JP2004276042A - 無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法及びその鋳片 - Google Patents
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Abstract
【課題】凝固組織を均一な等軸晶にし、内部割れや中心偏析、センターポロシティ等に起因する鋳片や鋼板の内部欠陥を防止し、凝固後にMnSが微細分散析出するのを抑制して磁性を向上することができる無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法及び無方向性電磁鋼板用鋳片を提供する。
【解決手段】無方向性電磁鋼板用の溶鋼を、溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%、S質量%、Mn質量%が下式を満たすように調整した後、その調整した溶鋼11を連続鋳造する無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法及び無方向性電磁鋼板用の鋳片。
(Sr質量%−5.5×O質量%)×(S質量%)>3.6×10−6
かつ、(Sr質量%−5.5×O質量%)>1/55×(Mn質量%)
【選択図】 図1
【解決手段】無方向性電磁鋼板用の溶鋼を、溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%、S質量%、Mn質量%が下式を満たすように調整した後、その調整した溶鋼11を連続鋳造する無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法及び無方向性電磁鋼板用の鋳片。
(Sr質量%−5.5×O質量%)×(S質量%)>3.6×10−6
かつ、(Sr質量%−5.5×O質量%)>1/55×(Mn質量%)
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、凝固組織が微細な等軸晶を備え、割れや中心偏析、センターポロシティ等の内部欠陥がなく、品質に優れ、しかも、凝固後にMnSが分散析出するのを抑制することができる無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法及びその鋳片に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鋳片は、溶鋼から造塊法や連続鋳造法により、スラブ、ブルーム、ビレット、薄鋳片等を鋳造し、これを所定のサイズに切断して製造されている。また、鋼材は、前記した鋳片を加熱炉等を用いて加熱した後、粗圧延や仕上げ圧延等を施すことにより、鋼板や形鋼等に加工される。しかし、この鋳片は、凝固するまでの過程において、凝固組織が柱状晶等の大きな結晶組織になるため、内部の凝固収縮時の負圧に起因するセンターポロシティ(ザク)、バルジングや前記凝固収縮時の負圧に起因する中心偏析、あるいは溶鋼が冷却されて凝固する過程で、凝固シェル(凝固殻)に加わる歪みに起因する内部割れ等の内部欠陥が生じる。こうして、鋳片に発生した内部欠陥は、圧延後も鋼材に残存するため、鋼材の品質を低下させ、場合によっては製品として使用できなくする(屑化)等の問題を生じさせる。
【0003】
この対策として、鋳片の凝固組織を微細な等軸晶(結晶粒)にし、鋳片と、その鋳片を加工して得られる鋼材の表面及び内部欠陥を防止する方法が試みられている。鋳片の凝固組織を等軸晶化する方法としては、(1)溶鋼の温度を低くして低温鋳造する方法、(2)凝固過程の溶鋼を電磁攪拌する方法、(3)溶鋼が凝固する際に凝固核となる金属酸化物を添加する方法、又は、これ等(1)〜(3)を組合せて行う方法が知られている。
【0004】
低温鋳造の具体例としては、例えば特公平7−84617号公報(特許文献1)に記載されているように、溶鋼を連続鋳造する際、過熱温度(実際の溶鋼温度からこの溶鋼の液相線温度を差し引いた温度)を40℃以下にし、鋳型内で溶鋼を冷却しながら鋳型から引き抜き、凝固した鋳片の等軸晶の割合を70%以上にして、フェライト系ステンレス鋼板に発生するリジングを防止する方法が提案されている。
【0005】
更に、溶鋼の電磁攪拌については、特開昭50−16616号公報(特許文献2)に記載されているように、凝固過程の溶鋼に電磁攪拌を行って、成長する柱状晶を抑制することで、鋳片の凝固組織の等軸晶を60%以上にしてクロムを含むフェライト系ステンレス鋼に発生するリジングを防止する方法が提案されている。また、特開昭53−90129号公報(特許文献3)に記載されているように、溶鋼が凝固する際に凝固核となる金属酸化物の添加と電磁攪拌を組合せることで、鋳片の厚み方向の全断面の凝固組織を殆ど等軸晶にする方法が提案されている。
【0006】
【引用文献】
(1)特許文献1(特公平7−84617号公報)
(2)特許文献2(特開昭50−16616号公報)
