JP2003127210A - ポリエステルシート及びフィルムの製造法 - Google Patents

ポリエステルシート及びフィルムの製造法

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JP2003127210A
JP2003127210A JP2001323346A JP2001323346A JP2003127210A JP 2003127210 A JP2003127210 A JP 2003127210A JP 2001323346 A JP2001323346 A JP 2001323346A JP 2001323346 A JP2001323346 A JP 2001323346A JP 2003127210 A JP2003127210 A JP 2003127210A
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polyester sheet
cooling roll
sheet
polyester
molten
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Shozo Nitta
省三 新田
Akira Goto
陽 後藤
Norio Takagi
憲男 高木
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Teijin Ltd
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Teijin Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 マイクロクラックの溝の目詰まりによる通気
抵抗の上昇速度を低いレベルに抑えて、シート生産の中
断頻度を低減できかつ設備も大掛かりにする必要のない
ポリエステルシートの製造方法を提供する。 【解決手段】 オリフィス状口金から押出された溶融ポ
リエステルシートを、表面に多数のマイクロクラック溝
が形成されている冷却ロール上に落下させ且つ密着さ
せ、該冷却ロール上で固化させてポリエステルシートを
製造する方法であって、シートの表面温度(T、℃)を
下記式(1)を満足するように維持し、且つ溶融ポリエ
ステルシートと接触する際の冷却ロールの表面温度を5
〜Tg−20℃の範囲に制御して、溶融ポリエステルか
らの昇華物の付着を防止するポリエステルシートの製造
法。 Tc+20℃≦T≦Tm+40℃ ・・・(1) 但し,Tc,Tmはそれぞれポリエステルの結晶化温度
および融点。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はポリエステルのシー
トおよびフィルムの製造方法に関する。さらに詳しくは
マイクロクラックが表面に形成されている冷却ロールを
用いてポリエステルシートを押出成形する際に、マイク
ロクラックの内部に低分子量昇華物が付着するのを抑え
ることができ、平滑性に優れた良好な品質のシートを、
長時間高速で安定して生産できるポリエステルシートの
製造方法および得られたシートから二軸配向ポリエステ
ルフィルムを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】重合体シートをキャストする方法とし
て、オリフィス状の口金から押出された溶融重合体のシ
ート状物を静電密着法や気体押圧法によって、冷却ロー
ル面に密着させ固化させる方法が従来から知られてい
る。この方法では、冷却ロールとして表面が平滑に仕上
げられている(鏡面仕上)ものが通常用いられるが、冷
却ロール面に溶融重合体のシート状物を密着させる際
に、冷却ロール面とシート状物との間に巻込まれる空気
の排出が必要となる。
【0003】巻込まれる空気の排出は、キャスト速度が
大きくなるに伴って困難になり、その結果種々の問題が
生じるようになる。例えば、静電密着法の場合は、巻込
まれた空気が泡状に介在するため、シート表面欠陥の原
因になりシートの平滑性が低下する問題が生じる。ま
た、気体押圧法の場合は、巻込まれた空気の介在がシー
トと冷却ロールとの間の熱伝達不足の原因となり、その
結果シートの冷却不足が生じる。シートが冷却不足にな
ると、その間溶融ポリエステルに含まれる低分子量化合
物の昇華が持続するため、低分子量化合物の冷却ロール
面への堆積が顕著になり、これがシート面に転写して、
オレンジ肌様の欠点となる問題が生じる。
【0004】また、冷却ロール表面への低分子量化合物
の堆積量が増加すると熱伝達不足がさらに顕著となり、
高速度でのキャストが不能に陥る。
【0005】このような問題は、特開昭62−1961
18号公報で提案されている冷却ロールをマイクロクラ
ックが形成されている表面(マイクロクラック表面)を
有するものに変えることによって改良できる。すなわ
ち、静電密着法の場合は巻込み空気がマイクロクラック
の溝を通じて散逸するので、泡状の欠点が改良でき、キ
ャスト速度を大幅に高速化できる。また、気体押圧法の
場合も巻込み空気がマイクロクラックの溝を通じて散逸
するので、シートと冷却ロールとの熱伝達速度の低下を
防止でき、オレンジ肌様欠点の発生も回避できる。
【0006】しかしながら、マイクロクラック表面を有
する冷却ロールを用いてポリエステルシートを押出成形
する方法では、マイクロクラックの通気抵抗が経時的に
増加し、巻込まれた空気がマイクロクラックの溝を通じ
て散逸する機能が短時間で低下するという新たな問題が
生じる。この原因はマイクロクラックの溝の内部に、シ
ート状物から昇華した低分子量化合物が堆積して、溝が
目詰まりを生じることによる。そのため、この目詰まり
を頻繁に取除く必要が生じ、生産性の面で問題となる。
【0007】冷却ロール表面に堆積した付着物を除去す
る方法としては、特公昭47−3917号公報および
特公昭48−4465号公報に開示された、冷却ロール
面のポリエステルシートとの非接触部を常時水あるいは
溶剤を用いて洗浄し、水あるいは溶剤を乾燥し吸引除去
する方法、特開昭57−51462号公報に開示され
た、冷却ロール面をコロナ処理する方法および特公平
3−65775号公報に開示された、冷却ロール面に紫
外線を照射して堆積物を分解除去する方法が知られてい
る。
【0008】しかしながら、上記の方法は鏡面仕上の
冷却ロールには有効であるが、マイクロクラック表面を
持つ冷却ロールの場合には、溝の内部まで洗浄するのが
困難な上に、溝の内部に浸入した液体の除去が困難であ
るため適用できない。また、上記およびの方法も鏡
面仕上の冷却ロールには有効であるが、マイクロクラッ
ク表面の冷却ロールには溝の内部の堆積物を分解除去す
る効果が乏しいため適用できない。
【0009】冷却ロールのマイクロクラック溝の内部を
洗浄する方法として、特開平10−217307号公報
には、冷却ロールを薬液のバス中に浸漬する方法が開示
されているが、この方法ではシート生産の中断が避けら
れず、しかも冷却ロールを薬液のバスに浸漬するなど、
煩雑な作業になるため実用上問題がある。
【0010】その他の解決策として、マイクロクラック
の溝幅を広げる方法が考えられるが、溝幅を広げるとマ
イクロクラック自体のシートへの転写がオレンジ肌様欠
点の要因になる場合があり、さらに冷却ロール表面に溝
幅を広げたマイクロクラックを均一に形成させること
が、極めて困難である等の問題が新たに発生することが
予測される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、マイ
クロクラックの溝の目詰まりによる通気抵抗の上昇速度
を低いレベルに抑えてポリエステルシートを冷却し、そ
れによってシート生産の中断頻度を低減できかつ設備も
大掛かりにする必要のないポリエステルシートの製造方
法を提供することにある。
【0012】本発明の他の目的は、マイクロクラック溝
を持つ冷却ロールにより転写のない従って高品質のフィ
ルムを与えることができるポリエステルシートの製造方
法を提供することにある。
【0013】本発明のさらに他の目的は、上記本発明方
法で製造されたポリエステルシートから二軸配向ポリエ
ステルフィルムを製造する方法を提供することにある。
