JP2003052358A - 低重合度ε−ポリ−L−リジンを生産する菌株及びそれを用いた低重合度ε−ポリ−L−リジンの製造法 - Google Patents

低重合度ε−ポリ−L−リジンを生産する菌株及びそれを用いた低重合度ε−ポリ−L−リジンの製造法

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JP2003052358A
JP2003052358A JP2001242415A JP2001242415A JP2003052358A JP 2003052358 A JP2003052358 A JP 2003052358A JP 2001242415 A JP2001242415 A JP 2001242415A JP 2001242415 A JP2001242415 A JP 2001242415A JP 2003052358 A JP2003052358 A JP 2003052358A
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lysine
poly
polymerization
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Hideo Hirohara
日出男 広原
Munenori Takehara
宗範 竹原
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Chisso Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】低重合度ε−ポリ−L−リジンを生産する菌
株、および低重合度ε−ポリ−L−リジンの製造方法の
提供。 【解決手段】ストレプトマイセス・ラベンデュラエ(St
reptomyces lavendulae) USE-53株(FERM P-18305)
およびその変異株、およびそれら菌株を培養する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低重合度ε−ポリ
−L−リジンを生産する菌株及びそれを用いた低重合度
ε−ポリ−L−リジンを著量生産する低重合度ε−ポリ
−L−リジンの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】ε−ポリ−L−リジンは、L−リジンの
ε位のアミノ基が、隣り合うL−リジンのカルボン酸基
とアミド結合で結合した高分子化合物である。ε−ポリ
−L−リジンは、必須アミノ酸であるL−リジンのポリ
マーであるため、安全性が高く、また、カチオン含量が
高いので特異な物性を有する。したがってトイレタリー
用品、化粧品、飼料添加物、医薬、農薬、食品添加物、
電子材料等への利用が期待できる。特に、食品添加物の
分野では、天然物系の添加物として注目されている。
【0003】ε−ポリ−L−リジンの製造法としては、
ε−ポリ−L−リジンを生産する菌株を培地にて培養
し、得られた培養物からε−ポリ−L−リジンを採取す
る方法が知られている。このような方法に使用される菌
株としては、ストレプトマイセス・アルブラス・サブス
ピーシズ・リジノポリメラス(Streptomyces albulus su
bsp. lysinopolymerus) No.346-D株(微工研菌寄第3834
号、特公昭59-20359号公報、以下「No.346-D株」とい
う。)、No.346-D株のS−アミノエチル−L−システイ
ン耐性変異株である11011A-1株(微工研条寄第1109号、
特公平3-42070号公報)、
【0004】No.346-D株のプラスミド増幅変異株である
50833株(微工研条寄第1110号、特公平3-42075号公報、
特公平6-75501号公報)、高濃度のS−アミノエチル−
L−システインに対して耐性を有する、11011A-1株の変
異株であるB21021株(FERM BP-5926、特開平9-173057号
公報)、ストレプトマイセス・ノールセイ(Streptomyce
s noursei)に属する菌株(FERM P-9797、特開平1-18709
0号公報)ストレプトマイセスsp.SP-72株(FERM P-1681
0、特開2000-069988号公報)およびストレプトマイセス
sp.SP-66株(FERM P-17223、特開2001-017159号公報)
