JP2003042909A - 操縦性・安定性フィーリング評価用位相遅れ検出装置 - Google Patents

操縦性・安定性フィーリング評価用位相遅れ検出装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 運転操作に対する人間の感覚の位相遅れを乗
車位置で検出し、操縦性・安定性に直結した情報を収集
する。 【解決手段】 車両1の座席取付け位置に台座3を介し
てシャフト4の一端を固定し、このシャフト4の他端に
重鎮5を固定する。シャフト4は、特定の軸を中心とし
た方向に、座席の捩り剛性と、この座席に着座する乗員
の捩り剛性とを合成した値と同等な捩り剛性を有し、重
鎮5は、座席7の慣性マスと、この座席7に着座する乗
員8の慣性マスとを合成した値と同等な慣性マスを備え
ており、シャフト4に歪ゲージ6を取付け、特定の軸周
りの重鎮5の回転を検出することで、運転操作に対して
乗員が感じる位相遅れを数値的に把握する。これによ
り、操縦性・安定性のフィーリングに無関係なノイズを
排除して操縦性・安定性に直結した情報を収集すること
でき、人間の感覚を適切に数値化して操縦性・安定性フ
ィーリングの適切な評価を可能とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、運転操作に対する
人間の感覚の位相遅れを検出する操縦性・安定性フィー
リング評価用位相遅れ検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から車両の挙動を数値化して把握す
る試みが多数行われており、特に様々な物理量を計測す
るセンサにより車両の挙動は比較的良好に数値化されて
いる。従って、これらの数値化された情報を利用して、
車両の性能向上のための改良或いは車両の評価が行わ
れ、一定の成果を得ている。
【0003】しかしながら、車両の絶対性能に関して
は、各種の物理量の計測による改良、評価が有効である
一方、運転者等の車両の乗員が感じる感覚的性能に関し
ては、車両の乗員が感じる感覚が、これらの物理量を計
測するセンサによる結果と一致しないことが多々あり、
数値化が困難である。
【0004】このような問題に対処するため、例えば、
特開平9−11929号公報には、車両に取付けた加速
度センサ、ブレーキペダルに取付けた踏力センサとスト
ロークセンサの計測値を処理した操作フィーリングの指
標値を、ニューラルネットワークに入力して複数のブレ
ーキ操作のフィーリングを精度良く推定する技術が提案
されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、操縦性・安
定性のフィーリングは、運転操作に対する各所の位相遅
れに相関があり、乗員の乗車位置での位相遅れを検出す
ることで、乗員が感じる操縦性・安定性のフィーリング
を適切に数値化することが可能となる。従来の技術で
は、運転操作に対する乗車位置での位相遅れが考慮され
ておらず、一義的に各部の挙動を検出するのみでは、操
縦性・安定性のフィーリングに関係しない情報を取込む
可能性があり、操縦性・安定性フィーリングの評価が不
適切なものとなる虞がある。
【0006】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、運転操作に対する人間の感覚の位相遅れを乗車位置
で検出し、操縦性・安定性に直結した情報を収集するこ
とのできる操縦性・安定性評価用位相遅れ検出装置を提
供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1記載の発明は、乗員の乗車位置に一端が固
定され、特定の軸を中心とした方向に予め定められた捩
り剛性を有する捩りばね手段と、上記捩りばね手段の他
端に固定され、予め定められた慣性マスを有する重鎮
と、上記特定の軸の周りの上記重鎮の回転を検出する回
転検出手段とを備え、上記回転検出手段の検出結果に基
づいて、運転操作に対して乗員が感じる位相遅れを推定
することを特徴とする。
【0008】請求項2記載の発明は、請求項1記載の発
明において、上記捩りばね手段に、上記重鎮の回転を減
衰させる減衰手段を併設したことを特徴とする。
【0009】請求項3記載の発明は、請求項1又は請求