【0014】本発明のさらに他の目的および利点は、以
下の説明から明らかになろう。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、本発明
の上記目的および利点は、第1に、オリフィス状口金か
ら押出された溶融ポリエステルシートを、表面に多数の
マイクロクラック溝が形成されている冷却ロール上に落
下させ且つ密着させそして該冷却ロール上で固化させて
ポリエステルシートを製造する方法であって、オリフィ
ス口金から10mm下の溶融ポリエステルシートの表面
温度(T、℃)を下記式(1)を満足するように維持し
且つ溶融ポリエステルシートと接触する際の冷却ロール
の表面温度を5〜Tg−20℃の範囲に制御して冷却ロ
ールのマイクロクラックの溝内に溶融ポリエステルから
の昇華物の付着を防止しつつポリエステルシートを連続
的に形成することを特徴とするポリエステルシートの製
造法によって達成される。
【0016】
【数2】 Tc+20℃≦T≦Tm+40℃ ・・・(1) 式(1)で、TcおよびTmはそれぞれポリエステルの
降温結晶化温度(℃)および融点(℃)であり、Tはオ
リフィス口金から10mm下の溶融ポリエステルシート
の表面温度(℃)である。
【0017】また、本発明によれば、本発明の上記目的
および利点は、第2に、本発明の上記製造方法で得られ
たポリエステルシートを、機械軸方向および横方向に二
軸延伸せしめることを特徴とする二軸配向ポリエステル
フィルムの製造法によって達成される。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】(ポリエステル)本発明で対象とするポリ
エステルとしては、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族グ
リコール成分からなる芳香族ポリエステルを好ましいも
のとして挙げることができる。芳香族ポリエステルとし
ては、例えば主たる芳香族ジカルボン酸成分がテレフタ
ル酸であるかまたは2,6−ナフタレンジカルボン酸で
あるポリエステルが好ましい。
【0020】主たる芳香族ジカルボン酸成分がテレフタ
ル酸であるポリエステルは、ジカルボン酸成分の50モ
ル%以上特に80モル%以上がテレフタル酸であるのが
好ましい。テレフタル酸以外の他のジカルボン酸成分と
しては、例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソ
フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、4,4’−ジフ
ェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびド
デカンジカルボンを挙げることができる。また、脂肪族
グリコール成分としては、例えばエチレングリコール、
ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3
−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペ
ンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6
−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ポ
リエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール
等を挙げることができる。このうちエチレングリコー
ル、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオー
ルが好ましく、特にエチレングリコールがポリエステル
フィルムの機械的特性や熱的特性等に優れるため好まし
い。
【0021】テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分と
するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレー
トを好ましく例示することができる。ポリエチレンテレ
フタレートは、50モル%以下、特に20モル%以下の
割合でテレフタル酸およびエチレングリコール以外の他
の成分が共重合されたものであってもよい。
【0022】また、主たる芳香族ジカルボン酸が2,6
−ナフタレンジカルボン酸であるポリエステルはジカル
ボン酸成分の50モル%以上、特に80モル%以上が
2,6−ナフタレンジカルボン酸であるのが好ましい。
2,6−ナフタレンジカルボン酸以外の他のジカルボン
酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、
ヘキサヒドロテレフタル酸、4,4’−ジフェニルジカ
ルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびドデカンジカ
ルボン酸を挙げることができる。また脂肪族グリコール
成分としては、上記した例と同じ具体例を挙げる事がで
きる。
【0023】2,6−ナフタレンジカルボン酸を主たる
ジカルボン酸成分とするポリエステルとしては、ポリエ
チレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを好ま
しく例示することができる。ポリエチレン−2,6−ナ
フタレンジカルボキシレートは50モル%以下、特に2
0モル%以下の割合で2,6−ナフタレンジカルボン酸
およびエチレングリコール以外の他の成分が共重合され
たものであってもよい。
【0024】ポリエチレンテレフタレートには50重量
%以下の割合で他の重合体、例えばポリエチレン−2,
6−ナフタレートなどが混合されていてもよい。
【0025】他方、ポリエチレン−2,6−ナフタレン
ジカルボキシレートには50重量%以下の割合で他の重
合体、例えばポリエチレンテレフタレートなどが混合さ
れていてもよい。
【0026】(冷却ロール)本発明では、冷却ロールと
して表面に多数のマイクロクラックの溝が形成されてい
る冷却ロールが用いられる。すなわち、冷却ロールの表
面の平坦面に微細で無秩序な多数の溝が存在し、この溝
は表面から深部に向かって繊細なクラックを形成してい
る。
【0027】マイクロクラックの溝は上記の如く非規則
的に形成されているが、この形成状況は後述する真空漏
洩法によって測定される通気抵抗が、好ましくは10,
000秒以下、より好ましくは5,000秒以下、特に
好ましくは1,000秒以下であるようになされてい
る。最も好ましい通気抵抗の範囲は2〜500秒であ
る。通気抵抗が10,000秒を超えるとキャスティン
グ速度の向上は期待薄となる。
【0028】本発明における通気抵抗とは、冷却ロール
の表面に真空領域を設けたとき、冷却ロールの表面のマ
イクロクラックの溝を通じて空気が流入し、この時真空
吸引を停止すると真空度が低下するが、この真空度が一
定値から他の一定値まで低下するに要する時間を持って
表す。通気抵抗の具体的な測定法は、図1にその概略図
を示すように、真空計12の付いた容器11の一端に真
空コック13を介して真空ポンプ14を接続し、他端に
真空ホース15を介してゴムの吸盤(例えば株式会社妙
徳製FPM.PFYK−40)16を付ける。真空コッ
ク13から吸盤16までの有効な真空容積を100cc
とする。図2に吸盤部分の拡大断面の模式図に示すよう
に、直径40mmの吸盤(16,22)を冷却ロールの
表面24に押し当て、直径30mmのポーラスなシート
(例えば日本精線株式会社製ナスロン低密度焼結体8−
L−500)23を吸盤の外周面と接触するように吸盤
の中央に置いて押し当てる。次いで真空ポンプ14によ
り100ccの該容器を−93.1kPa(−700m
mHg)以下の真空にしてコック13を閉じると、吸盤
部分の表面の溝を通じて真空系に空気が流入するため真
空度が低下する。この時真空度が−93.1kPaから
−86.45kPa(−700mmHgから−650m
mHg)に低下するに要する時間をもって通気抵抗と定
義する。なお通気抵抗の測定に先立って測定器の真空漏
れをチェックするために、磨かれたガラス板の通気抵抗
