JP2003041306A - 金属微粒子又は複合金属微粒子の製造方法及び該方法によるAg微粒子又はAg−NiO複合金属微粒子の製造方法 - Google Patents

金属微粒子又は複合金属微粒子の製造方法及び該方法によるAg微粒子又はAg−NiO複合金属微粒子の製造方法

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JP2003041306A
JP2003041306A JP2001232513A JP2001232513A JP2003041306A JP 2003041306 A JP2003041306 A JP 2003041306A JP 2001232513 A JP2001232513 A JP 2001232513A JP 2001232513 A JP2001232513 A JP 2001232513A JP 2003041306 A JP2003041306 A JP 2003041306A
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Akihiko Okuda
晃彦 奥田
Shigeo Shioda
重雄 塩田
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Tanaka Kikinzoku Kogyo KK
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Tanaka Kikinzoku Kogyo KK
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Abstract

(57)【要約】 【解決課題】 塩化水素、硝酸、硫酸等の有害なガスを
発生させることなく、所望の粒径を製造でき、且つ、構
成成分の分散性も良好な金属微粒子の製造方法を提供す
ること。 【解決手段】 本発明は、1種又は2種以上の金属又は
金属酸化物よりなる金属微粒子又は複合金属微粒子の製
造方法であって、(a)目的とする金属の金属イオンを
含む金属含有水溶液を製造する工程(b)前記金属含有
水溶液と、前記金属イオンと反応性を有する抽出剤を含
む有機溶媒とを反応させて抽出溶媒を製造する工程
(c)前記抽出溶媒を加熱雰囲気中に噴霧して、熱分解
反応を生じさせる工程(d)生成した微粒子を回収する
工程を含んでなる方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属ペーストの原
料として用いられる金属微粒子及びリレー、マグネット
スイッチ、ブレーカー等の開閉機器に使用される電気接
点の粉末冶金用微粒子、さらには触媒などに供される複
合微粒子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】1種の金属からなる金属微粒子又は2種
以上の金属、酸化物よりなる複合微粒子(以下、これら
を金属微粒子という)は、電子工業用ペースト用の原料
粉末やリレー、スイッチ等の電気接点材料等へ適用され
る粉末冶金用粉末等の多くの用途に用いられており、そ
れら微粒子の製造方法に関しては、多くの手法が検討さ
れている。
【0003】金属微粒子の製造方法は、大別すると化学
的製法と物理的製法とに分類される。物理的製法には溶
融金属を高圧ガス、水で飛散させるアトマイズ法、蒸発
―凝集の現象を利用したガス中蒸発法、クラッシャーや
ボールミル等の粉砕機を用いて塊状物質を機械的に粉砕
し微粒子を得る方法であり、特に、粉砕機による方法は
単純な操作であるため工業的に用いられことが多い。一
方、化学的製造法は、熱分解反応、還元反応等の化学反
応を利用して微粒子を得る方法であり、気相化学反応、
液相化学反応、固相法に分類されるが、液相反応法が一
般的に多く用いられている。
【0004】そして、各種金属微粒子は、その用途に応
じて上記した物理的、化学的方法を単独で又は組み合わ
せることにより製造されている。例えば、接点材料の原
料として用いられている金属−酸化物複合粉末であるA
g−NiO粉末は、液相還元法で得られたAg粉とカル
ボニルニッケルより得られたNi粉あるいはNiO粉を
用い、これらを混合状態で機械的に攪拌して複合化、微
細化を行なうことで製造されている。また、電子部品の
製造に用いられる導体ペーストの原料となるAg粉は、
