JP2003095975A - 多重t細胞エピトープポリペプチドの酢酸塩組成物 - Google Patents
多重t細胞エピトープポリペプチドの酢酸塩組成物Info
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Abstract
多重T細胞エピトープポリペプチドを提供することを課
題とする。 【解決手段】 酢酸を5〜15%含有する配列番号:1で
表されるアミノ酸配列を有する多重T細胞エピトープポ
リペプチド酢酸塩組成物。配列番号:1で表されるアミ
ノ酸配列を有する多重T細胞エピトープポリペプチド1
に対し、酢酸を約4〜20(重量)%含有してなる組成
物。
Description
または治療剤として有用な多重T細胞エピトープポリペ
プチドの溶解性および安定性を向上させた酢酸塩組成物
に関する。
する即時型アレルギー疾患である。鼻炎、結膜炎が主た
る症状であり、死に至る病ではないので軽視されがちで
あるが、患者にとってはまことに不愉快な症状である。
スギ花粉の飛散期には国民の1割以上、都市部において
は2割以上がこのスギ花粉症にかかるといわれており、
経済的損失も大きい。
ステロイド剤だけでなく、抗アレルギー剤も登場してい
るが、これらはすべて対症薬である。スギ花粉アレルゲ
ン抽出液を繰り返し投与する減感作療法は、臨床的にア
レルギー症状を改善する有効な治療法である。しかしな
がら、アレルゲン抽出液は、患者のアレルゲン特異的Ig
E抗体と反応するB細胞エピトープを含んでいるために、
時としてアナフィラキシーなどの副反応が問題となる。
長期に減感作療法を受けた患者末梢血のT細胞はスギ花
粉に対する反応性が減弱していることから、減感作療法
の標的細胞はT細胞であると考えられている。最近、動
物モデルにおいて、アレルゲン特異的T細胞エピトープ
ペプチドが、T細胞に不活性化を誘導し、また、患者の
アレルゲン特異的IgE抗体とほとんど結合しないことが
明らかにされた。
いた減感作療法に代わるものとして、スギ花粉の主要ア
レルゲンタンパク質Cry j 1およびCry j 2由来のアレル
ゲン特異的T細胞エピトープペプチドの混合物を用いた
ペプチド免疫療法が考案されている(WO 94/01560)。
この方法は、上記のようなアナフィラキシーなどの副反
応を回避でき、また、人工的に作製可能なため標準化し
やすい、という利点があるが、このような混合物を医薬
品として開発する場合、個々のT細胞エピトープについ
て物性・安全性試験などを実施する必要があり、製品規
格などの点で問題がある。
びCry j 2のアミノ酸配列から、MHCクラスII拘束分子の
差異に基づいて選択されたいくつかのメジャーおよびマ
イナーなT細胞エピトープペプチドを、ペプチド結合を
介して直鎖状に結合した多重T細胞エピトープポリペプ
チドが考案され(WO 97/32600)、その有効性が検討さ
れている。
開発する場合、溶液状態では安定性などに問題があるた
め、凍結乾燥法により用時溶解型注射剤として製品化さ
れる場合が多い。しかし、保存期間中にタンパク質が凝
集を示し、医薬品の品質として問題となる場合がある。
このようなタンパク質の凝集現象について、種々の糖類
を添加した場合の分子運動性を評価し、その安定性を予
測する試みが報告されている。
び安定性を向上させた多重T細胞エピトープポリペプチ
ド(以下、「エピトープポリペプチド」、あるいは「ポ
リペプチド」ということもある)を提供することを課題
とする。
胞エピトープポリペプチドを封入体として保持する大腸
菌から該封入体を取り出し、塩酸グアジニン/尿素で可
溶化し、その上清に該ポリペプチドを抽出した。この粗
抽出物を、銅キレートクロマトグラフィー、陽イオン交
換クロマトグラフィー、および逆相クロマトグラフィー
の順のクロマトグラフィーにより、該ポリペプチドを高
純度に精製した。そして、この精製エピトープポリペプ
チドの安定性および溶解性を向上させる酢酸含量を決定
した。
15(重量)%含有する配列番号:1で表されるアミノ酸
配列を有する多重T細胞エピトープポリペプチド酢酸塩
組成物、(2) 酢酸を約7〜13(重量)%含有する、
前記(1)記載の多重T細胞エピトープポリペプチド酢
酸塩組成物、(3) 酢酸を約9〜10(重量)%含有す
る、前記(1)記載の多重T細胞エピトープポリペプチ
ド酢酸塩組成物、(4) 配列番号:1で表されるアミ
ノ酸配列を有する多重T細胞エピトープポリペプチド1
に対し、酢酸を約4〜20(重量)%含有してなる組成物、
(5) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有する
多重T細胞エピトープポリペプチド1に対し、酢酸を約5
〜18(重量)%含有してなる組成物、(6) 配列番
号:1で表されるアミノ酸配列を有する多重T細胞エピ
トープポリペプチド1に対し、酢酸を約7〜15(重量)%
含有してなる組成物、(7) 配列番号:1で表される
アミノ酸配列を有する多重T細胞エピトープポリペプチ
ド1に対し、酢酸を約9〜12(重量)%含有してなる組成
物、(8) 前記(1)〜(7)のいずれか1項記載の
組成物を含有してなる凍結乾燥製剤、に関する。
本発明の多重T細胞エピトープポリペプチドは、化学合
成あるいは遺伝子組換え技術により合成できる。ペプチ
ドの化学合成は、ここ数年来急激な勢いで利用されてい
る。それに伴い、初心者でも操作できるようなペプチド
合成機が普及し、ペプチドの受注合成も国内外で盛んに
行われている。100個以上のアミノ酸残基からなる長鎖
のポリペプチドも化学合成されている。例えば、最近、
ヘパリン結合性の成長因子であり121個のアミノ酸残基
からなるミッドカイン(midkine)が化学合成された(I
nui, T. et al.: J. Peptide Sci., 2: 28-39, 1996
)。したがって、本発明のエピトープポリペプチドも
同様にして化学合成することができる。
ポリペプチドをコードする遺伝子を適当なベクターに組
み込んで細胞に導入し、該遺伝子を発現させることによ
り、ポリペプチドを大量に合成することが可能である。
エピトープポリペプチド遺伝子の発現系として、大腸菌
発現系、酵母発現系、昆虫細胞発現系、および動物細胞
発現系が挙げられるが、エピトープポリペプチドは翻訳
後修飾を必要としない一本鎖の単純ポリペプチドである
ので、大腸菌の単独発現システムを用いるのがよい。
ピトープポリペプチドを大量に、かつ低コストで得るこ
とが可能である。スギ花粉アレルゲンCry j 1(Sone,
T. etal.: Biochem. Biophys. Res. Commun., 199: 619
-625, 1994)およびCry j 2(Komiyama, N. et al.: Bi
ochem. Biophys. Res. Commun., 201: 1021-1028, 199
4)をコードする遺伝子はすでにクローン化され、推定
アミノ酸配列が明らかとなっている。配列番号:1のア
ミノ酸配列で示されるエピトープポリペプチドを構成す
る6つのT細胞エピトープ領域(Argダイマーで仕切られ
ている)の、Cry j 1およびCry j 2のアミノ酸配列中に
占める部位は、WO97/32600公開公報の図1(Cry j 1)
および図2(Cry j 2)から容易に確認できる。そし
て、この6つのT細胞エピトープペプチド領域をコード
するDNA配列は、前記Soneら、およびKomiyamaらの文献
