JP2003064474A - 蒸着膜厚測定方法および装置 - Google Patents

蒸着膜厚測定方法および装置

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JP2003064474A
JP2003064474A JP2001252699A JP2001252699A JP2003064474A JP 2003064474 A JP2003064474 A JP 2003064474A JP 2001252699 A JP2001252699 A JP 2001252699A JP 2001252699 A JP2001252699 A JP 2001252699A JP 2003064474 A JP2003064474 A JP 2003064474A
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ray
rays
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Tomomichi Nihei
知倫 二瓶
Yoshiro Ishii
芳朗 石井
Koji Kurihara
好治 栗原
Tadashi Uko
忠 宇高
Yoshihide Nakajima
佳秀 中嶋
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OURS TEX KK
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高速に移動するフィルム上に蒸着された極薄
の蒸着膜の膜厚を、高感度かつ高精度に多元素を同時に
長時間連続で測定することが可能なオンライン測定方法
を提供する。 【解決手段】 巻き取り式フィルムコーティング装置に
よってフィルム上に蒸着された単層膜あるいは多層膜の
蒸着膜面に、蒸着直後に該装置内で一次X線を照射し、
該蒸着膜から発生した二次X線強度を測定してその膜厚
を求める方法において、二次X線を検出する方式が、半
導体検出器とマルチチャンネルアナライザーおよび計数
回路で構成されるエネルギー分散方式である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、蒸着膜厚測定方法
および装置に関し、特に、真空槽内を走行中のフィルム
上に蒸着された蒸着膜の膜厚を蒸着直後にオンラインで
高精度に測定する方法、及びそのための小型かつ安価な
真空測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】真空槽内を走行する高分子フィルム上に
蒸着された単層膜あるいは多層膜の膜厚をオンラインで
測定する方法としては、例えば、水晶振動子法や電磁
法、赤外線吸収法、紫外線吸収法、X線法などがある。
【0003】水晶振動子法は、水晶振動子に蒸着膜が付
着することによって生じる振動周波数変化を測定するこ
とによって膜厚を求めるものである。この方法では、蒸
着膜が複数成分で構成される場合、検出した信号を各々
の成分情報に分解することが困難であり、その結果、蒸
着膜の化学組成比および膜厚の測定精度が著しく低下す
るという問題があった。さらにこの方法では、蒸着領域
近傍で膜厚を測定するため、フィルム上と水晶振動子へ
の蒸着量に相違がある場合、それを補正することが困難
であった。
【0004】一方、電磁法や赤外線吸収法、紫外線吸収
法は、電磁強度あるいは赤外線吸収量、紫外線吸収量か
ら膜厚を求める方法であり、フィルム上の蒸着膜の膜厚
を直接測定することが可能である。しかし、測定条件の
制約が多く、フィルムの材質や厚み、蒸着膜の膜厚など
の条件によっては検出感度が著しく低下する問題があっ
た。
【0005】このような問題を解決する手段としては、
例えば、特開平4−331308号公報にX線を用いた
箔厚み連続測定装置が記載されている。このX線法は、
X線管球から発生した一次X線を箔に照射して透過さ
せ、発生した二次X線のうち目的成分特有の波長を持つ
いわゆる蛍光X線強度を測定し、標準試料との相対的な
比較から蒸着膜厚を求める方法である。