化学的製法(液相化学反応)により製造されており、銀
溶液から還元剤による還元反応や電解析出を生じさせて
銀の微粒子を得るものである。
【0005】ところで、上記した従来の微粒子製造法に
より製造される微粒子は、要求される特性を一応は満足
させることができるが、必ずしも十分な物が得られない
ことがある。即ち、導電性ペースト用のAg粒子につい
ていえば、その大きさは1μm以上の物が好ましいとさ
れていたが、従来の化学的製法によるAg微粒子は1μ
m以上の粒子を得ることが困難であった。また、導体ペ
ーストでは、ガラスセラミック等のグリーンシート上で
焼成され厚膜印刷して用いられるが、化学的製法による
Ag粒子を用いた導体ペーストは、焼成後の収縮が大き
く、焼成後のセラッミク基板との間に収縮差が生じ、基
板自体が変形したり、セラミック積層基板においてはク
ラックや層間剥離が顕著に発生する。更に、従来の微粒
子製造法により製造される接点材料用のAg−NiO粉
末については、焼結特性にやや劣る点がある上に、Ag
粉へのNi粉又はNiO粉の分散性に不十分な面がある
といった問題があり、より特性が向上したものが要求さ
れている。
【0006】そこで、これらの諸問題に対して、最近、
噴霧熱分解法による金属微粒子の製造法が試みられてい
る。噴霧熱分解法とは、その目的金属を含有する金属含
有水溶液を噴霧して数〜十数μmの液滴にし、その液滴
を乾燥、熱分解することにより金属微粒子を得る方法で
ある。
【0007】この方法の特徴は、溶液の濃度や噴霧する
液滴の大きさを調整することにより、目的の微粒子の粒
径をコントロールすることができることである。従っ
て、この方法によれば、ペースト用の粉末に適した数μ
mのAg粒子を製造することが可能である。また、粒径
の微細な粉末の製造にも適用可能であり、従来では成し
えなかった特徴を持つ微粒子が製造できる。更に、噴霧
熱分解法で製造された微粒子は、微粒子生成時に高温で
加熱されているため、ペーストとして印刷焼成した場合
の収縮がないため、基板の変形や積層基板のクラックや
層間剥離を生じないという利点もある。
【0008】また、この噴霧熱分解法の特徴としては、
噴霧する水溶液に複数の金属成分を混合した状態とする
ことで、合金粉体や複合粉体を製造することが可能であ
り、その際の分散性も優れている特徴を有する点もあ
る。従って、接点材料であるAg-NiO複合微粒子の
製造にも好適であり、加熱時の条件を適切なものとする
ことで従来の機械的な混合法では成しえなかったNi微
細分散材料が得られ、噴霧熱分解法による複合粉微粒子
の製造方法が工業的に有用であることが示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、噴霧熱
分解法による微粒子や複合微粒子の製造では、目的とす
る金属を含有する水溶液を製造することとなるが、この
水溶液としては、目的金属を酸又はアルカリで溶解させ
た金属塩水溶液が適用されるのが一般的であり、特に、
塩酸、硝酸、硫酸といった酸による場合が多い。そし
て、これらの水溶液を加熱するときに生じる反応生成ガ
ス中には、硝酸溶液ではNOxが、塩酸溶液では塩化水
素が、硫酸溶液ではSOxが反応生成ガスとして発生す
ることとなる。従って、これら生成ガスはそのまま排出
されることはなく、除害して排出されなければならな
い。そして、噴霧熱分解法による粉末製造においては、
この反応生成ガスの除害ために要する設備、工程が必要
となる。
【0010】また、この反応生成ガスの問題はその種類
によっては製造装置そのもののコストを上昇させること
となる。例えば、塩酸溶液を噴霧して熱分解した場合に
は塩化水素ガスが発生するが、塩化水素ガスに対して耐
食性のあるハステロイなどの材質が装置材料に使用され
なければならなく、製造装置の材料コストを上昇させて
しまう。そして、これらを考慮すれば、従来の噴霧熱分
解法によれば、粉末の製造コストの上昇は避けられな
い。
【0011】本発明は、以上のような背景の下になされ
たものであり、塩化水素、硝酸、硫酸等の有害なガスを
発生がなく除害設備及び除害処理が不要であり、更には
所望の粒径を製造でき、構成成分の分散性も良好な金属
微粒子の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】従来の噴霧熱分解法にお
ける問題は、硝酸イオン、硫酸イオン等の陰イオンが加