が20,000秒以上であることを確認する。
【0029】また、冷却ロールは、該冷却ロール表面上
に設けられた任意方向の長さ10mmの仮想直線に対し
て交差する少なくとも5本のマイクロクラックの溝を該
冷却ロール表面に有し、該交差するマイクロクラックの
溝の70%以上の数のマイクロクラックの溝が該仮想直
線との交差点において0.1〜100μmの範囲の溝幅
を有しそして該仮想直線と交差するマイクロクラックの
溝の全数の交差点における溝幅の合計が5mm以下であ
るのが好ましい。溶融シートが冷却ロール面に密着する
際その間に巻込まれた空気は、このマイクロクラックの
溝を通って排出される。
【0030】マイクロクラックの溝のシートへの転写
(オレンジ肌用欠点)強度は、マイクロクラックの溝幅
に依存するので、転写強度をより軽微にするためには溝
幅は100μm以下、望ましくは50μm以下、さらに望
ましくは20μm以下とするのが好ましい。
【0031】さらに、多数のマイクロクラックの溝が冷
却ロール表面に開口する開口溝面積の合計は冷却ロール
表面1mm2当り0.01〜0.3mm2であるのが好ま
しい。
【0032】この値が0.01未満であると、キャスト
の高速化を十分に大きくし難く、またこの値が0.3を
超えるとキャストの際に冷却ロール上で固化させたポリ
エステルシートが冷却ロールから剥離し難い不都合が生
じ易くなる。
【0033】下限値はキャストを高速化するため0.0
2であることが好ましく、上限値はポリエステルシート
の冷却ロールからの剥離を良好なものとするため0.2
であることが好ましい。
【0034】開口溝面積の合計は、溶融ポリエステルシ
ートと接触する冷却ロールの表面の少なくとも一ヶ所の
1mm2の部分を測定すればよいが、溶融ポリエステル
シートと接触する冷却ロールの表面の少なくとも4ヶ所
(冷却ロールの幅方向における中央部において円周方向
に角度90°で直交する4ヶ所)測定して平均するのが
好ましく、12ヶ所(冷却ロールの幅方向における中央
部および両端部と中央部との中間部において円周方向に
角度90°で直交する12ヶ所)測定して平均するのが
特に好ましい。
【0035】(キャスト方法)本発明方法は、上記の如
き冷却ロールの表面上に、オリフィス状口金から押出さ
れた溶融ポリエステルシートを落下させ且つ密着させさ
らに該冷却ロール上で固化させる。
【0036】オリフィス状口金とは、例えばTダイ、フ
ィッシュテールダイ、Iダイ等で、直線状の開口部を有
する口金である。口金先端に幅方向オリフィスに平行に
パイプを埋める口金が好都合である。
【0037】溶融ポリエステルシートを冷却ロールの表
面に密着させる方法としては、例えば溶融ポリエステル
シートに静電荷を付加してクーロン力で冷却ロール面に
密着する静電密着法や、空気を主体とする気体の静圧を
シートに作用させて、冷却ロール面に密着させる気体押
圧法を好ましい方法として挙げることができる。
【0038】冷却ロールの冷却方式としては、種々採用
できる。冷却ロールとしては、中でも内部に冷却水を導
入しそして排出して冷却ロール表面上のポリエステルシ
ートを冷却する方式のものが好ましい。また、その場
合、排出時の冷却水の温度を導入時の冷却水の温度より
も1〜10℃の上昇に抑えるのが好ましい。温度上昇が
10℃を超えると、冷却ロールでの冷却能力が低下して
冷却過程でのシート温度が上がりシート状物から昇華す
る低分子量化合物の量が増えると共に、シート状物が冷
却ロールに粘着して冷却ロールからシートが剥離し難く
なり、シート成形速度を下げざるを得なくなる。加え
て、冷却ロール幅方向に温度差が発生して得られたシー
トの品質が幅方向で異なるなどの不具合が生じ易くな
る。
【0039】また、温度上昇を1℃より低く抑えるに
は、冷却ロールに流す冷却水の水量を必要以上に多くす
る必要があり、冷却装置、ポンプなどの設備が大型化し
て、設備コスト、運転コストが大きくなる不具合が生
じ、好ましくない。
【0040】温度上昇の上限は、8℃であることが好ま
しく、6℃であることが特に好ましい。また、温度上昇
の下限は、2℃であることがシートの品質が優れたもの
になるため好ましく、3℃であることが特に好ましい。
【0041】冷却ロールのロール直径は、好ましくは
0.6〜4.0mの範囲にある。冷却ロールの直径が
0.6m未満では、冷却能力が不足してマイクロクラッ
クの溝の目詰まりが早くなり易く、冷却ロールからの剥
離性が悪くなり易い。4.0mを超えると冷却能力は十
分であるが、ロールが大きすぎてマイクロクラックの表
面加工が困難となり、その加工費が増大する。実用的な
冷却ロールの直径の下限は、0.8m以上が好ましく、
1.0m以上が特に好ましい。直径の上限は3.5m以
下が好ましく、3.0m以下が特に好ましい。
【0042】また、冷却ロールの多数のマイクロクラッ
クの溝を有する表面を持つシェルの厚みは好ましくは5
〜30mmである。
【0043】冷却ロールのシェル厚みが5mm未満では
冷却ロールの強度が十分に維持でき難くなり、ロールの
変形によりシートの平面性が悪化し易い。30mm以上
では冷却水からの熱伝達が悪くなってシートの冷却不足
が発生し易くなる。実用的な冷却ロールのシェル厚みの
下限は7mm以上で好ましくは9mm以上で、上限は2
5mm以下で好ましくは20mm以下である。
【0044】本発明方法では、オリフィス口金から10
mm下の溶融ポリエステルシートの表面温度(T、℃)
は、下記式(1)を満足する温度に維持される。
【0045】
【数3】 Tc+20℃≦T≦Tm+40℃ ・・・(1) 式(1)で、TcおよびTmはそれぞれポリエステルの
降温結晶化温度(℃)および融点(℃)であり、Tはオ
リフィス口金から10mm下の溶融ポリエステルシート
の表面温度(℃)である。
【0046】シートの表面温度がTm+40℃を超える
と本発明の効果が得られず、またTc+20℃より低い
と、口金先端のオリフィス部分に固化したポリエステル
等の突起物が生じ、この突起がオリフィスから押出され
たシートと接触してシートに筋状の欠点が生じたり、ま
た脱着した突起物がシートに付着して引取られてシート
の欠点になる。シートの表面温度の上限は、Tm+30
℃であることが本発明の効果が一層顕著になるため好ま
しく、Tm+25℃であることが特に好ましい。また、
シートの表面温度の下限は、Tc+25℃であることが
シート表面の平滑性が優れたものになるため好ましく、
Tc+30℃〜であることが特に好ましい。
【0047】シートの表面温度を本発明の範囲に保持す
ることによって、溶融ポリエステルに含まれる低分子量
化合物がシート内部から表面へ拡散するのを抑制し、さ
らに表面からの昇華を抑制して冷却ロール表面への堆積
速度を抑制することができる。また、低分子量化合物の
冷却ロール表面への堆積のみならず、マイクロクラック
の溝の内部への堆積をも抑制されるので、マイクロクラ
ックの溝の通気抵抗の経時変化が抑制でき、その結果キ
ャスト速度を高いレベルで長時間維持できる。
【0048】表面温度は放射式温度計で測定できる。放
射式温度計はシート状物の表面温度を選択的に測定で
き、しかも非接触式測定であるためシート状物に外乱を
与えないので好都合である。
【0049】また、ポリエステルの融点および降温結晶
化温度は、示差走査熱量計(DSC)で測定される。ポ
リエステルサンプル約10mgをアルミ製パンに入れ3
00℃で5分間加熱して溶融し、次いで該パンを氷上に
移して急冷し測定サンプルとする。この測定サンプルを
25℃から20℃/分の速度で昇温して融解ピーク温度
を融点(Tm:℃)とする。一方、ポリエステルサンプ
ル約10mgをアルミ製パンに入れ300℃で5分間加
熱して溶融した後、10℃/分の速度で降温し、結晶化
ピーク温度を降温結晶化温度(Tc:℃)とする。
【0050】シート表面温度を上記範囲に保持するに
は、口金あるいは口金先端部分に空気あるいはオイル等
の冷媒を流して熱交換する方法がある。シートの表面温
度に斑を生じぬように低下させるためには、口金先端部
分の幅方向オリフィスに平行にパイプを埋め込んで前記
冷媒を循環したり、温度斑の観点からヒートパイプを埋
め込んで口金先端を制御する方法が好ましい。
