JP2003023685A - 汎用スピーカとその取り付け法 - Google Patents

汎用スピーカとその取り付け法

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JP2003023685A
JP2003023685A JP2001207402A JP2001207402A JP2003023685A JP 2003023685 A JP2003023685 A JP 2003023685A JP 2001207402 A JP2001207402 A JP 2001207402A JP 2001207402 A JP2001207402 A JP 2001207402A JP 2003023685 A JP2003023685 A JP 2003023685A
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Katsumi Kaitani
克己 櫂谷
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SUITAYA KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 パソコン用、車載用、BGM用などとして音
響信号を忠実に再現したり指向性を適宜に拡散でき、さ
らに自動車内に取り付けて柔らかな音場を形成する。 【構成】 アンプの音響出力信号が作用するスピーカユ
ニットと、外表面の気孔が疎く且つ内部の気孔が密であ
る多孔質焼結体からなり且つスピーカユニットのフレー
ムを取り付けるバッフル板と、バッフル板とともにスピ
ーカボックスを構成して1台または2台一連のスピーカ
ユニットを組み込むキャビネットとを備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パソコン用、車載
用、BGM用などとして音響信号を忠実に再現したり指
向性を適宜に拡散できる汎用スピーカに関し、この種の
スピーカを自動車内に取り付けて柔らかな音場を形成す
る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】オーディオスピーカは、音響電流を受け
て音波を発生する変換器であり、一般に、ダイナミック
型の変換器と、振動子の振動を音波として放射する放射
部とを有し、この放射部には小型用でコーンやドームを
使い、大型用ではホーンを使う。この種のスピーカは、
広い周波数帯域に亘る音波発生に、口径のちがういくつ
かのスピーカを組み合わせて使うことが多く、高級品で
は非常に高価になるとともに広い設置面積を必要とす
る。
【0003】 一方、パソコン用や車載用のスピーカ
は、自ずから設置面積が限定されてしまうため、比較的
小型のコーンスピーカユニットを使用することが多い。
この種のスピーカでは、スピーカユニットのコーン紙が
音響振動して音波を発生するとともに、この機械振動が
バッフル板から伝達され、さらにボックスに伝わってボ
ックス全体を揺動しやすい。このようなボックス揺動が
発生すると、コーン紙からの発生音の低い周波数が打ち
消され、低音域が精確に再生されない状況になり、低音
域が濁ったり惚けたような音になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】小型スピーカにおける
ボックス揺動を防ぐために、従来では、スピーカユニッ
トのフレームとコーン紙との間にフリーエッジを取り付
け、このフリーエッジによってコーン紙が動き易くな
り、コーン紙の機械振動を吸収している。このフリーエ
ッジは、多少有効であっても万全ではなく、コーン紙の
機械振動を完全には吸収できないので、スピーカユニッ
トのフレームに多少振動が伝わり、この振動はバッフル
板からボックスまで伝わってボックス全体を揺動してし
まう。
【0005】 本発明者は、自己が発明した多孔質焼結
体について研究を続けており、この多孔質焼結体は表面
が粗い剛性の金属材料であり、鋳鉄やアルミニウムの金
属細片を電気で直接通電加熱するとともに加圧によって
製造している。この多孔質焼結体は、エネルギの大きい
周波数である音波を吸収する吸音材として、従来品のグ
ラスウールやフェルトなどと異なる硬質材料であり、し
かも防振ゴムと同様の振動減衰性を有する点に着目し、
これをスピーカ用の部材として適用することに想到する
に至ったものである。
【0006】 したがって、本発明は、従来の小型スピ
ーカに関する前記の問題点を改善するために提案された
ものであり、特に音響信号の忠実な再現および低音域を
明瞭に再生できる汎用スピーカを提供することを目的と
している。本発明の他の目的は、指向性の高い周波数帯
域でも間接音成分が存在して音質を損なわず、発生音の
指向性を適宜に拡散させる汎用スピーカを提供すること
である。本発明の別の目的は、車内の可聴音が主として
車内壁の間接音であり、音波相互の干渉が少なくなって
柔らかな音場を形成するスピーカの取り付け法を提供す
ることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係る汎用スピーカは、アンプの音響出力信
号が作用するスピーカユニットと、スピーカユニットの
フレームを取り付けるバッフル板と、バッフル板ととも
にスピーカボックスを構成するキャビネットとを備え、
本発明はウーファなどにも適用可能である。本発明にお
いて、バッフル板自体が、外表面の気孔が疎く且つ内部
の気孔が密である多孔質焼結体であっても、スピーカユ
ニットとバッフル板との間またはバッフル板とキャビネ
ットとの間に介在させるマウント部材が、外表面の気孔
が疎く且つ内部の気孔が密である多孔質焼結体であって
もよい。
【0008】 本発明の汎用スピーカでは、バッフル板
またはマウント部材の多孔質焼結体がスピーカユニット
のフレームに伝搬される機械振動を吸収することによ
り、音響信号の忠実な再現および低音域を明瞭に再生す