(3)特許文献3(特開昭53−90129号公報)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1の方法では、過熱温度が低いため、鋳造途中で溶鋼が凝固し、溶鋼を鋳型に注湯するノズルの詰まりや鋳型内湯面の皮張りを生じて鋳造が困難になる。更に、溶鋼の粘性が増加するため、介在物の浮上が阻害されて介在物に起因した欠陥等が発生する等から、十分な等軸晶を備えた鋳片を製造できる程度の低い過熱温度にすることが困難である。また、特許文献2の方法では、鋳片の表面層の凝固組織を改善してリジング等の表面欠陥の発生を抑制できるものの、鋳片の表面層から内部にわたって凝固組織を均一な等軸晶にすることが難しく、内部に割れや中心偏析、センターポロシティ等を発生させる場合がある。この鋳片の内部の凝固組織を改善するため、電磁攪拌装置を多段に配置して、内部の溶鋼を攪拌する方法も考えられるが、設備制約から設置そのものが困難であり、しかも、多大の設備費用を伴う等の問題もある。
【0008】
更に、特許文献3では、鋳型内の溶鋼に、Co、B、Mo、V、Ni等の酸化物を添加している。これ等の酸化物は、低炭素やフェライト系ステンレス等の溶鋼の場合に凝固組織の接種核として有効に作用して等軸晶を増加させるが、無方向性電磁鋼板の処理過程で生成するMnSの鋳型内での微細分散を防止することができないため、この鋳片から製造された無方向性電磁鋼板の磁性(鉄損)を悪くさせる。これは、無方向性電磁鋼板の処理過程で生成する粒径1μm以下の微細なMnSが、ピンニング粒子として作用し、熱処理過程における結晶粒の成長を阻害するからである。
【0009】
このように、従来の方法では、δ−Feが凝固初晶である無方向性電磁鋼板用の鋳片の凝固組織を均一な等軸晶にすることができず、鋳片に発生する内部欠陥を防止することが困難であり、しかも、MnSが微細分散析出するため、結晶粒が微細になり過ぎて無方向性電磁鋼板の鉄損を低下させるといった問題を解決することができない。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、凝固組織を均一な等軸晶にし、内部割れや中心偏析、センターポロシティ等に起因する鋳片や鋼板の内部欠陥を防止し、凝固後にMnSが微細分散析出するのを抑制して磁性を向上させることができる無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法及びその鋳片を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う本発明の無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法は、無方向性電磁鋼板用の溶鋼を、該溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%、S質量%、Mn質量%が下式を満たすように調整した後、この調整した溶鋼を連続鋳造している。(Sr質量%−5.5×O質量%)×(S質量%)>3.6×10−6
かつ
(Sr質量%−5.5×O質量%)>1/55×(Mn質量%)
なお、Sr質量%は溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%は溶鋼中に含まれるO質量%、S質量%は溶鋼中に含まれるS質量%、Mn質量%は溶鋼中に含まれるMn質量%である。この方法により、溶鋼中のOとSrを反応させ、SrO、Srを含む複合酸化物を生成させて溶鋼中に分散させ、これを溶鋼が凝固する際の接種核として作用させることができ、分散させた接種核を起点に溶鋼を凝固させるので、鋳片の凝固組織を均一な等軸晶にでき、鋳片の内部割れや中心偏析、センターポロシティ等の内部欠陥の発生を防止することができる。
【0011】
前記目的に沿う本発明に係る無方向性電磁鋼板用鋳片は、無方向性電磁鋼板用の溶鋼を、該溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%、S質量%、Mn質量%が下式を満たすように調整した後、この調整した溶鋼を連続鋳造し、該溶鋼が凝固を開始する温度以上の温度で該溶鋼中にSrOを生成させ、しかも、MnSが析出を開始するより前にSrSを生成させた後、SrSの周囲にMnSを析出させる。なお、Sr質量%は溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%は溶鋼中に含まれるO質量%、S質量%は溶鋼中に含まれるS質量%、Mn質量%は溶鋼中に含まれるMn質量%である。
【0012】
この鋳片は、SrO、あるいはSrを含む複合酸化物を、溶鋼が凝固する際の接種核として活用するため、鋳片の凝固組織を均一な等軸晶にして内部欠陥の発生を防止することができる。しかも、凝固過程でSrSの周囲にMnSを析出させ、母相(最初の凝固組織)中での微細なMnSの析出を防止するので、MnSの微細分散による結晶粒の微細化を抑制して結晶粒の成長を促進する。従って、この鋳片から製造した鋼材の磁性(鉄損)を向上させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1は本発明の一実施の形態に係る無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法に用いる連続鋳造装置の全体断面図である。図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法に用いる連続鋳造装置10は、図示しない金属ストロンチュウム(Sr)材料の一例である鉄被覆Srワイアを添加した溶鋼11を貯湯したタンディッシュ12と、タンディッシュ12の底部に取付けられた浸漬ノズル13と、浸漬ノズル13を介して、下側に流れる溶鋼11を注湯する鋳型14を有し、鋳型14の下方には、図示しない冷却水ノズルを設けた支持セグメント15と、溶鋼11が凝固殻16aを形成した鋳片16を圧下する圧下セグメント17と、鋳片16を所定の速度で引き抜くための一対のピンチロール18を備えている。
