JP2003020729A - 建築物又は建造物の補強構造及び補強材 - Google Patents

建築物又は建造物の補強構造及び補強材

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JP2003020729A
JP2003020729A JP2001287023A JP2001287023A JP2003020729A JP 2003020729 A JP2003020729 A JP 2003020729A JP 2001287023 A JP2001287023 A JP 2001287023A JP 2001287023 A JP2001287023 A JP 2001287023A JP 2003020729 A JP2003020729 A JP 2003020729A
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building
reinforcing member
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reinforcing
synthetic resin
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JP2001287023A
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Takuzo Nakamura
拓造 中村
Kiyotaka Shichima
清孝 七間
Takaaki Eguchi
孝明 江口
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JSP Corp
Nakamura Bussan Co Ltd
Original Assignee
JSP Corp
Nakamura Bussan Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 補強部材を有する建築物又は建造物の防振性
能及び耐震性能がより高いものとすることにより、大き
な地震に耐え、さらには大風による揺れが小さい建築物
又は建造物をを提供することを目的とする。 【解決手段】 建築物又は建造物の一方の構造材(A)
の途中から他方の構造材(B)の途中にかけて固定され
た補強部材において、構造材(A)と構造材(B)と補
強部材とで形成される空間部内に合成樹脂発泡体が圧縮
状態で固定して建築物又は建造物の補強構造を構成し
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建築物又は建造物
の補強構造及びそれに使用される補強材に関し、詳しく
は、防振性及び耐震性が強化された建築物又は建造物の
補強構造及びそれに使用される補強材に関する。
【0002】
【従来の技術】木造軸組建築物における柱、間柱、土
台、梁及び胴差等の構造材、木造枠組壁構法建築物にお
ける角材等の構造材、鉄骨建築物における鉄骨等の構造
材であって、それら構造材の中で相互に接している2つ
の構造材の間において、筋交いやブレースのほかに、例
えば、図7に示すように、一方の構造材10の途中から
他方の構造材11の途中にかけて火打材等の木製又は金
属製の補強部材12を斜めに固定して建築物を補強する
ことが行なわれている。上記補強部材を有する建築物
は、上記補強部材が存在しない建築物に比べ、耐震性が
向上されている。また、橋梁や鉄塔といった建造物にお
いては、トラス構造を採用して建造物を補強することが
行なわれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記したような補強さ
れた建築物又は建造物は、補強しないものに比べ防振
性、耐震性等は向上しているが、防振性能及び耐震性能
をより高いものとすることはより大きな地震に耐え、さ
らには大風による揺れが小さい建築物又は建造物にする
うえで重要である。即ち、本発明は、防振性能及び耐震
性能がより高められた建築物又は建造物を提供すること
を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1)建築物
又は建造物の一方の構造材(A)の途中から他方の構造
材(B)の途中にかけて固定された補強部材において、
構造材(A)と構造材(B)と補強部材とで形成される
