JP2003019868A - 光学的情報記録用媒体及び光記録方法 - Google Patents

光学的情報記録用媒体及び光記録方法

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JP2003019868A JP2002136482A JP2002136482A JP2003019868A JP 2003019868 A JP2003019868 A JP 2003019868A JP 2002136482 A JP2002136482 A JP 2002136482A JP 2002136482 A JP2002136482 A JP 2002136482A JP 2003019868 A JP2003019868 A JP 2003019868A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高速でオーバーライトすることができ、マー
クエッジのジッタが小さい、高密度のマーク長変調記録
を行うことができ、形成されたマークの経時安定性が非
常に良好である光学的情報記録用媒体及び光記録方法を
提供する。 【解決手段】 基板上に少なくとも相変化型記録層を有
し、該記録層の結晶部を未記録・消去状態とし非晶質部
を記録状態とし、最短マーク長0.5μm以下の複数の
記録マーク長により情報を記録するための光学的情報記
録用媒体であって、該記録層は、Gey(Sbx
1-x1-y(0.6≦x≦0.9、0<y≦0.1)合
金を主成分とする薄膜からなり、該記録層は、一定線速
度で、記録層を溶融させるに足る記録パワーPwの記録
光を連続的に照射すると概ね結晶化されるほど再凝固時
の結晶化速度が速く、該記録パワーPwを瞬間的に遮断
すると非晶質マークが形成されることを特徴とする光学
的情報記録用媒体及びこれに適した光記録方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、書換え可能なDV
Dなど、相変化型記録層を有する高密度記録用の光記録
媒体及び光記録方法に関わり、特に、1ビームオーバー
ライト時における線速度依存性および記録パワー依存性
と、記録マークの経時安定性の改善された光記録媒体及
び光記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般にコンパクトディスク(CD)やD
VDは、凹ピットの底部及び鏡面部からの反射光の干渉
により生じる反射率変化を利用して2値信号の記録及び
トラッキング信号の検出が行われている。近年、CDと
互換性のある媒体として、相変化型の書換え可能なコン
パクトディスク(CD−RW、CD−Rewritab
le)が広く使用されつつある。また、DVDについて
も、相変化型の書換え可能なDVDが各種提案されてい
る。
【0003】これら相変化型の書換え可能なCD及びD
VDは、非晶質と結晶状態の屈折率差によって生じる反
射率差および位相差変化を利用して記録情報信号の検出
を行う。通常の相変化媒体は、基板上に下部保護層、相
変化型記録層、上部保護層、反射層を設けた構造を有
し、これら層の多重干渉を利用して反射率差および位相
差を制御しCDやDVDと互換性を持たせることができ
る。CD−RWにおいては、反射率を15〜25%に落
とした範囲内ではCDと記録信号及び溝信号の互換性が
確保でき、反射率の低いことをカバーする増幅系を付加
したCDドライブでは再生が可能である。
【0004】なお、相変化型記録媒体は消去と再記録過
程を1つの集束光ビームの強度変調のみによって行うこ
とができるため、CD−RWや書換え可能DVD等の相
変化型記録媒体において記録とは、記録と消去を同時に
行うオーバーライト記録を含む。相変化を利用した情報
の記録には、結晶、非晶質、又はそれらの混合状態を用
いることができ、複数の結晶相を用いることもできる
が、現在実用化されている書換可能相変化型記録媒体
は、未記録・消去状態を結晶状態とし、非晶質のマーク
を形成して記録するのが一般的である。記録層の材料と
してはいずれもカルコゲン元素、即ちS、Se、Teを
含むカルコゲナイド系合金を用いることが多い。
【0005】例えば、GeTe−Sb2Te3疑似二元合
金を主成分とするGeSbTe系、InTe−Sb2
3 疑似二元合金を主成分とするInSbTe系、S
0.7Te0.3を共晶系を主成分とするAgInSbTe
系合金、GeSnTe系などである。このうち、GeT
e−Sb2Te3疑似二元合金に過剰のSbを添加した
系、特に、Ge1Sb2Te4、もしくはGe2Sb2Te5
などの金属間化合物近傍組成が主に実用化されている。
【0006】これら組成は、金属間化合物特有の、相分
離を伴わない結晶化を特徴とし結晶成長速度が速いた
め、初期化が容易で、消去時の再結晶化速度が速い。こ
のため従来より、実用的なオーバーライト特性を示す記
録層としては、疑似二元合金系や金属間化合物近傍組成
が注目されていた(文献Jpn.J.Appl.Phys.,vol.69(199
1),p2849 、あるいはSPIE,Vol.2514(1995),pp294-301
等)。
【0007】しかし一方、これら組成においては、準安
定な正方晶系の結晶粒が成長する。この結晶粒は粒界が
明確であり、かつ大きさが不揃いで、その方位により光
学異方性が顕著なため、光学的なホワイトノイズを生起
しやすいという問題がある。そして、このような粒径及
び光学特性の異なる結晶粒は、非晶質マークの周囲に成
長しやすいために、マークのジッタが増加しやすく、或
いは、周囲の結晶とは光学特性が異なるため、消え残り
として検出されやすかった。このため、高線速での記録
や、高密度のマーク長変調記録においては、良好な再生
特性が得られないという問題があった。具体的には、書
換え型DVDの規格では最短マーク長が0.6μmであ
るが、より最短マーク長を縮めていくと、急激にジッタ
が増加することが判明した。
【0008】ところで、ジッタの改善策として、いわゆ
る吸収率補正がある。従来の4層構成では、通常、記録
層の吸収する光エネルギーは、反射率の高い結晶状態で
吸収する光エネルギーAcが、反射率の低い非晶質状態
で吸収する光エネルギーAaより小さい(Ac<A
a)。このためオーバーライト時に、元の状態が結晶状
態であったか非晶質状態であったかにより、新しい記録
マークの形状等が変わってしまいジッタが増加するとい
う問題がある。これを、結晶状態と非晶質状態の光エネ
ルギーの吸収効率をほぼ同じようにし、元の状態によら
ずマーク形状を安定させ、これによりジッタを低減する
のである。さらには、結晶は溶融時に潜熱の分だけ余分
に熱が必要なため、結晶状態のほうがより光エネルギー
を吸収するようにするのが好ましい(Ac>Aa)。
【0009】この関係を達成するには、光吸収性の層を
少なくとも1層追加して5層以上の構成とし、非晶質状
態における光吸収の一部をこの吸収層で奪う方法があ
る。例えば、AuやSiなどの吸収層を下部保護層と基
板の間や上部保護層上に挿入する(Jpn.J.Appl.Phys.,v
ol.37(1998),pp3339-3342 、Jpn.L.Appl.Phys.,Vol.37
(1998),pp2516-2520 )。
【0010】しかしながら、このような層構成は、吸収
層の耐熱性や密着性に問題があり、繰返しオーバーライ
トすると微視的変形や剥離などの劣化が顕著である。ま
た、剥離等を生じやすいために経時安定性もそこねてし
まう。すなわち、従来の4層構成を維持しながら高密度
化を達成することは、GeTe−Sb2Te3疑似二元合
金記録層では困難であった。しかも、GeTe−Sb2
Te3疑似二元合金記録層では、複屈折率が短波長ほ
ど実部が小さく虚部が大きくなるという波長依存性があ
るため、特に、短波長レーザー光を光源として用いた場
合には、Ac>Aaなる条件を達成しにくい。
【0011】そこで近年、記録層材料として、AgIn
SbTe四元系合金が使用されつつある。AgInSb
Te四元系合金は40dBにも及ぶ高消去比が得られる
ことが特徴であり、従来の4層構成で、吸収率補正をす
ることなく、高線速で高密度のマーク長変調記録が行え
る。ただし、高速記録が行えることは、通常、結晶化速
度が速く消去しやすいことを意味するため、非晶質マー
クも結晶化されやすく、記録されたマークの経時安定性
が悪い場合が多い。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】近年、情報量が増大
し、記録時間の短縮や情報転送の高速化のために、最近
ではより高速で記録再生可能な媒体が求められている。
例えばCDの標準速度(1倍速)は1.2〜1.4m/
sであるが、4倍速での記録が可能なCD−RWが商品
化され、さらに8倍速、10倍速での記録が可能なCD
−RWが求められている。一方、書換え可能なDVDと
しては、DVD−RAM、DVD+RW、DVD−RW
など各種のものが提案あるいは商品化されている。しか
しながら、再生専用のDVDと同等の容量である4.7
GBの書換え可能なDVDは未だ実用化されていない。
つまり、短いマークを高速で記録でき、かつマークの安
定性のよい媒体が求められている。
【0013】しかし、従来、高速記録とマーク安定性は
相反する性質と考えられ、この両方を同時に満たすこと
は困難と考えられてきた。本発明者らは、結晶化、非晶
質化の原理について研究を重ねた結果、これらの特性全
てを同時に満たす画期的な媒体を見いだした。すなわ
ち、本発明においては、短いマークが高速で良好に記録
でき、かつ、マーク安定性のよい光記録媒体及びそれに
適した光記録方法を提供する。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の第一の要旨は、
下記光学的情報記録媒体に存する。
【0015】すなわち、基板上に少なくとも相変化型記
録層を有し、該記録層の結晶部を未記録・消去状態とし
非晶質部を記録状態とし、最短マーク長0.5μm以下
の複数の記録マーク長により情報を記録するための光学
的情報記録用媒体であって、該記録層は、Gey(Sbx
Te1-x1-y(0.6≦x≦0.9、0<y≦0.1)
合金を主成分とする薄膜からなり、該記録層は、一定線
速度で、記録層を溶融させるに足る記録パワーPwの記
録光を連続的に照射すると概ね結晶化されるほど再凝固
時の結晶化速度が速く、該記録パワーPwを瞬間的に遮
断すると非晶質マークが形成されることを特徴とする光
学的情報記録用媒体に存する。
【0016】本発明の他の要旨は、上記媒体と併せ用い
るに好ましい光記録方法に存する。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明者らは、記録層の結晶状態
を未記録・消去状態、非晶質状態を記録状態とする相変
化媒体において、消去が、非晶質部又は溶融部と、周辺
結晶部との境界からの結晶成長によって、実質的に進行
する再結晶化により行われるような媒体が、高速かつ高
密度で安定な記録を行うことができることを見いだし
た。つまり、高速でオーバーライトすることができ、マ
ークエッジのジッタが小さい、高密度のマーク長変調記
録を行うことができ、形成されたマークの経時安定性が
非常に良好である。
【0018】一般に、非晶質マークの消去は、記録層を
結晶化温度以上融点近傍以下に加熱し、非晶質固相状態
又は溶融状態としたのち、冷却するときに再結晶化する
ことによって起こる。本発明者らの研究によれば、非晶
質マークの消去、すなわち再結晶化は、(1)非晶質領
域内の結晶核生成と、(2)非晶質部又は溶融部と、結
晶部との境界を起点とする結晶成長、の2つのプロセス
によって進行するが、前者の結晶核生成を殆ど起こらな
いようにし、実質的に、後者の結晶成長プロセスのみを
利用することで、上記のような効果が得られることが分
かった。
【0019】通常、結晶化は結晶化温度以上融点近傍以
下で進行するが、結晶核生成はその温度範囲内でも比較
的低温側、結晶成長は高温側で進行する。結晶核生成が
なければ消去ができないというわけではなく、非晶質部
又は溶融部を囲む周辺結晶領域との境界点を核として結
晶成長が高速で進めば消去は可能である。特に、微小な
マークあるいは短いマークほど、このような周辺結晶部
からの結晶成長のみによってマーク中心まで瞬時に結晶
化されやすいため、極めて短時間で完全に消去すること
ができる。従って、最短マーク長が0.5μm以下とい
う微小なマークを用いる高密度記録媒体においてこそ、
効果が顕著であり、100ナノ秒オーダー以下で消去が
でき、高速でのオーバーライトが可能である。なお、最
短マーク長は、一般に、短いほど高密度記録ができる
が、マークの安定性の面からは、10nm以上が好まし
い。
【0020】また、マークの横幅が狭いほど、やはり周
辺結晶部からの結晶成長のみによってマーク中心まで瞬
時に結晶化されやすく好ましい。従って、情報を記録す
るトラックのトラックピッチは、例えば0.8μm以下
とし、マークが横に広がらないようにするのが好まし
い。通常、マーク横幅はトラックピッチの半分程度とな
る。なお、トラックピッチは、一般に、狭いほど高密度
記録ができるが、マークの安定性の面からは、0.1μ
m以上が好ましい。トラックは溝のみであっても、溝と
ランドの両方であってもよい。
【0021】本発明の媒体は非晶質マークの経時安定性
にも優れる。すなわち、周辺結晶部からの結晶成長は、
結晶化温度以上融点近傍以下のなかでも、融点に近い比
較的高温域のみで進行し、低温では殆ど進行しないの
で、一旦形成された非晶質マークは結晶化されにくく、
経時安定性に優れる。結晶化温度は通常100℃〜20
0℃の範囲であるが、この温度程度までは熱的安定性が
維持できる。
【0022】特に、100℃未満の通常の使用範囲で
は、記録された非晶質マークは極めて安定で、記録済み
信号の振幅はほとんど劣化しない。逆に、そのような経
時安定性から結晶核生成をほとんど伴わないことも結論
できる。さらに、本発明の媒体は、マーク長記録におい
て、極めて揺らぎの少ない、スムースなマークエッジを
形成できるという利点がある。一般に、非晶質マークを
記録する際には、記録層を一旦溶融し再凝固させ非晶質
とするが、マーク辺縁部は中心に比べ低温であるため、
従来は、マーク辺縁部では結晶核成長による再結晶化が
起こりやすく、非晶質の混在した粗大グレインが生じ、
マークエッジゆらぎの原因となっていた。
【0023】本発明媒体は、消去時に、非晶質部又は溶
融部と、結晶部との境界からの結晶成長が支配的で、か
つ高速であるということは、記録時にも同様の原理がは
たらき、溶融領域が再凝固し非晶質化する際にも、周辺
結晶部からの結晶成長のみが起こり、結晶核成長による
結晶化は起こりにくくマークエッジがゆらぎにくいとい
う特徴がある。すなわち、周辺結晶部からの結晶成長
は、結晶化温度以上融点近傍以下のなかでも、融点に近
い比較的高温域のみで進行し、低温では殆ど進行しない
ので、溶融状態からの再凝固時に、温度が低下して融点
を通過する時点の冷却速度のみによって、非晶質マーク
の境界形状が決まる。
【0024】そして、従来問題であった、再凝固時に起
きる結晶核成長による非晶質の混在した粗大グレインが
非晶質マーク周辺にほとんど全く形成されないのであ
る。これは、マークエッジのゆらぎによるノイズ抑制に
極めて効果的であることが分かった。さらにまた、マー
クエッジ形状も経時的に変化することなく安定なので、
初期ジッタが小さいだけでなく、ジッタの経時劣化もほ
とんどない。
【0025】本発明の結晶化の原理についてより詳細に
説明する。本媒体においては、非晶質マークと周辺結晶
部との境界部が結晶成長の核となるのであって、非晶質
マーク内部ではほとんど結晶核が発生しない。従って、
マーク境界部からのみ結晶が成長する。一方、従来のG
eTe−Sb2Te3系の記録層は、非晶質マーク内に結
晶核がランダムに生成し、それが成長して結晶化が進
む。両者の結晶化過程の差は、透過電子顕微鏡で確認で
きる。非晶質マーク形成後の両記録層に、比較的低いパ
ワーの消去光を直流的に照射すると、GeTe−Sb2
Te3 系の記録層は、温度が高くなる非晶質マーク
中央部から結晶化が進むのが観察されるのに対し、本発
明記録層では、非晶質マーク周辺部から結晶成長してい
るのが観察される。特に、非晶質マークの前端及び後端
からの結晶成長が著しい。
【0026】このような原理で消去が行われる記録層組
成は、Sb0.7Te0.3共晶点近傍組成に、過剰のSbと
20原子%程度までの他元素を添加した合金系に多く見
いだされる。すなわち、My(SbxTe1-x1-y 0.
6≦x≦0.9、0<y≦0.2、MはGa、Zn、G
e、Sn、Si、Cu、Au、Al、Pd、Pt、P
b、Cr、Co、O、S、Se、Ta、Nb、Vのうち
の少なくとも1種)合金を主成分とする薄膜である。S
0.7Te0.3に過剰のSbを含む合金は、非晶質マーク
周辺部の結晶からの結晶成長が、GeTe−Sb2Te3
擬似二元合金系と比べて著しく大きいため、高線速での
オーバーライトが可能という特徴を有する。過剰のSb
は、非晶質マーク内のランダムな結晶核生成及び結晶核
成長を促進するのではなく、周辺結晶部からの結晶成長
速度を大幅に増大する。但し、SbTe二元合金では、
結晶核生成も少なからず起こるため、非晶質マークの経
時安定性が極めて悪く、適当な元素を添加する必要があ
る。
【0027】本発明者らの検討によれば、Geの添加
は、結晶核生成の抑制に極めて効果的である。さて、非
晶質マークの再結晶化が、実質的に周辺結晶部からの再
結晶化のみに支配されているかどうかは、経時安定性の
評価から間接的に知ることができる。具体的な評価方法
としては、高温高湿下の加速環境試験を行ったときの、
再生信号の変調度を測定する方法が挙げられる。
【0028】すなわち、最短マーク長0.5μm以下の
複数のマーク長により信号を記録したとき、記録直後に
再生した信号の変調度をM0とし、記録後、80℃80
%RHの条件下で1000時間経過ののち再生した信号
の変調度をM1とすると、
【0029】
【数5】M1/M0≧ 0.9
【0030】である。マーク長変調方式は限定されず、
EFM変調、EFMプラス変調、(1,7)RLL−N
RZI(run length limited−non return to zero inv
erted )変調などを用いることができるが、図6に示す
ようなランダム信号を、最短マーク長を0.5μm以下
として記録する。本評価の際には、最短マーク長は0.
2μm程度以上とするのが好ましい。なお、全ての評価
条件において上記式を満たす必要はなく、一つの評価条
件において上記式を満たせばよい。
【0031】一例としては、最短マーク長0.4μmの
複数のマーク長により、EFMプラス変調方式のランダ
ム信号を記録する。変調度は、その変調方式の最長マー
クの信号振幅をトップの信号強度で規格化したものであ
る。図6にEFMプラス変調されたランダム信号を記録
し再生したときのDC再生信号(直流成分を含む再生信
号)の波形を示す。変調度は、14Tマークのトップの
信号強度Itopと信号振幅I14との比I14/Itopとして
定義される。変調度が不変であれば、非晶質マークサイ
ズは十分安定であると判断できる。加速試験前に記録し
たランダム信号の変調度が、加速試験後にも初期の値の
90%以上を保っていれば、結晶核生成を実質的に伴わ
ないことが推定できる。
【0032】本発明の記録層では、周辺結晶部からの結
晶成長は融点直下の高温領域で起こりやすいため、非晶
質マーク形成のために記録層を溶融し再凝固させる時に
も、周辺結晶部から結晶成長が起こり得る。従って、溶
融後の冷却速度が遅く非晶質として固化するに必要な臨
界冷却速度に達しない場合、溶融領域全体がほとんど瞬
時に再結晶化してしまう。
【0033】これは以下の実験により確認できる。記録
再生光を案内する溝を設けた0.6mm厚のポリカーボ
ネート基板上に、(ZnS)80(SiO220第1保護
層を膜厚68nm、Ge0.05Sb0.71Te0 .24記録層を
膜厚18nm、(ZnS)80(SiO220第2保護層
を膜厚20nm、Al0.995Ta0.005反射層を膜厚25
0nm、この順に設け、さらに紫外線硬化樹脂保護層を
膜厚4μm設けた。これら2枚を、記録層のある側を内
側にしてホットメルト接着剤で貼合せて光記録媒体とし
た。本記録層組成は、線速約7m/s以上でオーバーラ
イト可能とすべくSb/Te≒3とした。本媒体に、長
径約100μm、短径約1.5μmの楕円レーザー光
を、短軸方向に走査して溶融再結晶化して初期化した。
【0034】本媒体に、波長637nm、NA=0.6
3の集束光を、案内溝に従って線速7m/sで照射し
た。記録パワーPwが10mWの記録光を直流的に照射
したのち、パワーを急激に落とし1mWとした。即ち、
実質的に記録光を遮断した。なお、ビーム径は約0.9
μmで、ガウシアンビームでエネルギー強度がピーク強
度の1/e2以上となる領域に相当する。
【0035】図2に、記録光を遮断した前後での反射率
変化を示す。図2の下段のごとく、時間の経過に従っ
て、記録光を遮断した。図2下段の左側で記録光が連続
的に、すなわち直流的に照射され、右側では遮断されて
いる。同じ領域を、再生パワー1.0mWの再生光で走
査したところ、図2上段のような再生波形が得られた。
これは反射率変化に対応している。
【0036】記録光を瞬間的に遮断した付近で反射率が
低下しており、その前後では反射率はほぼ同じである。
TEM観察により、反射率低下部は非晶質となってお
り、その前後では結晶であることが確認された。すなわ
ち、記録光を連続的に照射している限りは溶融部は再結
晶化してしまい、記録光を遮断した部分の近辺の溶融領
域だけが非晶質化する。
【0037】これは、記録光を連続的に照射した場合に
は、後続部分からの余熱により記録層の冷却速度が抑制
され、非晶質形成に必要な臨界冷却速度が得られないの
に対して、記録光を一旦、遮断することで、後続部分か
らの余熱を遮断し、冷却速度を上げることができるから
である。なお、記録パワーPwを7mW以上としたと
き、記録光の遮断によって、非晶質マークが形成されて
いた。
【0038】検討の結果、本発明の媒体は、一定線速度
で、記録層を溶融させるに足る記録パワーPwの記録光
を連続的に照射すると概ね再結晶化され、一定線速度
で、記録層を溶融させるに足る記録パワーPwの記録光
に続けて、パワーがほぼ0の記録光を照射すると非晶質
マークが形成されることが分かった。パワーがほぼ0と
は、厳密に0である必要はなく、0≦Pb≦0.2Pw
なるバイアスパワーPb、より好ましくは0≦Pb≦
0.1PwなるバイアスパワーPbとすることである。
【0039】本発明においては、溶融部の再凝固時の再
結晶化は、ほとんど、周辺の固相結晶部からの結晶成長
によってのみ起こる。従って再結晶化部は非晶質マーク
の中心部には形成されないため、なめらかで連続的なマ
ークエッジが形成される。従来、このように著しく再結
晶化しやすい材料は、マーク長記録用の記録層に適さな
いと考えられてきた。なぜなら、長マークを形成するた
めに記録光を長く照射すると、溶融領域のほとんどは結
晶化してしまうからである。
【0040】しかし、本発明者らの検討によれば、最短
マーク長0.5μm未満という高密度記録においては、
溶融領域の非晶質化と、周辺の固相結晶部の境界からの
再結晶化との競合過程を積極的に用いたほうが、良好な
ジッタを得ることができる。そのために、後述のごとく
長さnTのマークの形成に、記録パワーPw印加区間と
その遮断区間、即ちバイアスパワーPb印加区間を組み
合わせた、パルス分割方式が極めて有効であることを見
いだしたのである。
【0041】パルス分割方式により記録すると、図1の
ように、矢羽型(もしくは三日月型)の非晶質部が連な
って非晶質マークが形成される。該マークの始端の形状
は先頭の矢羽型非晶質部の始端の形状によって、該マー
クの後端の形状は最後端の矢羽型非晶質部の後端の形状
によってのみ定まる。通常、非晶質部の始端形状はなめ
らかであるから、マーク始端形状もなめらかである。前
方への熱の逃げにより冷却速度は十分高く保たれるか
ら、ほぼ溶融領域先端の形状を反映し、従って記録パル
スの立上がり時間により支配されるからである。記録パ
ルス、即ちPw印加区間の立上がりは、2〜3ナノ秒以
下であればよい。
【0042】一方、非晶質部の後端形状は、記録パルス
の立下がり時間で決まる冷却速度と、周辺、特に後端の
結晶部から進行する再結晶化領域の大きさとによって定
まる。冷却速度を十分高くするためには、Pw印加区間
の立下がりは、2〜3ナノ秒以下が望ましい。再結晶化
領域の大きさは、オフパルス、即ちPb印加区間の長さ
により正確に制御できる。さらに、層構成として前述の
超急冷構造を適用して、記録層の冷却速度をできるだけ
急峻にするとともに、冷却速度の空間分布をマーク後端
付近で急峻になるようにして、マーク端部の位置がゆら
がないようにすることも重要である。
【0043】さて、本発明者らは、短マークを高速で記
録でき、かつ記録マークの経時安定性に優れた光記録媒
体について鋭意検討の結果、Sb0.7Te0.3共晶組成近
傍にGeを添加した特定組成が特に優れることを見出す
とともに、層構成を適切に選ぶことにより、他の特性に
も優れた光記録媒体を得た。すなわち、Sb0.7Te0.3
に過剰のSb及びGeを加えた従来にない三元合金に着
目し、高密度なマーク長変調記録への適性を検討した。
その結果、図3に示すGeSbTe三元状態図におい
て、4本の直線A、B、C、Dに囲まれた、極めて限定
的なGe−Sb−Te比の記録層組成を用いた媒体が、
高密度なマーク長変調記録において、繰返しオーバーラ
イト耐久性と経時安定性に特に優れることを見いだした
ものである。
【0044】すなわち、GeSbTe三元状態図におい
て、(Sb0.7Te0.3)とGeを結ぶ直線A、(Ge
0.03Sb0.68Te0.29)と(Sb0.95Ge0.05)を結ぶ
直線B、(Sb0.9Ge0.1)と(Te0.9Ge0.1)を結
ぶ直線C、及び(Sb0.8Te0.2)とGeを結ぶ直線D
の4本の直線で囲まれた領域(ただし、境界線上を含ま
ない)の組成を有するGeSbTe合金を主成分とする
薄膜を記録層とする。この記録層に後述の層構成を用い
ることにより、最短マーク長0.5μm以下の高密度マ
ーク長変調記録に非常に適した媒体となるのである。そ
して、DVDと同等の記録密度とDVDとの優れた再生
互換性を得ることができる。
【0045】かつ、繰り返しオーバーライト耐久性や、
記録パワー・消去パワーの変動に対して良好なジッタが
得られるマージンを広く確保できる。この組成範囲内で
は、SbyTe1-y合金においてy=0.7よりSb量が
多いほど、過剰のSb量が増え、結晶化速度が速く高線
速でのオーバーライトが可能になる。
【0046】より具体的には、EFMプラス変調記録
(8−16変調のマーク長変調記録)において、最短マ
ークである3Tマークの長さを0.4μmあるいは0.