【0051】また、本発明方法では、溶融ポリエステル
シートと接触する前の冷却ロールの表面温度が5〜Tg
−20℃の範囲に維持される。冷却ロールの表面温度を
5〜Tg−20℃に維持することにより、前記の如き表
面温度Tに維持された溶融ポリエステルシートを受け取
って、冷却ロールのマイクロクラックの溝に昇華物が付
着し堆積するのを有効に防止することができる。ロール
の表面温度は10〜Tg−25℃の範囲が好ましく、1
5〜Tg−30℃の範囲がさらに好ましい。
【0052】本発明方法で溶融ポリエステルシートを冷
却ロール表面に密着させるには、上記の如く、溶融ポリ
エステルシートに静電気を付与して電荷の移動を介して
冷却ロールに密着させるかあるいは溶融ポリエステルシ
ートが冷却ロールと接触する面側の雰囲気の圧力を反対
面側の雰囲気の圧力よりも低くして冷却ロールに密着さ
せる方法が好ましく採用される。
【0053】これらのうち、前者の静電密着法を採用す
る場合には、溶融ポリエステルシートがテレフタル酸を
主たる酸成分とするポリエステルの溶融シートであると
きには、その比抵抗が3×106〜1×108Ω・cmで
ありそして溶融ポリエステルシートに初期蓄積電荷量が
2.5〜8.5μC/mm2、より好ましくは3.0〜
8.0μC/mm2となるように静電気を付与するのが
好ましい。
【0054】溶融ポリエステルシートが2,6−ナフタ
レンジカルボン酸を主たる酸成分とするポリエステルの
溶融シートであるときには、その比抵抗が1×107
5×108Ω・cmでありそして溶融ポリエステルシー
トに初期蓄積電荷量が2.2〜8.0μC/mm2、よ
り好ましくは2.5〜7.5μC/mm2となるように
静電気を付与するのが好ましい。
【0055】初期蓄積電荷量が上記下限値未満であると
静電密着法で高速でシートを得難く、また上記上限値を
超えるとフィルム中の粗大な粒子や異物が多くなる問題
が生じ、あるいはポリマーの熱安定性が不足してフィル
ムが黄色に着色するなどの問題が生じ易くなる。
【0056】溶融状態での初期蓄積電荷量が本発明の範
囲となるポリエステルは、上記ポリエステルにアルカリ
金属、アルカリ土類金属、Mg、Pまたはそれらの化合
物等、それら金属化合物を少なくとも1種以上を配合す
ることにより調整することができる。これらの金属化合
物のうち、Mg化合物(例えば酢酸マグネシウム)が好
ましく、P化合物と併用することが特に好ましい。
【0057】金属化合物の配合割合は、例えばポリエス
テル中に金属原子として20〜2,000ppmである
ことが好ましく、さらに50〜1,000ppm、特に
100〜600ppmであることが好ましい。
【0058】本発明において、ポリエステルシートの成
形速度は、テレフタル酸を主たる酸成分とするポリエス
テルにあっては、65〜250m/minとするのが好
ましく、2,6−ナフタレンジカルボン酸を主たる酸成
分とするポリエステルにあっては40〜200m/mi
nとするのが好ましい。
【0059】本発明において成形されたシートの厚さは
5〜400μmであることが好ましい。
【0060】(ポリエステルフィルム)本発明によれ
ば、本発明の上記方法によって得られたポリエステルシ
ートを、機械軸方向と横方向とに二軸延伸することによ
る二軸配向ポリエステルフィルムの製造法が同様に提供
される。この方法により二軸延伸フィルム表面へのマイ
クロクラックの転写を大幅に軽減できる。
【0061】本発明において二軸延伸とは、未延伸シー
トを予熱して機械軸方向に延伸し、続いて横方向に延伸
する逐次二軸延伸すること、あるいは機械軸方向と横方
向の延伸を同時に行う同時二軸延伸することである。特
に逐次二軸延伸の場合は種々の公知の延伸方法、例えば
特開昭54−8672号公報や特開昭54−8672号
公報に提案されている延伸方法が都合よく適用できる。
例えば未延伸シートを、複数の区間で加熱と延伸を繰り
返して機械軸方向の合計倍率が2〜10倍になるように
機械軸方向に多段階に延伸し、この複数の機械軸延伸区
間の間に、および/または機械軸延伸工程に続いて横方
向の合計倍率が2〜10倍になるように延伸して、両者
の延伸倍率の積が4〜50倍、好ましくは9〜40倍、
特に好ましくは12〜30倍にする方法も本発明に用い
ることができる。
【0062】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に
説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、以下の
実施例に限定されるものではない。また、各特性値は下
記の方法によって測定した。
【0063】尚、実施例の中で『部』と記載したもの
は、『重量部』のことを表す。また、フィルムの縦方向
とはフィルムの製造における押出方向を、横方向とはフ
ィルム面内の縦方向と直交する方向を意味する。
【0064】(1) ポリエステルの融点(Tm) サンプル約10mgを測定用のアルミニウム製パンに封
入する。サンプルを封入したアルミニウム製パンを示差
熱量計(デュポン社製・V4.OB2000型DSC)
に装着し、25℃から300℃まで20℃/分の速度で
昇温させた後、300℃で5分間保持し、次いでこのパ
ンを示差熱量計から取出し、直ちに氷の上に移して急冷
する。このパンを再度示差熱量計に装着し、25℃から
20℃/分の速度で昇温させた際に生じる融解ピークの
頂点温度をポリエステルの融点(Tm:℃)とする。
【0065】(2) ポリエステルの降温結晶化温度
(Tc) サンプル約10mgを測定用のアルミニウム製パンに封
入する。サンプルを封入したアルミニウム製パンを示差
熱量計(デュポン社製・V4.OB2000型DSC)
に装着し、25℃から300℃まで20℃/分の速度で
昇温させた後、300℃で5分間保持し、次いで10℃
/分の速度で降温させた際に生じる結晶化ピークの頂点
温度を降温結晶化温度(Tc:℃)とする。
【0066】(3) ポリエステルのガラス転移温度
(Tg) サンプル約10mgを測定用のアルミニウム製パンに封
入する。サンプルを封入したアルミニウム製パンを示差
熱量計(デュポン社製・V4.OB2000型DSC)
に装着し、25℃から300℃まで20℃/分の速度で
昇温させた後、300℃で5分間保持し、次いでこのパ
ンを示差熱量計から取出し、直ちに氷の上に移して急冷
する。このパンを再度示差熱量計に装着し、25℃から
10℃/分の速度で昇温させてガラス転移温度(Tg:
℃)を測定する。
【0067】(4) 溶融ポリエステルシートの表面温
度(T) オリフィス口金から10mm下の溶融ポリエステルシー
トの幅方向でシートの中央部分の表面温度を非接触式温
度計(株式会社キーエンス製・IT2−60型ポイント
マーカー付ハンディ温度計:放射率設定値0.93)で
測定する。測定面は溶融ポリエステルシートの冷却ロー
ルに接しない側で実施する。
【0068】(5) 冷却ロールの表面温度 溶融ポリエステルシートが冷却ロールへ接触する前の冷
却ロールの表面温度を非接触式温度計(帝人エンジニア
リング株式会社 ロール温度測定装置TLR−1)にて
測定する。放射率は、別途接触式温度計で測定した値と
一致するよう設定する。冷却ロール表面温度の測定位置
は、溶融ポリエステルシートが冷却ロールへ接触する前
の50mmから200mmまでの区間とする。
【0069】(6) 真空漏洩法による通気抵抗 本発明における通気抵抗とは、粗面(冷却ロールの表
面)に真空吸引により一定真空度の真空領域を設け、真
空吸引を停止した後、粗面の溝を通じて空気が流入し、
真空度が一定値から他の一定値まで低下するのに要する
時間のことである。
【0070】この時通気抵抗の具体的な測定法は、第1
図にその概略図を示すように、真空計12の付いた容器
11の一端に真空コック13を介して真空ポンプ14を
接続し、他端に真空ホース15を介してゴムの吸盤(例
えば株式会社妙徳製FPM.PFYK−40)16を付
ける。真空コック13から吸盤16までの有効な真空容
積を100ccとする。第2図に吸盤部分の拡大断面の
模式図に示すように、直径40mmの吸盤(16,2
2)を冷却ロール表面24に押し当て、吸盤の外周面が
接触するように直径30mmのポーラスなシート(例え