【0006】即ち、X線管球を構成する対陰極物質に、
高電圧により加速された熱電子線を照射すると一次X線
が発生し、さらにこの一次X線をフィルム上の蒸着膜に
照射すると、この蒸着膜から二次X線が発生する。この
二次X線には、一次X線によって励起された蒸着膜を構
成する成分固有のX線いわゆる蛍光X線、並びにレーリ
ー散乱線やコンプトン散乱線が含まれている。後者の散
乱X線は、一次X線が蒸着膜やフィルム中の原子に衝突
して散乱されたもので、衝突によってエネルギーを失わ
ず散乱されたものがレーリー散乱であり、逆にエネルギ
ーを失って散乱されたものがコンプトン散乱線である。
【0007】蛍光X線強度の測定は、測定条件の制約が
少ないため、複数成分で構成される蒸着膜の化学組成比
や膜厚および多層膜の各膜厚を測定することが可能であ
るといった利点を有する。
【0008】蛍光X線の測定方式は、波長分散方式、エ
ネルギー分散方式および非分散方式に大別される。これ
らについては、文献「エネルギー分散型X線分析」(合
志陽一、佐藤公隆編、学会出版センター、P.3)を参
照できる。
【0009】波長分散方式および非分散方式は、高出力
を有する大型のX線管球の他、目的成分数に応じた分光
結晶やフィルターおよび検出器が必要となり、その結
果、測定装置設備が大規模なものとなる。特に、高感度
で多成分を同時に測定する場合、例えば、波長分散方式
X線法では、高出力を有する大型のX線管球の他、分光
のための分光結晶および検出器が目的成分数に応じて必
要となる。その結果、測定設備全体が大規模となり、設
備投資に要する費用や設置スペースの問題などが生じ
る。
【0010】また、発生する蛍光X線強度が、基本的に
測定対象からの距離の二乗に反比例するため、様々な要
因によって起こる幾何学的な位置ズレが大きな誤差をも
たらすといった問題があった。例えば、巻き取り式フィ
ルムコーティング装置の場合、測定対象となるフィルム
上の蒸着膜が高速でロール間を移動するため、フィルム
のばたつきや歪みなどによって測定器と蒸着膜間に幾何
学的な位置ズレが生じ測定精度が著しく低下する。この
ため、一般的に測定は、フィルムがロールを通過する
際、すなわちロールに支えられている位置で行われる。
しかし、この位置で測定を行うと、ロールに由来する蛍
光X線や散乱X線が検出器に入射されるためバックグラ
ウンド強度が増加し、目的元素のシグナル強度とバック
グラウンド強度比いわゆるS/B比が低下し、特に、極
薄の膜厚を測定する際、測定精度が著しく低下する問題
があった。
【0011】これに対し、エネルギー分散方式は、半導
体検出器を用い、検出器自体で二次X線が選別されるた
め、分光結晶やフィルターが不要となる。さらに、X線
管球と検出器を蒸着膜の極近傍に配置することが可能で
あるため、X線管球も小型でよい。その結果、装置全体
を小型化することが可能となる。
【0012】一方、自動めっきラインの分野において、
測定器と測定面との位置関係による変動を考慮してめっ
き付着量を求める方法が提案されている。例えば、特開
昭60−133308号公報には、メッキ鋼板に照射さ
れた放射線の反射蛍光X線に関し、複数の距離センサー
を用いて測定器と測定面との距離および傾斜角度を測定
し、これらの値と蛍光X線強度とから付着量を求める方
法が記載されている。
【0013】この方法では、蛍光X線強度が測定される
のと同一時点の距離と傾斜角度が得られなければならな
い。しかし、距離センサーと蛍光X線検出器との間には
時定数の相違があるため、同一時点での各々の測定位置
を得ることが困難であり、高精度の付着量を得ることが
困難であった。
【0014】この問題を解決するため、特開平08−2
83926号公報には、距離センサーを用いて測定面と
の距離を測定し、測定器を機械的に制御することで測定
器と測定面との距離を一定に保つような定距離方式の装
置が記載されている。この方法によれば、距離変動や角
度変動の影響は解消されるが、巻き取り式フィルムコー
ティング装置では、高速でフィルムが移動するため距離
制御装置の応答性が課題となる。
【0015】さらに、X線法共通の問題が、長時間連続
