JP2003024054A - 肝細胞の分離法 - Google Patents

肝細胞の分離法

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JP2003024054A JP2001211060A JP2001211060A JP2003024054A JP 2003024054 A JP2003024054 A JP 2003024054A JP 2001211060 A JP2001211060 A JP 2001211060A JP 2001211060 A JP2001211060 A JP 2001211060A JP 2003024054 A JP2003024054 A JP 2003024054A
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和守 船津
Hiroyuki Ijima
博之 井嶋
Koji Nakazawa
浩二 中澤
Junji Fukuda
淳二 福田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は,ハイブリッド型人工肝臓や肝臓シ
ミュレータなどに用いることができる肝細胞を中大動物
の肝臓から迅速かつ大量に分離する方法を提供するこ
と。 【解決手段】 肝臓あるいは肝切除組織から粗分散肝組
織を得た後,消化液で満たしたフィルター内で粗分散肝
組織を震盪させながら細胞レベルまで再消化させること
を特徴とする肝細胞分離法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,ハイブリッド型人
工肝臓や肝臓シミュレータなどに用いることができる肝
細胞を中大動物の肝臓から迅速かつ大量に分離する方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】肝臓は,生体内において500種類以上
の複雑多岐な生化学反応を担う代謝系の中心臓器であ
る。このため,肝臓から取り出した肝実質細胞(肝細
胞)は,例えば,肝不全患者の治療を行うハイブリッド
型人工肝臓,医薬品のスクリーニングや肝臓の機能など
を調べるための肝臓シミュレータなど,幅広い利用が期
待されている。このような利用を実現させるためには,
肝臓から肝細胞を迅速かつ大量に分離する技術が重要で
ある。
【0003】肝臓は,総細胞数の約70%を占める肝実
質細胞(肝細胞)と約30%の非実質細胞(類洞内皮細
胞,伊東細胞,クッパー細胞など)の細胞群からなり,
細胞間の金属イオンに依存する細胞間接着因子と細胞間
マトリクスによって細胞同士が互いに接着し,肝臓を構
成している。また,肝臓内では,約50万個の肝細胞
(約20μm)が集合して肝小葉(1〜2mm程度の大き
さ)と呼ばれる一つの単位を構成し,約50万個の肝小
葉が集合して肝臓を形成している。
【0004】従来より肝細胞の分離法は,機械的方法,
化学的方法,酵素的方法が知られている。しかしなが
ら,機械的方法や化学的方法では肝細胞に与える傷害が
大きく,生存率の高い良好な細胞が取得できない。この
ため,現在では化学的方法と酵素的方法を組み合せた方
法が汎用されている。具体的には,EDTAなどのキレート
剤を含む緩衝液を用いて細胞間結合に関与している金属
イオンを除去する化学的方法と,コラゲナーゼなどの酵
素を含む消化液を用いて細胞間結合に関与している因子
やマトリクスなどのタンパク質を消化する酵素的方法を
組み合せた肝細胞の分離法である。
【0005】この方法の操作は震盪法(Howard R. B.