空間内に合成樹脂発泡体が圧縮状態で固定されているこ
とを特徴とする建築物又は建造物の補強構造に係り、さ
らに(2)合成樹脂発泡体と、補強部材又は/及び構造
材(A)又は/及び構造材(B)とが接着されているこ
とを特徴とする上記(1)記載の建築物又は建造物の補
強構造、(3)補強部材が金属製であることを特徴とす
る上記(1)又は(2)記載の建築物又は建造物の補強
構造、(4)補強部材がばね鋼からなることを特徴とす
る上記(3)記載の建築物又は建造物の補強構造、
(5)ばね鋼からなる補強部材が湾曲状であることを特
徴とする上記(4)記載の建築物又は建造物の補強構
造、(6)ばね鋼からなる補強部材が重ね板ばねで構成
されているを特徴とする上記(4)又は(5)記載の建
築物又は建造物の補強構造、(7)合成樹脂発泡体が、
5%圧縮時の圧縮応力が50〜2000kPa及び圧縮
永久歪が12%以下であることを特徴とする上記(1)
乃至(6)のいずれかに記載の建築物又は建造物の補強
構造、(8)合成樹脂発泡体がポリプロピレン系樹脂発
泡体からなることを特徴とする上記(1)乃至(7)の
いずれかに記載の建築物又は建造物の補強構造、及び
(9)上記(3)乃至(6)のいずれかに記載の補強部
材と上記(7)乃至(8)のいずれかに記載合成樹脂発
泡体とがあらかじめ接着されてなることを特徴とする建
築物又は建造物の補強構造用補強材、を要旨とする。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面に基
づき詳細に説明する。図1は木造軸組建築物の土台と柱
が相互に接する箇所と、柱と梁が相互に接する箇所にお
ける本発明の建築物の補強構造の一例を示す部分側面図
であり、図2は図1の要部Pの拡大図であり、図3
(a)は木造軸組建築物の梁と間仕切げたが相互に接す
る箇所における本発明の建築物の補強構造の一例を示す
部分平面図、同図(b)は、図3(a)の部分斜視図で
あり、図4は木造軸組建築物の土台と土台が相互に接す
る箇所における本発明の建築物の補強構造の一例を示す
部分平面図であり、図5(a)は、建造物の柱と梁が相
互に接する箇所における本発明の建造物の補強構造の一
例を示す部分斜視図であり、同図(b)は、図5(a)
の要部Qの拡大図である。図6は、本発明の重ね板ばね
で構成された補強部材を使用した鉄骨建造物の柱と梁が
相互に接する個所の補強構造の一例を示す部分側面図で
ある。図中、1は基礎を、2は構造材を、20及び21
は土台(構造材)を、22は柱(構造材)を、23は梁
(構造材)を、24は間仕切げた(構造材)を、3は補
強部材を、30は親板を、31は全長板または子ばね板
を、32はクリップみぞ形支持具を、4は合成樹脂発泡
体を、5は固定具をそれぞれ示す。
【0006】図1及び図2は、木造軸組建築物の土台2
0と柱22が相互に接する箇所と、柱22と梁23が相
互に接する箇所における本発明の建築物の補強構造を示
している。土台20と柱22が相互に接する箇所では、
土台20の途中から柱22の途中にかけて補強部材3が
ボルト等の固定具5を使用して固定されている。そし
て、土台20と柱22と補強部材3とによって形成され
る三角形状の空間内には、合成樹脂発泡体4が圧縮状態
で固定されている。また、柱22と梁23が相互に接す
る箇所では、柱22の途中から梁23の途中にかけて補
強部材3がボルト等の固定具5を使用して固定されてい
る。そして、柱22と梁23と補強部材3とによって形
成される三角形状の空間内には、合成樹脂発泡体4が圧
縮状態で固定されている。尚、木造軸組建築物において
は、ボルト等の固定具5は、補強部材3及び合成樹脂発
泡体4を固定する際、構造材内(ボルト等を通すために
構造材に設けられた貫通孔内)に接着剤を充填して構造
材と固定具とが接着一体化されていることが好ましく、
そのように接着一体化されていると、構造材に固定具を
通すための穴を設けたことによる強度低下を極力防止す
ることができる。
【0007】図3は、木造軸組建築物の梁23と間仕切
げた24が相互に接する箇所における本発明の建築物の
補強構造を示している。梁23と間仕切げた24が相互
に接する箇所では、梁23の途中から間仕切げた24の
途中にかけて補強部材3がボルト等の固定具5を使用し
て固定されている。そして、梁23と間仕切げた24と
補強部材3とによって形成される三角形状の空間内に
は、合成樹脂発泡体4が圧縮状態で固定されている。ま
