JP2003122372A - エネルギー変換繊維、吸音材、遮音構造体および車両用内装材 - Google Patents

エネルギー変換繊維、吸音材、遮音構造体および車両用内装材

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JP2003122372A
JP2003122372A JP2001320268A JP2001320268A JP2003122372A JP 2003122372 A JP2003122372 A JP 2003122372A JP 2001320268 A JP2001320268 A JP 2001320268A JP 2001320268 A JP2001320268 A JP 2001320268A JP 2003122372 A JP2003122372 A JP 2003122372A
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fiber
thermoplastic resin
conversion fiber
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JP2001320268A
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Hiroaki Miura
宏明 三浦
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Nissan Motor Co Ltd
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Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 例えば自動車等の内装材として、軽量性、省
スペース性に優れ、特定周波数域、特に1000Hz以
下の低周波数域や、会話音の周波数付近での高い吸音性
能を有するエネルギー変換繊維と、このようなエネルギ
ー変換繊維からなる吸音材、遮音構造体、車両用内装材
を安価に提供する。 【解決手段】 熱可塑性樹脂を主成分とする繊維の一部
もしくは全部に、例えばチタン酸バリウム(BaTiO
)やチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)に代表される圧
電体からなる無機粉粒体4を含有させ、この無機粉粒体
4と周囲の熱可塑性樹脂4との間に空隙6を形成させる
と共に、無機粉粒体4を周囲の熱可塑性樹脂3と部分的
に接した状態に固定させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、吸音率の向上と共
に、吸音性能ピークを所望の周波数域に設定することが
できるエネルギー変換繊維と、このようなエネルギー変
換繊維を用いた吸音材、遮音構造体、車両用内装材に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、建築物や車両に用いる吸音材に
は、発泡体や、繊維体、積層構造による吸音構造材が用
いられてきたが、これらにより得られる吸音構造体は低
周波音源や特定周波数に対する吸音性能が要求に対して
必ずしも十分とは言えなかった。その中でも、低周波域
に効果があるものとしては、例えば特開平11−217
891号公報には、相対向する2枚の板材間の空間部を
仕切って複数のセル空間を形成し、該セル空間内にヒス
テリシスの弾性変形性を有する弾性粉粒体を封入した制
振パネルが記載されている。また、特開平10−121
598号公報には、多孔質発泡体中に吸音性微小体を封
入した吸音材が開示されている
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特
開平11−217891号公報に記載の制振パネルを自
動車用の吸音材として用いるには大き過ぎる観がある。
また、特開平10−121598号公報に記載の吸音材
においては、吸音性微小体の密度が非常に小さく、また
発泡工程等が必要となり、成形性(形状自由度)に富む
ことから吸音材として一般的な繊維体として用いるには
適さないという問題点があり、このような問題点を解消
することが従来の吸音材、あるいは吸音素材の課題とな
っていた。
【0004】
【発明の目的】本発明は、従来の吸音材および吸音技術
における上記課題に鑑みてなされたものであって、その
目的とするところは、例えば自動車等の内装材として、
軽量性、省スペース性に優れ、特定周波数域、特に10
00Hz以下の低周波数域や、会話音の周波数付近での
高い吸音性能を有するエネルギー変換繊維と、このよう
なエネルギー変換繊維からなる吸音材、遮音構造体、車
両用内装材を安価に提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係わるエネルギ
ー変換繊維は、熱可塑性樹脂を主成分とする繊維の一部
もしくは全部に無機粉粒体を含み、該無機粉粒体は周囲
の熱可塑性樹脂との間に空隙を有し、熱可塑性樹脂と部
分的に接した状態に固定されている構成とし、エネルギ
ー変換繊維におけるこのような構成を前述した従来の課
題を解決するための手段としたことを特徴としている。
【0006】本発明に係わるエネルギー変換繊維の好適
形態として、無機紛粒体周囲の空隙の長手方向が繊維の
延伸方向に一致している構成、無機紛粒体の周りに1対
もしくは複数の空隙が繊維の延伸方向に沿って存在する
構成、あるいは無機紛粒体が複数の空隙に囲まれ、無機
粉粒体と熱可塑性樹脂がその接触面において網目状に接
している構成としている。また、他の好適形態として
は、無機粉粒体と空隙との体積比が100:5〜10
0:50、望ましくは100:10〜100:30の範
囲である構成とし、無機粉粒体とその周囲の熱可塑性樹
脂との接触面積が、無機粉粒体の全表面積の30〜95
%、望ましくは40〜90%であるである構成とし、無
機粉粒体をカップリング剤によって固定してなる構成と
し、さらには無機粉粒体が熱可塑制樹脂に対して20〜
500vol.%、望ましくは50〜500vol.%
含まれている構成としたことを特徴としている。
【0007】さらに他の好適形態としては、無機紛粒体