る。本発明の汎用スピーカは、1台または2台一連のス
ピーカユニットをキャビネットに組み込み、スピーカユ
ニットが2台一連であると、音響信号をさらに忠実に再
現しおよび低音域をいっそう明瞭に再生できる。
【0009】 本発明の汎用スピーカは、スピーカ前面
に装着する音響レンズを備えると好ましい。この音響レ
ンズは、厚さ数mmの硬くて粗い金属フォームからな
り、この金属フォームを凸状に塑性変形して音源の強度
分布および位相を制御することにより、発生音の指向性
を適宜に拡散させる。
【0010】 本発明のスピーカ取り付け法は、スピー
カユニットと、該スピーカユニットのフレームを取り付
けるバッフル板と、バッフル板とともにスピーカボック
スを構成して1台または2台一連のスピーカユニットを
組み込むキャビネットとを備えるスピーカ2台を自動車
用として小型化し、両スピーカを自動車の運転者席と助
手席の下方に水平または上向きに設置する。両スピーカ
の向きは、水平前向きであると図19のような音線図を
示し、水平から垂直上向きまで可能であり、スピーカの
向きに応じて仮想音像の位置が上方へ移行する。このス
ピーカ2台により、車内における可聴音が主として間接
音からなり、柔らかな音場を形成する。
【0011】 このスピーカ取り付け法において、スピ
ーカ2台において、用いるバッフル板が多孔質焼結体で
あるか、またはスピーカユニットとバッフル板との間ま
たはバッフル板とキャビネットとの間に多孔質焼結体の
マウント部材を介在させると好ましい。このような構造
のスピーカ2台により、車内の可聴音が主として車内壁
の間接音からなり、発生音の低音域を十分に再生して柔
らかな音場を形成する。
【0012】 さらに好ましくは、スピーカ前面に厚さ
数mmの硬くて粗い金属フォームからなる音響レンズを
装着する。この金属フォームを凸状に塑性変形して音源
の強度分布および位相を制御することにより、自動車内
において発生音の指向性を適宜に拡散させる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明に係る汎用スピーカ1は、
パソコン用、車載用、BGM用、一般オーディオ用など
であり、該スピーカがウーファであってもよく、限られ
た狭い場所に設置できるような小型であり、しかも構造
が比較的単純で安価である。本発明において、スピーカ
ユニットの放射部はともにコーン、ドームまたはホーン
のいずれでもよく、バッフル板を含むスピーカボックス
をエンクロージャと称する場合もある。
【0014】 本発明の汎用スピーカ1またはウーファ
は、図1に示すようにバッフル板2に多孔質焼結体3
(図4参照)を用いたり、図2や図3に示すようにマウ
ント部材5,7に多孔質焼結体を適用する。多孔質焼結
体3は、通電加熱・加圧で平板状に成形してから、バッ
フル板2またはマウント部材5,7として接着またはボ
ルト止めする。マウント部材5,7は、通常、図2のよ
うな矩形断面またはL字形断面の環状体であるが、この
環状体の一部だけが多孔質焼結体であっても、小板片を
円周方向に分散配置するだけでもよい。
【0015】 多孔質焼結体3は、一般に粒径6〜50
メッシュの金属チップを用いて通電加熱と加圧によって
平板状に成形し、この成形時に、各金属チップの表面が
溶けてチップ相互間で融着するとともに、熱が焼結体内
部に逃げて冷却するので、外表面10の気孔が疎く且つ
内部8の気孔が密になる(図4参照)。例えば、エネル
ギの大きい低周波である音波が、図4の矢印のように多
孔質焼結体3に当たると、粗い気孔の外表面10に窪み
に吸い込まれてから、密な機構の内部8で圧縮されて、
ごく微小な熱となって外部へ逃げていく。
【0016】 多孔質焼結体3は、粒径6〜50メッシ
ュである単一または2種以上の種類の金属チップから製
造する。この金属チップは、金属の粉粒体や切削屑(ダ
ライ粉)などであり、2金属成分を有する合金でも、形
状や種類の異なる複数の金属チップを混合してもよい。
この金属チップとして、鋳鉄切削屑,炭素鋼片,ステン
レス鋼片のような鉄系金属、アルミニウム粉末,Al−
Si合金切削屑のようなアルミニウム系金属、銅系金
属、チタン粉末などのチタン系金属などが例示できる。
多孔質焼結体3には、金属チップの混合物にガラス粒、
フェライト粉末、セメント粉および/または熱硬化性樹
脂を25重量%以下含有してもよい。熱硬化性樹脂は、
エポキシ樹脂,ポリエステル樹脂,ウレタン樹脂,フェ
ノール樹脂,ジアリルフタレート樹脂などであり、他の
添加物と混合して添加することも可能である。
【0017】 多孔質焼結体3は、例えば、四角筒形の
型枠を有する成形装置(図示しない)によって製造し、
該型枠の内に混合した金属チップを充填する。この成形
装置では、水平のセラミックス板の上に、同一表面積で
ある1対の矩形状の電極板を対向設置し、これと直交し
て1対の矩形状の耐熱側壁を設置して型枠を形成してい
る。一方の電極板の側端には低電圧トランスからの電線
を接続し、且つ他方の電極板における反対側の側端にも
電線を接続する。金属チップを型枠内にほぼ均等に入
れ、次にプレス型を下降させ、数千アンペアの高電流を
流して加熱しながら加圧することで平板状に成形する。
【0018】 前記の成形装置において、焼結加工時に
は、金属チップに最大8000アンペアの高電流を流し
て加熱成形し、電圧は通常20ボルトである。この際
に、型枠内において加熱温度が1000℃前後に達して
も、高電流を流すことで体積拡散を殆ど起こさず、空隙
の球状化、微細空隙の減少や消滅のような現象を発生せ
ず、金属チップ間の接触部で部分的に相互に溶融して結
合している。多孔質焼結体において、金属チップのほか
にセラミックスや合成樹脂を少量含有しても、成形後に
も吸音性を十分に維持できる。
【0019】 得た成形焼結板は、添加物が全体量の約
10重量%以下であると十分に多孔質であり、10〜2
5重量%では振動吸収性と吸音性がやや低下する。多孔
