JP2003027270A - 電解セル用炭素電極 - Google Patents
電解セル用炭素電極Info
- Publication number
- JP2003027270A JP2003027270A JP2001213503A JP2001213503A JP2003027270A JP 2003027270 A JP2003027270 A JP 2003027270A JP 2001213503 A JP2001213503 A JP 2001213503A JP 2001213503 A JP2001213503 A JP 2001213503A JP 2003027270 A JP2003027270 A JP 2003027270A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- atoms
- texture
- glassy carbon
- electrolytic cell
- content
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Water Treatment By Electricity Or Magnetism (AREA)
- Ceramic Products (AREA)
- Electrodes For Compound Or Non-Metal Manufacture (AREA)
- Electrolytic Production Of Non-Metals, Compounds, Apparatuses Therefor (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【課題】 水溶液系の電解セルの陽極として、耐酸化性
に優れ、長時間、安定して使用することのできる、高耐
久性の電解セル用炭素電極を提供する。 【解決手段】 ガラス状カーボンの組織中に原子レベル
のSiとOが均一に分散複合し、組織中のSi原子の含
有量(x)wt%が0.5〜15wt%であって、かつ、O
原子の含有量(y)wt%が、Si原子の含有量(x)wt
%に対し、x+2≧y≧x−2(但し、y>0)の範囲
内で均一に分布する組織構造を備えたガラス状カーボン
材からなる電解セル用炭素電極。その組織構造は、X線
回折によって金属SiおよびSi化合物が観察されず、
透過型電子顕微鏡(TEM)の観察によって粒状組織が
識別できない組織性状を備えたものである。この炭素電
極は電解によるオゾンなどのガス発生、微生物を電解殺
菌する水処理、電解による(貴)金属回収などの水溶液
系の電解セルに用いられる、耐久性の高い炭素電極とし
て極めて有用である。
に優れ、長時間、安定して使用することのできる、高耐
久性の電解セル用炭素電極を提供する。 【解決手段】 ガラス状カーボンの組織中に原子レベル
のSiとOが均一に分散複合し、組織中のSi原子の含
有量(x)wt%が0.5〜15wt%であって、かつ、O
原子の含有量(y)wt%が、Si原子の含有量(x)wt
%に対し、x+2≧y≧x−2(但し、y>0)の範囲
内で均一に分布する組織構造を備えたガラス状カーボン
材からなる電解セル用炭素電極。その組織構造は、X線
回折によって金属SiおよびSi化合物が観察されず、
透過型電子顕微鏡(TEM)の観察によって粒状組織が
識別できない組織性状を備えたものである。この炭素電
極は電解によるオゾンなどのガス発生、微生物を電解殺
菌する水処理、電解による(貴)金属回収などの水溶液
系の電解セルに用いられる、耐久性の高い炭素電極とし
て極めて有用である。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電解によるオゾン
などのガス発生や水中に存在する微生物を電解殺菌する
水処理、あるいは電解による(貴)金属回収、などの水
性電解セル中において耐酸化性、耐蝕性などに優れ、安
定して使用することのできる、耐久性の高い電解セル用
炭素電極に関する。
などのガス発生や水中に存在する微生物を電解殺菌する
水処理、あるいは電解による(貴)金属回収、などの水
性電解セル中において耐酸化性、耐蝕性などに優れ、安
定して使用することのできる、耐久性の高い電解セル用
炭素電極に関する。
【0002】
【従来の技術】炭素材、例えば黒鉛材は化学的安定性に
優れ、電気伝導度も高いので電解用の電極として従来か
ら有用されている。しかしながら、黒鉛材は石油コーク
スや石炭コークスなどをフィラーとし、これにコールタ
ールなどのバインダーを加えて混練し、成形、焼成、黒
鉛化して得られるもので、組織的には黒鉛微粒子の集合
体から構成されている。したがって、黒鉛を、例えば水
溶液系の電解セルの陽極として用いると、発生した酸素
ガスによる強力な酸化作用により黒鉛が酸化消耗し、黒
鉛微粒子が脱落する難点がある。
優れ、電気伝導度も高いので電解用の電極として従来か
ら有用されている。しかしながら、黒鉛材は石油コーク
スや石炭コークスなどをフィラーとし、これにコールタ
ールなどのバインダーを加えて混練し、成形、焼成、黒
鉛化して得られるもので、組織的には黒鉛微粒子の集合
体から構成されている。したがって、黒鉛を、例えば水
溶液系の電解セルの陽極として用いると、発生した酸素
ガスによる強力な酸化作用により黒鉛が酸化消耗し、黒
鉛微粒子が脱落する難点がある。
【0003】これに対して、ガラス状カーボン材は、熱
硬化性樹脂を非酸化性雰囲気下で加熱し、焼成炭化して
得られる巨視的に無孔組織の三次元網目構造を呈するガ
ラス質の緻密な硬質炭素物質であり、強度が高く、化学
的安定性に優れ、また不純物が少ないなどの特徴を有し
ている。したがって、黒鉛と異なり、組織から微小な炭
素微粒子が離脱することがなく、広い用途分野の工業部
材として有用されており、また近年では非汚染性の材質
性状に着目して、Siウエハのプラズマエッチング用電
極やイオン注入装置用部材など、汚染を嫌う半導体分野
で好適に用いられている。
硬化性樹脂を非酸化性雰囲気下で加熱し、焼成炭化して
得られる巨視的に無孔組織の三次元網目構造を呈するガ
ラス質の緻密な硬質炭素物質であり、強度が高く、化学
的安定性に優れ、また不純物が少ないなどの特徴を有し
ている。したがって、黒鉛と異なり、組織から微小な炭
素微粒子が離脱することがなく、広い用途分野の工業部