的に測定する際に生じる一次X線強度の経時変化であ
る。この問題を解決するには適宜校正を行う必要がある
が、巻き取り式フィルムコーティング装置では、その都
度フィルムの搬送を停止させる必要があり、作業性が著
しく低下する問題があった。
【0016】以上のように、小型、安価、高精度測定、
多成分同時測定および長時間連続測定が可能といった条
件の全てを満たすことが可能なオンライン測定方法およ
び装置は、現状では提案されていない。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高速に移動
するフィルム上に蒸着された極薄の蒸着膜の膜厚を、高
感度かつ高精度に多元素を同時に長時間連続で測定する
ことが可能なオンライン測定方法を提供することを目的
とする。
【0018】更に、本発明は、上記方法を実施するため
の小型で安価な装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決するため
に、本発明が提供する蒸着膜厚測定方法および装置は、
巻き取り式フィルムコーティング装置によってフィルム
上に蒸着された単層膜あるいは多層膜の蒸着膜面に、蒸
着直後に該装置内で一次X線を照射し、該蒸着膜から発
生した二次X線強度を測定してその膜厚を求める方法に
おいて、二次X線を検出する方式が、半導体検出器とマ
ルチチャンネルアナライザーおよび計数回路で構成され
るエネルギー分散方式であり、さらにX線管球と半導体
検出器を蒸着膜の極近傍に配置し、該蒸着膜から発生し
た二次X線強度を測定する際に、該蒸着膜を構成する物
質由来の蛍光X線を測定すると共に、同時に検出される
X線管球の対陰極物質由来の散乱X線、例えばLα線
や、Lβ線の強度を測定し、該蛍光X線強度を該散乱X
線強度で除したX線強度の比を求め、さらに膜厚が既知
の標準試料についても同様の強度比を求めてその相対的
な比較から、例えば式X=(Y−b)/a(ここで、
X:膜厚(m)、Y:実測した強度比、a:標準試料を
用いて作成した検量線の傾き、b:検量線の切片)によ
って該蒸着膜の膜厚を算出することを特徴とするもので
ある。また、この際用いる散乱X線はレーリー散乱線で
あり、さらに該散乱X線がX線管球を構成する対陰極物
質のL系列のX線であることが好ましく、特に、測定成
分が銅およびニッケル、クロム、コバルトである時は、
X線管球の対陰極物質がモリブデン、銀、タングステ
ン、タンタルあるいはレニウムであることが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】X線管球を構成する対陰極物質
に、高電圧により加速された熱電子線を照射したときに
発生する一次X線をフィルム上の蒸着膜に照射すると、
蒸着膜から発生する二次X線の強度と蒸着膜の膜厚には
相関があり、これを利用して蒸着膜の膜厚を測定でき
る。この際、該二次X線には、一次X線によって励起さ
れた蒸着膜を構成する成分固有のX線いわゆる蛍光X線
のほかに、レーリー散乱線やコンプトン散乱線が含まれ
ている。散乱X線は、一次X線が蒸着膜やフィルム中の
原子に衝突して散乱されたもので、衝突によってエネル
ギーを失わず散乱されたものがレーリー散乱であり、逆
にエネルギーを失って散乱されたものがコンプトン散乱
線である。
【0021】本発明者は、X線法による蒸着膜の膜厚測
定において、次の二点に着目し、本発明に至った。
【0022】第一に、二次X線を検出する方式に、半導
体検出器とマルチチャンネルアナライザーおよび計数回
路で構成されるエネルギー分散方式を用いる点である。
これによれば、分光結晶やフィルターを設置せずに、多
元素を同時に測定することが可能であるために、小型で
安価な測定設備で多成分同時測定が可能である。さら
に、低出力で小型のX線管球を用いても、蒸着膜の極近
傍にX線管球および検出器を配置することにより、高感
度測定が可能である。
【0023】第二に、発生した二次X線に含まれる散乱
X線が、幾何学的な位置ズレによる誤差を補正するに有
効であるという点である。つまり、二次X線強度は、X
線管球や検出器などの測定器と蒸着膜間の距離変動や角