た、同図(b)より、通常合成樹脂発泡体4の厚さは、
圧縮して固定した際、梁23、間仕切げた24の長手方
向の側面図と面一になるように構成されるが、建築物又
は建造物の構造に応じて適宜変更することが可能であ
る。合成樹脂発泡体4の厚みは、合成樹脂発泡体4が取
り付けられる構造材の厚み(合成樹脂発泡体4が取り付
けられた際の合成樹脂発泡体4の厚み方向の寸法)の2
0〜100%であることが好ましく且つ50〜200m
mであることが好ましい。なお、図1、図2、図4、図
5および図6についても同様である。
【0008】図4は、木造軸組建築物の土台20とそれ
とは別な土台21が相互に接する箇所における本発明の
建築物の補強構造を示している。土台20と土台21が
相互に接する箇所では、土台20の途中から土台21の
途中にかけて補強部材3がボルト等の固定具5を使用し
て固定されている。そして、土台20と土台21と補強
部材3とによって形成される三角形状の空間内には、合
成樹脂発泡体4が圧縮状態で固定されている。
【0009】図5(a)は、建造物の柱と梁が相互に接
する箇所における本発明の鉄骨造建造物の補強構造の一
例を示す部分斜視図であり、同図(b)は、図5(a)
の要部Qの拡大図である。柱22と梁23が相互に接す
る箇所では、柱22の途中から梁23の途中にかけてば
ね鋼からなる湾曲状の補強部材3がボルト等の固定具5
を使用して固定されている。そして、柱22と梁23と
ばね鋼からなる補強部材3とによって形成される三角形
状の空間内には、合成樹脂発泡体4が圧縮状態で固定さ
れている。尚、湾曲状の補強部材3は、該三角形状の空
間が狭まるように、すなわち、柱と梁との交点である角
部に向かって湾曲するように、柱22と梁23に固定さ
れている。
【0010】図6は、本発明の重ね板ばねで構成された
補強部材を使用した鉄骨建造物の柱と梁が相互に接する
個所の補強構造の一例を示す部分側面図である。柱22
と梁23が相互に接する箇所では、柱22の途中から梁
23の途中にかけて、ばね鋼からなる湾曲状の親板30
と、子ばね板31とで構成された重ね板ばねからなる補
強部材3がボルト等の固定具5を使用して固定されてい
る。そして、柱22と梁23と重ね板ばねからなる補強
部材3とによって形成される三角形状の空間内には、合
成樹脂発泡体4が圧縮状態で固定されている。尚、重ね
板ばねの湾曲は、該三角形状の空間が狭まるように、す
なわち、柱22と梁23とが相互に接する個所の角部に
向かって湾曲するように、形成されている。
【0011】上記いずれの態様においても、建築物又は
建造物を形成している構造材の中で相互に接している構
造材の間において、一方の構造材2の途中から他方の構
造材2の途中にかけて補強部材3が固定されており、構
造材2と他の構造材2と補強部材3とで形成される三角
形状の空間内に合成樹脂発泡体4が圧縮されて固定され
ている構造を有している。なお、構造材2の途中とは、
図1〜図6からも明らかなように、一方の構造材と他方
の構造材とのある交点から他の交点までの間における構
造材2の長手方向の途中位置のことをいう。
【0012】本発明においては、補強部材3に加え、構
造材2と構造材2と補強部材3とで形成される三角形状
の空間内に合成樹脂発泡体4が圧縮されて固定されてい
る構造を有しているので大風の際又は周辺で地震が起き
た際に、建築物又は建造物の揺れを小さくできると共に
合成樹脂発泡体4のクッション性が建築物又は建造物の
揺れを吸収して早期に揺れを小さくする働きをする。ま
た、構造材2の相互に接する箇所に応力が加わった場
合、圧縮された合成樹脂発泡体4のクッション性により
補強部材3への負荷が軽減され、建築物又は建造物の耐
久性向上にもつながる。したがって、本発明の建築物又
は建造物の補強構造は、従来の構造材2と構造材2と補
強部材3とで形成される三角形状の空間内に合成樹脂発
泡体4が存在していない建築物又は建造物に比べ、構造
材2に対するねじれ変形等の変形を一層小さくすること
ができるので、建築物又は建造物の耐久性を向上させる
ことができる。
【0013】本発明の建築物又は建造物の補強構造にお
いては、合成樹脂発泡体4と、補強部材3又は/及び構
造材2又は/及び構造材2とが接着されていることが好
ましく、合成樹脂発泡体4と、補強部材3及び構造材2
及び構造材2とが接着されていることがより好ましい。
その際の接着は、通常は接着剤が使用されるが、補強部
材3と合成樹脂発泡体4とが熱接着可能な場合には、熱
