JP2003119571A5 - - Google Patents

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【特許請求の範囲】
【請求項1】 粒径が5μm以下の少なくとも1種以上の2価もしくは3価の金属のりん酸塩粒子であって亜鉛を含むものと、アルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩またはこれらの混合物と、アニオン性に帯電し分散した酸化物微粒子、アニオン性の水溶性有機高分子、ノニオン性の水溶性有機高分子、アニオン性界面活性剤、およびノニオン性界面活性剤の群から選ばれる少なくとも1種と、を含有し、pHを4〜13に調整した金属のりん酸亜鉛皮膜化成処理前の表面調整用前処理液であって、前記粒径が5μm以下の少なくとも1種以上の2価もしくは3価の金属のりん酸塩粒子は、実質的に5μm以上の粒子を含まないことを特徴とする、金属のりん酸亜鉛皮膜化成処理前の表面調整用前処理液。
【請求項2】 前記粒径が5μm以下の少なくとも1種以上の2価もしくは3価の金属のりん酸塩粒子の濃度が0.001〜30g/Lである、請求項1に記載の金属のりん酸亜鉛皮膜化成処理前の表面調整用前処理液。
【請求項3】 前記アニオン性に帯電し分散した酸化物微粒子の平均粒径が0.5μm以下である、請求項1に記載の金属のりん酸亜鉛皮膜化成処理前の表面調整用前処理液。
【請求項4】 前記アニオン性に帯電し分散した酸化物微粒子の濃度が0.001〜5g/Lである、請求項1に記載の金属のりん酸亜鉛皮膜化成処理前の表面調整用前処理液。
【請求項5】金属表面にりん酸亜鉛化成皮膜を形成するにあたり、あらかじめ該金属表面を請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面調整用前処理液と接触させることを特徴とする金属のりん酸亜鉛皮膜化成処理前の表面調整方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄鋼、亜鉛めっき鋼板、及びアルミニウム等の金属材料の表面に施されるりん酸塩皮膜化成処理において、その化成処理前に化成反応の促進および短時間化ならびにりん酸塩皮膜結晶の微細化を図るために用いられる表面調整用前処理液及び表面調整方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】昨今、自動車のりん酸塩処理においては塗装後の耐食性向上のため、また、塑性加工用のりん酸塩処理においてはプレス時の摩擦低減またはプレス型寿命延長のために金属表面に微細で緻密なりん酸塩皮膜結晶を形成することが求められている。そこで、微細で緻密なりん酸塩皮膜結晶を得るために金属表面を活性化し、りん酸塩皮膜結晶析出のための核をつくる目的で、りん酸塩皮膜化成処理工程の前に表面調整工程が採用されている。以下に微細で緻密なりん酸塩皮膜結晶を得るために行われている一般的なりん酸塩皮膜化成工程を例示する。
(1)脱脂
(2)水洗(多段)
(3)表面調整
(4)りん酸塩皮膜化成処理
(5)水洗(多段)
(6)純水洗
【0003】表面調整工程は、りん酸塩皮膜結晶を微細で緻密なものにするために用いられる。その組成物に関しては、例えば米国特許第2874081号、第2322349号、及び第2310239号などにより公知となっており、表面調整剤に含まれる主たる構成成分としてチタン、ピロリン酸イオン、オルソリン酸イオン及びナトリウムイオン等が開示されている。上記表面調整組成物は「ジャーンステッド塩」と称され、その水溶液にはチタンイオンとチタンコロイドが含まれる。脱脂、水洗を行った金属を前記表面調整組成物の水溶液に浸漬もしくは、金属に表面調整用前処理液を噴霧することによってチタンコロイドが金属表面に吸着する。吸着したチタンコロイドが次工程のりん酸塩皮膜化成処理工程においてりん酸塩皮膜結晶析出の核となり、化成反応の促進およびりん酸塩皮膜結晶の微細化、緻密化が可能となる。現在工業的に利用されている表面調整組成物は全てジャーンステッド塩を利用したものである。しかしながら、ジャーンステッド塩から得られるチタンコロイドを表面調整工程に用いた場合、種々の問題点があった。
【0004】第1の問題点としては、表面調整用前処理液の経時劣化が挙げられる。従来の表面調整組成物を用いる場合、その組成物を水溶液とした直後はりん酸塩皮膜結晶の微細化及び緻密化に関して著しい効果を発揮する。しかし、水溶液とした後に数日間が経過すると、チタンコロイドが凝集することによって経過日数の間の表面調整用前処理液の使用の有無に関わらずその効果が失われ、得られるりん酸塩皮膜結晶は粗大化する。そこで、特開昭63−76883号公報には、表面調整用前処理液中のチタンコロイドの平均粒径を測定し平均粒径がある一定値未満になるように表面調整用前処理液を連続的に廃棄し、更に廃棄された分の表面調整組成物を補給することによって表面調整効果を維持管理する方法が提案されている。しかし、この方法は表面調整用前処理液の効果に対する要因を定量的に管理することを可能としたが、効果を維持するためには表面調整用前処理液を廃棄する必要があった。また、この方法で表面調整用前処理液の効果を水溶液とした初期と同等に維持するためには多量の表面調整用前処理液の廃棄を必要とする。従って、実際には使用される工場の排水処理能力の問題もあり、連続的な表面調整用前処理液の廃棄と全量更新を併用してその効果を維持している。
【0005】第2の問題点としては、表面調整用前処理液を建浴する際に使用される水質によって、その効果及び寿命が大きく左右されることが挙げられる。通常表面調整用前処理液を建浴する際には工業用水が使用される。しかし、周知の通り工業用水にはカルシウム、マグネシウム等の全硬度の元になるカチオン成分が含まれており、その含有量は使用される工業用水の水源によってまちまちである。ここで、従来の表面調整用前処理液の主成分であるチタンコロイドは、水溶液中でアニオン性の電荷を持つことにより、その電気的反発力によって沈降せずに分散していることが知られている。
