JP2003017354A - 軟磁性膜の製造方法 - Google Patents

軟磁性膜の製造方法

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JP2003017354A
JP2003017354A JP2001202587A JP2001202587A JP2003017354A JP 2003017354 A JP2003017354 A JP 2003017354A JP 2001202587 A JP2001202587 A JP 2001202587A JP 2001202587 A JP2001202587 A JP 2001202587A JP 2003017354 A JP2003017354 A JP 2003017354A
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Junichi Honda
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Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 良好で均一な磁気特性を示す軟磁性膜を安定
して成膜する。 【解決手段】 スパッタ室11内に、不活性ガスととも
に水素を導入しながら軟磁性膜をスパッタ法により成膜
する。導入した水素によって、スパッタ室11内の雰囲
気中に存在する酸素が反応し、水(HO)を形成す
る。これにより、雰囲気中の酸素を低減して、軟磁性膜
を構成する元素と酸素とが反応してしまうことを防止す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば磁気記録媒
体に対して磁気信号の記録再生を行う磁気ヘッドを作製
する際に適用して好適な軟磁性膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、磁気記録媒体に対して磁気信
号の記録再生を行う各種の磁気ヘッドには、軟磁気特性
を示す磁性薄膜である軟磁性膜が備えられている。この
ような軟磁性膜のうち、FeTaNなどの組成に代表さ
れるような微結晶系の軟磁性膜は、従来から広く用いら
れているセンダストなどのような結晶質の軟磁性膜と比
較して、高い飽和磁束密度を有するという特徴がある。
このため、このような微結晶系の軟磁性膜は、磁気ヘッ
ドに適用することによって、より小さな磁気信号に対し
て記録再生を行うことが可能となり、さらなる高記録密
度化を達成することができるとして、磁気ヘッドへの応
用が進められている。
【0003】また、このような微結晶系の軟磁性膜は、
従来からスパッタ法を用いた以下のような手法により成
膜される。具体的には、例えばFeとTaの合金からな
るターゲットをアルゴンに窒素を含有させた雰囲気中で
スパッタリングすることによって、窒素が他の元素との
反応による窒化物を形成せずに、いわゆる侵入型で添加
した非晶質に近い状態の膜を成膜する。次に、500℃
程度の焼鈍処理を施すことによって、窒素との結合力が
強くてFeと分離しやすいTaが膜中で窒化物を形成す
る。これにより、微細なFe粒の周囲にTaN層が形成
され、強磁性Fe粒子が磁壁の厚さよりも細かいサイズ
で分布するようになる。これにより、成膜した膜が軟磁
性化する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】微結晶系の軟磁性膜
は、従来から上述のような手法により成膜されている
が、スパッタする際の雰囲気中に存在する酸素による影
響によって、得られる膜の磁気特性にばらつきが生じる
という問題があった。
【0005】具体的には、スパッタ時に用いるターゲッ
ト材やスパッタ室内のコンタミ成分から生じる酸素が成
膜時の雰囲気中に存在すると、Taが窒素よりも酸素に
対して化合物形成能力が高いことにより、Fe粒の周囲
にTaN層を適切に形成することができなくなり、微細
なFe粒を均一に分布させることができなくなってしま
う。
【0006】特に、量産用のスパッタ装置のように、比
較的大きなスパッタ室を有するスパッタ装置を用いて軟
磁性膜を成膜する場合には、他の様々な要因が影響し合
って、上述したような影響が顕著となる。このような他