が、例えばチタン酸バリウム(BaTiO)やチタン
酸ジルコン酸鉛(PZT)に代表される圧電体である構
成とし、熱可塑制樹脂および無機粉粒体以外の第3成分
として炭素繊維もしくは炭素粉末が、無機粉粒体に対し
て、例えば50〜200vol.%混入されている構成
とし、さらには繊維の一部もしくは全部が、主体となる
熱可塑性樹脂と、熱可塑性樹脂と圧電体からなる無機粉
粒体、さらに必要に応じて炭素繊維もしくは炭素粉末の
混合体から構成されたサイドバイサイド型もしくは芯鞘
型である構成としたことをそれぞれ特徴としている。さ
らに別の好適形態としては、無機粉粒体の静電容量Cと
その他の部分の擬似インダクタンス成分LとのLC共振
により、共振周波数f1=1/(2π√(LC))にお
いてエネルギー吸収特性を有する構成、あるいは無機粉
粒体の静電容量Cとその他の擬似電気抵抗成分Rとによ
って、振動または音圧、あるいはこれらの複合として入
力される周波数f2に対して、f2=1/(2π√(R
C))の共鳴により、エネルギー吸収特性を有する構
成、さらには100Hz〜1kHzの周波数に対する誘
電正接tanδがベースラインから5%以上大きな値を
とる構成としたことを特徴としており、エネルギー変換
繊維におけるこのような構成を前述した従来の課題を解
決するための手段としている。
【0008】本発明に係わる吸音材は、上記のエネルギ
ー変換繊維を10〜100重量%使用した繊維集合体か
らなる構成のものであり、このような繊維集合体は、例
えば少なくとも表面において他の繊維と熱融着するバイ
ンダー繊維を混入して熱成形することによって得ること
ができる。
【0009】本発明に係わる遮音構造体は、上記吸音材
が遮音性を有する板状材に貼設してある構成としたこと
を特徴としている。
【0010】本発明に係わる車両用内装材は、上記吸音
材を用いたものであって、その具体的な実施形態とし
て、当該内装材は、エアクリーナシステム系の内部やエ
ンジンカバーの内側、ダッシュインシュレータ用の吸音
材やフロアカーペット用の吸音材の全面もしくはその一
部、フロアパネルのトンネル部、リアパーセル部、イン
スト内部、各種ピラー内部、ルーフパネル部、ダッシュ
ロア部の全面あるいはその一部に用いられる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明に係わるエネルギー変換繊
維は、熱可塑性樹脂を主成分とする繊維からなり、当該
繊維の一部もしくは全部に無機粉粒体を含み、この無機
粉粒体は周囲の熱可塑性樹脂との間に空隙を有し、周囲
の熱可塑性樹脂と部分的に接した状態に固定されたもの
である。
【0012】一般的な従来タイプの吸音材においては、
例えば図18に示すように、天然繊維やPETなどの合
成樹脂からなる繊維100を素材とする不織布である吸
音材101と、音に起因する空気の粗密波との摩擦によ
って音のエネルギーを消費し、吸音が行われる。したが
って、吸音性能を向上させるためには、空気との摩擦を
増す観点から、吸音材を構成する材料の表面積を増加さ
せることが行なわれる。特に吸音効率の高い繊維材から
なる吸音材においては、その表面積を増すために繊維の
細径化を行っているが、細径化にも限度があり、経済性
の面からも極端な細径化は実用上困難である。
【0013】本発明に係わるエネルギー変換繊維は、図
1に示すように、熱可塑性樹脂3からなるマトリックス
中に無機粉粒体4を含み、この無機粉粒体4はその周囲
に空隙6を有し、周囲の熱可塑性樹脂3と接触面5にお
いて接した状態に固定され、支持されている。そしてこ
のようなエネルギー変換繊維1は、図2に示すように適
当なバインダーと共に成形されて不織布とされ、後述す
るように吸音材2として利用される。
【0014】本発明に係わるエネルギー変換繊維におい
ては、樹脂マトリックス3中に分散された無機粉粒体4
の周辺に空隙6があることによって、無機粉粒体4の周
りに形成される擬似的な電気回路を変化させることがで
き、エネルギー吸収周波数帯設定を容易にし、また、大
きな吸音性能を得ることができるようになる。このと
き、無機紛粒体4は周囲の熱可塑性樹脂3に接した状態
に支持され、固定されていないと無機紛粒体4に伝わる
エネルギーが小さくなってしまいエネルギー減衰効果が
小さくなってしまう。このように、エネルギー変換材を
繊維形状としたことによって、製品の形状自由度(賦形
性)、繊維表面の通気抵抗に起因する摩擦による吸音性
能の付加、高周波域での吸音性能を保持しつつ、100
0Hz以下の低周波域の振動や騒音、会話音付近の周波
数帯の雑音を低減することが可能になる。
【0015】繊維を構成する主成分としては、熱可塑性
樹脂を用いる。すなわち、繊維への加工性、市場での入
手のしやすさ、使用後の再利用のしやすさ等の観点から
熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。
【0016】このような熱可塑性樹脂としては、例え
ば、ナイロン66などの脂肪族ポリアミド、ポリエチレ
ンテレフタレートなどのポリエステル、ポリフェニレン
サルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン
等が挙げられるが、どの樹脂を用いたとしても製法的な
問題は特になく、ここではとくに限定は行なわない。
【0017】熱可塑性樹脂からなる繊維中に、例えば圧
電体からなる無機粉粒体を含むことにより、繊維中に樹
脂を抵抗体とした複数の擬似回路が形成され、該繊維が
外部からの騒音や振動などの入力を受けた際に、圧電体
が変形することで外部からの入力が電気エネルギーに変
換され、電気エネルギーとして消費されることから、低
周波域の音を吸収する吸音材として機能し、また繊維状
であることから高周波域での吸音性能も保持し、全体と
して高性能の吸音材が得られることになる。また、繊維
形状であることから、成形後の形状自由度が大きく、車
両用途として用いる場合にも好適である。
【0018】本発明に係わるエネルギー変換繊維におい
ては、図3に示すように、無機粉粒体4の周辺に存在す
る空隙6は、その長手方向が繊維紡糸時の延伸方向に一
致していることが好ましい。すなわち空隙6ができた際
に延伸方向に空隙6がくることによって、繊維単体、も