【0014】
次に、連続鋳造装置10を適用した無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法及び連続鋳造された無方向性電磁鋼板用鋳片について説明する。
本実施の形態に用いる無方向性電磁鋼板用の溶鋼としては表1に示す組成の溶鋼11のものとする。この理由は、溶鋼11中の炭素は鉄損を高めるので、その濃度を0.0050質量%以下とし、下限値を0.0005質量%としたのは精錬過程での脱炭処理コストが高くなるからであり、Siは周知のように鉄損を低下させる成分であり、この効果を得るための1.5質量%以上が必要であるが、過剰になると磁束密度の低下や圧延などの加工性がわるくなることから2.25質量%以下とした。
【0015】
【表1】
【0016】
そして、Alは、脱酸のために必要な元素であるので0.050質量%以上が必要であるが、過剰になると脱酸効果が飽和し、磁束密度の低下や脱酸処理コストの上昇を招くために上限を0.350質量%以下とした。
Pは、硬度を高め、打ち抜き性を向上するが、その含有量が0.025質量%を超えると鋼板の脆化の要因となるからである。この組成を有する溶鋼11を図示しない取鍋に受湯した後、サンプリングして、O質量%とS質量%を測定し、この値を基に、鉄被覆Srワイアを添加した際のSr歩留りから溶鋼11中のSr質量%を求め、溶鋼11に含まれるSr濃度(質量%)、S質量%、Mn質量%、O質量%が下式を満足するように調整した後、この調整した溶鋼11を連続鋳造する。
【0017】
(Sr質量%−5.5×O質量%)×(S質量%)>3.6×10−6
かつ、(Sr質量%−5.5×O質量%)>1/55×(Mn質量%)
なお、Sr質量%は溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%は溶鋼中に含まれるO質量%、S質量%は溶鋼中に含まれるS質量%、Mn質量%は溶鋼中に含まれるMn質量%である。
【0018】
前記式において、(5.5×O質量%)は、溶鋼中の酸素がすべてSrOとなった場合の化学量論的計算から求めた値であり、過剰に添加されたSr質量%は、(Sr質量%−5.5×O質量%)で表される。また、この過剰に添加されたSr質量%とS質量%の積を実験を行って求めた結果、濃度の積が3.6×10−6より大きければ安定してSrSを生成することが分かった。
更に、MnSが生成(析出開始)するより前にSrSを生成させるには、溶鋼中のSと結合する前記過剰のSr質量%を、溶鋼中のMn質量%の1/55倍より大きくする。これにより、SrSをMnSに対し優先して析出させる。
【0019】
Srを添加し、タンディッシュ12に貯湯された溶鋼11は、タンディッシュ12の底部に設けた浸漬ノズル13を介して鋳型14に注湯され、鋳型14による冷却と、支持セグメント15に布設された冷却水ノズルからの散水によって冷却されて凝固殻16aを形成し、支持セグメント15の下流側に進むにつれて、冷却水の散水により抜熱される。この抜熱によって順次凝固殻16aの厚みを増した鋳片16は、支持セグメント15の下流側に配置された圧下セグメント17により、1〜10mmの押し込み量で圧下された後、完全に凝固する。凝固した鋳片16の内部には、溶鋼11の温度が低下して凝固を開始する前の温度、即ち、溶鋼11が凝固を開始する温度以上の温度で、SrOやSrを含む複合酸化物を析出生成させており、また、このSrO、あるいはSrを含む複合酸化物は、溶鋼11が凝固する際に、接種核として作用するので、この周囲にδ−鉄が析出して均一な等軸晶(凝固組織)を形成することができる。
【0020】
次に、溶鋼11中のOとの反応に消費されるSr量よりも多量にSrを添加しているため、MnSが析出を開始する前に、過剰に添加されたSrが、溶鋼11中のS(硫黄)と反応してSrSを析出生成する。析出したSrSは、溶鋼11中のMnSの格子歪み(SrSとMnSの格子定数の差/MnSの格子定数の値)との差が小さく、SrSとMnSの格子整合性が良好であるため、鋳片16が連続鋳造装置10内で冷却され、その温度が約1000〜1200℃になる領域で、SrSの周囲にMnSが優先的に析出する。
【0021】
これにより、母相中に微細なMnSが微細分散析出するのを防止することができる。この鋳片16から製造した無方向性電磁鋼板は、微細分散するMnSを予めSrSの周囲に析出させるので、加熱焼鈍した際に鋳片16中に分散するMnSが少なくなり、微細なMnSによるピンニング作用を大幅に抑制でき、結晶粒の成長を促進することができる。
