JP2003040710A - 耐熱、好酸性菌アリシクロバチルスの増殖の抑制ないし阻止剤 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 清涼飲料、特に、果汁を含む高酸性飲料、酸
性飲料において微生物による変敗の主な原因菌の一つで
あるアリシクロバチルス属の菌株が増殖するのを阻止す
ること。 【解決手段】 加熱処理された１，５−Ｄ−アンヒドロ
フルクトースを清涼飲料に添加することにより、アリシ
クロバチルス属の菌株の増殖を抑制ないし阻止する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、加熱処理された
１，５−Ｄ−アンヒドロフルクトースのアリシクロバチ
ルス属の菌株の増殖抑制ないし阻止方法およびそれを含
有する剤に関する。

【０００２】

【従来の技術】１，５−Ｄ−アンヒドロフルクトース
は、担子菌などの微生物あるいは紅藻などの植物組織に
存在する酵素、α−１，４−グルカンリアーゼの作用に
より澱粉あるいは澱粉分解物から生産することができ
る。１，５−Ｄ−アンヒドロフルクトースはグルコース
が脱水した興味ある特異な構造をしており、その機能性
に関して、細菌増殖に対して抑制ないし阻止効果を有す
ることが報告されている。

【０００３】清涼飲料の製造時の殺菌基準は食品衛生法
で規定されており、ｐＨ４．０未満の高酸性飲料では、
６５℃で１０分加熱または同等以上、ｐＨ４．０以上ｐ
Ｈ４．６未満の酸性飲料では８５℃で３０分加熱または
同等以上となっている。従来は、これらの殺菌条件で十
分な殺菌効果が得られると考えられていた。しかしなが
ら、近年、これらの条件下で生存かつ増殖する、耐熱、
好酸性菌が発見され、現在、清涼飲料の微生物管理上大
きな問題となっている。管理の対象となる主な細菌はア
リシクロバチルスである。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、清涼
飲料、特に、果汁を含む高酸性飲料、酸性飲料において
微生物による変敗の主な原因菌の一つであるアリシクロ
バチルス属の菌株に対し、加熱処理された１，５−Ｄ−
アンヒドロフルクトースが優れた増殖抑制ないし阻止効
果を発現するという新規な究明事実に基づき、加熱処理
された１，５−Ｄ−アンヒドロフルクトースのアリシク
ロバチルス属の菌株の増殖抑制ないし阻止方法を提供す
ることにある。

【０００５】本発明の他の目的は、熱処理された１，５
−Ｄ−アンヒドロフルクトースを活性成分とするアリシ
クロバチルス属の菌株の増殖抑制ないし阻止剤を提供す
ることにある。本発明の他の目的は、加熱処理された
１，５−Ｄ−アンヒドロフルクトースの、アリシクロバ
チルス属の菌株の増殖抑制ないし阻止のための使用を提
供することにある。本発明のさらに他の目的および利点
は、以下の説明から明らかになろう。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明によれば、本発明
の上記目的および利点は、第１に、加熱処理された１，
５−Ｄ−アンヒドロフルクトースを含有することを特徴
とする、アリシクロバチルス属の菌株の増殖抑制ないし
阻止剤によって達成される。本発明によれば、本発明の
上記目的および利点は、第２に、本発明の上記剤を清涼
飲料に含有せしめることを特徴とする、アリシクロバチ
ルス属の菌株の増殖抑制ないし阻止方法によって達成さ
れる。また、本発明によれば、本発明の上記目的および
利点は、第３に、加熱処理された１，５−Ｄ−アンヒド
ロフルクトースのアリシクロバチルス属の菌株の増殖抑
制ないし阻止のための使用によって達成される。

【０００７】本発明において、１，５−Ｄ−アンヒドロ
フルクトースとしては加熱処理されたものを使用する。
１，５−Ｄ−アンヒドロフルクトースは安全性の高い抗
菌性物質であるが、加熱処理を施すことにより、その抗
菌力がさらに高められる。加熱処理条件としては、好ま
しくは５０〜１５０℃で１秒〜１００時間である。例え
ば、常圧下５０℃で１０分〜１００時間の処理、９５℃
で１分〜１０時間の処理、また、高圧下１２０℃で１０
秒〜２時間、１３０〜１５０℃で１秒〜３０分等の加熱
処理条件を選択することが可能である。

【０００８】本発明を清涼飲料に適用する際、加熱処理
された１，５−Ｄ−アンヒドロフルクトースの含有量
は、特に制限は無いが、アリシクロバチルス属の菌株に
対する抗菌力の発現性、清涼飲料の嗜好性への影響等か
らみて、好ましくは清涼飲料１００重量部当たり０．０
１〜１０重量部、さらに好ましくは０．１〜５重量部で
ある。