接着性樹脂を介して或いは熱接着性樹脂を介することな
く直接に補強部材3と合成樹脂発泡体4を接着すること
もできる。特に、合成樹脂発泡体4と補強部材3とをあ
らかじめ接着してなる補強材を使用すると、構造材2へ
の取り付け作業性が向上するので好ましい。
【0014】本発明の建築物又は建造物の補強構造にお
ける補強部材3としては、木製又は強化プラスチック製
のものでも構わないが、金属製のものが軽量で高い強度
を出すことができるので好ましい。また、金属製のもの
であると、後述する合成樹脂発泡体4の素材としてポリ
プロピレン系樹脂からなるものを使用した際には、補強
部材3と合成樹脂発泡体4とを直接熱接着させることが
できるので好ましい。補強部材3の形状としては、図3
(b)に示すように、構造材2への固定を容易とする固
定部と、大風の際又は地震等の際、構造材2とそれと相
互に接する構造材2とが交差点を支点として近づこうと
する動きを妨げるようにリブ6が形成されたもので、一
方の固定部から他方の固定部の間の部分が実質的に直線
状または湾曲状をなすものが好ましく、特に湾曲状の場
合には、構造材2とそれと相互に接する別な構造材2と
補強部材3とで形成される三角形状の空間が狭まるよう
に、すなわち、一方の構造材と他の構造材とが相互に接
する個所の角部に向かって湾曲するように、補強部材3
が構造材2に固定されることが好ましい。
【0015】また、補強部材3は、金属製のものの中で
もばね鋼からなるものが好ましい。ばね鋼としては、J
IS G4801に規定されるばね鋼鋼材が挙げられ
る。ばね鋼からなる補強部材3を使用した場合、補強部
材3の復元力が強いため、補強部材3が変形するような
大風又は地震の際にも、水平応力の強弱による変位に対
し、その変形が素早く元に戻るので建築物又は建造物の
揺れも早く収まると共に、建築物又は建造物にゆがみが
起こりにくいという効果を奏し、建築物又は建造物の耐
久性を向上させる効果がある。また、想定を超えた地震
力が働いても建築物又は建造物のねばりが十分にあり、
建築物又は建造物の歪エネルギーで地震エネルギーを吸
収し、たとえ建築物又は建造物の変形が大きくても倒壊
をさけることができる。特に、ばね鋼からなる補強部材
が湾曲状を有し、構造材2とそれと相互に接する別な構
造材2と補強部材3とで形成される三角形状の空間が狭
まるように、補強部材3が構造材2に固定されている場
合、その補強効果は非常に大きく、その湾曲がアーチ状
の場合は、特にその効果が大きい。この場合、湾曲状に
形成されたばね鋼からなる補強部材3の湾曲状部分の両
端には、前記と同様に固定部が形成されていることが好
ましい。ただし、この場合、前記とは異なり、湾曲状部
分には前記リブは形成されていない方が好ましい。ばね
鋼は、板状のものを予め湾曲状に形成されたものが用い
られるほか、板状のものを用いて構造材に固定する際に
湾曲状に形成することもできる。補強部材3が、ばね鋼
からなる板状のもの(板ばね)であると、厚みの割に力
の強いばねとすることができるので好ましい。また、板
ばねの幅方向と、取付けられる構造材の幅方向とが一致
するようにして板ばねからなる補強部材を構造材に取付
けると板ばねの力(変形を抑制する力及び変形しても元
に戻ろうとする力)を効果的に利用できるので好まし
い。
【0016】ばね鋼からなる補強部材3としては、重ね
板ばねで構成されているものがより好ましい。重ね板ば
ねで構成されたものは、補強部材3が大きく変形するよ
うな大風又は地震の際にもその変形を効果的に打ち消す
ことが可能となる。また、重ね板ばねからなる場合、図
6に示すように、親板30の長手方向中央部と、それに
重合される子ばね板31との長手方向中央部との間に所
定の間隔の空間が形成されるように、子ばね板の両端部
を親板に取付けて(子ばね板を三角形状の空間側にし
て)両者を組み合わせることが好ましい。子ばね板を親
板に取付けるに際しては、伸張時の摩擦抵抗によるばね
効率を高めるためと自由振動を止めるために子ばね板3
1の両端部が親板30に沿って移動可能に、子ばね板を
クリップみぞ形支持具32に固定し、クリップみぞ形支
持具が親板を挟持してスライドするように取付けること
が好ましい。このように取付けた場合には、建築物又は
建造物の変形の際、最初の小さい変形力を親板で受け、
それに続く大きな変形を親板と子ばね板の双方で受ける
ようにでき、これによって建築物又は建造物の小さな変