熱時に還元されることにより、有害とされる硝酸、硫酸
等に変化するという点にある。従って、これらの物質が
生じないようにするためには、これらの陰イオンを含有
しない溶媒中に金属イオンを分散させ、これを噴霧し熱
分解させることが有効と考えられる。
【0013】一方、従来の噴霧熱分解法において、硝
酸、硫酸等が多く用いられるのは、これらの酸が金属を
容易に溶解させることができるからである。そして、水
溶液においてかかる高い金属溶解性を有するものは実際
問題存在しないと考えられる。本発明者等は以上のよう
な観点から、噴霧して液滴とすることが可能な液体状態
であり、金属を選択的に溶解させることができるものと
して、目的とする金属に対して反応性を有する抽出剤を
含む有機溶媒に着目した。そして、金属を含有する水溶
液に対しかかる有機溶媒による溶媒抽出を行い、溶媒中
に金属を分散させこれを噴霧するのが適正であるとし、
本発明を想到するに至った。
【0014】即ち、本発明は、1種又は2種以上の金属
又は金属酸化物よりなる金属微粒子又は複合金属微粒子
の製造方法であって、下記工程を含んでなる方法であ
る。
【0015】(a)目的とする金属の金属イオンを含む
金属含有水溶液を製造する工程。 (b)前記金属含有水溶液と、前記金属イオンと反応性
を有する抽出剤を含む有機溶媒とを反応させて抽出溶媒
を製造する工程。 (c)前記抽出溶媒を加熱雰囲気中に噴霧して、熱分解
反応を生じさせる工程。 (d)生成した微粒子を回収する工程。
【0016】以下、本発明につき詳細に説明する。本発
明による微粒子製造工程は、抽出対象となる金属含有溶
液の製造工程と、金属イオンの抽出による金属イオン含
有有機溶媒の製造工程と、金属イオン含有有機溶媒を噴
霧熱分解して微粒子としてこれを回収する工程とからな
る。そこで、各工程につき説明する。
【0017】まず、金属含有溶液の製造工程((a)工
程)は、目的となる金属を水溶液にて溶解させるのが一
般的であるが、この金属を溶解させる際の水溶液として
は鉱酸であることが好ましく、塩酸、硝酸、硫酸が適当
である。この他、リン酸、フッ酸、ヨウ素酸などの無機
酸や酢酸、蓚酸を使用してもよい。一方、溶解させる金
属については、純金属の状態でも良いが、スクラップの
ように目的金属が一部でも含まれているものであれば適
用可能である。
【0018】この金属含有水溶液と抽出剤を含む有機溶
媒とを接触させるが((b)工程)、この有機溶媒は、
抽出剤を主とし、任意に改質剤及び希釈剤を含むもので
ある。本発明に用いられる抽出剤については、溶媒抽出
法において一般に適用される、酸性抽出剤、塩基性抽出
剤、中性抽出剤を使用することができる。これらは目的
金属含有水溶液の液性、イオン種、金属錯体などの種類
に応じて選定される。
【0019】ここで、本発明において好適な抽出剤は、
酸性抽出剤としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基
を有するものである(陽イオン交換型抽出剤)である。
特に、炭素数が8〜20位のカルボキシル基、ヒドロキ
シル基を有し、水に溶解しない有機化合物が好ましい。
かかる抽出剤による抽出反応は陽イオン交換反応であ
り、金属含有水溶液に含まれている塩素イオン、硝酸イ
オン、硫酸イオン等の陰イオンは反応に寄与せず、有機
溶媒へは抽出されないからである。そして、このように
して金属イオンを抽出した有機溶媒を噴霧熱分解した場
合、熱分解後の排ガス中に塩化水素ガスやNOx、やS
Oxが生成しないからである。
【0020】そして、この酸性抽出剤の中でも、特に好
ましいのは、カルボン酸系の有機酸である。このタイプ
に属する抽出剤としては、例えば、Versatic
Acid 10(分子量176、酸価322mgKOH
/gのカルボン酸の商品名)、ナフテン酸、ラウリル酸
が挙げられる。尚、リン酸エステルやチオカルボン酸の
ようにリンや硫黄が含有される抽出剤でも金属の抽出は
可能であるが、噴霧熱分解にリンや硫黄の発生が伴うた
め、微粒子中へのリンの不純物混入や排ガス中にSOx
分が混入することとなるため好ましい抽出剤とはいい難
い。
【0021】次に、本発明において好適な塩基性抽出剤
としては、アミノ基を有する1級アミン、2級アミン、
3級アミン、4級アンモニウム塩が挙げられる。このア
ミンを有する抽出剤は、水溶液に対して不溶性で、目的