しくはこの繊維を用いた不織布への音や振動の入力方向
に対して、無機粉粒体4へのエネルギー伝達が阻害され
ることがなく、空隙6によるピーク周波数のコントロー
ル性を高めることが可能となる。
【0019】これと同様にエネルギー伝達の点におい
て、図4に示すように、無機粉粒体4の周りに1対もし
くは複数の空隙6が紡糸時の延伸方向に存在するように
なすことも好ましい。空隙6が1つにつながっていない
場合には、無機粉粒体4はいくつかの空隙6に囲まれる
ことになるが、その際には1対、もしくは複数の空隙6
に囲まれることにより狙いとする吸音ピーク周波数への
設定が容易なものとなる。
【0020】さらに、図5に示すように、無機粉粒体4
は、周囲の熱可塑性樹脂3に対して、網目状に接してい
ることが望ましい。すなわち、無機粉粒体4の周りに熱
可塑性樹脂が網目状に接することで、網目以外の部分が
接しない状態になり、擬似的に空隙と同様の空間がで
き、この接触面積で吸音ピーク周波数を所望の値にコン
トロールすることも可能である。
【0021】また、本発明のエネルギー変換繊維におい
ては、無機粉粒体4と空隙6との体積比を100:5か
ら100:50の範囲とすることが好ましい。これらの
体積比をこの範囲内とすることにより、狙いとする周波
数帯への設定が容易になると共に、エネルギー変換効率
が向上し、さらには紡糸の操業性が改善されることにな
る。そして、無機粉粒体と空隙との体積比を100:1
0から100:30の範囲とすることが、より効率的に
エネルギーを伝達、減衰することができるという点でよ
り一層好ましい。
【0022】さらに、前記無機粉粒体4の周囲の熱可塑
性樹脂3との接触面積については、接触面積を無機粉粒
体4の全表面積の30から95%とすることが望まし
い。接触面積の割合がこの範囲内にあることにより、狙
いとする周波数帯への設定の容易さ、エネルギー変換効
率向上、紡糸の操業性改善などの点で好ましい。また、
無機粉粒体4の熱可塑性樹脂3との接触面積を無機粉粒
体4の全表面積の40から90%の範囲とすることによ
って、より効率的にエネルギーを伝達、減衰することが
できるようになることからより好ましい。
【0023】本発明のエネルギー変換繊維においては、
無機粉粒体4をカップリング剤によって熱可塑性樹脂3
に固定することが望ましい。カップリング剤を用いるこ
とで、無機紛粒体表面の接触性を容易に制御することが
でき、前述の無機紛粒体4と空隙6の体積比、無機紛粒
体4と熱可塑性樹脂3との接触面積比の設定が容易なも
のとなる。なお、カップリング剤としては、例えば、ア
ミノシラン、メルカトシラン、エポキシシラン、メタク
リルシラン、ビニルシラン等のシランカップリング材が
望ましいが、無機粉粒体と熱可塑性樹脂を結合できるも
のであれば特に限定はされない。
【0024】繊維中の無機粉粒体の含有量については、
熱可塑性樹脂に対して体積比で20〜500%であるこ
とが好ましい。無機粉粒体の含有量をこの範囲内とする
ことによって、吸収周波数域として概ね50Hz〜5k
Hz付近の音を吸収することができるようになる。ま
た、無機粉粒体の含有量としては、50〜200%とす
ることがさらに好ましく、これによって紡糸性を低下さ
せることなく繊維体を作成することが可能となる。ま
た、このような繊維体を車両用の内装材に適用した場
合、より耳障りに感じる概ね100Hz〜1kHz付近
の音を吸収することができるようになる。
【0025】本発明に係わるエネルギー変換繊維に用い
ることのできる無機粉粒体としては、圧電体を用いるこ
とが好ましく、このような圧電体としては、代表的なも
のとして、水晶、ロッシェル塩、リン酸カリ(KD
P)、リン酸アンモニウム(ADP)、ニオブ酸リチウ
ム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、チ
タン酸ジルコン酸鉛(PZT)、メタニオブ酸鉛、チタ
ン酸ビスマス、タンタル酸ビスマスストロンチウムなど
を挙げることができる。また、この他にも各種の複合酸
化物を圧電体として用いることができ、主なものとし
て、IVa族の遷移元素、もしくはIVb族の元素から選ば
れる元素とアルカリ土類金属からなる複合酸化物を挙げ
ることができる。このような元素を含むアルカリ土類金
属との複合酸化物を用いることにより、それ以外の元素
からなる複合酸化物の場合と比較し、高い圧電性能が得
られることになる。ここでIVa族の遷移元素とは、Ti
(チタン)、Zr(ジルコニア)、Hf(ハフニウム)
であり、IVb族の元素とは、C(炭素)、Si(珪
素)、Ge(ゲルマニウム)、Sn(錫)、Pb(鉛)
である。これら元素の中でIVa族では、特にTi、Zr
の圧電効果に対する寄与が大きく、IVb族では、Sn、
Pbの圧電効果に対する寄与が大きいため、本発明のエ
ネルギー変換繊維に好適である。そして、特にTiとB
a、TiとSr、TiとCa、TiとMgの組み合わせ
からなる複合酸化物から選ぶことが有効であり、圧電効
果が大きくなることから望ましい。
【0026】また、この他の元素の組み合わせとして
は、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、チタ
ン酸ジルコン酸リチウム鉛、チタン酸ジルコン酸ランタ
ンリチウム鉛(PLLZT)等、圧電体として効果の大
きいものを用いることが有効である。そして、これらの
中でも圧電体として、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、およびチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の少なく
とも一方を用いることが一層好ましい。これらの材料
は、圧電体として安価で高性能であり、また市場での入
手も容易であることから、高性能の繊維体を安価に得る
ことが可能になることによる。さらにまた、多種類の圧
電材を用いることにより、いくつかの異なる周波数帯に
吸収帯を持ったエネルギー変換繊維を得ることができる
ようになる。
【0027】本発明に係わるエネルギー変換繊維におい
ては、図6に示すように、熱可塑性樹脂3および無機粉
粒体4以外の第3成分として炭素繊維もしくは炭素粉末
(図では炭素繊維7)を混入することも可能である。炭
素繊維や炭素粉末を混入することで、無機粉粒体(圧電