【0006】従って、工業用水中にカチオン成分であるカルシウムやマグネシウムが多量に存在するとチタンコロイドはカチオン成分によって電気的に中和され、反発力を失い凝集沈殿を引き起こすことによってその効果を失う。そこで、カチオン成分を封鎖しチタンコロイドの安定性を維持する目的でピロリン酸塩等の縮合りん酸塩を表面調整用前処理液に添加する方法が提案されている。しかし、縮合りん酸塩を表面調整用前処理液に多量に添加すると縮合りん酸が鋼板表面と反応し不活性皮膜を形成するために、その後のりん酸塩皮膜化成処理工程において化成不良が発生する弊害を有する。また、極端にマグネシウムやカルシウム含有量が多い地域では純水を用いて表面調整用前処理液の建浴及び給水を行う必要があり経済面でも極めて不利である。
【0007】第3の問題点として、使用条件における温度、pHの制約が挙げられる。具体的には、温度35℃以上、pH8.0〜9.5以外の範囲ではチタンコロイドが凝集し表面調整効果を発揮することが出来なくなる。従って、従来の表面調整組成物を使用する際には定められた温度、pH範囲で使用する必要があり、かつ、脱脂剤等に表面調整組成物を添加して金属表面の清浄化と活性化の効果を長時間に渡って一液で発揮させることは不可能であった。
【0008】第4の問題点として、表面調整用前処理液の効果によって得られるりん酸塩皮膜結晶の微細化の限界値が挙げられる。表面調整効果はチタンコロイドが金属表面に吸着してりん酸塩皮膜結晶析出の際の核を形成することにより得られる。従って、表面調整工程で金属表面に吸着したチタンコロイドの数が多ければ多いほど微細で緻密なりん酸塩皮膜結晶が得られる。その為には、表面調整用前処理液中のチタンコロイドの数を増やす、すなわちチタンコロイドの濃度を高めることが容易に考えられる。しかし、濃度を増すと表面調整用前処理液中でのチタンコロイド同士の衝突頻度が増し、衝突することによってチタンコロイドの凝集沈殿が発生する。現在使用されているチタンコロイドの濃度の上限は表面調整用前処理液中のチタンとして100ppm以下であり、それ以上にチタンコロイド濃度を増やすことによってりん酸塩皮膜結晶を微細化することは従来技術では不可能であった。
【0009】そこで、特開昭56−156778号公報および特開昭57−23066号公報では、ジャーンステッド塩以外の表面調整剤として鋼帯表面に2価または3価の金属の不溶性りん酸塩を含む縣濁液を加圧下に吹き付ける表面調整方法が開示されている。しかし、この表面調整方法は被処理物に縣濁液を加圧下に吹き付けて初めてその効果が発揮されるため通常の浸漬および噴霧処理によって施されるりん酸塩皮膜化成処理の表面調整には使用できなかった。
【0010】また、特公昭40−1095号公報では亜鉛めっき鋼板を高濃度の2価または3価金属の不溶性りん酸塩縣濁液に浸漬する表面調整方法が開示されている。しかし、この方法で示される実施例は亜鉛めっき鋼板に限られており、かつ表面調整効果を得るためには最低30g/L以上の高濃度の不溶性りん酸塩縣濁液を用いる必要があった。
【0011】従って、ジャーンステッド塩の問題点は種々提示されているにも関わらず、現在までのところ、それに代わりうる新しい技術は未だ提示されていないのである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来技術の抱える前記課題を解決し、りん酸塩皮膜化成処理において、化成反応の促進および短時間化、ならびに得られるりん酸塩皮膜結晶の微細化を図るために用いられる、経時安定性に優れた新規な表面調整用前処理液および表面調整方法を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者等は前記課題を解決するための手段について鋭意検討し、従来方法における問題点を解決し、かつ、りん酸塩皮膜結晶の品質をさらに向上させることが可能である新規な表面調整用前処理液および表面調整方法を完成するに至った。すなわち、本発明の金属のりん酸塩皮膜化成処理前の表面調整用前処理液は、粒径が5μm以下の粒子を含む2価もしくは3価の金属の少なくとも1種を含有するりん酸塩の1種以上と、アルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩またはこれらの混合物と、アニオン性に帯電し分散した酸化物微粒子、アニオン性の水溶性有機高分子、ノニオン性の水溶性有機高分子、アニオン性界面活性剤、およびノニオン性界面活性剤の群から選ばれる少なくとも1種と、を含有し、且つ、pHを4〜13に調整したことを特徴とするものである。上記粒径が5μm以下の粒子を含む2価もしくは3価の金属の少なくとも1種を含有するりん酸塩粒子は、その粒径が実質的に5μm以下のものからなる。
【0014】前記5μm以下の粒子の濃度が0.001〜30g/Lであり、前記2価もしくは3価の金属がZn、Fe、Mn、Ni、Co、Ca、およびAlの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。前記アルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩がオルソりん酸塩、メタりん酸塩、オルソ珪酸塩、メタ珪酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、およびホウ酸塩の中から選ばれた少なくとも1種の塩であり、且つ、その濃度が0.5〜20g/Lであることが好ましい。更に、アニオン性に帯電し分散した酸化物微粒子、アニオン性の水溶性有機高分子、ノニオン性の水溶性有機高分子、アニオン性界面活性剤、およびノニオン性界面活性剤の群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。前記アニオン性に帯電し分散した酸化物微粒子の平均粒径が0.5μm以下であり、且つ、その濃度が0.001〜5g/Lであることが好ましい。また、前記アニオン性に帯電し分散した酸化物微粒子がSi、B、Ti、Zr、Al、Sb、Mg、Se、Zn、Sn、Fe、Mo、およびV酸化物の中から選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