の要因としては、例えば、スパッタ室内への窒素の導入
口の取り付け位置や、排気口の取り付け位置、或いは成
膜面となる基板をスパッタ中に冷却する際の基板位置に
応じた温度ムラなどの要因を挙げることができる。ま
た、量産用のスパッタ装置においては、量産性を向上す
るために、複数のターゲット材を用いて、複数の基板に
対してスパッタリングを行うように構成されているが、
各々のターゲット材と基板との間の位置関係に依存し
て、スパッタされた粒子のエネルギーが異なることも上
述した要因のひとつとして挙げることができる。
【0007】したがって、従来の手法では、スパッタ室
内の基板位置に応じて、或いは各基板上の位置に応じ
て、成膜される軟磁性膜に生じる磁気特性のばらつきが
激しくなってしまうといった問題があった。また、この
ようにして成膜された軟磁性膜を備える磁気ヘッドも、
結果として、磁気信号の記録再生特性にばらつきが生じ
てしまい、製品の不良率を低減することが困難であっ
た。
【0008】そこで本発明は、上述した従来の実情に鑑
みてなされたものであり、良好な磁気特性を有する微結
晶系の軟磁性膜を安定して成膜することが可能な軟磁性
膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係る軟磁性膜の
製造方法は、窒素又は炭素を含む軟磁性膜を成膜する雰
囲気中に、水素を導入することを特徴とするものであ
る。
【0010】以上のように構成された本発明に係る軟磁
性膜の製造方法によれば、軟磁性膜を成膜する雰囲気中
に導入した水素によって、この雰囲気中に存在する酸素
が反応し、結果として雰囲気中に存在する酸素の割合を
著しく低減させることができる。
【0011】なお、上記雰囲気中における水素の含有率
は、導入する全混合ガスに対して0.1%以上且つ5%
以下とすることが望ましい。水素の含有率が全混合ガス
に対して0.1%未満である場合には、水素を雰囲気中
に導入したことによる際だった効果が得られず、膜中の
Taが雰囲気中の酸素と反応してしまうといった影響が
生じてしまう。また、水素の含有率が全混合ガスに対し
て5%を超える場合には、導入した水素によって雰囲気
中の酸素を低減する効果が得られる一方で、雰囲気中に
おける水分の発生も顕著となり、この水分の影響によっ
て軟磁性膜の磁気特性が著しく劣化してしまう。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、本
発明を適用することにより、図1に示すような構造を有
する磁気ヘッド1を製造する場合について説明する。そ
こで、まずはこの磁気ヘッド1について説明する。
【0013】なお、磁気ヘッド1は、補助コア材として
のフェライトの上に高飽和磁束密度を有する金属磁性膜
を主コア材として形成し、この金属磁性膜により磁気ギ
ャップを形成するようにした、いわゆるMIG(Metal
In Gap)型の磁気ヘッド(以下、MIGヘッドと称す
る。)であり、磁気テープに対して記録再生を行うよう
に構成されている。
【0014】以下では、この磁気ヘッド1における金属
磁性膜を成膜する際に本発明を適用した場合について説
明するが、本発明はMIGヘッドを製造する場合への適
用に限定されるものではなく、例えば、磁気抵抗効果を
利用して磁気信号の再生を行うMR(Magneto-Resistan
ce)ヘッドや、薄膜型のコイルを有するインダクティブ
型の薄膜ヘッドなどのような、各種の磁気ヘッドを製造
する場合に対して広く適用することができることは云う
までもない。
【0015】磁気ヘッド1は、図1に示すように、一対
の磁気コア半体2,3が突合せ面で突き合わされて接合
一体化されてなる。一対の磁気コア半体2,3は、補助
コア材としてのフェライト基板4と、このフェライト基
板4上に形成された主コア材としての金属磁性膜5とに
よってそれぞれ形成されている。また、磁気ヘッド1
は、一対の磁気コア半体2,3が突合せ面において非磁
性薄膜7を介して接合されているとともに、この突合せ
面の端部が低融点ガラス6によって充填されてなる。そ
して、磁気テープが摺動する摺動面1aにおいて、金属
磁性膜5同士が非磁性薄膜7を介して突き合わされてい
ることにより、磁気ギャップが形成されている。