ば日本精線株式会社製ナスロン低密度焼結体8−L−5
00)23を吸盤の中央に置いて押し当てる。次いで真
空ポンプ14により100ccの該容器を−93.1k
Pa(−700mmHg)以下の真空にしてコック13
を閉じると、吸盤部分の粗面の溝を通じて真空系に空気
が流入するため真空度が低下する。この時真空度が−9
3.1kPaから−86.45kPa(−700mmH
gから−650mmHg)に低下するに要する時間を通気
抵抗と定義する。なお通気抵抗の測定に先立って測定器
の真空漏れをチェックするために、磨かれたガラス板の
通気抵抗が20000秒以上であることを確認する。
【0071】また、通気抵抗の測定は、冷却ロール幅方
向の中央部を回転方向に90度のピッチで4箇所とし、
その平均値を冷却ロールの通気抵抗とする。
【0072】(7) マイクロクラックの交差クラック
数 冷却ロール表面に長さ10mmの走査線を描きこの部分
を光学顕微鏡(ユニオン光学株式会社製・RMP型ロー
ルスコープ)にて倍率100倍で観察し、写真撮影す
る。得られた写真から、長さ10mmの走査線に交差す
るクラックの総数を求める。
【0073】(8) マイクロクラックの平均開口幅 冷却ロール表面に長さ10mmの走査線を描きこの部分
を光学顕微鏡(ユニオン光学株式会社製・RMP型ロー
ルスコープ)にて倍率500倍で観察し、写真撮影す
る。得られた写真から、長さ10mmの走査線に交差す
る全てのクラックの幅を求め、その平均値を平均開口幅
とする。
【0074】(9) ポリマーの溶融粘度 JIS K7210に準じて高化式フローテスター(株
式会社島津製作所製)により、溶融ポリマーを測定用シ
リンダー内で300℃で60秒間保った後、長さ10m
m直径1mmの形状のノズルから溶融ポリマーを荷重3
0MPaの条件で吐出させで溶融粘度(Pa・s)を測
定する。
【0075】(10) 溶融ポリマーの比抵抗 溶融ポリマーの比抵抗は、ブリッティシュ・ジャーナル
・オブ・アプライド・フィジックス(Brit.J.A
ppl.Phys.)第17巻,第1149〜1154
頁(1966年)に記載の方法に従って測定する。但
し、溶融温度をポリマーがテレフタル酸を主たる酸成分
とするポリエステルの場合は290℃とし、2,6−ナ
フタレンジカルボン酸を主たる酸成分とするポリエステ
ルの場合は295℃として、直流1000Vの電圧を印
加した直後の値を測定する。
【0076】(11) 初期蓄積電荷量 溶融状態での初期蓄積電荷量は、特開昭62−1891
33号公報に記載の方法に従って測定した。但し、ポリ
マーの溶融温度はポリマーがテレフタル酸を主たる酸成
分とするポリエステルの場合は275℃とし、ポリマー
が2,6−ナフタレンジカルボン酸を主たる酸成分とす
るポリエステルの場合は295℃として、直流1200
Vの電圧を3分間印加した時の電圧および電流値から算
出する。
【0077】(12) シートまたはフィルム厚み マイクロメータで10個所測定し、その平均値をシート
またはフィルムの厚みとする。
【0078】(13) 金属化合物の配合割合 蛍光X線(理学電気工業株式会社 蛍光X線3270型)
によってポリマー中の金属量(単位ppm)を測定する。
【0079】[実施例1−1]ポリエチレン−2,6−
ナフタレンジカルボキシレート(Tm:270℃、T
c:220℃)を口金先端温度を255℃に設定してあ
るTダイから、厚さ150μmの溶融ポリエステルシー
トとして押出し、これを表面温度35℃に維持してある
マイクロクラック表面の回転冷却ドラムに静電密着法に
より密着させ冷却させながら速度53m/分でポリエス
テルシートを製膜した。押出されたシート状物の口金か
ら約10mm下の表面温度は262℃であった。また、
用いた冷却ロールは、表面のマイクロクラックの平均溝
幅が2.3μm、製膜前の平均通気抵抗は380秒のも
のであり、製膜初期に評価した欠点のない良好なシート
が得られる最高キャスト速度は56m/分のものであっ
た。
【0080】得られたポリエステルシートは、引続いて
縦方向に3.9倍、横方向に4.2倍逐次二軸延伸し、
この条件で6日間二軸延伸ポリエステルフィルムを製膜
した。製膜開始後4日目に製膜を一時中断して、冷却ロ
ール面に堆積した昇華物を除去(洗浄剤含有水溶液を含
ませた布を硬く絞ってロール表面を拭いた)し、さらに
製膜を2日間続行した。途中切断等のトラブルもなく好
調に製膜することができた。また、得られた二軸延伸フ
イルムは表面欠点がなく透明平滑な高品質フイルムであ
った。製膜終了後に冷却ロールを評価した結果、最高キ
ャスト速度は56m/分で、製膜初期と比較して経時変
化は無く、また通気抵抗も383秒でほとんど変化がな
かった。
【0081】[比較例1−1]口金先端温度を307℃
とし、押出されたシート状物の表面温度が312℃であ
ったこと、冷却ロール面に堆積した昇華物の除去操作頻
度を変えたこと以外は実施例1−1と同様の方法および
条件で6日間製膜した。冷却ロール表面への昇華物の堆
積速度が速く、フィルムにオレンジ肌様の欠点が生じる
のを防ぐため、製膜の過程で冷却ロール面に堆積した昇
華物の除去清掃を3回実施する必要があった。また、製
膜開始後6日目に横延伸工程でフィルム切断が頻発する
トラブルが発生したため、製膜を中止した。尚、製膜初
期に評価した最高キャスト速度(56m/分)に対し、
製膜終了後に評価した最高キャスト速度は52m/分で
経時変化が認められた。また、製膜前の平均通気抵抗が
380秒であったのに対し、製膜終了後の平均通気抵抗
は391秒であり性能低下が認められた。通気抵抗が局
部的に436秒にまで悪化している部分もあった。
【0082】[実施例1−2]比較例1−1で6日間製
膜に使用した冷却ロールを再生洗浄した結果、平均通気
抵抗が380秒、最高キャスト速度が56m/分であ
り、製膜初期の値に戻った。この冷却ロールを用い、実
施例1−1と同様の条件で6日間二軸延伸ポリエステル
フィルムを製膜した。製膜の結果実施例1−1と同等の
結果が得られ、切断トラブルも生じなかった。
【0083】[実施例1−3]実施例2で6日間製膜に
使用した冷却ロールの表面に堆積した昇華物を除去した
もの(冷却ロールを再生洗浄しないもの)を用い、実施
例1−2と同様の条件で6日間二軸延伸ポリエステルフ
ィルムを製膜した。製膜の結果実施例1−2と同等の結
果が得られた。
【0084】[実施例2−1]ポリエチレンテレフタレ
ート(Tm:260℃、Tg:79℃、Tc:160
℃)を口金先端温度を260℃に設定してあるTダイ
(幅400mmの口金)から厚さ210μmのポリエス
テルシートとして押出し、これを表面温度30℃に維持
してあるマイクロクラック表面の回転冷却ドラムに静電
密着法により密着させ冷却させながら65m/分の速度
でポリエステルシートを製膜した。押出されたシート状
物の口金から約10mm下の表面温度は265℃であっ
た。引き続いてこの未延伸シートを縦方向に3.6倍、
次いで横方向に3.9倍二軸延伸し、さらに215℃の
温度で熱処理して二軸延伸フィルムとした。
【0085】冷却ロールには、真空漏洩法によって測定
される通気抵抗が平均29秒のマイクロクラック表面
(表面上の走査線10mmに対し交差するクラックの数
が平均75個であり、走査線10mmに対し交差する全
クラックの平均開口幅が12μm)のものを用いた。ま
た、キャストの間、シート状物が着地する点から100
mm上流の冷却ロールの表面温度(ロール温度測定装置
TLR−1で測定)は52℃であった。
【0086】得られた未延伸シートには極めて微弱なマ
イクロクラックの転写模様が認められたが、二軸延伸フ
ィルムにはオレンジ肌様欠点は認められず、フィルムの
表面平滑性についてビデオ用磁気記録材料のベース材料
としての品質基準を満たすものであった。尚、未延伸シ
ートの転写模様の山脈の高さは約0.06μmであった
が、二軸延伸フィルムの転写模様の高さは0.02μm
の検出精度では検知できなかった。
【0087】[実施例3−1]溶融粘度が1200Pa
・sのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシ
レート(Tm:270℃、Tg:121℃)を溶融し、