【0015】本発明の金属のりん酸塩皮膜化成処理前の表面調整方法は、該金属表面を前記表面調整用前処理液と接触させることを特徴とするものである。
【0016】更に、本発明品である表面調整用前処理液は高pH域での安定性および高温下での安定性が従来品と比較して非常に優れているため、ノニオン性界面活性剤もしくはアニオン性界面活性剤、またはこれらの混合物と、ビルダーを添加することによって金属表面の清浄化と活性化を兼ねた脱脂兼表面処理方法にも使用することができるものである。
【0017】
【作用】本発明における各々の成分の作用を詳細に説明する。
【0018】2価もしくは3価の金属の少なくとも1種を含有するりん酸塩の1種以上(以下、単に「2価もしくは3価の金属のりん酸塩」と称する)は本発明における必須成分である。本発明の目的は前記の通り、りん酸塩処理前に金属表面を活性化し、りん酸塩皮膜結晶析出のための核をつくるために用いられる表面調整用前処理液を提供することにある。本発明者等は、ある特定の濃度、粒径の2価もしくは3価の金属のりん酸塩はある特定の添加物を含む水溶液中で被処理物表面に吸着し後のりん酸塩皮膜結晶析出の際の核となり更にりん酸塩化成処理反応速度を高めることを発明したのである。
【0019】また、2価もしくは3価の金属のりん酸塩は、りん酸塩化成処理浴およびりん酸塩化成処理皮膜と類似した成分であるために、りん酸塩化成処理浴へ持ち込まれても化成処理浴に悪影響を与えず、また、りん酸塩皮膜中に核となって取り込まれてもりん酸塩化成皮膜の性能に悪影響を与えない利点も有している。本発明で用いられる2価もしくは3価の金属のりん酸塩としては下記に示す様な例が挙げられる。
2価もしくは3価の金属のりん酸塩
Zn3(PO4)2,Zn2Fe(PO4)2,Zn2Ni(PO4)2,Ni3(PO4)2,Zn2Mn(PO4)2,Mn3(PO4)2,Mn2Fe(PO4)2,Ca3(PO4)2,Zn2Ca(PO4)2,FePO4,AlPO4,CoPO4,Co3(PO4)2

【0020】また、金属表面に形成されるりん酸塩皮膜結晶の粒径は反応初期に析出した単位面積あたりの結晶数が多いほど微細になることが知られている。これは、りん酸塩皮膜の結晶の成長は隣り合う結晶同士が接触し金属表面を覆い尽くした時点で完結することから、反応初期に析出した結晶数が多ければ隣り合う結晶間の距離が小さくなり短時間で微細な結晶が金属表面を覆いつくすからである。従って、短時間で微細なりん酸塩結晶を析出させるためには、りん酸塩化成処理前に結晶の核を多く付与することが効果的であり、その為には核となる物質の粒径が小さい方が有利であることは言うまでもない。また、不溶性物質を水溶液中で安定に分散させるためにも本発明で用いられる2価もしくは3価の金属のりん酸塩の粒径は5μm以下であることが望ましい。ただし、仮に5μm以上の粒径の2価もしくは3価の金属のりん酸塩が本発明における表面調整用前処理液中に微量存在しても、本発明の効果に対しては何ら影響を与えることは無く、表面調整用水溶液中の5μm以下の微粒子の濃度が、ある濃度に達して初めてその効果が発揮されるのである。
【0021】また、本発明においては2価もしくは3価の金属のりん酸塩の粒径をコントロールすることによって、得られるりん酸塩皮膜結晶の粒径をコントールすることが可能である。微細に粉砕された2価もしくは3価の金属のりん酸塩を用いることによって前記した理由により極微細なりん酸塩結晶を析出させることが可能となるのである。
【0022】りん酸塩化成処理反応の反応速度は単位時間あたりに被処理物表面へ到達することができる活性りん酸塩イオン量で決定されFickの法則によって説明されている。
【0023】
【数1】

【0024】ここで、dnが大きいほどりん酸塩化成処理反応の反応速度は大きい。従って、りん酸塩化成処理の反応速度を大きくする為には(1)式の右辺の分母を小さくするか、もしくは分子を大きくする必要がある。しかし、分母は密着層の厚さであり密着層の厚さを小さくするためにはりん酸塩化成処理工程における攪拌を強くする等の物理的効果に頼らざるを得ない。また拡散係数はりん酸塩化成処理浴の浴組成で決定されるため大きく変わることはない。従って、分子を大きくする、すなわち反応速度を大きくするためにはりん酸塩化成処理浴中の活性りん酸塩イオン量を多くする以外に手段が無いわけである。
【0025】本発明者等は前記したFickの法則における反応初期の状態に着目して検討を行った。反応開始、すなわち金属がりん酸塩処理液と接触した段階でのCBは0であり、りん酸塩皮膜結晶が析出し得る濃度にCB達した時に初めてりん酸塩皮膜結晶の析出がおこる。従ってdnが大きい程CBが前記濃度に達するまでの時間が小さく、(1)式からCAが大きいほど初期反応は起こりやすいと考えられる。しかし、CA すなわち、りん酸塩化成処理浴中のりん酸塩イオン濃度をいたずらに高めると、加水分解による余剰スラッジの析出および得られるりん酸塩化成処理皮膜の粗大化を招くために得策ではない。そこで表面調整処理によってりん酸塩化成処理反応初期のCBを高めることと同じ効果が得られる手法を発明したのである。すなわち表面調整用前処理液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩は結晶析出の際の核となるだけではなく、りん酸塩化成処理液のpHが低いために、その一部が溶解し反応初期における金属表面のCBを高める働きを有するのである。従って、目標とするりん酸塩化成皮膜の成分と表面調整剤水溶液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の成分が近いほどその効果は大きくなるのである。