35μm程度まで短縮しても、良好なジッタが得られ
る。また、十分なサーボ信号が得られ、既存の再生専用
DVDドライブでトラッキングサーボをかけることがで
きる。さらに、線速1〜10m/sのいずれかの線速度
でオーバーライト可能である。
【0047】これにより、再生専用DVDと同容量でほ
ぼ再生互換性のある書換え型DVDを得ることができ
る。過剰なSb量を制御すれば、さらに、8m/s以上
の高線速で、上記のような高品質、高密度のオーバーラ
イトが可能である。また、記録パルス分割方法(パルス
ストラテジー)を後述のように線速に応じて変化させる
ことで、少なくとも3〜8m/sを含む広い線速範囲に
おいて良好なオーバーライトが可能になる。
【0048】本組成について、以下に詳細に説明する。
Ge添加量が10原子%以下のSb0.7Te0.3共晶点近
傍組成では、Sb/Te比が大きいほど結晶化速度が速
くなる傾向がある。これは、Sb0.7Te0.3より過剰の
SbはSbクラスタとして析出し再結晶化過程において
結晶核として働くからである。そして、Sb0.7Te0.3
より過剰のSbがない場合は消去性能が不十分で実質的
にオーバーライト不可能である。また、初期化時に核生
成がほとんどないため、初期化が困難で生産性が非常に
悪いという問題もある(直線A)。
【0049】一方、Sb0.7Te0.3共晶二元合金でSb
量を増やしていくと、結晶化速度が速くなるのと引き替
えに、結晶化温度も低下し、非晶質マークの経時安定性
を損ねてしまう。また、3m/s前後の低線速での記録
に適さないし、形成された非晶質マークが短時間の再生
光(レーザーパワー約1mW程度)照射で消えてしま
う。従って、(Sb0.8Te0.2)とGeを結ぶ直線Dよ
りも過剰のSbは含まれるべきではない。
【0050】また、直線AとDで規定された過剰のSb
量の範囲においては、SbTe二元のままでは、結晶化
温度が低いうえに過剰Sbの結晶核が存在して非晶質マ
ークが不安定になりすぎるため、過剰Sb量が多いほど
Geを添加する。Geの4配位結合により、結晶核生成
をほぼ完全に抑制する。結果として結晶化温度は上昇
し、経時安定性が増す。(Ge0.03Sb0.68Te0.29
と(Sb0.95Ge0.05)を結ぶ直線Bはこの条件を規定
している。より好ましくは、(Ge0.03Sb0.68Te
0.29)と(Sb0.9Ge0.1)を結ぶ直線B’より多くG
eを含ませる。
【0051】さらには、Ge含有量が10原子%以上と
なるとマーク長記録時のジッタが悪化するし、繰返しオ
ーバーライトによって高融点のGe化合物、とくにGe
Teが偏析しやすくなる。また、成膜直後の非晶質膜の
結晶化が極めて困難になるので好ましくない(直線
C)。ジッタを低減するために、より好ましくはGeは
7.5原子%以下とする。
【0052】なお、線速度3m/s以上でオーバーライ
トするには、記録層をGex(SbyTe1-y1-x合金を
主成分とする薄膜(0.04≦x<0.10、0.72
≦y<0.8)とするのが好ましい。すなわち、線速度
3m/s以上での記録には、Sb量を多くし、Sby
1-y合金においてy≧0.72とするのが好ましい。
ただし、Sb量を多くすることにより非晶質マークの安
定性が若干悪化するため、これを補うのにx≧0.04
とGeを多めにするのが好ましい。さらには、線速度7
m/s以上でオーバーライトするには、記録層をGex
(SbyTe1-y1-x合金を主成分とする薄膜(0.0
45≦x≦0.075、0.74≦y<0.8)とする
のが好ましい。すなわち、線速度7m/s以上での記録
には、Sb量をさらに多くし、SbyTe1-y合金におい
てy≧0.74とするのが好ましい。このとき、非晶質
マークの安定性を上げるため、Ge量はx≧0.045
とする。一方、高線速ではジッタが悪化しやすいため、
これを補うためにGe量はx≦0.075とする。
【0053】さて、従来よりGeSbTe三元組成、も
しくはこの三元組成を母体として添加元素を含有する記
録層組成に関して報告がなされている(特開昭61−2
58787号公報、同62−53886号公報、同62
−152786号公報、特開平1−63195号公報、
同1−211249号公報、同1−277338号公
報)。しかしながら、これらに記載された組成はいずれ
も、(Sb0.7Te0.3)とGeを結ぶ直線AよりSbプ
アな組成であり、本発明組成範囲とは異なる。これらは
むしろ、Sb2Te3金属化合物組成を主体としている。
また、GeTe−Sb2Te3擬似二元合金系では、本発
明とは逆に、過剰のSbは結晶化速度を遅らせるという
効果があるため、5m/s以上の高線速でオーバーライ
トする場合には、GeTe−Sb2Te3の直線上、特に
Ge2Sb2Te5組成に、過剰のSbを含ませることは
むしろ有害である。過剰なSbを含むSb0.7Te0.3
傍でGeを含む第3元素を選択的に加えた組成として
は、特開平1−100745号公報(図4(a)組成範
囲α)、特開平1−303643号公報(図4(a)組
成範囲β)に記載されたものがある。
【0054】しかしながら、特開平1−100745号
公報は、母体組成であるSb1-xTexにおいて0.10
≦x≦0.80と極めて広範囲であり、Sb0.7Te0.3
よりSb過剰な領域のみを利用することで、高密度記録
において繰返しオーバーライト耐久性と経時安定性に優
れるという本願思想は見られない。特開平1−3036
43号公報は、本願のごとき高密度記録においてSbが
直線Dを超えて過剰に含まれると非晶質マークの経時安
定性が損なわれるとの弊害について触れられていない。
また、いずれの公報もGeが直線Cを超えて過剰に含ま
れることの弊害については触れていない。
【0055】また、本発明の記録層組成と一部重複する
組成としては、図4(b)に示されるように、特開平1
−115685号公報(組成範囲γ)、同1−2513
42号公報(組成範囲δ)、同3−71887号公報
(組成範囲ε)及び同4−28587号公報(組成範囲
η)に記載されたものがある。特開平1−115685
号公報は、組成範囲γを母体としてAu、Pdを添加す
るものであるが、低密度記録を目的とし、本発明組成と
は直線A及び直線Bにより実質的に区別されている。該
公報の組成は、マーク長約1.1μmに相当する低密度
での記録(線速4m/s、周波数1.75MHz、デュ
ーティー50%の方形波)とDC消去に適したものであ
るため、短マークを含む高密度記録を目的とする本発明
の組成とは、適する組成が異なると考えられる。
【0056】特開平1−251342号公報の組成範囲
δは、Sb0.7Te0.3共晶にGeを約10原子%以上添
加した系を主体とする、極めてGeリッチなGeSbT
e系であり、本発明組成とは直線Cによって実質的に区
別されている。組成範囲δのうちGeが10原子%より
多く含まれる組成では、前述のように結晶化速度が遅
く、特に成膜後の記録層を結晶化させる初期化操作が困
難であるために、生産性が低く実用に供されないという
深刻な問題がある。該公報においては、この結晶化速度
の問題を克服するために、結晶核となるAu、Pdを別
途添加しているが、本発明のように直線CよりGeが少
ない領域では、そのような必要はない。また、該公報に
おいては、Geの量が10原子%より少ないと記録部と
非記録部で十分な光量変化が得られないと記載されてい
るが、本発明においては、保護層や反射層を含む層構成
を工夫することによって、変調度60%以上という非常
に大きな反射光量変化が得られている。特開平3−71
887号公報の組成範囲εは、低密度記録を目的とし、
本発明組成とは直線Cによって実質的に区別されてい
る。特に本発明組成範囲を利用することで、高密度記録
において繰返しオーバーライト耐久性と経時安定性に優
れるという本願思想は見られない。特開平4−2858
7号公報の組成範囲ηは、極めてSbリッチおよびGe
リッチな組成を含んでおり、本発明組成とは直線Dによ
って実質的に区別されている。以上述べたように、上記
いずれの公報も、本発明の目的とする、最短マーク長が
0.5μm以下となるような高密度なマーク長変調記録
に関する技術的課題は明らかにされておらず、そのため
の最適組成の選択、層構成や記録方法の改善については
全く開示されていない。
【0057】次に、本発明の光学的情報記録用媒体の層
構成について説明する。本発明の媒体は、上述した組成
の記録層と以下の層構成を組み合わせることにより、最
短マーク長0.5μm以下の高密度マーク長変調記録を
する際に、少なくとも3m/sから8m/s、好ましく
は1m/sから10m/sをカバーする広い線速範囲で
オーバーライト可能な媒体を実現することができる。そ
して、いわゆるDVDと再生互換を維持することができ
る。相変化型記録層は、上下の少なくとも一方を保護層
で被覆されている。
【0058】さらに図5(a)に示すように、基板1/
第1保護層2/記録層3/第2保護層4/反射層5の構
成を有し、その上を紫外線もしくは熱硬化性の樹脂で被
覆(保護コート層6)されている。図5(a)のような
各層の順序は、透明基板を介して記録再生用の集束光ビ
ームを記録層に照射する場合に適している。あるいは、
上記各層の順序を逆にして、図5(b)のように、基板
1/反射層5/第2保護層4/記録層3/第1保護層2
という順に積層される構成もとりうる。この層構成は、
第1保護層側から集束光ビームを入射する場合に適して
いる。このような構成は、対物開口数NAが0.7以上
で、記録層と対物レンズの距離を縮める必要が高い場合
に有用である。
【0059】図5(a)に示す構成であれば、基板に
は、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィンなど
の透明樹脂、あるいは透明ガラスを用いることができ
る。なかでも、ポリカーボネート樹脂はCDにおいて最
も広く用いられている実績もあり、安価でもあるので最
も好ましい。図5(b)に示す構成でも同様に樹脂ある
いはガラスが使用できるが、基板自体は透明である必要
はなく、むしろ平坦性や剛性を高めるために、ガラスや
アルミニウム合金を用いることが好ましい場合がある。
基板には記録再生光を案内するピッチ0.8μm以下の
溝を設けるが、この溝は、必ずしも幾何学的に台形状の
溝である必要はなく、たとえば、イオン注入などによっ
て、屈折率の異なる導波路のようなものを形成して光学
的に溝が形成されていても良い。
【0060】図5(a)に記載の層構成においては、記
録時の高温による変形を防止するため、基板表面には第
1保護層2が、記録層3上には第2保護層4が設けられ
る。第2保護層4は記録層3と反射層5の相互拡散を防
止し、記録層の変形を抑制しつつ、反射層5へ効率的に
熱を逃すという機能を併せ持つ。図5(b)においても
集束光ビーム入射側からみて、第2保護層4は記録層3
と反射層5との間の相互拡散防止、放熱、記録層変形防
止の機能を有する。図5(b)における第1保護層は、
記録層の変形防止や、記録層と空気との直接接触防止
(酸化汚染等の防止)、光ピックアップとの直接接触に
よる損傷防止の機能がある。
【0061】反射層と基板のあいだに、さらに保護層を
設けてもよい。例えば、樹脂製基板への熱ダメージを防
ぐことができる。図5(b)に記載の構成においては、
第1保護層2のさらに外側には、それより硬質の誘電体
や非晶質カーボン保護膜を設けたり、紫外線あるいは熱
硬化性樹脂層を設けることが望ましい。あるいは、厚さ
0.05〜0.6mm程度の透明な薄板を貼合わせ、こ
の薄板を介して集束光ビームを入射することも可能であ
る。
【0062】さらに、DVDのような媒体においては、
図5(a)の媒体を記録層面を内側として、接着剤で貼
り合せた構造をとる。図5(b)の媒体では、逆に記録
層面を外側にして貼り合せることになる。さらに図5
(b)の媒体においては、一枚の基板の両面に射出成形
によってトラッキング用の溝を形成し、両面にスパッタ
法によって多層膜を形成しても良い。記録層3、保護層
2、4、反射層5はスパッタリング法などによって形成
される。記録層用ターゲット、保護層用ターゲット、必
要な場合には反射層材料用ターゲットを同一真空チャン
バー内に設置したインライン装置で膜形成を行うことが
各層間の酸化や汚染を防ぐ点で望ましい。
【0063】保護層2、4の材料としては、屈折率、熱
伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意し
て決定される。一般的には透明性が高く高融点である金
属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物やCa,
Mg,Li等のフッ化物を用いることができる。これら
の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、フッ化物は必ずし
も化学量論的組成をとる必要はなく、屈折率等の制御の
ために組成を制御したり、混合して用いることも有効で
ある。
【0064】保護層2、4は厚さ方向で組成比や混合比
を変化させてもよい。また、保護層2、4はそれぞれ複
数膜からなってもよい。各膜は要求される特性に応じ、
材料や組成比、混合比を異ならせることができる。繰返
し記録特性を考慮するとこれらの保護層の膜密度はバル
ク状態の80%以上であることが機械的強度の面から望
ましい。混合物誘電体薄膜を用いる場合には、バルク密
度として下式の理論密度を用いる。
【0065】
【数6】ρ=Σmiρi (1) mi:各成分iのモル濃度 ρi:単独のバルク密度
【0066】本発明の媒体の記録層3は相変化型の記録
層であり、その厚みは一般的に5nmから100nmの
範囲が好ましい。記録層3の厚みが5nmより薄いと十
分なコントラストが得られ難く、また結晶化速度が遅く
なる傾向があり、短時間での消去が困難となりやすい。
一方100nmを越すとやはり光学的なコントラストが
得にくくなり、また、クラックが生じやすくなる。さら
に、DVDなど再生専用ディスクと互換性をとれるほど
のコントラストを得る必要があり、かつ、最短マーク長
が0.5μm以下となるような高密度記録では、5nm
以上25nm以下が好ましい。5nm未満では反射率が
低くなりすぎ、また、膜成長初期の不均一な組成、疎な
膜の影響が現れやすいので好ましくない。
【0067】一方、25nmより厚いと熱容量が大きく
なり記録感度が悪くなるし、結晶成長が3次元的になる
ため、非晶質マークのエッジが乱れジッタが高くなる傾
向にある。さらに、記録層の相変化による体積変化が顕
著になり繰返しオーバーライト耐久性が悪くなるので好
ましくない。マーク端のジッタ及び繰返しオーバーライ
ト耐久性の観点からは20nm以下とすることがより望
ましい。また、記録層の密度はバルク密度の80%以
上、より好ましくは90%以上であることが望ましい。
ここでいう、バルク密度とは、もちろん、合金塊を作成
して実測することもできるが、上記(1)式において、
各成分のモル濃度を各元素の原子%に置き換え、バルク
密度を各元素の分子量に置き換えることで近似値が得ら
れる。
【0068】記録層の密度はスパッタ成膜法において
は、成膜時のスパッタガス(Ar等の希ガス)の圧力を
低くする、ターゲット正面にに近接して基板を配置する
などして、記録層に照射される高エネルギーAr量を多
くすることが必要である。高エネルギーArはスパッタ
のためにターゲットに照射されるArイオンが、一部跳
ね返されて基板側に到達するものか、プラズマ中のAr
イオンが基板全面のシース電圧で加速されて基板に達す
るものかのいずれかである。このような高エネルギーの
希ガスの照射効果をatomic peening効果
という。一般的に使用されるArガスでのスパッタでは
atomic peening効果により、Arがスパ
ッタ膜に混入される。膜中のAr量により、atomi
c peening効果を見積もることができる。すな
わち、Ar量が少なければ、高エネルギーAr照射効果
が少ないことを意味し、密度の疎な膜が形成されやす
い。一方、Ar量が多ければ高エネルギーArの照射が
激しく、密度は高くなるものの、膜中に取り込まれたA
rが繰返しオーバーライト時にvoidとなって析出
し、繰返しの耐久性を劣化させる。記録層膜中の適当な
Ar量は、0.1原子%以上、1.5原子%以下であ
る。さらに、直流スパッタリングよりも高周波スパッタ
リングを用いた方が、膜中Ar量が少なくして、高密度
膜が得られるので好ましい。
【0069】本発明において、記録層は上述の組成を有
するGeSbTe合金を主成分とする薄膜からなる。す
なわち、記録層中のGe、Sb、Teの各元素量の比が
上述の組成範囲にあればよく、記録層には必要に応じて
他の元素を、合計10原子%程度まで添加してもよい。
記録層にさらに、O、N、及びSから選ばれる少なくと
も一つの元素を、0.1原子%以上5原子%以下添加す
ることで、記録層の光学定数を微調整することができ
る。しかし、5原子%を超えて添加することは、結晶化
速度を低下させ消去性能を悪化させるので好ましくな
い。
【0070】また、オーバーライト時の結晶化速度を低
下させずに、経時安定性を増すために、V、Nb、T
a、Cr、Co、Pt及びZrの少なくとも一種を、8
原子%以下添加するのが好ましい。より好ましくは、
0.1原子%以上5原子%以下添加する。SbTeに対
する、これら添加元素とGeの合計の添加量は全部で1
5原子%以下であることが望ましい。過剰に含まれると
Sb以外の相分離を誘起してしまう。特に、Ge含有量
が3原子%以上、5原子%以下の場合には添加効果が大
きい。経時安定性の向上と屈折率の微調整のために、S
i、Sn、及びPbの少なくとも一種を、5原子%以下
添加するのが好ましい。これら添加元素とGeの合計の
含有量は15原子%以下が好ましい。これら元素はGe
と同じ4配位ネットワークを持つ。
【0071】Al、Ga、Inを8原子%以下添加する
ことは、結晶化温度を上昇させると同時に、ジッタを低
減させたり、記録感度を改善する効果もあるが、偏析も
生じやすいため、6原子%以下とするのが好ましい。ま
た、Geとあわせた含有量は15原子%以下、好ましく
は13%以下とすることが望ましい。Agを8原子%以
下添加することはやはり記録感度を改善する上で効果が
あり、特にGe原子量が5原子%を超える場合に用いれ
ば、効果が顕著である。しかし、8原子%を超える添加
は、ジッタを増加させたり、非晶質マークの安定性を損
ねるので好ましくないし、Geと合わせた添加量が15
原子%を超えると偏析を生じやすいので好ましくない。
Agの含有量として最も好ましいのは、5原子%以下で
ある。
【0072】さて、本発明の記録媒体の記録層3は、成
膜後の状態は通常、非晶質である。従って、成膜後に、
記録層全面を結晶化して初期化された状態(未記録状
態)とする必要がある。初期化方法としては、Sb0.7
Te0.3に過剰なSbを含む合金には、固相でのアニー
ルによる初期化も可能であるが、さらにGeを含む組成
では、一旦記録層を溶融させ再凝固時に徐冷して結晶化
させる溶融再結晶化による初期化が望ましい。本記録層
は成膜直後には結晶成長の核がほとんどなく、固相での
結晶化は困難であるが、溶融再結晶化によれば、少数の
結晶核が形成されてのち、溶融して、結晶成長が主体と
なって高速で再結晶化が進むようである。
【0073】また、本発明の記録層は、溶融再結晶化に
よる結晶と、固相でのアニールによる結晶とは反射率が
異なるため、混在するとノイズの原因となる。そして、
実際のオーバーライト記録の際には、消去部は溶融再結
晶化による結晶となるため、初期化も溶融再結晶化によ
り行うのが好ましい。このとき、記録層を溶融するのは
局所的かつ、1ミリ秒程度以下の短時間に限る。溶融領
域が広かったり、溶融時間あるいは冷却時間が長すぎる
と、熱によって各層が破壊されたり、プラスチック基板
表面が変形したりするためである。このような熱履歴を
与えるには、波長600〜1000nm程度の高出力半
導体レーザー光を、長軸100〜300μm、短軸1〜
3μmに集束して照射し、短軸方向を走査軸として、1
〜10m/sの線速度で走査することが望ましい。同じ
集束光でも円形に近いと溶融領域が広すぎ、再非晶質化
がおきやすく、また、多層構成や基板へのダメージが大
きく好ましくない。初期化が溶融再結晶化によって行わ
れたことは以下のようにして確認できる。すなわち、該
初期化後の媒体に、直径約1.5μmより小さいスポッ
ト径に集束された、記録層を溶融するにたる記録パワー
Pwの記録光を、直流的に、一定線速度で照射する。案
内溝がある場合は、その溝もしくは溝間からなるトラッ
クに、トラッキングサーボ及びフォーカスサーボをかけ
た状態で行う。
【0074】その後、同じトラック上に消去パワーPe
(≦Pw)の消去光を直流的に照射して得られる消去状
態の反射率が、全く未記録の初期状態の反射率とほとん
ど同じであれば、該初期化状態は溶融際結晶状態と確認
できる。なぜなら、記録光照射により記録層は一旦溶融
されており、それを消去光照射で完全に再結晶化した状
態は、記録光による溶融と消去光による再結晶化の過程
を経ており、溶融再結晶化された状態にあるからであ
る。なお、初期化状態の反射率Riniと溶融再結晶化状
態Rcryの反射率がほぼ同じであるとは、(Rini−R
cry)/{(Rini+Rcry)/2}で定義される両者の
反射率差が20%以下であることを言う。通常、アニー
ル等の固相結晶化だけでは、その反射率差は20%より
大きい。
【0075】次に、記録層以外の層について述べる。本
発明の層構成は、急冷構造と呼ばれる層構成の一種に属
する。急冷構造は、放熱を促進し、記録層再凝固時の冷
却速度を高める層構成を採用することで、非晶質マーク
形成のときの再結晶化の問題を回避しつつ、高速結晶化
による高消去比を実現する。このため第2保護層膜厚
は、5nm以上30nm以下とする。5nmより薄い
と、記録層溶融時の変形等によって破壊されやすく、ま
た、放熱効果が大きすぎて記録に要するパワーが不必要
に大きくなってしまう。
【0076】本発明の、第2保護層の膜厚は、繰返しオ
ーバーライトにおける耐久性に大きく影響し、特にジッ
タの悪化を抑制する上でも重要である。膜厚が30nm
より厚い場合には、記録時に、第2保護層の記録側と、
反射層側とで温度差が大きくなり、保護層の両側におけ
る熱膨張差から、保護層自体が非対称に変形しやすくな