材として有用されており、また近年では非汚染性の材質
性状に着目して、Siウエハのプラズマエッチング用電
極やイオン注入装置用部材など、汚染を嫌う半導体分野
で好適に用いられている。
【0004】このガラス状カーボン材を水溶液系の電解
セルの陽極に用いる試みも行われており、例えば特公平
1−56148号公報には、きわめて電気陰性のフルオ
ロ陰イオンの水溶液を電解してオゾンを製造するための
電解セルにおいて、前記セルの電極がガラス状炭素電極
であることを特徴とするオゾン製造用電解セルが提案さ
れている。
セルの陽極に用いる試みも行われており、例えば特公平
1−56148号公報には、きわめて電気陰性のフルオ
ロ陰イオンの水溶液を電解してオゾンを製造するための
電解セルにおいて、前記セルの電極がガラス状炭素電極
であることを特徴とするオゾン製造用電解セルが提案さ
れている。
【0005】また、特開平7−34280号公報には、
酸素や二酸化炭素の発生を伴う水性の電解浴で陽極とし
て用いるのに適した電解用電極として、炭素質物質50
〜90重量%と樹脂硬化物10〜50重量%との組成物
からなる電解用電極が、特開平9−1151号公報に
は、多孔質炭素板に多数の貫通孔を有する緻密なガラス
状炭素板が密接されてなる電気化学的な水処理用炭素電
極が提案されている。
酸素や二酸化炭素の発生を伴う水性の電解浴で陽極とし
て用いるのに適した電解用電極として、炭素質物質50
〜90重量%と樹脂硬化物10〜50重量%との組成物
からなる電解用電極が、特開平9−1151号公報に
は、多孔質炭素板に多数の貫通孔を有する緻密なガラス
状炭素板が密接されてなる電気化学的な水処理用炭素電
極が提案されている。
【0006】しかしながら、ガラス状カーボン材も他の
炭素材と同様に酸化され、特に高温酸化雰囲気では酸化
が速やかに進行して物性を損ねる炭素材固有の欠点があ
る。したがって、水性電解セルの陽極として用いた場合
には電解の進行に伴って発生する酸素ガスにより酸化さ
れ、更に、酸化反応生成物による腐食の問題も生じ、ガ
ラス状カーボンが消耗して長期に亘って安定に使用する
ことができず、耐久性が充分でないという欠点がある。
炭素材と同様に酸化され、特に高温酸化雰囲気では酸化
が速やかに進行して物性を損ねる炭素材固有の欠点があ
る。したがって、水性電解セルの陽極として用いた場合
には電解の進行に伴って発生する酸素ガスにより酸化さ
れ、更に、酸化反応生成物による腐食の問題も生じ、ガ
ラス状カーボンが消耗して長期に亘って安定に使用する
ことができず、耐久性が充分でないという欠点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この欠点を排除し、ガ
ラス状カーボン材の耐酸化性などの物性を改善するため
にガラス状カーボンの組織中にセラミックス成分を複合
させる試みが従来から行われている。しかし、原料とな
る熱硬化性樹脂に乾式や湿式でセラミックスの微粒子を
混合して硬化、成形した成形体を焼成炭化する方法では
セラミックス微粒子を炭素組織に均一に分散させること
ができず、またセラミックス微粒子と炭素組織との間に
粒界が存在するため過酷な使用条件下では材質破壊を生
じたり、炭素組織の部分酸化によってセラミックス微粒
子が脱落し、更に、組織が多孔質化して酸化が促進され
ることとなる。
ラス状カーボン材の耐酸化性などの物性を改善するため
にガラス状カーボンの組織中にセラミックス成分を複合
させる試みが従来から行われている。しかし、原料とな
る熱硬化性樹脂に乾式や湿式でセラミックスの微粒子を
混合して硬化、成形した成形体を焼成炭化する方法では
セラミックス微粒子を炭素組織に均一に分散させること
ができず、またセラミックス微粒子と炭素組織との間に
粒界が存在するため過酷な使用条件下では材質破壊を生
じたり、炭素組織の部分酸化によってセラミックス微粒
子が脱落し、更に、組織が多孔質化して酸化が促進され
ることとなる。
【0008】そこで、本出願人は、耐酸化性および耐プ
ラズマ性に優れたガラス状カーボンとして、−O−Si
−O−で架橋された熱硬化性樹脂の成形体を焼成炭化し
て得られ、原子レベルのSiがガラス状カーボン組織中
に0.1〜15重量%の範囲で均一な連続相として分布
する組織性状を備えるSi含有ガラス状カーボン材とそ
の製造技術を開発、提案(特開平8−325059号公報)し
た。
ラズマ性に優れたガラス状カーボンとして、−O−Si
−O−で架橋された熱硬化性樹脂の成形体を焼成炭化し
て得られ、原子レベルのSiがガラス状カーボン組織中
に0.1〜15重量%の範囲で均一な連続相として分布
する組織性状を備えるSi含有ガラス状カーボン材とそ
の製造技術を開発、提案(特開平8−325059号公報)し
た。
【0009】本発明者は、このSi含有ガラス状カーボ
ン材の材質性状について更に研究を進めた結果、ガラス
状カーボンの組織中にSiおよびOが原子レベルで均一
に分散し、更に、組織中のSi含有量およびO含有量が
Si量と特定の量比関係にあると、耐酸化性や耐蝕性が
より一層向上できることを見出した。
ン材の材質性状について更に研究を進めた結果、ガラス
状カーボンの組織中にSiおよびOが原子レベルで均一
に分散し、更に、組織中のSi含有量およびO含有量が
Si量と特定の量比関係にあると、耐酸化性や耐蝕性が
より一層向上できることを見出した。
【0010】本発明は、この知見に基づいて開発された
ものであって、その目的は電解によるオゾンなどのガス
発生や水中に存在する微生物を電解殺菌する水処理、あ
るいは電解による(貴)金属回収、などの水溶液系の電
解セルの陽極として耐酸化性や耐蝕性などに優れ、長期
に亘って安定して使用することのできる、耐久性の高い
電解セル用炭素電極を提供することにある。
ものであって、その目的は電解によるオゾンなどのガス
発生や水中に存在する微生物を電解殺菌する水処理、あ
るいは電解による(貴)金属回収、などの水溶液系の電
解セルの陽極として耐酸化性や耐蝕性などに優れ、長期
に亘って安定して使用することのできる、耐久性の高い
電解セル用炭素電極を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明による電解セル用炭素電極は、ガラス状カー
ボンの組織中に原子レベルのSi(珪素)とO(酸素)
が均一に分散複合し、組織中のSi原子の含有量(x)