体)の周りの擬似回路の抵抗値を変化させることが可能
となり、抵抗値が変わることによって、所望の周波数域
で音を吸収する繊維を得ることができるようになる。こ
のような炭素材の含有量としては、前記無機粉粒体4に
対して体積比で50〜200%とすることが好ましく、
紡糸性を低下させずに繊維を作成することが可能とな
る。
【0028】また、本発明のエネルギー変換繊維は、該
繊維体を構成する繊維の一部もしくは全部が、主体とな
る熱可塑性樹脂と、熱可塑性樹脂、無機粉粒体、必要に
応じて炭素繊維もしくは炭素粉末を含む混合体から構成
されたサイドバイサイド型もしくは芯鞘型であることが
好ましい。すなわち、当該繊維がサイドバイサイド型も
しくは芯鞘型の構成をとることによって、繊維自体の耐
久性を向上させることができるようになる。また、繊維
化する際には、繊維を延伸することによって細径化する
が、この時に熱可塑性樹脂のみからなる部分の存在によ
って、繊維化する際の操業性が大幅に向上する。
【0029】図7は、このような芯鞘型エネルギー変換
繊維の構造例を示す斜視図および断面図であって、芯鞘
型エネルギー変換繊維1aは、断面図に示すように、熱
可塑性樹脂3中に無機紛粒体4を空隙6と共に分散させ
た芯部8の周囲を熱可塑性樹脂3のみからなり無機紛粒
体4などを含まない鞘部9で覆った構造を有している。
また、このような芯鞘型エネルギー変換繊維1aも、図
8に示すように、バインダー繊維など適当なバインダー
と共に成形することによって不織布とされ、同様に吸音
材2として利用される。
【0030】また、図9は、サイドバイサイド型エネル
ギー変換繊維の構造例を示す斜視図および断面図であっ
て、当該サイドバイサイド型エネルギー変換繊維1b
は、熱可塑性樹脂3と無機紛粒体4および空隙6からな
る半円部10と、熱可塑性樹脂3のみからなり無機紛粒
体4などを含まない半円部11からなる構造を有してい
る。
【0031】本発明に係わるエネルギー変換繊維におい
ては、無機粉粒体4の静電容量Cとその他の部分の擬似
インダクタンス成分LとのLC共振により、次式(1)
により算出される共振周波数f1においてエネルギー吸
収特性を有する。 f1=1/(2π√(LC)) ――― (1) 本来、熱可塑性樹脂に分散された無機粉粒体4の静電容
量Cと熱可塑性樹脂3や第3成分等との間に形成される
擬似インダクタンス成分を明確に測定することは困難で
あるため、正確にf1でその共振周波数を設定すること
はできない。しかしながら、近似式(1)としてf1を
設定し、特定周波数で活性の高い吸音材を作成すること
が可能である。そして、前述のように第3成分によりこ
のf1を調整して、所望の特定周波数域に吸音性能ピー
クを設定することができるようになる。
【0032】また、無機粉粒体4の静電容量Cとその他
の擬似電気抵抗成分Rとによって、振動あるいは音圧、
あるいはその複合として入力される周波数f2に対し
て、次式(2)の共鳴により、エネルギー吸収特性を有
する。 f2=1/(2π√(RC)) ――― (2) これはインダクタンス成分が測定困難の場合に有効であ
り、比較的測定容易な擬似電気抵抗Rを用いて、圧電共
振周波数f2を決定するものである。f1の場合と同様
に近似式であるが、本式(2)により島成分を形成する
圧電体の静電容量Cとその他の擬似電気抵抗成分Rとに
よって、振動あるいは音圧、あるいはその複合として入
力される周波数f2に対して、活性の高い吸音材を得る
ことが可能である。f1の場合と同様に第3成分の配合
量に応じて周波数を調整することが可能である。
【0033】これらの周波数設定の際に、圧電材の形状
によって次式(3)にしたがってCの大きさが設定され
る。 C=(ε×S)/(α×t) ――― (3) ここで ε:圧電体の誘電率[F/m] S:圧電体の断面積[m2] t:圧電体の長さ方向の最大値[m] α:定数
【0034】さらに、本発明のエネルギー変換繊維にお
いては、100Hz以上1kHz以下の入力周波数に対
して、誘電正接tanδ(誘電緩和試験の評価結果など
で少なくとも1つの入力に対する応答の遅れを示す指
標)がベースラインから5%以上大きな値をとるように
することが好ましく、これによって、該エネルギー変換
繊維に大きな性能向上がみられる。すなわち、周波数設
定を行なう際に得られた圧電体を混錬した樹脂の動的粘
弾性、または誘電緩和測定でのtanδが大きいことが
より好ましく、狙いとする周波数帯でこの値が大きく設
定されたものでは、吸音性能が著しく向上することにな
る。これは、tanδが大きいものほど減衰効果が大き
いことによるものであり、長手方向の大きさが大きい形
状としたり、断面積を小さくしたりすることによって、
よりtanδが大きくなる。なお、ここでいうベースラ
インとは、大きな性能向上が見られない場合の値を基準
とし、その時のtanδの値がベースラインの値より何
%大きくなっているかを判断基準としている。
【0035】本発明に係わる吸音材は、上記したエネル
ギー変換繊維を10〜100質量%使用した繊維集合体
からなるものであって、図2あるいは図6に示したよう
な吸音材2とすることができる。この配合量で吸音材を
作成することによって、特定周波数での高い吸音性能を
もつ吸音材となる。吸音性能は当該繊維の配合量が多い
ほど向上することになるが、10%未満では、このよう
なエネルギー変換繊維体を配合する効果が十分に得られ
ない。
【0036】本発明のエネルギー変換繊維を使用した上
記吸音材においては、少なくともその表面において他の
繊維と熱融着する機能を備えたバインダー繊維を混入
し、熱成形して繊維集合体とすることができる。すなわ
ち、バインダー繊維の配合により、加熱成形が可能とな
り、車両の内装材をはじめとする様々なインシュレータ
材に適用できるようになる。また、熱成形により、任意
形状に賦形可能となり、任意のスペースに設置すること
が可能となる。
【0037】ここで繊維集合体を構成する繊維について
は、特に限定されるものではないが、上述のバインダー
繊維と、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PE
T)を主成分とする繊維などのように、市場で一般に入
手可能な繊維と混合し熱成型する手法が経済性を勘案す