の金属イオンに対する抽出特性が適切なものであればよ
い。このタイプに属する抽出剤としては、例えば、1級
アミンとしては、Primene JMTが、2級アミ
ンとしては、Amberlite LA−1、LA−2
が、3級アミンとしては、トリオオクチルアミン、トリ
イソオクチルアミン、Alamineが、そして4級ア
ンモニウム塩としては、トリオオクチルメチルアンモニ
ウムクロライド等が挙げられる。
【0022】また、中性抽出剤としては、本発明では炭
素、水素、酸素からなる中性抽出剤を適用するのが好ま
しい。このような抽出剤によれば、金属抽出後に噴霧熱
分解した際の反応副生成物が水と二酸化炭素であり、排
ガス中に塩化水素やNOx、やSOxが生成しないから
である。尚、このタイプに属する抽出剤としては、ケト
ン、高級アルコール等が該当し、より具体的には、イソ
ブチルメチルケトン、ジイソオブチルケトン、メチルイ
ソブチルケトンやカルビトールが用いられる。
【0023】そして、本発明においては、以上の抽出剤
に改質剤、希釈剤を添加した有機溶媒を用いるのが好ま
しい。希釈剤とは、有機溶媒中の抽出剤や改質剤の濃度
を調製するもので、有機溶媒の比重や粘性を改善するた
めに添加されるものである。この希釈剤としては、炭化
水素系の溶剤が用いられる。炭化水素系溶剤の中でも好
ましいのは、ケロシンである。噴霧熱分解時に、カーボ
ン粒子のような燃焼残渣が発生せず、かつ不用意に引火
しないからである。この希釈剤と抽出剤との混合比は、
抽出剤濃度が5〜50vol%となるように混合するの
が好ましい。但し、中性抽出剤を用いる場合、メチルイ
ソブチルケトンのように比重が軽いものについては希釈
剤を使用することなく抽出を行なうことができる。
【0024】また、改質剤は、有機溶媒の性質を改善す
る目的で加えるものである。有機溶媒の改善とは、主に
抽出種の有機溶媒に対する溶解性を高めるものであり、
これにより高濃度の金属イオンを抽出した有機溶媒につ
いても、沈殿の発生が防止できる。また、抽出時におけ
る有機溶媒と水溶液の撹拌後の分相も改善するという効
果もある。この改質剤は、炭素数6から20を有する高
級アルコールが用いられ、例えば、n−デシルアルコー
ル等が挙げられる。そして、その添加量は、有機溶媒全
体に対して5〜30vol%とするのが好ましい。
【0025】以上説明した、抽出剤、希釈剤、改質剤を
適宜混合することで、金属を金属含有水溶液より抽出す
るための有機溶媒とすることができ、この有機溶媒と金
属含有水溶液とを接触させることで、有機溶媒中に金属
イオンを抽出させ抽出溶媒とすることができる。ここ
で、抽出溶媒中の金属イオン濃度は、生成される粒子径
に影響を及ぼし、噴霧時の有機溶媒の液滴径が同じ場
合、抽出溶媒中の金属濃度が高いと大きな粒径を持つ微
粒子が生成される。また、微粉末の生産性(生産量)も
抽出溶媒中の金属濃度により影響され、金属濃度が高い
程生産性は高くなる。これらを勘案すれば、本発明にお
いては抽出溶媒中の金属濃度が30〜300g/Lとな
るように抽出操作を行なうのが好ましい。
【0026】尚、既に述べたように、使用する抽出剤、
改質剤は目的金属の種類により異なる。ここで、Ag又
はAg−NiO微粒子の製造において好ましいものにつ
いて説明すると、抽出剤としては、Versatic
Acid 10及びラウリル酸といったカルボン酸が好
ましく、これらをケロシンにて濃度0.5〜3.0mo
l/Lとした抽出溶媒を適用するのが好ましい。また、
この抽出溶媒には、改質剤としてn−デカノコール、n
−オクタノール、n−ヘキサノール、イソデカノール、
2−エチルヘキサノール等を添加するのが好ましい。そ
して、このような抽出溶媒を用いることにより0.1〜
5μmの粒径の微粒子を製造することができる。
【0027】次に金属イオンを抽出した有機溶媒を噴霧
して粉末を製造する工程((c)工程)について説明す
る。溶液を噴霧する方法は、ノズルを用いた方法、超音
波霧化器を用いた方法があるが、工業的に量産する場合
には、ノズルを用いる方法が一般的である。ノズルは構
造により1流体、2流体、3流体があり、霧化がおこな
えるのであればいずれのノズルを用いてもよい。そし
て、有機溶媒を噴霧するためのキャリアーガスは空気、
窒素、アルゴンガスが好ましく、噴霧圧力を0.1〜
3.0kgf/cm2とするのが好ましい。また、有機
溶媒の供給速度が低くなると、有機溶媒の連続的な燃焼
