JP2003027180A - 凝固組織及びパーライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片 - Google Patents

凝固組織及びパーライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片

Info

Publication number
JP2003027180A
JP2003027180A JP2001218479A JP2001218479A JP2003027180A JP 2003027180 A JP2003027180 A JP 2003027180A JP 2001218479 A JP2001218479 A JP 2001218479A JP 2001218479 A JP2001218479 A JP 2001218479A JP 2003027180 A JP2003027180 A JP 2003027180A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
molten steel
slab
fine
pearlite transformation
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001218479A
Other languages
English (en)
Inventor
Akifumi Seze
昌文 瀬々
Takashi Morohoshi
隆 諸星
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2001218479A priority Critical patent/JP2003027180A/ja
Publication of JP2003027180A publication Critical patent/JP2003027180A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Treatment Of Steel In Its Molten State (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 凝固組織を均一な等軸晶にし、内部割れや中
心偏析、センターポロシティ等に起因する鋳片や鋼板の
内部欠陥を防止し、更に、パーライト変態組織を微細に
して加工性や溶接部の靱性を向上することができる凝固
組織及びパーライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片を提
供する。 【解決手段】 炭素を0.5質量%以上を含む溶鋼11
に、Mgを添加してパーライト変態温度以上の温度領域
でMgS及びMgOを生成して凝固させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、凝固組織が微細な
等軸晶を備え、割れや中心偏析、センターポロシティ等
の内部欠陥がない、品質に優れ、しかも、パーライト変
態組織が微細で溶接部の靱性等に優れた凝固組織及びパ
ーライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、鋳片は、溶鋼から造塊法や連続鋳
造法により、スラブ、ブルーム、ビレット、薄鋳片等を
鋳造し、これを所定のサイズに切断して製造されてい
る。また、前記した鋳片を加熱炉等を用いて加熱した
後、粗圧延や仕上げ圧延等を施すことにより、鋼板や形
鋼等の鋼材に加工される。しかし、この鋳片は、凝固す
るまでの過程において、凝固組織が柱状晶等の大きな結
晶組織になるため、内部の凝固収縮時の負圧に起因する
センターポロシティ(ザク)、バルジングや前記凝固収
縮時の負圧に起因する中心偏析、あるいは溶鋼が冷却さ
れて凝固する過程で、凝固シェル(凝固殻)に加わる歪
みに起因する内部割れ等の内部欠陥が生じる。こうし
て、鋳片に発生した内部欠陥は、圧延後も鋼材に残存す
るため、鋼材の品質が低下し、製品として使用できなく
する(屑化)等の問題を生じさせる。
【0003】この対策として、鋳片の凝固組織を微細な
等軸晶にし、鋳片と、その鋳片を加工して得られる鋼材
の表面及び内部欠陥を防止する方法が試みられている。
鋳片の凝固組織を等軸晶化する方法としては、1)溶鋼
の温度を低くして低温鋳造する方法、2)凝固過程の溶
鋼を電磁攪拌する方法、3)溶鋼が凝固する際に凝固核
となる金属酸化物を添加する方法、又は、これ等1)〜
3)を組合せて行う方法が知られている。低温鋳造の具
体例としては、例えば特公平7−84617号公報に記
載されているように、溶鋼を連続鋳造する際、過熱温度
(実際の溶鋼温度からこの溶鋼の液相線温度を差し引い
た温度)を40℃以下にし、鋳型内で溶鋼を冷却しなが