【０００９】清涼飲料に添加した場合、次いでこの飲料
を殺菌等のために加熱しても、何ら悪い影響をおよぼす
ことはない。加熱条件は、その清涼飲料によって異なる
が、加熱処理された１，５−Ｄ−アンヒドロフルクトー
スを添加しつつ加熱することができ、また添加した後加
熱することもできる。適切な加熱条件は、ｐＨ４．０以
下の飲料では６０℃で１０〜３０分、あるいは９０℃で
２分程度であり、ｐＨ４．０〜４．６の飲料では、８５
℃３０〜６０分、ｐＨ４．６以上の飲料では、１２５℃
５〜３０分、または１３０〜１５０℃で１〜２秒程度で
ある。

【００１０】本発明の剤は、１，５−Ｄ−アンヒドロフ
ルクトース以外に他の、不活性担体および補助剤を含有
することができる。不活性担体としては、例えば、澱
粉、マルトデキストリン、シクロデキストリン、焙焼デ
キストリン、ショ糖、ブドウ糖、麦芽糖、乳糖等の糖
類、カルボキシメチルセルロース、寒天、寒天分解物、
カラギーナン、グルコマンナン、ローカストビーンガ
ム、キサンタンガム等の増粘多糖類、小麦粉、米粉、コ
ーンフラワー等の穀物粉、脱脂大豆、脱脂粉乳、トウモ
ロコシ蛋白等の蛋白質、また、液状あるいはゲル状の場
合には、上記物質に加えて水、アルコール等の常温、常
圧で液状の物質を挙げることができる。

【００１１】補助剤としては、例えば、アジピン酸、プ
ロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カ
ルシウム、乳酸、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、ク
エン酸、クエン酸三ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン
酸カリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク
酸二ナトリウム、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、グ
ルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウ
ム、ＤＬ−酒石酸、Ｌ−酒石酸、ＤＬ−酒石酸ナトリウ
ム、ＤＬ−リンゴ酸、ＤＬ−リンゴ酸ナトリウム、安息
香酸、安息香酸ナトリウム、グルコノデルタラクトン、
炭酸塩類、二酸化炭素、亜硝酸塩、リン酸、リン酸塩
類、重合リン酸塩類（ピロリン酸ナトリウム、トリポリ
リン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸塩等）、イタコン
酸、フィチン酸等の各種酸および塩類を挙げることがで
きる。本発明の剤は、種々の剤型例えば溶液、顆粒剤、
粉剤、錠剤、懸濁剤、ゲル剤等であることができる。

【００１２】また、本発明の剤は、加熱処理された１，
５−Ｄ−アンヒドロフルクトース以外に他の各種抗酸化
物質を含有することができる。例えば、アスコルビン
酸、そのナトリウム塩・カリウム塩・カルシウム塩・脂
肪酸エステル、エリソルビン酸、そのナトリウム塩・カ
リウム塩・カルシウム塩・脂肪酸エステル、α−トコフ
ェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、
δ−トコフェロール、β−カロチン、カロテノイド、カ
テキン類、タンニン、フラボノイド、アントシアニン、
ポリフェノール、ＢＨＴ、ＢＨＡ、尿酸、ＤＨＡ、ＩＰ
Ａ、ＥＰＡ、ＥＤＴＡ、グアヤク脂、クエン酸イソプロ
ピル、ノルジヒドログアヤレチック酸、没食子酸プロピ
ル、等の酸化防止剤を挙げることができる。

【００１３】また、本発明の剤は、加熱処理された１，
５−Ｄ−アンヒドロフルクトース以外に他の抗菌物質を
含有することもできる。抗菌物質としては、例えば、酢
酸、酢酸ナトリウム、グリセリン、脂肪酸エステル、ポ
リグリセリン脂肪酸エステル、シュガーエステル、チア
ミンラウリル硫酸塩、デヒドロ酢酸ナトリウム、グリシ
ン、プロタミン、ポリリジン、卵白リゾチーム、キトサ
ン、エタノール、ワサビ抽出物、カラシ抽出物、グロー
ブ抽出物、シナモン抽出物、セージ抽出物、ピメンタ抽
出物、ペッパー抽出物、ローズマリー抽出物、オレガノ
抽出物、ニンニク抽出物、イチジク葉抽出物、柑橘種子
抽出物、桑抽出物、麹酸、シソ抽出物、ショウガ抽出
物、タデ抽出物、ホップ抽出物、生大豆抽出物、ブドウ
果皮抽出物、ホッコシ抽出物、モウソウチク抽出物、モ
ミガラ抽出物、プロポリス抽出物、甘草油性抽出物、オ
リーブ抽出物、ユッカフォーム抽出物、紅麹分解物、ペ
クチン分解物、茶タンニン、ヒノキチオール、コーヒー
酸、ケイ皮酸、ｐ−クマル酸、フェルラ酸、クロロゲン
酸等のケイ皮酸同族体を挙げることができる。

