JP4288656B2 - ガラスセラミック誘電体材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、0.1GHz以上の高周波領域においてアルミナと同等の誘電率を有し、誘電損失が低く、共振周波数の温度係数がゼロに近いために、マイクロ波用回路部品の作製に好適なガラスセラミック誘電体材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
IC、LSI等が高密度実装されるセラミック基板材料等の回路部品材料として、アルミナセラミック材料や、ガラス粉末とセラミック粉末からなるガラスセラミック材料が知られている。特にガラスセラミック材料は、機械的強度はアルミナセラミック材料に比べて劣るものの、1000℃以下の温度で焼成することができるため、導体抵抗の低いAg、Cu等と同時焼成することができるという長所がある。
【0003】
ところで、自動車電話やパーソナル無線に代表される移動体通信機器、衛星放送、衛星通信、CATV等に代表されるニューメディア機器に使用されるマイクロ波用回路部品材料には、0.1GHz以上の高周波領域における誘電損失が低いことが要求される。そこでディオプサイド系結晶を析出するガラスセラミック材料が提案されている。例えば特許文献1には、この種の材料が開示されている。
【0004】
また、マイクロ波用回路部品用途では、部品自身が共振器として機能することを求められる場合があり、その場合は共振周波数が温度によって変化しないという温度安定性が求められる。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−120436号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記したようなディオプサイド系のガラスセラミック材料は、高周波領域での誘電損失が低い焼結体を得られるという特徴を有している。ところが誘電率が6〜8程度とアルミナより低い。また、共振周波数の温度係数が−65ppm/℃と温度安定性が悪い。
【0007】
本発明の目的は、1000℃以下の温度で焼成でき、誘電率がアルミナと同等であり、しかもマイクロ波領域の周波数において、誘電損失が低く、共振周波数の温度係数がゼロに近い焼結体を得ることが可能なガラスセラミック誘電体材料を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は種々の検討を行ったところ、ディオプサイドに加え、さらにチタナイトやチタニアを析出させることにより、アルミナと同等の誘電率が得られると同時に共振周波数の温度係数がゼロに近づくことを見いだし、本発明として提案するものである。
【0009】
即ち本発明の誘電体材料用ガラス粉末は、焼成すると、ディオプサイド(CaMgSi26)と、チタナイト(CaTi(SiO4)O)及び/又はチタニア(TiO2)を析出する性質を有することを特徴とする。
【0010】
また本発明の誘電体材料用ガラス粉末は、SiO2 35〜65%、CaO 10〜30%、MgO 10〜20%、TiO2 12〜30%含有することを特徴とする。
【0011】
本発明のガラスセラミック誘電体材料は、焼成すると、ディオプサイド(CaMgSi26)と、チタナイト(CaTi(SiO4)O)及び/又はチタニア(TiO2)を析出する性質を有するガラス粉末を含むことを特徴とする。
【0012】
また本発明のガラスセラミック誘電体材料は、SiO2 35〜65%、CaO 10〜30%、MgO 10〜20%、TiO2 12〜30%含有するガラス粉末からなることを特徴とする。
【0013】
上記ガラスセラミック誘電体材料は、セラミック粉末等を含み得る。またグリーンシートの形態で提供され得る。
【0014】
本発明のガラスセラミック焼結体は、析出結晶として、ディオプサイド(CaMgSi)と、チタナイト(CaTi(SiO)O)が存在することを特徴とする。
【0015】
本発明のマイクロ波用回路部品は、ディオプサイド(CaMgSi)と、チタナイト(CaTi(SiO)O)が存在するガラスセラミック焼結体からなる誘電体層を有することを特徴とする。
【0016】
【作用】
本発明のガラスセラミック誘電体材料は、焼成すると、低誘電損失のディオプサイドに加え、ディオプサイドよりも高誘電率であるチタナイトやチタニアを析出したガラスセラミック焼結体となる。
【0017】
これらの結晶を析出させることにより、得られるガラスセラミック焼結体の高周波領域(0.1GHz以上)での誘電率を9〜10、誘電損失を20以下に調整することができる。なお、チタナイトやチタニアの析出量はTiO2の含有量で調整することが可能である。例えばチタナイトやチタニアの析出量を増やしたい場合には、TiO2の含有量を多くすればよい。
【0018】
