JP2003103697A - プレス成形性に優れたプレコート金属板 - Google Patents

プレス成形性に優れたプレコート金属板

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JP2003103697A
JP2003103697A JP2001305623A JP2001305623A JP2003103697A JP 2003103697 A JP2003103697 A JP 2003103697A JP 2001305623 A JP2001305623 A JP 2001305623A JP 2001305623 A JP2001305623 A JP 2001305623A JP 2003103697 A JP2003103697 A JP 2003103697A
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Kohei Ueda
浩平 植田
Hiroshi Kanai
洋 金井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 絞り加工を施しても塗膜が損傷、剥離するこ
となく成形加工が可能なプレス成形性に優れたプレコー
ト金属板を提供する。 【解決手段】 貯蔵弾性率(E’)の対数と温度(T)
の関係を表す粘弾性曲線において流動領域が有り、且
つ、流動領域の[logE’/T]の最小傾きが−0.
02Pa/℃以下である塗膜を、片面もしくは両面に、
1層以上有することを特徴とするプレス成形性に優れた
プレコート金属板。塗膜を構成する樹脂の数平均分子量
が10000以上、ガラス転移温度(Tg)が25℃以
上であることが好ましい。また、塗膜構成としては前記
塗膜の上層に最上層塗膜として、貯蔵弾性率(E’)の
対数と温度(T)の関係を表す粘弾性曲線にて流動領域
が無く、且つ弾性率の最小値が1.0×106Pa以上
である塗膜を有することが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プレス成形に優れ
たプレコート金属板に関するものであり、特に、絞り成
形のように、金属板に圧縮歪みが負荷される加工におい
ても、塗膜が破壊されにくいプレコート金属板に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来、家電用、建材用、自動車用などの
材料として、加工後塗装したポスト塗装製品板が用いら
れてきたが、通年、このポスト塗装製品板に代わり、着
色した有機被膜を被覆したプレコート金属板が使用され
るようになってきている。この金属板は、金属板、また
は、めっきを施した金属板に有機被膜を被覆したもの
で、美観を有しながら、加工性を有し、耐食性が良好で
あるという特性を有している。
【0003】プレコート金属板は、塗膜を被覆していな
い金属板の加工方法と同様の加工方法を適用することが
できるが、成形加工時に塗膜損傷(塗膜の亀裂や剥離)
が発生するという問題から、プレコート金属板の加工
は、従来、引張歪みのみが作用する曲げ加工が中心であ
った。
【0004】しかし、近年になって、圧縮歪と引張り歪
みが作用する絞り成形を施す変形部位にもプレコート金
属板を適用したいとする要望が高まりつつある。これま
では、より低いTg(ガラス転移温度)を有し、且つ、
塗膜構造をより強固な網目構造にすることで高伸び率と
高強度を付与した塗膜を金属板に被覆することにより、
高加工にも耐えられるプレコート金属板を得ていたが、
このような被覆方法には自づと限界があり上記要望に応
えることはでき難い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】プレコート金属板を絞
り加工した場合、圧縮歪みが作用することで塗膜が座屈
し、これを起点として塗膜が損傷したり、剥離してしま
う問題が発生する。
【0006】そこで、本発明においては、このような問
題を解決し、絞り加工を施しても塗膜が損傷、剥離する
ことなく成形加工可能な、プレス成形性に優れたプレコ
ート金属板を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明者らは、プレコート
