JP2003146656A - 板状炭酸カルシウム系の球状複合体の製造方法 - Google Patents

板状炭酸カルシウム系の球状複合体の製造方法

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JP2003146656A JP2002274569A JP2002274569A JP2003146656A JP 2003146656 A JP2003146656 A JP 2003146656A JP 2002274569 A JP2002274569 A JP 2002274569A JP 2002274569 A JP2002274569 A JP 2002274569A JP 2003146656 A JP2003146656 A JP 2003146656A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】多孔質物質は、球形に近い一次粒子をバインダ
ーなどを使用して球形に凝集させたものが殆どであっ
て、その細孔径は一次粒子径よりも小さいのが普通であ
り、細孔径を1μm以上にすることは困難であった。ま
た、粒子の形状、細孔の大きさなどが固定されており、
それぞれの用途にみあった最適な品質にする自由度が殆
どないのが現状である。 【解決手段】石灰乳と二酸化炭素を反応させて水酸化カ
ルシウムの炭酸化反応を行うにあたり、縮合リン酸化合
物の存在下、塩基性炭酸カルシウムが生成する反応条件
で、石灰乳の電気伝導度が反応前に対して2〜10mS
/cm降下したときに炭酸化反応を止めた後、さらに縮
合リン酸化合物および炭酸化率が70%以下の石灰乳を
添加し、二酸化炭素を反応させることを2回以上繰り返
すことおよび炭酸化反応を終了させることにより、板状
炭酸カルシウムの球状複合体を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な板状構造を
有した炭酸カルシウムの球状複合体の製造方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来から各種の多孔質物質が提案され、
それぞれの特性を生かして種々の分野で使用されてい
る。これらの多孔質物質のなかでも無機成分を構成成分
とするものとしては、ゼオライト、活性炭、珪酸カルシ
ウム、リン酸カルシウムなどが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの多孔
質物質といわれている化合物には、それぞれ一長一短が
あり、いまだに充分に満足しうるものは得られていな
い。一般に多孔質物質は、球形に近い一次粒子をバイン
ダーなどを使用して球形に凝集させたものが殆どであっ
て、その細孔径は一次粒子径よりも小さいのが普通であ
る。また、その細孔は一次粒子の凝集間隙や製造時の
水、有機溶媒またはバインダーの蒸発に伴う空隙から形
成されたものであるので、細孔径を1μm以上にするこ
とは困難であった。また、これらの多孔質物質の殆ど
が、粒子の形状、細孔の大きさなどが固定されており、
それぞれの用途にみあった最適な品質にする自由度が殆
どないのが現状である。本発明者らは、先に「板状炭酸
カルシウムの製造方法」(特開平2−18451)およ
び「板状塩基性炭酸カルシウムの製造方法」(特開平3
−285816)を発明したので、これらの知見をもと
に、従来多孔質物質の対象として検討されたことのない
炭酸カルシウムが、合成条件を変化させることによりそ
の形態を制御できることを見出し、多孔質物質の基材と
して採用し、製造条件により細孔径および細孔容積を変
えることのできる板状炭酸カルシウムの球状複合体を得
ようとしたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで前記課題を解決す
るために本発明者らは鋭意検討を行った結果、本発明を
完成するに至った。すなわち、本発明は、石灰乳と二酸