wt%が0.5〜15wt%であって、かつ、O原子の含有
量(y)wt%がSi原子の含有量(x)wt%に対し、x
+2≧y≧x−2(但し、y>0)の範囲内で均一に分
布する組織構造を備えたガラス状カーボン材からなるこ
とを構成上の特徴とする。
めの本発明による電解セル用炭素電極は、ガラス状カー
ボンの組織中に原子レベルのSi(珪素)とO(酸素)
が均一に分散複合し、組織中のSi原子の含有量(x)
wt%が0.5〜15wt%であって、かつ、O原子の含有
量(y)wt%がSi原子の含有量(x)wt%に対し、x
+2≧y≧x−2(但し、y>0)の範囲内で均一に分
布する組織構造を備えたガラス状カーボン材からなるこ
とを構成上の特徴とする。
【0012】また、その組織構造は、X線回折によって
金属SiおよびSi化合物が観察されず、また、透過型
電子顕微鏡(TEM)の観察によって粒状組織が識別で
きない組織性状を備えるものである。
金属SiおよびSi化合物が観察されず、また、透過型
電子顕微鏡(TEM)の観察によって粒状組織が識別で
きない組織性状を備えるものである。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の電解セル用炭素電極は、
ガラス状カーボンの組織中にSiおよびOが原子レベル
で均一に分散複合した組織構造を有し、Siが原子レベ
ルで均一な連続相として分布する組織性状を備えたガラ
ス状カーボン材で形成されたものである。
ガラス状カーボンの組織中にSiおよびOが原子レベル
で均一に分散複合した組織構造を有し、Siが原子レベ
ルで均一な連続相として分布する組織性状を備えたガラ
ス状カーボン材で形成されたものである。
【0014】このSiが原子レベルで均一な連続相とし
て分布した組織性状とは、ガラス状カーボンの組織中に
Si成分が微粒子状態で分散することなく、組織内にS
iとCの粒界が存在しない連続固溶相を呈した組織状
態、すなわち、巨視的にはガラス状カーボン単独の組織
構造と実質的な相違はないが、微視的にはガラス状カー
ボン組織のCの一部がSiに置換結合された複合形態を
示すものである。したがって、その組織構造は、具体的
にはSi分散ガラス状カーボンの組織中にX線回折によ
るパターン解析によって金属SiおよびSiO2 やSi
CなどのSi化合物に帰属する回折線が検出されず、ま
た、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察によっても粒状
組織が識別できない組織性状を備えたものである。
て分布した組織性状とは、ガラス状カーボンの組織中に
Si成分が微粒子状態で分散することなく、組織内にS
iとCの粒界が存在しない連続固溶相を呈した組織状
態、すなわち、巨視的にはガラス状カーボン単独の組織
構造と実質的な相違はないが、微視的にはガラス状カー
ボン組織のCの一部がSiに置換結合された複合形態を
示すものである。したがって、その組織構造は、具体的
にはSi分散ガラス状カーボンの組織中にX線回折によ
るパターン解析によって金属SiおよびSiO2 やSi
CなどのSi化合物に帰属する回折線が検出されず、ま
た、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察によっても粒状
組織が識別できない組織性状を備えたものである。
【0015】本発明の電解セル用炭素電極は、このよう
にガラス状カーボンの組織中に原子レベルのSiが連続
相として均一に分散複合した組織性状を備え、更に、O
原子がSi原子に対して特定の量比で複合した組織構造
を備えたガラス状カーボン材で形成するものである。す
なわち、本発明は、ガラス状カーボンの組織中に原子レ
ベルのSiが0.5〜15wt%の割合で連続相として均
一に分散複合した組織性状を備え、ガラス状カーボンの
組織中に分散複合するO原子の含有量(y)wt%がSi
原子の含有量(x)wt%に対し、x+2≧y≧x−2
(但し、y>0)の範囲内で組織中に均一に分散複合し
た組織構造を備えたガラス状カーボン材により電解セル
用炭素電極を形成した点に特徴がある。
にガラス状カーボンの組織中に原子レベルのSiが連続
相として均一に分散複合した組織性状を備え、更に、O
原子がSi原子に対して特定の量比で複合した組織構造
を備えたガラス状カーボン材で形成するものである。す
なわち、本発明は、ガラス状カーボンの組織中に原子レ
ベルのSiが0.5〜15wt%の割合で連続相として均
一に分散複合した組織性状を備え、ガラス状カーボンの
組織中に分散複合するO原子の含有量(y)wt%がSi
原子の含有量(x)wt%に対し、x+2≧y≧x−2
(但し、y>0)の範囲内で組織中に均一に分散複合し
た組織構造を備えたガラス状カーボン材により電解セル
用炭素電極を形成した点に特徴がある。
【0016】ガラス状カーボンの組織中に分散したSi
原子は、カーボン組織の酸化され易い反応活性点、例え
ば結合が不完全で、化学的に不安定な末端部分のカーボ
ン組織に優先的に結合してシールし、耐酸化性や耐蝕性
の向上に機能するものと考えられる。この場合、ガラス
状カーボンの組織中のSi原子の含有量(x)wt%が
0.5wt%を下回ると複合効果が小さいため、耐酸化性
や耐蝕性の向上効果が低く、また15wt%を越えるとS
iを原子レベルでガラス状カーボンの組織中に安定分散
させることが困難となり、高位の耐酸化性や耐蝕性を付
与することができなくなる。
原子は、カーボン組織の酸化され易い反応活性点、例え
ば結合が不完全で、化学的に不安定な末端部分のカーボ
ン組織に優先的に結合してシールし、耐酸化性や耐蝕性
の向上に機能するものと考えられる。この場合、ガラス
状カーボンの組織中のSi原子の含有量(x)wt%が
0.5wt%を下回ると複合効果が小さいため、耐酸化性
や耐蝕性の向上効果が低く、また15wt%を越えるとS
iを原子レベルでガラス状カーボンの組織中に安定分散
させることが困難となり、高位の耐酸化性や耐蝕性を付
与することができなくなる。
【0017】このSi原子が均一に分酸複合したガラス
状カーボンの組織中にO原子が併存すると、O原子がS
i原子の凝集を抑制するために、更に化学的安定性の向
上を図ることができる。そして、ガラス状カーボンの組
織中に存在するO原子の含有量(y)wt%を、Si原子
の含有量(x)wt%に対し、x+2≧y≧x−2(但