ら,Journal of Cell Biology,第57巻,642−6
58頁,1973年)と灌流法(Seglen P.O.,Method
Cell Biology,第13巻,29−83頁,1976年)
に分類できる。震盪法は,細切した肝切片を消化液に入
れて震盪し,肝細胞を分離する操作である。灌流法は,
肝臓の門脈にカニュレーションを行い,まずは緩衝液で
臓器全体を前灌流し,次に消化液を灌流させ,肝細胞を
分離する操作である。分離された細胞は,低速遠心によ
って肝細胞と非実質細胞に分離することができ,肝細胞
を精製することができる。特に肝臓内の血管網を使って
緩衝液や消化液を灌流できる灌流法は,肝臓全体に溶液
を送ることができ,生存率の高い肝細胞を効率的に分離
できる方法として,現在最も用いられている。
【0006】しかしながら,このような従来の方法で
は,ラットなどのような小動物からの肝細胞の分離には
有効であるが,イヌやブタ,ヒトなど中大動物の肝細胞
の分離には効率が悪い。中大動物の場合,緩衝液や消化
液で肝臓を灌流したのみでは,肝小葉断片のような組織
からなる肝細胞集合塊が多量に残留し,生存率の高い肝
細胞を効率的に分離できないという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,ハイブリッ
ド型人工肝臓や肝臓シミュレータなどに用いることがで
きる肝細胞を中大動物の肝臓から迅速かつ大量に分離す
る方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは,上記課題
を鋭意検討した結果,中大動物の肝臓から迅速かつ大量
に肝細胞を分離する方法を開発することに成功した。す
なわち,消化液による肝臓の灌流法によって粗分散肝組
織(肝小葉断片組織からなる多量の肝細胞集合塊)を得
た後,消化液を満たしたフィルター内で粗分散肝組織を
震盪することによって再消化を行い,肝細胞を細胞レベ
ルまで分散させることができるということを見出して本
発明に至った。この方法によれば,肝細胞集合塊が多量
残留する分離状態から細胞レベルまで分離できるため,
肝細胞の取得収率を向上させることができる。また,肝
細胞集合塊から分散された肝細胞は,フィルター外へと
容易に通過することから,効率的に肝細胞を分離するこ
とができる。
【0009】さらに,本方法は,肝切除組織から肝細胞
を分離する場合にも適用できる。肝切除組織から肝細胞
を分離する場合には,肝切除組織に消化液を注入するこ
とによって粗分散肝組織を得た後,消化液を満たしたフ
ィルター内で粗分散肝組織を震盪することによって再消
化を行う。さらにまた、本発明は、再消化と分離肝細胞
の回収を連続的に行えることも特徴とする。本発明で
は,これらの方法によって,中大動物の肝臓から迅速か
つ大量に肝細胞を細胞レベルまで分離することができ
た。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に,本発明について詳細に説
明する。本発明は,通常,ウサギ,イヌ,ブタ,ヒヒ,
ヒトなどの中大動物の肝臓あるいは肝切除組織に適用で
きるが,中大動物であればこれらに限定されるものでは
ない。
【0011】本発明において,粗分散肝組織とは,肝小
葉断片組織からなる多量の肝細胞集合塊のことをいう。
粗分散肝組織は,肝臓を必要に応じて緩衝液で灌流した
のち,コラゲナーゼを含む消化液によって灌流して,肝
臓が弾力性を失い手等で容易に形状が崩れる状態まで消
化して得ることができる。また,肝切除組織からも,必
要に応じて緩衝液を注入した後,消化液を注入すること
によって同様に得ることができる。肝臓または肝切除組
織に消化液を灌流又は注入して,組織が弾力性を失い手
等で容易に形状が崩れる状態まで消化した後は,ハサミ
やメスで残留する皮膜や血管を細切して,粗分散肝組織
を得る。ここで、生存率が高い肝細胞を高収率で調製す
るためには、十数mm以下の大きさの粗分散肝細胞組織
を使うことが望ましい。
【0012】本発明において,緩衝液とは,肝臓内の血
液,および肝臓内の細胞間結合に関与しているカルシウ
ムイオンやマグネシウムイオンなどの金属イオンを除去
し,細胞間の結合を緩めるためのものである。緩衝液
は,従来より用いられているものを使用すればよく,例
えば,カルシウム無添加のハンクス液などのように,カ
ルシウムやマグネシウムイオンを除いた緩衝液にEDTAや
EGTAなどのキレート剤を添加したものを用いることがで
きる。ただし,緩衝液の組成はこれらに限定されるもの
ではなく,添加物の種類や濃度などは動物種や加齢など
によって適宜選択すればよい。
【0013】消化液は,肝臓内の細胞間結合に関与して
いる因子やマトリクスなどのタンパク質を消化する細胞
分散酵素を含む溶液であり,従来より用いられるものを
使用すればよく,例えばハンクス液などに細胞分散酵素
を添加すればよい。酵素は,市販のコラゲナーゼを0.