【0022】
その結果、SrOとSrSの相乗した働きにより、凝固組織を均一な等軸晶にし、しかも、MnSの微細分散析出を抑制しない場合よりも結晶粒を大きくした鋳片16を鋳造することができる。この鋳片16は、内部に発生する内部割れや溶鋼流動に伴う中心偏析、センターポロシティ等の内部欠陥が無く、鋳片16の手入れや屑化をなくして良鋳片の歩留り及び品質を向上させることができる。このようにして鋳造された鋳片16は、ピンチロール18により引き抜かれて、図示しない切断機により所定のサイズに切断されてから圧延等の後工程に搬送される。
【0023】
この鋳片16に、圧延等の加工を施した無方向電磁鋼板においても、内部欠陥及び表面疵やしわ等の表面欠陥の発生が防止でき、鋼板の手入れ等の解消や良製品歩留り等の向上が可能になる。しかも、SrSの周囲に大きなMnSを析出させているので、微細なMnSによる鋳片16中の結晶粒の極端な微細化が抑制されるため、優れた磁性(鉄損の低い)を得ることができる。鋳片16の介在物の種類と量は、鋳片16の全断面の一部を切り出して、この切り出し片を一般に用いられている光学顕微鏡で観察することにより、測定することができる。また、凝固組織は、鋳片16をピクリン酸でエッチングして、デンドライト組織を検出し、この組織から等軸晶か、柱状晶かを判別することができる。
【0024】
【実施例】
次に、本発明の一実施の形態に係る無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法を用いて鋳造した鋳片の実施例について説明する。主成分が表1に示す組成の無方向性電磁鋼板用の溶鋼350トンを取鍋に入れ、この溶鋼に鉄被覆Srワイアを添加して、溶鋼中のSr濃度、S質量%、Mn質量%、O質量%をそれぞれ調整し、内寸が厚み250mm、幅1200mmの鋳型に鋳湯し、1.2m/分の速度でピンチロールにより引き抜きいて鋳片を鋳造した。そして、鋳造した鋳片の凝固組織及び内部品質、鋼板の表面疵・しわ、磁気特性の良否について調査した。その結果を表2に示す。No.1〜5は本発明例であり、溶鋼中のSr質量%、S質量%、Mn質量%、O質量%が本発明の前記した式の関係を満たす場合であり、いずれも凝固組織が等軸晶にでき、内部品質も割れや中心偏析、センターポロシティ等の内部欠陥が無く、この鋳片を加工した無方向性電磁鋼板の表面疵・しわの発生が無く良好であり、磁気特性も良好な結果が得られた。
【0025】
【表2】
【0026】
これに対し、比較例No.6および比較例No.7は、溶鋼にSrを添加したが、Sr質量%、S質量%、Mn質量%、O質量%が本発明の前記した式の関係を満たさない場合であり、MnSがSrSよりも早く析出し、MnSを微細分散させてしまい、結晶粒の成長が阻害されて鋳片の結晶粒径が小さくなり、磁気特性も不良となった。比較例No.8は、添加したSrが酸素に消費され、SrSを生成できなかった場合であり、微細なMnSが鋳片中に分散して析出し、鋳片の結晶粒径が小さくなり、磁気特性が不良となった。比較例No.9はSrの添加量が少ない場合、比較例No.10はSrが無添加の場合であり、いずれも凝固組織が柱状晶になり、内部欠陥、表面疵・しわ、磁気特性の全てが不良となった。
【0027】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。例えば、鋳片は、連続鋳造の他に、造塊法やベルトキャスター、ロール等の鋳造法により鋳造することができる。更に、SrやSr合金等を薄鋼で覆った線状に加工したワイアを添加する他に、Sr、又はSr合金等を溶鋼に浸漬ランスを用いて吹き込んで添加することもできる。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により以下の効果を奏する。
(1)無方向性電磁鋼板用の溶鋼を、溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%、S質量%、Mn質量%が所定の範囲を満たすように調整した後、この調整した溶鋼を連続鋳造しているので、溶鋼が凝固した鋳片の凝固組織を均一な等軸晶にして内部欠陥を抑制し、鋳片の手入れや屑化を防止して良好な鋳片の歩留りを向上でき、鋳片の品質を高めることができる。
【0029】
(2)無方向性電磁鋼板用の溶鋼を、溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%、S質量%、Mn質量%が所定の範囲を満たすように調整した後、この調整した溶鋼を連続鋳造し、溶鋼が凝固を開始する温度以上の温度でSrOを生成させ、しかも、MnSが析出を開始するより前にMgSを生成させた後、SrSの周囲にMnSを析出させているので、均一な等軸晶を備えて内部欠陥及び表面疵等を防止して製品の歩留りを高め、SrSの周囲にMnSを粗大に析出させて結晶粒の成長を促進して無方向性電磁鋼板の磁性を安定して向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法に用いる連続鋳造装置の全体断面図である。
【符号の説明】
10 連続鋳造装置
11 溶鋼
12 タンディッシュ