【0016】磁気ギャップは、その両端部においてフェ
ライト基板4が突合せ面から深さ方向に切り欠かれてい
ることによって、幅が規制されている。そして、磁気ヘ
ッド1においては、フェライト基板4の切り欠き部に低
融点ガラス6が充填され、突合せ面で平坦化されてな
る。また、磁気ヘッド1は、磁気ギャップが形成されて
なる部位において、一対の磁気コア半体2,3の突合せ
面と、フェライト基板4上における金属磁性膜5の成膜
面とが略々平行とされており、いわゆる平行膜型のMI
Gヘッドとして構成されている。
【0017】また、磁気ヘッド1は、摺動面1aの両側
部に、磁気テープとの当接幅を規制するための当接幅規
制溝1bが形成されている。さらに、磁気ヘッド1は、
一対の磁気コア半体2,3の突合せ面の中央部に、巻き
線窓1cが形成されており、この巻き線窓1cの磁気ギ
ャップ側まで低融点ガラス6が充填されている。この低
融点ガラス6は、一対の磁気コア半体2,3を接合一体
化する目的で充填されている。
【0018】また、磁気ヘッド1は、摺動面1aの両端
部で巻き線窓1cと略同等の高さとなる位置に、巻き線
補助溝1dが形成されている。この巻き線窓1c及び巻
き線補助溝1dには、図示を省略するコイルが巻回され
る。
【0019】以上のように構成された磁気ヘッド1にお
いては、フェライト基板4と金属磁性膜5とによって磁
気コアが構成されるとともに、この磁気コアに巻回され
たコイルに電気信号が供給されることによって、摺動面
1aにおいて磁気ギャップから漏れ磁界を発生させ、磁
気テープに磁気信号の記録を行う。また、磁気テープに
記録された磁気信号を再生する際には、磁気ギャップに
よって磁気信号を検出し、磁気コアに巻回されたコイル
によって、検出した磁気信号に応じた電圧変化を検出す
る。
【0020】ところで、磁気ヘッド1における金属磁性
膜5は、化学式Fe Si
(ただし、式中のa,b,c,d,e,fは原子%
を示す。)で表される組成で形成されている。ここで、
は、Ta,Zr,Hf,Nbから選ばれる元素のう
ちの少なくとも1種であり、Mは、N,Cから選ばれ
る元素のうちの少なくとも1種であり、Mは、Ru,
Ga,Ti,Co,Ni,Cu,Hから選ばれる元素の
うちの少なくとも1種であることが望ましい。
【0021】この金属磁性膜5は、低融点ガラス6を充
填する溝部が形成されたフェライト基板4上に、例えば
スパッタ法などにより成膜され、成膜後に熱処理が施さ
れることによって微結晶化が行われる。
【0022】このとき、金属磁性膜5は、Mで示す元
素を含有していることによって、熱処理の過程でM
示される元素(すなわちN及び/又はC)と反応し、微
細Fe粒を形成するように非磁性化合物のネットワーク
を形成する効果を有する。
【0023】ここで、金属磁性膜5は、上記の化学式中
におけるFeの割合aを65原子%≦a85原子%と
し、Mで示す元素の割合bを6原子%≦b15原子%
とすることが望ましい。Fe元素の割合が65原子%未
満である場合には、飽和磁束密度が低くなり、微結晶系
の軟磁性膜として形成する効果が著しく劣化してしま
う。また、Fe元素の割合が85原子%を超える場合に
は、保磁力などに代表される軟磁性特性が劣化してしま
う。一方、Mで示す元素の割合bが6原子%未満であ
る場合には、磁気ヘッド1を作製する過程で必要となる
500℃程度の熱処理を施したときに、微細Fe粒の粗
大化を抑制する効果が低減し、軟磁気特性が劣化してし
まう。また、Mで示す元素の割合bが15原子%を超
える場合には、飽和磁束密度が著しく減少してしまうと
いった現象がみられる。
【0024】したがって、金属磁性膜5は、Fe元素の
割合aを65原子%≦a85原子%とし、Mで示す元
素の割合bを6原子%≦b15原子%とすることによっ
て、高い飽和磁束密度を有し、良好な軟磁気特性を示す
微結晶系の軟磁性膜となる。このため、このような金属
磁性膜5を備える磁気ヘッド1は、さらなる高記録密度
化・高転送レート化に対応して、安定して確実な記録再
生を行うことが可能となる。
【0025】なお、金属磁性膜5に含まれるSi元素
は、この金属磁性膜5の耐食性が向上させるとともに、
磁歪を「0」に近い値まで低減する効果を奏する。この
Si元素の割合cは、Fe元素の割合aに対して、0.