1〜2.0g/L(0.01〜0.2%)程度含有させ
ればよいが,市販のコラゲナーゼは,製造ロットごとに
細胞を分散させる活性が異なるため,予め分散活性の高
いコラゲナーゼを選択した方がよい。さらに市販のコラ
ゲナーゼは粗製コラゲナーゼであるためにトリプシン様
タンパク質分解酵素が含まれる。トリプシン様タンパク
質分解酵素は肝細胞に強い傷害を与えるため,消化液に
はトリプシンインヒビターを0.05g/L程度添加す
ることが望ましい。さらに,細胞とマトリクス間の結合
が強固な場合には,上記溶液にディスパーゼを添加して
消化を促進してもよい。この場合,添加するディスパー
ゼの濃度は100〜10,000U/mLが望ましい。
ただし,消化液の組成はこれに限定されるものではな
く,添加物の種類や濃度などは動物種や加齢などによっ
て適宜選択すればよい。
【0014】また,用いる緩衝液や消化液のpHや温度
は,肝細胞の生存に影響を与えず,酵素が良好な作用を
発揮できる範囲であればよく,pHは6.9〜7.9,温
度は35〜42℃の範囲内であることが望ましい。さら
に,肝細胞の良好な生存のために,用いる緩衝液や消化
液は,酸素濃度が1.5ppm以下にならないように,酸
素化することが望ましい。
【0015】本発明の方法において,肝臓を灌流する手
法は既知の方法を使用すればよい。例えば,ブタの肝臓
を灌流する場合は,まず,肝臓の門脈あるいは門脈と肝
動脈の両方にカニューレを挿入する。次いで35〜42
℃の緩衝液を50〜2,000mL/minで10〜40分
程度流せばよいが,温度,流量,処理時間は動物種や肝
臓の大きさ,脱血の状態,肝臓全体への溶液の浸透具合
によって適宜選択すればよい。緩衝液終了後,消化液を
流す。消化液の温度,流量,処理時間は,緩衝液の場合
と同様,動物種や肝臓の大きさ,肝臓全体への溶液の浸
透具合によって適宜選択すればよい。消化液による消化
が進むと,肝臓は弾力性を失い,手等で触れると容易に
もとの肝臓の形状が崩れる状態となる。この状態をもっ
て灌流操作を終了する。その後,残留する被膜や血管な
どをメスやハサミで細切することによって,粗分散肝組
織を得ることができる。ここで、生存率が高い肝細胞を
高収率で調製するためには、十数mm以下の大きさの粗
分散肝細胞組織を使うことが望ましい。
【0016】一方,肝切除組織を用いる場合には,切除
面の大きな血管から,まず緩衝液を注入する。この注入
操作にはシリンジなどを用いればよい。また,用いる肝
切除組織の切除面において,緩衝液を注入する血管以外
に大きな血管が存在する場合は,その血管を手などで押
え,緩衝液が切除組織全体に行渡る工夫を行う。この操
作は,35〜42℃の緩衝液で10〜30分程度行えば
よいが,温度や処理時間は動物種や肝臓の大きさ,脱血
の状態,肝臓全体への溶液の浸透具合によって適宜選択
すればよい。緩衝液終了後,消化液を注入する。消化液
の温度や処理時間は,緩衝液の場合と同様,動物種や肝
臓の大きさ,肝臓全体への溶液の浸透具合によって適宜
選択すればよい。消化液による消化が進むと,肝臓は弾
力性を失い,手等で触れると容易にもとの肝臓の形状が
崩れる状態となる。この状態をもって消化液注入操作を
終了する。その後,残留する被膜や血管などをメスやハ
サミで細切することによって,粗分散肝組織を得ること
ができる。 ここで、生存率が高い肝細胞を高収率で調
製するためには、十数mm以下の大きさの粗分散肝細胞
組織を使うことが望ましい。
【0017】上記の方法によって,肝臓あるいは肝切除
組織から得られた粗分散肝組織は,次に消化液で満たし
たフィルター上で震盪することによって再消化し,細胞
レベルまで分散させる。再消化して得られた肝細胞は,
フィルター孔よりも小さくなると容易にフィルターを通
