してい
る芳香族ヒドロキシ化合物で置き換えて共重合させた芳
香族ポリカーボネートも好ましく用いられる。芳香族ヒ
ドロキシ化合物は単独で用いてもまたは2種以上を併用
してもよく、また芳香族ポリカーボネート樹脂は フェ
ノール性水酸基を3つ以上持つ多官能芳香族ヒドロキシ
化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂(米国特
許 4677162号公報、4562242号公報、ド
イツ 国特許3149812号公報)であっても、2種
以上の芳香族ポリカーボネート樹脂の混合物であっても
よい。
【0036】芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するに
当っては必要に応じて適当な分子量調節剤、分岐剤、酸
化防止剤、反応を促進するための触媒なども使用でき
る。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分
子量は10,000〜30,000の樹脂が必要であ
る。重量平均分子量が10,000を下回ると、本発明
の効果を以ってしても補えない程度まで衝撃強度が低下
してしまううえに、いわゆるオリゴマー成分による金型
汚染の悪化も顕著となってしまい好ましくない。重量平
均分子量が30,000を超える場合には樹脂の流動性
が極端に低下してしまい、炭素繊維を混合したために引
き起こされる流動性の低下とあいまって事実上成形が不
可能となり、やはり好ましくない。
【0037】該芳香族ポリカーボネートの分子量分布に
ついては特に限定はなく、ユニモーダルあるいはバイモ
ーダルな分子量分布を持つ樹脂、いくつかの分子量分布
のピークを持つ樹脂、あるいは所望の分子量分布を持つ
ようそれらを混合した樹脂も用いることもできる。本発
明者らが詳細に検討したところ、本発明の効果を得るう
えで、エステル交換法で該芳香族ポリカーボネートを得
る方法が好ましく、さらに、不活性ガスを原料であるジ
フェニルカーボネートやビスフェノール−A、あるいは
これらをすこし重合させたオリゴマーに吸収させたうえ
で、内部にガイドを有する重合器を用いてこれら原料や
オリゴマーをガイドに沿わせて落下させながら重合させ
る方法(特開平7−2925097号公報、特開平10
−251396公報、特開平10−324742号公
報)が特に好ましいことが判明した。
【0038】この理由はいまだ明らかではないのだが、
上記方法により製造された芳香族ポリカーボネートは分
子量分布が狭く、金型汚染の原因となる低分子量成分や
流動性を低下させる高分子量成分が少ないためと、本発
明者らは推定している。本発明で使用されるポリカーボ
ネートは、前記の式(1)で表される繰り返し単位を持
つ芳香族ポリカーボネートで、主鎖に直接結合したエス
テル基を含有する芳香族ポリカーボネートであり、当該
エステル基が前記の式(2)〜式(5)で示される構造
(以下 この構造をエステル分岐構造と略記する)を有
する芳香族ポリカーボネートが好ましい。そのなかで
も、主鎖構造が下記式(17)で、エステル基が下記式
(18)〜式(21)表される、エステル分岐構造を有
する芳香族ポリカーボネートが特に好ましい。
【0039】
【化17】
【0040】
【化18】
【0041】
【化19】
【0042】
【化20】
【0043】
【化21】
【0044】(式(18)〜式(21)中、XおよびY
は式(3)に準じる。) これらのエステル分岐構造は、芳香族ポリカーボネート
樹脂を250℃程度以上の高温状態に保持することで、
一般にフリース転移として知られる反応により、もとに
なる芳香族ポリカーボネートが変成して構成されたもの
と推定される。したがって、これらのエステル分岐構造
は、重合段階で芳香族ポリカーボネート樹脂が上記のよ
うな高温状態にさらされるエステル交換法により製造さ
れた芳香族ポリカーボネート樹脂に特徴的な構造と言う
ことができ、本発明の主たる構成要件に挙げられるもの
である。
【0045】しかしながら、ホスゲン法など他の方法に
より製造されて当該エステル分岐構造を持たないあるい
はほとんど持たない芳香族ポリカーボネート樹脂であっ
ても、上記理由により、当該エステル分岐構造を持つ芳
香族ポリカーボネートに変成したポリマーであれば良い
し、後に詳述するように、初めから相当するエステル分
岐構造を持ったモノマーを用いて本発明の芳香族ポリカ
ーボネート樹脂を得ても良い。
【0046】一般にプレポリマーと呼ばれる重量平均分
子量500〜2500程度の低重合物を用意しておき、
さらに一般に固相重合と呼ばれる重合方法に供して芳香
族ポリカーボネートを得る方法も良く知られているが、
当該エステル分岐構造によって特徴付けられる本発明の
芳香族ポリカーボネートを固相重合法から得ても良い。
