JP2003095739A - ガラスセラミック誘電体材料および焼結体 - Google Patents

ガラスセラミック誘電体材料および焼結体

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欣克 西川
Yoshio Mayahara
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 1000℃以下の温度で焼成でき、しかも
0.1GHz以上の高周波数領域において誘電損失が低
く、かつ銀導体と同時焼成をおこなっても基板の変形が
ないガラスセラミック誘電体材料を提供する。 【解決手段】 本発明のガラスセラミック誘電体材料
は、質量百分率で、結晶性ガラス粉末50〜100%、
セラミック粉末0〜50%からなり、該結晶性ガラス粉
末がSiO2−CaO−MgO−Fe23系ガラスから
なり、主結晶としてディオプサイド(CaMgSi
26)及びオージャイト[Ca(Mg、Fe)Si26]
の結晶を析出する性質を有することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、0.1GHz以上の高
周波領域において低い誘電損失を有し、マイクロ波用回
路部品材料として好適なガラスセラミック誘電体材料及
び焼結体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】IC、LSI等が高密度実装されるセラ
ミック基板材料等の回路部品材料として、アルミナセラ
ミック材料や、ガラス粉末とフィラー粉末からなるガラ
スセラミック材料が知られている。特にガラスセラミッ
ク材料は、1000℃以下の温度で焼成することができ
るため、導体抵抗の低いAg、Cu等と同時焼成するこ
とができるという長所がある。
【0003】近年、自動車電話や携帯電話に代表される
移動体通信機器、衛星放送、衛星通信、CATV等の通
信機器の分野においては、利用される周波数帯域が0.
1GHz以上の高周波数となりつつある。このような高
周波帯域を利用する多層基板には、0.1GHz以上の
高周波領域における誘電損失が低いことが要求され、主
結晶としてディオプサイドが析出するガラスセラミック
誘電体材料が開発されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この用
途に開発されたディオプサイド系ガラスセラミック材料
は、高周波領域での誘電損失が10×10―4以下と低
いものの、焼成する際、収縮開始温度が高く、銀導体と
同時焼成すると収縮のミスマッチのため基板が変形しや
すいという欠点があった。
【0005】本発明の目的は、1000℃以下の温度で
焼成でき、しかも0.1GHz以上の高周波数領域にお
いて誘電損失が低く、かつ銀導体と同時焼成をおこなっ
ても基板の変形がないガラスセラミック誘電体材料と焼
結体を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は種々の実験
を重ねた結果、ディオプサイド系ガラスセラミック材料
において、結晶性ガラスの組成中にFe23を添加する
ことによって上記目的が達成できることを見いだし、本
発明として提案するものである。
【0007】即ち、本発明のガラスセラミック誘電体材
料は、質量百分率で、結晶性ガラス粉末50〜100
%、セラミック粉末0〜50%からなり、該結晶性ガラ
ス粉末がSiO2−CaO−MgO−Fe23系ガラス
からなり、主結晶としてディオプサイド(CaMgSi
26)及びオージャイト[Ca(Mg、Fe)Si26]
の結晶を析出する性質を有することを特徴とする。
【0008】また、本発明のガラスセラミック焼結体
は、主結晶としてディオプサイド(CaMgSi26
及びオージャイト[Ca(Mg、Fe)Si26]の結晶
が析出してなることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明のガラスセラミック誘電体
材料は、SiO2−CaO−MgO−Fe2 3系ガラス
粉末を主成分として含む。ガラス中にFe23を含有し
ているために収縮開始温度が低くなり、銀導体と同時焼
成しても基板が変形しない。また、焼成することにより
ガラス中からディオプサイド(CaMgSi26)結晶
の他にオージャイト[Ca(Mg、Fe)Si26]結晶
が析出する。これらの結晶は低誘電損失であるため、得
られるガラスセラミック焼成体も0.1GHz以上の高
周波領域で誘電損失が低いという特性を示す。
【0010】結晶性ガラス粉末として、SiO2 35
〜65%、CaO 10〜30%、MgO 10〜20
%、Fe23 0.5〜20%の組成を有するガラスを
使用することが望ましい。
【0011】結晶性ガラス粉末の組成範囲を上記のよう
に限定した理由を以下に述べる。