化炭素を反応させて水酸化カルシウムの炭酸化反応を行
うにあたり、縮合リン酸化合物の存在下、塩基性炭酸カ
ルシウムが生成する反応条件で、石灰乳の電気伝導度が
反応前に対して2〜10mS/cm降下したときに炭酸
化反応を止めた後、さらに縮合リン酸化合物および炭酸
化率が70%以下の石灰乳を添加し、二酸化炭素を反応
させることを2回以上繰り返すことおよび炭酸化反応を
終了させることを特徴とする板状炭酸カルシウムの球状
複合体の製造方法であって、石灰乳と二酸化炭素を反応
させて水酸化カルシウムの炭酸化反応を行うにあたり、
炭酸化反応を止めた後、または二酸化炭素を反応させた
後に、その生成物を加熱下で二酸化炭素と接触させるこ
とにより炭酸化反応を終了させることが好ましい。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の板状炭酸カルシウムの球
状複合体は、図1に示したような板状構造を有した炭酸
カルシウムの単一結晶が一次粒子を形成し、図2に示す
ように層状に凝集して球状複合体を形成したり、または
図3に示すように放射状に凝集して球状複合体を形成し
て、表面に細孔を多数形成させた板状炭酸カルシウムの
球状複合体であって、その粒径は凡そ1〜100μmで
あって、3〜50μmのものが、使用上扱いやすく好ま
しい。
【0006】本発明の細孔とは、板状炭酸カルシウムの
球状複合体における板状構造を有した炭酸カルシウムな
どの一次粒子間の間隙をいい、その細孔容積は水銀圧入
法により測定される。この場合、細孔容積が0.1ml
/g未満であれば、粉体の粒子間隙であって細孔ではな
い。また、3ml/gを越えると板状炭酸カルシウムの
球状複合体の強度を保つことができず実用的ではない。
従って、水銀圧入法による細孔容積が0.1〜3ml/
gであることが好ましい。
【0007】本発明でいう複合物は、その複合形態や割
合によって物性が変わるものであって、例えば、X線回
折における解析や解析強度比によって異なり、示差熱分
析にあっては、複合形態や割合によってそれぞれの分解
温度により減量と熱量が示され、その値は複合割合によ
り決まる。
【0008】本発明でいう板状炭酸カルシウムの球状複
合体の製造方法において、水酸化カルシウム水懸濁液す
なわち石灰乳の濃度は1〜15重量%、好ましくは3〜
10重量%が望ましい。石灰乳の濃度が1重量%未満で
は基本構造である板状構造が生成でき難くなり、さらに
15重量%を越えると均一な板状炭酸カルシウムの球状
複合体の生成が困難になる。
【0009】本発明でいう縮合リン酸化合物とは、通常
ポリリン酸化合物といわれる化合物で、ピロリン酸、ト
リポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、
ウルトラリン酸などを例示できるが、それらのナトリウ
ム、カリウムなどのアルカリ金属塩またはアンモニウム
塩であってもよい。これらは1種類で使用してもよい
し、また2種類以上併用してもよい。縮合リン酸化合物
の添加量は、水酸化カルシウムに対して0.01〜10
重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。一般に縮
合リン酸化合物の添加量が水酸化カルシウムに対して1
0重量%を越えると、層状体または放射状体の板状炭酸
カルシウムの間隙幅が小さくなり、細孔容積も小さくな
り、本発明の目的を達成することはできない。一方、縮
合リン酸化合物の添加量が水酸化カルシウムに対して
0.01重量%未満であると、板状炭酸カルシウムを層
状体または放射状体に凝集させることができず、本発明
の板状炭酸カルシウムの球状複合体の製造は困難とな
る。
【0010】本発明でいう板状炭酸カルシウムの球状複
合体の製造方法においては、縮合リン酸化合物の存在
下、塩基性炭酸カルシウムが生成する反応条件で水酸化
カルシウムの炭酸化を行うことによって、基本構造であ
る板状構造を有する炭酸カルシウムを生成することがで