る。この繰返しは、保護層内部に微視的塑性変形を蓄積
させ、ノイズの増加を招くので好ましくない。本発明の
記録層を用いると、最短マーク長0.5μm以下の高密
度記録において低ジッタを実現できるが、本発明者らの
検討によれば、高密度記録を実現するために短波長のレ
ーザーダイオード(例えば、波長700nm以下)を用
いる場合には、上記急冷構造の層構成についても、一層
の留意が必要になる。特に、波長が500nm以下、開
口数NAが0.55以上の小さな集束光ビームを用いた
1ビームオーバーライト特性の検討において、マーク幅
方向の温度分布を平坦化することが、高消去比及び消去
パワーマージンを広く取るために重要であることが分か
った。
【0077】この傾向は、波長630〜680nm、N
A=0.6前後の光学系を用いた、DVD対応の光学系
においても同様である。このような光学系を用いた高密
度マーク長変調記録においては、特に、熱伝導率の低い
材料を第2保護層として用いる。好ましくはその膜厚を
10nm以上25nm以下とする。いずれの場合にも、
その上に設ける反射層5をとりわけ高熱伝導率の材料と
することにより、消去比及び消去パワーマージンを改善
できる。検討によれば、広い消去パワー範囲において、
本発明記録層が持つ良好な消去特性を発揮させるには、
単に膜厚方向の温度分布や時間変化のみならず、膜面方
向(記録ビーム走査方向の垂直方向)の温度分布をでき
るだけ平坦化できるような層構成を用いるのが好まし
い。
【0078】本発明者らは、媒体の層構成を適切に設計
することにより、媒体中のトラック横断方向の温度分布
を平坦にすることで、溶融して再非晶質化されることな
く、再結晶化することのできる幅を広げ、消去率及び消
去パワーマージンを広げることを試みた。一方、熱伝導
率が低くごく薄い第2保護層を介して、記録層から、極
めて高熱伝導率の反射層への放熱を促進することで、記
録層における温度分布が平坦になることがわかった。第
2保護層の熱伝導率を高くしても放熱効果は促進される
が、あまり放熱が促進されると、記録に要する照射パワ
ーが高くなる、すなわち、記録感度が著しく低下してし
まう。
【0079】本発明においては低熱伝導率の、薄い第2
保護層を用いるのが好ましい。低熱伝導率の、薄い第2
保護層を用いることにより、記録パワー照射開始時点の
数nsec〜数十nsecにおいて、記録層から反射層
への熱伝導に時間的な遅延をあたえ、その後に反射層へ
の放熱を促進することができるため、放熱により必要以
上に記録感度を低下させることがない。従来知られてい
る、SiO2、Ta25、Al23、AlN、SiN等
を主成分とする保護層材料は、それ自身の熱伝導率が高
すぎて、本発明媒体の第2保護層4としては好ましくな
い。このように、金属酸化物や窒化物の熱伝導率は、同
じ薄膜状態に比べても、本発明保護層で用いられる下記
保護層にくらべて、1桁以上熱伝導率が高い。
【0080】一方、反射層における放熱は、反射層の厚
みを厚くしても達成できるが、反射層の厚みが300n
mを超えると、記録層膜面方向よりも膜厚方向の熱伝導
が顕著になり、膜面方向の温度分布改善効果が得られな
い。また、反射層自体の熱容量が大きくなり、反射層、
ひいては記録層の冷却に時間がかかるようになって、非
晶質マークの形成が阻害される。最も好ましいのは、高
熱伝導率の反射層を薄く設けて横方向への放熱を選択的
に促進することである。従来用いられていた急冷構造
は、膜厚方向の1次元的な熱の逃げにのみ注目し、記録
層から反射層に早く熱を逃すことのみを意図しており、
この平面方向の温度分布の平坦化に十分な留意が払われ
ていなかった。
【0081】なお、本発明の、いわば「第2保護層での
熱伝導遅延効果を考慮した超急冷構造」は、本発明に係
る記録層に適用すると、従来のGeTe−Sb2Te3
録層に比べて一層効果がある。なぜなら、本発明記録層
はTm近傍での再凝固時の結晶成長が再結晶化の律速に
なっているからである。Tm近傍での冷却即速度を極限
まで大きくして、非晶質マーク及びそのエッジの形成を
確実かつ明確なものとするには、超急冷構造が有効であ
り、かつ、膜面方向の温度分布の平坦化で、もともとT
m近傍で高速消去可能であったものが、より高消去パワ
ーまで確実に再結晶化による消去を確保できるからであ
る。
【0082】本発明においては、第2保護層の材料とし
ては熱伝導が低い方が望ましいが、その目安は1×10
-3pJ/(μm・K・nsec)である。しかしなが
ら、このような低熱伝導率材料の薄膜状態の熱伝導率を
直接測定するのは困難であり、代わりに、熱シミュレー
ションと実際の記録感度の測定結果から目安を得ること
ができる。好ましい結果をもたらす低熱伝導率の第2保
護層材料としては、ZnS、ZnO、TaS2又は希土
類硫化物のうちの少なくとも一種を50mol%以上9
0mol%以下含み、かつ、融点又は分解点が1000
℃以上の耐熱性化合物とを含む複合誘電体が望ましい。
【0083】より具体的にはLa,Ce,Nd,Y等の
希土類の硫化物を60mol%以上90mol%以下含
む複合誘電体が望ましい。あるいは、ZnS,ZnOも
しくは希土類硫化物の組成の範囲を70〜90mol%
とすることが望ましい。これらと混合されるべき、融点
又は分解点が1000℃以上の耐熱化合物材料として
は、Mg,Ca,Sr,Y,La,Ce,Ho,Er,
Yb,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Zn,A
l,Si,Ge,Pb等の酸化物、窒化物、炭化物やC
a,Mg,Li等のフッ化物を用いることができる。特
にZnOと混合されるべき材料としては、Y,La,C
e,Nd等希土類の硫化物あるいは硫化物と酸化物の混
合物が望ましい。そして、この第2保護層の膜厚が30
nmより厚いとマーク幅方向の温度分布の十分な平坦化
効果が得られないため、30nm以下とする。好ましく
は25nm以下とする。5nm未満では、第2保護層部
での熱伝導の遅延効果が不十分で、記録感度低下が著し
くなり好ましくない。第2保護層4の厚さは、記録レー
ザー光の波長が600〜700nmでは15nm〜25
nmが好ましく、波長が350〜600nmでは5〜2
0nmが好ましく、より好ましくはは5〜15nmであ
る。
【0084】本発明においては、非常に高熱伝導率で3
00nm以下の薄い反射層5を用いて、横方向の放熱効
果を促進するのが特徴である。一般には薄膜の熱伝導率
はバルク状態の熱伝導率と大きく異なり、小さくなって
いるのが普通である。特に40nm未満の薄膜では成長
初期の島状構造の影響で熱伝導率が1桁以上小さくなる
場合があり好ましくない。さらに、成膜条件によって結
晶性や不純物量が異なり、これが同じ組成でも熱伝導率
が異なる要因になる。
【0085】本発明において良好な特性を示す高熱伝導
率の反射層を規定するために、反射層の熱伝導率は直接
測定することも可能であるが、その熱伝導の良否を電気
抵抗を利用して見積もることができる。金属膜のように
電子が熱もしくは電気伝導を主として司る材料において
は熱伝導率と電気伝導率は良好な比例関係があるためで
ある。薄膜の電気抵抗はその膜厚や測定領域の面積で規
格化された抵抗率値で表す。体積抵抗率と面積抵抗率は
通常の4探針法で測定でき、JIS K 7194によ
って規定されている。本法により、薄膜の熱伝導率その
ものを実測するよりもはるかに簡便かつ再現性の良いデ
ータが得られる。本発明において好ましい反射層は、体
積抵抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以下であ
り、より好ましくは20nΩ・m以上100nΩ・m以
下である。体積抵抗率20nΩ・m未満の材料は薄膜状
態では実質的に得にくい。体積抵抗率150nΩ・mよ
り体積抵抗率が大きい場合でも、例えば300nmを超
える厚膜とすれば面積抵抗率を下げることはできるが、
本発明者らの検討によれば、このような高体積抵抗率材
料で面積抵抗率のみ下げても、十分な放熱効果は得られ
なかった。厚膜では単位面積当たりの熱容量が増大して
しまうためと考えられる。また、このような厚膜では成
膜に時間がかかり、材料費も増えるため製造コストの観
点から好ましくない。さらに、膜表面の微視的な平坦性
も悪くなってしまう。好ましくは、膜厚300nm以下
で面積抵抗率0.2以上0.9Ω/□以下が得られるよ
うな、低体積抵抗率材料を用いる。0.5Ω/□が最も
好ましい。
【0086】本発明に適した材料は、以下のとおりであ
る。例えば、Siを0.3重量%以上0.8重量%以
下、Mgを0.3重量%以上1.2重量%以下含有する
Al−Mg−Si系合金である。また、AlにTa,T
i,Co,Cr,Si,Sc,Hf,Pd,Pt,M
g,Zr,Mo,又はMnを0.2原子%以上2原子%
以下含むAl合金は、添加元素濃度に比例して体積抵抗
率が増加し、また、耐ヒロック性が改善され、耐久性、
体積抵抗率、成膜速度等考慮して用いることができる。
Al合金に関しては、添加不純物量0.2原子%未満で
は、成膜条件にもよるが、耐ヒロック性は不十分である
ことが多い。また、2原子%より多いと上記の低抵抗率
が得られにくい。経時安定性をより重視する場合には添
加成分としてはTaが好ましい。特に、ZnSを主成分
とする上部保護層4に対しては、Taを0.5原子%以
上、0.8原子%以下とするAlTa合金が、耐食性、
密着性、高熱伝導率のすべてをバランス良く満足する反
射層として望ましい。また、Taの場合わずか0.5原
子%の添加で純AlやAl−Mg−Si合金に比べて、
スパッタリング時の成膜レートが3〜4割アップすると
いう製造上好ましい効果が得られる。上記Al合金を反
射層として用いる場合、好ましい膜厚は150nm以上
300nm以下である。150nm未満では純Alでも
放熱効果は不十分である。300nmを超えると、熱が
水平方向より垂直方向に逃げて、水平方向の熱分布改善
に寄与しないし、反射層そのものの熱容量が大きく、却
って記録層の冷却速度が遅くなってしまう。また、膜表
面の微視的な平坦性も悪くなる。
【0087】さらに、AgにTi,V,Ta,Nb,
W,Co,Cr,Si,Ge,Sn,Sc,Hf,P
d,Rh,Au,Pt,Mg,Zr,Mo,又はMnを
0.2原子%以上5原子%以下含むAg合金も望まし
い。経時安定性をより重視する場合には添加成分として
はTi、Mgが好ましい。上記Ag合金を反射層として
用いる場合、好ましい膜厚は40nm以上150nm以
下である。40nm未満では純Agでも放熱効果は不十
分である。150nmを超えると、熱が水平方向より垂
直方向に逃げて、水平方向の熱分布改善に寄与しない
し、不必要な厚膜は生産性を低下させる。また、膜表面
の微視的な平坦性も悪くなる。
【0088】本発明者らは上記、Alへの添加元素、A
gへの添加元素は、その添加元素濃度に比例して、体積
抵抗率が増加することを確認している。ところで、不純
物の添加は一般的に結晶粒径を小さくし、粒界の電子散
乱を増加させて熱伝導率を低下させると考えられる。添
加不純物量を調節することは、結晶粒径を大きくするこ
とで材料本来の高熱伝導率を得るために必要である。な
お、反射層は通常スパッタ法や真空蒸着法で形成される
が、ターゲットや蒸着材料そのものの不純物量もさるこ
とながら、成膜時に混入する水分や酸素量も含めて全不
純物量を2原子%以下とする必要がある。このためにプ
ロセスチャンバの到達真空度は1×10-3Pa以下とす
ることが望ましい。また、10-4Paより悪い到達真空
度で成膜するなら、成膜レートを1nm/秒以上、好ま
しくは10nm/秒以上として不純物が取り込まれるの
を防ぐことが望ましい。
【0089】あるいは、意図的な添加元素を1原子%よ
り多く含む場合は、成膜レートを10nm/秒以上とし
て付加的な不純物混入を極力防ぐことが望ましい。成膜
条件は不純物量とは無関係に結晶粒径に影響を及ぼす場
合もある。例えば、AlにTaを2原子%程度混入した
合金膜は、結晶粒の間に非晶質相が混在するが、結晶相
と非晶質相の割合は成膜条件に依存する。例えば、低圧
でスパッタするほど結晶部分の割合が増え、体積抵抗率
が下がり、熱伝導率が増加する。膜中の不純物組成ある
いは結晶性は、スパッタに用いる合金ターゲットの製法
やスパッタガス(Ar,Ne,Xe等)にも依存する。
このように、薄膜状態の体積抵抗率は金属材料、組成の
みによっては決まらない。高熱伝導率を得るためには、
上記のように、不純物量を少なくするのが望ましいが、
一方で、AlやAgの純金属は耐食性や耐ヒロック性に
劣る傾向があるため、両者のバランスを考慮して最適組
成が決まる。
【0090】さらなる高熱伝導と高信頼性をえるために
反射層を多層化することも有効である。このとき、少な
くとも1層は全反射層膜厚の50%以上の膜厚を有する
上記低体積抵抗率材料として実質的に放熱効果を司り、
他の層が耐食性や保護層との密着性、耐ヒロック性の改
善に寄与するように構成される。より具体的には、金属
中最も高熱伝導率および低体積抵抗率であるAgはSを
含む保護層との相性が悪く、繰返しオーバーライトした
場合の劣化がやや速いという傾向がある。また、高温高
湿の加速試験環境下で腐食を生じやすい傾向がある。そ
こで、低体積抵抗率材料としてAg及びAg合金を用
い、上部保護層との間に界面層としてAlを主成分とす
る合金層を1nm以上100nm以下設けることも有効
である。厚さを5nm以上とすれば、層が島状構造とな
らず均一に形成されやすい。Al合金としては前述と同
様に例えば、Ta,Ti,Co,Cr,Si,Sc,H
f,Pd,Pt,Mg,Zr,Mo,又はMnを0.2
原子%以上2原子%以下含むAl合金が挙げられる。界
面層の厚さは1nm未満では保護効果が不十分で、10
0nmを超えると放熱効果が犠牲になる。界面層の使用
は、特に反射層がAg又はAg合金の場合に有効であ
る。なぜなら、Agは本発明で好ましいとされる硫化物
を含む保護層との接触により、比較的硫化による腐食を
起こしやすいからである。
【0091】さらにAg合金反射層とAl合金界面層を
用いる場合、AgとAlは比較的相互拡散しやすい組み
合わせであるので、Al表面を1nmより厚く、酸化し
て界面酸化層を設けることがいっそう好ましい。界面酸
化層が5nm、とくに10nmを越えるとそれが熱抵抗
となり、本来の趣旨である、極めて放熱性の高い反射層
としての機能が損なわれるので好ましくない。反射層の
多層化は、高体積抵抗率材料と低体積抵抗率材料を組み
合わせて所望の膜厚で所望の面積抵抗率を得るためにも
有効である。合金化による体積抵抗率調節は、合金ター
ゲットの使用によりスパッタ工程を簡素化できるが、タ
ーゲット製造コスト、ひいては媒体の原材料比を上昇さ
せる要因にもなる。従って、純Alや純Agの薄膜と上
記添加元素そのものの薄膜を多層化して所望の体積抵抗
率を得ることも有効である。層数が3層程度までであれ
ば、初期の装置コストは増加するものの、個々の媒体コ
ストはかえって抑制できる場合がある。反射層を複数の
金属膜からなる多層反射層とし、全膜厚を40nm以上
300nm以下とし、多層反射層の厚さの50%以上が
体積抵抗率20nΩ・m以上150nΩ・m以下の金属
薄膜層(多層であっても良い)とするのが好ましい。さ
て、記録層及び保護層の厚みは、上記熱特性、機械的強
度、信頼性の面からの制限の他に、多層構成に伴う干渉
効果も考慮して、レーザー光の吸収効率が良く、記録信
号の振幅、すなわち記録状態と未記録状態のコントラス
トが大きくなるように選ばれる。
【0092】例えば、本発明媒体を書換え型DVDに適
用し、再生専用タイプのDVDと互換性を確保するとす
れば、変調度を高くとらねばならない。また、再生専用
プレーヤーで通常用いられる、DPD(Differential P
hase Detection)法と呼ばれるトラッキングサーボ法が
そのまま適用できることが必要である。図6にEFMプ
ラス変調されたランダム信号を記録し再生したときのD
C再生信号(直流成分を含む再生信号)の波形を示す。
変調度は、14Tマークのトップの信号強度Itopと信
号振幅I14との比I14/Itopとして定義される。Itop
は実際上、未記録部(結晶状態)の溝内での反射率に相
当する。I14は相変化媒体の結晶部分と非晶質部分から
反射光の強度差及び位相差が問題となる。反射光の強度
差は、基本的に結晶状態と非晶質状態の反射率差で決ま
る。上記記録後の変調度が概ね0.5以上であれば、低
ジッタが実現できるとともに、上記DPD法によるトラ
ッキングサーボも良好に作動する。
【0093】図7に、典型的な4層構成における反射率
差の計算例を示した。ポリカーボネート基板上に、(Z
nS)80(SiO220保護層、Ge0.05Sb0.69Te
0.26記録層、(ZnS)80(SiO220保護層、Al
0.995Ta0.005 反射層を設けたものとした。各層の屈
折率は実測値を用いている。波長650nmにおける各
材料の複素屈折率は、上下の保護層は2.12−0.0
i、反射層は1.7−5.3i、基板は1.56、記録
層は非晶質状態(成膜直後の状態で測定)で3.5−
2.6i、初期化後の結晶状態で2.3−4.1iであ
る。また、記録層、第2保護層、反射層の膜厚はそれぞ
れ、18nm、20nm、200nmで一定とした。第
1保護層膜厚依存性を見る限り、通常は振幅の変化は小
さく、分母であるI top、すなわち結晶状態の反射率に
強く依存する。したがって、結晶状態反射率は可能な限
り低いことが望ましい。
【0094】図7の計算例では、第1保護層を、屈折率
n=2.12の(ZnS)80(SiO220膜とした。
このとき、第1の極小値d1は膜厚50〜70nm、第
2の極小値d2は膜厚200〜220nmになる。以後
は周期的に変化する。結晶状態の反射率が極小となる第
1保護層膜厚は、反射率が高い記録層であれば、実質
上、保護層の屈折率のみで決まる。他の屈折率nにおけ
る極小点膜厚は、d1、d2に2.1/nをかければほぼ
求まるが、通常、保護層として用いられる誘電体はn=
1.8〜2.3程度であり、d1は60〜80nm程度
である。第1保護層の屈折率nが1.8よりも小さい
と、極小点における反射率が増加して変調度が著しく低
下し、0.5未満となるので好ましくない。逆に、2.
3以上とすると、極小点の反射率が低くなりすぎ20%
を達成できず、フォーカスやトラッキングサーボが困難
になるので好ましくない。
【0095】本発明に係る記録層の組成範囲では、図7
とほぼ類似の光学特性が発揮される。生産性の観点から
は第1保護層膜厚は150nm以下にとどめるのが望ま
しい。なぜなら、現在、誘電体保護層のスパッタ法によ
る成膜速度は高々15nm/秒であり、その成膜に10
秒以上かけることはコストを上昇させるからである。ま
た、膜厚変動の許容値が厳しくなるので生産上も好まし
くない。即ち、図7からわかるように、反射率は所望の
膜厚d0からΔdずれると、第1の極小値d1近傍でも、
第2の極小値d2近傍でもおなじだけ変動する。
【0096】一方、製造上の膜厚分布は、通常はd0
対して±2〜3%が均一性の限度である。従って、d0
が薄いほど膜厚の変動幅Δdは小さくなり、ディスク面
内あるいはディスク間の反射率変動を抑制出来るので有
利である。従って、安価な静止対向タイプのスパッタ装
置で、基板の自公転機構を有しない装置では、第1の極
小値d1近傍の膜厚を採用するのが望ましい。一方で、
厚い保護層は繰返しオーバーライト時の基板表面の変形
を抑制する効果が大きいから、繰返しオーバーライト耐
久性改善を重要視するならば、第2の極小値d2近傍の
膜厚を採用するのが望ましい。なお、基板を介して記録
再生光を入射させて記録または再生を行うような媒体に
おいては、第1保護層をある程度厚くして、記録時に発
生する熱から基板を保護しなければならない。記録時に
記録層は、100ナノ秒程度であるが500〜600℃
以上となる。このためには膜厚を50nm以上とするの
が好ましい。50nm未満では、記録を繰り返すと基板
に微視的な変形が蓄積され、ノイズや欠陥となりやす
い。特に基板がポリカーボネートなどの熱可塑性プラス
チックからなる場合には重要である。
【0097】次に、本媒体と併せ用いるに好ましい光記
録方法について説明する。好ましい第一の記録方法は、
上述の記録媒体に、マーク長変調された情報を複数の記
録マーク長により記録するにあたり、記録マーク間に
は、非晶質を結晶化しうる消去パワーPeの記録光を照
射し、一つの記録マークの時間的な長さをnTとしたと
き(Tは基準クロック周期、nは2以上の整数)、記録
マークの時間的長さnTを、
【0098】
【数7】η1T、α1T、β1T、α2T、β2T、・・
・、αiT、βiT、・・・、αmT、βmT、η2
【0099】(ただし、mはパルス分割数でm=n−
k、kは0≦k≦2なる整数とする。また、Σi(αi
βi)+η1+η2=nとし、η1はη1≧0なる実数、η2
はη 2≧0なる実数、0≦η1+η2≦2.0とする。αi
(1≦i≦m)はαi>0なる実数とし、βi(1≦i≦
m)はβi>0なる実数とし、Σαi<0.5nとする。
α1=0.1〜1.5、β1=0.3〜1.0、βm=0
〜1.5とし、αi=0.1〜0.8(2≦i≦m)と
する。なお、3≦i≦mなるiにおいてαi+βi-1
0.5〜1.5の範囲にあり、かつ、iによらず一定と
する。)の順に分割し、αiT(1≦i≦m)の時間内
においては記録層を溶融させるにたるPw≧Peなる記
録パワーPwの記録光を照射し、βiT(1≦i≦m)
の時間内においては、0<Pb≦0.2Pe(ただし、
βmTにおいては、0<Pb≦Peとなりうる)なるバ
イアスパワーPbの記録光を照射する。
【0100】上述の媒体に本記録方法を併せ用いること
で、記録層の再凝固時の冷却速度を正確に制御し、少な
くとも3m/sから8m/s、さらには、記録条件の設
定により1m/sから15m/sの広い線速度範囲にお
いて、最短マーク長0.5μm以下の高密度マーク長変
調記録が可能となり、1000回以上の繰返しオーバー
ライトが達成でき、基準クロック周期Tの10%未満の
低ジッタが実現できる。まず、上記のような高密度マー
ク長変調記録を実現するためには、波長350〜680
nmのレーザー光ビームを、開口数NAが0.55以上
0.9以下の対物レンズを通して記録層に集光させて微
小な集束光ビームスポットを得る。
【0101】より好ましくは、NAを0.55以上0.