形から大きな変形までをも比較的安価なばねで対応が可
能となる。また、この態様では、大風の際又は地震時に
建築物又は建造物が大きく変形しても、三角形状の空間
内に存在する合成樹脂発泡体4が子ばね板により比較的
均一に圧縮され、その結果、合成樹脂発泡体4が子ばね
板から離れにくくなるので、大風又は地震がおさまって
変形が元に戻ったときに合成樹脂発泡体4も元の形状に
戻りやすいので好ましい。このようにすることにより長
期間にわたって合成樹脂発泡体4の三角形状の空間内で
の圧縮状態が長期に維持されやすくなる。なお、重ね板
ばねは、親板を共通のものとし、ばね力の異なる全長板
又は子ばね板を複数種類用意しておくことが好ましい。
そうすれば、建築物又は建造物の補強度合いに応じて、
親板に任意のばね力を有する全長板又は子ばね板を組み
合わせることができるので、部品点数を少なくすること
が可能となる。
【0017】また、ばね鋼からなる補強部材3がフリー
の状態(構造材2とそれと相互に接する別な構造材2と
補強部材3とで形成される三角形状の空間内に、合成樹
脂発泡体4が固定されていない状態)で構造材2に固定
されていると大風又は地震の際にばね鋼の振動が速やか
に収まり難いが、合成樹脂発泡体4が、構造材2とそれ
と相互に接する別な構造材2と補強部材3とで形成され
る三角形状の空間内に圧縮状態で固定されているためそ
のようなばね鋼の振動は実質的に発生しない。特に、ば
ね鋼からなる補強部材3を木造軸組建築物に使用し、補
強部材3及び合成樹脂発泡体4を柱や梁等の構造材2に
ボルト等の固定具5で固定すると共に、構造材2内(ボ
ルト等を通すために構造材に設けられた貫通孔内)に接
着剤を充填して該貫通孔内で構造材2と固定具5を接着
一体化したものでは、構造材2に固定具5を通すための
穴を設けたことによる強度低下を極力防止できることは
もちろんのこと、ばね鋼からなる補強部材3を使用する
ことによって、固定具5が固定される構造材の木部に対
する負担が少なくなり、当該部分への応力集中を防ぐこ
とができるので好ましい。
【0018】本発明の建築物又は建造物の補強構造にけ
る合成樹脂発泡体4は、構造材2とそれと相互に接する
別な構造材2と補強部材3とで形成される三角形状の空
間内に圧縮状態で固定されなければならない。このよう
に固定しない場合には、大風の際又は地震時に建築物又
は建造物の揺れを小さくする働きと建築物又は建造物の
揺れを吸収して早期に揺れを小さくする働きが乏しくな
るか、揺れを小さくする働き(効果)が殆ど得られな
い。合成樹脂発泡体4を、構造材2とそれと相互に接す
る別な構造材2と補強部材3とで形成される三角形状の
空間内に圧縮状態で固定するとは、合成樹脂発泡体を、
構造材とそれと相互に接する他の構造材と補強部材とで
形成される三角形状の空間部の面積よりも幾らか大きく
成形した合成樹脂発泡体を、構造材2とそれと相互に接
する別な構造材2に補強部材3を固定する際に、合成樹
脂発泡体4を上記三角形状部分に配置して補強部材3を
押し付けて合成樹脂発泡体4を、全体的又は部分的に圧
縮変形させながら固定することにより得られる。
【0019】合成樹脂発泡体4は、上記のようにして圧
縮状態で固定されることから圧縮変形し得るものが用い
られる。そのような合成樹脂発泡体4としては、5%圧
縮時の圧縮応力が2000kPa以下であることが好ま
しく、1500kPa以下であることがより好ましい。
5%圧縮時の圧縮応力があまりにも小さくなりすぎる
と、大風の際又は地震時に建築物又は建造物の揺れを小
さくする働きと、建築物又は建造物の揺れを吸収して早
期に揺れを小さくする働きが乏しくなる虞があるので、
合成樹脂発泡体4の5%圧縮時の圧縮応力は50kPa
以上であることが好ましく、80kPa以上であること
がより好ましい。
【0020】また、合成樹脂発泡体4は、構造材2とそ
れと相互に接する別な構造材2と補強部材3とで形成さ
れる三角形状の空間内に圧縮状態で固定されるが、長期
間にわたってその圧縮状態が維持されることが好まし
い。このような状態に維持されることにより、長期間に
わたって、大風の際又は地震時に建築物又は建造物の揺
れを小さくし、建築物又は建造物の揺れを吸収して早期
に揺れを小さくすることができる。そのような観点か
ら、合成樹脂発泡体4の圧縮永久歪は12%以下である
ことが好ましく、10%以下であることがより好まし
い。
【0021】上記合成樹脂発泡体4の圧縮永久歪は、J