きる。生成した炭酸カルシウムの粒子の形状と電気伝導
度とは密接な関係があるので、電気伝導度を測定するこ
とにより炭酸カルシウムの生成を制御することができ
る。すなわち、電気伝導度の降下が2mS/cm未満で
あると、一次粒子である板状構造が充分に成長していな
い状態にあり、炭酸化率60%以下であると、生成球状
複合体の均一性が損なわれる。また、電気伝導度の降下
が10mS/cmを越えると、一次粒子である板状構造
の間隙が少なく、細孔容積も少なくなり、炭酸化率も6
6.7%を越えることになる。
【0011】板状炭酸カルシウムの球状複合体の粒子径
を大きくし、複合体の粒度分布の幅が狭くなるように、
炭酸化反応を止めたのち、縮合リン酸化合物および炭酸
化率70%以下の石灰乳を添加する。ここで炭酸化率と
は、乳液中の炭酸カルシウムのモル(mol)数と石灰
乳中のカルシウムのモル(mol)数の百分率であっ
て、数1で示される式によって計算された値である。
【0012】
【数1】
【0013】本発明でいう板状炭酸カルシウムの球状複
合体の製造方法において、縮合リン酸化合物の存在下で
水酸化カルシウムの炭酸化反応を行う場合、炭酸化反応
を止めた後、さらに縮合リン酸化合物および炭酸化率が
70%以下の石灰乳を添加し、二酸化炭素を反応させる
ことを2回以上繰り返すことにより、板状炭酸カルシウ
ムの球状複合体の粒子径を大きく制御できると同時に粒
子径分布が狭くそろった板状炭酸カルシウムの複合体を
得ることができる。ここで炭酸化率は通常10%未満で
あって、70%を越えると板状炭酸カルシウムの球状複
合体の結晶成長に使用できる水酸化カルシウムの量が少
なくなり、球状複合体を成長させての粒子径制御ができ
難くなると同時に、成長した球状複合体の粒子径が不揃
いとなるので、好ましくない。繰り返し回数は通常2〜
10回であるが、好ましくは2〜5回である。このとき
の反応温度は、10〜40℃程度の範囲、好ましくは2
0〜40℃の範囲である。この反応温度を越えると、基
本構造である板状構造とならず本発明の目的を達成しな
い。縮合リン酸化合物の添加時期については、炭酸化前
から炭酸化率30%、好ましくは炭酸化前から炭酸化率
20%までに添加することが望ましい。これらの添加時
期を過ぎると、基本構造である板状構造の放射状または
層状の球状凝集体とならず本発明の目的を達成しない。
繰り返して炭酸化を行う場合、添加する石灰乳の混合割
合は、生成している炭酸カルシウムに対し、10:1〜
1:10、好ましくは4:1〜1:4が望ましい。生成
している炭酸カルシウムの混合割合が増加すると基本構
造の板状構造が均一に成長せず、放射状または層状の球
状凝集体と成り難く、さらに添加する石灰乳の混合割合
が増加すると基本構造の成長が大きく成りすぎるため
に、放射状または層状の球状凝集体の均一性がなくなり
本発明の目的を達成できない。
【0014】板状構造を有した一次粒子が、塩基性炭酸
カルシウム、塩基性炭酸カルシウムと炭酸カルシウムの
複合物、炭酸カルシウムと水酸化カルシウムの複合物、
塩基性炭酸カルシウムと水酸化カルシウムと炭酸カルシ
ウムの複合物からなり、前記一次粒子が球状に凝集した
板状炭酸カルシウムの球状複合体を二酸化炭素と加熱下
で接触させ、前記一次粒子の塩基性炭酸カルシウム、塩
基性炭酸カルシウムと炭酸カルシウムの複合物、塩基性
炭酸カルシウムと水酸化カルシウムと炭酸カルシウムの
複合物を炭酸カルシウムに変化させて板状炭酸カルシウ
ムの球状複合体にする場合、この炭酸化速度は、炭酸化
温度、二酸化炭素濃度と反応時間により異なるが、固体
と気体の直接反応は通常反応速度が遅いので、塩基性炭
酸カルシウムの分解温度以上または水酸化カルシウムの
分解温度以上で炭酸カルシウムの分解温度以下で行うの
が望ましい。すなわち、その温度は300〜800℃、
好ましくは400〜700℃である。また、二酸化炭素
の濃度は、10〜100容量%、好ましくは50〜10
0容量%である。