ら鋳型から引き抜き、凝固した鋳片の等軸晶の割合を7
0%以上にして、フェライト系ステンレス鋼板に発生す
るリジングを防止する方法が提案されている。更に、溶
鋼の電磁攪拌については、特開昭50−16616号公
報に記載されているように、凝固過程の溶鋼に電磁攪拌
を行って、成長する柱状晶を抑制することで、鋳片の凝
固組織の等軸晶を60%以上にしてクロムを含むフェラ
イト系ステンレス鋼に発生するリジングを防止する方法
が提案されている。また、特開昭53−90129号公
報に記載されているように、溶鋼が凝固する際に凝固核
となる金属酸化物の添加と電磁攪拌を組合せることで、
鋳片の厚み方向の全断面の凝固組織を殆ど等軸晶にする
方法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公平
7−84617号公報の方法では、過熱温度が低いた
め、鋳造途中で溶鋼が凝固し、溶鋼を鋳型に注湯するノ
ズルの詰まりや鋳型内湯面の皮張りを生じて鋳造が困難
になる。更に、溶鋼の粘性が増加するため、介在物の浮
上が阻害されて介在物に起因した欠陥等が発生する等か
ら、十分な等軸晶を備えた鋳片を製造できる低い過熱温
度にすることが困難である。また、特開昭50−166
16号公報の方法では、鋳片の表面層の凝固組織を改善
してリジング等の表面欠陥の発生を抑制できるものの、
鋳片の表面層から内部にわたって凝固組織を均一な等軸
晶にすることが難しく、内部に割れや中心偏析、センタ
ーポロシティ等を発生させる場合がある。更に、特開昭
53−90129号公報では、鋳型内の溶鋼に、Co、
B、Mo、V、Ni等の酸化物を添加している。これ等
の酸化物は、低炭素やフェライト系ステンレス等の溶鋼
の場合に凝固組織の接種核として有効に作用させ、電磁
攪拌装置を併用して溶鋼を攪拌して、等軸晶を増加させ
ていると考えられるが、設備制約から設置そのものが困
難であり、しかも、多大の設備費用を伴う等の問題もあ
る。しかも、高炭素溶鋼を用いて鋳片を製造する際に、
如何なる種類の接種核を用いれば良いか、更に、その添
加条件をどのようにすれば微細な凝固組織となる溶鋼を
溶製し、微細な凝固組織を備え、パーライト変態組織が
微細な鋳片を低コストで工業的に安定して生産すること
ができるか明確でなかった。
【0005】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもの
で、凝固組織を均一な等軸晶にし、内部割れや中心偏
析、センターポロシティ等に起因する鋳片や鋼板の内部
欠陥を防止し、圧延等の加工性や溶接部の靱性を向上す
ることができる凝固組織及びパーライト変態組織の微細
な高炭素鋼鋳片を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的に沿う本発明に
係る凝固組織及びパーライト変態組織の微細な高炭素鋼
鋳片は、炭素を0.5質量%以上を含む溶鋼に、Mgを
添加してパーライト変態温度以上の温度領域でMgS及
びMgOを生成して凝固させている。この鋳片は、パー
ライト変態温度以上の温度領域で、MgS、MgOを生
成させているので、溶鋼が凝固する前に生成したMg
S、MgOが接種核、あるいは溶鋼が凝固した鋳片の内
部に生成したMgS、MgOがパーライト変態時の核と
して作用し、鋳片の凝固組織やパーライト変態組織を微
細にすることができる。
【0007】ここで、前記溶鋼に凝固温度以上の領域
で、前記MgSを生成させると良い。これにより、溶鋼
が凝固する前にMgSを生成させるので、溶鋼が凝固す
る時にMgSを接種核として作用させることができ、鋳
片の凝固組織を微細にし、しかも、パーライト変態時に
MgOを接種核として作用させることができ、パーライ
ト変態組織を微細にすることができる。
【0008】更に、添加したMgを含む前記溶鋼中のM
gと該溶鋼中のSは、下式を満たすと良い。 (Mg質量%−1.5×O質量%)×S質量%>4×10-5 ・・・(1) これにより、MgSを安定して生成しているので、この
MgSは、凝固初晶がγ−Feである溶鋼の接種核とし
て作用し、鋳片の凝固組織を微細にすることができ、内
部に割れや中心偏析、センターポロシティ等を防止する
ことができる。なお、Mg質量%は溶鋼中に含まれるM
g質量%、O質量%は溶鋼中に含まれるO質量%、S質
量%は溶鋼中に含まれるS質量%である。
【0009】また、添加したMgを含む前記溶鋼中のM
gと該溶鋼中のMnは、下式を満たす範囲にすることが
できる。 (Mn質量%)×(S質量%−1.33×Mg質量%)>2×10-4 ・・・・・(2) これにより、鋳片に含まれるMnSが十分に形成され、
MgSの周囲にMnSの析出が容易になり、凝固前に析
出したMgOと併せてパーライト変態時のフェライトの
析出核として作用し、パーライト変態組織を微細にする