質焼結体3では、通常、金属チップの含有量は全体量の
約75重量%以上であり、特に高い振動吸収性と吸音性
を要するスピーカ用途では約90重量%以上であると好
ましい。
【0020】 得た成形焼結板は、中心孔を設けた矩形
板に仕上げ加工してバッフル板2に用いても、マウント
部材5,7のように小さい場合に、適当に切断してから
片面または両面を仕上げ研磨し、複数枚を環状に組み合
わせて使用してもよい。また、バッフル板2またはマウ
ント部材5,7として、焼結板の表面に厚さ数mmの薄
肉被覆層を設けてもよい。バッフル板2またはマウント
部材5,7において、薄肉被覆層は合成樹脂、金属また
は汎用セラミックスなどからなり、多孔質焼結板の全体
または一部を被う。汎用セラミックスには、コンクリー
ト材、ガラス材、陶器、磁器、タイル、瓦板などを包含
する。
【0021】 所望に応じて、汎用スピーカ1におい
て、凸状に塑性変形した金属フォーム26をキャビネッ
ト12つまりバッフル板2の前面を被うように取り付け
る。金属フォーム26は、厚さ数ミリに達する不規則で
巨大な気孔が全体に形成された金属板であると解釈すれ
ばよい。金属フォーム26は、通常、電磁波の遮蔽が少
ないニッケルからなり、電磁波の遮蔽を要する場所では
それに応じた金属を使用する。金属フォーム26は、見
掛け密度1.0以下であり、多数の細長い金属糸状体が
幅方向にランダムに延びて結合し、全体として立体的で
比較的硬い網目形状を構成し、図8に例示するようなめ
っき反応装置28によって製造できる。
【0022】 図7に示すように、本発明で適用するス
ピーカ特性の測定は、従来の定常態スイープ法でなく、
パルス入力法によって行う。定状態スイープ法では、各
周波数のレベル変動のみをスピーカ特性とするのに対
し、パルス入力法では、時間領域における測定となる。
パルス入力法は、図13や図21から図23に示すよう
に、FFT手法を用いると、スピーカ特性が時間領域
(a)のパルス応答のみならず、基準レベルが同一なら
ば、位相情報を含んだ周波数領域(b)における伝達関
数の比較が可能となる。入力信号には、時間巾50マイ
クロ秒の矩形波パルスを用いる。この信号は、周波数領
域では約10kHzまでフラットな特性が得られ、その
後に20kHzで大きくレベルが落ち込む。
【0023】 CD−ROMに録音した入力信号の矩形
波パルスは、オーディオアンプで増幅され、スピーカに
供給する。スピーカから出た音波は、マイクロフォンか
らアンプを経て、DAT(デジタル・オーディオ・テー
プレコーダ)に録音する。測定した後にDATを再生
し、FFTアナライザを用いて分析し、パーソナルコン
ピュータでデータ整理する。測定室は弊社工場内であ
り、ノイズ対策として、SN比向上のために最低100
回以上のアベレージング(加算平均)を行って測定結果
を得る。床、壁、天井から反射された音は、スピーカか
らの直接音のみをデータ処理対象とするために除去して
も、充分な時間長さの直接音を得ることができ、以下の
実験も全てこの方法によって行っている。
【0024】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づいて説明する
が、本発明は実施例に限定されるものではない。図1に
示す本発明に係る小型スピーカ1において、スピーカユ
ニット11を箱型のキャビネット12内に配置してい
る。
【0025】 スピーカユニット11は、一般に、コー
ン紙(図示しない)の全体を被うような円錐形のフレー
ム14を有し、該フレームの平坦頂部にマグネット部1
6を固着する。マグネット部16の近傍には、円筒形の
ボイスコイル(図示しない)を取り付け、該コイルの片
側にコーン紙の中心頂部を糊付けすることにより、コー
ン紙はコイルとともに音響振動する。コーン紙は、その
環状周辺部をフレーム14の環状内周面に糊付けするこ
とにより、該コーン紙を張設して安定して音発生させ
る。
【0026】 円錐形のフレーム14は、多孔質焼結体
のバッフル板2の中心孔18に挿入し、前周端のフラン
ジ部20をバッフル板2に固着し、この固着はボルト止
めまたは接着である。バッフル板2には、中心孔18の
前方内周にフランジ部20と嵌合する環状溝21を形成
する。バッフル板2の平面形状は、キャビネット12の
内寸とほぼ同じ矩形であり、キャビネット内周壁に垂直
に金具止めまたは接着する。フレーム14のフランジ部
20は、バッフル板2に対して円周方向に等間隔に3点
でボルト止めすると好ましい。
【0027】 箱型のキャビネット12は、バッフル板
2とともにスピーカボックスを構成し、その側壁に放熱
用の貫通孔22を設け、キャビネット後壁にコネクタの
レセプタクル23を取り付ける。キャビネット12は、
上向きに配置されるようにスタンド24を設置すると好
ましい。
【0028】 図4に示す多孔質焼結体3を製造するに
は、図示しないけれども、水平の耐熱性セラミックス板
の上に、同一表面積である1対の矩形状の電極板を対向
設置し、これと直交して1対の矩形状の耐熱側壁を設置
して型枠を構成する成形装置を用いる。この型枠の寸法
は、底面積675×675mmで高さ15cmである。
水平のセラミックス板の中には熱電対を挿入しており、
型枠内の温度を測定することが可能である。この型枠の
底面に離型シートを平らに敷設し、その上に鋳鉄(FC
−25、含有量:炭素約3.5 %,ケイ素約2.5%,
マンガン約0.5%)の切削屑(ダライ粉)17kgを
入れ、厚さ約30mmになるように均等にならし、さら
に離型シートを平らに敷設する。
【0029】 前記の成形装置において、セラミックス
製のプレス型を下降させると同時に電源を入れ、電流が
5000アンペアになるまでプレス型を下げて加圧す
る。圧力210kg/cmで加圧を継続すると、型枠
内を通過する電流が0から5000アンペアへ急激に上
昇し、さらに徐々に上昇を続けて加圧後10〜12分で
6400アンペアに達する。電流は6400アンペアで
平衡になるから、ここでプレス型を上げて焼結板を取り