このような結晶を析出させるためには、SiO2、CaO、MgO、TiO2を主成分とし、これらの主成分の含有量が合量で80質量%以上、好ましくは90質量%以上である結晶性のガラス粉末を用いればよい。上記成分が合量で80質量%未満の場合、異種結晶が析出したり、或いは所望の結晶が析出しなくなり易い。
【0019】
また質量百分率で、SiO2 35〜65%、CaO 10〜30%、MgO10〜20%、TiO2 12〜30%含有するガラスを用いることが望ましい。
【0020】
ガラス粉末の組成範囲を上記のように限定した理由を以下に述べる。
【0021】
SiO2はガラスのネットワークフォーマーであるとともに、ディオプサイド、チタナイトの構成成分となり、その含有量は35〜65%、好ましくは40〜55%である。SiO2が35%より少ないとガラス化し難く、65%より多いと1000℃以下での焼成が困難になり、導体や電極としてAgやCuを用いることが難しくなる。
【0022】
CaOはディオプサイド、チタナイトの構成成分となり、その含有量は10〜30%、好ましくは15〜25%である。CaOが10%より少ないとこれらの結晶が析出し難くなって誘電損失が高くなり、もしくは誘電率が上がらず、30%より多いとガラス化し難くなる。
【0023】
MgOはディオプサイドの構成成分となり、その含有量は10〜20%、好ましくは12〜17%である。MgOが10%より少ないと結晶が析出し難くなり、20%より多いとガラス化し難くなる。
【0024】
TiO2はガラスの誘電率を高める成分であり、かつチタナイト、チタニアの構成成分となり、その含有量は12〜30%、好ましくは15〜27%である。TiO2が12%より少ないとチタナイトやチタニアが析出し難くなり、誘電率が十分に高くならない。また共振周波数の温度係数が−10ppm/℃よりも低くなる。30%より多くなると誘電率が高くなりすぎると同時に共振周波数の温度係数が10ppm/℃よりも高くなる。
【0025】
また上記成分以外にも、誘電率、誘電損失等の特性を損なわない範囲で他成分を添加してもよい。例えば 溶解性向上のためにSrOを10%まで、BaOを10%まで、化学耐久性向上のためにZrO2を10%まで添加することができる。ただしこれらの他成分の含有量は、合量で20%未満に制限することが望ましい。
【0026】
本発明のガラスセラミック誘電体材料は、上記した特徴を有するガラス粉末のみで構成されてもよいが、得られる焼結体の曲げ強度、靭性等の特性を改善する目的でセラミック粉末と混合してもよい。この場合、セラミック粉末の混合量は50質量%以下が好ましい。セラミック粉末の割合をこのように限定した理由は、セラミックス粉末が50%より多いと緻密化し難くなるためである。
【0027】
セラミック粉末としては、0.1〜10GHzでの誘電率が16以下、誘電損失が10×10-4以下であるセラミック粉末を用いることが望ましい。例えばアルミナ、クリストバライト、フォルステライト、ジルコン、ジルコニア等を使用することができる。セラミック粉末の誘電率が16を超えるとガラスセラミック焼結体の誘電率が高くなり易い。また0.1〜10GHzでの誘電損失が10×10−4を越えるセラミック粉末を使用するとガラスセラミックス焼結体の誘電損失が高くなり易く好ましくない。
【0028】
次に本発明のガラスセラミック誘電体材料を用いた回路部品の製造方法を述べる。
【0029】
まずガラス粉末、或いはガラス粉末とセラミック粉末の混合粉末に、所定量の結合剤、可塑剤及び溶剤を添加してスラリーを調製する。結合剤としては例えばポリビニルブチラール樹脂、メタアクリル酸樹脂等、可塑剤としては例えばフタル酸ジブチル等、溶剤としては例えばトルエン、メチルエチルケトン等を使用することができる。
【0030】
次いで上記のスラリーを、ドクターブレード法によってグリーンシートに成形する。その後、このグリーンシートを乾燥させ、所定寸法に切断してから、機械的加工を施してスルーホールを形成し、導体や電極となる低抵抗金属材料をスルーホール及びグリーンシート表面に印刷する。次いでこのようなグリーンシートの複数枚を積層し、熱圧着によって一体化する。
【0031】
次に、積層したグリーンシートを焼成することによってガラスセラミック焼結体を得る。このようにして作製された焼結体は、内部や表面に導体や電極を備えている。なお焼成温度は1000℃以下、特に800〜950℃程度の温度であることが好ましい。
【0032】
なおガラスセラミック焼結体を製造するに当たり、グリーンシートを用いる例を挙げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、一般にセラミックの製造に用いられる各種の方法を適用することが可能である。
【0033】
さらに、上記のようにして作製したガラスセラミック焼結体上にSi系やGaAs系の半導体素子のチップ等を接続することで、ガラスセラミック焼結体からなる誘電体層を有するマイクロ波用回路部品を得ることができる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