れば好ましい。
【0038】本発明のエネルギー変換繊維体を使用した
上記吸音材を遮音性を備えた板状材に貼設することによ
って、高性能の遮音構造体とすることができる。これに
よって、従来使用してきた遮音構造体の遮音特性を効率
的なものにすることが可能となる。板状遮音材は板の厚
さや重さ材質に基づく遮音周波数を本来的に有している
が、これに別の周波数特性を付与することが可能となる
からである。
【0039】また、本発明に係わる吸音材は、自動車等
の車両用内装材に用いることが効果的である。すなわち
スペース、重量およびコスト的制限の特に厳しい車両用
吸音材においては、特に低周波側の騒音を低減すること
が困難であり、本発明に係わる吸音材を内装材として用
いることにより、吸音性能を効果的に向上させることが
できる。
【0040】本発明に係わる吸音材は、例えば、車両用
のエアクリーナーに用いることが特に有効である。エン
ジンの吸気ダクトにおいて吸気により発生する騒音は、
車輌騒音の音源の一つであり、これを効率良く吸音する
ことが求められている。この騒音のとくに低周波領域の
騒音を低減するためには、従来の吸音材では500Hz
以下の低周波騒音の吸音が困難であることから、現在は
目的周波数に容量を合わせたレゾネーターや共鳴ダクト
を用いている。そこで、図10に示すように、エアクリ
ーナー内部のエアフィルターエレメントで仕切られた内
燃機側のスペース内、もしくは空気吸入側スペース、あ
るいはその両側に本発明の吸音材2を適用することが、
特に低周波領域の騒音を低減するのに効果的である。こ
れによって、エアクリーナーに取り付けてあるレゾネー
ターや共鳴ダクトの一部あるいは全部を取り除くことが
可能になり、エンジン内スペースの確保と、附属部品撤
去によるコスト低減効果が期待できる。
【0041】また、エンジンからの低周波の騒音を吸音
して車室内への浸入を防ぐ観点から、図11に示すよう
に、本発明の吸音材を内装材として車両用のダッシュイ
ンシュレータに用いることが有効である。このとき吸音
材2はダッシュインシュレータ21のインシュレータ部
分全面、あるいは一部分に設定することができる。そし
て、特定周波数の音がダッシュ部の特定部位から発生す
る場合には、当該吸音材2を発生部位のみに設定するこ
とが経済的であり、効率的な吸音効果が得られることに
なる。
【0042】さらに、同様にエンジンからの低周波の特
定周波数騒音を吸音させ車室内への浸入を防ぐ観点か
ら、図12に示すように、本発明の吸音材を内装材とし
て車両用フロアカーペットに用いることも有効である。
このとき吸音材2はフロアカーペット22の全面もしく
は一部分に設置することができる。特定周波数の音がフ
ロアパネル部の特定部位から発生する場合には、吸音材
2を発生部位のみに設定することが経済的かつ効率的な
吸音効果が得られる。またトンネル横にのみ設定するの
も、トンネル内部のディバイスからの音がこの部位から
特異的に発生することから有効である。
【0043】さらに、本発明の吸音材は、図13に示す
ように、車両のフロアパネルのトンネル部23、リアパ
ーセル部24、インストルメントパネル25の内部、各
種ピラー26の内部、ルーフパネル部27、ダッシュロ
ア部の全面、若しくは一部に車両用内装材として用いる
ことができ、車両内部のそれぞれの位置において、その
位置に応じた特定周波数の吸音を行なうことにより、車
室内で無駄のない効率的な吸音性能を発揮させることが
できる。
【0044】本発明に係わるエネルギー変換繊維を製造
するに際しては、図14に示すような溶融紡糸方法を適
用することができる。すなわち、溶融された熱可塑性樹
脂3と無機紛粒体4の混錬物が口金30から吐出され、
ロール31に巻き取られる。このとき、巻取り速度、添
加カップリング剤の量により、接触面積、空隙の大き
さ、無機粉粒体表面への樹脂付着状態が制御される。
【0045】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説
明する。
【0046】(実施例1)無機粉粒体として粒径0.6
μmのBaTiOを用いると共に、熱可塑性樹脂とし
てナイロン6を用い、熱可塑性樹脂と無機粉粒体の体積
比が100vol.%となるようにして、図14に示し
たような溶融紡糸方法により、溶融紡糸温度260℃、
樹脂吐出量2.4cm/min、巻取り速度1000
m/minの条件で溶融紡糸を行ない、粉粒体と空隙の
体積比を100:20としたエネルギー変換繊維を得
た。得られたエネルギー変換繊維80質量%に、繊維径
15μmの芯鞘型バインダー繊維(鞘部軟化点110
℃)20質量%を混入し、カード式不織布製造装置によ
って面密度1.5kg/mのウェブを作製して、厚さ
35mmにプレスして不織布とした。このようにして得
られた不織布を吸音材として100mm径に切り出し
て、後述する評価試験に供した。
【0047】(実施例2)無機粉粒体と樹脂の接触面積
比を100:60(粉粒体全表面積の60%)としたこ
と以外は上記実施例1と同様にしてエネルギー変換繊維
を得たのち、同様に不織布とし、吸音材として100m
m径に切り出し、同様の評価試験に供した。
【0048】(実施例3)無機粉粒体と空隙の体積比を
100:5としたこと以外は実施例1と同様にしてエネ
ルギー変換繊維を得たのち、不織布とし、吸音材として
100mm径に切り出し、同様の評価試験に供した。
【0049】(実施例4)無機粉粒体と空隙の体積比を
100:50としたこと以外は実施例1と同様の要領に
よりエネルギー変換繊維を得、不織布とし、吸音材とし
て100mm径に切り出し、同様の評価試験に供した。
【0050】(実施例5)無機粉粒体と樹脂の接触面積
比を100:30(粉粒体全表面積の30%)としたこ
と以外は上記実施例1と同様にしてエネルギー変換繊維
を得たのち、同様に不織布とし、吸音材として100m
m径に切り出し、同様の評価試験に供した。
【0051】(実施例6)無機粉粒体と樹脂の接触面積
比を100:95(粉粒体全表面積の95%)としたこ
と以外は上記実施例1と同様にしてエネルギー変換繊維
を得たのち、同様に不織布とし、吸音材として100m
m径に切り出し、同様の評価試験に供した。
【0052】(実施例7)熱可塑性樹脂に対する無機粉
粒体の体積比を20vol.%としたこと以外は実施例