IS K 6767−1977に従って測定された値で
ある(ただし、試験片の厚さの25%圧縮する際の圧縮
スピードは10mm/分とする)。また、上記5%圧縮
時の圧縮応力は、JIS K6767−1977におけ
る圧縮硬さ測定方法に従って試験片を初めの厚さの10
%圧縮して得られた圧縮応力−歪曲線から5%圧縮時の
圧縮応力を読み取ったものである。
【0022】本発明の建築物又は建造物の補強構造にけ
る合成樹脂発泡体4を形成する合成樹脂としては、スチ
レンの単独重合体樹脂、スチレンと他のモノマーとから
製造されたスチレン系共重合体樹脂、スチレンの単独重
合体樹脂又は/及びスチレン系共重合体樹脂とスチレン
−ブタジエンブロック共重合体との混合物、ゴム状重合
体の存在下でスチレン系モノマーを重合することによっ
て得られるゴム変性スチレン系樹脂(耐衝撃性ポリスチ
レン)、或いは上記したスチレン系の樹脂と他の樹脂又
は/及びゴム状重合体との混合物等の、スチレン成分比
率が50重量%以上であるポリスチレン系樹脂或いはポ
リスチレン系樹脂組成物;エチレンの単独重合体樹脂、
エチレンと他のモノマーとから製造されたエチレン系共
重合体樹脂、エチレンの単独重合体樹脂又は/及びエチ
レン系共重合体樹脂にスチレン系モノマー等のビニルモ
ノマーを含浸させて重合してなるグラフト変性エチレン
系樹脂、或いは上記エチレン系の樹脂と他の樹脂又は/
及びゴム状重合体との混合物等の、エチレン成分比率が
50重量%以上であるポリエチレン系樹脂或いはポリエ
チレン系樹脂組成物;プロピレンの単独重合体樹脂、プ
ロピレンと他のモノマーとから製造されたプロピレン系
共重合体樹脂、プロピレンの単独重合体樹脂又は/及び
プロピレン系共重合体樹脂にスチレン系モノマー等のビ
ニルモノマーを含浸させて重合してなるグラフト変性プ
ロピレン系樹脂、或いは上記プロピレン系の樹脂と他の
樹脂又は/及びゴム状重合体との混合物等の、プロピレ
ン成分比率が50重量%以上であるポリプロピレン系樹
脂或いはポリプロピレン系樹脂組成物;熱可塑性ポリエ
ステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアミド樹脂;
ポリフェニレンエーテル樹脂;あるいは上記した樹脂の
2以上の混合物等が例示される。特にその中でも合成樹
脂発泡体4がポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン系
樹脂組成物も含む)発泡体からなるものでは、軽量な上
に、5%圧縮時の圧縮応力及び圧縮永久歪を上記範囲内
にすることが容易であるので最も好ましい。
【0023】5%圧縮時の圧縮応力及び圧縮永久歪が上
記範囲内のポリプロピレン系樹脂発泡体としては、例え
ば、株式会社ジェイエスピーから商品名「ピーブロッ
ク」として市販されているものの中で、発泡倍率(基材
樹脂の密度÷発泡体の見かけ密度)が5〜30倍のもの
が好適に挙げられる。
【0024】以上では、本発明の建築物又は建造物の補
強構造を木造軸組建築物のある一部あるいは鉄骨造建造
物のある一部を例にして説明してきたが、上記した以外
の別な構造材の相互に接する箇所に本発明の建築物又は
建造物の補強構造を形成することもできる。本発明にお
いては、構造材の相互に接する箇所の全てに本発明の建
築物の補強構造を形成することもできるが、通常は、構
造材の相互に接する箇所で、窓等を形成するために筋交
い等の補強ができない箇所の一部または大部分または全
部に本発明の建築物又は建造物の補強構造を形成するこ
とが好ましい。本発明の建築物又は建造物の補強構造
は、建築物又は建造物を形成している構造材の中で相互
に接している構造材の間において、一方の構造材の途中
から他方の構造材の途中にかけて補強部材を固定するの
で、窓等を形成するために筋交い等の補強ができない箇
所にも導入することが可能である。また、建築物又は建
造物の構造材の相互に接する箇所のうち、補強が必要な
箇所にのみ本発明補強構造を形成することも可能であ
る。
【0025】本発明の補強構造を建築物又は建造物の水
平方向に走る構造材間に設けた場合には大風の際の又は
地震時の横揺れに対して耐性を増し、本発明の補強構造
を建築物又は建造物の水平方向に走る構造材と垂直方向
に走る構造材間に設けた場合には大風の際の又は地震時
の縦揺れに対して耐性を増すことになる。よって、本発
明の補強構造を建築物又は建造物の水平方向に走る構造