【0015】上述のごとくして、得られた板状炭酸カル
シウムの球状複合体は、従来の炭酸カルシウムや炭酸カ
ルシウム系複合体に比べて、比表面積が大きく、かつ粒
子表面が、図2および図3にみられるように、多孔質と
なっているので、その特性を利用した種々の用途を有し
ている。直接その物質を使用すると毒性など問題がある
場合、すなわち農薬などを本発明の板状炭酸カルシウム
の球状複合体に担持させることにより、任意の濃度に調
整し、かつ飛散を防ぐことができる。また、香料、消臭
剤などの揮発性の物質を担持させることにより、持続性
のある徐放剤として利用できる。例えば、触媒、医薬、
化粧料、農薬、微生物、過酸化物、植物成長剤、オレフ
ィン吸収剤、紫外線吸収剤、香料、芳香剤、消臭剤など
の各種物質の担持体として、利用することができ、この
とき吸着された物質をすみやかに放出することがないの
で、その徐放性を利用し、担持された物質の徐放剤とし
ての用途がある。さらに、物質の吸着性を利用して、乾
燥剤、吸液剤、防臭剤としての用途並びに塗料、シーラ
ント、接着剤、塩化ビニールペーストなどの増粘剤とし
ての用途がある。その他、濾過助剤、粉体の成形助剤お
よび吸液用成形体、潤滑油用キャリヤー、製紙用原料と
しても利用できる。
【0016】
【実施例】以下実施例にもとづいて、本発明を詳細に説
明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではな
い。
【0017】(実施例1)6重量%で15℃の石灰乳8
00mlを攪拌しながら25容量%の二酸化炭素ガス
(以下単に「炭酸ガス」という)を1200ml/分で
導入し、炭酸化を行った。炭酸ガス導入開始と同時にヘ
キサメタリン酸ナトリウム0.48gを水25mlに溶
解した液を石灰乳に添加した。反応開始より50分後に
電気伝導度が反応前より6.0mS/cm降下したので
炭酸ガスの導入を停止した。この時の石灰乳の炭酸化率
は61%であった。この石灰乳から固形物を通常の方法
で濾過し、アルコール洗浄した後、110℃で12時間
乾燥した。この乾燥固形物を粉末X線回折の結果、図4
に示すとおりカルサイトと塩基性炭酸カルシウムであ
り、走査型電子顕微鏡観察の結果、厚さ0.2μm、粒
子径3μmの板状構造をしたものが放射状に凝集し10
μmの球状粒子を形成していた。この乾燥品100gを
104μmの篩を通過させ、円筒形容器に充填し、55
0℃に加熱した縦型電気炉に装着し、下部から100%
炭酸ガスを50ml/分で20時間炭酸化を行った。炭
酸化反応終了後のX線回折の結果、図5に示すとおりカ
ルサイトのみであり、他の結晶構造は認められなかっ
た。走査型電子顕微鏡観察の結果、厚さ0.2μm、粒
子径3μmの板状構造をしたものが放射状に凝集し、約
10μmの球状粒子を形成していた。このものは水銀圧
入法(以下同じ)による細孔容積は0.84ml/gで
あった。また、BET法による比表面積(以下同じ)は
7m2 /g、JIS K−6223によるDOP(フタ
ル酸ジオクチル、以下同じ)の吸油量(以下同じ)は9
0ml/100gであった。
【0018】(実施例2)6重量%で15℃の石灰乳8
00mlを攪拌しながら炭酸ガスを1200ml/分で
導入し、炭酸化を行った。炭酸ガス導入開始1分前にヘ
キサメタリン酸ナトリウム0.48gを水25mlに溶
解した液を石灰乳に添加した。反応開始より50分後に
電気伝導度が反応前より4.3mS/cm降下したので
炭酸ガスの導入を停止した。この時の石灰乳の炭酸化率
は65%でA液とした。6重量%で20℃の石灰乳80
0mlを攪拌しながら炭酸ガスを1200ml/分で導
入し、炭酸化を行った。炭酸ガス導入開始2分後にヘキ
サメタリン酸ナトリウム0.48gを水25mlに溶解
した液を石灰乳に添加した。反応開始より30分後に炭
酸ガスの導入を停止した。この石灰乳の炭酸化率は34
%でB液とした。A液800mlとB液800mlを混
合し、石灰乳温度を25℃とし、攪拌しながら炭酸ガス