から知ることができる。そこで、6つのT細胞エピトー
プペプチドをコードするDNA配列に対するPCRプライマー
を化学合成する。クローン化されたCry j 1およびCry j
2をコードする遺伝子を鋳型としてPCRでエピトープポ
リペプチド領域をコードするDNAを増幅後連結し、さら
にPCRで増幅するといった操作を繰り返し、途中および
最終の配列をpUCプラスミドにクローニングして塩基配
列の確認を適宜行う。このようにしてエピトープポリペ
プチド(配列番号:1)の全長をコードする遺伝子(配
列番号:2)を構築することができる。
現させると、しばしば、産生タンパク質が菌体内で凝集
し、生理的に不活性な封入体を形成する。この封入体形
成は、産生したタンパク質を菌体内のプロテアーゼから
隔離し、プロテアーゼによる分解を抑え、しかも多くの
菌体由来の可溶性夾雑タンパク質からの目的遺伝子産物
の分離を可能とする。そこで、ポリペプチドは、大腸菌
の菌体内に封入体として生成させるのが、その後の精製
の面から望ましい。
の文献は枚挙にいとまがないが、例えば、[続生化学実
験講座 II, 組み換えDNA技術, 日本生化学会編, p126,
東京化学同人(1986); 新生化学実験講座1, タンパク質
VI, 合成および発現, 日本生化学会編, p155, 東京化
学同人(1992)など]などを参考にして、当業者は、ポリ
ペプチドの大腸菌発現系を構築することが容易にでき
る。また、大腸菌の単独発現システムが市販されてお
り、例えば、転写能力が強いT7ファージRNAポリメラー
ゼを利用するpETシステム(Novagen, STRATAGENE)や、
同様なT7ファージRNAポリメラーゼを利用したpRSETシス
テム(Invitrogen)などを試みることもできる。
ては、一般に用いられる HB101, C600 などの種々の K-
12 の誘導体を用いることができるが、菌株による発現
量の差が大きい。実施例では、増殖力が強く、発現量も
多い K802 株(ATCC から入手)を宿主として使用した
が、他の菌株を使用する場合は培養条件(培養時間、添
加するトリプトファンの濃度等)の最適化が必要である
が、そのような最適化は、当業者にとって実験条件の設
定範囲にある。
形質転換体の発現培養条件の設定は、当業者であれば、
文献[例えば、タンパク実験プロトコール2, 構造解析
編,細胞工学別冊, 秀潤社(1997)]を参考に実施するこ
とができる。
を遠心して集め、緩衝液に懸濁し、超音波処理あるいは
ホモジナイザー処理で菌体を破砕する。この破砕液を遠
心して不溶性画分を得る。そして、この不溶性画分を緩
衝液に懸濁し遠心して封入体画分(あるいは不溶性の封
入体状画分)を得る。この封入体の可溶化には、高濃度
のタンパク質変性剤(6 M 塩酸グアニジンや6〜8 M の
尿素)を用いるのが一般的である(Biochemistry, 26:
3129, 1987; J. Biotechnol., 1: 307, 1984;Bio/Techn
ology, 3: 990, 1985 )。この可溶化物を遠心して上清
にポリペプチドを抽出する。このポリペプチド粗抽出液
を、銅キレートクロマトグラフィー、イオン交換クロマ
トグラフィー、および逆相クロマトグラフィーの順のク
ロマトグラフィーに供することにより、エピトープポリ
ペプチドを高純度に精製することができる。以下、精製
工程を詳細に述べる。
を緩衝液、例えば、50 mMトリス酢酸緩衝液(pH 5.0)
に懸濁し、超音波処理あるいはホモジナイザー処理して
菌体を破砕する。次に、遠心(例えば、10,000 × g、2
0分間)して不溶性画分を得る。この不溶性画分を、界
面活性剤を含む緩衝液、例えば2%トリトンX-100を含
む50mM トリス酢酸緩衝液(pH 5.0)に懸濁し、遠心
(例えば、10,000 × g、30分間)して封入体画分を得
る。この封入体画分を、タンパク質変性剤、例えばグア
ニジン塩を含む抽出緩衝液、例えば、6M塩酸グアニジン
を含む緩衝液(pH4.0)、あるいは0.5M〜1M塩酸グアニ
ジンと5.5M〜5Mの尿素を含む緩衝液(pH4.0)で1.5〜3
時間室温で攪拌して溶解する。溶液を遠心(例えば、1
0,000 × g、20分間)するとポリペプチドは上清に抽出
される。
アルカリ性の緩衝液(例えば、50 mM炭酸緩衝液 pH 9.8
)で10〜20倍に希釈し、37℃前後で1時間放置する
と、エピトープポリペプチドは沈澱する。一方、大腸菌
由来の低分子量(分子量2万以下)のタンパク質のほと
んどは変性状態から容易に巻き戻しされて高次構造を再
生するので、可溶であり、除去される。エピトープポリ
ペプチドを含む沈澱は、再度6 M塩酸グアニジンを含む
緩衝液(pH 4.0)、あるいは0.5〜1 M塩酸グアニジンお
よび5.5M〜5M尿素を含む緩衝液(pH 4.0)に懸濁し、1.
5〜3時間攪拌して溶解する。溶液を遠心(例えば、10,0
00×g、20分間)して上清にポリペプチドを抽出する。
この希釈、沈澱の操作を省略して上記最初の粗抽出液
を、直接、以下のクロマトグラフィーに供しても十分な
精製度でエピトープポリペプチドが得られる。
マトグラフィーによる。イオン交換クロマトグラフィー
は概して分離能が高く、タンパク質精製の早い段階に用
いられることが多い。イオン交換クロマトグラフィーで
は、一般に等電点がpH 7以下のタンパク質は陰イオン交
換体で、pH 7以上では陽イオン交換体で分離する。
点がpH 11と強塩基性であることから、クロマトグラフ
ィーによる精製の第1段階として、まず、陽イオン交換
クロマトグラフィーが考えられる。しかし、カオトロピ
ック剤(塩酸グアニジン/尿素)非存在下でのエピトー
プポリペプチドは、Hi-trap Q(陰イオン交換樹脂)お
よびHi-trap SP(陽イオン交換樹脂)の双方に部分的に
吸着した。そこで、カオトロピック剤が存在しない状態
でのイオン交換クロマトグラフィーは、エピトープポリ
ペプチドの精製の最初の工程に用いることができないと
判断した。
属キレートクロマトグラフィーは塩酸グアニジン/尿素
のようなタンパク質変性剤を多量に含む溶媒でも適用で
きる。タンパク質の銅キレート樹脂への結合は、His、C
ys、Trp残基の関与が知られている(Trends in Biotech
nology, 3: 1-7, 1985 )。多重エピトープポリペプチ
ドは、医薬品として品質管理上問題となる二量体、ある
いは多量体の形成を避けるため、Cys残基を含まないエ
ピトープペプチドを選択している。Trp残基と銅イオン
の相互作用はHisに比較して弱く、1〜2個のTrp残基を
含むタンパク質は銅キレート樹脂に結合することはでき
ない。これに対し、His残基の銅キレート樹脂との相互
作用は強く、1個のHis残基を含むタンパク質は銅キレ
ート樹脂に結合することができる。エピトープポリペプ
チドは2〜3個のHis残基を有する。一方、ほとんどの大
腸菌タンパク質は分子内に平均して4個以上のHis残基を
含んでいるため銅キレート樹脂にエピトープポリペプチ
ドより強く吸着する。このようなことから、精製の第1
段階に、銅キレートクロマトグラフィーを用いれば、大
腸菌由来のタンパク質はエピトープポリペプチドよりも
強く銅キレートカラムに吸着し、その大部分が除かれる
ことが期待される。
塩化ナトリウム/ 50mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH 7.