過するため,フィルター外部の溶液を回収することによ
って分散肝細胞のみを取得できる。消化液による処理に
時間をかけすぎると肝細胞の生存率が低下することか
ら,フィルターを通過した分散肝細胞は適宜連続的に回
収する方が望ましい。この操作に使用するフィルターの
孔径は,好ましくは20〜300μm,より好ましくは
40〜150μmである。また,フィルターの目詰まり
の回避や操作性を考慮すると,使用するフィルターの有
効断面積は,好ましくは100〜1500cm2,より好
ましくは150〜800cm2である。また,酵素の活性
は温度と密接な関係にあることから,この操作中,消化
液の温度を酵素の活性の最適値に保たせることが望まし
い。望ましくは,消化液の温度は35〜42℃である。
【0018】一連の操作によって得られた分散肝細胞
は,消化液による傷害を回避するために,4℃の培養液
で懸濁させる。培養液は,pHを中性付近に調整したリン
酸緩衝溶液(PBS)などでもよいが,市販のWiiliams E
mediumやDulbecco's modifiedeagle mediumなどが望ま
しい。
【0019】分散肝細胞を含む懸濁液から非実質細胞や
破砕物を取り除き,肝細胞(肝実質細胞)のみを得るた
めに遠心洗浄操作を行う。遠心によって,肝細胞は沈降
し,非実質細胞や破砕物は上澄みとして得られる。上澄
みを除去した後に新鮮な培養液を添加し,再懸濁後,再
度遠心を行う。肝細胞のみの純度を高めるために,この
遠心操作は少なくとも3回以上行うことが望ましい。遠
心操作の条件(遠心力や遠心時間)は,細胞に傷害を与
えず,肝細胞と非実質細胞が分離する条件であればよ
く,懸濁液の密度に依存して適宜選択すればよい。さら
に、得られた肝細胞に対してフィコールなどを用いた密
度勾配遠心操作を行うことによって、死細胞を取り除
き、生存率の高い細胞のみを得ることもできる。
【0020】以上の操作によって,迅速かつ大量の肝細
胞を調製することができる。図1に本法の一連の流れを
示すが,本発明はこれに限定されるものではない。図1
の工程1は,肝臓(1)の門脈(2)および肝動脈
(3)にカニューレを挿入する工程,工程2は,温水で
恒温に保たれた容器中にカニューレを挿入された肝臓
(1)を載置し容器に緩衝液または消化液(5)を灌流
させる工程を示す。灌流液は酸素化装置(6)によって
酸素化しながら循環して用いる。灌流した後に得られた
粗分散肝組織(7)は,フィルター(8)上で震盪する
(工程3)。フィルター(8)は温水(9)によって恒
温に保たれ消化液(10)が満たされたバット上に置か
れている。再消化されて細胞レベルの大きさになった肝
細胞はフィルターを通過する。工程3でフィルターを通
過して得られた肝細胞を含む懸濁液は,工程4において
遠心洗浄されて濃縮肝細胞液が得られる(工程5)。
【0021】以下に実施例を示して,本発明を具体的に
説明するが,本発明はこれに限定されるものではない。
以下の実施例および対照例において,緩衝液,消化液,
培養液は以下のものを使用した。
【0022】[緩衝液]緩衝液は,0.19g/L EGTA,8g
/L塩化ナトリウム,0.4g/L塩化カリウム,0.078g/L
リン酸二水素ナトリウム・二水和物,0.151g/Lリン酸
水素二ナトリウム・十二水和物,2.38g/L HEPES,0.35
g/L炭酸水素ナトリウム,0.9g/Lグルコース,0.05g/
Lクロラムフェニコール,0.087g/Lゲンタマイシン硫酸
塩の組成で用意した。
【0023】[消化液]消化液は,1g/Lコラゲナーゼ
タイプ4(シグマ製),0.05g/Lトリプシンインヒビ
ター(和光純薬製),8g/L塩化ナトリウム,0.4g/L塩
化カリウム,0.56g/L塩化カルシウム,0.078g/Lリン
酸二水素ナトリウム・二水和物,0.151g/Lリン酸水素