し、y>0)の範囲内に設定することにより化学的安定
性を一層向上させることができ、優れた耐酸化性および
耐蝕性を付与することが可能となる。O原子の含有量
(y)wt%がこの範囲を外れるとガラス状カーボンの組
織中で金属Si及びSiO2 やSiCなどのSi化合物
粒子の凝集が起こり易くなるために、化学的安定性が充
分に改善されず、耐酸化性および耐蝕性の向上が充分で
なく、更に、消耗による粒子の脱落も増大することにな
る。
状カーボンの組織中にO原子が併存すると、O原子がS
i原子の凝集を抑制するために、更に化学的安定性の向
上を図ることができる。そして、ガラス状カーボンの組
織中に存在するO原子の含有量(y)wt%を、Si原子
の含有量(x)wt%に対し、x+2≧y≧x−2(但
し、y>0)の範囲内に設定することにより化学的安定
性を一層向上させることができ、優れた耐酸化性および
耐蝕性を付与することが可能となる。O原子の含有量
(y)wt%がこの範囲を外れるとガラス状カーボンの組
織中で金属Si及びSiO2 やSiCなどのSi化合物
粒子の凝集が起こり易くなるために、化学的安定性が充
分に改善されず、耐酸化性および耐蝕性の向上が充分で
なく、更に、消耗による粒子の脱落も増大することにな
る。
【0018】この組織構造を備えるガラス状カーボン材
は、ガラス状カーボンの原料となる熱硬化性樹脂に有機
シラン化合物を混合して調製した原料樹脂液を所望の形
状に成形し、加熱硬化したのち非酸化性雰囲気中で80
0℃以上の温度で焼成炭化することにより製造される。
熱硬化性樹脂は焼成炭化処理によりガラス状カーボンに
転化する炭素源となるもので、ガラス状カーボン製造用
に通常使用される各種の樹脂、例えばフェノール系樹
脂、フラン系樹脂、ポリカルボジイミド系樹脂、ポリイ
ミド系樹脂、エポキシ系樹脂、あるいはこれらの混合樹
脂、などが用いられ、特に残炭率が45%以上のフェノ
ール系樹脂、フラン系樹脂、もしくはこれらの混合樹脂
などが好ましく用いられる。
は、ガラス状カーボンの原料となる熱硬化性樹脂に有機
シラン化合物を混合して調製した原料樹脂液を所望の形
状に成形し、加熱硬化したのち非酸化性雰囲気中で80
0℃以上の温度で焼成炭化することにより製造される。
熱硬化性樹脂は焼成炭化処理によりガラス状カーボンに
転化する炭素源となるもので、ガラス状カーボン製造用
に通常使用される各種の樹脂、例えばフェノール系樹
脂、フラン系樹脂、ポリカルボジイミド系樹脂、ポリイ
ミド系樹脂、エポキシ系樹脂、あるいはこれらの混合樹
脂、などが用いられ、特に残炭率が45%以上のフェノ
ール系樹脂、フラン系樹脂、もしくはこれらの混合樹脂
などが好ましく用いられる。
【0019】また、有機シラン化合物はガラス状カーボ
ン組織中にSi及びO成分を均一に分散複合化する原料
成分であり、有機シラン化合物を熱硬化性樹脂液中に混
合して均一に分散させることにより原料樹脂液が調製さ
れる。有機シラン化合物としては1分子中に少なくとも
1個のSi原子を含み、かつそのSi原子に1個以上の
O原子が結合する、例えば下記の一般式で表される有機
シラン化合物が用いられる。但し、下記一般式において
R1 〜R4 はC、H、O、N、Siのいずれかを含み、
かつR1 〜R4 のうちの少なくとも一つはSi原子と結
合する末端にOが存在する有機官能基である。この場
合、1分子中のSi原子の数は3を越えないことが望ま
しい。1分子中のSi原子の数が3を超えるとSi原子
の凝集が起こり易くなり、Si成分がナノレベル、マイ
クロレベルで凝集して分散するようになり結果的にSi
を原子レベルで分散させることが困難となる。
ン組織中にSi及びO成分を均一に分散複合化する原料
成分であり、有機シラン化合物を熱硬化性樹脂液中に混
合して均一に分散させることにより原料樹脂液が調製さ
れる。有機シラン化合物としては1分子中に少なくとも
1個のSi原子を含み、かつそのSi原子に1個以上の
O原子が結合する、例えば下記の一般式で表される有機
シラン化合物が用いられる。但し、下記一般式において
R1 〜R4 はC、H、O、N、Siのいずれかを含み、
かつR1 〜R4 のうちの少なくとも一つはSi原子と結
合する末端にOが存在する有機官能基である。この場
合、1分子中のSi原子の数は3を越えないことが望ま
しい。1分子中のSi原子の数が3を超えるとSi原子
の凝集が起こり易くなり、Si成分がナノレベル、マイ
クロレベルで凝集して分散するようになり結果的にSi
を原子レベルで分散させることが困難となる。
【0020】
【0021】これらの有機シラン化合物を熱硬化性樹脂
液に攪拌しながら滴下し、均一に混合することにより原
料樹脂液が調製される。有機シラン化合物は熱硬化性樹
脂との相溶性が高いので容易に均質な原料樹脂液を調製
することができる。
液に攪拌しながら滴下し、均一に混合することにより原
料樹脂液が調製される。有機シラン化合物は熱硬化性樹
脂との相溶性が高いので容易に均質な原料樹脂液を調製
することができる。
【0022】原料樹脂液は適宜な成形法により電解セル
用炭素電極として所望する形状に成形したのち、70〜
180℃に加熱して硬化する。この硬化過程において、
有機シラン化合物は熱硬化性樹脂中に均質に分散した状
態を維持しながら樹脂分子と反応して硬化し、樹脂分子
中にシラン化合物が均質に分散し、固定化された硬化樹
脂成形体が得られる。次いで、硬化樹脂成形体を非酸化
性雰囲気中800℃以上の温度、好ましくは1000〜
3000℃の温度に加熱して、焼成炭化することにより
Si原子およびO原子が均一に分散複合した組織構造の
ガラス状カーボン材が製造される。
用炭素電極として所望する形状に成形したのち、70〜
180℃に加熱して硬化する。この硬化過程において、
有機シラン化合物は熱硬化性樹脂中に均質に分散した状
態を維持しながら樹脂分子と反応して硬化し、樹脂分子
中にシラン化合物が均質に分散し、固定化された硬化樹
脂成形体が得られる。次いで、硬化樹脂成形体を非酸化
性雰囲気中800℃以上の温度、好ましくは1000〜
3000℃の温度に加熱して、焼成炭化することにより
Si原子およびO原子が均一に分散複合した組織構造の
ガラス状カーボン材が製造される。
【0023】このプロセスにおいて、原料樹脂液を調製
する際に有機シラン化合物として、1分子中に含まれる