10a≦c≦0.17aとされていることが望ましい。
【0026】Si元素の割合cがFe元素の割合aに対
して0.10倍未満である場合には、金属磁性膜5の耐
食性が劣化してしまう。磁気ヘッドにおいては、例えば
0.5規定のNaCl溶液中に100時間浸したときの
金属磁性膜5の腐食割合を、この金属磁性膜5の全体積
に対して5%程度以下である場合に実用的に用いること
ができるとされているが、Si元素の割合cをFe元素
の割合aに対して0.10倍未満として金属磁性膜5を
形成すると、十分な耐食性が得られなくなり、上述の腐
食割合を超える腐食が発生してしまう。
【0027】また、Si元素の割合cがFe元素の割合
aに対して0.17倍を超える場合には、FeSi合金
相における飽和磁束密度が著しく低減してしまい、磁気
ヘッド1の実用性が失われてしまう。
【0028】また、金属磁性膜5において、Mで示す
元素(N及び/又はC)は、Mで示す元素と概ね1:
1の組成比で化合物を形成するとともに、各種Si添加
量とN添加量で得られる軟磁性から、添加したSi元素
中の20%程度と1:1の組成比で化合物を形成する。
そして、残りのM元素が、Fe元素と化合して合金化
するといった挙動を示すことが判っている。
【0029】したがって、Mで示す元素の割合eは、
元素の割合bと、Si元素の割合cの20%(すな
わちc/5)との和となる量に対して、80%以上且つ
120%以下(すなわち、0.8(b+c/5)≦e≦
1.2(b+c/5))とすることが望ましい。M
素の割合eがこの量に対して80%未満となる場合に
は、Mで示す元素が窒化されずに残ってしまう割合が
大きくなり、このMで示す元素がFe相から分離せず
にFe相中に残ってしまう。これにより、飽和磁束密度
が著しく低下してしまう。また、M元素の割合eが上
述した量に対して120%を超える場合には、Fe元素
に対する反応性が顕著となり、Fe相の結晶磁気異方性
などを向上する効果を示す軟磁気特性が劣化してしまう
とともに、金属磁性膜5における保磁力の増大や膜の異
方性の増大を招いてしまう。
【0030】また、金属磁性膜5は、Mで示す元素を
含有することによって、磁気ヘッド1に要求される諸特
性に応じた各種の付加的な効果を得ることができる。具
体的には、例えば、金属磁性膜5にMで示す元素とし
てCoを添加することによって、飽和磁束密度をさらに
向上させることができる。また、Ruを添加することに
よって、軟磁性化領域を広げることができる。また、C
uを添加することにより、金属磁性膜5に対して熱処理
を施す過程で、この金属磁性膜5における結晶粒構造の
微細化を維持することが容易となる。また、Ti及びG
aを添加することによって、それぞれ、軟磁性化領域を
広げる効果、及び結晶磁気異方性を低下させる効果を奏
する。
【0031】なお、Mで示す元素としては、上述した
各種元素を単体で又は複合して添加することができる。
また、金属磁性膜5には、Mで示す元素に加えて、上
述で例示していない他の元素を上述と同様な効果を得る
目的でさらに添加してもよい。また、金属磁性膜5にお
いては、Mで示す元素の割合fを5原子%以下(すな
わち、0原子%<f≦5原子%)とすることが望まし
い。この割合fが5原子%を超える場合には、金属磁性
膜5において良好な軟磁気特性と高い飽和密度を維持す
ることが困難となってしまう。
【0032】また、金属磁性膜5は、ボロン(B)を含
有して形成されていることから、その成膜時にボロン
(B)によって非結晶化が促進され、フェライト基板4
上に成膜した際に生じる部分的な結晶化が阻害されるこ
ととなる。このため、金属磁性膜5に対して微結晶化を
施す目的で成膜後に熱処理を行った際に、組織ムラを著
しく低減することができる。
【0033】すなわち、磁気ヘッド1は、金属磁性膜5
が上記の化学式で示される組成とされて、ボロン(B)
が含有されていることによって、組織ムラが少ない均一
な微結晶構造を呈することとなる。したがって、磁気ヘ
ッド1は、金属磁性膜5が良好な磁気特性を示し、これ
によって、飽和磁束密度、磁歪、耐食性、透磁率、或い
は耐摩耗性といった諸特性に優れたものとなる。
【0034】なお、金属磁性膜5に含有するボロン
(B)の割合dは、0.1原子%≦d≦2原子%とする