を2400ml/分で導入した。反応開始より20分後
に電気伝導度が反応前より6.5mS/cm降下したの
で、炭酸ガスの導入を停止し、石灰乳を濾過、アルコー
ル洗浄した後、110℃で12時間乾燥した。この乾燥
品は、X線回折の結果、塩基性炭酸カルシウムと炭酸カ
ルシウムであり、走査型電子顕微鏡観察の結果、厚さ
0.25μm、大きさ3μmの板状構造をしたものが放
射状に凝集し、約15μmの球状粒子を形成していた。
この乾燥品100gを104μmの篩を通過させ、円筒
形容器に充填し、550℃に加熱した縦型電気炉に装着
し、下部から100%炭酸ガスを50ml/分で20時
間炭酸化を行った。炭酸化反応終了後のX線回折の結果
は、カルサイトのみであり、他の結晶構造は認められな
かった。走査型電子顕微鏡の写真を図2に示した。観察
の結果、厚さ0.25μm、粒子径3μmの板状構造を
したものが放射状に凝集し、約15μmの球状粒子を形
成していた。このものの細孔容積は0.67ml/gで
あった。また、比表面積は6m2 /g、DOPの吸油量
は110ml/100gであった。
【0019】(実施例3)6重量%で20℃の石灰乳8
00mlを攪拌しながら炭酸ガスを1200ml/分で
導入し、炭酸化を行った。炭酸ガス導入と同時にピロリ
ン酸ナトリウム0.56gを水25mlに溶解した液を
石灰乳に添加した。反応開始より85分で石灰乳のpH
が7.0になったので炭酸ガスの導入を停止し、石灰乳
を濾過し、アルコール洗浄した後、110℃で12時間
乾燥した。この乾燥品は、粉末X線回折の結果、すべて
がカルサイトであり、走査型電子顕微鏡観察の結果、厚
さ0.2μm、粒子径3μmの板状構造をしたものが放
射状に凝集し、約10μmの球状粒子を形成していた。
このものの細孔容積は0.79ml/g、比表面積は約
10m2 /g、DOPの吸油量は60ml/100gで
あった。
【0020】(実施例4)実施例2のA液400mlに
ヘキサメタリン酸ナトリウム0.18gを含む6重量%
の石灰乳(以下「C液」という)400mlを注加し、
石灰乳温度20℃に調整後、炭酸ガスを600ml/分
で導入し、45分後に電気伝導度が反応前より7.0m
S/cm降下したので、炭酸ガスの導入を停止した。こ
の石灰乳400mlに新たにC液400mlを注加し、
上記の条件下で炭酸化を行い、同様に電気伝導度が反応
前より7.0mS/cm降下した時点で炭酸ガスの導入
を停止した。このような反応を5回繰り返したところ、
この石灰乳の炭酸化率は69%であり、この石灰乳を濾
過し、アルコール洗浄した後、110℃で12時間乾燥
した。この乾燥品は、粉末X線回折の結果、図6に示す
とおりカルサイト、塩基性炭酸カルシウムおよび消石灰
であり、走査型電子顕微鏡観察の結果、厚さ0.3μ
m、粒子径3.5μmの板状構造をしたものが放射状に
凝集し、約27μmの球状粒子を形成していた。この乾
燥品100gを104μmの篩を通過させ、円筒形容器
に充填し、550℃に加熱した縦型電気炉に装着し、下
部から100%炭酸ガスを100ml/分で20時間炭
酸化を行った。炭酸化反応終了後のX線回折の結果、カ
ルサイトのみであり、他の結晶構造は認められなかっ
た。走査型電子顕微鏡観察の結果、厚さ0.3μm、粒
子径3.5μmの板状構造をしたものが放射状に凝集
し、約27μmの球状粒子を形成していた。
【0021】(実施例5)6重量%で15℃の石灰乳1
600mlを攪拌しながら、25容量%の炭酸ガスを3
600ml/分で導入し、炭酸化を行った。炭酸ガス導
入開始と同時にヘキサメタリン酸ナトリウム0.96g
を水50mlに溶解した液を添加した。反応開始より4
0分後に電気伝導度が反応前より4.1mS/cm降下
したので、炭酸ガスの導入を停止した。このときの乳液
の炭酸化率は65%であった。この乳液から固形物を通
常の方法で濾過し、アルコール洗浄した後、110℃で
12時間乾燥した。この乾燥固形物を粉末X線回折の結
果、カルサイトと塩基性炭酸カルシウムであり、走査型