項2記載の発明において、上記特定の軸を、鉛直方向の
軸とすることを特徴とする。
【0010】請求項4記載の発明は、請求項1又は請求
項2記載の発明において、上記特定の軸を、車両の長手
方向の中心軸に平行な軸とすることを特徴とする。
【0011】請求項5記載の発明は、請求項1又は請求
項2記載の発明において、上記特定の軸を、車両の長手
方向の中心軸に直交し、且つ水平方向の軸とすることを
特徴とする。
【0012】請求項6記載の発明は、請求項1,2,
3,4,5の何れか一に記載の発明において、上記位相
遅れを、車両の操舵装置の操舵角と上記重鎮の回転角と
の位相差とすることを特徴とする。
【0013】請求項7記載の発明は、請求項1,2,
3,4,5,6の何れか一に記載の発明において、上記
捩りばね手段の一端を、車両の座席の取付け位置に台座
を介して固定することを特徴とする。
【0014】請求項8記載の発明は、請求項1,2,
3,4,5,6,7の何れか一に記載の発明において、
上記捩りばね手段の捩り剛性を、車体に固定される座席
の捩り剛性と、この座席に着座する乗員の捩り剛性とを
合成した値と同等なものとし、上記重鎮の慣性マスを、
上記座席の慣性マスと上記乗員の慣性マスとを合成した
値と同等なものとすることを特徴とする。
【0015】すなわち、請求項1記載の発明は、特定の
軸を中心とした方向に予め定められた捩り剛性を有する
捩りばね手段の一端を乗車位置に固定し、戻りばね手段
の他端に予め定められた慣性マスを有する重鎮を固定す
る。そして、特定の軸の周りの重鎮の回転を検出し、そ
の検出結果に基づいて、運転操作に対して乗員が感じる
位相遅れを推定することで、操縦性・安定性に直結した
情報を収集し、乗員のフィーリングを数値化して操縦性
・安定性の評価を可能とする。
【0016】その際、請求項2記載の発明のように、捩
りばね手段には、重鎮の回転を減衰させる減衰手段を併
設することが望ましく、実際の乗員の減衰特性を近似し
たダンパー作用を持たせることにより、人間の感覚での
位相遅れをより正確に把握することができる。
【0017】捩りばね手段の特定の軸は、請求項3記載
の発明のように、鉛直方向の軸とすることで、車両のヨ
ー方向の位相遅れを検出することができ、請求項4記載
の発明のように、車両の長手方向の中心軸に平行な軸と
することで、ロール方向の位相遅れを検出することがで
き、更に、請求項5記載の発明のように、車両の長手方
向の中心軸に直交し、且つ水平方向の軸とすることで、
ピッチ方向の位相遅れを検出することができる。その際
の位相遅れは、請求項6記載の発明のように、車両の操
舵装置の操舵角と重鎮の回転角との位相差によって検出
することができる。
【0018】また、捩りばね手段は、請求項7記載の発
明のように、車両の座席の取付け位置に台座を介して一
端を固定することが望ましく、捩りばね手段の捩り剛性
は、請求項8記載の発明のように、車体に固定される座
席の捩り剛性と、この座席に着座する乗員の捩り剛性と
を合成した値と同等なものとし、重鎮の慣性マスを、座
席の慣性マスと乗員の慣性マスとを合成した値と同等な
ものとすることで、座席に着座した状態での人間に相当
する慣性モーメントを与えることができ、操縦性・安定
性のフィーリングに無関係なノイズの除去が可能とな
る。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態を説明する。図1〜図5は本発明の実施の一形
態に係わり、図1は車両に搭載された位相検出器を示す
説明図、図2は位相検出器の構成を示す説明図、図3は
位相検出器の取付方向を示す説明図、図4は操縦性・安
定性フィーリング評価用位相遅れ検出装置の構成図、図
5は車体と位相検出器との位相差を示す説明図である。
【0020】図1において、符号1は自動車等の車両で
あり、符号2は車両1の操縦性・安定性に対する人間の
フィーリングを数値的に評価するため、乗員の着座位置
に設置される位相検出器である。この位相検出器2は、
車体の座席取付け位置に固定される台座3と、この台座
3に一端が固定されるシャフト4と、このシャフト4の
他端に固定される重鎮5と、シャフト4に取付けられる
歪ゲージ6とから構成されている。
【0021】シャフト4は、特定の軸を中心とした方向