出して冷却する。
【0030】 この焼結板を適当に裁断・加工し、さら
に仕上げ研磨してバッフル板2を得る。得た多孔質焼結
体3(図4)は、気孔率約50%を有し、厚さ方向にお
いて多少外表面の気孔が疎く且つ内部の気孔が密にな
る。多孔質焼結体3は、振動減衰率が(η)=0.14
〜0.53である防振材である。
【0031】 小型スピーカ1では、多孔質焼結体のバ
ッフル板2を介してスピーカユニット11をキャビネッ
ト12に設置するため、コーン紙の音響振動の反作用で
ある機械振動がフレーム14に伝わっても、その機械振
動をバッフル板2の多孔質焼結体で吸収できる。バッフ
ル板2は、コーン紙がアンプからの音信号通りに振動す
る際に、該コーン紙から伝わる機械振動をキャビネット
12に伝えない。
【0032】 図5と図6において、実験例として、口
径3cmスピーカに鋳鉄の多孔質焼結体のバッフル板を
取り付け、スピーカ特性における時間領域を表示する。
比較例として、図6では、口径3cmスピーカに木製の
バッフル板を取り付けている。図5では、最初の負のピ
ークに続く正のピーク値が図6のそれよりも約20dB
大きい。図5で用いる鋳鉄製の多孔質焼結体は、振動吸
収性が高く、しかも剛性材料であるのでスピーカユニッ
トをしっかり固定できる。鋳鉄の多孔質焼結体は、図6
の木製に比べて、コーン紙の膜面が動いた時、反作用で
あるユニットの機械振動をより多く吸収することによ
り、コーン紙の膜面はいっそう動作がスムースになり、
振幅の幅が広がることで入力信号をより忠実に再現する
ようになる。図6の木製は、その固有振動数にあわせて
動きやすく、コーン紙の膜面の動きに悪影響を与える。
【0033】 図1に示す小型スピーカ1において、凸
状に塑性変形した金属フォーム26をキャビネット12
つまりバッフル板2の前面を被うように取り付ける。金
属フォーム26は、見掛け密度1.0以下であり、多数
の細長いニッケル片が幅方向に延びてランダムに結合
し、全体として立体的な網目形状を構成し、その厚さは
約2mmに及んでいる。
【0034】 金属フォーム26は、図8で概略で示す
ようなめっき反応装置28を用いて製造する。反応装置
28において、カソードの金属板30に連続気泡のスチ
ロール板32,32を張り付け、該金属板はニッケルと
の剥離性が高い素材であり、且つ剥離性が高くなるよう
に表面処理を施す。一方、アノードはニッケル板34で
あり、ニッケルめっき浴36は硫酸ニッケル、塩化ニッ
ケル、ホウ酸、錯化剤などを含有する。
【0035】 外部電源38を用いて一定の電位を加え
ると、カソードでは、溶液内部からニッケルイオンが拡
散によってスチロール板32の気泡を通過して電極界面
に近づき、カソードから電子を受け取って金属ニッケル
に還元される。この際に、金属ニッケルはスチロール板
32の気泡部分にしか存在しないので、その気泡部分に
沿ってランダムに成長して結合する。金属ニッケルの析
出が数ミリに達したならばカソードを取り出し、スチロ
ール板32,32を金属板30から剥離し、さらにスチ
ロール分を除去する。適宜の表面仕上げをすると、平板
状の金属フォーム26を得る。金属フォーム26は、プ
レス型または手によって凸状に塑性変形することが可能
である。
【0036】 金属フォーム26は、音響レンズとして
音源の強度分布および位相を制御することにより、発生
音の指向性を適宜に拡散できる。スピーカユニット14
から出た音波は、金属フォーム26の不規則な孔によっ
て、ネット面において新たな音波面が発生する。この音
波面から、金属フォーム26の気孔をすり抜け直進する
音波、該ネットに当たって一旦跳ね返る音波、気孔の境
界面に当たって様々な方向へ回折される音波を発生す
る。また、金属フォーム26は、軽くても硬質の材料で
あるから、音波は金属フォーム26で吸収されず、音質
を変えられずに通過できる。つまり、スピーカから出た
音波は、ネット面に到達し、そこで直進、回折などを生
じて拡散され、ネット面から外方の空間へ広がる。スピ
ーカから出た音波は、多少の指向性や周波数的にレベル
差などを持っていても、金属フォーム26を通過する
と、音質が変わらず、広範囲に拡散する安定した音波と
なる。
【0037】 図9は、金属フォーム26を取り付けた
スピーカについて、受音点の向きがスピーカ正面(0
度)、傾き30度、60度の周波数特性を示す。図10
は、図9と同じスピーカについて、金属フォームを除い
た場合の0度、30度、60度の周波数特性を示す。周
波数特性は、金属フォームの気孔の大きさや数にも依存
するが、ここではその違いが低音域に良く現れている。
図9では、0度〜60度にかけて、出力音圧レベルが段
階的に下がっているのに対し、図10では、30度のと
きの低音域の出力音圧レベルが持ち上げられ、安定さに
欠ける音波を発生していることが判る。
【0038】 図2は本発明の変形例を示し、スピーカ
ユニット11の円錐形フレーム14をバッフル板40の
中心孔41に嵌入し、多孔質焼結体のマウント部材5を
スピーカユニット11のフランジ部20の後方面とバッ
フル板40の前方面との間に介在させ、円周方向に3点
または4点のボルト止めまたは接着によって固着する。
バッフル板40は通常の木製または金属製である。マウ
ント部材5は、矩形断面で内径がバッフル板40の中心
孔41とほぼ等しい環状体であり、多孔質焼結体の単体
または複数枚の小板片の組み合わせからなる。マウント
部材5は、スピーカユニット11を前方へ配置させる役
目もある。
【0039】 また、図3に示すマウント部材7は、バ
ッフル板44とキャビネット12との間に介在させ、該
バッフル板は通常の木製または金属製である。円錐形の
フレーム14は、バッフル板44の中心孔45に挿入
し、前端のフランジ部20および前方周面をバッフル板
44の中心孔45に固着する。マウント部材7は、バッ
フル板44とほぼ同じ厚みである矩形断面の細長い板状
体の組み合わせからなり、バッフル板44の外周面とキ