0)緩衝液と1:1(容量比)と混合し、pH7.0に調整
後、銅キレートクロマトグラフィー、例えば銅キレート
ストリームライン(アマシャム・ファルマシア・バイオ
テク社)に供する。銅をキレートする樹脂としては、例
えば、イミノジ酢酸アガロースやニトリロトリ酢酸アガ
ロースが挙げられる。イミノジ酢酸アガロースは文献記
載の方法(J. Porath. et al.: Nature, 258: 598, 197
5)により調製できる。銅を結合したニトリロトリ酢酸
アガロースは、Ni-NTAアガロース(Qiagen)から容易に
調製できる。ニトリロトリ酢酸アガロースは、イミノジ
酢酸アガロースに比較して銅イオンの漏れが少なくエピ
トープポリペプチドの精製に適している。POROS MC(ア
プライドバイオシステム社)、キレーティングセファロ
ースFF(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社)、
キレートセルロファイン(生化学工業)などを試みても
よい。
インを、例えば、8M 尿素/ 0.2 M塩化ナトリウム / 50m
M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)3カラム容量で洗浄
し、非吸着物を除去する。溶離緩衝液のpHを下げてHis
のプロトン化により溶出する場合、ポリペプチドは多数
のHis残基をもつ多くの大腸菌タンパク質よりも高いpH
で溶出する。8M 尿素/ 0.2 M 塩化ナトリウム / 50mM
酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.0)で溶出することによ
り、ポリペプチドは純度約70%程度まで精製される。
画分はイオン強度が低いので、酢酸でpH4に調整後、平
衡緩衝液、例えば、8M 尿素/ 0.1 M 塩化ナトリウム /
50mMトリス酢酸緩衝液(pH 4.0)で平衡化した陽イオン
交換クロマトグラフィー、例えば、SP-セファロース FF
カラム(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社)に
溶出画分を添加してエピトープポリペプチドを樹脂に吸
着させる。陽イオン交換カラムとしては、この他Mono S
(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社)、CMセフ
ァロースFF(アマシャム・ファルマシア・バイオテク
社)などが挙げられる。
画分をSP-セファロース FFカラムに添加後、pH 10 の緩
衝液、例えば8M 尿素/ 0.1 M 塩化ナトリウム / 50mM
炭酸ナトリウム緩衝液(pH 10.0)で洗浄し、続いてpH
4 の緩衝液、例えば8M 尿素/0.2 M 塩化ナトリウム / 5
0mM トリス酢酸緩衝液(pH 4.0)でカラムを洗浄する。
大腸菌由来のタンパク質のほとんどは等電点が 10 以下
であるため、この陽イオン交換クロマトグラフィーによ
りエピトープポリペプチド(とその類縁ポリペプチド)
の純度は、ほぼ 100 % となる。ここで類縁ポリペプチ
ドとは、物理的、化学的性質が極めてエピトープポリペ
プチドに類似しているポリペプチドを意味し、通常、エ
ピトープポリペプチドのアミノ酸が部分的に修飾あるい
は置換されたポリペプチドを意味する。例えば、Met残
基が酸化されたポリペプチド、Met残基がノルロイシン
に置換されたポリペプチド、アセチル化されたポリペプ
チド、あるいは脱アミド化されたポリペプチドである。
次に溶離緩衝液、例えば、8M 尿素/ 0.4 M塩化ナトリウ
ム / 50mM トリス酢酸緩衝液(pH 4.0)で溶出する。溶
出液のA280をモニターし、吸収のある画分を得る。
が小さいリボソームタンパクが数種類混入しているが、
つぎの逆相クロマトグラフィーで容易に除去される。逆
相クロマトグラフィーでは、またエピトープペプチドの
類縁ポリペプチド、リポポリサッカライドのほとんどが
除去される。
トグラフィー用オクタデシル化シリカゲルを充填したカ
ラム、例えば、カプセルパックC18(資生堂)が使用で
きる。また、ポリマー担体のポアサイズが大きい樹脂、
例えばPOROS 50R2(アプライドバイオシステムズ社)、
SOURCE 15 RPC(アマシャム・ファルマシア・バイオテ
ク社)を充填したカラムなどが挙げられる。POROS 50R2
カラム ( 25 × 200 mm)を使用した場合、カラムを1 %
酢酸で平衡化した後、陽イオン交換クロマトグラフィー
の溶出画分を添加する。12% アセトニトリル/1%酢
酸で洗浄後、溶離液、例えば22%アセトニトリル/1%
酢酸を用いて溶出する。溶出液を凍結乾燥して、ポリペ
プチドの純度として96〜99%(重量)以上の純度を有す
る精製ポリペプチドを得ることができる。このポリペプ
チドの凍結乾燥品は、クロマトグラフィーにより、酢酸
が8〜13重量%含まれる酢酸塩組成物として存在する。該
酢酸塩組成物中に含有されている酢酸は、多重T細胞エ
ピトープポリペプチドと塩を形成していても、形成して
いなくてもよい。
ド酢酸塩組成物の酢酸含量としては、約5〜15(重
量)%が好ましく、なかでも約7〜13(重量)%、特
に約9〜10(重量)%が好ましい。
ペプチド酢酸塩組成物中の酢酸含量は、公知の方法に従
って調節することができる。例えば、上記で得られたエ
ピトープポリペプチドの酢酸塩組成物の凍結乾燥品を、
例えば酢酸蒸気に接触させることによって、該酢酸塩組
成物中の酢酸含量を増大させることができる。また、上
記で得られたエピトープポリペプチドの酢酸塩組成物の
凍結乾燥品を加湿条件下に暴露することにより、あるい
はエピトープポリペプチド酢酸塩組成物の凍結乾燥品を
適当な溶媒(例えば、水)に溶解させた後、溶液を凍結
乾燥に付すことによって、該酢酸塩組成物中の酢酸含量
を減少させることができる。本発明の多重T細胞エピト
ープポリペプチドと酢酸を含有してなる組成物中の酢酸
の含有量としては、本発明の多重T細胞エピトープポリ
ペプチド1に対し、酢酸を約4〜20(重量)%、なかで
も約5〜18(重量)%、とりわけ約7〜15(重量)%、特
に約9〜12(重量)%が好ましい。本発明の多重T細胞エ
ピトープポリペプチド酢酸塩組成物には安定化剤として
糖類を加えてもよい。
ペプチド酢酸塩組成物中に存在する多重T細胞エピトー
プポリペプチド酢酸塩は、自体公知の反応を用いること
により、塩交換を行うことができる。該塩としては、生
理学的に許容される塩が挙げられる。この様な塩として
は、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素
酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、ギ酸、プ
ロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石
酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスル
ホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられ
る。なかでも塩酸との塩が好ましい。
組成物の製剤としては、凍結乾燥製剤であるものが好ま
しい。該凍結乾燥製剤は、糖類を添加することにより、
安定性に優れた製剤とすることができる。
ルコース、エリトロース、キシルロース、リブロース、
セドヘプツロース、リボース、マンノースおよびそれら
の糖アルコール(ソルビトール、リビトール、マンニト
ールなど)など、なかでもマンニトールが好ましい。)
または二糖類(例えば、麦芽糖、セロビオース、ゲンチ
オビオース、メリビオース、乳糖、ツラノース、ソロホ
ース、トレハロース、イソトレハロース、ショ糖(精製
白糖)、イソサッカロースなど、なかでも精製白糖、乳
糖、麦芽糖が好ましく、精製白糖が最も好ましい)が挙
げられる。該「糖類」は単独で用いてもよいが、2種以
上の混合物としても用いてもよい。なかでも、精製白糖
を用いるのが好ましい。
す。本発明のエピトープポリペプチドの酢酸塩組成物と
糖類の双方を水または適当な水性溶媒(たとえば、水と
アルコールの混合物)に溶かした水性液に、所望により
pH調整を行い、さらに、たとえば0.22μmのフィ
ルターでろ過することにより無菌製剤とする。その後、
凍結乾燥を行うことによって固体状とした製剤が好まし
い。また凍結乾燥製剤中の酸化体などの不純物生成を抑
制するため、容器内へ窒素ガスなどを封入してもよい。
従って、本発明のエピトープポリペプチドの酢酸塩組成
物及び糖類の双方を水または水性溶媒(たとえば、水と
アルコールの混合物)に溶解すればよい。溶解させる順
序はどちらが先でもよい。浸透圧を調節するために、上
記の本発明のエピトープポリペプチドの酢酸塩組成物及
び糖類の水性液に等張化剤を配合してもよい。該等張化
剤としては、例えばグルコースなどの単糖類、マンニト
ールなどの糖アルコール類、食塩などの塩類など等張化
剤として公知のものが挙げられる。pH調整を行うため
に、塩酸などの無機酸、酢酸などの有機酸などが用いら
れる。本発明のエピトープポリペプチドの酢酸塩組成物
の凍結乾燥製剤は、通常、本発明のエピトープポリペプ
チドの酢酸塩組成物及び糖類の双方を水または水性溶媒
に溶解して水性液とし、所望によりpH調整を行ったの
ち、これを自体公知の方法により凍結乾燥することによ
り得ることができる。このとき水性液中における本発明
のエピトープポリペプチド(の酢酸塩)の濃度は、通常
0.01mg/mL〜10mg/mLであり、糖類の濃度は、通常0.05mg
/mL〜100mg/mLである。
製剤は、長期間において本発明のエピトープポリペプチ
ド(の酢酸塩)の変質を抑制し、安定に保つことができ
る。本発明のエピトープポリペプチドの酢酸塩組成物の
凍結乾燥製剤は、通常、単独あるいは薬理学的に許容さ
れ得る担体もしくは賦形剤と混合してなる医薬組成物と
し、経口または非経口的に用いることができる。
組成物の凍結乾燥製剤は、これを打錠して錠剤に、カプ
セルに充填してカプセル剤に、またマイクロカプセルに
封入し徐放剤とすることができ、また、用時注射用水あ
るいは輸液(例、生理食塩水、ブドウ糖など)で溶解し
て、静脈注射剤、皮下注射剤、筋肉注射剤、点滴注射
剤、無針注射剤などの注射剤または点鼻剤、点眼剤とし
て用いることもできる。この場合、溶解液中における本
発明のエピトープポリペプチド(の酢酸塩)の濃度は例
えば約0.01mg/mL〜10mg/mLである。糖類の濃度は約0.