【0026】初期のりん酸塩化成処理反応におけるCBを高めるためには2価もしくは3価の金属のりん酸塩濃度としては0.001〜30g/Lが好ましい。なぜならば、2価もしくは3価の金属のりん酸塩濃度が0.001g/Lよりも小さいと金属表面に吸着する2価もしくは3価の金属のりん酸塩量が少ないためにりん酸塩化成処理反応を促進し得る濃度までCBが高められず、また結晶の核となる2価もしくは3価の金属のりん酸塩の数も少ないために反応は促進されない。2価もしくは3価の金属のりん酸塩濃度が30g/Lよりも大きくても、それ以上はりん酸塩化成処理反応を更に促進する効果は得られないために経済的に不利なだけである。
【0027】次に本発明の必須成分としてアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩またはこれらの混合物(以下、単に「アルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩」と称する)が挙げられる。従来技術にも示した通り過去においても2価もしくは3価の金属の不溶性のりん酸塩を加圧下に吹き付けて表面調整を行う方法が試みられている。しかし、過去の方法ではあくまでも加圧下に2価もしくは3価の金属の不溶性のりん酸塩を吹き付ける必要があった。加圧下に吹き付ける理由は、表面調整効果を発揮させるためには不溶性のりん酸塩を金属表面にぶつけて反応させる、またはショットピーニングの様に金属表面にキズをつける必要があったためである。また、浸漬処理によって表面調整効果を得るためには、従来方法では2価または3価の金属の不溶性のりん酸塩の濃度を極端に高める必要があった。
【0028】本発明者らは、アルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩が存在すると2価もしくは3価の金属のりん酸塩の濃度が低濃度で、且つ金属表面に物理的な力を加えない浸漬処理においても表面調整効果が発揮されることを発明したのである。従って、本発明においては表面調整用前処理液に被処理物を接触させるだけで良く、従来技術とは全く反応機構を異にするものである。そのための必須成分としてアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩が必要なのである。
【0029】
【0030】
【0031】本発明における表面調整用前処理液はpH4〜13の範囲に調整する必要がある。pH4未満では表面調整用前処理液中で金属が腐食することによって酸化膜等が発生し、りん酸塩化成処理不良を起こす恐れがある。またpHが13を越える場合、りん酸塩化成処理水溶液は酸性であるために表面調整用前処理液がりん酸塩化成処理工程に持ち込まれた際にりん酸塩化成処理浴を中和し、浴のバランスをくずす恐れがあるからである。
【0032】本発明においてはアニオン性に帯電し分散した酸化物微粒子を添加することが好ましい。以下に酸化物微粒子の作用を説明する。
【0033】第1に酸化物微粒子は金属表面に吸着しりん酸塩結晶析出における核、すなわちマイクロカソードとなってりん酸塩化成処理反応の起点となる。
【0034】第2には表面調整用前処理液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の分散安定性の向上が挙げられる。酸化物微粒子が表面調整用前処理液中に分散させた2価もしくは3価の金属のりん酸塩に吸着もしくは2価もしくは3価の金属のりん酸塩同士の衝突を防ぐことによって2価もしくは3価の金属のりん酸塩の凝集沈殿を防止し安定性を向上させるのである。そのためには酸化物微粒子の粒径が2価もしくは3価の金属のりん酸塩の粒径よりも小さい必要がある。
【0035】具体的には0.5μm以下であることが好ましい。本発明で使用される酸化物微粒子としては粒径とアニオン性であることを満たしていれば、酸化物微粒子の金属には制限されない。また、カチオン性の酸化物微粒子に表面処理を施すことによって、その表面電荷をアニオン性に変えたものでも差し支えない。本発明で用いられる酸化物微粒子の一例を示すと以下の通りである。
酸化物微粒子
SiO2,B2O3,TiO2,ZrO2,Al2O3,Sb2O5,MgO,SeO2,ZnO,SnO2,Fe2O3MoO3,Mo2O5,V2O5
なお、本発明における表面調整用前処理液の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の分散安定性を高める効果は、アニオン性の水溶性有機高分子、ノニオン性の水溶性有機高分子、アニオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤などを用いても同様に得られる。
【0036】酸化物微粒子の濃度は0.001〜5g/Lであることが望ましい。酸化物微粒子の濃度が0.001g/L未満では本発明における酸化物微粒子の用途である表面調整用前処理液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の分散安定性を高めることができない。また5g/L以上添加してもそれ以上に2価もしくは3価の金属のりん酸塩の分散安定性を高める効果は大きくならないために濃度の上限は5g/Lで十分である。