が行われず、逆火の現象が生じる。このため、連続に安
定して燃焼した状態で噴霧熱分解が行えるように定量ポ
ンプにより送液を行うのが好ましい。
【0028】加熱雰囲気の温度は、有機溶媒が完全に燃
焼し、微粒子を形成する温度であればよい。本発明にお
いてはこの雰囲気温度は300〜1000℃とするのが
好ましい。尚、有機溶媒を構成している抽出剤、希釈
剤、改質剤の分解温度は低く、抽出した金属の分解より
も低い温度で分解する。このため、従来の水溶液の噴霧
熱分解法の加熱温度よりも、本発明に係る有機溶媒の噴
霧熱分解法の方が、加熱温度を低くすることができる。
【0029】そして、上記噴霧熱分解工程で生成された
微粒子は、回収工程((d)工程)において回収される
が、この微粒子の回収はバグフィルターやサイクロンで
補集するのが好ましい。
【0030】以上の工程により目的とする金属(単一金
属、複合金属)よりなる微粉末が製造される。本発明に
よれば、金属を噴霧する媒体を、従来の水溶液から有機
溶媒としたことにより、溶媒の選択肢を広げることがで
き塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン等を含有するこ
とのない溶媒を適用することができる。従って、本発明
では噴霧した溶媒の熱分解により塩化水素、硝酸、硫酸
といった環境に影響を与え得る物質を排出することはな
く、そのための除害処理、除害設備を設ける必要がな
い。
【0031】また、本発明に係る噴霧熱分解法は、従来
の水溶液による噴霧熱分解法に比べてエネルギー消費量
を低減することができる。何故ならば、従来の水溶液に
よる噴霧熱分解法では、金属塩の熱分解(これは吸熱反
応である)による熱量に加え、噴霧の媒体である水溶液
を昇温、蒸発させるために要する熱量が必要であるため
全体で消費されるエネルギーは大きい。これに対して、
本発明では、金属塩の熱分解のための熱量は必要ではあ
るが、媒体として適用する有機溶媒はその燃焼のための
熱量は小さく、むしろ加熱により燃焼するものであり
(即ち発熱するために)、むしろ雰囲気を加熱するため
の燃料としての役割を有する。これは、例えば、噴霧雰
囲気の加熱を電気により行う場合、微粒子の製造にかか
る電力コストが大きく低減することができる。
【0032】更に、本発明は金属資源のリサイクルとい
う観点からも大きな利点がある。即ち、従来法では噴霧
する液体はなるべく純度の高いものが好ましく、そのた
めには水溶液を製造する段階で市販の試薬のような純粋
なものが使用される。これに対し、本発明では抽出溶媒
に不純物がないことが必要ではあるが、抽出溶媒の製造
工程において金属含有水溶液の純度は必ずしも高純度で
ある必要はない。必要な金属種について適切な抽出剤を
選択すれば、水溶液中に不純物があっても有機溶媒に混
入することはないからである。従って、金属含有水溶液
の原料としては高純度の試薬だけではなく、スクラップ
のような不純物を含有するものも適用することができる
のである。
【0033】また、これに関連して本発明は、金属のリ
サイクル工程の工程数を低減させることができるという
利点も有する。一般に金属資源のリサイクルは、スクラ
ップを粉砕した後、水溶液化、溶媒抽出、逆抽出、金属
の採取という工程が採られるが、本発明は、この逆抽出
以降の工程を経ることなく直ちに高純度の金属とするこ
とができる。即ち、本発明は、金属スクラップから少な
い工程数で粉末状態であるが高純度の金属を回収するこ
とができる。
【0034】尚、本発明は従来の水溶液噴霧熱分解法の
有する利点を損なうことなく上記効果を有するものであ
る。即ち、微粒子の粒径の制御が容易であり、複合粉体
を製造する場合においての分散性も優れている。
【0035】
【発明の実施の形態】本実施形態では、AgとNiとを
含む混合水溶液から、抽出剤を含む有機溶媒によりAg
とNiとを抽出し、この抽出溶媒を加熱雰囲気中に噴霧
してAg−NiO複合粉末を製造した。
【0036】有機溶媒の主成分である抽出剤には、カル
ボン酸性有機酸抽出溶媒であるカルボキシル基を有する
有機酸系抽出剤(商品名:Versatic Acid
10シェル化学製,分子量176、酸価322mgKO
H/gのカルボン酸)を使用した。そして、この抽出剤
をケロシンで抽出剤濃度が1.0mol/dmとなる
ように希釈して、更に改質剤として2-エチルヘキシル
アルコールを1.0mol/dmの濃度になるよう有