金属板を深絞り加工したときに発生する塗膜の損傷は、
塗膜の網目構造と関係があることを見出し、かかる知見
を基に本発明を完成させた。そして、本発明が要旨とす
るところは、以下の通りである。 (1)貯蔵弾性率(E’)の対数と温度(T)の関係を
表す粘弾性曲線において流動領域が有り、且つ、該流動
領域における[logE’/T]の最小傾きが−0.0
2Pa/℃以下である塗膜を、片面もしくは両面に、1
層以上有することを特徴とするプレス成形性に優れたプ
レコート金属板。 (2)前記塗膜を構成する樹脂の数平均分子量が100
00以上であることを特徴とする前記(1)に記載のプ
レス成形性に優れたプレコート金属板。 (3)前記塗膜を構成する樹脂のガラス転移温度(T
g)が25℃以上であることを特徴とする前記(1)ま
たは(2)に記載のプレス成形性に優れたプレコート金
属板。 (4)前記塗膜の上層に最上層塗膜として、貯蔵弾性率
(E’)の対数と温度(T)の関係を表す粘弾性曲線に
おいて流動領域が無く、且つ、貯蔵弾性率(E’)の最
小値が1.0×106Pa以上である塗膜を有すること
を特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の
プレス成形性に優れたプレコート金属板。
【0008】
【発明の実施の形態】発明者らは、プレコート金属板を
絞り加工した際における塗膜の損傷について調査した結
果、絞り加工のように圧縮の変形を受ける変形部位の塗
膜は、変形後に塗膜内部に蓄積される弾性的な歪みエネ
ルギーに影響されて、蓄積する歪みエネルギーが小さい
塗膜は座屈しにくく、更には、破壊・剥離しにくいこと
を見出した(塗装工学,10(33),399−40
6)。
【0009】そして、更に、変形した後に塗膜内部に蓄
積する弾性歪みエネルギーが小さくなる塗膜について研
究を進めた結果、発明者らは、これら弾性歪みエネルギ
ーは、塗膜の網目構造に関係が有ることを見出した。
【0010】塗膜に用いる樹脂の網目構造が強固な状態
で、塗膜を加工した場合、塗膜には、塗膜樹脂の分子鎖
の伸縮による弾性変形が発生する。そのため、変形以後
には塗膜内部に弾性歪みエネルギーが蓄積される。この
ような塗膜を被覆したプレコート金属板を絞り加工する
と、加工部位の塗膜に大きな内部応力が作用するため、
塗膜が損傷したり、剥離しやすくなる。
【0011】発明者らは、プレコート金属板を絞り加工
したときの塗膜損傷を無くすためには、塗膜が変形した
ときの弾性変形分をなるべく少なくして、塑性変形させ
る必要があることを知見した。
【0012】樹脂の場合、塑性変形は樹脂の分子鎖のズ
レによる変形を意味するから塗膜樹脂の構造を、変形に
より塗膜樹脂の分子鎖が容易にズレるような網目構造に
することで、本発明の目的が達せられる。
【0013】塗膜樹脂の分子鎖が容易にズレるような網
目構造か否かは、成膜した塗膜の粘弾性に係る挙動によ
り見極めることができる。図1に、樹脂の粘弾性に係る
挙動の代表例を示す。これは、動的粘弾性試験によって
求められる貯蔵弾性率(E’)の対数と温度(T)の関
係(粘弾性囲線)を示したグラフである。
【0014】一般的な樹脂(高分子材料)の弾性率は温
度上昇によって変化する。樹脂の弾性率は、低温領域で
は比較的弾性率の高いガラス状領域であるが、温度の上
昇と共に、弾性率が急激に低下する転移領域を経て、比
較的弾性率が低いゴム状領域へと変化する。ここで、分
子鎖が容易にズレるような構造を有する樹脂の場合、更
なる温度の上昇に伴い弾性率は更に低くなり、流動領域
へと変化する。
【0015】本発明のプレス成形性に優れたプレコート
金属板は、基本的には、貯蔵弾性率(E’)の対数と温
度(T)の関係を表す粘弾性曲線において流動領域が現
れる塗膜を被覆したものである。しかし、樹脂によって
は、ゴム弾性領域と流動領域を区別することが困難なも
のもある。
【0016】そこで、本発明では、さらに、流動領域の
[logE’/T]の最小傾き(図1中の傾き)が−
0.02Pa/℃以下であることを条件とした。この条
件を満たす塗膜は、変形により塗膜樹脂の分子鎖が容易
にズレるので、このような塗膜を被覆したプレコート金
属板をプレス成形しても、塗膜の損傷や剥離は発生しな
い。
【0017】金属板に被覆する塗膜が本発明の条件を満
たすようにするためには、(a)塗膜を構成する樹脂の