などが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
菌株を用いて生産したε−ポリ−L−リジンを食品添加
物として使用する際、使用量に応じて苦みが増す傾向が
あった。苦みを低減する方法としては、重合度が8〜2
0の範囲であるL−リジンの重合体を高い割合で含有す
る低重合度のε−ポリ−L−リジンを使用することが好
ましく、とりわけ重合度が10〜19の範囲であるL−
リジンの重合体を高い割合で含有する低重合度ε−ポリ
−L−リジンの使用は、苦みの低減に有効であることか
ら、該低重合度ε−ポリ−L−リジンを効率よく生産す
る菌株、並びに該低重合度ε−ポリ−L−リジンの製造
方法が望まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は前述の従来技
術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねた。その結果、スト
レプトマイセス・ラベンデュラエ(Streptomyces laven
dulae) USE-53株(FERM P-18305)およびその変異株
は、低重合度ε−ポリ−L−リジンを効率よく生産する
ことを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させ
た。
【0007】以上の記述から明らかなように本発明の目
的は、低重合度ε−ポリ−L−リジンを効率よく生産す
る新規な菌株、および該菌株を用いた発酵法による該低
重合度ε−ポリ−L−リジンの製造法を提供することで
ある。
【0008】以上の記述から明らかなように、本発明は
下記の(1)〜(3)の構成を有する。 (1)低重合度ε−ポリ−L−リジンを生産するストレ
プトマイセス・ラベンデュラエ(Streptomyces lavendu
lae) USE-53株(FERM P-18305)。
【0009】(2)低重合度ε−ポリ−L−リジンを生
産するストレプトマイセス・ラベンデュラエ(Streptom
yces lavendulae) USE-53株(FERM P-18305)の変異
株。
【0010】(3)低重合度ε−ポリ−L−リジンを生
産するストレプトマイセス・ラベンデュラエ(Streptom
yces lavendulae) USE-53株(FERM P-18305)または
その変異株を液体培地中で培養し、該液体培地中に生成
蓄積した低重合度ε−ポリ−L−リジンを採取すること
を特徴とする低重合度ε−ポリ−L−リジンの製造法。
【0011】
【発明の実施の形態】<1>本発明菌株 本発明菌株は、低重合度ε−ポリ−L−リジンを生産す
る菌株である。本発明で云う低重合度ε−ポリ−L−リ
ジンとは、具体的には、No.346-D株を生産培地(2.0%
グリセロール、2.0%クエン酸・H2O(pH 4.5)、1.0%
(NH4)2SO4、0.2%L-リジン・HCl)を用い、30℃で培
養してえられたε−ポリ−L−リジンの重合度(20数
量体から30数量体程度)より低い重合度(8〜20量
体程度)を有し、且つ平均分子量が1000以上のε−
ポリ−L−リジンのことである。
【0012】液体培地中の低重合度ε−ポリ−L−リジ
ン量は、後述の実施例(1)(c)に記載した方法により測定
することができる。
【0013】本発明菌株であるストレプトマイセス・ラ
ベンデュラエ USE-53株(以下、USE-53株という)は、
後述の実施例に示すスクリーニングによって低分子ε−
ポリ−L−リジンの生産性を指標として土壌から単離さ
れたものである。
【0014】USE-53株の菌学的性質は以下の通りであ
る。 (1)形態学的性質 酵母エキス・麦芽エキス寒天培地(ISP培地 2)上で2
8℃、1〜2週間生育したUSE-53株の気菌糸および基生
菌糸を顕微鏡で観察した結果を次に示す。 胞子形成菌糸の分枝法および形態:直状(spiral)。 胞子のつながり:いくつもの細長い胞子がチェーン状
をなしている。
【0015】(2)各種培地における生育状態 下記表1に示す各種培地における28℃で2週間培養後
の観察結果である。また、いずれの培地においても溶解
性色素の産出は見られない。
【0016】
【表1】
【0017】使用した培地組成は下記の通りである。 トリプトン・イースト寒天(ISP 1) 0.5% バクト・トリプトン(Bacto Tryptone ディ
フコ(Difco)社製) 0.3% バクト・酵母エキス(Bacto Yeast Extract