ことが望ましい。この割合dを0.1原子%未満とした
場合には、ボロンを添加したことによる上述した効果を
十分に得ることができない。また、この割合dが2原子
%を超える場合には、窒素(N)との反応形成物が生
じ、この反応形成物によって軟磁性が劣化することによ
り、保磁力を1Oe以下程度に抑制することができなく
なってしまう。
【0035】なお、金属磁性膜5は、上記の化学式で示
される組成で形成されており、ボロンを含有すると同時
に、Mで示す元素(すなわちN及び/又はC)が含有
されている。Mで示す元素は、Mで示す元素と反応
することによって、微細Fe粒を形成するように非磁性
化合物のネットワークを形成する効果を奏している。し
たがって、これら2種の元素、すなわちボロン(B)と
で示す元素とが同時に存在することによって、さら
に微結晶粒の微細化及び均一化を図ることができ、良好
な磁気特性を有する微結晶系の軟磁性膜を確実に且つ安
定して成膜することが可能となる。
【0036】金属磁性膜5は、以上で説明したように、
ボロン(B)が含有されていることによって均一な微結
晶状態で成膜することが容易である。したがって、図1
に示すように、金属磁性膜5の成膜面となるフェライト
基板4の平坦面と傾斜面との双方に金蔵磁性膜5を成膜
する場合であっても、安定して均一な微結晶状態で成膜
することができる。
【0037】つぎに、以上のように構成された磁気ヘッ
ド1における金属磁性膜5をフェライト基板4上に成膜
する場合について説明する。このとき、例えば、図2に
示すようなスパッタ装置10によりスパッタ法を用いて
金属磁性膜5を成膜する。なお、図2は、スパッタ装置
10における構成の概略を示す模式図である。
【0038】スパッタ装置10は、図2に示すように、
スパッタ室11内の一面に複数のターゲット12が配設
されている。また、スパッタ室11の一側には、このス
パッタ室11の内部にガスを導入する導入口13が配設
されているとともに、スパッタ室11の底部には、この
スパッタ室11内部のガスを排出する排出口14が配設
されている。
【0039】また、スパッタ室11の内部には、図中矢
印Aで示す斜線部の領域に、フェライト基板4が複数配
設される。このときスパッタ室11内に配設されるフェ
ライト基板4は、略平板状の基板面に、最終的に磁気ヘ
ッド1の各部を構成する溝部などが複数形成された状態
とされており、多数の磁気ヘッド1を同時に作製する途
中のものである。また、図中の斜線部の領域に配設され
た各々のフェライト基板4は、成膜時に、図2中の矢印
Bで示す点を中心にして図中矢印C方向に回転される。
このようにフェライト基板4を回転しながら金属磁性膜
5を成膜することによって、各フェライト基板4上の任
意の位置で、均一な成膜状態を得ることができる。
【0040】そして、フェライト基板4上に金属磁性膜
5を成膜するに際しては、導入口13からアルゴンや窒
素等の不活性ガスとともに水素を導入しながら、フェラ
イト基板4を回転させて、ターゲット12からのスパッ
タ粒子をフェライト基板4上に成膜する。
【0041】このように、金属磁性膜5を成膜する際の
雰囲気中に水素を導入することによって、この雰囲気中
に存在する酸素が水素と反応し、結果として雰囲気中に
存在する酸素の割合を著しく低減させることができる。
したがって、金属磁性膜5を成膜する際に、膜中のTa
等の元素が酸素と反応してしまうといった現象を効果的
に抑制して、良好な磁気特性を有する微結晶系の軟磁性
膜を安定して成膜することができる。
【0042】なお、成膜する際の雰囲気中における水素
の含有率は、導入する全混合ガスに対して0.1%以上
且つ5%以下とすることが望ましい。水素の含有率が全
混合ガスに対して0.1%未満である場合には、水素を
雰囲気中に導入したことによる際だった効果が得られ
ず、膜中のTa等の元素が雰囲気中の酸素と反応してし
まうといった影響が生じてしまう。また、水素の含有率
が全混合ガスに対して5%を超える場合には、導入した
水素によって雰囲気中の酸素を低減する効果が得られる
一方で、雰囲気中における水分の発生も顕著となり、こ
の水分の影響によって軟磁性膜の磁気特性が著しく劣化
してしまう。
【0043】なお、成膜する際の雰囲気中における水素