電子顕微鏡観察の結果、厚さ0.15μm、粒子径1μ
mの板状構造をしたものが、放射状に凝集し、5μmの
球状粒子を形成していた。この乾燥品100gを104
μmの篩を通過させ、円筒形容器に充填し、550℃に
加熱した縦型電気炉に装着し、下部から100%炭酸ガ
スを100ml/分で20時間炭酸化を行った。炭酸化
反応終了後のX線回折の結果、カルサイトのみであり、
他の結晶構造は認められなかった。走査型電子顕微鏡観
察の結果、厚さ0.15μm、粒子径1μmの板状構造
をしたものが、放射状に凝集し、約5μmの球状粒子を
形成していた。このものは、細孔容積0.6ml/gで
あった。また、BET法による比表面積は、5m2
g、DOPも吸油量は60ml/100gであった。
【0022】
【発明の効果】本発明の製造条件によって、石灰乳と二
酸化炭素の反応により生成される炭酸カルシウムは、板
状構造を有した炭酸カルシウムの一次粒子が球状に凝集
した比表面積が大きく、多孔質である板状炭酸カルシウ
ムの球状複合体であって、一次粒子間に間隙を有するた
め、直接その物質を使用すると問題がある場合、すなわ
ち農薬などを本発明の板状炭酸カルシウムの球状複合体
に担持させることにより、任意の濃度に調整し、かつ飛
散を防ぐことができる。また、香料、消臭剤などの揮発
性の物質を担持させることにより、持続性のある徐放剤
として利用できる。さらに、物質の吸着性を利用して、
乾燥剤、吸液剤、防臭剤としての用途並びに塗料、シー
ラント、接着剤、塩化ビニールペーストなどの増粘剤と
しての用途があり、その他、濾過助剤、粉体の成形助剤
および吸液用成形体、潤滑油用キャリヤー、製紙用原料
としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】板状構造をした炭酸カルシウム
【図2】層状に凝集した球状複合体
【図3】放射状に凝集した球状複合体
【図4】実施例1におけるカルサイトと塩基性炭酸カル
シウムのX線回折
【図5】実施例1におけるカルサイトのX線回折
【図6】実施例4におけるカルサイト、塩基性炭酸カル
シウムおよび水酸化カルシウムのX線回折
【符号の説明】
A.板状構造を有した炭酸カルシウムの一次粒子 1.板状構造を有した炭酸カルシウムの単一結晶
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森 一晃 大分県津久見市上宮本町10番21号 (72)発明者 水口 正昭 大阪府大阪市東淀川区井高野2丁目1番37 号 鈴木油脂工業株式会社内 Fターム(参考) 4G076 AA16 AB06 BA30 BB02 CA03 CA08 CA12 DA25

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】石灰乳と二酸化炭素を反応させて水酸化カ
    ルシウムの炭酸化反応を行うにあたり、縮合リン酸化合
    物の存在下、塩基性炭酸カルシウムが生成する反応条件
    で、石灰乳の電気伝導度が反応前に対して2〜10mS
    /cm降下したときに炭酸化反応を止めた後、さらに縮
    合リン酸化合物および炭酸化率が70%以下の石灰乳を
    添加し、二酸化炭素を反応させることを2回以上繰り返
    すことおよび炭酸化反応を終了させることを特徴とする
    板状炭酸カルシウムの球状複合体の製造方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の石灰乳と二酸化炭素を反
    応させて水酸化カルシウムの炭酸化反応を行うにあた
    り、炭酸化反応を止めた後、または二酸化炭素を反応さ
    せた後に、その生成物を加熱下で二酸化炭素と接触させ
    ることにより炭酸化反応を終了させることを特徴とする
    板状炭酸カルシウムの球状複合体の製造方法。
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