JP2003074312A - オイルスルータイププッシュロッド - Google Patents

オイルスルータイププッシュロッド

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 内燃機関の動弁用プッシュロッド製造時の溶
接工程において発生する溶接スパッター(熔塊)などの
エンジンオイルへの混入を防止し、動弁機構部品の摺動
部の耐摩耗性を向上させることができる新しい構造のオ
イルスルータイプのプッシュロッドを提供する。 【解決手段】 金属製パイプとオイルホールが貫設され
た金属製端金具とが溶接されて構成されたオイルスルー
タイプのプッシュロッドにおいて、 (1).前記金属製パイプが、少なくとも溶接部位の近接部
位の内壁面に、溶接時に発生する溶接スパッターを固定
するための低融点金属の被覆層を有するもので構成され
たこと、を特徴とするオイルスルータイププッシュロッ
ド。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関の動弁用
プッシュロッドに関する。更に詳しくは、本発明は、オ
イルスルー(oil−through)タイプの新しい
構造の内燃機関の動弁用プッシュロッドに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のプッシュロッドは、鋼管
材(パイプ)の一端又は両端の口周エッジに、端面形状
が凹形かまたは凸形の弧面に形成され、かつ、オイルホ
ールが貫設された金属製の端金具を電気抵抗溶接法等に
より溶接固着して製造されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記したように、オイ
ルスルータイプのプッシュロッドは、金属製パイプとオ
イルホールが貫設された金属製端金具とを溶接して製造
されるものであるが、その最大の問題点は、溶接時に必
然的に発生する溶接スパッター(熔塊)がパイプ内に飛
散し残留してしまう点、及び、このスパッターがオイル
スルータイプのプッシュロッドの構造上の理由によりそ
の内周面を洗浄しても十分な洗浄度を得ることが困難な
点にある。
【0004】ここで、溶接スパッター(熔塊)がパイプ
内に残留したプッシュロッドの欠点について説明する。
即ち、溶接スパッター(熔塊)がパイプ内に残留したオ
イルスルータイプのプッシュロッドをエンジンに組込ん
で使用した場合の欠点を、その使用態様から説明すると
次の通りである。 1).まず、エンジンが運転されると、タペットより下部
の端金具のオイルホールを通ってプッシュロッド内にエ
ンジンオイルが供給される。 2).供給されたエンジンオイルは、プッシュロッドのパ
イプ内を通り上部の端金具のオイルホールから噴出し
て、ロッカーアーム、給排気通路を開閉するための給排
気弁などを潤滑する。 3).このとき、エンジンオイル中に溶接スパッター(熔
塊)が混入しているため、各摺動部分に溶接スパッター
が混入したオイルが供給されることになる。 4).このため、ロッカーアームや給排気弁などの各摺動
面に溶接スパッターが噛み込み摩耗を促進し、エンジン
寿命の短命化を招来する。
【0005】本発明は、前記した従来のオイルスルータ
イプのプッシュロッドの欠点を解消しようとするもので
ある。即ち、本発明は、金属製パイプと金属製端金具を
プロジェクション溶接などにより溶接してオイルスルー
タイプのプッシュロッドを製造する場合、溶接時に発生
する溶接スパッター(熔塊)をエンジンオイルの流通す
るパイプ内に残留させないように構成した新しい構造の
オイルスルータイプのプッシュロッドを提供しようとす
るものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明を概説すれば、本
発明の第一の発明は、金属製パイプとオイルホールが貫
設された金属製端金具とが溶接されて構成されたオイル
スルータイプのプッシュロッドにおいて、 (1).前記金属製パイプが、少なくとも溶接部位の近接部
位の内壁面に、溶接時に発生する溶接スパッターを固定
するための低融点金属の被覆層を有するもので構成され
たこと、を特徴とするオイルスルータイププッシュロッ
ドに関するものである。
【0007】また、本発明の第二の発明は、金属製パイ
プとオイルホールが貫設された金属製端金具とが溶接さ