65以下とする。NAが0.65を超えると、光軸の傾
きによる収差の影響が大きくなるから、対物レンズと記
録面との距離を極めて接近させる必要がある。従って、
DVDなど、0.6mm程度の厚さの基板を介して集束
光ビームを入射させる場合には、NAは0.65程度が
上限となる。そして、図8に示すように、少なくとも3
値に記録光パワーを変調させることで、パワーマージン
及び記録時線速マージンを広げることができる。図8に
おいて、先頭記録パルスα1Tの開始位置、最終オフパ
ルスβmTの終了位置は、必ずしも元の記録信号の開始
位置、終了位置と一致する必要はない。0≦η1+η2
2.0となる範囲内で、先頭にη1Tを置き、最後にη2
Tを置いてよい。当該マーク前後のマークの長さやマー
ク間長さに応じて、η1Tやη2Tの長さを微調整するこ
とも、マークを正確に形成するのに有効である。
【0102】或いは、βmのみをマーク長nTに応じて
変化させることにより、良好なマークを形成できる場合
もある。最後のβm=0としてもよい。例えば、EFM
変調において3T〜11Tのマークのうち11Tマー
ク、又はEFMプラス変調において3T〜14Tのマー
クのうち14Tマーク、等の長いマークほど熱が蓄積し
やすいので、最後のβmを長くして冷却時間を長めにす
るのが良い。逆に、3Tマーク等の短いマークの場合に
はβmを短くするのがよい。その調整幅は0.5程度で
ある。いわゆるDVD程度の線記録密度を超えるような
高密度記録であれば、必ずしもそのような微調整をしな
くても十分な記録信号品質が得られる。
【0103】また、バイアスパワーPbの大きさを変え
ることでも、マーク形状を制御できる。図9に、2つの
記録パルスを照射した際の記録層のある1点の温度の時
間変化の例を示す。媒体に対してビームを相対的に移動
させながら記録パルスP1、オフパルス、記録パルスP
2を連続的に照射した場合の、記録パルスP1を照射し
た位置での温度変化である。(a)はPb=Peとした
場合、(b)はPb≒0とした場合である。図9(b)
では、オフパルス区間のバイアスパワーPbがほとんど
0のため、TL’は融点より十分低い点まで下がり、か
つ、途中の冷却速度も大きい。従って、非晶質マークは
記録パルスP1照射時に溶解し、その後のオフパルス時
の急冷によって形成される。一方、図9(a)では、オ
フパルス区間でも消去パワーPeが照射されるため、1
番目の記録パルスP1照射後の冷却速度が遅く、オフパ
ルス区間での温度降下で到達する最低温度TLが融点T
m近傍に留まり、さらに、後続の記録パルスP2により
融点Tm近傍まで加熱され、非晶質マークが形成されに
くい。
【0104】本発明の媒体に対して、図9(b)に示
す、急峻な温度プロファイルをとることは、高温度域で
の結晶化を抑制し、良好な非晶質マークを得る上で重要
なことである。なぜなら、本発明媒体の記録層は、融点
直下の高温域でのみ大きな結晶化速度を示すため、記録
層温度が高温域にほとんどとどまらない(b)のプロフ
ァイルをとることで、再結晶化が抑制できると考えられ
るからである。あるいは、結晶化温度Tcに近い比較的
低温域での結晶核生成は毎回の消去プロセスでは支配的
でなく、前述の初期化時に形成された結晶核となりうる
Sbクラスタが安定に存在するため、高温域の結晶成長
のみが支配的であるとも考えられる。従って、冷却速度
及びTL’を制御することで再結晶化をほぼ完全に抑制
し、溶融領域とほぼ一致するクリアな輪郭を有する非晶
質マークが得られ、マークエッジのジッタが低減でき
る。
【0105】一方、GeTe−Sb2Te3擬似二元系合
金では、図9(a),(b)いずれの温度プロファイル
でも非晶質マーク形成プロセスに大差がない。なぜな
ら、この材料では広い温度範囲、特に結晶化温度Tc近
くの低温域でも、速度は若干遅いものの再結晶化を示す
からである。あるいは、この材料では、比較的Tcに近
い温度域での結晶核生成とTmに近い温度域での結晶成
長とが律速になっているため、全体として広い温度域で
比較的低速の再結晶化が起きるとも考えられる。GeT
e−Sb2Te3でも、Pb<Peとしてオフパルスを用
いて粗大グレインを抑制する場合もあるが、Pb/Pe
≦0.2とすると、Tc近傍での結晶化が抑制されすぎ
るために、かえって消去性能が低下する。しかし、本発
明に係る記録層材料では、Tcに近い比較的低温での結
晶化はほとんど進まないと考えられるので、Pb/Pe
≦0.2とするのが好ましい。あるいはより具体的に
は、0≦Pb≦1.5(mW)として、トラッキングサ
ーボが安定する限り低いPbを用い、できるだけ急冷と
なるようにオフパルスを積極的に用いた方が、非晶質マ
ークのエッジが明確に形成でき好ましい。
【0106】図8のパルス分割方法において、特に、最
先端の記録パルスα1Tだけを後続パルスαiTより長め
にし、また、最先端及び最後端のオフパルス幅β1T、
βmTのみを他のオフパルスと別に設定するのが、長マ
ークと短マークの特性バランスを取る上で最も有効であ
る。最先端のパルスα1Tは、余熱効果がないため、昇
温のためにやや長時間を要する。あるいは、最先端のパ
ルスの記録パワーを、後続のパルスより高めに設定する
ことも有効である。
【0107】また、パルスの切り替えをクロック周期T
に同期させると、パルス制御が簡単になる。マーク長変
調記録に適し、かつパルス制御回路が簡便なパルス分割
方法を図10に示す。(a)のマーク長変調データを記
録する際のパルス分割方法として(b)にm=n−1の
場合、(c)にm=n−2の場合を示す。なお(b)、
(c)では図を簡略にするためにTを省略している。い
ずれも、αi(2≦i≦m)及びβi(2≦i≦m−1)
はiによらず一定とし、α1≧αi、αi+βi- 1=1.0
(3≦i≦m)として、αi(2≦i≦m)の記録パル
スの後端をクロックパルスに同期させる。また、Pbを
再生光パワーPrと同じにすることも、回路を簡便化す
るには有効である。先頭パルスα1Tだけを後続パルス
より長くすることは、いわゆるアイパターンにおいて短
マークと長マークの記録のバランスを良くするために必
要なことである。或いは、先頭パルスのみ後続パルスよ
り高パワーとしてもよい。このようなパルスは、図11
に示すような3種のゲート発生回路とそれらの間の優先
順位を決めることで達成できる。
【0108】図11は本発明の記録方法によるパルス発
生方法の一例の説明図である。(a)はクロック信号、
(b)はデータ信号であり、記録パルス発生回路中の3
種のゲート発生回路から発生するゲート信号(c)Ga
te1、(d)Gate2、(e)Gate3である。
これら3種のゲート信号の優先順位を決めておくこと
で、本発明のパルス分割方法が達成できる。Gate1
は記録パルス発生区間α1Tのみを、Gate2は後続
パルスαiT(2≦i≦m)を所定個数発生させるタイ
ミングを決める。ここでパルス幅αiは2≦i≦mにお
いて一定値αcとする。Gate3はオフパルス発生区
間β iTを発生する。Gate3がオン(レベル高)の
間はPbを発生し、オフの間(レベル低)はPeを発生
する。α1の立ち上がりのタイミングとパルス幅のみを
独立して決めることで、β1をβiと異なる値とすること
ができる。Gate3とGate1の立ち上がりは同期
させるのが良い。Gate1、Gate2はそれぞれP
wを発生させるが、Gate1、2がオンのときはGa
te3に優先する。Gate1の遅延時間T1とα1、G
ate2の遅延時間(T1+T2)とαcを指定すれば、
図10のストラテジーを指定できる。
【0109】ここで、T1を1T以上とすれば、図10
(b)のm=n−1の場合のパルスとなり、1T未満と
して後続パルスの数を一個減らせば、図10(c)のm
=n−2の場合のパルスとなる。このとき、α1T及び
βm-2Tを、m=n−1の場合より長くすることで、形
成されるマーク長をnTとする。さて、本発明のさらな
る適用例として、再生専用DVDと同等以上の記録密度
で、少なくとも再生時には再生専用DVDと同等の信号
品質を得るためには、下記のような記録方法を用いるこ
とが望ましい。
【0110】すなわち、波長が350〜680nmの光
を、開口数NAが0.55〜0.9の対物レンズを通し
て記録層に集光させ、データの記録再生を行う光記録方
法であって、m=n−1又はm=n−2、0≦Pb≦
1.5(mW)、Pe/Pwは0.3以上0.6以下と
する。そして、 α1=0.3〜1.5、 α1≧αi=0.2〜0.8(2≦i≦m)、 αi+βi-1=1.0(3≦i≦m)、 βm=0〜1.5 とするのが好ましい。
【0111】Pe/Pwの比を一定に保つことは、パワ
ー変動が生じたときに、高パワーで記録マークが大きい
ときには消去パワーも大きくして消去可能な範囲を広げ
るためである。Pe/Pwが0.3未満では、常にPe
が低くて消去不十分となりやすい。逆に0.6より大き
いと、Peが過剰でビーム中心での再非晶質化を招きや
すく、完全な再結晶化による消去が困難となる。また、
記録層に照射されるエネルギー量が大きくなりすぎ、繰
返しオーバーライトにより劣化しやすくなる。
【0112】さて、本発明に係わる組成の記録層は、α
iが特に小さい範囲で良好なジッタが得られるため、Σ
αi<0.5nとし、kが小さいほど(Σαi)/nを減
少させることが望ましい。すなわち、k=0又はk=1
では(Σαi)<0.4n、k=2では(Σαi)<0.
5nとするのが好ましい。好ましくは、このような記録
パルス分割方法を線速3m/s以上でのオーバーライト
に適用するためには、本発明記録層Gex(SbyTe
1-y1-x において、特にyを0.72以上、線速7m
/s以上でのオーバーライトにはyを0.74以上とす
る。すなわち、Sb/Te比を2.57以上、より好ま
しくは2.85以上のSbリッチとする。
【0113】本発明では、記録層組成をこのようにSb
リッチとしても、非晶質マークの安定性が高く保存安定
性も良好であることが、好ましい特徴の一つである。特
開平8−22644号公報には、Sb0.7Te0.3近傍組
成にAg及びInを合計で10原子%程度添加したAg
InSbTe記録層が記載されている。しかし、このA
gInSbTe記録層でSb/Te比を2.57以上と
すると、非晶質マークが極めて不安定となり保存安定性
に問題があった。以下、実験例を用いて比較説明する。
EFMプラス変調のマーク長記録を行うにあたり、長さ
nTのマークを記録するに、線速2m/s〜5m/sの
範囲において、波長630〜680nm、NA=0.6
の光学系を用いて、記録パルスをn−1個に分割して記
録する場合を考える。本発明記録層の一例として、Ag
0.05Ge0.05Sb0.67Te0.23(Sb/Te≒2.9
1)を用い、上記AgInSbTe記録層の一例とし
て、Ag0.05In 0.05Sb0.63Te0.27(Sb/Te≒
2.33)を用いる。
【0114】本発明組成の記録層も上記AgInSbT
e記録層も、光学定数はほぼ同じであるため、同じ層構
成を用いて同等の反射率及び変調度を得ることができ、
したがって熱的に同等の層構成を適用できる。第1保護
層膜厚を100nm、記録層を20nm、第2保護層を
20nm、反射層を200nmとし、いずれもβi
0.5程度(1≦i≦n−1)、Pw=10〜14(m
W)、Pe/Pw=0.5、Pb≒0とする。このと
き、従来のAg0.05In0.05Sb0.63Te0.27記録層で
は、α1=0.8〜1.2、αi=0.4〜0.6(2≦
i≦n−1)が好ましい。特にα1=1.0、αi(2≦
i≦n−1)=0.5、βm=0.5とした場合、Σαi
はnによらず0.5nとなる。
【0115】一方、本発明のAg0.05Ge0.05Sb0.67
Te0.23記録層では、α1=0.3〜0.5、αi=0.
2〜0.4(2≦i≦n−1)が好ましい範囲となる。
より具体的にはα1=0.6、αi(2≦i≦n−1)=
0.35とすることができる。この場合、n=3の時、
Σαi≒0.32nとなり、n=4以上では、Σαi
0.33n〜0.34nとなる。これはすなわち、本発
明媒体においては、記録の際に照射される平均照射パワ
ーを小さくし、実質的な記録パルス照射時間をΣαi
0.4nと小さくすることができることを表している。
【0116】このことにより、以下の効果が得られる。 (1)高パワー記録による記録信号品質の劣化を低減で
きる。高パワー記録の問題点は、記録層に与えられる光
エネルギーが多くなりすぎて記録層にこもることに起因
している。このため冷却速度が遅くなって非晶質マーク
の再結晶化が生じたり、繰返しオーバーライト時の劣化
が著しくなる。低パワーのオフパルス区間を設けること
で平均入力パワーを抑え、かつ、高熱伝導率の反射層に
より平面方向に熱を逃がすことにより、高パワー記録時
でも、マーク後端部分、特に長マーク後端部分、の熱蓄
積による悪影響を抑制でき、良好な長マークを形成でき
る。 (2)繰返しオーバーライト時における各層の熱ダメー
ジを軽減でき、繰返し耐久性を改善できる。毎回の熱ダ
メージを小さくすることで、例えば、熱に弱いプラスチ
ック基板の変形を抑制できる。また、ダメージの及ぶ範
囲をレーザービームプロファイルの中心部分の、より狭
い範囲に限定できる。特に、熱が蓄熱されやすいn=4
以上の長マークほど、実質の記録エネルギー照射の割合
(Σαi)/nを減少させる効果が大きい。従って、熱
ダメージを受けやすい5m/s以下の低線速でも、媒体
への悪影響を軽減することができる。
【0117】本発明では、このように繰返しオーバーラ
イト耐久性を改善でき、従来に比して1桁以上大きいオ
ーバーライト回数を達成できる。さらに、記録層を、G
x(SbyTe1-y1-x合金を主成分とする薄膜(0.
045≦x≦0.075、0.74≦y<0.8)と
し、線速度に応じて記録パルス分割方法を可変とするこ
とで、3m/s〜8m/sを含む広範囲の線速度でオー
バーライト可能となる。すなわち、図8のパルス分割方
法において、m=n−kのkは一定とし、オーバーライ
ト時の線速度が低いほど、Pb/Pe又はαiのいずれ
かを単調に減少させる。なお、記録線密度を一定に保つ
ために線速度に応じてクロック周期を変更することや、
Pw、Peをそれぞれの線速度で最適に保つように変更
することは、必要に応じて行ってよい。
【0118】さて、本発明ではさらに、DVDの標準再
生線速度の1倍速と2倍速の両方で、最短マーク長を
0.35〜0.45μmとするいわゆるEFMプラス変
調信号を記録する方法を提供する。なお、DVDの標準
再生線速度は3.49m/sである。すなわち、波長が
600〜680nmの光を、開口数NAが0.55〜
0.65の対物レンズを通し、基板を介して記録層に集
光させ、最短マーク長を0.35〜0.45μmの範囲
として、データの記録再生を行う光記録方法であって、
nは1〜14の整数とし、m=n−1とし、Pbは0≦
Pb≦1.5(mW)の範囲で線速によらず一定とし、
Pe/Pwは0.4〜0.6の範囲で線速度に応じて変
化しうるものとし、(i)記録線速度3〜4m/sの範
囲においては、基準クロック周期をToとし、α1
0.3〜0.8、α1≧αi=0.2〜0.4であってi
によらず一定(2≦i≦m)、α2+β1≧1.0、αi
+βi-1 =1.0(3≦i≦m)、βm=0.3〜1.
5とし、αiT(1≦i≦m)の時間内においては記録
パワーPw1の記録光を照射し、(ii)記録線速度6
〜8m/sの範囲においては、基準クロック周期をTo
/2とし、α’1=0.3〜0.8、α’1≧α’i
0.3〜0.5であってiによらず一定(2≦i≦
m)、α’i+β’i-1=1.0(3≦i≦m)、β’m
=0〜1.0とし、αiT(1≦i≦m)の時間内に
おいては記録パワーPw2の記録光を照射するとしたと
き、α’i>αi(2≦i≦m)であり、0.8≦Pw1
/Pw2≦1.2である光記録方法である。本発明者ら
の実験によれば、図10のパルス分割方法を用いる限り
では、この設定で特に良好なジッタが得られた。
【0119】ここで、さらにα2+β1=1.0とすれ
ば、パルス幅に関する独立パラメータはα1、αi、βm
の3個となり、記録信号源をより簡略化でき好ましい。
なお、nとして1から14までのすべての整数をとる必
要はなく、EFMプラス変調では、3から11まで、及
び14をとる。(1,7)RLL−NRZI(Run Leng
th Limited-Non Return To Zero Inverted)符号等も使
用可能である。なお、記録密度を一定とするために、一
般的に、1倍速記録時のクロック周期は2倍速記録時の
倍になるように設定される。なお、本発明は、上記のよ
うな、一定線速度を維持しながら記録領域全面に記録を
行う方式(constant linear velocity、CLV方式)の
みならず、一定の回転角速度で記録領域全面に記録を行
う方式(constant angular velocity 、CAV方式)に
対しても有効である。あるいは、半径方向を複数のゾー
ンに分割して、同一ゾーン内ではCLV方式でオーバー
ライトを行うZCLV(ZonedCLV)方式に対し
ても有効である。光ディスクの直径は、86mm、90
mm(シングルCDサイズ)、120mm(CDサイ
ズ)、あるいは130mmのように様々あり、記録領域
は半径20〜25mmから最大65mm近くに及ぶ。こ
のとき内外周の線速度差は最大3倍近くなる。
【0120】一般に、高密度のマーク長記録において
は、相変化媒体が良好なオーバーライト特性を示す線速
範囲は、線速比で1.5倍程度の範囲である。線速度が
速ければ、記録層の冷却速度は速くなるので非晶質マー
クは形成されやすいが、結晶化温度以上に保たれる時間
が短くなり、消去が困難になる。一方、線速度が遅くな
れば、消去はされやすいが、記録層の冷却速度は遅くな
るので、再結晶化しやすくなり、良好な非晶質マークが
形成されにくい。この問題を解決するために、内外周で
反射層膜厚を変化させて内周で反射層による放熱効果度
が大きくなるように調節することができる。あるいは、
記録層組成を変化させて、外周で結晶化速度を高め、あ
るいは内周で非晶質形成に必要な臨界冷却速度を低める
ことも提案されている。しかし、そのような分布を与え
たディスクの作成は、容易ではない。
【0121】一方、本発明の媒体と光記録方法の組合せ
によれば、ディスク最外周での線速度、即ち最大線速度
がほぼ10m/s以下であれば、CAV方式やZCLV
方式においても、良好な記録が可能である。本発明を、
上記のように半径により線速度が変化する媒体に利用す
るためには、記録領域を半径により複数のゾーンに分割
し、各ゾーン毎にデータの基準クロック周波数及びパル
ス分割方法を切り替えて用いることが望ましい。
【0122】すなわち、所定の記録領域を有する光学的
情報記録用媒体を角速度一定で回転させて情報を複数の
マーク長により記録する方法であって、記録領域最内周
での線速度が2〜4m/sとなり記録領域最外周での線
速度が6〜10m/sとなるように該媒体を回転させ、
該記録領域は半径によって区切られた複数ゾーンからな
り、各ゾーン内の平均線速度に応じて記録密度がほぼ一
定となるように基準クロック周期Tを変化させる。この
とき、ゾーンによらずパルス分割数mを一定とし、外周
ゾーンから内周ゾーンに向かって、Pb/Pe比及び/
又はαi(iは1≦i≦mの少なくとも一つ)を単調に
減少させる。これによって、低線速度の内周部におい
て、冷却速度不足により非晶質マークの形成が不完全と
なるのを防ぐことができる。なお、α i(iは1≦i≦
mの少なくとも一つ)を単調に減少させる、とは、例え
ばα1、α2、・・・、αmの中でα2のみを減少させるこ
とを指す。より具体的には、図10で示されたパルス分
割方法をベースに、線速に応じたパルス分割方法を用い
ることが、可変パルス分割方法回路を簡略化することが
できて望ましい。その際に、記録領域を半径方向にp個
のゾーンに分割して、各ゾーンごとにクロック周期とパ
ルス分割方法を変化させることが、半径位置に応じて連
続的に変化させるよりも簡便である。
【0123】本発明では、記録領域が半径によってp個
のゾーンに分割され、最内周側を第1ゾーン、最外周側
を第pゾーンとし、第qゾーン(ただし、qは1≦q≦
pの整数)における角速度をωq、平均線速度を<vq
ave、最大線速度を<vqma x 、最小線速度を<vq
min、基準クロック周期をTq、最短マークの時間的長さ
をnminqとすると、<vpave/<v1aveは1.2
〜3の範囲であって、<vqmax/<vqm inは1.5
以下とするのが好ましい。同一ゾーン内では同一クロッ
ク周期と同一パルス分割方法を用いるのであるが、同一
パルス分割方法でカバーできる線速範囲はおおむね1.
5倍が限度である。
【0124】そして、同一ゾーン内では、ωq、Tq、α
i、βi、Pe、Pb、及びPwは一定であり、最短マー
クの物理的長さnminq<vqaveは0.5μm以下で
あり、Tq<vqaveは1≦q≦pなる全てのqに対し
てほぼ一定であり、かつ、m=n−1もしくはm=n−
2、α1=0.3〜1.5、α1≧αi=0.2〜0.8
(2≦i≦m)、αi+βi-1=1.0(3≦i≦m)、
0≦Pb≦1.5(mW)、0.4≦Pe/Pw≦0.
6とする。ここで、m=n−1の場合は、α1=0.3
〜1.5、αi=0.2〜0.5、m=n−2の場合は
α1=0.5〜1.5、αi=0.4〜0.8とすること
が好ましい。
【0125】パルス分割方法は、以下の法則に則って変
化させることが重要である。各ゾーンごとにPb、P
w、Pe/Pw比、αi、β1、βmは可変であり、外周
ゾーンから内周ゾーンに向かって、少なくともαi(i
は2≦i≦mの少なくとも一つ)を単調に減少させる。
各ゾーンごとのαiの変更は0.1T刻みもしくは0.
01T刻みとすることが好ましい。ここで、最外周ゾー
ンでの基準クロック周期Tpに対して、1/100程度
の周期の高周波ベースクロック発生回路を付加すること
で、すべてのゾーンにおけるTq及び分割パルス長をこ
のベースクロックの倍数として発生させることが可能で
ある。DVDでは1倍速での基準クロック周波数は26
MHz程度であるから、最高2.6GHz程度のベース
クロック周波数、通常は一桁少なくて260MHz程度
のベースクロック周波数で十分である。
【0126】さらに、該記録領域におけるPwの最大値
をPwmax、最小値をPwminとするとき、Pwmax/P
min≦1.2とし、Pe=Pw=0.4〜0.6、0
≦Pb≦1.5(mW)とすることができる。これによ
れば、3種類のパワーの設定範囲を限定できるので、パ
ワー発生回路を簡便化できる。本発明では、さらに、P
w、Pe/Pw比、Pbを一定として、パルス分割方法
のみを変更することで、すべての線速に対応することも
可能である。また、β mもゾーンによらず一定とし、α1
とαmのみをゾーン依存パラメータとすることもでき
る。これは、ドライブの記録パルス制御回路を簡略化す
る上で極めて有用である。
【0127】本発明においては、記録時に光学ヘッドの
半径位置情報から、記録媒体上に仮想的にゾーンを設定
して記録を行っても良いし、ディスクにあらかじめ記載
されたアドレス情報やゾーン情報にしたがって、ディス
ク上に物理的にゾーン構造を設けてもよい。仮想的であ
っても物理的であっても、ゾーンによって決まる線速度
に応じた記録パルス分割方法を選定すればよい。次に、
本発明の光記録方法を、ZCAV方式に適用した他の例
について述べる。記録領域が半径によってp個のゾーン
に分割され、最内周側を第1ゾーン、最外周側を第pゾ
ーンとし、第qゾーン(ただし、qは1≦q≦pの整
数)における角速度をωq、平均線速度を<vqave
最大線速度を<vqmax、最小線速度を<vqmin、基
準クロック周期をTq、最短マークの時間的長さをnmin
qとする。ZCAV方式においては、記録線密度がほ
ぼ一定であるように、外周部のゾーンに移行するほど、
記録データの基準クロックTqを小さくすることが必要
である。すなわち、Tq<vqaveが1≦q≦pなる全
てのqに対してほぼ一定となるように、ゾーンに応じて
qを変化させる。ここで、ほぼ一定とは、±1%程度
の誤差を含むものとする。また、同一ゾーン内の最大線
速と最小線速を一定の範囲内にするために、
【0128】
【数8】 (<vqmax−<vqmin)/(<vqmax+<vqmin)<10% (2)
【0129】を満たすようにゾーンの幅を決める。すな
わち、(<vqmax−<vqmin )が(<vqmax
<vqmin)の10%未満となるようにし、第qゾーン
の幅は、平均半径<rqaveの±10%未満の半径位置
までが許容されるものとする。より好ましくは、(<v
qmax−<vqmin)が(<vqmax+<vqmin)の
5%未満である。ゾーンの幅は、記録領域を半径毎に等
分割してもよいが、この条件を満たす限り等分割でなく
てもよい。記録領域幅にもよるが、30〜40mm幅の
記録領域については、概ね10個以上に分割される。
【0130】本発明者らの検討によれば、最短マーク長
0.4μm程度でも、(2)式を満たせば、ジッタの値
は実用レベルであった。以上2つの条件は、記録線密度
を一定とし、ひいてはマークの物理的長さ、或いはチャ
ネルビット長を一定するための条件である。なお、チャ
ネルビット長とは、トラックに沿った1チャネルビット
あたりの長さである。DVDとの再生互換性を、より確
実に得るためには、基準再生速度vを約3.5m/s、
基準クロック周期Tを約38.2nsecとしたとき、
チャネルビット長vTの変動をほぼ±1%未満とするの
が好ましい。ZCAV媒体においてこの条件を満たすた
めには、下記(3)式
【0131】
【数9】 (<vqmax−<vqmin)/(<vqmax+<vqmin)<1% (3)
【0132】を満たさねばならない。すなわち、(<v
qmax−<vqmin)が(<vqmax+<vqmin)の
1%未満となるようにし、第qゾーンの幅は、平均半径
<rqaveの±1%未満の半径位置までが許容されるも
のとする。このため、記録領域を200個以上のゾーン
に分割する。かつ、
【0133】
【数10】 Tq<vqave=vT (4)
【0134】であり、Tq <vqaveが1≦q≦pな
る全てのqに対してほぼ一定となるようにする。ここ
で、ほぼ一定とは、±1%程度の誤差を含むものとす
る。これにより、ZCAV方式ながら擬似的に、半径に
よらない等密度記録ができるため、CLV方式でも再生
が可能となり、CLV方式のDVDプレーヤーとの互換
性が高まる。必要に応じて、ゾーン幅はより狭くしても
よい。
【0135】さて、以上のような条件のもとで、DVD
と同等の記録密度を得る光記録方法について説明する。
波長が600〜680nmの光を、開口数NAが0.5
5〜0.65の対物レンズを通し、基板を介して記録層
に集光させ、データの記録再生を行うにあたり、上記記
録領域の最内周が半径20〜25mmの範囲にあり、最
外周が半径55〜60mmの範囲にあり、最内周側ゾー
ンの平均線速度が3〜4m/sであり、第qゾーン(た
だし、qは1≦q≦pの整数)における角速度をωq
平均線速度を<vqave、最大線速度を<vqmax、最
小線速度を<vqmin、基準クロック周期をTq、最短
マークの時間的長さをnminqとすると、nは1〜14
の整数であり、m=n−1であり、ωq 、Pb及びP
e/Pwはゾーンによらず一定であり、Tq<vqave
は1≦q≦pなる全てのqに対してほぼ一定であり、か
つ、
【0136】
【数11】(<vqmax−<vqmin)/(<vqmax
+<vqmin )<10%
【0137】を満たし、(i)第1ゾーンにおいては、
α1 1=0.3〜0.8、α1 1≧α1 i=0.2〜0.4で
あってiによらず一定(2≦i≦m)、α1 2+β1 1
1.0、α1 i+β1 i-1=1.0(3≦i≦m)とし、
(ii)第pゾーンにおいては、αp 1 =0.3〜0.