【0012】SiO2はガラスのネットワークフォーマ
ーであるとともに、ディオプサイド、オージャイト結晶
の構成成分となり、その含有量は35〜65%、好まし
くは40〜55%である。SiO2が35%以上であれ
ばガラス化が容易であり、65%以下であれば1000
℃以下で焼成することが可能であり、導体や電極として
AgやCuを用いることができる。
【0013】CaOはディオプサイド、オージャイト結
晶の構成成分となり、その含有量は10〜30%、好ま
しくは15〜25%である。CaOが10%以上であれ
ばこれらの結晶が析出し易くなって誘電損失が低くな
り、30%以下であればガラス化が容易になる。
【0014】MgOもディオプサイド、オージャイト結
晶の構成成分となり、その含有量は10〜20%、好ま
しくは12〜17%である。MgOが10%以上であれ
ば結晶が析出し易くなり、20%以下であればガラス化
し易くなる。
【0015】Fe23は収縮開始温度を低下させる成分
であると共にオージャイト結晶の構成成分となる。その
含有量は0.5〜20%、好ましくは5〜15%であ
る。Fe23が0.5%以上であれば収縮開始温度を低
下させる効果がある。またFe 23の添加により析出す
るオージャイト結晶は誘電率が高く、これが多量に析出
すると焼結体の誘電率が高くなりすぎる。しかし20%
以下であれば誘電率が高くなり過ぎず、実用上問題な
い。またこの範囲であれば緻密な焼結体が得られる。
【0016】また上記成分以外にも、誘電損失等の特性
を損なわない範囲でSrO、ZrO 2、TiO2等の他成
分を添加してもよい。
【0017】本発明のガラスセラミック誘電体材料は、
上記組成を有する結晶性ガラス粉末のみで構成されても
よいが、曲げ強度、靭性等の特性を改善する目的でセラ
ミック粉末と混合してもよい。この場合、セラミック粉
末の混合量は50質量%以下である。セラミック粉末の
割合をこのように限定した理由は、セラミック粉末が5
0%より多いと緻密化しなくなるためである。
【0018】セラミック粉末としては、0.1〜10G
Hzでの誘電損失が10×10-4以下であるセラミック
粉末、例えばアルミナ、ムライト、クリストバライト、
フォルステライト、エンスタタイト、ガーナイト等を使
用することができる。なお0.1〜10GHzでの誘電
損失が10×10-4を越えるセラミック粉末を使用する
とガラスセラミックの誘電損失が高くなり易く好ましく
ない。
【0019】上記組成を有する本発明のガラスセラミッ
ク誘電体材料は、焼成すると、主結晶としてディオプサ
イド及びオージャイトが析出し、0.1GHz以上の高
周波領域において誘電率が6〜9、誘電損失が10×1
-4以下の焼結体となる。
【0020】次に本発明のガラスセラミック誘電体材料
を用いた回路部品の製造方法を以下に述べる。
【0021】まず結晶性ガラス粉末、或いは結晶性ガラ
ス粉末とセラミック粉末の混合粉末に、所定量の結合
剤、可塑剤及び溶剤を添加してスラリーを調製する。結
合剤としては例えばポリビニルブチラール樹脂、メタア
クリル酸樹脂等、可塑剤としては例えばフタル酸ジブチ
ル等、溶剤としては例えばトルエン、メチルエチルケト
ン等を使用することができる。
【0022】次いで上記のスラリーを、ドクターブレー
ド法によってグリーンシートに成形する。その後、この
グリーンシートを乾燥させ、所定寸法に切断してから、
機械的加工を施してスルーホールを形成し、導体や電極
となる低抵抗金属材料をスルーホール及びグリーンシー
ト表面に印刷する。次いでこのようなグリーンシートの
複数枚を積層し、熱圧着によって一体化する。
【0023】さらに積層グリーンシートを、焼成するこ
とによって回路部品を得る。
【0024】なお回路部品の製造方法として、グリーン
シートを用いる例を挙げたが、本発明はこれに限定され
るものではなく、一般にセラミックの製造に用いられる
各種の方法を適用することが可能である。
【0025】
【実施例】以下、本発明のガラスセラミック誘電体材料
を実施例に基づいて説明する。
【0026】表1、2は本発明の実施例(試料No.1
〜5)及び比較例(試料No.6)を示すものである。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】各試料は以下のように調製した。
【0030】まず表1、2に示す組成となるようにガラ
ス原料を調合した後、白金坩堝に入れて1400〜15
00℃で3〜6時間溶融してから、水冷ローラーによっ
て薄板状に成形した。次いでこの成形体を粗砕した後、
アルコールを加えてボールミルにより湿式粉砕し、平均
粒径が1.5〜3μmの結晶性ガラス粉末とした。さら
に試料No.2〜6については、表に示したセラミック
粉末(平均粒径2μm)を添加し、混合粉末とした。
【0031】このようにして得られた試料について、焼