れて構成されたオイルスルータイプのプッシュロッドに
おいて、 (1).前記金属製パイプが、少なくとも溶接部位の近接部
位の内壁面に、溶接時に発生する溶接スパッターを固定
するための低融点金属の被覆層を有するもので構成さ
れ、かつ、 (2).前記金属製端金具が、前記金属製パイプとの溶接部
位側の内壁面の少なくとも一部に、溶接的に発生する溶
接スパッターを固定するための低融点金属の被覆層を有
するもので構成されたこと、を特徴とするオイルスルー
タイププッシュロッドに関するものである。
【0008】以下、本発明の技術的構成及び実施態様に
ついて、図面を参照して詳しく説明する。なお、本発明
は図示のものに限定されないことはいうまでもないこと
である。
【0009】本発明の中核的な技術思想は、前記したよ
うに金属製パイプと金属製端金具とを溶接固定してオイ
ルスルータイプのプッシュロッドを製造するとき、必然
的に発生し動弁機構部品の摺動部の摩耗を促進する溶接
スパッター(熔塊)や溶接バリを、少なくとも金属製パ
イプの溶接部位の近接部位の内壁面に設けた低融点金属
層により確実に捕捉(捕獲)し、摺動部の耐摩耗特性を
向上させることにある。
【0010】このため、本発明においては、両部品(金
属製パイプと金属製端金具)の溶接時の高温、例えば1
500℃前後の高温で溶融した溶接スパッター(熔塊)
が冷却されながら接触しても溶融し、直後の凝固してス
パッターを捕えることができる低融点金属の金属層を少
なくとも金属製パイプの溶接部位の近接部位の内壁面に
配設するという技術的構成を採用するものである。これ
により、溶接時に発生する溶接スパッター(熔塊)を確
実に捕捉(捕獲)し、摺動部の耐摩耗性を格段に向上さ
せることができる。
【0011】本発明において、前記低融点金属の金属層
は、例えば錫、インジウム、銅、及びこれらの基合金か
ら選択すればよい。前記金属層の形成手段としては、め
っきなど所望の方式を採用すればよい。以下、本発明の
具体的構成を図面を参照に説明する。
【0012】図1〜図2は、本発明の第1実施態様のオ
イルスルータイプのプッシュロッド(A)を説明する図
である。図1は、外観斜視図、図2は要部(頂部)断面
図を示している。
【0013】本発明の第1実施態様のオイルスルータイ
プのプッシュロッド(A)は、図1〜図2に示されるよ
うに、金属製パイプ(1)とオイルホール(22)が貫
設された端金具本体(21)から成る金属製端金具
(2)が、プロジェクション溶接により溶接固着されて
構成される。本発明の第1実施態様のオイルスルータイ
プのプッシュロッド(A)において、金属製端金具
(2)は、その端金具本体(21)の上部に球状凹部
(211)、下部に金属製パイプ(1)の内部に挿入さ
れる所望大きさの棒状凸部(212)、を有するもので
構成される。なお、オイルホール(22)は、端金具本
体(21)の前記球状凹部部(211)から棒状凸部
(212)へ向けて貫設され、パイプ(1)の内部空間
に連通するように構成される。
【0014】本発明の第1実施態様のオイルスルータイ
プのプッシュロッド(A)において、最大の特徴点とす
る点は、図2に示されるように金属製パイプ(1)の内
壁面に低融点金属のめっき層(3)が配設されている点
にある。なお、図2は、金属製パイプ(1)と金属製端
金具(2)とのプロジェクション溶接時に発生した溶接
スパッタ(4)が、溶接時の高温により溶融した低融点
金属のめっき層(3)に捕捉(捕獲)されている状態が
示されている。
【0015】本発明において、前記低融点金属のめっき
層(3)を有する金属パイプ(1)は、所望の方法によ
り製造すればよい。例えば、以下に示す方法により製造
すればよい。 (イ).パイプ材を利用し、当該パイプ材の少なくとも
金属製端金具(2)との溶接部位の近接部位の内壁面
に、低融点金属の被覆層(3)を形成する。 (ロ).予め低融点金属が被覆された帯綱(フープ材)
を円筒状に成形するとともに電縫溶接により造管する。
なお、本発明において、金属製端金具(2)に対する低
融点金属の被覆層の形成方法についても所望方法により
形成すればよい。
【0016】図3は、本発明の第2実施態様のオイルス
ルータイプのプッシュロッド(A)の要部断面図であ
る。なお、図3は、前記図2(第1実施態様)に対応す
る図である。