ャビネット12の内壁との間で上下面を接着するかまた
は個別に金具止めやボルト止めする。ベニヤ板43は、
主として装飾のためにバッフル板の前方に配置する。
【0040】 マウント部材5,7は、コーン紙からス
ピーカユニット11のフレーム14に伝わる機械振動を
吸収する。マウント部材5,7は、コーン紙がアンプか
らの音信号通りに振動する際に、該コーン紙から伝わる
機械振動をキャビネット12に伝えないことにより、機
械振動が音波と合成されることがない。したがって、こ
のスピーカでは、低音域における音圧レベルが上昇し、
可聴周波数帯域における音圧レベルがフラットに近づい
てスピーカ特性が良化する。マウント部材7では、バッ
フル板自体の機械振動を回避できないので、該バッフル
板から生じる振動音が多少悪影響を及ぼす場合もある。
【0041】 一例として、図11において、市販の口
径38cmスピーカ(UREI製、モデル811B)に
おいて、スピーカユニットの円錐形フレームとエンクロ
ージャとの間に、多孔質焼結体のマウント部材を介在さ
せた場合と、介在させない場合(オリジナルの状態)の
周波数特性を比較する。その周波数特性を測定すると、
マウント部材を介在させると、周波数40〜50Hz以
下の低音域における音圧レベルが上昇している。この音
圧レベル上昇は、振動吸収性が高くて硬い多孔質焼結体
がスピーカユニット自体の機械振動を吸収し、エンクロ
ージャつまりスピーカボックスに箱鳴りなどを伝えず、
低周波数帯域の信号音に対して、コーン紙の膜面が精確
に動いた結果である。この結果として、このスピーカで
は、可聴周波数帯域における音圧レベルがフラットに近
づき、全般的にスピーカ特性が良化する。一方、オリジ
ナルの状態では、コーン紙の音響振動の反作用がスピー
カユニットのフレームに伝わり、さらにキャビネットに
伝達されてボックス全体が機械振動で揺動する。このよ
うなボックス揺動により、コーン紙からの発生音の低い
周波数が打ち消されて低音域における音圧レベルが低く
なり、低音域が精確に再生されない状況になる。
【0042】 図示しないけれども、口径30cmのス
ピーカ(JBL製)では、周波数約70Hz以下におい
て音圧レベルの上昇が知見できる。このように、剛性の
多孔質焼結体は、後付けのマウント部材として市販のス
ピーカーに取り付けても、スピーカユニットをエンクロ
ージャに固定する一部品としてあらかじめ組み込んでお
いてもよい。また、口径10cmのスピーカにおいて、
多孔質焼結体のマウント部材と木製のマウント部材とを
比較すると、約200Hz以下の低音域で音圧レベルが
上昇している。
【0043】 図12は、2台のスピーカユニット4
6,48を前後に組み込んだスピーカ50を示す。スピ
ーカユニット46,48は、通常、同一の形状と機能を
有し、コーン紙(図示しない)の全体を被うような円錐
形のフレーム51,52を有し、該フレームの平坦頂部
にマグネット部53,54を固着する。マグネット部5
3,54の近傍には、円筒形のボイスコイル(図示しな
い)を取り付け、該コイルの片側にコーン紙の中心頂部
を糊付けすることにより、コーン紙はコイルとともに音
響振動する。
【0044】 前方ユニット46のフレーム51は、バ
ッフル板56の中心孔57に挿入し、前周端のフランジ
部58をバッフル板56に接着またはボルト止めによっ
て固着する。バッフル板56には、中心孔57の前方内
周にフランジ部58と嵌合する環状溝59を形成する。
バッフル板56の平面形状は、キャビネット60の内寸
とほぼ同じで矩形である。一方、後方ユニット48のフ
レーム52は、多孔質焼結体を樹脂コーティングしたバ
ッフル板62において、その中心孔63の後方内周に形
成した環状溝64にフランジ部65を嵌め、ボルト止め
または接着によって固着する。バッフル板56,62
は、所定形状の多孔質焼結体を薄い樹脂でコーティング
している。
【0045】 バッフル板56,58の間には、該バッ
フル板とほぼ同形状で同じ厚みの2枚の木質板66,6
6を配置する。4枚の板全てを密接させて接着し、キャ
ビネット60の内周壁に垂直に金具止めまたは接着す
る。やや細長い箱型のキャビネット60は、バッフル板
56,62とともにスピーカボックスを構成し、その側
壁に放熱用の貫通孔67を設け、キャビネット後壁にコ
ネクタのレセプタクル68を取り付ける。
【0046】 スピーカ50では、コーン紙の音響振動
の反作用がスピーカユニット46,48のフレーム5
1,52に伝わっても、その機械振動をバッフル板5
6,62の多孔質焼結体で吸収するとともに、スピーカ
ユニット46,48に同じ音信号を入力することによ
り、両スピーカユニットが同時に同位相で音響振動する
ことになる。この動作環境により、前方のコーン紙の膜
面が、後方のコーン紙の膜面の振動と対応してより自由
に音響振動しやすくなる。口径が小さいスピーカでは、
低音域の精確な再生が困難であるのに対し、2連ユニッ
トのスピーカ50では、低音域における音圧レベルの上
昇が確認できる。
【0047】 図13から図17において、実験で使用
したスピーカユニットはいずれも同一の口径10cmで
あり、各スピーカは金属フォーム69を除いた態様であ
る。図13では、シングルスピーカとダブルスピーカと
のスピーカ特性を比較し、シングルスピーカは1台のス
ピーカユニット、ダブルスピーカは前記のように2台一
連のスピーカユニットを用い、これ以外は全て同一の構
造である。図13において、シングルスピーカは低音域
における音圧レベルが上昇し、ダブルスピーカは、シン
グルスピーカよりもさらに低音域の音圧レベルが向上し
ている。
【0048】 図14には、同一構造の別のダブルスピ
ーカにおいて、一方ではバッフル板に多孔質焼結体(商
品名:ラスク)を用い、他方ではバッフル板が木製であ
る場合について、それぞれの周波数特性を比較してい
る。図14において、多孔質焼結体のバッフル板を用い
たダブルスピーカは、低音域の再生において、木製のバ