上に挙げた方法を含めて、エステル交換法以外の種々の
芳香族ポリカーボネート製造方法によって当該ポリマー
を得ても、本発明の効果を有する芳香族ポリカーボネー
ト樹脂組成物をなんら差し支えなく得ることができる。
【0047】また、フリース転移は、紫外線などの照射
によって転移させても良く、光フリース転移とも呼ばれ
る。たとえば長期間屋外に暴露させて太陽光線などの照
射を受けさせ当該エステル分岐構造を持たせた芳香族ポ
リカーボネート系樹脂組成物も有用である。また、下記
式(22)で表される化合物で芳香族ジヒドロキシ化合
物の一部または全部を置き換えて重合させる方法も好ま
しく、具体的には、式(23)、式(24)、式(2
5)で例示されるサリチル酸誘導体化合物などが好まし
い。
【0048】
【化22】
【0049】(式中nは1か2で、Ar´は、nが1の
ときは三価、nが2のときは四価の炭素数5〜200の
芳香族基を示す。)
【0050】
【化23】
【0051】
【化24】
【0052】
【化25】
【0053】当該エステル分岐構造の含有割合は、エス
テル基のwt%として、もとになる芳香族ポリカーボネ
ート分子の重量平均分子量に対して、当該芳香族ポリカ
ーボネート分子に含まれる当該エステル構造−O(C
O)−の数の平均値にこの分子量を乗じた重量の百分率
で計算される。本発明におけるエステル分岐構造の割合
は、エステル基のwt%として下限は0.015wt%
であり、0.015wt%未満では本発明の効果を得ら
れない。
【0054】本発明におけるエステル分岐構造の割合
は、エステル基のwt%として上限は0.5wt%であ
る。エステル分岐構造の含有割合が大きくなると一般に
衝撃強度や引張伸度がわずかにではあるが低下する傾向
が見られるが、炭素繊維による強度向上効果はこの低下
を補って余りある優れた効果であり、エステル分岐構造
の含有割合の上限に関して制限する必要は無い。
【0055】また、式(22)で表される化合物でビス
フェノール−Aの一部または全部を置き換えて重合させ
ることにより当該エステル分岐構造を持った芳香族ポリ
カーボネートを得ようとする場合には、エステル分岐構
造の割合を請求項1の範囲を超えて幅広く自由に選択す
ることができる。しかしながら、上述したように、当該
エステル分岐構造を熱変成によって得るためには芳香族
ポリカーボネートを長時間高温にさらす必要があるた
め、エステル分岐構造の含有割合がエステル基のwt%
として0.5wt%を超える芳香族ポリカーボネート
を、熱変成のみによって、エステル分岐構造を全く持た
ない樹脂から得ようとする場合には、長時間の加熱によ
り樹脂が黄変したりいわゆるヤケが発生したりして、こ
れら黄変物やヤケが製品に混入して外観不良を生じせし
めたり金型汚染のもとになったりするため好ましくな
い。
【0056】また、式(22)で表される化合物で芳香
族ジヒドロキシ化合物の一部または全部を置き換えて重
合させることにより当該エステル分岐構造を持った芳香
族ポリカーボネートを得ようとする場合も、式(22)
で表される化合物を調達するための原料コスト、共重合
させるための付帯設備費用などの経済性まで勘案するな
らば、当該エステル基のwt%は0.5wt%以下が好
ましい。このエステル分岐構造の割合は、同等の効果を
例えば後述するような他の樹脂や添加剤によって得よう
とする場合に比べると極めて微量であり、これほど微量
のエステル分岐構造でも、該芳香族ポリカーボネートの
物性に著しく影響を与える理由については、いまだ推測
の域を出ないが、エステル分岐構造と炭素繊維の表面と
の相互作用が安定であるためと、本発明者らは推定して
いる。
【0057】エステル分岐構造の割合は、微量であって
も芳香族ポリカーボネートの物性に及ぼす影響は極めて
顕著であり、その割合の制御は非常に重要である。しか
しながら、制御するべきエステル分岐構造の割合の範囲
があまりに微量であるため、製造段階で所望のエステル
分岐構造の割合を持った芳香族ポリカーボネートを得ら
れない場合も危惧される。その場合は、エステル分岐構
造の割合の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート
を混合すれば良く、例えば、エステル交換法で製造され
たエステル分岐構造を比較的高い割合で持つ芳香族ポリ
カーボネート樹脂と、ホスゲン法などによって製造され
たエステル分岐構造を持たないあるいはほとんど持たな
い芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して、所望のエス
テル分岐構造の割合を持つ樹脂を得てもなんら差し支え
ない。
【0058】所望のエステル分岐構造の割合からずれて
しまった芳香族ポリカーボネートであれば、これを正確