1と同様にしてエネルギー変換繊維を得たのち、同様に
不織布とし、吸音材として100mm径に切り出し、同
様の評価試験に供した。
【0053】(実施例8)熱可塑性樹脂に対する無機粉
粒体の体積比を500vol.%としたこと以外は実施
例1と同様にしてエネルギー変換繊維を得たのち、同様
に不織布とし、吸音材として100mm径に切り出し、
同様の評価試験に供した。
【0054】(実施例9)無機粉粒体としてPZTを用
いたこと以外は実施例1と同様の要領によりエネルギー
変換繊維を得、不織布とし、吸音材として100mm径
に切り出し、同様の評価試験に供した。
【0055】(実施例10)熱可塑性樹脂と無機粉粒体
に加えて、さらに炭素粉末を熱可塑性樹脂に対して10
0vol.%混錬したこと以外は実施例1と同様にして
エネルギー変換繊維を得たのち、同様に不織布とし、吸
音材として100mm径に切り出し、同様の評価試験に
供した。
【0056】(実施例11)熱可塑性樹脂と無機粉粒体
に加えて、さらに炭素繊維を熱可塑性樹脂に対して10
0vol.%混錬したこと以外は実施例1と同様にして
エネルギー変換繊維を得たのち、同様に不織布とし、吸
音材として100mm径に切り出し、同様の評価試験に
供した。
【0057】(実施例12)熱可塑性樹脂と無機粉粒体
に加えて、さらに炭素粉末を熱可塑性樹脂に対して50
vol.%混錬したこと以外は実施例1と同様にしてエ
ネルギー変換繊維を得たのち、同様に不織布とし、吸音
材として100mm径に切り出し、同様の評価試験に供
した。
【0058】(実施例13)熱可塑性樹脂と無機粉粒体
に加えて、さらに炭素粉末を熱可塑性樹脂に対して20
0vol.%混錬したこと以外は実施例1と同様にして
エネルギー変換繊維を得たのち、同様に不織布とし、吸
音材として100mm径に切り出し、同様の評価試験に
供した。
【0059】(実施例14)不織布中のエネルギー変換
繊維を10質量%としたこと以外は実施例1と同様の要
領によりエネルギー変換繊維を得、不織布とし、吸音材
として100mm径に切り出し、同様の評価試験に供し
た。
【0060】(実施例15)不織布中のエネルギー変換
繊維を95質量%としたこと以外は実施例1と同様の要
領によりエネルギー変換繊維を得、不織布とし、吸音材
として100mm径に切り出し、同様の評価試験に供し
た。
【0061】(実施例16)熱可塑性樹脂を鞘部として
用いた芯鞘型エネルギー変換繊維としたこと以外は実施
例1と同様にしてエネルギー変換繊維を得たのち、同様
に不織布とし、吸音材として100mm径に切り出し、
同様の評価試験に供した。
【0062】(実施例17)熱可塑性樹脂を鞘部として
用いたサイドバイサイド型エネルギー変換繊維としたこ
と以外は実施例1と同様にしてエネルギー変換繊維を得
たのち、同様に不織布とし、吸音材として100mm径
に切り出し、同様の評価試験に供した。
【0063】(実施例18)無機粉粒体として、BaT
iO3を熱可塑性樹脂に対し50vol.%、PZTを
50vol.%用いたことを除いて、実施例1と同様の
要領によりエネルギー変換繊維を得、不織布とし、吸音
材として100mm径に切り出し、同様の評価試験に供
した。
【0064】(比較例1)ナイロン6繊維(繊維径55
μm)80質量%に、繊維径15μmの芯鞘型バインダ
ー繊維(鞘部軟化点110℃)20質量%を混入し不織
布を作製した。得られた不織布を吸音材として実施例1
と同様の要領によりエネルギー変換繊維を得、不織布と
し、吸音材として100mm径に切り出し、同様の評価
試験を行った。
【0065】(比較例2)無機粉粒体を樹脂に対して非
固定状態としたことを除いて、実施例1と同様にしてエ
ネルギー変換繊維を得たのち、同様に不織布とし、吸音
材として100mm径に切り出し、同様の評価試験に供
した。
【0066】〔評価試験方法〕 垂直入射吸音率測定 垂直入射吸音率については、JIS A 1405に規
定された管内法による建築材料の垂直入射吸音率測定法
に基づいて、図15に示した形状の装置を用いて測定を
行った。サンプルサイズは厚さ10mm、径100mm
とし、上記したように、エネルギー変換繊維からなる吸
音材から切り出して用いた。測定周波数領域は、100
〜1600Hzとした。なお、図15に示した垂直入射
吸音率測定装置は、垂直入射吸音率測定管40の一端側
に音源としてのスピーカー41を備えると共に、他端側
に吸音材サンプル42をセットするようになっており、
前記測定管40の中央よりややスピーカー側に寄った位
置に測定用のマイクロフォン43,43を備えた構造の
ものである。 誘電緩和試験 エネルギー変換繊維に用いる混練樹脂について、JIS
K 6911に準拠する誘電緩和試験を行なった。サ
ンプルサイズは50×50×1mmとした。 SEM観察 エネルギー変換繊維のSEM(走査型電子顕微鏡)観察
を行ない、接触面、空隙の大きさを測定した。接触面積
は、写真視野中の粉粒体外周の樹脂との接触距離の総平
均からの近似とした。空隙の大きさは、粉粒体周りの空
隙の大きさの平均と、粉粒体断面積の平均からの近似と
した。
【0067】表1および表2に、評価試験における測定
結果の代表周波数を各吸音材の仕様と共に示す。また、
図16に代表的な実施例および比較例における吸音率の
測定結果を比較して示す。なお、表2における吸音性能
の判断基準については、狙いとする500Hz以下の特
定周波数域において吸音ピークが認められ、しかもその
吸音率が0.5以上のものを○、そうでないものを×と
した。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】各実施例で作成された各種吸音材は、比較
例に比べ特定周波数域、特に500Hz以下の低周波数
域で優れた吸音特性を有し優れた吸音材であることが確
認された。これに対し、粉粒体自体を含まない比較例
1、圧電体ではない粉粒対を混練した比較例2において
は、いずれも吸音ピークを持たないことが判明した。ま
た、無機粉粒体が樹脂に固定されていない比較例3にお
いては、エネルギーの伝達が不十分になり、ピークでの
0.5以上の吸音率が得られなかった。
【0071】また、誘電緩和試験結果について、その代
表例を図17に示すが、実施例においては特定周波数で