8、αp 1 ≧αp i =0.3〜0.5であってiによら
ず一定(2≦i≦m)、αp i+βp i-1=1.0(2≦i
≦m)としたとき、(iii)他のゾーンにおいては、
α1 i≦αq i≦αp i(2≦i≦m)とし、αq 1は、α1 1
αp 1との間の値として記録を行う。
【0138】上記記録領域の最内周が半径20〜25m
mの範囲にあり、最外周が半径55〜60mmの範囲に
ある場合、記録領域の半径幅は約30〜40mmとな
る。そして、ディスクを最内周の第1ゾーンにおいて<
1ave=3〜4m/sとなるように等角速度で回転さ
せる。第1ゾーン、第pゾーンについては上記条件によ
り記録を行い、他のゾーン(2≦q≦p−1なる第qゾ
ーン)についてはα1 i≦αq i≦αp i(2≦i≦m)と
し、αq 1は、α1 1とαp 1との間の値とする。この場合、
αq 1の値は0.1Tもしくは0.01T刻みで設定する
ことが望ましい。好ましくは、α1 1≧αq 1≧αp 1 ただ
し、α1 1>αp 1)とする。
【0139】さらに、Pb、Pe/Pw、β1、βmはゾ
ーンによらず一定であり、α1、αiのみをゾーンにより
変化させれば、線速3〜8m/sをすべてカバーする広
い線速範囲で良好なオーバーライト特性を得ることがで
きる。好ましくは、これらPe/Pw、Pb、Pw、β
m、(α1 1、αp 1)、(α1 c、αp c)の数値が、あらか
じめ基板上に、プリピット列或いは溝変形により記載し
ておくことで、各記録媒体ごと、そして各ゾーンごとに
ドライブが最適のパルス分割方法及びパワーを選択する
ことができてよい。これらは、通常、記録領域の最内周
端もしくは最外周端に隣接した位置に記録される。バイ
アスパワーPbを再生パワーPrと同じにするのであれ
ば、バイアスパワーPbはあえて記載しなくても良い場
合もある。溝変形とは、具体的には溝蛇行(ウォブル)
などである。
【0140】或いは、プリピット列もしくは溝変形によ
り、アドレス情報をあらかじめ基板上に記録した光学的
情報記録用媒体に、該アドレス情報とともに、該アドレ
スにおいて適当なα1及びαiに関する情報を含ませても
よい。これにより、アクセスする際にアドレス情報とと
もに該パルス分割方法情報も読み出し、パルス分割方法
を切り替えることができ、特別な補正をすることなく、
該記録媒体及び該アドレスの属するゾーンに適したパル
ス分割方法を選択することができる。
【0141】上記のような、ゾーンごとに記録パルス分
割方式を変更しながら、ディスク全周にわたって記録を
行う方式は、ZCLV方式(Zoned CLV)でも
適用可能である。以下に具体例を説明する。記録領域を
半径方向に複数のゾーンに分割し、各ゾーン内において
は、線速度一定で記録を行うものとし、最内周ゾーンに
おける記録線速度vinと最外周ゾーンにおける記録線速
度vou tの比vout/vinが1.2〜2であり、αi
0.3〜0.6(2≦i≦m)及びβm=0〜1.5と
し、線速度によらずm、αi+βi-1(3≦i≦m)、α
1T、Pe/Pw、及びPbを一定とし、線速度に応じ
てαi(2≦i≦m)及び/又はβmを変化させることに
より記録を行う。ZCLV方式は、記録領域を半径方向
の複数のゾーンに分割することはZCAV方式と同様で
あるが、同一ゾーン内ではCLVモード、即ち線速度一
定でディスクを回転させながら記録を行う。
【0142】このため、本発明記録方法をZCLV方式
に適用する場合、最内周ゾーンと最外周ゾーンとの線速
度をそれぞれVin、Voutとするとき、VinとVoutの差
を小さくし、例えばVout/Vinを1.2〜2とするこ
とで、媒体への線速度依存性の負担を軽減する。本発明
媒体は、記録パルス分割方法をわずかに変更するのみ
で、線速3〜8m/sの広範囲で記録可能であるから、
比較的少ないゾーン数に分割するZCLV方式が適用で
きる。この際、ゾーンによらず等記録密度とするために
は、各ゾーンでの線速度Vqと各ゾーンにおける記録デ
ータの基準クロック周期Tqは、Tq <vqaveをqに
よらずほぼ一定とする。
【0143】そして、各ゾーンにおいて、最適化された
記録パルス分割方法を用いる。すなわち、αi=0.3
〜0.5(2≦i≦m)及びβm=0〜1.5とし、線
速度によらずm、αi+βi-1(3≦i≦m)、α1T、
Pe/Pw、及びPbを一定とし、線速度に応じてαi
及び/又はβmを変化させることにより記録を行う。以
上述べた、CLV方式、ZCAV方式、或いはZCLV
方式において、オーバーライト時の線速度に応じて記録
パルス分割法を可変とする例は、主としてβ mを線速に
よらず一定として、パルス発生回路を簡便化するもので
あったが、逆に、βmを積極的に変化させることで、パ
ルス発生回路の簡易化を図ることもまた可能である。
【0144】すなわち、結晶部を未記録・消去状態とし
非晶質部を記録状態とし、最短マーク長0.5μm以下
の複数の記録マーク長により情報を記録するにあたり、
記録マーク間には、非晶質を結晶化しうる消去パワーP
eの記録光を照射し、一つの記録マークの時間的な長さ
をnTとしたとき(Tは基準クロック周期、nは2以上
の整数)、記録マークの時間的長さnTを、
【0145】
【数12】η1T、α1T、β1T、α2T、β2 、・・
・、αiT、βiT、・・・、αmT、βmT、η2
【0146】(ただし、mはパルス分割数でm=n−
k、kは0≦k≦2なる整数とする。また、Σi(αi
βi)+η1+η2=nとし、η1はη1≧0なる実数、η2
はη 2≧0なる実数、0≦η1+η2≦2.0とする。αi
(1≦i≦m)はαi>0なる実数とし、βi(1≦i≦
m)はβi>0なる実数とする。α1=0.1〜1.5、
β1=0.5〜1.0、βm=0〜1.5とし、2≦i≦
mなるiにおいてαiは0.1〜0.8の範囲にあり、
かつ、iによらず一定とする。なお、3≦i≦mなるi
においてαi+βi-1は0.5〜1.5の範囲にあり、か
つ、iによらず一定とする。)の順に分割し、αi
(1≦i≦m)の時間内においては記録層を溶融させる
にたるPw>Peなる記録パワーPwの記録光を照射
し、βiT(1≦i≦m)の時間内においては、0<P
b≦0.2Pe(ただし、βmTにおいては、0<Pb
≦Peとなりうる)なるバイアスパワーPbの記録光を
照射し、線速度によらずm、αi+βi-1(3≦i≦
m)、α1T、及びαiT(2≦i≦m)を一定とし、線
速度が小さいほどβmが単調に増加するように変化させ
る光記録方法である。
【0147】まず、記録密度を一定に保つために、上述
のZCAV方式もしくはZCLV方式を適用し、基準ク
ロック周期Tは線速度に反比例させて変化させる。そし
て、少なくとも3≦i≦m、好ましくは2≦i≦mにお
いてαi+βi-1を、線速及びiによらず一定とすること
により、パルス発生回路を簡略化でき、かつ、αiを低
線速ほど単調に減少させて記録層の冷却速度を増加させ
ることができる。通常、αi+βi-1=1.0とする。こ
のようなパルス分割方法を実現するためには、図11の
ゲート発生のタイミングの説明図において、基準クロッ
ク周期Tに同期させて(一定の遅延を付加することはあ
りうる)、幅α1Tの固定長パルス一個(Gate1)
と、後続する幅αiT(αcT)の固定長パルスを複数個
(Gate2)発生させる一方、最終オフパルス長βm
Tを決めるGate3のみ線速に応じて変化させれば良
い。
【0148】ここで、各記録線速度での最大記録パワー
をPwmax、最小記録パワーをPwm inとするとき、Pw
max/Pwmin≦1.2、Pe/Pw=0.4〜0.6、
0≦Pb≦1.5(mW)とするのが好ましい。また、
前述のように、少なくともオーバーライト時の線速度が
5m/s以下の場合において、繰返しオーバーライト時
の熱ダメージを防ぐために、m=n−1においてはΣα
i<0.4nとし、m=n−2においてはΣαi<0.5
nとするのが好ましい。
【0149】さらに、オーバーライト時の最高線速度に
おけるβmをβH m、最低線速度におけるβmをβL mとし
て、各オーバーライト時の線速度におけるβmをβL m
βH mの間の値とし、記録線速度によらずPb、Pe/P
w比が一定であるような記録方法が適用できる。この場
合、少なくともPe/Pw比、Pb、Pw、α1T、αi
T、(βL m、β H m)の数値が、あらかじめ媒体の基板上
に、プリピット列或いは溝変形により記録されていれ
ば、やはり最適なパルス分割方法が自動的に選択でき、
好ましい。
【0150】さらにまた、最大線速度が最小線速度の倍
程度までであれば、十分に実用的な信号品質を維持しつ
つ、記録線速度によらずβmが一定であるような光記録
方法も可能である。CLV方式の再生専用DVDドライ
ブには、マークを再生して得られる基準クロック周期を
もとに、データクロックと回転同期信号を発生させて、
回転制御を行う方式がある。
【0151】上述のようにして、最短マーク長、或いは
チャネルビット長が記録半径によらずほぼ一定となるよ
うに、ZCAV方式でマークが記録された媒体は、本方
式の再生専用DVDドライブで、そのまま再生すること
が可能である。すなわち、記録されたマークから生成さ
れるデータの基準クロック周期Tq’が、該ドライブの
基準データクロックTrとほぼ一致するようにPLL
(Phase Lock Loop )方式により回転同期制御すること
が可能であるから、多少の線速のゆらぎやチャネルビッ
ト長のゆらぎがあっても、再生回路でそのままデコード
できるのである。
【0152】特に、全てのゾーンで最短マーク長が0.
4μmでほぼ一定になるように記録されたEFMプラス
変調データは、記録されたマークから生成される回転同
期信号から、PLL制御によるCLV回転同期が達成さ
れる。同時に、周波数が25〜27MHzの範囲にある
基準データクロックTrが発生され、このクロックに基
づいて、ゾーン間の遷移を意識することなく、CLV記
録媒体として再生することができる。もちろん、基準デ
ータクロックがTr/2となるように回転同期が達成さ
れれば、2倍速による再生が可能となる。このようなP
LL方式による回転同期信号の発生回路等は、既に公知
のDVDプレーヤーやDVD−ROMドライブでの方式
をそのまま使用できる。
【0153】さて、本発明媒体は、反射率以外の全ての
信号特性においてDVDとの再生互換性を確保すること
ができる。このためには溝内記録が望ましく、また、溝
のプッシュプル信号が小さいのが好ましい。溝のプッシ
ュプル信号が大きいと、再生時に使用するDPD法での
トラッキングサーボ信号が小さくなるからである。従っ
て溝深さを、プッシュプル信号が最大となるλ/(8
n)より浅くする必要がある。なお、λは空気中での再
生光波長、nは基板の屈折率である。しかし、記録時に
は通常、トラッキングサーボにプッシュプル信号を利用
するので、小さすぎても好ましくない。
【0154】また、再生信号特性については、高いCN
比を得るためには変調度Modが0.5以上であるのが
好ましい。ただし、Modは(DC再生信号のエンベロ
ープの振幅)/(DC再生信号のエンベロープの上端
値)とする。好ましい溝深さはd=λ/(20n)〜λ
/(10n)である。λ/(20n)より浅すぎては、
記録時のプッシュプル信号が小さくなりすぎてトラッキ
ングサーボがかからず、λ/(10n)より深くては再
生時のトラッキングサーボが安定しない。例えば、記録
再生波長が630〜670nm程度、対物レンズの開口
数NAが0.6〜0.65では、溝深さは25〜40n
mの範囲であることが望ましい。
【0155】また、DVDと同程度の容量を確保するに
は、溝のピッチを0.6〜0.8μmとする。また、溝
ピッチを0.74μmとすると、DVDとの互換性がと
りやすい。溝幅は0.25〜0.5μmであることが望
ましい。0.25μmより狭いとプッシュプル信号が小
さくなりすぎてしまう。0.5μmより広いと溝間の幅
が狭くなり基板の射出成形時に樹脂が入り込みにくく、
溝形状の基板への正確な転写が困難になる。本発明媒体
は、記録後に反射率が低下する。このような媒体におい
て、溝内の反射率のほうを低くするためには、つまり、
記録後の溝内の平均反射率をRGa、記録後の溝間の平
均反射率をRLaとして、RGa<RLaとするために
は、溝幅が溝間幅より狭いことが望ましい。
【0156】例えばDVDと互換性をとるために、溝ピ
ッチを0.74μmとすると、溝幅はその半分である
0.37μmより狭いことが好ましい。一方、記録前の
溝内の平均反射率をRGb、記録前の溝間の平均反射率
をRLbとするとき、上記RGa<RLaさえ満足すれ
ばRGb>RLbであってもよい場合には、溝幅を0.
4〜0.5μmとすることで、溝内に記録される非晶質
マークの幅を広げ、変調度を高めたり、ジッタを低減で
きることがある。さて、これら溝には、未記録の特定ト
ラックにアクセスするために、また、基板を一定線速度
で回転させる同期信号を得るために、周期的な変形を設
けることがある。一般的には、トラック横断方向に蛇行
したウォブル(wobble)が形成されることが多
い。すなわち、溝が一定周波数fwoで蛇行していれ
ば、その周波数を検出することで、PLL方式により回
転同期用の信号が取り出せる。溝蛇行の振幅は、40〜
80nm(peak−to−peak値)であることが
望ましい。40nm未満では振幅が小さすぎてSN比が
悪くなるし、80nmを超えると、図6に示す記録信号
のエンベロープの上下端がウォブル信号に由来する低周
波成分を多く含み、再生信号の歪みが大きくなってしま
う。ウォブルの周波数が、記録データの帯域に近い場合
には、その振幅は80nm以下であることが望ましい。
【0157】さらに、該蛇行周波数fwoを搬送波とし
て、特定のアドレス情報に従って、周波数変調もしくは
位相変調された蛇行を形成すれば、これを再生すること
でアドレス情報を取得できる。蛇行周波数fwoを一定と
して溝蛇行を形成すれば、fwoから生成された溝蛇行信
号の基準周期Twもしくはその倍数又は約数から、デー
タ用の基準クロック信号Tを発生させることもできる。
通常、ウォブルの周期は、データの周波数成分より十分
に低周波又は高周波に設定し、データ信号成分との混合
を防止し、帯域フィルタ等で容易に分別できるように設
定される。特に、fwoがデータの基準クロック周期より
1〜2桁程度低くすることは記録可能CD等でも実用化
されている。CLV方式に用いる媒体においては、PL
L回転同期が達成されたのち、fwoを1〜2桁程度、倍
してデータ基準クロックを生成する。このような方法で
生成されたデータ基準クロックは、一般的に、回転同期
のゆらぎの影響(fwoの0.1〜1%程度)から、デー
タ基準クロック(周波数)と同じオーダーの揺らぎを伴
いやすい。これは、データの検出のためのウィンドーマ
ージンを悪化させる。
【0158】そこで、溝蛇行信号とは別に、データ基準
クロックのゆらぎを補正するために、一定データ長毎
に、プリピットや振幅の大きい特殊なウォブルを挿入す
ることも有効である。一方、fwoがデータ基準クロック
周波数(1/T)もしくはその100分1から100倍
の範囲であれば、回転同期達成後、とりだされたウォブ
ル信号をもとに、そのままデータ基準クロックを発生し
ても十分な精度が確保できる。すなわち、
【0159】
【数13】 100/T ≧ fwo≧ 1/(100T) (5)
【0160】とする。また、既に述べたZCAV法にお
いては、基準クロック周期Tqは、各ゾーンの溝蛇行の
基準周期Twqの倍数もしくは約数として発生せしめる
のが好ましい。すなわち、周波数fwoをゾーンごとに変
更しながら、一定角速度で溝蛇行を形成することで、f
woとして生成される基準クロックもしくはその逓倍数周
波数を、データ用の基準クロックTqとして発生させる
ことができる。この際に、溝のウォブルを、(5)式を
満たすような比較的高周波とすると、各ゾーンごとのデ
ータ基準クロックの生成が容易になる。そして、ゾーン
ごとに基準クロックTqを変化させ、可変パルス分割方
法をこの信号に同期させて発生させることができ、分割
された各パルスの位置精度やゆらぎが低減でき、好まし
い。ZCAV方式のゾーン分割の一例として、溝の一周
を1ゾーンとすることが考えられる。このとき溝が、ゾ
ーンによらず周期が一定のウォブルを有し、溝ピッチを
TP、蛇行周期をTwoとすると、近似的に
【0161】
【数14】2π・TP=a・Tw0・v0 (ただし、aは自然数)
【0162】なる関係を満たすようにすると、周期Tw
0が一定のウォブルが、全記録領域にわたって形成さ
れ、トラック一周だけ外周になるごとに、a個のウォブ
ルが増加することになる。そして、Tw0が、基準クロ
ック周期Tの整数倍となっていること、すなわちTw0
=mT(mは自然数)となっていることは、Tw0から
基準クロックを発生させる場合に、単純に整数分の1と
すればよいので、基準クロック発生回路を簡略化でき望
ましい。この場合、mは近似的に自然数でなくてもよ
く、±5%程度のずれは許容できる。
【0163】すなわち、TP=0.74μmに対して、
0=3.5m/s、T=38.23nsec、n=1
とすると、m≒34.7となり、近似的にウォブル周期
Tw 0=35Tとすれば、一周ごとに含まれるウォブル
の数が1個ずつ増えていく。この場合には、CLV方式
で、ウォブルが導入されているにもかかわらず、隣接ト
ラックのウォブルの位相が常にそろっているために干渉
(ビート)によるウォブル信号の再生振幅の変動が小さ
いという利点がある。
【0164】以上、本発明の適用例について述べたが、
本発明は相変化媒体一般のマーク長記録における線速度
依存性及び記録パワー依存性を改善するのに有効であ
り、書換え型DVDに限定されるものではない。例え
ば、波長350〜500nmの青色レーザー光とNA=
0.6以上の光学系を用いた、最短マーク長が0.3μ
m以下のマーク長変調記録を行う場合にも、本発明媒体
及び記録方法は有効である。最短マーク長は、マークの
安定性を考慮すれば10nm程度以上が好ましい。その
場合、トラック横断方向の温度分布を平坦化することに
留意する必要があり、第2保護層の膜厚を5〜15nm
と極めて薄くすることが有効である。波長350〜45
0nmのレーザー光を用いる場合は、10nm以下とす
るのがより好ましい。
【0165】さらに、本発明媒体は、溝と溝間の両方を
トラックとして記録を行う、いわゆるランド&グルーブ
記録に適用してもよい。ランドとグルーブで同等の記録
特性を満たさなければならない困難さはあるものの、溝
幅が広いままトラックピッチを狭めやすく、高密度記録
に適している。溝幅GWと溝間幅LWをともに0.2〜
0.4μmとすることで、高密度でありながら安定した
トラッキングサーボ性能が得られる。また、GW/LW
比が0.8以上1.2以下であれば、溝及び溝間双方の
信号品質を同等に保てる。クロストークを低減するため
には、溝深さd=λ/(7n)〜λ/(5n)又はλ/
(3.5n)〜λ/(2.5n)とすることが望まし
い。
【0166】
【実施例】以下に実施例を示すが、本発明はその要旨を
越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例では、基板は射出成形で作成した。基板は
厚さ0.6mmの射出成形されたポリカーボネート樹脂
基板とし、特に断らない限り、溝ピッチ0.74μm、
幅0.34μm、深さ30nmの溝をスパイラル上に形
成したものを用いた。特に断らない限り、溝は線速3.
5m/sにおいて、周波数140kHzのウォブルを有
し、ウォブルの振幅は約60nm(peak−to−p
eak値)とした。
【0167】なお、溝形状は、U溝近似の光学回折法を
用いて測定した。走査型電子顕微鏡や走査型プローブ顕
微鏡で溝形状を実測しても良い。この場合、溝深さの半
分の位置における溝幅を用いる。特に断らない限り、該
基板上に、図5(a)に示すような4層構成を成膜後、
その上に紫外線硬化樹脂からなる保護層をスピンコート
によって設け、もう1枚同じ層構成を有する0.6mm
厚基板と貼り合わせた。また、以下の実施例及び比較例
においては、図5(a)における第1保護層を下部保護
層、第2保護層を上部保護層と呼ぶこととする。
【0168】成膜直後の記録層は非晶質であり、長軸約
90μm、短軸約1.3μmに集光した波長810〜8
30nmのレーザー光ビームにより線速3.0から6.