分子鎖を枝分かれのより少ない構造にする、(b)樹脂
の架橋点をより少くする、(c)架橋点の強度をより小
さくする、などの手法があるが、いずれの手法をも用い
ることができる。
【0018】図1に示すような樹脂の粘弾性特性は、樹
脂の動的粘弾性試験のみならず、応力緩和試験からも得
ることができる。この場合、応力緩和試験で求められる
緩和弾性率(E(t))を貯蔵弾性率(E’)とする。
【0019】本発明の流動領域における条件は、前述の
試験方法以外に、一般的に知られている粘弾性試験方法
から、それぞれの換算則を用いて計算により求めること
もできる。例えば、粘弾性材料については、時間−温度
の換算則が成立することが知られているから、動的粘弾
性試験の貯蔵弾性率の周波数依存曲線や応力緩和試験の
時間依存曲線から塗膜の流動領域における条件を計算に
より求めることができるし、また、塗膜の流動領域にお
ける条件は、クリープ試験から得られるクリープコンプ
ライアンス(クリープコンプライアンスは弾性率の逆数
と比例関係となる)を弾性率に換算して求めることがで
きる。
【0020】これら粘弾性もしくはレオロジーの一般的
な知見については、公知の文献、例えばJ.D.Ferry著の
「 Viscoelastic Properties 」(発行:John Wiley an
d Sons)や日本レオロジー学会編の「講座・レオロジ
ー」(発行:高分子刊行会)などを参考とすることがで
きる。
【0021】流動領域を持つ樹脂は、乾燥焼付後に硬化
剤を用いなければ3次元ネットワークを形成しない樹
脂、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などを主
樹脂として用い、乾燥焼付後に3次元ネットワークが形
成されない程度の微量の硬化剤を添加するか、もしく
は、硬化剤を添加しないで得ることができる。硬化剤
は、公知のもの、例えば、メラミン樹脂、イソシアネー
ト化合物などを用いる。
【0022】硬化剤の添加量は、主樹脂の種類や硬化剤
の種類によっても異なるので、適宜選定する必要がある
が、一般的には、主樹脂100質量部に対して硬化剤の
添加量が5質量部以下であると好適である。また、主樹
脂を構成する高分子鎖はなるべく枝分かれの少ないもの
がよく、直鎖タイプのものがより好適である。主樹脂を
構成する高分子鎖の枝分かれが多いと高分子鎖同士で絡
み合いが生じ、流動が発生しにくいからである。
【0023】また、流動領域を持つ樹脂は、公知の熱硬
化型塗膜の中に、公知の熱可塑性樹脂を添加することに
よっても得ることができる。熱可塑性樹脂の添加量も樹
脂の種類によって異なるので、必要に応じて適宜選定す
る必要がある。
【0024】本発明のプレコート金属板の塗膜を構成す
る樹脂の数平均分子量は10000以上が好適である。
塗膜を構成する樹脂の数平均分子量が10000未満で
は、プレス加工により引張り、歪みが作用したときに塗
膜の伸びが乏しく、加工部位で塗膜に亀裂が入りやす
い。上記数平均分子量はより高い方が、塗膜の破断伸び
がより高くなるので好適である。
【0025】しかし、上記数平均分子量が高すぎると、
塗料化できないか、もしくは、塗料化したときの粘度が
高くなりすぎて塗布作業性が低下するなどの不具合点が
発生するので、上記数平均分子量は、作業条件及び作業
環境に応じて適宜決める必要がある。
【0026】本発明のプレコート金属板の塗膜を形成す
る樹脂のガラス転移温度(Tg)は25℃以上であると
好適である。Tgが25℃未満であると、本発明のプレ
コート金属板の樹脂は、プレコート金属板を保管した時
に、ブロッキングなどの問題を起こしやすい。なお、ブ
ロッキングとは、製造したプレコート金属板をコイル状
にして保管、もしくは、切り板状にして何枚も重ねて保
管した時に、夏などに温度が高くなり塗膜表層が若干軟
化して、プレコート金属板同士が貼り付いてしまう現象
のことを言う。
【0027】また、Tgがより高いと耐汚染性もより向
上し好適であるが、樹脂の種類によってはTgが高すぎ
ると分子鎖が脆くなり、変形により分子鎖がズレる前に
破壊され、塗膜に亀裂が入りやすくなるものもある。
【0028】これらの塗膜中には、必要に応じて着色顔
料や防錆顔料を併用して添加することができる。着色顔