Si原子とO原子の量比の異なるもの、あるいは量比の
異なるものを組み合わせて用い、熱硬化性樹脂液中の有
機シラン化合物の分散濃度を調整することにより、ガラ
ス状カーボン組織中に0.5〜15wt%のSiが原子レ
ベルで均一に分散複合し、組織中に存在するO原子の含
有量(y)wt%が、Si原子の含有量(x)wt%に対
し、x+2≧y≧x−2(但し、y>0)の範囲内で均
一に分布する組織構造を備えたSi含有ガラス状カーボ
ン材を製造することができる。
する際に有機シラン化合物として、1分子中に含まれる
Si原子とO原子の量比の異なるもの、あるいは量比の
異なるものを組み合わせて用い、熱硬化性樹脂液中の有
機シラン化合物の分散濃度を調整することにより、ガラ
ス状カーボン組織中に0.5〜15wt%のSiが原子レ
ベルで均一に分散複合し、組織中に存在するO原子の含
有量(y)wt%が、Si原子の含有量(x)wt%に対
し、x+2≧y≧x−2(但し、y>0)の範囲内で均
一に分布する組織構造を備えたSi含有ガラス状カーボ
ン材を製造することができる。
【0024】このようにして製造されたSi原子の含有
量(x)wt%が0.5〜15wt%であって、かつ、O原
子の含有量(y)wt%が、Si原子の含有量(x)wt%
に対し、x+2≧y≧x−2(但し、y>0)の範囲内
で均一に分布する組織構造を備えたガラス状カーボン材
からなる本発明の電解セル用炭素電極は、高位の耐酸化
性および耐蝕性を有しており、例えば、電解によるオゾ
ンなどのガス発生や水中に存在する微生物を電解殺菌す
る水処理あるいは電解による(貴)金属回収、などの水
溶液系の電解セルの陽極として、高い電流密度や印加電
圧で長時間、安定して電解反応を行うことが可能とな
る。
量(x)wt%が0.5〜15wt%であって、かつ、O原
子の含有量(y)wt%が、Si原子の含有量(x)wt%
に対し、x+2≧y≧x−2(但し、y>0)の範囲内
で均一に分布する組織構造を備えたガラス状カーボン材
からなる本発明の電解セル用炭素電極は、高位の耐酸化
性および耐蝕性を有しており、例えば、電解によるオゾ
ンなどのガス発生や水中に存在する微生物を電解殺菌す
る水処理あるいは電解による(貴)金属回収、などの水
溶液系の電解セルの陽極として、高い電流密度や印加電
圧で長時間、安定して電解反応を行うことが可能とな
る。
【0025】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して具
体的に説明する。
体的に説明する。
【0026】実施例1〜3、比較例1
有機シラン化合物として3−グリシドキシプロピルメチ
ルジメトキシシランを用い、フェノール樹脂の前駆体溶
液に異なる割合で滴下しながら攪拌混合し、その後、室
温で緩やかに攪拌しながら穏やかな流動状態で45時間
放置して原料樹脂液の均質性を高めた。このようにして
調製した原料樹脂液を成形型に注入し、真空脱気したの
ち100℃に加熱し、最終的に200℃の温度で硬化し
た。得られた硬化樹脂成形体をアルゴン雰囲気中で10
00℃に加熱し、更に2000℃の温度に加熱して炭化
し、Si原子およびO原子の含有量の異なるガラス状カ
ーボン材を製造した。
ルジメトキシシランを用い、フェノール樹脂の前駆体溶
液に異なる割合で滴下しながら攪拌混合し、その後、室
温で緩やかに攪拌しながら穏やかな流動状態で45時間
放置して原料樹脂液の均質性を高めた。このようにして
調製した原料樹脂液を成形型に注入し、真空脱気したの
ち100℃に加熱し、最終的に200℃の温度で硬化し
た。得られた硬化樹脂成形体をアルゴン雰囲気中で10
00℃に加熱し、更に2000℃の温度に加熱して炭化
し、Si原子およびO原子の含有量の異なるガラス状カ
ーボン材を製造した。
【0027】実施例4
有機シラン化合物として3−アミノプロピルトリエトキ
シシランを用い、フェノール樹脂の前駆体溶液にガラス
状カーボン中のSi原子の含有量が5.0wt%になるよ
うに滴下しながら攪拌混合し、その後、室温で緩やかに
攪拌しながら穏やかな流動状態で45時間放置して原料
樹脂液の均質性を高めた。このようにして調製した原料
樹脂液を成形型に注入し、真空脱気したのち100℃に
加熱し、最終的に200℃の温度で硬化した。得られた
硬化樹脂成形体をアルゴン雰囲気中で1000℃に加熱
し、更に2000℃の温度に加熱して炭化し、Si原子
の含有量(x)が5.0wt%のガラス状カーボン材を製
造した。
シシランを用い、フェノール樹脂の前駆体溶液にガラス
状カーボン中のSi原子の含有量が5.0wt%になるよ
うに滴下しながら攪拌混合し、その後、室温で緩やかに
攪拌しながら穏やかな流動状態で45時間放置して原料
樹脂液の均質性を高めた。このようにして調製した原料
樹脂液を成形型に注入し、真空脱気したのち100℃に
加熱し、最終的に200℃の温度で硬化した。得られた
硬化樹脂成形体をアルゴン雰囲気中で1000℃に加熱
し、更に2000℃の温度に加熱して炭化し、Si原子
の含有量(x)が5.0wt%のガラス状カーボン材を製
造した。
【0028】比較例2
有機シラン化合物として3−アミノプロピルジメチルエ
トキシシランを用い、フェノール樹脂の前駆体溶液にガ
ラス状カーボン中のSi原子の含有量が12.0wt%に
なるように滴下しながら攪拌混合し、その後、室温で緩
やかに攪拌しながら穏やかな流動状態で45時間放置し
て原料樹脂液の均質性を高めた。このようにして調製し
た原料樹脂液を成形型に注入し、真空脱気したのち10
0℃に加熱し、最終的に200℃の温度で硬化した。得
られた硬化樹脂成形体をアルゴン雰囲気中で1000℃
に加熱し、更に2000℃の温度に加熱して炭化し、S
i原子の含有量(x)が12.3wt%のガラス状カーボ
ン材を製造した。
トキシシランを用い、フェノール樹脂の前駆体溶液にガ
ラス状カーボン中のSi原子の含有量が12.0wt%に
なるように滴下しながら攪拌混合し、その後、室温で緩
やかに攪拌しながら穏やかな流動状態で45時間放置し
て原料樹脂液の均質性を高めた。このようにして調製し
た原料樹脂液を成形型に注入し、真空脱気したのち10
0℃に加熱し、最終的に200℃の温度で硬化した。得
られた硬化樹脂成形体をアルゴン雰囲気中で1000℃
に加熱し、更に2000℃の温度に加熱して炭化し、S
i原子の含有量(x)が12.3wt%のガラス状カーボ
ン材を製造した。