に所望の割合に制御する方法としての熱変成は簡便で実
用的な方法であり、溶融した樹脂を撹拌しながら加熱す
る方法、溶融した樹脂を金網やワイヤーなどのガイドに
沿わせて自然落下させながら加熱する方法、芳香族ポリ
カーボネートのシートやフィルムを所定の温度に熱した
板や回転ドラムに押し当てる方法、金型を所定の温度に
熱して成形品を加熱する方法など種々の加熱方法を用い
ることができる。
【0059】加熱に際しては、窒素、二酸化炭素、アル
ゴン、ヘリウムなどの樹脂に対して不活性なガス、メタ
ン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレンなどの低
級炭化水素、炭素数5〜20の環状炭化水素、 炭素数
4〜18の直鎖または分岐鎖飽和炭化水素、または炭素
数4〜18の低度不飽和炭化水素、あるいは、これらの
混合物の存在下に行うことが好ましい。芳香族炭化水素
や含酸素化合物の存在下に行うことも好ましく、芳香族
化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチ
ルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、ジ
プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、メチルスチレン、
イソプロピルベンゼン、イソブチルベンゼン、シメン、
テトラメチルベンゼン、テルフェニルなどが挙げられ
る。含酸素化合物としては、テトラヒドロフラン、ジオ
キサン、アニソール、フェネトール、フランなどのエー
テル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケト
ン、メチルイソプロピルケトン、ペンタノンなどのケト
ン類などが挙げられる。
【0060】フロン、クロロメタン、塩化メチレン、ト
リクロロエタンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、ク
ロロベンゼンなどの芳香族ハロゲン化炭化水素類も用い
ることはできるが、高品質のポリマーを得るためには、
ハロゲンを含まない物質が好ましい。なお、これら物質
は必ずしもガス状で存在する必要はなく、例えば、加圧
条件下で液体で存在していても構わない。熱変成条件下
で超臨界状態になる物質は、熱伝導度が気体よりも優れ
液体とほぼ同等でより均一な加熱が期待でき、熱処理後
の乾燥工程も室温で液体の物質を用いた場合に比べて簡
略化できるため(NTS出版 超臨界流体利用技術 1
988年)、例えば超臨界状態の二酸化炭素などが加熱
媒体として好ましい。
【0061】250℃以上という高温でそれ自身が安定
であって、樹脂に対して実質的に不活性であれば、熱変
成温度条件下で液体状の物質も媒体として使用可能であ
り、炭化水素系やシリコン系の熱媒オイルなどが例示さ
れる。なお、実質的に酸素や水分を含むガスや液体や超
臨界流体は、芳香族ポリカーボネートの黄変や黒変をも
たらしたり、熱分解を促進するため好ましくない。加熱
用の金型、ドラム、鉄板なども、水分は除去し不活性ガ
スなどで置換しておくことが好ましい。
【0062】光フリース転移による変成も有効な方法で
ある。芳香族ポリカーボネートは紫外線領域に良好な吸
収を持つため、変成を目的とする場合は紫外線、特に短
波長紫外線が有効である。紫外線により変成した樹脂は
紫外線透過率が低下するため、表面が変成されるとそれ
以上内部への変成は進み難くなる。従って、表層のみ変
成させたい場合などに光フリース転移は好ましい方法で
ある。光フリース転移を行う場合も、酸素や水分が実質
的に存在しない条件下で行うことが前述した理由により
好ましく、減圧下あるいは真空中で行うことも同じ理由
で好ましい。酸素や水分が実質的に存在しない条件とし
ては、上述した熱変成の場合と同様であり、窒素、二酸
化炭素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス存在下、
低級炭化水素や芳香族炭化水素の存在下、樹脂に対して
不活性な液体中、あるいは超臨界状態の二酸化炭素など
が挙げられる。
【0063】光フリース転移を行う温度については特に
限定はなく、室温から樹脂が安定である350度程度の
高温まで幅広く取ることができる。加熱溶融させながら
光を照射して、フリース転移と光フリース転移を併用す
ることも可能である。光フリース転移を行う照射時間
は、光の強度、樹脂の温度、得ようとするエステル分岐
構造の割合などのさまざまな条件に大きく依存するた
め、一義的に決めることはできない。ある程度条件を振
って試行したうえで処理条件を決定すれば良い。
【0064】本発明の効果を得るには、該芳香族ポリカ