機溶媒に添加した。
【0037】AgとNiとを含む混合水溶液は、AgN
結晶(東洋化学製)及びNi(NO)・6H
結晶(関東化学製一級)を使用し、遮光した暗所で硝酸
300cmに両者をAg及びNi濃度でそれぞれ54
g/dm、6g/dmの濃度になるように添加し攪
拌し完全に溶解させた。
【0038】抽出操作は、遮光した暗所で上記有機溶媒
に混合硝酸溶液を少量ずつ加え、30分間攪拌して金属
イオンを有機溶媒に抽出した。
【0039】そして、抽出操作後分液ロートで抽出溶媒
と金属含有水溶液を分相し、抽出溶媒はこれと同体積の
蒸留水で2回洗浄操作を繰り返した。この際得られた抽
出溶媒については1mol/dmSOで逆抽
出し、逆抽出液中の金属イオン濃度を誘導結合プラズマ
発光分光分析(ICP)により定量し、抽出溶媒の金属
濃度を測定したところ、Ag:53.6g/dm、N
i:5.2g/dmであった。
【0040】次に、この抽出溶媒により図1に示す噴霧
式熱分解製造装置を用いて微粒子を製造した。噴霧熱分
解装置は、噴霧部、電気炉で覆われた反応部、微粒子回
収部からなる。有機溶媒による噴霧操作は、ポンプによ
り定量的に送り込まれた有機溶媒を図2に示す二流体ノ
ズルよりそのまま霧化し、電気炉内反応管に導入した。
ここでの製造条件は以下の通りとした。
【0041】送液速度:22cm/min ノズル:内部混合型二流体ノズル キャリアガスガス:窒素 噴霧圧:0.5Kgf/cm、 反応部温度:950℃
【0042】得られたAg−NiO複合粉末は1μm以
下の微粒子とこの微粒子が凝集した数μm〜10μm径
の粉体であった。このAg−NiO複合粉末をX線回折
分析により分析したところ、AgのピークとNiOのピ
ークとが観察され、本実施形態にて製造した微粉末がA
g、NiOよりなることが確認された。そして、このA
g−NiO複合粉末について走査型電子顕微鏡(SE
M)にて観察を行なったところ、図3に示すように、微
細な1次粒子の凝集体であることが確認された。また、
電子線プローブマイクロ分析(EPMA)からこのAg
−NiO複合粉末はAg、Ni、Oの各構成元素が均一
に分散していることがわかった。
【0043】比較例:ここでは上記実施形態に対する比
較として、従来の水溶液による噴霧熱分解法により、A
g−NiO複合粉末を製造した。実施形態と同様のAg
NO結晶及びNi(NO)・6HO結晶を使用
し、Ag及びNi濃度でそれぞれ533g/dm、5
9.2g/dmの濃度になるように添加し攪拌し完全
に溶解させ銀−ニッケル水溶液とした。
【0044】この銀−ニッケル水溶液を用いて、実施形
態と同じ図1の噴霧式熱分解製造装置によりAg−Ni
O複合粉末を製造した。ここでの製造条件は以下の通り
とした。
【0045】送液速度:20cm/min ノズル:内部混合型二流体ノズル キャリアガスガス:窒素 噴霧圧:0.5Kgf/cm、 反応部温度:950℃
【0046】この比較例で製造された粉末は数μm〜1
0μm径の粉体であり、実施形態と同様にX線回折分析
により分析したところ、この微粉末はAg、NiOより
なることが確認された。一方、この比較例に係るAg−
NiO複合粉末についてSEMにて観察を行なったとこ
ろ、図4に示すような2層構造を有する粉末であること
が観察された。そして、EPMAからこの2層構造の複
合粉末は中心層がAg−NiO、外殻層がAgよりなる
ことがわかった。
【0047】本実施形態と比較例とを対比すると、まず
本実施形態で製造される粉末は多少の広がりはあるが、
最小で1μm以下の極めて微小なものも製造可能である
のに対し、比較例ではこれほど小径の粉末は製造できな
かった。また、これらの製法により製造される粉末は構
造において顕著な相違点があり、本実施形態では微細な
粒子の凝集体であり構成元素の分散性、均一性が良好で
あるのに対し、比較例ではAg−NiO層(中心層)と
Ag層(外殻層)とからなる2層構造を有している。こ
のように製造される粉末の性状が相違する理由として
は、噴霧され加熱されたときの粉末となるまでの過程が
両方法において異なることによるものと考えられる。即
ち、比較例のような金属含有水溶液を噴霧熱分解する場
合の粉末化へのプロセスは、噴霧された液滴(Ag、N
iの硝酸塩を含んでいる)の乾燥、硝酸塩の溶融及び熱
分解という工程からなるのに対し、実施形態に係る抽出