【0037】本発明における表面調整用前処理液は従来法と異なりあらゆる使用環境でその効果を継続することが可能である。すなわち、従来法と比較して下記に示す様な利点を有している。
(1)経時安定性が高い。
(2)Ca、Mg等の硬度成分が混入しても効果が衰えない。
(3)高温度での使用が可能である。
(4)様々なアルカリ金属塩を添加することができる。
(5)幅広いpH域での安定性が高い。
(6)得られるりん酸塩結晶の粒径をコントロールすることができる。
【0038】従って、従来法では継続して安定した品質を維持することができなかった脱脂兼表面調整剤としても使用する事が可能である。その際、脱脂兼表面調整工程における洗浄力を高めるために公知の無機アルカリビルダー、有機ビルダー、及び界面活性剤等を添加しても構わない。また、脱脂兼表面調整に関わらず表面調整用前処理液に持ち込まれたカチオン成分等による影響を打ち消すために公知のキレート剤、縮合りん酸塩等を添加しても構わない。
【0039】また、本発明の表面調整方法は表面調整用前処理液と金属表面を接触させるだけで良く、接触時間、表面調整用前処理液の温度等に制限はない。更に本発明の表面調整方法は、鉄鋼、亜鉛めっき鋼板、アルミニウムまたはアルミニウム合金等のりん酸塩処理が施される、あらゆる金属素材に適用可能である。
【0040】
【実施例】次に本発明の表面調整用前処理液を適用した際の効果を実施例と比較例を用いて詳細に説明する。ただし、りん酸塩処理の一例として、自動車用のりん酸亜鉛処理を示したものであり、本発明における表面調整用前処理液の用途を限定するものでは無い。
【0041】(供試板)実施例と比較例に用いた供試板の略号と内訳を以下に示す。
SPC(冷延鋼板:JIS−G−3141)
EG(両面電気亜鉛めっき鋼板:めっき目付量20g/m2
GA(両面合金化溶融亜鉛めっき鋼板:めっき目付量45g/m2
Zn−Ni(両面電気亜鉛ニッケルめっき鋼板:めっき目付量20g/m2
Al(アルミニウム板:JIS−5052)
【0042】(アルカリ脱脂液)実施例、比較例ともにファインクリーナーL4460(登録商標:日本パーカライジング(株)製)を2%に水道水で希釈して使用した。
【0043】(表面調整剤)表1に実施例で使用した表面調整用前処理液の組成を、表2に比較例で使用した表面調整用前処理液の組成を示す。なお、経時試験は表面調整用前処理液を調整後、1週間室温で放置した後に実施した。
【0044】実施例1
Zn3(PO4)2・4H2O試薬をジルコニアビーズを用いたボールミルで10分間粉砕したものを2価もしくは3価の金属のりん酸塩として用いた。前記2価もしくは3価の金属のりん酸塩を縣濁液とした後に5μmのペーパーフィルターで濾過し、濾液の平均粒径をサブミクロン粒子アナライザー(コールターN4型:コールター社)で測定した結果、0.31μmであった。更に濾液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の濃度が2g/Lとなる様に調整した。前記濃度調整された縣濁液にアルカリ金属塩として第3りん酸ナトリウム試薬を加えた後、pHを所定の値として表1に示す表面調整用前処理液として調整した。
【0045】実施例2
Zn3(PO4)2・4H2O試薬をジルコニアビーズを用いたボールミルで10分間粉砕したものを2価もしくは3価の金属のりん酸塩として用いた。前記2価もしくは3価の金属のりん酸塩を縣濁液とした後に5μmのペーパーフィルターで濾過し、濾液の平均粒径をサブミクロン粒子アナライザー(コールターN4型:コールター社)で測定した結果、0.31μmであった。更に濾液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の濃度が2g/Lとなる様に調整した。前記濃度調整された縣濁液に酸化物微粒子としてSiO2(AEROSIL#300:日本アエロジル(株)製)、更にアルカリ金属塩として第3りん酸ナトリウム試薬を加えた後、pHを所定の値として表1に示す表面調整用前処理液として調整した。
【0046】
【0047】実施例4
Zn3(PO4)2・4H2O試薬をジルコニアビーズを用いたボールミルで1時間粉砕したものを2価もしくは3価の金属のりん酸塩として用いた。前記2価もしくは3価の金属のりん酸塩を縣濁液とした後に5μmのペーパーフィルターで濾過し、濾液の平均粒径をサブミクロン粒子アナライザー(コールターN4型:コールター社)で測定した結果、0.09μmであった。更に濾液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の濃度が2g/Lとなる様に調整した。前記濃度調整された縣濁液に酸化物微粒子としてSiO2(AEROSIL#300:日本アエロジル(株)製)、更にアルカリ金属塩として第3りん酸ナトリウム試薬を加えた後、pHを所定の値として表1に示す表面調整用前処理液として調整した。
【0048】実施例5
50℃に加温した0.5mol/Lの硫酸鉄(II)溶液1Lに、1mol/Lの硫酸亜鉛溶液100mLおよび1mol/Lのりん酸1水素ナトリウム溶液100mLを交互に加え沈殿を生成させた。沈殿を含む水溶液を90℃で1時間加温して沈殿粒子を熟成させた後、傾斜洗浄を10回繰り返し実施した。濾過して得られた沈殿物を乾燥しX線回折で分析した結果、沈殿物は一部第3りん酸鉄を含むフォスフォフィライト[Zn2Fe(PO4)2・4H2O]であった。前記フォスフォフィライトをジルコニアビーズを用いたボールミルで10分間粉砕したものを2価もしくは3価の金属のりん酸塩として用いた。前記2価もしくは3価の金属のりん酸塩を縣濁液とした後に5μmのペーパーフィルターで濾過し、濾液の平均粒径をサブミクロン粒子アナライザー(コールターN4型:コールター社)で測定した結果、0.29μmであった。更に濾液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の濃度が2g/Lとなる様に調整した。前記濃度調整された縣濁液に酸化物微粒子としてSiO2(AEROSIL#300:日本アエロジル(株)製)、更にアルカリ金属塩として第3りん酸ナトリウム試薬を加えた後、pHを所定の値として表1に示す表面調整用前処理液として調整した。