二ナトリウム・十二水和物,2.38g/L HEPES,0.35g/L
炭酸水素ナトリウム,0.05g/Lクロラムフェニコール,
0.087g/Lゲンタマイシン硫酸塩の組成で用意した。
【0024】[培養液]培養液は,10.8g/L Williams'
E medium(シグマ製)に,1.05g/L炭酸水素ナトリウ
ム,1.19g/L HEPES,0.05g/Lクロラムフェニコール,
0.087g/Lゲンタマイシン硫酸塩を添加したものを用い
た。
【0025】
【実施例1】体重10kgのブタ肝臓の門脈および肝動
脈にカニューレを挿入した。このブタ肝重量は331g
であった。まず,4℃の緩衝液を200ml/minの流量で
30分間流した後に,37℃の緩衝液を300ml/minの
流量で7分間流した。次いで,37℃の消化液を300
ml/minの流量で20分間灌流した。弾力性を失った状態
の肝臓をハサミを用いて細切し,約1Lの消化液中に懸
濁させた。ここで,消化が不十分な10数mm以上の肝組
織片や大きな血管部分の組織は取り除いた。この懸濁液
には,分散肝細胞と細胞レベルまで分散されていない1
〜2mm程度の大きさの肝細胞集合塊が多数存在した。
【0026】ステンレスバット(縦33cm,横40cm,
深さ5cm)上に直径30cm,孔径106μm,断面積
707cm2のフィルター(ステンレスメッシュ:日本理
化学機械製)を置き,フィルター上に上記の懸濁液を入
れた。まず,フィルターを通過した分散肝細胞を回収し
た。次いで消化液で満たされたステンレスバット上のフ
ィルターを震盪させながらフィルターを通過できない肝
細胞集合塊の再消化を行った。ここで,ステンレスバッ
トの下部には温水が循環するバックを置き,消化液を3
7℃に保つようにした。この操作中,肝細胞は順次フィ
ルターを通過してくるため,フィルターを通過した分散
肝細胞は消化液ごと適宜回収した。一方,フィルター上
には新鮮な消化液を添加し,残留する肝細胞集合塊の再
消化を続けた。この操作には,合計約1Lの消化液を使
用し,約20分間行った。
【0027】得られた肝細胞を含む懸濁液は,115
G,120secの遠心洗浄を3回行い,非実質細胞や破
砕物を取り除いた。遠心操作に使用した培養液の総量は
12Lであった。最終的には,約1.5Lの培養液中に
得られた肝細胞を懸濁させた。
【0028】血球計数板を利用して,懸濁液中の肝細胞
と非実質細胞を計数し,調製細胞数および肝細胞の純度
を求めた。ここで,調製細胞数は,1×108個の肝細
胞が1gとして算出した。また,肝細胞の生存率の測定
には,トリパンブルー染色法を用いた。
【0029】
【実施例2〜14】体重約10kgのブタ13頭の肝臓か
ら実施例1と同様にして肝細胞を分離した。この時のブ
タ肝重量は282±62gであった。この時,4℃の緩
衝液を200ml/minの流量で30分間流した後に,肝
重量に応じて,37℃の緩衝液を200〜400ml/mi
nの流量で5〜10分間,消化液を200〜400ml/m
inの流量で20分間灌流した。その他は実施例1と同様
の条件で操作,測定した。
【0030】対照例として,従来の灌流法を用いて体重
10kgのブタ肝臓(肝重量355g)から肝細胞を調製
した。簡単に説明すると,上記と同様な方法で,緩衝液
と消化液を用いて肝臓を灌流した。弾力性を失った状態
の肝臓をハサミを用いて細切し,約1Lの消化液中に懸
濁させた。ここで,消化が不十分な十数mm以上の肝組織
片や大きな血管部分の組織は取り除いた。この懸濁液
を,直径30cm,孔径106μm,断面積707cm2
フィルター(ステンレスメッシュ)で濾過し,上記と同
様の遠心洗浄を行うことによって肝細胞を得た。
【0031】本発明の肝細胞調製法に要した時間は2.