溶媒の噴霧熱分解のプロセスは、加熱初期において有機
溶媒燃焼と同時に熱分解が生じ粉末化していることによ
るものと考えられる。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
塩化水素、硝酸、硫酸といった環境に影響を与え得る物
質を排出することはなく、各種金属微粒子を製造するこ
とができる。従って、本発明においては、これらの物質
に対する除害処理、除害設備を設ける必要がない。ま
た、本発明によれば、従来の噴霧熱分解法に比べて、粉
体製造のためのエネルギー消費量を低減することができ
る。これらにより本発明によれば従来法に比べて低コス
トで金属微粒子を製造することができる。
【0049】更に、本発明は粉末の原料の選択肢が広
く、スクラップのような不純物を含有するものも適用す
ることができる。従って、本発明は金属資源のリサイク
ルという観点からも大きな利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態で用いた噴霧式熱分解製造装置の
構造を概略示す図。
【図2】 本実施形態で用いた2流体ノズルの構造を概
略示す図。
【図3】 本実施形態で製造したAg−NiO複合粉末
の断面構造を示すSEM写真。
【図4】 比較例で製造したAg−NiO複合粉末の断
面構造を示すSEM写真。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K017 AA06 BA02 BB17 CA07 DA07 EK05 5G301 DA03 DA23 DD01 DD02 DE03

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1種又は2種以上の金属又は金属酸化物よ
    りなる金属微粒子又は複合金属微粒子の製造方法であっ
    て、下記工程を含んでなる方法。 (a)目的とする金属の金属イオンを含む金属含有水溶
    液を製造する工程。 (b)前記金属含有水溶液と、前記金属イオンと反応性
    を有する抽出剤を含む有機溶媒とを反応させて抽出溶媒
    を製造する工程。 (c)前記抽出溶媒を加熱雰囲気中に噴霧して、熱分解
    反応を生じさせる工程。 (d)生成した微粒子を回収する工程。
  2. 【請求項2】抽出剤は、カルボキシル基、ヒドロキシル
    基を有する酸性抽出剤である請求項1記載の金属微粒子
    又は複合金属微粒子の製造方法。
  3. 【請求項3】抽出剤は、アミノ基を有する1級アミン、
    2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩からなる
    塩基性抽出剤である請求項1記載の金属微粒子又は複合
    金属微粒子の製造方法。
  4. 【請求項4】抽出剤は、炭素、水素、酸素からなる中性
    抽出剤である請求項1記載の金属微粒子又は複合金属微
    粒子の製造方法。
  5. 【請求項5】有機溶媒は、抽出剤に加えて、希釈剤及び
    改質剤を含む請求項1〜請求項4記載の金属微粒子又は
    複合金属微粒子の製造方法。
  6. 【請求項6】改質剤は、炭素数6〜20の高級アルコー
    ルである請求項5記載の金属微粒子又は複合金属微粒子
    の製造方法。
  7. 【請求項7】請求項1記載の方法によるAg微粒子の製
    造方法であって、 金属含有水溶液として硝酸に銀を溶解させたものを製造
    し、抽出剤として有機カルボン酸を用いるAg微粒子の
    製造方法。
  8. 【請求項8】請求項1記載の方法によるAg−NiO複
    合金属微粒子の製造方法であって、 金属含有水溶液として硝酸に銀とニッケルとを溶解させ
    たものを製造し、抽出剤として有機カルボン酸を用いる
    Ag−NiO複合金属微粒子の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006196279A (ja) * 2005-01-12 2006-07-27 Tokyo Gas Co Ltd 固体酸化物形燃料電池スタック及びその作製方法
CN100393455C (zh) * 2005-12-23 2008-06-11 西安交通大学 一种胶体银纳米粒子的制备方法

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