料としては、酸化チタン(TiO2 )、酸化亜鉛(Zn
O)、酸化ジルコニウム(ZrO2 )、炭酸カルシウム
(CaCO3 )、硫酸バリュウム(BaSO4 )、アル
ミナ(Al23 )、カオリンクレー、カーボンブラッ
ク、酸化鉄(Fe23 、Fe34 )等の無機顔料や、
有機顔料などの着色顔料が挙げられる。
【0029】また、防錆顔料については、ストロンチウ
ムクロメート、カルシウムクロメートなどのクロム系防
錆顔料や、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、リン酸アルミ、
亜リン酸アルミ、モリブデン酸、バナジン酸/リン酸混
合顔料、カルシウムシリケートなどのノンクロム系防錆
顔料が挙げられる。ノンクロメート防錆顔料の場合、環
境負荷が小さくなるので、より好適である。
【0030】本発明のプレコート金属板を構成する各塗
膜を塗布する際には、樹脂を塗料形態にして塗布するこ
とができる。例えば、樹脂を溶剤に溶解した溶剤系塗
料、エマルジョン化した樹脂を水などに分散した水系塗
料、樹脂を粉砕してパウダー化した粉体塗料、粉砕しパ
ウダー化した樹脂を水などに分散させたスラリー粉体塗
料、樹脂をフィルム上にして貼り付けるフィルムラミネ
ート、樹脂を溶融させてから塗布する形態などが挙げら
れる。
【0031】塗布方法は、いずれの形態においても特に
限定されず、通常、公知の塗装方法、例えば、ロール塗
装、ローラーカーテン塗装、カーテンフロー塗装、エア
ースプレー塗装、エアーレススプレー塗装、刷毛塗り塗
装、ダイコータ−塗装などを採用できる。
【0032】なお、プレコート金属板には塗膜層を被覆
する前に塗膜密着性を上げるために、金属板もしくはめ
っきを施した金属板上に塗装前処理を施してもよい。本
発明のプレコート金属板においても、塗装前処理を施し
た方が好適である。塗装前処理を施さなくても塗膜が密
着すれば、塗装前処理工程を省略できるので、より好適
である。
【0033】塗装前処理は、公知のもの、例えば、塗布
クロメート処理、電解クロメート処理、リン酸処理、ジ
ルコニア系前処理などを使用することができる。また、
近年、樹脂をベースとしてノンクロメート前処理も開発
されているが、ノンクロメート前処理を用いると、環境
への負荷が低減されるので、より好適である。
【0034】本発明のプレコート金属板は、プレス機に
よる絞り加工性を可能とすることを目的として開発され
たものであり、金属板の材料は、絞り加工が可能な金属
材料で有ればよく、また、合金であってもよい。例えば
金属板として、鋼板、アルミ板、チタン板などが挙げら
れるが、これらは限定されるものではない。
【0035】これらの金属材料の表面にはめっきが施さ
れていてもよい。めっきの種類としては、亜鉛めっき、
アルミめっき、銅めっき、ニッケルめっき等が挙げられ
る。合金めっきであってもよい。
【0036】鋼板の場合は、冷延鋼板、熱延鋼板、溶融
亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、溶融合金化亜鉛
めっき鋼板、アルミめっき鋼板、アルミ−亜鉛合金化め
っき鋼板、ステンレス鋼板などの鋼板、および、めっき
鋼板を適用できる。これらの金属板には、塗装前処理を
施す前に湯洗、アルカリ脱脂などの通常の処理を行うこ
とができる。
【0037】本発明のプレコート金属板は、2層以上の
塗膜を有していてもよいが、塗膜層の少なくとも1層以
上を、貯蔵弾性率(E’)の対数と温度(T)の関係を
表す粘弾性曲線において流動領域が有り、且つ、該流動
領域における[logE’/T]の最小傾きが−0.0
2Pa/℃以下である塗膜とする。
【0038】しかし、貯蔵弾性率(E’)の対数と温度
(T)の関係を表す粘弾性曲線において流動領域を有
し、且つ、流動領域の[logE’/T]の最小傾きが
−0.02Pa/℃以下となる塗膜は、耐汚染性などに
劣る傾向がある。また、本発明で規定する条件を満たす
塗膜であっても、Tg(ガラス転移温度)が比較的低い
塗膜は、耐ブロッキング性が劣る。
【0039】これら塗膜の特性をカバーするために、こ
の塗膜の上層に最上層塗膜として、貯蔵弾性率(E’)
の対数と温度(T)の関係を表す粘弾性曲線において流
動領域が無く、且つ、貯蔵弾性率(E’)の最小値が