【0029】比較例3
フェノール樹脂の前駆体溶液を成形型に注入し、真空脱
気したのち100℃に加熱し、最終的に200℃の温度
で硬化した。得られた硬化樹脂成形体をアルゴン雰囲気
中で1000℃に加熱し、更に2000℃の温度に加熱
して炭化し、ガラス状カーボン材を製造した。
気したのち100℃に加熱し、最終的に200℃の温度
で硬化した。得られた硬化樹脂成形体をアルゴン雰囲気
中で1000℃に加熱し、更に2000℃の温度に加熱
して炭化し、ガラス状カーボン材を製造した。
【0030】このようにして製造したガラス状カーボン
材について、下記の方法によりSi原子の含有量(x)
およびO原子の含有量(y)を測定し、また、X線回折
および透過型電子顕微鏡(TEM)により組織性状を観
察した。その結果を表1に示した。
材について、下記の方法によりSi原子の含有量(x)
およびO原子の含有量(y)を測定し、また、X線回折
および透過型電子顕微鏡(TEM)により組織性状を観
察した。その結果を表1に示した。
【0031】(1)Si含有量(x);試料を恒量となるま
で灰化し、以下の方法でSiを定量した。 灰化サンプルに炭酸ナトリウムとほう酸を加えて溶融
する。 次いで塩酸および硝酸を加えて溶解した後、過塩素酸
で脱水処理する。 沈殿物を灰化した後、秤量する(a)。 更に、ふっ酸処理した後、秤量する(b)。 (a)−(b)を求め、試料中のSi量を算出する。
で灰化し、以下の方法でSiを定量した。 灰化サンプルに炭酸ナトリウムとほう酸を加えて溶融
する。 次いで塩酸および硝酸を加えて溶解した後、過塩素酸
で脱水処理する。 沈殿物を灰化した後、秤量する(a)。 更に、ふっ酸処理した後、秤量する(b)。 (a)−(b)を求め、試料中のSi量を算出する。
【0032】(2)O含有量(y);堀場製作所製、酸素分
析装置 EMGA-2800で測定した。
析装置 EMGA-2800で測定した。
【0033】(3)組織性状 ;
X線測定;日本学術振興会第117委員会が定める人
造黒鉛の格子定数及び結晶子の測定方法により金属Si
及びSi化合物に帰属する回折線の有無を観察して、結
晶性Si及びSi化合物の有無を確認した。 TEM観察;試料を切断して、破断面を300万倍の
倍率で無作為に10箇所観察し、粒状構造の有無を確認
した。
造黒鉛の格子定数及び結晶子の測定方法により金属Si
及びSi化合物に帰属する回折線の有無を観察して、結
晶性Si及びSi化合物の有無を確認した。 TEM観察;試料を切断して、破断面を300万倍の
倍率で無作為に10箇所観察し、粒状構造の有無を確認
した。
【0034】
【表1】
注 *1; 0.4ppm
【0035】次に、これらのガラス状カーボン材から、
電解試験用の電極(陽極)として、40×15×3mmの
サンプルを切り出し、サイクリックボルタモグラムを用
いて定電流電解試験を行った。電解試験は、電解浴に濃
度41%の硝酸、陰極および参照極に白金を用い、電流
値を50 mAに固定して48時間電解試験を行った。な
お、電解浴中への陽極の浸漬部分は15×30×3mmと
した。この電解試験による陽極サンプルの消耗、固有抵
抗の変化を下記の方法により測定し、得られた結果を表
2に示した。
電解試験用の電極(陽極)として、40×15×3mmの
サンプルを切り出し、サイクリックボルタモグラムを用
いて定電流電解試験を行った。電解試験は、電解浴に濃
度41%の硝酸、陰極および参照極に白金を用い、電流
値を50 mAに固定して48時間電解試験を行った。な
お、電解浴中への陽極の浸漬部分は15×30×3mmと
した。この電解試験による陽極サンプルの消耗、固有抵
抗の変化を下記の方法により測定し、得られた結果を表
2に示した。
【0036】(4)重量測定 ;
電解試験前 ;サンプルをアセトンで15分、蒸留水で
15分超音波洗浄し、110℃で5時間以上減圧乾燥し
た後、重量を測定した。 電解試験後 ;蒸留水でゆっくりとリンスして電解質を
取り除いた後、110℃で5時間以上減圧乾燥して、重
量を測定した。 消耗率 ;電解試験前後の重量の差から消耗率を算出し
た。 (5)炭素粉の脱落 ;電解試験後の電解液を濾紙を用いて
濾過し、濾紙を乾燥後、光学顕微鏡(倍率400倍)によ
り炭素粉の有無を確認した。 (6)固有抵抗 ;JIS R7202(人造黒鉛の固有抵
抗試験)に準じて測定した。
15分超音波洗浄し、110℃で5時間以上減圧乾燥し
た後、重量を測定した。 電解試験後 ;蒸留水でゆっくりとリンスして電解質を
取り除いた後、110℃で5時間以上減圧乾燥して、重
量を測定した。 消耗率 ;電解試験前後の重量の差から消耗率を算出し
た。 (5)炭素粉の脱落 ;電解試験後の電解液を濾紙を用いて
濾過し、濾紙を乾燥後、光学顕微鏡(倍率400倍)によ
り炭素粉の有無を確認した。 (6)固有抵抗 ;JIS R7202(人造黒鉛の固有抵
抗試験)に準じて測定した。
【0037】
【表2】
【0038】表1、2の結果から、Si原子の含有量
(x)が0.5〜15wt%、O原子の含有量(y)が
(x)±2wt%、の範囲内でSiとOが均一に分散した
組織構造を有し、Si化合物や粒状組織が観察されない
組織性状を備えるガラス状カーボン材で形成した実施例
1〜4の電極は、50 mAの定電流で48時間の電解試
験においても電解酸化による消耗が少なく、電解試験後
の電解液中への脱落炭素粉も僅少で、更に、固有抵抗値
の変化も小さく、安定であることが判る。
(x)が0.5〜15wt%、O原子の含有量(y)が
(x)±2wt%、の範囲内でSiとOが均一に分散した
組織構造を有し、Si化合物や粒状組織が観察されない
組織性状を備えるガラス状カーボン材で形成した実施例
1〜4の電極は、50 mAの定電流で48時間の電解試
験においても電解酸化による消耗が少なく、電解試験後
の電解液中への脱落炭素粉も僅少で、更に、固有抵抗値
の変化も小さく、安定であることが判る。
【0039】これに対し、Si原子の含有量が多く、S
i化合物や粒状組織が観察される比較例1の電極は電解
酸化による消耗率が大きく、電解後の固有抵抗値の増大
や電解液中への脱落炭素粉も多いことが認められる。ま
た、Si原子の含有量に比べO原子の含有量が少なく、
Si化合物や粒状組織も観察される比較例2の電極も電
解酸化による消耗率が大きく、電解後の固有抵抗値の増
大や電解液中への脱落炭素粉も多いことが認められる。