0m/sの範囲内で適当な線速度を選んで、初期化パワ
ー500〜700mWの光を照射して全面を溶融して再
結晶化させ初期(未記録)状態とした。各層組成は蛍光
X線分析、原子吸光分析、X線励起光電子分光法等を組
み合わせて確認した。記録層、保護層の膜密度は基板上
に数百nm程度に厚く成膜した時の、重量変化から求め
た。膜厚は蛍光X線強度を触針計で測定した膜厚で校正
して用いた。反射層の面積抵抗率は4探針法抵抗計{L
oresta FP、(商品名)三菱油化(現ダイアイ
ンスツルメント)社製}で測定した。抵抗測定は、絶縁
物であるガラスもしくはポリカーボネート樹脂基板上に
成膜した反射層、あるいは、図5の4層構成(紫外線硬
化樹脂保護コート前)成膜後、最上層となる反射層で測
定した。上部保護層が誘電体薄膜で絶縁物であるため、
4層構成であっても、反射層の面積抵抗率測定に影響は
ない。また、実質的に無限大の面積とみなせる、直径1
20mmのディスク基板形状のまま測定した。得られた
抵抗値Rを元に、以下の式で、面積抵抗率ρs及び体積
抵抗率ρvを計算した。
【0169】
【数15】ρs=F・R (6) ρv=ρs・t (7)
【0170】ここで、tは膜厚、Fは測定する薄膜領域
の形状で決まる補正係数であり、4.3〜4.5の値を
とる。ここでは、4.4とした。特に断らない限り、記
録再生評価にはパルステック製DDU1000評価機を
用いた。光ヘッドの波長は637nm、対物レンズの開
口数NAは0.6もしくは0.63である。ビーム径は
それぞれ約0.90μm及び約0.87μmである。な
お、ビーム径は、ガウシアンビームでエネルギー強度が
ピーク強度の1/e2 以上となる領域に相当する。
【0171】記録は図10に示したパルス分割方法で、
特に断らない限りm=n−1とし、αi+βi-1=1.0
(2≦i≦m)とした。Pbはすべての線速度において
再生パワーと同じ1.0mWで一定とした。Pe/Pw
は特に断らない限り、0.5で一定とした。Pbを、
0.8〜1.0mWの間で一定とし、Pwを変化させて
変調度及びジッタを測定した。記録する信号は、DVD
で用いられている8−16変調(EFMプラス変調)さ
れたランダム信号とした、特に断らない限り最短マーク
長は0.4μmとした。また、特に断らない場合は、単
一トラックのみ記録した状態で測定をおこなったので、
クロストークの影響は入っていない。記録は、DVDの
標準線速度3.5m/sを1倍速として、1倍速、2倍
速など様々な線速で行った。
【0172】再生は常に線速3.5m/sで行い、ジッ
タはイコライザー通過後の再生信号を2値化した後に測
定した。なお、ジッタはエッジ・トゥ・クロックジッタ
(edge-to clock jitter)を指し、測定値は基準クロッ
ク周期Tに対する%で表示した。イコライザーの特性は
再生専用DVD規格に準拠した。基準クロック周期T=
38.2nsec.(26.16MHz)に対して概ね
10%未満(より好ましくは8%未満)のジッタと、5
0%以上の変調度、好ましくは60%以上の変調度が得
られることが好ましい。さらにまた、繰返しオーバーラ
イト後のジッタ増加が少なく、少なくとも100回後、
好ましくは1000回後でも、Tに対して13%未満を
維持できることが望ましい。なお、再生専用DVDとの
互換性確保の立場からは650〜660nmでの再生光
での測定が重要であるが、本発明において波長は、単に
集束光ビーム形状にわずかに影響するだけであり、再生
光学系を調整すれば、本発明で使用したような637n
m光学系と同様のジッタが660nm光学系でも得られ
ることが確認されている。
【0173】(実施例1及び比較例1)記録層として、
本発明に係るInGeSbTe系と従来公知のInAg
SbTe四元系とを比較するために、AgとGeの組成
以外はほぼ厳密に記録層組成及び層構成をそろえた媒体
を表−1のように用意した。両記録層は、AgとGeを
置き換えた以外、組成はほとんど測定誤差の範囲内で十
分同等とみなせる範囲である。下部保護層の膜厚が異な
っているのは、媒体の反射率Rtopが同じとなるよう
に調整したためである。記録層の屈折率が微妙に違うせ
いで、このような補正が必要なのであるが、記録層への
光の吸収効率を同じにして、再生光による熱ダメージの
影響を同じにして比較するためには必要な補正である。
記録層膜厚及び上部保護層膜厚が同じであるから、放熱
効果及び熱ダメージについては同等とみなせる。基板は
0.6mm厚のポリカーボネート樹脂で、溝ピッチ0.
74μm、溝幅0.34μm、溝深さ27nm、ウォブ
ル周波数140kHz(線速度3.5m/s)、ウォブ
ル振幅60nm(peak−to−peak値)の溝が
形成されており、該溝内に記録を行った。
【0174】
【表1】
【0175】この2種類の媒体に対して、記録線速度
3.5m/s、T=38.2ナノ秒において、EFMプ
ラス変調で記録を行ったところ、良好なオーバーライト
記録特性を示した。オーバーライト記録条件は、それぞ
れのディスクの特性が必ずしもベストとなる条件ではな
く、両方の特性が表−1に示すようにほぼ同等となるよ
うな共通の条件で行った。すなわち、図10(a)に示
すパルス分割方法において、m=n−1、αi+βi-1
1.0(2≦i≦m)、αi=αc=一定(2≦i≦m)
とし、α1=0.5、αc=0.3、βm=0.5とし、
Pw=13.5mW、Pe=6.5mW、Pb=0.8
mWとした。このように記録された信号に、再生光を繰
返し照射し、再生光安定性を調べた。所定の再生光パワ
ーPrで所定回数照射したのち、再生光パワーを0.5
mWと十分低くしてジッタ等の測定を行った。結果を図
12に示す。実施例1の媒体は、再生光パワー1mWで
は106 回まで全く再生光による劣化を示さなかっ
た。0.1mWずつパワーを上げると徐々に劣化が早く
なる程度である。
【0176】一方、比較例1の媒体は、再生光パワー1
mW以上のすべての再生光において、最初の100〜1
000回までの間に急激にジッタが増加したのち徐々に
悪化する。全体としてジッタ値が高いが、初期のジッタ
悪化が致命的である。比較例1においてはまた、再生光
により変調度が低下し、100回程度の照射で10%程
度低下して落ち着いた。初期はジッタが急増するため、
変調度の低下は不均一に進行していると考えられる。実
施例1及び比較例1の記録済媒体を、80℃/80%R
Hの環境下に放置して、加速試験を行ったところ、25
0時間後には実施例1のディスクの特性は、ほとんど全
く変化していないのに対して、比較例1のディスクの記
録信号は、ほぼ完全に消えていた。比較例1の組成の記
録層材料では非晶質マークが極めて不安定なことがわか
る。
【0177】このように実施例1のディスクにおいて
は、初期のオーバーライト記録特性とともに、耐再生光
安定性、経時安定性に優れている。これは、Sb0.7
0.3に過剰のSbを含む合金系において、Geの適量
の添加が非常に効果的であることを示している。実施例
1の媒体について、80℃/80%RHの環境下で加速
試験を行った。2000時間まで加速試験を実施した。
加速試験前に記録した信号のジッタの悪化は1%程度に
過ぎなかった。また、変調度は初期が64%であった
が、2000時間加速試験後も61%と、ほとんど変化
しなかった。反射率もほとんど全く変化していなかっ
た。2000時間後に未記録部に新たに記録を行った場
合のジッタの悪化は3%程度であったが、実用上全く支
障の無いレベルである。また、実施例1の媒体におい
て、ジッタの記録パルス分割方法依存性を、m=n−1
及びm=n−2の場合について詳細に検討した。
【0178】図13は、線速3.5m/sにおいてそれ
ぞれ(a)m=n−1、(b)m=n−2で記録した場
合のジッタの、α1、αc依存性を示す等高線図である。
また、図14は、線速7.0m/sにおいてそれぞれ
(a)m=n−1、(b)m=n−2で記録した場合の
ジッタの、α1、αc依存性を示す等高線図である。各図
の測定に用いたPw,Pe,Pb及びβmは各図の上に
示している。線速3.5m/sにおいては、m=n−
1,m=n−2いずれの場合にも、α 1=0.7〜0.
8、αc=0.35〜0.40の近傍において、最も低
いジッタ(概ね7%以下)が得られているのがわかる。
線速7.0m/sにおいては、m=n−1,m=n−2
いずれの場合にも、α 1=0.5付近、αc=0.40付
近において、最も低いジッタが得られているのがわか
る。最小のジッタが得られる近傍のα1、αcに対して
は、いずれの場合もΣαi<0.5nなる条件を満た
す。なお、本実施例では、線速3.5m/s、7.0m
/sいずれの場合にも、m=n−2とすることで、より
低いジッタ値が得られており、また、m=n−1の場合
に比べて、大きいα1に対しても低ジッタが得られてい
る。
【0179】さらに、上記実施例1の媒体を、NA=
0.63の評価機を用いて、表−2のように、記録パル
ス分割方法を変えて、ジッタの線速依存性を評価した。
なお、基準クロック周期Tは線速に反比例させている。
パルス分割方法は、m=n−1、αi+βi-1=1.0
(2≦i≦m)、αi=αc=一定(2≦i≦m)として
いる。Pw、Pb、Peは線速によらず一定とした。こ
こで、表−2のパルス分割方法では、全線速度におい
て、Σαi<0.5nが満たされている。DVDの標準
線速の1倍速から2.5倍速程度まで良好なオーバーラ
イト特性が得られた。本媒体は、記録領域を3〜4ゾー
ンに分割して、ゾーン毎にわずかに記録パルスストラジ
ーを変更することで、CAV方式であっても、記録領域
全域において良好なオーバーライト特性を示す。
【0180】
【表2】
【0181】また、波長660nm、NA=0.65の
評価機を用いて記録再生を行っても、同様の結果が得ら
れた。
【0182】(実施例2)基板上に、下部保護層(Zn
S)80(SiO220、記録層Ge0.05Sb0.73Te
0.22、上部保護層(ZnS)80(SiO220、反射層
Al0.995Ta0.005を、各層の膜厚を様々に変えて設け
た。各層の膜厚を表−3に示す。すべての薄膜はスパッ
タ法で真空を解除せずに作成した。反射層の成膜は到達
真空度2×10-4Pa以下、Ar圧0.54Pa、成膜
レート1.3nm/秒で行った。その体積抵抗率は55
nΩ・m、面積抵抗率は0.28Ω/□であった。酸
素、窒素等の不純物はX線励起光電子分光での検出感度
以下で、全部併せてもほぼ1原子%未満であると見なせ
る。(ZnS)80(SiO220保護層の膜密度は3.
50g/cm3で、理論的バルク密度3.72g/cm3
の94%であった。また、記録層密度はバルク密度の9
0%であった。熱シミュレーションから見積もった保護
層の熱伝導率は3.5×10-4pJ/(μm・K・ns
ec)であった。
【0183】このようにして作成した媒体に、1倍速及
び2倍速それぞれにおいて、図10(a)に示すパルス
分割方法を、各媒体の層構成ごとに最適化して用い、記
録(オーバーライト)を行った。そののち、初回、10
回、1000回オーバーライト後のジッタを測定した。
測定には、記録再生ともに、波長637nm、NA=
0.63の光学系を用いた。表−3に、各媒体の1倍速
での最適パルス分割方法、ジッタ、Rtop、変調度を
まとめた。
【0184】
【表3】
【0185】いずれも、1倍速で、最短マーク長0.4
μmのマーク長変調記録が行えており、大きな初期変調
度が得られている。上部保護層膜厚を20nmとする
と、初期ジッタ、1000回オーバーライト後のジッ
タ、ともに10%未満であった。上部保護層膜厚を30
nmとすると、初期のジッタは良好であるが、繰返しオ
ーバーライトによるジッタ増加が若干多く、1000回
オーバーライト後は、ジッタが10〜12%となった。
上部保護層膜厚を40nmとすると、初期ジッタが13
%以上となり、また、繰返しオーバーライトで急激に悪
化して20%以上となった。さらに、記録層膜厚を30
nmと厚くした実施例2(h2)は、初回記録ジッタが
13%以上あり、繰返しオーバーライトによるジッタの
悪化が著しかった。下部保護層膜厚を45nmとした実
施例2(i2)は、繰返しオーバーライト耐久性が悪か
った。また、反射層の厚みが250nmのほうが200
nmよりも、いっそう良好なジッタが得られた。すなわ
ち、このような高密度のマーク長記録においては、「超
急冷構造」とするのが好ましいことがわかる。
【0186】次に、実施例2(g1)の媒体の、ジッタ
の記録パワーPw依存性を評価した。パルス分割方法
は、図10においてm=n−1とし、Pw=14mW、
Pe/Pw=0.5、βm=0.5として、1倍速及び
2倍速で記録した。そののち、α1及びαc=αi(2≦
i≦m)に対するジッタの依存性を評価した。2倍速で
はα1=0.5、αc=0.4、βm=βn-1=0.5、P
w=14mWとし、1倍速ではα1=0.7、αc=0.
3、βm=βn-1=0.5、Pw=14mWとした。この
とき、2倍速では、Σαi=0.3n(n=3)、0.
33n(n=4)、0.34n(n=5)、0.38n
以下(n=6〜14)であった。1倍速では、Σαi
0.33n(n=3)、0.33n(n=4)、0.3
2n(n=5)、0.32n未満(n=6〜14)であ
った。図15にその結果を示す。初回及び10回オーバ
ーライト後のジッタの記録パワーPw依存性、並びに、
10回オーバーライト後の、反射率Rtop及び変調度
Modの記録パワーPw依存性、を示した。(a)は2
倍速記録、(b)は1倍速記録の場合である。なお、R
topは、図6でのItopに相当する。また、図中、
DOW(Direct Overwrite)とはオーバーライトのこと
を指す。次に、オーバーライト耐久性を評価した。図1
6にその結果を示す。ジッタ、反射率及び変調度につい
て、それぞれオーバーライト1000回後までの値を示
した。(a)は2倍速記録、(b)は1倍速記録の場合
である。いずれの場合も、ジッタは、10回程度までは
漸増するが10回以降は安定化し、ジッタ、変調度、反
射率ともに1000回までほとんど劣化しなかった。
【0187】さらに、本媒体を、線速9m/sで、基準
クロック周期を14.9nsecとした以外は上記2倍
速(線速7m/s)と同じパルス分割方法で、Pw=1
4mWとしてオーバーライトを行った。消去比は30d
B以上の十分な値が得られた。また、ジッタも11%未
満と良好であった。実施例2(g1)の媒体について
は、線速3〜8m/sの範囲において、Pw=14m
W、Pb=1mW、Pe/Pw=0.5、βm=0.5
で一定で、α1とαcのみを変化させることで良好なジッ
タが得られた。すなわち、線速3〜5m/sにかけて
は、α1=0.7、αc=0.35、線速5〜7m/sに
かけては、α1=0.65、αc=0.4、線速7〜8m
/sにかけてはα1=0.55、αc=0.45、という
ように少なくとも3段階に変化させれば、概ね9%未満
の良好なジッタが得られた。より細かく、1m/s刻み
で、α1とαcを変化させれば、各線速度においてより良
好なジッタが得られると考えられる。なお、Pw=11
〜14mWにおいて、Pe/Pwが0.4〜0.5で最
良のジッタが得られた。また、Pbが1.5mWを越え
るとジッタが急激に悪化した。ここで、Pe/Pw=
0.5としてPb依存性を調べたところ、Pbが1.0
mW未満なら、ほぼ最良のジッタが得られた。すなわ
ち、Pb/Peは0.2未満が好ましい。
【0188】次に、上部保護層膜厚が20nmの実施例
2(g1)と、40nmの実施例2(d2)を比較す
る。両媒体に対して、記録マーク長依存性を、1倍速に
おいて下記のように測定した。NA=0.6の光学系を
用い、EFMプラス変調において最短マークである3T
マークの長さを、0.5μmから短縮していったとき
の、ジッタのマーク長依存性を評価した。記録線速は
3.5m/sで一定であり、パルス分割方法も上記のも
ので一定とし、基準クロック周期を変化させてマーク長
を変化させた。ただし、最短マーク長が0.46μm以
上の場合は、装置上の制約から、再生速度3.5m/s
ではCLV制御が困難になるため、再生速度を5m/s
とした。なお、最短マーク長0.4μmが、再生専用D
VD規格に対応する。図17にその結果を示す。(a)
は実施例2(g1)の媒体、(b)は実施例2(d2)
の媒体である。
【0189】実施例2(g1)の媒体は、最短マーク長
0.38μm程度まで、ジッタが13%未満で使用可能
であることがわかる。なお、NA=0.63の光学系を
用いると、約2%程度のジッタ低減が可能であった。ま
た、再生時のイコライザーを最適化するとやはり2%程
度のジッタ低減が可能であった。これに加えてNA=
0.65の光学系を使用すれば、0.35μmでも十分
良好なジッタが得られると考えられる。実施例2(d
2)の媒体は、マーク長0.45μm以上では概ね問題
のないジッタが得られているが、0.45μm未満で急
激にジッタが増加し、マーク長0.40μmではジッタ
13%以上となり使用不可能となった。次に、いわゆる
チルトマージンを評価するため、実施例2(g1)の媒
体に、EFMプラス変調されたランダムパターン信号を
複数トラックにわたって記録後、基板を再生レーザー光
の光軸に対して意図的に傾けて、再生時のジッタの変化
を測定した。記録再生の光学系はNA=0.6、記録線
速は1倍速又は2倍速、いずれも10回オーバーライト
後の再生である。図18に測定結果を示した。チルトマ
ージンは、ラジアル方向で±0.7〜0.8度、円周方
向で±0.5〜0.6度であり、通常のドライブにおい
て問題のないレベルであった。
【0190】<加速試験>実施例2(g1)の媒体の一
部のトラックに、Pw=13mWとして、上記最適パル
ス分割方法を用い、EFMプラス変調されたランダムパ
ターンを記録し、ジッタを測定した。そののち、本媒体
を、80℃/80%RHの高温高湿下で加速試験を行っ
た。加速試験500時間後及び1000時間後に、本ト
ラックのジッタを再度測定したところ、1000時間後
に1%程度悪化したのみであった。また、加速試験10
00時間後に、他のトラックに、上記と同一条件でラン
ダムパターンを記録しジッタを測定したところ、2%程
度の悪化が見られたが、この程度であれば実用上問題は
ない。また、1倍速及び2倍速で同様に記録を行い、8
0℃/80%RHの高温高湿下で1000時間の加速試
験前後での変調度を評価した。1倍速では、初期変調度
が61%、加速試験後変調度が58%であった。2倍速
では、初期変調度が60%、加速試験後変調度が58%
であった。 <対再生光安定性>実施例2(g1)の媒体に対し、再
生光を、パワーを1.2mWまで上げて照射したが、1
0分程度では全く劣化しなかった。次にパワーを1.0
mWとして、再生光を100万回まで繰返し照射した
が、ジッタの増加は2%未満であった。
【0191】(実施例3)記録層組成をGe0.05Sb
0.71Te0.24とした以外は実施例2と同様の層構成とし
て、媒体を作成した。各層の膜厚及び評価結果をを表−
4に示す。測定には、NA=0.63の光学系を使用し
た。表−3と同様に、それぞれの層構成でα1、αc、β
n-1を最適化し、かつ、Pw、Peもジッタが最低とな
るよう設定してジッタを評価した。いずれも、1倍速
で、最短マーク長0.4μmのマーク長変調記録が行え
ており、大きな初期変調度が得られている。実施例3
(a)については実施例2(a1)と同様、記録線速が
1倍速と2倍速では良好な特性が得られたが、9m/s
では実施例2(a1)より1〜2%ジッタが高めであっ
た。また、上保護層膜厚が30nmである実施例3
(a)〜(f)では、ジッタ10%未満が得られ、10
0回オーバーライト後も13%未満であった。上保護層
膜厚が40nmと厚い実施例3(g)〜(i)では、ジ
ッタは13%より大きい値しか得られなかった。
【0192】
【表4】
【0193】(実施例4)層構成は、下部保護層(Zn
S)80(SiO220を膜厚215nm、記録層Ge
0.05Sb0.69Te0.26を18nm、上部保護層(Zn
S)80(SiO220を18nm、反射層Al0.995
0.005 を200nmとした。本記録層組成は、線速
3〜5m/sでの記録で良好な特性が得られるもので、
いわゆる1倍速用である。しかし、過剰Sb量が実施例
2、3よりわずかに少ないため、経時安定性に優れてお
り、記録された情報の保存安定性や繰返し再生による劣
化、すなわち再生光耐久性を重視するには好ましい。以
下はNA=0.6の光学系で評価した。最適パルス分割
方法の決定は以下のように行った。記録線速3.5m/
sにおいて、Pw=13mW、Pe/Pw=0.5と
し、図10においてβm=0.5で一定としてα1、αc
を変化させて最小のジッタが得られるパルス分割方法を
選んだ。図19に、10回オーバーライト後のジッタの
α1及びαc依存性を、ジッターの等高線図として示す。
α1=0.4〜0.8、αc=0.3〜0.35とするこ
とでほぼ最良のジッタが得られたので、それを基本と
し、α1=0.6、αc=0.35を選択した。このと
き、Σαi=0.32n(n=3)、0.33n(n=
4)、0.3n(n=5)、0.35n未満(n=6〜
14)であった。変調度は65%と、再生専用DVDに
比べても遜色ない値であった。Rtopは23%程度で
あるが、実際上15%以上であれば、既存の再生専用ド
ライブでも再生が可能であると考えられる。そこで、本
発明記録媒体にPw=12.5mW、線速3.5m/s
にて画像データを記録し、市販の再生専用DVDプレー
ヤーで再生を試みたところ、フォーカスサーボ、トラッ
キングサーボ信号、ジッタは通常の再生専用DVDと同
等の特性が得られた。
【0194】<繰返しオーバーライト耐久性>図20
に、Pw=12.5mWにおける、ジッタ、Rtop、
変調度の繰返しオーバーライト回数依存性を示した。1
000回以上のオーバーライト後も、十分に安定な特性
を示している。
【0195】<加速試験>本媒体の一部のトラックに、
Pw=13mWとして、上記最適パルス分割方法を用
い、EFMプラス変調されたランダムパターンを記録
し、ジッタを測定した。そののち、本媒体を、80℃/
80%RHの高温高湿下で加速試験を行った。加速試験
500時間後及び1000時間後に、本トラックのジッ
タを再度測定したところ、1000時間後に0.5%未
満悪化したのみであった。また、変調度は初期が65%
であり、加速試験後は63%であった。また、加速試験
1000時間後に、他のトラックに、上記と同一条件で
ランダムパターンを記録しジッタを測定したところ、1
%程度の悪化が見られたが、この程度であれば実用上問
題はない。
【0196】<対再生光安定性>本媒体に対し、再生光
を、パワーを1.3mWまで上げて照射したが、10分
程度では全く劣化しなかった。次にパワーを1.0mW
として、再生光を100万回まで繰返し照射したが、ジ
ッタの増加は1%未満であった。
【0197】(実施例5)実施例2(a1)の層構成に
おいて記録層をGe0.05Sb0.75Te0.20とした。評価
はNA=0.6の光学系で行った。α1=0.4、αc
0.3、βm=0.5、Pw=14mW、Pe/Pw=
0.5において最良のジッタが得られた。初期変調度も
十分に大きかった。10回オーバーライト後のジッタは
10%をぎりぎりきり、1000回後も13%未満が維
持された。
【0198】<加速試験>本媒体の一部のトラックに、
Pw=14mWとして、上記最適パルス分割方法を用
い、EFMプラス変調されたランダムパターンを記録
し、ジッタを測定した。そののち、本媒体を、80℃/
80%RHの高温高湿下で加速試験を行った。加速試験
500時間後に、本トラックのジッタを再度測定したと
ころ、2%程度悪化したのみであった。また、加速試験
500時間後に、他のトラックに、上記と同一条件でラ
ンダムパターンを記録しジッタを測定したところ、3%
程度の悪化が見られたが、この程度であれば実用上問題
はない。
【0199】<対再生光安定性>本媒体に対し、再生光
を、パワーを1.0mWまで上げて照射したが、10分
程度では全く劣化しなかった。次にパワーを1.0mW
として、再生光を100万回まで繰返し照射したが、ジ
ッタの増加は3%未満であり、13%未満が維持され
た。
【0200】(実施例6)実施例4の層構成において、
記録層をAg0.05Ge0.05Sb0.67Te0.23とした。N
A=0.6の光学系で評価した。線速度3.5m/sに
おいて、ジッタのパルス分割方法依存性(α1及びαc
をPw=13mW、Pe/Pw=0.5、m=n−1、
βm=0.5で測定したところ、図21(a)に示す等
高線図のようになった。α1=0.6、αc=0.35が
ほぼ最適であった。この場合、Σαi=0.32n(n
=3)、0.33n(n=4)、0.33n(n=
5)、0.35n未満(n=6〜14)であった。
【0201】図21(b)に、初回、10回、1000
回オーバーライト後のジッタのパワー依存性を、図21
(c)に、10回オーバーライト後のRtop及び変調
度のパワー依存性を示した。1000回オーバーライト
後まで広い記録パワーの範囲において、良好なジッタが
維持され、また、Rtop18%、変調度60%以上が
達成できた。図22には、Pw=13mWにおけるジッ
タ、Rtop、変調度の10000回オーバーライト後
の変化まで示した。ジッタが1%程度初期に増加する他
は、全く劣化がなかった。また、実施例1と同様の方法
で、ジッタの最短マーク長依存性を測定した結果を図2
3に示す。最短マーク長0.38μmでジッタは10%
未満と極めて良好であった。なお、本媒体に対して、m
=n−2としたパルス分割方法についても評価を行った
ところ、α1=1.0、αc=0.5、βm=0.5にお
いて図21と同様な特性が得られた。n=3でΣαi
0.48n、n=4でΣαi=0.48n、n≧5でΣ
αi=0.46n〜0.47nであった。
【0202】(比較例2)実施例6の層構成において、
記録層をAg0.05In0.05Sb0.63Te0.27とした。線
速度3.5m/sにおいて、Pw=13mW、Pe/P
w=0.5、βm=0.5として、ジッタのパルス分割
方法依存性を評価したところ、図24(a)に示す等高
線図が得られた。α1=1.0、αc=0.5が最適で
あり、この場合、Σαiはnによらず0.5nで一定で
あった。記録パワー依存性及び1000回後までの繰返
しオーバーライト特性を図24(b),(c)に示し
た。初回記録のジッタ及びパワーマージンは実施例5よ
り良好であったが、繰返しオーバーライトにより劣化
し、1000回後にはむしろ、より悪めのジッタとなっ
た。さらに再生光パワーを1mWまであげたところ、5
分程度でジッタが悪化し、十数%まで増加した。この差
は0.5〜1mWの記録感度差では説明がつかない。再
生光劣化の主原因は50〜100℃程度に温度が上昇す
るためであり、本発明のGe添加が非晶質マークの熱安
定性改善に効果的であることがわかる。
【0203】(比較例3)層構成を、(ZnS)80(S
iO220下部保護層を膜厚90nm、Ge2Sb 2Te5
記録層を21nm、(ZnS)80(SiO220上部保
護層を23nm、Al0.995Ta0.005反射層を200n
mとした。記録に際しては、図10(a)に示すパルス
分割方法を基本とし、各マーク長、線速において最良の
ジッタが得られるように微調整を行った。この媒体に対
しては、図25に示すように、α1=αc=α0=0.3
〜0.4で一定で、βm=1.0としたストラテジーで
概ね最良のジッタが得られた。また、Pw=13mW、
Pe/Pw=0.4(Pe=5mW)、Pb=2.0m
Wが最適記録パワーであり、Pb/Pe=0.4と高め
になっているが、これは、本比較例の記録層では図9に
おけるTLをある程度高めに維持する必要があるためで
ある。Pbが1mW未満でもジッタは悪いが、Pbが3
mW以上でもやはりジッタは悪化した。このパルス分割
方法をベースとし、さらに、マーク長に応じてα0に対
して0.02程度の精密なパルス幅調整まで行い、実施
例2と同様に、マーク長依存性を測定した。結果を図2
6(a)に示す。また、オーバーライト時の線速依存性
を測定した。結果を図26(b)に示す。線速依存性
は、線速に応じて基準クロック周期を変更し、最短マー
ク長が0.4μmになるようにし、再生は常に3.5m
/sで行った。また、線速依存性については、10回オ
ーバーライト後のジッタと、その後DC消去した後に1
回オーバーライト記録を行った場合のジッタとを載せ
た。図26(a)に示すとおり、最短マーク長0.4μ
mでジッタ10%であり、より短くなると急激にジッタ
が悪化した。また、図26(b)に示すとおり、記録線
速5m/s以上でジッタが悪化している。しかし、一旦
DC消去した後の記録ではジッタが2〜3%以上低下し
ている。このことから、いわゆる結晶状態と非晶質状態
の吸収率差による温度上昇の不均一により、消去不良も
しくは非晶質マークの形状の歪みが生じ、ジッタが悪化
していると考えられる。
【0204】なお、線速7m/sでオーバーライト後の
ジッタは20%以上であったが、DC消去後の記録では
15%程度になった。従って、高線速時におけるジッタ
が高くなるのは、適切なパルス分割方法が選択されてい
なかったからではないと考えられる。本記録層は、もと
もと、粗大グレインがあるためジッタが高いが、それに
加えて、線速5m/s以上では、オーバーライト時に以
前のマークの消去が不十分になり、DC消去後記録との
ジッタとの差として、その影響が明確に現れる。なお、
前述の実施例2(g1)の媒体に7m/sでオーバーラ
イトした場合と、DC消去後記録した場合の、ジッタの
差は0.5%未満であった。Ge2Sb2Te5のような
GeTe−Sb2Te3擬似二元合金記録層を用いた記録
媒体の場合、保護層/記録層/保護層/反射層からなる
4層構成では、5〜6m/s以上の高線速では、上記の
ようにDC消去後記録は問題ないがオーバーライト時に
はジッタが悪化する。このため、ジッタ低減のために、
さらに光吸収層などを追加して吸収率補正をするなどの
対応が必要である。
【0205】(比較例4)実施例2(g1)において記
録層をGe0.15Sb0.64Te0.21とした。初期結晶化が
非常に困難で、複数回初期化ビームを照射してようやく
初期化し、オーバーライトしてジッタを測定したが、パ
ルス分割方法を図10の範囲内でどのように変更しても
13%以下のジッタは得られなかった。また、繰返しオ
ーバーライトしていくと、10回から100回までの間
でジッタが数%増加した。
【0206】(比較例5)実施例2(g1)の層構成に
おいて、記録層をGe0.05Sb0.80Te0.15とした。7
m/sにおいてα1=0.4、αc=0.3、βm=0.