1.0×106Pa以上の塗膜を形成する。貯蔵弾性率
(E’)の対数と温度(T)の関係を表す粘弾性曲線に
おいて流動領域が無く、且つ、貯蔵弾性率(E’)の最
小値が1.0×106Pa以上の塗膜は、通常、公知の
熱硬化型塗膜を用いることができる。例えば、ポリエス
テル/メラミン系塗膜、ポリエステル/イソシアネート
系塗膜、エポキシ系塗膜などが挙げられる。
【0040】主体となる樹脂(主樹脂)に硬化剤を添加
して硬化させる塗膜の場合、硬化剤の添加量は主樹脂の
種類や硬化剤の種類によっても異なるので、適宜、設定
する必要があるが、一般的には、主樹脂100質量部に
対して硬化剤の添加量が5質量部超であると好適であ
る。また、紫外線硬化塗膜や電子線硬化塗膜なども用い
ることができる。
【0041】本発明のプレコート金属板の膜厚は特に規
定するものではないが、その他の塗膜性能や塗装方式、
用途によって適切な膜厚も異なるので、必要に応じて、
適宜、決める必要がある。ただし、多層塗膜で、貯蔵弾
性率(E’)の対数と温度(T)の関係を表す粘弾性曲
線において流動領域が有り、且つ、流動領域の[log
E’/T]の最小傾きが−0.02Pa/℃以下となる
塗膜層と、この規定外の塗膜層を組み合わせる場合、前
者がより厚い方がプレス成形性に優れる。
【0042】
【実施例】(実施例)まず、実験に用いた塗料の作成方
法について説明する。
【0043】数平均分子量及びTgの異なるリニアポリ
エステル樹脂を、有機溶剤(ソルベッソ150とシクロ
ヘキサノンとを質量比で1:1に混合したもの)に溶解
した。次に、これらの塗料に、必要に応じて、メラミン
樹脂(ヘキサ−メトキシ−メチル化メラミン(サイメル
303/三井サイテック社製))を添加し、更に、触媒
(キャタリスト6003B/三井サイテック社製)を添
加、攪拌して塗料を得た。
【0044】本実験で用いたポリエステル樹脂の数平均
分子量とTg、メラミン樹脂の添加量を表1に記載す
る。
【0045】
【表1】
【0046】次に、粘弾性測に用いた塗膜フリーフィル
ムの作成方法について述べる。
【0047】プレコート金属板に汎用的に使用されてい
るメラミン硬化型ポリエステル系塗料を、ブリキ板の上
に乾燥膜厚で10μmとなるように塗装し、到達板温が
230℃の条件で乾燥硬化させた後、水銀アマルガム法
にて、ブリキ板より塗膜を遊離し、塗膜のフリーフィル
ムを作成した。
【0048】次に、実験に用いたプレコート金属板の作
製方法について述べる。
【0049】付着量が片面当たり60g/m2 で両面が
めっきされた厚み0.6mmの溶融亜鉛めっき鋼板を、
FC−364S(日本パ−カライジング製)の2質量%
濃度、60℃温度の水溶液中に10秒間浸漬することに
より脱脂を行い、水洗後、乾燥した。次いで、脱脂した
上記溶融亜鉛めっき鋼板上に、ロールコーターで塗布ク
ロメート処理液を塗布し、到達板温が60℃となるよう
な条件で熱風乾燥した。
【0050】クロメート処理後、表1に示す塗料をバー
コーターにて塗装し、熱風炉にて乾燥し、硬化させた。
また、必要に応じて、更にその上に同様の要領で塗料を
塗装し、1〜3層の塗膜層を有するプレコート金属板を
作成した。なお、1層塗膜(1コート)のプレコート金
属板を作製する際の塗膜層の膜厚は、乾燥膜厚にして1
5μm、焼付条件は到達板温(PMT)で230℃とし
た。
【0051】2層塗膜(2コート)のプレコート金属板
を作製する際には、下層塗膜の膜厚は5μmで、焼付条
件はPMTで210℃、上層塗膜の膜厚は15μmで、
焼付条件はPMTで230℃とした。
【0052】3層塗膜(3コート)のプレコート金属板
を作製する際には、下層塗膜の膜厚は5μmで、焼付条
件はPMTで210℃、中間層塗膜の膜厚は15μm
で、焼付条件はPMTで230℃、上層塗膜の膜厚は1
0μmで、焼付条件はPMTで230℃とした。本実験
にて実施した塗料の組み合わせを表2に示す。
【0053】以下、作製したプレコート金属板の評価試
験及びその結果について説明する。 1)塗膜の粘弾性試験 動的粘弾性試験装置(レオメトリクス社製、RSA−I
I)にて、作製したフリーフィルムの貯蔵弾性率の温度
依存性を測定し、流動領域の有無と流動領域の最小傾き
を調べた。上記貯蔵弾性率の温度依存性は、温度領域−
50〜200℃の範囲で測定した。測定は、ひずみ0.