の含有率が5%以内であれば、酸素と比較して水素が過
剰となった場合であっても、得られる金属磁性膜5の磁
気特性に劣化は生じないことが確認されている。
【0044】この理由としては、成膜中の金属磁性膜5
に対して水素が侵入型で取り込まれるが、水素は酸素と
比較して膜中の元素との反応性が低く、また拡散などに
よる膜中の移動度も高いことが挙げられる。このため、
成膜後の工程で金属磁性膜5に対して熱処理を施す際
に、この金属磁性膜5から排出されるからであると考え
られる。さらには、この熱処理を施したときに水素が排
出された位置で窒素が安定に存在し易くなることから、
金属磁性膜5からの窒素の放出を防ぐことができる。こ
の結果、膜中のTa等の元素と窒素との反応性も高くな
り、金属磁性膜5を軟磁性化するために有利に作用する
という効果も得られる。
【0045】なお、図2においては、単一の導入口13
からスパッタ室11内にガスを導入する様子を図示して
いるが、スパッタ装置10においては、導入系内での窒
素と水素との反応などを防止するために、窒素やアルゴ
ン等の不活性ガスと水素との導入系を独立して設け、そ
れぞれ異なる導入口からスパッタ室11内に導入するこ
とが望ましい。
【0046】つぎに、図2に示すスパッタ装置10を用
いて、上述したようにして成膜中に水素を導入する手法
により、磁気ディスク1における金属磁性膜5に相当す
る軟磁性膜を実際に成膜した場合について説明する。
【0047】ここでは、フェライト基板上に、Fe
73.7Ta5.9Si8.5Ni0. Co1.2
1.1Ga0.51.27.3なる組成で軟磁性
膜を成膜した。また、ターゲット12としては、FeT
aSiNiCoRuGaB合金を3つ用いて、図2中に
示すようにスパッタ室11内に同心円状に配設した。さ
らに、図2中の斜線部に示す領域に複数のフェライト基
板を配置して、これら各々のフェライト基板を図中の矢
印Cで示すように回転させながら軟磁性膜を成膜した。
なお、このときフェライト基板を配設する位置は、成膜
する軟磁性膜の膜厚分布を考慮して決定することが望ま
しく、本例においては、図中矢印Bで示す回転中心から
の距離が100mm〜200mmである円環状の斜線部
領域に、可能な限り基板同士が密になるように配設し
た。
【0048】以上のような条件の下で、まず第1の実験
例として、スパッタ室11内にアルゴンと窒素との混合
ガスを導入して軟磁性膜を成膜した。この混合ガスとし
ては、アルゴンの含有率が91%であり、窒素の含有率
が9%であるガスを用いた。このときに得られた軟磁性
膜における保磁力を測定するとともに、成膜面において
高い透磁率を示す磁化困難軸方向を測定した。このとき
得られた結果を図3に示す。なお、図3においては、測
定した各々の軟磁性膜の成膜位置におけるフェライト基
板の回転中心(図2中の点B)からの距離を横軸に示
し、縦軸としては、測定された磁化困難軸方向の円周方
向からの角度と保磁力とをそれぞれ示す。
【0049】つぎに、第2の実験例として、スパッタ室
11内に導入する混合ガスの成分だけを変えて、上述と
同様の条件の下で軟磁性膜を成膜した。このときの混合
ガスとしては、アルゴンの含有率が90%であり、窒素
の含有率が9%であり、水素の含有率が1%であるガス
を用いた。そして、このときに得られた軟磁性膜につい
て、同様にして保磁力と磁化困難軸方向とを測定した。
このとき得られた結果を図3に併せて示す。
【0050】図3に示す結果から明らかであるように、
雰囲気中に不活性ガスだけを導入した第1の実験例で得
られた軟磁性膜は、成膜時における基板上の位置に応じ
て保磁力や磁化困難軸方向のばらつきが激しい。また、
第1の実験例により得られた軟磁性膜を用いて、上述し
た磁気ヘッド1と同様な構造の磁気ヘッドを作製したと
ころ、再生特性のばらつきは、0.5dBであった。
【0051】一方、雰囲気中に不活性ガスとともに微量
の水素を導入した第2の実験例で得られた軟磁性膜は、
基板上の位置に依らずに、保磁力と磁化困難軸方向とが
ほぼ一定の値を示している。また、この軟磁性膜を用い
て作製した磁気ヘッドにおける再生特性のばらつきは、
0.2dBであった。また、この磁気ヘッドにおける再
生特性の平均は、第1の実験例で作製した軟磁性膜を用
いた磁気ヘッドと比較して、0.2dBの改善がみられ