材間と、建築物の水平方向に走る構造材と垂直方向に走
る構造材間の双方に設けることが好ましい。
【0026】以上では、主として木造軸組建築物を例に
挙げて説明してきたが、木造枠組壁構法建築物において
は角材等の構造材が存在し、鉄骨造建築物又は鉄骨造建
造物又は鉄骨コンクリート造建築物においては鉄骨等の
構造材が存在し、鉄筋コンクリート造建造物においては
鉄筋を配置した構造材又は剪断補強材の鋼板や炭素繊維
強化された構造材(CFRP)が存在するので、これら
建築物や建造物に対しても木造軸組建築物の例と同様に
して本発明の補強構造を導入することができる。
【0027】
【発明の効果】請求項1記載の建築物又は建造物の補強
構造では、補強部材に加え、構造材(A)と構造材
(B)と補強部材とで形成される空間内に合成樹脂発泡
体が圧縮されて固定されている構造を有しているので周
辺で地震が起きた際または大風の際に、建築物又は建造
物の揺れを小さくできると共に合成樹脂発泡体のクッシ
ョン性が建築物又は建造物の揺れを吸収して早期に揺れ
を小さくする働きをする。また、構造材の相互に接する
箇所に応力が加わった場合、圧縮された合成樹脂発泡体
のクッション性により補強部材への負荷が軽減され、建
築物又は建造物の耐久性向上にもつながる。したがっ
て、本発明の建築物又は建造物の補強構造は、従来の
(構造材(A)と構造材(B)と補強部材とで形成され
る三角形状の空間内に合成樹脂発泡体が存在していな
い)建築物又は建造物に比べ、構造材に対するねじれ変
形等の変形を一層小さくすることができるので、建築物
又は建造物の耐久性を向上させることができる。また、
上記空間内に存在する合成樹脂発泡体は、建築物又は建
造物を構成する壁の断熱効果を高める働きをも有するの
で、壁内に断熱材を充填する場合、上記合成樹脂発泡体
はその一部となり得る。
【0028】請求項2記載の建築物又は建造物の補強構
造では、該合成樹脂発泡体と、該補強部材又は/及び一
方の構造材又は/及び他方の構造材とが接着されている
ので、より高い防振性と耐震性を建築物又は建造物に付
与することができる。
【0029】請求項3記載の建築物又は建造物の補強構
造では、補強部材が金属製であるので、軽量で高い強度
を出すことができるので好ましい。
【0030】請求項4記載の建築物又は建造物の補強構
造では、補強部材がばね鋼からなるので、補強部材3の
復元力が強く、補強部材3が変形するような大風又は地
震の際にも、水平応力の強弱による変位に対し、その変
形が素早く元に戻るので建築物又は建造物の揺れも速や
かに収まると共に、建築物又は建造物にゆがみが起こり
にくいという効果を奏する。特に、ばね鋼からなる補強
部材を木造軸組建築物に使用し、補強部材及び合成樹脂
発泡体を柱や梁等の構造材にボルト等の固定具で固定す
ると共に、構造材内(ボルト等を通すために構造材に設
けられた貫通孔内)に接着剤を充填して該貫通孔内で構
造材と固定具を接着一体化したものでは、構造材に固定
具を通すための穴を設けたことによる強度低下を極力防
止できることはもちろんのこと、ばね鋼からなる補強部
材3を使用することによって、固定具が固定される構造
材の木部に対する負担が少なくなり、当該部分への応力
集中を防ぐことができるので好ましい。
【0031】請求項5記載の建築物又は建造物の補強構
造では、ばね鋼からなる補強部材が湾曲状を有してお
り、補強部材の復元力がより強いので、請求項4の効果
がいっそう顕著になる。
【0032】請求項6記載の建築物又は建造物の補強構
造では、ばね鋼からなる補強部材が重ね板ばねで構成さ
れているので、補強部材3が大きく変形するような大風
又は地震の際にもその変形を効果的に打ち消すことが可
能となる。また、重ね板ばねは、親板を共通のものと
し、ばね力の異なる全長板又は子ばね板を複数種類用意
しておくことにより、建築物又は建造物の補強度合いに
応じて、親板に任意のばね力を有する全長板又は子ばね
を組み合わせることができるので、部品点数を少なくす
ることが可能となる利点がある。
【0033】請求項7記載の建築物又は建造物の補強構
造では、合成樹脂発泡体の5%圧縮時の圧縮応力が50
〜2000kPa及び圧縮永久歪が12%以下であるこ
とから、上記三角形状の空間内に合成樹脂発泡体を圧縮
状態で固定することが容易となり、且つ長期にわたり高
い防振性と耐震性を建築物又は建造物に付与することが
できる。
【0034】請求項8記載の建築物又は建造物の補強構