05mg/mL〜100mg/mLである。
公知の、例えば濾過滅菌などの無菌調製法により上記水
性液を調製するのが好ましい。また凍結乾燥製剤を調製
する前に、糖類、あるいは糖類とその他の添加物との混
合物を予め脱パイロジエン処理して用いることもでき
る。
組成物の凍結乾燥製剤は、注射用の用時溶解製剤である
ものが好ましい。
組成物は、毒性が低く、例えば、凍結乾燥注射剤、溶液
注射剤などの注射剤として、皮内、皮下、静脈内、筋肉
内、腹腔内などに成人1回当たり約1ng〜100mgの範囲で
選ばれる量を、毎週1〜2回程度約1〜12ヶ月間投与する
ことによって、減感作の目的を達成することができる。
の酢酸塩組成物は、例えば、トローチ、舌下錠、パップ
剤、クリーム剤、ローション剤などの経皮、経粘皮薬と
しても製造され、その投与量、投与頻度などを適宜選択
することにより、その減感作の目的を有利に達成するこ
とができる。また、本発明のエピトープポリペプチドの
酢酸塩組成物は、スギ花粉症の予防剤、治療剤のみなら
ず、ヒノキ花粉症の予防剤、治療剤としても有利に使用
できる。
組成物は、単剤として優れたスギ花粉の予防剤、治療剤
およびヒノキ花粉症の予防剤、治療剤として有効な作用
を示すが、さらに他の医薬成分(以下、併用薬物と略記
する)と併用(多剤併用)することもできる。
ミカルメディエーター遊離抑制剤(例えば、クロモグリ
ク酸ナトリウム(インタール)、トラニラスト(リザベ
ン)、アンレキサノクス(ソルファ)、ペミロラストカ
リウム(アレギサール)等)、ケミカルメディエーター
受容体拮抗薬(例えば、(1)d-マレイン酸クロルフェニ
ラミン(ポララミン)、フマル酸クレマスチン(タベジ
ール)、フマル酸ケトチフェン(ザジデン)、塩酸アゼ
ラスチン(アゼプチン)、オキサトミド(セルテク
ト)、メキタジン(ゼスラン、ニポラジン)、フマル酸
エメダスチン(ダレン、レミカット)、塩酸セチリジン
(ジルテック)、塩酸レボカバスチン(リボスチン)、
フェキソフェナジン(アレグラ)、塩酸オロパタジン
(アレロック)等の抗ヒスタミン薬、(2)ラマトバン
(バイナス)等のトロンボキサンA2拮抗薬、(3)プラン
ルカスト水和物(オノン)等のロイコトリエン拮抗薬
等)、Th2サイトカイン抑制薬(例えば、トシル酸スプ
ラタスト(アイピーディー)等)、ステロイド薬(例え
ば、(1)プロピオン酸ベクロメタゾン(ベコナーゼ、ア
ルデシン、リノコート)、フルニソリド(シナクリ
ン)、プロピオン酸フルチカゾン(フルナーゼ)等の局
所ステロイド薬、(2)セレスタミン(マレイン酸クロル
フェニラミン配合剤)等の経口ステロイド薬等)、自律
神経作用薬(例えば、(1)硝酸ナファゾリン(プリビ
ナ)、硝酸テトラヒドロゾリン(ナーベル)、塩酸オキ
シメタゾリン(ナシビン)、塩酸トラマゾリン(トー
ク)等のα刺激薬、(2)臭化イプラトロピウム(アトロ
ベント)、臭化フルトピウム(フルブロン)等の抗コリ
ン薬等)、生物製剤(例えば、ノイロトロピン、アスト
レメジン、MSアンチゲン等)等が挙げられる。
組成物と併用薬物との併用に際しては、本発明のエピト
ープポリペプチドの酢酸塩組成物と併用薬物の投与時期
は限定されず、本発明のエピトープポリペプチドの酢酸
塩組成物と併用薬物とを、投与対象に対し、同時に投与
してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。併用薬
物の投与量は、臨床上用いられている投与量に準ずれば
よく、投与対象、投与ルート、疾患、組み合わせ等によ
り適宜選択することができる。
組成物と併用薬物の投与形態は、特に限定されず、投与
時に、本発明のエピトープポリペプチドの酢酸塩組成物
と併用薬物とが組み合わされていればよい。このような
投与形態としては、例えば、(1)本発明のエピトープ
ポリペプチドの酢酸塩組成物と併用薬物とを同時に製剤
化して得られる単一の製剤の投与、(2)本発明のエピ
トープポリペプチドの酢酸塩組成物と併用薬物とを別々
に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同
時投与、(3)本発明のエピトープポリペプチドの酢酸
塩組成物と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種
の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与、
(4)本発明のエピトープポリペプチドの酢酸塩組成物
と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の
異なる投与経路での同時投与、(5)本発明のエピトー
プポリペプチドの酢酸塩組成物と併用薬物とを別々に製
剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間
差をおいての投与(例えば、本発明のエピトープポリペ
プチドの酢酸塩組成物→併用薬物の順序での投与、ある
いは逆の順序での投与)などが挙げられる。以下、これ
らの投与形態をまとめて、本発明の併用剤と略記する。
本発明のエピトープポリペプチドの酢酸塩組成物または
(および)上記併用薬物を自体公知の方法に従って、薬
理学的に許容される担体と混合して医薬組成物、例え
ば、凍結乾燥注射剤、溶液注射剤、トローチ、舌下錠、
点眼剤、鼻腔内噴霧剤、パップ剤、クリーム剤、ローシ
ョン剤、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含
む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含
む)、液剤、坐剤、徐放剤等として、経口的又は非経口
的(例、局所、直腸、静脈投与等)に安全に投与するこ
とができる。
製剤例および実験例により説明するが、本発明の技術的
範囲は、これらに限定されるものではない。 [参考例1] ポリペプチドをコードするDNAの構築 配列番号:1のアミノ酸配列を有するポリペプチドは6
つのT細胞エピトープペプチドがArgダイマーを介して連
結された105アミノ酸残基からなる。そこで、Cry j 1お
よびCry j 2のエピトープに対応する各DNA 断片を PCR
で増幅後連結し、さらにPCRで増幅するといった工程を
繰り返し、最終的にポリペプチドの全長をコードするV-
KV-ID-WK-LK-V2(ポリペプチドcDNA)を構築した(図
1)。PCR条件は、Taq DNAポリメラーゼを使用して96℃
15秒、55℃30秒、72℃90秒を10〜25サイクルであった。
Commun., 199: 619-625, 1994)から 15 アミノ酸残基
のエピトープをコードする cDNA 断片 K を KSMK43S
(配列番号:3) と KSMK43A(配列番号: 4) をプ
ライマーとする PCRにより増幅し、同時に 5′末端に S
maI 認識部位、3′末端に SalI 認識部位を付与した。
この DNA 断片を pUC19 上にクローニングし、塩基配列
を確認した(pUC19K#3)。
2 つのcDNA 断片 K-VF のクローン化 pCCI2-2 から 15 アミノ酸残基のエピトープをコードす
る cDNA 断片 P を PCVF22S (配列番号:5)と PCVF2
2A(配列番号:6) をプライマーとする PCRにより増
幅し、同時に 5′末端に SmaI 認識部位、3′末端に Sa
lI 認識部位を付与した。この DNA 断片を SmaI で消化
してから SalI で消化した cDNA 断片K と結合させた。
結合した DNA 断片を KSMK43S(配列番号:3) を PC
VF22A(配列番号:6) をプライマーとする PCR によ
り増幅した。PCR 産物をポリアクリルアミドゲル電気泳
動にかけ 120 bp の DNA 断片 K-P を分離、精製した。