に予め定められた捩り剛性を有する捩りばねとしての特
性を有するものであり、また、重鎮5は、予め定められ
た慣性マスを備えるものである。具体的には、図2に示
すように、シャフト4の捩り剛性は、座席7の捩り剛性
と、この座席7に着座する乗員8の捩り剛性とを合成し
た値と同等となるように予め設定され、重鎮5の慣性マ
スは、座席7の慣性マスと、この座席7に着座する乗員
8の慣性マスとを合成した値と同等となるように予め設
定されている。
【0022】一方、歪ゲージ6は、特定の軸周りの重鎮
5の回転を検出する回転検出手段としての機能を有する
ものであり、検出した特定の軸周りの重鎮5の回転の検
出結果に基づいて、運転操作に対して乗員が感じるヨ
ー、ロール、ピッチ方向の位相遅れを数値的に把握する
ことができる。尚、図2中に破線で示すように、台座3
と重鎮5との間には、シャフト4と並列に弾性部材9を
併設することが望ましい。この弾性部材9は、軸周りの
回転に対する座席7及び乗員8の減衰特性と同等の特性
を付加するための減衰手段としての機能を与えるもので
あり、この弾性部材9によるダンパー作用により、人間
の感覚により近い位相遅れを把握することができる。
【0023】位相検出器2によるヨー、ロール、ピッチ
の各方向の位相は、図3に示すように、シャフト4の捩
り中心軸を適宜設定することにより検出される。すなわ
ち、水平方向の軸をX軸、鉛直方向の軸をY軸、XY平
面に直交して車両1の重心を通る長手方向の中心軸をZ
軸とすると、X軸に平行にシャフト4を配置すること
で、車両1のピッチ方向の回転を検出することができ、
Y軸に平行にシャフト4を配置することで、車両1のヨ
ー方向の回転を検出することができる。また、Z軸に平
行にシャフト4を配置することで、車両1のロール方向
の回転を検出することができる。
【0024】図4は、位相検出器2を用いた操縦性・安
定性フィーリング評価用位相遅れ検出装置の構成を示す
ものであり、車両1に搭載される電子制御装置(EC
U)20に、位相検出器2の歪ゲージ6、車両1の操舵
角、アクセル開度、車速等の車両挙動を検出するための
車両挙動検出用センサ10が接続され、ECU20とパ
ーソナルコンピュータ等の外部のコンピュータ50とが
接続可能に構成される。更に、各種操縦性・安定性試験
を人間に代わって自動操縦で行う場合には、予めプログ
ラムされた制御指令或いは外部からの無線通信等による
制御指令に従って、アクセル操作、ステアリング操作、
ブレーキ操作等の運転操作を行う操縦装置30が車両1
に搭載され、この操縦装置30がECU20に接続され
る。
【0025】車両1の各種操縦性・安定性試験において
は、車両1の運転操作データ(人間或いは操縦装置30
による運転操作データ)に対し、その操作に伴う車両挙
動検出用センサ10からの車両挙動データ、位相検出器
2の歪ゲージ6からの検出データがECU20に入力さ
れ、ECU20内のメモリに時系列的に蓄積される。E
CU20内のメモリに蓄積されたデータは、試験終了
後、ECU20とコンピュータ50とを接続すること
で、ECU20から外部のコンピュータ50に転送され
る。
【0026】コンピュータ50には、位相検出器2の特
性、すなわちシャフト4の捩り剛性や重鎮5の慣性マス
のデータが予め入力されており、図5(a)に示すよう
に、位相検出器2の歪ゲージ6の出力データから重鎮5
の回転位相を算出し、また、図5(b)に示すように、
車両挙動検出用センサ10の出力データから車体各部の
回転位相を算出する。そして、位相検出2と車体との位
相差を求め、実際に人間が感じる操縦性・安定性フィー
リングの評価を行う。
【0027】例えば、ステアリング操作に対する車体と
人間の感覚との位相遅れを評価する場合、運転者の乗車
位置で位相検出器2(シャフト4)を鉛直方向に設置し
て走行試験を行い、時系列的にデータを収集し、コンピ
ュータ50で処理する。コンピュータ50では、車両1
に備えられる車速センサ、操舵角センサ、及びヨーレー
トセンサ等の各出力値、位相検出器2の歪ゲージ6の出
力値を時系列的に蓄積したデータから、車体のヨー角の
変化、位相検出器2によるヨー角の変化を調べ、ニュー
ラルネットワーク等を用いてステアリングの操舵角に対
する人間の感覚でのヨー角変化の遅れを推定する。