ーボネートのOH末端の割合を制御することが重要であ
る。本発明におけるOH末端の割合は、該芳香族ポリカ
ーボネート分子の重量平均分子量に対して、該芳香族ポ
リカーボネート分子中に含まれるOH末端の数の平均値
にこれの分子量を乗じた重量の百分率で計算される。O
H末端の割合の測定方法としては、一般にNMRを用い
て測定する方法(NMR法)や、チタンを用いて測定す
る方法(チタン法)や、UVもしくはIRを用いて測定
する方法が知られている。
【0065】芳香族ポリカーボネートのOH末端の割合
の調節は、エステル交換法によって芳香族ポリカーボネ
ートを製造する場合は、原料のジフェニルカーボネート
と芳香族ヒドロキシ化合物(たとえばビスフェノール−
A)のモル比を変えることによって容易に行うことがで
きる。例えばビスフェノール−Aと ジフェニルカーボ
ネートをエステル交換させる場合には、ポリカーボネー
トの末端は、ビスフェノール−Aに由来するフェノール
性残基またはジフェニルカーボネートに由来するフェニ
ル基である。従って、エステル交換反応の際に、ビスフ
ェノール−Aのモル比を高めると生成芳香族ポリカーボ
ネートにおいてOH末端の割合が高くなる。逆に、ビス
フェノール−Aのモル比を低めると生成芳香族ポリカー
ボネートにおいてOH末端の割合が低くなる。
【0066】溶液法によって芳香族ポリカーボネートを
製造する場合は、原料中または反応途中に少量のフェノ
ールやt−ブチルフェノールを加えることによりポリマ
ー末端をフェノールで封止(ヒドロキシル基が反応)し
ているため、一般にOH末端の割合はエステル交換法に
比べて小さく、およそ0.004wt%未満である。本
発明においては、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方
法について、OH末端の割合を容易に調整し得るために
上記エステル交換法が本発明の効果を得るうえで好まし
く、主たる構成要件に挙げられるものである。
【0067】本発明においては、芳香族ポリカーボネー
トのOH末端は、0.004〜0.17wt%と極わず
かあれば良く、好ましくは、0.008〜0.17wt
%である。これほど微量であっても、OH末端比率が当
該芳香族ポリカーボネートの物性に及ぼす影響は顕著で
あり、その制御は極めて重要である。OH末端比率が
0.004wt%より小さいときは 芳香族ポリカーボ
ネートと炭素繊維との成形品の耐衝撃性が低くなり好ま
しくない。OH末端比率が0.17wt%を超える芳香
族ポリカーボネート樹脂の場合、耐加水分解性が低下し
てしまうため好ましくない。
【0068】OH末端比率の影響は、極微量であっても
極めて顕著であるため、その制御は非常に重要である。
しかしながら、制御するべきOH末端比率の範囲があま
りに微量なために製造段階で所望の値に制御できなくな
る場合も危惧され、異なるOH末端比率を持つ2種類以
上の芳香族ポリカーボネートを混合することで所望の値
に調整する方法も工業的に重要な方法である。例えば、
エステル交換法でOH末端比率の比較的高い樹脂が得ら
れた場合、これをホスゲン法などにより得られたOH末
端比率の低い樹脂と混合して、所望のOH末端比率を持
つ樹脂を得てもなんら差し支えない。
【0069】これほど微量のOH末端でも、該芳香族ポ
リカーボネートの物性に著しく影響を与える理由につい
ては、いまだ推測の域をでないが、OH末端と炭素繊維
との相互作用が安定であるためと、本発明者らは推定し
ている。次に、本発明において使用する炭素繊維は、そ
の種類、形状共に特に限定されるものではないが、例え
ばアクリル系、レーヨン系、ピッチ系などの各種炭素繊
維、カーボンブラック、炭素フィラメント、炭素質、カ
ーボンナノチューブ等、幅広く使用することができ、ア
クリル系、ピッチ系いずれの炭素繊維も好ましく用いる
ことができる。これら炭素繊維は1種類でも、2種類以
上を混合しても使用できる。
【0070】これらの炭素繊維は、樹脂との接着性を高
める目的で、表面にポリマーをグラフトさせたものも好
ましく用いることができる。また、本発明における炭素
繊維は表面が酸化処理されたものも用いることができ
る。さらに、炭素繊維とポリカーボネート樹脂とのコン
パウンドを行う際、該繊維がばらばらになったり綿状に
なったりなどの作業性の悪さを改善するなどの目的もあ
って、炭素繊維をウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリ
ル樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂などで収束
させることも、本発明の効果を得る上で有効で、工業的
に重要な手段である。
【0071】例えば、具体的には、適当なフィラメント
数を有する実質的に乾燥した炭素繊維を、メチルエチル