K-P 断片を SalI と SmaI で消化してからポリアクリル
アミドゲル電気泳動を行い、DNA 断片を精製してから p
UC19 の SalI-SmaI アーム上にクローン化し、pUC19KP#
6-1 を得た。pUC19KP#6-1 から 13 アミノ酸残基のエピ
トープを暗号化する cDNA 断片 VFを VFIK22S2 (配列
番号:7)と PCVF22A(配列番号:6) をプライマーと
するPCR により増幅し、同時に 5′末端に PstI, 3′末
端に SalI 認識部位を付与した。PCR 産物をポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動にかけ 59 bp の断片を分離、精
製した。この DNA 断片を PstI 消化してから SalI 消
化した pUC19K#3 と混合し、クレノウ断片で平滑化して
から結合させた。KSMK43S(配列番号:3) と PCVF22A
(配列番号:6) をプライマーとする PCR で K-VF の
DNA 断片(111 bp)を増幅した。PCR 産物をポリアク
リルアミドゲル電気泳動にかけ、DNA 断片を分離、精製
した。この DNA 断片を pUC19 にクローニングし、pUC1
9K-VF とした。
rikubo, K., and Kino, K.(1994) Biochem. Biophys. R
es. Commun. 201, 1021-1028)から 20 アミノ酸残基の
エピトープを暗号化する cDNA 断片 G を GIDI37S (配
列番号:8)とGIDI37A(配列番号:9) をプライマー
とする PCR により増幅し、同時に 5′末端に SmaI 認
識部位、3′末端に SalI 認識部位を付与した。この DN
A 断片をSmaI と SalI で消化してから pUC19 にクロー
ニングし、pUC19G とし、pUC19G#1 の挿入塩基配列を読
んだ。SmaI 末端の繋ぎ目に 1 塩基対の欠失(ACCGGG
となっていた)があるが、その他の部分に変異がないこ
とを確認した。
2 つの cDNA 断片 ID-WK のクローン化 pCC II 1 から 20 アミノ酸残基のエピトープを暗号化
する cDNA 断片 WK をリン酸化した WKNN17S (配列番
号:10)と(リン酸化されていない)WKNN17A(配列番
号:11) をプライマーとする PCR により増幅し、同時
に 3′末端に SalI認識部位を付与した。PCR 産物をポ
リアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、71bp のDNA 断
片を分離、精製した。この DNA 断片を SalI 消化した
pUC19G#1 と混合し、クレノウ断片で平滑化してから結
合させた。IDIF37S (配列番号:12)と WKNN17A(配列
番号:11) をプライマーとする PCR で ID-WK の DNA
断片(141 bp)を増幅した。PCR 産物はポリアクリルア
ミドゲル電気泳動にかけ DNA 断片を分離、精製した。
この DNA 断片を pUC19 にクローニングし、pUC19ID-WK
とし、その塩基配列(pUC19ID-WK#1 および #8)を確
認した。
る cDNA 断片 V2 を VDGI14S2 (配列番号:13)と VDGI
14A2(配列番号:14) をプライマーとする PCRにより
増幅し、同時に 5′末端にPstI, 3′末端に終止コドン
と Hind III 認識部位を付与した。この DNA 断片を pU
C19 にクローニングし、pUC19Vph とし、pUC19Vph#1 の
挿入塩基配列を読んだ。VDGI14A2(配列番号:14) プ
ライマーに相補的な配列 GCTGGAAGTAA となるべきとこ
ろが GCTTAAGTAA となっていたが、その他の部分には変
異がなかった。
LK-V2 のクローン化 クローン化された Cry j 1 の cDNA (pCCI-2-2)から
15 アミノ酸残基のエピトープを暗号化する cDNA 断片
LK を LKMP17S(配列番号:15)と LKMP17A(配列番
号:16) をプライマーとする PCR により増幅し、同時
に 5′末端に KpnI, 3′末端に SalI 認識部位を付与し
た。PCR 産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ
65 bp の断片を分離、精製した。この DNA 断片を Sal
I 消化してから PstI 消化した pUC19Vph#1 とを混合
し、クレノウ断片で平滑化してから結合させた。LKMP17
S(配列番号:15)と VDGI14A2(配列番号:14) をプラ
イマーとする PCR で LK-V2 の DNA 断片(119 bp)を
増幅した。PCR 産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動
にかけ、DNA 断片を分離、精製した。この DNA 断片をp
UC19 にクローニングし、pUC19LK-V2 とし、pUC19LK-V2
#8 の塩基配列が正しいことを確認した。
化 pUC19ID-WK から挿入塩基配列を EcoRV/Hind III 消化
で切り出し、pUC19K-VF#2の SalI-Hind III アームと結
合させ、3 クローン(pUC19K-VF-ID-WK#1, #2,および #
4)について接合部の塩基配列が正しいことを確認し
た。
D-WK-LK-V2 のクローン化 pUC19K-VF-ID-WK#1, #4 の SalI-Hind III アームに pU
C19LK-V2#8 から KpnI/Hind III 消化で切りだした挿入
塩基配列を結合させ、3 クローンについて接合部の塩基
配列が正しいことを確認した。このようにして得られた
プラスミド pUC19F7#2, #3, #4 はポリペプチド の cDN
A をクローン化している(図2)。
されるアミノ酸配列を有するポリペプチド の cDNA の
組換え体の発現は、種々の大腸菌の宿主ベクター系で可
能である。特に大腸菌での発現系は種々の医薬品製造に
使用された実績が豊富にあるので、ポリペプチドの生産
も大腸菌で行うのが適当である。
ーターを使用した安枝らの大腸菌発現系(Bio/Technolo
gy, 8: 1036-1040, 1990 )を改変し、エピトープポリ
ペプチドを大腸菌の菌体内に著量合成せしめ、不溶性画
分(封入体)として蓄積させることに成功した。この発
現系は発現誘導剤や抗生物質の使用量を少なくすること
が可能である。 (1) trp オペロンプロモーター 大腸菌のプロモーター trp と SD 配列を上記文献を参
考に、オリゴヌクレオチドTRPS(配列番号:17)、 TRP
A(配列番号:18)、 SDSDS(配列番号:19)、 および
SDSDA(配列番号:20)を合成した。TRPA(配列番号:
18)とSDSDS(配列番号:19) は 5′-末端を T4 ファ
ージのポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化した。TRPS
(配列番号:17) と TRPA(配列番号:18) の 3′-末端
の 11 塩基は相補的である。加熱、徐冷して対合させ、
クレノウ断片による修復合成を行うことにより前半の 5
0 塩基対の二本鎖 DNA を得た。SDSDS(配列番号:19)
と SDSDA(配列番号:20) の 3′-末端の 10 塩基も相
補的である。加熱、徐冷して対合させ、クレノウ断片に
よる修復合成により後半の 47 塩基対の二本鎖 DNA を
得た。これらの DNA 断片を T4 ファージの DNA リガー
ゼで結合反応させ連結したDNA断片TRP-SDSDをリン酸化
した SDSDA、(配列番号:20)と(リン酸化しない)TRP