【0028】このような位相検出器2を用いた操縦性・
安定性のフィーリング評価では、位相検出器2に、座席
に着座した状態での人間に相当する慣性モーメントを与
えて運転操作や車体各部に対する位相差を検出するた
め、人間が感じる操縦性・安定性のフィーリングに無関
係なノイズを除去することが可能であり、操縦性・安定
性に直結した位相情報を収集することができる。
【0029】特に、位相検出器2を鉛直方向に設置して
操舵系に対する乗員のフィーリングを評価する際には、
操舵に対する位相遅れを乗員の頭部に近い位置で検出す
ることが可能であり、人間の感覚を精度良く数値化する
ことができる。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、運
転操作に対する人間の感覚の位相遅れを乗車位置で検出
し、操縦性・安定性のフィーリングに無関係なノイズを
排除して操縦性・安定性に直結した情報を収集すること
でき、人間の感覚を適切に数値化して操縦性・安定性フ
ィーリングの適切な評価を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両に搭載された位相検出器を示す説明図
【図2】位相検出器の構成を示す説明図
【図3】位相検出器の取付方向を示す説明図
【図4】操縦性・安定性フィーリング評価用位相遅れ検
出装置の構成図
【図5】車体と位相検出器との位相差を示す説明図
【符号の説明】
1 車両 4 シャフト(捩りばね手段) 5 重鎮 6 歪ゲージ(回転検出手段) 20 電子制御装置 50 コンピュータ

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 乗員の乗車位置に一端が固定され、特定
    の軸を中心とした方向に予め定められた捩り剛性を有す
    る捩りばね手段と、 上記捩りばね手段の他端に固定され、予め定められた慣
    性マスを有する重鎮と、 上記特定の軸の周りの上記重鎮の回転を検出する回転検
    出手段とを備え、 上記回転検出手段の検出結果に基づいて、運転操作に対
    して乗員が感じる位相遅れを推定することを特徴とする
    操縦性・安定性フィーリング評価用位相遅れ検出装置。
  2. 【請求項2】 上記捩りばね手段に、上記重鎮の回転を
    減衰させる減衰手段を併設したことを特徴とする請求項
    1記載の操縦性・安定性フィーリング評価用位相遅れ検
    出装置。
  3. 【請求項3】 上記特定の軸を、鉛直方向の軸とするこ
    とを特徴とする請求項1又は請求項2記載の操縦性・安
    定性フィーリング評価用位相遅れ検出装置。
  4. 【請求項4】 上記特定の軸を、車両の長手方向の中心
    軸に平行な軸とすることを特徴とする請求項1又は請求
    項2記載の操縦性・安定性フィーリング評価用位相遅れ
    検出装置。
  5. 【請求項5】 上記特定の軸を、車両の長手方向の中心
    軸に直交し、且つ水平方向の軸とすることを特徴とする
    請求項1又は請求項2記載の操縦性・安定性フィーリン
    グ評価用位相遅れ検出装置。
  6. 【請求項6】 上記位相遅れを、車両の操舵装置の操舵
    角と上記重鎮の回転角との位相差とすることを特徴とす
    る請求項1,2,3,4,5の何れか一に記載の操縦性
    ・安定性フィーリング評価用位相遅れ検出装置。
  7. 【請求項7】 上記捩りばね手段の一端を、車両の座席
    の取付け位置に台座を介して固定することを特徴とする
    請求項1,2,3,4,5,6の何れか一に記載の操縦
    性・安定性フィーリング評価用位相遅れ検出装置。
  8. 【請求項8】 上記捩りばね手段の捩り剛性を、車体に
    固定される座席の捩り剛性と、この座席に着座する乗員
    の捩り剛性とを合成した値と同等なものとし、上記重鎮
    の慣性マスを、上記座席の慣性マスと上記乗員の慣性マ
    スとを合成した値と同等なものとすることを特徴とする
    請求項1,2,3,4,5,6,7の何れか一に記載の
    操縦性・安定性フィーリング評価用位相遅れ検出装置。
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