ッフル板よりも音圧レベルがいっそう大きいことが判
る。
【0049】 図15と図16は、口径10cmである
異なるスピーカユニットに関する周波数特性を示し、両
スピーカユニットともに高音域で大きなディップ(落ち
込み)が発生している。一方、図17は、これらのスピ
ーカユニットを2基直列に搭載したダブルスピーカの周
波数特性を示す。両スピーカともに、高音域でディップ
が発生していたにもかかわらず、図17のダブルスピー
カにすると低音域の音圧レベルがいっそう上昇し、高音
域の音圧がより安定した特性を示している。図13から
図17により、多孔質焼結体のバッフル板を用いたダブ
ルスピーカは、通常のスピーカに比べて低音域の音圧レ
ベルを上昇させ、異なったスピーカユニット2基を用い
た場合には、個々のユニットの欠点を補い合うような特
性を持つことが判明する。
【0050】 図18に示すスピーカ70は、前方のス
ピーカユニット72を垂直に組み込み、後方のスピーカ
ユニット74を水平に組み込んでいる。スピーカユニッ
ト72,74は、通常、同一の形状と機能を有する。前
方ユニット72のフレーム75は、樹脂コーティングし
た多孔質焼結体のバッフル板76に固着する。前方ユニ
ット72の後方はキャビネット78で囲まれ、この密閉
空間79には後方ユニット74のフレーム内のコーン紙
(図示しない)が開口する。後方ユニット74のフレー
ム80は、樹脂コーティングした多孔質焼結体のバッフ
ル板82に固着し、該バッフル板82をスピーカユニッ
ト72の下方においてを水平に配置し、キャビネット7
8の内周壁に金具止めまたは接着する。
【0051】 スピーカ70は、図12に示すスピーカ
50と同様に、コーン紙の音響振動の反作用がフレーム
75,80に伝わっても、その機械振動をバッフル板7
6,82の多孔質焼結体で吸収するとともに、両スピー
カユニット72,74の振動が前後で同期しているた
め、その機械振動をいっそう効果的に減衰する。スピー
カ70は縦長であり、従来のスピーカと類似の形状であ
るので用途を限定されることが少ない。
【0052】 図19および図20は、車載スピーカの
設置位置に応じて描いた音線図であり、図1に例示する
ようなスピーカ1を適切に変形且つ小型化して、車載ス
ピーカとして用いると好ましい。設置可能なスピーカ
は、スピーカ1の代わりに通常のスピーカでも有効であ
り、図12に示すような2台のスピーカユニットを一連
に組み込んだスピーカなどでもよい。
【0053】 図19において、スピーカ84,84
は、自動車86の運転者席87と助手席88の下方にお
いて、座席下側の中心または中央やや前方に水平且つ前
向きに設置する。スピーカ84,84を運転者席87と
助手席88の下方に上向きに設置すると、両スピーカか
らの直接音は殆ど車内前方で反射され、車内の人の可聴
音は主として間接音となる。この間接音を収束すると、
仮想音像90,90が自動車の前方に位置することにな
る。一方、図20は、2台のスピーカ92,92をダッ
シュボードの左右に設置する従来の自動車(例えば、商
品名:カローラ)において、各スピーカから放出する音
線を示す。図20において、前席である運転席87や助
手席88では、近い方のスピーカ92から大きな直接音
を受け、続けて遠い方のスピーカからの直接音を受けて
から、その後にドアや窓、天井、後部窓などで多重に繰
り返し反射した音を聴くことになる。
【0054】 図19のように、座席下にスピーカ8
4,84を設置した場合には、近いスピーカから発した
直接音は座席を回り込んで前席のリスナーに最初に到達
し、続けて遠いスピーカの回り込んだ直接音を受ける。
即ち、近くから大きな直接音を受けるのではなく、座席
を回り込んだ回折音を最初に聞くことになり、その後
に、その回折音がドアや天井などに反射した音を聴くこ
とになる。一方、回折せずに前席の足元の空間を前方に
進んだ直接音は、時間遅れを伴なった反射音となってリ
スナーに到達し、さらにこの反射音が車内で多重に反射
することになる。
【0055】 図21は、自動車(商品名:カローラ)
について、図19の座席下に設置したスピーカ84,8
4によるスピーカ特性を助手席で測定したグラフであ
る。図22は、別の自動車(商品名:セルシオ)につい
て、図19の座席下に設置したスピーカ84,84によ
るスピーカ特性を助手席で測定したグラフである。ま
た、図23は、別の自動車(商品名:セルシオ)につい
て、従来位置に設置した多数のスピーカによるスピーカ
特性を助手席で測定したグラフである。音源は、それぞ
れ図7に示すような矩形波パルスである。
【0056】 座席下に設置したスピーカ84,84に
おいて、図21(a)の時間領域では、それほど大きく
ない音が最初に到達し、その後にある程度の大きさの音
が続き、図23(a)と同様に拡散された音場となって
いる。図21(b)の周波数領域では、低音域から3k
Hzあたりまでは、ほぼフラットな特性を有しており、
3kHz以降は、図23(b)に比べると音圧レベルの
下がり方が早い。図22に示すスピーカ特性は、図21
のそれに比べていっそう良好になっている。
【0057】 図23に示すスピーカ特性について、図
23(a)の時間領域では、大きな音圧を有する直接音
と反射音が多く、それらが受音点に到達していることが
判る。大きな直接音と反射音は、時間の経過につれて小
さくなり、拡散された音場になっている。図23(b)
の周波数領域では、1kHz近辺で音圧が少し上昇して
おり、そこから低音域さらに中高音域へ徐々に音圧レベ
ルが下がっている。したがって、自動車(商品名:カロ
ーラ)について、図20に示すような従来位置に設置し
たスピーカ92,92によるスピーカ特性は、図23の
それに比べていっそう劣っている。
【0058】 図19と図20に示す音線図、図21か
ら図23に示す測定値、さらに試聴から判断すると、図
19の座席下では、スピーカ84,84からの直接音
は、直にリスナーに到達せず、回折音が最初に耳に届い