幅400mmの口金から厚さ120μmのシート状に押
出し、静電密着法を併用しながら冷却ロールにて55m
/分の速度でキャストし、冷却ロールに下記のものを用
いた以外は実施例1−1と同様の未延伸シートを得た。
引き続いてこの未延伸シートを縦方向に3.9倍、次い
で横方向に4.1倍二軸延伸し、さらに225℃の温度
で熱処理して二軸延伸フィルムとした。
【0088】冷却ロールには、真空漏洩法によって測定
される通気抵抗が平均29秒のマイクロクラック表面
(表面上の走査線10mmに対し交差するクラックの数
が平均75個であり、走査線10mmに対し交差する全
クラックの平均開口幅が12μm)のものを用いた。ま
た、キャストの間、シート状物が着地する点から100
mm上流の冷却ロールの表面温度(ロール温度測定装置
TLR−1で測定)は55℃であった。
【0089】得られた未延伸シートには極めて微弱なマ
イクロクラックの転写模様が認められたが、二軸延伸フ
ィルムにはオレンジ肌様欠点は認められず、フィルムの
表面平滑性についてビデオ用磁気記録材料のベース材料
としての品質基準を満たすものであった。尚、未延伸シ
ートの転写模様の山脈の高さは約0.05μmであった
が、二軸延伸フィルムの転写模様の高さは0.01μm
の検出精度では検知できなかった。
【0090】[実施例4−1]マグネシウム化合物(8
0ppm)、リン化合物(30ppm)、アンチモン化
合物(250ppm)を含有し、溶融時の比抵抗が4×
107・cmのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカ
ルボキシレート(Tg:121℃、Tm:270℃)
を、押出機で溶融し、口金から厚さ180mのシート状
に押出し、下記に示すマイクロクラック表面の冷却ロー
ルに静電密着法を併用して密着させ固化させる以外は実
施例1−1と同様に未延伸シートを得た。溶融シートの
着地点近傍の冷却ロール表面温度は63℃、シート成形
の最高速度は98m/分であった。この未延伸シートを
一旦巻取り、次いで縦方向に3.6倍、横方向に3.9
倍に二軸延伸した。
【0091】キャストに用いた冷却ロールはマイクロク
ラック表面のロールで、表面の真空漏洩法によって測定
される通気抵抗が平均65秒、表面上の走査線10mm
に対し交差するクラックの数が平均105個であり、走
査線10mmに対し交差する全クラックの平均開口幅が
7μmのものである。
【0092】得られた成形シートには極めて微弱なマイ
クロクラックの転写模様が認められるが、二軸延伸フィ
ルムにはオレンジ肌様欠点は認められず、また粗大異物
もなく、フィルムの表面平滑性についてビデオ用磁気記
録材料のベース材料としての品質基準を満たしていた。
【0093】[実施例5−1]マグネシウム化合物(9
0ppm)、リン化合物(30ppm)、アンチモン化
合物(330ppm)を含有し、溶融時の比抵抗が7×
106Ω・cmのポリエチレンテレフタレート(Tg:
79℃、Tm:260℃)を、口金から厚さ180μm
のシート状に押出し、下記に示すマイクロクラック表面
の冷却ロールに静電密着法を併用して密着させ固化させ
以外は実施例2−1と同様に未延伸シートを得た。溶融
シートの着地点近傍の冷却ロール表面温度は48℃、シ
ート成形の最高速度は130m/分であった。この未延
伸シートを一旦巻取り、次いで縦方向に3.6倍、横方
向に3.9倍に二軸延伸して、215℃で熱処理をし
た。
【0094】キャストに用いた冷却ロールはマイクロク
ラック表面のロールで、表面の真空漏洩法によって測定
される通気抵抗が平均65秒、表面上の走査線10mm
に対し交差するクラックの数が平均105個であり、走
査線10mmに対し交差する全クラックの平均開口幅が
7μmのものである。
【0095】得られた成形シートには極めて微弱なマイ
クロクラックの転写模様が認められるが、二軸延伸フィ
ルムにはオレンジ肌様欠点は認められず、また粗大異物
もなく、フィルムの表面平滑性についてビデオ用磁気記
録材料のベース材料としての品質基準を満たしていた。
【0096】[実施例6−1]キャストに用いた冷却ロ
ールはマイクロクラック表面のロールで、表面の真空漏
洩法によって測定される通気抵抗が平均65秒、表面上
の走査線10mmに対し交差するクラックの数が平均6
40個であり、走査線10mmに対し交差する全クラッ
クの平均開口幅が6μmのものである。
【0097】テープ状放電電極は断面が矩形で、厚さ5
0μm、幅8mm、長さ方向に一様な形状のステンレス
製テープで、6.7Kvの正の直流電圧を印加した。
【0098】口金からポリエチレンテレフタレートを厚
さ180μm、幅420mmのシート状に押出し、前記
マイクロクラック表面の冷却ロールに前記テープ状放電
電極(溶融シート表面から2mm離れた位置に設置し、
かつ溶融シートが冷却ロール表面に着地する個所の近傍
にテープ状電極の断面の長軸が冷却ロール面にほぼ垂直
になるように設置した。)で静電密着させキャストする
以外は実施例2−1と同様に未延伸シートを製膜してロ
ール状に巻き取った。
【0099】この時キャスト速度100m/分におい
て、欠点の無い高品質のシートを安定に生産するための
テープ状電極の許容移動幅は冷却ロールの周方向に1.
5mmで、この電極の許容移動幅は安定しており24時
間経過後も不変であった。また、シートにはオレンジ肌
様欠点は認められず、表面平滑性が良好なものであっ
た。このようにキャストして一旦巻き取ったシートを、
次いで縦方向に3.6倍、横方向に3.9倍に二軸延伸
して、215℃で熱処理をした。得られた二軸延伸フィ
ルムにはオレンジ肌様欠点は認められず、フィルムの表
面平滑性について高級ビデオ用磁気記録材料のベース材
料としての品質基準を満たしていた。
【0100】[実施例7−1]キャストに用いた冷却ロ
ールはマイクロクラック表面のロールで、表面の真空漏
洩法によって測定される通気抵抗が平均75秒、表面上
の走査線10mmに対し交差するクラックの数が平均6
10個であり、走査線10mmに対し交差する全クラッ
クの平均開口幅が4μm、粗さは0.09μm(Ra)
のものである。
【0101】口金からポリエチレンテレフタレートを厚
さ210μmのシート状に押出し、前記マイクロクラッ
ク表面の冷却ロールに密着させキャストした。その際ダ
イと冷却ロールの中間に減圧チャンバーを設け、このチ
ャンバーを減圧にすることで、押出しシートの冷却ロー
ルと接触する側の表面近傍の雰囲気を減圧にして、押出
しシートを冷却ロールと密着させる以外は実施例2−1
と同様に未延伸シートを製膜してロール状に巻き取っ
た。
【0102】減圧チャンバー内の減圧度を1400Pa
に保持した時、空気の巻込みに伴う気泡形成を生じるこ
となく安定して冷却シートを製造しうる最高速度は78
m/分であった。この最高速度は安定しており24時間
経過後も不変であった。また、シートにはオレンジ肌様
欠点は認められず、表面平滑性が良好なものであった。
このようにして一旦巻き取ったシートを、次いで縦方向
に3.6倍、横方向に3.9倍に二軸延伸して、215
℃で熱処理をした。得られた二軸延伸フィルムにはオレ
ンジ肌様欠点は認められず、フィルムの表面平滑性につ
いて高級ビデオ用磁気記録材料のベース材料としての品
質基準を満たしていた。
【0103】[比較例7−1]冷却ロールとして表面形
状が粗さ0.41μm(Ra)の梨地である冷却ロール
を用いる以外は実施例1−1と同様の装置と方法で製膜
を行った。その結果最高キャスト速度は56m/分であ
った。得られたシートにはオレンジ肌様の欠点が認めら
れた。このシートをさらに二軸延伸したフィルムにはオ
レンジ肌様の欠点が認められ、高級ビデオ用磁気記録材
料のベース材料としての品質基準を満たしていないフィ
ルムで、キャスト速度の高速性およびフィルム品質共に
マイクロクラック表面の冷却ロールより劣っていた。
【0104】[比較例7−2]冷却ロールとして表面形
状が粗さ0.15μm(Ra)の研磨筋を有する表面の
冷却ロールを用いる以外は実施例1−1と同様の装置と
方法で製膜を行った。その結果最高キャスト速度は44
m/分で、マイクロクラック構造の表面を有する冷却ロ