【0049】実施例6
50℃に加温した0.1mol/Lの硝酸マンガン溶液1Lに1mol/Lの硝酸亜鉛溶液200mLを加え、更に1mol/Lのりん酸1水素ナトリウム溶液200mLを加えて沈殿を生成させた。沈殿を含む水溶液を90℃で1時間加温して沈殿粒子を熟成させた後、傾斜洗浄を10回繰り返し実施した。濾過して得られた沈殿物の一部を塩酸で溶解し成分を原子吸光分析装置を用いて分析した結果、沈殿物は[ZnXMnY(PO4)2
]であった。前記[ZnXMnY(PO4)2 ]をジルコニアビーズを用いたボールミルで10分間粉砕したものを2価もしくは3価の金属のりん酸塩として用いた。前記2価もしくは3価の金属のりん酸塩を縣濁液とした後に5μmのペーパーフィルターで濾過し、濾液の平均粒径をサブミクロン粒子アナライザー(コールターN4型:コールター社)で測定した結果、0.32μmであった。更に濾液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の濃度が2g/Lとなる様に調整した。前記濃度調整された縣濁液に酸化物微粒子としてSiO2(AEROSIL#300:日本アエロジル(株)製)、更にアルカリ金属塩として第3りん酸ナトリウム試薬を加えた後、pHを所定の値として表1に示す表面調整用前処理液として調整した。
【0050】実施例7
50℃に加温した0.1mol/Lの硝酸カルシウム溶液1Lに1mol/Lの硝酸亜鉛溶液200mLを加え、更に1mol/Lのりん酸1水素ナトリウム溶液200mLを加えて沈殿を生成させた。沈殿を含む水溶液を90℃で1時間加温して沈殿粒子を熟成させた後、傾斜洗浄を10回繰り返し実施した。濾過して得られた沈殿物を乾燥しX線回折で分析した結果、沈殿物はショルタイト[Zn2Ca(PO4)2・4H2O]であった。前記ショルタイトをジルコニアビーズを用いたボールミルで10分間粉砕したものを2価もしくは3価の金属のりん酸塩として用いた。前記2価もしくは3価の金属のりん酸塩を縣濁液とした後に5μmのペーパーフィルターで濾過し、濾液の平均粒径をサブミクロン粒子アナライザー(コールターN4型:コールター社)で測定した結果、0.30μmであった。更に濾液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の濃度が2g/Lとなる様に調整した。前記濃度調整された縣濁液に酸化物微粒子としてSiO2(AEROSIL#300:日本アエロジル(株)製)、更にアルカリ金属塩として第3りん酸ナトリウム試薬を加えた後、pHを所定の値として表1に示す表面調整用前処理液として調整した。
【0051】実施例8
Zn3(PO4)2・4H2O試薬をジルコニアビーズを用いたボールミルで10分間粉砕したものを2価もしくは3価の金属のりん酸塩として用いた。前記2価もしくは3価の金属のりん酸塩を縣濁液とした後に5μmのペーパーフィルターで濾過し、濾液の平均粒径をサブミクロン粒子アナライザー(コールターN4型:コールター社)で測定した結果、0.31μmであった。更に濾液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の濃度が0.02g/Lとなる様に調整した。前記濃度調整された縣濁液に酸化物微粒子としてZrO2ゾル(NZS-30B:日産化学工業(株)製)、更にアルカリ金属塩として第3りん酸ナトリウム試薬を加えた後、pHを所定の値として表1に示す表面調整用前処理液として調整した。
【0052】実施例9
Zn3(PO4)2・4H2O試薬をジルコニアビーズを用いたボールミルで10分間粉砕したものを2価もしくは3価の金属のりん酸塩として用いた。前記2価もしくは3価の金属のりん酸塩を縣濁液とした後に5μmのペーパーフィルターで濾過し、濾液の平均粒径をサブミクロン粒子アナライザー(コールターN4型:コールター社)で測定した結果、0.31μmであった。更に濾液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の濃度が30g/Lとなる様に調整した。前記濃度調整された縣濁液に酸化物微粒子としてSb2O5ゾル(A-1530:日産化学工業(株)製)、更にアルカリ金属塩として第3りん酸ナトリウム試薬を加えた後、pHを所定の値として表1に示す表面調整用前処理液として調整した。
【0053】実施例10
Zn3(PO4)2・4H2O試薬をジルコニアビーズを用いたボールミルで10分間粉砕したものを2価もしくは3価の金属のりん酸塩として用いた。前記2価もしくは3価の金属のりん酸塩を縣濁液とした後に5μmのペーパーフィルターで濾過し、濾液の平均粒径をサブミクロン粒子アナライザー(コールターN4型:コールター社)で測定した結果、0.31μmであった。更に濾液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の濃度が2g/Lとなる様に調整した。前記濃度調整された縣濁液に酸化物微粒子としてSiO2(AEROSIL#300:日本アエロジル(株)製)、更にアルカリ金属塩としてメタ珪酸ナトリウム試薬を加えた後、pHを所定の値として表1に示す表面調整用前処理液として調整した。
【0054】実施例11