01%、角周波数6.28rad/secの条件下で実
施した。 2)プレコート金属板のブロッキング試験 作製したプレコート金属板の塗膜面同士を重ね合わせ、
200g/cm2の荷重を加えた状態で、10分間放置
した。その後荷重を取り除き、重ね合わせた塗膜の剥離
強度をバネばかりにて測定し、次の基準で評価した。
【0054】 (1)剥離荷重が25g/25cm2未満の場合:○ (2)剥離荷重が25〜300g/25cm2の場合:△ (3)剥離荷重が300g/25cm2を超える場合:× なお、本試験方法は新日本製鐵株式会社にて実施してい
る評価試験方法であり、評価基準はプレコート金属板を
コイルや切り板で保管した時のブロッキングと、次のよ
うな相関関係にあることが確認されている。
【0055】(a)評価が○のもは、ブロッキングが全
く発生しない。
【0056】(b)△のものは、コイルや切り板を保管
する環境条件(温度や時間)次第ではブロッキングが発
生する。
【0057】(c)×のものは条件によらずブロッキン
グが発生する。 3)プレコート金属板表層塗膜のマジック汚染試験作製
したプレコート金属板の塗膜表面に黒マジックを塗布
し、1時間放置した後にエタノールを染み込ませたガー
ゼにてマジックを拭き取り、拭き取った後の黒マジック
の痕残りを以下の基準で評価した。
【0058】 (1)痕残りが全くないもの:○ (2)僅かな痕残りがあるもの:△ (3)激しい痕残りがあるもの:× 4)プレス成形試験 油圧式エリクセンタイプのプレス加工試験機を用いて円
筒絞り試験を行った。円筒絞り試験は、ポンチ径50m
m、ポンチ肩R5mm、ダイス肩R5mm、絞り比2.