【0017】本発明の第2実施態様のオイルスルータイ
プのプッシュロッド(A)において、その特徴とする点
は、 1).金属製パイプ(1)の側に低融点金属のめっき層
(3)を有するとともに、かつ、 2).金属製端金具(2)の側にも低融点金属のめっき層
(31)を有している点にある。
【0018】本発明の第2実施態様のオイルスルータイ
プのプッシュロッド(A)は、前記第1実施態様と同様
に確実に溶接スパッター(熔塊)を捕捉(捕獲)するこ
とができる。
【0019】図4は、本発明の第3実施態様のオイルス
ルータイプのプッシュロッド(A)の要部断面図であ
る。なお、図3は、前記図2(第1実施態様)に対応す
る図である。
【0020】本発明の第3実施態様のオイルスルータイ
プのプッシュロッド(A)は、前記第1実施態様のもの
(図2参照)と比較して、金属製端金具(2)として球
状凸部(213)を有しているものを採用している点が
相違し、その他の点は前記第1実施態様のもの(図2参
照)と実質的に同一である。本発明の第3実施態様のオ
イルスルータイプのプッシュロッド(A)は、前記第1
実施態様と同様に確実に溶接スパッター(熔塊)を捕捉
(捕獲)することができる。
【0021】(実施例1〜6)//(比較例1) 金属管の内周面に以下の金属めっきをし、この金属管と
オイルホールが貫設された金属製端金具とをプロジェク
ション溶接してプッシュロッドを制作した。そして、以
下の清浄度測定方法により清浄度を測定した。前記のよ
うに製作したプッシュロッドの中空部に清浄な測定液
(ドライソルベント)100mlを流し込み、中空部を
洗い出し、異物(溶接スパッター)を3.0μmのフィ
ルターで採取した。次に、フィルターに採取された異物
の大きさを顕微鏡にて測定した。
【0022】(実施例1):切断した金属管の内周面に
電気錫めっきをし、この金属管とオイルホールが貫設さ
れた金属端金具をプロジェクション溶接して5本のプッ
シュロッドを製作した。このものの清浄度測定におい
て、100μmを超える金属片は検出されなかった。 (実施例2):切断した金属管の内周面に電気錫−亜鉛
めっきをし、この金属管とオイルホールが貫設された金
属端金具をプロジェクション溶接して5本のプッシュロ
ッドを製作した。このものの清浄度測定において、10
0μmを超える金属片は検出されなかった。 (実施例3):切断した金属管の内周面に電気インジュ
ウムめっきをし、この金属管とオイルホールが貫設され
た金属端金具をプロジェクション溶接して5本のプッシ
ュロッドを製作した。このものの清浄度測定において、
100μmを超える金属片は検出されなかった。 (実施例4):切断した金属管の内周面に電気銅めっき
をし、この金属管とオイルホールが貫設された金属端金
具をプロジェクション溶接して5本のプッシュロッドを
製作した。このものの清浄度測定において、100μm
を超える金属片は検出されなかった。 (実施例5):切断した金属管の内周面に電気錫−銅め
っきをし、この金属管とオイルホールが貫設された金属
端金具をプロジェクション溶接して5本のプッシュロッ
ドを製作した。このものの清浄度測定において、100
μmを超える金属片は検出されなかった。 (実施例6):錫めっきをした帯綱(フープ材)をめっ
き面が内周面となるように造管・電縫溶接して金属管と
し、これを切断した管とオイルホールが貫設された金属
製端金具とをプロジェクション溶接して5本のプッシュ
ロッドを製作した。このものの清浄度測定において、1
00μmを超える金属片は検出されなかった。 (比較例1):内周面にめっきをしていない金属管とオ
イルホールが貫設された金属製端金具とをプロジェクシ
ョン溶接して5本のプッシュロッドを製作した。このも
のの清浄度測定において、最大854μm、100μm
を超える金属片が合計17個検出された。
【0023】
【発明の効果】本発明のオイルスルータイプの内燃機関
の動弁用プッシュロッドは、次に示すような優れた作用
効果を有する。 1).金属製パイプと金属製端金具とをプロジェクション
溶接する際に発生する溶接スパッター(熔塊)などは、
予め少なくとも金属製パイプの内壁面に比較的低い温度
域で溶融する低融点金属を被覆してあるため、プロジェ
クション溶融時に飛散する溶接スパッターなどを前記低
融点の金属層の溶融層に確実に固定することができる。