度変動などの幾何学的な位置ズレに依存する特徴を有す
るが、レーリー散乱線およびコンプトン散乱線強度変動
は、蒸着膜の膜厚には依存せず、位置ズレおよび経時変
化による変動に依存する。従って、この散乱X線強度と
目的成分の蛍光X線強度を測定し、膜厚の算出に各X線
の強度比を用いることによって、位置ズレの補正が可能
となる。
【0024】本発明における蒸着膜及びその膜厚測定方
法および装置の詳細は次の通りである。
【0025】まず、本発明で測定対象となる蒸着膜は、
チタン、クロム、ニッケル、コバルト、バナジウム、タ
ングステン、ニオブ、タンタルなどの金属および酸化
物、窒化物、炭化物、硼化物であり、ロール状の長尺な
フィルムを各種ロールを介して巻き出し巻き取りなが
ら、フィルム上に真空蒸着法やイオンプレーティング
法、スパッタ法、プラズマCVD法などによって連続的
に蒸着されたものであって、フィルムの種類や厚みに特
に制約はなく、さらにフィルムをプラズマ処理やコロナ
放電処理などによって表面改質処理を施しても特に問題
ない。
【0026】本発明で使用する方式は、エネルギー分散
方式が好ましい。前述のように、エネルギー分散方式
は、半導体検出器を用い、検出器自体で二次X線が選別
されるため、分光結晶やフィルターが不要となる。さら
に、X線管球と検出器を蒸着膜の極近傍に配置すること
が可能であるため、X線管球も小型でよい。その結果、
エネルギー分散方式の装置全体を小型化することが可能
となる。
【0027】エネルギー分散方式に用いる半導体検出器
に特に制約はないが、分解能が高いSDD(Silicon Dr
ift Detector)検出器を用いるとより高精度の測定が可
能となるため好ましい。
【0028】X線管球を構成する対陰極物質は、測定成
分に対して励起効率が高いものを選択する必要があり、
特に、その測定成分が銅およびニッケル、クロム、コバ
ルトの際は、モリブデン、銀、タングステン、タンタル
あるいはレニウムのいずれからなる対陰極物質を用いる
ことが励起効率が高く好ましい。
【0029】次に、一次X線の照射位置について図面で
説明する。図1は、X線管球1および検出器2、フィル
ム3、ロール4、遮蔽板5の配置図である。
【0030】X線管球1と検出器2は、フィルム3の極
近傍で斜方向に配置させる。
【0031】X線管球1から発生した一次X線の照射位
置は、フィルム3の裏面がロール4などの物体に接触し
ていない部位が好ましい。これは、フィルムなどの物体
に接触した部位で測定を行うと、物体に由来する蛍光X
線や散乱線によってバックグラウンドの上昇を招き、そ
の結果、S/B比が低下して測定精度が悪化するためで
ある。
【0032】遮蔽板5は、X線の広がりを防止するため
のもので、フィルム裏面から30mm程度離した部分に
配置することが好ましい。
【0033】X線の照射は、基本的にはフィルム上の蒸
着膜面側から行うことが好ましいが、装置構造上の制約
で困難な場合は、フィルム面側から測定することも可能
である。ただし、この場合、フィルムの影響によってバ
ックグラウンドの上昇を招き測定精度が若干悪くなる。
【0034】フィルム上の蒸着膜に一次X線を照射する
と、上述したように蒸着膜を構成する元素の蛍光X線と
共に、レーリー散乱線およびコンプトン散乱線が検出さ
れる。
【0035】蛍光X線は蒸着膜の膜厚に依存するため、
あらかじめマイクロメーター法や重量法で膜厚を求めた
標準試料の蛍光X線強度を求めておけば、その強度比か
らフィルム上の蒸着膜の膜厚を求めることが可能とな
る。しかし、測定器と蒸着膜間にフィルムのばたつきや
歪み等によって幾何学的な位置ズレが生じた場合や一次
X線強度に経時変化が発生した場合、蛍光X線強度変動
には、膜厚変動と位置ズレによる変動および一次X線の
経時変化による変動が含まれる。
【0036】一方、レーリー散乱線およびコンプトン散
乱線強度変動は、蒸着膜の膜厚には依存せず、位置ズレ
および経時変化による変動に依存する。したがって、蛍
光X線強度を測定する際に、同時に測定されるレーリー
散乱線やコンプトン散乱線の散乱線強度を測定し、その
強度で測定元素の蛍光X線強度を除した強度比を常時測