ケトンに0.5〜5wt%溶解したポリウレタン樹脂溶
液に連続的に浸漬し、次いで80℃の熱風乾燥機に通し
て脱溶媒し、その後カッターで適当な大きさに切断する
ことによって得られる。これら炭素繊維の表面改質や収
束に用いられるオレフィン系樹脂やウレタン系樹脂は、
従来の技術の項で説明したように一般に耐熱性が低く金
型を汚染しやすいため、本発明の効果とは逆効果になっ
てしまうわけであるが、オレフィン系樹脂やウレタン系
樹脂の使用量は、炭素繊維の修飾に用いる場合は、ベー
スポリマーの改質に用いる場合に比べて圧倒的に少量で
あり(通常、炭素繊維に対して1wt%以下である)本
発明の障害となるものではない。
【0072】本発明において用いる炭素繊維は、金属コ
ートしたものも好適に用いることができる。これは、炭
素繊維に、公知のメッキ法および蒸着法などでニッケ
ル、銅、コバルト、銀、アルミニウム、鉄などおよびこ
れらの合金などの金属をコーティングしたものであり、
導電性、耐食性、生産性および経済性に優れたニッケ
ル、銅およびコバルトなどが好ましく使用される。ポリ
カーボネート樹脂に混合する炭素繊維において、繊維の
長さには特に限定はなく、また、一般に繊維と樹脂を押
出し機などで混合すると混合の過程で繊維が折れてしま
うことも知られており、繊維の長さを限定する必要性は
あまりないのであるが、作業性の観点から0.3〜10
mm、望ましくは3〜6mmが好ましい。かかる炭素繊
維の太さも特に限定はないのであるが、直径6〜20μ
mのものが一般に好ましく使用される。炭素繊維の断面
形状についても特に限定は無く、円形、まゆ型、ひょう
たん型、だ円型、円筒形など幅広く用いることができ
る。
【0073】炭素繊維強化芳香族ポリカーボネートにお
いては、炭素繊維の長さや太さのみならず、アスペクト
比(平均繊維長/繊維直径)が樹脂組成物の強度に大き
く影響することが知られているが、本発明の樹脂組成物
においても、通常一般に採用されている範囲のアスペク
ト比と同様3〜20程度のものが好ましく用いられ、5
〜10程度に制御することで高精度成形品を得ることも
できる。一般に、炭素繊維のアスペクト比は1に近づく
と成形性は良くなるが強度の向上効果が小さくなるため
好ましくなく、アスペクト比が大きいと強度は向上され
るものの、繊維の並んでいる方向とそれに垂直な方向で
の成形性が著しく異なるためにやはり好ましくないとさ
れている。しかしながら、異なるアスペクト比の炭素繊
維を適当な比率で混合して用いて強度の向上効果と良好
な成形性を両立させる方法も当該技術分野では良く知ら
れしばしば用いられるため(ハンドブック)、本発明に
おいてもアスペクト比を限定する必要は無い。
【0074】本発明の樹脂組成物において、芳香族ポリ
カーボネートと炭素繊維との配合比は、芳香族ポリカー
ボネート100質量部に対して、炭素繊維5〜200質
量部、好ましくは、10〜100質量部である。5質量
部未満の場合は本発明の効果が得にくく、200質量部
を超えると成形時の流動性が低下して加工性を阻害す
る。さらに本発明の樹脂組成物には、本発明の目的およ
び効果を損なわない限りにおいて、樹脂の混合時、成形
時に他の樹脂、添加剤、たとえば顔料、染料、炭素繊維
以外の強化剤や充填剤、難燃剤、耐熱剤、酸化劣化防止
剤、離型剤、耐候剤、光劣化防止剤、帯電防止剤、滑
剤、結晶核剤、可塑剤、流動性改良剤などを添加するこ
とができる。
【0075】他の樹脂としては、ポリエチレンテレフタ
レート(PET樹脂)、ポリブチレンテレフタレート
(PBT樹脂)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA樹
脂)、6−ナイロン、6、6−ナイロンなどのポリアミ
ド樹脂、ポリカプロラクトン、ポリエチレンなどのポリ
オレフィン樹脂、ポリ4フッ化エチレン(PTFE樹
脂)など、極めて幅広い種類の樹脂を添加することがで
きる。これら他の樹脂と該芳香族ポリカーボネート樹脂
の好ましい混合態様は芳香族ポリカーボネート樹脂との
ポリマーアロイであるが、他の樹脂が芳香族ポリカーボ
ネート中に微分散している組成物、芳香族ポリカーボネ
ートが他の樹脂中に微分散している組成物、サラミ状、
粒状、粒状凝集体、縞状などの様態で混合している組成
物であっても、当該炭素繊維と当該芳香族ポリカーボネ
ートが接触していて良好な接着性を発現し得る限りにお
いて、いかなる混合様態の組成物であっても用いること
ができる。その配合割合は、芳香族ポリカーボネート樹
脂が60〜90wt%となるように選ぶのが好ましい。
かかる他の樹脂は1種類でも、2種以上を混合しても使
用することができる。
【0076】他の樹脂として、芳香族ポリカーボネート
の分子鎖中に脂肪鎖を組み込んだポリエステルカーボネ