造では、合成樹脂発泡体がポリプロピレン系樹脂発泡体
からなるものであるから、軽量な上に、圧縮応力及び圧
縮永久歪を容易に上記範囲内にすることができる利点が
ある。
【0035】請求項9記載の補強材は、補強部材と合成
樹脂発泡体とがあらかじめ接着されているので、構造材
への取り付け作業性が向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】木造軸組建築物の土台と柱が相互に接する箇所
と、柱と梁が相互に接する箇所における本発明の建築物
の補強構造の一例を示す部分側面図である
【図2】図1の要部Pの拡大図である。
【図3】(a)は、木造軸組建築物の梁と間仕切げたが
相互に接する箇所における本発明の建築物の補強構造の
一例を示す部分平面図、(b)は、(a)の部分斜視図
である。
【図4】木造軸組建築物の土台と土台が相互に接する箇
所における本発明の建築物の補強構造の一例を示す部分
平面図である。
【図5】(a)は、建造物の柱と梁が相互に接する箇所
における本発明の建造物の補強構造の一例を示す部分斜
視図であり、(b)は、(a)の要部Qの拡大図であ
る。
【図6】本発明の重ね板ばねで構成された補強部材を使
用した鉄骨建造物の柱と梁が相互に接する個所の補強構
造の一例を示す部分側面図である。
【図7】従来技術の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 基礎 2 構造材 3 補強部材 30 親板 31 全長板又は子ばね板 32 クリップみぞ形支持具 4 合成樹脂発泡体 5 固定具 20、21 土台(構造材) 22 柱(構造材) 23 梁(構造材)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 七間 清孝 東京都千代田区内幸町2−1−1 飯野ビ ル 株式会社ジェイエスピー内 (72)発明者 江口 孝明 東京都千代田区内幸町2−1−1 飯野ビ ル 株式会社ジェイエスピー内 Fターム(参考) 2E125 AA04 AA13 AB11 AC15 AC23 AG12 AG36 AG58 BA54 BD01 BD03 BD06 CA05 CA63 CA77 EA25

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 建築物又は建造物の一方の構造材(A)
    の途中から他方の構造材(B)の途中にかけて固定され
    た補強部材において、構造材(A)と構造材(B)と補
    強部材とで形成される空間内に合成樹脂発泡体が圧縮状
    態で固定されていることを特徴とする建築物又は建造物
    の補強構造。
  2. 【請求項2】 合成樹脂発泡体と、補強部材又は/及び
    構造材(A)又は/及び構造材(B)とが接着されてい
    ることを特徴とする請求項1記載の建築物又は建造物の
    補強構造。
  3. 【請求項3】 補強部材が金属製であることを特徴とす
    る請求項1又は2記載の建築物又は建造物の補強構造。
  4. 【請求項4】 補強部材がばね鋼からなることを特徴と
    する請求項3記載の建築物又は建造物の補強構造。
  5. 【請求項5】 ばね鋼からなる補強部材が湾曲状である
    ことを特徴とする請求項4記載の建築物又は建造物の補
    強構造。
  6. 【請求項6】 ばね鋼からなる補強部材が重ね板ばねで
    構成されていることを特徴とする請求項4又は5記載の
    建築物又は建造物の補強構造。
  7. 【請求項7】 合成樹脂発泡体が、5%圧縮時の圧縮応
    力が50〜2000kPa及び圧縮永久歪が12%以下
    であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記
    載の建築物又は建造物の補強構造。
  8. 【請求項8】 合成樹脂発泡体がポリプロピレン系樹脂
    発泡体からなることを特徴とする請求項1乃至7のいず
    れかに記載の建築物又は建造物の補強構造。
  9. 【請求項9】 請求項3乃至6のいずれかに記載の補強
    部材と請求項7乃至8のいずれかに記載の合成樹脂発泡
    体とがあらかじめ接着されてなることを特徴とする建築
    物又は建造物の補強構造用補強材。
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