一方、Si原子を含有しない比較例3の電極では、実施
例の電極に比べて電解酸化による消耗が多く、また電解
液中への脱落炭素粉も多いことが判る。
i化合物や粒状組織が観察される比較例1の電極は電解
酸化による消耗率が大きく、電解後の固有抵抗値の増大
や電解液中への脱落炭素粉も多いことが認められる。ま
た、Si原子の含有量に比べO原子の含有量が少なく、
Si化合物や粒状組織も観察される比較例2の電極も電
解酸化による消耗率が大きく、電解後の固有抵抗値の増
大や電解液中への脱落炭素粉も多いことが認められる。
一方、Si原子を含有しない比較例3の電極では、実施
例の電極に比べて電解酸化による消耗が多く、また電解
液中への脱落炭素粉も多いことが判る。
【0040】
【発明の効果】以上のとおり、本発明の電解セル用炭素
電極は、ガラス状カーボンの組織中に原子レベルのSi
とOが連続相として均一に分散複合し、組織中のSi原
子の含有量(x)が0.5〜15wt%、O原子の含有量
(y)がSi原子の含有量(x)wt%に対し、x+2≧
y≧x−2(但し、y>0)の範囲内で均一に分布する
組織構造を備え、更に、X線回折によりSiやSi化合
物が観察されず、TEM観察によっても粒状組織が識別
できない組織性状を備えるガラス状カーボン材で形成さ
れているので優れた耐酸化性が付与され、電解酸化によ
る消耗が極めて少なく、長時間、安定して使用すること
が可能となる。したがって、電解によるオゾンなどのガ
ス発生や水中に存在する微生物を電解殺菌する水処理、
あるいは電解による(貴)金属回収、などの水溶液系の
電解セルの陽極として長時間使用することができ、耐久
性に優れた電解セル用の炭素電極として極めて有用であ
る。
電極は、ガラス状カーボンの組織中に原子レベルのSi
とOが連続相として均一に分散複合し、組織中のSi原
子の含有量(x)が0.5〜15wt%、O原子の含有量
(y)がSi原子の含有量(x)wt%に対し、x+2≧
y≧x−2(但し、y>0)の範囲内で均一に分布する
組織構造を備え、更に、X線回折によりSiやSi化合
物が観察されず、TEM観察によっても粒状組織が識別
できない組織性状を備えるガラス状カーボン材で形成さ
れているので優れた耐酸化性が付与され、電解酸化によ
る消耗が極めて少なく、長時間、安定して使用すること
が可能となる。したがって、電解によるオゾンなどのガ
ス発生や水中に存在する微生物を電解殺菌する水処理、
あるいは電解による(貴)金属回収、などの水溶液系の
電解セルの陽極として長時間使用することができ、耐久
性に優れた電解セル用の炭素電極として極めて有用であ
る。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
Fターム(参考) 4D061 DA01 DB01 DB09 DB18 EA02
EB04 EB29 EB31
4G032 AA07 AA13 AA14 AA42 BA05
GA01 GA12
4K011 AA02 AA16 DA01
4K021 AA09 BA01 DA13
Claims (2)
- 【請求項1】 ガラス状カーボンの組織中に原子レベル
のSi(珪素)とO(酸素)が均一に分散複合し、組織
中のSi原子の含有量(x)wt%が0.5〜15wt%で
あって、かつ、O原子の含有量(y)wt%がSi原子の
含有量(x)wt%に対し、x+2≧y≧x−2(但し、
y>0)の範囲内で均一に分布する組織構造を備えたガ
ラス状カーボン材からなることを特徴とする電解セル用
炭素電極。 - 【請求項2】 ガラス状カーボン材の組織構造がX線回
折によって金属SiおよびSi化合物が観察されず、ま
た、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察によって粒状組
織が識別できない組織性状を備える、請求項1記載の電
解セル用炭素電極。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001213503A JP2003027270A (ja) | 2001-07-13 | 2001-07-13 | 電解セル用炭素電極 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001213503A JP2003027270A (ja) | 2001-07-13 | 2001-07-13 | 電解セル用炭素電極 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003027270A true JP2003027270A (ja) | 2003-01-29 |
Family
ID=19048469
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001213503A Pending JP2003027270A (ja) | 2001-07-13 | 2001-07-13 | 電解セル用炭素電極 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2003027270A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2008132836A1 (ja) * | 2007-04-23 | 2008-11-06 | Mitsui Chemicals, Inc. | ガス生成装置およびガス生成用炭素電極 |
Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH10167826A (ja) * | 1996-12-05 | 1998-06-23 | Tokai Carbon Co Ltd | ガラス状カーボン材の製造方法 |
JP2000272965A (ja) * | 1999-03-25 | 2000-10-03 | Tokai Carbon Co Ltd | Si含有ガラス状カーボン材 |
-
2001
- 2001-07-13 JP JP2001213503A patent/JP2003027270A/ja active Pending
Patent Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH10167826A (ja) * | 1996-12-05 | 1998-06-23 | Tokai Carbon Co Ltd | ガラス状カーボン材の製造方法 |