13 浸漬ノズル
14 鋳型
15 支持セグメント
16 鋳片
16a 凝固殻
17 圧下セグメント
18 ピンチロール
【発明の属する技術分野】
本発明は、凝固組織が微細な等軸晶を備え、割れや中心偏析、センターポロシティ等の内部欠陥がなく、品質に優れ、しかも、凝固後にMnSが分散析出するのを抑制することができる無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法及びその鋳片に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鋳片は、溶鋼から造塊法や連続鋳造法により、スラブ、ブルーム、ビレット、薄鋳片等を鋳造し、これを所定のサイズに切断して製造されている。また、鋼材は、前記した鋳片を加熱炉等を用いて加熱した後、粗圧延や仕上げ圧延等を施すことにより、鋼板や形鋼等に加工される。しかし、この鋳片は、凝固するまでの過程において、凝固組織が柱状晶等の大きな結晶組織になるため、内部の凝固収縮時の負圧に起因するセンターポロシティ(ザク)、バルジングや前記凝固収縮時の負圧に起因する中心偏析、あるいは溶鋼が冷却されて凝固する過程で、凝固シェル(凝固殻)に加わる歪みに起因する内部割れ等の内部欠陥が生じる。こうして、鋳片に発生した内部欠陥は、圧延後も鋼材に残存するため、鋼材の品質を低下させ、場合によっては製品として使用できなくする(屑化)等の問題を生じさせる。
【0003】
この対策として、鋳片の凝固組織を微細な等軸晶(結晶粒)にし、鋳片と、その鋳片を加工して得られる鋼材の表面及び内部欠陥を防止する方法が試みられている。鋳片の凝固組織を等軸晶化する方法としては、(1)溶鋼の温度を低くして低温鋳造する方法、(2)凝固過程の溶鋼を電磁攪拌する方法、(3)溶鋼が凝固する際に凝固核となる金属酸化物を添加する方法、又は、これ等(1)〜(3)を組合せて行う方法が知られている。
【0004】
低温鋳造の具体例としては、例えば特公平7−84617号公報(特許文献1)に記載されているように、溶鋼を連続鋳造する際、過熱温度(実際の溶鋼温度からこの溶鋼の液相線温度を差し引いた温度)を40℃以下にし、鋳型内で溶鋼を冷却しながら鋳型から引き抜き、凝固した鋳片の等軸晶の割合を70%以上にして、フェライト系ステンレス鋼板に発生するリジングを防止する方法が提案されている。
【0005】
更に、溶鋼の電磁攪拌については、特開昭50−16616号公報(特許文献2)に記載されているように、凝固過程の溶鋼に電磁攪拌を行って、成長する柱状晶を抑制することで、鋳片の凝固組織の等軸晶を60%以上にしてクロムを含むフェライト系ステンレス鋼に発生するリジングを防止する方法が提案されている。また、特開昭53−90129号公報(特許文献3)に記載されているように、溶鋼が凝固する際に凝固核となる金属酸化物の添加と電磁攪拌を組合せることで、鋳片の厚み方向の全断面の凝固組織を殆ど等軸晶にする方法が提案されている。
【0006】
【引用文献】
(1)特許文献1(特公平7−84617号公報)
(2)特許文献2(特開昭50−16616号公報)
(3)特許文献3(特開昭53−90129号公報)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1の方法では、過熱温度が低いため、鋳造途中で溶鋼が凝固し、溶鋼を鋳型に注湯するノズルの詰まりや鋳型内湯面の皮張りを生じて鋳造が困難になる。更に、溶鋼の粘性が増加するため、介在物の浮上が阻害されて介在物に起因した欠陥等が発生する等から、十分な等軸晶を備えた鋳片を製造できる程度の低い過熱温度にすることが困難である。また、特許文献2の方法では、鋳片の表面層の凝固組織を改善してリジング等の表面欠陥の発生を抑制できるものの、鋳片の表面層から内部にわたって凝固組織を均一な等軸晶にすることが難しく、内部に割れや中心偏析、センターポロシティ等を発生させる場合がある。この鋳片の内部の凝固組織を改善するため、電磁攪拌装置を多段に配置して、内部の溶鋼を攪拌する方法も考えられるが、設備制約から設置そのものが困難であり、しかも、多大の設備費用を伴う等の問題もある。
【0008】
更に、特許文献3では、鋳型内の溶鋼に、Co、B、Mo、V、Ni等の酸化物を添加している。これ等の酸化物は、低炭素やフェライト系ステンレス等の溶鋼の場合に凝固組織の接種核として有効に作用して等軸晶を増加させるが、無方向性電磁鋼板の処理過程で生成するMnSの鋳型内での微細分散を防止することができないため、この鋳片から製造された無方向性電磁鋼板の磁性(鉄損)を悪くさせる。これは、無方向性電磁鋼板の処理過程で生成する粒径1μm以下の微細なMnSが、ピンニング粒子として作用し、熱処理過程における結晶粒の成長を阻害するからである。
【0009】