【００１４】

【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳述す
る。本発明はかかる実施例により何ら制限されるもので
はない。なお、実施例中の加熱処理１，５−Ｄ−アンヒ
ドロフルクトースは、１，５−Ｄ−アンヒドロフルクト
ース（純度４０．５％、Ｂｘ７１．２）を１２０℃で１
５分加熱処理したものである。

【００１５】実施例１および比較例１ 濃縮還元りんごジュース（Ｂｘ１２）に加熱処理された
１，５−Ｄ−アンヒドロフルクトースを０．５重量％、
１重量％または３重量％添加したものに、あらかじめ培
養しておいたＡｌｉｃｙｃｌｏｂａｃｉｌｌｕｓ ａｃ
ｉｄｏｔｅｒｒｅｓｔｒｉｓを１０⁵個／ｍｌになるよ
うに添加した。また、比較例として、１，５−Ｄ−アン
ヒドロフルクトース無添加のジュースも同様にして作
り、これらのジュースを４０℃で保存し、経時的に菌数
測定を行うことで評価した。結果を図１に示す。

【００１６】実施例２および比較例２ 濃縮還元りんごジュース（Ｂｘ１２）に、加熱処理され
た１，５−Ｄ−アンヒドロフルクトースを３重量％添加
したものに、あらかじめ培養しておいたＡｌｉｃｙｃｌ
ｏｂａｃｉｌｌｕｓ ａｃｉｄｏｔｅｒｒｅｓｔｏｒｉ
ｓを１０⁶個／ｍｌになるように添加した。比較例とし
て１，５−Ｄ−アンヒドロフルクトース無添加のジュー
スも同様にして作り、これらのジュースを９５℃で加熱
して経時的に菌数を測定した。結果を図２に示す。

【発明の効果】本発明によれば、加熱された１，５−Ｄ
−アンヒドロフルクトースを用いることにより、飲食品
等中でアリシクロバチルス菌株が増殖するのを抑制ない
し阻止することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】濃縮還元りんごジュース中におけるアリシクロ
バチルス菌の増殖に及ぼす、加熱された１，５−Ｄ−ア
ンヒドロフルクトースの添加量の影響。

【図２】濃縮還元りんごジュース中におけるアリシクロ
バチルス菌株の増殖に及ぼす、加熱された１，５−Ｄ−
アンヒドロフルクトースの添加後の加熱時間の影響。

【符号の説明】

（ａ）加熱された１，５−Ｄ−アンヒドロフルクトース
無添加。 （ｂ）加熱された１，５−Ｄ−アンヒドロフルクトース
０．５重量％添加。 （ｃ）加熱された１，５−Ｄ−アンヒドロフルクトース
１重量％添加。 （ｄ）加熱された１，５−Ｄ−アンヒドロフルクトース
３重量％添加。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉永 一浩 鹿児島県鹿児島市南栄３−20 日本澱粉工 業株式会社内 (72)発明者 藤末 真実 鹿児島県鹿児島市南栄３−20 日本澱粉工 業株式会社内 (72)発明者 矢嶋 瑞夫 東京都中央区日本橋小伝馬町20番３号 ア サマ化成株式会社内 (72)発明者 野崎 一彦 東京都中央区日本橋小伝馬町20番３号 ア サマ化成株式会社内 Ｆターム(参考） 4B017 LC10 LE10 LK11 LL07 LP13 4H011 AA02 BA01 BB08 BC06 BC22 DA12 DC05 DD07

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 加熱処理された１，５−Ｄ−アンヒドロ
   フルクトースを含有することを特徴とする、アリシクロ
   バチルス属の菌株の増殖抑制ないし阻止剤。
2. 【請求項２】 加熱処理された１，５−Ｄ−アンヒドロ
   フルクトースの該加熱処理の条件が５０〜１５０℃で１
   秒〜１００時間である、請求項１に記載の剤。
3. 【請求項３】 請求項１または２に記載の剤を清涼飲料
   に含有せしめることを特徴とする、アリシクロバチルス
   属の菌株の増殖抑制ないし阻止方法。
4. 【請求項４】 請求項１または２に記載の剤を清涼飲料
   に添加しながら加熱するかあるいは清涼飲料に添加した
   後加熱することを特徴とする、アリシクロバチルス属の
   菌株の増殖抑制ないし阻止方法。
5. 【請求項５】 加熱処理された１，５−Ｄ−アンヒドロ
   フルクトースの、アリシクロバチルス属の菌株の増殖抑
   制ないし阻止のための使用。