Zn3(PO4)2・4H2O試薬をジルコニアビーズを用いたボールミルで10分間粉砕したものを2価もしくは3価の金属のりん酸塩として用いた。前記2価もしくは3価の金属のりん酸塩を縣濁液とした後に5μmのペーパーフィルターで濾過し、濾液の平均粒径をサブミクロン粒子アナライザー(コールターN4型:コールター社)で測定した結果、0.31μmであった。更に濾液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の濃度が2g/Lとなる様に調整した。前記濃度調整された縣濁液に酸化物微粒子としてSiO2(AEROSIL#300:日本アエロジル(株)製)、更にアルカリ金属塩としてセスキ炭酸ナトリウム試薬を加えた後、pHを所定の値として表1に示す表面調整用前処理液として調整した。
【0055】実施例12
Zn3(PO4)2・4H2O試薬をジルコニアビーズを用いたボールミルで10分間粉砕したものを2価もしくは3価の金属のりん酸塩として用いた。前記2価もしくは3価の金属のりん酸塩を縣濁液とした後に5μmのペーパーフィルターで濾過し、濾液の平均粒径をサブミクロン粒子アナライザー(コールターN4型:コールター社)で測定した結果、0.31μmであった。更に濾液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の濃度が2g/Lとなる様に調整した。前記濃度調整された縣濁液に酸化物微粒子としてSiO2(AEROSIL#300:日本アエロジル(株)製)、更にアルカリ金属塩として第3りん酸ナトリウム試薬を加えた後、pHを所定の値として表1に示す表面調整用前処理液として調整した。
【0056】実施例13
Zn3(PO4)2・4H2O試薬をジルコニアビーズを用いたボールミルで10分間粉砕したものを2価もしくは3価の金属のりん酸塩として用いた。前記2価もしくは3価の金属のりん酸塩を縣濁液とした後に5μmのペーパーフィルターで濾過し、濾液の平均粒径をサブミクロン粒子アナライザー(コールターN4型:コールター社)で測定した結果、0.31μmであった。更に濾液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の濃度が2g/Lとなる様に調整した。前記濃度調整された縣濁液に酸化物微粒子としてSiO2(AEROSIL#300:日本アエロジル(株)製)、更にアルカリ金属塩として第3りん酸ナトリウム試薬を加えた後、pHを所定の値として表1に示す表面調整用前処理液として調整した。
【0057】実施例14
実施例2と同じ処理液を用い、処理温度40℃で表面調整用前処理を行った。
【0058】実施例15
実施例14の処理液に界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル:EO11モル)を2g/L添加し、処理温度40℃で脱脂を行わない塗油されたままのテストピースに対して脱脂兼表面調整処理を行った。
【0059】
【0060】比較例1
従来品の表面調整用前処理液であるプレパレンZN(登録商標:日本パーカライジング(株)製)水溶液の標準条件で表面調整用前処理を行った。
【0061】比較例2
従来品の表面調整用前処理液であるプレパレンZN水溶液に、表2に示す通り酸化物微粒子としてSiO2(AEROSIL#300:日本アエロジル(株)製)を加えて表面調整用前処理を行った。
【0062】比較例3
従来品の表面調整用前処理液であるプレパレンZN水溶液のpHを表2に示す値に調整して表面調整用前処理を行った。
【0063】比較例4
従来品の表面調整用前処理液であるプレパレンZN水溶液のpHを表2に示す値に調整して表面調整用前処理を行った。
【0064】比較例5
従来品の表面調整用前処理液であるプレパレンZN水溶液の処理温度を40℃として表面調整用前処理を行った。
【0065】比較例6
Zn3(PO4)2・4H2O試薬をジルコニアビーズを用いたボールミルで10分間粉砕したものを2価もしくは3価の金属のりん酸塩として用いた。前記2価もしくは3価の金属のりん酸塩を縣濁液とした後に5μmのペーパーフィルターで濾過し、濾液の平均粒径をサブミクロン粒子アナライザー(コールターN4型:コールター社)で測定した結果、0.31μmであった。更に濾液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の濃度が2g/Lとなる様に調整した。前記濃度調整された縣濁液に酸化物微粒子としてSiO2(AEROSIL#300:日本アエロジル(株)製)を加えた後、pHを所定の値として表1に示す表面調整用前処理液として調整した。
【0066】比較例7
Zn3(PO4)2・4H2O試薬を2価もしくは3価の金属のりん酸塩として用いた。前記2価もしくは3価の金属のりん酸塩を縣濁液とした後に5μmのペーパーフィルターで濾過し濾紙に残った粒子を再度水に分散し縣濁液とした。縣濁液の平均粒径をコールターカウンター(コールター社)で測定した結果、6.5μmであった。次に縣濁液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の濃度が2g/Lとなる様に調整した。前記濃度調整された縣濁液に酸化物微粒子としてSiO2(AEROSIL#300:日本アエロジル(株)製)、更にアルカリ金属塩として第3りん酸ナトリウム試薬を加えた後、pHを所定の値として表1に示す表面調整用前処理液として調整した。
【0067】比較例8
Zn3(PO4)2・4H2O試薬をジルコニアビーズを用いたボールミルで10分間粉砕したものを2価もしくは3価の金属のりん酸塩として用いた。前記2価もしくは3価の金属のりん酸塩を縣濁液とした後に5μmのペーパーフィルターで濾過し、濾液の平均粒径をサブミクロン粒子アナライザー(コールターN4型:コールター社)で測定した結果、0.31μmであった。更に濾液中の2価もしくは3価の金属のりん酸塩の濃度が2g/Lとなる様に調整した。前記濃度調整された縣濁液に酸化物微粒子としてSiO2(AEROSIL#300:日本アエロジル(株)製)、更にアルカリ金属塩として第3りん酸ナトリウム試薬を加えた後、pHを所定の値として表1に示す表面調整用前処理液として調整した。