6時間,従来の灌流法による調製法では3.0時間であ
り,調製時間には大きな差はなく,両方法とも短時間に
肝細胞を調製できた。
【0032】本発明の肝細胞調製法と従来の灌流法によ
るブタ肝細胞調製結果を表1に示す。この結果,本発明
の調製法は,従来の灌流法に比べ,生存率の高い肝細胞
を高収率で取得できることが示された。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】以上,詳細に説明したように,本発明で
は,中大動物の肝臓から迅速かつ大量に生存率の良好な
肝細胞を分離できる方法が得られた。本法は,ハイブリ
ッド型人工肝臓や肝臓シミュレータなどに使用する肝細
胞を供給する手段として利用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】肝細胞の分離法の概略を示した図である。
【符号の説明】
1:肝臓 2:門脈 3:肝動脈 4:温水 5:緩衝液または消化液 6:酸素化装置 7:粗分散肝組織 8:フィルター 9:温水 10:消化液
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中澤 浩二 福岡県福岡市東区筥松二丁目27−30 たけ し荘208号 (72)発明者 福田 淳二 福岡県福岡市東区香住ヶ丘2丁目21−21 コンパートハウス九産大前203号 Fターム(参考) 4B065 AA87X BD14 BD22 BD32 BD35 BD36 BD45 BD50 CA44

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】肝臓あるいは肝切除組織から粗分散肝組織
    を得た後,消化液で満たしたフィルター内で粗分散肝組
    織を震盪させながら細胞レベルまで再消化させることを
    特徴とする二段階肝細胞分離法。
  2. 【請求項2】粗分散肝組織を得る工程が,消化液で肝臓
    を灌流する工程を含む請求項1に記載の肝細胞分離法。
  3. 【請求項3】粗分散肝組織を得る工程が,肝臓を緩衝液
    で灌流してから消化液で灌流する工程を含む請求項2に
    記載の肝細胞分離法。
  4. 【請求項4】粗分散肝組織を得る工程が,肝切除組織に
    消化液を注入する工程を含む請求項1に記載の肝細胞分
    離法。
  5. 【請求項5】粗分散肝組織を得る工程が,肝切除組織に
    緩衝液を注入してから消化液を注入する工程を含む請求
    項4に記載の肝細胞分離法。
  6. 【請求項6】肝臓あるいは肝切除組織に消化液を灌流あ
    るいは注入して弾力性を失った組織を得た後,残留する
    皮膜や血管を細切する工程を含む請求項1〜5のいずれ
    かに記載の肝細胞分離方法。
  7. 【請求項7】粗分散肝組織を再消化させる工程を、震盪
    させているフィルター内に粗分散肝組織を入れて、フィ
    ルターを通過した再消化肝細胞を連続的に回収しながら
    行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の
    肝細胞分離方法。
  8. 【請求項8】肝臓および肝切除組織が中大動物由来であ
    る請求項1〜7のいずれかに記載の肝細胞分離方法。
  9. 【請求項9】消化液が細胞分散酵素を含むことを特徴と
    する請求項1〜8のいずれかに記載の肝細胞分離方法。
  10. 【請求項10】緩衝液がキレート剤を含むことを特徴と
    する請求項1〜9のいずれかに記載の肝細胞分離方法。
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