ディフコ(Difco)社製) 2.0% バクト・アガー(Bacto Agar ディフコ(Dif
co)社製) pH 7.0
【0018】イースト・麦芽寒天(ISP 2) 1.0% バクト・麦芽エキス(Bacto Malt Extract
ディフコ(Difco)社製) 0.4% バクト・酵母エキスBacto Yeast Extract
ディフコ(Difco)社製) 0.4% グルコース(Glucose) 2.0% バクト・アガー(Bacto Agar ディフコ(Dif
co)社製) pH 7.0
【0019】オートミール寒天(ISP 3) 2.4% バクト・オートミールアガー、脱水品(Bact
o Oatmeal Agar,Dehydrated ディフコ(Difco)社製) 0.0001% FeSO4・7H2O 0.0001% MnCl2・4H2O 1.4% バクト・アガー(Bacto Agar ディフコ(Dif
co)社製) pH 6.0ア0.2
【0020】スターチ・無機塩寒天(ISP 4) 1.0% バクト・可溶性澱粉(Bacto Soluble Starch
ディフコ(Difco)社製) 0.2% CaCO3 0.2% (NH4)2SO4 0.1% K2HPO4 0.1% MgSO4・7H2O 0.1% NaCl 0.0001% FeSO4・7H2O 0.0001% MnCl2・4H2O 0.0001% ZnSO4・7H2O 2.0% バクト・アガー(Bacto Agar ディフコ(Dif
co)社製) pH 7.0
【0021】グリセリン・アスパラギン寒天(ISP 5) 1.0% グリセロール(Glycerol) 0.114% L−アスパラギン・H2O(L-Asparagine ・H2
O) 0.1% K2HPO4 0.0001% FeSO4・7H2O 0.0001% MnCl2・4H2O 0.0001% ZnSO4・7H2O 2.0% バクト・アガー(Bacto Agar ディフコ(Dif
co)社製) pH 7.2
【0022】ペプトン・イースト鉄寒天(ISP 6) 1.5% バクト・ペプトン(Bacto Peptone ディフコ
(Difco)社製) 0.5% バクト・プロテオーゼ・ペプトン(Bacto Pro
teose Peptone ディフコ(Difco)社製) 0.1% K2HPO4 0.1% バクト・酵母エキス(Bacto Yeast Extract
ディフコ(Difco)社製) 0.05% クエン酸アンモニウム鉄(III)−褐色(Ammoni
um Iron(III)Citrate,Brown) 0.0126% Na2S2O3・5H2O 1.5% バクト・アガー(Bacto Agar ディフコ(Difc
o)社製) pH 7.2
【0023】チロシン寒天(ISP 7) 1.5% グリセロール(Glycerol) 0.05% L−チロシン(L-Tyrosine) 0.114% L−アスパラギン・H2O(L-asparagine・H2
O) 0.05% K2HPO4 0.05% MgSO4・H20 0.05% NaCl 0.001136% FeSO4・7H2O 0.000285% H3BO3 0.00018% MnCl2・4H2O 0.00021% (+)−酒石酸ナトリウム2水和物(Sodium
(+)-tartrate・2H2O) 0.000004% CoCl2・6H2O 0.0000027% CuCl2・2H2O 0.0000025% Na2Mo4O4・2H2O 0.000002% ZnCl2 2.0% バクト・アガー(Bacto Agar ディフコ(Di
fco)社製) pH 7.2
【0024】硝酸寒天(ISP 8) 0.5% バクト・ペプトン(Bacto Peptone ディフ
コ(Difco)社製) 0.3% バクト・ビーフエキス(Bacto Beef Extract
ディフコ(Difco)社製) 0.1% KNO3 2.0% バクト・アガー(Bacto Agar ディフコ(Dif
co)社製) pH 7.2
【0025】ベネッツ寒天 1.0% グルコース(Glucose) 0.2% カゼイン(酵素加水分解物)(Casein,Enzym
atic Hydrolysate nacalai社製) 0.1% バクト・ビーフエキス(Bacto Beef Extract
ディフコ(Difco)社製) 0.1% バクト・酵母エキス(Bacto East Extract
ディフコ(Difco)社製) 1.5% バクト・アガー(Bacto Agar ディフコ(Dif