5、Pw=14mW,Pe/Pw=0.5でほぼ最良の
ジッタが得られたが、ジッタは10回オーバーライト後
で11%をぎりぎりきる程度であり、1000回後には
13%以上となってしまった。
【0207】<加速試験>本媒体の一部のトラックに、
Pw=14mWとして、上記最適パルス分割方法を用
い、EFMプラス変調されたランダムパターンを記録
し、ジッタを測定した。そののち、本媒体を、80℃/
80%RHの高温高湿下で加速試験を行った。加速試験
500時間後に、本トラックのジッタを再度測定したと
ころ、3%程度悪化し、13%以上となった。また、加
速試験500時間後に、他のトラックに、上記と同一条
件でランダムパターンを記録しジッタを測定したとこ
ろ、5%程度の悪化が見られ、劣化が早かった。
【0208】<対再生光安定性>本媒体に対し、再生光
を、パワーを1.0mWまで上げて照射したところ、1
0分後にジッタが3%増加し、非常に不安定であった。
また、変調度が低下しマークが消える傾向があった。
【0209】(実施例7)実施例2(a1)の媒体に対
して、1倍速(線速度3.5m/s、基準クロック周期
T=38.2nsec)から2.25倍速(7.9m/
s、T=17nsec)において、α1T=τ1=19n
sec、αcT=τc=11nsecですべての線速にお
いて一定とし、Tのみを線速に反比例させてEFMプラ
ス信号を記録した。また、αi+βi-1=1.0で一定と
なるβiを決定した。なお、最終のオフパルス区間βm
みを、線速が遅いほど長くなるよう変化させた。このよ
うなパルス分割方法では、図11のゲート発生のタイミ
ングの説明図において、基準クロック周期Tに同期させ
て(一定の遅延を付加することはありうる)、τ1=1
9nsecの固定長パルス一個(Gate1)とτc
11nsecの固定長パルスをn−2個(Gate2)
発生させれば良く、さらに最終オフパルス長を決めるG
ate3のみ線速に応じて変化させれば良く、パルス発
生回路を簡略化でき好ましい。さらに本実施例において
は、記録パワーPw=13.5mW、Pe=5mW、P
b=0.5mWで一定としているため、パルス発生回路
は極めて簡便化できる。ここで、線速が5m/s以下で
は、Σαi<0.47nが満足されているため、熱ダメ
ージは十分抑制されている。表−5に、各線速において
βmを変化させた場合の、ジッタの値をまとめた。表中
vは基準速度3.5m/sを表す。ピックアップの波長
は637nm、NA=0.63である。ジッタの値自体
は実施例2のように、パルス分割方法をより柔軟に可変
とした場合にくらべ、若干悪い値となるが、ほぼ10%
未満の値が、1倍速から2.25倍速まで得られてい
る。ここで、2倍速でβH m=0.3、1倍速でβL m
0.6(四角で囲まれた点)として、βmを線速に反比
例させて変化させれば、1倍速から2倍速の各線速で1
0%未満のジッタが得られることがわかる。さらに、本
実施例においては、β mのマージンは少ないもののβm
0.2として一定にしても、1倍速から2.25倍速ま
で10%未満のジッタが得られる。このようにして、線
速によって可変できるパルス発生回路を簡易化できる。
また、あらかじめ記録媒体上に、凹凸ピットもしくは変
調された溝蛇行信号により、Pb、Pe/Pw,Pw,
τ0、τc、(βL m ,βH m)を記載すれば最適な記録条
件がオーバーライト時の線速度に応じて自動的に決定で
きる。
【0210】
【表5】
【0211】(実施例8)層構成を、下部保護層(Zn
S)80(SiO220を膜厚215nm、記録層Ge
0.05Sb0.69Te0.26を19nm、上部保護層(Zn
S)80(SiO220を20nm、反射層Al0.995Ta
0.005を200nmとした。線速3.5m/sで、パル
ス分割方法をα1=0.5、αc=0.35、βm=0.
5、Pw=11mW、Pe=6.0mW、Pb=0.5
mWとし、基準クロック周期Tを変化させて最短マーク
長(3Tマーク長)を0.4μmから0.25μmまで
変化させて記録を行った。3Tマークのマーク長が0.
4μmのときのT=38.2nsec、0.2μmのと
きのT=19.1nsecである。記録レーザー波長は
637nm、NA=0.63である。この集束レーザー
光はガウシアン分布を有しているために、中心部の高温
部分だけを利用して、光学的分解能以上に高密度に記録
することが可能である。記録部分を波長432nm、N
A=0.6、パワー0.5mWである青色レーザー光で
再生した。このレーザー光は波長約860nmのレーザ
ー光から非線形光学効果により発生されたものである。
この層構成では、432nmにおいても変調度50%以
上という大きな変調度が得られた。さらに、図28に、
記録に用いた637nm,NA=0.63の光学系で再
生した場合と、432nm、NA=0.6の光学系で再
生した場合のジッタを、最短マーク長依存性として示し
た。測定においてはイコライザーの設定値を各測定点に
おいて可能な限り最適化している。この記録媒体では、
青色レーザー光再生では、最短マーク長0.3μmでも
13%未満の良好なジッタが得られていることがわか
る。
【0212】(比較例6)実施例2(a1)の層構成に
おいて、記録層をGe0.05Sb0.64Te0.31とした。波
長637nm、NA=0.63の光学系で記録評価を行
った。線速3.5m/sにおいて、m=n−1,α1
0.4、αc=0.4、βm=0.4、Pb=0.5m
W,Pe=4.5mWで一定として、Pwのみを変化さ
せて10回目までオーバーライト記録を行った。このと
きのジッタの記録パワー依存性を図27(a)に示す。
図中、1writeとは未記録ディスクの初回記録を、
1DOWとは1回目のオーバーライトを、10DOWと
は10回目のオーバーライトを指す。次に、Pw=8.
5mWで一定として、Peのみを変化させて10回めま
でオーバーライト記録を行った。このときのジッタの消
去パワー依存性を図27(b)に示す。いずれの場合
も、初回記録(1write)では良好なジッタ得られ
るが1回でもオーバーライトするとジッタは急激に悪化
した。本比較例における記録層組成は、図3において直
線AよりTeリッチな組成であり、結晶化速度が遅いた
めに十分な消去比が得られず、よって十分なオーバーラ
イト特性が得られなかったと考えられる。
【0213】(実施例9及び比較例7)実施例2(a
1)の層構成において、表−6に示すように記録層組成
を変化させた。Ge0.05Sb0.73Te0.22ターゲットと
GeとをコスパッタすることによりGe量を変化させた
ものである。波長637nm、NA=0.63の光学系
を用い、m=n−1、Pb=0.5mW、βm=0.5
として、α1、αc、Pw,Peを変化させて10回オー
バーライト後のジッタが最小となる条件を探した。各記
録層組成で得られた最小ジッタは表−6のようであっ
た。Ge添加量が増えるにつれジッタが増加し、Geが
10原子%以上だと、2倍速でのジッタが14%と非常
に高くなってしまった。なお、本媒体を80℃80%R
Hの条件下、加速試験を行ったところ、実施例9(a)
に比べて実施例9(b)、(c)が若干、良好であっ
た。すなわち、加速試験2000時間後に、加速試験前
に記録した信号を読み出したところ、実施例9(a)〜
(c)のいずれの場合においても、ジッタは1%程度悪
化しているのみであった。また、実施例9(a)〜
(c)の初期変調度は61〜63%であり、2000時
間の加速試験後も58〜59%の変調度が得られた。反
射率もほとんど全く変化していなかった。特に、実施例
9(b)、(c)では0.5%以内の増加であった。
【0214】
【表6】
【0215】次に、Ge0.05Sb0.73Te0.22ターゲッ
トとTaとをコスパッタすることにより、Taを添加し
た。その結果、GeSbTeに対してTaを1〜2原子
%添加したときに、最良のジッタが得られた。
【0216】(実施例10及び比較例8)実施例2(g
1)の層構成において、記録層をInを添加したGeS
bTeとした。InはGeSbTeターゲットにInS
bTeをコスパッタして添加したものである。各記録層
組成は、実施例10(a)がGe0.05Sb0.74
0.21、実施例10(b)がIn0.023Ge0.048Sb
0.719Te0.21、実施例10(c)がIn0.053Ge
0.044Sb0.688Te0.215、比較例8がIn0.118Ge
0.041Sb 0.617Te0.224である。それぞれの媒体のジ
ッタのパワー依存性を評価した結果を図29(a)
(b)(c)(d)に示した。上段は記録線速3.5m
/sの場合、下段は同7.0m/sの場合である。用い
た光学系はいずれも637nm、NA=.63である。
線速3.5m/sの場合はα1=0.6、αc=0.3
5、βm=0.5とし、7.0m/sの場合はα1=0.
4、αc=0.4、βm=0.5とした。Pb=0.5m
Wで一定とした。Peは2通りの値で一定とし、Pwの
み変化させてジッタのPw依存性を測定した。In量が
2〜5原子%程度の添加でPwマージンが大幅に改善さ
れた。しかし、10原子%を越すと、添加しない場合よ
りかえってジッタが悪化した。また、オーバーライト1
000回後のジッタは、実施例10(a)〜(c)で
は、両線速ともに10原子%未満であったが、比較例8
では両線速ともに13%より高くなった。
【0217】<加速試験>実施例10(b)の媒体につ
いて、80℃/80%RHの環境下で加速試験を行っ
た。2000時間まで加速試験を実施した。加速試験前
に記録した信号のジッタの悪化は1%程度に過ぎなかっ
た。また、初期変調度は61%であり、2000時間の
加速試験後も57%の変調度が得られた。反射率もほと
んど全く変化していなかった。2000時間後に未記録
部に新たに記録を行った場合のジッタの悪化は3%程度
であったが、実用上全く支障の無いレベルである。
【0218】(実施例11)実施例2(g1)の層構成
において、記録層をIn0.03Ge0.05Sb0.71Te
0.21としたディスクを、表−7の溝形状を有するポリカ
ーボネート樹脂基板上に成膜した。いずれも溝ピッチは
0.74μmである。
【0219】
【表7】
【0220】ウォブルの変調方式としては、搬送波の周
期Tw が基準データクロック周期T=38.2ナノ秒
の32倍である、2値位相変調とした。ここで位相変調
ウォブルとは、図30に示すように、デジタルデータ信
号の0又は1に対応して、ウォブル波の位相をπだけ、
ずらすものである。すなわち、周波数fc=1/Tw=1
/(32T)の無変調搬送波(余弦波もしくは正弦波)
が、アドレス用のデジタルデータの0から1、あるいは
1から0の切り替えで、ちょうど位相πだけずれる。デ
ジタルデータ0、1の切り替え周期TdはTwより低周波
で、TdはTwの整数分の1になっているので、位相がπ
シフトしても、ウォブル波形は連続的に変化している。
本変調方法の好ましい点は、ATIP(Absolute Time
in Pregroove)に用いられる周波数(FM)変調と異な
り、蛇行周波数が一定であり、かつ周期が32Tという
高周波で変調しているために、ウォブルのクロックを参
照してディスクの回転同期を確立するとともに、ウォブ
ルのクロックに同期して直接データクロックを生成でき
ることである。このようにデジタルデータの変調で位相
を変化させるには、例えば図31にあるような、リング
変調器を用いる。デジタルデータは、0、1に対応して
正負の電圧±Vを印可する。スタンパ原盤作成時に、フ
ォトレジスト露光用のレーザー光を、±Vw の電圧間
で2値位相変調されたウォブル波形に従って半径方向に
蛇行させつつ露光する。このとき、リング変調機出力波
をEO変調器に印可することで、露光用ビームを蛇行さ
せることができる。
【0221】以下、少し詳細に説明する。図の、無変調
搬送波入力端子に周期cos(2πfct)なる信号Vw
・cos(2πfct)が入力されると、入力トランス
の出力にはVw・cos(2πfct)と−Vw・cos
(2πfct)の二つの搬送波信号が現れる。デジタル
データ入力が正(+V)であれば、D1、D1’が導通
し、搬送波Vw・cos(2πfct)はそのままD1
通過し変調は出力端子に現れる。−Vw・cos(2π
ct)の搬送波はD1’を経た後、出力側のトランスに
より反転されてVw・cos(2πfct)となり、D1
通過の出力と加え合わされてVw・cos(2πfct)
の出力を得る。もし、デジタルデータ入力が負(−
V)、すなわちD2、D2’が導通になると、Vw・co
s(2πfct)の信号はダイオードD2を介して出力側
トランスの下側に導かれるので、変調は出力端子では、
これが反転して−Vwcos(2πfct)となる。
【0222】一方、入力側トランスの出力で−Vw・c
os(2πfct)であった搬送波はダイオードD2’を
介して出力側トランスの同相入力に加わるため、そのま
まの極性で(−Vw・cos(2πfct)のまま)変調
波出力端子に現れる。従って、ダイオードD2 並びに
D2 ’の経路を通った搬送波は−Vw・cos(2π
ct)となって合成され、変調は出力端子に現れる。
リング変調器の場合には、デジタルデータ入力が正か負
かによって出力端子にVw・cos(2πfct)か−V
w・cos(2πfct)を出力することになる。このよ
うにして変調されたウォブル波形が、EO変調器に入力
され、露光用ビームを蛇行させることができる。本実施
例ではウォブル振幅はすべて60nm(peak−to
−peak値)とした。溝内にのみ記録を行う媒体の場
合、記録再生光波長λ=637nm、基板の屈折率n=
1.56に対して、溝深さの好ましい範囲は、下限がλ
/(20n)=20.5nm、上限はλ/(10n)=
40.8nmである。本媒体の評価には、波長637n
m、NA=0.63の光学系を用いた。
【0223】実施例2と同じく、m=n−1、αi+β
i-1=1.0(2≦i≦m)、αi=αc=一定(2≦i
≦m)とした記録パルス分割方法で、線速3.5m/s
においては、αi=0.5、αc=0.3、βm=0.
5、Pw=13mW、Pe=6mWとし、線速7m/s
においては、α1=0.4、αc=0.35、βm=0.
5、Pw=14mW、Pe=7mWとした。まず、溝内
に線速3.5m/sにおいて記録を行い、Rtop及び
変調度を測定した。また、3.5m/s及び7m/sで
記録信号のジッタを測定した。結果を表−8に示す。
【0224】
【表8】
【0225】まず、実施例11(k)は、深さ18nm
と非常に浅い溝を有するが、プッシュプル信号がほとん
ど検出できず、トラッキングサーボをかけることができ
なかった。また、このような浅い溝を均一に形成するこ
とは、スタンパ作成上も非常に難しく、実際上、トラッ
キングサーボ信号に非常に大きなむらが観測された。図
32(a)(b)に変調度とRtopの溝形状依存性を
示した。実施例11(h)〜(j)は、深さ42nmの
溝を有するが、深さ27nmの場合に比べて反射率が大
幅に低下し、5%以上低くなって好ましくない。変調度
は、特に溝が細い場合に低下し、幅0.23μmでは、
深さ35nmでも、変調度低下が著しかった。なお、本
実施例は層構成は同じとしたが、もし、深さ42nmの
場合に、反射率低下を補うために、反射率の高い層構成
にすると、変調度低下は一層顕著になる。すなわち、深
さ42nmの溝は、溝内用記録には適さない。溝深さ4
0nm以上では、溝幅が0.3μm未満のときに、ウォ
ブル信号が記録データ信号へ著しく漏れ込む。溝幅が
0.3μm以上のときに比べ、線速3.5m/sではジ
ッタが1〜2%以上悪化し、線速7m/sでは2〜3%
も悪化する。
【0226】(実施例12)層構成を、下部保護層(Z
nS)80(SiO220を膜厚65nm、記録層Ge
0.05Sb0.73Te0.22を16nm、上部保護層(Zn
S)80(SiO220を20nm、第1反射層Al0.995
Ta0.005を膜厚40nm、第2反射層Agを膜厚70
nmとした。下部保護層から第1反射層までは真空を解
除することなくスパッタ法で作成し、第1反射層を成膜
後大気解放し数分放置後、再び真空にてスパッタ法によ
り第2反射層を成膜した。第2反射層成膜後、スピンコ
ート法により紫外線硬化樹脂を、オーバーコート層とし
て4μm積層した。出来たディスクは2枚をオーバーコ
ート層が向かい合うように貼り合わせた。第1反射層の
成膜は到達真空度4×10-4Pa以下、Ar圧0.55
Paで行った。体積抵抗率は55nΩ・mであった。酸
素、窒素等の不純物はX線励起光電子分光での検出感度
以下で、全部併せてもほぼ1原子%未満であると見なせ
た。第2反射層の成膜は到達真空度4×10-4Pa以
下、Ar圧0.35Paで行った。体積抵抗率は32n
Ω・mであった。酸素、窒素等の不純物はX線励起光電
子分光での検出感度以下で、全部併せてもほぼ1原子%
未満であると見なせた。波長637nm、NA0.60
の光学系を使用して、線速3.5m/s、α1=0.
4、αc=0.35、βm=0.5なるパルス分割方法を
用いて10回オーバーライト後のジッタを測定したとこ
ろ、Pw=11mW,Pe=6.0mW,Pb=0.5
mWで最小ジッタ6.5%を得た。この媒体を、80
℃、80%RHの高温高湿下に500時間放置した後、
同様に記録を行ったところ全く劣化がみられなかった。
【0227】(実施例13)溝ピッチ0.74μm、溝
幅0.3μm、溝深さ40nmの、ウォブルを有する螺
旋状の溝を形成したスタンパを作成し、これをもとに、
直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート樹
脂基板を射出成形によって形成した。表−9に示すよう
に、半径22.5mmから58.5mmまでの36mm
を記録領域とし、記録領域を255バンド(ゾーン)に
分割した。各バンドには191トラックが含まれる。各
バンドの終端がちょうど191トラック目になるように
バンド幅を設定しているので、各バンド幅は正確に36
/255とはなっていない。このため、記録領域の最外
終端は58.54mmである。チャネルビット長は0.