成温度、収縮開始温度、析出結晶、誘電率、誘電損失、
曲げ強度及び熱膨張係数を測定した。また、銀導体と同
時焼成した場合の変形の有無を確認した。結果を表1、
2に示す。
【0032】表から明らかなように、実施例の各試料
は、850〜900℃の低温で焼成可能であり、収縮開
始温度が650〜690℃で基板の変形もなく、焼成後
にディオプサイド結晶の他に、オージャイト結晶が析出
していることが確認された。また2.4GHzの周波数
で誘電率が7.5〜8.7、誘電損失が2〜10×10
-4であり、しかも曲げ強度が2000kgf/cm2
上と高かった。
【0033】なお、焼成温度は、種々の温度で焼成した
焼結体にインクを塗布した後に拭き取り、インクが残ら
ない(=緻密に焼結した)試料のうち最低の温度で焼成
したものの焼成温度を記載した。収縮開始温度はグリー
ンシート圧着体をTMA測定装置にかけ、収縮曲線を測
定することによって求めた。析出結晶は、各試料を表に
示す焼成温度で焼成した後、X線回折によって同定し
た。誘電率と誘電損失は、焼成した試料を用い、空洞共
振器(測定周波数2.4GHz)を使用して25℃の温
度での値を求めた。曲げ強度は、焼成した試料を10×
40×1mmの板柱に成形し、3点荷重測定法によって
測定した。基板の変形は、グリーンシート圧着体上に銀
ペーストを塗布し、表に示す温度で焼成した後、基板の
変形の有無を確認した。熱膨張係数は、4φ×20mm
の試料を用いてDilatoメーターによって測定し
た。なおガラスセラミック基板の適正な熱膨張係数は、
樹脂配線基板のそれと同じく、70〜130×10-7
℃である。
【0034】
【発明の効果】以上のように本発明のガラスセラミック
誘電体材料は、1000℃以下の低温で焼成することが
可能であり、収縮開始温度が銀導体の収縮開始温度に近
いため、同時焼成を行ったとき、基板の変形がない。し
かも0.1GHz以上の高周波領域において低い誘電損
失を有し、また機械的強度が高いため、マイクロ波用回
路部品材料として好適である。
フロントページの続き Fターム(参考) 4G030 AA07 AA08 AA27 AA36 AA37 BA09 GA27 HA04 HA09 HA25 4G062 AA10 AA11 BB01 DA05 DA06 DB01 DC01 DD01 DE01 DF01 EA01 EB01 EC01 ED04 EE04 EF01 EG01 FA01 FA10 FB01 FC01 FD01 FE01 FF01 FG01 FH01 FJ01 FK01 FL01 GA01 GA10 GB01 GC01 GD01 GE01 HH01 HH03 HH05 HH07 HH09 HH12 HH13 HH15 HH17 JJ01 JJ03 JJ05 JJ07 JJ10 KK01 KK03 KK05 KK07 KK10 MM31 MM40 NN26 QQ08 5G303 AA05 AB06 AB15 BA12 CA03 CB06 CB13 CB17 CB30 CD04 DA05

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量百分率で、結晶性ガラス粉末50
    〜100%、セラミック粉末0〜50%からなり、該結
    晶性ガラス粉末がSiO2−CaO−MgO−Fe23
    系ガラスからなり、主結晶としてディオプサイド(Ca
    MgSi26)及びオージャイト[Ca(Mg、Fe)
    Si26]の結晶を析出する性質を有することを特徴と
    するガラスセラミック誘電体材料。
  2. 【請求項2】 結晶性ガラス粉末が、SiO2 35
    〜65%、CaO10〜30%、MgO 10〜20
    %、Fe23 0.5〜20%の組成を有することを特
    徴とする請求項1のガラスセラミック誘電体材料。
  3. 【請求項3】 セラミック粉末が、0.1〜10GH
    zでの誘電損失が10×10-4以下のセラミック粉末で
    あることを特徴とする請求項1のガラスセラミック誘電
    体材料。
  4. 【請求項4】 主結晶としてディオプサイド(CaM
    gSi26)及びオージャイト[Ca(Mg、Fe)S
    26]の結晶が析出してなることを特徴とするガラス
    セラミック焼結体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN105670613A (zh) * 2016-04-06 2016-06-15 河北大学 一种非稀土离子掺杂的硅酸盐黄色荧光粉及其制备方法和应用
CN115432933A (zh) * 2022-08-30 2022-12-06 电子科技大学 高抗弯强度玻璃陶瓷材料及其制备方法

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