co)社製) pH 7.2
【0026】クザペック・ドックス寒天 3.0% シュークロース(Sucrose) 0.3% NaNO3 0.1% K2HPO4 0.05% MgSO4・7H2O 0.05% KCl 0.001% FeSO4・7H2O 1.5% バクト・アガー(Bacto Agar ディフコ(Dif
co)社製) pH 7.2
【0027】グルコース・アスパラギン寒天 1.0% グルコース(Glucose) 0.0568% L−アスパラギン・H2O(L-Asparagine ・H2
O) 0.05% K2HPO4 1.5% バクト・アガー(Bacto Agar ディフコ(Dif
co)社製) pH 7.2
【0028】栄養寒天 0.5% バクト・ペプトン(Bacto Peptone ディフ
コ(Difco)社製) 0.5% NaCl 0.2% バクト・酵母エキス(Bacto Yeast Extract
ディフコ(Difco)社製) 0.1% バクト・ビーフエキス(Bacto Beef Extract
ディフコ(Difco)社製) 1.5% バクト・アガー(Bacto Agar ディフコ(Dif
co)社製) pH 7.2
【0029】ワックスマン・グルコース寒天 1.5% グルコース(Glucose) 0.5% バクト・ペプトン(Bacto Peptone ディフ
コ(Difco)社製) 0.5% バクト・ビーフエキス(Bacto Beef Extract
ディフコ(Difco)社製) 0.5% NaCl 1.25% バクト・アガー(Bacto Agar ディフコ(Dif
co)社製) pH 7.2
【0030】(3)生理的性質 細胞壁組成:細胞壁組成成分中のジアミノピメリン酸
の型についてスタネック(Staneck)らの方法(アプライド
・マイクロバイオロジー(Applied Microbiology)第28
巻第226頁(1974年)参照)により分析した結果、L,L型
であった。
【0031】各種炭素源の同化性(プリドハム・ゴト
リーブ寒天培地上)を表2に示した。
【0032】
【表2】 注)+:同化する、−:同化しない。
【0033】メラニン様色素の生成(チロシン寒天培
地:あり、ペプトン・鉄:なし。)
【0034】(4)酸の生産性 炭素源として下記表3の炭水化物を用いた場合の酸生産
の有無を示す。
【0035】
【表3】 注)+:生酸する、−:生酸しない
【0036】上記の菌学的性質、特に形態学的性質およ
び細胞壁のジアミノピメリン酸の型等から、該USE-53株
はストレプトマイセス属に属すると判定される。E.キ
ュスター(E.Kuster)のインターナショナル・ジャーナル
・オブ・システマティック・バクテリオロジー(Intern.
J. Syst. Bacteriol.)第22巻第139頁-148頁(1972年)並
びにP.ケムファー(P.Kampher)らのジャーナル・オブ・
ゼネラル・マイクロバイオロジー(J.Gen.Microbiol.)第
137巻第1831頁−第1891頁(1991年)を参照して類縁菌種
を検索し、更にバージェイズ・マニュアル・オブ・シス
テマティック・バクテリオロジー(Bergey's Manual of
Systematic Bacteriology)第2476頁並びにE.B.シー
リング(E. B. Shirling)及びD.ゴットリーブ(D. Gott
lieb)のインターナショナル・ジャーナル・オブ・シス
テマティック・バクテリオロジー(Intern. J. Syst. Ba
cteriol.)第22巻第271頁-第273頁(1972年)を参照して類
縁菌種を検索したところ、本発明菌株はストレプトマイ
セス・ラベンデュラエ(Streptomyces lavendulae )と
同定され、ストレプトマイセス・ラベンデュラエ(Stre
ptomyces lavendulae) USE-53株と命名した。このス
トレプトマイセス・ラベンデュラエ(Streptomyces lav
endulae) USE-53株は、独立行政法人 産業技術総合
研究所に2001年4月17日に寄託され、受託番号FE
RM P-18305が付与されている。
【0037】また、本発明菌株には、低重合度ε−ポリ
−L−リジンを生産する性質(好ましくは本発明菌株の
上記の好ましい性質)を有する限り、USE-53株の変異株
も包含される。該変異株の中でも、USE-53株と同等以上
に低重合度ε−L−ポリリジンを生産する性質を有する