JP2000272965A (ja) * | 1999-03-25 | 2000-10-03 | Tokai Carbon Co Ltd | Si含有ガラス状カーボン材 |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2008132836A1 (ja) * | 2007-04-23 | 2008-11-06 | Mitsui Chemicals, Inc. | ガス生成装置およびガス生成用炭素電極 |
JPWO2008132836A1 (ja) * | 2007-04-23 | 2010-07-22 | 三井化学株式会社 | ガス生成装置、ガス生成方法およびガス生成用炭素電極の製造方法 |
US8329008B2 (en) | 2007-04-23 | 2012-12-11 | Mitsui Chemicals, Inc. | Gas generating device and carbon electrode for gas generation |
JP5437794B2 (ja) * | 2007-04-23 | 2014-03-12 | 三井化学株式会社 | ガス生成装置、ガス生成方法およびガス生成用炭素電極の製造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Naguib et al. | Ti 3 C 2 T x (MXene)–polyacrylamide nanocomposite films | |
EP2754639B1 (en) | Porous silica-carbon composite body and method for producing same | |
CN105523761B (zh) | 一种污水污泥处理用耐蚀导电陶瓷电极材料及其制备方法 | |
JP2018511905A (ja) | シリコンカーボンナノ構造複合体 | |
KR101836110B1 (ko) | 탄소 나노튜브 제조용 촉매 조성물 | |
JP6891017B2 (ja) | 多孔質炭素材料、及びその製造方法 | |
Li et al. | Metal catalyst residues in carbon nanotubes decrease the thermal stability of carbon nanotube/silicone composites | |
Kim et al. | Bridge effect of carbon nanotubes on the electrical properties of expanded graphite/poly (ethylene terephthalate) nanocomposites | |
da Silva et al. | Carbon foam composites based on expanded graphite for electrochemical application | |
JP2008166641A (ja) | 熱伝導性及び電気伝導性を有する電磁シールド用の膨張化炭素繊維複合材料とその製造方法 | |
JP2003027270A (ja) | 電解セル用炭素電極 | |
KR101862945B1 (ko) | 내부식성이 향상된 도금강판 및 이의 제조방법 | |
JP2008247627A (ja) | 炭素材料の製造方法および炭素材料ならびに電気二重層キャパシタ | |
JP6707407B6 (ja) | 炭化ケイ素粉末の製造方法 | |
KR100769992B1 (ko) | 탄소나노튜브 정제 용액 및 그에 의한 탄소나노튜브의 정제방법 | |
JP2008163274A (ja) | 膨張化炭素繊維含有複合材料及びその製造方法 | |
Silva et al. | Preparation of silicon oxycarbide (SiCO) ceramics from different polymer architectures and assessment on the performance as electrodic materials for voltammetric sensing of antioxidant phenolic compounds | |
Giovanardi et al. | Microstructural characterisation and electrical properties of multiwalled carbon nanotubes/glass-ceramic nanocomposites | |
KR101064944B1 (ko) | 순수 탄소계 연료전지 분리판 제조 방법 | |
JP4719875B2 (ja) | 膨張化炭素繊維含有複合材料及びその製造方法 | |
JP4270138B2 (ja) | カーボンナノチューブおよびカーボンナノホーンの製造、カーボンナノチューブあるいはカーボンナノホーンを含有したアークスートの製造、ならびにカーボンナノバルーン合成用原料の製造に用いる炭素材料 | |
JP2005022902A (ja) | 金属−炭素複合材料 | |
JP3675885B2 (ja) | 耐摩耗性組成物 | |
Hermas et al. | Electrochemical coating of stainless steel with multi-walled carbon nanotubes/polyaniline composite layer | |
JP2002029843A (ja) | プラズマ処理装置用保護部材 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20071226 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20100526 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20100603 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20101021 |