ールに比べて、キャスト速度の高速性は大幅に低い。
【0105】また、製膜時間と共に空気の巻込みに起因
する気泡が顕在化し、12時間後には気泡欠点がなく、
安定してキャスト出来る速度は、41m/分に低下し
た。
【0106】従来の粗面では、粗さの小さい冷却ロール
は高速効果が低く、しかも経時的変化が大きい。
【0107】[実施例8−1]ポリエチレンテレフタレ
ートを溶融し、口金から厚さ250μmのシート状に押
出し、静電密着法を併用しながら下記に示すマイクロク
ラック表面の冷却ロールにてキャストする以外は実施例
2−1と同様に未延伸シートを得た。引き続いてこの未
延伸シートを縦多段延伸装置にて、第一段延伸は110
℃で2倍に、第二段は120℃で1.1倍に、第三段で
は110℃で3倍、合計延伸倍率が6.6倍の3段階縦
延伸を行った。次いで横方向に4.3倍に延伸し、さら
に215℃で熱処理して二軸延伸フィルムを得た。縦方
向と横方向の延伸倍率の積は28倍であった。
【0108】冷却ロールには、真空漏洩法によって測定
される通気抵抗が平均125秒のマイクロクラック表面
(表面上の走査線10mmに対し交差するクラックの数
が平均150個であり、走査線10mmに対し交差する
全クラックの平均開口幅が6μm)のものを用いた。
【0109】得られた二軸延伸フィルムにはオレンジ肌
様欠点は全く認められず、フィルムの表面平滑性につい
ては高級ビデオ用磁気記録材料のベース材料としての品
質基準を満たしていた。
【0110】[実施例8−2]実施例8−1と同様のキ
ャスト装置で厚さ190μmの未延伸シートを成形し、
引き続いて100℃で縦方向に2.2倍、140℃で4
倍に横延伸し、再度160℃で2.3倍縦方向に延伸し
た以外は実施例1−1と同様に二軸延伸フィルムを得
た。縦方向と横方向の延伸倍率の積は20倍であった。
【0111】得られた二軸延伸フィルムにはオレンジ肌
様欠点は認められず、フィルムの表面平滑性については
高級ビデオ用磁気記録材料のベース材料としての品質基
準を満たしていた。
【0112】[実施例9−1]ポリエチレンテレフタレ
ートを溶融し、口金から240μm厚さのシート状に押
出し、静電密着法を併用しながら下記に示すマイクロク
ラック表面の冷却ロールにて速度100m/分でキャス
ト以外は実施例2−1と同様に未延伸シートを得た。引
き続いてこの未延伸シートを縦多段延伸装置にて、第一
段延伸は110℃で2.2倍に、第二段は120℃で
1.05倍に、第三段では90℃で4倍縦方向に多段延
伸し、次いで横方向に4.0倍に二軸延伸し、さらに2
15℃で熱処理して二軸延伸フィルムを得た。合計縦延
伸倍率は9.24倍で巻き取り速度は924m/分であ
った。
【0113】冷却ロールには、真空漏洩法によって測定
される通気抵抗が平均115秒のマイクロクラック表面
(表面上の走査線10mmに対し交差するクラックの数
が平均180個であり、走査線10mmに対し交差する
全クラックの平均開口幅が6μm)のものを用いた。
【0114】得られた二軸延伸フィルムにはオレンジ肌
様欠点は全く認められず、フィルムの表面平滑性につい
ては高級ビデオ用磁気記録材料のベース材料としての品
質基準を満たしていた。
【0115】[実施例9−2]実施例9−1と同様のキ
ャスト装置で、厚さ220μmの未延伸シートを速度1
20m/分でキャストし、引き続いて次いで100℃で
縦方向に2.2倍、140℃で横方向に3.6倍に横延
伸し、再度170℃で2.7倍縦方向に延伸して、巻取
り速度708m/分で巻取る以外は実施例1−1と同様
に二軸延伸フィルムを得た。合計縦延伸倍率は5.9倍
であった。
【0116】得られた二軸延伸フィルムには全くオレン
ジ肌様欠点は認められず、フィルムの表面平滑性につい
ては高級ビデオ用磁気記録材料のベース材料としての品
質基準を満たしていた。
【0117】[実施例10−1]マグネシウム化合物
(100ppm)、リン化合物(40ppm)、アンチ
モン化合物(300ppm)を含有し、溶融時の初期蓄
積電荷量が5.9μC/mm2 のポリエチレンテレフタ
レート(Tg:79℃、Tm:260℃)を押出機で溶
融し、口金から厚さ180μmのシート状に押出し、下
記に示すマイクロクラック表面の冷却ロールに静電密着
法を併用して密着させ固化させる以外は実施例2−1と
同様にて未延伸シートを得た。溶融シートの着地点近傍
の冷却ロール表面温度は48℃、シート成形の最高速度
は122m/分であった。この未延伸シートを一旦巻取
り、次いで縦方向に3.6倍、横方向に3.9倍に二軸
延伸して、215℃で熱処理をした。
【0118】キャストに用いた冷却ロールはマイクロク
ラック表面のロールで、表面の真空漏洩法によって測定
される通気抵抗が平均65秒、表面上の走査線10mm
に対し交差するクラックの数が平均105個であり、走
査線10mmに対し交差する全クラックの平均開口幅が
7μmのものである。
【0119】得られた成形シートには極めて微弱なマイ
クロクラックの転写模様が認められるが、二軸延伸フィ
ルムにはオレンジ肌様欠点は認められず、また粗大異物
もなく、フィルムの表面平滑性についてビデオ用磁気記
録材料のベース材料としての品質基準を満たしていた。
【0120】[実施例11−1]マグネシウム化合物
(90ppm)、リン化合物(40ppm)、アンチモ
ン化合物(280ppm)を含有し、溶融時の初期蓄積
電荷量が5.5μC/mm 2 のポリエチレン−2,6−
ナフタレ−ト(Tg:121℃、Tm:270℃)を押
出機で溶融し、口金から厚さ160μmのシート状に押
出して下記に示すマイクロクラック表面の冷却ロールに
静電密着法を併用して密着させ固化させる以外は実施例
1−1と同様の未延伸シートを得た。て未延伸シートを
得た。溶融シートの着地点近傍のロール表面温度は63
℃、シート成形の最高速度は88m/分であった。この
未延伸シートを一旦巻取り、次いで縦方向に3.6倍、
横方向に3.9倍に二軸延伸して、225℃で熱処理を
した。
【0121】キャストに用いた冷却ロールはマイクロク
ラック表面のロールで、表面の真空漏洩法によって測定
される通気抵抗が平均70秒、表面上の走査線10mm
に対し交差するクラックの数が平均105個であり、走
査線10mmに対し交差する全クラックの平均開口幅が
7μmのものである。
【0122】得られた成形シートには極めて微弱なマイ
クロクラックの転写模様が認められるが、二軸延伸フィ
ルムにはオレンジ肌様欠点は認められず、また粗大異物
もなく、フィルムの表面平滑性についてビデオ用磁気記
録材料のベース材料としての品質基準を満たしていた。
【0123】[実施例12−1]ポリエチレンテレフタ
レート(Tm:260℃、Tg:79℃)を口金先端温
度を280℃に設定してあるTダイから、厚さ140μ
mの溶融ポリエステルシート状物として押出し、これを
表面温度25℃に維持してあるマイクロクラック表面の
回転冷却ドラムに静電密着法により密着させ冷却させな
がらキャスト速度を50m/分から除々に上昇させなが
らポリエステルシートを製膜した。押出されたシート状
物の口金から約10mm下の表面温度は280℃であっ
た。
【0124】用いた冷却ロールは、表面のマイクロクラ
ック部分の総面積Acが、溶融ポリエステルシートと接
触する冷却ロールの表面1mm2 当り、ロール幅方向の
中央部において、円周方向に角度90°で直交する4箇
所で0.051mm2 、0.052mm2 、0.048
mm2 および0.049mm2 (平均値で0.050m
2 )であった。また、冷却ロールの直径は2.0m、
冷却ロールの幅は1.0、冷却ロールのシェルの厚みは
10mmのものを用いた。最高キャスト速度は180m
/分まで可能であり、得られたポリエステルシートは欠
点のない良好なシートが得られるのものであった。その
時の冷却ロール内部に導入した冷却水温度(Ti)は2
4℃、冷却ロール外部に排出した冷却水温度(To)は
27℃、冷却水温度差(To−Ti)は3℃であった。
【0125】得られたポリエステルシートは、引続いて
縦方向に3.4倍、横方向に4.0倍逐次二軸延伸し、
この条件で7日間二軸延伸ポリエステルフィルムの製膜
が可能であった。この間切断等のトラブルもなく製膜で