変異株は好ましい。
【0038】USE-53株の変異株は、USE-53株の細胞を変
異誘発処理することによって得られる変異株やUSE-53株
の自然突然変異株を、ε−ポリ−L−リジンを生産する
性質などを指標としてスクリーニングすることによって
得られる。変異誘発処理としては、紫外線照射やN−メ
チル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジンなどの変
異誘発物質による処理が挙げられる。ε−ポリ−L−リ
ジンを生産する性質などを指標とするスクリーニングと
しては、具体的には、後述の実施例に示した方法を挙げ
ることができる。
【0039】<2>本発明製造法 本発明の製造方法に使用する菌株は、ストレプトマイセ
ス・ラベンデュラエ(Streptomyces lavendulae) USE
-53株(FERM P-18305)およびその変異株であり、好ま
しくはストレプトマイセス・ラベンデュラエ(Streptom
yces lavendulae) USE-53株である。
【0040】本発明に使用する液体培地は、炭素源、窒
素源、無機塩及びその他の栄養物が含まれていれば、い
かなるものでもよい。炭素源としては、グルコース、フ
ラクトース、グリセロール、スターチ等が挙げられ、そ
の含有割合は液体培地に対して0.1〜10%(w/
v)の範囲であることが好ましい。窒素源としては、酵
母エキス、ペプトン、カゼイン加水分解物、アミノ酸等
の有機化合物や、硫酸アンモニウムなどの無機アンモニ
ウム塩等が挙げられ、その含有割合は液体培地に対して
0.1〜5%(w/v)の範囲であることが好ましい。
【0041】本発明に好ましく使用することができる液
体培地は、炭素源としてブドウ糖またはグリセロールを
含み、窒素源として硫酸アンモニウムまたは酵母エキス
もしくはペプトンを含むものである。
【0042】また、無機塩としては、リン酸イオン、カ
リウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオ
ン、亜鉛イオン、鉄イオン、マンガンイオン、ニッケル
イオン、硫酸イオン等を挙げることができる。
【0043】該液体培地での本発明菌株の培養は、好気
的条件下で振盪培養、攪拌培養等により行うことが好ま
しい。培養温度は20〜40℃の範囲、培地のpHは3
〜9の範囲であることが好ましい。培養期間は、通常は
1〜10日であるが、本発明菌株では、それ以上の期間
培養を続けることができる。また、培養途中で、炭素
源、窒素源を逐次添加してもよい。
【0044】さらに、本発明においては、該液体培地に
L−リジンを添加することが好ましく、その添加割合は
該液体培地に対して0.1〜2%(w/v)の範囲であ
ることが好ましい。該液体培地へのL−リジンの添加に
より、該液体培地中における低重合度ポリリジンの生成
蓄積が容易になる。
【0045】該液体培地中に生成蓄積した低重合度ε−
ポリ−L−リジンの採取は、該液体培地から遠心分離や
フィルター濾過などの方法によって菌体を取り除き、菌
体除去後の液体培地から公知の方法により、低重合度ε
−ポリ−L−リジンを単離することによって行うことが
できる。具体的には、例えば、菌体除去後の液体培地を
アニオン交換樹脂のカラムに通して不純物の大部分を除
き、さらにカチオン交換樹脂のカラムを通して精製し濃
縮する。次いで、得られた濃縮液からアセトン、エタノ
ール等の有機溶媒を用いて晶析を行うことにより低重合
度ε−ポリ−L−リジンを得ることができる。
【0046】
【実施例】以下、実施例にて本発明を具体的に説明す
る。 実施例:低重合度ε−ポリ−L−リジン生産菌の取得 (1)ポリリジン生産菌のスクリーニング (a)土壌からの分離方法 土壌1g(湿重量)を滅菌した生理食塩水(10ml)に懸
濁し、30℃で振とう(200rpmで10分間)、静置(30分
間)後、上澄液を生理食塩水で希釈し、この希釈液を放
線菌分離用培地(培地1)に塗布した。これを28℃で2
週間程度培養し、生育した放線菌のコロニーを酵母エキ
ス−麦芽エキス寒天培地(培地2)に植継ぎ、分離・取
得した。
【0047】(b)取得放線菌の培養 分離・取得した放線菌について、まず生育培地(培地
3)で菌体を十分に生育させた(30℃、1日)後、遠心
分離で無菌的に培地を除き菌体を回収した。次に、回収
した菌体を液体培地(培地4)に懸濁し、30℃で4日間
振とう培養した。
【0048】(c)ポリリジンの検出・測定 培養終了後、該液体培地を遠心分離して菌体を除いた上