ている。少しの時間経過のあと、座席足元前方に進んだ
直接音が、今度は反射音として受音点に到達する。この
反射音は、足元の空間内で反射を繰り返した結果、それ
ぞれの反射音が次々と受音点へ到達するので、座席足元
前方でしっかりとした音像を定位することとなる。周波
数特性においても、低周波数域から3kHzくらいま
で、フラットな特性であること、3kHz以上の高周波
数域では、レベルの落ち込みが早いことから、耳にとっ
て低音域を十分に再生した音場を形成している。仮想音
像90,90が前席前方に定位することにより、音が無
秩序に鳴っているのではなく、整音された音楽ホールや
リスニングルームの響きを感じ取ることができる。スピ
ーカからの直接音が直にリスナーに到達しないことか
ら、音の圧迫感から開放され、柔らかく疲れない音場が
形成されている。
【0059】 一般に、オーデトリムやコンサートホー
ルなどの時間的な音響特性は、舞台で演奏された音が観
客に対してまず直接音が到達し、ついで一次反射音、二
次反射音、三次反射音と続いて直接音の音量を支えるよ
うな形式で観客に音が伝わっていき、これによって豊か
な音量と明瞭感、さらに音に包まれたような気分にな
る。このような音響空間を作りだしているのがオーデト
リムである。自動車内では、音響空間が小さくて反射距
離が短いために、車内にいる人に対して、直接音と、一
次反射音、二次反射音などとが同時に近い状態で到達
し、車内にいる人は一度に高い音圧を受けてしまう。
【0060】 これに対し、図19のように、座席下に
スピーカ84,84を設置すると、車内にいる人は、両
スピーカからの直接音が多少低くなる代わりに、反射音
が仮想音像90を作ることにより、一次反射音が恰も直
接音のように聞こえ、小さな空間が大きく拡がるような
擬似空間を作り出す。したがって、車内においても、オ
ーデトリムやコンサートホールなどの時間的な音響特性
を持つ音響空間を作り出すことができる。
【0061】 一方、図20の従来位置では、スピーカ
92,92からの直接音やその反射音が、時間間隔をお
かずに車内で大きな音圧を生じさせている。このため、
無秩序な方向からの音に包まれ、音像の定位もむずかし
いものと判断せざるをえない。その周波数特性において
も、1〜2kHz付近のレベル上昇が見られ、耳障りな
音場を形成している。この結果から、多孔質焼結体のバ
ッフル板を用いたスピーカを図19のように座席下に設
置することは、車内音場を改善する優れた効果を有する
ものと解釈できる。
【0062】
【発明の効果】本発明に係る汎用スピーカは、振動吸収
性が高くて剛性の多孔質焼結体を用いてスピーカユニッ
トをバッフル板やエンクロージャに固定することによ
り、信号入力時のスピーカユニットのフレーム振動を吸
収し、コーン紙の膜面は拘束を受けることなく精確に音
響振動することができる。また、多孔質焼結体を介在さ
せると、余計なフレーム振動がバッフル板やエンクロー
ジャに伝わらないことにより、入力信号に対して忠実な
音が再生でき、よりクリアでメリハリのある音が再生さ
れることになる。本発明のスピーカでは、特に、可聴周
波数あたりでその傾向が顕著に現れ、さらに低音域の音
圧レベルが上昇する効果がある。
【0063】 本発明で用いる金属フォームは、見掛け
密度が1.0以下で硬くて厚みがあり、スピーカから発
生する音波が金属フォーム面で直進や回折することによ
り、広範囲にわたって安定した音を供給できる。また、
本発明の汎用スピーカにおいて、スピーカユニットを2
台直列に固定すると、前後のスピーカユニットに同時に
同位相で信号が入力されるため、前方スピーカユニット
のコーン紙の膜面は、後方スピーカユニットのコーン紙
の膜面の音響振動に応じてよりスムーズに振動する。こ
の結果、2台直列のスピーカユニットを備えたスピーカ
は、シングルユニットのスピーカに比べて、さらに低音
域の音圧レベル上昇および周波数特性が安定する。
【0064】 本発明のスピーカ取り付け法は、車内に
おいてスピーカを運転席および助手席の座席下に設置す
ることにより、従来の車内音場が無秩序な音の空間であ
るのに反し、前席の前方に音像を定位させ、整音計画さ
れた音楽ホールやリスニングルームのように音場の改善
を達成する。また、本発明方法では、直接音が直にリス
ナーに到達せず、前方から拡散された音が到達するた
め、圧迫感のないリラックスできる音場空間を作り出し
ている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の汎用スピーカを示す概略断面図であ
る。
【図2】 マウント部材を有する汎用スピーカの要部断
面図である。
【図3】 別のマウント部材を有する汎用スピーカの要
部断面図である。
【図4】 本発明で用いる多孔質焼結体の拡大断面図で
ある。
【図5】 本発明のスピーカについて、スピーカ特性に
おける時間領域を表示するグラフである。
【図6】 木製のバッフル板を取り付けたスピーカにつ
いて、スピーカ特性における時間領域を表示するグラフ
である。
【図7】 スピーカ特性の測定方法を示す説明図であ
る。
【図8】 金属フォームの製造に用いるめっき反応装置
の概略説明図である。
【図9】 金属フォームを取り付けたスピーカについ
て、受音点の向きがスピーカ正面(0度)、傾き30
度、60度の周波数特性を示すグラフである。
【図10】 金属フォームの無いスピーカについて、受
音点の向きがスピーカ正面(0度)、傾き30度、60
度の周波数特性を示すグラフである。
【図11】 市販のスピーカにおいて、スピーカユニッ
トの円錐形フレームとエンクロージャとの間に、多孔質
焼結体のマウント部材を介在させた場合と、介在させな
い場合の周波数特性を示すグラフである。
【図12】 汎用スピーカの変形例を示す概略斜視図で
ある。
【図13】 シングルスピーカおよびダブルスピーカに
ついて、(a)はスピーカ特性における時間領域、
(b)は周波数領域を表示するグラフである。
【図14】 同一構造の別のダブルスピーカについて、