このように、従来の方法では、δ−Feが凝固初晶である無方向性電磁鋼板用の鋳片の凝固組織を均一な等軸晶にすることができず、鋳片に発生する内部欠陥を防止することが困難であり、しかも、MnSが微細分散析出するため、結晶粒が微細になり過ぎて無方向性電磁鋼板の鉄損を低下させるといった問題を解決することができない。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、凝固組織を均一な等軸晶にし、内部割れや中心偏析、センターポロシティ等に起因する鋳片や鋼板の内部欠陥を防止し、凝固後にMnSが微細分散析出するのを抑制して磁性を向上させることができる無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法及びその鋳片を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う本発明の無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法は、無方向性電磁鋼板用の溶鋼を、該溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%、S質量%、Mn質量%が下式を満たすように調整した後、この調整した溶鋼を連続鋳造している。(Sr質量%−5.5×O質量%)×(S質量%)>3.6×10−6
かつ
(Sr質量%−5.5×O質量%)>1/55×(Mn質量%)
なお、Sr質量%は溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%は溶鋼中に含まれるO質量%、S質量%は溶鋼中に含まれるS質量%、Mn質量%は溶鋼中に含まれるMn質量%である。この方法により、溶鋼中のOとSrを反応させ、SrO、Srを含む複合酸化物を生成させて溶鋼中に分散させ、これを溶鋼が凝固する際の接種核として作用させることができ、分散させた接種核を起点に溶鋼を凝固させるので、鋳片の凝固組織を均一な等軸晶にでき、鋳片の内部割れや中心偏析、センターポロシティ等の内部欠陥の発生を防止することができる。
【0011】
前記目的に沿う本発明に係る無方向性電磁鋼板用鋳片は、無方向性電磁鋼板用の溶鋼を、該溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%、S質量%、Mn質量%が下式を満たすように調整した後、この調整した溶鋼を連続鋳造し、該溶鋼が凝固を開始する温度以上の温度で該溶鋼中にSrOを生成させ、しかも、MnSが析出を開始するより前にSrSを生成させた後、SrSの周囲にMnSを析出させる。なお、Sr質量%は溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%は溶鋼中に含まれるO質量%、S質量%は溶鋼中に含まれるS質量%、Mn質量%は溶鋼中に含まれるMn質量%である。
【0012】
この鋳片は、SrO、あるいはSrを含む複合酸化物を、溶鋼が凝固する際の接種核として活用するため、鋳片の凝固組織を均一な等軸晶にして内部欠陥の発生を防止することができる。しかも、凝固過程でSrSの周囲にMnSを析出させ、母相(最初の凝固組織)中での微細なMnSの析出を防止するので、MnSの微細分散による結晶粒の微細化を抑制して結晶粒の成長を促進する。従って、この鋳片から製造した鋼材の磁性(鉄損)を向上させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1は本発明の一実施の形態に係る無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法に用いる連続鋳造装置の全体断面図である。図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法に用いる連続鋳造装置10は、図示しない金属ストロンチュウム(Sr)材料の一例である鉄被覆Srワイアを添加した溶鋼11を貯湯したタンディッシュ12と、タンディッシュ12の底部に取付けられた浸漬ノズル13と、浸漬ノズル13を介して、下側に流れる溶鋼11を注湯する鋳型14を有し、鋳型14の下方には、図示しない冷却水ノズルを設けた支持セグメント15と、溶鋼11が凝固殻16aを形成した鋳片16を圧下する圧下セグメント17と、鋳片16を所定の速度で引き抜くための一対のピンチロール18を備えている。
【0014】
次に、連続鋳造装置10を適用した無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法及び連続鋳造された無方向性電磁鋼板用鋳片について説明する。
本実施の形態に用いる無方向性電磁鋼板用の溶鋼としては表1に示す組成の溶鋼11のものとする。この理由は、溶鋼11中の炭素は鉄損を高めるので、その濃度を0.0050質量%以下とし、下限値を0.0005質量%としたのは精錬過程での脱炭処理コストが高くなるからであり、Siは周知のように鉄損を低下させる成分であり、この効果を得るための1.5質量%以上が必要であるが、過剰になると磁束密度の低下や圧延などの加工性がわるくなることから2.25質量%以下とした。
【0015】
【表1】
【0016】
そして、Alは、脱酸のために必要な元素であるので0.050質量%以上が必要であるが、過剰になると脱酸効果が飽和し、磁束密度の低下や脱酸処理コストの上昇を招くために上限を0.350質量%以下とした。