澄液について、ポリリジンの検出・測定を行った。ポリ
リジンの検出はイツアキ(Itzhaki)(アナリティカル・
バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)第50巻
第569頁)の方法によった。すなわち、培養上澄液0.5 m
lと1mMメチルオレンジ及び50 mM NaH2PO 4-Na2HPO4(pH
7.0)の水溶液2mlとを混合し、室温で30分間放置後、生
じたポリリジン−メチルオレンジコンプレックスを遠心
分離により除き、その上澄水の吸光度(470nm)を測定
して、既知濃度のε−ポリ−L−リジン溶液を用いて作
成した標準曲線より培養液中のポリリジン量を求めた。
【0049】上記培地1〜4の組成を下記に示す。なお
「%」は、%(w/v)である。 培地1 放線菌分離用培地(Glycerol-Czapek培地) グリセロール 0.3% NaNO3 0.2% K2HPO4(pH 7.0) 0.1% KCl 0.05% MgSO4・7H2O 0.05% FeSO4・7H2O 0.001% 寒天 1.5% シクロヘキシミド 50μg/ml ナイスタチン 50μg/ml
【0050】培地2 酵母エキス−麦芽エキス寒天培地
(ISP 2) 酵母エキス 0.4% 麦芽エキス 1.0% グルコース 0.4% 寒天 1.5% pH 7.2
【0051】培地3 生育培地 グリセロール 2.0% 酵母エキス 0.5% MgSO4・7H2O 0.05% KH2PO4-Na2HPO4(pH 6.8) 1/50M
【0052】培地4 液体培地 グリセロール 2.0% クエン酸・H2O(pH 4.5) 2.0% (NH4)2SO4 1.0% L-リジン・HCl 0.2%
【0053】上記の検出方法によりポリリジン生産菌を
土壌よりスクリーニングした結果、和歌山県那智山地の
土壌よりUSE-53株を得た。
【0054】(2)取得株(USE-53株)の菌学的性質 取得株USE-53株の形態学的性質、各種培地上における生
育状態および生理的性質を調べたところ、前述のような
性質が認められた。USE-53株は、形態学的特徴や細胞壁
のジアミノピメリン酸タイプ等からストレプトマイセス
属と判定された。また、類縁菌種を検索したところ本発
明菌株はストレプトマイセス・ラベンデュラエ(Strept
omyces lavendulae)と同定した。本菌株は、ストレプ
トマイセス・ラベンデュラエ(Streptomyces lavendula
e)USE-53株と命名され、独立行政法人 産業技術総合
研究所に2001年4月17日に寄託され、受託番号
FERM P-18305が付与されている。
【0055】(3)USE-53株の生産物の確認 USE-53株を液体培地(培地4)を用い、30℃で4日間
培養した培養液に、メタノールとアセトンとの混合液
(メタノール/アセトン=3/1 体積比)を添加
し、沈殿を生成させ回収した(40〜67%画分)。次
に、回収した沈殿画分を陽イオン交換カラム(TSKgel
CM-5PW)を用いて精製し、精製物は電気泳動的に均一に
なることを確認した。次に、この精製物を6M塩酸で加水
分解し、加水分解物についてアミノ酸分析を行った。ア
ミノ酸分析の方法は、加水分解物のアミノ基を前もって
ジメチルアミノアゾベンゼンスルフォニル(dimethylam
inoazobenzenesulfonyl-、DABS)化し、液体クロマトグ
ラフィー(アミノクロームアミノ酸分析システム)を用
いて分析を行った。
【0056】アミノ酸分析の結果、USE-53株の生産物は
リジンを唯一の構成アミノ酸とするポリペプチドすなわ
ちポリリジンであることが確認された。また、USE-53株
が生産したポリリジンの重合度を、高性能液体クロマト
グラフィー(HPLC)のイオン会合クロマトグラフィー法
により、逆相カラム(TSKgel ODS-80Ts)を用いて、非
水溶媒としてアセトニトリルを用いてグラジエントをか
けながら測定した。その結果、10〜19量体の範囲で
あるポリリジンを高い分率で含有する低重合度ポリリジ
ンであった。No. 346-D株の生産するポリリジンよりも
低重合度のポリリジンを生産するストレプトマイセスs
p.SP-66株(FERM P-17223)(特開2001-017159号公報)
の結果をあわせて図1に示す。
【0057】さらに、USE-53株が生産した低重合度ポリ