定すれば、これら位置ズレや経時変化に伴う強度変化の
影響は完全に除去されることとなる。
【0037】標準試料についても同様の操作を行い、こ
れによって作成した検量線を用いれば、これら誤差が含
まれない真の膜厚を求めることが可能である。検量線の
例を、図2〜4に示す。これが幾何学的な位置ズレによ
る変動と一次X線の経時変化による変動を補正する原理
であり、この方法によれば、定期的な校正など操作も不
必要となる。
【0038】測定する散乱線は、基本的にレーリー散乱
線およびコンプトン散乱線のいずれでも問題ないが、コ
ンプトン散乱線は、一次X線が物質に照射された際、そ
のエネルギーの一部を失って発生するX線であるため、
フィルムの厚さ変動等の影響を大きく受ける性質を有
し、さらにその強度もレーリー散乱線に比較して低くな
る傾向があるため、より高精度の測定を行うためにはレ
ーリー散乱線を用いることが好ましい。
【0039】レーリー散乱線には、対陰極物質の性質に
応じてKα線やKβ線、Lα線、Lβ線など多くのX線
がある。ここで、K系列のX線は、フィルムに吸収され
ることなくほとんど透過してしまうため、得られるレー
リー散乱線強度も著しく低い。一方、L系列のX線は、
フィルムによる吸収が比較的高く、その結果、K系列の
レーリー散乱線強度に比較して10〜100倍以上のX
線強度を得ることができ、より高精度の測定が可能とな
る。したがって、対陰極物質にモリブデン、銀、タング
ステン、タンタルあるいはレニウムを用いる場合は、そ
れらに由来するL系列のレーリー散乱線を補正に用いる
ことが好ましい。
【0040】なお、本発明において多層構造の蒸着膜を
測定する際、上層の膜厚が厚いと下層から発生した蛍光
X線が吸収され膜厚が低値を示す可能性がある。この場
合は、標準試料に上層の膜厚を一定としたものを用いる
か、上層の元素と膜厚から下層からの蛍光X線の吸収率
を求め補正するなどの周知の方法によって補正を行えば
問題ない。
【0041】以下に実施例を挙げて本発明を説明する。
【0042】(実施例1)巻き取り式フィルムコーティ
ング装置の真空槽内部で、毎分5mの速度でロール間を
走行する厚み25μmのポリイミドフィルム上に、ニッ
ケルおよびクロムの混合膜をスパッタ法で蒸着した後、
さらにその上部に同法にて銅を蒸着した。
【0043】該巻き取り式フィルムコーティング装置の
真空槽内部に、対陰極物質としてタングステンを装備し
たX線管球(Varian製VF-50)とSDD検出器(KETEK社
製)を図1のように設置した。この時、フィルムとX線
管球およびSDD検出器間の距離はそれぞれ約3mmに
なるように調整した。真空槽内部は、約0.001Pa
の真空度に設置し、検出された信号は、マルチャネルア
ナライザー(アワーズテック(株)製)を用いて波高分
析し、デジタルシグナルプロセッサー(アワーズテック
(株)製)を用いてカウント数を測定した。
【0044】一次X線の出力は、管電圧と管電流をそれ
ぞれ40kV、1mAとした40Wとし、発生した連続
X線をキャピラリを通して、フィルム裏面が物体に接触
していない部位の蒸着膜表面に照射した。測定は、銅お
よびニッケル、クロムの蛍光X線であるKα線とレーリ
ー散乱線であるタングステンのLα線について行い、各
蛍光X線強度をレーリー散乱線で除した強度比を常時モ
ニターした。また、その際の各X線の測定時間は100
秒積分とした。
【0045】膜厚の算出は、あらかじめマイクロメータ
ー法によって膜厚を求めた標準試料の蛍光X線強度と散
乱線強度の比を測定して検量線(図2〜4に示す)を作
成し、その検量線を用いて算出した。なお、銅のKα線
には、タングステンのLβ線のエスケープピークとLα
線のコンプトン散乱線が重なり、さらにニッケルのKα
線には、タングステンのLL線が重なるため、重なり補
正、すなわち、タングステンのLβ線強度からタングス
テンのLL線強度を推定し、その強度をニッケルのKα
線強度から差し引くことによってその影響を補正した。
【0046】この様な方法で測定した試料1〜4で得ら