Pは、硬度を高め、打ち抜き性を向上するが、その含有量が0.025質量%を超えると鋼板の脆化の要因となるからである。この組成を有する溶鋼11を図示しない取鍋に受湯した後、サンプリングして、O質量%とS質量%を測定し、この値を基に、鉄被覆Srワイアを添加した際のSr歩留りから溶鋼11中のSr質量%を求め、溶鋼11に含まれるSr濃度(質量%)、S質量%、Mn質量%、O質量%が下式を満足するように調整した後、この調整した溶鋼11を連続鋳造する。
【0017】
(Sr質量%−5.5×O質量%)×(S質量%)>3.6×10−6
かつ、(Sr質量%−5.5×O質量%)>1/55×(Mn質量%)
なお、Sr質量%は溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%は溶鋼中に含まれるO質量%、S質量%は溶鋼中に含まれるS質量%、Mn質量%は溶鋼中に含まれるMn質量%である。
【0018】
前記式において、(5.5×O質量%)は、溶鋼中の酸素がすべてSrOとなった場合の化学量論的計算から求めた値であり、過剰に添加されたSr質量%は、(Sr質量%−5.5×O質量%)で表される。また、この過剰に添加されたSr質量%とS質量%の積を実験を行って求めた結果、濃度の積が3.6×10−6より大きければ安定してSrSを生成することが分かった。
更に、MnSが生成(析出開始)するより前にSrSを生成させるには、溶鋼中のSと結合する前記過剰のSr質量%を、溶鋼中のMn質量%の1/55倍より大きくする。これにより、SrSをMnSに対し優先して析出させる。
【0019】
Srを添加し、タンディッシュ12に貯湯された溶鋼11は、タンディッシュ12の底部に設けた浸漬ノズル13を介して鋳型14に注湯され、鋳型14による冷却と、支持セグメント15に布設された冷却水ノズルからの散水によって冷却されて凝固殻16aを形成し、支持セグメント15の下流側に進むにつれて、冷却水の散水により抜熱される。この抜熱によって順次凝固殻16aの厚みを増した鋳片16は、支持セグメント15の下流側に配置された圧下セグメント17により、1〜10mmの押し込み量で圧下された後、完全に凝固する。凝固した鋳片16の内部には、溶鋼11の温度が低下して凝固を開始する前の温度、即ち、溶鋼11が凝固を開始する温度以上の温度で、SrOやSrを含む複合酸化物を析出生成させており、また、このSrO、あるいはSrを含む複合酸化物は、溶鋼11が凝固する際に、接種核として作用するので、この周囲にδ−鉄が析出して均一な等軸晶(凝固組織)を形成することができる。
【0020】
次に、溶鋼11中のOとの反応に消費されるSr量よりも多量にSrを添加しているため、MnSが析出を開始する前に、過剰に添加されたSrが、溶鋼11中のS(硫黄)と反応してSrSを析出生成する。析出したSrSは、溶鋼11中のMnSの格子歪み(SrSとMnSの格子定数の差/MnSの格子定数の値)との差が小さく、SrSとMnSの格子整合性が良好であるため、鋳片16が連続鋳造装置10内で冷却され、その温度が約1000〜1200℃になる領域で、SrSの周囲にMnSが優先的に析出する。
【0021】
これにより、母相中に微細なMnSが微細分散析出するのを防止することができる。この鋳片16から製造した無方向性電磁鋼板は、微細分散するMnSを予めSrSの周囲に析出させるので、加熱焼鈍した際に鋳片16中に分散するMnSが少なくなり、微細なMnSによるピンニング作用を大幅に抑制でき、結晶粒の成長を促進することができる。
【0022】
その結果、SrOとSrSの相乗した働きにより、凝固組織を均一な等軸晶にし、しかも、MnSの微細分散析出を抑制しない場合よりも結晶粒を大きくした鋳片16を鋳造することができる。この鋳片16は、内部に発生する内部割れや溶鋼流動に伴う中心偏析、センターポロシティ等の内部欠陥が無く、鋳片16の手入れや屑化をなくして良鋳片の歩留り及び品質を向上させることができる。このようにして鋳造された鋳片16は、ピンチロール18により引き抜かれて、図示しない切断機により所定のサイズに切断されてから圧延等の後工程に搬送される。
【0023】
この鋳片16に、圧延等の加工を施した無方向電磁鋼板においても、内部欠陥及び表面疵やしわ等の表面欠陥の発生が防止でき、鋼板の手入れ等の解消や良製品歩留り等の向上が可能になる。しかも、SrSの周囲に大きなMnSを析出させているので、微細なMnSによる鋳片16中の結晶粒の極端な微細化が抑制されるため、優れた磁性(鉄損の低い)を得ることができる。鋳片16の介在物の種類と量は、鋳片16の全断面の一部を切り出して、この切り出し片を一般に用いられている光学顕微鏡で観察することにより、測定することができる。また、凝固組織は、鋳片16をピクリン酸でエッチングして、デンドライト組織を検出し、この組織から等軸晶か、柱状晶かを判別することができる。
【0024】
【実施例】