133μmとし、線速3.49m/sにおいて基準クロ
ック26.16MHz(T=38.23nsec)が得
られる。ウォブルの周期は各バンドの中心半径において
チャネルビット長の9倍となるように設定した。その物
理的な周期は1.2μmである。各バンドの中心半径に
おけるチャネルビット長総数、及びウォブルの総数をま
ず計算し、同一バンド内では1周あたりに含まれるチャ
ネルビット数、あるいはウォブルの数が一定となるよう
にする。
【0228】表−9に示すように、バンド始終端で、±
1%の精度で、チャネルビット数あるいはウォブルの数
が一定である。すなわち、ZCAV方式でCLV方式と
変わりない線密度一定の記録ができ、再生専用DVDの
規格を十分満足する。以上の前提から、各バンド中心半
径において3.49m/sの線速度が得られるようにデ
ィスクを回転させたときに、ウォブル周期は、ちょうど
DVDデータの基準クロック周期T=38.23nse
cの9倍となる。この媒体を、表−9の最内周バンドの
バンド中心半径において線速度が3.49m/sになる
ように回転させ、ZCAV方式の媒体として使用する。
CAV回転中の各バンドのウォブルから再生される搬送
波の周期を1/9倍して、各バンドにおけるデータ基準
クロックTqを生成させ、該クロックに基づいてEFM
プラス変調されたデータの記録を行う。再生するときに
は、以下のように、記録されたデータから生成されるデ
ータ基準クロック周波数が26.16MHzとなるよう
に回転同期を達成すれば、各ゾーンでのチャネルビット
長のばらつきは±1%未満となり、実質的にCLVモー
ドでの再生を支障なく行うことができる。
【0229】すなわち、上記基準クロック26.16M
Hz(T=38.23nsec)を水晶発振器により発
生させ、この位相と、記録されたデータから生成される
データ基準クロックと位相とを比較し、両者が同期する
よう、通常のPLL(PhaseLocked Loop )制御方式に
より回転速度を微調整する。このようなPLL制御によ
る回転制御は、現在DVD−ROMの再生で行われてお
り、その方式をそのまま適用できる点で有用である。
【0230】
【表9】
【0231】
【表10】
【0232】(実施例14)実施例2(a1)の層構成
において、反射層をAl0.975Ta0.025とした。体積抵
抗率は220nΩ・mであった。膜厚200nmから4
00nmまで変えて複数のサンプルを作成し、表−3の
測定と同様に、それぞれに図10(a)の中で最適なパ
ルス分割方法を用いて、ジッタ測定を行った。膜厚30
0nm前後で12%という最良のジッタを得た。それよ
り反射層を厚くしても、薄くしてもさらに悪いジッタし
か得られなかった。
【0233】(実施例15)実施例11(a)の層構成
において、上部保護層の膜厚を23nmとした。本媒体
に、溝内記録を行った。波長405nm、NA=0.6
5の光学系を用い、ほぼ円形でスポット径が約0.5μ
m(ガウシアンビームの1/e2強度における径)のビ
ームを生成し、0.6mm厚の基板を介して記録再生を
行った。線速度4.86m/sで、最短マーク(3Tマ
ーク)の長さを0.25μmとしたEFMプラス変調信
号を記録した。実施例2と同様の記録パルス分割方法
で、m=n−1、α1=0.5、αc=0.38、βm
0.67とし、Pw=9.5mW,Pb=0.5mW,
Pe=4.0mWにて10回オーバーライトを行ったと
ころ、ジッタは10%であった。青色レーザーでの記録
再生では、実施例7の場合に比べても、より高品質の記
録が可能であることがわかった。また、現行の赤色レー
ザーに合わせて設計された媒体でも、そのまま青色レー
ザーで記録再生して高密度化を図ることができる。
【0234】(実施例16)実施例2(a1)の層構成
において、記録層をGa0.05Ge0.05Sb0.68Te 0.22
とした媒体を用意した。初期化も実施例2(a1)と同
様に行った。測定には、波長637nm、NA=0.6
3の光学系を用いた。最短マーク3Tの長さを0.4μ
mとしたEFMプラス変調信号を、線速度3.5m/s
で行った。実施例2と同様の記録パルスストラテジーで
m=n−1、αi+βi-1=1.0(2≦i≦m)、αi
=αc=一定(2≦i≦m)とし、α1=0.5、αc
0.3、βm=0.5とし、Pw=13.5mW、Pe
=6.0mW、Pb=0.5mWとし、オーバーライト
特性を評価した。初回記録(非オーバーライト)、10
回オーバーライト、100回オーバーライト、1000
回オーバーライトで、それぞれジッタは6.9%、6.
7%、7.0%、7.3%と良好であった。さらに、線
速度7.0m/sで同様に、α1=0.4、αc=0.3
5、βm=0.5とし、Pw=14.0mW、Pe=
7.0mW、Pb=0.5mWとし、オーバーライト特
性を評価した。初回記録(非オーバーライト)、10回
オーバーライト、100回オーバーライト、1000回
オーバーライトで、それぞれジッタは7.4%、7.7
%、8.0%、8.5%と良好であった。変調度はいず
れも55〜60%の値が得られた。本媒体を80℃/8
0%RHの加速試験環境下に1000時間放置したとこ
ろ、試験前に記録を行った。加速試験前に記録した信号
のジッタの悪化は1%未満であった。また、変調度は、
52〜57%の値が得られた。
【0235】(実施例17)実施例2と同様に、0.6
mm厚さのポリカーボネート樹脂基板にピッチ0.74
μmのウォブル溝を形成し、図5(b)のごとく、反射
層、第2保護層、記録層、第1保護層の順に形成した。
反射層Al0.995Ta0.005は膜厚165nm、第2保護
層(ZnS)80SiO 220は膜厚20nm、記録層I
0.03Ge0.05Sb0.70Te0.22を膜厚16nm、第1
保護層(ZnS)80(SiO220を膜厚68nm、そ
れぞれスパッタリング法により成膜した。そののち、第
1保護層に対向して、0.6mm厚さのガラス板を密着
させた。初期化は、ガラス基板を介して、500mW程
度のレーザー光を線速5m/sで照射し、行った。この
ガラス基板を介して、波長637nm、NA=0.6の
光学系を用いてレーザー光を記録層に照射し記録再生を
行った。記録は、レーザー入射側から見て凹凸の遠い側
に行った。実施例2における溝内に相当する。最短マー
ク3Tの長さを0.4μmとしたEFMプラス変調信号
を、線速度3.5m/sで行った。実施例2と同様の記
録パルスストラテジーでm=n−1、αi+βi-1=1.
0(2≦i≦m)、αi=αc=一定(2≦i≦m)と
し、α1=0.9、αc=0.35、βm=0.5とし、
Pw=12.0mW、Pe=6.0mW、Pb=0.5
mWとし、オーバーライト特性を評価した。10回オー
バーライト後で、ジッタは10.5%、変調度は61%
であった。さらに、線速度7.0m/sで同様に、α1
=0.55、αc=0.40、βm=0.5とし、Pw=
13.0mW、Pe=5.5mW、Pb=0.5mWと
し、オーバーライト特性を評価した。10回オーバーラ
イト後で、ジッタは11.2%、変調度は61%であっ
た。
【0236】
【発明の効果】本発明によれば、高速でオーバーライト
することができ、マークエッジのジッタが小さい、高密
度のマーク長変調記録を行うことができ、形成されたマ
ークの経時安定性が非常に良好な光学的情報記録用媒体
が得られる。また、適切な記録層組成と層構成を選ぶこ
とで、再生専用媒体との再生互換性に優れ、且つ、繰返
しオーバーライト耐久性の高い相変化型光記録媒体が得
られる。より具体的には、いわゆるDVDディスクと再
生互換を有し、その標準再生速度3.5m/sから倍速
である7m/sを含む広い線速範囲で、1ビームオーバ
ーライト可能であり、かつ1万回以上オーバーライトし
ても劣化を示さない、書き換え型DVDディスクに使用
可能な光学的情報記録用媒体及び光記録方法が提供でき
る。また、本発明の媒体は線速マージンが広いため、C
AV方式やZCAV方式など、角速度一定で媒体を回転
させ記録を行う場合にも、媒体の内外周の線速差による
記録特性差の問題を克服できる。CAV方式を採用すれ
ば、半径位置ごとにディスク回転速度を変更する必要が
なく、アクセス時間の短縮がはかれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】非晶質マーク形状の例を示す図。
【図2】本発明の一例の媒体に記録を行った場合の反射
率変化を示す図。
【図3】本発明の媒体の記録層の組成範囲を示すGeS
bTe三元状態図。
【図4】従来のGeSbTe組成の範囲を示すGeSb
Te三元状態図。
【図5】本発明の媒体の層構成の一例を示す模式図。
【図6】信号強度と信号振幅、変調度の関係を示すため
の信号波形図。
【図7】反射率の第1保護層膜厚依存性を説明するため
のグラフ。
【図8】パワー3値変調記録方式の、パルス分割方法の
一例を示す図。
【図9】記録層の温度の時間変化を説明するための模式
図。
【図10】マーク長変調記録に適したパワー3値変調記
録方式の、パルス分割方法の一例を示す図。
【図11】図10のパルス分割方法を実現するための、
3種のゲート発生回路のタイミングを説明する概念図。
【図12】実施例1及び比較例1におけるジッターの再
生光パワー依存性を示すグラフ。
【図13】実施例1におけるジッタの記録パルス分割方
法依存性を示すグラフ。
【図14】実施例1におけるジッタの記録パルス分割方
法依存性を示すグラフ。
【図15】実施例2におけるジッター、反射率及び変調
度の記録パワー依存性を示すグラフ。
【図16】実施例2におけるジッター、反射率及び変調
度の、繰返しオーバーライト回数依存性を示すグラフ。
【図17】実施例2(g1)及び実施例2(d2)にお
けるジッターのマーク長依存性を示すグラフ。
【図18】実施例2におけるジッターの基板のチルト角
依存性を示すグラフ。
【図19】実施例4における10回オーバーライト後の
ジッターのα1 及びαc 依存性を示すグラフ。
【図20】実施例4におけるジッター、Rtop及び変
調度の繰返しオーバーライト回数依存性を示すグラフ。
【図21】(a)実施例6におけるジッターのパルス分
割方法依存性、(b)ジッターの書込みパワー依存性、
並びに(c)10回オーバーライト後のRtop及び変
調度の書込みパワー依存性を示すグラフ。
【図22】実施例6におけるジッター、Rtop及び変
調度の繰返しオーバーライト回数依存性を示すグラフ。
【図23】実施例6におけるジッターのマーク長依存性
を示すグラフ。
【図24】(a)比較例2におけるジッターのパルス分
割方法依存性、(b)ジッターの書込みパワー依存性、
並びに(c)10回オーバーライト後のRtop及び変
調度の書込みパワー依存性を示すグラフ。
【図25】比較例3で用いた記録方法のパルス分割方法
を示す図。
【図26】比較例3におけるジッターのマーク長依存性
及び線速依存性を示すグラフ。
【図27】比較例6におけるジッターのPw及びPe依
存性を示すグラフ。
【図28】実施例8におけるジッターの最短マーク長依
存性を示すグラフ。
【図29】実施例10及び比較例8におけるジッターの
Pw依存性を示すグラフ。
【図30】デジタルデータ信号とウォブル波形の関係を
説明する図。
【図31】デジタルデータ信号によりウォブル波形を変
調させる機構を説明する図。
【図32】実施例11における変調度とRtopの溝幅
依存性を示すグラフ。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G11B 7/24 511 B41M 5/26 X (72)発明者 堀江 通和 神奈川県横浜市青葉区鴨志田町1000番地 三菱化学株式会社内 Fターム(参考) 2H111 EA03 EA04 EA12 EA23 EA32 EA40 EA47 FA12 FA14 FB05 FB06 FB07 FB08 FB09 FB12 FB16 FB21 FB23 FB28 FB30 5D029 JA01 JB18 5D090 AA01 BB05 CC01 CC02 DD01 EE01 EE05 FF09 FF21 HH01 KK03 KK06 KK20 5D119 AA23 AA24 AA26 AA31 BA01 BB04 DA02 FA05 HA08 HA25 HA27 HA45 HA47 HA49 HA52 HA60 JB02

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に少なくとも相変化型記録層を有
    し、 該記録層の結晶部を未記録・消去状態とし非晶質部を記
    録状態とし、最短マーク長0.5μm以下の複数の記録
    マーク長により情報を記録するための光学的情報記録用
    媒体であって、 該記録層は、Gey(SbxTe1-x1-y(0.6≦x≦
    0.9、0<y≦0.1)合金を主成分とする薄膜から
    なり、 該記録層は、一定線速度で、記録層を溶融させるに足る
    記録パワーPwの記録光を連続的に照射すると概ね結晶
    化されるほど再凝固時の結晶化速度が速く、該記録パワ
    ーPwを瞬間的に遮断すると非晶質マークが形成される
    ことを特徴とする光学的情報記録用媒体。
  2. 【請求項2】 該記録層が添加元素として、Ga、S
    n、In、Si、Al、Pt、Pb、Cr、Co、T
    a、Nb、Vのうちの少なくとも1種をさらに含み、 該添加元素の添加量の合計が10原子%以下であり、G
    eと該添加元素との添加量の合計が15原子%以下であ
    る請求項1に記載の光学的情報記録用媒体。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の光学的情報記録
    用媒体であって、 最短マーク長0.5μm以下の複数のマーク長により信
    号を記録したときの記録直後に再生した信号の変調度を
    0とし、 記録後、80℃80%RHの条件下で1000時間経過
    ののち再生した信号の変調度をM1とすると、 【数1】M1/M0≧ 0.9 である光学的情報記録用媒体。
  4. 【請求項4】 基板上に、記録再生光の入射方向から
    順に、第1保護層、相変化型記録層、第2保護層、反射
    層、を設けてなり、 該記録層の膜厚が5nm以上25nm以下で、第2保護
    層の膜厚が5nm以上30nm以下である請求項1乃至
    3のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載の光学
    的情報記録用媒体に情報を記録するにあたり、 記録マーク間には、非晶質を結晶化しうる消去パワーP
    eの記録光を照射し、 一つの記録マークの時間的な長さをnTとしたとき(T
    は基準クロック周期、nは2以上の整数)、 記録マークの時間的長さnTを、 【数2】η1T、α1T、β1T、α2T、β2T、・・
    ・、αiT、βiT、・・・、αmT、βmT、η2T (ただし、mはパルス分割数でm=n−k、kは0≦k
    ≦2なる整数とする。また、Σi(αi+βi)+η1+η
    2=nとし、η1はη1≧0なる実数、η2はη 2≧0なる
    実数、0≦η1+η2≦2.0とする。αi(1≦i≦
    m)はαi>0なる実数とし、βi(1≦i≦m)はβi
    >0なる実数とし、Σαi<0.5nとする。α1=0.
    1〜1.5、β1=0.3〜1.0、βm=0〜1.5と
    し、αi=0.1〜0.8(2≦i≦m)とする。な
    お、3≦i≦mなるiにおいてαi+βi-1=0.5〜
    1.5の範囲にあり、かつ、iによらず一定とする。)
    の順に分割し、 αiT(1≦i≦m)の時間内においては記録層を溶融
    させるにたるPw≧Peなる記録パワーPwの記録光を
    照射し、βiT(1≦i≦m)の時間内においては、0
    <Pb≦0.2Pe(ただし、βmTにおいては、0<
    Pb≦Peとなりうる)なるバイアスパワーPbの記録
    光を照射することを特徴とする光学的情報記録用媒体の
    光記録方法。
  6. 【請求項6】 波長が350〜680nmの光を、開口
    数NAが0.55〜0.9の対物レンズを通して記録層
    に集光させ、データの記録再生を行う光記録方法であっ
    て、 m=n−1もしくはm=n−2、 α1=0.3〜1.5、 α1≧αi=0.2〜0.8(2≦i≦m)、 αi+βi-1=1.0(3≦i≦m)、 0≦Pb≦1.5(mW)、 0.3≦Pe/Pw≦0.6 である請求項5に記載の光記録方法。
  7. 【請求項7】 波長が600〜680nmの光を、開口
    数NAが0.55〜0.65の対物レンズを通し、基板
    を介して記録層に集光させ、最短マーク長を0.35〜
    0.45μmの範囲として、データの記録再生を行う光
    記録方法であって、 nは1〜14の整数とし、 m=n−1とし、 Pbは線速によらず一定とし、 Pe/Pwは0.4〜0.6の範囲で線速度に応じて変
    化しうるものとし、(i)記録線速度3〜4m/sの範
    囲においては、基準クロック周期TをToとし、 α1=0.3〜0.8、 α1≧αi=0.2〜0.4であってiによらず一定(2
    ≦i≦m)、 α2+β1≧1.0、 αi+βi-1=1.0(3≦i≦m)、 βm=0.3〜1.5とし、 αiT(1≦i≦m)の時間内においては記録パワーP
    1の記録光を照射し、(ii)記録線速度6〜8m/
    sの範囲においては、基準クロック周期TをTo/2と
    し、 α’1=0.3〜0.8、 α’1≧α’i =0.3〜0.5であってiによらず一
    定(2≦i≦m)、 α’i+β’i-1=1.0(3≦i≦m)、 β’m=0〜1.0とし、 αiT(1≦i≦m)の時間内においては記録パワーP
    2の記録光を照射するとしたとき、 α’i>αi(2≦i≦m)、かつ、0.8≦Pw1/P
    2≦1.2である請求項5又は6に記載の光記録方
    法。
  8. 【請求項8】 所定の記録領域を有する光学的情報記録
    用媒体を角速度一定で回転させて情報を複数のマーク長
    により記録する方法であって、 記録領域最内周での線速度が2〜4m/sとなり記録領
    域最外周での線速度が6〜10m/sとなるように該媒
    体を回転させ、 該記録領域は半径によって区切られた複数ゾーンからな
    り、各ゾーン内の平均線速度に応じて記録密度がほぼ一
    定となるように基準クロック周期Tを変化させる記録方
    法であって、 ゾーンによらずmを一定とし、 外周ゾーンから内周ゾーンに向かって、Pb/Pe及び
    /又はαi(iは1≦i≦mの少なくとも一つ)を単調
    に減少させる請求項5に記載の光記録方法。
  9. 【請求項9】 上記記録領域は半径によってp個のゾー
    ンに分割され、最内周側を第1ゾーン、最外周側を第p
    ゾーンとし、第qゾーン(ただし、qは1≦q≦pの整
    数)における角速度をωq、平均線速度を<vqave
    最大線速度を<vqmax、最小線速度を<vqmin、基
    準クロック周期をTq、最短マークの時間的長さをnmin
    qとすると、 <vpave/<v1aveは1.2〜3の範囲であって、
    <vqmax/<vqm inは1.5以下であり、(i)同
    一ゾーン内では、ωq、Tq、αi、βi、Pe、Pb、及
    びPwは一定であり、最短マークの物理的長さnminq
    <vqaveは0.5μm以下であり、T q<vqave
    1≦q≦pなる全てのqに対してほぼ一定であり、か
    つ、 m=n−1もしくはm=n−2、 α1=0.3〜1.5、 α1≧αi=0.2〜0.8(2≦i≦m)、 αi+βi-1=1.0(3≦i≦m)、 0≦Pb≦1.5(mW)、 0.4≦Pe/Pw≦0.6 であり、(ii)各ゾーンごとにPb、Pw、Pe/P
    w、αi(1≦i≦m)、β1、β mは可変であり、外周
    ゾーンから内周ゾーンに向かって、少なくともαi(i
    は2≦i≦mの少なくとも一つ)を単調に減少させる請
    求項8に記載の光記録方法。
  10. 【請求項10】 該記録領域におけるPwの最大値をP
    max、最小値をPwm inとするとき、Pwmax/Pwmin
    ≦1.2である請求項9に記載の光記録方法。
  11. 【請求項11】 波長が600〜680nmの光を、開
    口数NAが0.55〜0.65の対物レンズを通し、基
    板を介して記録層に集光させ、データの記録再生を行う
    光記録方法であって、 上記記録領域の最内周が半径20〜25mmの範囲にあ
    り、最外周が半径55〜60mmの範囲にあり、最内周
    側ゾーンの平均線速度が3〜4m/sであり、第qゾー
    ン(ただし、qは1≦q≦pの整数)における角速度を
    ωq、平均線速度を<vqave、最大線速度を<vq
    max、最小線速度を<vqmin、基準クロック周期を
    q、最短マークの時間的長さをnminqとすると、 nは1〜14の整数であり、 m=n−1であり、 ωq、Pb及びPe/Pwはゾーンによらず一定であ
    り、 Tq<vqave は1≦q≦pなる全てのqに対してほ
    ぼ一定であり、かつ、 【数3】(<vqmax−<vqmin)/(<vqmax
    <vqmin)<10%を満たし、(i)第1ゾーンにお
    いては、 α1 1=0.3〜0.8、 α1 1≧α1 i =0.2〜0.4であってiによらず一定
    (2≦i≦m)、 α1 2+β1 1≧1.0、 α1 i+β1 i-1=1.0(3≦i≦m)とし、 (ii)第pゾーンにおいては、 αp 1=0.3〜0.8、 αp 1≧αp i=0.3〜0.5であってiによらず一定
    (2≦i≦m)、 αp i+βp i-1=1.0(2≦i≦m)とし、 (iii)他のゾーンにおいては、α1 i≦αq i≦α
    p i(2≦i≦m)とし、αq 1はα1 1とαp 1との間の値と
    する請求項8乃至10のいずれかに記載の光記録方法。
  12. 【請求項12】 α1 1≧αq 1≧αp 1(ただし、α1 1>α
    p 1)である請求項11に記載の光記録方法。
  13. 【請求項13】 Pb、Pe/Pw、β1、βmはゾーン
    によらず一定であり、α1、αi(2≦i≦m)のみをゾ
    ーンにより変化させる請求項11又は12に記載の光記
    録方法。
  14. 【請求項14】 請求項1乃至4のいずれかに記載の光
    学的情報記録用媒体に情報を記録するにあたり、 記録マーク間には、非晶質を結晶化しうる消去パワーP
    eの記録光を照射し、 一つの記録マークの時間的な長さをnTとしたとき(T
    は基準クロック周期、nは2以上の整数)、 記録マークの時間的長さnTを、 【数4】η1T、α1T、β1T、α2T、β2T、・・
    ・、αiT、βiT、・・・、αmT、βm T、η2T (ただし、mはパルス分割数でm=n−k、kは0≦k
    ≦2なる整数とする。また、Σi(αi+βi)+η1+η
    2=nとし、η1はη1≧0なる実数、η2はη 2≧0なる
    実数、0≦η1+η2≦2.0とする。αi(1≦i≦
    m)はαi>0なる実数とし、βi(1≦i≦m)はβi
    >0なる実数とする。α1=0.1〜1.5、β1=0.
    3〜1.0、βm =0〜1.5とし、2≦i≦mなる
    iにおいてαiは0.1〜0.8の範囲にあり、かつ、
    iによらず一定とする。なお、3≦i≦mなるiにおい
    てαi+βi-1は0.5〜1.5の範囲にあり、かつ、i
    によらず一定とする。)の順に分割し、 αiT(1≦i≦m)の時間内においては記録層を溶融
    させるにたるPw≧Peなる記録パワーPwの記録光を
    照射し、βiT(1≦i≦m)の時間内においては、0
    <Pb≦0.2Pe(ただし、βmTにおいては、0<
    Pb≦Peとなりうる)なるバイアスパワーPbの記録
    光を照射し、 線速度によらずm、αi+βi-1(3≦i≦m)、α
    1T、及びαiT(2≦i≦m)を一定とし、線速度が小
    さいほどβmが単調に増加するように変化させることを
    特徴とする光記録方法。
  15. 【請求項15】 各記録線速度での最大記録パワーをP
    max、最小記録パワーをPwminとするとき、 Pwmax/Pwmin≦1.2、 Pe/Pw=0.4〜0.6、 0≦Pb≦1.5(mW) である請求項14に記載の光記録方法。
  16. 【請求項16】 記録線速度が5m/s以下において、
    Σαi<0.5nである請求項15に記載の光記録方
    法。
  17. 【請求項17】 最大記録線速度におけるβmをβH m
    最小記録線速度におけるβmをβL mとしたとき、 他の記録線速度におけるβmは、βL mとβH mの間の値と
    し、 記録線速度によらずPb、Pe/Pw比が一定である請
    求項15に記載の光記録方法。
  18. 【請求項18】 記録線速度によらずβmが一定である
    請求項14乃至16のいずれかに記載の光記録方法。
  19. 【請求項19】 所定の記録領域を有する光学的情報記
    録用媒体を回転させて情報を複数のマーク長により記録
    する方法であって、 記録領域を半径方向に複数のゾーンに分割し、各ゾーン
    内においては、線速度一定で記録を行うものとし、 最内周ゾーンにおける記録線速度vinと最外周ゾーンに
    おける記録線速度vou tの比vout/vinが1.2〜2で
    あり、βmを各ゾーンの線速度に応じて変化させる請求
    項14乃至18のいずれかに記載の光記録方法。
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