ことができる。なお、Mg質量%は溶鋼中に含まれるM
g質量%、S質量%は溶鋼中に含まれるS質量%、Mn
質量%は溶鋼中に含まれるMn質量%である。
【0010】更に、添加したMgを含む前記溶鋼中のM
gと該溶鋼中のS及びMnは、下式を満たすことが好ま
しい。 (Mg質量%−1.5×O質量%)×S質量%>4×10-5 ・・・(1) かつ、 (Mn質量%)×(S質量%−1.33×Mg質量%)>2×10-4 ・・・・・(2) これにより、高炭素の溶鋼中に生成したMgSが溶鋼の
凝固過程で、接種核として作用して凝固組織が微細にな
る。更に、溶鋼の凝固した鋳片を冷却する過程におい
て、既に生成しているMgSの周囲にMnSを析出さ
せ、Mnの欠乏層を生じさせるため、共析変態の温度を
上昇させ、MnSの周囲での共析変態を生じ易くする。
そして、粒内変態を生じてパーライト変態組織を微細に
することができ、鋳片の組織を接種核によって微細化
し、更に変態組織を微細化する相乗作用によって、組織
をより微細にすることができる。なお、Mg質量%は溶
鋼中に含まれるMg質量%、O質量%は溶鋼中に含まれ
るO(酸素)質量%、S質量%は溶鋼中に含まれるS質
量%、Mn質量%は溶鋼中に含まれるMn質量%であ
る。
【0011】更に、前記溶鋼を凝固させた鋳片は、Mg
Sを10〜1000個/mm2 含むこともできる。溶鋼
中に生成したMgSを溶鋼の凝固過程において、接種核
として作用させて凝固組織を安定して微細にし、更に、
鋳片が冷却される過程で、MgSの周囲にMnSを析出
させて、共析変態を安定して生じさせて粒内変態を促進
し、パーライト変態組織を微細にすることができる。鋳
片に含まれるMgSの個数が10個/mm2 未満になる
と、接種核として作用するMgSの量が不足し、鋳片の
凝固組織を微細にすることができない。一方、MgSの
個数が1000個/mm2 を超えると、MgSが多くな
り過ぎて鋳片の機械的強度等が低下する。
【0012】また、前記鋳片は、軌条に用いることがで
きる。炭素を0.5質量%以上含む高炭素溶鋼の凝固組
織を微細にしているので、この鋳片に圧延等の加工を施
した軌条の内部欠陥を防止し、しかも、パーライト変態
組織を微細にすることができ、軌条の溶接部の靱性を高
めることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】続いて、添付した図面を参照しつ
つ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発
明の理解に供する。図1は本発明の一実施の形態に係る
凝固組織及びパーライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片
を製造するために使用される溶鋼の処理装置の説明図、
図2は同鋳片を製造する連続鋳造装置の説明図である。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る凝固組
織及びパーライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片を製造
するために用いる溶鋼の処理装置10は、炭素を0.5
質量%以上含む高炭素溶鋼(溶鋼ともいう)11を入れ
た取鍋12と、溶鋼11を覆うスラグ13を貫通して溶
鋼11内に金属Mgワイア14を添加する案内ガイド1
5と、金属Mgワイア14を送給する供給装置16を有
し、取鍋12の上方に合金鉄や脱酸剤を添加するシュー
ト17を備えている。更に、図2に示すように、溶鋼の
処理装置10で処理された溶鋼11から凝固組織及びパ
ーライト変態組織の微細な組織を備えた鋳片25を鋳造
する連続鋳造装置20は、Mgを添加した溶鋼11を貯
湯したタンディッシュ21と、タンディッシュ21の底
部に取付けられた浸漬ノズル22と、浸漬ノズル22を
介して、溶鋼11を注湯する鋳型23を有し、鋳型23
の下方には、図示しない冷却水ノズルを設けた支持セグ
メント24と、溶鋼11が凝固殻25aを形成した鋳片
25を圧下する圧下セグメント26と、鋳片25を所定
の速度で引き抜くための一対のピンチロール27を備え
ている。
【0014】次に、本実施の形態に係る凝固組織及びパ
ーライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片について、溶鋼
の処理装置10と、鋳片25を製造する連続鋳造装置2
0を用いて説明する。炭素を0.5質量%以上を含有
し、脱炭精錬時の脱硫処理時にS濃度を所定値にした溶
鋼11を溶鋼の処理装置10の取鍋12に入れ、この溶
鋼11にシュート17からフェロマンガン合金、金属A
lやAl合金等を添加して溶鋼11中のMn濃度、酸素
(O)濃度を所定値に調整をする。更に、金属Mgワイ