きた。また、得られた二軸延伸フイルムは表面欠点がな
く透明平滑な高品質フイルムであった。
【0126】[実施例12−2〜12−4および比較例
12−1]用いたポリエステルの種類、冷却ロールの表
面のマイクロクラック部分の総面積Ac、冷却ロールの
直径、冷却ロールのシェルの厚み、冷却ロール内部に導
入した冷却水温度(Ti)、冷却ロール外部に排出した
冷却水温度(To)、冷却水温度差(To−Ti)を表
1に示すものに変えた以外は実施例12−1と同様にポ
リエステルシートおよび二軸延伸ポリエステルフィルム
を製膜した。
【0127】最高キャスト速度は、得られたポリエステ
ルシートおよび二軸延伸ポリエステルフィルムの品質、
連続製膜期間およびこの間の製膜状況を表1に示す。な
お、比較例12-1の鏡面冷却ロールを用いた製膜では
シート表面欠陥が発生して成形速度が上がらなかった。
【0128】
【表1】
【0129】尚、表1のポリエステルの種類の欄で、P
ETはポリエチレンテレフタレート(Tm:260℃、
Tg:79℃)、PENはポリエチレン−2,6−ナフタ
レンジカルボキシレート(Tm:270℃、Tg:12
1℃)であることを示す。
【0130】
【発明の効果】本発明によれば、マイクロクラック表面
の冷却ロールを用いてポリエステルシートを製膜する際
に、溶融ポリエステルに含まれる低分子量化合物がマイ
クロクラックの溝内部に堆積する速度を低いレベルに抑
えることができ、高品質のフィルムを高速で安定して生
産できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、冷却ロールのマイクロクラックの溝の
通気抵抗を測定するための装置の模式図である。
【図2】図2は、図1の通気抵抗測定装置の吸盤部分の
拡大断面を示す模式図である。
【符号の説明】
11:真空容器 12:真空計 13:真空コック 14:真空ポンプ 15、21:真空ホース 16、22:吸盤 23:ポーラスなシート 24:冷却ロール表面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // B29K 67:00 B29K 67:00 B29L 7:00 B29L 7:00 C08L 67:00 C08L 67:00 (72)発明者 後藤 陽 神奈川県相模原市小山3丁目37番19号 帝 人デュポンフィルム株式会社相模原研究セ ンター内 (72)発明者 高木 憲男 神奈川県座間市立野台2丁目14番8号 Fターム(参考) 4F073 AA10 BA23 BA24 BB01 GA05 GA11 4F207 AA24 AA26 AG01 AR06 KA01 KA17 KK65 KK66 KM15 KM20 4F210 AA24 AA26 AG01 AR12 QC06 QC13 QD50 QG01 QG18 QW05

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 オリフィス状口金から押出された溶融ポ
    リエステルシートを、表面に多数のマイクロクラック溝
    が形成されている冷却ロール上に落下させ且つ密着させ
    そして該冷却ロール上で固化させてポリエステルシート
    を製造する方法であって、オリフィス口金から10mm
    下の溶融ポリエステルシートの表面温度(T、℃)を下
    記式(1)を満足するように維持し且つ溶融ポリエステ
    ルシートと接触する際の冷却ロールの表面温度を5〜T
    g−20℃の範囲(ここでTgはポリエステルのガラス
    転移温度である)に制御して冷却ロールのマイクロクラ
    ックの溝内に溶融ポリエステルからの昇華物の付着を防
    止しつつポリエステルシートを連続的に形成することを
    特徴とするポリエステルシートの製造法。 【数1】 Tc+20℃≦T≦Tm+40℃ ・・・(1) 式(1)で、TcおよびTmはそれぞれポリエステルの
    降温結晶化温度(℃)および融点(℃)であり、Tはオ
    リフィス口金から10mm下の溶融ポリエステルシート
    の表面温度(℃)である。
  2. 【請求項2】 上記冷却ロールが、該冷却ロール表面に
    形成された多数のマイクロクラックの溝に基づき、1
    0,000秒以下の真空漏洩法による通気抵抗を示す、
    請求項1に記載のポリエステルシートの製造法。
  3. 【請求項3】 冷却ロールが、該冷却ロール表面上に設
    けられた任意方向の長さ10mmの仮想直線に対して交
    差する少なくとも5本のマイクロクラックの溝を該冷却
    ロール表面に有し、該交差するマイクロクラックの溝の
    70%以上の数のマイクロクラックの溝が該仮想直線と
    の交差点において0.1〜100μmの範囲の溝幅を有
    しそして該仮想直線と交差するマイクロクラックの溝の
    全数の交差点における溝幅の合計が5mm以下である、
    請求項1に記載のポリエステルシートの製造法。
  4. 【請求項4】 多数のマイクロクラックの溝が冷却ロー
    ル表面に開口する開口溝面積の合計が冷却ロール表面1
    mm2 当り0.01〜0.3mm2 である請求項1に記
    載のポリエステルシートの製造法。
  5. 【請求項5】 冷却ロールが、内部に冷却水を導入しそ
    して排出して冷却ロール表面上のポリエステルシートを
    冷却するものであり、そして排出時の冷却水の温度を導
    入時の冷却水の温度よりも1〜10℃の上昇に抑える請
    求項1に記載のポリエステルシートの製造法。
  6. 【請求項6】 冷却ロールのロール直径が0.6〜4.
    0mの範囲にあり、そして冷却ロールの多数のマイクロ
    クラックの溝を有する表面を持つシェルの厚みが5〜3
    0mmである請求項1に記載のポリエステルシートの製
    造法。
  7. 【請求項7】 溶融ポリエステルシートを、溶融ポリエ
    ステルシートに静電気を付与して電荷の移動を介して冷
    却ロールに密着させる、請求項1に記載のポリエステル
    シートの製造法。
  8. 【請求項8】 溶融ポリエステルシートがテレフタル酸
    を主たる酸成分とするポリエステルの溶融シートであ
    り、その比抵抗が3×106〜1×108Ω・cmであり
    そして溶融ポリエステルシートに初期蓄積電荷量が2.
    5〜8.5μC/mm2となるように静電気を付与する
    請求項7に記載のポリエステルシートの製造法。
  9. 【請求項9】 ポリエステルシートを65〜250m/
    minの速度で製造する請求項8に記載のポリエステル
    シートの製造法。
  10. 【請求項10】 溶融ポリエステルシートが2,6−ナ
    フタレンジカルボン酸を主たる酸成分とするポリエステ
    ルの溶融シートであり、その比抵抗が1×107〜5×
    108Ω・cmでありそして溶融ポリエステルシートに
    初期蓄積電荷量が2.2〜8.0μC/mm2となるよ
    うに静電気を付与する請求項7に記載のポリエステルシ
    ートの製造法。
  11. 【請求項11】 ポリエステルシートを40〜200m
    /minの速度で製造する請求項10に記載のポリエス
    テルシートの製造法。
  12. 【請求項12】 溶融ポリエステルシートを、溶融ポリ
    エステルシートが冷却ロールと接触する面側の雰囲気の
    圧力を反対面側の雰囲気の圧力よりも低くして冷却ロー
    ルに密着させる、請求項1に記載のポリエステルシート
    の製造法。
  13. 【請求項13】 請求項1に記載の方法で得られたポリ
    エステルシートを、機械軸方向および横方向に二軸延伸
    せしめることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィル
    ムの製造法。
  14. 【請求項14】 機械軸方向の延伸倍率と横方向の延伸
    倍率の積が15〜50である請求項13に記載の二軸配
    向ポリエステルフィルムの製造法。
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