バッフル板が多孔質焼結体または木製である場合の周波
数特性を示すグラフである。
【図15】 口径10cmのスピーカユニットに関する
周波数特性を示すグラフである。
【図16】 口径10cmの別のスピーカユニットに関
する周波数特性を示すグラフである。
【図17】 図15と図16のスピーカユニットを用い
るダブルスピーカに関する周波数特性を示すグラフであ
る。
【図18】 汎用スピーカの別の変形例を示す概略斜視
図である。
【図19】 本発明に係る車載スピーカの設置位置で描
いた音線図であり、(a)は乗用車の側断面図、(b)
は水平断面図である。
【図20】 従来の車載スピーカの設置位置で描いた音
線図であり、(a)は乗用車の側断面図、(b)は水平
断面図である。
【図21】 図19の車載スピーカの設置位置におい
て、(a)はスピーカ特性における時間領域、(b)は
周波数領域を表示するグラフである。
【図22】 別の自動車について、図21と同様のスピ
ーカ特性を示すグラフである。
【図23】 別の自動車について、本来の車載スピーカ
の設置位置における図21と同様のスピーカ特性を示す
グラフである。
【符号の説明】
1 汎用スピーカ 2 バッフル板 3 多孔質焼結体 5,7 マウント部材 11 スピーカユニット 12 キャビネット 14 円錐形のフレーム 16 マグネット部
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成13年7月11日(2001.7.1
1)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図11
【補正方法】変更
【補正内容】
【図11】

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アンプの音響出力信号が作用するスピー
    カユニットと、外表面の気孔が疎く且つ内部の気孔が密
    である多孔質焼結体からなり且つスピーカユニットのフ
    レームを取り付けるバッフル板と、バッフル板とともに
    スピーカボックスを構成して1台または2台一連のスピ
    ーカユニットを組み込むキャビネットとを備え、前記バ
    ッフル板の多孔質焼結体がスピーカユニットのフレーム
    に伝搬される機械振動を吸収することにより、音響信号
    の忠実な再現および低音域を明瞭に再生する汎用スピー
    カ。
  2. 【請求項2】 アンプの音響出力信号が作用するスピー
    カユニットと、外表面の気孔が疎く且つ内部の気孔が密
    である多孔質焼結体のマウント部材と、スピーカユニッ
    トのフレームを取り付けるバッフル板と、バッフル板と
    ともにスピーカボックスを構成して1台または2台一連
    のスピーカユニットを組み込むキャビネットとを備え、
    前記マウント部材をスピーカユニットとバッフル板との
    間またはバッフル板とキャビネットとの間に介在させ、
    マウント部材の多孔質焼結体がスピーカユニットのフレ
    ームに伝搬される機械振動を吸収することにより、音響
    信号の忠実な再現および低音域を明瞭に再生する汎用ス
    ピーカ。
  3. 【請求項3】 スピーカ前面に装着する音響レンズを備
    え、前記音響レンズは厚さ数mmの粗い金属フォームか
    らなり、この金属フォームを凸状に塑性変形して音源の
    強度分布および位相を制御することにより、発生音の指
    向性を適宜に拡散させる請求項1または2記載の汎用ス
    ピーカ。
  4. 【請求項4】 アンプの音響出力信号が作用するスピー
    カユニットと、スピーカユニットのフレームを取り付け
    るバッフル板と、スピーカ前面に装着する音響レンズ
    と、バッフル板とともにスピーカボックスを構成して1
    台または2台一連のスピーカユニットを組み込むキャビ
    ネットとを備え、前記音響レンズは厚さ数mmの金属フ
    ォームからなり、この金属フォームを凸状に塑性変形し
    て音源の強度分布および位相を制御することにより、発
    生音の指向性を適宜に拡散させる汎用スピーカ。
  5. 【請求項5】 スピーカユニットと、該スピーカユニッ
    トのフレームを取り付けるバッフル板と、バッフル板と
    ともにスピーカボックスを構成してスピーカユニットを
    組み込むキャビネットとを備えるスピーカ2台を自動車
    用として小型化し、両スピーカを自動車の運転者席と助
    手席の下方に水平または上向きに設置することにより、
    車内における可聴音が主として間接音からなり、柔らか
    な音場を形成するスピーカの取り付け法。
  6. 【請求項6】 スピーカユニットと、該スピーカユニッ
    トのフレームを取り付けるバッフル板と、バッフル板と
    ともにスピーカボックスを構成してスピーカユニットを
    組み込むキャビネットとを備え、バッフル板が多孔質焼
    結体であるかまたは多孔質焼結体のマウント部材をスピ
    ーカユニットとバッフル板との間またはバッフル板とキ
    ャビネットとの間に介在させるスピーカ2台を自動車用
    として小型化し、両スピーカを自動車の運転者席と助手
    席の下方に水平または上向きに設置することにより、車
    内の可聴音が主として車内壁の間接音からなり、発生音
    の低音域を十分に再生して柔らかな音場を形成するスピ
    ーカの取り付け法。
  7. 【請求項7】 スピーカ前面に厚さ数mmの粗い金属フ
    ォームからなる音響レンズを装着し、この金属フォーム
    を凸状に塑性変形して音源の強度分布および位相を制御
    することにより、自動車内において発生音の指向性を適
    宜に拡散させる請求項5または6記載の取り付け法。
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