のピークが認められたが、比較例ではこのようなピーク
は確認できなかった
【0072】以上、本発明を実施例に基づいて説明した
が、本発明は上記の実施例だけに限定されるものではな
く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において改変が可
能である。
【0073】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明に係わ
るエネルギー変換繊維は、熱可塑性樹脂を主成分とし、
その一部もしくは全部に無機粉粒体を含み、この無機粉
粒体が周囲の熱可塑性樹脂との間に空隙を有し、周囲の
熱可塑性樹脂と部分的に接した状態に固定されたもので
あり、無機粉粒体の周辺に空隙があることによって、無
機粉粒体の周りに形成される擬似的な電気回路を変化さ
せることができ、エネルギー吸収周波数帯の設定を容易
なものとし、しかも大きな吸音性能を得ることができる
と共に、繊維形状をなしているので、製品の形状自由
度、繊維表面の通気抵抗に起因する摩擦による吸音性能
の付加、高周波域での吸音性能を保持しつつ、1000
Hz以下の低周波域の振動や騒音、会話音付近の周波数
帯の雑音を低減することが可能になるという極めて優れ
た効果をもたらすものである。
【0074】また、本発明に係わる吸音材は、上記エネ
ルギー変換繊維を10ないし100質量%使用した繊維
集合体からなるものであるから、軽量性、省スペース性
に優れ、しかも低周波数域の騒音や振動を効率的に吸音
することができることから、自動車などの車両用に好適
なものとなり、車両用内装材として、例えばエアクリー
ナシステム系の内部やエンジンカバーの内側、ダッシュ
インシュレータやフロアカーペット、フロアパネルのト
ンネル部、リアパーセル部、インスト内部、各種ピラー
内部、ルーフパネル部、ダッシュロア部などに用いるこ
とができる。
【0075】そして、本発明に係わる遮音構造体は、遮
音性を備えた板状材に、上記エネルギー変換繊維を使用
した吸音材を貼設したものであるから、遮音性板状材本
来の遮音周波数に、吸音材独自の吸音周波数特性を付与
することができ、全体としての吸遮音特性を大幅に向上
することができるというさらに優れた効果がもたらされ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るエネルギー変換繊維の構造を示す
斜視図および断面図である。
【図2】図1に示したエネルギー変換繊維を用いた不織
布からなる吸音材を示す概略図である。
【図3】本発明に係るエネルギー変換繊維の好適形態と
して無機粉粒体周囲の空隙が繊維の延伸方向に並んだ状
態を示す断面図である。
【図4】同じく好適形態として無機粉粒体の周りに複数
の空隙が繊維の延伸方向に沿って存在する状態を示す断
面図である。
【図5】同じく好適形態として無機粉粒体が周囲の樹脂
と網目状に接した状態を示す概略図である。
【図6】本発明に係るエネルギー変換繊維の好適形態と
して炭素繊維を含むエネルギー変換繊維の斜視図および
断面図である。
【図7】本発明に係るエネルギー変換繊維体の好適形態
として芯鞘型エネルギー変換繊維の構造を示す斜視図お
よび断面図である。
【図8】図7に示した芯鞘型エネルギー変換繊維を用い
た不織布からなる吸音材を示す概略図である。
【図9】同じく好適形態としてサイドバイサイド型エネ
ルギー芯鞘型エネルギー変換繊維の構造を示す斜視図お
よび断面図である。
【図10】本発明に係わるエネルギー変換繊維からなる
吸音材を車両用内装材としてダクトに配設した状態を示
す概略図である。
【図11】本発明に係わるエネルギー変換繊維からなる
吸音材を車両用内装材としてダッシュインシュレータに
配設した状態を示す概略図である。
【図12】本発明に係わるエネルギー変換繊維からなる
吸音材を車両用内装材としてフロアカーペットに配設し
た状態を示す概略図である。
【図13】本発明に係わるエネルギー変換繊維からなる
車両用内装材の適用箇所を示す説明図である。
【図14】溶融紡糸方法の概要を示す模式図である。
【図15】垂直入射吸音率の測定に用いた装置の構造を
示す概略図である。
【図16】本発明の実施例において得られた吸音材の吸
音率測定結果を比較例と共に示すグラフである。
【図17】本発明の実施例において得られた吸音材の誘
電緩和測定結果を比較例と共に示すグラフである。
【図18】従来の吸音材とそれを構成する繊維の形状を
示す概略図である。
【符号の説明】
1,1a,1b エネルギー変換繊維 2 吸音材(繊維集合体) 3 熱可塑性樹脂 4 無機粉粒体 6 空隙 7 炭素繊維 21 ダッシュインシュレータ 22 フロアカーペット 23 フロアパネルのトンネル部 24 リアパーセル部 25 インストルメントパネル内部 26 ピラー内部 27 ルーフパネル部
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G10K 11/16 G10K 11/16 D Fターム(参考) 4L035 EE12 FF01 GG03 JJ01 JJ03 KK02 KK07 LC02 4L041 AA07 BA02 BA05 BA09 BA21 BB07 BC07 BD11 CA21 CB02 CB04 DD03 4L047 AA03 AA29 BA09 BB09 CB03 DA00 5D061 AA07 AA11 AA22 AA23 AA29 BB21

Claims (28)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性樹脂を主成分とする繊維の一部
    もしくは全部に無機粉粒体を含み、該無機粉粒体は周囲
    の熱可塑性樹脂との間に空隙を有し、熱可塑性樹脂と部
    分的に接した状態に固定されていることを特徴とするエ
    ネルギー変換繊維。
  2. 【請求項2】 無機紛粒体周囲の空隙の長手方向が繊維
    の延伸方向に一致していることを特徴とする請求項1記
    載のエネルギー変換繊維。
  3. 【請求項3】 無機紛粒体の周りに1対もしくは複数の
    空隙が繊維の延伸方向に沿って存在することを特徴とす
    る請求項1記載のエネルギー変換繊維。
  4. 【請求項4】 無機紛粒体が複数の空隙に囲まれ、無機