S (配列番号:17)をプライマーとして12 サイクルの
PCR で増幅した。pUC19F8#10(pUC19F7の5番目のエピト
ープをコードするDNAが別のエピトープをコードするDNA
で置換されたプラスミド)を鋳型に、リン酸化した KVT
V43S (配列番号:21)と(リン酸化しない)VDGI14A2
(配列番号:14)をプライマーとした 15 サイクルの P
CR でcDNA 断片 F8 を増幅し、ポリアクリルアミドゲル
電気泳動で分離/精製した。DNA 断片 TRP-SDSD と F8
を混合し、クレノウ断片と T4 ファージの DNA リガー
ゼを作用させて結合させた。結合した断片 TRP-SDSD-F8
を TRPS(配列番号:17) と VDGI14A2 (配列番号:1
4)をプライマーとした 12 サイクルの PCRで増幅し、
ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離/精製した。DN
A 断片 TRP-SDSD-F8 を Hind III で消化し、アガロー
スゲル電気泳動で約500 bp の断片を分離/精製した。H
ind III で消化した DNA 断片 TRP-SDSD-F8 を EcoRIで
消化してから pUC119 のEcoRI-Hind III アームに結合
させ、大腸菌 TB1 株の形質転換を行った。X-gal プレ
ートで白色のコロニーを形成した 13 クローンについて
プラスミドの微量調製を行い、EcoRI, Hind III の二重
消化で約 500 bp の断片が切り出される 2 クローン(p
UC119TF8#6 および #7)を選択した。これらのプラスミ
ドの挿入塩基配列をダイデオキシ法で読んだところ、pU
C119TF8#6 では Hinc II/HpaIの認識部位の前後が 32 b
p, pUC119TF8#7 では DraI の認識部位とその後が 20bp
欠失していた。pUC119TF8#6 の挿入塩基配列のcDNA 部
分は 5´側の 70 bpを読んだが、その範囲にはアミノ酸
配列を変えるような変異はなかった。KVTV43S(配列番
号:21) の 5´側の 18 bp は縮退コドンの均等な混
合物として合成したため 4 つのコドンの 3 文字目がい
ずれも T に変わっていた(図3および配列番号:2
3)。 pUC119TF8#6 と #7 の欠失位置は、ずれてお
り、間に ClaI の認識部位が存在する。そこで、これら
のクローンを組み換えて目的とする組み換え体を作製す
ることにした。pUC119TF8#6 を ClaI と Hind III で消
化し、約 400 bp の DNA断片をアガロースゲル電気泳動
で分離した。pUC119TF8#7 を ClaI, Hind III,ウシ小腸
のアルカリフォスファターゼで消化してからアガロース
ゲル電気泳動にかけ、ベクター側断片(約 3 kbp)を分
離した。これらの DNA 断片を T4 ファージの DNA リガ
ーゼで結合させてから大腸菌 GI698 に導入し、10μg/m
L のトリプトファンと 100μg/mL のアンピシリンを加
えたプレートで組換え体を選択した。6 クローン(pUC1
19TF8#6.51-#6.56)についてプラスミド DNA の微量調
製を行い、Hae III, EcoRI の二重消化の制限パターン
で、意図した DNA の組み換えが起きていることを確認
した。
ドの N-末端の cDNAを含む約 120 bp の DNA 断片を Ec
oRI, Eco47I 消化で切りだした。また pUC19F7 から ポ
リペプチドの C-末端側の cDNA を含む約 290 bp の DN
A 断片を Hind III, Eco47I 消化で切りだした。pQE11
の EcoRI-Hind III アーム上で、これらの断片を結合さ
せて大腸菌(GI698 株)に導入した。アンピシリン耐性
の 24 クローン(pQETF7#1-24)からプラスミド DNA を
微量調製し、挿入配列の有無を SDSDS(配列番号:1
9)、 VDGI14A2(配列番号:14) をプライマーとした
PCR と Hind III/EcoRI 消化で調べ、pQETF7#12 に期待
する長さの挿入塩基配列があることを確認した。pQETF7
#4, pQETF7#7, pQETF7#12 の EcoRI, XhoI 消化を行っ
てからアガロースゲル電気泳動でベクター側 DNA断片を
分離/精製した。pQETF7#12 の EcoRI-XhoI 断片にクレ
ノウ断片と T4 ファージの DNA リガーゼを作用させて
閉環し、大腸菌 GI698 に導入し、10μg/mL のトリプト
ファンと100μg/mL のアンピシリンを加えたLB寒天培地
プレートで組み換え体を選択した。組み換え体から調製
したプラスミド DNA pQTF7 の制限酵素消化(DraI, Hin
dIII の二重消化)とポリアクリルアミドゲル電気泳動
で予定通りの欠失が起きていることを確認した。pQTF7
では ポリペプチドのcDNA の下流にλファージの転写終
結信号配列 t0が連結している。その更に下流にはクロ
ラムフェニコールアセチル基転移酵素(cat)とリボソ
ーム RNA 転写終結信号配列 T1 が連結している。このc
atとT1の部分は不要であるので、それらを除去した発現
プラスミド pQTF7Δcr を作製した。
列番号:22) をプライマーにポリペプチドの cDNA の
後半とλファージの転写終結信号 t0 を含む DNA 断片
WK-T0 を 20サイクルの PCR で増幅し、アガロースゲル
電気泳動で約 300 bp の断片を分離した。DNA 断片 WK-
T0 を XbaI と Hind III で消化してから QIAEX II で
精製し pUC19 の XbaI-Hind III アームと T4 DNA リガ
ーゼで結合させた。結合反応により生成したプラスミド
DNA を大腸菌 MC1061 株に導入した。アンピシリン耐
性の 4 クローン(pUC19t0#1-4)を培養し、プラスミド
DNAの微量調製を行った。制限酵素消化(EcoRI, Hind
III の二重消化)後のポリアクリルアミドゲル電気泳動
で約 150 bp のバンドを確認した。 pUC19t0#1 の塩基
配列をダイデオキシ法で確認した。pUC19t0#1 の約 100
bp の XbaI-Hind III 断片と pQTF7.12#1 の約 2.5 kb
の XbaI-Hind III 断片を T4 DNA リガーゼで結合させ
てから大腸菌 K802 株に導入した。得られたプラスミド
pQTF7Δcr(図4)の構造を制限酵素消化(XbaI, Hind
III の二重消化)で確認した。アガロースゲル電気泳
動で 121 bp の DNA のバンドが観察された。
精製 エピトープポリペプチド(配列番号:1)を封入体とし
て保持する大腸菌から封入体画分を分離し、変性剤で抽
出後、以下のように、1) 銅キレートカラムクロマトグ
ラフィー、2) 陽イオン交換カラムクロマトグラフィ
ー、そして3) 逆相カラムクロマトグラフィーの順にク
ロマト操作して精製した。発現プラスミドpQTF7△cr
(図4)で形質転換した大腸菌株K 802をファーメンタ
ー培養した。培養後の菌体45 g(湿菌体重量)を400 mL
の50mMトリス酢酸緩衝液(pH 5.0)で懸濁しホモゲナイ
ザーで破砕した。この破砕液を遠心(10,000× g、20分
間)して不溶性画分を得た。不溶性画分を400 mLの2%
トリトンX-100を含む50mM トリス酢酸緩衝液(pH 5.0)
で懸濁し、遠心(10,000 ×g、30分間)して封入体画分
78 gを得た。この封入体画分に400 mLの1 M 塩酸グアニ
ジン、5 M 尿素、0.02%酢酸を加え、室温で1時間撹拌