リジンは、ε−ポリ−L−リジンを加水分解するタンパ
ク質分解酵素(Aspergillus oryzae由来のプロテアーゼ
A;天野製薬)により分解された。一方、該低重合度ポ
リリジンは、α−ポリアミド結合したα−ポリ−L−リ
ジンを加水分解する酵素トリプシンでは加水分解されな
かった。以上のことから、USE-53株が生産した低重合度
ポリリジンは、低重合度ε−ポリ−L−リジンであるこ
とが判明した。
【0058】(4) USE-53株が生産するε−ポリ−L−リ
ジンの抗菌活性 USE-53株の生産する低重合度ε−ポリ−L−リジンの抗
菌活性をペーパーディスク法で調べたところ、グラム陽
性細菌であるバチルス・ブレビス(Bacillus brevis I
FO 3331)及びグラム陰性細菌であるエスケリチア・コリ
・K−12(Escherichia coli K-12 IFO 3301)に対
してストレプトマイセス・アルブラス(Streptomyces a
lbulus) No.346-D株やsp-66株由来のポリリジンと同程
度の抗菌活性を有していた。
【0059】(5)USE-53株のε−ポリ−L−リジン生産
能力 生育培地(培地3)100mlを入れ滅菌した500m
l容量の坂口フラスコに、USE-53株を接種し、30℃で
24時間培養した後、該液体培地を遠心分離にかけ、該
液体培地中の菌体を回収した。回収した菌体を生理的食
塩水で1回洗浄後、液体培地(培地4)100mlを入
れ滅菌した500ml容量の坂口フラスコに移し、30
℃で6日間培養した。この培養中に採取した培養上澄液
の低重合度ε−ポリ−L−リジン濃度を、前述の「(c)
ポリリジンの検出・測定」に記載の方法により測定し
た。6日間の培養でUSE-53株は、1リットルあたり180m
gのε−ポリ−L−リジンを生産した。
【0060】
【発明の効果】本発明の菌株は、は、低重合度ε−ポリ
−L−リジンを効率よく生産する。また、本発明の低重
合度ε−ポリ−L−リジンの生産方法であれば、低重合
度ε−ポリ−L−リジンを効率よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】USE-53株による低重合度ポリリジンのイオン会
合クロマトグラムの結果を示すチャート。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹原 宗範 滋賀県彦根市八坂町2500 滋賀県立大学工 学部内 Fターム(参考) 4B064 AG01 CA04 CB30 DA16 4B065 AA50X AC14 BA16 BC01 CA24 CA41 CA44 CA47 CA54 CA60

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 低重合度ε−ポリ−L−リジンを生産す
    るストレプトマイセス・ラベンデュラエ(Streptomyces
    lavendulae) USE-53株(FERM P-18305)。
  2. 【請求項2】 低重合度ε−ポリ−L−リジンを生産す
    るストレプトマイセス・ラベンデュラエ(Streptomyces
    lavendulae) USE-53株(FERM P-18305)の変異株。
  3. 【請求項3】 低重合度ε−ポリ−L−リジンを生産す
    るストレプトマイセス・ラベンデュラエ(Streptomyces
    lavendulae) USE-53株(FERM P-18305)またはその
    変異株を液体培地中で培養し、該液体培地中に生成蓄積
    した低重合度ε−ポリ−L−リジンを採取することを特
    徴とする低重合度ε−ポリ−L−リジンの製造法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2019039544A1 (ja) 2017-08-23 2019-02-28 公立大学法人福井県立大学 クリック官能基をもつε-ポリ-L-リジン誘導体、その製法、及びその用途

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WO2019039544A1 (ja) 2017-08-23 2019-02-28 公立大学法人福井県立大学 クリック官能基をもつε-ポリ-L-リジン誘導体、その製法、及びその用途

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