ア14を案内ガイド15を介して供給装置16からスラ
グ13を貫通して溶鋼11内に送給して、溶鋼11にM
gを添加し、溶鋼11のMg濃度を0.004〜0.1
0質量%にする。溶鋼11へのMgの添加は、溶鋼11
をサンプリングして、Mn(マンガン)質量%とO質量
%、S(硫黄)質量%を測定し、この値を基に、金属M
gワイア14を添加した際のMg歩留りから溶鋼11中
のMg質量%を求め、溶鋼11に含まれるMg濃度(質
量%)、S質量%、Mn質量%、O質量%が(1)式を
満足するように調整を行う。 (Mg質量%−1.5×O質量%)×S質量%>4×10-5 ・・・(1) この場合、溶鋼11が凝固する前にMgSを生成するこ
とができ、溶鋼11の凝固初晶がγ−Feである溶鋼の
接種核として作用させることができる。更に、溶鋼11
中のMn質量%、S質量%、Mg質量%が(2)式を満
たすようにすることもできる。 (Mn質量%)×(S質量%−1.33×Mg質量%)>2×10-4 ・・・・・(2) この条件を満たすことにより、溶鋼11が凝固した鋳片
に含まれるMnSを十分に形成し、MgSの周囲にMn
Sの析出が容易にして、凝固前に析出したMgOと併せ
て、500〜730℃で起きるパーライト変態時のフェ
ライトの析出核として作用させることができる。
【0015】次に、溶鋼11の凝固組織とパーライト変
態組織の両方をより微細にする場合、前記した(1)、
(2)式を同時に満たす条件になるように、溶鋼11を
調整することが好ましいので、本実施の形態において、
前記した(1)、(2)式を同時に満たす溶鋼を凝固さ
せた鋳片の場合について説明する。溶鋼11の調整は、
前記したように、溶鋼11をサンプリングして、Mn
(マンガン)質量%とO質量%、S(硫黄)質量%を測
定し、この値を基に、金属Mgワイア14を添加した際
のMg歩留りから溶鋼11中のMg質量%を求め、溶鋼
11に含まれるMg濃度(質量%)、S質量%、Mn質
量%、O質量%が(1)、(2)式両方を満足するよう
に調整を行う。 (Mg質量%−1.5×O質量%)×S質量%>4×10-5 ・・・(1) かつ、 (Mn質量%)×(S質量%−1.33×Mg質量%)>2×10-4 ・・・・・(2) (1)式において、(1.5×O質量%)は、溶鋼中の
酸素がすべてMgOとなった場合の化学量論的計算から
求めた値であり、過剰に添加されたMg質量%は、(M
g質量%−1.5×O質量%)で表される。また、この
過剰に添加されたMg質量%とS質量%の積を実験を行
って求めた結果、濃度の積が4×10-5より大きければ
安定してMgSを生成することが分かった。更に、Mg
Sの生成後にMnSを生成させるには、Mgと結合する
量より過剰のSを添加する必要がある。この過剰のS
は、(S質量%−1.33×Mg質量%)で表され、こ
の過剰のSとMnの濃度積、即ち、(Mn質量%)×
(S質量%−1.33×Mg質量%)が2×10-4を超
えるようにする必要があるからである。
【0016】Mgを添加し、タンディッシュ21に貯湯
された溶鋼11は、タンディッシュ21の底部に設けた
浸漬ノズル22を介して鋳型23に注湯され、鋳型23
による冷却と、支持セグメント24に布設された冷却水
ノズルからの散水によって冷却されて凝固殻25aを形
成し、支持セグメント24の下流側に進むにつれて、冷
却水の散水により抜熱される。この抜熱によって徐々に
凝固殻25aの厚みを増した鋳片25は、支持セグメン
ト24の下流側に配置された圧下セグメント26によ
り、1〜10mmの押し込み量で圧下された後、完全に
凝固する。鋳片25の製造過程において、溶鋼11の温
度が低下して凝固を開始する前の温度、即ち、溶鋼11
が凝固を開始する温度以上の温度で、まず、MgOやM
gO・Al23 が生成する。しかし、高炭素溶鋼の場
合、凝固初晶がγ−Feであるため、MgOやMgO・
Al23 は、凝固時の接種核として作用しない。
【0017】次に、溶鋼11中のO(酸素)との反応に
消費されるMg量よりも多量にMgを添加しているた
め、MnSが析出を開始する前に、過剰に添加されたM
gが、溶鋼11中のS(硫黄)と反応してMgSを10
〜1000個/mm2 生成する。炭素濃度が0.5質量
%以上の高炭素溶鋼の凝固初晶はγ−Feであるので、
MgSがγ−Feの接種核として作用して凝固組織を微
細にする。更に、温度が低下した後に析出するMnSと
先に生成したMgSの格子歪み(MnSとMgSの格子
定数の差/MgSの格子定数の値)が小さく、即ち、格
子整合性が良好であるため、鋳片25が連続鋳造装置2
0内で冷却され、その温度が約1000〜1200℃に
なる領域で、MgSの周囲にMnSが優先的に析出す
る。鋳片25を凝固後、更に冷却すると、オーステナイ
ト相から500〜730℃で起きるフェーライト相とセ
メンタイト相の共析相への変態いわゆるパーライト変態