れた各蒸着膜の膜厚とその際の測定精度を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】(実施例2)対陰極物質をモリブデンと
し、レーリー散乱線にモリブデンのLα線を用いた以外
は、実施例1と同様の方法で測定を行った。ただし、モ
リブデンを対陰極物質とした場合は、各目的元素の測定
線への重なりは認められなかったため重なり補正は行わ
なかった。
【0049】試料5〜8で得られた各蒸着膜の膜厚とそ
の際の測定精度を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】(実施例3)ニッケルおよびクロムの混合
膜をコバルトおよびクロムの混合膜とした以外は、実施
例2と同様の方法で測定を行った。
【0052】試料9〜12で得られた各蒸着膜の膜厚と
その際の測定精度を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】(実施例4)一次X線を連続で120時間
照射した後、実施例1で測定した試料A〜Dを巻き取り
式フィルムコーティング装置に取り付け、蒸着操作を行
わずに蒸着膜の膜厚測定のみを実施例1と同様の方法で
行った。
【0055】試料13〜16で得られた各蒸着膜の膜厚
とその際の測定精度を表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】その結果、実施例1とほぼ同様の結果が得
られ、長時間連続測定が可能であることが確認された。
【0058】次に本発明の効果を確認するために行った
比較例を示す。
【0059】(比較例1)実施例1で測定した試料1〜
4を巻き取り式フィルムコーティング装置に取り付け、
新たな蒸着操作を行わずに、そのまま蒸着膜の膜厚を実
施例1と同様の方法で測定した。但し、レーリー散乱線
を補正に使用しなかった。
【0060】試料1〜4で得られた各蒸着膜の膜厚とそ
の際の測定精度を表5に示す。
【0061】
【表5】
【0062】(比較例2)実施例2で測定した試料5〜
8を巻き取り式フィルムコーティング装置に取り付け、
蒸着操作を行わずに、そのまま蒸着膜の膜厚を実施例2
と同様の方法で測定した。但し、レーリー散乱線を補正
に使用しなかった。
【0063】試料5〜8で得られた各蒸着膜の膜厚とそ
の際の測定精度を表6に示す。
【0064】
【表6】
【0065】(比較例3)実施例3で測定した試料9〜
12を巻き取り式フィルムコーティング装置に取り付
け、蒸着操作を行わずに蒸着膜の膜厚をレーリー散乱線
を補正に使用せず測定した以外は、実施例3と同様の方
法で行った。
【0066】試料9〜12で得られた各蒸着膜の膜厚と
その際の測定精度を表7に示す。
【0067】
【表7】
【0068】比較例で得られた各蒸着膜の測定精度は著
しく悪く、この結果から本発明の有効性を確認できた。
【0069】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば走行中の
フィルム表面に蒸着された蒸着膜の膜厚を、小型で安価
な測定設備で、高感度および高精度に多元素を同時にオ
ンラインで連続的に測定することが可能な測定方法およ
び装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 X線法膜厚測定装置のX線管球、検出器、フ
ィルム、ロール、遮蔽板の位置関係を説明するための配
置図である。
【図2】 Niの検量線を示すグラフである。
【図3】 Crの検量線を示すグラフである。
【図4】 Cuの検量線を示すグラフである。
【符号の説明】
1 X線管球 2 検出器 3 フィルム 4 ロール 5 遮蔽板
フロントページの続き (72)発明者 石井 芳朗 千葉県市川市中国分3−18−5 住友金属 鉱山株式会社中央研究所内 (72)発明者 栗原 好治 千葉県市川市中国分3−18−5 住友金属 鉱山株式会社中央研究所内 (72)発明者 宇高 忠 大阪府高槻市玉川4−3−4 (72)発明者 中嶋 佳秀 大阪府高槻市天王寺区真法院町23−20 Fターム(参考) 2F067 AA27 BB11 CC08 EE02 EE05 HH04 JJ03 KK01 LL06 PP16 RR02 RR03 RR12 RR24 4K029 AA11 AA25 BA06 BA07 BA08 BA12 BB02 EA00 EA01