ートも好適に用いることができる。顔料、染料として
は、チタンホワイト、チタンイエロー、ベンガラ、群
青、スピネルグリーンなどの無機系顔料、キナクリドン
系、ペリレン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系
などの有機系顔料など、幅広く用いることが可能であ
り、カーボンブラックも、本発明の効果を得る目的以外
に顔料としても使用可能である。
【0077】強化充填剤としてはガラスが好適であり、
例えばガラスフィラメント、またはガラスとタルク、ガ
ラスと雲母、ガラスと珪酸アルミニウムの混合物を使用
するのが好適である。ガラスフィラメントの直径は一般
に30〜100μm程度が好ましく、該繊維の長さは一
般に100〜1,000μmの長さの繊維が機械的強度
を増すうえにおいて好ましく用いられる。強化充填剤
は、強化作用を呈し得る量使用すればよいのであるが、
普通組成物の総重量の1〜60wt%である。好適な範
囲は5〜50wt%である。炭素繊維は一般に高価であ
り、強化充填剤と組み合わせて用いた組成物は好適に製
造され得る。
【0078】これらガラス繊維をシラン系化合物、チタ
ン系化合物などで表面処理しておくことは、機械的強度
を増すうえで好適であり、この表面処理はあらかじめ該
繊維に施しておいても、また、組成物の配合時に表面処
理剤を添加するなどの方法によってでも良い。他にも、
強化剤や充填剤として、例えば微粉砕のアルミニウム、
鉄またはニッケルなどの金属酸化物および非金属、例え
ば、珪酸塩、例えば雲母、珪酸アルミニウム(粘土)、
タルク、石綿、二酸化チタン、珪灰石、ノバキュライ
ト、チタン酸カリウムおよびチタン酸塩ウイスカー、ポ
リマー繊維等が挙げられる。
【0079】ハロゲンで置換されたビスフェノール、特
に上記に述べた臭素化ビスフェノールは、本発明の構成
要件である芳香族ポリカーボネートの原料として用いる
ことができるのみならず、難燃剤としても機能し得るた
め、好適に用いることができる。さらに、この難燃効果
を相乗的に高めるために、無機または有機アンチモン化
合物を樹脂組成物中に配合することも、本発明の好まし
い様態である。
【0080】アンチモン化合物としては種々の化合物が
挙げられ、無機化合物としては、酸化アンチモン(Sb
23)、燐酸アンチモン、水酸化物、弗化物、硫化物な
どが挙げられる。有機化合物としては、有機酸とのアン
チモンエステル、環式アルキル亜アンチモン酸エステ
ル、アリールアンチモン酸化合物、トリフェニルアンチ
モンなどが挙げられる。アンチモン化合物としては酸化
アンチモンが好ましい。また、熱安定剤、酸化防止剤と
して、ヒンダードフェノール、ホスファイト、リン酸金
属塩、亜リン酸金属塩等を混入することができる。
【0081】本発明は芳香族ポリカーボネートのOH末
端の割合を制御することを特徴とするが、一般にOH末
端比率を低減させると芳香族ポリカーボネート樹脂自身
の熱安定性、耐加水分解性が向上する。逆に、OH末端
比率を増加させると熱安定性、耐加水分解性は低下して
しまう。そのため、これら添加剤の添加量についてはO
H末端比率に依存し、一概に決めることはできないが、
本発明の効果を損なわない範囲で幅広くとることが可能
である。たとえば、通常、リン系酸化防止剤は0.01
〜5質量部の範囲で好ましく用いられる。0.01質量
部より少ないと酸化防止効果が得にくくなり、5質量部
よりも多いと加熱成形時に発泡したり、押出成形時の安
定性が劣ったりするため好ましくない。
【0082】離型剤としては、カルボン酸エステル、ポ
リシロキサン、パラフィンワックス、ポリカプロラクト
ンなどが用いられる。耐候剤、光劣化防止剤としては、
ベンゾトリアゾール系(例えば、商品名チヌビン)、ベン
ゾフェノン系が一般に用いられる。本発明の樹脂組成物
を製造するに際しては、従来から公知の方法で各成分を
混合、成形することができる。例えば、芳香族ポリカー
ボネート、炭素繊維、各種添加剤の混合物を、ターンブ
ルミキサーやヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、
スーパーミキサーで代表される高速ミキサーで分散混合
後、単軸あるいは2軸押出機で押出成形する方法、バン
バリーミキサー、加熱ロール等で混練する方法、あるい
は直接射出成形機で射出成形する方法などが挙げられ
る。
【0083】各成分の混合様式としては、芳香族ポリカ
ーボネート、炭素繊維、各種添加剤の1種あるいは2種
以上を予め混合しておき、残りを混練する方法も好適に
用いることができ、このような混合の順番の組み合わせ
として挙げられるいずれの方法でも、本発明の効果を得
られる。このようにして得られた樹脂組成物は射出成
形、圧縮成形、押出成形、回転成形などの既知の種々の