3、BHF1tの条件で行い、金属板が金型から絞り抜
けるまで加工を行った。さらに、これらの絞り加工を施
した材料を沸騰水中に1時間浸漬させた。そして、沸騰
水浸漬後の深絞り加工部の塗膜損傷もしくは塗膜剥離状
況を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
【0059】 (1)塗膜損傷や塗膜剥離が全くないもの:○ (2)僅かな塗膜損傷や塗膜剥離は観察されるも:△ (3)激しい塗膜損傷や塗膜剥離が観察されるもの:× 以下、塗膜フリーフィルムの粘弾性試験結果について述
べる。
【0060】動的粘弾性試験を実施した結果、貯蔵弾性
率の温度依存性カーブは、図2に示す(x)、(y)及
び(z)のパターンに大別できた。パターン(x)と
(y)の塗膜は、いずれも、流動領域を有するものであ
り、且つ、流動領域の[貯蔵弾性率の対数/温度]の最
小傾きが−0.02Pa/℃以下のものである。一方、
パターン(z)の塗膜は、[貯蔵弾性率の対数/温度]
の最小傾きが−0.02Pa/℃以下となる流動領域を
有しないものである。
【0061】以下、本発明のプレコート金属板の評価試
験結果について述べる。
【0062】作製したプレコート金属板の塗膜仕様と評
価試験結果を表2に示す。本発明のプレコート金属板
(本発明例−1〜12)は、貯蔵弾性率(E’)の対数
と温度(T)の関係を表す粘弾性曲線において流動領域
を持たず、且つ、弾性率の最小値が1.0×106Pa
以上の塗膜のみで構成されるプレコート金属板(比較例
−1〜5)よりも優れたプレス成形性を備えている。
【0063】高いTgの樹脂から構成される塗膜層を有
するプレコート金属板(本発明例−7)は、上記Tgよ
り低いTgの樹脂から構成される塗膜層を有するプレコ
ート金属板(本発明例−5)よりも、耐マジック汚染性
や耐ブロッキング性に優れる。
【0064】本発明のプレコート金属板は、多層被膜の
内、少なくとも1層以上に貯蔵弾性率(E’)の対数と
温度(T)の関係を表す粘弾性曲線において流動領域を
有し、且つ、流動領域の[logE’/T]の最小傾き
が−0.02Pa/℃以下となる塗膜層を有していれば
(本発明例−9〜12)、プレス成形性に優れている。
ただし、最表層に、貯蔵弾性率(E’)の対数と温度
(T)の関係を表す粘弾性曲線において流動領域を持た
ず、且つ、貯蔵弾性率(E’)の最小値が1.0×10
6Pa以上の塗膜を塗装したプレコート金属板(本発明
例−10〜12)は、プレス成形性のみならず、耐ブロ
ッキング性や耐マジック汚染性に優れている。
【0065】また、本発明例−11と12を比較する
と、貯蔵弾性率(E’)の対数と温度(T)の関係を表
す粘弾性曲線において流動領域を有し、且つ、流動領域
の[logE’/T]の最小傾きが−0.02Pa/℃
以下となる塗膜層の膜厚がより厚い方がプレス成形性に
優れていることが解る。
【0066】
【表2】
【0067】
【発明の効果】本発明により、塗膜を剥離、破壊するこ
となく、美麗な外観を保った状態で円筒絞り等のプレス
成形を可能とするプレコート金属板を提供することがで
きる。本発明は、プレコート金属板の適用範囲を拡広
し、また、環境に悪い有機溶剤を用いる塗装作業を低減
することもできるので、産業上、極めて高い価値を有す
る発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】樹脂の粘弾性に係る挙動の代表例を示す図であ
る。
【図2】貯蔵弾性率の温度依存性カーブのパターンを示
す図である。
フロントページの続き Fターム(参考) 4D075 BB06Z CA03 DA03 DA06 DB01 DB02 DB05 DB07 EA07 EA19 EA21 EB32 EB35 EB38 EB52 EB53 4F100 AB01C AB03 AK36 AK42 BA02 BA03 BA04 BA07 BA10A BA10B BA10D CC00A CC00B CC00D EH46 GB07 GB32 GB48 JA05A JA05B JA07A JA07B JK06 JK20A JK20B JK20D JL00 JL01 YY00A YY00B YY00D

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 貯蔵弾性率(E’)の対数と温度(T)
    の関係を表す粘弾性曲線において流動領域が有り、且
    つ、該流動領域における[logE’/T]の最小傾き
    が−0.02Pa/℃以下である塗膜を、片面もしくは
    両面に、1層以上有することを特徴とするプレス成形性
    に優れたプレコート金属板。
  2. 【請求項2】 前記塗膜を構成する樹脂の数平均分子量
    が10000以上であることを特徴とする請求項1に記
    載のプレス成形性に優れたプレコート金属板。
  3. 【請求項3】 前記塗膜を構成する樹脂のガラス転移温
    度(Tg)が25℃以上であることを特徴とする請求項
    1または2に記載のプレス成形性に優れたプレコート金
    属板。
  4. 【請求項4】 前記塗膜の上層に最上層塗膜として、貯
    蔵弾性率(E’)の対数と温度(T)の関係を表す粘弾
    性曲線において流動領域が無く、且つ、貯蔵弾性率
    (E’)の最小値が1.0×106Pa以上である塗膜
    を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1
    項に記載のプレス成形性に優れたプレコート金属板。
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