次に、本発明の一実施の形態に係る無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法を用いて鋳造した鋳片の実施例について説明する。主成分が表1に示す組成の無方向性電磁鋼板用の溶鋼350トンを取鍋に入れ、この溶鋼に鉄被覆Srワイアを添加して、溶鋼中のSr濃度、S質量%、Mn質量%、O質量%をそれぞれ調整し、内寸が厚み250mm、幅1200mmの鋳型に鋳湯し、1.2m/分の速度でピンチロールにより引き抜きいて鋳片を鋳造した。そして、鋳造した鋳片の凝固組織及び内部品質、鋼板の表面疵・しわ、磁気特性の良否について調査した。その結果を表2に示す。No.1〜5は本発明例であり、溶鋼中のSr質量%、S質量%、Mn質量%、O質量%が本発明の前記した式の関係を満たす場合であり、いずれも凝固組織が等軸晶にでき、内部品質も割れや中心偏析、センターポロシティ等の内部欠陥が無く、この鋳片を加工した無方向性電磁鋼板の表面疵・しわの発生が無く良好であり、磁気特性も良好な結果が得られた。
【0025】
【表2】
【0026】
これに対し、比較例No.6および比較例No.7は、溶鋼にSrを添加したが、Sr質量%、S質量%、Mn質量%、O質量%が本発明の前記した式の関係を満たさない場合であり、MnSがSrSよりも早く析出し、MnSを微細分散させてしまい、結晶粒の成長が阻害されて鋳片の結晶粒径が小さくなり、磁気特性も不良となった。比較例No.8は、添加したSrが酸素に消費され、SrSを生成できなかった場合であり、微細なMnSが鋳片中に分散して析出し、鋳片の結晶粒径が小さくなり、磁気特性が不良となった。比較例No.9はSrの添加量が少ない場合、比較例No.10はSrが無添加の場合であり、いずれも凝固組織が柱状晶になり、内部欠陥、表面疵・しわ、磁気特性の全てが不良となった。
【0027】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。例えば、鋳片は、連続鋳造の他に、造塊法やベルトキャスター、ロール等の鋳造法により鋳造することができる。更に、SrやSr合金等を薄鋼で覆った線状に加工したワイアを添加する他に、Sr、又はSr合金等を溶鋼に浸漬ランスを用いて吹き込んで添加することもできる。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により以下の効果を奏する。
(1)無方向性電磁鋼板用の溶鋼を、溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%、S質量%、Mn質量%が所定の範囲を満たすように調整した後、この調整した溶鋼を連続鋳造しているので、溶鋼が凝固した鋳片の凝固組織を均一な等軸晶にして内部欠陥を抑制し、鋳片の手入れや屑化を防止して良好な鋳片の歩留りを向上でき、鋳片の品質を高めることができる。
【0029】
(2)無方向性電磁鋼板用の溶鋼を、溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%、S質量%、Mn質量%が所定の範囲を満たすように調整した後、この調整した溶鋼を連続鋳造し、溶鋼が凝固を開始する温度以上の温度でSrOを生成させ、しかも、MnSが析出を開始するより前にMgSを生成させた後、SrSの周囲にMnSを析出させているので、均一な等軸晶を備えて内部欠陥及び表面疵等を防止して製品の歩留りを高め、SrSの周囲にMnSを粗大に析出させて結晶粒の成長を促進して無方向性電磁鋼板の磁性を安定して向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法に用いる連続鋳造装置の全体断面図である。
【符号の説明】
10 連続鋳造装置
11 溶鋼
12 タンディッシュ
13 浸漬ノズル
14 鋳型
15 支持セグメント
16 鋳片
16a 凝固殻
17 圧下セグメント
18 ピンチロール
Claims (2)
- 無方向性電磁鋼板用の溶鋼を、該溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%、S質量%、Mn質量%が下式を満たすように調整した後、この調整した溶鋼を連続鋳造することを特徴とする無方向性電磁鋼板用溶鋼の連続鋳造方法。
(Sr質量%−5.5×O質量%)×(S質量%)>3.6×10−6
かつ
(Sr質量%−5.5×O質量%)>1/55×(Mn質量%)
なお、Sr質量%は溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%は溶鋼中に含まれるO質量%、S質量%は溶鋼中に含まれるS質量%、Mn質量%は溶鋼中に含まれるMn質量%である。 - 無方向性電磁鋼板用の溶鋼を、該溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%、S質量%、Mn質量%が下式を満たすように調整した後、この調整した溶鋼を連続鋳造し、該溶鋼が凝固を開始する温度以上の温度で該溶鋼中にSrOを生成し、且つMnSが析出を開始するより前にSrSを生成させた後、該SrSの周囲にMnSを析出させることを特徴とする無方向性電磁鋼板用鋳片。 (Sr質量%−5.5×O質量%)×(S質量%)>3.6×10−6
かつ
(Sr質量%−5.5×O質量%)>1/55×(Mn質量%)
なお、Sr質量%は溶鋼中に含まれるSr質量%、O質量%は溶鋼中に含まれるO質量%、S質量%は溶鋼中に含まれるS質量%、Mn質量%は溶鋼中に含まれるMn質量%である。
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