    粉粒体と熱可塑性樹脂がその接触面において網目状に接
    していることを特徴とする請求項1記載のエネルギー変
    換繊維。
  5. 【請求項5】 無機粉粒体と空隙との体積比が100:
    5〜100:50の範囲であることを特徴とする請求項
    1ないし4のいずれかに記載のエネルギー変換繊維。
  6. 【請求項6】 無機粉粒体と空隙との体積比が100:
    10〜100:30の範囲であることを特徴とする請求
    項1ないし4のいずれかに記載のエネルギー変換繊維。
  7. 【請求項7】 無機粉粒体とその周囲の熱可塑性樹脂と
    の接触面積が、無機粉粒体の全表面積の30〜95%で
    あることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記
    載のエネルギー変換繊維。
  8. 【請求項8】 前記無機粉粒体の周囲の熱可塑性樹脂と
    の接触面積が、無機粉粒体の全表面積の40〜90%で
    あることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記
    載のエネルギー変換繊維。
  9. 【請求項9】 無機粉粒体をカップリング剤によって固
    定してなることを特徴とする請求項1ないし8のいずれ
    かに記載のエネルギー変換繊維。
  10. 【請求項10】 無機粉粒体が熱可塑性樹脂に対して2
    0〜500vol.%含まれていることを特徴とする請
    求項1ないし9のいずれかに記載のエネルギー変換繊
    維。
  11. 【請求項11】 無機粉粒体が熱可塑性樹脂に対して5
    0〜500vol.%含まれていることを特徴とする請
    求項1ないし9のいずれかに記載のエネルギー変換繊
    維。
  12. 【請求項12】 無機紛粒体が圧電体であることを特徴
    とする請求項1ないし11のいずれかに記載のエネルギ
    ー変換繊維。
  13. 【請求項13】 圧電体がチタン酸バリウム(BaTi
    )およびチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の一方ま
    たは両方であることを特徴とする請求項12記載のエネ
    ルギー変換繊維。
  14. 【請求項14】 熱可塑性樹脂および無機粉粒体以外の
    第3成分として炭素繊維もしくは炭素粉末が混入されて
    いることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに
    記載のエネルギー変換繊維。
  15. 【請求項15】 第3成分として混入される炭素繊維も
    しくは炭素粉末の体積が無機粉粒体に対して50〜20
    0vol.%であることを特徴とする請求項14記載の
    エネルギー変換繊維。
  16. 【請求項16】 繊維の一部もしくは全部が、主体とな
    る熱可塑性樹脂と、熱可塑性樹脂と圧電体からなる無機
    粉粒体の混合体から構成されたサイドバイサイド型もし
    くは芯鞘型であることを特徴とする請求項1ないし13
    のいずれかに記載のエネルギー変換繊維体。
  17. 【請求項17】 繊維の一部もしくは全部が、主体とな
    る熱可塑性樹脂と、熱可塑性樹脂と圧電体からなる無機
    粉粒体と炭素繊維もしくは炭素粉末の混合体から構成さ
    れたサイドバイサイド型もしくは芯鞘型であることを特
    徴とする請求項14または15のいずれかに記載のエネ
    ルギー変換繊維体。
  18. 【請求項18】 無機粉粒体の静電容量Cとその他の部
    分の擬似インダクタンス成分LとのLC共振により、共
    振周波数f1=1/(2π√(LC))においてエネル
    ギー吸収特性を有することを特徴とする請求項1ないし
    17のいずれかに記載のエネルギー変換繊維。
  19. 【請求項19】 無機粉粒体の静電容量Cとその他の擬
    似電気抵抗成分Rとによって、振動または音圧、あるい
    はこれらの複合として入力される周波数f2に対して、
    f2=1/(2π√(RC))の共鳴により、エネルギ
    ー吸収特性を有することを特徴とする請求項1ないし1
    7のいずれかに記載のエネルギー変換繊維。
  20. 【請求項20】 100Hz〜1kHzの周波数に対す
    る誘電正接tanδがベースラインから5%以上大きな
    値をとることを特徴とする請求項1ないし19のいずれ
    かに記載のエネルギー変換繊維。
  21. 【請求項21】 請求項1ないし20のいずれかに記載
    のエネルギー変換繊維を10〜100質量%使用した繊
    維集合体からなることを特徴とする吸音材。
  22. 【請求項22】 繊維集合体が少なくとも表面において
    他の繊維と熱融着するバインダー繊維を混入して熱成形
    されていることを特徴とする請求項21記載の吸音材。
  23. 【請求項23】 請求項21または22記載の吸音材が
    遮音性を有する板状材に貼設してあることを特徴とする
    遮音構造体。
  24. 【請求項24】 請求項21または22記載の吸音材が
    用いてあることを特徴とする車両用内装材。
  25. 【請求項25】 エアクリーナシステム系の内部、エン
    ジンカバーの内側に用いるものであることを特徴とする
    請求項24記載の車両用内装材。
  26. 【請求項26】 ダッシュインシュレータ用の吸音材の
    全面もしくは一部に用いるものであることを特徴とする
    請求項24記載の車両用内装材。
  27. 【請求項27】 フロアカーペット用の吸音材の全面も
    しくは一部に用いるものであることを特徴とする請求項
    24記載の車両用内装材。
  28. 【請求項28】 フロアパネルのトンネル部、リアパー
    セル部、インスト内部、各種ピラー内部、ルーフパネル
    部、ダッシュロア部の全面、もしくは一部に用いるもの
    であることを特徴とする請求項24記載の車両用内装
    材。
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