を生じる。溶鋼11にMgを添加したことにより、生成
したMgSが溶鋼11の凝固時のオーステナイト相の接
種核として作用し、オーステナイト相の凝固組織を微細
にし、更に、オーステナイト相からフェーライト相とセ
メンタイト相の共析相の移行過程で、MgOやMgO・
Al23 がフェーライト相の接種核として作用して、
パーライト変態組織の微細化に寄与する。
【0018】そして、冷却過程を経た鋳片25の内部で
は、MnSがMgSの周囲に優先的に析出し、このMn
Sの成長に伴って、周囲のマトリックスからのMn及び
SがMgSの周囲に取り込まれる。このMgSの周囲で
は、MnやSが欠乏する。特に、Mnが欠乏すると、共
析変態温度が上昇し、Mnの欠乏層では、通常部(Mg
Sから離れた領域)に比べて優先的にγ相からα相への
変態が生じる。即ち、MnSを核としてパーライト組織
も微細にすることができる。この鋳片25は、凝固組織
が微細であるので、内部に発生する内部割れや溶鋼流動
に伴う中心偏析、センターポロシティ等の内部欠陥が無
く、鋳片25の手入れや屑化をなくして良鋳片の歩留り
及び品質を向上させることができる。このようにして鋳
造された鋳片25は、ピンチロール27により引き抜か
れて、図示しない切断機により所定のサイズに切断され
てから圧延等の後工程に搬送される。この鋳片25に圧
延等の加工を施した軌条においても、優先的にγ相から
α相への変態が生じてパーライト組織を微細にすること
ができ、内部欠陥及び表面疵等の表面欠陥の発生が防止
でき、軌条の手入れ等の解消や良製品歩留り等の向上が
可能になる。
【0019】鋳片25の介在物の種類と量は、鋳片25
の全断面の一部を切り出して、この切り出し片を一般に
用いられている光学顕微鏡で観察することにより、測定
することができる。また、凝固組織は、鋳片25をピク
リン酸でエッチングして、デンドライト組織を検出し、
この組織から等軸晶か、柱状晶かを判別することができ
る。
【0020】
【実施例】次に、凝固組織及びパーライト変態組織の微
細な高炭素鋼鋳片の実施例について説明する。表1に示
す組成の高炭素鋼用の溶鋼350トンを取鍋に入れ、こ
の溶鋼にMgワイアを添加して、溶鋼中のMg濃度%、
S質量%、Mn質量%、O質量%をそれぞれ調整し、鋳
型の内寸で、厚み250mm、内幅1200mmの鋳型
に鋳湯し、0.8m/分の速度でピンチロールにより引
き抜いて鋳片を鋳造した。
【0021】
【表1】
【0022】そして、鋳造した鋳片の凝固組織及びパー
ライト組織、内部品質、溶接部靱性について調査した。
その結果を表2に示す。実施例1及び実施例2は、溶鋼
中のMg質量%、S質量%、Mn質量%、O質量%が前
記した(1)、(2)式を満たす場合であり、いずれも
凝固組織が等軸晶にでき、内部品質も割れや中心偏析、
センターポロシティ等の内部欠陥が無く良好(◎)であ
り、また、パーライト組織が微細なため、この鋳片を加
工した高炭素鋼の溶接部の靱性についても良好(◎)な
結果が得られた。実施例3及び実施例4は、溶鋼中のM
g質量%、S質量%、O質量%が前記した(1)式を満
たす場合であり、いずれも溶鋼が凝固する前に、MgS
が生成し、凝固初晶がγ−Feの溶鋼の接種核として作
用し、凝固組織が等軸晶にでき、内部品質も割れや中心
偏析、センターポロシティ等の内部欠陥が少なく、良い
(○)結果となり、また、パーライト組織が微細なた
め、この鋳片を加工した高炭素鋼の溶接部の靱性につい
ても良い(○)結果が得られた。実施例5及び実施例6
は、溶鋼中のMg質量%、S質量%、Mn質量%が前記
した(2)式を満たす場合であり、実施例5では、溶鋼
が凝固する前に、生成するMgSの個数が少なく、溶鋼
が凝固した後にMgSが析出し、溶鋼の凝固前生成した
MgOと併せてパーライト変態時のフェライトの析出核
として作用し、鋳片の凝固組織が粗大になった。しか
し、パーライト組織が微細で良く(○)なり、溶接靱性
も良く(○)することができた。実施例6では、溶鋼中
のMg濃度が低く、溶鋼が凝固する前に、生成するMg
Sの個数が少なく、鋳片の凝固組織が粗大になった。し
かし、パーライト組織が微細で良く(○)なり、溶接靱
性も良く(○)することができた。
【0023】
【表2】
【0024】これに対し、比較例1は、Mgの添加量が
少なく、十分なMgSやMgOを生成できなかった場
合、比較例2は、溶鋼にMgを添加しなかった場合であ
り、いずれも凝固組織及びパーライト組織が粗大にな
り、内部品質が悪く、この鋳片を加工した高炭素鋼の溶
接部の靱性も低下した。
【0025】以上、本発明の実施の形態を説明したが、
本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨
を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲であ
る。例えば、鋳片は、連続鋳造の他に、造塊法やベルト
キャスター等の鋳造法により鋳造することができる。更
に、MgやMg合金等を薄鋼で覆ったワイヤーを添加す
る他に、Mg、又はMg合金等を溶鋼に浸漬ランスを用
いて吹き込んで添加することもできる。
【0026】
【発明の効果】請求項1〜7記載の凝固組織及びパーラ
イト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片においては、炭素を
0.5質量%以上を含む溶鋼に、Mgを添加してパーラ
イト変態温度以上の温度領域でMgS及びMgOを生成
して凝固させるので、凝固組織を均一な等軸晶にし、内
部割れや中心偏析、センターポロシティ等に起因する鋳
片や鋼板の内部欠陥を防止し、圧延等の加工性や溶接部
の靱性を向上することができる。
【0027】特に、請求項2記載の凝固組織及びパーラ
イト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片においては、溶鋼に
凝固温度以上の領域で、MgSを生成させるので、溶鋼
が凝固する時にMgSを接種核として作用させて鋳片の
凝固組織を微細にし、しかも、パーライト変態時にMg
Oを接種核として作用させてパーライト変態組織を微細
にすることができる。
【0028】請求項3記載の凝固組織及びパーライト変
態組織の微細な高炭素鋼鋳片においては、溶鋼中のMg
とSを所定の範囲にしているので、MgSを安定して生
成させて凝固初晶がγ−Feである溶鋼の接種核として
作用し、鋳片の凝固組織を微細にすることができ、内部
に割れや中心偏析、センターポロシティ等を発生を防止
することができる。
【0029】請求項4記載の凝固組織及びパーライト変
態組織の微細な高炭素鋼鋳片においては、溶鋼中のMg
とMnを所定の範囲にしているので、鋳片に含まれるM
nSが十分に形成され、MgSの周囲にMnSの析出が
容易になり、凝固前に析出したMgOと併せてパーライ
ト変態時のフェライトの析出核として作用し、パーライ
ト変態組織を微細にすることができる。
【0030】請求項5記載の凝固組織及びパーライト変
態組織の微細な高炭素鋼鋳片においては、溶鋼中のM
g、S及びMnを所定の範囲にしているので、高炭素の
溶鋼中に生成したMgSが溶鋼の凝固過程で、接種核と
して作用して凝固組織が微細になる。更に、溶鋼の凝固
した鋳片を冷却する過程において、既に生成しているM
gSの周囲にMnSを析出させ、Mnの欠乏層を生じさ
せるため、共析変態の温度を上昇させ、MnSの周囲で
の共析変態を生じ易くする。そして、粒内変態を生じて
パーライト変態組織を微細にすることができ、鋳片の組
織を接種核による微細化と変態組織を微細化の相乗作用
によって、微細にすることができる。
【0031】請求項6記載の凝固組織及びパーライト変
態組織の微細な高炭素鋼鋳片においては、溶鋼を凝固さ
せた鋳片は、MgSを10〜1000個/mm2 含むの
で、溶鋼中に生成したMgSを溶鋼が凝固する時の接種
核として作用させて凝固組織を微細にでき、鋳片が冷却
される過程で、MgSの周囲にMnSを析出させてパー
ライト変態組織を安定して微細にすることができ、内部
欠陥が無く、且つ、鋳片を加工した鋼材の溶接部の靱性
等の品質を安定して向上することができる。
【0032】請求項7記載の凝固組織及びパーライト変
態組織の微細な高炭素鋼鋳片においては、鋳片を軌条に
用いるので、軌条の内部欠陥の発生を防止して品質を向
上でき、パーライト変態組織を微細にするので、軌条の
溶接による接続部の強度低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る凝固組織及びパー
ライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片を製造するために
使用される溶鋼の処理装置の説明図である。
【図2】同鋳片を製造する連続鋳造装置の説明図であ
る。
【符号の説明】
10:溶鋼の処理装置、11:高炭素溶鋼(溶鋼)、1
2:取鍋、13:スラグ、14:金属Mgワイア、1
5:案内ガイド、16:供給装置、17:シュート、2
0:連続鋳造装置、21:タンディッシュ、22:浸漬
ノズル、23:鋳型、24:支持セグメント、25:鋳
片、25a:凝固殻、26:圧下セグメント、27:ピ
ンチロール

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素を0.5質量%以上を含む溶鋼に、
    Mgを添加してパーライト変態温度以上の温度領域でM
    gS及びMgOを生成して凝固させることを特徴とする
    凝固組織及びパーライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳
    片。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の凝固組織及びパーライト
    変態組織の微細な高炭素鋼鋳片において、前記溶鋼に、
    該溶鋼の凝固温度以上の領域で、前記MgSを生成させ
    ていることを特徴とする凝固組織及びパーライト変態組
    織の微細な高炭素鋼鋳片。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の凝固組織及びパー
    ライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片において、添加し
    たMgを含む前記溶鋼中のMgと該溶鋼中のSは、下式
    を満たすことを特徴とする凝固組織及びパーライト変態
    組織の微細な高炭素鋼鋳片。 (Mg質量%−1.5×O質量%)×S質量%>4×1
    -5 なお、Mg質量%は溶鋼中に含まれるMg質量%、O質
    量%は溶鋼中に含まれるO質量%、S質量%は溶鋼中に
    含まれるS質量%である。
  4. 【請求項4】 請求項1又は2記載の凝固組織及びパー
    ライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片において、添加し
    たMgを含む前記溶鋼中のMgと該溶鋼中のMnは、下
    式を満たすことを特徴とする凝固組織及びパーライト変
    態組織の微細な高炭素鋼鋳片。 (Mn質量%)×(S質量%−1.33×Mg質量%)
    >2×10-4 なお、Mg質量%は溶鋼中に含まれるMg質量%、S質
    量%は溶鋼中に含まれるS質量%、Mn質量%は溶鋼中
    に含まれるMn質量%である。
  5. 【請求項5】 請求項1又は2記載の凝固組織及びパー
    ライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片において、添加し
    たMgを含む前記溶鋼中のMgと該溶鋼中のS及びMn
    が下式を満たすことを特徴とする凝固組織及びパーライ
    ト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片。 (Mg質量%−1.5×O質量%)×S質量%>4×1
    -5 かつ、 (Mn質量%)×(S質量%−1.33×Mg質量%)
    >2×10-4 なお、Mg質量%は溶鋼中に含まれるMg質量%、O質
    量%は溶鋼中に含まれるO質量%、S質量%は溶鋼中に
    含まれるS質量%、Mn質量%は溶鋼中に含まれるMn
    質量%である。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項に記載の凝
    固組織及びパーライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片に
    おいて、前記溶鋼を凝固させた鋳片は、MgSを10〜
    1000個/mm2 含むことを特徴とする凝固組織及び
    パーライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項に記載の凝
    固組織及びパーライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片に
    おいて、前記鋳片は、軌条に用いることを特徴とする凝
    固組織及びパーライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片。
JP2001218479A 2001-07-18 2001-07-18 凝固組織及びパーライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片 Pending JP2003027180A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001218479A JP2003027180A (ja) 2001-07-18 2001-07-18 凝固組織及びパーライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001218479A JP2003027180A (ja) 2001-07-18 2001-07-18 凝固組織及びパーライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003027180A true JP2003027180A (ja) 2003-01-29

Family

ID=19052652