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 巻き取り式フィルムコーティング装置に
    よってフィルム上に蒸着された単層膜あるいは多層膜の
    蒸着膜面に、蒸着直後に該装置内で連続的あるいは断続
    的に一次X線を照射し、該蒸着膜から発生した二次X線
    強度を測定してその膜厚を求める方法において、二次X
    線を検出する方式が、半導体検出器とマルチチャンネル
    アナライザーおよび計数回路で構成されるエネルギー分
    散方式であることを特徴とする蒸着膜厚測定方法。
  2. 【請求項2】 (a)蒸着膜の極近傍にX線管球と半導
    体検出器を配置する工程、(b)該蒸着膜から発生した
    二次X線強度を測定するに際し、該蒸着膜を構成する物
    質由来の蛍光X線を測定すると共に、同時に検出される
    X線管球の対陰極物質由来の散乱X線強度を測定する工
    程、(c)該蛍光X線強度を該散乱X線強度で除した強
    度比Xを求める工程、(d)膜厚が既知の標準試料の極
    近傍にX線管球と半導体検出器を配置する工程、(e)
    該標準試料から発生した二次X線強度を測定するに際
    し、該標準試料を構成する物質由来の蛍光X線を測定す
    ると共に、同時に検出されるX線管球の対陰極物質由来
    の散乱X線強度を測定する工程、(f)該蛍光X線強度
    を該散乱X線強度で除した強度比Yを求める工程、
    (g)強度比XおよびYの相対的な比較から該蒸着膜の
    膜厚を算出することを特徴とする請求項1記載の蒸着膜
    厚測定方法。
  3. 【請求項3】 散乱X線がレーリー散乱線であり、さら
    に該散乱X線がX線管球を構成する対陰極物質のL系列
    のX線であることを特徴とする請求項1又は2に記載の
    蒸着膜厚測定方法。
  4. 【請求項4】 測定成分が銅およびニッケル、クロム、
    コバルトであり、さらに対陰極物質がモリブデン、銀、
    タングステン、タンタルあるいはレニウムであることを
    特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蒸着膜厚測
    定方法。
  5. 【請求項5】 巻き取り式フィルムコーティング装置に
    よってフィルム上に蒸着された単層膜あるいは多層膜の
    蒸着膜面に、蒸着直後に該装置内で連続的あるいは断続
    的に一次X線を照射し、該蒸着膜から発生した二次X線
    強度を測定してその膜厚を求める装置において、二次X
    線を検出する方式が、半導体検出器とマルチチャンネル
    アナライザーおよび計数回路で構成されるエネルギー分
    散方式であることを特徴とする蒸着膜厚測定装置。
  6. 【請求項6】 測定対象の配置位置の極近傍に配置され
    たX線管球と半導体検出器と、測定対象から発生した二
    次X線のうち該測定対象を構成する物質由来の蛍光X線
    と前記X線管球の対陰極物質由来の散乱X線強度とを同
    時に測定する装置と、該蛍光X線強度を該散乱X線強度
    で除したX線強度の比を求める装置と、二種のX線強度
    の比を比較する装置とからなることを特徴とする請求項
    5記載の蒸着膜厚測定装置。
  7. 【請求項7】 散乱X線がレーリー散乱線であり、さら
    に該散乱X線がX線管球を構成する対陰極物質のL系列
    のX線であることを特徴とする請求項5又は6に記載の
    蒸着膜厚測定装置。
  8. 【請求項8】 測定成分が銅およびニッケル、クロム、
    コバルトであり、さらに対陰極物質がモリブデン、銀、
    タングステン、タンタルあるいはレニウムであることを
    特徴とする請求項5〜7に記載の蒸着膜厚測定装置。
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