方法により成形される。
【0084】
【発明の実施の形態】以下、実施例をもって本発明の実
施の形態を具体的に説明する。本発明の実施例における
測定方法は以下の通りである。 (1)MD発生ショット数 金型汚染性は以下に示す方法によりMD(モールドデポ
ジット Mold Deposit)発生ショット数と
して評価した。実施例ならびに比較例の芳香族ポリカー
ボネート樹脂組成物を、シリンダー温度280℃、金型
温度90℃、スクリュー回転数80rpm、射出速度5
0mm/秒、射出保圧時間10秒、冷却時間15秒に設
定された射出成型機(オートショット 50D、ファナ
ック社製)を用いて成形し、試験片を得た。さらに、上
記条件で連続成形を行ない500ショット成形ごとに金
型を外して、外観を検査し汚染の有無を確認し、汚染が
見出された時点のショット数をMD発生ショット数とし
た。すなわち、表中MD発生ショット数2500ショッ
トとは、2000ショットまでは外観上金型に汚染は見
られず、2500ショット成形した時点で目視で汚染が
確認されたことを示す。表中500ショットとは、最初
に金型を外した時点ですでに金型が汚染されていたこと
を示す。
【0085】(2)分子量の測定 本発明において、ポリカーボネートの重量平均分子量
(Mw)の測定はGPCを用いて行い、測定条件は下記
の通りである。即ち、テトラヒドロフラン溶媒、ポリス
チレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレ ンの較正
曲線から下式を用いる計算によって得られた換 算分子
量較正曲線を用いて求めた。 MPC=0.3591×MPS1.0388 (MPCはポリカーボネートの分子量、MPSはポリス
チレンの分子量)
【0086】(3)エステル基のwt%の測定 芳香族ポリカーボネート55mgをテトラヒドロフラン
2mlに溶解した後、5規定の水酸化カリウムメタノ
ー ル溶液を0.5ml添加し、室温で2時間攪拌して
完全に加水分解した。その後、濃塩酸0.3mlを加
え、逆相液体クロマトグラフィーで測定した。逆相液体
クロマトグラフィーは、UV検知器として991L型機
(米国、ウォーターズ社製)、Inertsil OD
S−3カラム(ジーエルサイエンス社製)、溶解液とし
てメタノー ルと0.1%リン酸水溶液からなる混合溶
解液を用い、カラム温度40℃、メタノール/0.1%
リン酸水溶液比率を20/80からスタートし、100
/0までグラジェントする条件下で測定し、検出は波長
300nmのUV検出器を用いて行い、標準物質の吸光
係数から定量した。(標準物質としては、式(18)、
式(19)、式(20)、式(21)の構造単位を加水
分解した構造に相当するヒドロキシ化合物を用いた。)
【0087】(4)OH末端のwt%の測定 本発明においては、NMR法で求めた。 (5)MFR ASTM D1238に従って、温度220℃、荷重1
0kgで測定した。単位:g/10分として、10以上
を○、10〜5を△、5未満を×とした。 (6)Izod衝撃強度 ASTM D256に従って、射出成形された1/8イ
ンチ厚さの試験片を用いてノッチ付きで測定した。測定
にあたっては、温度23℃、湿度50%RHに保たれた
恒温槽に試験片を2時間以上静置した後、素早く測定し
た。単位:kg・cm/cmとして、15以上を○、1
5〜10を△、10未満を×とした。
【0088】(7) 曲げ弾性率 ASTM D790に準拠して、測定した(試験片厚み
1/4インチ)。単位:kg/cm2として、60,0
00以上を○、60,000〜30,000を△、3
0,000未満を×とした。芳香族ポリカーボネート、
炭素繊維は以下のものを用いた。 (PC−1) 溶融エステル交換法で製造されたビスフェノール−A系
ポリカーボネート Mw=19,500、エステル基のwt%=0.016
%。OH末端のwt%=0.076% (PC−2) 溶融エステル交換法で製造されたビスフェノール−A系
ポリカーボネート Mw=25,000、エステル基のwt%=0.017
%、 OH末端のwt%=0.031% (PC−3) 溶融エステル交換法で製造されたビスフェノール−A系
ポリカーボネート Mw=35,000、エステル基のwt%=0.069
%、 OH末端のwt%=0.021% (PC−4) ホスゲン法で製造されたビスフェノール−A系ポリカー
ボネート Mw=15,000、エステル基のwt%=検出され
ず。 OH末端のwt%=0.0044% (PC−5) ホスゲン法で製造されたビスフェノール−A系ポリカー
ボネート Mw=25,000、エステル基のwt%=検出され
ず。 OH末端のwt%=0.0026% (PC−6) PC−2を二酸化炭素加圧下、実質的に酸素の無い条件