【0068】(りん酸亜鉛処理液)実施例、比較例ともにパルボンドL3020(登録商標:日本パーカライジング(株)製)を4.8%に水道水で希釈し、成分濃度、全酸度、遊離酸度、促進剤濃度を現在、自動用りん酸亜鉛処理として一般に用いられている濃度に調整して使用した。以下に処理工程を示す。
【0069】(処理工程)(1)アルカリ脱脂 42℃、120秒スプレー(2)水洗 室温、30秒スプレー(3)表面調整 室温、20秒浸漬(4)りん酸亜鉛処理
42℃、120秒浸漬(5)水洗 室温、30秒スプレー(6)脱イオン水洗 室温、30秒スプレー
【0070】(塗装および評価工程)実施例、比較例ともにカチオン電着塗料(エレクロン2000:関西ペイント社製)を膜厚20μmとなる様に塗装し、180℃で25分間焼き付けた後に一部を塩水噴霧試験と耐塩温水試験に供した。残りの電着塗装板を中塗り塗料(自動車用中塗り塗料:関西ペイント社製)を中塗り塗装の膜厚が40μmとなる様に塗装し140℃で30分間焼き付けを行った。更に中塗り塗装が完了した供試板に上塗り塗料(自動車用上塗り塗料:関西ペイント社製)を上塗り塗装の膜厚が40μmとなる様に塗装し140℃で30分間焼き付けた。得られた総合膜厚100μmの3コート板を1次密着性評価試験、2次密着性評価試験に供した。
【0071】(りん酸亜鉛皮膜の評価方法)(1)外観目視観察により、りん酸亜鉛皮膜のスケ、ムラの有無を確認した。評価は以下の通りとした。
◎ 均一良好な外観
○ 一部ムラあり
△ ムラ、スケあり
× スケ多し
×× 化成皮膜なし
【0072】(2)皮膜重量(C.W.)化成処理後の処理板の重量を測定し(W1[g]とする)、次いで化成処理板に下記に示す剥離液、剥離条件にて皮膜剥離処理を施し、その重量を測定し(W2[g]とする)、式(I)を用いて算出した。

冷延鋼板の場合
剥離液 :5%クロム酸水溶液剥離条件:75℃、15分、浸漬剥離

亜鉛めっき板の場合
剥離液 :重クロム酸アンモニウム2重量%+28%アンモニア水49重量%+純水49重量%
剥離条件:常温、15分、浸漬剥離
皮膜重量[g/m2]=(W1−W2)/0.021 式(I)
【0073】(3)皮膜結晶サイズ(C.S.)析出した皮膜結晶は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて1500倍に拡大した像を観察し、結晶粒径を調査した。
【0074】(4)P比実施例、比較例ともにSPC鋼板についてのみ、X線回折装置を用いてりん酸亜鉛化成皮膜中のフォスフォフィライト結晶のX線強度(P)とホパイト結晶のX線強度(H)を測定した。得られたX線強度から式(II)を用いてP比を算出した。 P比=P/(P+H) 式(II)

【0075】(塗膜の評価方法)実施例、比較例ともに下記に示す評価方法に従って塗膜の評価を実施した。
【0076】(1)塩水噴霧試験(JIS−Z−2371)クロスカットを入れた電着塗装板に5%塩水を960時間噴霧した。噴霧終了後にクロスカットからの片側最大錆幅を測定し評価した。
【0077】(2)耐塩温水試験クロスカットを入れた電着塗装板を5%塩水中に240時間浸漬した。浸漬終了後にクロスカットからの片側最大錆幅を測定し評価した。
【0078】(3)1次密着性評価試験3コート板に鋭利なカッターで2mm間隔の碁盤目を100個形成し、碁盤目上に粘着テープを粘着した後に剥離して、剥離した碁盤目塗膜の数を評価した。
【0079】(4)2次密着性評価試験3コート板を40℃の脱イオン水に240時間浸漬し浸漬終了後に1次密着性評価試験と同様の手順に従い碁盤目剥離試験を実施し、剥離した碁盤目塗膜の数を評価した。
【0080】表3に実施例における表面調整用前処理液を用いたりん酸亜鉛処理において得られた化成処理皮膜の皮膜特性を示す。
【0081】表4に比較例における表面調整用前処理液を用いたりん酸亜鉛処理において得られた化成処理皮膜の皮膜特性を示す。
【0082】表5に実施例における表面調整用前処理液を用いたりん酸亜鉛処理において得られた化成処理皮膜の塗装後の性能評価結果を示す。
【0083】表6に比較例における表面調整用前処理液を用いたりん酸亜鉛処理において得られた化成処理皮膜の塗装後の性能評価結果を示す。
【0084】表3および表4より本発明品である表面調整用前処理液は従来品の欠点であった経時安定性が著しく向上していることが確認される。また、実施例1および実施例2から経時安定性に対する酸化物微粒子の効果が明らかとなっている。更に酸化物微粒子およびアルカリ金属の種類、処理温度を変えてもその効果は変わらず従来品と同等以上に緻密で微細な結晶を得ることができ、使用する2価もしくは3価の金属のりん酸塩の平均粒径を制御することによって得られるりん酸塩皮膜結晶のサイズを制御することも可能となった。
【0085】表5および表6から本発明品である表面調整用前処理液は従来品と同等以上の塗装性能を与えるものであることが解る。
【0086】
【発明の効果】前述した通り本発明品は従来品の欠点であった経時安定性を格段に向上し、従来品では不可能であったりん酸塩皮膜結晶サイズの自由な制御も可能とした。従って、本発明品は従来品と比較して経済的に有利であり、かつ従来品と同等以上の性能を与えることを可能としたのである。

【0087】
【表1】



【0088】
【表2】


【0089】
【表3】

【0090】
【表4】


【0091】
【表5】


【0092】
【表6】

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