【0035】
表1、2は本発明の実施例(試料No.1〜6)及び比較例(試料No.7)を示すものである。
【0036】
【表1】
Figure 0004288656
【0037】
【表2】
Figure 0004288656
【0038】
各試料は以下のように調製した。
【0039】
まず表に示す組成となるようにガラス原料を調合した後、白金坩堝に入れて1400〜1500℃で3〜6時間溶融してから、水冷ローラーによって薄板状に成形した。次いでこの成形体を粗砕した後、アルコールを加えてボールミルにより湿式粉砕し、平均粒径が1.5〜3μmのガラス粉末とした。さらに試料No.2〜6については、表に示したセラミック粉末(平均粒径2μm)を添加し、混合粉末とした。
【0040】
このようにして得られた粉末試料について、焼成温度、析出結晶、誘電率、誘電損失を測定した。
【0041】
表から明らかなように、実施例の各試料は、880〜900℃の低温で焼成可能であり、焼成後にディオプサイド結晶の他に、チタナイト結晶やチタニア結晶が析出していることが確認された。また2.4GHzの周波数で誘電率が9.2〜9.8とアルミナと同等の誘電率であり、しかも誘電損失が小さかった。さらに、共振周波数の温度係数が−7〜7ppm/℃とゼロに近い値となった。一方、比較例である試料No.7は、誘電率が7.8と低かった。また、共振周波数の温度係数が−65ppm/℃とゼロから離れた値となった。
【0042】
なお焼成温度は、種々の温度で焼成した焼結体にインクを塗布した後に拭き取り、インクが残らない(=緻密に焼結した)試料のうち最低の温度で焼成したものの焼成温度を記載した。
【0043】
析出結晶は、各試料を表に示す温度で焼成した後、X線回折によって求めた。
【0044】
誘電率と誘電損失は、焼成した試料を用い、空洞共振器(測定周波数2.4GHz)を使用して25℃の温度での値を求めた。
【0045】
共振周波数の温度係数の測定は、焼成した試料をJIS R1627により求めた。(共振周波数15GHz)
【0046】
【発明の効果】
以上のように本発明のガラスセラミック誘電体材料は、1000℃以下の低温で焼成することが可能であり、導体損失の低いAgやCuを導体として使用可能である。しかもその焼結体は、誘電率が9〜10とアルミナに近いため、アルミナと置換して使用する場合に回路設計を大幅に変更する必要がない。さらに0.1GHz以上の高周波領域において低い誘電損失とゼロに近い共振周波数の温度係数を有している。従ってマイクロ波用回路部品用途に好適である。

Claims (14)

  1. 焼成すると、ディオプサイド(CaMgSi)と、チタナイト(CaTi(SiO)O)及び/又はチタニア(TiO)を析出する性質を有する誘電体材料用ガラス粉末。
  2. SiO、CaO、MgO、TiOを組成中に含み、これらの成分の含有量が合量で80質量%以上であることを特徴とする請求項1の誘電体材料用ガラス粉末。
  3. ガラス粉末が、質量百分率で、SiO 35〜65%、CaO 10〜30%、MgO 10〜20%、TiO 12〜30%含有することを特徴とする請求項1又は2の誘電体材料用ガラス粉末。
  4. 請求項1〜3の何れかのガラス粉末を含むことを特徴とするガラスセラミック誘電体材料。
  5. さらにセラミック粉末を含むことを特徴とする請求項4のガラスセラミック誘電体材料。
  6. セラミック粉末が、0.1〜10GHzにおいて、誘電率が16以下、かつ誘電損失が10×10−4以下であることを特徴とする請求項5のガラスセラミック誘電体材料。
  7. 質量百分率でガラス粉末50〜100%、セラミック粉末0〜50%であることを特徴とする請求項5のガラスセラミック誘電体材料。
  8. 請求項4〜7の何れかのガラスセラミック誘電体材料を含むことを特徴とするグリーンシート。
  9. 質量百分率で、SiO 35〜65%、CaO 10〜30%、MgO 10〜20%、TiO 12〜30%含有することを特徴とする誘電体材料用ガラス粉末。
  10. 請求項9のガラス粉末を含むことを特徴とするガラスセラミック誘電体材料。
  11. さらにセラミック粉末を含むことを特徴とする請求項10のガラスセラミック誘電体材料。
  12. 請求項10又は11のガラスセラミック誘電体材料を含むことを特徴とするグリーンシート。
  13. 析出結晶として、ディオプサイド(CaMgSi)と、チタナイト(CaTi(SiO)O)が存在することを特徴とするガラスセラミック焼結体。
  14. ディオプサイド(CaMgSi)と、チタナイト(CaTi(SiO)O)が存在するガラスセラミック焼結体からなる誘電体層を有することを特徴とするマイクロ波用回路部品。
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