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001218479A Pending JP2003027180A (ja) 2001-07-18 2001-07-18 凝固組織及びパーライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003027180A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013129906A (ja) * 2011-12-20 2013-07-04 National Cheng Kung Univ マグネシウムアルミニウムで改質される介在物による鋼結晶粒微細化の冶金方法

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000328190A (ja) * 1999-05-13 2000-11-28 Nippon Steel Corp 靭性および延性に優れた高強度パーライト系レールおよびその製造方法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000328190A (ja) * 1999-05-13 2000-11-28 Nippon Steel Corp 靭性および延性に優れた高強度パーライト系レールおよびその製造方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013129906A (ja) * 2011-12-20 2013-07-04 National Cheng Kung Univ マグネシウムアルミニウムで改質される介在物による鋼結晶粒微細化の冶金方法
CN103215409A (zh) * 2011-12-20 2013-07-24 成功大学 以镁铝改性包裹体细化钢晶粒的冶炼方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100550678B1 (ko) 주편의 응고조직을 미세화하기 위한 용강의 처리방법
JP3896650B2 (ja) 含Ti極低炭素鋼の製造方法
JPH0947854A (ja) 鋳片表面割れ抑制方法
JP2003027180A (ja) 凝固組織及びパーライト変態組織の微細な高炭素鋼鋳片
JP3039369B2 (ja) Ni含有鋼の製造方法
JP3374761B2 (ja) 連続鋳造鋳片、その連続鋳造方法および厚鋼板の製造方法
JP3450777B2 (ja) 希土類元素含有ステンレス鋼の製造方法
JP4081222B2 (ja) 微細な凝固組織を備えた鋳片及びそれを加工した鋼材
JP4592974B2 (ja) 無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法及び無方向性電磁鋼板用鋳片
CN116571707B (zh) 一种提高高碳钢连铸坯中心缩孔质量的方法
JP2004276042A (ja) 無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法及びその鋳片
JP4287974B2 (ja) 微細凝固組織特性を有する溶鋼の処理方法
JP7360033B2 (ja) 鋼の薄肉鋳片及び鋼の薄肉鋳片製造方法
JP4264189B2 (ja) 高炭素鋼用溶鋼の処理方法
JP2003064448A (ja) 凝固組織に優れた軌条用鋳片
KR100362659B1 (ko) 해양구조물용후판중탄소강의제조방법
JP4469092B2 (ja) 微細な凝固組織を備えた鋳片
JP2004276041A (ja) 無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法及び無方向性電磁鋼板用鋳片
JP2002322509A (ja) CaOを利用した凝固組織に優れた溶鋼の処理方法
JP4081218B2 (ja) 連続鋳造方法
JP3498506B2 (ja) 含Ni低温用鋼の連続鋳造による製造方法
JP2006136901A (ja) 連続鋳造方法
JPH11197797A (ja) 鋼の連続鋳造方法
JP2001089807A (ja) 溶鋼の処理方法
JP2003205348A (ja) 凝固組織の優れた鋳片の連続鋳造方法及びその鋳片

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080306

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100609

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100622

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20101026