た。
【0052】以上の結果から、軟磁性膜を成膜する際の
雰囲気中に、不活性ガスとともに微量の水素を導入する
ことによって、成膜する軟磁性膜における磁気特性の均
一化を図ることができることが判る。また、このように
水素を含む雰囲気中で成膜された軟磁性膜を用いること
により、高品質な磁気ヘッドを再生特性のばらつきを抑
えて作製することが可能であることが判る。
【0053】
【発明の効果】本発明に係る軟磁性膜の製造方法によれ
ば、軟磁性膜を成膜する雰囲気中に導入した水素によっ
て、この雰囲気中に存在する酸素が反応し、結果として
雰囲気中に存在する酸素の割合を著しく低減させること
ができる。したがって、軟磁性膜を成膜する際にTaが
酸素と反応してしまうことを効果的に防止して、良好な
磁気特性を有する微結晶系の軟磁性膜を安定して成膜す
ることができる。
【0054】このため、本発明は、例えば磁気ヘッドを
量産する場合などで、量産用のスパッタ装置内での軟磁
性膜の成膜工程に適用することにより、成膜面となる基
板の取り付け位置や基板上の位置に依らずに、均一な磁
気特性を有する軟磁性膜を成膜することができる。した
がって、優れた磁気特性を有する磁気ヘッドを高い生産
性を確保して量産することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る軟磁性膜を適用した一構成例とし
て示す磁気ヘッドの概略斜視図である。
【図2】同軟磁性膜を成膜する際に用いるスパッタ装置
の一例を示す模式図である。
【図3】軟磁性膜を成膜する際の雰囲気中に、水素を導
入しなかった場合と導入した場合とで得られた軟磁性膜
に生じる磁気特性のばらつきを示す図である。
【符号の説明】 1 磁気ヘッド、2,3 磁気コア半体、4 フェライ
ト基板、5 金属磁性膜(軟磁性膜)、6 低融点ガラ
ス、7 非磁性薄膜

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 窒素又は炭素を含む軟磁性膜を成膜する
    雰囲気中に、水素を導入することを特徴とする軟磁性膜
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 上記雰囲気中における水素の含有率を、
    導入する全混合ガスに対して0.1%以上且つ5%以下
    とすることを特徴とする請求項1記載の軟磁性膜の製造
    方法。
  3. 【請求項3】 上記軟磁性膜は、化学式Fe
    (ただし、式中のa,b,c,
    d,e,fは原子%を示す。)で表される組成で形成さ
    れ、 Mは、Ta,Zr,Hf,Nbから選ばれる元素のう
    ちの少なくとも1種であり、 Mは、N,Cから選ばれる元素のうちの少なくとも1
    種であり、 Mは、Ru,Ga,Ti,Co,Ni,Cu,Hから
    選ばれる元素のうちの少なくとも1種であることを特徴
    とする請求項1記載の軟磁性膜の製造方法。
  4. 【請求項4】 上記化学式中における各元素の割合は、 65原子%≦a≦85原子%であり、 6原子%≦b≦15原子%であり、 c,d,e,f≠0であることを特徴とする請求項3記
    載の軟磁性膜の製造方法。
  5. 【請求項5】 上記化学式中におけるSi元素の割合
    は、 0.10a≦c≦0.17aであることを特徴とする請
    求項4記載の軟磁性膜の製造方法。
  6. 【請求項6】 上記化学式中におけるB元素の割合は、 0.1原子%≦d≦2原子%であることを特徴とする請
    求項5記載の軟磁性膜の製造方法。
  7. 【請求項7】 上記化学式中における各元素の割合は、 0.8(b+c/5)≦e≦1.2(b+c/5)であ
    り、 0原子%<f≦5原子%であることを特徴とする請求項
    6記載の軟磁性膜の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100879196B1 (ko) * 2004-06-21 2009-01-16 유니베이션 테크놀로지즈, 엘엘씨 조성 분포의 조절과 함께 중합체를 제조하는 방법

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