溶解した後、遠心(10,000 × g、20分間)して上清を
得た。この上清を8M 尿素/ 0.2M 塩化ナトリウム/ 50mM
酢酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)と1:1で混合しpH
7.0に調整した後、銅キレートストリームラインカラム
(50 ×150 mm)に添加した。同上のバッファー3カラ
ム容量でカラムを洗浄し非吸着物質を除いた後、8M 尿
素/ 0.2M 塩化ナトリウム / 50mM 酢酸ナトリウム緩衝
液(pH 5.0)で溶出し、溶出液980 mLを得た。この溶
出液を酢酸でpH 4.0に調整し、8M 尿素/ 0.1M 塩化ナト
リウム / 50mMトリス酢酸緩衝液(pH 4.0)で平衡化し
たSP-セファロースFFカラム( 50 × 100 mm )に添加し
た。8M 尿素/ 0.1M 塩化ナトリウム / 50mM 炭酸ナトリ
ウム緩衝液 (pH 10.0)と8M 尿素/ 0.2 M 塩化ナトリウ
ム / 50mM トリス酢酸緩衝液(pH4.0)でカラムを洗浄
後、8M 尿素/ 0.4 M 塩化ナトリウム / 50mM トリス酢
酸緩衝液(pH 4.0)で溶出した。溶出液のA280を測定
し、吸収のある画分720 mL得た。溶出画分をさらに1%
酢酸で平衡化したPOROS 50R2カラム ( 25 × 200 mm)に
負荷した。12% アセトニトリル/1%酢酸で洗浄後、
22%アセトニトリル/1%酢酸で溶出した。溶出液を凍
結乾燥してポリペプチド208 mg(乾燥重量)を得た。こ
の精製ポリペプチドの純度はポリペプチドとして99%だ
った。純度は逆相HPLC[検出器:紫外吸光光度計(測定
波長:215nm)、カラム:CAPCELLPAK C18,SG 300Å 5
μm, 4.6 mm i.d.× 15 cm(資生堂)]で検定した。こ
のポリペプチドには、12.5重量%の酢酸が含まれてい
た。ロット間の酢酸含有量のバラツキは、およそ8〜13
重量%の範囲内と考えらる。
ープポリペプチドの安定性比較 1.酢酸含量の異なるエピトープポリペプチドの調製 実施例1で得られた精製エピトープポリペプチドに以下
の処理を施して、酢酸含量の異なる6種類(試料1〜6)
のエピトープポリペプチドを調製した。調製した各試料
は、それぞれ最終の水分含量が異なると考えられるた
め、25℃50%(相対湿度)RHの湿度条件で6時間試料を調
湿した後、保存した。 ・ 試料1:無処置のエピトープポリペプチド ・ 試料2:エピトープポリペプチド約250mgに水25mL
を加えて溶かし、凍結乾燥した ・ 試料3:エピトープポリペプチド約250mgに水25mL
を加えて溶かし、凍結乾燥した。さらに得られた凍結乾
燥品に水25mLを加えて溶かし、凍結乾燥した。この操作
をさらにもう一度行い、凍結乾燥操作を合計で3回行っ
た。 ・ 試料4:エピトープポリペプチド約250mgを25℃13%
RHのデシケーター中に5日間保存した。 ・ 試料5:エピトープポリペプチド約250mgを25℃75%
RHのデシケーター中に1日保存した後、25℃13%RHのデシ
ケーターに4日間保存した。 ・ 試料6:エピトープポリペプチド約250mgを酢酸蒸
気で飽和したデシケーター中に6時間保存した。
(ネジ蓋付き)に入れ、パラフィルムで封をした後、40
℃/1週間保存した。
確に加えて溶解し、試料溶液とした。また、酢酸約400m
gを精密に量り、水を加えて混和し、正確に20mLとし
た。この液2mLを正確にとり、水を加えて正確に100mLと
し、標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液50μLにつ
き、次の条件で液体クロマトグラム法により試験を行
い、それぞれの溶液から得られる酢酸のピーク面積を求
め、次式より酢酸含量を算出した。 [計算式] 酢酸含量(%)= (At /As) × (Ws/ Wt) × 0.5 At :試料溶液の酢酸のピーク面積値 As :標準溶液の酢酸のピーク面積値 Wt :試料の秤量値(mg) Ws :酢酸の秤量値(mg) [試験条件] 検出器: 紫外吸光光度計(測定波長:210nm) カラム: Inertsil ODS-3V 5 μm 4.6 mm i.d.×25
cm(GL Sciences Inc.) カラム温度:40℃付近の一定温度 移動相: A液)0.085%リン酸液 B液)アセトニトリル/0.085%リン酸液混液(9:1) グラジエントプログラム(リニア)を表2に示す。
るように調整する(通常約1.0mL/min)
し、試料溶液とした。試料溶液40μLにつき、次の条件
で液体クロマトグラフ法により試験を行い、面積百分率
により類縁物質含量を算出した。 [試験条件] 検出器:紫外吸光光度計(測定波長:215nm) カラム:CAPCELLPAK C18, SG 300Å 5 μm, 4.6 mm i.
d.× 15 cm(資生堂) カラム温度:40℃付近の一定温度 移動相:A液)水/1 mol/Lリン酸・100 mmol/L過塩素酸
ナトリウム混液(9:1) B液)アセトニトリル/1 mol/Lリン酸・100mmol/L過塩素
酸ナトリウム混液(9:1) グラジェントプログラム(リニア)を表3に示す。
分付近になるように調整する(通常約1.0 mL/min)
正確に加え溶解し、この液を水で2倍に希釈し、試料溶
液とした。試料溶液20μLにつき、次の条件で液体クロ
マトグラフ法により試験を行い、面積百分率により総重
合体含量を求めた。 [試験条件] 検出器:紫外吸光光度計(測定波長:215 nm) カラム:TSK-GEL G4000SWXL,7.8 mm i.d.×30 cm
(東ソー社製) カラム温度:25℃付近の一定温度 移動相:水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸混液(60
0:400:1) 流量:ポリペプチドの保持時間が約18分付近になるよう
に調整する(通常約0.5 mL/min)
加えて溶解し、試料溶液とした。また、ポリペプチド標
準物質1バイアルに水2.5 mLを正確に加えて溶解し、標
準溶液とした。試料溶液及び標準溶液40 μLにつき、次
の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、次式
より本品の含量を算出した。 [計算式] 含量(%) = (At / As) × (Ws / Wt) × 200 At:試料溶液のポリペプチドピーク面積値 As:試料溶液のポリペプチドピーク面積値 Ws:ポリペプチド標準物質のポリペプチド含量値(mg/v
ial) Wt:試料の秤量値(mg) ポリペプチド含量 Ws=Wp×(1 - 0.01×F ) Wp:ポリペプチド標準物質の総タンパク質含量(mg) F :ポリペプチド標準物質の総類縁タンパク質含量
(%) [試験条件]3.2. 類縁タンパク質の[試験条件](液
体クロマトグラム法)と同じ。
した試料(試料1〜6)の酢酸含量及び性状を表4に示
す。いずれも性状は「白色の綿状の塊」であったが、凍
結乾燥を行って酢酸含量を減少させた試料は、帯電性に
富む性質を示した。各種操作により、調製した試料の酢
酸含量は6.1%〜17.9%であった。
ポリペプチド(試料1〜6)を40℃/1W保存したときの性
状には変化が認められなかった。エピトープポリペプチ
ド(試料1〜6)中の酢酸含量と、40℃/1W保存後に認め
られた重合体との関係を(図5)に、類縁ポリペプチド
の増加量との関係を(図6)に、そしてエピトープポリ
ペプチドの残存率との関係を(図7)にそれぞれ示し
た。重合体の増加量は酢酸含量が6.1%及び17.9%のエピ
トープペプチドで高い傾向が認められた。重合体の許容
増加量を約1.5%と見積もると酢酸含量はおよそ7〜14%の
範囲である。類縁ポリペプチドの増加量は、当該エピト