このため、エンジンオイルに溶接スパッターが混入して
エンジンの摺動部分に噛み込み、摩耗させてエンジンの
寿命を短くさせることがなくなる。 2).本発明において、金属製パイプのほかに金属製端金
具の金属製パイプとの溶接部側の一部に予め低融点金属
の被覆層を形成しておくと、溶接スパッターの固定(捕
捉、捕獲)において更に優れた結果を得ることができ
る。 3).金属製パイプとして、予め低溶融点金属が被覆され
た帯綱(フープ材)を出発材料としこれを円筒状に成形
し、更に電縫溶接して造管したものは、金属製パイプの
内壁面に事後的に低融点金属層を設けるものと比較して
生産性、経済性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のオイルスルータイプのプッシュロッ
ド(A)の外観図(斜視図)である。
【図2】 本発明の第1実施態様のオイルスルータイプ
のプッシュロッド(A)の要部断面図である。
【図3】 本発明の第2実施態様のオイルスルータイプ
のプッシュロッド(A)の要部断面図である。
【図4】 本発明の第3実施態様のオイルスルータイプ
のプッシュロッド(A)の要部断面図である。
【符号の説明】
A ………… プッシュロッド 1 ………… 金属製パイプ 2 ………… 金属製端金具 21 ………… 端金具本体 211 ………… 球状凹部 212 ………… 棒状凸部 213 ………… 球状凸部 22 ………… オイルホール 3 ………… 低融点金属めっき層(金属製パイプ
側) 31 ………… 低融点金属めっき層(金属製端金具
側) 4 ………… 溶接スパッター(熔塊)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3G016 AA05 AA19 BA48 BB08 CA12 CA17 CA32 CA43 EA01 EA07 FA30 FA31 GA02

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属製パイプとオイルホールが貫設され
    た金属製端金具とが溶接されて構成されたオイルスルー
    タイプのプッシュロッドにおいて、 (1).前記金属製パイプが、少なくとも溶接部位の近接部
    位の内壁面に、溶接時に発生する溶接スパッターを固定
    するための低融点金属の被覆層を有するもので構成され
    たこと、を特徴とするオイルスルータイププッシュロッ
    ド。
  2. 【請求項2】 金属製パイプとオイルホールが貫設され
    た金属製端金具とが溶接されて構成されたオイルスルー
    タイプのプッシュロッドにおいて、 (1).前記金属製パイプが、少なくとも溶接部位の近接部
    位の内壁面に、溶接時に発生する溶接スパッターを固定
    するための低融点金属の被覆層を有するもので構成さ
    れ、かつ、 (2).前記金属製端金具が、前記金属製パイプとの溶接部
    位側の内壁面の少なくとも一部に、溶接的に発生する溶
    接スパッターを固定するための低融点金属の被覆層を有
    するもので構成されたこと、を特徴とするオイルスルー
    タイププッシュロッド。
  3. 【請求項3】 低融点金属が、錫、インジウム、銅、及
    びこれらの基合金から選ばれたものである請求項1また
    は2に記載のオイルスルータイププッシュロッド。
  4. 【請求項4】 金属製パイプが、パイプ材を利用し、当
    該パイプ材の少なくとも溶接部位の近接部位の内壁面
    に、溶接時に生成する溶接スパッタを固定するための低
    融点金属の被覆層を形成したものである請求項1または
    2に記載のオイルスルータイププッシュロッド。
  5. 【請求項5】 金属製パイプが、予め低融点金属が被覆
    された帯鋼を円筒状に成形するとともに電縫溶接により
    造管したものである請求項1または2に記載のオイルス
    ルータイププッシュロッド。
  6. 【請求項6】 金属製端金具が、予め金属製パイプとの
    溶接部位側の内壁面の少なくとも一部に低融点金属が被
    覆されたものである請求項2に記載のオイルスルータイ
    ププッシュロッド。
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