で280℃、1時間加熱処理した。Mw=24,00
0、エステル基のwt%=0.059%、OH末端のw
t%=0.035% (PC−7) 前記式(23)で表される化合物のうち、2−(4−ヒ
ドロキシフェニル)−2−(3´カルボキシル−4´ヒ
ドロキシフェニル)プロパンをビスフェノール−Aに対
して2モル%混合してPC−1と同様に溶融エステル交
換法で製造されたビスフェノール−A系ポリカーボネー
ト Mw=19,500、エステル基のwt%=0.035
%。OH末端のwt%=0.096% (CF) 炭素繊維:東邦レーヨン(株)製 ベスファイトHTA
−C6−U、直径7μm、長さ6mm。
【0089】
【実施例1,2】PC−1,2の芳香族ポリカーボネー
ト100質量部に対して、炭素繊維を表1記載の質量部
用いて、ドラムブレンダーで5分間ドライブレンドした
後、シリンダー温度280℃に設定した2軸押出機(Z
SK−25 Werner&Pfleiderer社
製)で回転数300rpmで溶融混練し、造粒し、ペレ
ットを得た。得られたペレットを用いて、MD発生ショ
ット数、Izod衝撃強度、曲げ弾性率、流動性(MF
R)を測定した。結果を比較例とともに表1にまとめ
た。
【0090】
【比較例1,2,3】PC−1の代わりにPC−3,
4,5を用いた以外は、実施例1と同様に行なった。
【0091】
【実施例3】炭素繊維の量を50質量部に増やした以外
は実施例1と同様に行なった。
【0092】
【比較例4】PC−4を用いた以外は実施例3と同様に
行なった。
【0093】
【実施例4】PC−6を用いた以外は実施例1と同様に
行なった。
【0094】
【比較例5】炭素繊維の量を250質量部に増やした以
外は実施例1と同様に行なった。
【0095】
【実施例5】PC−7を用いた以外は実施例1と同様に
行なった。
【0096】
【表1】
【0097】
【発明の効果】本発明の樹脂組成物を用いた成形品は著
しく改善された耐衝撃性を有する。しかも、ベースポリ
マーである芳香族ポリカーボネート樹脂自身が持つ高強
度、高流動性に加えて、成形時の金型汚染も少ないとい
う実用上極めて重要な特徴も有し、その用途は広く、有
用性は高い。
フロントページの続き Fターム(参考) 4J002 CG011 DA016 FA046 FD016 GQ00 4J029 AD01 AE01 BB04A BB05A BB12A BB13A BB13B BB16A BC07A BD09A BD09C BH02 DB07 DB13 EB08 HC01 HC05A KE02

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(1)で表される繰り返し単位を
    持つ芳香族ポリカーボネートの分子中に、主鎖に直接結
    合したエステル基を0.015〜0.5wt%含有し、
    重量平均分子量が10,000〜30,000である芳
    香族ポリカーボネート100質量部と炭素繊維5〜20
    0質量部とからなることを特徴とする芳香族ポリカーボ
    ネート系樹脂組成物。 【化1】 (式中、Arは、二価の炭素数5〜200の芳香族基で
    ある。)
  2. 【請求項2】 該芳香族ポリカーボネート分子中の主鎖
    に直接結合したエステル基が、下記式(2)、式
    (3)、式(4)、式(5)の各式で表されるエステル
    基から選ばれた1種または2種以上のエステル基である
    ことを特徴とする請求項1記載の芳香族ポリカーボネー
    ト系樹脂組成物。 【化2】 【化3】 【化4】 【化5】 (式(2)〜式(5)の式中、Arは二価の炭素数5〜
    200の芳香族基、Ar´は三価の炭素数5〜200の
    芳香族基、Ar´´は四価の炭素数5〜200の芳香族
    基を表し、X、Yはそれぞれ独立に選ばれた式(1)で
    表される繰り返し単位を含む芳香族ポリカーボネートを
    表す。)
  3. 【請求項3】 該芳香族ポリカーボネートのフェノール
    性水酸基末端の割合が、該芳香族ポリカーボネートの重
    量平均分子量に対して0.004〜0.17wt%であ
    ることを特徴とする請求項1記載の芳香族ポリカーボネ
    ート系樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 該芳香族ポリカーボネートが芳香族ジヒ
    ドロキシ化合物と炭酸ジエステルからエステル交換法で
    製造されたものであることを特徴とする請求項2記載の
    芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
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