ープポリペプチドの前に溶出する成分(低脂溶成分)と
後に溶出する成分(高脂溶成分)に分けて評価したとこ
ろ、酢酸含量が17.9%のエピトープポリペプチドで本体
の前後に溶出する成分の増加量が高くなった。類縁ポリ
ペプチドの許容増加量をおよそ3%以下に見積もると、酢
酸含量はおよそ11%以下である。含量(残存率)は、エピ
トープポリペプチド中の酢酸含量が10%付近で高く、酢
酸含量の減少及び増加にしたがって低下することが明ら
かになった。残存率をおよそ98%と見積もると、酢酸含
有量は、およそ9〜13%の範囲である。以上の結果から、
残存率、重合体及び分解生成物の生成量を総合的に考慮
すると、エピトープポリペプチドは酢酸含量が9〜10%付
近で最も安定であり、酢酸含量が7〜13%では比較的安
定であることが示された。
ドを調製し、GLP毒性試験で投薬溶媒に用いられる5%ブ
ドウ糖溶液(日本薬局方)に対する25℃での溶解度を測
定した。 1.操作法 1.1 酢酸含量の異なるエピトープポリペプチドの調製 実施例1と同一の方法で得られたエピトープポリペプチ
ド(未処理試料)約0.5gに水50mLを加えて溶解し、凍結
乾燥した(条件:25℃、1psi)。この操作を1回あるい
は3回行った。 1.2 試料飽和溶液の調製 試料約50mgをガラス製試験管にとり、5%ブドウ糖溶液
(日本薬局方:大塚製薬製)1mLを加えて25℃で泡を立
てないように緩やかに振とうして溶解した(5分間隔で3
0秒振とう→静置)。さらに、試料約25mgずつ加え、振
とうで試料が溶けなくなるまで操作を繰返した。試料が
溶けなくなったら、さらに試料約25mgを加えて振とう操
作(5分間隔で30秒振とう→静置を6回繰返す)を行っ
た。上記の振とう操作で泡が立ち攪拌できなくなった
ら、遠心して泡を破壊してから振とう操作を行った。そ
の液を25℃、2000rpm/5分で遠心分離し、液層を0.45μm
のメンブランフィルターでろ過して試料の飽和溶液を得
た。 1.3 試料濃度の測定 飽和溶液中の試料濃度をUV法により測定した。飽和溶液
を0.1mol/L塩酸で200〜400倍に希釈した後、280nmの吸
光度(A280)を測定し、下式により試料濃度を算出し
た。 試料(mg/mL)= MW試料×F×A280/ε試料 ε試料 :エピトープポリペプチドの280nmにおけるモ
ル吸光係数 (=20444) MW試料:エピトープポリペプチドの分子量 (=12303) F :希釈率 1.4 酢酸含量の測定 試験例1の「3.1. 酢酸」に記載の測定方法に準じて測
定した。
局方5%ブドウ糖溶液に対する25℃での溶解度を表5に示
す。
理)〜6.7%の試料が得られた。試料の溶解度は、酢酸含
量の減少に伴って低下し、酢酸含量6.7%の試料の溶解度
は78mg/mLであった。今回調製した酢酸含量が13.0%〜6.
7%のエピトープポリペプチドはいずれも50mg/mL付近の
濃度まで比較的容易に溶解したが、それより高濃度では
試料が浮遊して溶解に時間を要し、極めて泡立ち易かっ
た。また、エピトープポリペプチドが100mg/mL以上の5%
ブドウ糖溶液は粘性が高く、0.45μmのメンブランフィ
ルターによるろ過操作は困難であり、25℃で1日静置す
るとゲル状になった。
1で表されるアミノ酸配列を有する多重T細胞エピトー
プポリペプチド(以下、化合物Aと略記する)に対し
て、精製白糖を含有する水溶液(化合物濃度:0.12mg/m
L、2mg/mL)を調製し、塩酸によりpHを調整したのち、除
菌ろ過により得られた水溶液1mLをバイアルに分注、ゴ
ムセンを半施栓後、凍結乾燥を行った。凍結乾燥終了
後、バイアル空間部を窒素ガスで置換した後、ゴムセン
を施栓、キャップで巻締することにより凍結乾燥品を作
製した。
月、4箇月および6箇月、25℃相対湿度60%で6箇
月保存した。製剤の含量(残存率)、類縁タンパク質、重
合体を調べたところ、表7の結果を得た。処方Bについ
ては酢酸を測定した。
mgに対して、マンニトール2mg、20mg含有する水溶液(化
合物濃度:2mg/mL)を調製し、除菌ろ過により得られた
水溶液1mLをバイアルに分注、ゴムセンを半施栓後、凍
結乾燥を行った。凍結乾燥終了後、バイアル空間部を窒
素ガスで置換し、ゴムセンを施栓、キャップで巻締する
ことにより凍結乾燥品を作成した。
存した。製剤の含量(残存率)、類縁タンパク質、重合体
を測定したところ、表9の結果を得た。
射用水で溶解し、表10に示す処方により、各水溶液
(化合物濃度:2mg/mL)を調製し、必要に応じて塩酸によ
りpHを調整したのち、除菌ろ過により得られた各水溶液
0.5mLをバイアルに分注、ゴムセンを半施栓後、凍結乾
燥を行った。凍結乾燥終了後、バイアル空間部を窒素ガ
スで置換し、ゴムセンを施栓、キャップで巻締すること
により凍結乾燥品を作製した。
(残存率)、類縁タンパク質、重合体を測定したところ、
表11の結果を得た。
し、本発明のエピトープポリペプチドの凍結乾燥製剤に
おいて、精製白糖およびマンニトールを添加することに
より、保存による類縁タンパク質および重合体の生成を
少なくすることができ、安定性に優れた製剤とできるこ
とが分かった。
ンタンパク質Cry j 1およびCry j 2由来のT細胞エピト
ープからなる、溶解性がよく長期間安定な凍結乾燥品
で、5〜15%の酢酸を含む多重T細胞エピトープポリペプ
チドの酢酸塩組成物が提供された。該多重T細胞エピト
ープポリペプチド酢酸塩組成物は、スギ花粉症の予防ま
たは治療のための注射剤として有用である。
するDNAの構築図を示す。
酸配列および該ポリペプチドをコードする塩基配列を示
す。塩基配列の太字の部分はポリペプチドのアミノ酸配
列をコードする領域を示す。配列中下線を付した塩基は
プラスミドの構築を容易にする等の理由で変異させてあ
る。小文字はプラスミドあるいはPCRプライマー由来の
塩基配列を示す。
周辺の塩基配列(大文字)および多重T細胞エピトープ
ポリペプチドのN末端のアミノ酸配列をコードする塩基
配列(小文字)を示す。□で囲った部分は−10領域およ
び−35領域を示し、下線部分はSD配列を示し、そして二
重の下線部分は主要な制限酵素認識部位を示す。
モーター、2つのSD配列、多重T細胞エピトープポリペ
プチドをコードする領域、λファージ由来のターミネー
ターt0、主要な制限酵素認識部位、およびアンピシリン
耐性遺伝子が示されている。
有量(%)と該ポリペプチドの重合体増加量(%)との関
係を示す。
縁ポリペプチド増加量(%)との関係を示す。
関係を示す。
Claims (8)
- 【請求項1】 酢酸を5〜15(重量)%含有する配列番
号:1で表されるアミノ酸配列を有する多重T細胞エピ
トープポリペプチド酢酸塩組成物。 - 【請求項2】 酢酸を約7〜13(重量)%含有する、請
求項1記載の多重T細胞エピトープポリペプチド酢酸塩
組成物。 - 【請求項3】 酢酸を約9〜10(重量)%含有する、請
求項1記載の多重T細胞エピトープポリペプチド酢酸塩
組成物。 - 【請求項4】 配列番号:1で表されるアミノ酸配列を
有する多重T細胞エピトープポリペプチド1に対し、酢
酸を約4〜20(重量)%含有してなる組成物。 - 【請求項5】 配列番号:1で表されるアミノ酸配列を
有する多重T細胞エピトープポリペプチド1に対し、酢
酸を約5〜18(重量)%含有してなる組成物。 - 【請求項6】 配列番号:1で表されるアミノ酸配列を
有する多重T細胞エピトープポリペプチド1に対し、酢
酸を約7〜15(重量)%含有してなる組成物。 - 【請求項7】 配列番号:1で表されるアミノ酸配列を
有する多重T細胞エピトープポリペプチド1に対し、酢
酸を約9〜12(重量)%含有してなる組成物。 - 【請求項8】 請求項1〜7のいずれか1項記載の組成
物を含有してなる凍結乾燥製剤。
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